説明

新規多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)系蛍光着色剤

新規蛍光多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)着色剤が提供される。着色剤は、蛍光性が強く、長持ちし、優れた光安定性を有する。新規着色剤は、通常の顔料にみられる発色団から調製することができ、不溶性顔料を可溶性蛍光着色剤に変換する簡単な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、引用により本明細書に組み入れられる、2006年8月7日出願の米国仮出願第60/836,025号の、米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。
【0002】
本発明は、新規蛍光多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)着色剤を提供する。着色剤は、蛍光性が強く、長持ちし、印刷インク、コーティング、およびプラスチックの着色を含む多様な用途において有用である。生物医学的用途は、医用イメージングおよび蛍光マーキングを含む。新規着色剤は、通常の顔料にみられる発色団から調製することができ、不溶性顔料を可溶性蛍光着色剤に変換する簡単な方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
顔料は、化学組成よりもむしろその物理特性によって、染料と区別される。染料は、顔料とは異なり、その適用時に溶解し、過程中にその結晶または粒子構造を失う。
【0004】
一般的に有機染料をベースとする蛍光着色剤は、着色印刷インク、塗料、およびプラスチックに通常使用される材料の重要なクラスを代表する。工業用蛍光顔料としばしば呼ばれる着色剤は、樹脂マトリックスなどの好適な媒体中に蛍光染料を溶解させることにより得られる。次に、樹脂マトリックスを典型的には数ミクロンの具体的な大きさにまで破壊することにより、顔料として使用することができる。
【0005】
一般に、有機顔料は、蛍光を示さないか、または非常に低い強度の蛍光を示す。限られた数の蛍光有機顔料のみが、当技術分野において、例えば、W. Herbst and K. Hunger, Industrial Organic Pigments, 2nd Ed., VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim, 1997, 571-572に記載の蛍光C.I.ピグメントイエロー101として記載されている。
【0006】
染料と比較して、顔料は、良好な耐光性または耐候性、および転写の問題が存在しないことなど、いくつかの利点を有する。
【0007】
顔料の有利な特性を有する蛍光有機着色剤を得て、上記の蛍光染料の代替物を提供するには、有機顔料に蛍光を付与することが望ましい。そのような着色剤の特に興味深い商業的用途は、セキュリティ印刷用途を含む、物体のセキュリティマーキングにみられる。
【0008】
引用により全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,863,459号および第5,904,878号には、単離した乾燥顔料粉末を有機溶媒または水に加え、得られたスラリーを数時間の高温下での熱処理に供することにより、黄色および橙色ジアリーリド顔料の蛍光を増強する方法が開示されている。
【0009】
引用により全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,874,580号には、強い固相蛍光を示す、キナクリドン系、アントラキノン系、ペリレン系、インジゴ系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、またはアゾ系のカルバメート基含有可溶性発色団が開示されている。
【0010】
引用により全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,946,550号には、黄色および赤色アゾ化合物、ならびに、例えば特殊効果印刷、セキュリティ印刷用の、または光電子分野における蛍光化合物、特に固体蛍光化合物としてのその使用が開示されている。
【0011】
引用により全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,923,856号には、増強された蛍光を有する有機顔料を界面活性剤で処理することによる、該顔料の調製のための方法が開示されている。
【0012】
上記にもかかわらず、直接的な方法により容易に得ることができ、高い強度の蛍光を示す、耐久性のある蛍光有機着色剤の必要性が依然として存在する。
【0013】
引用により全体として本明細書に組み入れられる、2004年10月の米国特許出願公開第20040204521号には、添加剤で官能化された親有機性ナノスケール充填剤の調製が開示されている。
【0014】
欧州特許第0504541.7号には、染料が結合している官能化ナノ粒子、例えば酸化ケイ素および酸化アルミニウムのナノ粒子、ならびに、有機材料用の着色材料としてのその使用が開示されている。ナノ粒子染料は、増大した蛍光を含む多くの望ましい特徴を有するが、官能化ナノ粒子は多くの通常の材料に可溶性ではない。
【0015】
引用により全体として本明細書に組み入れられる、2005年6月9日の米国特許出願公開20050123760号には、ルモフォア、すなわち、電磁放射線に露光される際に光を発光する発色団を、シルセキオキサンナノ粒子コアに共有結合させることにより調製される発光ナノ粒子が開示されている。「シルセキオキサン」は、シラセスキオキサンおよび多面体オリゴマーシルセスキオキサンとしても知られる、ケイ素および酸素からなる多環式化合物のファミリーの一般名である。米国特許出願第20050123760号の特定の一態様は、各種の有色ルモフォアが結合しており、したがって白色光を発光することが可能であるナノ粒子である。
【0016】
米国特許出願第20050123760号のシルセキオキサンに結合しているルモフォアは、ある種の公知の蛍光染料を含み、得られる発光ナノ粒子は、そのような染料の欠点に影響されやすく、例えば、多くの使用条件下で安定ではなく、熱および光に対する露出などの環境的要因により開始する化学分解が原因でその色および蛍光を失う。
【0017】
本発明は、優れた光安定性および可溶性、または多くのポリマー系中での優れた分散性などの向上した特性を有する高蛍光着色剤を開示する。
【0018】
本開示において:
ナノ粒子とは、約100nm以下の断面測定値(例えば、球形の場合は直径)を有する粒子のことである。式(I)で示されるシルセキオキサン基は、ナノ粒子の一例である。
【0019】
「発色団」とは、電磁放射線を吸収可能な分子または分子の凝集体のことである。
【0020】
「シルセキオキサン」は、ケイ素および酸素からなる多環式化合物のファミリーの一般名である。シルセキオキサンは、例えば米国特許出願公開第20050123760号からシラセスキオキサンおよび多面体オリゴマーシルセスキオキサンとしても知られ、「POSS」と略される。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、式(I):
【0022】
【化1】

【0023】
[式中、
mは、1または2であり;
nは、1〜18であり、例えば、nは、1、2、3、または4であり、例えば、nは3であり;
Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、−CO−、または−COO−であり;例えば、Xは、直接結合、−NH−、または−CO−、例えば直接結合であり;
各Rは、C〜C25アルキル、−O−および−S−から選択される1個または複数の基により1回または複数回割り込まれているC〜C25アルキル、C〜C24アルケニル、−O−および−S−から選択される1個または複数の基により1回または複数回割り込まれているC〜C24アルケニル、C〜Cフェニルアルキル、−(CH)n−X−(Y)z基(ここで、nは上記定義の通りであり、zは1または1/2であり、2つ以上のzが存在する場合、各zは独立して選択される)、フェニル、ならびに、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルオキシ、およびハロゲンから選択される1個または複数の基で1〜5回置換されているフェニルからなる群から独立して選択され;例えば、Rは、C〜Cアルキル、典型的にはイソブチルもしくはシクロヘキシル、または−(CH)n−X−(Y)z基であり;
Yは、アゾ染料、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン、ナフタルイミド、ジケトピロロピロール、ペリレン、キナクリドン、ベンゾキサンテン、ジフェニルマレイミド、アセトアセトアミド、ペリレンモノイミド、ペリレン、およびフタルイミドからなる群から選択される発色団の基であり、ここで、2個以上のYが存在する場合、各Yは他から独立して選択される]で示される新規蛍光着色剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例えば、Yは、ペリレン発色団、ベンゾキサンテン発色団、ナフタルイミド(naphthalimid)発色団、キナクリドン発色団、ジケトピロロピロール発色団、およびフタロシアニン発色団からなる群から選択される発色団の基であり;例えば、Yは、ペリレン発色団、ベンゾキサンテン発色団、ナフタルイミド発色団、またはジケトピロロピロール発色団である。
【0025】
本発明の特定の一態様において、Yは、顔料の一部であるか、または顔料粒子の一部として典型的にみられる発色団から誘導される。したがって、各種のポリマー、インク、および他の媒体に可溶性である、取り扱いが容易な蛍光着色剤は、不溶性の固体から容易に誘導される。そのような態様において、Yは、例えばキサンテン顔料、ペリレン顔料、ベンゾキサンテン顔料、ナフタルイミド(naphthalimid)顔料、ジケトピロロピロール顔料、キナクリドン顔料、またはフタロシアニン顔料から誘導され、特定の態様において、Yは、ペリレン顔料、ベンゾキサンテン顔料、ナフタルイミド顔料、またはジケトピロロピロール顔料から誘導される。
【0026】
Yとして特に有用な基は、式:
【0027】
【化2】

【0028】
[式中、RおよびR’は、式−N(CO−)で示される残基と一緒になって、ペリレン染料、ベンゾキサンテン染料、またはナフタルイミド染料の基を形成する]で示されるものである。
【0029】
式(2)で示されるそのような基の例は下記を含む:
−ナフタルイミド染料およびジフェニルマレイミド染料から誘導される基:
【0030】
【化3】

【0031】
[式中、
環AおよびBは、非置換であってもよいか、あるいは、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、アミノ、モノもしくはジ(C1−8アルキル)アミノ、ハロゲン、またはスルホで置換されていてもよい]。
【0032】
−ベンゾキサンテン染料から誘導される基:
【0033】
【化4】

【0034】
[式中、
は、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、C1−8チオアルキル、アミノ、モノもしくはジ(C1−8アルキル)アミノ、またはハロゲンであり、Xは、−O−、−S−、−NH−、または−N(R)−であり、ここで、Rは、C1−8アルキル、ヒドロキシ−C1−8アルキル、またはC6−10アリールである]。
【0035】
−ペリレン染料から誘導される基:
【0036】
【化5】

【0037】
[式中、
およびRは、互いに独立して、水素;C〜Cアルキル;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはハロゲンで置換されていてもよいフェニルもしくはナフチル;シアノ;ニトロ;ハロゲン;−OR;−COR;−COOR;−OCOR;−CONR;−OCONR;−NR;−NRCOR;−NRCOOR;−NRSO;−SO;−SO;−SONRまたは−N=N−Rであり;RおよびRは、互いに独立して、水素;C〜Cアルキル;または、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはハロゲンで同様にさらに置換されていてもよいフェニルであり;
は、水素;ハロゲン、フェニル、もしくはナフチルで置換されていてもよく、該フェニルもしくはナフチルが、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシで同様にさらに置換されていてもよい、C〜C25アルキル;C〜Cアルキルで1〜3回置換されていてもよいアリル;C〜Cシクロアルキル基;C〜C−アルキル、ハロゲン、ニトロ、もしくはシアノで1〜3回置換されていてもよいフェニルにより、1回または2回縮合していてもよいC〜Cシクロアルキル基;ハロゲンで置換していてもよいC〜C25アルケニル基;またはハロゲンで置換していてもよいC〜C25アルキニル基であり、例えば、Rは、ハロゲン、フェニル、もしくはナフチルで置換されていてもよく、該フェニルもしくはナフチルが、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシで同様にさらに置換されていてもよい、C〜C25アルキルであり、例えば、Rは、C〜C25アルキルであり;
およびRは、好ましくは、互いに独立して、水素;C〜Cアルキル;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはハロゲンで置換されていてもよいフェニルもしくはナフチル;シアノ;ニトロ;ハロゲン;アミノ;ヒドロキシル;または−COORであり、ここで、Rは上記定義の通りであり;例えば、RおよびRは、水素または−COORである]。
【0038】
ペリレン化合物およびその調製は、例えば、米国特許第6,326,494号、ならびに"Synthesis of Diazodibenzoperylenes....", F. Wurthner et al in J. Org. Chem. 2002, 67, pages 3037-3044および"Hierarchical Self-Organisation of Perylene Bisimide......", F. Wurthner et at in Chem. Eur., 2000, 6, No. 21, pages 3871-3886から知られる。
【0039】
Yとして有用な基の他の例は下記を含む:
【0040】
【化6】

【0041】
[式中、
、R、およびRは、上記定義の通りであり、
およびAは、互いに独立して、−S−、−S−S−、−CH=CH−、ROOC−C(−)=C(−)−COOR、−N=N−もしくは−N(R)−、または式:
【0042】
【化7】

【0043】
(式中、
107は、水素、C〜C24アルキル、またはC〜C24シクロアルキルであり、
108は、非置換もしくは置換C〜C24アルキル、C〜C24シクロアルキル、フェニル、ベンジル、−CO−C〜Cアルキル、−CO−C、またはC〜Cアルキルカルボン酸(C〜Cアルキル)エステルである)で示される有機基からなる群から選択される結合であり、
は、式:
【0044】
【化8】


で示される結合である];
【0045】
−式:
【0046】
【化9】

【0047】
[式中、R10およびR11は、互いに独立して有機基であり、
ArおよびArは、互いに独立して、場合により置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基である]で示されるジケトピロロピロールから誘導される基。
【0048】
ArおよびArの定義における「アリール基」という用語は、典型的には、非置換であってもよいか、または置換されていてもよいC〜C30アリール、例えば、フェニル、インデニル、アズレニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニリルもしくはクオッドフェニリル(quadphenylyl)、as−インダセニル、s−インダセニル、アセナフチレニル、フェナントリル、フルオランテニル、トリフェンレニル(triphenlenyl)、クリセニル、ナフタセン(naphthacen)、ピセニル、ペリレニル、ペンタフェニル、ヘキサセニル、ピレニル、またはアントラセニル、好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−フェナントリル、2−もしくは9−フルオレニル、3−もしくは4−ビフェニルのことである。
【0049】
「ヘテロアリール基」、特にC〜C30ヘテロアリールは、窒素、酸素、または硫黄が可能なヘテロ原子である環のことであり、典型的には、非置換であってもよいか、または置換されていてもよい、少なくとも6個の共役π電子を有する、5〜18個の原子を有する不飽和複素環基、例えば、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、チアントレニル、フリル、フルフリル、2H−ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、2H−クロメニル、キサンテニル、ジベンゾフラニル、フェノキシチエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ビピリジル、トリアジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1H−ピロリジニル(pyrrolizinyl)、イソインドリル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、3H−インドリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリル(chinolyl)、イソキノリル(isochinolyl)、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル(chinoxalinyl)、キナゾリニル(chinazolinyl)、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾキサゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、またはフェノキサジニル、好ましくは上記の単環式または二環式複素環基のことである。
【0050】
典型的には、ArおよびArは、フェニル;1−もしくは2−ナフチルのようなナフチル;3−もしくは4−ビフェニルのようなビフェニル;9−フェナントリルのようなフェナントリル;または2−もしくは9−フルオレニルなどのフルオレニルであり、例えば、ArおよびArは、フェニルまたはナフチル、典型的にはフェニルである。
【0051】
ArおよびArは、非置換であってもよいか、あるいは、例えばC〜C12アルキル;C〜C12アルコキシ;フッ素、塩素、もしくは臭素のようなハロゲン;シアノ;アミノ;N−モノ−もしくはN,N−ジ−(C〜C12アルキル)アミノ;フェニルアミノ、N,N−ジ−フェニルアミノ、ナフチルアミノ、またはN,N−ジ−ナフチルアミノで置換されていてもよく、ここで、フェニルまたはナフチル基は、例えばC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、またはハロゲンでさらに置換されていてもよい。典型的な置換基は、C〜C12アルキル、例えば、C〜Cアルキル;C〜C12アルコキシ、例えば、C〜Cアルキル;およびハロゲンである。
【0052】
10およびR11は、同一または異なっていてもよく、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヒドロキシルで置換されていてもよいC〜C25アルキル基、C〜Cアルキルで置換されていてもよいアリル基、シクロアルキル基、C〜C−アルキル、ハロゲン、ニトロ、またはシアノで置換されていてもよいフェニルにより1回または2回縮合していてもよいシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基、ケトンまたはアルデヒド基、エステル基、カルバモイル基、ケトン基、シリル基、シロキサニル基から選択される。
【0053】
10およびR11は、典型的には、非置換であるか、またはフッ素、塩素、臭素、もしくはヒドロキシルで置換されているC〜C25アルキルである。
【0054】
典型的には、R117およびR118は、C〜C25アルキル;あるいは、非置換であるか、またはC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはハロゲンでフェニル環において置換されているベンジルである。
【0055】
Yがアゾ染料から誘導される場合、そのような染料は下記を含む:
【0056】
【化10】

【0057】
[式中、
およびBは、互いに独立して、フェニル、ナフチル、または複素環(heterocylic)基であり、いずれも、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、ハロゲン、または−N(R13)R14、−N(R13)(R14)R15、もしくは−OR13で示される基で置換されていてもよく、ここで、R13、R14、およびR15は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、またはフェニルであり、フェニル基は、BおよびBに関して上記に示す置換基のうち1つでさらに置換されていてもよい]。
【0058】
典型的な複素環基は、イミダゾール、およびピリダジン基である。
【0059】
2個以上のY基が存在する場合、各Y基は、発色団の異なるクラスから誘導するか、または、異なる置換基を担持することにより発色団の同一の一般的クラスから誘導することができる。典型的には、2個以上のYが存在する場合、すべてのY基は同一であるか、または同一の発色団のクラスから誘導される。
【0060】
式(I)に係る化合物において、任意の数のR基は−(CH)n−X−(Y)z基でありうる(ここで、nは上記定義の通りであり、zは1または1/2であり、2つ以上のzが存在する場合、各zは独立して選択される)。例えば、−(CH)n−X−(Y)zと同等のR基の数は、0〜7の任意の数でありうる。すなわち、Rのいずれも−(CH)n−X−(Y)zと同等でなくてもよく、あるいは、1〜7の任意の数のR基が−(CH)n−X−(Y)z基と同等であってもよい。一般に、−(CH)n−X−(Y)zと同等のR基の数は、0、1、2、または3のいずれか、典型的には0または1である。
【0061】
1個または複数のR基が、zが1/2である−(CH)n−X−(Y)zである場合、式Iで示される化合物において、特にmが2である場合、一連のPOSS基が−(CH)n−X−(Y)−X−(CH)n−基を介して結合している可能性が生じる。この場合、上記定義のすべてのX基が同一である必要はない。一連のPOSS基を含むそのような化合物は、−(CH)n−X−(Y)zと同等のR基の数に応じて、直鎖状または分岐状であることができる。
【0062】
着色剤がコロイダルシリカに共有結合している、欧州特許第0504541.7号の染料担持ナノ粒子とは対照的に、本発明は、定義された構造のシルセスキオキサンコアに着色剤を結合させる。シルセスキオキサンコアは、アルキル鎖などの有機置換基も担持し、本発明のシルセスキオキサン着色剤は、多くの有機溶媒および基材に可溶性である。
【0063】
また、本発明は、少量のシルセスキオキサン、例えば、存在するシルセスキオキサン基の10%未満が、シルセスキオキサンコアの調製の結果であるさらなるシラン基またはシロキシ基を含む化合物を包含する。例えば、式(I)のR基は、シルセスキオキサンの調製における副反応の結果である、シラン基もしくはシロキシ基、または当該基の鎖を含んでいてもよい。さらに少量のシルセスキオキサン基が、二量体またはオリゴマーシルセスキオキサン基を形成するようなR基を含むことが期待される。一般に、これらの少量成分から誘導される生成物は、本発明の蛍光着色剤の有効性には著しい影響を与えないであろう。
【0064】
本発明の蛍光着色剤は、適切に官能化されたシルセスキオキサンおよび発色団誘導体が関与する公知の反応を介して調製される。例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、尿素結合、チオエーテル結合、またはチオエステル結合を調製する公知の方法を、所望のシルセスキオキサンと発色団とを結合させるために容易に使用できる。例えば:
【0065】
【化11】

【0066】
他の有用な結合形成反応は、例えば、米国特許出願公開第2005/0123760号、該明細書中の参考文献、および欧州特許第0504541.7号に記載されているが、調製の正確な性質は、本発明の重要な特徴ではなく、したがって、本明細書中の実施例に限定されない。
【0067】
本発明の蛍光着色剤は、顔料および染料が遭遇する任意の用途において使用可能であり、着色剤の蛍光が、セキュリティマーキングまたはバイオアッセイにおいて有用な機能を提供するか、または、特に所望の色もしくは効果を付与する用途において当然価値がある。
【0068】
一般に、着色剤は、それ自体公知の方法で、(a)例えばポリマーを原液着色(mass color)するために;(b)塗料、塗料系、コーティング組成物、紙色、印刷色、インクジェット用途および筆記目的、ならびに、例えばドライコピー機システムおよびレーザープリンタ用の電子写真技術を含むインクの調製用に;(c)特別の間違えようのない色印象が達成されるべきであるセキュリティマーキング目的、例えば小切手、小切手保証カード、紙幣、クーポン、文書、身元証明書などの目的に;(d)特定の色合いが達成されるべきであり、特に、明るい色合いが望ましい、顔料および染料などの着色剤に対する添加剤として;(e)蛍光を介した物体の機械認識、例えば、プラスチック、文字と数字の印刷物、またはバーコードの選別(例として再利用を含む)のための物体の機械認識用に該物体をマーキングするために;(f)多数の表示、通知、およびマーキング目的の受動型表示素子、例えば、受動型表示素子、掲示、および、交通信号灯などの交通標識、安全設備の製造用に;(g)固体状態の蛍光によりマーキングするために;(h)装飾および芸術目的で;(i)酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム(「ストーンウッド」を含む)、ケイ酸塩、粘土鉱物、カルシウム、石膏、もしくはセメントを含有する表面、例えばコーティングまたはプラスター表面などの無機基材を変性するために;(j)光学集光系において、蛍光太陽集熱器において(Nachr. Chem. Tech. Lab. 1980, 28, 716を参照)、蛍光活性化ディスプレイにおいて(Elektronik 1977, 26, 6を参照)、プラスチックの調製用の光誘導重合、例えば半導体回路の製造における材料の試験、集積半導体部品の微細構造の分析のために使用される冷光源において、光導電体において、写真プロセスにおいて、励起が電子、イオン、または紫外線により行われるディスプレイ、照明、または画像変換システム、例えば蛍光ディスプレイ、ブラウン管、または蛍光ランプにおいて、顔料をそのまま、または他の半導体との組み合わせで、例えばエピタキシの形態で含む集積半導体回路の一部として、発光イムノアッセイまたは他の発光検出プロセスにおける化学発光システム、例えば化学発光フラッシュライトにおいて、色素レーザー中の、特定の視覚的色印象が達成されるべき標識および他の物体をマーキングするための標識塗料、好ましくは、レーザ光を生成するための蛍光色素として、光記録媒体として、ならびに、Qスイッチとして;(k)非線形光学部品において、光の周波数を変換する、例えば、短波光を長波可視光に変換するか、またはレーザ光の周波数を2倍または3倍にするために;(l)新規着色剤が、基質に共有結合するか、または、水素結合もしくは疎水性相互作用(吸着)など、副原子価を介して結合することができる、例えば生化学、医学、科学技術、および自然科学におけるトレーサー目的で;ならびに(m)高感度検出プロセス(Z. Analyt. Chem. 1985, 320, 361を参照)において、特に、シンチレーター中の蛍光着色剤として使用される。
【0069】
例えば、本発明の化合物は、特にプラスチックおよびセキュリティ印刷インク中の、コーティング、プラスチック、およびインク用途の高蛍光着色剤として使用される。他の使用は、生物医学分野、特に医用イメージングにおいてである。
【0070】
本発明の蛍光着色剤は、多様な溶媒およびポリマーに可溶性であるか、または容易かつ均等に分散するかのいずれかであり、通常遭遇する染料よりも長く老化または風化条件下でその色を保持する、均等に着色された系を与える。これらの着色された系の蛍光は、同様の発色団を含む公知の顔料により着色された系よりもはるかに強く、この蛍光はまた、通常遭遇する蛍光染料よりも長く老化または風化条件下で保持される。
【0071】
本発明の蛍光着色剤の使用は、最終用途にそれを組み入れる様式によって限定されるわけではない。
【0072】
本蛍光着色剤を含む任意の組成物において、安定剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミンまたは他の光安定剤、亜リン酸塩または亜ホスホン酸塩、ベンゾフラン−2−オン、チオ相乗剤、ポリアミド安定剤、金属ステアリン酸塩;ならびに他の蛍光材料、加工助剤、溶媒など、核剤、充填剤、補強剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤(dispersents)、蛍光増白剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤などを含む、他の通常遭遇する成分を見出すことが当然予測されるであろう。
【0073】
ある用途で使用される本発明の蛍光着色剤の量は、所望の最終用途および効果に応じて大きく異なるであろう。典型的な添加レベルは、実務者に周知であるか、または文献中に容易に見出されるものであり、本蛍光着色剤を用いて調合する者にとって適切な出発点となるであろう。
【0074】
したがって、本発明の蛍光着色剤は、最終用途に応じてほぼあらゆる濃度で使用できる。
【0075】
ほぼあらゆる量の式Iで示される新規化合物を高分子量有機材料に組み入れることができるが、典型的には、新規蛍光着色剤は、着色される高分子量有機材料に対して0.01〜30重量%、例えば0.1〜10重量%の量で使用される。
【0076】
例えば、本発明の蛍光着色剤は、プラスチック材料、溶融液もしくは紡糸液、塗料系、コーティング材料、または印刷インクの形態でありうる高分子量有機化合物を着色するために使用される。最終用途の要件によっては、式Iで示される新規化合物をトナーとして、または配合物の形態で使用することが好都合であることがある。
【0077】
式Iで示される新規化合物は、架橋していてもよい熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、および弾性ポリマーの原液着色(mass color)に特に好適である。これらのポリマーは、例えば、成形品、押出加工品、フィルム、シートなど、ならびに、塗料系、粉末コーティング組成物、印刷インク、および他のコーティング材料の一部の形態でありうる。
【0078】
高分子量有機材料の式Iで示される新規化合物による着色は、式Iで示される化合物を単独で、またはマスターバッチの形態で直接組み入れることにより好都合に行われる。例えば、ロールミル、混合装置、または混練装置を用いて基材に新規着色剤を組み入れる標準的な組み入れ技術を使用する。次に、それ自体公知の方法、例えば、カレンダー加工、成形、押出、被覆、注型、溶融混合、ブレンド、溶解、射出成形などにより、着色された材料を所望の最終形態にする。
【0079】
塗料系、コーティング材料、および印刷インクを着色するには、式Iで示される新規化合物を、充填剤、他の顔料、乾燥剤、または可塑剤などの任意的な添加剤と共に、有機溶媒、水、または粉末などの好適な担体中に微分散または溶解させる。この手順は、個々の成分を単独で、またはいくつかの成分を共に担体に分散または溶解させ、その後にすべての成分を混合するというものでありうる。
【0080】
本発明の化合物の他の用途は、当業者には明らかであり、本発明は、本明細書に開示されている用途に限定されるわけではない。
【0081】
実施例
下記の実施例は、限定的であることを事実上意図することなく、本発明を例示する役割を果たす。部および百分率は、特記なき限り重量による。
【0082】
H,(300.08)スペクトルは、VARIAN MODEL GEMINI−300上で得る。化学シフトはppm(δ)で報告する。MSスペクトルは、ネガティブモードで操作される、337nmN2レーザーおよび飛行時間分析器を備えたPERSPECTIVE BIOSYSTEM VOYAGER DE−STRマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(MALDI−TOF)上で得る。サンプルは、いかなるマトリックスも用いずにプレート上に直接載せる。蛍光発光スペクトルは、直角に設定したFLUOROLOG−3分光蛍光光度計を用いて記録する。CIE L色測定値は、BYK GARDNER TCS分光光度計モデル8870を用いて収集する。色の変化はΔEとして報告し、値が大きいほど色の変化も大きい。
【0083】
アクリル樹脂中の顔料分散体は、顔料0.25g、アクリル樹脂25g(ROHM & HAAS PARALOID B−66)、キシレン6g、およびガラスビーズ粉砕媒体35gの混合物を、4オンスのガラスジャー中でSKANDEX分散機を用いて120分間加工することにより調製する。
【0084】
石英円板は、HEADWAY RESEARCH PHOTO−RESIST SPINNERモデル#EC1−1DT−R790を用いて、顔料分散体0.5グラムでスピンコートし、円板は、180rpmで6秒間回転させ、60℃で5秒間強制乾燥させる。
【0085】
実施例1
【0086】
【化12】

【0087】
アミノプロピルイソブチルPOSS(0.88g、1mmol)、N−(2’−エチルヘキシル)−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸モノイミド一無水物(0.5g、1mmol)、およびイミダゾール(40g)の混合物を140℃に加熱し、窒素下で4時間撹拌する。反応混合物を75℃に冷却し、エタノール150mlを加える。溶液を氷水500ml上に注ぎ、デカントした後、4000rpmで5分間遠心分離する。残渣をエタノールで洗浄し、生成物を75℃で終夜減圧乾燥させて、生成物0.88グラムを赤色固体として得る。
【表1】

【0088】
こうして得られる生成物が、最大620〜680nmの強い固体蛍光を示す一方で、出発N−(2’−エチルヘキシル)−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸モノイミド一無水物は、約670nmを中心とする非常に弱い固体蛍光を示す。
【0089】
実施例2
【0090】
【化13】

【0091】
アミノプロピルイソブチルPOSS(9.61g、11mmol)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(1.96g、5mmol)、およびイミダゾール(90g)を使用する以外は実施例1の手順を繰り返して、生成物7.6グラムを赤色固体として得る。
【表2】

【0092】
こうして得られる生成物が、最大620〜680nmの強い固体蛍光を示す一方で、出発3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物は、約670nmを中心とする非常に弱い固体蛍光を示す。
【0093】
実施例3
アミノプロピルイソブチルPOSS(9.61g、11mmol)、3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(1.96g、5mmol)、およびN−メチルピロリドン(05mL)を使用する以外は実施例2の手順を繰り返して、生成物9グラムを赤色固体として得る。
【表3】

【0094】
こうして得られる生成物が、最大580〜660nmの強い固体蛍光を示す一方で、出発3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物は、約670nmを中心とする非常に弱い固体蛍光を示す。
【0095】
実施例4
【0096】
【化14】

【0097】
オクタ(アミノプロピル)POSS4.7g(4mmol)、ペリレンテトラカルボン酸二無水物12.6g(32mmol)、およびNMP75mlを実施例1の手順に従って処理して、ポリマー15.57グラムを赤色固体として得る。
【0098】
こうして得られる生成物は、最大630〜680nmの強い固体蛍光を示す。
【0099】
実施例5
オクタ(アミノプロピル)POSS4.7g(4mmol)およびペリレンテトラカルボン酸二無水物6.3g(16mmol)を用いて実施例4の手順を繰り返して、ポリマー9.41グラムを赤色固体として得る。
【0100】
こうして得られる生成物は、最大630〜680nmの強い固体蛍光を示す。
【0101】
実施例6
オクタ(アミノプロピル)POSS4.1g(3.5mmol)およびペリレンテトラカルボン酸二無水物2.7g(7mmol)を用いて実施例4の手順を繰り返して、強い固体蛍光を示す生成物5.9グラムを得る。
【0102】
実施例7
【0103】
【化15】

【0104】
アミノエチルアミノプロピルPOSS(10.09g、11.1mmol)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(1.98g、5.0mmol)、およびN−メチルピロリジドン(pyrrolididone)(100ml)の混合物を140℃に加熱し、窒素下で5時間撹拌する。反応混合物を冷却し、N−メチルピロリジドンを減圧下で除去し、エタノール250mlを加える。得られた混合物を30分間撹拌し、4000rpmで5分間遠心分離に供し、固体残渣を75℃で4時間乾燥させて生成物を赤色粉末(8.90g)として得る。
【0105】
生成物が、最大620〜680nmの固体蛍光を示した一方で、出発3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物は、約670nmを中心とする非常に弱い固体蛍光を示す。
【0106】
実施例8
アミノエチルアミノプロピルPOSS(11.08g、12.07mmol)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(2.04g、5.20mmol)、およびイミダゾール(90g)を使用する以外は実施例7の手順を繰り返し、冷却後にエタノール150mlを加え、生成物を濾過により単離して、75℃での乾燥後に赤色粉末(8.57g)を得る。生成物は、最大650および680nmの非常に弱い固体蛍光を示す。
【0107】
実施例9
【0108】
【化16】

【0109】
実施例7からの生成物(3.71g、1.68mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.93g、7.61mmol)、塩化ベンゾイル(0.53g、3.77mmol)、および塩化メチレン20mlの混合物を室温で終夜撹拌する。次に、混合物を水30mlで2回洗浄し、塩化マグネシウムで乾燥させ、蒸発させて生成物2.41gを得る。
【0110】
こうして得られる生成物が、最大674nmの強い固体蛍光を示す一方で、出発原料は、620〜680nmのより弱い固体蛍光を示す。
【0111】
実施例10
【0112】
【化17】

【0113】
ナフタル酸無水物(2.03g、10.24mmol)、アミノプロピルイソブチルPOSS(8.75g、10.00mmol)、およびN−メチルピロリジドン100mlの混合物を140℃で4時間撹拌後、冷却し、溶媒を減圧除去する。残渣を0.5%NaOH水溶液25mlで洗浄し、濾過し、収集した固体をエタノールでリンスし、風乾させて、アクリル樹脂分散体中で弱い蛍光を示す生成物9.83gを得る。
【0114】
実施例11
【0115】
【化18】

【0116】
4−クロロ−ナフタル酸無水物(2.33g、10.01mmol)、アミノプロピルイソブチルPOSS(8.77g、10.02mmol)、およびN−メチル−ピロリジドン100mlを使用する以外は実施例10の手順を繰り返して、生成物10.30gを、アクリル樹脂分散体中で蛍光を示す固体として得る。
【0117】
実施例12
【0118】
【化19】

【0119】
ナフタル酸無水物(6.37g、32.14mmol)、オクタ−アンモニウムPOSS(4.72g、4.02mmol)、N−メチル−ピロリジドン75ml、およびイミダゾール25gを使用する以外は実施例10の手順を繰り返して、アクリル樹脂分散体中で目立った蛍光を示さない固体生成物8.07gを得る。
【0120】
実施例13
【0121】
【化20】

【0122】
4−クロロ−ナフタル酸無水物(7.50g、32.24mmol)、オクタ−アンモニウムPOSS(4.70g、4.00mmol)、N−メチル−ピロリジドン75ml、およびイミダゾール25gを使用する以外は実施例10の手順を繰り返して、アクリル樹脂分散体中で蛍光を示す固体生成物4.10gを得る。
【0123】
実施例14
【0124】
【化21】

【0125】
アミノプロピルイソブチルPOSS(8.75g、10mmol)、1,6,7,12−テトラクロロ−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(2.2g、4.15mmol)、およびプロピオン酸(150g)の混合物を140℃に加熱し、窒素下で16時間撹拌する。反応混合物を30℃に冷却し、固体生成物を濾取し、メタノールで洗浄し、75℃で終夜減圧乾燥させて、生成物7.3グラムを紫色固体として得る。
【表4】

【0126】
実施例15
【0127】
【化22】

【0128】
工程a
【0129】
【化23】

【0130】
n−ブチルアミン(9.8g、134mmol)、1,6,7,12−テトラクロロ−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(17.7g、33.4mmol)、およびプロピオン酸(200g)の混合物を140℃に加熱し、窒素下で8時間撹拌する。反応混合物を30℃に冷却し、固体生成物を濾取し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、次いで水で洗浄し、100℃で終夜減圧乾燥させて、生成物19.6グラムを紫色固体として得る。
【表5】

【0131】
工程b
【0132】
【化24】

【0133】
工程aからの1,6,7,12−テトラクロロ−N,N’−ジ(n−ブチル)−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(9.6g、15.0mmol)(Wurthner, et. al., J. Org. Chem., 67, 9, 3037 (2002))、4−tert−ブチルフェノール(9.9g、66.0mmol)、炭酸カリウム(6.3g、45.0mmol)、およびN−メチル−2−ピロリジン(150g)の混合物を140℃に加熱し、窒素下で8時間撹拌する。反応混合物を30℃に冷却し、固体生成物を濾取し、水、次いでメタノールで洗浄し、100℃で終夜減圧乾燥させて、生成物13.3グラムを紫色固体として得る。
【表6】

【0134】
工程c
【0135】
【化25】

【0136】
工程bからの1,6,7,12−テトラ(4’−t−ブチルフェノキシ)−N,N’−ジ(n−ブチル)−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(7.0g、6.4mmol)、水酸化カリウム(85%)(12.0g、182.0mmol)、およびイソプロピルアルコール(200g)の混合物を80℃に加熱し、窒素下で16時間撹拌する(Wurthner, Chem. Eur. J., 6, 21, 3871 (2000))。反応混合物を40℃に冷却し、氷酢酸(200gm)、次いで希塩酸(6%、400ml)を加える。固体生成物を濾取し、水洗し、100℃で終夜減圧乾燥させて、生成物5.5グラムを紫色固体として得る。
【表7】

【0137】
工程d
【0138】
【化26】

【0139】
アミノプロピルイソブチルPOSS(4.5g、5mmol)および工程cからの1,6,7,12−テトラ(4’−t−ブチルフェノキシ)−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(1.7g、2mmol)のN−メチル−2−ピロリジン(70g)中混合物を130℃に加熱し、窒素下で6時間撹拌する。反応混合物を30℃に冷却し、固体生成物を濾取し、メタノールで洗浄し、75℃で終夜減圧乾燥させて、生成物3.9グラムを赤紫色固体として得る。
【表8】

【0140】
実施例16
【0141】
【化27】

【0142】
工程a
【0143】
【化28】

【0144】
1,7−ジブロモ−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(5.0g、9.1mmol)、4−tert−ブチルフェノール(7.0g、46.6mmol)、炭酸カリウム(4.2g、30.4mmol)、およびN−メチル−2−ピロリジン(150g)の混合物を120℃に加熱し、窒素下で6時間撹拌する(米国特許第6,326,494号)。反応混合物を50℃に冷却する。固体生成物を濾取し、熱N−メチル−2−ピロリジン(150g)で洗浄する。次に、固体を希塩酸(6%、400gm)に懸濁させ、2時間かけて75℃に加熱し、濾取し、水洗し、終夜減圧乾燥させて、生成物4.8グラムを赤紫色固体として得る。
【表9】

【0145】
工程b
【0146】
【化29】

【0147】
アミノプロピルイソブチルPOSS(4.5g、5mmol)、1,7−ジ(4’−t−ブチルフェノキシ)−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(1.38g、2mmol)のN−メチル−2−ピロリジン(50g)中混合物を120℃に加熱し、窒素下で6時間撹拌する。反応混合物を30℃に冷却し、固体生成物を濾取し、メタノールで洗浄し、75℃で終夜減圧乾燥させて、生成物3.4グラムを赤紫色固体として得る。
【表10】

【0148】
実施例17
石英円板を、実施例11からの生成物(円板A)、実施例13からの生成物(円板B)、市販着色剤AURORA PINK GT−11(円板C1)、および市販着色剤CORONA MAGENTA GT−21(円板C2)を顔料として用いて上記のように調製したアクリル樹脂中の顔料分散体でそれぞれコートする。すべての乾燥サンプルは蛍光を示す。
【0149】
実施例18
実施例17からのコートされた石英円板を、ATLAS WEATHEROMETERモデルCi4000中で、内側および外側のホウケイ酸ガラスフィルター、ならびに0.55ワット/m2の一定の放射照度を有する単一のキセノンランプを用いて露光する。円板をランプの周りを200時間回転させた後、除去する。円板AおよびBは、約520nmの蛍光を示し、円板C1およびC2は、約540nmの円板AおよびBより強い蛍光を示す。
【0150】
実施例19
実施例2からの生成物、市販着色剤AURORA PINK GT−11、および市販着色剤CORONA MAGENTA GT−21を、それぞれ個々のポリ塩化ビニル(PVC)フィルムに0.2重量%で組み入れる。各フィルムは蛍光を示す。
【0151】
次に、フィルムを、実施例15と同様にATLAS WEATHEROMETER中で200時間露光した後、除去する。市販着色剤を含むフィルムは、約550nmの減少した蛍光を示し、実施例2からの生成物を含むフィルムは、約530および570nmの、市販着色剤を含むフィルムより強い蛍光を示す。
【0152】
実施例20
石英円板を、実施例2からの生成物(円板D)、からの生成物、市販着色剤AURORA PINK GT−11(円板C1)、および市販着色剤CORONA MAGENTA GT−21(円板C2)を顔料として用いて上記のように調製したアクリル樹脂中の顔料分散体でそれぞれコートする。乾燥サンプルの色測定値を記録する。すべての乾燥サンプルは蛍光を示す。円板を、実施例15と同様にATLAS WEATHEROMETER中で200時間露光した後、除去し、色および蛍光を測定する。
【0153】
円板Dは、円板C1またはC2のいずれかより小さいΔE(小さい色変化)を示す。
【0154】
円板C1およびC2は、約540nmの減少した蛍光を示し、円板Dは、約530nmの円板C1およびC2より強い蛍光を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化30】


[式中、
mは、1または2であり;
nは、1〜18であり;
Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、−CO−、または−COO−であり;
各Rは、C〜C25アルキル、−O−および−S−から選択される1個または複数の基により1回または複数回割り込まれているC〜C25アルキル、C〜C24アルケニル、−O−および−S−から選択される1個または複数の基により1回または複数回割り込まれているC〜C24アルケニル、C〜Cフェニルアルキル、−(CH)n−X−(Y)z基(ここで、nは上記定義の通りであり、zは1または1/2であり、2つ以上のzが存在する場合、各zは独立して選択される)、フェニル、ならびに、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルオキシ、およびハロゲンから選択される1個または複数の基で1〜5回置換されているフェニルからなる群から独立して選択され;
Yは、アゾ染料、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン、ナフタルイミド、ジケトピロロピロール、ペリレン、キナクリドン、ベンゾキサンテン、ジフェニルマレイミド、アセトアセトアミド、ペリレンモノイミド、ペリレン、およびフタルイミドからなる群から選択される発色団の基であり、ここで、2個以上のYが存在する場合、各Yは他から独立して選択される]で示される蛍光着色剤。
【請求項2】
nが、1、2、3、または4であり、各Rが、C〜C25アルキル、C〜C24アルケニル、C〜Cフェニルアルキル、フェニル、ならびに、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルオキシ、およびハロゲンから選択される1個または複数の基で1〜5回置換されているフェニルからなる群から独立して選択される、請求項1記載の蛍光着色剤。
【請求項3】
nが、1、2、3、または4であり、
Xが、直接結合、−NH−、または−CO−であり、
各Rが、C〜Cアルキルおよび−(CH)n−X−(Y)z基からなる群から独立して選択され、
Yが、キサンテン発色団、ペリレン発色団、ベンゾキサンテン発色団、ナフタルイミド(naphthalimid)発色団、キナクリドン発色団、およびジケトピロロピロール発色団からなる群から選択される、
請求項1記載の蛍光着色剤。
【請求項4】
nが3であり、各Rが、t−ブチル、シクロヘキシル、および−(CH)n−X−(Y)z基からなる群から独立して選択される、請求項3記載の蛍光着色剤。
【請求項5】
Yが、ペリレン発色団、ベンゾキサンテン発色団、ナフタルイミド発色団、およびジケトピロロピロール発色団からなる群から選択される、請求項1記載の蛍光着色剤。
【請求項6】
Yが、ペリレン発色団、ベンゾキサンテン発色団、ナフタルイミド発色団、およびジケトピロロピロール発色団からなる群から選択される、請求項2記載の蛍光着色剤。
【請求項7】
1〜7の任意の数のR基が、−(CH)n−X−(Y)z基である、請求項1記載の蛍光着色剤。
【請求項8】
zが1である、請求項7記載の蛍光着色剤。
【請求項9】
少なくとも1つのzが1/2である、請求項7記載の蛍光着色剤。
【請求項10】
mが2である、請求項9記載の蛍光着色剤。
【請求項11】
R基のうち1つが、−(CH)n−X−(Y)z基である、請求項1記載の蛍光着色剤。
【請求項12】
(a)有機材料、および
(b)請求項1記載の蛍光着色剤
を含む組成物。
【請求項13】
コーティング組成物であり、成分(a)が有機膜形成結合剤である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
成分(a)が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、弾性ポリマー、または架橋熱可塑性ポリマー、架橋熱硬化性ポリマー、架橋弾性ポリマーである、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
請求項1記載の蛍光着色剤を含むインク組成物。

【公表番号】特表2010−500430(P2010−500430A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523239(P2009−523239)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057740
【国際公開番号】WO2008/017593
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】