Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
新規子実体の栽培方法
説明

新規子実体の栽培方法

【課題】プレオロウタス属に属する菌株を使用し、菌傘直径/菌柄長さ比が2.0以上である子実体の栽培方法を提供する。
【解決手段】エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、交配菌を培養して選抜を行うことで得られた菌株の種菌を接種し培養の終了した菌床表面を掻き取り後、栽培容器を倒立状態にし、環境温度14〜16℃、炭酸ガス濃度1,600〜3,000ppm、昼間の時間帯のみ100〜800Lxの光を照射し、環境湿度60〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後、容器を正立状態に戻し、照度1,000Lx以上の連続的または間欠的な照射条件下に変更し、環境温度10〜25℃、炭酸ガス濃度1,500ppm以下、環境湿度75〜95%の条件下で生育管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規子実体の栽培方法に関し、詳しくは、プレオロウタス属に属する新規子実体の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許出願人は、エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、交配菌を培養して選抜を行うことを特徴とする新規菌株の作出方法、この方法で作出されたプレオロウタス属菌株であるKX−EN2001菌株(FERM P−20576)、上記の新規菌株を使用した新規子実体の栽培方法について提案した(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−53928号公報
【0003】
上記の発明によれば、エリンギ(Pleurotus eryngii)と白霊茸(Pleurotus nebrodensis)とを交配させて作出した新規な菌株を使用することにより、エリンギ(Pleurotus eryngii)と同様の人工栽培方法で新規な菌株の栽培を行うことが出来るため、白霊茸(Pleurotus nebrodensis)のような多段階の変温管理工程を必要とすることなく、プレオロウタス属に属する新規子実体を容易に栽培することが出来る。
【0004】
新規子実体の栽培方法は、培養管理を行った後に培養の終了した菌床の表面を掻き取り、倒立状態で環境温度15〜16℃、炭酸ガス濃度800〜2,000ppm、昼間の時間帯のみ400Lx程度の光を照射し、環境湿度70〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後に容器を正立状態に戻して、環境温度を16〜18℃、環境湿度を80〜90%に変更して、芽出し管理と同様の照度環境下で生育管理を行う方法である。そして、斯かる方法により、菌傘直径8〜10cmで菌柄長さ6〜8cm(菌傘直径/菌柄長さ比1.0〜1.7)の形態的特性を有する新規子実体が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特開2007−53928号公報にて提案されたプレオロウタス属に属するする菌株を使用し、菌傘直径/菌柄長さ比2.0以上の新規子実体の栽培方法を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記の栽培方法の条件を変更することにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に到った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、新規子実体の栽培方法てあって、エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、交配菌を培養して選抜を行うことによって得られた菌株を使用してその培養を行うに当たり、培養管理を行った後に培養の終了した菌床表面を掻き取り、倒立状態において、環境温度14〜16℃、炭酸ガス濃度1,600〜3,000ppm、昼間の時間帯のみ100〜800Lxの光を照射し、環境湿度60〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後、容器を正立状態に戻し、照度1,000Lx以上の連続的または間欠的な照射条件下に変更し、環境温度10〜25℃、炭酸ガス濃度1,500ppm以下、環境湿度75〜95%の条件下で生育管理を行うことを特徴とする新規子実体の栽培方法に存する。
【0008】
そして、本発明の第2の要旨は、プレオロウタス属に属し、菌傘直径/菌柄長さ比が2.0以上であることを特徴とする新規子実体に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プレオロウタス属に属し、菌傘直径/菌柄長さ比2.0以上の新規子実体を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<菌株の作出方法>
本発明で使用する菌株は、エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、オガコと栄養源とを混合して水分調整したエリンギ栽培用培養基で交配菌を培養して選抜を行うことによって得られる。斯かる菌株の作出方法は、基本的には前述の公開公報に記載された方法と同様である。
【0011】
交配に使用するエリンギ「Pleurotus eryngii(DC.:Fr.)Quel.」と白霊茸「Pleurotus nebrodensis(Inzenga)Quel.」は、その組み合わせであれば、特に親株が限定されるものではない。通常、交配は次に様に行われる。
【0012】
先ず、落下法により、エリンギ子実体と白霊茸の傘をペトリー皿に入れて静置し、得られた胞子紋に滅菌水を加えて胞子を懸濁させる。血球計算板を使用し、胞子懸濁液中の胞子数を計数後、適当な胞子濃度に希釈し、PDA(ポテト・デキストロース寒天)平板培地に接種する。常温で7〜10日間培養した後、発芽した1次菌糸を分離し、各々の1次菌糸株を得る。次いで、PDA平板培地に両1次菌糸株を接種し、常温で7〜30日間培養し、総当りの交配を行う。交配の有無は、光学顕微鏡下でクランプ結合を確認することにより行う。
【0013】
交配菌の選抜は、適当な培養基を使用して行う。培養基としては、エリンギ栽培の可能な培養基であれば何れの培養基であってもよい。一般的には木粉培養基が使用され、好ましくはエリンギ栽培用培養基、すなわち、オガコと栄養源とを混合して水分調整したエリンギ栽培用培養基が使用される。培養基の調整に使用されるオガコとしては、針葉樹オガコが好適であるが、広葉樹オガコも使用することが出来る。また、3ヶ月以上堆積した針葉樹オガコが好適であるが、新鮮な針葉樹オガコも使用することが出来る。オガコと共にコーンコブ粉砕物やコットンハル等の代替培地基材を使用することも出来る。その場合、オガコ:コーンコブ粉砕物の容積比は、通常10:0〜0:10、好ましくは8:2程度とされる。一方、栄養源としては、米糠、フスマ、大麦糠、トウモロコシ糠などの穀類糠が好適に使用される。穀類糠は、出来る限り新鮮なものが好ましい。培養基総重量に対し、栄養源の使用割合は、通常0〜30重量%、好ましくは12〜16重量%(850cc1ビン当たり70〜100g)の範囲とされる。木粉培養基の含水率は、通常55〜75重量%、好ましくは64〜68重量%の範囲とされる。
【0014】
上記の木粉培養基による培養(選抜)は、二段階以上に分け、木粉培地適応性を有する交配菌を選抜し、木粉培地に順応性を有する交配菌について更に選抜を行うことが出来る。この場合、第1段目の選抜と第2段目の選抜とで使用する培養基の組成は異ならせることが出来、第1段目の選抜の培養基には栄養源の配合を省略することも出来る。また、第2段目の選抜は、第1段目の選抜の培養基で製造した菌床を種菌として使用して行われる。そして、最終選抜は、培養の終了した菌床の表面を約15mmの深さに掻き取り、倒立状態で環境温度15〜16℃、炭酸ガス濃度800〜2,000ppm、昼間の時間帯のみ400Lx程度の光を照射し、環境湿度70〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後に容器を正立状態に戻し、環境温度を16〜18℃、環境湿度を80〜90%に変更し、芽出し管理と同様の照度環境下で生育管理を行うという、一般的なエリンギの栽培管理で行う。
【0015】
<菌株>
上記の方法で作出した菌株はKX−EN2001と命名されている。このKX−EN2001株は、プレオロウタス属に属する菌株であり、平成17年6月29日から、独立行政法人産業技術総合研究所に17産生寄第88号(FERM P−20576)として寄託されている。
【0016】
<新規子実体の栽培方法>
本発明に係る新規子実体の栽培方法は、栽培容器にオガコと栄養源とを混合して水分調整した培養基を充填し、培養基を加熱殺菌した後、前期で得られた菌株の種菌を接種し、芽出室に搬入し、芽出しを行ない、次いで、原基の生育を行なう方法である。
【0017】
上記の培養基としては、前述のエリンギ栽培用培養基の他、一般的なブナシメジ栽培用培養基などの他の培養基を使用することが出来る。栽培管理は、ポリプロピレン製栽培瓶(850cc)に正味重量で530〜540gの培養基を充填し、培養基の中央部に直径が約15mmで底部に到達する接種孔を設けて施栓し、常法に従って高圧殺菌釜中で殺菌処理を行った後、クリーンルーム内で無菌的に冷却して、プレオロウタス属に属する菌株(KX‐EN2001)を接種し、培養管理を開始する。
【0018】
培養管理は、温度15〜25℃、好ましくは20℃、湿度55〜75%、好ましくは65%、炭酸ガス濃度5,000ppm以下、好ましくは1,000〜3,000ppmの環境下で30〜60日間、好ましくは40日間行う。
【0019】
次いで、本発明においては、培養管理を行った後に培養の終了した菌床表面を掻き取り、倒立状態において、環境温度14〜16℃、炭酸ガス濃度1,600〜3,000ppm(好ましくは800〜2,000ppm)、昼間の時間帯のみ100〜800Lx(好ましくは300〜400Lx)の光を照射し、環境湿度60〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後、容器を正立状態に戻し、照度1,000Lx以上(好ましくは1,500〜2,000Lx)の連続的または間欠的な照射条件下に変更し、環境温度10〜25℃(好ましくは18〜20℃)、炭酸ガス濃度1,500ppm以下(好ましくは800〜1,000ppm)、環境湿度75〜95%(好ましくは80〜90%)の条件下で生育管理を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明の新規子実体の形態的特性は次の通りである。すなわち、子実体は散生、菌傘の大きさは6〜10cm、円形または不正形で丸ないし漏斗形、傘色は淡黄白色ないし灰黄色、表面は平滑で艶があり、筋状の紋様を有する。肉は白色かつ厚く緻密である。ヒダは淡灰黄色、密度は密生で、菌柄への付き方は強い垂生である。菌柄は中心ないし偏心生、太さは3〜5cm、長さ3〜5cm、菌傘直径/菌柄長さ比は2.0以上(上限は通常3.5、好ましくは3.0、更に好ましくは2.5)、色は白色、形は下太、肉質は白色、中実で非常に硬い。胞子は楕円ないし紡錘形、表面は平滑、大きさは5〜6×7〜9μmで、胞子紋は白色である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1:
先ず、スギオガコとコーンコブミールを容積比で8:2の割合で混合し、表1に示す成分を同表に示す割合で添加し、含水率を約65重量%に調節して培養基を調製した。菌糸活性剤としては(株)ライフライト社製の商品「ライフライト」を使用した。
【0023】
【表1】

【0024】
そして、充填機を使用し、ポリプロピレン製栽培瓶(850cc)に正味重量で500〜540gの培養基を充填し、培養基の中央部に直径が約15mmで底部に到達する接種孔を設けて施栓した。
【0025】
次いで、常法に従って高圧殺菌釜中で殺菌して冷却した。冷却は、放冷時における戻り空気による再汚染を防止するため、クリーンルーム内で行った。その後、同クリーンルーム内で無菌的にプレオロウタス属に属する菌株(KX‐EN2001)を接種して培養を開始した。培養は温度20℃、湿度65%、炭酸ガス濃度約2,000ppmの環境下で40日間の培養管理を行った後、培地の表面も含めて約15mmの深さに菌掻き処理を行った。
【0026】
その後、倒立状態で直ちに、環境温度14〜16℃、炭酸ガス濃度が約2,000ppmの環境下で、昼間の時間帯のみ約300Lxの光を照射して、環境湿度70〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で保持しながら繰り返す、芽出し管理を行った。
【0027】
芽切り確認後は、容器を正立状態に戻した後、環境温度を18〜20℃、環境湿度を80〜90%に変更して、炭酸ガス濃度800〜1,500ppm、照度約1,500Lxの連続的光照射の環境下で生育管理を行った。そして、きのこは菌傘が平らになるまで生長させた段階で、1本づつ収穫を行った。収穫までの日数は15.5日(標準偏差値0.4)、1瓶当たりの収量は120.6g(24.2)、有効茎本数は3.6本(2.0)、子実体の個重は32.6g(10.8)であった。
【0028】
得られた子実体の形態的特性は次の通りである。すなわち、子実体は散生、菌傘の大きさは6〜10cm、円形または不正形で丸ないし漏斗形、傘色は淡黄白色ないし灰黄色、表面は平滑で艶があり、筋状の紋様を有する。肉は白色かつ厚く緻密である。ヒダは淡灰黄色、密度は密生で、菌柄への付き方は強い垂生である。菌柄は中心ないし偏心生、太さは3〜5cm、長さ3〜5cm、菌傘直径/菌柄長さ比は2〜2.5、色は白色、形は下太、肉質は白色、中実で非常に硬い。胞子は楕円ないし紡錘形、表面は平滑、大きさは5〜6×7〜9μmで、胞子紋は白色である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規子実体の栽培方法てあって、エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、交配菌を培養して選抜を行うことによって得られた菌株を使用してその培養を行うに当たり、培養管理を行った後に培養の終了した菌床表面を掻き取り、倒立状態において、環境温度14〜16℃、炭酸ガス濃度1,600〜3,000ppm、昼間の時間帯のみ100〜800Lxの光を照射し、環境湿度60〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後、容器を正立状態に戻し、照度1,000Lx以上の連続的または間欠的な照射条件下に変更し、環境温度10〜25℃、炭酸ガス濃度1,500ppm以下、環境湿度75〜95%の条件下で生育管理を行うことを特徴とする新規子実体の栽培方法。
【請求項2】
菌株としてプレオロウタス属菌株であるKX−EN2001菌株(FERM P−20576)を使用する請求項1に記載の新規子実体の栽培方法。
【請求項3】
プレオロウタス属に属し、菌傘直径/菌柄長さ比が2.0以上であることを特徴とする新規子実体。

【公開番号】特開2009−22218(P2009−22218A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189211(P2007−189211)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(591225039)株式会社キノックス (5)
【出願人】(507245928)有限会社秋田中央きのこセンター (1)
【Fターム(参考)】