新規完全ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体
新規の完全ヒト抗VAP−1抗体及びそれらの断片が開示される。抗VAP−1抗体をコードする核酸又はそれらの断片、並びに、抗VAP−1抗体の組換え発現のためのこれらの核酸が組み込まれている発現ベクター及び宿主細胞も提供される。前記抗体を含む薬学的組成物、及び、それらの治療的使用もまた開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト内皮細胞接合タンパク質VAP−1を認識する完全ヒトモノクローナル抗体をコードする核酸配列に関し、特に、VAP−1の機能的エピトープを認識するBTT−1023と呼ばれる完全ヒトモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中で使用される刊行物及び他の材料は、本発明の背景、特に、実施に関するさらなる詳細を提供する実施例を明らかにするために、引用により組み入れられる。
一般的に、全ての抗体は、2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖とにより構成される共通のY型構造を共有している。これらの4つのポリペプチドサブユニットは、2つの重鎖が連結され、軽鎖はジスルフィド結合によって各重鎖に結び付くように構築される。抗体を構成している各ポリペプチドは、可変領域及び定常領域により構成される。
【0003】
可変領域は、Y型抗体の腕に相当する部位に位置し、当該抗体の抗原結合特異性を決定する。この領域には、その抗原に対する抗体の結合に関与する短いアミノ酸配列が含まれる。これらの領域は、相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)と呼ばれる。可変領域の残りの部分は、全体としての抗原結合ポケットの立体構造に重要である。
抗体の定常領域は、重鎖の底部に位置し、特異的受容体との相互作用により免疫反応を活性化させる抗体の能力を決定する。これらの領域は一般的にはよく保存されており、その可変性は、5種類の基本的なイソフォームであるIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに限られる。
【0004】
血管接合タンパク質−1(VAP−1)は、血管内皮細胞上で発現される旧知ではない炎症誘導性の接合分子であり、当該血管接合タンパク質−1は、血管内皮細胞上で生理学的剪断(physiological shear)下での白血球の回転を媒介する。この役割において、それは、免疫監視機構の正常なプロセスの一部として、2次リンパ組織の高内皮細静脈(HEV)を介したリンパ球の再循環に寄与する。
しかしながら、炎症条件下では、VAP−1は、炎症組織への白血球の浸潤を促進し、それにより炎症応答に寄与し、それを維持する。この浸潤自体が、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬及び多くの自己免疫疾患のような慢性の炎症性疾患、並びに、他の炎症性疾患に悪影響を及ぼす可能性がある。他の状況では、心筋梗塞、脳卒中及び他の疾患によって生じる重度の組織損傷後の組織への大量の炎症誘発性細胞の浸潤が、これらの急性の炎症応答において見られる組織の破壊に寄与する。ブロッキング抗体を用いてVAP−1機能を妨げることによって炎症部位への細胞の浸潤を減少させることにより、炎症を消散し、これらの疾患の臨床症状を改善へと導く可能性がある。
【0005】
米国特許第5580780号(特許文献1)には、VAP−1を認識し、凍結切片アッセイにおいて扁桃腺のHEVに対するリンパ球の結合をブロックできるモノクローナル抗体(mAb)1B2が記載されている。MAb 1B2はマウスIgM抗体であり、これはVAP−1に特異的である。
【0006】
治療法としてマウスmAbを使用することは、ヒトの免疫系がマウス抗体を異物として認識し、それらを体から排除するためにヒト抗マウス抗体(HAMA)を産生するので、可能性は限られている。この免疫反応は、繰り返し投与する必要がある場合の長期治療におけるマウス抗体の使用に対する主要な制約である。病院でのマウス抗VAP−1抗体の使用は、免疫抑制剤で処置され、それによりHAMA反応の傾向が低い患者、及び、急性心筋梗塞又は急性呼吸促迫症候群における虚血再灌流障害のような抗体の1回だけの投与が適している処置レジュメに限定されなければならない。
治療にマウスIgM抗VAP−1抗体を使用することに関連する1つのさらなる欠点は、そのような抗体の好ましくないキネティクプロフィール(すなわち、短い半減期)であり、これにより、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬及び多くの他の疾患のような慢性病に対する使用は適さない。
【0007】
免疫原性が低いモノクローナル抗体を作製するいくつかの方法が当該分野で公知である。好ましいアプローチには抗体の「ヒト化」が含まれる。頻繁に使用される方法は、キメラmAb、ヒト化mAb又は完全ヒトmAbを作製することである。キメラmAbは、可変領域はマウスに由来するが、定常領域はヒト起源のものである抗体である。キメラ抗体において、通常、齧歯類抗体分子のおよそ70%は、特定の特異性と親和性を有している齧歯類の抗原結合部位を維持しつつ、対応するヒト配列と置き換えられる。ヒト化抗体は、可変領域はマウスに由来し得るが、ヒト抗体により類似するように変異させられており、ヒト起源の定常領域を含み得る抗体である。完全ヒト抗体は可変領域及び定常領域がそれぞれヒト起源のものである抗体である。
【0008】
国際特許公開WO03/093319号(特許文献2)には、対応するマウス抗体と比較して低い免疫原性を有する可能性があるキメラ抗VAP−1モノクローナル抗体BTT−1002が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5580780号
【特許文献2】国際特許公開WO03/093319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、BTT−1002は、キメラ抗体ではあるものの、オリジナルのマウス抗体に直接由来し、そして、当該オリジナルのマウス抗体から修飾されていない抗体の可変領域に対応するタンパク質配列を、なおも有する。この抗体は、ヒトに投与された場合には、なおも異物として認識され、免疫原性である可能性がある。また、この抗体の排出半減期や機能的特性のような薬理学的特性は、その免疫原性や、結果としてそれに対する抗体の産生により低下するかもしれない。
このように、低い免疫原性と改善された薬理学的特性とを有する完全ヒト抗VAP−1抗体が当該分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、新規の完全ヒト抗VAP−1抗体、そのような抗体の産生方法、及び、それらの抗体の使用に広く関係する。本発明は更に、上記抗VAP−1抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
本発明の1つの目的は、患者において免疫応答を誘発する可能性が低く、治療の目的に好ましい薬理学的プロフィールを有する、インビボでの診断及び/又は治療に使用される完全ヒトモノクローナル抗体を提供することである。
本発明の別の目的は、完全ヒト抗VAP−1抗体の重鎖及び軽鎖、又は、それらの断片を提供することである。
本発明の更なる目的は、完全ヒト抗VAP−1抗体をコードする核酸又はその断片、並びに、抗VAP−1抗体の組み換え発現のためのこれらの核酸が組み込まれている発現ベクター及び宿主細胞を提供することである。
本発明の別の実施形態は、組み換え産生法により本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体を産生するための方法に関する。
上記抗体を含む薬学的組成物及びその治療的使用もまた開示される。
以下では、本発明は添付の図面を参照して好ましい実施形態によって更に詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】抗VAP−1抗体8C10の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図1B】抗VAP−1抗体8C10の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図2A】抗VAP−1抗体8A4の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図2B】抗VAP−1抗体8A4の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図3A】抗VAP−1抗体3F10の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図3B】抗VAP−1抗体3F10の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図4A】抗VAP−1抗体5F12の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図4B】抗VAP−1抗体5F12の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図5A】抗VAP−1抗体4B3の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図5B】抗VAP−1抗体4B3の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図6A】コンセンサス配列を示している8C10、8A4、3F10、5F12及び4B3のVH重鎖の可変領域のタンパク質配列のアラインメントを示す図。
【図6B】コンセンサス配列を有するVH重鎖CDR1のアラインメントを示す図。
【図6C】コンセンサス配列を有するVH重鎖CDR2のアラインメントを示す図。
【図6D】コンセンサス配列を有するVH重鎖CDR3のアラインメントを示す図。
【図6E】コンセンサス配列を示している8C10、8A4、3F10、5F12、及び4B3のVL軽鎖の可変領域のタンパク質配列のアラインメントを示す図。
【図6F】コンセンサス配列を有するVL軽鎖CDR1のアラインメントを示す図。
【図6G】コンセンサス配列を有するVL軽鎖CDR2のアラインメントを示す図。
【図6H】コンセンサス配列を有するVL軽鎖CDR3のアラインメントを示す図。
【図7】コントロールの染色された細胞と比較して、BTT−1023で染色されたAx VAP−1細胞のFACS(蛍光活性化細胞選別法)分析により示される、細胞表面上にヒトVAP−1を発現するAx細胞に対する組換え完全ヒト抗体r8C10(BTT−1023)のVAP−1結合を説明する図。
【図8】インビトロでの白血球の移動に対するBTT−1023の影響を説明する図。当該図には、BTT−1023又はコントロール抗体で処理された内皮細胞単層から移動した末梢血単核細胞(PBMC)の数が示されている。なお、エラーバーは平均の標準誤差である。N=6。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ヒト血管接合タンパク質−1(VAP−1)を特異的に認識する、好ましくは、組み換えによって産生された、完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)に関する。本発明の完全ヒトモノクローナル抗体は、対応するヒト化抗体と比較して免疫原性が低く、多数の自己免疫疾患、炎症症状、結合組織、皮膚及び消化管、中枢神経系、並びに肺システムの疾患(慢性関節炎、炎症性腸疾患及び慢性皮膚疾患のような症状を含む)の処置に有用である。完全ヒトVAP−1抗体は更に、炎症部位のインビボ免疫シンチグラフィーイメージングを含む、インビトロ及びインビボでの診断的適用に有用である。
【0014】
「保存的配列変異体」との語は、本明細書中で使用される場合には、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体の結合特性を有意には変化させないヌクレオチド配列の修飾及びアミノ酸配列の修飾を含むように意図される。保存的ヌクレオチド配列変異体には、遺伝子コードの変性によって、及び、サイレント変異によって生じる変異体が含まれる。ヌクレオチドの置換、欠失及び付加もまた含まれる。保存的アミノ酸配列変異体には、当該分野で周知の類似アミノ酸でのアミノ酸置換によって生じる変異体が含まれる。上記と同様に、アミノ酸の欠失及び付加もまた含まれる。
【0015】
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドには、完全ヒト抗VAP−1抗体に対して、又は、以下に記載される上記抗体をコードするポリヌクレオチドに対して、少なくとも80%の同一性、又は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の同一性を有するものが含まれる。
本発明により、以下からなる群より選択される少なくとも1つのCDRコンセンサス配列を含む完全ヒト抗VAP−1抗体重鎖が提供される。
a)配列X1X2X3X4X5(配列番号1)の配列中、
X1は、S、NもしくはRのような、小さい極性アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり、
X2は、YもしくはSのような、芳香族アミノ酸又は小さい極性アミノ酸であり、
X3は、A、GもしくはWのような、小さい疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、
X4は、MもしくはIのような、疎水性アミノ酸であり、
X5は、HもしくはSのような、小さい極性アミノ酸又は塩基性アミノ酸である;
b)配列X1X2X3X4X5GX6X7X8X9X10X11DSVX12G(配列番号2)の配列中、
X1は、V、A、もしくはNのような、小さいアミノ酸であり、
X2は、IもしくはLのような、小さい脂肪族アミノ酸であり、
X3は、W、G、もしくはKのような、芳香族アミノ酸、塩基性アミノ酸、又は、疎水性アミノ酸であり、
X4は、F、Q、V、もしくはYのような、芳香族アミノ酸、脂肪族疎水性アミノ酸、又は、極性アミノ酸であり、
X5は、DもしくはGのような、小さい酸性アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X6は、S、G、もしくはIのような、小さいアミノ酸又は脂肪族アミノ酸であり、
X7は、N、E、もしくはYのような、極性アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X8は、E、K、もしくはTのような、極性アミノ酸であり、
X9は、Y、D、もしくはNのような、極性アミノ酸であり、
X10は、YもしくはHのような、芳香族アミノ酸であり、
X11は、VもしくはAのような、小さい疎水性アミノ酸であり、
X12は、KもしくはRのような、電荷を持つ塩基性アミノ酸である;及び、
c)配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12DY(配列番号3)の配列中、
X1は、DもしくはEのような、電荷を持つ酸性アミノ酸であり、
X2は、A、G、K、P、もしくはYのような、小さいアミノ酸又は疎水性アミノ酸であり、
X3は、W、F、G、もしくはNのような、芳香族アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X4は、FもしくはGのような、芳香族アミノ酸又は小さいアミノ酸であるか、あるいは、アミノ酸は存在せず、
X5は、GもしくはSのような、小さいアミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X6は、Gのような、小さいアミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X7は、Tのような、小さい極性アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X8は、Yのような、極性芳香族アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X9は、EもしくはFのような、電荷を持つ酸性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であるか、あるいはアミノ酸は存在せず、
X10は、F、G、S、V、もしくはWのような、芳香族アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X11は、YもしくはGのような、小さいアミノ酸又は極性芳香族アミノ酸であり、
X12は、FもしくはIのような、芳香族アミノ酸又は脂肪族疎水性アミノ酸である。
【0016】
より具体的には、本発明により、配列番号4〜8とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号9〜13とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号14〜18とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第3のCDRアミノ酸配列を含む、完全ヒト抗VAP−1抗体の重鎖が提供される。本発明の特定の抗体の重鎖には、配列番号19〜23とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される可変領域が含まれる。
【0017】
本発明によっては更に、以下からなる群より選択される少なくとも1つのCDRコンセンサス配列を含む完全ヒト抗VAP−1抗体の軽鎖が提供される:
a)配列RASQX1X2SX3X4X5LA(配列番号24)の配列中、
X1は、GもしくはSのような、小さいアミノ酸であり、
X2は、IもしくはVのような、脂肪族アミノ酸であり、
X3は、SもしくはRのような、小さい極性アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸であり、
X4は、Sのような、小さい極性アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X5は、A、F、W、もしくはYのような、小さい疎水性アミノ酸又は芳香族疎水性アミノ酸である;
b)配列X1ASX2X3X4X5(配列番号25)の配列中、
X1は、DもしくはGのような、小さい酸性アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X2は、SもしくはNのような、小さい極性アミノ酸であり、
X3は、LもしくはRのような、脂肪族アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸であり、
X4は、A、E、もしくはQのような、小さいアミノ酸又は極性アミノ酸であり、
X5は、S、T、もしくはRのような、極性アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸である;及び
c)配列QQX1X2X3X4PX5T(配列番号26)の配列中、
X1は、F、Y、もしくはRのような、芳香族アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸であり、
X2は、N、G、もしくはSのような、小さいアミノ酸であり、
X3は、SもしくはNのような、小さい極性アミノ酸であり、
X4は、Y、F、W、もしくはSのような、芳香族アミノ酸又は小さい極性アミノ酸であり、
X5は、LもしくはRのような、脂肪族アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸である。
【0018】
更に詳細には、本発明により、配列番号27〜31とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号32〜36とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号37〜41とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第3のCDRアミノ酸配列を含む、完全ヒト抗VAP−1抗体の軽鎖が提供される。本発明の特定の抗体の重鎖には、配列番号42〜46とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される可変領域が含まれる。
【0019】
本発明の更なる態様は、本発明の重鎖及び軽鎖を含む完全ヒト抗VAP−1抗体を提供することである。本発明の抗体分子及び鎖には、以下が含まれ得る:完全長の重鎖及び軽鎖を有している完全な天然の抗体分子;Fab、Fab’、F(ab’)2又はFv断片のような前記抗体分子の断片;軽鎖もしくは重鎖の単量体又は二量体;あるいは、単鎖抗体(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている単鎖Fv);あるいは、任意の他の組換え体又はCDR移植分子。
同様に、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、必要に応じて他の抗体ドメインと組み合わせ得る。
【0020】
CDR3ドメインが、CDR1及び/又はCDR2ドメイン(単数又は複数)から独立して、単独で同種抗原に対する抗体の結合特異性を決定できること、及び、共通するCDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有している複数の抗体を作製できると予想され得ることは、当該分野で周知である。
【0021】
従って、本開示により、ヒト又はヒト以外の動物に由来する抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該モノクローナル抗体は、VAP−1に特異的に結合できる。特定の態様においては、本開示により、マウス抗体又はラット抗体のような非ヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該モノクローナル抗体は、VAP−1に特異的に結合できる。いくつかの実施形態においては、非ヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むそのような本発明の抗体は、(a)対応する元の非ヒト抗体との結合に競合できる;(b)対応する元の非ヒト抗体の機能的特性を保持している;(c)対応する元(親)の非ヒト抗体と同じエピトープに結合する;及び/又は(d)対応する元の非ヒト抗体と類似する結合親和性を有する。
【0022】
他の態様においては、本開示により、ヒト抗体(例えば、ヒト以外の動物から得られたヒト抗体)由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該ヒト抗体は、VAP−1に特異的に結合することができる。他の態様においては、本開示により、例えば、ヒト以外の動物から得られたヒト抗体のような第1のヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該第1のヒト抗体は、VAP−1に特異的に結合することができ、そして、第1のヒト抗体由来のCDR3ドメインは、VAP−1に特異的に結合できる第2のヒト抗体を作製するために、VAP−1に対する結合特異性を持たないヒト抗体中のCDR3ドメインに取って代わる。いくつかの実施形態においては、上記第1のヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むそのような本発明の抗体は、(a)対応する元の第1のヒト抗体との結合に競合できる;(b)対応する元の第1のヒト抗体の機能的特性を保持している;(c)対応する元の第1のヒト抗体と同じエピトープに結合する;及び/又は、(d)対応する元の第1のヒト抗体と類似する結合親和性を有する。
【0023】
本開示の抗体は、抗VAP−1抗体の様々な物理的特性によって更に特徴付けられる。様々なアッセイが、これらの物理的特性に基づいて抗体の様々なクラスを検出及び/又は区別するために使用され得る。
いくつかの実施形態においては、本開示の抗体には、1つ以上のグリコシル化部位が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のいずれかに含まれ得る。可変領域中の1つ以上のグリコシル化部位の存在は、当該分野で周知であるように、抗原結合の変化のために、抗体の免疫原性の増大、又は、抗体の薬物動態の変化を生じ得る。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含むモチーフで起こることが知られている。可変領域のグリコシル化は、抗体を切断してFabを生じさせるGlycoblotアッセイ、その後の、過ヨウ素酸塩の酸化及びシッフ塩基の形成を測定するアッセイを使用するグリコシル化についての試験を使用して試験され得る。あるいは、可変領域のグリコシル化は、Fab由来の糖を単糖へと切断し、個々の糖含有量を分析するDionex社のライト(Light)クロマトグラフィー(Dionex−LC)を使用して試験され得る。いくつかの場合には、可変領域のグリコシル化を含まない抗VAP−1抗体を有することが好ましい。これは、可変領域中にはグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択すること、又は、当該分野で周知の標準的な技術を使用してグリコシル化モチーフの内部にある残基を変異させることのいずれかにより行われ得る。
【0024】
好ましい実施形態においては、本開示の抗体には、アスパラギン異性部位は含まれない。脱アミド化又はイソアスパラギン酸効果はそれぞれ、N−G配列又はD−G配列上で起こり得る。イソアスパラギン酸の生成は、イソアスパラギン酸を試験するために逆相HPLCを使用するiso−quantアッセイを使用して測定することができる。
個々の抗体は固有の等電点(pI)を有しているであろうが、通常、多くの抗体はpH6〜9.5までの間の範囲に入るであろう。IgG1抗体のpIは、通常はpH7〜9.5の範囲にあり、そしてIgG4抗体のpIは、通常はpH6〜8の範囲にある。この範囲外のpIを有している抗体も存在し得る。等電点は、当該分野で周知であるように、pH勾配を作成し、正確性向上のためにレーザー集束を利用することができるキャピラリー等電点電気泳動アッセイを使用して試験することができる。いくつかの場合には、正常範囲内にあるpI値を含む抗VAP−1抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有している抗体を選択すること、又は、当該分野で周知の標準的な技術を使用して電荷を有している表面残基を変異させることのいずれかによって達成できる。
【0025】
個々の抗体は、熱安定性の指標である融解温度を有するであろう。熱安定性が高ければ高いほど、インビボで、より高い全体的な抗体安定性を示す。抗体の融点は、示差走査熱量測定のような技術を使用して測定することができる。TM1は、抗体の最初のアンホールディング(変性、unfolding)の温度を示す。TM2は、抗体の完全なアンホールディングの温度を示す。一般的には、本開示の抗体のTM1は、60℃より高いことが好ましく、より好ましくは65℃より高く、更に好ましくは70℃より高い。あるいは、抗体の熱安定性は、当該分野で周知のように円偏光二色性を使用して測定され得る。
【0026】
好ましい実施形態においては、急速には分解しない抗体が選択される。抗VAP−1抗体の断片化は、当該分野でよく理解されているように、キャピラリー電気泳動(CE)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)を使用して測定され得る。
【0027】
別の好ましい実施形態では、最小凝集効果を有する抗体が選択される。凝集は望ましくない免疫応答及び/又は薬物動態特性の変化、もしくは、好ましくない薬物動態特性の誘発へとつながる可能性がある。一般的には、抗体には、25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下、そして、なおより好ましくは5%以下の凝集が許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び、単量体、二量体、三量体又は多量体を同定するための光散乱を含む、当該分野で周知のいくつかの技術によって測定され得る。
【0028】
本発明の抗体は、好ましくはIgG型の抗体であり、より好ましくはIgG4型の抗体である。しかしながら、IgG1、IgG2、IgG3、IgM及びIgEのような他の抗体アイソタイプも含まれる。
いくつかの実施形態においては、本発明の抗体には、本明細書中に記載される好ましい抗体のアミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が含まれ、ここでは、抗体は、本発明の抗VAP−1抗体の所望される機能的特性を保持している。
例えば、本発明により、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分が提供される。ここでは:(a)重鎖可変領域には、配列番号19〜23からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列が含まれる;(b)軽鎖可変領域には、配列番号42〜46からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列が含まれる;(c)当該抗体は、1×10−7M以下のKdでヒトVAP−1に結合する。
【0029】
他の実施形態においては、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、上記に示された配列に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有し得る。上記で示された配列のVH領域及びVL領域に対して高い(すなわち、80%以上の)相同性を有するVH領域及びVL領域を有する抗体は、配列番号19〜23及び42〜46をコードする核酸分子の変異を誘発(例えば、部位特異的変異誘発又はPCR媒介性変異誘発)し、その後、保持された機能ついて、コードされた変化抗体を試験することによって得ることができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、2つのアミノ酸配列間でのパーセント相同性は、2つの配列間でのパーセント同一性と同等である。2つの配列間でのパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数と各ギャップの長さとを考慮した、当該配列により共有される同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一である位置の数/位置の総数×100)である。各配列の比較と2つの配列間での同一性を示すパーセントの決定とは、当該分野で公知の標準的な方法を使用して達成され得る。
【0031】
いくつかの実施形態においては、本発明の抗体は、典型的には、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は、抗原依存性細胞傷害性のような抗体の機能的特性を1つ以上変化させるために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本発明の抗体は、抗体の機能的特性を1つ以上再び変化させるために、化学的に修飾され得る(例えば、1つ以上の化学的成分が抗体に付着され得る)か、又は、そのグリコシル化部位を変化させるように修飾され得る。
【0032】
例えば、Fc領域は、抗体がエフェクターリガンドに対して変化した親和性を有するが、元の抗体の抗原結合能力を保持するように、1つの異なるアミノ酸残基で置き換えることができるアミノ酸残基234位、235位、236位、237位、297位、318位、320位及び322位(Fc領域中の残基のナンバリングはKabatのEU指数のナンバリングである)から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を置き換えることによって変化されるかもしれない。親和性が変化したエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のCl成分であり得る。このアプローチは、例えば、米国特許第5,624,821号及び米国特許第5,648,260号に、更に詳細に記載されている。
【0033】
本発明によって意図される本明細書中の抗体の別の修飾はペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を長くするためにペグ化され得る。抗体をペグ化するためには、抗体又はその断片は、通常は、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性エステル又はアルデヒド誘導体のようなPEGと、1つ以上のPEG基が当該抗体又は抗体断片に付着した状態となる条件下で反応させられる。好ましくは、PEG化は、反応性PEG分子(もしくは同様の反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を通じて行われる。本明細書中で使用される場合は、「ポリエチレングリコール」との語は、モノ(Cl−ClO)アルコキシポリエチレングリコールもしくはアリールオキシポリエチレングリコール、又はポリエチレングリコールマレイミドのような、他のタンパク質へと誘導するために使用されているPEGの任意の形態を含むように意図されている。特定の実施形態においては、ペグ化される抗体はグリコシル化されていない抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は、当該分野で公知であり、本発明の抗体に適用できる。
【0034】
好ましい実施形態においては、本発明により、特異的な完全ヒト抗VAP−1抗体8C10、8A4、3F10、4B3及び5F12が提供される。他の好ましい実施形態においては、本発明により、組換え体8C10、8A4、3F10、4B3及び5F12のような組換え完全ヒト抗VAP−1抗体が提供される。組換え体r8C10(BTT−1023)の中では、重鎖は配列番号47に示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖は配列番号48に示されるアミノ酸配列からなる。
【0035】
【表1】
【0036】
完全ヒト抗VAP−1抗体は、好ましくは、本来のマウス免疫グロブリン遺伝子が不活化され、そして、ヒト免疫グロブリン遺伝子レパートリーの全体、又は、その一部で機能的に置き換えられたマウスを免疫化することによって調製される。そのようなマウスは、VAP−1抗原で免疫化され、その後、ヒト抗体を産生するハイブリドーマが、通常の手順を使用してマウスから生成される。その後、VAP−1抗原と反応するモノクローナル抗体を産生するクローニングされたハイブリドーマ細胞が同定され、精製された完全ヒトモノクローナル抗体を産生するために増殖される。
【0037】
ヒト抗体を生成するための別の方法には、動物抗体の特異性をヒト免疫グロブリンへと移すことが含まれる。例えば、マウスはVAP−1抗原で免疫化され、その後、抗体を産生するハイブリドーマが通常の手順を使用して当該マウスから生成される。次いで、VAP−1抗原と反応するモノクローナル抗体を産生するクローニングされたハイブリドーマ細胞が同定され、精製されたモノクローナル抗体を産生するために増殖される。抗体重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のcDNA配列が決定され、相補性決定領域(CDR)が同定される。重鎖及び軽鎖のCDRアミノ酸配列は、ヒト抗体の一致するCDRを置き換え、それにより、齧歯類抗VAP−1抗体の特異性をヒト抗体へと移すために使用される。得られる抗VAP−1抗体は、オリジナルのCDRアミノ酸配列は齧歯類に由来するが、同じアミノ酸配列をヒト由来の抗体で生じさせることができるという点で完全ヒト型であり、これは齧歯類に特異的であるとして正確に定義することはできない。
【0038】
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するためには、免疫化されたマウスに由来する脾細胞及び/又はリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株に融合させる。得られるハイブリドーマは、抗原特異的抗体の産生のためにスクリーニングされる。
【0039】
例えば、免疫化されたマウス由来の脾臓リンパ細胞の単細胞懸濁液を6分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に対して50%のPEGを用いて融合させることができる。細胞は、平底マイクロタイタープレート中におよそ2×105でプレートされ、続いて、20%の胎児Clone Serum、18%の「653」条件培地、5%のorigen(IGEN社製)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0.055mMの2−メルカプトエタノール、50単位/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、50mg/mlのゲンタマイシン及びIX HAT(Sigma社製;HATは融合の24時間後に添加される)を含む選択培地中で2週間インキュベートされる。
【0040】
およそ2週間後、細胞を、HATがHTで置き換えられた培地中で培養する。その後、個々のウェルを、ヒトモノクローナルIgM抗体及びIgG抗体についてELISAによってスクリーニングする。一旦、大量のハイブリドーマの増殖が起こると、培地は通常は10日〜14日後に観察される。抗体を分泌するハイブリドーマを再度プレートし、再びスクリーニングし、なおもヒトIgGについてポジティブであれば、モノクローナル抗体を限界稀釈によって少なくとも2回サブクローニングすることができる。その後、安定なサブクローンをインビトロで培養し、特性決定のために組織培養培地で少量の抗体を生じさせることができる。
【0041】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体の精製のための2リットルのスピナーフラスコの中で増殖させることができる。上清を濾過し、プロテインA−セファロース(Pharmacia社,Piscataway,NJ.)でのアフィニティークロマトグラフィーの前に濃縮することができる。溶離したIgGは、純度を保証するために、ゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによってチェックすることができる。緩衝溶液はPBSに交換することができ、その濃度は減衰係数1.43を使用してOD280で決定できる。当該モノクローナル抗体は、一定分量に分けられ、−80℃で保存され得る。
【0042】
完全ヒト抗体はまた、組換えファージの表面にヒト抗体タンパク質を提示及び産生するように遺伝子操作されたファージを使用するファージディスプレイライブラリーから産生させることもできる。任意の特定の標的に対して高い親和性と特異性とを有する単鎖抗体がスクリーニングによって選択され、その後、抗体配列が、組換え完全ヒト抗体を産生するためにファージから単離され得る。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当該分野で確立されている。
【0043】
本発明の完全ヒトモノクローナル抗体はまた、免疫化されるとヒト抗体応答を生じ得るようにヒトの免疫細胞が再構成されているSCIDマウスを使用して調製することもできる。そのようなマウスは、例えば、米国特許第5,476,996号及び同第5,698,767号に記載されている。
【0044】
所望される場合には、抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAを単離することができ、そして、発現ベクターに挿入されて組換え完全ヒト抗体を産生させるのに適した発現宿主にトランスフェクトされるDNA構築物を生じさせるために、任意の所望されるヒト定常領域、又は、修飾されたヒト定常領域をコードするDNAに融合させることができる。このように、本発明の抗体はまた、例えば、当該分野で周知であるように、組み換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマで産生させることもできる。
【0045】
例えば、抗体又はその抗体断片を発現させるためには、部分的又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング又はPCR増幅)によって得ることができ、当該DNAは、遺伝子が転写及び翻訳の制御配列に動作可能にリンクされるように発現ベクターに挿入することができる。本明細書中では、「動作可能にリンクされる」との語は、ベクター中の転写及び翻訳の制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節すべく意図されたそれらの機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中に連結されることを意味するように意図されている。発現ベクターと発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子は別のベクターに挿入することができ、また通常は、各遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。
【0046】
抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的な制限部位の連結、又は、制限部位が存在しない場合は平滑末端の連結)によって発現ベクターに挿入される。本明細書中に記載される抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、VHセグメントがベクター中の重鎖定常(CH)セグメント(単数又は複数)に動作可能に連結され、VKセグメントがベクター中の軽鎖定常(CL)セグメントに動作可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクター中にそれらを挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの完全長の抗体遺伝子を作製するために使用され得る。
【0047】
加えて、又は代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドであってよく、また、異種シグナルペプチド(すなわち、免疫グロブリン以外のタンパク質に由来するシグナルペプチド)であってもよい。
【0048】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞での抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保持する。「調節配列」との語は、当該分野で周知であるように、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、及び、他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むように意図される。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択や、所望されるタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得ることは当業者に認識されるであろう。
【0049】
哺乳動物宿主細胞での発現にとって好ましい調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーのような、哺乳動物細胞中で高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーター又はβ−グロビンプロモーターのような非ウイルス調節配列が使用される場合がある。なお更に、SV40初期プロモーター及び1型ヒトT細胞白血病ウイルスの長末端反復に由来する配列を含むSRαプロモーターシステムのような、異なるソースに由来する配列からなる調節エレメントが使用される場合もある。
【0050】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択マーカー遺伝子のような、更なる配列を保持する場合がある。当該分野で周知であるように、選択マーカー遺伝子は、その中にベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする。例えば、通常は、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートのような薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に対して付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞において使用される)及びneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。
【0051】
軽鎖及び重鎖の発現のためには、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクター(単数又は複数)が標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」との語の様々な形態は、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクションなど、を含むように意図される。原核生物宿主細胞及び真核生物宿主細胞のいずれにおいても本発明の抗体を発現させることは理論的には可能であるが、そのような真核生物細胞、特に哺乳動物細胞は、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体の構築及び分泌を行う可能性が原核生物細胞よりも高いと思われるので、真核生物細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が最も好ましい。抗体遺伝子の原核生物での発現は、活性な抗体の高収率な産生には効果が薄いと報告されている。
【0052】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(当該分野で公知のdhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されると、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現を可能にする十分な期間、又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地中への抗体の分泌を可能にする十分な期間、当該宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収できる。
【0053】
本発明の更なる態様は、配列番号49〜53とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のDNA配列、及び/又は、配列番号54〜58とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のDNA配列、及び/又は、配列番号59〜63とそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される第3のDNA配列を含む完全ヒト抗VAP−1抗体の重鎖可変領域をコードするDNA分子を提供することであり、上記DNA配列はそれぞれ、CDR領域1〜3をコードする。特定の態様に従うと、本発明により、重鎖可変領域をコードし、配列番号64〜68とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるDNA配列を含むDNA分子が提供される。
【0054】
本発明のなお更なる態様は、完全ヒト抗VAP−1抗体軽鎖可変領域をコードし、配列番号69〜73とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のDNA配列、及び/又は、配列番号74〜78とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のDNA配列、及び/又は、配列番号79〜83とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第3のDNA配列を含むDNA分子を提供することであり、上記DNA配列はそれぞれ、CDR領域1〜3をコードする。特定の態様に従うと、本発明により、重鎖可変領域をコードし、配列番号84〜88とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるDNA配列を含むDNA分子が提供される。
【0055】
一実施形態においては、本発明により、組換え体8C10、8A4、3F10、4B3及び5F12のような組換え完全ヒト抗VAP−1抗体をコードするDNA分子が提供される。組換え体r8C10(BTT−1023)においては、重鎖は配列番号89に示されるポリヌクレオチド配列を含むDNAによってコードされ、軽鎖は配列番号90に示されるポリヌクレオチド配列を含むDNAによってコードされる。
【0056】
【表2】
【0057】
本発明によっては更に、上記ヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。適切な発現ベクターとしては、哺乳動物宿主細胞でのタンパク質の発現及び分泌に重要なエレメントを含むベクターが挙げられる。当該ベクターには、ヒト重鎖定常領域もしくは軽鎖定常領域、又は、その両方をコードするDNAが含まれ得る。同じベクターが、重鎖及び軽鎖の両方の発現に使用され得るか、あるいは、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域のいずれかを含む異なるベクターが使用され得る。
【0058】
本発明の一実施形態においては、発現ベクターには、FcγRI結合を減少させ、抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を低下させるために、米国特許第5,624,821号に記載されているようにアミノ酸235位のロイシンをアラニンで置換することによって修飾されたヒトIgG4の重鎖定常領域が含まれる。Fc領域中の残基のナンバリングは、KabatのEU指数のナンバリングである。
【0059】
本発明によってはなお更に、本発明の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクターシステムが、完全ヒト抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列の発現に使用され得る。細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli))及び他の微生物系が、具体的には、Fab及びF(ab’)2断片のような抗体断片、特に、Fv断片及び単鎖抗体断片(例えば、単鎖Fv’s)の発現に使用され得る。真核生物(例えば、植物、酵母又は哺乳動物)宿主細胞発現システム、あるいは、トランスジェニック植物及びトランスジェニック動物が、完全な抗体分子を含むより大きな抗体産物の産生に、及び/又は、グリコシル化された生成物が必要である場合に使用され得る。適切な哺乳動物宿主細胞としては、以上の説明から明らかなように、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞や、骨髄腫細胞株、又は、ハイブリドーマ細胞株が挙げられる。好ましい宿主細胞は、CHO細胞である。
【0060】
本発明の更なる態様は、適切なプロモーター及び分泌シグナルの制御下で本発明の完全ヒト抗体重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列を含む発現ベクターを用いて、宿主細胞をトランスフェクトする工程と、個々の鎖が発現されるような条件下で上記宿主細胞を増殖させる工程と、培養物から上記の発現及び構築がなされた完全ヒト抗VAP−1抗体、又は、その生物学的に活性な誘導体を単離する工程とを含むプロセスによって、組換え完全ヒト抗VAP−1抗体を産生するための方法を提供することである。ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション方法、及び培養方法は当該分野で周知である。
【0061】
本発明によっては更に、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、有効成分として本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体とを含む薬学的組成物が提供される。本発明の組成物には、アンタゴナイズが必要な患者においてVAP−1の生物学的リガンドに対する患者の本来のVAP−1の結合、及び、白血球上に提示されたVAP−1リガンドに対して特異的な患者の本来のVAP−1結合に(完全に又は部分的に)アンタゴナイズするために十分な量の本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体が含まれる。
【0062】
本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体の投与量及び投与のためのレジュメは、炎症関連疾患の処置の臨床分野の当業者によって容易に決定され得る。一般的には、完全ヒト抗VAP−1抗体処置の投与量は、以下のような考慮事項によって変わるであろう:処置される患者の年齢、性別、及び全体的な健康状態;存在する場合には現在行われている処置の種類;処置の頻度と所望される効果の性質;組織損傷の程度;症状の持続期間;並びに、個々の医師によって調整される他の変数。所望される用量は、所望される結果を得るために1回以上のアプリケーションにおいて投与することができる。本発明の薬学的組成物は、単位投薬形態で提供され得る。
【0063】
本発明の薬学的組成物は、投与のための任意の適切な薬理学的担体で投与することができる。これらは、ヒト又は動物患者のVAPに媒介される病状の状況に予防的、緩和的、阻止的、又は、治癒的効果がある任意の形態で投与することができる。非経口投与及び局所投与のための本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体の薬学的組成物としては、滅菌の水性又は非水性溶媒、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、及び注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、水−アルコール溶液(生理食塩水を含む)、及び、緩衝化された医療用非経口ビヒクル(塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース溶液、デキストロース及び塩化ナトリウムの溶液、ラクトース含有リンガー溶液、又は、固定油を含む)が挙げられる。静脈内投与用のビヒクルとしては、体液、栄養補給剤、電解質補給剤(リンガーデキストロースをベースにしたもの)などが挙げられる。
【0064】
本発明の水性組成物には、標的のpH範囲次第で、ナトリウム及びカリウムのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩のような適切な緩衝化剤、又は、グリシン緩衝液が含まれ得る。浸透圧調整剤として塩化ナトリウムの使用も有用である。組成物には、安定化剤又は保存剤のような他の賦形剤が含まれ得る。有用な安定化賦形剤としては、界面活性剤(ポリソルベート20及びポリソルベート80、ポロキサマー407)、ポリマー(ポリエチレングリコール、ポビドン)、炭水化物(スクロース、マンニトール、グルコース、ラクトース)、アルコール(ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール)、適切なタンパク質(アルブミン)、適切なアミノ酸(グリシン、グルタミン酸)、脂肪酸(エタノールアミン)、抗酸化物質(アスコルビン酸、システインなど)、キレート剤(EDTA塩、ヒスチジン、アスパラギン酸)又は金属イオン(Ca、Ni、Mg、Mn)が挙げられる。有用な保存剤には、ベンジルアルコール、クロロブタノール(chlorbutanol)、塩化ベンズアルコニウム、及び、場合によってはパラベンがある。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、要求に応じて再構成される濃縮形態又は粉末の形態で提供され得る。そのような場合には、上記注射/注入用賦形剤用の溶液のための粉末の処方物が使用され得る。凍結乾燥の場合には、ポリマー(ポビドン、ポリエチレングリコール、デキストラン)、糖(スクロース、グルコース、ラクトース)、アミノ酸(グリシン、アルギニン、グルタミン酸)、及び、アルブミンを含む特定の抗凍結剤が好ましい。再構成のための溶液がパッケージングに加えられる場合には、これは、例えば、注射用の純水、又は、塩化ナトリウム溶液、又はデキストロースもしくはグルコース溶液から構成され得る。
【0066】
本発明の組成物は、炎症反応を起こす任意の症状の診断又は処置に適しており、当該炎症反応では、VAP−1の接合が、血液から炎症部位への白血球の移動及び浸潤を媒介することに関与する。従って、本発明の組成物は、反応性関節障害、感染後関節障害、炎症性多発性関節障害、全身性結合組織病、炎症性脊椎障害、筋炎、滑膜炎、ライター病、血清反応陽性関節リウマチ、他の関節リウマチ、関節外リウマチ、乾癬性及び腸疾患性関節炎、若年性関節炎、不特定関節炎(unspecified arthritis)、結節性多発動脈炎及び関連する症状、他の壊死性脈管障害、皮膚多発性筋炎、全身性硬化症、結合組織の全身性病変を伴う他の疾患、強直性脊椎炎、並びに他の炎症性脊椎障害のような、炎症性関節炎及び結合組織の疾患の診断又は処置に有用である。加えて、クローン病及び潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、水疱性疾患、皮膚炎、丘疹鱗屑性障害、紅斑、硬化性萎縮性苔癬、外陰部萎縮性苔癬(craurosis vulvae)、円板状エリテマトーデス、モルフェア、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、不特定接触性皮膚炎(unspecified contact dermatitis)、乾癬、多形性紅斑のような皮膚病、多発性硬化症、炎症性ニューロパシー、炎症性筋疾患、急性散在性脳脊髄炎、中枢神経系の血管炎、シェーグレン症候群、糖尿病、全身性エリテマトーデス、喘息及び炎症性肝疾患、グレーヴス病及び甲状腺炎、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎を含む眼の炎症、アルコール性肝炎、同種移植、異種移植、糸球体腎炎のような他の炎症性疾患、並びに、心筋梗塞及び脳卒中後の再灌流傷害及び急性の炎症症状が、本発明の組成物による診断又は処置に適切であり得る。
【0067】
治療的に有用な本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、所望される作用部位に対する抗体の標的化を提供する他の薬剤に対して、化学的操作及び遺伝子操作のいずれかによって結合させられ得る。あるいは、抗体に対して更なる特性、特に、VAP−1結合によって媒介される有害な作用の緩和を促進する抗体の能力を高める特性の増強又は提供のために、化学的操作及び遺伝子操作のいずれかによって、他の化合物が本発明の抗体に対して結合させられ得る。
【0068】
本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、検出可能な抗体を提供するために、化学的操作及び遺伝子操作のいずれかによって標識され得る。そのように標識された抗体は、ヒトの炎症部位の画像化に、特に、炎症部位のインビボでの免疫シンチグラフィーイメージングに有用なツールであろう。このタイプの画像化は、より煩雑で費用のかかる現在使用されている白血球画像化法にとって代わる可能性がある。画像化の目的のためには、抗体断片の使用が抗炎症治療に対する完全な抗体のアプローチよりも好ましく、完全ヒト抗体に由来する断片は、それらのキメラ又はマウス等価物よりも更に安全であるはずである。
【0069】
別の態様においては、本発明は、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体を有効なレベルで、体内の炎症の処置が必要なヒト患者に投与することによる、ヒトの体内の炎症をインビボで弱めるか又は処置する方法に関する。「処置」との語、又は、「処置すること」との語は、VAP−1の接着事象によって媒介される疾患の予防、緩和、阻止又は治癒が含まれ得る目的のために、被験体への完全ヒト抗VAP−1抗体の投与を含むように意図される。本発明の方法の対象である特定の抗VAP−1抗体は、精製された本発明の組換え完全ヒト抗VAP−1抗体である。
【0070】
完全ヒト抗VAP−1抗体の「有効レベル」は、VAP−1によって媒介される事象の有害な影響が改善される最小レベルを意味する。本発明の抗体の有効量は、白血球浸潤が有害であるか又は望ましくない炎症部位への白血球浸潤を阻害するために、白血球の内皮結合をブロックするか又は部分的にブロックするために十分な量である。完全ヒト抗VAP−1抗体の投与量及び投与レジュメは、炎症関連疾患の処置の臨床分野の当業者によって容易に決定され得る。好ましくは、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、0.01〜20mg/kgの範囲、より好ましくは0.1〜10mg/kgの範囲、最も好ましくは0.5〜5mg/kgの範囲の用量で、1週間に1回から3ヶ月に1回の間の範囲の間隔で血管内に提供される。あるいは、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、0.1〜20mg/kgの範囲、より好ましくは0.2〜10mg/kgの範囲、最も好ましくは0.5〜5mg/kgの範囲の用量で、1週間に1回から3ヶ月に1回の間の範囲の間隔で皮下に提供される。
【0071】
以下の実施例は、本発明の更なる詳細をより明確にするために提供されるが、本発明の範囲を限定するようには意図されない。更なる適用及び使用は、当業者(すなわち、炎症性疾患及びその処置に精通している医師)に容易に理解される。
【実施例】
【0072】
〔実施例1〕
〔ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマの単離〕
ヒト免疫グロブリントランスジェニックマウス株(HuMAb Mouse(登録商標);Medarex Inc.社製)を、ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞を作成するために使用した。HuMAb mouse(登録商標)には、再配置されたヒト重鎖(μ及びγ)とκ軽鎖との免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座が、内因性のμ鎖及びκ鎖遺伝子座を不活化させる標的変異とともに含まれる(例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859を参照のこと)。従って、マウスは、マウスIgM又はκの低い発現を示し、そして免疫化に反応して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を受けて、高親和性のヒトIgGκモノクローナル抗体を生じる。
【0073】
HuMabマウスの調製及び使用、並びに、そのようなマウスが保持するゲノム修飾は、例えば、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;及び同第5,770,429号(全て、Lonberg and Kay);Suraniらの米国特許第5,545,807号;PCT公開番号WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884及びWO99/45962(全て、Lonberg and Kay);並びに、KormanらのPCT公開番号WO01/14424に記載されている。
【0074】
組換えヒトVAP−1(rhVAP-1)で免疫化されると、このトランスジェニックマウスはヒトVAP−1に特異的なヒトIgG抗体を産生する。
免疫化の計画は以下のとおりであった:マウスを、完全フロイントアジュバントと混合した、ヒトVAP−1 cDNAを含み、かつ、ヒトVAP−1を発現する発現プラスミド(Smithら,J.Exp.Med.(1998)188:17-27)で、続いて、不完全フロイントアジュバントと混合したrhVAP−1又はRibiアジュバントと混合したrhVAP−1により、安定にトランスフェクトされたCHO細胞から精製されたrhVAP−1の複数回の腹腔内注射及び皮下注射によって免疫化した。免疫化したマウス由来の血清試料を、固定したrhVAP−1を用いた抗体捕捉ELISA、及び、ヒトVAP−1 cDNAを含み、ヒトVAP−1を発現する発現プラスミドで安定にトランスフェクトされたCHO細胞を用いた蛍光微量アッセイ技術(FMAT:Fluorometric Microvolume Assay Technology)による免疫状態のモニタリングのために分析した。rhVAP−1の最後のブースト注射を、脾臓摘出前に静脈内及び腹腔内に投与した。
【0075】
ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマは、P3x63Ag8.653骨髄腫細胞(ATCC CRL 1580)を、fusionogenとしてポリエチレングリコール(PEG)を用いて上記のように免疫化したマウスの脾細胞と融合させることによって得られた。ハイブリドーマ上清を、最初に、κ軽鎖を持つヒトIgG抗体の存在についてELISAによってスクリーニングした。その後、rhVAP−1についてはELISAによって、また、ヒトVAP−1 cDNAを含む発現プラスミドで安定にトランスフェクトされたCHO細胞の表面上に発現されたVAP−1に対する結合についてはFMATによって、ヒトIgG陽性細胞をスクリーニングした。5つのヒト抗VAP−1 IgG1ハイブリドーマクローン、すなわち、5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10を選択した。
【0076】
〔実施例2〕
〔完全ヒト抗体5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10のVAP−1結合特性〕
時間分解免疫蛍光アッセイを、rhVAP−1に対する5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10の結合を試験するために定量的に使用した。マイクロタイタープレートをrhVAP−1でコーティングし、その後、ウシ血清アルブミン溶液でブロックした。続いて、2〜4320ng/mlの間の抗体量を加えてrhVAP−1に結合させ、結合した抗体を、ユーロピウム結合マウス抗ヒト抗体(PerkinElmer Inc.社製)によって検出した。時間分解蛍光(Victor3 multilabel counter,PerkinElmer Inc.社製)を615nmで測定することによって、標識を検出した。蛍光カウント数は、その標的に結合した抗体の量と直接の相関関係がある。その後、試料のデータをリファレンスの標準曲線と比較して分析した。データは、5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10がrhVAP−1に結合することを示しており、その親和性(Kd)を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
〔実施例3〕
〔完全ヒト抗体5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10の可変領域のcDNAの調製、クローニング及び配列決定〕
組換え抗体を構築するために、実施例1で得られた抗体に由来するヒト重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードするcDNAを単離し、配列分析のためのプラスミドベクターにクローニングした。
【0079】
ヒト免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のcDNAクローンを、以下の方法で、抗VAP−1を発現するハイブリドーマ細胞5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10から得た。全RNAを、Qiagen社製RNeasyキットを使用して、5×106個のハイブリドーマ細胞から調整した。VL cDNA及びVH cDNAを、RNAの逆転写、その後のBD Biosciences Clontech社製「SMART RACE cDNA増幅キット」及び高性能な「Advantage−HF 2 PCRキット」を使用した「cDNA末端の迅速増幅(RACE:rapid amplification of cDNA ends)」手順によって調製した。その後、PCR増幅産物を精製し、当該PCR産物をベクターpCR4−TOPO TA(Invitrogen社製)にクローニングし、大腸菌株TOP10(Invitrogen社製)に形質転換した。5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10のそれぞれのVL及びVHのプラスミドクローンについてのミニプレップDNAの配列が決定され、そのヌクレオチド配列及び推定される対応するタンパク質配列を、図1〜6に示す。
【0080】
〔実施例4〕
〔組換え体r8C10 mAbを発現させるための哺乳類発現ベクターの構築〕
8C10可変領域を、CHO細胞中で機能的組換え体r8C10抗体(BTT−1023と命名)を産生させるために、以下に記載するように、適切な重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む適切な哺乳類発現ベクターに挿入した。
【0081】
抗体のFc領域が免疫応答を指示する抗体/抗原複合体の能力を決定することは、公知である。その目的は、血管内皮に対する白血球の結合をブロックし、エフェクター機能を回復させることのない治療用抗体を産生することであった。従って、米国特許第5624821号に記載されているように、アミノ酸235位のロイシンをアラニンで置換することにより、FcγRI結合を減少させ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を低下させるように修飾されたヒトIgG4の重鎖定常領域を、発現ベクター中に使用した。
【0082】
8C10 VL cDNA及びVH cDNAを、5’末端に最適なKozakコンセンサス配列と適切なクローニング部位とを含むように、PCR Supermix(Invitrogen社製)を使用して増幅させた。正方向PCRプライマーと逆方向PCRプライマーとを、クローニングのための適切な制限部位を有するように設計した。天然のVLシグナル配列及びVHシグナル配列をそれぞれ含むPCR産物を精製し、228位のセリンからプロリンへの変異及び235位のロイシンからアラニンへの変異を含み、ヒトκ軽鎖定常領域及びヒトγ4重鎖を保持し、pICO−g4PA(VAP1.8C10)と呼ばれるプラスミドベクターに、当該PCR産物をクローニングしてプラスミドを得て、その後、当該プラスミドを大腸菌TOP10細胞に形質転換した。当該プラスミドのVL領域及びVH領域の配列を、クローニングしたPCR産物の完全性を確認するために決定した。
【0083】
5’末端にHindIIIクローニング部位及び最適なKozakコンセンサス配列を含み、3’末端にEcoRIクローニング部位を含むように、鋳型としてのpICO−g4PA(VAP1.8C10)プラスミドとPCR Supermixとを利用して、8C10軽鎖をPCRによって増幅させた。
天然の8C10軽鎖シグナル配列を含むPCR産物を制限酵素HindIII及び制限酵素EcoRIで切断し、精製し、Lonza Biologics社から入手した発現ベクターpEE12.4のHindIII部位及びEcoRI部位にクローニングして、プラスミド2116を作製した。当該2116プラスミドをDH5α Max Efficiency(Invitrogen Inc.社製)コンピテント大腸菌セルに形質転換した。
【0084】
5’末端にHindIIIクローニング部位及び最適なKozakコンセンサス配列を含み、3’末端にEcoRIクローニング部位を含むように、鋳型としてのpICO−g4PA(VAP1.8C10)プラスミド及びPCR Supermixを利用して、8C10重鎖をPCRによって増幅させた。
天然の8C10重鎖シグナル配列を含むPCR産物を、HindIII及びEcoRIで切断した。8C10重鎖含有断片を精製し、そしてLonza Biologics社から入手したLonzaベクターpEE6.4のHindIII部位及びEcoRI部位にクローニングして、プラスミド2117を作製した。当該2117プラスミドをDH5α Max Efficiencyコンピテントセルに形質転換した。
【0085】
プラスミド2116及びプラスミド2117を制限酵素SalI及び制限酵素NotIで切断し、それぞれの切断物に由来する最長の断片をT4 DNAリガーゼを使用して連結させて、プラスミド2118[2118−pEE12.4−VAP1(8C10)]を得た。プラスミド2118をDH5a Max efficiencyコンピテントセルに形質転換した。重鎖及び軽鎖の全体をコードするDNAの配列を、当該配列の正確性及び完全性を確認するために決定した。
【0086】
〔実施例5〕
〔CHO細胞での組換え完全ヒト抗体BTT−1023の発現〕
完全ヒト抗体BTT−1023を、以下のようにしてCHO細胞から生じさせた。
2118−pEE12.4−VAP1(8C10)プラスミドDNAを制限酵素PvuIで直鎖状にした。当該DNAを、エレクトロポレーションによって、Lonza Biologics社から入手したCHOK1SV細胞にトランスフェクトした。
その後、当該細胞を50μL/wellで、既知組成(CD)CHO(カタログ番号#04−0119,Gibco Invitrogen Inc.)感染後培地(L−グルタミン非含有CD CHO+1×GS(グルタミン合成酵素)補助剤+2.16mg/Lのチミジン)における96wellプレート(2.5×103細胞/well)にプレートした。
【0087】
次いで24時間後、プレートに、150μL/wellのCD CHO選択培地(L−グルタミン非含有CD CHO+1×GS補助剤+2.16mg/Lのチミジン+66.6μMのMSX(メチオニンスルホキシミン)又は133.3μMのMSX)を加え、最終的に全体的なMSX濃度を50μM又は100μMとした。MSX耐性コロニーによる抗体産生のレベルを、ヒトIgGサンドイッチELISAによって測定した。
高レベルの抗体を産生するコロニーを、CD CHO増殖培地(L−グルタミン非含有CD CHO+1×GS補助剤+2.16mg/Lのチミジン+50μMのMSX又は100μMのMSX)で、最初は24ウェルプレートで、その後T−フラスコで増殖させるために選択した。
【0088】
細胞を、5バイアルのトランスフェクトーマセルバンク(TCB)の調製前に震盪フラスコの中で増殖させた。細胞株15B7を50μMのMSXプレートから選択し、50μMのMSXを含むCD CHO増殖培地中で維持した。抗体を、上記のようにトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによって産生させて条件培地を生じさせ、これからBTT−1023を、培養上清からモノクローナル抗体を精製するための標準的な技術を使用して精製することができた。
【0089】
〔実施例6〕
〔組換え完全ヒト抗体BTT−1023の結合特性〕
時間分解免疫蛍光アッセイを、rhVAP−1に対するBTT−1023の結合を定量的に試験するために使用した。マイクロタイタープレートをrhVAP−1でコーティングし、その後、ウシ血清アルブミン溶液でブロックした。続いて2〜4320ng/mlの間の量のBTT−1023を加えてVAP−1に結合させ、結合したBTT−1023をユーロピウム結合マウス抗ヒト抗体(PerkinElmer Inc.社製)によって検出した。時間分解蛍光(Victor3 multilabel counter,PerkinElmer Inc.社製)を615nmで測定することによって、標識を検出した。蛍光カウント数は、その標的に結合したBTT−1023の量と直接の相関関係がある。その後、試料のデータをリファレンスの標準曲線と比較して分析した。データは、BTT−1023が組換体ヒトVAP−1に対して、0.38nMの親和性(Kd)で結合することを示している。
【0090】
Biacore表面プラズモン共鳴アッセイを使用するリアルタイム直接結合アッセイを、BTT−1023に対するrhVAP−1の結合キネティクスを分析するために使用した。ストレプトアビジンがコーティングされたチップ(Biacore AB)に固定されたビオチニル化プロテインG’(Sigma社製)を移動相からBTT−1023を捕捉するために使用した。それぞれの実行は2段階からなった:BTT−1023 mAbの1回の注射及びリガンド結合分析物(rhVAP−1)の注射。一定量のrhVAP−1を、mAbの飽和濃度についての分析物(リガンド)として使用した。実験はBIAlite機器(Biacore AB)を使用して行い、データはBiacoreソフトウェアを使用して分析した。当該データは、組換えヒトVAP−1がBTT−1023に対して0.13nMの親和性(Kd)で結合することを示している。
【0091】
完全ヒトBTT−1023のヒトVAP−1に対する結合を、免疫蛍光染色及びフローサイトメトリーによって分析した。フローサイトメトリーのためには、ヒトVAP−1 cDNAを発現するラット内皮細胞株(Ax細胞)由来のトランスフェクトされた細胞(Smithら,J.Ex.Med.(1998)188:17−27)を使用した。これらを、20%のFCS(ウシ胎児血清)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸Na、10μMのβ−ME(β−メルカプトエタノール)、1%の非必須アミノ酸、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び、0.75mg/mlのジェネティシン(Geneticin(商標))を補充したRPMI 1640培地(Sigma社製)中で、175cm3のフラスコ内で増殖させた。細胞を遊離させるために、これらをPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)で2回洗浄し、10mlの細胞解離緩衝液(Cell Dissociation Buffer)(GibcoBRL社製)中で37℃で3分間インキュベートした。培地10mlを添加した後、細胞をペレット状にし(5分、1000g、室温)、洗浄緩衝液(Wash Buffer)[PBS、0.1%(w/v)のBSA(ウシ血清アルブミン)、0.1%(v/v)のNaN3]中に106細胞/mlで再懸濁し、氷上で維持した。
【0092】
細胞懸濁液(100μl/well)を96wellプレートに移し、細胞をペレット状にし(4分、1000g、10℃)、そして抗体溶液の100μlのアリコートをウェルに加えた。氷上で30分間のインキュベーションの後、細胞を150μlの洗浄緩衝液/ウェルで2回洗浄し、その後、100μlの39μg/mlのFITC結合(フルオレセインイソチオシアネート)抗ヒトIgG(Fc特異的、Sigma社製)とともに氷上で30分間インキュベートした。最後に、先に記載したように細胞を洗浄し、1%(v/v)のホルムアルデヒドを含む100μlの洗浄緩衝液を加えて固定し、フローサイトメータでの分析まで4℃に保った。コントロール試料は、FITC結合抗ヒトIgG二次抗体だけで染色した。
【0093】
全てのフローサイトメトリー試料をFACScan(商標)(Becton Dickinson社製)で分析した。個々の試料について、最低でも10000のゲートイベント(gated event)についてのデータを収集し、蛍光の幾何学的平均チャンネルをLysys IIソフトウェアを使用して計算した。
BTT−1023は、それらの表面にVAP−1を発現するトランスフェクトされたAx細胞の染色によって示されるように、ヒトVAP−1に特異的に結合した(図7)。
【0094】
〔実施例7〕
〔BTT−1023の機能的特性〕
インビトロでの移動アッセイを、内皮単層を通り抜ける白血球の移動を阻害するBTT−1023の機能的能力を試験するために使用した。それらの表面上に組換えヒトVAP−1を発現するようにトランスフェクトされたAxラット内皮細胞の単層を、Transwell装置(Becton Dickinson社製)の上部チャンバーにて増殖させた。新たに単離したヒト末梢血単核細胞を上部チャンバーに配置し、2時間かけて底部チャンバー中の単球の化学接着ペプチドfMLP(N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン、100nM)に向かって移動させた。当該単層をBTT−1023、BTT−1008(ヒト定常領域を有する非結合ネガティブコントロール抗体)(Kirtonら,Eur.J.Immunol.(2005)35:3119−30)、及び、BTT−1002(VAP−1に媒介される接合及び移動を遮断(ブロック)することが知られているポジティブコントロールであるキメラ抗VAP−1 mAb)のいずれかで処理した。単層から移動した細胞を底部チャンバーから収集し、顕微鏡でカウントした。
【0095】
BTT−1023は、10ng ml−1で、内皮細胞単層からの細胞の移動を有意に減少させ、そして1μg ml−1で移動をブロックした。ネガティブコントロール抗体BTT−1008は、1μg ml−1では効果がなかったが、一方、ポジティブコントロール抗体BTT−1002もまた、図8に見られるように、1μg ml−1で移動を完全にブロックした。
【0096】
〔実施例8〕
〔キメラ抗体BTT−1002と比較した組換え完全ヒト抗体BTT−1023の改善された薬物動態特性〕
2匹の雌のマーモセット(非ヒト霊長類)にそれぞれ25mg/kgのBTT−1023を、ボーラス静脈内注射によって投与した。BTT−1023濃度の分析用の血液試料を、投与後10分、1時間、3時間、6時間、24時間、48時間、72時間及び144時間で収集した。
【0097】
マーモセットの血清中の分析物(BTT−1002及びBTT−1023のいずれか)濃度の定量のための時間分解免疫蛍光アッセイは、ストレプトアビジンをコーティングしたマイクロタイタープレート上で、捕捉物質(capturer)として、ビオチンが結合させられた分析物特異的ウサギポリクローナル抗体を利用する。そのようなポリクローナル抗体は、BTT−1002及びBTT−1023のいずれかでのウサギの反復免疫化、血清の収集、並びに、得られた抗BTT−1002ポリクローナル抗体又は抗BTT−1023ポリクローナル抗体の親和性精製によって作成した。結合した分析物の検出は、ユーロピウム結合二次抗体を使用して行った。標識は、時間分解蛍光(Victor3 multilabel counter,PerkinElmer Inc.社製)を615nmで測定することによって検出した。蛍光カウント数は、試料中に存在する分析物の量と直接の相関関係がある。その後、試料のデータをリファレンスの標準曲線と比較して分析した。
【0098】
薬物動態パラメーターを、非コンパートメント分析を使用して決定した。40mg/mlを2匹の雌のマーモセットのそれぞれに静脈内投与した、BTT−1002を用いて行った同様の研究から導かれたデータと比較すると、完全ヒトVAP−1抗体は、改善された経時的血清濃度(AUC)プロフィールと延長された排出半減期とを有する改善された薬物動態特性を示す(表4)。
【0099】
【表4】
【0100】
〔実施例9〕
〔完全ヒト抗体の薬学的組成物〕
注射用又は注入用の溶液、若しくはそのような溶液用の濃縮物として提供され、非経口投与に適している本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体を含む薬学的組成物の例。
1mlについての成分のパーセント量
抗VAP−1抗体 0.1〜10%
塩化ナトリウム又は塩化カリウム 0.5〜1.5%
リン酸水素二ナトリウム二水和物 0.1〜2%
リン酸二水素ナトリウム又はリン酸二水素カリウム 0.1〜2%
スクロース 0.5〜10%
ポリソルベート20又はポリソルベート80 0.01〜1%
注射用水 1mlになるように
1mlについての成分のパーセント量
抗VAP−1抗体 0.1〜10%
塩化ナトリウム 0.5〜1.5%
EDTA/DTPA 0.01〜1.5%
マンニトール 0.1〜5%
ポリソルベート20又はポリソルベート80 0.01〜1%
二水和物としてのクエン酸ナトリウム 0.5〜5%
注射用水 1mlになるように
【0101】
〔実施例10〕
〔炎症のインビボモデルにおける完全ヒト抗体の有効性〕
〔アカゲザルのコラーゲン誘導性関節炎における完全ヒトVAP−1抗体処置の有効性〕
完全ヒト抗体の効果は、関節炎指標におけるBTT−1023抗体の有用性についてのデータ収集の助けとなるアカゲザルのコラーゲン誘導性関節炎(CIA)のモデルにおいて評価される。
【0102】
ウシII型コラーゲンで免疫化された99%のCIA指数を有するMHC A26に関してネガティブである成体のアカゲザルが、研究のために選択される。10匹の動物は、5匹の動物の2つの群に分けられる。関節炎は、動物の背中の10箇所のスポット中に、完全フロイントアジュバント中の3〜5mgのウシコラーゲンを注射することによって誘導される。このアプローチを使用すると、関節炎は、免疫化後3〜5週間で顕性化し、通常、7〜9週間持続する。
【0103】
1週間に2回の1〜50mg/kgの間の用量の完全ヒト抗体を用いた4週間の静脈内処置は、≧20mg/lのCRPレベルが2回の連続する記録において検出された時点で開始される。コントロールの動物には、ビヒクル溶液が投与される。動物の症状は、総体的臨床スコア(0=関節炎の臨床兆候なし、0.5=発熱(>0.5℃)、1=無気力、可動性の低下及び食欲不振、2=体重減少、四肢及び/又は関節の微熱、痛みがあるが軟部組織腫脹(STS)は伴わない、3=関節の中度の紅化及びSTS、四肢の正常な柔軟性、4=関節の重度の紅化及びSTS、関節の硬直を伴う、5=安楽死が指示される重症関節炎)、及び、CIA重傷度スコア(−から+++のスケールで評価された軟部組織腫脹、柔軟性及び捻髪音の重篤度:−なし、±疑わしい、+中度、++重度、+++極度)を使用して評価した。全てのこれらのパラメーターは、半定量的スケールであるCIA重篤度の総体的臨床スコアをもたらす。
【0104】
〔VAP−1ヒト化マウスのコラーゲン抗体誘導性関節炎の処置における完全ヒトVAP−1抗体の有効性〕
内皮上にヒトVAP−1を発現するトランスジェニックマウスのコラーゲン抗体誘導性関節炎に対する完全ヒト抗体の有効性が評価され得る。急速に進行する関節炎は、抗体カクテルを、それに続いて3日後に腹腔内にリポ多糖を注射することによって誘導される。完全ヒト抗体の3mg kg−1、10mg kg−1又は30mg kg−1の静脈内用量が、1日目、3日目及び7日目にマウスに投与される。コントロールの動物には、ビヒクルが投与される。コントロールとの比較における関節炎スコアの統計学的に有意な低下によって証明されるように、関節炎疾患の軽減が示され得る。
【0105】
〔乾癬のヒト化マウスモデルにおけるVAP−1抗体処置の有効性〕
ヒト化異種移植モデルの最近の確立及び検証は、この疾患の理解を深め、新しい薬物療法を試験するための有用なツールを提供した(Nickoloff BJ.Expert Opin.Investig.Drugs.(1999)8:393−401)。
このモデルでは、以前に説明されたように(Wrone−Smith T.ら J.Clin.Invest.(1996)98:1878−1887)、乾癬患者由来で非損傷性(non−lesional)の完全な厚みの皮膚生検が、およそ7〜9週齢の麻酔された重症複合免疫不全(SCID)マウスに移植される。当該動物には、疾患の誘導前に少なくとも2〜3週間、外科手術から回復するための余地を与えた。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、生検時に採取された血液試料から単離され、スーパー抗原SEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)で活性化させられる。静脈内及び皮内のいずれかでの異種移植片への活性化されたPBMCの注射によって、疾患が誘導される。
【0106】
完全ヒトVAP−1抗体又はビヒクルは、静脈内又は皮下に投与される。様々な期間の予防的及び治療的投与レジュメは、いずれも可能である。加えて、より詳細に細胞への浸潤に対する効果を調べるために、完全ヒトVAP−1抗体処置に続いて、標識されたヒトT細胞を静脈内に注射することができる。
処置期間の最後に、マウスは屠殺され、移植片は、周辺のマウスの皮膚と一緒に摘出され、ホルマリン中に固定されるか、或いは、窒素中で一瞬で凍結させられる。組織学的検査及び免疫組織化学的検査が、表皮厚み、細胞浸潤、及び、接合分子の発現における変化のような病理学的変化をスコアするために行われる。コントロールとの比較においてスコアの統計学的に有意な低下によって証明されるように、乾癬疾患の軽減が示され得る。
【0107】
〔VAP−1ヒト化マウスに対するCCl4の投与によって生じる肝臓の炎症の処置における完全ヒトVAP−1抗体の有効性〕
肝臓の炎症及び線維症に対する完全ヒトVAP−1抗体の効果が、CCl4の投与によって肝臓線維症を生じたマウスモデルにおいて評価される。内皮上にヒトVAP−1を発現するトランスジェニックマウスに、0.25ul/gのCCl4が腹腔内に1週間に2回、12週間にわたって注射される。12週間の全体にわたって、広範囲の肝臓の炎症及び瘢痕が生じるが、CCl4注射の中断後、当該瘢痕は完全に消散する。このモデルを使用して損傷を阻止し、既存の線維症を消散することにおいて、1週間に2回、1〜25mg/kgの間の用量で静脈内又は腹腔内に投与された完全ヒト抗体の有効性は、肝臓の病理学的及び組織学的変化をスコアすることによって調べられる。コントロールとの比較においてスコアの統計学的に有意な減少によって証明されるように、疾患の軽減が示され得る。
【0108】
〔麻酔されたウサギの急性心筋梗塞のモデルにおけるVAP−1抗体処置の有効性〕
左開胸が、麻酔され人工呼吸器が装着されたニュージーランドシロウサギに対して行われる。心臓が露出され、左冠状動脈(LCA)が単離され、閉塞される。完全ヒトVAP−1抗体が、閉塞の開始後25分で静脈内に投与される。抗体投与の5分後、閉塞が除去され、次いでその領域が6時間まで再灌流させられる。当該動物は、過剰量の麻酔薬の使用によって死亡させられ、心臓が摘出され、生理食塩水でリンスされる。再びLCAが閉塞され、Monastral又はEvans blueが心臓全体に灌流させられて、心筋を着色するが、リスクがある領域は着色されないまま残る。心臓が凍結させられ、左心室が薄い切片になるように切り分けられる。
【0109】
スライスされた切片全てとリスクがある領域とが、画像分析システムを使用して決定される。その後、当該切片は、リン酸緩衝化生理食塩水中の1%のトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)溶液とともにインキュベートされ、続いて10%の中性の緩衝化ホルマリン中でインキュベートされる。生存能力のある心筋はTTCインキュベーションによって赤色に着色され、従って染色されなかった組織領域を測定することによって梗塞領域が決定され、決定されたリスクがある領域の割合として表される。コントロールとの比較においてリスクがある領域の割合の統計学的に有意な減少によって証明されるように、組織損傷の減少が示され得る。
【0110】
〔ウサギのmBSA誘導性関節炎におけるVAP−1抗体処置の有効性〕
生理食塩水中に溶解したメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)は、等量の完全フロイントアジュバントと混合され、エマルジョンが調製される。ニュージーランドシロウサギは、14日の間をあけて、当該エマルジョンを2回皮内注射されて免疫化される。2回目の免疫化のおよそ10日後、血清が当該動物から収集され、mBSA溶液が皮内注射により投与される。ポジティブな皮膚反応を示す動物が選択され、これらは、抗mBSA IgGの血清力価に基づいて、複数の処置群に無作為に分けられる。
【0111】
2回目の免疫化の14日後、VAP−1抗体又はビヒクルが、右膝の関節腔へのmBSA溶液の注射の直前に、静脈内又は皮下に投与される。各動物の左膝には、生理食塩水が注射される。VAP−1抗体の注射又はネガティブコントロールの注射は、研究を通じて1週間に1回又は2回投与される。
誘導日(0日目)から、研究期間中、ウサギは、視診及び触診によって行動及び外見について毎日観察され、体重が特定の間隔で記録される。膝関節の腫脹は、予め決定された時点で、炎症を起こした(右)膝と炎症を起こしていない(左)膝との直径を比較することによって評価される。
【0112】
研究の実験部分の終わり(21日目)に、当該動物は屠殺される。滑液が、全白血球数及びタンパク質含有量の決定のために収集される。各動物の滑膜が膝関節から解体され、膝蓋骨の部位で2つの検体になるように長軸方向に分割される。一方は、VAP−1抗体及びVAP−1発現の決定のために液体窒素の中で冷凍され、他方の滑膜の検体及び残りの膝関節組織は、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)、並びに、リンタングステン酸−ヘマトキシリン(PTAH)での染色のために、10%の中性緩衝化ホルマリン中に固定される。HE染色された切片は炎症反応について評価され、PTAH染色された切片は滑膜の表面上でのフィブリンの蓄積の程度について評価される。コントロールとの比較においてスコアの統計学的に有意な低下によって証明されるように、関節炎疾患の軽減が見られ得る。
【0113】
〔結論〕
これらの実施例は、完全ヒト抗VAP−1抗体が、抗VAP−1抗体の特異的VAP−1認識特性を保持し(実施例2及び6)、内皮からの白血球のVAP−1依存性の移動をブロックし(実施例7)、そして、以前の抗VAP−1モノクローナル抗体と比較して改善された薬物動態特性を有していた(実施例8)ことを明らかにしている。
技術進歩に伴い、本発明の概念を様々な方法で履行できることは、当業者に明らかであろう。本発明とその実施形態とは、上記の実施例には限定されず、特許請求の範囲の中で変化し得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト内皮細胞接合タンパク質VAP−1を認識する完全ヒトモノクローナル抗体をコードする核酸配列に関し、特に、VAP−1の機能的エピトープを認識するBTT−1023と呼ばれる完全ヒトモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中で使用される刊行物及び他の材料は、本発明の背景、特に、実施に関するさらなる詳細を提供する実施例を明らかにするために、引用により組み入れられる。
一般的に、全ての抗体は、2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖とにより構成される共通のY型構造を共有している。これらの4つのポリペプチドサブユニットは、2つの重鎖が連結され、軽鎖はジスルフィド結合によって各重鎖に結び付くように構築される。抗体を構成している各ポリペプチドは、可変領域及び定常領域により構成される。
【0003】
可変領域は、Y型抗体の腕に相当する部位に位置し、当該抗体の抗原結合特異性を決定する。この領域には、その抗原に対する抗体の結合に関与する短いアミノ酸配列が含まれる。これらの領域は、相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)と呼ばれる。可変領域の残りの部分は、全体としての抗原結合ポケットの立体構造に重要である。
抗体の定常領域は、重鎖の底部に位置し、特異的受容体との相互作用により免疫反応を活性化させる抗体の能力を決定する。これらの領域は一般的にはよく保存されており、その可変性は、5種類の基本的なイソフォームであるIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに限られる。
【0004】
血管接合タンパク質−1(VAP−1)は、血管内皮細胞上で発現される旧知ではない炎症誘導性の接合分子であり、当該血管接合タンパク質−1は、血管内皮細胞上で生理学的剪断(physiological shear)下での白血球の回転を媒介する。この役割において、それは、免疫監視機構の正常なプロセスの一部として、2次リンパ組織の高内皮細静脈(HEV)を介したリンパ球の再循環に寄与する。
しかしながら、炎症条件下では、VAP−1は、炎症組織への白血球の浸潤を促進し、それにより炎症応答に寄与し、それを維持する。この浸潤自体が、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬及び多くの自己免疫疾患のような慢性の炎症性疾患、並びに、他の炎症性疾患に悪影響を及ぼす可能性がある。他の状況では、心筋梗塞、脳卒中及び他の疾患によって生じる重度の組織損傷後の組織への大量の炎症誘発性細胞の浸潤が、これらの急性の炎症応答において見られる組織の破壊に寄与する。ブロッキング抗体を用いてVAP−1機能を妨げることによって炎症部位への細胞の浸潤を減少させることにより、炎症を消散し、これらの疾患の臨床症状を改善へと導く可能性がある。
【0005】
米国特許第5580780号(特許文献1)には、VAP−1を認識し、凍結切片アッセイにおいて扁桃腺のHEVに対するリンパ球の結合をブロックできるモノクローナル抗体(mAb)1B2が記載されている。MAb 1B2はマウスIgM抗体であり、これはVAP−1に特異的である。
【0006】
治療法としてマウスmAbを使用することは、ヒトの免疫系がマウス抗体を異物として認識し、それらを体から排除するためにヒト抗マウス抗体(HAMA)を産生するので、可能性は限られている。この免疫反応は、繰り返し投与する必要がある場合の長期治療におけるマウス抗体の使用に対する主要な制約である。病院でのマウス抗VAP−1抗体の使用は、免疫抑制剤で処置され、それによりHAMA反応の傾向が低い患者、及び、急性心筋梗塞又は急性呼吸促迫症候群における虚血再灌流障害のような抗体の1回だけの投与が適している処置レジュメに限定されなければならない。
治療にマウスIgM抗VAP−1抗体を使用することに関連する1つのさらなる欠点は、そのような抗体の好ましくないキネティクプロフィール(すなわち、短い半減期)であり、これにより、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬及び多くの他の疾患のような慢性病に対する使用は適さない。
【0007】
免疫原性が低いモノクローナル抗体を作製するいくつかの方法が当該分野で公知である。好ましいアプローチには抗体の「ヒト化」が含まれる。頻繁に使用される方法は、キメラmAb、ヒト化mAb又は完全ヒトmAbを作製することである。キメラmAbは、可変領域はマウスに由来するが、定常領域はヒト起源のものである抗体である。キメラ抗体において、通常、齧歯類抗体分子のおよそ70%は、特定の特異性と親和性を有している齧歯類の抗原結合部位を維持しつつ、対応するヒト配列と置き換えられる。ヒト化抗体は、可変領域はマウスに由来し得るが、ヒト抗体により類似するように変異させられており、ヒト起源の定常領域を含み得る抗体である。完全ヒト抗体は可変領域及び定常領域がそれぞれヒト起源のものである抗体である。
【0008】
国際特許公開WO03/093319号(特許文献2)には、対応するマウス抗体と比較して低い免疫原性を有する可能性があるキメラ抗VAP−1モノクローナル抗体BTT−1002が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5580780号
【特許文献2】国際特許公開WO03/093319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、BTT−1002は、キメラ抗体ではあるものの、オリジナルのマウス抗体に直接由来し、そして、当該オリジナルのマウス抗体から修飾されていない抗体の可変領域に対応するタンパク質配列を、なおも有する。この抗体は、ヒトに投与された場合には、なおも異物として認識され、免疫原性である可能性がある。また、この抗体の排出半減期や機能的特性のような薬理学的特性は、その免疫原性や、結果としてそれに対する抗体の産生により低下するかもしれない。
このように、低い免疫原性と改善された薬理学的特性とを有する完全ヒト抗VAP−1抗体が当該分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、新規の完全ヒト抗VAP−1抗体、そのような抗体の産生方法、及び、それらの抗体の使用に広く関係する。本発明は更に、上記抗VAP−1抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
本発明の1つの目的は、患者において免疫応答を誘発する可能性が低く、治療の目的に好ましい薬理学的プロフィールを有する、インビボでの診断及び/又は治療に使用される完全ヒトモノクローナル抗体を提供することである。
本発明の別の目的は、完全ヒト抗VAP−1抗体の重鎖及び軽鎖、又は、それらの断片を提供することである。
本発明の更なる目的は、完全ヒト抗VAP−1抗体をコードする核酸又はその断片、並びに、抗VAP−1抗体の組み換え発現のためのこれらの核酸が組み込まれている発現ベクター及び宿主細胞を提供することである。
本発明の別の実施形態は、組み換え産生法により本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体を産生するための方法に関する。
上記抗体を含む薬学的組成物及びその治療的使用もまた開示される。
以下では、本発明は添付の図面を参照して好ましい実施形態によって更に詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】抗VAP−1抗体8C10の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図1B】抗VAP−1抗体8C10の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図2A】抗VAP−1抗体8A4の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図2B】抗VAP−1抗体8A4の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図3A】抗VAP−1抗体3F10の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図3B】抗VAP−1抗体3F10の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図4A】抗VAP−1抗体5F12の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図4B】抗VAP−1抗体5F12の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図5A】抗VAP−1抗体4B3の可変領域の軽鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図5B】抗VAP−1抗体4B3の可変領域の重鎖のヌクレオチド配列と対応するアミノ酸配列とを示す図。可変重鎖(VH)のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNAから推測した。アミノ酸鎖における3つのCDRを、下線をつけた対応するヌクレオチド配列とともに太字で示す。
【図6A】コンセンサス配列を示している8C10、8A4、3F10、5F12及び4B3のVH重鎖の可変領域のタンパク質配列のアラインメントを示す図。
【図6B】コンセンサス配列を有するVH重鎖CDR1のアラインメントを示す図。
【図6C】コンセンサス配列を有するVH重鎖CDR2のアラインメントを示す図。
【図6D】コンセンサス配列を有するVH重鎖CDR3のアラインメントを示す図。
【図6E】コンセンサス配列を示している8C10、8A4、3F10、5F12、及び4B3のVL軽鎖の可変領域のタンパク質配列のアラインメントを示す図。
【図6F】コンセンサス配列を有するVL軽鎖CDR1のアラインメントを示す図。
【図6G】コンセンサス配列を有するVL軽鎖CDR2のアラインメントを示す図。
【図6H】コンセンサス配列を有するVL軽鎖CDR3のアラインメントを示す図。
【図7】コントロールの染色された細胞と比較して、BTT−1023で染色されたAx VAP−1細胞のFACS(蛍光活性化細胞選別法)分析により示される、細胞表面上にヒトVAP−1を発現するAx細胞に対する組換え完全ヒト抗体r8C10(BTT−1023)のVAP−1結合を説明する図。
【図8】インビトロでの白血球の移動に対するBTT−1023の影響を説明する図。当該図には、BTT−1023又はコントロール抗体で処理された内皮細胞単層から移動した末梢血単核細胞(PBMC)の数が示されている。なお、エラーバーは平均の標準誤差である。N=6。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ヒト血管接合タンパク質−1(VAP−1)を特異的に認識する、好ましくは、組み換えによって産生された、完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)に関する。本発明の完全ヒトモノクローナル抗体は、対応するヒト化抗体と比較して免疫原性が低く、多数の自己免疫疾患、炎症症状、結合組織、皮膚及び消化管、中枢神経系、並びに肺システムの疾患(慢性関節炎、炎症性腸疾患及び慢性皮膚疾患のような症状を含む)の処置に有用である。完全ヒトVAP−1抗体は更に、炎症部位のインビボ免疫シンチグラフィーイメージングを含む、インビトロ及びインビボでの診断的適用に有用である。
【0014】
「保存的配列変異体」との語は、本明細書中で使用される場合には、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体の結合特性を有意には変化させないヌクレオチド配列の修飾及びアミノ酸配列の修飾を含むように意図される。保存的ヌクレオチド配列変異体には、遺伝子コードの変性によって、及び、サイレント変異によって生じる変異体が含まれる。ヌクレオチドの置換、欠失及び付加もまた含まれる。保存的アミノ酸配列変異体には、当該分野で周知の類似アミノ酸でのアミノ酸置換によって生じる変異体が含まれる。上記と同様に、アミノ酸の欠失及び付加もまた含まれる。
【0015】
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドには、完全ヒト抗VAP−1抗体に対して、又は、以下に記載される上記抗体をコードするポリヌクレオチドに対して、少なくとも80%の同一性、又は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の同一性を有するものが含まれる。
本発明により、以下からなる群より選択される少なくとも1つのCDRコンセンサス配列を含む完全ヒト抗VAP−1抗体重鎖が提供される。
a)配列X1X2X3X4X5(配列番号1)の配列中、
X1は、S、NもしくはRのような、小さい極性アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり、
X2は、YもしくはSのような、芳香族アミノ酸又は小さい極性アミノ酸であり、
X3は、A、GもしくはWのような、小さい疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、
X4は、MもしくはIのような、疎水性アミノ酸であり、
X5は、HもしくはSのような、小さい極性アミノ酸又は塩基性アミノ酸である;
b)配列X1X2X3X4X5GX6X7X8X9X10X11DSVX12G(配列番号2)の配列中、
X1は、V、A、もしくはNのような、小さいアミノ酸であり、
X2は、IもしくはLのような、小さい脂肪族アミノ酸であり、
X3は、W、G、もしくはKのような、芳香族アミノ酸、塩基性アミノ酸、又は、疎水性アミノ酸であり、
X4は、F、Q、V、もしくはYのような、芳香族アミノ酸、脂肪族疎水性アミノ酸、又は、極性アミノ酸であり、
X5は、DもしくはGのような、小さい酸性アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X6は、S、G、もしくはIのような、小さいアミノ酸又は脂肪族アミノ酸であり、
X7は、N、E、もしくはYのような、極性アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X8は、E、K、もしくはTのような、極性アミノ酸であり、
X9は、Y、D、もしくはNのような、極性アミノ酸であり、
X10は、YもしくはHのような、芳香族アミノ酸であり、
X11は、VもしくはAのような、小さい疎水性アミノ酸であり、
X12は、KもしくはRのような、電荷を持つ塩基性アミノ酸である;及び、
c)配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12DY(配列番号3)の配列中、
X1は、DもしくはEのような、電荷を持つ酸性アミノ酸であり、
X2は、A、G、K、P、もしくはYのような、小さいアミノ酸又は疎水性アミノ酸であり、
X3は、W、F、G、もしくはNのような、芳香族アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X4は、FもしくはGのような、芳香族アミノ酸又は小さいアミノ酸であるか、あるいは、アミノ酸は存在せず、
X5は、GもしくはSのような、小さいアミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X6は、Gのような、小さいアミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X7は、Tのような、小さい極性アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X8は、Yのような、極性芳香族アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X9は、EもしくはFのような、電荷を持つ酸性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であるか、あるいはアミノ酸は存在せず、
X10は、F、G、S、V、もしくはWのような、芳香族アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X11は、YもしくはGのような、小さいアミノ酸又は極性芳香族アミノ酸であり、
X12は、FもしくはIのような、芳香族アミノ酸又は脂肪族疎水性アミノ酸である。
【0016】
より具体的には、本発明により、配列番号4〜8とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号9〜13とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号14〜18とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第3のCDRアミノ酸配列を含む、完全ヒト抗VAP−1抗体の重鎖が提供される。本発明の特定の抗体の重鎖には、配列番号19〜23とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される可変領域が含まれる。
【0017】
本発明によっては更に、以下からなる群より選択される少なくとも1つのCDRコンセンサス配列を含む完全ヒト抗VAP−1抗体の軽鎖が提供される:
a)配列RASQX1X2SX3X4X5LA(配列番号24)の配列中、
X1は、GもしくはSのような、小さいアミノ酸であり、
X2は、IもしくはVのような、脂肪族アミノ酸であり、
X3は、SもしくはRのような、小さい極性アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸であり、
X4は、Sのような、小さい極性アミノ酸であるか、又は、アミノ酸は存在せず、
X5は、A、F、W、もしくはYのような、小さい疎水性アミノ酸又は芳香族疎水性アミノ酸である;
b)配列X1ASX2X3X4X5(配列番号25)の配列中、
X1は、DもしくはGのような、小さい酸性アミノ酸又は小さいアミノ酸であり、
X2は、SもしくはNのような、小さい極性アミノ酸であり、
X3は、LもしくはRのような、脂肪族アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸であり、
X4は、A、E、もしくはQのような、小さいアミノ酸又は極性アミノ酸であり、
X5は、S、T、もしくはRのような、極性アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸である;及び
c)配列QQX1X2X3X4PX5T(配列番号26)の配列中、
X1は、F、Y、もしくはRのような、芳香族アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸であり、
X2は、N、G、もしくはSのような、小さいアミノ酸であり、
X3は、SもしくはNのような、小さい極性アミノ酸であり、
X4は、Y、F、W、もしくはSのような、芳香族アミノ酸又は小さい極性アミノ酸であり、
X5は、LもしくはRのような、脂肪族アミノ酸又は正電荷を持つアミノ酸である。
【0018】
更に詳細には、本発明により、配列番号27〜31とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号32〜36とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のCDRアミノ酸配列、及び/又は、配列番号37〜41とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第3のCDRアミノ酸配列を含む、完全ヒト抗VAP−1抗体の軽鎖が提供される。本発明の特定の抗体の重鎖には、配列番号42〜46とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される可変領域が含まれる。
【0019】
本発明の更なる態様は、本発明の重鎖及び軽鎖を含む完全ヒト抗VAP−1抗体を提供することである。本発明の抗体分子及び鎖には、以下が含まれ得る:完全長の重鎖及び軽鎖を有している完全な天然の抗体分子;Fab、Fab’、F(ab’)2又はFv断片のような前記抗体分子の断片;軽鎖もしくは重鎖の単量体又は二量体;あるいは、単鎖抗体(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている単鎖Fv);あるいは、任意の他の組換え体又はCDR移植分子。
同様に、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、必要に応じて他の抗体ドメインと組み合わせ得る。
【0020】
CDR3ドメインが、CDR1及び/又はCDR2ドメイン(単数又は複数)から独立して、単独で同種抗原に対する抗体の結合特異性を決定できること、及び、共通するCDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有している複数の抗体を作製できると予想され得ることは、当該分野で周知である。
【0021】
従って、本開示により、ヒト又はヒト以外の動物に由来する抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該モノクローナル抗体は、VAP−1に特異的に結合できる。特定の態様においては、本開示により、マウス抗体又はラット抗体のような非ヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該モノクローナル抗体は、VAP−1に特異的に結合できる。いくつかの実施形態においては、非ヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むそのような本発明の抗体は、(a)対応する元の非ヒト抗体との結合に競合できる;(b)対応する元の非ヒト抗体の機能的特性を保持している;(c)対応する元(親)の非ヒト抗体と同じエピトープに結合する;及び/又は(d)対応する元の非ヒト抗体と類似する結合親和性を有する。
【0022】
他の態様においては、本開示により、ヒト抗体(例えば、ヒト以外の動物から得られたヒト抗体)由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該ヒト抗体は、VAP−1に特異的に結合することができる。他の態様においては、本開示により、例えば、ヒト以外の動物から得られたヒト抗体のような第1のヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体が提供され、ここでは、当該第1のヒト抗体は、VAP−1に特異的に結合することができ、そして、第1のヒト抗体由来のCDR3ドメインは、VAP−1に特異的に結合できる第2のヒト抗体を作製するために、VAP−1に対する結合特異性を持たないヒト抗体中のCDR3ドメインに取って代わる。いくつかの実施形態においては、上記第1のヒト抗体由来の1つ以上の重鎖CDR3ドメイン、及び/又は、軽鎖CDR3ドメインを含むそのような本発明の抗体は、(a)対応する元の第1のヒト抗体との結合に競合できる;(b)対応する元の第1のヒト抗体の機能的特性を保持している;(c)対応する元の第1のヒト抗体と同じエピトープに結合する;及び/又は、(d)対応する元の第1のヒト抗体と類似する結合親和性を有する。
【0023】
本開示の抗体は、抗VAP−1抗体の様々な物理的特性によって更に特徴付けられる。様々なアッセイが、これらの物理的特性に基づいて抗体の様々なクラスを検出及び/又は区別するために使用され得る。
いくつかの実施形態においては、本開示の抗体には、1つ以上のグリコシル化部位が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のいずれかに含まれ得る。可変領域中の1つ以上のグリコシル化部位の存在は、当該分野で周知であるように、抗原結合の変化のために、抗体の免疫原性の増大、又は、抗体の薬物動態の変化を生じ得る。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含むモチーフで起こることが知られている。可変領域のグリコシル化は、抗体を切断してFabを生じさせるGlycoblotアッセイ、その後の、過ヨウ素酸塩の酸化及びシッフ塩基の形成を測定するアッセイを使用するグリコシル化についての試験を使用して試験され得る。あるいは、可変領域のグリコシル化は、Fab由来の糖を単糖へと切断し、個々の糖含有量を分析するDionex社のライト(Light)クロマトグラフィー(Dionex−LC)を使用して試験され得る。いくつかの場合には、可変領域のグリコシル化を含まない抗VAP−1抗体を有することが好ましい。これは、可変領域中にはグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択すること、又は、当該分野で周知の標準的な技術を使用してグリコシル化モチーフの内部にある残基を変異させることのいずれかにより行われ得る。
【0024】
好ましい実施形態においては、本開示の抗体には、アスパラギン異性部位は含まれない。脱アミド化又はイソアスパラギン酸効果はそれぞれ、N−G配列又はD−G配列上で起こり得る。イソアスパラギン酸の生成は、イソアスパラギン酸を試験するために逆相HPLCを使用するiso−quantアッセイを使用して測定することができる。
個々の抗体は固有の等電点(pI)を有しているであろうが、通常、多くの抗体はpH6〜9.5までの間の範囲に入るであろう。IgG1抗体のpIは、通常はpH7〜9.5の範囲にあり、そしてIgG4抗体のpIは、通常はpH6〜8の範囲にある。この範囲外のpIを有している抗体も存在し得る。等電点は、当該分野で周知であるように、pH勾配を作成し、正確性向上のためにレーザー集束を利用することができるキャピラリー等電点電気泳動アッセイを使用して試験することができる。いくつかの場合には、正常範囲内にあるpI値を含む抗VAP−1抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有している抗体を選択すること、又は、当該分野で周知の標準的な技術を使用して電荷を有している表面残基を変異させることのいずれかによって達成できる。
【0025】
個々の抗体は、熱安定性の指標である融解温度を有するであろう。熱安定性が高ければ高いほど、インビボで、より高い全体的な抗体安定性を示す。抗体の融点は、示差走査熱量測定のような技術を使用して測定することができる。TM1は、抗体の最初のアンホールディング(変性、unfolding)の温度を示す。TM2は、抗体の完全なアンホールディングの温度を示す。一般的には、本開示の抗体のTM1は、60℃より高いことが好ましく、より好ましくは65℃より高く、更に好ましくは70℃より高い。あるいは、抗体の熱安定性は、当該分野で周知のように円偏光二色性を使用して測定され得る。
【0026】
好ましい実施形態においては、急速には分解しない抗体が選択される。抗VAP−1抗体の断片化は、当該分野でよく理解されているように、キャピラリー電気泳動(CE)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)を使用して測定され得る。
【0027】
別の好ましい実施形態では、最小凝集効果を有する抗体が選択される。凝集は望ましくない免疫応答及び/又は薬物動態特性の変化、もしくは、好ましくない薬物動態特性の誘発へとつながる可能性がある。一般的には、抗体には、25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下、そして、なおより好ましくは5%以下の凝集が許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び、単量体、二量体、三量体又は多量体を同定するための光散乱を含む、当該分野で周知のいくつかの技術によって測定され得る。
【0028】
本発明の抗体は、好ましくはIgG型の抗体であり、より好ましくはIgG4型の抗体である。しかしながら、IgG1、IgG2、IgG3、IgM及びIgEのような他の抗体アイソタイプも含まれる。
いくつかの実施形態においては、本発明の抗体には、本明細書中に記載される好ましい抗体のアミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が含まれ、ここでは、抗体は、本発明の抗VAP−1抗体の所望される機能的特性を保持している。
例えば、本発明により、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分が提供される。ここでは:(a)重鎖可変領域には、配列番号19〜23からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列が含まれる;(b)軽鎖可変領域には、配列番号42〜46からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列が含まれる;(c)当該抗体は、1×10−7M以下のKdでヒトVAP−1に結合する。
【0029】
他の実施形態においては、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、上記に示された配列に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有し得る。上記で示された配列のVH領域及びVL領域に対して高い(すなわち、80%以上の)相同性を有するVH領域及びVL領域を有する抗体は、配列番号19〜23及び42〜46をコードする核酸分子の変異を誘発(例えば、部位特異的変異誘発又はPCR媒介性変異誘発)し、その後、保持された機能ついて、コードされた変化抗体を試験することによって得ることができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、2つのアミノ酸配列間でのパーセント相同性は、2つの配列間でのパーセント同一性と同等である。2つの配列間でのパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数と各ギャップの長さとを考慮した、当該配列により共有される同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一である位置の数/位置の総数×100)である。各配列の比較と2つの配列間での同一性を示すパーセントの決定とは、当該分野で公知の標準的な方法を使用して達成され得る。
【0031】
いくつかの実施形態においては、本発明の抗体は、典型的には、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は、抗原依存性細胞傷害性のような抗体の機能的特性を1つ以上変化させるために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本発明の抗体は、抗体の機能的特性を1つ以上再び変化させるために、化学的に修飾され得る(例えば、1つ以上の化学的成分が抗体に付着され得る)か、又は、そのグリコシル化部位を変化させるように修飾され得る。
【0032】
例えば、Fc領域は、抗体がエフェクターリガンドに対して変化した親和性を有するが、元の抗体の抗原結合能力を保持するように、1つの異なるアミノ酸残基で置き換えることができるアミノ酸残基234位、235位、236位、237位、297位、318位、320位及び322位(Fc領域中の残基のナンバリングはKabatのEU指数のナンバリングである)から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を置き換えることによって変化されるかもしれない。親和性が変化したエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のCl成分であり得る。このアプローチは、例えば、米国特許第5,624,821号及び米国特許第5,648,260号に、更に詳細に記載されている。
【0033】
本発明によって意図される本明細書中の抗体の別の修飾はペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を長くするためにペグ化され得る。抗体をペグ化するためには、抗体又はその断片は、通常は、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性エステル又はアルデヒド誘導体のようなPEGと、1つ以上のPEG基が当該抗体又は抗体断片に付着した状態となる条件下で反応させられる。好ましくは、PEG化は、反応性PEG分子(もしくは同様の反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を通じて行われる。本明細書中で使用される場合は、「ポリエチレングリコール」との語は、モノ(Cl−ClO)アルコキシポリエチレングリコールもしくはアリールオキシポリエチレングリコール、又はポリエチレングリコールマレイミドのような、他のタンパク質へと誘導するために使用されているPEGの任意の形態を含むように意図されている。特定の実施形態においては、ペグ化される抗体はグリコシル化されていない抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は、当該分野で公知であり、本発明の抗体に適用できる。
【0034】
好ましい実施形態においては、本発明により、特異的な完全ヒト抗VAP−1抗体8C10、8A4、3F10、4B3及び5F12が提供される。他の好ましい実施形態においては、本発明により、組換え体8C10、8A4、3F10、4B3及び5F12のような組換え完全ヒト抗VAP−1抗体が提供される。組換え体r8C10(BTT−1023)の中では、重鎖は配列番号47に示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖は配列番号48に示されるアミノ酸配列からなる。
【0035】
【表1】
【0036】
完全ヒト抗VAP−1抗体は、好ましくは、本来のマウス免疫グロブリン遺伝子が不活化され、そして、ヒト免疫グロブリン遺伝子レパートリーの全体、又は、その一部で機能的に置き換えられたマウスを免疫化することによって調製される。そのようなマウスは、VAP−1抗原で免疫化され、その後、ヒト抗体を産生するハイブリドーマが、通常の手順を使用してマウスから生成される。その後、VAP−1抗原と反応するモノクローナル抗体を産生するクローニングされたハイブリドーマ細胞が同定され、精製された完全ヒトモノクローナル抗体を産生するために増殖される。
【0037】
ヒト抗体を生成するための別の方法には、動物抗体の特異性をヒト免疫グロブリンへと移すことが含まれる。例えば、マウスはVAP−1抗原で免疫化され、その後、抗体を産生するハイブリドーマが通常の手順を使用して当該マウスから生成される。次いで、VAP−1抗原と反応するモノクローナル抗体を産生するクローニングされたハイブリドーマ細胞が同定され、精製されたモノクローナル抗体を産生するために増殖される。抗体重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のcDNA配列が決定され、相補性決定領域(CDR)が同定される。重鎖及び軽鎖のCDRアミノ酸配列は、ヒト抗体の一致するCDRを置き換え、それにより、齧歯類抗VAP−1抗体の特異性をヒト抗体へと移すために使用される。得られる抗VAP−1抗体は、オリジナルのCDRアミノ酸配列は齧歯類に由来するが、同じアミノ酸配列をヒト由来の抗体で生じさせることができるという点で完全ヒト型であり、これは齧歯類に特異的であるとして正確に定義することはできない。
【0038】
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するためには、免疫化されたマウスに由来する脾細胞及び/又はリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株に融合させる。得られるハイブリドーマは、抗原特異的抗体の産生のためにスクリーニングされる。
【0039】
例えば、免疫化されたマウス由来の脾臓リンパ細胞の単細胞懸濁液を6分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に対して50%のPEGを用いて融合させることができる。細胞は、平底マイクロタイタープレート中におよそ2×105でプレートされ、続いて、20%の胎児Clone Serum、18%の「653」条件培地、5%のorigen(IGEN社製)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0.055mMの2−メルカプトエタノール、50単位/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、50mg/mlのゲンタマイシン及びIX HAT(Sigma社製;HATは融合の24時間後に添加される)を含む選択培地中で2週間インキュベートされる。
【0040】
およそ2週間後、細胞を、HATがHTで置き換えられた培地中で培養する。その後、個々のウェルを、ヒトモノクローナルIgM抗体及びIgG抗体についてELISAによってスクリーニングする。一旦、大量のハイブリドーマの増殖が起こると、培地は通常は10日〜14日後に観察される。抗体を分泌するハイブリドーマを再度プレートし、再びスクリーニングし、なおもヒトIgGについてポジティブであれば、モノクローナル抗体を限界稀釈によって少なくとも2回サブクローニングすることができる。その後、安定なサブクローンをインビトロで培養し、特性決定のために組織培養培地で少量の抗体を生じさせることができる。
【0041】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体の精製のための2リットルのスピナーフラスコの中で増殖させることができる。上清を濾過し、プロテインA−セファロース(Pharmacia社,Piscataway,NJ.)でのアフィニティークロマトグラフィーの前に濃縮することができる。溶離したIgGは、純度を保証するために、ゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによってチェックすることができる。緩衝溶液はPBSに交換することができ、その濃度は減衰係数1.43を使用してOD280で決定できる。当該モノクローナル抗体は、一定分量に分けられ、−80℃で保存され得る。
【0042】
完全ヒト抗体はまた、組換えファージの表面にヒト抗体タンパク質を提示及び産生するように遺伝子操作されたファージを使用するファージディスプレイライブラリーから産生させることもできる。任意の特定の標的に対して高い親和性と特異性とを有する単鎖抗体がスクリーニングによって選択され、その後、抗体配列が、組換え完全ヒト抗体を産生するためにファージから単離され得る。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当該分野で確立されている。
【0043】
本発明の完全ヒトモノクローナル抗体はまた、免疫化されるとヒト抗体応答を生じ得るようにヒトの免疫細胞が再構成されているSCIDマウスを使用して調製することもできる。そのようなマウスは、例えば、米国特許第5,476,996号及び同第5,698,767号に記載されている。
【0044】
所望される場合には、抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAを単離することができ、そして、発現ベクターに挿入されて組換え完全ヒト抗体を産生させるのに適した発現宿主にトランスフェクトされるDNA構築物を生じさせるために、任意の所望されるヒト定常領域、又は、修飾されたヒト定常領域をコードするDNAに融合させることができる。このように、本発明の抗体はまた、例えば、当該分野で周知であるように、組み換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマで産生させることもできる。
【0045】
例えば、抗体又はその抗体断片を発現させるためには、部分的又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング又はPCR増幅)によって得ることができ、当該DNAは、遺伝子が転写及び翻訳の制御配列に動作可能にリンクされるように発現ベクターに挿入することができる。本明細書中では、「動作可能にリンクされる」との語は、ベクター中の転写及び翻訳の制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節すべく意図されたそれらの機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中に連結されることを意味するように意図されている。発現ベクターと発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子は別のベクターに挿入することができ、また通常は、各遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。
【0046】
抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的な制限部位の連結、又は、制限部位が存在しない場合は平滑末端の連結)によって発現ベクターに挿入される。本明細書中に記載される抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、VHセグメントがベクター中の重鎖定常(CH)セグメント(単数又は複数)に動作可能に連結され、VKセグメントがベクター中の軽鎖定常(CL)セグメントに動作可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクター中にそれらを挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの完全長の抗体遺伝子を作製するために使用され得る。
【0047】
加えて、又は代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドであってよく、また、異種シグナルペプチド(すなわち、免疫グロブリン以外のタンパク質に由来するシグナルペプチド)であってもよい。
【0048】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞での抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保持する。「調節配列」との語は、当該分野で周知であるように、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、及び、他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むように意図される。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択や、所望されるタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得ることは当業者に認識されるであろう。
【0049】
哺乳動物宿主細胞での発現にとって好ましい調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーのような、哺乳動物細胞中で高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーター又はβ−グロビンプロモーターのような非ウイルス調節配列が使用される場合がある。なお更に、SV40初期プロモーター及び1型ヒトT細胞白血病ウイルスの長末端反復に由来する配列を含むSRαプロモーターシステムのような、異なるソースに由来する配列からなる調節エレメントが使用される場合もある。
【0050】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択マーカー遺伝子のような、更なる配列を保持する場合がある。当該分野で周知であるように、選択マーカー遺伝子は、その中にベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする。例えば、通常は、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートのような薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に対して付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞において使用される)及びneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。
【0051】
軽鎖及び重鎖の発現のためには、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクター(単数又は複数)が標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」との語の様々な形態は、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクションなど、を含むように意図される。原核生物宿主細胞及び真核生物宿主細胞のいずれにおいても本発明の抗体を発現させることは理論的には可能であるが、そのような真核生物細胞、特に哺乳動物細胞は、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体の構築及び分泌を行う可能性が原核生物細胞よりも高いと思われるので、真核生物細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が最も好ましい。抗体遺伝子の原核生物での発現は、活性な抗体の高収率な産生には効果が薄いと報告されている。
【0052】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(当該分野で公知のdhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されると、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現を可能にする十分な期間、又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地中への抗体の分泌を可能にする十分な期間、当該宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収できる。
【0053】
本発明の更なる態様は、配列番号49〜53とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のDNA配列、及び/又は、配列番号54〜58とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のDNA配列、及び/又は、配列番号59〜63とそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される第3のDNA配列を含む完全ヒト抗VAP−1抗体の重鎖可変領域をコードするDNA分子を提供することであり、上記DNA配列はそれぞれ、CDR領域1〜3をコードする。特定の態様に従うと、本発明により、重鎖可変領域をコードし、配列番号64〜68とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるDNA配列を含むDNA分子が提供される。
【0054】
本発明のなお更なる態様は、完全ヒト抗VAP−1抗体軽鎖可変領域をコードし、配列番号69〜73とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第1のDNA配列、及び/又は、配列番号74〜78とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第2のDNA配列、及び/又は、配列番号79〜83とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択される第3のDNA配列を含むDNA分子を提供することであり、上記DNA配列はそれぞれ、CDR領域1〜3をコードする。特定の態様に従うと、本発明により、重鎖可変領域をコードし、配列番号84〜88とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるDNA配列を含むDNA分子が提供される。
【0055】
一実施形態においては、本発明により、組換え体8C10、8A4、3F10、4B3及び5F12のような組換え完全ヒト抗VAP−1抗体をコードするDNA分子が提供される。組換え体r8C10(BTT−1023)においては、重鎖は配列番号89に示されるポリヌクレオチド配列を含むDNAによってコードされ、軽鎖は配列番号90に示されるポリヌクレオチド配列を含むDNAによってコードされる。
【0056】
【表2】
【0057】
本発明によっては更に、上記ヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。適切な発現ベクターとしては、哺乳動物宿主細胞でのタンパク質の発現及び分泌に重要なエレメントを含むベクターが挙げられる。当該ベクターには、ヒト重鎖定常領域もしくは軽鎖定常領域、又は、その両方をコードするDNAが含まれ得る。同じベクターが、重鎖及び軽鎖の両方の発現に使用され得るか、あるいは、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域のいずれかを含む異なるベクターが使用され得る。
【0058】
本発明の一実施形態においては、発現ベクターには、FcγRI結合を減少させ、抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を低下させるために、米国特許第5,624,821号に記載されているようにアミノ酸235位のロイシンをアラニンで置換することによって修飾されたヒトIgG4の重鎖定常領域が含まれる。Fc領域中の残基のナンバリングは、KabatのEU指数のナンバリングである。
【0059】
本発明によってはなお更に、本発明の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクターシステムが、完全ヒト抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列の発現に使用され得る。細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli))及び他の微生物系が、具体的には、Fab及びF(ab’)2断片のような抗体断片、特に、Fv断片及び単鎖抗体断片(例えば、単鎖Fv’s)の発現に使用され得る。真核生物(例えば、植物、酵母又は哺乳動物)宿主細胞発現システム、あるいは、トランスジェニック植物及びトランスジェニック動物が、完全な抗体分子を含むより大きな抗体産物の産生に、及び/又は、グリコシル化された生成物が必要である場合に使用され得る。適切な哺乳動物宿主細胞としては、以上の説明から明らかなように、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞や、骨髄腫細胞株、又は、ハイブリドーマ細胞株が挙げられる。好ましい宿主細胞は、CHO細胞である。
【0060】
本発明の更なる態様は、適切なプロモーター及び分泌シグナルの制御下で本発明の完全ヒト抗体重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列を含む発現ベクターを用いて、宿主細胞をトランスフェクトする工程と、個々の鎖が発現されるような条件下で上記宿主細胞を増殖させる工程と、培養物から上記の発現及び構築がなされた完全ヒト抗VAP−1抗体、又は、その生物学的に活性な誘導体を単離する工程とを含むプロセスによって、組換え完全ヒト抗VAP−1抗体を産生するための方法を提供することである。ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション方法、及び培養方法は当該分野で周知である。
【0061】
本発明によっては更に、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、有効成分として本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体とを含む薬学的組成物が提供される。本発明の組成物には、アンタゴナイズが必要な患者においてVAP−1の生物学的リガンドに対する患者の本来のVAP−1の結合、及び、白血球上に提示されたVAP−1リガンドに対して特異的な患者の本来のVAP−1結合に(完全に又は部分的に)アンタゴナイズするために十分な量の本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体が含まれる。
【0062】
本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体の投与量及び投与のためのレジュメは、炎症関連疾患の処置の臨床分野の当業者によって容易に決定され得る。一般的には、完全ヒト抗VAP−1抗体処置の投与量は、以下のような考慮事項によって変わるであろう:処置される患者の年齢、性別、及び全体的な健康状態;存在する場合には現在行われている処置の種類;処置の頻度と所望される効果の性質;組織損傷の程度;症状の持続期間;並びに、個々の医師によって調整される他の変数。所望される用量は、所望される結果を得るために1回以上のアプリケーションにおいて投与することができる。本発明の薬学的組成物は、単位投薬形態で提供され得る。
【0063】
本発明の薬学的組成物は、投与のための任意の適切な薬理学的担体で投与することができる。これらは、ヒト又は動物患者のVAPに媒介される病状の状況に予防的、緩和的、阻止的、又は、治癒的効果がある任意の形態で投与することができる。非経口投与及び局所投与のための本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体の薬学的組成物としては、滅菌の水性又は非水性溶媒、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、及び注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、水−アルコール溶液(生理食塩水を含む)、及び、緩衝化された医療用非経口ビヒクル(塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース溶液、デキストロース及び塩化ナトリウムの溶液、ラクトース含有リンガー溶液、又は、固定油を含む)が挙げられる。静脈内投与用のビヒクルとしては、体液、栄養補給剤、電解質補給剤(リンガーデキストロースをベースにしたもの)などが挙げられる。
【0064】
本発明の水性組成物には、標的のpH範囲次第で、ナトリウム及びカリウムのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩のような適切な緩衝化剤、又は、グリシン緩衝液が含まれ得る。浸透圧調整剤として塩化ナトリウムの使用も有用である。組成物には、安定化剤又は保存剤のような他の賦形剤が含まれ得る。有用な安定化賦形剤としては、界面活性剤(ポリソルベート20及びポリソルベート80、ポロキサマー407)、ポリマー(ポリエチレングリコール、ポビドン)、炭水化物(スクロース、マンニトール、グルコース、ラクトース)、アルコール(ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール)、適切なタンパク質(アルブミン)、適切なアミノ酸(グリシン、グルタミン酸)、脂肪酸(エタノールアミン)、抗酸化物質(アスコルビン酸、システインなど)、キレート剤(EDTA塩、ヒスチジン、アスパラギン酸)又は金属イオン(Ca、Ni、Mg、Mn)が挙げられる。有用な保存剤には、ベンジルアルコール、クロロブタノール(chlorbutanol)、塩化ベンズアルコニウム、及び、場合によってはパラベンがある。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、要求に応じて再構成される濃縮形態又は粉末の形態で提供され得る。そのような場合には、上記注射/注入用賦形剤用の溶液のための粉末の処方物が使用され得る。凍結乾燥の場合には、ポリマー(ポビドン、ポリエチレングリコール、デキストラン)、糖(スクロース、グルコース、ラクトース)、アミノ酸(グリシン、アルギニン、グルタミン酸)、及び、アルブミンを含む特定の抗凍結剤が好ましい。再構成のための溶液がパッケージングに加えられる場合には、これは、例えば、注射用の純水、又は、塩化ナトリウム溶液、又はデキストロースもしくはグルコース溶液から構成され得る。
【0066】
本発明の組成物は、炎症反応を起こす任意の症状の診断又は処置に適しており、当該炎症反応では、VAP−1の接合が、血液から炎症部位への白血球の移動及び浸潤を媒介することに関与する。従って、本発明の組成物は、反応性関節障害、感染後関節障害、炎症性多発性関節障害、全身性結合組織病、炎症性脊椎障害、筋炎、滑膜炎、ライター病、血清反応陽性関節リウマチ、他の関節リウマチ、関節外リウマチ、乾癬性及び腸疾患性関節炎、若年性関節炎、不特定関節炎(unspecified arthritis)、結節性多発動脈炎及び関連する症状、他の壊死性脈管障害、皮膚多発性筋炎、全身性硬化症、結合組織の全身性病変を伴う他の疾患、強直性脊椎炎、並びに他の炎症性脊椎障害のような、炎症性関節炎及び結合組織の疾患の診断又は処置に有用である。加えて、クローン病及び潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、水疱性疾患、皮膚炎、丘疹鱗屑性障害、紅斑、硬化性萎縮性苔癬、外陰部萎縮性苔癬(craurosis vulvae)、円板状エリテマトーデス、モルフェア、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、不特定接触性皮膚炎(unspecified contact dermatitis)、乾癬、多形性紅斑のような皮膚病、多発性硬化症、炎症性ニューロパシー、炎症性筋疾患、急性散在性脳脊髄炎、中枢神経系の血管炎、シェーグレン症候群、糖尿病、全身性エリテマトーデス、喘息及び炎症性肝疾患、グレーヴス病及び甲状腺炎、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎を含む眼の炎症、アルコール性肝炎、同種移植、異種移植、糸球体腎炎のような他の炎症性疾患、並びに、心筋梗塞及び脳卒中後の再灌流傷害及び急性の炎症症状が、本発明の組成物による診断又は処置に適切であり得る。
【0067】
治療的に有用な本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、所望される作用部位に対する抗体の標的化を提供する他の薬剤に対して、化学的操作及び遺伝子操作のいずれかによって結合させられ得る。あるいは、抗体に対して更なる特性、特に、VAP−1結合によって媒介される有害な作用の緩和を促進する抗体の能力を高める特性の増強又は提供のために、化学的操作及び遺伝子操作のいずれかによって、他の化合物が本発明の抗体に対して結合させられ得る。
【0068】
本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、検出可能な抗体を提供するために、化学的操作及び遺伝子操作のいずれかによって標識され得る。そのように標識された抗体は、ヒトの炎症部位の画像化に、特に、炎症部位のインビボでの免疫シンチグラフィーイメージングに有用なツールであろう。このタイプの画像化は、より煩雑で費用のかかる現在使用されている白血球画像化法にとって代わる可能性がある。画像化の目的のためには、抗体断片の使用が抗炎症治療に対する完全な抗体のアプローチよりも好ましく、完全ヒト抗体に由来する断片は、それらのキメラ又はマウス等価物よりも更に安全であるはずである。
【0069】
別の態様においては、本発明は、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体を有効なレベルで、体内の炎症の処置が必要なヒト患者に投与することによる、ヒトの体内の炎症をインビボで弱めるか又は処置する方法に関する。「処置」との語、又は、「処置すること」との語は、VAP−1の接着事象によって媒介される疾患の予防、緩和、阻止又は治癒が含まれ得る目的のために、被験体への完全ヒト抗VAP−1抗体の投与を含むように意図される。本発明の方法の対象である特定の抗VAP−1抗体は、精製された本発明の組換え完全ヒト抗VAP−1抗体である。
【0070】
完全ヒト抗VAP−1抗体の「有効レベル」は、VAP−1によって媒介される事象の有害な影響が改善される最小レベルを意味する。本発明の抗体の有効量は、白血球浸潤が有害であるか又は望ましくない炎症部位への白血球浸潤を阻害するために、白血球の内皮結合をブロックするか又は部分的にブロックするために十分な量である。完全ヒト抗VAP−1抗体の投与量及び投与レジュメは、炎症関連疾患の処置の臨床分野の当業者によって容易に決定され得る。好ましくは、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、0.01〜20mg/kgの範囲、より好ましくは0.1〜10mg/kgの範囲、最も好ましくは0.5〜5mg/kgの範囲の用量で、1週間に1回から3ヶ月に1回の間の範囲の間隔で血管内に提供される。あるいは、本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体は、0.1〜20mg/kgの範囲、より好ましくは0.2〜10mg/kgの範囲、最も好ましくは0.5〜5mg/kgの範囲の用量で、1週間に1回から3ヶ月に1回の間の範囲の間隔で皮下に提供される。
【0071】
以下の実施例は、本発明の更なる詳細をより明確にするために提供されるが、本発明の範囲を限定するようには意図されない。更なる適用及び使用は、当業者(すなわち、炎症性疾患及びその処置に精通している医師)に容易に理解される。
【実施例】
【0072】
〔実施例1〕
〔ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマの単離〕
ヒト免疫グロブリントランスジェニックマウス株(HuMAb Mouse(登録商標);Medarex Inc.社製)を、ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞を作成するために使用した。HuMAb mouse(登録商標)には、再配置されたヒト重鎖(μ及びγ)とκ軽鎖との免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座が、内因性のμ鎖及びκ鎖遺伝子座を不活化させる標的変異とともに含まれる(例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859を参照のこと)。従って、マウスは、マウスIgM又はκの低い発現を示し、そして免疫化に反応して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を受けて、高親和性のヒトIgGκモノクローナル抗体を生じる。
【0073】
HuMabマウスの調製及び使用、並びに、そのようなマウスが保持するゲノム修飾は、例えば、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;及び同第5,770,429号(全て、Lonberg and Kay);Suraniらの米国特許第5,545,807号;PCT公開番号WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884及びWO99/45962(全て、Lonberg and Kay);並びに、KormanらのPCT公開番号WO01/14424に記載されている。
【0074】
組換えヒトVAP−1(rhVAP-1)で免疫化されると、このトランスジェニックマウスはヒトVAP−1に特異的なヒトIgG抗体を産生する。
免疫化の計画は以下のとおりであった:マウスを、完全フロイントアジュバントと混合した、ヒトVAP−1 cDNAを含み、かつ、ヒトVAP−1を発現する発現プラスミド(Smithら,J.Exp.Med.(1998)188:17-27)で、続いて、不完全フロイントアジュバントと混合したrhVAP−1又はRibiアジュバントと混合したrhVAP−1により、安定にトランスフェクトされたCHO細胞から精製されたrhVAP−1の複数回の腹腔内注射及び皮下注射によって免疫化した。免疫化したマウス由来の血清試料を、固定したrhVAP−1を用いた抗体捕捉ELISA、及び、ヒトVAP−1 cDNAを含み、ヒトVAP−1を発現する発現プラスミドで安定にトランスフェクトされたCHO細胞を用いた蛍光微量アッセイ技術(FMAT:Fluorometric Microvolume Assay Technology)による免疫状態のモニタリングのために分析した。rhVAP−1の最後のブースト注射を、脾臓摘出前に静脈内及び腹腔内に投与した。
【0075】
ヒト抗VAP−1モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマは、P3x63Ag8.653骨髄腫細胞(ATCC CRL 1580)を、fusionogenとしてポリエチレングリコール(PEG)を用いて上記のように免疫化したマウスの脾細胞と融合させることによって得られた。ハイブリドーマ上清を、最初に、κ軽鎖を持つヒトIgG抗体の存在についてELISAによってスクリーニングした。その後、rhVAP−1についてはELISAによって、また、ヒトVAP−1 cDNAを含む発現プラスミドで安定にトランスフェクトされたCHO細胞の表面上に発現されたVAP−1に対する結合についてはFMATによって、ヒトIgG陽性細胞をスクリーニングした。5つのヒト抗VAP−1 IgG1ハイブリドーマクローン、すなわち、5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10を選択した。
【0076】
〔実施例2〕
〔完全ヒト抗体5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10のVAP−1結合特性〕
時間分解免疫蛍光アッセイを、rhVAP−1に対する5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10の結合を試験するために定量的に使用した。マイクロタイタープレートをrhVAP−1でコーティングし、その後、ウシ血清アルブミン溶液でブロックした。続いて、2〜4320ng/mlの間の抗体量を加えてrhVAP−1に結合させ、結合した抗体を、ユーロピウム結合マウス抗ヒト抗体(PerkinElmer Inc.社製)によって検出した。時間分解蛍光(Victor3 multilabel counter,PerkinElmer Inc.社製)を615nmで測定することによって、標識を検出した。蛍光カウント数は、その標的に結合した抗体の量と直接の相関関係がある。その後、試料のデータをリファレンスの標準曲線と比較して分析した。データは、5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10がrhVAP−1に結合することを示しており、その親和性(Kd)を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
〔実施例3〕
〔完全ヒト抗体5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10の可変領域のcDNAの調製、クローニング及び配列決定〕
組換え抗体を構築するために、実施例1で得られた抗体に由来するヒト重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードするcDNAを単離し、配列分析のためのプラスミドベクターにクローニングした。
【0079】
ヒト免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のcDNAクローンを、以下の方法で、抗VAP−1を発現するハイブリドーマ細胞5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10から得た。全RNAを、Qiagen社製RNeasyキットを使用して、5×106個のハイブリドーマ細胞から調整した。VL cDNA及びVH cDNAを、RNAの逆転写、その後のBD Biosciences Clontech社製「SMART RACE cDNA増幅キット」及び高性能な「Advantage−HF 2 PCRキット」を使用した「cDNA末端の迅速増幅(RACE:rapid amplification of cDNA ends)」手順によって調製した。その後、PCR増幅産物を精製し、当該PCR産物をベクターpCR4−TOPO TA(Invitrogen社製)にクローニングし、大腸菌株TOP10(Invitrogen社製)に形質転換した。5F12、4B3、3F10、8A4及び8C10のそれぞれのVL及びVHのプラスミドクローンについてのミニプレップDNAの配列が決定され、そのヌクレオチド配列及び推定される対応するタンパク質配列を、図1〜6に示す。
【0080】
〔実施例4〕
〔組換え体r8C10 mAbを発現させるための哺乳類発現ベクターの構築〕
8C10可変領域を、CHO細胞中で機能的組換え体r8C10抗体(BTT−1023と命名)を産生させるために、以下に記載するように、適切な重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む適切な哺乳類発現ベクターに挿入した。
【0081】
抗体のFc領域が免疫応答を指示する抗体/抗原複合体の能力を決定することは、公知である。その目的は、血管内皮に対する白血球の結合をブロックし、エフェクター機能を回復させることのない治療用抗体を産生することであった。従って、米国特許第5624821号に記載されているように、アミノ酸235位のロイシンをアラニンで置換することにより、FcγRI結合を減少させ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を低下させるように修飾されたヒトIgG4の重鎖定常領域を、発現ベクター中に使用した。
【0082】
8C10 VL cDNA及びVH cDNAを、5’末端に最適なKozakコンセンサス配列と適切なクローニング部位とを含むように、PCR Supermix(Invitrogen社製)を使用して増幅させた。正方向PCRプライマーと逆方向PCRプライマーとを、クローニングのための適切な制限部位を有するように設計した。天然のVLシグナル配列及びVHシグナル配列をそれぞれ含むPCR産物を精製し、228位のセリンからプロリンへの変異及び235位のロイシンからアラニンへの変異を含み、ヒトκ軽鎖定常領域及びヒトγ4重鎖を保持し、pICO−g4PA(VAP1.8C10)と呼ばれるプラスミドベクターに、当該PCR産物をクローニングしてプラスミドを得て、その後、当該プラスミドを大腸菌TOP10細胞に形質転換した。当該プラスミドのVL領域及びVH領域の配列を、クローニングしたPCR産物の完全性を確認するために決定した。
【0083】
5’末端にHindIIIクローニング部位及び最適なKozakコンセンサス配列を含み、3’末端にEcoRIクローニング部位を含むように、鋳型としてのpICO−g4PA(VAP1.8C10)プラスミドとPCR Supermixとを利用して、8C10軽鎖をPCRによって増幅させた。
天然の8C10軽鎖シグナル配列を含むPCR産物を制限酵素HindIII及び制限酵素EcoRIで切断し、精製し、Lonza Biologics社から入手した発現ベクターpEE12.4のHindIII部位及びEcoRI部位にクローニングして、プラスミド2116を作製した。当該2116プラスミドをDH5α Max Efficiency(Invitrogen Inc.社製)コンピテント大腸菌セルに形質転換した。
【0084】
5’末端にHindIIIクローニング部位及び最適なKozakコンセンサス配列を含み、3’末端にEcoRIクローニング部位を含むように、鋳型としてのpICO−g4PA(VAP1.8C10)プラスミド及びPCR Supermixを利用して、8C10重鎖をPCRによって増幅させた。
天然の8C10重鎖シグナル配列を含むPCR産物を、HindIII及びEcoRIで切断した。8C10重鎖含有断片を精製し、そしてLonza Biologics社から入手したLonzaベクターpEE6.4のHindIII部位及びEcoRI部位にクローニングして、プラスミド2117を作製した。当該2117プラスミドをDH5α Max Efficiencyコンピテントセルに形質転換した。
【0085】
プラスミド2116及びプラスミド2117を制限酵素SalI及び制限酵素NotIで切断し、それぞれの切断物に由来する最長の断片をT4 DNAリガーゼを使用して連結させて、プラスミド2118[2118−pEE12.4−VAP1(8C10)]を得た。プラスミド2118をDH5a Max efficiencyコンピテントセルに形質転換した。重鎖及び軽鎖の全体をコードするDNAの配列を、当該配列の正確性及び完全性を確認するために決定した。
【0086】
〔実施例5〕
〔CHO細胞での組換え完全ヒト抗体BTT−1023の発現〕
完全ヒト抗体BTT−1023を、以下のようにしてCHO細胞から生じさせた。
2118−pEE12.4−VAP1(8C10)プラスミドDNAを制限酵素PvuIで直鎖状にした。当該DNAを、エレクトロポレーションによって、Lonza Biologics社から入手したCHOK1SV細胞にトランスフェクトした。
その後、当該細胞を50μL/wellで、既知組成(CD)CHO(カタログ番号#04−0119,Gibco Invitrogen Inc.)感染後培地(L−グルタミン非含有CD CHO+1×GS(グルタミン合成酵素)補助剤+2.16mg/Lのチミジン)における96wellプレート(2.5×103細胞/well)にプレートした。
【0087】
次いで24時間後、プレートに、150μL/wellのCD CHO選択培地(L−グルタミン非含有CD CHO+1×GS補助剤+2.16mg/Lのチミジン+66.6μMのMSX(メチオニンスルホキシミン)又は133.3μMのMSX)を加え、最終的に全体的なMSX濃度を50μM又は100μMとした。MSX耐性コロニーによる抗体産生のレベルを、ヒトIgGサンドイッチELISAによって測定した。
高レベルの抗体を産生するコロニーを、CD CHO増殖培地(L−グルタミン非含有CD CHO+1×GS補助剤+2.16mg/Lのチミジン+50μMのMSX又は100μMのMSX)で、最初は24ウェルプレートで、その後T−フラスコで増殖させるために選択した。
【0088】
細胞を、5バイアルのトランスフェクトーマセルバンク(TCB)の調製前に震盪フラスコの中で増殖させた。細胞株15B7を50μMのMSXプレートから選択し、50μMのMSXを含むCD CHO増殖培地中で維持した。抗体を、上記のようにトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによって産生させて条件培地を生じさせ、これからBTT−1023を、培養上清からモノクローナル抗体を精製するための標準的な技術を使用して精製することができた。
【0089】
〔実施例6〕
〔組換え完全ヒト抗体BTT−1023の結合特性〕
時間分解免疫蛍光アッセイを、rhVAP−1に対するBTT−1023の結合を定量的に試験するために使用した。マイクロタイタープレートをrhVAP−1でコーティングし、その後、ウシ血清アルブミン溶液でブロックした。続いて2〜4320ng/mlの間の量のBTT−1023を加えてVAP−1に結合させ、結合したBTT−1023をユーロピウム結合マウス抗ヒト抗体(PerkinElmer Inc.社製)によって検出した。時間分解蛍光(Victor3 multilabel counter,PerkinElmer Inc.社製)を615nmで測定することによって、標識を検出した。蛍光カウント数は、その標的に結合したBTT−1023の量と直接の相関関係がある。その後、試料のデータをリファレンスの標準曲線と比較して分析した。データは、BTT−1023が組換体ヒトVAP−1に対して、0.38nMの親和性(Kd)で結合することを示している。
【0090】
Biacore表面プラズモン共鳴アッセイを使用するリアルタイム直接結合アッセイを、BTT−1023に対するrhVAP−1の結合キネティクスを分析するために使用した。ストレプトアビジンがコーティングされたチップ(Biacore AB)に固定されたビオチニル化プロテインG’(Sigma社製)を移動相からBTT−1023を捕捉するために使用した。それぞれの実行は2段階からなった:BTT−1023 mAbの1回の注射及びリガンド結合分析物(rhVAP−1)の注射。一定量のrhVAP−1を、mAbの飽和濃度についての分析物(リガンド)として使用した。実験はBIAlite機器(Biacore AB)を使用して行い、データはBiacoreソフトウェアを使用して分析した。当該データは、組換えヒトVAP−1がBTT−1023に対して0.13nMの親和性(Kd)で結合することを示している。
【0091】
完全ヒトBTT−1023のヒトVAP−1に対する結合を、免疫蛍光染色及びフローサイトメトリーによって分析した。フローサイトメトリーのためには、ヒトVAP−1 cDNAを発現するラット内皮細胞株(Ax細胞)由来のトランスフェクトされた細胞(Smithら,J.Ex.Med.(1998)188:17−27)を使用した。これらを、20%のFCS(ウシ胎児血清)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸Na、10μMのβ−ME(β−メルカプトエタノール)、1%の非必須アミノ酸、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び、0.75mg/mlのジェネティシン(Geneticin(商標))を補充したRPMI 1640培地(Sigma社製)中で、175cm3のフラスコ内で増殖させた。細胞を遊離させるために、これらをPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)で2回洗浄し、10mlの細胞解離緩衝液(Cell Dissociation Buffer)(GibcoBRL社製)中で37℃で3分間インキュベートした。培地10mlを添加した後、細胞をペレット状にし(5分、1000g、室温)、洗浄緩衝液(Wash Buffer)[PBS、0.1%(w/v)のBSA(ウシ血清アルブミン)、0.1%(v/v)のNaN3]中に106細胞/mlで再懸濁し、氷上で維持した。
【0092】
細胞懸濁液(100μl/well)を96wellプレートに移し、細胞をペレット状にし(4分、1000g、10℃)、そして抗体溶液の100μlのアリコートをウェルに加えた。氷上で30分間のインキュベーションの後、細胞を150μlの洗浄緩衝液/ウェルで2回洗浄し、その後、100μlの39μg/mlのFITC結合(フルオレセインイソチオシアネート)抗ヒトIgG(Fc特異的、Sigma社製)とともに氷上で30分間インキュベートした。最後に、先に記載したように細胞を洗浄し、1%(v/v)のホルムアルデヒドを含む100μlの洗浄緩衝液を加えて固定し、フローサイトメータでの分析まで4℃に保った。コントロール試料は、FITC結合抗ヒトIgG二次抗体だけで染色した。
【0093】
全てのフローサイトメトリー試料をFACScan(商標)(Becton Dickinson社製)で分析した。個々の試料について、最低でも10000のゲートイベント(gated event)についてのデータを収集し、蛍光の幾何学的平均チャンネルをLysys IIソフトウェアを使用して計算した。
BTT−1023は、それらの表面にVAP−1を発現するトランスフェクトされたAx細胞の染色によって示されるように、ヒトVAP−1に特異的に結合した(図7)。
【0094】
〔実施例7〕
〔BTT−1023の機能的特性〕
インビトロでの移動アッセイを、内皮単層を通り抜ける白血球の移動を阻害するBTT−1023の機能的能力を試験するために使用した。それらの表面上に組換えヒトVAP−1を発現するようにトランスフェクトされたAxラット内皮細胞の単層を、Transwell装置(Becton Dickinson社製)の上部チャンバーにて増殖させた。新たに単離したヒト末梢血単核細胞を上部チャンバーに配置し、2時間かけて底部チャンバー中の単球の化学接着ペプチドfMLP(N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン、100nM)に向かって移動させた。当該単層をBTT−1023、BTT−1008(ヒト定常領域を有する非結合ネガティブコントロール抗体)(Kirtonら,Eur.J.Immunol.(2005)35:3119−30)、及び、BTT−1002(VAP−1に媒介される接合及び移動を遮断(ブロック)することが知られているポジティブコントロールであるキメラ抗VAP−1 mAb)のいずれかで処理した。単層から移動した細胞を底部チャンバーから収集し、顕微鏡でカウントした。
【0095】
BTT−1023は、10ng ml−1で、内皮細胞単層からの細胞の移動を有意に減少させ、そして1μg ml−1で移動をブロックした。ネガティブコントロール抗体BTT−1008は、1μg ml−1では効果がなかったが、一方、ポジティブコントロール抗体BTT−1002もまた、図8に見られるように、1μg ml−1で移動を完全にブロックした。
【0096】
〔実施例8〕
〔キメラ抗体BTT−1002と比較した組換え完全ヒト抗体BTT−1023の改善された薬物動態特性〕
2匹の雌のマーモセット(非ヒト霊長類)にそれぞれ25mg/kgのBTT−1023を、ボーラス静脈内注射によって投与した。BTT−1023濃度の分析用の血液試料を、投与後10分、1時間、3時間、6時間、24時間、48時間、72時間及び144時間で収集した。
【0097】
マーモセットの血清中の分析物(BTT−1002及びBTT−1023のいずれか)濃度の定量のための時間分解免疫蛍光アッセイは、ストレプトアビジンをコーティングしたマイクロタイタープレート上で、捕捉物質(capturer)として、ビオチンが結合させられた分析物特異的ウサギポリクローナル抗体を利用する。そのようなポリクローナル抗体は、BTT−1002及びBTT−1023のいずれかでのウサギの反復免疫化、血清の収集、並びに、得られた抗BTT−1002ポリクローナル抗体又は抗BTT−1023ポリクローナル抗体の親和性精製によって作成した。結合した分析物の検出は、ユーロピウム結合二次抗体を使用して行った。標識は、時間分解蛍光(Victor3 multilabel counter,PerkinElmer Inc.社製)を615nmで測定することによって検出した。蛍光カウント数は、試料中に存在する分析物の量と直接の相関関係がある。その後、試料のデータをリファレンスの標準曲線と比較して分析した。
【0098】
薬物動態パラメーターを、非コンパートメント分析を使用して決定した。40mg/mlを2匹の雌のマーモセットのそれぞれに静脈内投与した、BTT−1002を用いて行った同様の研究から導かれたデータと比較すると、完全ヒトVAP−1抗体は、改善された経時的血清濃度(AUC)プロフィールと延長された排出半減期とを有する改善された薬物動態特性を示す(表4)。
【0099】
【表4】
【0100】
〔実施例9〕
〔完全ヒト抗体の薬学的組成物〕
注射用又は注入用の溶液、若しくはそのような溶液用の濃縮物として提供され、非経口投与に適している本発明の完全ヒト抗VAP−1抗体を含む薬学的組成物の例。
1mlについての成分のパーセント量
抗VAP−1抗体 0.1〜10%
塩化ナトリウム又は塩化カリウム 0.5〜1.5%
リン酸水素二ナトリウム二水和物 0.1〜2%
リン酸二水素ナトリウム又はリン酸二水素カリウム 0.1〜2%
スクロース 0.5〜10%
ポリソルベート20又はポリソルベート80 0.01〜1%
注射用水 1mlになるように
1mlについての成分のパーセント量
抗VAP−1抗体 0.1〜10%
塩化ナトリウム 0.5〜1.5%
EDTA/DTPA 0.01〜1.5%
マンニトール 0.1〜5%
ポリソルベート20又はポリソルベート80 0.01〜1%
二水和物としてのクエン酸ナトリウム 0.5〜5%
注射用水 1mlになるように
【0101】
〔実施例10〕
〔炎症のインビボモデルにおける完全ヒト抗体の有効性〕
〔アカゲザルのコラーゲン誘導性関節炎における完全ヒトVAP−1抗体処置の有効性〕
完全ヒト抗体の効果は、関節炎指標におけるBTT−1023抗体の有用性についてのデータ収集の助けとなるアカゲザルのコラーゲン誘導性関節炎(CIA)のモデルにおいて評価される。
【0102】
ウシII型コラーゲンで免疫化された99%のCIA指数を有するMHC A26に関してネガティブである成体のアカゲザルが、研究のために選択される。10匹の動物は、5匹の動物の2つの群に分けられる。関節炎は、動物の背中の10箇所のスポット中に、完全フロイントアジュバント中の3〜5mgのウシコラーゲンを注射することによって誘導される。このアプローチを使用すると、関節炎は、免疫化後3〜5週間で顕性化し、通常、7〜9週間持続する。
【0103】
1週間に2回の1〜50mg/kgの間の用量の完全ヒト抗体を用いた4週間の静脈内処置は、≧20mg/lのCRPレベルが2回の連続する記録において検出された時点で開始される。コントロールの動物には、ビヒクル溶液が投与される。動物の症状は、総体的臨床スコア(0=関節炎の臨床兆候なし、0.5=発熱(>0.5℃)、1=無気力、可動性の低下及び食欲不振、2=体重減少、四肢及び/又は関節の微熱、痛みがあるが軟部組織腫脹(STS)は伴わない、3=関節の中度の紅化及びSTS、四肢の正常な柔軟性、4=関節の重度の紅化及びSTS、関節の硬直を伴う、5=安楽死が指示される重症関節炎)、及び、CIA重傷度スコア(−から+++のスケールで評価された軟部組織腫脹、柔軟性及び捻髪音の重篤度:−なし、±疑わしい、+中度、++重度、+++極度)を使用して評価した。全てのこれらのパラメーターは、半定量的スケールであるCIA重篤度の総体的臨床スコアをもたらす。
【0104】
〔VAP−1ヒト化マウスのコラーゲン抗体誘導性関節炎の処置における完全ヒトVAP−1抗体の有効性〕
内皮上にヒトVAP−1を発現するトランスジェニックマウスのコラーゲン抗体誘導性関節炎に対する完全ヒト抗体の有効性が評価され得る。急速に進行する関節炎は、抗体カクテルを、それに続いて3日後に腹腔内にリポ多糖を注射することによって誘導される。完全ヒト抗体の3mg kg−1、10mg kg−1又は30mg kg−1の静脈内用量が、1日目、3日目及び7日目にマウスに投与される。コントロールの動物には、ビヒクルが投与される。コントロールとの比較における関節炎スコアの統計学的に有意な低下によって証明されるように、関節炎疾患の軽減が示され得る。
【0105】
〔乾癬のヒト化マウスモデルにおけるVAP−1抗体処置の有効性〕
ヒト化異種移植モデルの最近の確立及び検証は、この疾患の理解を深め、新しい薬物療法を試験するための有用なツールを提供した(Nickoloff BJ.Expert Opin.Investig.Drugs.(1999)8:393−401)。
このモデルでは、以前に説明されたように(Wrone−Smith T.ら J.Clin.Invest.(1996)98:1878−1887)、乾癬患者由来で非損傷性(non−lesional)の完全な厚みの皮膚生検が、およそ7〜9週齢の麻酔された重症複合免疫不全(SCID)マウスに移植される。当該動物には、疾患の誘導前に少なくとも2〜3週間、外科手術から回復するための余地を与えた。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、生検時に採取された血液試料から単離され、スーパー抗原SEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)で活性化させられる。静脈内及び皮内のいずれかでの異種移植片への活性化されたPBMCの注射によって、疾患が誘導される。
【0106】
完全ヒトVAP−1抗体又はビヒクルは、静脈内又は皮下に投与される。様々な期間の予防的及び治療的投与レジュメは、いずれも可能である。加えて、より詳細に細胞への浸潤に対する効果を調べるために、完全ヒトVAP−1抗体処置に続いて、標識されたヒトT細胞を静脈内に注射することができる。
処置期間の最後に、マウスは屠殺され、移植片は、周辺のマウスの皮膚と一緒に摘出され、ホルマリン中に固定されるか、或いは、窒素中で一瞬で凍結させられる。組織学的検査及び免疫組織化学的検査が、表皮厚み、細胞浸潤、及び、接合分子の発現における変化のような病理学的変化をスコアするために行われる。コントロールとの比較においてスコアの統計学的に有意な低下によって証明されるように、乾癬疾患の軽減が示され得る。
【0107】
〔VAP−1ヒト化マウスに対するCCl4の投与によって生じる肝臓の炎症の処置における完全ヒトVAP−1抗体の有効性〕
肝臓の炎症及び線維症に対する完全ヒトVAP−1抗体の効果が、CCl4の投与によって肝臓線維症を生じたマウスモデルにおいて評価される。内皮上にヒトVAP−1を発現するトランスジェニックマウスに、0.25ul/gのCCl4が腹腔内に1週間に2回、12週間にわたって注射される。12週間の全体にわたって、広範囲の肝臓の炎症及び瘢痕が生じるが、CCl4注射の中断後、当該瘢痕は完全に消散する。このモデルを使用して損傷を阻止し、既存の線維症を消散することにおいて、1週間に2回、1〜25mg/kgの間の用量で静脈内又は腹腔内に投与された完全ヒト抗体の有効性は、肝臓の病理学的及び組織学的変化をスコアすることによって調べられる。コントロールとの比較においてスコアの統計学的に有意な減少によって証明されるように、疾患の軽減が示され得る。
【0108】
〔麻酔されたウサギの急性心筋梗塞のモデルにおけるVAP−1抗体処置の有効性〕
左開胸が、麻酔され人工呼吸器が装着されたニュージーランドシロウサギに対して行われる。心臓が露出され、左冠状動脈(LCA)が単離され、閉塞される。完全ヒトVAP−1抗体が、閉塞の開始後25分で静脈内に投与される。抗体投与の5分後、閉塞が除去され、次いでその領域が6時間まで再灌流させられる。当該動物は、過剰量の麻酔薬の使用によって死亡させられ、心臓が摘出され、生理食塩水でリンスされる。再びLCAが閉塞され、Monastral又はEvans blueが心臓全体に灌流させられて、心筋を着色するが、リスクがある領域は着色されないまま残る。心臓が凍結させられ、左心室が薄い切片になるように切り分けられる。
【0109】
スライスされた切片全てとリスクがある領域とが、画像分析システムを使用して決定される。その後、当該切片は、リン酸緩衝化生理食塩水中の1%のトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)溶液とともにインキュベートされ、続いて10%の中性の緩衝化ホルマリン中でインキュベートされる。生存能力のある心筋はTTCインキュベーションによって赤色に着色され、従って染色されなかった組織領域を測定することによって梗塞領域が決定され、決定されたリスクがある領域の割合として表される。コントロールとの比較においてリスクがある領域の割合の統計学的に有意な減少によって証明されるように、組織損傷の減少が示され得る。
【0110】
〔ウサギのmBSA誘導性関節炎におけるVAP−1抗体処置の有効性〕
生理食塩水中に溶解したメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)は、等量の完全フロイントアジュバントと混合され、エマルジョンが調製される。ニュージーランドシロウサギは、14日の間をあけて、当該エマルジョンを2回皮内注射されて免疫化される。2回目の免疫化のおよそ10日後、血清が当該動物から収集され、mBSA溶液が皮内注射により投与される。ポジティブな皮膚反応を示す動物が選択され、これらは、抗mBSA IgGの血清力価に基づいて、複数の処置群に無作為に分けられる。
【0111】
2回目の免疫化の14日後、VAP−1抗体又はビヒクルが、右膝の関節腔へのmBSA溶液の注射の直前に、静脈内又は皮下に投与される。各動物の左膝には、生理食塩水が注射される。VAP−1抗体の注射又はネガティブコントロールの注射は、研究を通じて1週間に1回又は2回投与される。
誘導日(0日目)から、研究期間中、ウサギは、視診及び触診によって行動及び外見について毎日観察され、体重が特定の間隔で記録される。膝関節の腫脹は、予め決定された時点で、炎症を起こした(右)膝と炎症を起こしていない(左)膝との直径を比較することによって評価される。
【0112】
研究の実験部分の終わり(21日目)に、当該動物は屠殺される。滑液が、全白血球数及びタンパク質含有量の決定のために収集される。各動物の滑膜が膝関節から解体され、膝蓋骨の部位で2つの検体になるように長軸方向に分割される。一方は、VAP−1抗体及びVAP−1発現の決定のために液体窒素の中で冷凍され、他方の滑膜の検体及び残りの膝関節組織は、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)、並びに、リンタングステン酸−ヘマトキシリン(PTAH)での染色のために、10%の中性緩衝化ホルマリン中に固定される。HE染色された切片は炎症反応について評価され、PTAH染色された切片は滑膜の表面上でのフィブリンの蓄積の程度について評価される。コントロールとの比較においてスコアの統計学的に有意な低下によって証明されるように、関節炎疾患の軽減が見られ得る。
【0113】
〔結論〕
これらの実施例は、完全ヒト抗VAP−1抗体が、抗VAP−1抗体の特異的VAP−1認識特性を保持し(実施例2及び6)、内皮からの白血球のVAP−1依存性の移動をブロックし(実施例7)、そして、以前の抗VAP−1モノクローナル抗体と比較して改善された薬物動態特性を有していた(実施例8)ことを明らかにしている。
技術進歩に伴い、本発明の概念を様々な方法で履行できることは、当業者に明らかであろう。本発明とその実施形態とは、上記の実施例には限定されず、特許請求の範囲の中で変化し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全にヒトのものと特徴付けられることを特徴とする抗VAP−1抗体重鎖ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドにおいて、
以下から選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド:
配列番号4〜8とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号9〜13とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号14〜18とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項3】
請求項2に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号19〜23とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号47に示されるアミノ酸配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項5】
完全にヒトのものと特徴付けられることを特徴とする抗VAP−1抗体軽鎖ポリペプチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリペプチドにおいて、
以下から選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド:
配列番号27〜31とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号32〜36とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号37〜41とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項7】
請求項6に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号42〜46とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号48に示されるアミノ酸配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項9】
完全にヒトのものと特徴付けられることを特徴とする抗VAP−1抗体。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体において、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の重鎖ポリペプチドと、
請求項5〜8のいずれか1つに記載の軽鎖ポリペプチドとを含むことを特徴とする抗体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の抗体において、
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fvであることを特徴とする抗体。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1つに記載の抗体において、
前記抗体が、8C10、8A4、3F10、5F12及び4B3からなる群より選択されることを特徴とする抗体。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1つに記載の抗体において、
前記抗体が、組換え抗体であることを特徴とする抗体。
【請求項14】
請求項13に記載の抗体において、
前記抗体が、BTT−1023であることを特徴とする抗体。
【請求項15】
完全ヒト抗VAP−1抗体重鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子において、
以下から選択されるDNA配列をコードする少なくとも1つのCDRを含むことを特徴とする核酸分子:
配列番号49〜53とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号54〜58とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号59〜63とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸分子において、
配列番号64〜68とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子において、
配列番号89に示されるヌクレオチド配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項19】
完全ヒト抗VAP−1抗体軽鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸分子において、
以下から選択されるDNA配列をコードする少なくとも1つのCDRを含むことを特徴とする核酸分子:
配列番号69〜73とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号74〜78とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号79〜83とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸分子において、
配列番号84〜88とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸分子において、
配列番号90に示されるヌクレオチド配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれかに記載の核酸配列を含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項24】
請求項23に記載の発現ベクターを含む宿主細胞又は微生物。
【請求項25】
完全ヒト抗VAP−1抗体の産生方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)請求項24に記載の少なくとも1つの発現ベクターで、適切な宿主を形質転換する工程、
b)前記宿主を発現に好ましい条件下で培養する工程、及び、
c)構築された完全ヒト抗体を培養培地から精製する工程。
【請求項26】
請求項8〜14のいずれかに記載の完全ヒト抗VAP−1抗体を含む薬学的組成物。
【請求項27】
VAP−1媒介性炎症性疾患の処置又は診断が必要な患者の当該処置又は診断の方法であって、
前記患者に対して請求項26に記載の薬学的組成物を有効量提供する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記炎症性疾患が、関節炎及び結合組織疾患、炎症性腸疾患、皮膚病、多発性硬化症、炎症性ニューロパシー、炎症性筋疾患、急性散在性脳脊髄炎、中枢神経系の血管炎、シェーグレン症候群、糖尿病、全身性エリテマトーデス、喘息、炎症性肝疾患、グレーヴス病、並びに、甲状腺炎からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、
前記関節炎及び結合組織疾患が、反応性関節障害、感染後関節障害、炎症性多発性関節障害、全身性結合組織病、炎症性脊椎障害、筋炎、滑膜炎、ライター病、血清反応陽性関節リウマチ、他の関節リウマチ、関節外リウマチ、乾癬性及び腸疾患性関節障害、若年性関節炎、不特定関節炎、結節性多発動脈炎及び関連する症状、他の壊死性脈管障害、多発性筋炎、全身性硬化症、結合組織の他の全身性病変、強直性脊椎炎、並びに、他の炎症性脊椎障害からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、
前記炎症性腸疾患は、クローン病及び潰瘍性大腸炎からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、
前記皮膚病が、水疱性疾患、皮膚炎、丘疹鱗屑性障害、紅斑、硬化性萎縮性苔癬、外陰部萎縮性苔癬、円板状エリテマトーデス、モルフェア、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、不特定接触皮膚炎、乾癬、多形性紅斑からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法において、
前記炎症性疾患が、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎を含む眼の炎症、アルコール性肝炎、同種移植、異種移植、糸球体腎炎、心筋梗塞及び脳卒中後の再灌流傷害及び急性の炎症症状からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項1】
完全にヒトのものと特徴付けられることを特徴とする抗VAP−1抗体重鎖ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドにおいて、
以下から選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド:
配列番号4〜8とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号9〜13とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号14〜18とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項3】
請求項2に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号19〜23とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号47に示されるアミノ酸配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項5】
完全にヒトのものと特徴付けられることを特徴とする抗VAP−1抗体軽鎖ポリペプチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリペプチドにおいて、
以下から選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド:
配列番号27〜31とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号32〜36とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号37〜41とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項7】
請求項6に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号42〜46とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドにおいて、
配列番号48に示されるアミノ酸配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項9】
完全にヒトのものと特徴付けられることを特徴とする抗VAP−1抗体。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体において、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の重鎖ポリペプチドと、
請求項5〜8のいずれか1つに記載の軽鎖ポリペプチドとを含むことを特徴とする抗体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の抗体において、
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fvであることを特徴とする抗体。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1つに記載の抗体において、
前記抗体が、8C10、8A4、3F10、5F12及び4B3からなる群より選択されることを特徴とする抗体。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1つに記載の抗体において、
前記抗体が、組換え抗体であることを特徴とする抗体。
【請求項14】
請求項13に記載の抗体において、
前記抗体が、BTT−1023であることを特徴とする抗体。
【請求項15】
完全ヒト抗VAP−1抗体重鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子において、
以下から選択されるDNA配列をコードする少なくとも1つのCDRを含むことを特徴とする核酸分子:
配列番号49〜53とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号54〜58とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号59〜63とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸分子において、
配列番号64〜68とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子において、
配列番号89に示されるヌクレオチド配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項19】
完全ヒト抗VAP−1抗体軽鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸分子において、
以下から選択されるDNA配列をコードする少なくとも1つのCDRを含むことを特徴とする核酸分子:
配列番号69〜73とそれらの保存的配列変異体とからなる第1の群、及び/又は、
配列番号74〜78とそれらの保存的配列変異体とからなる第2の群、及び/又は、
配列番号79〜83とそれらの保存的配列変異体とからなる第3の群。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸分子において、
配列番号84〜88とそれらの保存的配列変異体とからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸分子において、
配列番号90に示されるヌクレオチド配列、又は、その保存的配列変異体を含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれかに記載の核酸配列を含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項24】
請求項23に記載の発現ベクターを含む宿主細胞又は微生物。
【請求項25】
完全ヒト抗VAP−1抗体の産生方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)請求項24に記載の少なくとも1つの発現ベクターで、適切な宿主を形質転換する工程、
b)前記宿主を発現に好ましい条件下で培養する工程、及び、
c)構築された完全ヒト抗体を培養培地から精製する工程。
【請求項26】
請求項8〜14のいずれかに記載の完全ヒト抗VAP−1抗体を含む薬学的組成物。
【請求項27】
VAP−1媒介性炎症性疾患の処置又は診断が必要な患者の当該処置又は診断の方法であって、
前記患者に対して請求項26に記載の薬学的組成物を有効量提供する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記炎症性疾患が、関節炎及び結合組織疾患、炎症性腸疾患、皮膚病、多発性硬化症、炎症性ニューロパシー、炎症性筋疾患、急性散在性脳脊髄炎、中枢神経系の血管炎、シェーグレン症候群、糖尿病、全身性エリテマトーデス、喘息、炎症性肝疾患、グレーヴス病、並びに、甲状腺炎からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、
前記関節炎及び結合組織疾患が、反応性関節障害、感染後関節障害、炎症性多発性関節障害、全身性結合組織病、炎症性脊椎障害、筋炎、滑膜炎、ライター病、血清反応陽性関節リウマチ、他の関節リウマチ、関節外リウマチ、乾癬性及び腸疾患性関節障害、若年性関節炎、不特定関節炎、結節性多発動脈炎及び関連する症状、他の壊死性脈管障害、多発性筋炎、全身性硬化症、結合組織の他の全身性病変、強直性脊椎炎、並びに、他の炎症性脊椎障害からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、
前記炎症性腸疾患は、クローン病及び潰瘍性大腸炎からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、
前記皮膚病が、水疱性疾患、皮膚炎、丘疹鱗屑性障害、紅斑、硬化性萎縮性苔癬、外陰部萎縮性苔癬、円板状エリテマトーデス、モルフェア、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、不特定接触皮膚炎、乾癬、多形性紅斑からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法において、
前記炎症性疾患が、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎を含む眼の炎症、アルコール性肝炎、同種移植、異種移植、糸球体腎炎、心筋梗塞及び脳卒中後の再灌流傷害及び急性の炎症症状からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2010−524449(P2010−524449A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503537(P2010−503537)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050199
【国際公開番号】WO2008/129124
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(500021583)バイオティ セラピーズ コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050199
【国際公開番号】WO2008/129124
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(500021583)バイオティ セラピーズ コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]