説明

新規導電性ポリマーおよびその製造方法

【課題】溶媒への溶解、分散性や十分な可撓性と成形加工性を有する導電性ポリマーの製造方法であり、得られた新規な導電性ポリマーに関する。
【解決手段】
本発明の製造方法は芳香族ビニル化合物含有重合体と特定のモノマー存在下で酸化重合を行うことを特徴とする製造方法であり、溶媒への溶解、分散性や十分な可撓性と成型加工性(熱可塑性)を有する導電性ポリマーを製造することができる。本製造方法によれば、さらに透明性を有する導電性ポリマーも製造可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤への可溶化が可能で成形加工が容易かつ可撓性を有する導電性ポリマーおよびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリマーは、(a)カーボンブラック、煤、炭素繊維、金属粉などの導電性充填剤をポリマー中に添加し、ポリマーに導電性を付与するものと、(b)ポリマー自体が導電性を有するものの2つに大別される。
【0003】

導電性充填剤を添加した前記(a)の導電性を付与したポリマーでは、その導電率は導電性充填剤粒子の相互接触の多少に依存する。導電性を良好なものにするためには、通常約10〜100質量%という多量の導電性充填剤を添加する必要がある。導電性充填剤の添加量が増加すると、導電性充填剤がマトリックスを構成するポリマー中に均一に分散しにくくなり、ポリマー材料が本来持っている機械的特性や耐久性など物性が損なわれる恐れがある。特に軟質樹脂の場合、物性の低下が著しい。その上、導電率の制御、特に半導体領域での導電率の制御がかなり困難である。また、透明性も失われてしまう。
【0004】
一方、上記(b)の有機ポリマー自体が導電性を有するものの代表としては、π共役系ポリマーなどが挙げられる。
【0005】
今日、π共役系ポリマーに関する多くの研究が世界的に行なわれている。アキュミュレーター、感知素子、スイッチ、光素子、回路板、加熱素子要素、静電気放電エリミネーション(ESD)および電磁相互作用保護(EMI)などの多くの用途において、π共役系ポリマーは、従来の金属導体や半導体に替わり得るものとして期待されており、既に実用化されているものもある。π共役系ポリマーは、導電性材料の代表である金属と比較した場合に、軽量性、耐食性、可撓性などの機械的特性、成形加工性、透明性などの点でも優れている。
【0006】
π共役系ポリマーは、一般に、長い共役二重結合を有する有機重合体、或いは二重結合により形成される連鎖、芳香族環および/または複素環を有する有機重合体から形成されている。そして、電子受容体または供与体であるドーパントやその他の物質をポリマーに添加することにより、ポリマーにおける二重結合およびヘテロ原子中の安定なπ−およびπ−p−電子系が欠損してホールおよび/またはエクストラ電子となって電流が共役鎖に沿って移動できるようになり、導電性を発現する。
【0007】
π共役系ポリマーでは、ドーピングの程度を調節することによってその導電率を制御することができるため、半導体領域のような導電性領域での微細な調節も可能である。
【0008】
導電性を有するπ共役系ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリナフチレンビニレン、ポリチオフェン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリアセン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリテルロフェン、ポリアミノピレンなどが知られている。
【0009】
これらのπ共役系ポリマーは、有機金属試薬や、化学酸化重合法及び電解重合法で作製されることができる。(たとえば非特許文献1、特許文献1、特許文献2)
【0010】
有機金属試薬によるπ共役系ポリマー合成はグリニヤール試薬やニッケル触媒などを用いなければならず、コスト面が懸念される。電解重合法では、ド−パントとなる電解質、及びπ共役系ポリマーを形成可能なモノマーの混合溶液中に予め形成してある電極材料をいれ、電極上にπ共役系ポリマーをフィルム状に形成する。そのため、大量に製造することが困難である。
【0011】
これらに対して、化学酸化重合法では、このような制約がなく、理論的にπ共役系ポリマーを形成可能なモノマーと適切な酸化剤及び酸化重合触媒を用い、溶液中で大量のπ共役系ポリマーを重合することができる。
【0012】
しかし、化学酸化重合法では、π共役系ポリマー主鎖の共役系の成長に伴い、有機溶剤に対する溶解性が乏しくなるため、不溶の固形粉体で得られるものが多く、このままの状態では他の固体表面へ均一なπ共役系ポリマー膜の形成が困難である。そのため、π共役系ポリマーへの適切な官能基の導入による可溶化、適切なバインダへの分散、ポリアニオン化合物を用いる可溶化等の試みがなされている。
【0013】
π共役系ポリマーの代表的な成形加工法としては、溶融成形加工法と溶液法が挙げられる。しかし、π共役系ポリマーは、一般に溶融可塑化温度に加熱する前に熱分解し易く、そのままでは溶融可塑化による成形加工は適用しにくい。一方、溶液成形加工法による場合は、π共役系ポリマーは工業的に汎用されている溶媒への溶解性が低いという問題がある。またπ共役系ポリマーを溶解可能な溶媒に溶解することでフィルムや繊維のような薄いものや細いものは製造できるが、厚さやサイズが、フィルムや繊維よりも大きい成形体すなわちバルクの成形体や、形状の複雑な成形体などの製造は困難である(例えば特許文献3)。
【0014】
またフィルムやシートに導電性ポリマー溶液の塗布を行い、シートの成形加工を行うと導電性ポリマーは可撓性がないため、表面で導電性ポリマーのクラックが発生する。
そこで溶媒への溶解、分散性や十分な可撓性と成形加工性を有する導電性ポリマーおよびその合成法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−147055号公報
【特許文献2】特開2000−336153号公報
【特許文献3】特開2008−239924号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Bulletin of Chemical Society of Japan, 56, 1497−1502(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、溶剤に可溶で成形加工が容易かつ可撓性を有する導電性ポリマーの製造法および得られた新規な導電性ポリマーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、芳香族ビニル化合物含有重合体と特定のモノマー存在下で酸化重合を実施することを特徴とする、導電性ポリマーの製造法および得られた新規な導電性ポリマーを提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法は芳香族ビニル化合物含有重合体と特定のモノマー存在下で酸化重合を行うことを特徴とする製造方法であり、溶媒への溶解、分散性や十分な可撓性と成型加工性(熱可塑性)を有する導電性ポリマーを製造することができる。本製造方法によれば、さらに透明性を有する導電性ポリマーも製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明は、芳香族ビニル化合物含有重合体と下記一般式(1)および(2)から選ばれた酸化カップリング反応可能なモノマーまたは酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマー存在下で酸化カップリング反応を実施することを特徴とする溶媒への溶解、分散性や十分な可撓性と成形加工性を有する導電性ポリマーの製造方法であり、得られた新規な導電性ポリマーである。
【0022】
【化1】



【0023】
【化2】



【0024】
一般式(1)および(2)中のR、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシ基、アルキルエ−テル基またはアリール基を表し、RおよびR、RおよびR、RおよびRはそれぞれ一体となって環状構造を有してもよく、nは1〜1000の整数であり、一般式(1)のYはイミノ基(NH)、酸素原子、硫黄原子である。
【0025】
本明細書の一般式(1)および(2)において、nが1〜3の整数である場合は酸化カップリング反応可能なモノマーと呼ぶ。酸化カップリング反応可能なモノマーを用いた場合、酸化カップリング反応は酸化重合と言い換えることも可能である。nが4〜1000の整数である場合は一般式(1)および(2)は酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーと呼ぶ。
【0026】
本発明に用いられる芳香族ビニル化合物含有重合体とは少なくとも芳香族ビニル化合物を原料として用い得られる重合体で、芳香族ビニル化合物ユニットが含まれている重合体であり、好ましくは0.01モル%以上の芳香族ビニル化合物ユニット含量の重合体である。
【0027】
ここで芳香族ビニル化合物とは、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼンやこれらの混合物等である。工業的には好ましくはスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレン、ジビニルベンゼンまたはp−メチルスチレンである。
用いることができる芳香族ビニル化合物含有共重合体としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)、水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体(HSBR)、オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体、芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体等が例示できる。
これらのうち、オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体または芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体が、その軟質性や力学物性の点で好適に用いられる。特にその軟質性に関しては、最終的に得られる導電性ポリマーの軟質性に直接影響するために重要であり、好ましくは、本共重合体に降伏点がある場合は降伏点までの伸度、降伏点がない場合は破断点までの伸度が40%以上であり、かつ初期弾性率が200MPa以下、特に好ましくは伸度が100%以上であり、かつ初期弾性率が100MPa以下の範囲である。
芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体では、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS:旭化成社タフプレン)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS:JSR社)、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS:旭化成社タフテック)、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS:クラレ社セプトン)等が例示できる。
さらに好ましく用いられる各種のオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体において、オレフィンは、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネン等である。好ましくは、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンすなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等の混合物が用いられ、更に好ましくは、エチレンが用いられる。
オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体のなかでも、エチレン−スチレン共重合体、エチレン−パラメチルスチレン共重合体、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体が特に好ましく用いられる。これらの共重合体は、EP0416815A2号公報、特許3659760号公報、EP872492B1号公報にその製造方法も含め記載されている。また、WO2000/37517号公報、WO2007139116号公報またはUSP6559234号公報に記載されているクロス共重合体のうち、0.01モル%以上の芳香族ビニル化合物ユニット含量であるものは、本明細書では、芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体の概念に含まれる。
これらのうち、本発明の製造法に好ましく用いられる芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体のうち、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、またはエチレン−スチレン共重合体、クロス共重合体である。これらは主鎖に不飽和結合を実質的に有しない、または全く有しないので耐熱性、耐光性等の耐久性に優れ、本発明に好適に用いられる。これら共重合体の内、特に好ましいものは、重量平均分子量5000以上30万以下、分子量分布1.0以上6以下であり、かつA硬度で95以下40以上の軟質性を有するこれらの共重合体を用いることで、力学物性及び軟質性に優れる導電性樹脂を製造することができる。
【0028】
<酸化カップリング反応>
酸化カップリング反応(酸化重合)は酸化的脱水素によるカップリング反応である。
【0029】
本発明の酸化重合は、上記芳香族ビニル化合物含有重合体および一般式(1)および(2)から選ばれた酸化カップリング反応可能なモノマーまたは酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーの存在下で実施する。
【0030】
本発明で用いる事が可能な酸化カップリング反応可能なモノマーは、アニリン、ピロール、チオフェン、フラン、及びこれらのモノマーの誘導体から選ばれる。また、本発明で用いることが可能な酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、及びこれらのポリマーの誘導体が挙げられる。これらモノマー、ポリマーは1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
前記したうちでも、本発明では、酸化カップリング反応可能なモノマーおよび酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーとして、ポリチオフェンおよび/またはその誘導体が好ましく用いられる。
【0032】
一般式(1)および(2)において、R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ独立であり、これらの具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルカノイル基、アロイル基、ベンゾイル基、アルコキシカルボニル基、アリールアルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アルキルシリル基、アルキルシリルオキシ基、各種スルホン酸基(例えばアルキルスルホン酸基、アルケニルスルホン酸基、アルキニルスルホン酸基、ハロアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、フェニルスルホン酸基、アラルキルスルホン酸基、ベンジルスルホン酸基、アルコキシアルキルスルホン酸基、アルカノイルスルホン酸基、アロイルスルホン酸基、ベンゾイルスルホン酸基、アルコキシスルホン酸基、アリールアルコキシスルホン酸基、ハロアルコキシスルホン酸基、アリールオキシスルホン酸基、アラルキルオキシスルホン酸基、アルコキシアルキルオキシスルホン酸基、アルカノイルオキシスルホン酸基、アルコキシカルボニルオキシスルホン酸基、アラルキルオキシスルホン酸基、アラルキルオキシカルボニルオキシスルホン酸基、アルキルシリルスルホン酸基、アルキルシリルオキシスルホン酸基など)、ポリマー鎖(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、オレフィン−ビニルアルコールコポリマー、オレフィン−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドンなどのビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン、スチレン−ブチレンコポリマーまたはその水素添加体、スチレン−イソプレンコポリマーまたはその水素添加体、核水添ポリスチレンなどのスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェノール、液晶性ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、オレフィンマレイミドコポリマー、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴムなどよりなるポリマー鎖)などを挙げられ、RおよびR、RおよびR、RおよびRはそれぞれ一体となって環状構造を有してもよい。またnは1〜1000までの整数であり、好ましくは1〜3であり、一般式(1)中のYはイミノ基(NH)、酸素原子、硫黄原子を表す。
【0033】
酸化カップリング反応を行う際に用いる溶媒としては、特に制限されるものではなく、芳香族ビニル化合物含有重合体や酸化カップリング反応可能なモノマーおよび酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーを溶解または分散しうる溶媒であればよい。具体例としてはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等が挙げられる。必要に応じて、これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物、又は他の有機溶媒との混合物として用いられる。
【0034】
本発明の酸化カップリング反応では公知の酸化カップリング触媒を用いることが可能である。このような酸化カップリング触媒としては、遷移金属塩が挙げられ、具体例としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、炭素数1〜16のアルコキシベンゼンスルホン酸鉄、炭素数1〜16のアルキルベンゼンスルホン酸鉄、ナフタレンスルホン酸鉄、フェノールスルホン酸鉄、スルホイソフタル酸鉄ジアルキルエステル、アルキルスルホン酸鉄、ナフタレンスルホン酸鉄、アルコキシナフタレンスルホン酸鉄、テトラリンスルホン酸鉄、炭素数1〜12のテトラリンスルホン酸鉄などの第二鉄塩、上記化合物の鉄(III)塩の代わりにセリウム(IV)塩、銅(II)塩、マンガン(VII)塩、ルテニウム(III)塩になったものなどを用いることができるが、特に鉄塩が好ましい。
【0035】
当該酸化カップリング触媒は、通常、一般式(1)または(2)から選ばれた酸化カップリング反応可能なモノマーまたは酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマー1モルに対して概ね1〜100モルの範囲で使用される。
【0036】
また、これら遷移金属塩の使用量を減じるために、遷移金属塩と酸化剤を組み合わせても良い。この場合は、酸化カップリング反応可能なモノマーまたは酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマー1モルに対して概ね1〜0.001モルの範囲までその使用量を減じることが可能となる。このような酸化剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が例示できる。また、重合温度は0℃〜50℃が好ましく、反応時間は0.1〜24時間が好ましい。
【0037】
またビニル基含有共重合体に対して酸化カップリング反応可能なモノマーまたは酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーは1〜10000質量%の範囲で用いるのが好ましく、特に好ましくは10〜1000質量%の範囲である。
【0038】
本発明の製造方法で得られる導電性ポリマーは、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の溶媒への溶解性、分散性を示し、すぐれた成形加工を示す事ができる。
【0039】
本発明の製造方法で得られる導電性ポリマーは、降伏点がある場合は降伏点までの伸度、降伏点がない場合は破断点までの伸度が伸度40%〜1000%、初期弾性率1MPa〜200MPa、好ましくは10MPa〜100MPaの可撓性、軟質性を示す事ができる。
【0040】
本発明の製造方法で得られる導電性ポリマーは、1.0×10−5S/cm以上、1.0×10S/cm以下、好ましくは1.0×10−3S/cm以上、1.0×10S/cm以下、特に好ましくは1.0×10−1S/cm以上、1.0×10S/cm以下の導電率を示す事ができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
<分子量測定>
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL-M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
<ポリマー組成分析>
ポリマーの組成はH−NMR(核磁気共鳴測定装置:日本電子株式会社α−500)により、溶媒に1,1’,2,2’−テトラクロロエタンを用いて測定した。
<導電率測定>
三菱アナリテック社製の低抵抗率計ロレスターGPを用いて導電率の測定を行った。用いた四端針プロ−ブは、ESPを用いた。
<引張試験>
テンシロンUCT−1T型引張試験機を用い、23℃、引張速度300mm/minにて測定した。引張試験ストレス−ストレイン曲線の伸び0%における接線の傾きから初期弾性率(弾性率)を求めた。サンプル形状は、幅5mmの短冊型であり、チャック間距離20mmとした。
以下の実施例に用いた主な原料、試薬は以下の通りである。
<重合>
触媒のrac−ジメチルメチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、及びrac−ジメチルメチレンビス(1−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドは公知文献に従い合成した。
助触媒であるメチルアルミノキサン(MAO)は東ソーファインケミカル社製、MMAO−3Aを用いた。
スチレン、トルエンは関東化学社製試薬を、パラメチルスチレンはアルドリッチ社製試薬を、1−ヘキセンはアルドリッチ社製97%純度試薬を用いた。ジビニルベンゼンは新日鐵化学社製グレ−ド810、純度81wt%:メタパラ混合品を用いた。トリイソブチルアルミニウム及びn−ブチルリチウムは関東化学社製試薬を用いた。
<酸化カップリング及び酸化重合>
無水塩化第二鉄は関東化学社製、3−ヘキシルチオフェンは東京化成製、3−ポリヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(regioregular)はアルドリッチ社製試薬を用いた。ニトロメタンは関東化学社製特級試薬を用いた。
【0042】
[実施例1]
<エチレン−ヘキセン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の合成>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン2500ml、スチレン2000ml、ヘキセン300ml及びジビニルベンゼンを50ml仕込み、内温100℃に加熱攪拌した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、MAOをアルミニウム分として25mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.4MPaで安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を100℃、圧力を0.4MPaに維持しながら15分間重合を実施した。この段階でのエチレンの積算流量は標準状態で約215Lであった。
【0043】
重合終了後、得られたポリマー液に、イソプロピルアルコールを投入し、沈殿させ、その後、メタノールを加え攪拌し、デカンテーションを行い、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。
【0044】
このポリマーの数平均分子量は19,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.6であった。
【0045】
このポリマーの組成をH−NMR測定により求めたところ、スチレン含有量は23.8mol%、ヘキセン含有量は2.9mol%、ジビニルベンゼン含有量は0.47mol%であった。またH−NMRによる組成と、GPC測定による数平均分子量から算出したポリマー鎖一個あたりに含まれるジビニルベンゼンの個数は1.84個であった。また、得られたポリマ−の引張試験の結果、初期弾性率は1.3MPa、破断点までの伸度は300%であった。
【0046】
<酸化重合反応>
クロロホルム7mlに無水第二塩化鉄を1.33g加え溶解させた。エチレン−ヘキセン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を500mg、3−ヘキシルチオフェンを500mgを3mlのクロロホルムに溶解させた。本クロロホルム溶液を無水第二塩化鉄クロロホルム溶液に数分かけて滴下し、室温でスターラーにより攪拌を行った。
【0047】
17時間後、反応溶液を100mlのサンプル管に移し、濃塩酸1mlを含む蒸留水約50mlを加え、震蘯し、クロロホルム層を取り出した。
【0048】
<キャスト膜生成及び導電率測定>
直径7cmのフラットシャーレにクロロホルム層を約15g加え室温で一晩風乾させた。その後、一晩減圧乾燥を行った。そうして製膜したキャスト膜(厚さ90ミクロン)を用い、導電率測定を行ったところ、導電率は0.49S/cmであった。
【0049】
キャスト膜から切り出した短冊形サンプルを用い、引張試験を行った。その結果初期弾性率は53.1MPaであり、また破断点強度は7MPa、破断点までの伸度は90%であった。
【0050】
[実施例2]
<エチレン−ヘキセン−パラメチルスチレン共重合体の合成>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン2900ml、パラメチルスチレン400ml、1−ヘキセン300mlを仕込み、内温50℃に加熱攪拌した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、MAOをアルミニウム分として25mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.3MPaで安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlをオートクレーブに加えた。内温を50℃、圧力を0.4MPaに維持しながら37分間重合を実施した。この段階でのエチレンの積算流量は標準状態で約150Lであった。
【0051】
重合終了後、得られたポリマー液に、イソプロピルアルコールを投入し、沈殿させ、その後、メタノールを加え攪拌し、デカンテーションを行い、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。
【0052】
このポリマーの数平均分子量は24,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0053】
このポリマーの組成は、パラメチルスチレン8.9mol%、ヘキセン含有量は12.1mol%であった。また、得られたポリマ−の引張試験の結果、初期弾性率は2.1MPa、破断点までの伸度は350%であった。
【0054】
<酸化重合反応>
クロロホルム7mlに無水第二塩化鉄を2.66g加え溶解させた。エチレン−ヘキセン−パラメチルスチレン共重合体を1.0g秤量し、3−ヘキシルチオフェンを1.0g秤量し13mlのクロロホルムに溶解させた。本クロロホルム溶液を第二塩化鉄のクロロホルム溶液に数分かけて滴下し、室温でスターラーにより攪拌を行った。
【0055】
17時間後、反応溶液を100mlのサンプル管に移し、濃塩酸1mlを含む蒸留水約50mlを加え、震蘯し、クロロホルム層を取り出した。
【0056】
<キャスト膜生成及び導電率測定>
直径7cmのフラットシャーレにクロロホルム層を約15g加え室温で一晩風乾させた。その後、一晩減圧乾燥を行いキャスト膜を得た。
【0057】
本キャスト膜の導電率測定を行ったところ、導電率は0.33S/cmであった。
【0058】
<引張試験>
初期弾性率は3.2MPaであり、また破断点強度は4MPa、破断点までの伸度は90%であった。
【0059】
[実施例3]
<酸化カップリング反応>
クロロホルム7mlに無水第二塩化鉄を100mg加え溶解させた。実施例2で得られたエチレン−ヘキセン−パラメチルスチレン共重合体を300mg秤量し、ポリ3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(前記)を300mg秤量し13mlのクロロホルムに溶解させた。本クロロホルム溶液を第二塩化鉄のクロロホルム溶液に数分かけて滴下し、室温でスターラーにより攪拌を行った。
【0060】
17時間後、反応溶液を100mlのサンプル管に移し、濃塩酸1mlを含む蒸留水約50mlを加え、震蘯し、クロロホルム層を取り出した。
【0061】
<キャスト膜生成及び導電率測定>
直径7cmのフラットシャーレにクロロホルム層を約15g加え室温で一晩風乾させた。その後、一晩減圧乾燥を行いキャスト膜を得た。得られたキャスト膜の導電率は0.24S/cmであった。
【0062】
<引張試験>
初期弾性率は2.7MPaであり、また破断点強度は3.6MPa、破断点までの伸度は120%であった。
【0063】
[実施例4]
<パラメチルスチレン含有クロス共重合体の合成>
<配位重合工程>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(1−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン4200ml、パラメチルスチレン500ml、ジビニルベンゼン1.7gを仕込み、内温90℃に加熱攪拌した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、MAOをアルミニウム分として12mmol加え、ただちにエチレンを導入し圧力0.42MPaで安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(1−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlをオートクレーブに加えた。内温を90℃、圧力を0.4MPaに維持しながら61分間重合を実施した。この段階でのエチレンの積算流量は標準状態で約200Lであった。約20mlの重合液を分析用にサンプリングした。
<クロス化工程(アニオン重合工程)>
開始剤としてn−ブチルリチウムを用いることによりアニオン重合を実施した。上記、エチレン−パラメチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の重合液にn−ブチルリチウムをブチルリチウムとして55mmol加え、内温を70℃に維持しながら60分間重合を実施した。
【0064】
重合終了後、得られたポリマー液に、イソプロピルアルコールを投入し、沈殿させ、その後、メタノールを加え攪拌し、デカンテーションを行い、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。
【0065】
配位重合工程終了時にサンプリングした液から得られたエチレン−パラメチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体及び最終的に得られたクロス共重合体の分析をWO2007/139116に従って行った。
エチレン−パラメチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体のパラメチルスチレン含量は15.8モル%、ジビニルベンゼン含量は0.06モル%であり、数平均分子量は43,700であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。クロス共重合体のパラメチルスチレンの含有量は23.2mol%であった。得られたクロス共重合体のクロス鎖(側鎖)はポリパラメチルスチレンであるが、その分子量は、クロス共重合体に少量含まれるフリ−のポリパラメチルスチレンの分子量から求めた。その数平均分子量は14300であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。また、得られたポリマ−の引張試験の結果、初期弾性率は8.9MPa、破断点までの伸度は740%であった。
<酸化重合反応>
クロロホルム10mlに無水第二塩化鉄を1.33g加え溶解させた。エチレン−パラメチルスチレン共重合体を500mg、3−ヘキシルチオフェンを500mg秤量し5mlのクロロホルムに溶解させた。本溶液を第二塩化鉄/クロロホルム溶液に数分かけて滴下し、室温でスターラーにより攪拌を行った。
【0066】
17時間後、反応溶液を100mlのサンプル管に移し、濃塩酸1mlを含む蒸留水約50mlを加え、震蘯し、クロロホルム層を取り出した。
【0067】
<キャスト膜生成及び導電率測定>
直径7cmのフラットシャーレに酸化重合液を加え室温で一晩風乾させた。その後、一晩減圧乾燥を行いキャスト膜を得た。得られたキャスト膜の導電率は0.6S/cmであった。
【0068】
<引張試験>
初期弾性率は45MPaであり、また破断点強度は 6.7MPa、破断点までの伸度は339%であった。
【0069】
[比較例1]
<ポリヘキシルチオフェンの物性評価>3−ポリヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(regioregular)をクロロホルムに溶解させた。本溶液をPETフィルムにキャストした。その後、第二塩化鉄のニトロメタン溶液(500mmol/L)にキャストフィルムを1時間浸した。その後、ニトロメタンで洗浄し、風乾後、30℃で一晩減圧乾燥を行いドーピングされたキャストフィルムを得た。導電率は17.6S/cmであった。引張試験の結果初期弾性率は395MPaであり、また破断点強度は18MPa、破断点までの伸度は10%であった。
【0070】
[比較例2]
<ヘキシルチオフェンによる酸化重合および物性評価>
30mlのスクリュー管に第二塩化鉄を1.33g加え、クロロホルム6mlに溶解させた。9mlのスクリュー管にヘキシルチオフェンを683mg秤量しそこに4mlのクロロホルムに溶解させた。ヘキシルチオフェン含有のクロロホルム溶液を第二塩化鉄のクロロホルム溶液に加え、室温でスターラーにより攪拌を行った。
【0071】
20分後、反応溶液を100mlの分液ロートに移し、濃塩酸1mlを含む蒸留水約50mlを加え、震蘯し、クロロホルム層を取り出した。この操作を3回繰り返し、粉末状の硫酸ナトリウムで脱水操作を行い、クロロホルム層を回収した。
【0072】
直径7cmのフラットシャーレに酸化重合液を20g加え室温で一晩風乾させた。その後、一晩減圧乾燥を行った。その後、第二塩化鉄ニトロメタン溶液(500mmol/L)にキャストフィルムを1時間浸した。その後、ニトロメタンで洗浄し、風乾後、30℃で一晩減圧乾燥を行いドーピングされたキャストフィルムを得た。導電率測定結果は1.29S/cmであった。実施例と同様に、引っ張り試験を行った結果、初期弾性率は743MPaであり、また降伏点強度は33.6MPa、降伏点までの伸度は18%であった。
以上、実施例と比較例の結果を表1に示す。
【0073】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0074】
固体電解コンデンサに用いられる際の問題点として実装時の熱応力による損傷できることが挙げられるが、可撓性を有する導電性ポリマーはその問題点解決に有用であると考えられる。プリント配線基板、ハイブリットICの製造工程に用いられる導電ペーストとして可撓性を有する導電性ポリマーは非常に有用であると考えられる。一般に帯電防止シートはフィルム基材の上下に導電性ポリマーをコーティングして用い、成形加工時にクラックが起こるなどの問題点が挙げられるが、可撓性を有する導電性ポリマーはその問題点解決に有用であると考えられる。また現在のネルギー変換素子は導電膜と可撓性を有する支持体の素子であるが可撓性を有する導電性ポリマーを導電膜として用いることにより、支持体を用いる必要がなくなると考えられる。上記の用途の他に、エレクトロルミネッセンス素子としてフレキシブルな電子ペーパー、各種表示装置、タッチパネル、電磁遮蔽フィルム、高分子アクチュエーター等に有用であると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物含有重合体と下記一般式(1)および(2)から選ばれた酸化カップリング反応可能なモノマーまたは酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマー存在下で酸化カップリング反応を実施することを特徴とする溶媒への溶解性、可撓性を有する導電性ポリマーの製造方法。

【化3】



【化4】



一般式(1)および(2)中のR、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシ基、アルキルエ−テル基またはアリール基を表し、RおよびR、RおよびR、RおよびRはそれぞれ一体となって環状構造を有してもよく、nは1〜1000の整数であり、一般式(1)のYはイミノ基(NH)、酸素原子、硫黄原子である。
【請求項2】
芳香族ビニル化合物含有重合体が芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体、オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体から選ばれる重合体であることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
芳香族ビニル化合物含有重合体がオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体または芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体であり、かつ本共重合体に降伏点がある場合は降伏点までの伸度、降伏点がない場合は破断点までの伸度が40%以上であり、かつ初期弾性率が200MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
芳香族ビニル化合物含有重合体がオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体であることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリマーの製造方法。
【請求項5】
オレフィンがエチレンまたはエチレンとα−オレフィンであることを特徴とする請求項4記載の導電性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
芳香族ビニル化合物が、スチレン、パラメチルスチレン、ジビニルベンゼンから選ばれる芳香族ビニル化合物であることを特徴とする請求項4記載の導電性ポリマーの製造方法。
【請求項7】
酸化カップリング反応可能なπ共役系ポリマーが一般式(1)で示されたポリマーであることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリマーの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の導電性ポリマーの製造方法により得られ、1.0×10−5S/cm以上、1.0×10S/cm以下の導電率を示す導電性ポリマー。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項記載の導電性ポリマーの製造方法により得られ、降伏点がある場合は降伏点までの伸度、降伏点がない場合は破断点までの伸度が伸度40%〜1000%であり、かつ初期弾性率が1MPa〜200MPaの範囲であることを特徴とする導電性ポリマー。


【公開番号】特開2011−213843(P2011−213843A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82757(P2010−82757)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】