説明

新規抗微生物性基体およびその使用

新規な基体は抗微生物特性に関する表面特性を改変することを可能とする。該基体は以下を特徴とする電子供与表面を有する:該表面上に金属粒子を有し、該金属粒子はパラジウムおよび金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含み、該金属粒子の量は約 0.001〜約 8μg/cm2である。基体は様々な用途での使用が示唆され、例えば、疎水性、タンパク質吸着、細菌の付着の改変、ならびに細菌感染の予防、特に院内感染の予防での使用が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、反復可能および制御された様式で抗微生物特性に関する表面特性を改変することを可能とするナノ粒子を有する新規な抗微生物性基体に関する。改変されうる表面特性の例としては、これらに限定されないが、疎水性、タンパク質吸着および細菌の付着が挙げられる。本発明の基体の使用の例としてはこれらに限定されないが、細菌の定着の遅延、細菌の感染、特に院内感染の防止である。本発明はさらに、該新規な基体を含む対象にも関する。本発明はさらに該基体の使用に関する。最後に、本発明はかかる基体の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
表面特性を有用な特性を達成するように改変することが常に望まれてきた。特に、抗微生物対象に関して重要である表面特性を改変することを可能にすることが望まれている。様々な目的での既知の表面改変の例を以下に記載する。
【0003】
US6,224,983は接着性、抗微生物および生体適合性被覆を有する、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびオスミウムからなる群から選択される1以上の金属の1以上の塩への曝露により安定化された銀の層を含む物品を開示する。銀の層の厚さは2-2000オングストローム (10-10 m)の範囲であり、さらに開示された範囲は2-350オングストロームおよび2-50オングストロームである。銀の層の厚さの例として、 50オングストローム、350オングストローム、500オングストローム、および1200オングストロームもある。基体は、ラテックス、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ABS ポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドまたは合成ゴムであり得る。
【0004】
US 5,965,204は、表面をスズイオンで活性化した後沈着された銀の層を含む被覆を有する非導電性基体でできた物品の調製方法を開示している。白金群の金属または金をさらに含む被覆も開示されている。銀の層の厚さは2-2000オングストロームの範囲であり、2-350オングストロームおよび2-50オングストロームの範囲も開示されている。銀の層の厚さの例として50オングストローム、350オングストローム、500オングストローム、および1200オングストロームもある。
【0005】
US 5,747,178は、銀の層の沈着によりできた物品を開示している。この層は接着性、抗微生物および生体適合性とされている。銀の層は1以上の白金群の金属または金の塩溶液へ曝すことにより安定化されうる。銀の層の厚さは2-2000オングストロームの範囲であり、さらに2-350オングストロームおよび2-50オングストロームの範囲が開示されている。厚さ50オングストローム、350オングストローム、500オングストローム、および1200オングストロームの銀の層の例もある。物品は、ラテックス、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ABS ポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドまたは合成ゴムからできたものであり得る。
【0006】
US 5,395,651は、銀の被覆を有する非導電性材料を含む抗微生物装置の調製方法を開示している。この被覆もまた、白金群の金属および/または金を含む。 方法は以下の工程を含む: 1被覆すべき表面を活性化する工程; 2銀を表面に沈着させる工程; 3白金群の金属 および/または金の塩で表面を処理する工程、これは薄い被覆が生じるよう十分な時間行うべきである; 4水によりすすぐ工程。工程 3の処理は白金 またはパラジウムの塩を金と組み合わせて利用しうる。白金群の金属 および/または 金の被覆の厚さについては言及されていない。被覆は単に薄い被覆であると記載されているに過ぎない。銀の被覆の上の金属粒子についても言及されていない。銀の層の厚さは2-2000オングストロームの範囲であり、さらに 2-350オングストロームおよび2-50オングストロームの範囲が開示されている。厚さ50オングストローム、350オングストローム、500オングストローム、および 1200オングストロームの銀の層の例もある。
【0007】
US 5,320,908 は、本質的に1以上の白金群の金属または金が重なった銀の層からなる接着性、抗微生物、および生体適合性被覆を開示している。被覆はヒトの眼にとって透明であり得る。銀の層の厚さは2-2000オングストロームの範囲であり、2-350オングストローム および2-50オングストロームの範囲も開示されている。厚さ50オングストローム、350オングストローム、500オングストローム、および1200オングストロームの銀の層の例もある。物品は、ラテックス、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ABS ポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドまたは合成ゴムからなりうる。
【0008】
US 5 695 857は、1つの第一金属および第二の貴金属(より貴な金属(nobler metal))のいくつかの層を有する抗微生物表面を開示している。抗微生物活性のある金属は例えば、白金、金、銀、亜鉛、スズ、アンチモンおよびビスマスであり得る。貴金属は、例えば白金、オスミウム、イリジウム、パラジウム、金、銀および炭素からなる群から選択され得る。表面は生体液とともに用いられ、基体と接触していない各層は不連続であり、下の層が曝される。表面の一例は金または白金で被覆された銀である。別の例は、銀と組み合わされた銅、銅銀合金と組み合わされた銅、金と組み合わされた銅または金と組み合わされた銀銅合金である。
【0009】
CH 654 738 A5は、 ステンレス鋼でできた外科的インプラントを開示しており、それは銅の第一層および銀、金、ロジウム または パラジウムの第二層により被覆されている。銀は殺菌作用を有すると記載されている。CH 654 738 A5は 明示的にステンレス鋼が10μm 銅および5μm (50 000オングストローム) パラジウムで被覆された表面を開示している。CH 654 738 A5に開示されるすべての表面は10μm 銅 (100 000オングストローム)の層および10μm 銀 または 5μm 金 または 5μm パラジウムを有する。
【0010】
WO 2005/073289は金属ナノ粒子を含むポリマー複合体でできた繊維を開示する。多くの金属は抗微生物作用を有すると記載されている。抗微生物繊維が言及されている。一例は抗微生物創傷保護剤に用いられる親水性 繊維である。抗微生物特性を有する繊維は Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Sn、Cu、Sb、BiまたはZnまたはそれらの組合せを含みうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の短い概要
表面に関する技術水準における問題は、例えば、抗微生物性であって、疎水性、タンパク質吸着、および細菌の付着を反復可能に改変することが出来る、表面の提供方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは技術水準における上記問題は、パラジウム、および、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属粒子が表面に存在する電子供与表面を有する基体 であって、該 金属粒子の量が 約 0.001 〜約 8μg/cm2である基体によって解決できることを見いだした。本発明のさらなる態様は添付の従属項に規定され、引用により本明細書に含まれる。
【0013】
説明
定義
本発明を詳細に開示および記載する前に、本発明は本明細書に開示された特定の配置、方法の工程および材料に限定されず、かかる配置、方法の工程および材料はいくらか変動しうることを理解されたい。また本明細書において用いる用語は、特定の態様を記載する目的でのみ用いられており、限定の意図はないことを理解されたい。本発明の範囲は添付の請求の範囲およびその均等物にのみ限定されるからである。
【0014】
本明細書および請求の範囲において用いる場合、単数形「ある」、「1つの」および「その」は特に断りの無い限り複数形も含むことを注意すべきである。
【0015】
以下の用語を明細書および請求の範囲にわたって用いる。
【0016】
本明細書において用いる場合、「細菌の付着」は、細菌が表面に付着する現象である。
【0017】
本明細書において用いる場合、「抗微生物」は、微生物増殖を抑制および/または排除する特性を包含する。
【0018】
本明細書において用いる場合、「定着」は、例えば細菌のコロニーの確立を包含する。
【0019】
「接触角」。固体表面上の所与の液滴について、接触角は固体表面と固体と接触する点からの液滴半径に接する線との間に形成される角度の測定値である。
【0020】
本明細書において用いる場合、「電子供与材料」は別のより貴な材料と関連して、より貴な材料に電子を移動させる能力を有する材料を包含する。一例は、より貴な金属とともにあるより貴でない金属である。
【0021】
本明細書において用いる場合、「電子供与表面」は、電子供与材料を含む表面層を包含する。
【0022】
本明細書において用いる場合、表面の「疎水性」は表面と水との相互作用を記載する。疎水性表面はほとんどまたはまったく水を吸収する傾向を有さず、水はその表面上で「玉のようになる」傾向がある。表面の疎水性という用語はまたその表面エネルギーと密接に関係している。表面エネルギーが表面とすべての分子との相互作用を記載するのに対し、疎水性は表面と水との相互作用を記載する。
【0023】
本明細書において用いる場合、「接触角のヒステリシス」は、前進および後退する接触角値の間の差異である。表面上の水滴の前進する接触角は、水と空気の間の境界が表面上を移動して湿らせる場合の接触角であり、後退する角度は水と空気の境界があらかじめ湿った表面上から離れる場合の接触角である。
【0024】
「改変する」とは、特性の低下または向上を意味する。
【0025】
「貴」とは本明細書において比較の意味で用いられる。それはそれらがどのように互いに相互作用するかに依存して互いに金属を含む材料に関連するように用いられる。電子は「より貴でない」材料から「より貴な」材料へと移動する。
【0026】
本明細書において用いる場合、「院内感染」は、病院の環境中で伝播する感染性疾患を記載する。
【0027】
本明細書において用いる場合、「タンパク質吸着」は、タンパク質と表面との間の全引力に起因して表面にタンパク質が付着する現象を包含する。
【0028】
本明細書において用いる場合、「基体」は、本発明により処理される材料を含む基剤である。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明によると、基体は所望の特性を示すよう処理される。基体は広範な材料から構成されうる。一つの態様において、基体は電子供与表面を有する材料から構成される。別の態様において、それは電子供与表面を有さない材料から構成される。電子供与表面の場合、金属粒子を電子供与表面に直接適用してもよい。表面が電子供与性でない場合、電子供与表面を作るには電子供与材料の層が適用されなければならない。
【0030】
本発明は電子供与表面を有する基体を含み、該表面上に金属粒子が存在することを特徴とし、該金属粒子はパラジウム、および、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含み、該金属粒子の量は約 0.001〜 約 8 μg/cm2である。該金属粒子の好ましい量は約 0.01〜約 4 μg/cm2である。該金属粒子の特に好ましい量は約 0.01〜 約 1 μg/cm2である。
【0031】
基体自体が電子供与性であるか、または基体上に電子供与材料の層が適用される。電子供与材料が基体上に適用される場合、それは約 0.05〜約 12 μg/cm2の量で適用される。さらに多い量も本発明に包含される。
【0032】
電子供与材料はかならずしも電子供与表面を有していなくてもよい。一例はアルミニウムであり、それは空気中では電子供与表面ではない酸化物層を獲得する。
【0033】
電子供与材料は、電子供与表面を形成する能力があるいずれかの材料であり、例えば、導電性ポリマーまたは金属である。金属の場合、それはパラジウム、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群における金属のいずれよりも貴ではない必要がある。
【0034】
電子供与表面としての使用のために好ましい金属は、銀、銅および亜鉛からなる群から選択される金属である。
【0035】
本発明の一つの態様において、基体はポリマー性基体である。
【0036】
一つの態様において、基体は以下からなる群から選択される:ラテックス、ビニル基を含むポリマー、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニルのコポリメリゼート(copolymerisate)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド、およびポリイミド、またはそれらの混合物。
【0037】
本発明の別の態様において、基体は、天然ポリマー、分解可能ポリマー、食用ポリマー、生分解性ポリマー、環境に優しいポリマー、および医療グレードポリマーからなる群から選択される。
【0038】
本発明の別の態様において、基体は金属である。
【0039】
基体のための好ましい金属は、ステンレス鋼、医療グレード鋼、チタン、医療グレードチタン、コバルト、クロムおよびアルミニウムまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
本発明の別の態様において、基体は、ガラス、無機質、ゼオライト、石およびセラミックスからなる群から選択される。
【0041】
本発明の別の態様において、基体は、紙、木、織り繊維、繊維、セルロース繊維、革、炭素、炭素繊維、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる群から選択される。
【0042】
本発明の別の態様において、基体は粒子の形状を有する。
【0043】
本発明の一つの態様において、本発明による基体を含む対象が提供される。本発明による基体を含む対象の例としては、医療機器、医療装置、使い捨て商品、医用使い捨て商品が挙げられる。
【0044】
粒子は常にパラジウムを含んでいなければならない。パラジウムに加えて少なくとも1つのその他の金属が存在する。金属粒子中のパラジウムとその他の金属との比は約 0.01:99.99〜約 99.99:0.01が本発明において利用できる。約 0.5:99.5 〜約 99.8:0.2の比が好ましい。特に好ましい比は約 2:98 〜約 95:5である。 さらに特に好ましい比は、5:95〜95:5である。別の態様において、比は約 10:90 〜約 90:10である。
【0045】
本発明の一つの態様において、該金属粒子は、パラジウムに加えて金を含む。
【0046】
本発明者らは該金属粒子の平均サイズ が約 10 〜約 10000オングストロームである場合に有利な特性が達成されることを見いだした。
【0047】
一つの態様において該金属粒子の平均サイズは約 100 〜約 600オングストロームである。
【0048】
本発明の別の側面において、本明細書に記載する基体を含む対象が提供される。
【0049】
本明細書に記載する基体を含む医療機器も提供される。
【0050】
本明細書に記載する基体を含む使い捨て商品も提供される。
【0051】
本発明はまた、本明細書に記載する基体を含む歯科用物品、ならびに歯科用機器、歯科インプラント、および歯科用品を提供する。
【0052】
金属粒子の適用量は μg/cm2にて表され、金属粒子は被覆層を形成せず、該電子供与表面上に均一に分布した粒子またはクラスターであることを認識しなければならない。
【0053】
電子供与材料の適用層は好ましくは、均一であり、表面上に実質的に凝集塊またはクラスターがないように適用される。電子供与表面層が均質かつ均一であれば、μg/cm2 における適用量はオングストロームにて厚さに変換できる。0.05-4μg/cm2 の適用量は約 4.8-380オングストローム、0.5-8μg/cm2 は約 48-760オングストローム、そして 0.8-12μg/cm2 は約 76-1140オングストロームに対応する。
【0054】
本発明の一つの態様において、電子供与表面は市販の実質的に純粋な銀の層であり、それは少量の不純物の可能性を排除するものではない。
【0055】
基体が電子供与表面を有さず電子供与表面層の沈着が必要である場合、沈着は以下からなる群から選択される方法を用いて行われる: 化学蒸着、スパッタリング、および金属塩を含む溶液からの金属の沈着。実質的にクラスターまたは凝集塊のない均一な層が沈着の結果である。好ましくは、沈着は第一の層が基体に対して良好な付着を有するように行われる。
【0056】
被覆された基体の調製のための本発明の一つの態様を記載する。電子供与表面を有さない基体のために、方法は以下の工程を含む:
1.前処理
2.すすぎ
3.活性化
4.電子供与表面の沈着
5.すすぎ
6.金属粒子の沈着
7.すすぎ
8.乾燥。
【0057】
電子供与表面を有する対象について、方法は以下の工程を含む:
1.すすぎ
2. 金属粒子の沈着
3.すすぎ
4.乾燥。
【0058】
以下、電子供与表面を有さない基体についての工程1 〜8の一つの態様をより詳細に記載する。
【0059】
前処理は0.0005 〜30 g/lのスズイオンを含有するスズ塩の水溶液中で行われうる。pH は1 〜4であり、塩酸 および/または 硫酸により調整される。処理時間は室温で2-60 分間である。前処理の後、表面を脱塩水ですすぐが、乾燥はさせない。
【0060】
活性化してすすいだ基体を沈着溶液に移す。沈着溶液のpHは8以上である。それは銀塩、亜鉛塩、および銅塩からなる群から選択される金属塩を含む。本発明の一つの態様において、塩は硝酸銀 (AgNO3)である。金属塩は約 0.10 g/l以下、好ましくは 約 0.015 g/lの有効量にて用いられる。金属含量が約 0.10 g/lを超えると、溶液中または容器壁上で元素金属が不均質に形成され得る。金属含量が有効量を下回ると、所望の時間内にフィルムを形成するには金属が不十分となる。
【0061】
沈着溶液の第二の成分は、金属含有塩を元素金属へと還元する還元剤である。還元剤は化学的還元が達成されるのに十分な量存在しなければならない。許容される還元剤には、 ホルムアルデヒド、硫酸ヒドラジン、水酸化ヒドラジン、および次リン酸が含まれる。本発明の一つの態様においてそれは約 0.001 ml/l溶液の量で存在する。還元剤の濃度が高すぎると溶液および容器壁上にわたって金属の沈着が起こり、濃度が低すぎると基体上への金属の形成が不十分となりうる。当業者は常套の実験により本明細書を鑑みて還元剤の所望の量を決定できる。
【0062】
沈着溶液のもう一つの成分は還元された金属が微細な金属粉末として溶液から直接沈降したり、容器の壁上に沈降したりすることを防ぐために沈着反応を遅らせるのに十分な量にて存在する沈着制御剤である。使用可能な沈着制御剤には、インベルトースとしても知られる転化糖、コハク酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、およびアンモニアが含まれる。沈着制御剤は 好ましくは約 0.05 g/l溶液の量にて存在する。存在量が少なすぎると、均一な金属表面の代わりに金属クラスターの沈降が起こりうる。存在量が多すぎると、金属含有塩が目的の基体への所望の沈降のために安定となりすぎる可能性がある。
【0063】
還元剤および沈着制御剤の濃度は、基体材料、所望のフィルムの厚さ、沈着条件および溶液中の金属濃度に応じて所望の結果を達成するように必要により調整される。例えば、薄いフィルムのためには、金属塩濃度は比較的低いであろうし、還元剤および沈着制御剤の濃度も同様であろう。当業者は本明細書を鑑みて常套の実験により沈着制御剤の所望の量を決定できる。
【0064】
沈着溶液の調製において、溶液の成分のそれぞれは好ましくは個別に脱塩水に溶解される。様々な前溶液を上記濃度を達成するために正しい量にて次いで混合し、必要であれば希釈する。
【0065】
金属塩と還元剤の組合せにより、基体表面上に沈着されるのに好適な状態にて金属が塩から還元されるのが可能となる。この方法は完成した金属フィルムの基体表面への良好な付着の達成のために特に有益である。良好な付着はほぼすべての用途において重要である。
【0066】
基体表面は適当な手順により沈着溶液に曝される。溶液への浸漬が通常好ましいが、溶液は噴霧または刷毛塗りなどのいずれの便宜な技術によっても適用されうる。金属フィルムは金属塩の濃度によって制御されうる速度にて溶液から均一に沈着する。薄いフィルムが要求される場合、沈着温度を沈着が制御可能にゆっくり行われるように十分に低く維持する。
【0067】
電子供与表面として作用する金属層を適用するその他の方法を本発明において適用できる。電子供与表面を達成するその他の方法は、化学蒸着 およびスパッタリングである。
【0068】
上記の金属沈着の後、基体は金属からなる電子供与表面を有する。この金属沈着は、基体が最初から電子供与表面を有さない場合のみ必要である。基体が既に電子供与表面を有する場合、金属粒子は金属層のさらなる追加なしに表面上に沈着されうる。後者の場合、粒子の適用の前に基体を徹底的に清浄にする。
【0069】
製造方法の次の工程は金属粒子の沈着である。
【0070】
一つの態様において金属のコロイド懸濁液を用いてパラジウムおよび少なくとももう1つの金属を含む粒子を表面上に得る。金属粒子は所望の粒子の懸濁液から沈着する。懸濁液中の金属粒子の組成は好ましい値に応じて調整される。電子供与表面を有する基体は金属粒子の懸濁液に約数秒から約数分間またはそれ以上の時間浸漬される。
【0071】
金属粒子の懸濁液はいくつかの方法で製造されうる。一つの態様において金属粒子の懸濁液は所望のサイズの金属粒子が形成されるような条件下で還元される金属塩の水溶液から作られる。好適な量の金属塩、還元剤および安定化剤の混合によりこれが達成される。上記と同じ還元剤および安定化剤が粒子懸濁液の作成において使用できる。当業者は本明細書を鑑みて常套の実験により所望の粒子サイズを得るための還元剤および安定化剤の所望の量を決定できる。別の態様において、市販の金属粒子のコロイド懸濁液が使用される。所望の組成の金属粒子が懸濁液の作成に使用される。
【0072】
一つの態様において、金属粒子の懸濁液は脱塩水でパラジウムおよび金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属粒子の市販の濃縮コロイド溶液を希釈することにより作られる。基体は懸濁液で約数秒から約数分間またはそれ以上の時間処理される。処理の後、基体は溶媒または水、例えば脱塩水ですすがれ、室温で放置され乾燥される。
【0073】
一つの特定の非限定的態様において、市販の金属粒子は75% パラジウムおよび25% 金からなる。
【0074】
したがって本発明によると、特定の所望の表面を有する基体を得ることが出来る。例えば、75% パラジウムおよび25% 金からなる粒子を備える銀電子供与表面または85% パラジウム および15% ルテニウムからなる粒子を備える銅電子供与表面を有する基体を調製することが出来る。
【0075】
かかる基体を生産するための柔軟かつ制御され反復可能な方法により提供される利点の一つは多種多様な基体が生産されうることである。本明細書に記載するように、特定の基体は既存の基体よりも改善された特性を有する。例えば、本発明による特定の基体はそれが適用される基体の疎水性の驚くべき有利な改変をもたらしうる。請求項 1による 基体によりこのように改変しうるその他の特性としては、タンパク質吸着および細菌の付着が挙げられる。
【0076】
即ち、基体が適用される対象の表面特性を改変するために、粒子サイズ、粒子の組成および粒子の量を調整することが可能である。
【0077】
本発明者らは請求項 1による基体を使用することによりこれを達成することが可能であることを見いだした。具体的には表面特性を改変するために、粒子サイズ、粒子の組成および粒子の量を調整することが可能である。
【0078】
本発明による基体は多くの目的のために利用できる。これらは、基体の疎水性、タンパク質吸着および細菌の付着を改変することが望ましいあらゆる用途における使用に好適である。
【0079】
基体の特性は低下させることも上昇させることも出来る。したがって特徴を上昇させる少なくとも1つの領域および特徴を低下させる少なくとも1つの領域を示す対象が提供される。一例はタンパク質吸着を低下させる領域およびタンパク質吸着を上昇させる領域を有する対象である。
【0080】
本発明による基体はまた、電子供与表面を有する基体であって、該表面上に金属粒子を有し、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜約 8 μg/cm2である基体を含む。
【0081】
本発明は、本発明による基体を含む対象に対するタンパク質吸着を改変するための本発明による基体の使用を提供する。
【0082】
本発明は、本発明による基体を含む対象に対する細菌の付着を改変するための本発明による基体の使用を提供する。
【0083】
本発明はまた、細菌の増殖を防止するための本発明による基体の使用を提供する。
【0084】
本発明は、細菌の定着を防止するための本発明による基体の使用を提供する。
【0085】
本発明は、細菌感染を予防するための本発明による基体の使用を提供する。細菌感染症の感染は細菌感染の予防により防止される。この側面において使用される対象の例としては、ハンドル、ボタン、スウィッチ、診療器具、手術器具、医療装置、台所器具、および細菌を伝染させることが出来るあらゆるその他の対象が挙げられる。
【0086】
本発明は、院内感染の感染の予防のための本発明による基体の使用を提供する。本発明による基体を含む 対象は細菌感染症の感染を予防することが望まれるあらゆる側面において利用できる。細菌感染およびそれゆえ細菌感染症の阻止は特に院内感染を防止する。
【0087】
本発明のその他の特徴およびそれに付随する利点は明細書および実施例を読むと当業者に明らかであろう。
【0088】
本発明は本明細書に示した特定の態様に限定されないことを理解されたい。以下の実施例は例示の目的で提供されるものであり、本発明の範囲を限定する意図はない。本発明の範囲は添付の請求の範囲およびその均等物にのみ限定される。
【実施例】
【0089】
実施例 1
金属粒子の量の関数としての表面の疎水性
銀の均一な層を以下の方法にしたがってガラス基体上に沈着させた。基体をクロム酸洗浄溶液に5 分間58℃で浸漬し、次いで脱塩水ですすいだ。基体表面を塩化第一スズ水溶液中での浸漬により活性化し、次いで脱塩水ですすいだ。基体表面を次いで銀イオンを含む3 沈着溶液中での浸漬により銀の均一な層でめっきした(plate)。これにより約 115オングストロームの厚さに対応する適用量1.2μg/cm2の銀表面が得られた。23% パラジウムおよび77% 金からなる粒子を次いで第一の銀表面上に金/パラジウムの金属粒子を含む希釈懸濁液中への浸漬により沈着させた。金属粒子の懸濁液を金塩およびパラジウム塩を還元剤で還元し、 懸濁液を安定化剤で安定化させることにより作った。基体を次いで脱塩水ですすぎ、乾燥させた。
【0090】
様々な量の沈着した粒子を有する基体を上記方法を用いて作った。粒子の量はそれぞれ 0、0.02、0.11、0.15、および0.19 μg/cm2 であった。0 μg/cm2のサンプルについては粒子は表面上に沈着しておらず、したがってそれは銀表面からなる。
【0091】
様々な基体上の平衡における水滴の静的接触角を測定した。前進および後退する接触角をウィルヘルミー法を用いて測定した。
【0092】
前進および後退する接触角の値の差異は接触角ヒステリシスと呼ばれ、 測定のために計算した。実験結果を表1に示す。
【0093】
表1
【表1】

【0094】
基体の表面疎水性はこのように改変される一方、表面は本実施例による基体に固有のいくつかのその他の有用な特性、例えば抗微生物特性を示す。
【0095】
実施例 2
金属粒子の量の関数としてのタンパク質吸着
銀の均一な層を二酸化ケイ素基体上に沈着させた。基体を20% 硫酸洗浄溶液に10 分間 室温で浸漬し、次いで脱塩水ですすいだ。基体表面を塩化第一スズ水溶液への浸漬により活性化し、脱塩水ですすいだ。基体表面を次いで銀イオンを含む沈着溶液の4 浴に浸漬することにより銀の均一な層でめっきした。これにより約 77 オングストロームの厚さに対応する0.8 μg/cm2の適用量を有する銀表面が得られた。95% パラジウムおよび5% 金からなる粒子を次いでPd/Au-粒子の希釈懸濁液への浸漬により第一の銀表面上に沈着させた。金属粒子の適用量はそれぞれ0.05、0.12、0.48および0.59 μg/cm2であった。基体を脱塩水ですすぎ、乾燥させた。
【0096】
フィブリノーゲンの吸着をQCM-D法により研究した。フィブリノーゲンは肝臓で合成され血漿中にみられる糖タンパク質である。QCM-Dは散逸をモニターする石英結晶微量天秤である。
【0097】
適用した金属粒子の関数としてのフィブリノーゲンの吸着量を表2に示す。
【0098】
表2
【表2】

【0099】
実施例 3
金属粒子の量の関数としての細菌の増殖
実施例 1に示す方法にしたがってパラジウム/金ナノ粒子を銀基底層上に様々な量にて沈着させた。粒子は95% パラジウムおよび5% 金を含んでいた。基底層における銀の量はすべてのサンプルについて一定に維持した。したがって沈着した Pd/Au 粒子の量は変動した。沈着したナノ粒子 (Pd/Au)の量の関数としての細菌の増殖を以下の方法を用いて研究した:
【0100】
被覆したサンプルをユニバーサル(universal)に入れた。三連を各試験条件に含めた。接種した大腸菌 (およそ 105 CFU/ml) を含む10 mlの人工尿 (AU)をそれぞれに添加し、 それらを水平に 穏やかに振盪しながら37℃で4 時間インキュベートした。
【0101】
4 時間後、ユニバーサルをインキュベーションから取り出した。サンプルを取り出し、CFU (コロニー形成単位) 計数を各ユニバーサルから滅菌蒸留水に10-倍希釈し、100 μl を栄養寒天プレートの3分の1に播くことにより行った。これらを37℃で16 24 時間インキュベートし、コロニーを計数した。対照に対するlog CFU/ml の低下を計算し、表3に示す。
【0102】
表3
【表3】

【0103】
実施例 4
いくつかの種についての微生物増殖
パラジウム/金ナノ粒子をシリコーンの基体上の銀基底層上に、実施例 1に記載の方法にしたがって様々な量にて沈着させた。粒子は95% パラジウムおよび5% 金を含んでいた。基底層中の銀の量はすべてのサンプルについて一定に維持した。沈着したPd/Au 粒子の量は0.36 μg/cm2であった。様々な細菌株についての抗微生物特性を研究した。
【0104】
微生物の種は細菌感染および院内感染に関与する一般的病原体(臨床分離株)の範囲、即ち、大腸菌 (E. coli)、緑膿菌(P. aeruginosa)、腸球菌(Enterococcus)・エスピーピー、クレブシエラ(Klebsiella)、およびカンジダ(Candida)を概観する目的で選択した。
【0105】
Pd/Au 被覆シリコーンサンプルをユニバーサルに入れた。三連を各試験条件に含めた。接種した微生物 (およそ 105 CFU/ml) を含む10 mlの人工尿をそれぞれに添加し、それらを穏やかに振盪しながら37℃で 24 時間水平にインキュベートした。
【0106】
24 時間後、ユニバーサルをインキュベーションから取り出した。サンプルを取り出し、紙タオル上に流し、20 ml PBS + Tween を含むユニバーサルに入れ、1.5 分間超音波処理した。
【0107】
CFU 計数を各ユニバーサルから滅菌蒸留水中の10-倍希釈を行い、100 μlを栄養寒天プレートの3分の1に播くことによって行った。これらを16 24 時間37℃でインキュベートし、コロニーを計数した。表 4において非被覆シリコーンサンプルと比較した細菌の低下を示す。値が大きいほど、低減が大きいことを示す。
【0108】
表 4
【表4】

【0109】
実施例5
緑膿菌(P. aeruginosa)の一次付着および細胞回復
実施例 1に記載の方法にしたがってパラジウム/金ナノ粒子を様々な量で銀の基層に沈着させた。基層における銀の量はすべてのサンプルについて一定に維持した。粒子中のAuおよび Pdの量を表5に示すように変動させた。
【0110】
サンプルを放射標識した緑膿菌 GSU-3で攻撃し、2時間インキュベートした。
【0111】
サンプル上の一次付着細胞および細胞回復 (細胞が回復する能力)を判定した。この研究に用いた方法は、M. M. Gabriel et al.、Current Microbiology、vol. 30 (1995)、pp. 17-22、mutatis mutandisに記載のものであった。結果を以下の表5に要約する。
【0112】
表5
【表5】

【0113】
実施例 6
ポリエステル繊維の網をまず5% 水酸化カリウム 溶液で5分間30℃ですすいだ。脱塩水中で繰り返しすすいだ後、基体を1 g/l 塩化第一スズの酸性溶液に室温で10分間浸漬した。脱塩水ですすいだ後、それを2 g/l 硫酸銅、5 g/l 水酸化ナトリウム、50 g/l クエン酸ナトリウムおよび0.005 ml/l ホルムアルデヒドを含むめっき浴に10分間35℃で浸漬した。約 200 オングストロームの銅層が得られ、脱塩水で新たにすすいだ後、基体をそれぞれ0.05 g/lのパラジウム粒子および金粒子を含む粒子懸濁液に浸漬した。金属粒子の適用量は0.4 μg/cm2であった。
【0114】
実施例 7
PMMA の基体を5% 塩酸で 2 分間清浄にし、次いで脱塩水ですすいだ後、0.02 g/l のスズイオンを含むpH2.5の溶液に浸漬した。すすいだ後、基体を0.005 g/lの銀イオン、0.02 ml/l アンモニア、0.05 g/l 水酸化カリウムおよび 0.0005 ml/l ホルムアルデヒドを含む溶液に5 分間室温で浸漬した。これにより0.12 μg/cm2 の銀を有する表面が得られた。すすいだ後、それを0.005 g/l パラジウム および0.002 g/l 金粒子を含む粒子懸濁液に浸漬した。金属粒子の適用量は0.05 μg/cm2であった。
【0115】
実施例 8
不織ポリイミド基体をNaOH の12% 溶液に40℃で 10 分間浸漬した。脱塩水で繰り返しすすいだ後、それを0.5 g/l 塩化第一スズを含むアルコール溶液に5 分間室温で浸漬した。すすいだ後、それを実施例 3にしたがって銅浴に浸漬した。2 μg/cm2の銅層が得られた。すすいだ後、それを懸濁液の総重量に対して計算して1% のPdおよび0.2%の金粒子を含む懸濁液に浸漬した。金属粒子の適用量は0.6 μg/cm2であった。
【0116】
実施例 9
ナイロン繊維を5% NaOHで10 分間40℃で清浄にし脱塩水ですすいだ後、pH 2.2の 0.6 g/l 塩化第一スズ溶液に15 分間室温で浸漬した。この後、表面は0.8 μg/cm2の銀量を含んでいた。新たにすすいだ後、それを実施例 2にしたがって銀浴に浸漬し、 新たにすすいだ後、1% Pdおよび0.05% Au 粒子を含む懸濁液に浸漬した。金属粒子の適用量は0.12 μg/cm2であった。
【0117】
実施例 10
アルミニウムの基体を10% 硝酸および3% フッ化水素酸の溶液中で60℃で20 分間処理した。すすいだ後、基体を3 g/l 塩化第一スズの酸性溶液に浸漬し、新たに すすいだ後、実施例 2による銀浴に浸漬した。この工程の後、約80 オングストロームの銀量が表面上に得られた。さらにすすいだ後、基体を1% Pdおよび2% Au 粒子を含む懸濁液に浸漬した。金属粒子の適用量は0.7 μg/cm2であった。
【0118】
実施例 11
PTFEの基体を水酸化ナトリウム水溶液中で5 分間エッチング処理した。すすぎおよび乾燥の後、それを 0.7 g/l 塩化第一スズを含む溶液に20 分間室温で浸漬した。基体をすすいだ後、0.2 g/l 硝酸銀、0.5 ml/l アンモニアおよび水酸化ナトリウムを含む pH 10.5のめっき浴に5 分間浸漬した。この工程の後約 2.2 μg/cmの銀量が表面上に得られた。新たにすすいだ後、それを3% Pd および0.1% Au 粒子を含む懸濁液に5 分間室温で浸漬した。金属粒子の適用量は0.03 μg/cm2であった。
【0119】
実施例 12
ガラスプレートを10% 硫酸 および1% フッ化水素酸で室温で15 分間すすいだ。すすいだ後、それを1% フッ化スズ 溶液に浸漬し、 新たにすすいだ後、実施例 2による銀浴に浸漬した。この工程の後、約140 オングストロームの銀量が表面上に得られた。新たにすすいだ後それを1% ルテニウムおよび2% パラジウム 粒子を含む懸濁液に浸漬した。金属粒子の適用量は0.25 μg/cm2であった。
【0120】
実施例 13
ステンレス鋼基体を15% 硝酸および5% HFの溶液に室温で30 分間浸漬し、次いで脱塩水ですすいだ。実施例 11の工程にしたがってプロセスを続けた。金属粒子の適用量は0.9 μg/cm2であった。
【0121】
実施例 14
チタンの棒を18% 硝酸および2% HFの溶液 で20 分間室温で清浄にした。電子供与表面の適用および金属粒子の適用を実施例 11のように行った。金属粒子の適用量は0.6 μg/cm2であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与表面を有する基体であって、該表面上に金属粒子が存在することを特徴とし、該金属粒子が、パラジウム、および、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含み、該金属粒子の量が約 0.001〜約 8 μg/cm2である、基体。
【請求項2】
該電子供与表面が約 0.05〜約 12 μg/cm2の量にて適用された電子供与材料の層である請求項 1の基体。
【請求項3】
該電子供与層が、パラジウム、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群における金属のいずれよりも貴ではない金属である請求項 2の基体。
【請求項4】
該電子供与層が、銀、銅および亜鉛からなる群から選択される金属である請求項3の基体。
【請求項5】
該基体がポリマー性基体である請求項 1-4のいずれかの基体。
【請求項6】
該ポリマー性基体が、ラテックス、ビニル基を含むポリマー、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニルのコポリメリゼート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド、およびポリイミド、またはそれらの混合物からなる群から選択される請求項 5の基体。
【請求項7】
該ポリマー性基体が、天然ポリマー、分解可能ポリマー、食用ポリマー、生分解性ポリマー、環境に優しいポリマー、および医療グレードポリマーからなる群から選択される請求項 5の基体。
【請求項8】
該基体が金属である請求項1-4のいずれかの基体。
【請求項9】
該金属が、ステンレス綱、医療グレード綱、チタン、医療グレードチタン、コバルト、およびクロム またはそれらの混合物からなる群から選択される請求項 8の基体。
【請求項10】
該基体が、ガラス、無機質、ゼオライト、石およびセラミクスからなる群から選択される請求項1-4のいずれかの基体。
【請求項11】
該基体が、紙、木、織り繊維、繊維、セルロース繊維、革、炭素、炭素繊維、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる群から選択される請求項1-4のいずれかの基体。
【請求項12】
該基体が粒子の形状を有する請求項1-11のいずれかの基体。
【請求項13】
金属粒子の量が約 0.01〜約 4 μg/cm2である請求項1-12のいずれかの基体。
【請求項14】
該金属粒子におけるパラジウムの非パラジウム金属に対する比が約 0.01:99.99 〜約 99.99:0.01である請求項1-13のいずれかの基体。
【請求項15】
該金属粒子におけるパラジウムの非パラジウム金属に対する比が約 0.5:99.5〜 約 99.8:0.2である請求項1-13のいずれかの基体。
【請求項16】
該金属粒子におけるパラジウムの非パラジウム金属に対する比が約 2:98 〜 約 95:5である請求項1-13のいずれかの基体。
【請求項17】
該金属粒子がパラジウムに加えて金を含む請求項1-16のいずれかの基体。
【請求項18】
該金属粒子の平均サイズが約 10-10000 オングストロームである請求項1-17のいずれかの基体。
【請求項19】
該金属粒子の平均サイズが約100-600オングストロームである請求項1-18のいずれかの基体。
【請求項20】
請求項 1-19のいずれかの基体を含む対象。
【請求項21】
該対象が医療機器である請求項 20の対象。
【請求項22】
該対象が使い捨て商品である請求項 20の対象。
【請求項23】
該対象が歯科用品である請求項 20の対象。
【請求項24】
表面に金属粒子を有する電子供与表面を有する基体の、該基体を含む対象に対するタンパク質吸着を改変するための使用であって、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜 約 8 μg/cm2である使用か、または請求項1-19のいずれかの基体の、該基体を含む対象に対するタンパク質吸着を改変するための使用。
【請求項25】
表面に金属粒子を有する電子供与表面を有する基体の、該基体を含む対象に対する細菌の付着を改変するための使用であって、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜 約 8 μg/cm2である使用か、または請求項1-19のいずれかの基体の、該基体を含む対象に対する細菌の付着を改変するための使用。
【請求項26】
表面に金属粒子を有する電子供与表面を有する基体の、細菌の増殖を阻止するための使用であって、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜 約 8 μg/cm2である使用か、または請求項1-19のいずれかの基体の、細菌の増殖を阻止するための使用。
【請求項27】
表面に金属粒子を有する電子供与表面を有する基体の、細菌の定着を遅延させるための使用であって、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜 約 8 μg/cm2である使用か、または請求項1-19のいずれかの基体の、細菌の定着を遅延させるための使用。
【請求項28】
表面に金属粒子を有する電子供与表面を有する基体の、細菌の感染を予防するための使用であって、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜 約 8 μg/cm2である使用か、または請求項1-19のいずれかの基体の、細菌の感染を予防するための使用。
【請求項29】
表面に金属粒子を有する電子供与表面を有する基体の、院内感染を予防するための使用であって、該金属粒子がパラジウムを含み、該金属粒子の量が約 0.001 〜 約 8 μg/cm2である使用か、または請求項1-19のいずれかの基体の、院内感染を予防するための使用。
【請求項30】
以下の工程を含む請求項1-19のいずれかの基体の製造方法:
a.金属粒子を懸濁液から該基体上に沈着させる工程、
b.該基体をすすぐ工程、および、
c.該基体を乾燥させる工程。
【請求項31】
金属粒子の沈着の前に該基体上に電子供与材料を沈着させる工程をさらに含む請求項 30の方法。

【公表番号】特表2009−536837(P2009−536837A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504149(P2009−504149)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050485
【国際公開番号】WO2007/117191
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508301032)バクティガード・アクチボラゲット (3)
【氏名又は名称原語表記】BACTIGUARD AB
【Fターム(参考)】