説明

新規抗真菌活性物質PF1237A、BおよびM物質

本発明は、抗真菌活性を有する新規化合物PF1237A、PF1237BおよびPF1237M物質、およびフザリウム(Fusarium)属に属するPF1237生産菌株を培養することによる当該新規化合物の製造方法ならびに当該新規化合物を含有する抗真菌剤を提供する。本発明の新規化合物群は、抗真菌活性を有するため、医薬、農薬、衛生用品の分野で、抗真菌剤として使用することができる。特に真菌感染症の治療薬としての活用が期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は新規抗真菌活性物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質またはそれらの塩、それらの製造法ならびにそれらを有効成分とする抗真菌剤に関するものである。
【背景技術】
1950年代以降の抗生物質に関する研究開発の急速な進歩およびその広範な普及により、細菌性の感染症に対する多くの治療薬が開発されてきた。その一方で、平素は無害な弱病原性微生物による感染症、いわゆる日和見感染症が近年大きな問題になりつつある。この日和見感染症は免疫不全症や悪性腫瘍等の疾病、または免疫抑制剤や抗炎症剤等の投与によって免疫機能が低下した場合、また抗生物質の投与による共生菌の抑制から生じる菌交代などが原因とされている。このような日和見感染症の中で真菌が原因である症例が数多く報告されている。また、本発明によるPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質と物理化学的性状が類似する化合物として、パプラカンジンA、B、C、DおよびE(Papulacandins)[トラキセラー(Traxler)ら、ジャーナルオブアンティバイオティックス(J.Antibiotics)30:289−296,1977]、カエティアカンジン(Chaetiacandin)[コモリ(Komori)ら、J.Antibiotics 38:455−459,1985]、L−687,781[ヴァンミドルスワース(Vanmiddlesworth)ら、J.Antibiotics 44:45−51,1991]、Bu−4794F[アオキ(Aoki)ら、J.Antibiotics 46:952−960,1993]、サリカンジン(Saricandin)[ランダール(Randal)ら、J.Antibiotics 49:596−598,1996]等が知られているが、抗真菌物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質はこれらの物質とは物理化学的性状が異なり明確に区別される。
現在使用されている主な抗真菌剤としては、ポリエンマクロライド系、アゾール系およびフルシトシン等がある。表在性真菌症の治療には、主に外用剤が使用され、それらには多種のイミダゾールやトリアゾール系の抗真菌剤を始め、アリルアミン系の抗真菌剤が用いられている。一方、深在性真菌症の治療においては、トリアゾール系薬剤であるフルコナゾールが、その高い安全性から多用されているが、これは抗菌スペクトルが狭いことが難点とされている。また、ポリエンマクロライド系薬剤であるアムホテリシンBは抗菌スペクトルが広く、抗真菌活性は強いが同時に毒性も高く、安全性の面での問題が残されている。
このような背景からより有効かつ安全な抗真菌剤の提供とその有利な製造法は常に求められる課題である。本発明者らは、以上のような点に着目し、抗真菌活性を有する新規な化合物を提供するとともに、微生物の培養法を用いたそれらの製造法を提供することを目的とした。また、本発明の別の目的は、当該新規化合物を含有する医薬組成物および抗真菌剤の提供である。
【発明の開示】
本発明者らは、より有効かつ安全な新規抗真菌活性物質を見い出すため、幅広く微生物の探索を行った結果、フザリウム(Fusarium)属に属する菌を培養することによって、抗真菌活性を示す物質が培養物中に生産、蓄積されることを見い出した。
次いで、本発明者らは培養物中から式(1)で表される有効物質PF1237A物質、式(2)で表されるPF1237B物質、および式(3)で表されるPF1237M物質をそれぞれ単離、精製し、これらの物理化学的性状からこれらの物質が新規物質であることを明らかにし、抗真菌活性を有することを確認した。これらの知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の新規抗真菌活性物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質またはそれらの薬理学的に許容される塩を提供するものである。
式(1)

で表されるPF1237A物質または薬理学的に許容されるその塩。
式(2)

で表されるPF1237B物質または薬理学的に許容されるその塩。
式(3)

で表されるPF1237M物質または薬理学的に許容されるその塩。
また、本発明は、Fusarium属に属し、PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中にPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を蓄積させ、当該培養物からPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を採取することを特徴とするPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質あるいはそれらの薬理学的に許容される塩の製造法を提供するもので。
さらに、PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質あるいはそれらの薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物および抗真菌剤に関する。
<発明の実施の態様>
本発明の第1の要旨とするところは、前述式(1)で表され、下記の物理化学的性状を有する新規抗真菌活性物質PF1237A物質にある。
1.PF1237A物質の物理化学的性状
(1)色および形状:無色粉末
(2)分子式:C416016

(4)比旋光度:[α]25=+15.2°(c1.0,CHOH)
(5)紫外線吸収スペクトルメタノール中で測定した結果を以下に示す。
λmax nm(ε):207(1420),225(640),267(1410)
(6)赤外線吸収スペクトルKBr錠での測定結果を以下に示す。
νmaxcm−1:3440,2930,2860,1717,1636,1610,1458,1244,1154,1070,1036,1010,978,843,745
(7)H NMRスペクトル(400MHz、CDOD、測定溶媒中に含まれるCHDODのHのシグナルを3.38ppmとした時の化学シフト値、積分強度、多重度、結合定数を示す。)
δ(ppm):0.85(3H,t,J=7.5Hz),0.89(3H,d,J=6.8Hz),0.95(3H,d,J=6.8Hz),1.13(3H,t,J=7.5Hz),1.16−1.55(7H,m),1.97(3H,s),1.90−2.03(3H,m),2.27−2.41(4H,m),3.40−3.63(4H,m),3.72(1H,d,J=2.2Hz),3.78(1H,d,J=11.5Hz),3.94−4.15(5H,m),4.34(1H,d,J=7.1Hz),4.38(1H,d,J=10.0Hz),5.01(1H,d,J=13.1Hz),5.04(1H,d,J=12.4Hz),5.32(1H,dd,J=7.9,15.1Hz),5.47(2H,m),6.11−6.24(3H,m),6.49(1H,dd,J=11.2,14.8Hz),7.25(1H,d,J=11.5Hz)
(8)13C NMRスペクトル(100MHz、CDOD、重メタノールの13Cのシグナルを49.0ppmとした時の化学シフト値を示す。)
δ(ppm):175.7,170.2,161.6,154.5,145.5,141.2,139.9,137.5,129.8,129.0,127.0,116.5,112.0,105.0,103.0,100.0,77.0,76.4,75.4,74.9,74.7,73.9,73.7,72.6,72.0,69.9,64.1,61.5,39.9,39.6,39.3,34.0,33.9,31.0,28.5,28.3,21.0,14.3,13.1,12.2,9.5
(9)溶解性:メタノールに溶け、アセトン、酢酸エチルに溶けにくく、水にほとんど溶けない。
(10)塩基性、酸性、中性の区別:弱酸性物質
本発明の第2の要旨とするところは、前述式(2)で表され、下記の物理化学的性状を有する新規抗真菌活性物質PF1237B物質にある。
2.PF1237B物質の物理化学的性状
(1)色および性状:無色粉末
(2)分子式:C426216

(4)比旋光度:[α]25=+19.8°(c1.0,CHOH)
(5)紫外線吸収スペクトルメタノール中で測定した結果を以下に示す。
λmaxnm(ε):208(1600),225(760),267(1850)
(6)赤外線吸収スペクトルKBr錠での測定結果を以下に示す。
νmaxcm−1:3432,2932,2876,1717,1702,1636,1611,1246,1154,1071,978,843
(7)H NMRスペクトル(400MHz、CDOD、測定溶媒中に含まれるCHDODのHのシグナルを3.38ppmとした時の化学シフト値、積分強度、多重度、結合定数を示す。)
δ(ppm):0.93(3H,t,J=7.3Hz),0.98(3H,d,J=6.9Hz),1.03(3H,d,J=6.9Hz),1.06(3H,t,J=7.4Hz),1.10−1.52(7H,m),1.58−1.70(2H,m),1.97−2.12(3H,m),2.06(3H,s),2.30−2.50(4H,m),3.48−3.73(4H,m),3.80(1H,d,J=1.6Hz),3.87(1H,d,J=11.3Hz),4.02−4.14(4H,m),4.21(1H,dd,J=6.5,10.5Hz),4.42(1H,d,J=7.8Hz),4.47(1H,d,J=9.7Hz),5.08(1H,d,J=26.1Hz),5.12(1H,d,J=25.7Hz),5.33(1H,dd,J=15.2,30.0Hz),5.40−5.56(2H,m),6.18−6.33(3H,m),6.56(1H,dd,J=11.2,15.7Hz),7.33(1H,d,J=11.2Hz)
(8)13C NMRスペクトル(100MHz、CDOD、重メタノールの13Cのシグナルを49.0ppmとした時の化学シフト値を示す。)
δ(ppm):174.9,170.2,161.6,154.5,145.5,141.2,139.9,137.5,129.8,129.0,127.0,116.5,112.0,105.0,103.0,100.0,77.0,76.4,75.4,74.9,74.7,73.9,73.8,72.6,72.0,70.0,64.1,61.5,39.8,39.6,39.3,37.0,34.0,33.9,31.0,28.5,21.0,19.5,14.3,14.1,13.1,12.2
(9)溶解性:メタノールに溶け、アセトン、酢酸エチルに溶けにくく、水にほとんど溶けない
(10)塩基性、酸性、中性の区別:弱酸性物質
本発明の第3の要旨とするところは、前述式(3)で表され、下記の物理化学的性状を有する新規抗真菌活性物質PF1237M物質にある。
3.PF1237M物質の物理化学的性状
(1)色および形状:無色粉末
(2)分子式:C385615

(4)比旋光度:[α]25=+10.0°(c1.0,CHOH)
(5)紫外線吸収スペクトル:メタノール中で測定した結果を以下に示す。
λmax nm(ε):206(1150),225(470),267(940)
(6)赤外線吸収スペクトル:KBr錠での測定結果を以下に示す。
νmax cm−1:3410,2930,1700,1640,1610,1460,1240,1150,1070,980,740
(7)H NMRスペクトル(400MHz、CDOD、測定溶媒中に含まれるCHDODのHのシグナルを3.38ppmとした時の化学シフト値、積分強度、多重度、結合定数を示す。)
δ(ppm):0.94(3H,t,J=7.3Hz),0.99(3H,d,J=6.9Hz),1.04(3H,d,J=6.3Hz),1.15−1.65(7H,m),1.97−2.15(3H,m),2.07(3H,s),2.44(2H,m),3.44−3.72(6H,m),3.84−3.92(2H,m),4.02−4.16(3H,m),4.43(1H,d,J=6.7Hz),4.47(1H,d,J=10.0Hz),5.07(1H,d,J=12.9Hz),5.13(1H,d,J=12.7Hz),5.34(1H,dd,J=7.1,14.9Hz),5.27−5.40(2H,m),6.23−6.33(3H,m),6.58(1H,dd,J=12.2,15.8Hz),7.34(1H,d,J=11.6Hz)
(8)13C NMRスペクトル(100MHz、CDOD、重メタノールの13Cのシグナルを49.0ppmとした時の化学シフト値を示す。)
δ(ppm):170.2,161.6,154.6,145.5,141.3,140.0,137.5,129.8,129.0,126.9,116.5,112.0,105.2,103.0,100.0,77.1,76.7,76.3,75.5,75.0,74.9,73.9,72.9,72.0,69.7,61.7,61.7,39.8,39.5,39.4,33.9,33.9,31.0,28.5,21.0,14.4,13.1,12.2
(9)溶解性:メタノールに溶け、アセトン、酢酸エチルに溶けにくく、水にほとんど溶けない
(10)塩基性、酸性、中性の区別:弱酸性物質
本発明の第4の要旨とするところは、フザリウム(Fusarium)属に属するPF1237物質群を生産する菌を培養し、その培養物からPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を採取することを特徴とする、PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質の製造法である。
上記のPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質生産菌としては、例えば本発明者らが新たに分離したPF1237株が挙げられる。なお、本発明で用いられるPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質生産菌は、本明細書に記載の微生物に限定されるものではない。PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を生産する能力を有している菌であればPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質生産菌としていずれを用いてもよい。使用できる微生物の好適な例としては、PF1237株、あるいはこの菌株の継代培養物、人工変異株ならびに自然変異株、遺伝子組換え株などが挙げられる。PF1237株の菌学的性状は以下の通りである。
PF1237株の菌学的性状
(1) コロニーの性状
ツァペック酵母エキス寒天培地上で生育良く、25℃、7日間の培養でコロニーの直径は50〜53mmに達する。濃黄色、放射状のしわを生じ、密な菌糸層からなり、束状の気生菌糸を中央に、なわ状の気生菌糸を周辺に生じる。分生子は形成しない。裏面は濃黄色となる。ツァペック寒天培地上で生育良く、25℃、7日間の培養でコロニーの直径は50〜52mmに達する。白色、平坦、薄い菌糸層からなる。分生子を疎らに形成する。裏面は白色となる。37℃の培養では、どの培地上でも生育しない。
(2) 形態的性状
菌糸は太く2.5μm以上である。フィアライドは無色、円筒形、菌糸側面より直立に生じ、先端は細まり、基部はややくびれ、4.0〜8.0x1.5〜2.5μmである。分生子は無色、楕円形〜円筒形、滑面、3.5〜7.5x1.5〜2.5μm、フィアライドの先端に粘塊状に生じる。
以上の菌学的性状より、大分生子を形成しないが、PF1237株を不完全菌類のフザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌と同定した。なお、本菌株は以下のように独立行政法人産業技術総合研究所特許生産寄託センターにFERM BP−8416として国際寄託されている。
▲1▼寄託機関:国際寄託機関、独立行政法人産業技術総合研究所特許生産寄託セ
ンター
住所: 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便
番号 305−8566)
▲2▼寄託日: 原寄託日:平成14年3月29日
移管請求日:平成15年6月24日(平成14年3月29日に寄託さ
れたFERM P−18798号より移管)
▲3▼寄託番号:FERM BP−8416
生産菌の培養法
本発明の菌株を用いてPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を生産する培養方法としては、通常の微生物が利用し得る栄養物を含有する培地を用い、一般に実施されている方法に従って培養することが可能である。
栄養源としては、従来カビの培養に利用されている公知のものが使用できる。例えば、炭素源としては、グルコース、スクロース、水飴、デキストリン、でんぷん、グリセロール、糖蜜、動植物油等を使用し得る。また、窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等を使用し得る。その他必要に応じてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、燐酸、硫酸およびその他のイオンを生成することができる無機塩類を添加することは有効である。また、菌の発育を助け、PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質の生産を促進するような有機及び無機物を適当に添加することができる。
培養法としては、好気的条件での培養法、特に液体培養法が最も適している。培養に適当な温度は25〜30℃であるが、多くの場合26℃付近で培養する。PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質の生産は、培地や培養条件によって異なるが、静置培養、振盪培養、タンク培養のいずれにおいても、通常2〜14日間でその蓄積が最高に達する。培養液中のPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質の蓄積が最高になった時に培養を停止し、培養液から目的物質を単離、精製する。
PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質の精製法
本発明によって得られる新規抗真菌物質は主に菌体中に存在するので、菌体より通常の分離手段、例えば溶媒抽出法、イオン交換樹脂への吸脱着法、若しくは分配あるいはゲルろ過等のカラムクロマトグラフィーを単独又は組み合わせて行うことにより精製できる。また高速液体クロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーなども精製に利用可能である。好ましい分離、精製の方法としては以下の方法が挙げられる。培養液から遠心分離により菌体を得る。得られた菌体からメタノールやアセトン等により活性成分を抽出する。この菌体抽出液を減圧下で溶媒を留去後酢酸エチル、クロロホルム等の水と混和し難い有機溶媒を用いて抽出する。抽出液を濃縮乾固後クロロホルム−メタノールの混液を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー、次いで水−アセトニトリルの混液を溶出液とするODSカラムクロマトグラフィー、次にメタノールを溶出液としたセファデックスLH20を用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィー、さらに水−アセトニトリルの混液を溶出液とする高速液体クロマトグラフィー、を行うことにより目的とするPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を得ることが出来る。
本発明の要旨とするところは、本発明で得られる新規な抗真菌活性物質または薬理学的に許容されるその塩を含有する医薬組成物を提供することにある。薬理学的に許容しうる塩の典型例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有機アミン塩等を挙げることができる。
本発明に用いられるPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を医薬組成物として使用するには種々の投与形態あるいは使用形態に合わせて、公知の担体を組み合わせて製剤化すればよい。公知の担体としては、賦形剤(例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、ラクトース、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなど)、結合剤(例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースおよびそのカルシウム塩、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等)潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリン酸ナトリウム等)、芳香剤(例えば、クエン酸、メントール、グリシン、オレンジ紛等)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、安定化剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸など)懸濁化剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウムなど)、分散剤(例えば界面活性化剤)などの医薬用として常用される種々の有機および無機の担体物質が上げられる。
本発明の化合物は、抗真菌剤として皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、坐薬等による非経口投与あるいは錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等による経口投与などの全身投与のほか、軟膏剤、ローション剤、膣坐薬等の局所投与の形態を例示することができる。農薬用または衛生用品として本発明の化合物を活用する場合には、各分野で常用される調製方法を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明の実施例を示すが、これは単なる一例であって本発明を限定するものではなく、ここに例示しなかった多くの変法あるいは修飾手段のすべてを包括するものである。
【実施例1】
種培地として、でんぷん2.0%、グルコース1.0%、ポリペプトン0.5%、小麦胚芽0.6%、酵母エキス0.3%、大豆粕0.2%および炭酸カルシウム0.2%の組成からなる培地(殺菌前pH7.0)を用いた。また、生産培地としては、グルコース5.0%(別に殺菌)、肉エキス0.4%、大豆粕1.0%、ポリペプトン0.4%、酵母エキス0.1%、塩化ナトリウム0.25%および炭酸カルシウム0.5%の組成からなる培地(殺菌前pH7.0)を用いた。
前記の種培地80mLを分注した500mL容三角フラスコを120℃で20分間殺菌し、これにPF1237株(FERM BP−8416)の斜面寒天培養の3〜4白金耳を植菌後、26℃で3日間振とう培養した。次いで、種培地500mLを分注した2000mL容三角フラスコを120℃で20分間殺菌し、これに上記種培養液を10mLずつ植菌し26℃で2日間振とう培養した。さらに、生産培地60Lを仕込んだ100L容ジャーファメンター(福嶋鉄工(株)製)を121℃で30分間殺菌し、これに上記種培養液を1.5L植菌し、撹拌数は最初150rpm、24時間後に180rpm、通気量60L/分、26℃で5日間培養した。
こうして得られた培養液90Lを遠心分離し菌体の沈殿物20Lを得た。この菌体にメタノール40Lを加え室温で120分攪拌した後、遠心分離により菌体を除去しメタノール抽出液を得た。メタノール抽出液を減圧下に約5Lに濃縮し7Lの酢酸エチルを加え室温で60分攪拌し沈殿物を除去することにより得られた酢酸エチル抽出液6Lを減圧下に濃縮し28.8gの粗抽出物を得た。
得られた粗抽出物に400mLのヘキサンと200mLのメタノールを加え攪拌した後メタノール層を分離し減圧下に濃縮し25.8gの粗抽出物を得た。これを70mLのメタノールに溶解し、100gのシリカゲル(ワコーゲルC−300、和光純薬社製)を加えた後、減圧下でメタノールを留去した。得られた粗抽出物をシリカゲルに均一に吸着させた。これをグラスフィルター上のシリカゲル100gに重層し、クロロホルム/メタノール溶液(メタノール濃度が0%を2.4L次いで1,10,50,100%をそれぞれ2L)で溶出し活性画分を集めて減圧濃縮により残渣18.8gを得た。
得られた残渣を100mLのアセトニトリルに溶解し200mLの蒸留水を加え懸濁させた。これをアセトニトリル/蒸留水=3/7の混合溶媒にて平衡化したグラスフィルター上のコスモシール75C18−OPN(ナカライテスク社製)200gに吸着した。本カラムを、アセトニトリル/蒸留水=3/7 1.6L、アセトニトリル/蒸留水=3/2 1.6L、およびメタノール500mLにて順じ溶離した。PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を含む分画から有機溶媒を留去し、得られた水層を酢酸エチルで抽出し減圧濃縮により残渣1.65gを得た。
得られた残渣をメタノールを溶離液とするセファデックスLH20カラムクロマトグラフィー(ファルマシア社製、内径5cm、長さ80cm)にかけ活性画分を濃縮乾固することにより粗物質721mgを得た。
得られた粗物質を7.2mLのメタノールに溶解し、その一部を用いアセトニトリル/蒸留水=55/45の混合溶液で充填した高速液体クロマトグラフィー(カラム:イナートシルODS−2、内径20mm、長さ250mm、ジーエルサイエンス社製)に注入しアセトニトリル/蒸留水=55/45の混合溶液で溶出することを繰り返すことによりPF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質を含む画分をそれぞれ得た。得られた画分はそれぞれアセトニトリルを留去し、得られた水層を酢酸エチルで抽出し濃縮乾固することによりPF1237A物質34.6mg、PF1237B物質133mgおよびPF1237M物質63.9mgをそれぞれ無色粉末として得た。
試験例 1
PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質の抗真菌活性を液体培養試験法により、各種菌株に対する最小阻止濃度(MIC)として測定した。
培地としてRPMI1640(ギブコ社製)に165mM MOPS緩衝液(ナカライテスク社製)を加えpH7.0に調製したものを用い、35℃で24時間(Cryptococcus neoformansについては72時間、Aspergillus fumigatusについては30℃、48時間)培養した。その測定結果を表1に示す。

本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2002年8月02日出願の日本特許出願(特願2002−225540)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
本発明の新規抗真菌活性物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質は、表1に示したように、医療上問題になっているCandida albicansを含む各種真菌に対し抗真菌活性を有しており、これらを有効成分とする抗真菌剤は各種真菌を起因菌とする真菌症の治療に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

で表されるPF1237A物質または薬理学的に許容されるその塩。
式(2)

で表されるPF1237B物質または薬理学的に許容されるその塩。
【請求項3】
式(3)

で表されるPF1237M物質または薬理学的に許容されるその塩。
【請求項4】
フザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌を培養し、該培養物より有用物質を採取することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載されている新規抗真菌活性物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質あるいはそれらの薬理学的に許容される塩の製造法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載されている新規抗真菌活性物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質あるいはそれらの薬理学的に許容される塩の少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載されている新規抗真菌活性物質PF1237A物質、PF1237B物質およびPF1237M物質あるいはそれらの薬理学的に許容される塩の少なくとも1つを有効成分として含有する抗真菌剤。

【国際公開番号】WO2004/013342
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【発行日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525822(P2004−525822)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009822
【国際出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】