説明

新規抗菌性ヒドロキシフェニル化合物

本発明は、新規なヒドロキシフェニル化合物、該化合物及びそれに利用される中間体の製造、該化合物を含む抗菌性医薬及び医薬組成物としての該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヒドロキシフェニル化合物、該化合物及びそれに使用される中間体の製造、該化合物を含む抗菌性医薬及び医薬組成物としての該化合物の使用に関する。
【0002】
本発明は、特に、細菌及び/又は寄生虫の脂肪酸生合成を阻害できる新化合物並びに抗菌剤及び/又は抗寄生虫剤としての該化合物の使用に関する。
【0003】
抗生物質耐性病原体の出現は、世界的な重大な医療の問題である。実際に、数種の感染症は、現在利用可能な治療にもはや反応しない多剤耐性生物体により起こされている。したがって、新規な作用機序を持つ新しい抗菌剤/抗寄生虫剤が今すぐに必要とされている。
【0004】
細菌脂肪酸生合成(FASII系)は、新規な抗菌剤/抗寄生虫剤の開発のために最近多くの関心を生み出した(Rockらの文献J. Biol. Chem. 2006, 281, 17541;Wright及びReynoldsの文献Curr. Opin. Microbiol. 2007, 10, 447)。個別の酵素に基づく細菌脂肪酸生合成経路における成分の構成は、哺乳動物にみられる多機能なFASI系とは根本的に異なるので、選択的な阻害の見込みが十分にある。細菌のFASII系の多くの酵素における全体的に高度な保存も、スペクトルの広い抗菌剤/抗寄生虫剤の開発を可能にするはずである。
【0005】
細菌FASII系の全ての単機能酵素の中で、FabIは、脂肪酸生合成伸長サイクルの最後の工程を担当するエノイル-ACPレダクターゼを表す。ヒドリド源として補因子NAD(P)Hを使用して、FabIは、トランス-2-エノイル-ACP中間体中の二重結合を還元して、対応するアシル-ACP生成物にする。この酵素は、E.コリ(E. Coli)(Heathらの文献J. Biol. Chem. 1995, 270, 26538;Berglerらの文献Eur. J. Biochem. 1996, 242, 689)、及びS.アウレウス(S. aureus)(Heathらの文献J. Biol. Chem. 2000, 275, 4654)などの主な病原体における非常に重要な標的を構成することが示されている。しかし、他のアイソフォームが単離されており、FabKがS.ニューモニエ(S. pneumoniae)(Heathらの文献Nature 2000, 406, 145)から、FabLがB.サブチリス(B. subtilis)(Heathらの文献J. Biol. Chem. 2000, 275, 40128)から単離されている。FabKは、構造的にも機構的にもFabIとは関連しないが(Marrakchiらの文献Biochem J. 2003, 370, 1055)、FabIとFabL(B.サブチリス)、InhA(M.ツベルクローシス(M. tuberculosis))、及びPfENR(P.ファルシパラム(P. falciparum))との類似性は、興味深い活性スペクトルの機会を与える(Heathらの文献Prog. Lipid Res. 2001, 40, 467)。
【0006】
数種のFabI阻害剤が、既に文献に報告されている(Tongeらの文献Acc. Chem. Res. 2008, 41, 11)。それらのいくつか、例えば、ジアザボリン(Baldockらの文献Science 1996, 274, 2107)及び活性化形態のイソニアジド(Tongeらの文献Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2003, 100, 13881)は、補因子NAD+を共有結合的に修飾することにより作用する。しかし、これらの製品には欠点もいくつかある。ジアザボリンは、その固有な毒性により実験的にしか使用されていない(Baldockらの文献Biochem. Pharmacol. 1998, 55, 1541)一方で、イソニアジドは、感受性のある結核の治療に限定されるプロドラッグである。イソニアジドが過酸化水素誘導酵素(hydrogen-peroxyde inducible enzymes)による活性化を必要とする事実(Schultzらの文献J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5009)は、活性化の欠如又は解毒の増大による耐性の可能性を上昇させる(Rosnerらの文献Antimicrob. Agents Chemother. 1993, 37, 2251及び同誌1994, 38, 1829)。
【0007】
他の阻害剤は、酵素補因子複合体に非共有結合的に相互作用することにより作用する。例えば、トリクロサンは、幅広いスペクトルの抗菌活性を持つ広く使用されている消費物資保存剤であり、E.コリFabIの可逆的で強結合阻害剤であることが見いだされている(Wardらの文献Biochemistry 1999, 38, 12514)。この化合物の静脈内毒性研究は、29 mg/kgというラットのLD50を示し、これは静脈内注入が明らかに不可能であることを示した(Lymanらの文献Ind. Med. Surg. 1969, 38, 42)。トリクロサンの2-ヒドロキシジフェニルエーテルコアに基づく誘導体(Tongeらの文献J. Med. Chem. 2004, 47, 509, ACS Chem Biol. 2006, 1, 43及びBioorg. Med. Chem. Lett. 2008, 18, 3029;Suroliaらの文献Bioorg. Med. Chem. 2006, 14, 8086及び同誌2008, 16, 5536;Freundlichらの文献J. Biol. Chem. 2007, 282, 25436)並びに種々のクラスの高スループットスクリーニング誘導テンプレートに基づく他の阻害剤(Seefeldらの文献Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 11, 2241及びJ. Med. Chem. 2003, 46, 1627;Heerdingらの文献Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 11, 2061;Millerらの文献J. Med. Chem. 2002, 45, 3246;Payneらの文献 Antimicrob. Agents Chemother. 2002, 46, 3118;Sacchettiniらの文献J. Biol. Chem. 2003, 278, 20851;Moirらの文献Antimicrob. Agents Chemother. 2004, 48, 1541;Montellanoらの文献J. Med. Chem. 2006, 49, 6308;Kwakらの文献Int. J. Antimicro. Ag. 2007, 30, 446;Leeらの文献Antimicrob. Agents Chemother. 2007, 51, 2591;Kitagawaらの文献J. Med. Chem. 2007, 50, 4710, Bioorg. Med. Chem. 2007, 15, 1106及びBioorg. Med. Chem. Lett. 2007, 17, 4982;Takahataらの文献J. Antibiot. 2007, 60, 123;Kozikowskiらの文献 Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008, 18, 3565)が報告されているが、これらの阻害剤のいずれも薬物として成功していない。興味深いことに、これらの阻害剤のある種類はFabIとFabKの両方に活性を示す:4-ピリドンのフェニルイミダゾール誘導体に基づくデュアル化合物についてはFabKが優勢であり(Kitagawaらの文献J. Med. Chem. 2007, 50, 4710)、インドール誘導体についてはFabIが優勢である(Payneらの文献Antimicrob. Agents Chemother. 2002, 46, 3118;Seefeldらの文献J. Med. Chem. 2003, 46, 1627)。しかし、2番目の酵素に対する中程度の活性は、加えられた選択圧力による耐性の機構増大につながり得るので、そのような化合物についての欠点であることを証明するかもしれない(Tongeらの文献Acc. Chem. Res. 2008, 41, 11)。
【0008】
抗菌剤/抗寄生虫標的としてのFabIの魅力にもかかわらず、販売されている、又は後期臨床相(advanced clinical phases)にある薬剤が全くないので、この時点で未だほとんど未開発である。
【0009】
国際公開第2007/135562号(Mutabilis SA)は、トリクロサンと対照的に、FabI及び関連する標的を含む種に対する選択的な活性のスペクトルを示す、一連のヒドロキシフェニル誘導体を記載している。
【0010】
本発明の目的の一つは、既存の化合物より向上した薬理的性質を有する、FabI及び関連する標的に対して活性のある新規な化合物を提供することである。
【0011】
本発明の第一の態様によると、式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩若しくは溶媒和物が提供される
【化1】


【0012】
式(I)の化合物は、化学的には4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミドとして知られる。そのため、一実施態様において、式(I)の化合物は、4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミド又はその医薬として許容し得る塩若しくは溶媒和物である。さらなる実施態様において、式(I)の化合物は、4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミドである。
【0013】
本発明の新規な化合物は、良好なインビトロ及びインビボの活性を有し、本明細書に示されるデータにより確認されるように、先に記載されたヒドロキシフェニル誘導体よりも驚くほど高い溶解度を示す。そのような増大した溶解度は、本発明の化合物の静脈内への投与を可能にする著しい利点を与える。特に、本発明の化合物は、いくつかの病原性のメチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、バンコマイシン中間耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VISA)、及びバンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)株に対してインビトロで非常に活性が高い。さらに、本発明の化合物は、マウスモデルにおいてMSSA、MRSA、及びVISA感染に対してインビボでも活性がある。
【0014】
本発明の化合物は高い特異性を示し、脂肪酸合成に関してFabIに依存しない他のグラム陽性病原体(スタフィロコッカス及びエンテロコッカス(Enterococcus))に対して全く活性がない。さらに、本発明の化合物は、標的微生物群においてグリコペプチド(バンコマイシン)及びオキサゾリジノン(リネゾリド)と交叉耐性を全く示さない。本発明の化合物に曝露されている標的細菌集団は、薬物耐性に向かう低い自然突然変異率(およそ10-9)のみを示し、静菌効果又は緩やかな殺菌効果を示す。
【0015】
本発明の化合物は優れた安全性プロファイルも有する。例えば、112のインビトロ結合アッセイ及び42のインビトロ酵素アッセイを含む主要な生理系に対する本発明の化合物の効果を詳細に評価する間に、本発明の化合物は、ヒトのノルエピネフリントランスポーターに対して88%の阻害を持つ以外は、著しい親和性又は活性を持たないことが見いだされた。インビトロで、それぞれ本発明の化合物は、hERGにおいてテール電流振幅について30μMで最大35.3%の阻害(ランダウン減算後)というわずかな阻害を生じさせた。しかし、意識のあるイヌにおいて、25、50、及び100 mg/kgでの単回静脈内注入後に、どの投与レベルでも、本発明の化合物によるQT間隔延長は全く見られなかった。さらに、本発明の化合物の注入が終わった後で、補正QTは対照群より全般的に低かった。機能的観察総合評価法(battery)及び呼吸機能アッセイの評価において、本発明の化合物は、ビヒクルのみ投与されたラットと比べて関連する修飾が全くなく許容性が良好であった。さらに、ラット及びイヌにおける本発明の化合物のインビボ研究の間、主な有害作用は全く報告されなかった。
【0016】
本文脈において、「医薬として許容し得る塩」という用語は、患者に有害でない塩を示すものとする。そのような塩には、医薬として許容し得る酸付加塩、医薬として許容し得る金属塩、及び医薬として許容し得るアルカリ付加塩がある。酸付加塩には、無機酸並びに有機酸の塩がある。
【0017】
好適な無機酸の代表例には、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸などがある。好適な有機酸の代表例には、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などがある。医薬として許容し得る無機酸及び有機酸の付加塩のさらなる例には、引用により本明細書に組み込まれるJ. Pharm. Sci. 1977, 66, 2に列記されている医薬として許容し得る塩がある。金属塩の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム塩などがある。アンモニウム塩及びアルキル化アンモニウム塩の例には、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム塩などがある。
【0018】
アルカリ塩の代表例には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、若しくはアンモニウム、又は有機塩基、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エタノールアミン、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ベンジルアミン、プロカイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、N-メチルグルカミンがある。
【0019】
式(I)の化合物は、化学的に関連する化合物の製造に適用できる、技術のある化学者に公知の方法により製造できる。そのような方法は、有機化学の標準的な手順により得られる公知の出発物質又は中間体を使用する。以下の方法は、式(I)の化合物及びそれに使用される中間体の製造の非限定的な経路を与える。この方法は、本発明のさらなる特徴を構成する。
【0020】
本発明のさらなる態様によると、式(II)の化合物の脱アルキル化を含む、先に定義された式(I)の化合物を製造する方法(a)が提供される:
【化2】

(式中、Rは、メチルなどのC1-6アルキル基を表す)。
【0021】
本明細書でのC1-6アルキルへの言及は、1から6の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、又は炭化水素基、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルを含む。特別な一実施態様において、Rはメチルを表す。
【0022】
方法(a)は、典型的には、三臭化ホウ素などの好適な脱アルキル化剤の使用を含む。典型的には、方法(a)は、ジクロロメタンなどの好適な溶媒の存在下で実施される。
【0023】
式(II)の化合物は、本明細書に記載される手順により製造でき、本明細書において中間体4(D4)として知られている。
【0024】
本発明のさらなる態様によると、式(III)の化合物の酸性処理を含む、先に定義された式(I)の化合物を製造する方法(b)が提供される:
【化3】

(式中、Rは、メチルなどのC1-6アルキル基を表す)。
【0025】
方法(b)は、典型的には、酢酸及び硫酸などの好適な酸を使用する酸性処理と、それに続くジクロロメタンなどの好適な溶媒中でのクラーセル(clarcel)及び木炭などの好適な作用物質による精製を含む。
【0026】
式(III)の化合物は、本明細書に記載される手順により製造でき、本明細書において中間体3(D3)として知られている。
【0027】
式(I)の化合物の合成に使用される特定の中間体が本発明の追加の態様を構成し得ることが理解されるだろう。例えば、本発明のさらなる態様によると、化合物(II)aである中間体が提供される:
【化4】


【0028】
さらに、本発明のさらなる態様によると、化合物(III)aである中間体が提供される:
【化5】


【0029】
以下に与えられる実施例により示されるとおり、本明細書で先に開示された式(I)の化合物は有用な生物学的性質を有する。該化合物は、FabI及び関連する標的に依存する菌株に対してインビトロ及びインビボで選択的なスペクトルの活性を有する抗菌剤として特に有用である。そのような株は、多剤耐性株を含むスタフィロコッカス・アウレウス(例えばメチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、バンコマイシン中間耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VISA)、及びバンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)株)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、バシラス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、エシェリキア・コリ、ヘモフィラス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria menigitidis)、並びにInhAなどの相同なFabI酵素を有するマイコバクテリウム・ツベルクローシスなどの細菌、又はプラスモジウム・ファルシパラムなどの生物体を包含する。一実施態様において、本発明の化合物は、メチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、バンコマイシン中間耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VISA)、及びバンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)株などの多剤耐性株を含むスタフィロコッカス・アウレウス微生物感染の治療に使用される。
【0030】
したがって、式(I)の化合物は、医薬の有効成分として特に好適である。
【0031】
本発明のさらなる態様によると、療法における使用のための、本明細書において先に定義された式(I)の化合物が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によると、医薬として許容し得る賦形剤又は担体と組み合わされる、本明細書において先に定義された式(I)の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0033】
前記医薬組成物は、治療される患者にとって各々適切な投与量で、経口、局所、非経口経路、又は静脈内投与などの注射可能な経路で投与するのに有利に製剤される。
【0034】
本発明の組成物は、固体、液体、又はゲル/クリームの形態にでき、ヒトの薬に通常利用される剤形、例えば、素錠又は糖衣錠、ゼラチンカプセル、顆粒剤、坐剤、注射用製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤で存在してよい。これらは、通例の方法により製造される。有効成分(複数可)は、タルク、アラビアゴム、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、水性若しくは非水性のビヒクル、動物性若しくは植物性の脂肪性物質、パラフィン誘導体、グリコール、種々の湿潤剤、分散剤又は乳化剤、保存剤などの、これらの医薬組成物に通例使用される賦形剤を利用して組み込むことができる。これらの組成物は、適切なビヒクル、例えば、非発熱性滅菌水にその場で溶解するように意図された散剤の形態で存在することもできる。
【0035】
一実施態様において、該医薬組成物は、可溶化剤をさらに含む。さらなる実施態様において、該可溶化剤は、20%HPBCDなどのヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPBCD)である。HPBCDは、周知の非経口薬物賦形剤であり、動物において許容性が高いという利点を与える。
【0036】
一実施態様において、該医薬組成物は、等張化剤をさらに含む。さらなる実施態様において、該等張化剤は、1%グルコース一水和物などのグルコースである。
【0037】
一実施態様において、該医薬組成物は、希釈剤をさらに含む。さらなる実施態様において、該希釈剤は、所要量の水などの水を含む。
【0038】
投与される投与量は、治療される病態、対象とする患者、投与経路、及び想定される生成物により変わる。例えば、ヒトの経口経路又は筋肉内若しくは静脈内経路により、1日当たり0.01 gから10 g構成されていてもよい。
【0039】
前記組成物は、多剤耐性株を含むスタフィロコッカス・アウレウス、アシネトバクター・バウマンニ、バシラス・アンスラシス、クラミドフィラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、ヘモフィラス・インフルエンザエ、ヘリコバクター・ピロリ、クレブシエラ・ニューモニエ、ナイセリア・メニンジティディス、S.インターメディウス(S. intermedius)、P.マルトシダ(P. multocida)、B.ブロンキセプチカ(B. bronchiseptica)、M.ヘモリチカ(M. haemolytica)、及びA.プレウロニューモニエ(A. pleuropneumoniae)、並びにマイコバクテリウム・ツベルクローシスなどの細菌、又はプラスモジウム・ファルシパラムなどの生物体などの病原性微生物によるヒト又は動物の感染を治療するのに特に有用である。
【0040】
前記組成物は、例えば抗生物質などの他の医薬と組み合わせた、複合療法(multitherapy)にも有用になり得る。そのような複合療法は、典型的には、抗生物質などの1種以上の他の医薬をさらに含む式(I)の化合物を含む組成物、又は同時投与(すなわち、連続的又は同時の投与)のいずれかを含み得ることが認識されるだろう。
【0041】
したがって、本発明は、本明細書において先に定義された、有効量の式(I)の化合物を、その必要のある患者に投与することを含む、微生物感染の治療の方法にも関する。
【0042】
本発明は、微生物感染の治療において使用するための、本明細書において先に定義された式(I)の化合物にも関する。
【0043】
本発明は、微生物感染の治療のための医薬の製造における、本明細書において先に定義された式(I)の化合物の使用にも関する。
【0044】
本発明は、微生物感染の治療において使用するための、本明細書において先に定義された式(I)の化合物を含む医薬組成物にも関する。
【実施例】
【0045】
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、400 MHzのBrukerの装置で記録し、ケミカルシフトは、内部標準のテトラメチルシラン(TMS)から低磁場に百万分率で報告する。NMRデータの略語は下記のとおりである:s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=クワドロプレット、m=マルチプレット、dd=ダブレットのダブレット、dt=トリプレットのダブレット、br=ブロード。Jは、ヘルツで測定したNMRカップリング定数である。CDCl3は重クロロホルムであり、DMSO-d6はヘキサ重水素化ジメチルスルホキシドであり、CD3ODは、テトラ重水素化メタノールである。質量分析スペクトルは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)技術を利用してAgilent 1100 Series LCMSで得た。Analtech Silica Gel GF及びE. Merck Silica Gel 60 F-254薄層プレートを薄層クロマトグラフィーに使用した。フラッシュクロマトグラフィーを、Flashsmart Packカートリッジ不規則シリカ40〜60μm又は球形シリカ20〜40μmで実施した。分取薄層クロマトグラフィーを、Analtech Silica Gel GF 1000μm 20×20 cmで実施した。
【0046】
所定の略語の意味を本明細書に与える。ESIはエレクトロスプレーイオン化を意味し、質量分析法の文脈におけるMは分子ピークを意味し、MSは質量分析法を意味し、NMRは核磁気共鳴を意味し、TLCは薄層クロマトグラフィーを意味する。
【0047】
出発物質は、特記されない限り市販されている。
【0048】
(中間体1)
(1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)エタノン(D1))
【化6】

AlCl3(1.17g ; 8.79mmol)の1,2-ジクロロエタン(2 mL)の懸濁液に、アセチルクロリド(0.55g ; 7.03 mmol)を加えた。10分の撹拌の後、5-フルオロ-2-メトキシフェノール(0.50g; 3.52 mmol)の1,2-ジクロロエタン(2 mL)溶液を滴加した。該反応混合物を40℃で一晩撹拌した。次いで、該混合物を氷水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮すると、582 mg (90%)の標記化合物を灰白色の固体として与えた。
MS (ES) m/e 185(M+H)+
TLC:溶離液シクロヘキサン/EtOAc 7/3 Rf = 0.23
【0049】
(中間体2(クレメンゼン還元による))
(4-エチル-5-フルオログアイアコール(D2))
【化7】

1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)エタノン(18.0 g; 97.7 mmol; 1当量; 本明細書において先にD1で記載されたとおりに調製できる)の氷酢酸(800 mL)溶液を、亜鉛末(63.9 g; 977 mmol; 10 当量)を加える前に、70℃で撹拌する。次いで、生じた灰色の不均一な混合物を還流加熱し、メカニカルスターラーを使用して一晩撹拌する。この期間の後で、亜鉛は凝集し、転化率は、粗のアリコートの1H NMR分析によると90%に達する。したがって、亜鉛金属をフリットガラスでの濾過により除き、新しい亜鉛末(6.4 g; 98 mmol)を、生じた透明な黄色の濾液に加える。該溶液を、反応の完了まで、一晩還流加熱する。該溶液をフリットガラスで濾過し、飽和炭酸カリウム水溶液(1.5 L)及び、必要であれば追加の固体炭酸カリウムにより、pHが11-12になるまで塩基性化する。次いで、生じた水層を酢酸エチル(1.0 L)で抽出し、硫酸ナトリウムで、又はトルエン共沸蒸留により乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮すると、純粋な標記化合物(16.1 g; 94.7 mmol; 97%)を薄黄色の油として与える。該標記化合物は揮発性生成物であり、遮光してアルゴン下で冷蔵庫に保存すべき(酸素及び/又は紫外線曝露で暗色化する)であることに留意されたい。
【0050】
(中間体2(接触水素化による))
(4-エチル-5-フルオログアイアコール(D2))
1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)エタノン(243 mg ; 1.30 mmol; 本明細書において先にD1で記載されたとおりに調製できる)のアルゴン下の無水エタノール(3 mL)溶液に、硫酸98% (10μL ; 0.13 mmol)及びPd/C 10% (137 mg ; 0.06 mmol)を注ぐ。該反応混合物を水素で3回フラッシングし、5バールの水素下で48時間撹拌する。
【0051】
セライトでの濾過、メタノール洗浄、及び濾液の濃縮は粗物質を与えるが、それを飽和NH4Cl水溶液でさらに洗浄する。水相を酢酸エチルにより抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、最後に濃縮すると、186 mg (84%)の標記化合物を薄黄色の油として与える。標記化合物は揮発性生成物であり、遮光してアルゴン下で冷蔵庫に保存すべき(酸素及び/又は紫外線曝露で暗色化する)であることに留意されたい。
MSに全く反応しないか、又は弱い反応しかない。
【化8】

【0052】
(中間体3)
(4-(4-エチル-5-フルオロ-2-メトキシフェノキシ)-3-フルオロベンゾニトリル(D3))
【化9】

4-エチル-5-フルオログアイアコール(8 g; 47 mmol)及び3,4-ジフルオロベンゾニトリル(6.53 g ; 47 mmol; 本明細書において先にD2で記載されたとおりに調製できる)の80 mL無水アセトニトリル溶液に、水酸化カリウム(3.15 g ; 56.4 mmol)を加える。アルゴン雰囲気下にある該反応混合物を還流下で16時間撹拌する。濃縮、飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL)の添加、酢酸エチル(2×25 mL)による抽出、有機相の再結合、ブライン洗浄(100 mL)、乾燥(Na2SO4)、及び最後の濃縮により、12.95 g (95%)の標記化合物を茶色の固体として与える。
MS (ES) m/e 290 (M+H)+
TLC:溶離液シクロヘキサン/EtOAc 7/3 Rf = 0.74
【0053】
(中間体3(代替手順))
(4-(4-エチル-5-フルオロ-2-メトキシフェノキシ)-3-フルオロベンゾニトリル(D3))
アセトニトリル(10体積)に溶解している3,4-ジフルオロベンゾニトリル(12.26g)に、4-エチル-5-フルオログアイアコール(15g ;本明細書において先にD2で記載されたとおりに調製できる)を加えた。次いで、水酸化カリウム(0.33部)を加え、該反応混合物を7時間還流した。反応が完了すると、温度を20℃に下げ、水(2.5体積)を加え、相を分離した。次の工程で使用するまで有機相を室温で保存した。
【0054】
(中間体4)
(4-(4-エチル-5-フルオロ-2-メトキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミド(D4))
【化10】

4-(4-エチル-5-フルオロ-2-メトキシフェノキシ)-3-フルオロベンゾニトリル(12.95 g ; 7.05 mmol;本明細書に先にD3で記載されたとおりに調製できる)に、トリフルオロ酢酸(52 mL)及び濃硫酸(13 mL)を加える。還流下で1時間30分後、該反応混合物を室温まで冷却し、次いで氷水(400mL)に注ぐ。ジクロロメタン抽出(100 mL、次いで2×25 mL)、有機相の再結合、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液洗浄(250 mL, pH = 8-8.5)、乾燥(Na2SO4)、及び最後の濃縮をすると、13.31 g (96%)の標記化合物を灰白色固体として与える。
MS (ES) m/e 294 (M+H)+
TLC : 溶離液ジクロロメタン/メタノール 9/1 Rf = 0.3
【0055】
(実施例1)
(4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミド(E1)
【化11】

アルゴン下-78℃で激しく撹拌されている4-(4-エチル-5-フルオロ-2-メトキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミド(13.31 g, 4.59 mmol; 本明細書に先にD4で記載されたとおりに調製できる)の130mLのジクロロメタン溶液に、15〜20分にわたり三臭化ホウ素(130 mL、ジクロロメタン中1M)を加える。該反応混合物を撹拌しながら室温まで温め、3時間後に、飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL)でクエンチするために-20℃に冷却する。部分的な濃縮を実施して、170 mLのジクロロメタンを除く。100mLの酢酸エチルを加える。水相の抽出(2×25 mLの酢酸エチル)、有機相の再結合、炭酸水素ナトリウム水溶液(1Nで200mL)洗浄、乾燥(Na2SO4)、及び最後の濃縮により、粗物質を与え、それをシリカゲルで精製すると(勾配 ジクロロメタン/メタノール :100/0 → 95/5)、標記化合物8.75g (68%)を与える。
MS (ES) m/e 294 (M+H)+
TLC:溶離液ジクロロメタン/メタノール 20/1 Rf = 0.4
【化12】

【0056】
(実施例1(代替手順))
(4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミド(E1))
4-(4-エチル-5-フルオロ-2-メトキシフェノキシ)-3-フルオロベンゾニトリル(本明細書において先にD3で記載されたとおりに調製できる)のアセトニトリル溶液を、大気圧下で6.4残留体積(residual volumes)まで部分的に蒸留した。次いで、7体積の酢酸を加え、該溶液を大気圧下で6.4残留体積まで蒸留した。さらに1体積の酢酸を加え、該溶液を大気圧下で再び6.4残留体積まで蒸留した。硫酸(全部で6体積)を加え、該反応混合物を120℃で5時間撹拌した。反応が完了すると、温度を20℃に下げ、ジクロロメタン(10体積)及び水(8体積)を加えた。この温度で、クラーセル(0.5部)及び木炭(0.5部)も加え、生じた混合物を30分間撹拌した。該混合物を濾過し、中間体ケークをそれぞれ2体積のジクロロメタンで3回洗浄した。生じた相を分離し、水相を、3体積のジクロロメタンで2回逆抽出した。合わせた有機相を、大気圧下で14.5残留体積まで部分的に蒸留し、メチルシクロヘキサン(22体積)を37℃±2℃で加えた。この溶液に、重炭酸ナトリウム(10%) (1体積)を加えた。瞬時の結晶化を観察した。該スラリーを0℃に冷却し、濾過し、2体積の室温のメチルシクロヘキサンで2回洗浄し、真空下40℃で乾燥させると、粗製4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミドを与えた。
【0057】
粗製4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミドを、60℃の7体積のイソプロパノール及び1体積の水に溶かし、ゼータカーボンカートリッジでの濾過を実施した。次いで、該カートリッジを1体積のイソプロパノールで2回洗浄した。水(12.5体積)をこの溶液に加え、該混合物を10℃/時で5℃に冷却した。生成物を濾過し、室温の水(それぞれ2体積)で2回洗浄し、真空下70℃で乾燥させると、純粋な4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミドを、全体の収率36.5%で、HPLC純度99.6%で与えた。
【0058】
(比較例2)
(5-エチル-4-フルオロ-2-(2-フルオロピリジン-3イルオキシ)フェノール(E2))
【化13】

標記化合物(E2)は、国際公開第2007/135562号の実施例87に記載されるとおりに調製できる。
【0059】
(実施例3)
(実施例1を含む医薬組成物)
実施例1を、1%グルコース溶液の20%HPBCDに、10 mgの実施例1/mlの濃度で溶かし、30 mLバイアルに充填した。実施例3の具体的な組成は以下のとおりである。
実施例1:300 mg/バイアル
グルコース一水和物:330 mg/バイアル
HPBCD:6000 mg/バイアル
注射用水:所要量30.00 mL
【0060】
以下のデータは、実施例1の化合物で得られた。
(1.FabI阻害)
本発明の化合物は、細菌のFabI酵素の有用な阻害剤である。
【0061】
FabI酵素の化合物阻害活性を、蛍光系のアッセイを利用するIC50の決定により、インビトロで測定する。
【0062】
S.アウレウス由来のタンパク質FabIを調製し、原核細胞発現ベクター中での遺伝子のクローニングの後で、組み換えタンパク質発現のために、標準的な方法により精製する。
【0063】
FabI酵素の生化学的な活性を、以下の方法を利用して評価する。
【0064】
アッセイ緩衝液「AB」は、50mMのADA (N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸一ナトリウム塩) pH 6.5、1mMのジチオスレイトール、0.006%のTriton-X100、及び50mMのNaClを含んでいた。白色ポリスチレンCostarプレート(3912番)に、以下の成分、1.5μLのDMSO又はDMSOに溶かした阻害剤、及びAB中の54μLのFabI/NADPH/NADP+混合物を最終体積55.5μLまで加える。室温で60分間プレインキュベーションした後、最終体積60.5μLまで5μLのトランス-2-オクテノイルN-アセチルシステアミンチオエステル(t-o-NAC)を加えることにより、反応を開始する。この時、この反応混合物は、2nMのFabI、40μMのNADPH (Sigma社製、N7505)、10μMのNADP+(Sigma社製、N5755)、100μMのt-O-NAC、及び規定された濃度の化合物から構成されている。±30%のNADPH転化を達成するために、NADPHの蛍光強度(λex=360 nm、λem=520 nm)を、t-O-NAC添加直後(T0)、及びおよそ50分後(T50)にFluostar Optima(BMG社製)を使用して測定する。酵素活性は、最初にT0シグナルをT50シグナルに対して引き、次いでバックグラウンドシグナル(FabI=0)を引くことにより計算する。阻害のパーセンテージは、未処理の試料(阻害剤=0)に対して計算し、XLFIT(IDBS社製)を利用して、IC50を古典的なラングミュアー平衡モデル(Langmuir equilibrium model)に適合させる。
【表1】

【0065】
(2.抗菌活性)
本発明の化合物は、FabI及び関連する標的に依存する菌株に対してインビトロで選択的なスペクトルの活性を有する有用な抗菌剤である。特に、本発明の化合物は、多剤耐性株を含むスタフィロコッカス・アウレウスに対して活性を示す。該活性は、μg/mlで示される最小発育阻止濃度(MIC)により表され、ブロス微量希釈法又は寒天希釈法を利用して決定した。
【0066】
(菌株)
抗菌活性は、Centre de Ressources Biologiques de l'Institut Pasteurにより提供されるMSSA CIP 54.146により測定した。
【0067】
(ブロス微量希釈法を利用するMIC測定)
このプロトコールは、米国臨床検査標準協議会(CLSI)のM7-A7文書に記載されるCLSI方法論に遵守している。試験すべき化合物を、純粋なDMSOに公比2の等比級数(geometric series of reason 2)により希釈する。希釈液を滅菌ポリスチレンマイクロプレートに移し、それに次いで、カチオン調整ミューラーヒントン培地(ca-MHB、Fluka社製、90922番)中の対数期中間の細菌を最終接種量5×105 cfu/mlで移す。マイクロプレートを35℃で一晩インキュベートする。MICは、目に見える細菌成長を完全に防ぐ抗菌剤の最低濃度と定義される。化合物取扱い(純粋なDMSO中)以外の操作は全て、滅菌条件下で実施する。プレート中のDMSOの最終濃度は2%である。
【表2】

【0068】
(3.溶解度)
他のFabI阻害化合物に対する本発明の化合物の主な利点の1つは、優れたインビトロ及びインビボの活性と良好な溶解度との両方を併せ持つことである。実施例1が、類似のインビトロ抗菌活性を示す関連化合物である比較例2よりも、純粋な水溶解度並びに製剤された溶解度の点で優れていることを示すデータが得られた。
【0069】
過剰量の被験化合物を所定の体積の試験媒体に加えることで、各媒体に関して媒体の飽和を得る。懸濁液を、20℃で24時間撹拌し、次いで、上澄みを単離して希釈すると、クロマトグラフィーシステムへの注入が可能になる。各媒体で溶解状態にある化合物の濃度を外部標準化により決定する。可溶化の結果を表3及び4に示す。
【表3】

【0070】
表3の結果は、本発明の化合物が、比較例2よりもpH7.4の緩衝液において溶解度が2倍高いことを示している。
溶解度を、5%デキストロースを含む20%ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン水溶液においても調査し、結果を表4に示す。
【表4】

【0071】
表4の結果は、本発明の化合物が、比較例2よりもほぼ5倍溶解度が高いことを示す。したがって、本明細書に示される結果は、実施例1が比較例2により示される抗菌効力を実質的に保持するが、高い溶解度をさらに有することを示す。
【0072】
(4.実施例1の化合物の安全性、許容性、薬物動態、及び薬力学の漸増単回投与試験(ascending single dose study))
((a)目的)
この試験の主要な目的は、健常な成人対象における漸増単回静脈内投与(SAD)の安全性及び許容性を評価することである。この試験の二次的な目的は、実施例1の化合物の薬物動態及び薬力学(エクスビボ血清抗体活性)の予備的なプロファイルを決定することである。
【0073】
((b)試験設計)
この試験は、7コホートの対象における無作為二重盲検プラセボ対照での、入院患者/外来患者の連続漸増単回投与である(その2つについての第一の投与:3有効成分及び1プラセボ、他の群では6有効成分及び2プラセボ、無作為化3:1に従う)。
【0074】
安全性スケジュール:4人の第一の対象については、2人の対象のみに同日に投与できた。残りの4人の対象(第3群から第7群)は同日に投与できた。それでも、各対象の間の間隔は少なくとも10分である。
安全性の結果により、追加のコホートを調査でき、又は投与の進行を調節できる(中間の投与量レベル)。
【0075】
((c)対象の数及び試験の期間)
十分な数の対象を登録して、SADにおける48の完全な対象を確保する。各対象は、1投与量群にのみ参加する。対象は、スクリーニングにおいて、18から40歳で、体重が50kg、kgで表す体重/(mで表す身長の二乗)で計算されるボディマス指数(BMI)が18から30 kg/m2である、健常な男性のボランティアから選択する。
【0076】
各対象は、最大3.5週間試験に参加する。参加には、実施例3の製剤の投与前3週間以内に行うスクリーニング評価、及び二泊三日の入院期間(すなわち、およそ36 時間)が含まれる。試験終了時評価は、投薬後72時間に実施される。
試験の臨床部分のそれぞれ(パート1、パート2)はおよそ2ヶ月で完了すると見積もられる。
【0077】
((d)試験薬、用量、及び投与)
提案される試験薬、用量、及び投与は表5に示されるとおりである。
【表5】

【0078】
((e)評価の時間基準)
時点は全て、注入の終了(Hend)を基準に示す(すなわち、Hend+0.5は、注入の終了30分後に実施される)。
投与前とは、注入開始の直前の時点を意味し、中間とは、投与の最中の中間の時点を意味し、注入の開始時間及び終了時間の両方が記録される。
【0079】
((f)安全性評価)
安全性は、記録された兆候と症状、予定された身体検査の所見、バイタルサインの測定値、心臓鏡、デジタル12チャネル心電図の読み取り、及び臨床検査結果から評価される。
静脈内注入局所許容性は、静脈炎スケール、浸潤、及びリッカート尺度を利用して評価される。
【0080】
対象は、薬物の投与のおよそ14又は12時間前にユニットに来るようにする。次いで、対象は、注入終了後24時間、持続的な医療管理及び看護の下で臨床ユニットに留まる。
【0081】
((g)薬物動態)
実施例1の化合物及びその代謝物の薬物動態学的プロファイルの決定のために、血液(15 ml)及び尿(25 ml)の試料を採取する。
【0082】
第1群から第7群:1日目の分析測定のための血液試料:投与前、中間試料採取(注入期間が短いため第1群以外、注入の間の中間)、注入終了後Hend、次いで、注入終了後Hend+0.5、+1、+2、+4、+6、+9、+12、+24、+48、及びHend+72時間。分析測定のための尿採取、H0での投与前、次いでH0からHend+24、Hend+24からHend+48。
PK試料は全て、分析測定まで-80℃で保存すべきである。
【0083】
((h)遺伝薬理学)
実施例1の化合物の吸収、分布、代謝、及び/又は排泄に関連する将来実施するかもしれない遺伝薬理学的試験のために、追加の血液試料(5 mL)を採取する。この試料は必須であり、投薬の前(すなわち、1日目の投薬の前1時間以内)に採取される。
【0084】
((i)試験後評価)
(最後の)投薬の72時間後、診療、バイタルサイン、12チャネルデジタル心電図、通常の臨床検査が評価される。試験の完了後、対象が別の臨床試験に参加できるようになるまで、3ヶ月の除外期間が対象に適用される。
【0085】
((j)統計分析)
単回投与PKパラメーターは、血漿中濃度時間及び尿排泄データから誘導される。
コンパートメント又はノンコンパートメントのPK法を必要に応じて利用して、実施例1の化合物及びその代謝物の血漿中濃度及び尿中濃度を分析する。
【0086】
薬力学的パラメーターは、cfu/ml並びに静菌力価曲線下及び殺菌力価曲線下面積(90、99、及び99.9%殺菌率に関して)の計算で表される。
【0087】
安全性の基準には、記述統計が投与群により与えられる。潜在的に臨床的に重大な値の記述は、投与群により、バイタルサイン、心電図パラメーター、及び血液の化学的及び血液学的パラメーターに関して実施される。
有害事象及び緊急有害事象治療の記述は、投与群により実施される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩若しくは溶媒和物
【化1】


【請求項2】
4-(4-エチル-5-フルオロ-2-ヒドロキシフェノキシ)-3-フルオロベンズアミドである、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
医薬として許容し得る賦形剤又は担体と組み合わされる、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項4】
HPBCD、特に20% HPBCDなどの可溶化剤をさらに含む、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
グルコース、特に1%グルコース一水和物などの等張化剤をさらに含む、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項6】
経口、局所、非経口経路、又は注射可能な経路で投与されるように製剤された、請求項3から5のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項7】
1種以上の他の医薬、例えば抗生物質を含む、請求項3から6のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
療法における使用のための、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
請求項1又は請求項2記載の有効量の式(I)の化合物を、その必要のある患者に投与することを含む、微生物感染の治療方法。
【請求項10】
微生物感染の治療における使用のための、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
微生物感染の治療のための医薬の製造における、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項12】
微生物感染の治療における使用のための、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
前記微生物感染が、メチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、バンコマイシン中間耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VISA)、及びバンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)株などの多剤耐性株を含むスタフィロコッカス・アウレウス、アシネトバクター・バウマンニ、バシラス・アンスラシス、クラミドフィラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、ヘモフィラス・インフルエンザエ、ヘリコバクター・ピロリ、クレブシエラ・ニューモニエ、ナイセリア・メニンジティディス、S.インターメディウス、P.マルトシダ、B.ブロンキセプチカ、M.ヘモリチカ、及びA.プレウロニューモニエ、並びにマイコバクテリウム・ツベルクローシスなどの細菌、又はプラスモジウム・ファルシパラムなどの他の生物体などの病原微生物によるヒト又は動物の感染である、請求項9から12のいずれか一項記載の方法、化合物、組成物、又は使用。
【請求項14】
前記微生物感染が、メチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、バンコマイシン中間耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VISA)、及びバンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)株などの多剤耐性株を含むスタフィロコッカス・アウレウスによるヒト又は動物の感染である、請求項13記載の方法、化合物、組成物、又は使用。
【請求項15】
式(II)の化合物の脱アルキル化を含む、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物を製造する方法:
【化2】

(式中、Rは、メチルなどのC1-6アルキル基を表す)。
【請求項16】
化合物(II)aである中間体:
【化3】


【請求項17】
式(III)の化合物の酸性処理を含む、請求項1又は請求項2記載の式(I)の化合物を製造する方法:
【化4】

(式中、Rは、メチルなどのC1-6アルキル基を表す)。
【請求項18】
化合物(III)aである中間体:
【化5】



【公表番号】特表2013−503816(P2013−503816A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525888(P2012−525888)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064973
【国際公開番号】WO2011/026529
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512050380)ファブ ファーマ エスエーエス (3)
【Fターム(参考)】