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新規抗HCV剤
説明

新規抗HCV剤

【課題】本発明は、ウイルスの遺伝的多様性に影響されずに強力な抗HCV活性を発揮する新規抗HCV剤を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体を有効成分として含む新規抗HCV剤により、解決される。一般式(I)中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子またはヒドロキシアルキル基である。上記ペルオキシド誘導体は、HCVのRNA複製を著しく抑制することにより、強い抗HCV活性を発揮するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗C型肝炎ウイルス(HCV)剤に関するものであり、より詳細には一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体を有効成分として含む新規抗HCV剤に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染者は国内で約200万人と推定されている。HCVが感染した場合、高い確率でC型慢性肝炎を引き起こし、10〜20年でC型慢性肝炎は致死的な肝硬変、肝癌へと移行する。
【0003】
HCVには数十の遺伝子型が存在し、我が国では、1b遺伝子型が約70%、2a遺伝子型が約20%、2b遺伝子型が10%の割合となっている。現在、C型慢性肝炎に対してペグインターフェロン(PEG-IFN)とリバビリン(RBV)の併用療法が標準的治療(2004年12月に保険適用)となっており、その治癒率は、2aや2b遺伝子型では80%以上であるのに対して、1b遺伝子型では約55%と低い。PEG-IFNとRBVの併用療法に追加して、テラプレビル(HCVプロテアーゼ阻害剤)の治療が開始する予定であり、これらの3剤併用療法により1b遺伝子型における治癒率も70〜80%程度に上昇するものと期待されている。しかしながら、テラプレビルがRBVの副作用(貧血)を増悪させることによる治療中止例、IFN治療により生じる鬱病の発症例、IFNの効かない無効例やIFNを使えない高齢者が多数存在しているという問題点は依然として克服されていない。従って、これらの症例についても、治癒が可能な新たな抗HCV剤の開発が必要となっている。
【0004】
抗HCV剤の探索には、1999年にドイツのグループにより開発されたHCVレプリコン複製細胞(細胞内でHCVサブゲノムRNAが自律的に複製増殖する)(Lohmann V et al. Science, 285:110-113,1999)やHCVの構造領域を加えた全長HCV RNAが自律的に複製する細胞(全長HCV RNA複製細胞)(Ikeda M et al., J. Virol. 76:2997-3006,2002)を基に開発されたレポーターアッセイ系が主に使用されている(Ikeda M et al., BBRC, 329:1350-1359, 2005)。本発明者らは別のアッセイ系としてOR6細胞を用いたアッセイ系を開発した(特許第4009732号)。OR6細胞は、HCV RNAにレニラルシフェラーゼ遺伝子をコードするRNAを連結させてあるため、レニラルシフェラーゼ活性を測定するだけで、HCV RNAの複製レベルを定量的にモニターでき、従来のRNA定量に比べて、時間と経費の面で大幅な改良が加えられている。OR6細胞を用いたアッセイ系では、HCV RNAの複製阻害剤を化合物ライブラリー等から探索することができることから、既に多くの化合物のスクリーニングがなされ、抗HCV活性を示す化合物が複数選択され、それらの一部は臨床応用に向けての試験もなされている。本発明者らは、OR6細胞を用いたアッセイ系を用いて既存薬等のスクリーニングを行うことにより、抗HCV剤として、スタチン剤(特許文献1:特開2007-63284号)、テプレノンと5-HETE(特許文献2:特開2010-59080号)、オンコスタチンM(特許文献3:特開2010-59081号)などを見出している。
【0005】
上述したレポーターアッセイ系はHCV RNAの複製レベルを簡便に、かつ定量的にモニターできる点においては有用なアッセイ系である。しかしながら、これまでヒト肝癌由来の1細胞株であるHuH-7 (Nakabayashi H et al., Cancer Res. 42:3858-3863,1982) 由来の細胞でなければこのようなアッセイ系を利用できないという難点があった。HuH-7由来のアッセイ系のみのスクリーニングで得られた化合物が抗HCV剤候補として臨床試験に進むには、治療効果の面からリスクを伴う。さらに、1種類の細胞のみでのスクリーニングでは、抗HCV活性を示す薬剤を見逃している可能性もある。このようなリスクを下げるために、本発明者らは、HuH-7とは異なるヒト培養細胞株由来でアッセイ系に使用可能な細胞の開発に取り組み、2008年、ヒト肝癌細胞株Li23由来で、HCV RNAの複製レベルをレニラルシフェラーゼ活性を測定することでモニターできる細胞(ORL8とORL11)の開発に成功した(国際公開第WO2010/026965号、Kato N et al., Virus Res. 146:41-50, 2009)。その後、OR6細胞とORL8細胞を用いたアッセイ系により、既に報告されている抗HCV剤候補の評価を行ったところ、EC50(50%有効濃度)値が既報の値と比較して3倍以上高い場合や1/3以下と低い場合が約半数で認められた。また、OR6細胞とORL8細胞を用いたアッセイ系の間での比較においても、EC50値が最大2000倍も異なる薬剤(メトトレキセート)も見つかった(非特許文献1:Ueda Y et al., BBRC, 409:663-668, 2011)。
【0006】
抗マラリア剤として使用されている薬剤であるArtemisininについて、これまでHuH-7由来のHCVレプリコン複製細胞を用いたアッセイ系によりArtemisininに弱いながらも抗HCV活性があることが報告されている(非特許文献2:Paeshuyse J et al., BBRC, 348:139-144, 2006)。本発明者らは、上記2種類の細胞株(HuH-7とLi23)由来の全長HCV RNA複製細胞(OR6細胞やORL8細胞等)を用いてアッセイを行った。しかしながら、OR6細胞でのArtemisininのEC50は81μMであり、ORL8細胞でのEC50も23μMと高濃度であったことからArtemisininは抗HCV剤候補とはならないことを明らかにした(非特許文献1:Ueda Y et al., BBRC, 409:663-668, 2011)。他の抗マラリア剤として抗マラリア活性を指標にしたスクリーニングにより得られた化合物N-89について本発明者により報告されている(特許文献4:特開2000-229965、非特許文献3:Kim H-S et al., J. Med. Chem., 44:2357-2361, 2001)。また、化合物N-251についても、抗マラリア活性が報告されている(特許文献5:特許第4289911号、非特許文献4:Sato A et al., Parasitology Int., 60:270-273,2011)。しかし、これらの化合物はArtemisininとは構造が全く異なる。
【0007】
ウイルスの遺伝的多様性に影響されずに強力な抗HCV活性を発揮する安全性の高い抗HCV剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-63284号
【特許文献2】特開2010-59080号
【特許文献3】特開2010-59081号
【特許文献4】特開2000-229965号
【特許文献5】特許第4289911号
【0009】
【非特許文献1】Ueda Y et al., BBRC, 409:663-668, 2011
【非特許文献2】Paeshuyse J et al., BBRC, 348:139-144, 2006
【非特許文献3】Kim H-S et al., J. Med. Chem., 44:2357-2361, 2001
【非特許文献4】Sato A et al., Parasitology Int., 60:270-273,2011
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ウイルスの遺伝的多様性に影響されずに強力な抗HCV活性を発揮する新規抗HCV剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ペルオキシド誘導体が1 μM以下の低濃度でHCVのRNA複製を強力に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体を有効成分として含む新規抗HCV剤。
【化1】


[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子またはヒドロキシアルキル基である。]
2.ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である、前項1に記載の新規抗HCV剤。
3.ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cがシクロドデシリデン基であり、nが1〜4である、前項1または2記載に記載の新規抗HCV剤。
4.ペルオキシド誘導体が、以下の式(II)または式(III)で示される化合物である、前項1〜3のいずれか1に記載の新規抗HCV剤。
【化2】

【化3】

5.ペルオキシド誘導体が、HCVのRNA複製を阻害する作用を有する、前項1〜4のいずれか1に記載の新規抗HCV剤。
6.IFN-α及び/又はRBVと併用することを特徴とする、前項1〜5のいずれか1に記載の新規HCV剤。
7.前項1〜5のいずれか1に記載の新規抗HCV剤を含有していることを特徴とする、C型肝炎に対する治療用及び/又は予防用組成物。
8.さらに、IFN-α及び/又はRBVを含有する、前項7に記載のC型肝炎に対する治療用及び/又は予防用組成物。
9.前項1〜5のいずれか1に記載の新規抗HCV剤を備えていることを特徴とする、C型肝炎治療用及び/又は予防用キット。
10.さらに、IFN-α及び/又はRBVを備えていることを特徴とする、前項9に記載の治療用及び/又は予防用キット。
11.前項1〜5のいずれか1に記載の新規抗HCV剤を患者に投与することを含む、C型肝炎治療方法及び/又は予防方法。
12.さらにIFN-α及び/又はRBVを患者に投与することを含む、前項11に記載の治療方法及び/又は予防方法。
13.新規抗HCV剤と、IFN-α及び/又はRBVが、同時又は異なる時点で患者に投与される、前項11または12に記載の治療方法及び/又は予防方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規抗HCV剤は、複数のHCV株や細胞株由来の細胞を用いて総合的に判断されたものであるため、遺伝的多様性を有するHCV株や遺伝的背景の異なる細胞株においても強力な抗HCV作用を発揮するものと考えられる。また、本発明の新規抗HCV剤によれば、HCV RNA複製細胞からHCV RNAを完全に排除した細胞、すなわち治癒細胞を得ることができた。よって、本発明の新規抗HCV剤を用いることにより、C型肝炎の治療効果を著しく上昇させ、治癒率を格段に向上させることが大いに期待できる。また本発明の抗HCV剤は、細胞毒性が低く安全性の高いものであり、HCVの遺伝的多様性や変異にも影響されないと考えられるため、非常に有用である。さらに本発明の抗HCV剤は、既存の抗HCV剤(例えばRBV)との併用により抗HCV活性の相乗効果を発揮する点が非常に特徴的である。IFNやRBVの投与は副作用を示すため、本発明の抗HCV剤との併用により、IFNやRBVの投与量を大幅に減らすことができ、副作用を著しく軽減化することができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】OR6細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例1)
【図2】OR6細胞におけるN-89とN-251によるHCV コアタンパク質発現への影響を解析した結果を示す図である。(実施例2)
【図3】ORL8細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例3)
【図4】ORL8細胞におけるN-89とN-251によるHCV コアタンパク質発現への影響を解析した結果を示す図である。(実施例4)
【図5】ORL11細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例5)
【図6】OR6細胞と、ORL8細胞におけるArtemisininの抗HCV活性を示す図である。(比較例1)
【図7】ORL8細胞においてN-89とN-251によるレニラルシフェラーゼ活性への影響がないことを確認した結果を示す図である。(実施例6)
【図8】OR6細胞においてN-89とN-251によるレニラルシフェラーゼ活性への影響がないことを確認した結果を示す図である。(実施例7)
【図9】AH1R細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例8)
【図10】1B-4R細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例9)
【図11】KAH5RL細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例10)
【図12】1B-4RL細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を示す図である。(実施例11)
【図13】N-89とN-251のHCV-O/RLGE細胞におけるHCV RNAの複製に対する影響を確認した結果を示す図である。(実施例12)
【図14】N-89処理によりORL8細胞から治癒細胞を作製した結果を示す図である。(実施例13)
【図15】ORL8細胞におけるN-89の抗HCV活性に対する抗酸化剤の効果を確認した結果を示す図である。(実施例14)
【図16】ORL8細胞におけるN-251の抗HCV活性に対する抗酸化剤の効果を確認した結果を示す図である。(実施例15)
【図17】ORL8細胞におけるN-89の抗HCV活性に対する酸化剤の影響を確認した結果を示す図である。(実施例16)
【図18】ORL8細胞におけるArtemisininの抗HCV活性に対する抗酸化剤の効果を確認した結果を示す図である。(比較例2)
【図19】ORL8細胞におけるN-89とRBVとの併用効果を確認した結果を示す図である。(実施例17)
【図20】ORL8細胞におけるN-251とRBVとの併用効果を確認した結果を示す図である。(実施例18)
【図21】ORL8細胞におけるN-89とIFN-αとRBVとの3剤併用効果を確認した結果を示す図である。(実施例19)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、新規抗HCV剤を提供する。一般に、抗HCV作用は、HCVの感染、複製、粒子産生および再感染のいずれかを抑制または阻害する作用が意図される。好ましくは本発明において「抗HCV」とは、HCVの複製の抑制または阻害、特にHCV RNAの複製抑制または阻害を意図するものである。なお、「抗HCV剤」の適用は生体内および生体外が包含されるが、生体内での使用の局面は「治療用及び/又は予防用組成物」として後述する。
【0016】
本発明の新規抗HCV剤は、以下の式(I)で示されるペルオキシド誘導体を有効成分として含むことを特徴とする。
【化4】

[式中、Cは置換基を有しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子またはヒドロキシアルキル基である。]
【0017】
上記一般式(I)において、Cの置換基を有してもよい脂環式炭化水素環基としては、例えばシクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロへプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン基等の炭素数3〜12の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロブチリデン、ビシクロオクチリデン、ビシクロノニリデン、ノルボルニリデン、ノルボレニリデン、アダマンチリデン、ノルアダマンチリデン基等の架橋環または多環の脂環式炭化水素基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12の単環の脂環式炭化水素基またはアダマンチリデン基であり、より好ましくはシクロヘキシリデン、シクロドデシリデンまたはアダマンチリデン基である。また、Cの脂環式炭化水素環基が有してもよい置換基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルとして例示される直鎖または各種分枝したペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖状または分枝状の低級アルキル基;メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシとして例示される直鎖または各種分枝したペンチルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖状または分枝状の低級アルコキシ基等が挙げられ、好ましくは低級アルキル基であり、より好ましくはtert−ブチル基である。本発明化合物のうち、好ましい化合物としては一般式(1)において、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である化合物であり、より好ましくはCが4−tert−ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデンまたはアダマンチリデン基であり、さらに好ましくはCがシクロヘキシリデン基であり、nが1〜4である化合物である。
【0018】
また上記一般式(I)におけるRは、水素原子またはヒドロキシアルキル基である。該ヒドロキシアルキル基としてはアルキル鎖の末端にヒドロキシ基が結合しているものが好ましい。また、そのアルキル鎖(アルキレン基)の炭素数が1〜10(好ましくは1〜6)の直鎖状のものが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基の炭素数1〜10のアルキレン基が例示される。
【0019】
上記一般式(I)におけるRがヒドロキシアルキル基である場合、ヒドロキシアルキル基はオキソ環中のペルオキシ基に対して、α位又はβ位、即ち、1,2,4,5−テトロキサン環の6位又は7位に結合するのが好ましい。この位置にヒドロキシアルキル基が結合した一般式(I)で表される化合物は、オキソ環の員環数が大きいものであっても溶媒に対する溶解性が向上される。
【0020】
上記一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体は、以下のスキームにより合成することができる。具体的には、特開2000-229965号公開公報、特許第4289911号公報に記載の方法により製造することができる。
【化5】

【化6】

【化7】

【0021】
本発明の新規HCV剤に含まれるペルオキシド誘導体は、具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。本発明の新規HCV剤に含まれるペルオキシド誘導体は、最も好ましくは、以下の式(II)で表される化合物(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデカン)(本明細書において「N-89」と称することもある)または式(III)で表される化合物(6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデシ-4-イル)(本明細書において「N-251と称することもある)である。
【化8】

【化9】

【0022】
本発明は、新規抗HCV剤を含有していることを特徴とする、C型肝炎を治療及び/又は予防するための治療用及び/又は予防用組成物を提供する。C型肝炎は、C型急性肝炎とC型慢性肝炎とに分けられ得るが、本発明に係る治療用及び/又は予防用組成物はC型慢性肝炎に好適である。
【0023】
一般式(I)に係る化合物は単独で強力な抗HCV作用を発揮することから、有効成分として本発明の抗HCV剤を単独で含有するものを、本発明に係るC型肝炎を治療するための治療用及び/又は予防用組成物として使用することができる。また、本発明の治療用及び/又は予防用組成物は、インターフェロン(IFN)、リバビリン(RBV)、シクロスポリン(CsA)、フルバスタチン、テラプレビル及び/又はピタバスタチンと併用されてもよい。また、本発明の治療用及び/又は予防用組成物がさらに有効成分としてこれらのIFN等を含有するものであってもよい。本発明に係る抗HCV剤は、特に、IFNやRBVの抗HCV活性を相乗的に増強するものである。IFNとしては、IFN-αまたはIFN-βが好ましく、IFN-αが特に好ましい。また、IFNはPEG化等の修飾がされたもの(PEG-IFN)であってもよい。
【0024】
本発明に係る治療用及び/又は予防用組成物は、経口、非経口、または局所のいずれかの経路で被験体へ投与され得るが、好ましくは経口で投与する。また、製剤としては、通常、製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤を用いて製造した散剤、錠剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤、点眼剤、注射剤、坐剤等の非経口剤とすることができる。製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤としては、グルコース、ラクトース、ゼラチン、マンニトール、でんぷんペースト、トリケイ酸マグネシウム、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ等があり、さらには、安定剤、増量剤、着色剤及び芳香剤の様な補助剤が挙げられる。これらの製剤は、各々当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。本発明の治療用及び/又は予防用組成物中に含まれる有効成分としてのペルオキシド化合物の配合量としては、0.1〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜80重量%であり、0.1〜50重量%が好適である。また、1日当たりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概に決定できないが、通常成人1日当り0.1〜1000mg、好ましくは1〜600mgを1回または2〜4回程度に分けて投与するのが好ましい。
【0025】
本発明は、上述した治療用及び/又は予防用組成物がキットの態様で提供されるC型肝炎治療用及び/又は予防用キットも包含する。本明細書中において、用語「キット」は特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図され、好ましくはこれらの材料を使用するための使用説明書を備えている。使用説明書は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD-ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。
【0026】
本発明に係るキットは、本発明に係る新規抗HCV剤を備えていればよく、本発明に係る治療用及び/又は予防用組成物を備えていてもよい。本発明に係るキットは、新規抗HCV剤とは異なる成分を含む組成物が備えられていてもよい。本発明に係る新規抗HCV剤とは異なる成分を含む組成物としては、特に限定されないが、IFN、CsA、FLV、テラプレビル及び/又はPTVを有効成分とするC型肝炎治療用組成物が例示される。
【0027】
キットに2種類以上の組成物が備えられる場合には、これらは別個の容器(例えば、分割されたボトルなど)に入れて備えられてもよく、分割されていない単独の容器に入れて備えられてもよい。またキットは、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。さらにキットは、C型肝炎治療法及び/又は予防法に適用するために必要な器具をあわせて備えてもよい。
【0028】
キットの形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形(例えば経口および非経口)で投与され、異なる投与量で投与され、または、処方する医師が当該組み合わせの各成分の滴定を所望する場合などに特に有利である。本発明に係るキットの使用方法は、上述した組成物等の使用形態に従えばよい。
【0029】
また、本発明に係る治療法及び/又は予防法は、上述した新規抗HCV剤や、治療用及び/又は予防用組成物、治療用及び/又は予防用キットを適用する態様であり得る。すなわち、本発明に係る治療法は、患者に本発明に係る新規抗HCV剤を投与する工程を含んでいればよく、さらにIFN、CsA、FLV及び/又はPTVを投与する工程をさらに含んでいてもよい。本発明に係る治療法及び/又は予防法における新規抗HCV剤等の適用については、上述した使用形態に従えばよい。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の新規抗HCV剤について、実施例により説明するが、本発明は実施例の記載に限定されないことはいうまでもない。
【0031】
(参考例1)本発明において用いた細胞と抗HCV活性および細胞毒性効果の評価の方法
HuH-7細胞由来の全長HCV RNA複製細胞であるOR6細胞(HCV-O株)、1B-4R細胞(HCV-1B-4株)およびAH1R細胞(HCV-AH1R株)アッセイ系とLi23細胞由来の全長HCV RNA複製細胞であるORL8細胞(HCV-O株)、ORL11細胞(HCV-O株)、1B-4RL細胞(HCV-1B-4株)およびKAH5RL細胞(HCV-KAH5株)を、本発明における抗HCV活性の定量解析や細胞毒性効果の評価のために使用した。1B-4R細胞、1B-4RL細胞、KAH5RL細胞の3細胞株については、国際公開第WO/2010/026965号に記載されている。AH1R細胞については、Mori K et al., BBRC, 371:104-109, 2008および国際公開第WO/2010/026965号を参照して作製することができる。また、これらのHCV株はすべて遺伝子型1bに属する。
【0032】
抗HCV活性についてはレニラルシフェラーゼ活性を定量的に測定して、50%有効濃度(EC50)を算出した。必要に応じて、ウェスタンブロット法によりHCVタンパク質(コアタンパク質)の発現レベルの増減を調べた。
細胞毒性効果については、市販のWST-1細胞増殖アッセイ法(Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System:タカラバイオ)のプロトコールに従って測定し、50%毒性濃度(CC50)を算出した。
レニラルシフェラーゼ活性の測定やWST-1法による測定は、それぞれ独立的な3ウェルで実験を行い、平均値と標準偏差を算出した。
CC50値をEC50値で割って選択毒性値(Selective Index: SI)を算出した。
【0033】
(実施例1)OR6細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性
OR6細胞を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。
通常の継代用培地にて培養したOR6細胞を24ウェルプレート(ウェルあたり1 mLのLi23用培地に2×104個)に播き培養した。24時間後に、N-89を20μMと20μMからの2倍希釈系列(10, 5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31μM)および0の濃度になるように添加、或はN-251を10μMと10μMからの2倍希釈系列(5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16μM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後にレニラルシフェラーゼ活性を測定した。N-89とN-251の希釈はDMSOにて行った。
測定の結果、EC50値はN-89で0.66μM、N-251で0.69μMと算定された(図1)。
【0034】
OR6細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。
通常の継代用培地にて培養したOR6細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり0.1 mLのLi23用培地に1×103個)に播き培養した。24時間後に、N-89を20μMと20μMからの2倍希釈系列(10, 5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31μM)および0の濃度になるように添加、或はN-251を10μMと10μMからの2倍希釈系列(5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16μM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行い、CC50値を算出した。
測定の結果、CC50値はN-89で9.0μM、N-251で3.0μMと算定された(図1)。
【0035】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は14、N-251のSI値は4.4であった。
【0036】
(実施例2)OR6細胞におけるN-89とN-251によるHCV コアタンパク質発現への影響の解析
OR6細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を確認するためにHCV コアタンパク質のウェスタンブロット解析を行った。
通常の継代用培地にて培養したOR6細胞を6ウェルプレート(ウェルあたり3 mLのLi23用培地で5×104個)に播き培養した。24時間後に、N-89については20μMと20μMからの2倍希釈系列(10, 5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31μM)および0、N-251については10μMと10μMからの2倍希釈系列(5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16μM)および0の濃度になるように添加した。N-89とN-251の希釈はDMSOにて行った。72時間後に100 μLの2×SDS バッファーでサンプリングを行った。サンプルの10μLをSDS-PAGE 電気泳動にアプライし、常法に従って、抗HCVコア抗体と抗β-アクチン抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った。β-アクチンの検出については、β-アクチンの発現量は高いのでサンプルを2×SDS バッファーで事前に10倍に希釈したものを用いた。
【0037】
この解析によりHCVコアタンパク質のレベルがN-89やN-251の濃度に依存して低下することを確認した(図2)。レポーターアッセイで得られたN-89やN-251のEC50値(0.66と0.69μM)付近でコアタンパク質の量の低下が観察された。これらの濃度においては、β-アクチンのレベルの低下は観察されなかったので、抗HCV活性が反映された結果であると考えられる。ただN-89やN-251では10μM以上の濃度域ではβ-アクチンの顕著な低下が認められたことから細胞毒性効果によるものと考えられた。
【0038】
(実施例3)ORL8細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性
ORL8細胞を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは、実施例1と同様である。
N-89とN-251は、5μMと5μMからの2倍希釈系列(2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16, 0.08μM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
測定の結果、EC50値はN-89で0.089μM、N-251で0.10μMと算定された(図3)。
【0039】
ORL8細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは、実施例1と同様である。
N-89とN-251は、5μMと5μMからの2倍希釈系列(2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16, 0.08μM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。
測定の結果、CC50値はN-89で2.3μM、N-251で1.3μMと算定された(図3)。
【0040】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は26、N-251のSI値は13であった。
【0041】
(実施例4)ORL8細胞におけるN-89とN-251によるHCV コアタンパク質発現への影響の解析
ORL8細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性を確かめるためにHCV コアタンパク質のウェスタンブロット解析を行った。
通常の継代用培地にて培養したORL8細胞を6ウェルプレート(ウェルあたり3 mLのLi23用培地で5×104個)に播き培養した。24時間後に、N-89とN-251については5μMと5μMからの2倍希釈系列(2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16, 0.078μM)および0の濃度になるように添加した。N-89とN-251の希釈はDMSOにて行った。培養72時間後に100 μLの2×SDS バッファーでサンプリングを行った。サンプルの10μLをSDS-PAGE 電気泳動にアプライし、常法に従って、抗HCVコア抗体と抗β-アクチン抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った。ただ、β-アクチンの検出についてはサンプルを2×SDS バッファーで事前に10倍に希釈したものを用いた。
【0042】
この解析によりHCVコアタンパク質のレベルがN-89やN-251の濃度に依存して低下することを確認した(図4)。レポーターアッセイで得られたN-89やN-251のEC50値(0.089と0.10μM)付近でのコアタンパク質の量の低下が観察された。これらの濃度においては、β-アクチンの量の低下は観察されなかったので、抗HCV活性が反映された結果であると考えられる。ただN-89やN-251では5μM以上の濃度域ではβ-アクチンの顕著な低下が認められ、細胞毒性効果によるものを考えられた。
【0043】
(実施例5)ORL11細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性
ORL11細胞を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は、500 nMと500 nMからの2倍希釈系列(250,125, 63, 31, 16, 8 nM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
N-251は、1μMと1μMからの2倍希釈系列(500,250, 125, 63, 31, 16 nM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
測定の結果、EC50値はN-89で0.045μM、N-251で0.059μMと算定された(図5)。
【0044】
ORL11細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は、500 nMと500 nMからの2倍希釈系列(250,125, 63, 31, 16, 8 nM)および0の濃度になるように添加し、N-251は、1μMと1μMからの2倍希釈系列(500,250, 125, 63, 31, 16 nM)および0の濃度になるように添加した。培養72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。図5には、N-89は0.31μM、N-251は0.63μMまでの結果を示した。
測定の結果、CC50値はN-89で0.56μM、N-251で1.1μMと算定された(図5)。
【0045】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は12、N-251のSI値は19であった。
【0046】
(比較例1)OR6細胞と、ORL8細胞におけるArtemisininの抗HCV活性
OR6細胞とORL8細胞を用いて、Artemisininの抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
Artemisininは、100μMと100μMからの2倍希釈系列(50, 25, 13, 6.3, 3.1, 1.6μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
測定の結果、EC50値はOR6で81μM、ORL8で23μMと算定された(図6)。
【0047】
OR6とORL8細胞を用いて、Artemisininの細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。 Artemisininは400μMと400μMからの2倍希釈系列(200, 100, 50, 25, 13μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。図には100μMまでの結果を示した。
測定の結果、CC50値はOR6細胞で380μM、ORL8細胞で368μMと算定された(図6)。
【0048】
上記の結果を総合したところ、OR6でのSI値は5、ORL8でのSI値は16であった。ArtemisininのSI値はCC50値が格段に高いために、5と16という値が得られたが、EC50値でみると、N-89やN-251と比較して20〜120倍ほど高く、抗HCV活性は非常に弱いと判断された。
【0049】
(実施例6)ORL8細胞においてN-89とN-251によるレニラルシフェラーゼ活性への影響がないことの確認
ORL8細胞では、HCV RNAに連結させる形で導入した外部遺伝子産物のレニラルシフェラーゼの活性を測定することによって、抗HCV活性を評価しているため、得られた抗HCV活性がレニラルシフェラーゼ活性を直接阻害したためではないことを示す必要がある。
そこで、ORL8細胞(1×105個、Li23用培地)のライゼート(10 μL)にN-89或はN-251を最終濃度が0, 5, 10, 20μMになるように加え(5 μL) 、さらに基質 50 μLを加えてルシフェラーゼ活性を測定した。
【0050】
結果を、図7に示す。0はDMSO 5μLを添加した場合の結果である。縦軸の100%における実際のルシフェラーゼ活性値(RL活性値)はN-89の場合が2.2×105で、N-251の場合が2.8 × 105であった。
測定の結果、N-89とN-251は20μMまでの濃度において、レニラルシフェラーゼ活性をまったく阻害しないことが分かった。
以上の結果から、N-89とN-251の抗HCV活性はレニラルシフェラーゼ活性を阻害したためではないことが確認された。
【0051】
(実施例7)OR6細胞においてN-89とN-251によるレニラルシフェラーゼ活性への影響がないことの確認
OR6細胞(HuH-7用培地)についても、実施例6と同様の手法によりレニラルシフェラーゼ活性の測定を行った。
【0052】
結果を、図8に示す。縦軸の100%における実際のルシフェラーゼ活性値(RL活性値)はN-89、N-251ともに、1.1×106であった。
OR6細胞の場合は、ORL8細胞と同様、N-89とN-251は20μMまでの濃度において、レニラルシフェラーゼ活性をまったく阻害しないことが分かった。
以上の結果から、N-89とN-251の抗HCV活性はレニラルシフェラーゼ活性を阻害したためではないことが確認された。
【0053】
(実施例8)AH1R細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性
HCV-O株とは異なるHCV-AH1株由来の全長HCVゲノムが自律的に複製している細胞(AH1R細胞)を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは、実施例1と同様である。
N-89は、500 nMと500 nMからの2倍希釈系列(250,125, 63, 31, 16, 8 nM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
N-251は、2μM と2μM からの2倍希釈系列(1,0.5, 0.25, 0.13, 0.06, 0.03μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
測定の結果、EC50値はN-89で0.025μM、N-251で0.14μMと算定された(図9)。
【0054】
AH1R細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは、実施例1と同様である。
N-89は、0.5μM と0.5μM からの2倍希釈系列(0.25,0.13, 0.06, 0.03, 0.015, 0.008μM)および0、N-251は2μM と2μM からの2倍希釈系列(1, 0.5, 0.25, 0.13, 0.06, 0.03μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。
測定の結果、CC50値はN-89で約0.5μM、N-251で0.49μMと算定された(図9)。
【0055】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は約20、N-251のSI値は3.5であった。
AH1R細胞では、OR6細胞より低いEC50値が得られた。しかしながら、CC50値も低くなり、SI値はOR6と比較してN-89では同程度、N-251では低い値となった。
【0056】
(実施例9)1B-4R細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性
HCV-O株とは異なるHCV-1B-4株由来の全長HCVゲノムが自律的に複製している細胞(1B-4R細胞)を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は、10μM と10μM からの2倍希釈系列(5,2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
N-251は、5μM と5μM からの2倍希釈系列(2.5,1.3, 0.63, 0.31, 0.16, 0.08μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
測定の結果、EC50値はN-89で0.42μM、N-251で0.98μMと算定された(図10)。
【0057】
1B-4R細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は50μM と50μM からの2倍希釈系列(25, 12.5, 6.3, 3.1, 1.6, 0.8μM)および0、N-251は5μM と5μM からの2倍希釈系列(2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16. 0.08μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。N-89については、6.3μMまでの結果を記載した。
測定の結果、CC50値はN-89で9.3μM、N-251で3.8μMと算定された(図10)。
【0058】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は22、N-251のSI値は3.9であった。
1B-4R細胞では、OR6細胞と比較すると、N-89では若干低いEC50値が得られ、N-251では逆に若干高いEC50値となった。CC50値もN-251では低い値が得られたことから、SI値はOR6細胞と比較してN-89では高くなった一方で、N-251では低い値となった。
【0059】
(実施例10)KAH5RLアッセイ系におけるN-89とN-251の抗HCV活性
HCV-O株とは異なるHCV-KAH5株由来の全長HCVゲノムが自律的に複製している細胞(KAH5RL細胞)を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は、10μM と10μM からの2倍希釈系列(5,2.5, 1.3, 0,63, 0.31, 0.16μM)および0の濃度になるように添加し、72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
N-251は、5μM と5μM からの2倍希釈系列(2.5,1.3, 0.63, 0.31, 0.16, 0.08μM)および0の濃度になるように添加し、72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
測定の結果、EC50値はN-89で0.19μM、N-251で0.29μMと算定された(図11)。
【0060】
KAH5RL細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89とN-251の濃度はルシフェラーゼ活性の測定に用いた濃度と同じで、添加72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。
測定の結果、CC50値はN-89で2.5μM、N-251で3.2μMと算定された(図11)。
【0061】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は13、N-251のSI値は11であった。
KAH5RL細胞はORL8細胞と比較すると、N-89やN-251ともに2〜3倍程度高い値を示した。CC50値はN-89と同程度でN-251では2.5倍ほど高い値が得られた。結果としてSI値はORL8細胞と比較して低い値となったものの10以上の数値を示した。
【0062】
(実施例11)1B-4RL細胞におけるN-89とN-251の抗HCV活性
HCV-O株とは異なるHCV-1B-4株由来の全長HCVゲノムが自律的に複製している細胞(1B-4RL細胞)を用いて、N-89とN-251の抗HCV活性を調べ、EC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89、N-251ともに、5μM と5μMからの2倍希釈系列(2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.16, 0.08μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。N-251については、1.3 μMまでの結果を記載した。
測定の結果、EC50値はN-89で0.12μM、N-251で0.23μMと算定された(図12)。
【0063】
1B-4RL細胞を用いて、N-89とN-251の細胞毒性効果を調べ、CC50値を算出した。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89はルシフェラーゼ活性の測定に用いた濃度で添加し、N-251は2μM と2μM からの2倍希釈系列(1,0.5, 0.25, 0.13, 0.06, 0.03μM)および0の濃度となるように添加し、添加72時間後にWST-1細胞増殖アッセイを行った。
測定の結果、CC50値はN-89で2.4μM、N-251で1.9μMと算定された(図12)。
【0064】
上記の結果を総合したところ、N-89のSI値は20、N-251のSI値は8.3であった。
1B-4RL細胞はORL8細胞と比較すると、N-89で1.3倍、N-251で2.3倍程度高いEC50値を示した。CC50値はいずれも、ORL8細胞と同程度であった。そのため、SI値はORL8アッセイ系と比較して1/2程度の数値となった。
【0065】
(参考例2)各種HCV株に対するN-89とN-251の抗HCV活性
実施例1〜実施例11までに得られた各種HCV株由来の細胞で測定されたN-89とN-251のEC50値とCC50値、および算出されたSI値を、以下の表1にまとめた。
【表1】

【0066】
N-89とN-251のEC50値はそれぞれ0.025〜0.66 μM、0.059〜0.98 μMとなった。CC50値もそれぞれ0.5〜9.3 μM、0.49〜3.8 μMとなったことから、抗HCV活性はN-89の方が若干強い傾向が認められた。
N-89とN-251のSI値は、それぞれ12〜26と3.5〜19となった。
以上の結果から、N-89とN-251は遺伝的多様性を有するHCV株や遺伝的背景の異なる細胞株にかかわらず、それぞれ単独でかつ1μM以下の低濃度で強力な抗HCV活性を示すことが明白となった。従って、これらの化合物は非常に有望な抗HCV剤候補であると考えられた。
【0067】
(実施例12)N-89とN-251のHCV-O/RLGE細胞におけるHCV RNAの複製に対する影響の確認
HCV-O/RLGE細胞(Ikeda et al., Liver Int 31:871-880, 2011)を6ウェルプレート(ウェルあたり3 mLのHuH-7用培地に5×104個)に播き培養した。24時間後にN-89を20μMと20μMからの2倍希釈系列(10, 5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31μM)および0の濃度になるように添加、或はN-251を10μMと10μMからの2倍希釈系列(5, 2.5, 1.3, 0.63, 0.31, 0.15μM)および0の濃度になるように添加し、培養72時間後に細胞を100 μLの2×SDS バッファーで溶解してウェスタンブロット解析用のサンプルを調製した。HCV コアタンパク質に対する抗体(CP11;Institute of Immunology, Tokyo)を用いたウェスタンブロット解析は常法に従って行った。β-アクチンについてはサンプルを2×SDS バッファーで10倍に希釈して抗β-アクチン抗体(AC-15; Sigma-Aldrich)にて検出した。
【0068】
ウェスタンブロット解析の結果(図13)、N-89、N-251ともに、β-アクチンの量が低下していない濃度域においてHCVコアタンパク質量が明らかに低下していた。従って、N-89とN-251の抗HCV活性はEMCV-IRES(脳心筋炎ウイルスのinternal ribosomal entry site)を抑制することによるものではなく、HCV RNAの複製を直接抑制することによるものであることが分かった。
【0069】
(実施例13)N-89処理によるORL8細胞からの治癒細胞の作製
N-89やN-251がHCV RNAの複製を強く抑制することが明らかになったことと、ORL8細胞においては細胞毒性を示さない1μMの濃度でHCV RNAの複製レベルを99%抑制することから、薬剤単独でも、IFN同様、全長HCV RNA複製細胞からHCV RNAを完全に排除することができるのではないかと考えた。
この点を明らかにするために、N-89処理により、ORL8細胞から治癒細胞(HCV RNAが排除された細胞)を作製することができるかどうかを検討した。細胞への薬剤処理の方法は、発明者らが治癒細胞を作製する際に通常用いているIFN-γ(1,000 IU/mL)の方法(Abe K et al., Virus Res. 125:88-97, 2007)に従って行った。
ORL8細胞4×105個を10 cmプレート(G418を含まない培地10 mL)に播き、翌日、N-89を終濃度1μMになるように添加した。3日後に細胞を10倍に希釈し、翌日再びN-89を添加した。この操作を、あと4回繰り返した(計6回のN-89添加)。3回目のN-89添加後3日目に行う細胞希釈時に、G418(ネオマイシン)(0.3 mg/mL)を含む培地とG418を含まない培地の2プレートに分けて、以後3回のN-89の添加を遂行し、細胞の最終希釈時に複数枚のプレートとし、最終的に各1枚についてはCBB染色を行った。
【0070】
結果を図14に示す。G418存在下の培地で培養したORL8細胞はすべて死滅したが、G418非存在下で培養したORL8細胞は通常の増殖速度で飽和状態になった。この細胞からHCV RNAが排除されていることを確認するために、抗HCVコア抗体と抗HCV NS5B抗体を用いて、ウエスタンブロット解析を行った。陽性コントロールとしてORL8細胞を用いた。その結果、N-89で処理したORL8細胞(図14ではORL8c(N-89)と表記)においては、コアタンパク質もNS5Bも検出されなかった。従って、N-89処理によりORL8細胞から治癒細胞を作製できることが分かった。
さらに、HCV-O株由来の全長HCVゲノム複製細胞(OL8細胞とOL11細胞)(Kato et al., Virus Res. 146:41-50, 2009)を3年継代した細胞(HCVゲノムの持続的複製によりHCVゲノムに様々な変異が生じて遺伝的多様性の状態(Quasispeciesと呼ばれる)を獲得している)を用いて、同様にN-89で処理したところ、ORL8細胞の場合と同様、3年継代したOL8細胞やOL11細胞からも治癒細胞を作製することができた。
これまで、IFN以外の薬剤で治癒細胞を容易に作製できることは報告されていないので、この点においても、N-89の抗HCV活性は非常に強いこと、そして抵抗性コロニーも容易に出現しないことが明らかとなった。
【0071】
(実施例14)ORL8細胞におけるN-89の抗HCV活性に対する抗酸化剤の効果
ORL8細胞を用いて、N-89の抗HCV活性に対するビタミンEの添加効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は0.5μMになるように設定し、ビタミンEが10μMになるようにしてN-89と同時に添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0072】
測定結果を図15の下図に示す。N-89のみの添加で、HCV活性は27%に低下した。それに反して、抗酸化剤であるビタミンEのみを添加した場合には、ルシフェラーゼ活性は217%と高くなった。N-89とビタミンEを併用した場合でも、ルシフェラーゼ活性は245%と高く、ビタミンEによりN-89の抗HCV活性は完全にキャンセルされることが分かった。
図15の上図に、このようなキャンセル効果を定量的に表した。ビタミンEを添加した場合に得られたルシフェラーゼ活性をビタミンE無添加の場合に得られたルシフェラーゼ活性で割った値を算出して図を作成した。N-89との併用におけるビタミンEの有無による違いを示す指標は8.9となり、ビタミンE単独での値2.2より高い値が得られた。
N-89の抗HCV活性はビタミンEで完全にキャンセルされることから、Artemisinin とは異なり、N-89の抗HCV活性は酸化ストレスにより生じているものと考えられる。
【0073】
(実施例15)ORL8細胞におけるN-251の抗HCV活性に対する抗酸化剤の効果
ORL8細胞を用いて、N-251の抗HCV活性に対するビタミンEの添加効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-251は0.5μMになるように設定し、ビタミンEが10μMになるようにしてN-251と同時に添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0074】
測定結果を、図16の下図に示す。N-251のみの添加で、HCV活性は33%に低下した。それに反して、抗酸化剤であるビタミンEのみを添加した場合には、ルシフェラーゼ活性は194%と高くなった。N-251とビタミンEを併用した場合でも、ルシフェラーゼ活性は215%と高く、ビタミンEによりN-251の抗HCV活性も完全にキャンセルされることが分かった。
図15の上図において示したように、図16の上図にキャンセル効果を定量的に表した。N-251との併用におけるビタミンEの有無による違いを示す指標は6.6となり、ビタミンE単独での値1.9より高い値が得られた。
N-251の抗HCV活性はビタミンEで完全にキャンセルされることから、N-251の抗HCV活性も酸化ストレスにより生じているものと考えられる。
【0075】
(実施例16)ORL8細胞におけるN-89の抗HCV活性に対する酸化剤の影響の確認
ORL8細胞を用いて、N-89の抗HCV活性に対するKNO3とNaClO4の添加効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
N-89は0.5μMになるように設定し、KNO3或はNaClO4が10μMになるようにしてN-89と同時に添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0076】
結果を図17に示す。KNO3或はNaClO4の添加によってもルシフェラーゼ活性に変化はなく、N-89との併用によってN-89の抗HCV活性に影響を与えることはなかった。従って、N-89の抗HCV活性は酸化ストレスによるものと考えられるものの、KNO3やNaClO4などの酸化剤と同じような酸化効果によるものではないと考えられる。
【0077】
(比較例2)ORL8細胞におけるArtemisininの抗HCV活性に対する抗酸化剤の効果
ORL8細胞を用いて、Artemisininの抗HCV活性に対するビタミンEの添加効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である、
抗酸化剤であるビタミンEの添加により抗HCV活性がキャンセルされることが分かっているシクロスポリン(CsA)と、キャンセルされないことが分かっているIFN-αもコントロールとして使用した。
Artemisininは100μMになるように設定し、ビタミンEが10μMになるようにしてArtemisininと同時に添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。CsAは0.4μg/mL、IFN-αは1 IU/mLとなるように設定して、Artemisininと同様に実験を行った。
【0078】
測定結果を図18の左図に示す。ビタミンEのみを添加した場合に、ルシフェラーゼ活性は約3倍になり、HCV RNAのレベルが上昇した。Artemisinin単独ではルシフェラーゼ活性が23%に下がった。ビタミンEを併用した場合では53%に上昇した。CsA単独では14%までルシフェラーゼ活性が下がったもののビタミンEを併用した場合には、ルシフェラーゼ活性が270%まで大幅に上昇し、CsAの抗HCV活性が完全にキャンセルされた。しかしながら、IFN-αについては、ビタミンEの添加によるキャンセル効果は今回多少認められたが、CsAに匹敵するほどではなかった。
図15の上図において示したように、図18の右図にキャンセル効果を定量的に表した。その結果、抗HCV剤を使用しなかった場合は2.9という値が得られた。Artemisininでは2.3、IFN-αでは4.4という値が得られた。これらの結果とは対照的にCsAでは19.5という高い値が得られた。CsAの抗HCV活性はビタミンEで完全にキャンセルされることから、CsAの抗HCV活性は酸化ストレスにより生じているものと考えられる。しかしながら、Artemisininの抗HCV活性はビタミンEではキャンセルされないことから、Artemisininの抗HCV活性の分子機序は酸化ストレスとは異なるものと考えられる。従って、N-89やN-251の抗HCV活性の分子機序はArtemisininとは異なり、別個のものであると考えられる。CsAとIFN-αの抗HCV活性についてのビタミンEによるキャンセル効果に関しては既に報告されている(Yano M etal., Antimicrob. Agents Chemother.51:2016-2027, 2007)。
【0079】
(実施例17)ORL8細胞におけるN-89とRBVとの併用効果
ORL8細胞を用いて、N-89とRBVの併用効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
RBVは0, 12.5,25および50 μMになるように設定し、それぞれの濃度において、N-89が0, 0.1, 0.2および0.4 μMになるように両薬剤を添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0080】
測定結果の対数表示図を図19左上に、%表示の図を図19右上に示した。図19左下には相加効果として予想される効果曲線(予想)と実際の測定結果を比較した対数表示図を示した。
RBVが12.5, 25および50 μMでN-89を併用した場合、実測値は予想相加曲線よりかなり低くなることが分かった。ORL8細胞におけるN-89のCC50 値は2.3 μM(実施例2)であることから、その影響は少ないと考えられる。従って、ORL8細胞においては、N-89とRBVとの併用は相乗効果になることが分かった。
【0081】
(実施例18)ORL8細胞におけるN-251とRBVとの併用効果
ORL8細胞を用いて、N-251とRBVとの併用効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
RBVは0, 12.5,25,および50 μMになるように設定し、それぞれの濃度において、N-89が0, 0.1, 0.2および0.4μMになるように両薬剤を添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0082】
測定結果の対数表示図を図20左上に、%表示の図を図20右上に示した。図20左下には相加効果として予想される効果曲線(予想)と実際の測定結果を比較した対数表示図を示した。
RBVが12.5, 25および50μMでN-251を併用した場合、実測値は予想相加曲線よりかなり低くなることが分かった。ORL8細胞におけるN-251のCC50 値は1.3μM(実施例2)であることから、その影響は少ないと考えられることから、ORL8細胞においては、N-251とRBVとの併用は相乗効果になることが分かった。
【0083】
(実施例19)ORL8細胞におけるN-89とIFN-αおよびRBVとの3剤併用効果
ORL8細胞を用いて、N-89、IFN-αおよびRBVとの3剤併用効果を調べた。実験のスケールとスケジュールは実施例1と同様である。
IFN-α、RBVともに0、IFN-αが1 IU/mLでRBVが6.25 μM、IFN-αが4 IU/mLでRBVが 12.5 μM、IFN-αが16 IU/mLでRBVが 25 μMと2剤の濃度を固定し、それぞれの組み合わせにおいて、N-89が0, 0.1, 0.2および0.4 μMになるように薬剤を添加した。培養72時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0084】
測定結果の対数表示図を図21左上に、%表示の図を図21右上に示した。図21左下には相加効果として予想される効果曲線(予想)と実際の測定結果を比較した対数表示図を示した。
IFN-αが1 IU/mLでRBVが6.25 μM の場合は、N-89添加による実測値と相加効果で予想される値との乖離は小さかったが、IFN-αが4 IU/mLでRBVが 12.5 μMやIFN-αが16 IU/mLでRBVが 25 μMの場合は、N-89添加による実測値は、相加効果として予想される値よりかなり低くなることが分かった。ORL8細胞におけるN-89のCC50 値は2.3 μM(実施例2)であることから、その影響は少ないと考えられる。従って、ORL8細胞においては、N-89とIFN-αおよびRBVとの3剤併用は相乗効果になることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上詳述したように、本発明の新規抗HCV剤は、複数のHCV株や細胞株由来の細胞を用いて総合的に判断されたものであるため、HCV株や細胞株が違っていても単剤で強い抗HCV作用を発揮すると考えられ、非常に有用である。また、本発明の新規抗HCV剤によれば、HCV RNA複製細胞からHCV RNAを完全に排除した細胞、すなわち治癒細胞を得ることができた。よって、本発明の新規抗HCV剤を用いることにより、C型肝炎の治療効果を著しく上昇させ、治癒率を大幅に向上させることが大いに期待できる。また本発明の抗HCV剤は、細胞毒性が低く安全性の高いものであり、HCVの遺伝的多様性や変異にも影響されないと考えられるため、大いに有用である。さらに本発明の抗HCV剤は、既存の抗HCV剤(例えばIFNやRBV)との併用により抗HCV活性の相乗効果を発揮するため、現行のIFNとRBVの併用療法に対してもさらに有用である。IFNやRBVの投与は副作用を示すため、本発明の抗HCV剤との併用により、IFNやRBVの投与量を少なくし、副作用を軽減化することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体を有効成分として含む新規抗HCV剤。
【化1】


[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子またはヒドロキシアルキル基である。]
【請求項2】
ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である、請求項1に記載の新規抗HCV剤。
【請求項3】
ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cがシクロドデシリデン基であり、nが1〜4である、請求項1または2記載に記載の新規抗HCV剤。
【請求項4】
ペルオキシド誘導体が、以下の式(II)または式(III)で示される化合物である、請求項1〜3のいずれか1に記載の新規抗HCV剤。
【化2】

【化3】

【請求項5】
ペルオキシド誘導体が、HCVのRNA複製を阻害する作用を有する、請求項1〜4のいずれか1に記載の新規抗HCV剤。
【請求項6】
インターフェロンα(IFN-α)及び/又はリバビリン(RBV)と併用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1に記載の新規HCV剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1に記載の新規抗HCV剤を含有していることを特徴とする、C型肝炎に対する治療用及び/又は予防用組成物。
【請求項8】
さらに、IFN-α及び/又はRBVを含有する、請求項7に記載のC型肝炎に対する治療用及び/又は予防用組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1に記載の新規抗HCV剤を備えていることを特徴とする、C型肝炎治療用及び/又は予防用キット。
【請求項10】
さらに、IFN-α及び/又はRBVを備えていることを特徴とする、請求項9に記載の治療用及び/又は予防用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−79204(P2013−79204A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219377(P2011−219377)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【特許番号】特許第4931162号(P4931162)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】