説明

新規放射性テクネチウム−ビスホスフィノアミン錯体および該錯体を含む放射性画像診断剤

【課題】単光子放出型断層撮像画像における心臓のコントラストおよび初回循環抽出率が高い放射性テクネチウム錯体および該錯体を用いた放射性画像診断剤を提供する。
【解決手段】下記式にて表される、化合物および該化合物を配合した放射性画像診断剤を用いる。
【化25】


(式中、99mTc(CO)3はテクネチウム−99mトリカルボニル物、Lはビスホスフィノアミン化合物を示す)
ビスホスフィノアミン化合物Lとしては、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、ビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンなどが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学診断、特に腫瘍診断分野および心筋血流診断分野における核医学診断に有用な新規放射性テクネチウム−ビスホスフィノアミン錯体、および該錯体を含む放射性画像診断剤に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞等の虚血性心疾患を始めとする心臓病は死亡原因の上位を占めており、発見が遅れた場合の致死率が高いため、早期に診断することは重要である。心臓領域における画像診断方法としては、侵襲的な左室造影や冠動脈造影のほか、非侵襲的な画像診断方法として、心エコー検査、X線コンピューター断層撮像(X線CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、並びに、陽電子放出型断層撮像(PET)および単光子放出型断層撮像(SPECT)等の核医学診断が主に用いられている。これらのうち、心臓領域における核医学検査に用いる診断剤として、種々の化合物が開発され、その一部については臨床応用されている。
【0003】
臨床応用されている心筋血流診断剤の一つである塩化タリウム−201は、水溶液中で解離して一価の陽イオン(201Tl+)となり、カリウムイオンと同様の挙動を示して、心筋細胞内にナトリウム−カリウムポンプにより能動的に摂取されると考えられている。そのため、心筋への取込が高く、心筋の血流分布を反映したSPECT画像を与えるといった特徴を有している。さらに、初回循環抽出率(First Pass Extraction Fraction、以下、FPEFとする)が高いため、血流直線性が高く、診断精度が高いという優れた特徴も有している。
【0004】
しかし、タリウム−201は、エネルギーが約70 keVと低く、半減期が約73時間と長いために大量投与ができない、といった放射性医薬品として用いるには好ましくない性質を有しており、そのために、得られた画像が不鮮明となりやすいという欠点を有している。また、タリウム−201は、サイクロトロンによって製造される核種であり、利便性に劣るという欠点もある。そこで、エネルギーが約140keVと高く、半減期が約6時間と比較的短いために放射性医薬品に用いる核種としてより好ましい性質を有し、より安価で、かつ利便性に優れたテクネチウム−99mを用いた化合物が開発されている。
【0005】
テクネチウム−99mを用いた心筋血流診断剤用放射性医薬品としては、テクネチウム−99m−ヘキサキス−2−メトキシ−2−イソブチル−イソニトリル(以下、MIBIとする)(カルディオライト、登録商標、第一ラジオアイソトープ研究所製)およびテクネチウム−99m−テトロフォスミン(以下、テトロフォスミンとする)(マイオビュー、登録商標、日本メジフィジックス株式会社製)(例えば、特許文献1参照)が開発され、臨床応用されている。これらのうち、MIBIは肺への集積は抑えられているものの、肝臓からのクリアランスが遅いために肝臓に集積し、SPECT画像における放射能カウントから算出した心臓/肝臓比が十分ではない。肺および肝臓は、心臓に近い位置に存在しているため、投与した画像診断剤が肺および/または肝臓に集積すると、心疾患における診断の妨げになる。そのため、肺および肝臓への集積を抑えた新規な心筋血流診断剤の開発が進められている。テトロフォスミンは、肝臓への集積はMIBIよりは抑えられているが、更なる診断能の向上を目指すためには、より肝集積を抑えた心筋血流剤を用いることが望ましい。
【0006】
肝臓への集積を抑えて心臓/肝臓比を改善させた化合物として、テクネチウム−99m窒化物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン−ジエトキシエチルジチオカルバメイト錯体(以下、99mTcN-PNP5とする)を始めとする種々のテクネチウム−99m窒化物−ビスホスフィノアミン錯体が開発されている(例えば、特許文献2および3参照)。この化合物は、心臓へ集積し、かつ肺および肝臓への集積が低いという特徴を有しているものの、FPEFが先行剤であるMIBIと比較して低いという欠点を有している。
【0007】
【特許文献1】特開平9−328495号公報
【特許文献2】国際公開第98/27100号パンフレット
【特許文献3】特表2004−505064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、99mTcN-PNP5の開発により、心臓/肝臓比は改善されたが、本化合物はFPEFが十分でないという問題を有している。心筋血流診断剤として用いる化合物としては、心臓へ集積し、かつ肝臓および肺への集積が低いという99mTcN-PNP5の優れた性能は保持しつつ、FPEFをより向上させた化合物を用いることが望ましいが、今までにそのような化合物は開発されていなかった。
【0009】
本発明は、上記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、SPECT画像における心臓/肝臓比および心臓/肺比が高く、かつ、FPEFがより高い放射性テクネチウム錯体を提供すること、および該錯体を用いた画像診断剤を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、テクネチウム−99mトリカルボニル物にビスホスフィノアミン化合物を配位させた化合物により、上述した問題点を克服し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、テクネチウム−99mトリカルボニル物に、ビスホスフィノアミン化合物が配位した、下記式(1):
【0012】
【化12】

(式(1)において、99mTc(CO)3はテクネチウム−99mトリカルボニル物、Lはビスホスフィノアミン化合物を示す)で表されるテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体および、該錯体を配合してなる放射性画像診断剤である。
【0013】
上記Lは、テクネチウム−99mトリカルボニル物と錯体を形成し得るビスホスフィノアミン化合物である限り特に限定されないが、リンに結合している二つ以上の官能基が1級の水酸基を含む低級直鎖アルキル基または水酸基である化合物以外のもの、例えば、ビスヒドロキシメチルホスフィノ体またはビスヒドロキシホスフィノ体以外のものを用いることが好ましい。
例えば、下記式(2):
【0014】
【化13】

(式(2)において、R1、R1’’およびR1’’’は同じでも異なっていても良く、それぞれ独立に、アルキル基、フェニル基、または下記式(3):
【0015】
【化14】

(式(3)において、lは0≦l≦4、l’は0≦l’≦3の整数を示す)で表される基、または下記式(4):
【0016】
【化15】

式(4)において、mは0≦m≦4、m’は0≦m’≦4、m’’は0≦m’’≦3の整数を示す)で表される基であり、R2は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アミノ基、前記式(3)で表される基または前記式(4)で表される基を示す)で表される化合物を好ましく用いることができる。ここで、R1、R1’、R1’’またはR1’’’として選択され得るアルキル基、およびR2として選択され得るアルキル基および置換アルキル基は直鎖でも分岐を有していても良いが、低級アルキル基であることが好ましく、炭素数1から4のものを用いることがより好ましい。
【0017】
本発明に用いるビスホスフィノアミン化合物の具体例としては、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アミン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メチルアミン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)エチルアミン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)プロピルアミン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)ブチルアミン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アセトニルアミン、ビス(ジメトキシホスフィノエチル)アミン、ビス(ジメトキシホスフィノエチル)メチルアミン、ビス(ジメトキシホスフィノエチル)エチルアミン、ビス(ジメトキシホスフィノエチル)プロピルアミン、ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)アミン、ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)メチルアミン、ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)エチルアミン、ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)アミン、ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)メチルアミン、ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エチルアミン、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)プロピルアミン、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、ビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、ビス(ジメチルホスフィノエチル)メチルアミン、およびビス(ジプロポキシメチルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンより選択される化合物を挙げることができ、最も好ましくは、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、およびビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれる化合物を用いることができる。
本発明に係る画像診断剤は、種々の疾患の診断に用いることができるが、特に腫瘍診断剤および心筋血流診断剤として、好適に用いることができる。
【0018】
本発明の別の側面によれば、前記画像診断剤を調製するための、放射性画像診断剤調製用キットが提供される。
本キットは、一酸化炭素源、還元剤および塩基を含有する第一の容器と、ビスホスフィノアミン化合物を含有する第二の容器を含んでいることを特徴とするものである。第一の容器は、必要に応じて安定化剤を配合させたものであっても良い。
また、第二の容器に配合されるビスホスフィノアミン化合物は、テクネチウム−99mトリカルボニル物と錯体を形成しうるものであれば良く、具体的には、本発明に係る錯体を構成するビスホスフィノアミン化合物と同じものを用いることができる。
【0019】
塩基は無機塩であることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、または、水酸化マグネシウムを用いることがより好ましい。
【0020】
還元剤としては、水素化ホウ素アニオン、または、水素化ホウ素アニオンを構成する水素原子のうちの少なくとも3つが、不活性置換基により置換される置換水素化ホウ素アニオンを用いることができる。ここで、不活性置換基とは、反応に関与しない置換基を指し、具体的には、アルキル基、フェニル基等を指す。
還元剤の量は、塩基の還元剤に対するモル比が0.1から2の間とすることが好ましく、0.15から2の間とすることがより好ましく、0.25から2の間とすることがさらに好ましい。
安定化剤としては、酒石酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩等を用いることができ、好ましくは酒石酸塩、より好ましくは、L-酒石酸ナトリウムを用いることができる。
【0021】
本発明に係るキットにおいて、各容器中に配合された化合物は、水や生理食塩液(0.9 %塩化ナトリウム溶液)に溶解した状態のものであっても良いが、凍結乾燥やスプレードライ等の手段により、乾燥させたものであっても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る化合物は、SPECT画像を得るために十分な心臓への集積を示し、かつ肺および肝臓には集積しないことに加え、さらに、FPEFが99mTcN-PNP5と比較して高いという性能を有している。従って、本発明に係る化合物を心筋血流診断剤として用いることにより、心臓/肺比ならびに心臓/肝臓比が高い、良好なSPECT画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る化合物は、テクネチウム−99mトリカルボニル物を含有する溶液と、ビスホスフィノアミン化合物を含有する溶液とを混合し、錯体形成に必要な条件を与えることによって得ることができる。以下、本発明に係る錯体の合成方法について説明する。
【0024】
本発明に係る錯体の合成においては、まず、テクネチウム−99mトリカルボニル物を含有した溶液を調製する。この溶液の調製法としては、公知の方法、例えば、文献(特表2002−512616号公報)記載の方法を用いることができる。具体的には、塩基、還元剤、一酸化炭素および所望により安定化剤の溶解した溶液に、過テクネチウム−99m酸イオン(99mTcO4-)の溶解した溶液を加え、反応させることによって得ることができる。反応は、20 ℃から100 ℃の間で行うことができ、75 ℃から100 ℃とすると、より早く反応が進行するため好ましい。
【0025】
塩基としては無機塩を用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、または、水酸化マグネシウムを好ましく用いることができる。
【0026】
還元剤としては水素化ホウ素アニオン、または、水素化ホウ素アニオンであって、該アニオンを構成する水素原子の3つまでが不活性置換基で置換されている、置換水素化ホウ素アニオンを用いることができる。より好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、および水素化ホウ素亜鉛からなる群より選択された塩により誘導されたアニオンを用いることができる。
還元剤の量は、テクネチウム−99mとテクネチウム−99の総和に対し、モル比にして3以上、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、最も好ましくは10000以上となるように調整する。還元剤の量が少ないと、テクネチウムの還元が不十分となるため好ましくない。
【0027】
安定化剤としては、酒石酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩等を用いることができ、好ましくは酒石酸塩、より好ましくは、L-酒石酸ナトリウムを用いることができる。安定化剤の量は、テクネチウム−99mとテクネチウム−99の総量よりも多いことが必要であり、テクネチウム−99mとテクネチウム−99の総量に対するモル比を100から1000000の間とすることが好ましく、1000から1000000の間とすることがより好ましい。この場合、安定化剤の量が少ないと十分な安定性が得られないため好ましくない。
【0028】
一酸化炭素はボンベ等を用いて直接溶液中に導入しても良いが、溶液中で一酸化炭素を生成し得る化合物を用いて導入しても良い。例えば、前記の還元剤と併せ、ボラノ炭酸二ナトリウム(Na2BH3CO2)を前記溶液に溶解させることにより、溶液中に一酸化炭素および還元剤を同時に導入することができる。
【0029】
また、塩基の量は、還元剤に対するモル比が0.1から2の間、好ましくは0.15から2、より好ましくは0.25から2の間とする。このとき、塩基の量が少ないと溶液のpHが低くなり、反応が十分に進行しなくなるため好ましくなく、多すぎると溶質濃度が高くなりすぎるため好ましくない。
上記反応に用いる各溶液は、水を溶媒としたものであっても良いが、生理食塩液を溶媒として用いた方が、注射剤を調製する上で、好ましい。
【0030】
ビスホスフィノアミン化合物は、文献(Claudio Bianchini et al., Organometallics, 1995,14, p.1489-1502およびL. Sacconi & R. Morassi, J. Chem. Soc.(A),1969,p.2904-2910)記載の方法に準じて合成することができる。例えば、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンを合成する場合は、N,N−ジ−(2−クロロエチル)−N−エトキシエチルアミンとジ−(3−メトキシプロピル)ホスフィンを、n−ブチルリチウムとテトラヒドロフランの存在下で反応させることによって得ることができる。
【0031】
合成したビスホスフィノアミン化合物を用い、ビスホスフィノアミン化合物溶液を調製する。ビスホスフィノアミン化合物を溶解する溶媒としては、水を用いることができるが、生理食塩液を用いても良い。また、ビスホスフィノアミン化合物の水に対する溶解度が低い場合は、エタノール等の両親媒性の溶媒を水または生理食塩液に適宜混合させた液を用いても良い。
上記ビスホスフィノアミン化合物溶液には、pH調整剤を加えてpHを調整することが望ましい。pH調整剤の種類および量は、ビスホスフィノアミン化合物がテクネチウムトリカルボニル物との間で錯体形成するために適したpHとなるように適宜選択される。例えば、ビスホスフィノアミン化合物がビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンである場合は、錯体形成における好適pHは約7であるので、0.1mgのビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンを、0.92 mLの生理食塩液に溶解したものに対し、0.08 mLの0.5 mol/L塩酸を添加すればよい。
ビスホスフィノアミン化合物の濃度は、用いる溶媒に完全に溶解する濃度である限り特に限定する必要はないが、0.1から3 mmol/Lの濃度とするのが、後の錯体形成反応における操作性を考慮すると好ましい。
【0032】
次に、調製したテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液と、ビスホスフィノアミン化合物溶液とを混合し、反応に適した条件を与えて、テクネチウム−99mトリカルボニル物ビスホスフィノアミン化合物錯体を合成する。
混合するテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液および、ビスホスフィノアミン化合物溶液の量は、必要とするテクネチウム−99mトリカルボニル物ビスホスフィノアミン化合物錯体の量と、各溶液の濃度に応じて適宜調整される。例えば、テクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体を1850 MBq合成する場合であって、テクネチウム−99mトリカルボニル物溶液の濃度が3700 MBq/mL、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン溶液の濃度が0.2 mmol/L(0.2 mg/mL)である場合は、それぞれの溶液を1 mLずつ用いればよい。
【0033】
また、反応に用いるビスホスフィノアミン化合物の総量と、テクネチウムトリカルボニル物の総量(テクネチウム−99mトリカルボニル物の総量と、テクネチウム−99トリカルボニル物の総量の合計)の比は、用いるテクネチウムトリカルボニル物の全てが錯体を形成するために十分な量比である限り特に限定する必要はない。例えば、テクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体を合成する場合は、ビスホスフィノアミン化合物の量は、テクネチウムトリカルボニル物に対し、モル比にして100以上あれば十分である。
【0034】
錯体の形成反応は室温で行うことができるが、反応時間を短縮する観点から、反応温度を高くすることが望ましい。例えば、テクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体を合成する場合においては、100℃で15分加熱すればよい。
【0035】
次に、本発明に係る放射性画像診断剤調製用キットについて説明する。
本発明に係るキットは、一酸化炭素源、還元剤、塩基および所望により安定化剤を含有する第一の容器と、ビスホスフィノアミン化合物を含有する第二の容器を必須の構成要素として含んでいる。第二の容器に配合されるビスホスフィノアミン化合物は、テクネチウム−99mトリカルボニル物との間で錯体を形成するものであれば良く、具体的には、本発明に係る錯体を構成するビスホスフィノアミン化合物と同じ物を用いることができる。
【0036】
第一の容器に配合される還元剤、塩基および安定化剤は、本発明に係る化合物の調製に用いられるものと同じものを用いることができる。一酸化炭素源としては、溶液中で一酸化炭素を発生し得る化合物を用いることが好ましく、例えばボラノ炭酸二ナトリウムを用いることができる。ボラノ炭酸二ナトリウムを用いることにより、第一の容器中に一酸化炭素源と還元剤を同時に配合することができる。
また、第一の容器および第二の容器としては、密封容器を用いることが望ましく、各容器に配合されるそれぞれの化合物は、凍結乾燥されたものを用いることが望ましい。
【0037】
第一の容器に配合される各化合物の量は、一度に処理するテクネチウム−99の量に応じて調整される。具体的には、本発明に係る錯体の合成と同様の量比にて用いられる。また、第二の容器に配合されるビスホスフィノアミン化合物の量は、第一の容器中で生成したテクネチウム−99mトリカルボニル物およびテクネチウム−99トリカルボニル物の全てが配位するのに十分な量であればよい。
以下、ジェネレータより溶出された過テクネチウム−99m酸溶液(総テクネチウムとして、10-10 mol相当を含有)1 mLを用いてテクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体を合成する場合を例にとって、本発明に係る放射性画像診断剤調製用キットについて説明する。
【0038】
まず、第一の容器中に、ボラノ炭酸二ナトリウム1.5 mg、四ホウ酸ナトリウム10水和物0.7 mg、酒石酸ナトリウム2水和物2.1 mgおよび炭酸ナトリウム1.8 mgを配合させる。ここに、ジェネレータより溶出された過テクネチウム−99m酸溶液(総テクネチウムとして、10-10 mol相当を含有)1 mLを添加し、反応させる。この反応は、20℃から100℃の間で行うことができ、75℃から100℃とすると、より早く反応が進行するため好ましい。
【0039】
第二の容器には、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン0.15 mgおよび0.5 mol/L塩酸120μLを配合し、凍結乾燥させる。これに生理的食塩液1.5 mLを添加し、うち1 mLを分取して前記第一の容器に添加し、錯体形成反応させてテクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体を得る。このとき、錯体形成反応は室温でも行うことが可能であるが、反応時間を短くする観点から、反応温度を高くすることが好ましい。例えば、テクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体を合成する場合は、100℃で15分間加熱するのが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0041】
[参考例]
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンの合成
【0042】
下記の要領に従って、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンの合成を行った。
【0043】
まず、下記、式(5)記載の合成スキームに従い、3−メトキシ−1−プロパノールの合成を行った。
オーブン乾燥させアルゴン置換した12L容のフラスコに、リチウムアルミニウムハイドライド(Aldrich製)78g(2.1 mol)と、ジエチルエーテル(Columbus Chem. Co.製、以下、「エーテル」とする)3Lを入れた。これに、メチル−3−メトキシプロピオネート(Aldrich製)424g(3.59 mol)を4時間かけて少量ずつ添加した。添加終了後、混合液を30分攪拌し、0℃に冷却した。水78 mLを少量ずつ注意深く添加して反応を終了させ、15 % 水酸化ナトリウム(Vopak, USA, Inc.製)溶液78 mLと、水234 mLを加えた。セライト200 gを、濾過除剤として加え、さらに室温で30分間攪拌した。
【0044】
得られた茶色の懸濁液を濾過し、さらに濾過物をエーテル500mLで洗い、溶出したエーテルを前記濾過における濾液と合わせた。このろ液を分液ロートに移し、静置分離させた後に水層を廃棄し、有機層を4 Lの三角フラスコに移した。無水硫酸マグネシウム(Vopak, USA, Inc.製)100 gをこのフラスコに加え、30分間攪拌した。フィルターを用いて無機塩を除去し、そのろ液をロータリーエバポレータ−を用いて濃縮して285 gの無色透明油状物を得た。これを室温下で減圧濃縮し、196 gの3−メトキシ−1−プロパノールを得た。
【0045】
【化16】

【0046】
次に、下記式(6)記載の合成スキームに従い、3−メトキシ−1−クロロプロパンの合成を行った。
乾燥、アルゴン置換した2 L容のフラスコに、上記工程にて合成した3−メトキシ−1−プロパノール196 g(2.17 mol)および、無水ピリジン(Aldrich製)176 mL(2.17 mol)を入れた。そのフラスコに、塩化チオニール(Bayer Corp.製)388 g(3.36 mol)を、反応液の温度が10から30℃に保たれる様に注意しながら、氷冷下で4時間かけて少量ずつ添加した。添加完了後、70℃で4時間過熱し、その後室温に戻した。
【0047】
この反応液に氷600 gおよび濃塩酸(Vopak USA, Inc.製)110 mLの混合物(懸濁液)を加え攪拌した。得られた二層性の液を、分液ロートに移し、有機層をフラスコに回収した。水層につき、エーテル300 mLを用いて抽出を行い、エーテル層を前記有機層と合わせた。この有機層を、5%炭酸カリウム(Aldrich性)溶液300mLで洗い、さらに炭酸カリウム100 gを用いて乾燥させた後、濾過を行った。ろ液につきロータリーエバポレータ−を用いた濃縮を行い、400 mLの黄色の液を得た。
これを常圧下、105から108℃の条件で蒸留し、166.5 gの無色透明の油状物として、3−メトキシ−1−クロロプロパンを得た。
【0048】
【化17】

【0049】
次に、下記式(7)記載の合成スキームに従い、テトラ−(1−メトキシプロピル)ジホスファンジスルフィドの合成を行った。
アルゴン置換した3 L容フラスコに、上記工程にて合成した3−メトキシ−1−クロロプロパン66 gおよび、削り状マグネシウム(Aldrich製)37.2 g(1.53 mol)を入れ、さらにエーテル1Lを加えた。これを室温下で10分間攪拌後、室温下で10分間放置した。このフラスコに、マグネシウムの表面を覆う程度の量のヨウ素の結晶(Aldrich製)を加えた。エーテルが沸騰を始めた後(約15分後)に、上記工程にて合成した3−メトキシ−1−クロロプロパン100 gを加えた。本工程にてグリニャール試薬を生成させた。
【0050】
別に、アルゴン下にて、塩化チオホスフォリル(Aldrich製)54 mL(0.54 mol)をエーテル363 mLに溶解させ、塩化チオホスフォリル溶液を調製した。上記グリニャール試薬の沸騰終了後、該グリニャール試薬を0℃に冷却し、前記塩化チオホスフォリル溶液を、1時間以上かけて少量ずつ添加した。このとき、この混合溶液の温度が0から5℃の間を保つように反応溶液の冷却を行った。添加が完了したら、反応容器を攪拌したまま室温まで加温し、反応液を2時間還流させた。その後、反応液を0℃に冷却した。
この反応溶液に、氷3.3 Lと硫酸(Fisher Scientific製)134 mLの混合物(懸濁液)を加え攪拌した。得られた二層性の液を室温下で一晩攪拌し、その後アルゴン下で分液ロートに移した。有機層を分取し、ロータリーエバポレータ−にて濃縮して無色透明の油状物として、テトラ−(1−メトキシプロピル)ジホスファンジスルフィド48 gを得た。
【0051】
【化18】

【0052】
次に、下記式(8)記載の合成スキームに従って、ジ−(3−メトキシプロピル)ホスフィンの合成を行った。
乾燥させアルゴン置換した2 L容のフラスコに、1 Mのリチウムアルミニウムハイドライド/テトラヒドロフラン溶液168 mL(168 mmol)を入れた。上記工程にて合成したテトラ−(1−メトキシプロピル)ジホスファンジスルフィドに、上記工程と同様の方法にて別に合成したテトラ−(1−メトキシプロピル)ジホスファンジスルフィドをあわせ、合計64 g(153 mmol)とし、これを脱気したテトラヒドロフラン375 mLに溶解させ、上記フラスコに攪拌しながら少量ずつ4時間以上かけて添加した。この溶液を、60℃で3時間還流した。
反応液を0℃に冷却し、強く攪拌しながら脱気した水6.4 mLを少量ずつ加えた。この反応液に、脱気した15 %水酸化ナトリウム溶液6.4 mLを加え、さらに脱気した水19.2 mLを加えた。攪拌を止め、反応液を室温、アルゴン下の条件で一晩静置した。この反応液に、脱気したエーテル500 mLおよび脱気した水500 mLを加え、30分攪拌した。その後、攪拌を止め、静置して層分離させた。上層の有機層を3 Lフラスコに移した。水層は、エーテル500 mLを用いて抽出し、エーテル層を前記フラスコ中の有機層に加えた。この有機層を硫酸ナトリウム(Fisher Science製)300 gで一晩乾燥させた後、ドライアイス/イソプロパノール充填冷却機にて冷却しながら減圧し、濃縮した。
反応物を100 mLフラスコに移し、0.4 mmHg、55〜60℃の条件で減圧乾燥して9.55 gの無色透明の油状物として、ジ−(3−メトキシプロピル)ホスフィンを得た。
【0053】
【化19】

【0054】
次いで、下記式(9)記載の合成スキームに従い、N−エトキシエチル−N,N−ジエタノールアミンの合成を行った。
乾燥しアルゴン置換した3 L容のフラスコに、無水エタノール(Tarr製)240 mL、炭酸カリウム276 g(1.97 mol)、ジエタノールアミン120 mL(1.14 mol)を入れた。これに、ブロモエチルエチルエーテル(Aldrich製)304 g(1.97 mol)を3時間かけて少量ずつ添加した。その後、この液をアルゴン下にて2日間還流させた。この液を0℃に冷却し、濾過した。濾過物をエタノールで洗い、濾液のエタノールを先の濾液と混合した。これをロータリーエバポレータ−にて濃縮し、800 gの黄色油状物を得た。
さらに、0.5 mmHg、125から127℃の条件で減圧蒸留し、121 gの黄色油状物を得た。この生成物をシリカゲル1 kgを充填したカラムにかけ、メタノール/ジクロロメタン(1:9)10 Lを用いて精製し、N−エトキシエチル−N,N−ジエタノールアミン60 gを得た。
【0055】
【化20】

【0056】
次いで、下記式(10)記載の合成スキームに従い、N,N−ジ−(2−クロロエチル)−N−エトキシエチルアミンの合成を行った。
乾燥し、アルゴン置換した1 L容のフラスコに、無水ピリジン25 mL(304 mmol)および上記工程にて合成したN−エトキシエチル−N,N−ジエタノールアミン27 g(152 mmol)を入れた。このフラスコを0℃に冷却し、塩化チオニル108.5 g(912 mmol)を、温度を0から10℃に保ちながら少量ずつ6時間以上かけて添加した。得られた粘性のある溶液を、アルゴン下、室温下、遮光条件下で、一晩攪拌した。
未反応の塩化チオニールを減圧蒸留にて取り除き、その後、反応液を0℃に冷却した。反応液に水200 mLを強く攪拌しながら少量ずつ加え、さらに10℃に保ちながら1時間攪拌した。その後、温度を-5℃に下げ、炭酸ナトリウム(Fisher Scientific製)40 gを強く攪拌しながら少量ずつ加えた。攪拌を、室温に戻るまで1時間続けた。エーテル400 mLを加えて攪拌を止め、得られた二層性の液を分液ロートに移した。この二層性の液から有機層を分取し、水層についてはエーテル200mLで抽出を行った。抽出に用いたエーテルを前記分取した有機層に加え、硫酸マグネシウム(Vopak USA, Inc.製)100 gを用いて乾燥させた。この有機層をろ過し、ろ液をトルエン 20 mLの存在下、ロータリーエバポレータ−にて濃縮し、37 gの黄色油状物を得た。
この反応液をシリカゲル400 g、ヘキサン/エーテル(5:1)3 Lでクロマトグラフ精製した。黄色または微黄色を呈した画分を回収し、ロータリーエバポレータ−を用いて濃縮した。これを室温下で減圧濃縮し、黄色透明の油状物としてN,N−ジ−(2−クロロエチル)−N−エトキシエチルアミン19 gを得た。
【0057】
【化21】

【0058】
最後に、下記式(11)記載の合成スキームに従い、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンを合成した。
500 mL容のフラスコをアルゴン置換し、上記工程にて合成したジ−(3−メトキシプロピル)ホスフィン9.5 g(53.3 mmol)および無水テトラヒドロフラン115 mLを加えた。n−ブチルリチウムをヘキサンに溶解して2.5 Mとした溶液23.4 mL(58.6 mmol)を4時間以上かけて少量ずつ添加した。反応容器を0℃に冷却し、上記工程にて合成したN,N−ジ−(2−クロロエチル)−N−エトキシエチルアミン5.7 g(26.7 mmol)を無水テトラヒドロフラン10 mLに溶解した液を、3時間以上かけて少量ずつ添加した。この反応溶液を室温下で一晩攪拌した。
【0059】
脱気した冷水40 mLを上記反応液に少量ずつ加えた。さらに脱気したエーテル100 mLを加え、得られた二層性の液を分液ロートに移した。水層および有機層をアルゴン下でそれぞれ分取した。水層につき、エーテル30 mLで抽出を行い、エーテル層を前記有機層に加えた。この混合した有機層につき、硫酸ナトリウム20 gで乾燥させ、アルゴン下で濾過した。ろ液につきロータリーエバポレータ−にて濃縮し、さらに、攪拌しながら一晩減圧して12.17 gの微黄色油状物を得た。この化合物につき、下記の条件にてHPLC分析を行い、面積%を求めてHPLC純度とした。HPLC純度は90%であった。
この合成物をシリカゲルクロマトグラフ(bed volume 150 mL)にかけ、非極性不純物を、ヘキサン/エーテル(1:1)2 Lで洗い出した。その後、目的物を5 %メタノール/ジクロロメタン溶液で溶出した。溶出液を濃縮し、10 gの微黄色油状物を得た。この化合物につき、さらに同様の条件にてシリカゲルクロマトグラフ精製を行い、HPLC純度95.3 %のビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン5gを得た。なお本化合物は、使用まで、アルゴン下(−30℃)で保存した。
【0060】
【化22】

【0061】
HPLC分析条件
使用カラム Kaseisorb LC ODS 300-5(製品名、東京化成工業株式会社製), 4.6mm×15cm
流速 1.0mL/min
検出 紫外可視吸光光度計(検出波長:210nm)
【0062】
合成したビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンにつき、1H NMR測定、質量分析、元素分析(C、H、N、P、O:各%オーダー)を行い、目的化合物が合成されていることを確認した。各測定の結果を以下に示す。
【0063】
1H-NMR(500MHz,CDCl3,δ)
【0064】
1.19(3H, s, 1), 3.48(4H, m, 2,3), 2.65(6H, m, 4,5), 1.56(4H, m, 6), 1.45(8H, m, 7), 1.68(8H, m, 8), 3.41(8H, t, 9), 3.33(12H, s, 10)。
なお、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンの1H-NMRによる解析においては、炭素に下記式(12)のとおり番号を付けた。
【0065】
【化23】

【0066】
質量分析
測定法:ESI(+)−TOF
理論値:[M+H]+ 498
実験値:m/z 498, 306, 205, 177(フラグメントは下記式(13)のとおり)
【0067】
【化24】

【0068】
元素分析:C、H、N、P(各%オーダー)
【0069】
【表1】

【0070】
[比較例1]
テクネチウム−99m窒化物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン−ジエトキシエチルジチオカルバメイト錯体(以下、「99mTcN-PNP5」という)の合成
【0071】
体内動態測定およびFPEF測定における比較例取得に供する目的で、下記の要領にて99mTcN-PNP5の調製を行った。
塩化スズ (無水) 0.1mg(ナカライテスクLot.VIP5014)、コハク酸ジヒドラジド(SDH)再結晶品 1mg(アルドリッチLot.00229EQ)およびエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2水和物1mg(同仁化学:Lot.KKO78)を生理食塩液0.1mLに溶解させ、過テクネチウム−99m酸(99mTcO4-)溶液を、体内動態測定用は1.5 mL(放射能濃度:3754 MBq/mL)、FPEF測定用は3.2 mL(放射能濃度:2945 MBq/mL)加え、室温で15分放置した。この際、0.1 mol/L水酸化ナトリウム20μLを添加して、pHを約6.5に調製した。(この液を、「99mTcN中間体溶液」とした)。この99mTcN中間体溶液に、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン4mg/mL溶液(可溶化剤として、ガンマシクロデキストリン(和光:Lot.LDK1242)を4mg/mLの濃度で含有)およびジエトキシエチルジチオカルバメイト(DBODC) 4mg/mL溶液をそれぞれ0.5mLずつ加え、さらに0.1 mol/L水酸化ナトリウムを20μL添加してpHを約9に調製した。この溶液を100℃で15分加熱して99mTcN-PNP5溶液を調製した。この99mTcN-PNP5溶液をSep-Pak(登録商標、ウォターズ・インヴェストメンツ・リミテッド)C18カートリッジ(商品名、日本ウォーターズ株式会社製)に通し、99mTcN-PNP5をカラムに吸着させ、水および80%エタノール溶液で洗浄した。その後、0.1 mol/Lテトラブチルアンモニウムブロマイド溶液/エタノール(10/90)で溶出し、溶出液に生理食塩液を加えてエタノール濃度が10%となるように調整した。最終的に得られた溶液の放射能濃度は、体内動態測定用については350 MBq/mL、FPEF測定用については493 MBq/mLであった。
調製した99mTcN-PNP5につき、以下の条件でTLC分析を行い、ピークの面積%を求めて放射化学的純度とした。放射化学的純度純度は体内動態測定用については94.4 %、FPEF測定用については95.2 %であった。
【0072】
TLC条件:
TLCプレート:シリカゲル60(製品名、Merck社製)
展開相:エタノール/クロロホルム/トルエン/0.5M酢酸アンモニウム=5/3/3/0.5
展開長:10 cm
検出器:ラジオクロマトグラムスキャナ(アロカ株式会社製、PS‐201型)
【0073】
[比較例2]
111In-DTPA-HSAの合成
【0074】
ジエチレントリアミン五酢酸結合ヒト血清アルブミン10mgを、0.1mol/Lクエン酸溶液(pH5.9)0.5mLに溶解した。この溶液0.2mLと塩化インジウム−111(調製時放射能濃度:354.4〜563.7 MBq/mL) 0.15mLとを混合し、111In-DTPA-HSAを調製した。
【0075】
[実施例1]
テクネチウムトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体(FPEF測定用)の合成
【0076】
四ホウ酸ナトリウム10水和物2.8 mg、酒石酸ナトリウム2水和物8.5 mgおよび炭酸ナトリウム7.3mgを生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム水溶液)2mLに溶解させた液1 mLを、ボラノ炭酸二ナトリウム2.3mgに加えた。この液に、過テクネチウム−99m酸(99mTcO4-)溶液(放射能濃度:2334MBq /mL)2 mLを加え、100℃で22分加熱した(この液を、「テクネチウム−99mトリカルボニル物溶液」とした)。
【0077】
別に、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン4mg/mL溶液0.05mLに、生理食塩液0.79 mL及び0.5mol/L塩酸0.16 mLを加えた液を調製した。この液0.5mLに、上で調製したテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液1.5 mLを加えて100℃で15分加熱し、テクネチウム−99mトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体(以下、「99mTc(CO)3PNP5」とする)を合成した。得られた99mTc(CO)3PNP5の放射能濃度は、1060 MBq/mLであった。
【0078】
得られたテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液および99mTc(CO)3PNP5につき、下記の条件にてTLC分析を行った。その結果、Rf値はテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液における0.38から99mTc(CO)3PNP5では0.50に変化し、テクネチウム−99mトリカルボニル物がビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンとの間で錯体を形成していることが確認された。前記TLC分析の結果より99mTc(CO)3PNP5ピークの面積%を求め、放射化学的純度とした。得られた99mTc(CO)3PNP5の放射化学的純度は、88.7%であった。また、溶液のpHは7.17であった。
【0079】
TLC分析条件:
TLCプレート:シリカゲル60(製品名、Merck社製)
展開相:メタノール/濃塩酸=99/1
展開長:10 cm
検出器:ラジオクロマトグラムスキャナ(アロカ株式会社製、形式:PS‐201型)
【0080】
[実施例2]
テクネチウムトリカルボニル物−ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン錯体(ラット体内動態測定用)の合成
【0081】
四ホウ酸ナトリウム10水和物2.8 mg、酒石酸ナトリウム2水和物8.5 mgおよび炭酸ナトリウム7.2mgを生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム水溶液)3 mLに溶解させた液1.5 mLを、ボラノ炭酸二ナトリウム 2.3mgに加えた。この液に、過テクネチウム−99m酸(99mTcO4-)溶液(放射能濃度:2162MBq/mL)0.5 mLを加え、100℃で20分加熱した(この液を、「テクネチウム−99mトリカルボニル物溶液」とした)。
別に、ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン4mg/mL溶液0.025mLに、生理食塩液0.87 mL、0.5mol/L塩酸0.08 mLを加えた液を調製した。この溶液に、上で調製したテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液1mLを加え100℃で15分加熱し、99mTc(CO)3PNP5を合成した。得られた99mTc(CO)3PNP5の放射能濃度は、243.5 MBq/mLであった。
【0082】
得られたテクネチウム−99mトリカルボニル物溶液および99mTc(CO)3PNP5につき、実施例1と同様の条件でのTLC分析を行い、テクネチウム−99mトリカルボニル物がビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンとの間で錯体を形成していることを確認した。また、TLC分析の結果から、99mTc(CO)3PNP5におけるピークの面積%の値を求め、放射化学的純度とした。得られた99mTc(CO)3PNP5の放射化学的純度は、90.1%であった。また、溶液のpHの値は6.56であった。
【0083】
[実施例3、比較例3〜6]
ラット体内分布の測定
【0084】
ラット(SD系、メス、9週齢)に、ケタミンおよびキシラジンを、ラットの体重に対し、それぞれ80 mg/kgおよび19 mg/kgとなるように腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入45分後に、99mTc(CO)3PNP5 0.1 mL(使用時放射能濃度:217.2MBq/mL)をラット尾静脈より投与した。投与後2分後および60分後に、ラットの腹大動脈より採血して安楽死させ、臓器を摘出した。摘出後に各臓器重量および放射能を測定した。放射能の測定は、シングルチャンネルアナライザ(応用光研工業株式会社製、形式:701-1C)を用いた。放射能の測定値を用い、下記数式(I)に従って、各臓器の集積率(%ID/g)を算出した。また、各臓器について求めた集積率の値を用い、集積率の心臓/肺比および心臓/肝臓比を算出した(実施例3)。測定は4回繰り返し行った。
【0085】
【数1】

【0086】
また、比較として、上記と同様の条件にて、99mTcN-PNP5(使用時濃度287.1MBq/mL)、MIBI(第一ラジオアイソトープ研究所製、ロット番号214、検定時300MBq/mL)(使用時濃度:385.2 MBq/mL)、テトロフォスミン(日本メジフィジックス株式会社製、ロット番号TMV-C2085、検定時592MBq/mL)(使用時濃度851.3MBq/mL)および塩化タリウム−201注射液(商品名、日本メジフィジックス株式会社製、ロット番号2104、検定時74MBq/mL)(使用時濃度76MBq/mL)を、それぞれラット尾静脈より投与し、各臓器の集積率(%ID/g)を算出した(それぞれ、比較例3、4、5、6)。それぞれの製剤の投与量は、99mTcN-PNP5は0.1mL、MIBIおよび塩化タリウム−201注射液は0.05mL、テトロフォスミンは0.025mLとした。また、測定は各製剤ともに5回繰り返し行った。
【0087】
結果を、表2に示す。99mTc(CO)3PNP5の心筋集積率(%ID/g)の値(実施例3)は、2分点、60分点ともに、他のテクネチウム製剤(比較例3〜5)と同等以上の値を示していた。この結果より、99mTc(CO)3PNP5は、他のテクネチウム製剤同様、心筋への高い集積を示すことが確認された。99mTc(CO)3PNP5における集積率の心臓/肺比および心臓/肝臓比の値は、特に60分点において、他の心筋血流製剤(比較例3〜6)と比較して、最も高い値を示していた。この結果より、99mTc(CO)3PNP5は、肺および肝臓からのクリアランスが早いことが示された。
【0088】
【表2】

【0089】
[実施例4、比較例7〜10]
ラット摘出還流心臓を用いたFPEFの測定
【0090】
ラット(SD系、オス、13〜15週齢)に、ヘパリン0.5 mLを腹腔内投与し、次いでチオペンタール2 mL/kgを腹腔内投与することにより、麻酔を導入した。その後、開胸して心臓を摘出し、自作の灌流装置(図1参照)に装着した。
別に、上記と別のラットの血液を採取し、血液100mLに対してヘパリン5mLを加えて灌流液調製用の血液とした。さらに、灌流液調製用血液と5 mmol/L 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(以下、HEPES緩衝液とする)を混合してヘマトクリット値が20 %となるように調整した液を調製し、灌流用血液とした。また、上記灌流用血液に、99mTc(CO)3PNP5、111In-DTPA-HSAおよび塩化タリウム−201を、それぞれ放射能濃度が110〜120 MBq/mL、18〜19 MBq/mL、110〜120 MBq/mLとなるように混合した液を調製し、99mTc(CO)3PNP5投与液とした。
図1に示されるように、上記灌流装置は、灌流液を灌流心臓9の大動脈に供給し、該灌流心臓9の冠循環血液を肺動脈からサンプリングできるように構成されている。具体的には、灌流液は、酸素ボンベ(図示せず)から導管1を介して酸素ガスが供給されている灌流液容器13からポンプ3により送液ライン2を介して灌流心臓9に供給される。送液ライン2には、ポンプ3と灌流心臓9との間にフィルター4及びエアートラップ5が設けられており、灌流液中の異物およびエアーを除去するようにされている。また、送液ライン2には、エアートラップ5と灌流心臓9との間に、灌流圧測定装置7が接続され、実験中の灌流圧をモニターすることができるようにされている。また、送液ライン2には、灌流圧測定装置7と灌流心臓9との間に、投与液注入口8が設けられており、そこから投与液を送液ライン2に注入できる。また、灌流心臓9には、心拍を一定に保つ目的で、心臓のペーシング装置6が接続されている。そして、灌流心臓9の肺動脈にカテーテル10を接続することにより、冠循環血液をサンプル容器11にサンプリングすることができる。なお、灌流液の逆流を防ぐために、灌流心臓9の心尖部にニードル(21ゲージ)で穴を空け、心臓の下方に廃液溜め12を設置した。
【0091】
灌流液を5 mmol/L HEPES緩衝液として流速2 mL/分で灌流を行い、心臓に付着していた他の臓器(肺等)の断片等を除去した。その後、流速を4 mL/分とし、肺動脈に冠循環血液採取用のカテーテル10を挿入し、血液を取り出した。その後、肺静脈を結紮し、灌流液を上記灌流用血液に交換した後、流速を1 mL/分に設定した。その後、冠循環血液流量が約1 mL/分/gとなるように灌流装置の流速を調節した。灌流液を上記灌流用血液に交換してから約30分後、上記99mTc(CO)3PNP5投与液0.1 mLを投与液注入口8から送液ライン2に直接投与し、投与約10秒後から50秒後にかけ、サンプル容器11に冠循環血液を1滴ずつ採取した。その後、1分後まで5秒ずつ、1分後から2分後までは10秒ずつ、3分後から5分後までは15秒ずつ冠循環血液を採取した。採取した冠循環血液につき、ガンマ線スペクトリメータ(EG&G ORTEC社製、形式:GMX-10180-P)を用いてインジウム−111、タリウム−201およびテクネチウム−99mの放射能を同時に測定した。下記式(II)および(III)を用い、99mTc(CO)3PNP5およびタリウム−201の抽出率E(t)をそれぞれ求めた。99mTc(CO)3PNP5およびタリウム−201のそれぞれにつき、111In-DTPA-HSAのh(t)がピークに達する時間以前で最も高いE(t)を求め、FPEFとした(実施例4および比較例10)。測定は、6回繰り返し行った。
【0092】
【数2】

【0093】
また、99mTc(CO)3PNP5の代わりに、99mTcN-PNP5(使用時濃度409.1MBq/mL)、MIBI(第一ラジオアイソトープ研究所製凍結乾燥キット(ロット番号304)を用いて調製、調製時:1160Bq/mL) (99mTcO4-溶出時濃度:1242.6MBq/mL、使用時濃度955.4MBq/mL)、テトロフォスミン(日本メジフィジックス株式会社製、ロット番号TMV-C4253、検定時592MBq/mL)(使用時濃度733.9MBq/mL)を用い、99mTc(CO)3PNP5投与液(実施例4)と同様の要領にて投与液を調製し、それぞれ99mTcN-PNP5投与液(比較例7)、MIBI投与液(比較例8)およびテトロフォスミン投与液(比較例9)とした。なお、各投与液中の放射性テクネチウム化合物の放射能濃度は、99mTcN-PNP5投与液およびMIBI投与液については110〜120 MBq/mL、テトロフォスミン投与液については89〜97 MBq/mLとした。各投与液0.1 mLを用い、実施例4と同様の方法にて実験を行い、冠循環血液の放射能の測定を行って、FPEFを求めた(比較例7〜9)。測定は、99mTcN-PNP5投与液については4回、その他の投与液については5回繰り返し行った。
【0094】
結果を、表3に示す。99mTc(CO)3PNP5のFPEFは、99mTcN-PNP5およびテトロフォスミンより高く(P<0.05)、MIBIと同等以上の値であった。
以上の結果より、99mTc(CO)3PNP5は、MIBI同様の高いFPEFを有していることが示された。
【0095】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係るテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体及び本発明に係るキットは、種々の疾患の画像診断剤として用いることができ、特に、SPECT画像における心臓/肝臓比および心臓/肺比が高く、かつ、FPEFが高いため、腫瘍診断剤および心筋血流診断剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】初回循環抽出率測定用の装置を示す図。
【符号の説明】
【0098】
1 導管
2 送液ライン
3 ポンプ
4 フィルター
5 エアートラップ
6 心臓のペーシング装置
7 灌流圧測定装置
8 投与液注入口
9 灌流心臓
10 カテーテル
11 サンプル容器
12 廃液溜め
13 灌流液容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクネチウム−99mトリカルボニル物に、ビスホスフィノアミン化合物が配位した、下記式(1):
【化1】

(式(1)において、99mTc(CO)3はテクネチウム−99mトリカルボニル物、Lはビスホスフィノアミン化合物を示す)で表されるテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体。
【請求項2】
ビスホスフィノアミン化合物Lが、下記式(2):
【化2】

(式(2)において、R1、R1’、R1’’およびR1’’’は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、下記式(3):
【化3】

(式(3)において、lは0≦l≦4、l’は0≦l’≦3の整数を示す)で表される基、または下記式(4):
【化4】

(式(4)において、mは0≦m≦4、m’は0≦m’≦4、m’’は0≦m’’≦3の整数を示す)で表される基であり、R2は水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アミノ基、前記式(3)で表される基または前記式(4)で表される基を示す)で表される請求項1記載のテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体。
【請求項3】
ビスホスフィノアミン化合物Lが、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)ブチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アセトニルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
ビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメチルホスフィノエチル)メチルアミン、
およびビス(ジプロポキシメチルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれる請求項1または2に記載のテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体。
【請求項4】
ビスホスフィノアミン化合物Lが、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
およびビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれる請求項3に記載のテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体。
【請求項5】
テクネチウム−99mトリカルボニル物に、ビスホスフィノアミン化合物が配位した、下記式(1):
【化5】

(式(1)において、99mTc(CO)3はテクネチウム−99mトリカルボニル物、Lはビスホスフィノアミン化合物を示す)で表されるテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体を含むことを特徴とする、放射性画像診断剤。
【請求項6】
ビスホスフィノアミン化合物Lが、下記式(2):
【化6】

(式(2)において、R1、R1’、R1’’およびR1’’’は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、下記式(3):
【化7】

(式(3)において、lは0≦l≦4、l’は0≦l’≦3の整数を示す)で表される基、または下記式(4):
【化8】

(式(4)において、mは0≦m≦4、m’は0≦m’≦4、m’’は0≦m’’≦3の整数を示す)で表される基であり、R2は水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アミノ基、前記式(3)で表される基または前記式(4)で表される基を示す)で表されるテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体を含むことを特徴とする、請求項5記載の放射性画像診断剤。
【請求項7】
ビスホスフィノアミン化合物Lが、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)ブチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アセトニルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
ビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメチルホスフィノエチル)メチルアミン、
およびビス(ジプロポキシメチルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれるテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体を含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の放射性画像診断剤。
【請求項8】
ビスホスフィノアミン化合物Lが、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
およびビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれるテクネチウム−99mトリカルボニル物錯体を含むことを特徴とする、請求項7記載の放射性画像診断剤。
【請求項9】
一酸化炭素源、還元剤及び塩基を含有する第一の容器と、ビスホスフィノアミン化合物を含有する第二の容器を含むことを特徴とする、放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項10】
前記第一の容器がさらに安定化剤を含有したものである、請求項9記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項11】
塩基が、無機塩である、請求項9または10に記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項12】
塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選ばれたものである、請求項11記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項13】
還元剤が、水素化ホウ素アニオン、及び、水素化ホウ素アニオンであって該アニオンを構成する水素原子の3つまでが不活性置換基で置換されている置換水素化ホウ素アニオンからなる群より選ばれたものである、請求項9ないし12のいずれかに記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項14】
前記水素化ホウ素アニオンが、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、及び水素化ホウ素亜鉛からなる群より選択された塩により誘導されたものである、請求項13に記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項15】
塩基の還元剤に対するモル比が0.1から2の間である、請求項9から14のいずれかに記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項16】
ビスホスフィノアミン化合物が、下記式(2):
【化7】

(式(2)において、R1、R1’、R1’’およびR1’’’は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、下記式(3):
【化10】

(式(3)において、lは0≦l≦4、l’は0≦l’≦3の整数を示す)で表される基、または下記式(4):
【化11】

(式(4)において、mは0≦m≦4、m’は0≦m’≦4、m’’は0≦m’’≦3の整数を示す)で表される基であり、R2は水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アミノ基、前記式(3)で表される基または前記式(4)で表される基を示す)で表される化合物である、請求項9から15のいずれかに記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項17】
ビスホスフィノアミン化合物が、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)ブチルアミン、
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)アセトニルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシメチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)アミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)メチルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
ビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)エチルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)プロピルアミン、
ビス(ジエトキシエチルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメチルホスフィノエチル)メチルアミン、
およびビス(ジプロポキシメチルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれたものであることを特徴とする、請求項16記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項18】
ビスホスフィノアミン化合物が、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、
ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、
およびビス(ジエトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミンからなる群より選ばれたものであることを特徴とする、請求項17記載の放射性画像診断剤調製用キット。
【請求項19】
容器の内容物が凍結乾燥されている、請求項9ないし18に記載の放射性画像診断剤調製用キット。


【図1】
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【公開番号】特開2008−37752(P2008−37752A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336544(P2004−336544)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】