説明

新規方法

DNAコンストラクトと宿主細胞との組合せを含めた新規生物を開示する。上記生物は、dUMPをdTMPに変換するための単一炭素単位の供給を促進する酵素をコードするDNA配列を含む転写ユニット(例えばオペロン)を含む。例には、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、例えばT4 frd;セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えばglyA;3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素遺伝子、例えばserA;およびTHFシンターゼ遺伝子、例えばADE3が含まれる。上記生物は、ウリジンレベルの有意な低下を伴う、チミジンを産生する生物学的方法で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチミジンの生物生産に関する。より詳細には、本発明は、遺伝子操作された生体物質を利用する方法に関する。遺伝子操作されたその生体物質には、細菌などのチミジン産生生物、または1種もしく複数のDNAコンストラクト、例えばプラスミドが含まれうる。それは、適した宿主細胞との組合せにおいて、適切な培地中で培養した場合、チミジンの生物生産をもたらすであろう。
【背景技術】
【0002】
ピリミジンデオキシリボヌクレオシドのチミジンは医薬品中間体として有用である。それは、ジドブジンまたはアジドチミジンとしても知られているAZTの化学合成にとりわけ重要である。これは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)クラスの抗レトロウイルス薬であり、Retrovirという商標で、HIV感染症の治療に認可された最初の薬物であった。
【0003】
HIV/エイズは、通常、3種以上の抗レトロウイルス薬の組合せを用いて治療する(De Clercq、Med.Chem.Res.13:439−478、2004年)。AZTは、併用療法の主要成分としての重要かつ広範な役割を有し、Retrovir、Zidovir、Viro−Z、Aviro−Z、およびZido−Hを含めた様々な商標で販売されている。
【0004】
AZTは、NRTI薬物である3TC(ラミブジン)と併用した際にとりわけ価値が大きい。これらの2種の薬物は、CombivirおよびDuovirという商標で、単一の丸薬に処方されて利用可能である。AZT、3TC、およびアバカビルという3種のNRTIの組合せは、Trizivirという商標で販売されている。AZTと併用される他のNRTI薬物には、ジダノシン、エムトリシタビン、およびザルシタビンが含まれる。
【0005】
AZTは、アンプレナビル、アタザナビル、インジナビル、リトナビル、およびサキナビルを含めたHIVプロテアーゼ阻害剤薬との併用、ならびにデラビルジン、エファビレンツ、およびネビラピンを含めた非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)との併用にも有用である。
【0006】
AZTは、妊娠中の使用が認可されている唯一の抗HIV薬である(Lyallら、HIV Med.2:314−334、2001年)。1997年には、母子感染によって罹患したエイズによって約60万人の小児が死亡した。妊娠最終三カ月間に摂取したAZTは、ウイルス伝播の危険性を67%低減しうる(MitchlaおよびSharland、Expert Opin.Pharmacother.1:239−248、2000年)。
【0007】
発酵技法は、AZT製造に必要な多量のチミジンを商用に調製するための、化学合成に代わる魅力的な代替手段である。発酵法は、抗生物質、アミノ酸、およびビタミンなどの生体分子を大規模かつ比較的低コストで生産する手段として工業的に定着している(AtkinsonおよびMavituna、「Biochemical Engineering and Biotechnology Handbook」、第2版、米国ニューヨーク(New York)所在、Stockton Press社、1991年)。
【0008】
しかし、チミジンは通常、「遊離した」形態では天然に存在せず、一リン酸のチミジル酸として産生され、三リン酸としてDNAに組み込まれる。生体系は、天然には有意な量のチミジンを産生せず、それゆえ、変異体または改変生物(engineered organism)が必要である。
【0009】
欧州特許第0344937号では、好気培養でのチミジン産生用に選択されたブレビバクテリウム属の株が開示されている。日本特許公報昭39−16345号も参照している。これは、チミジンを含有する多糖の発酵生産におけるバシラス・サチリスの突然変異株の使用を教示するものである。
【0010】
米国特許第5213972号(McCandlissおよびAnderson)では、チミジンおよび2’−デオキシウリジンなどのピリミジンデオキシリボヌクレオシド(PdN)を生産する方法が開示されている。この特許の全内容を参照により本明細書に組み込み、読者がそれを参照するように明確に示す。PdN一リン酸をPdNに変換するPdNホスホヒドロラーゼをコードするDNA配列を組み込み、発現する、複製可能な微生物が教示されている。
【0011】
より詳細には、同上のMcCandlissおよびAndersonは、バシラス・サチリスバクテリオファージPBS1由来のデオキシチミジル酸ホスホヒドロラーゼ(dTMPアーゼ)の発現を用いた、チミジンの生産に使用できる発酵法について記載している。この型の酵素は、天然で、チミジンの代わりに2’−デオキシウリジンまたは5−ヒドロキシメチル−2’−デオキシウリジンなどのPdNをそれらのDNAに組み込むバクテリオファージによって発現されることが見出されている。
【0012】
米国特許第5213972号に記載のチミジン発酵では、チミジンが蓄積するように、チミジンを分解する酵素(チミジンホスホリラーゼおよびウリジンホスホリラーゼ)が変異によって除去されている。したがって、dTMPアーゼ酵素の使用は、チミジン合成を可能にする経路を生成する助けとなる。しかし、dTMPアーゼのみの発現では、商業的に実用的なレベルのチミジン生産が保証されない可能性がある。
【0013】
国際公開第01/02580号では、dTMPアーゼを発現する細胞によるチミジンの産生増大をもたらす改良が記載されている。この公開の全内容も参照により本明細書に組み込み、読者がそれを参照するように明確に示す。
【0014】
しかし、生物学的に産生されるチミジンの製造における問題は、発酵法において、2’−デオキシウリジン(UdR)が同時に産生されることにある。これら2種の分子は類似した特性を有し、構造は単一のメチル基が相違しており、後処理プロセス中の分離は困難かつ高価である。AZT合成などの医薬用途では、UdRのレベルが低い高純度チミジンが必要となりうる。
【0015】
発酵によって生物学的に産生されたチミジンが、現行の方法と比較して有意に低いレベルのUdRを与えるならば、それによって、この物質を除去するために下流の精製を行う必要性が最小限となるか、またはなくなり、有益であろう。
【0016】
有意に低いとは、発酵チミジン産物中における、UdRの(混入)レベルが25%未満、より好ましくははるかに10%未満、より好ましくははるかに5%未満、さらに4%、3%、および2%を経て、1%およびそれ未満のレベルまでを構成することを意味する。
【0017】
理想的には、「高」レベルのチミジンを達成するべきである。チミジンのレベルは、「比生産速度」の値として示すことができ、その際、この尺度は、誘導の4〜6時間後に測定する。5mg TdR/l/時間/g乾細胞重量を超えるレベル、より特定すれば10mg TdR/l/時間/g乾細胞重量を超えるレベル、より好ましくは、15を超え、20および25を経た値の比生産速度が好ましい。
【0018】
これらのレベルは、上述した低いレベルのUdRで得られることが最も好ましく、それゆえ、例えば5%未満のUdRを含有して、例えば5g/lのTdR滴定濃度が得られるように、そうした数値を組み合わせることができる。
【0019】
実際、国際公開第01/02580号に開示されている通り、宿主株CMG2451でプラスミドpCG532を用いる従来技術の方法は、振とうフラスコ試験で、34.5%という平均UdR含量を産生する。そのような高レベルでは、UdRからチミジンを分離する後処理プロセスは困難かつ高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の一目的は、UdRの有意な同時産生を伴わずにチミジンを産生するように、チミジン産生生物を改変することである。
【0021】
本明細書で使用される場合、「生物」という用語には、その染色体中にコードされているDNA(例えば、欧州特許第0344937号に開示の通り)またはそれを宿主とするDNA(例えば米国特許第5213972号および国際公開第01/02580号に開示の通り)の発現を介してチミジンを産生できる生物が含まれる。この宿主DNAは、例えば1または複数種のプラスミドなど、1または複数種のDNAコンストラクトとして存在しうる。
【0022】
特に、国際公開第01/02580号に開示されたコンストラクト/宿主の組合せと比較した際、産生されるチミジンの品質の改良を提供することが、一目的である。
【0023】
コンストラクトを宿主細胞に導入し、その組合せを培養した際に、コンストラクトが存在しない場合には宿主が増殖できない、すなわち、コンストラクトが失われればその生物が死滅するように、コンストラクトに加えられる任意の遺伝子改変が安定であることを確実にすることが、別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
予想外なことに、チミジンの産生には重要な律速工程があり、それはdUMPからdTMPへの変換の近辺に存在するため、dUMPは同時にUdRの産生へと誘導しうることが見出された。この制限は、この変換反応を触媒する酵素であるチミジル酸シンターゼを単純に過剰発現することでは解除できない。しかし、即時供給できるドナーメチル基の供給源の利用性を確実にすることによって、本出願人は、混入しているUdRのレベルを有意に低減させて(約35%から5%未満まで、場合によっては1%未満まで)チミジンを産生できると判定した。
【0025】
本発明の第1の態様によると、DNAまたは増殖に必要なある種の染色体外DNAに対して、1つまたは複数の遺伝子改変を含む、培地中で増殖させた際にチミジンを産生できる生物であって、dUMPからdTMPに変換するための単一炭素単位の利用性を増大させる1つまたは複数の遺伝子改変の結果、UdRに代わってTdRを優先的に生成するチミジン生合成経路をもたらす1つまたは複数の遺伝子改変を含むことを特徴とする生物が提供される。
【0026】
上記1つまたは複数の改変は、チミジル酸シンターゼがdUMPをdTMPに変換するのに利用可能な5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸(CH−THF)の量を増大させる改変であることが好ましい。CH−THFは、知られている両クラスのチミジル酸シンターゼ(EC2.1.1.45およびEC2.1.1.148)に共通の一炭素単位ドナーである。これら2種の酵素によって触媒される反応を図2で比較する。
【0027】
多くの場合、ドナー分子のメチレン基をメチル基に還元するのに必要な水素原子は、CH−THFそれ自体によって提供され、それゆえ、dUMPからdTMPへの変換は、CH−THFからジヒドロ葉酸(DHF)への同時変換を必要とする。この型の酵素は、EC2.1.1.45と指定され、例えば、イー・コリ(E.coli)のthyA遺伝子またはバクテリオファージT4のtd遺伝子によってコードされている。
【0028】
EC2.1.1.148に指定されており、例えば、ヘリコバクター・ピロリのthyX遺伝子によってコードされている、この酵素のもう一方の型では、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)などのフラビンヌクレオチドの還元型によって2原子の水素原子が提供される。この場合、チミジル酸シンターゼ反応において、CH−THFがテトラヒドロ葉酸(THF)に、そしてFADHがFADに変換される(Myllykallio,H.ら、Science 297:105−107、2002年)。
【0029】
通常、CH−THFは、THFに一炭素単位を転移させることによって再生される。EC2.1.1.45チミジル酸シンターゼを利用する生物では、最初の工程として、例えばイー・コリfolA遺伝子またはT4 frd遺伝子によって発現される、ジヒドロ葉酸還元酵素(EC1.1.5.3)の作用によるDHFからTHFへの変換がなければならない。EC2.1.1.148型のチミジル酸シンターゼでは、この工程は必要ない。
【0030】
THFからCH−THFを生成する主要な代謝経路は、糖質代謝における中間体である3−ホスホグリセリン酸から開始して、アミノ酸であるセリンおよびグリシンを介する経路である。このセリン−グリシン−C1経路を図3に示す。最初に遂行される工程は、例えばイー・コリのserA遺伝子によってコードされているホスホグリセリン酸脱水素酵素の作用による3−ホスホヒドロキシピルビン酸の生成である。
【0031】
CH−THFはこの経路における2つの工程で生成される。第1は、例えばイー・コリglyAの遺伝子によってコードされているセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼの作用によるL−セリンからグリシンへの変換である。第2は、少なくとも4つの遺伝子の産物であるグリシン開裂酵素複合体によるグリシンから二酸化炭素およびアンモニアへの変換である。
【0032】
多くの生物で、CH−THFは、図4に示す通り、炭素原子を得るのにギ酸を用いた3つの工程でもTHFから生成することができる。ギ酸は、中心的な代謝中間体であるピルビン酸から得ることができる。真核生物では、必要とされる3種の酵素活性が、例えば酵母サッカロミセス・セレビジエのADE3遺伝子にコードされている単一の3機能タンパク質に存在しうる。
【0033】
チミジン産生生物における染色体または染色体外DNAの、CH−THFの利用性を促進する遺伝子改変は、UdRのレベルが有意に低減した、良い収率のチミジン産生をもたらした。この型の遺伝子改変は、米国特許第5213972号および国際公開第01/02580号に教示されている遺伝子操作を用いて、PdNの総産生が増大している場合、その結果生じうるUdRの増大を逆に戻すのに使用することができ、それによって、UdR不純物の許容できない増大をもたらさずに、歩留りの改善を可能にする。
【0034】
必須ではないが、好ましくは上記生物は細菌であり、より好ましくはイー・コリである。しかし、従来技術文献に開示され、以前に同定されているブレビバクテリウム種およびバシラス種、ならびに他のチミジン産生生物、例えば細菌コリネバクテリウムまたは酵母を、記載の発明に従って選択および改変することができよう。チミジン産生生物において、CH−THFの利用性を増大させうる様々な方式があること、およびそれぞれの場合で最も有効な方式は、その生物の遺伝的背景に依存すると見込まれることが理解されよう。
【0035】
上記生物は、好ましくは、例えばtdまたはthyA遺伝子によってコードされたチミジル酸シンターゼと、例えばdTMPアーゼの遺伝子によってコードされた、例えばデオキシチミジル酸ホスホヒドロラーゼなど、dTMPからのチミジンの産生を引き起こす1つまたは複数の遺伝子とを過剰発現できる転写ユニット(染色体性のものでも染色体外のものでもよい)も含むであろう。
【0036】
好ましい実施形態では、チミジル酸シンターゼが、DHFを生成するEC2.1.1.45型である場合、上記生物は、発現された場合にDHFからTHFへの変換を促進する遺伝子を含有する。これは、folAまたはfrdなどのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子でありうる。好ましいジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子は、バクテリオファージ遺伝子であり、より好ましくはT偶数ファージ遺伝子であり、最も好ましくはT4バクテリオファージ遺伝子frdである。
【0037】
上記ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子は、上記生物の染色体DNAに直接導入しても、次に上記生物がその宿主となりうるDNAコンストラクトに組み入れてもよい。上記DNAコンストラクトは、プラスミド、ウイルス、トランスポゾン、またはミニクロモソームなどのベクターであることが好ましい。
【0038】
上記DNAを宿主細胞に導入するのにDNAコンストラクトを用いる場合、そのDNAコンストラクトは、意図している宿主中で安定に維持されるように設計されていることを保証するのが好ましい。
【0039】
特に好ましい実施形態および最良の形態では、上記生物は、国際公開第01/02580号に開示されたpCG532に由来するプラスミドpCG609を保持する、国際公開第01/02580号に開示されたCMG2451株に由来するイー・コリ宿主株CMG2576である。それらの構成に関するより完全な詳細は、実施例3および4に示す。この組合せは、「非誘導」条件下で増殖中の宿主株内で上記プラスミドが維持されることが確実となるように2重に安定化されている。
【0040】
上記TMPアーゼ遺伝子は、バクテリオファージラムダPプロモーターに連結されて宿主染色体に挿入される。上記プラスミドは、それ自体のプロモーターの制御下にあるバクテリオファージラムダcI857温度感受性リプレッサーを保持する。これは、国際公開第01/02580号に開示された宿主株の染色体から転移されたものである。上記プラスミドが失われた場合、リプレッサーが生成されず、TMPアーゼ遺伝子が発現され、それによって、TMPがチミジンに変換され、上記生物が死滅する。
【0041】
染色体に位置するTMPアーゼ遺伝子の同時不活性化を伴うプラスミド喪失は、無プラスミドの派生物の増殖を可能にするのに十分に頻繁な事象なので、この安定化機構は多くの世代にわたる増殖が必要である大規模培養での使用に不十分であると本出願人は判断した。増殖および生存に必須である遺伝子が染色体から除去され、プラスミドに再配置される第2の安定化機構を追加した。CMG2576とpCG609との組合せでは、この遺伝子はThyAであり、ラクトースプロモータ制御下となるように上記プラスミドにクローニングされている。
【0042】
機能的なThyA遺伝子がなければ、細胞はTMPを生成できず、したがって、DNA合成のためのTTPを生成できずに死滅する。遺伝子は容易に変異して機能を喪失しうるが、完全に欠失した遺伝子を再生するのははるかに困難であるので、この機構は特に有効である。さらに、この欠失酵素の産物は、機能細胞から出て、プラスミド保持の遺伝子を失った細胞に入ることによって「交差供給」され得ないリン酸化化合物である。
【0043】
本発明の、より一般的な態様を示すために、必ずしも常に直接的に比較可能なものではないが、さらに別の例を詳細な説明に記載する。振とうフラスコテストデータには、しばしば、第2のプラスミド内の「試験遺伝子」の導入が含まれる。しかし、そのような多重プラスミド系に関しては、規模試験が行われておらず、大規模培養でのそれらの遺伝的安定性は測定されていない。
【0044】
本発明の第2の態様によると、DNAまたは増殖に必要なある種の染色体外DNAに対して、1つまたは複数の遺伝子改変を含んだ生物を培地中で増殖させる工程を含む、チミジンを産生する方法であって、該生物は、dTMPに変換するためのdUMPに対する単一炭素単位の利用性を増大させる1つまたは複数の遺伝子改変の結果、UdRに代わってTdRを優先的に生成するチミジン生合成経路をもたらす、1つまたは複数の遺伝子改変を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0045】
UdR含量は、チミジン含量の5%未満であることが好ましい。
【0046】
チミジン含量は、比生産速度で、5mg TdR/l/時間/g乾細胞重量超であることが好ましく、7.5mg TdR/l/時間/g乾細胞重量超、10を経て、2.5段階で25mg TdR/l/時間/g乾細胞重量まで、またはそれを超えることがより好ましい。
【0047】
本発明の第3の態様によると、本発明の生物の増殖およびチミジン産生を支持できる培地が提供される。
【0048】
本発明のさらに別の態様によると、本発明の方法に従って産生されたチミジンから製造されるジドブジンが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
第1の好ましい実施形態では、染色体外DNAとして、最も好ましくはプラスミドの形態で、遺伝子を間接的に生物に導入する(染色体に直接的に導入するのではなく)。好ましい遺伝子は、2’−デオキシウリジン(UdR)に変換されるのとは対照的に、大部分のdUMPがdTMPにメチル化されるように、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)をチミジン一リン酸(dTMP)に変換するチミジル酸シンターゼ酵素(例えばEC2.1.1.45、EC2.1.1.148)に、即時供給メチル基を与えることを保証できる酵素を発現するものである。
【0050】
この好ましい実施形態では、好ましいチミジル酸シンターゼ酵素は、EC2.1.1.45型のものであり、好ましい遺伝子は、ジヒドロ葉酸(DHF)からテトラヒドロ葉酸(THF)への変換を補助するものである。適した遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする遺伝子である。これは、野生型または脱調節された細菌遺伝子でも、バクテリオファージ遺伝子でもよい。特定の好ましい遺伝子であり、かつ本発明を例示するのに使用されたものは、バクテリオファージT4のfrd遺伝子(T4 frd)である。
【0051】
代替の実施形態では、THFから5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸(CH−THF)への変換を補助するように遺伝子改変を行う。これらの遺伝子改変のすべては、dUMPをUdRに優先してdTMPに変換することを強制するという共通の目標を有する。
【0052】
好ましい改変の代替として、またはそれとの組合せで働くことが示されている遺伝子改変には、以下のものが含まれる。
・THFからCH−THFへの変換に直接的に作用する酵素に改変を加えること。そのような改変の1つは、L−セリンをグリシンに変換し、同時にTHFからCH−THFへの変換を触媒する酵素であるセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼを発現する遺伝子、例えばイー・コリのglyAの導入である。さらに、そのような改変には、グリシンを二酸化炭素およびアンモニアに変換するのと同時にTHFからCH−THFへの変換を触媒するグリシン開裂酵素複合体の1つまたは複数の構成要素を発現する1つまたは複数の遺伝子、例えばイー・コリのgcvT、gcvH、gcvP、およびlpd遺伝子の導入が含まれるであろう。
・必要な一炭素単位を提供するのにギ酸を用いるTHFからCH−THFへの変換に直接的に作用する遺伝子改変を加えること。そのような改変の1つは、ホルミル−THFシンターゼ、メテニル−THFシクロヒドロラーゼ、およびCH−THF脱水素酵素を活性化する酵素を発現する1つまたは複数の遺伝子の導入である。一例は、これらの活性すべてを有する3機能タンパク質をコードする酵母ADE3遺伝子であろう。さらに別の例は、ちょうどホルミル−THFシンターゼのみをコードする遺伝子のイー・コリへの導入であろう。この場合、この変換に必要な他の酵素は既に存在している。
・THFからCH−THFへの変換に作用する反応の基質利用性を増大させる遺伝子改変を加えること。そのような事例の1つは、糖質からL−セリンまで経路における最初の工程を触媒する3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素を発現するイー・コリserAなどの遺伝子の導入を介した、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼの基質としてのL−セリンの利用性の促進である。さらに別の例は、イー・コリのserCおよびserBなど、3−ホスホ−D−グリセリン酸からのL−セリンの生成に関与するさらに後の酵素を発現する遺伝子の導入、または酵母ADE3遺伝子によってコードされている酵素複合体へのギ酸の利用性を増大させる任意の遺伝子改変が含まれるであろう。
【0053】
本発明のそれぞれの態様は、米国特許第5213972号および国際公開第01/02580号の両方の教示に優る顕著な進歩をもたらし、チミジンの商業的生産に使用するためのコンストラクトを含む改善されたDNAコンストラクトおよび宿主細胞を提供する。それらは、他のチミジン産生生物の改変にも適用できる。
【0054】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の記述から明らかとなろう。しかしこれらは、本発明の好ましい実施形態を代表し、例示のみを目的とするものであることを理解するべきである。本発明の趣旨および範囲に包含される様々な改変および変更は、当業者には明らかとなるであろう。
【0055】
本発明のコンストラクトは、染色体性でもよく、またはより好ましくは、例えばベクター上に位置した、染色体外のものでもよい。
【0056】
本発明のベクターには、プラスミド、ウイルス(ファージを含める)、トランスポゾン、およびミニクロモソームが含まれ、それはプラスミドであることが好ましい。
【0057】
ベクターは、当業者に知られている任意の好都合な方法、例えばP1形質導入、エレクトロポレーションまたは形質転換に従って、宿主細胞内に導入することができる。
【0058】
本発明で有用な適した宿主細胞には、真核生物(例えば真菌)および原核生物(例えば細菌)が含まれる。原核生物には、イー・コリ、サルモネラ、シュードモナス、ブレビバクテリウム、バシラス、ならびにその株および変異体が含まれる。
【0059】
本発明のベクターは、調節エレメント(例えば、ラムダPなどのプロモーター、オペレータ、アクチベーター、ラムダリプレッサーなどのリプレッサー、特に温度感受性変種、および/またはエンハンサー)、適切な終止配列、開始配列、およびリボソーム結合部位を含むことが好ましい。上記ベクターは、選択マーカーをさらに含みうる。別法では、調節エレメント(特にラムダレプレッサー)が宿主細胞染色体上に位置しうる。
【0060】
本発明に従って改変された宿主細胞は、チミジンの商業的生産に特に有用である。本発明の特に有利な使用では、本発明(特に米国特許第5213972号または国際公開第01/02580号の教示と併せて)に従って改変されたプラスミドを含む(宿す、または組み込んでいる)イー・コリ宿主細胞がチミジンの商業的生産に使用されうる。したがって、本発明に従って改変された宿主細胞は、例えばPBS1に由来するdTMPアーゼと、米国特許第5213972号に教示されている変異、例えば、deoA、tdk−1、およびudp−1と、国際公開第01/02580号に教示されているコンストラクトへのさらなる改良、例えば、T4 nrdCAB、T4 td、dcd、およびudkとをさらに含みうる。
【0061】
国際公開第01/02580号に教示されている通り、通常は、発酵法を用いる。発酵法は、適した容器内に含有されている培地中に細胞を浸すものである。適切な条件下で培養した後、産生されたチミジンを採取し、必要な場合には、製薬グレードにまで標準プロトコールに従って精製する(濃縮する)。精製されたチミジンは、その後、薬物、例えば、AZTなどの医薬組成物の生産に使用されうる。
【0062】
下記の図を参照して、例としてのみ、本発明を例示する。
【0063】
詳細な説明
図1は、TMPアーゼ遺伝子が付加されているイー・コリK12を一例として用いて、チミジン生合成経路および関連する遺伝学の複雑さを図示する。図の右下において、チミジンはTdRであり、2’−デオキシウリジンはUdRである。UdRは、単一メチル基の不在によってTdRと化学的に相違している。これらの化合物相互の構造類似性によって、精製が困難かつ高価なものとなっている。本発明は、UdRの産生に代わって、TdRの優先的生成に影響を与える遺伝子改変を加えることに関する。
【0064】
本出願人は、例えば、チミジル酸シンターゼ遺伝子(例えばtd、thyAまたはthyX)からのチミジル酸シンターゼの発現によって触媒される、dUMPからdTMPへのプロセス工程に、例えばCH−THFとして、増加供給量の一炭素単位を供給することを保証することによって、UdRに対するTdRのレベルを効果的に制御できると判定した。
【0065】
これは主として、dUMPからdTMPへの変換によって生成された使用済み一炭素ドナー分子が、CH−THFとして、その活性状態に迅速に再生するのを確実にすることによって実現する。図2は、チミジル酸シンターゼの2つの二者択一の機構を示す。それらの機構はそれぞれ、異なった使用済み一炭素ドナーを生成する。チミジル酸シンターゼが、例えばthyAまたはtd遺伝子によってコードされたEC2.1.1.45型のものである場合、使用済みドナーはDHFである。上記酵素が、例えばthyX遺伝子によってコードされたEC2.1.1.148型のものである場合、使用済みドナーはTHFである。
【0066】
CH−THFの直接的前駆体はTHFであるので、EC2.1.1.45チミジル酸シンターゼを用いる生物、例えばイー・コリでは、最初の工程はDHFからTHFへの変換でなければならないことが明らかであろう。実施例6に例示するように、この変換を触媒する酵素をコードするジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子をそのような生物に導入することによって、本出願人は、混入しているUdRのレベルを有意に低減させ、さらにチミジンの生産性を増大させることができた。
【0067】
このアプローチは、米国特許第5213972号および/または国際公開第01/02580号によって教示された原則によるチミジン発酵工程の収率のさらなる改善を可能にする。以前なら、総ピリミジンデオキシリボヌクレオシドを増大させる遺伝子改変によって、主としてUdRレベルが増大したと思われる場合に、実施例7によって例示されるように、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を導入することによって、いまではこの追加産物をTdRへ誘導することができる。
【0068】
実施例8では、このアプローチは、ジヒドロ葉酸還元酵素と、TdR産生に必要な他のクローニングされた遺伝子とを保持するプラスミドコンストラクトが、その適切なイー・コリ宿主株中で安定に維持されることを確実にするために、さらなる改変と併用されている。これは、国際公開第01/02580号に教示されている従来技術の方法に優る現在最良の方式改良を代表するが、本発明から予測しうる改良の限界には全く達していない。
【0069】
ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子の導入を介して、DHFからTHFへの変換を増大させることは、チミジン産生生物におけるCH−THFの再生に望ましい増大を生み出すために加えることのできる遺伝子改変の1つであることが、図2から明らかであろう。しかし、このアプローチは、EC2.1.1.148型のチミジル酸シンターゼを有する生物には適用できない。そのような場合、DHFからTHFへの変換がCH−THFの再生における律速工程ではないか、もはや律速工程とならない場合のように、UdRが低レベルとなるTdR産生の望ましい結果を実現するために適用しうる様々な代替または追加の遺伝子改変がある。
【0070】
そのような代替の改変は、THFがそれによってCH−THFに生物学的に変換される経路、例えば図3に示すL−セリンおよびグリシンを介した経路または図4に示すギ酸を介した経路を考慮することによって明らかとなろう。様々な解決法を図5に要約する。概して、適した改変は、CH−THFの合成の総合的速度を増大させるもの、またはTHFをCH−THFに変換するための一炭素単位の供給速度を改善するものであろう。
【0071】
本出願人は、これらのアプローチのいくつかの例を試験した。実施例9では、L−セリンからグリシンへの変換を介して、THFをCH−THFに変換できる酵素を過剰発現させる。実施例10では、図3に示すセリン/グリシン経路への代謝産物の流入を増大させることによって、THFからCH−THFに変換するための一炭素単位の供給を改善する目的で、別の酵素を過剰発現する。実施例11および12は、一炭素ドナーとしてギ酸を使用して、THFからCH−THFに変換するための非天然の経路をイー・コリに導入する異なった方法を用いる。
【0072】
それぞれの場合で、i)UdRレベルの小幅な低減、ii)UdRの相対的増大のない、TdRの小幅な増大、またはiii)両方の組合せのいずれかが起こる。実施例6、7、および8に示すジヒドロ葉酸還元酵素添加の効果と比較して、改善は比較的小さいが、それぞれの改善は、代替の、またはさらに改良されたチミジン産生生物においてはより顕著となりうるものであり、したがって本発明の妥当な一例であることが理解されよう。
【実施例】
【0073】
実施例1(比較)
従来技術のコンストラクト/株
本発明の利点は、国際公開第01/02580号に開示された従来技術のコンストラクト/株を比較として用いて実証されるであろう。図6はpCG532コンストラクトを図示し、表1はイー・コリ宿主株CMG2451の遺伝子型を示す。しかし、チミジル酸シンターゼ遺伝子(td、プラスミド上)およびTMPアーゼ(染色体内に組み込まれている)の存在は本発明の好ましい実施形態に重要であるが、そこに開示された遺伝子のすべてが本発明の必須部分を形成しているわけではないことが理解されよう。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例2
チミジン産生の振とうフラスコ試験
実施例1で言及したコンストラクトおよび株を、以下の方法論に従って培地(表2)中で培養した。TdR産生の速度とUdR不純物の相対量(TdRのパーセントとして表される)との両方に関する比較を目的としてデータを得た。
【0076】
試験株1株あたり7〜12本のフラスコを用いて、250mLバッフル付き振とうフラスコ中ですべての実験を行った。1フラスコあたり20mLの培地に約2.5%容量を接種するために、LB培地中で増殖させた新鮮種培養を用いた。培養物は、OD600nm=5まで、31℃で増殖させた。その後、フラスコを別のシェーカーに移動させることによって、温度を35.7℃から36.8℃に変化させた。温度誘導の4から6時間後に、試料を分析用に採取した。
【0077】
【表2】

【0078】
培地はNaOHでpH7.0に調整し、その後、121℃で25分間オートクレーブで処理した。冷却した後、必要に応じたオプションの抗生物質であるアンピシリン(100mg/L)、クロラムフェニコール(30mg/L)、カナマイシン(15mg/L)、およびテトラサイクリン(25mg/L)と共に、ビオチン(最終濃度1mg/L)、チアミン(10mg/L)、およびニコチン酸(10mg/L)を添加した。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例3
CMG2451からの改良宿主イー・コリ株CMG2576の開発
下記表4に示す一連の工程を介して宿主株を改変した。全体として3つの顕著な変化があった。但し、これらのうちどれも本発明の必須部分を構成しないことが理解されよう。以下の実施例では、最終株のCMG2576と共に、中間株のCMG2549およびCMG2560も、本発明の態様を明らかにするために使用されている。
【0081】
CMG2549株は、挿入により不活性化されているndk::kanで染色体ndk遺伝子が置換されていることによってノックアウトされている点でCMG2451と異なっている。この変化は、米国特許第5213972号によって教示された原則に従ってピリミジンヌクレオシドの総生産を改善するために加えられたものであり、実施例7に詳述する本発明の有用性の実証に重要である。
【0082】
CMG2560は、染色体からラムダプロファージを欠失させ、同時に、ビオチンおよびニコチン酸の要求性を引き起こす変異を修復することによって構築した。この変化は、ラムダcI857温度感受性リプレッサーを保持するプラスミドの存在下で加えた。このリプレッサーがなければ、染色体に挿入されており、ラムダPプロモーターから発現されるdTMPアーゼ遺伝子が活性化されるであろう。そして、その生物はdTMPを分解し、DNAを生成できずに、死滅するであろう。
【0083】
最後に、CMG2576は、挿入により不活性化されているthyA748::Tn10で染色体thyA遺伝子が置換されている点でCMG2560と異なっている。この変化は、ラムダcI875リプレッサーと、クローニングされたthyAとの両方を保持するプラスミドの存在下で加えられた。プラスミドが有するthyA遺伝子がなければ、その生物は、dTMPを合成できず、したがってDNAを生成できず、死滅する。
【0084】
染色体に位置するラムダリプレッサーを除去し、宿主thyA遺伝子を不活性化させるために加えた変化の理由は実施例8に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
実施例4
pCG532からの改良コンストラクトpCG609の開発
このコンストラクトは、下記に概略を示す一連の工程を介して改変した。
【0087】
【化1】

【0088】
より詳細には、上記遺伝子は下記表5に示す通り由来した。プラスミドpCG532およびpCG609は、それぞれ図6および7によって図示されており、主な特徴は図中で比較することができる。
【0089】
このコンストラクト加えられた3つの変化のうち、T4 frd遺伝子のみが本発明の一実施形態の必須部分を形成する。この改変の効果は、下記実施例6および7によって例示される。残りの変化は、下記実施例8に詳述する通り、宿主株からのプラスミドの喪失を防止するために加えられた。
【0090】
【表5】

【0091】
実施例5
pCG376からの試験コンストラクトの開発
確立されている宿主株/プラスミドの組合せに追加遺伝子を付加する効果を、第2のプラスミド上にこれらを導入することによって試験した。第2のプラスミドは、pCG532およびその派生物と適合するように設計し、それによって両者を単一のイー・コリ宿主中で安定に維持しうる。pCG532は、最終的には、天然プラスミドColE1に由来する。ColE1の詳細な歴史は国際公開第01/02580号に開示されている。第2のプラスミドは、クローニングベクターであるpACYC177(ChangおよびCohen、J.Bacteriol.134:1141−1156、1978年)をベースにしたものである。pACYC177は天然プラスミドp15Aに由来し、ColE1と適合性がある。
【0092】
この系は、上記実施例4に記載の既に複雑なコンストラクトを改変する必要性なしに、遺伝子付加を試験できるという利点を有する。しかし、この系は、選択的抗生物質なしには不安定でありうると認識されており、したがって、工業的発酵法での大規模使用には適さない。
【0093】
第2のプラスミドを用いて試験された遺伝子は、それらの全ヌクレオチド配列を報告している参考文献と共に表6に示す。すべてが、詳細に特徴付けられている遺伝子であり、標準プロトコールに従ったPCRによってクローニングされた。それぞれが、第1のプラスミド上にクローニングされた遺伝子および宿主イー・コリ染色体に組み入れられたdTMPアーゼと共にcI857温度感受性リプレッサーで制御できるように、バクテリオファージラムダPプロモーターから発現された。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例6
クローニングされたT4 frd遺伝子を従来技術の宿主株/コンストラクトに付加することの効果
実施例4に記載のpCG590は、バクテリオファージT4からのfrd遺伝子が付加されている点のみで、従来技術のコンストラクトであるpCG532と異なっている。上記frd遺伝子はT4ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする。上記T4酵素は詳細に特徴付けられており、イー・コリで容易に発現される(Purohitら、J.Biol.Chem.256:9121−9125、1981年)。
【0096】
この遺伝子は、ラムダPプロモーターから発現される「オペロン」に付加されており、したがって、温度が上昇し、ラムダcI857リプレッサーが不活性化された際に、dTMPアーゼ(染色体内)ならびにT4遺伝子nrdC、nrdA、nrdB、およびtd(プラスミド上)と共に誘導される。
【0097】
実施例2に記載した方法を用いて、プラスミドpCG590を宿す従来技術の宿主株CMG2451の振とうフラスコデータを取得し、その結果を、同一宿主および従来技術のプラスミドであるpCG532を用いて実施例2で得たものと比較した。結果を下記表7に示す。
【0098】
【表7】

【0099】
明らかなことは、T4 frd遺伝子の付加によって、産生されたUdRのレベルが大幅に低減され、それによって、発酵による実質的に純粋なTdRの産生が単純化されたことである。UdRにではなく、dUMPからdTMPへの、改良された変換は、UdRの低減と共に、追加のチミジンをもたらすべきであると予測され、この場合それは正しいようである。
【0100】
実施例7
クローニングされたT4 frd遺伝子をndk変異体宿主株に付加したことの効果
実施例3に記載の宿主株CMG2549は、ヌクレオシドニリン酸キナーゼをコードするndk遺伝子内の変異によって、従来技術の宿主株であるCMG2451と異なっている。この遺伝子の変異は、イー・コリでdCTPおよびdTTPの細胞内プールを増大させると報告されている(Luら、J.Mol.Biol.254:337−341、1995年)。米国特許第5213972号に教示された原則によると、ピリミジンデオキシリボヌクレオシド生合成経路におけるそのような変異の導入は、適切に改変された生物におけるTdRおよびUdRの総合成量を増大させるのに使用できる。
【0101】
実施例2の方法を用いて、2株の宿主株、すなわちCMG2451およびCMG2549に関して、それぞれpCG532またはpCG590のいずれかと組み合わせて振とうフラスコデータを得た。このようにして、ndk変異およびT4 frdの付加の効果を、別々組合せの両方で比較した。結果を下記表8に示す。
【0102】
【表8】

【0103】
驚いたことに、T4 frdの付加は、ndk変異を保持するイー・コリ宿主内に導入した場合、UdRレベルの低減にさらにより効果的になる。
【0104】
ndk変異は、従来技術によるイー・コリ株のデオキシリボヌクレオシド合成能力を明確に増大させるが、純粋なチミジンの費用対効果に優れた産生で利用されるためのような改良にはUdR含量が高過ぎる。ndk変異体によって産生された追加のdUMPは、本発明に従ってCH−THFを適切に供給することによってdTMPへと誘導することができ、それによって、UdRに変換されるのではなくチミジンに変換される。結果は、チミジンの生産率と、UdR含量の低さの両方に関して、従来技術に優る極めて実質的な改良となっている。
【0105】
実施例8
チミジン産生へのプラスミド安定化の効果
宿主株CMG2451またはそのndk変異体派生物であるCMG2549でpCG590を試験した際、本出願人は、この結果得られたイー・コリ株が培養されたときに、プラスミド喪失を観測した。この明らかな不安定性には、まず、ラムダファージcI857温度感受性リプレッサーを染色体(宿主株CMG2451およびその前駆体の中)からプラスミド(コンストラクトpCG596およびその派生物の中)へと再配置することによって対処した。
【0106】
31℃以下の温度では、cI857リプレッサーは、ラムダPプロモーターと共にクローニングされた、染色体に組み入れられているdTMPアーゼ遺伝子の発現を防止する作用をする。リプレッサーがプラスミド上に位置している場合、そのプラスミドの喪失は、dTMPアーゼの発現と、その結果であるdTMPの分解とをもたらし、その結果、無プラスミド細胞の生存が失われる。この原則を用いて、実施例4に記載の通りpCG596を構築し、実施例3の通りに、その宿主株であるCMG2560を構築した。この結果得られた株であるCMG2560/pCG596を実施例2の振とうフラスコプロトコールに従って試験したところ、表9に示す通り、CMG2451/pCG590株と比較して、チミジン合成速度の小幅な増大が観測された。
【0107】
しかし、本出願人は、この機構がプラスミドの喪失を防止するのに完全に有効であったわけではないと判断した。dTMPアーゼ遺伝子を不活性化する同時変異を伴うプラスミド喪失は、生存可能な無プラスミド細胞の選択をもたらすことが発見された。プラスミドの安定保持を確実にするためには、追加または代替の機構が必要であった。
【0108】
ラクトースプロモータから発現されるイー・コリのthyA遺伝子がpCG596に付加され、pCG609を形成した。その後、このプラスミドを宿す宿主株で、染色体thyA遺伝子を除去することができた。thyAからのチミジル酸シンターゼの発現は、その細胞がdTMPを合成できる他の手段がないので、増殖および生存に必須である。dTMP自体は、細胞壁を通り抜けることができず、プラスミドを有するthyA細胞から、プラスミドを失ったthyA細胞に「交差供給」されない。遺伝子は容易に変異して酵素活性を不活性化しうるが、欠失した活性を再生するのははるかに困難であるので、必須遺伝子および交差供給されない代謝産物を用いたそのような機構は特に有効である。
【0109】
pCG609の構築は実施例4に記載されており、thyA宿主株CMG2576の構築は実施例3に記載されている。この結果得られた組合せである、CMG2576/pCG609株を、実施例2の振とうフラスコ発酵プロトコールに従って試験し、表9に示す通り、CMG2560/pCG596と比較して、チミジン生産率のさらなる小幅な増大が観測された。
【0110】
【表9】

【0111】
これらの結果は、図9で、従来技術の株であるCMG2451/pCG532およびそのndk変異体派生物と比較されている。その生物を培養する際に安定に維持されると見込まれる形態で追加の遺伝物質を与えたときのチミジン収率の改善によって、UdRが低レベルとなるチミジン生産における本発明の利点が強化されることが見て取れる。
【0112】
実施例9
クローニングされたglyA遺伝子の付加の効果
この実施例は、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードするクローニングされたイー・コリglyA遺伝子を、従来技術のコンストラクトおよび宿主株に付加する効果を例示する。この酵素は、THFからのCH−THFの再生に共役した、セリンからグリシンへの変換を触媒する(図3を参照)。上記宿主株はglyA遺伝子を既に保持および発現すること、ならびにこの遺伝子改変の効果は、単純に、プラスミドが有する遺伝子が温度誘導中に発現された際に、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼのレベルを高めることであることが認識されよう。
【0113】
glyA遺伝子は、上記実施例5で論じた通り、pCG532と適合性があるプラスミドベクターであるpCG376にクローニングされた。この結果得られたプラスミドpCG601は、ラムダPプロモーターと共にglyA遺伝子を保持する。実施例2で記載の振とうフラスコ試験を用いて、pCG532およびpCG601の両方を宿すCMG2451を、pCG532のみを宿す従来技術のCMG2451と比較した。
【0114】
結果を表10に示す。結果は、従来技術の宿主株およびコンストラクトにT4 frdを付加したことの効果を示す実施例6に記載の結果と比較することができる。過剰発現されるglyA遺伝子の付加によって、UdRが有意に低減していることが明らかである。しかし、低減の程度は、T4 frdで観測されたものにおよばず、TdRの有意の増大がなかった。
【0115】
【表10】

【0116】
本発明を実証するのに用いられたイー・コリ系に関しては、THFからCH−THFへの変換速度ではなく、DHFからTHFへの変換速度によって、dUMPからdTMPに変換するためのCH−THFの供給が制限されると結論することができた。これは、何故、UdRを低減するのに、T4 frdがglyAよりはるかに有効であるかを説明するであろう。しかし、本発明の目標を実現するための異なったアプローチの相対的有効性、すなわちチミジル酸シンターゼに利用可能なCH−THFの供給量増大は、本発明を適用するチミジン産生生物の遺伝的背景に強く依存することが予測される。
【0117】
異なった、またはさらに別の追加の遺伝子および変異を有するイー・コリ株、ならびに他のチミジン産生生物では、CH−THF合成の律速工程が他の場所でありうることが理解されよう。実際、米国特許第5213972号および国際公開第01/02580号に教示された原則に従って、チミジン産生生物の改良を続けたならば、律速工程がセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ反応に移行し、クローニングされたglyA遺伝子の付加は、本発明の原則に従ってチミジン中のUdRのレベルを低減するのに、より劇的な利点を示しうる。
【0118】
実施例10
クローニングされたserA遺伝子の付加の効果
この実施例は、セリン−グリシン経路の酵素の発現を増強することによって、THFからのCH−THFの再生を改善することの効果を例示する(図3)。3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素は、イー・コリを含めた多くの生物におけるCH−THFの主要な供給源となっているこの経路の最初の工程を触媒する酵素である。CH−THFは2つの連続した反応、すなわち、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼによって触媒されるL−セリンからグリシンへの変換、ならびにグリシン開裂酵素複合体によって触媒されるグリシンから二酸化炭素および水への変換によって生成される。
【0119】
天然の3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素のレベルを増大させるために、実施例5で詳述した第2のプラスミド試験系を用いて、クローニングされたイー・コリserA遺伝子を付加した。この新規の遺伝子改変の出発点は、ndk変異、T4 frd遺伝子、および遺伝的に安定なコンストラクトを含めた最良の形態の宿主株およびコンストラクトであるCMG2576/pCG609であった。THFからCH−THFを合成する能力を増大させることの利点は、DHFからTHFに変換する能力が改善されているこのバックグランドで試験するのが最良であろうと推論された。
【0120】
実施例5で論じた通りに、serA遺伝子をプラスミドベクターpCG376にクローニングした。この結果得られたプラスミドpCG844は、serA遺伝子をラムダPプロモーターと共に保持する。実施例2に記載の振とうフラスコ試験を用いて、pCG376またはpCG844のいずれかと併せてpCG609を宿すCMG2576派生物を比較した。結果を表11に示す。
【0121】
既に非常に低くなっているUdR対TdRの比率には明らかな変化はなかったが、TdRの産生速度にわずかな増大があった。実施例6によって例示されたT4 frd遺伝子の効果と比較して、この改善は比較的小幅なものである。しかし、より高いレベルのUdRを産生する異なった遺伝的背景を有する生物では、過剰発現されるserA遺伝子を付加することの効果が、より劇的となりうることが理解されよう。
【0122】
L−セリンの蓄積は、3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素を阻害することが知られている。しかし、この実施例では、これが妥当しているとは思われない。しかし、これが妥当するとしたら、アミノ酸配列中の単一変化(asn346からala)によって阻害が失われる(Al−Rabieeら、J.Biol.Chem.271:23235、1997年)ので、クローニングされたserA遺伝子を改変することが好ましいであろう。
【0123】
【表11】

【0124】
実施例11
クローニングされた酵母ADE3遺伝子の付加の効果
この実施例は、CH−THFの再生を提供する追加の経路をチミジン産生生物に付加することの効果を例示する。本発明を例示するのに選択されたイー・コリ系では、必要な一炭素単位の供給源としてギ酸を用いたCH−THFの再生は正常な代謝経路ではない。しかしこの機構は、酵母サッカロミセス・セレビジエを含めた原核生物には存在している。それらの生物では、この経路によってTHFをCH−THFに変換するのに必要な3種の酵素活性を発現する3機能タンパク質を単一遺伝子がコードしうる(図4参照)。
【0125】
本出願人は、T4 frdを含有する遺伝学的に安定なコンストラクトとのそれらのndk変異体イー・コリ宿主株の組合せに、この3機能タンパク質をコードする酵母由来のADE3遺伝子を付加することの効果を試験した。実施例5に記載の通り、ADE3をラムダPプロモーターと共にpCG376にクローニングし、コンストラクトpCG870を作製した。
【0126】
実施例2のプロトコールを用いた振とうフラスコ発酵試験で、pCG609のみ、またはpCG609およびpCG870の両方のいずれかを宿すCMG2576派生物を比較した。第2のプラスミドの効果の対照として、pGC609およびベクターpCG376の両方を宿すCGM2576も試験に含めた。結果を下記表12に示す。TdR生産率への有意な効果はなかったが、UdR含量は、既に非常に低いレベルからさらになお低減した。この実施例の遺伝的背景では利点が劇的でないが、異なった、またはさらに別の追加の遺伝子および変異を有するイー・コリ株、または実際、他のチミジン産生生物では、利点がよりよく実現されうることが理解されよう。
【0127】
イー・コリなどの原核生物では、ギ酸はCH−THFのための一炭素単位の正常な供給源ではなく、したがって、最大の効果を有するためには、本発明のこの態様はさらなる遺伝子操作を必要としうることがさらに認識されよう。例えば、THFをメチル化するためのギ酸の利用性を増大させるために、ピルビン酸からギ酸を生成するピルビン酸ギ酸リアーゼ酵素を過剰発現することができるであろう(図5参照)。
【0128】
【表12】

【0129】
実施例12
クローニングされたクロストリジウム・アシジウリシfhs遺伝子を付加することの効果
この実施例は、ギ酸を用いてCH−THFを再生するイー・コリ経路に導入する代替機構を例示する。図4に示す通り、この反応を触媒するには3種の酵素が必要である。イー・コリは、これらの酵素の最初のものである、フォルミルテトラヒドロフォレートシンテターゼ(EC6.3.4.3)を欠失しているので、この経路を用いることができない。残りの2種の酵素は、folD遺伝子によってコードされている2機能性タンパク質として存在している。
【0130】
これら3種の酵素活性すべてをコードする酵母ADE3遺伝子に代わる手段として、本出願人は、フォルミルテトラヒドロフォレートシンテターゼのみをコードするシー・アシジウリシfhs遺伝子をイー・コリのチミジン産生菌に導入し、ギ酸経路に必要な酵素のセットを完成させた。ADE3の場合と同様に、第2のプラスミドベクターを用いて、宿主株CMG2576およびコンストラクトpCG609という最良の形態の組合せで、この遺伝的変化を試験した。
【0131】
実施例5に記載の通り、fhsをラムダPプロモーターと共にpCG376にクローニングし、コンストラクトpCG881を作製した。実施例2のプロトコールを用いた振とうフラスコ発酵試験で、pCG881またはpCG376のいずれかと共にpCG609を宿すCMG2576派生物を比較した。結果を下記表13に示す。
【0132】
上記ADE3の実施例と比較して、この最良の形態の株およびコンストラクトにおける既に低レベルのUdRは低減しなかった。しかし、TdR生産率には明らかにわずかな増大があった。前の実施例と同様に、これは、異なった遺伝的背景を有するチミジン産生生物で、またはTHFからCH−THFに変換するためのギ酸の利用性に影響を与える他の変化と組み合わせて、よりよく実現されうる本発明の一態様であることが理解されよう。
【0133】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】チミジン生合成経路を示す図である。
【図2】チミジル酸シンターゼ反応(dUMPからdTMPに変換する)を示す図である。
【図3】L−セリンおよびグリシンからのCH−THFの再生を示す図である。
【図4】ギ酸からのCH−THFの再生を示す図である。
【図5】CH−THFの再生を改良するアプローチの概要を示す図である。
【図6】プラスミドpCG532(従来技術の教示)のマップを示す図である。
【図7】プラスミドpCG609のマップを示す図である。
【図8】プラスミドpCG376のマップを示す図である。
【図9】いくつかの宿主/プラスミドにおけるチミジン産生を比較する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAまたは増殖に必要なある種の染色体外DNAに対して、1つまたは複数の遺伝子改変を含む、培地中で増殖させた際にチミジンを産生できる生物であって、dTMPに変換するためのdUMPに対する単一炭素単位の利用性を増大させる1つまたは複数の遺伝子改変の結果、UdRに代わってTdRを優先的に生成するチミジン生合成経路をもたらす1つまたは複数の遺伝子改変を含むことを特徴とする生物。
【請求項2】
宿主株と、染色体外DNAを含む少なくとも1つのコンストラクトとを含む、請求項1に記載の生物。
【請求項3】
1つまたは複数のコンストラクトが失われた場合に、宿主生物がDNAを作製できず、死滅するように、宿主株が安定化されている、請求項2に記載の生物。
【請求項4】
ヌクレオシドニリン酸キナーゼ(EC2.7.4.6)をコードする宿主株の遺伝子がノックアウトされているか、そうでない場合は不活性化または切除されている、請求項2に記載の生物。
【請求項5】
UdRに代わってTdRを優先的に生成するチミジン生合成経路をもたらす1つまたは複数の遺伝子改変が、DHFからCH−THFに到る葉酸サイクル経路に改変を含む、前記請求項のいずれかに記載の生物。
【請求項6】
遺伝子改変が、DHFからTHFへの変換を促進する、請求項5に記載の生物。
【請求項7】
遺伝子改変が、ジヒドロ葉酸還元酵素(EC1.5.1.3)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項6に記載の生物。
【請求項8】
ジヒドロ葉酸還元酵素が、T偶数ファージのジヒドロ葉酸還元酵素である、請求項7に記載の生物。
【請求項9】
T偶数ファージがT4である、請求項8に記載の生物。
【請求項10】
転写ユニットがfrd遺伝子である、請求項7から9のいずれかに記載の生物。
【請求項11】
遺伝子改変が、THFからCH−THFへの変換を促進する、請求項1から4のいずれかに記載の生物。
【請求項12】
遺伝子改変が、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(EC2.1.2.1)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項11に記載の生物。
【請求項13】
セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼがglyAによってコードされている、請求項12に記載の生物。
【請求項14】
遺伝子改変が、グリシン開裂酵素複合体を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項11に記載の生物。
【請求項15】
グリシン開裂酵素複合体がgcvT、gcvH、gcvP、およびlpdによってコードされている、請求項14に記載の生物。
【請求項16】
遺伝子改変が、3−Pグリセリン酸からL−セリンへの変換を促進する、請求項1から4に記載の生物。
【請求項17】
遺伝子改変が、3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素(EC1.1.1.95)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項16に記載の生物。
【請求項18】
3−ホスホグリセリン酸脱水素酵素がserAによってコードされている、請求項17に記載の生物。
【請求項19】
遺伝子改変が、ホスホセリントランスアミナーゼ(EC2.6.1.52)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項16に記載の生物。
【請求項20】
ホスホセリントランスアミナーゼがserCによってコードされている、請求項19に記載の生物。
【請求項21】
遺伝子改変が、ホスホセリンホスファターゼ(EC3.1.3.3)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項16に記載の生物。
【請求項22】
ホスホセリンホスファターゼがserBによってコードされている、請求項21に記載の生物。
【請求項23】
遺伝子改変が、ギ酸からCH−THFへの変換を促進する、請求項1から4のいずれかに記載の生物。
【請求項24】
遺伝子改変が、ホルミルテトラヒドロ葉酸シンターゼ(EC6.3.4.3)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項23に記載の生物。
【請求項25】
遺伝子改変が、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドロラーゼ(EC3.5.4.9)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項23に記載の生物。
【請求項26】
遺伝子改変が、メチレンテトラヒドロ葉酸脱水素酵素(EC1.5.1.5)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項23に記載の生物。
【請求項27】
遺伝子改変が、ピルビン酸からギ酸への変換を促進する、請求項1から4のいずれかに記載の生物。
【請求項28】
遺伝子改変が、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(EC2.3.1.54)を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項27に記載の生物。
【請求項29】
ピルビン酸ギ酸リアーゼがpflBAによってコードされている、請求項28に記載の生物。
【請求項30】
遺伝子改変が、THFシンターゼ複合体を発現できる転写ユニットの導入を含む、請求項23に記載の生物。
【請求項31】
THFシンターゼ複合体がADE3である、請求項30に記載の生物。
【請求項32】
請求項8から10、11から15、16から22、23から26、27から29または30から31のいずれかに記載の複数の遺伝子改変を含む、請求項1から4のいずれかに記載の生物。
【請求項33】
チミジル酸シンターゼ遺伝子(EC2.1.1.45;EC2.1.1.148)を発現できる転写ユニットをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の生物。
【請求項34】
チミジル酸シンターゼ遺伝子がT4 td、thyAまたはthyXによってコードされている、請求項33に記載の生物。
【請求項35】
デオキシチミジル酸ホスホヒドロラーゼを発現できる転写ユニットをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の生物。
【請求項36】
デオキシチミジル酸ホスホヒドロラーゼがdTMPアーゼ(TMPアーゼとも称する)である、請求項35に記載の生物。
【請求項37】
DNAまたは増殖に必要なある種の染色体外DNAに対して、1つまたは複数の遺伝子改変を含んだ生物を培地中で増殖させる工程を含む、チミジンを産生する方法であって、該生物は、dTMPに変換するためのdUMPに対する単一炭素単位の利用性を増大させる1つまたは複数の遺伝子改変の結果、UdRに代わってTdRを優先的に生成するチミジン生合成経路をもたらす、1つまたは複数の遺伝子改変を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
UdR含量がTdR含量の5%未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
5mg/l/時間/g乾細胞重量を超える比生産速度でTdRを産生する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1から36のいずれかに記載の生物を含む培地。
【請求項41】
請求項37または39に記載の方法に従って産生されたチミジンから製造されるジドブジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−525738(P2009−525738A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553741(P2008−553741)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051072
【国際公開番号】WO2007/090810
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】