説明

新規殺菌剤

式(1)


の殺菌化合物(ただし置換基は請求項1に定義した通りである)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アルキニル-2-アルキルチオ-2-(置換されたヘテロアリールオキシ)アルキルアミドと、そのスルフィニル誘導体およびスルホニル誘導体に関する。本発明は、これら化合物の調製方法と、その化合物を含む組成物と、これらを用いて真菌、特に植物の真菌感染症に対抗する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのN-アルキニル-2-アルキルチオ-2-(置換されたヘテロアリールオキシ)アルキルアミドと、そのスルフィニル誘導体およびスルホニル誘導体が、殺菌剤として有用であるとして、例えばWO 04/108663に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、植物の殺菌剤として改善された特性を持つ新規なN-アルキニル-2-アルキルチオ-2-(置換されたヘテロアリールオキシ)アルキルアミドと、そのスルフィニル誘導体およびスルホニル誘導体を提供することに関する。
【0004】
そこで本発明では、式(1):
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、
Arは式(A)の基:
【0007】
【化2】

【0008】
であり、
Vは、H、ハロゲンまたはメチルであり、
R1は、メチルまたはエチルであり、
R3とR4は、独立に、H、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、またはC2-3アルキニルであるか、
R3とR4は、これらの基が結合する炭素原子と一緒になって4員または5員の炭素環を形成し、その炭素環は、場合によっては1個のO原子、S原子またはN原子を含み、場合によってはハロゲンまたはC1-4アルキルで置換されており、
R5は、H、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C3-6シクロアルコキシ、またはC2-4アルケニルであり、これらの中のアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基は、場合によってはハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-4アルコキシ-C1-4アルコキシ、シアノ、C3-5アルケニルオキシ、またはC3-5アルキニルオキシで置換されており、
nは、0、1または2である。]
で表される化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
疑義を避けるために、式(A)の基に示した結合していない単結合は、式(1)の化合物の中のAr基が分子の残部に結合する点を示す。
【0010】
本発明の化合物は、少なくとも1個の不斉炭素原子(R3とR4が異なる場合には少なくとも2個)を含んでいて、鏡像異性体(またはジアステレオ異性体のペア)として、またはその混合物として存在することができる。さらに、nが1であるときには、本発明の化合物はスルホキシドであり、2通りの鏡像異性体の形態で存在することができ、隣の炭素も2つの鏡像異性体の形態で存在することができる。したがって式(1)の化合物は、ラセミ化合物、ジアステレオ異性体、または単独の鏡像異性体として存在することができる。本発明には、可能な異性体、またはあらゆる割合の異性体混合物がすべて含まれる。所定の任意の化合物について、1つの異性体が他の異性体よりも殺菌活性がより大きい可能性があることが期待される。
【0011】
式(1)の化合物の好ましい1つのグループでは、R3とR4は、独立に、H、C1-3アルキル、C2-3アルケニルまたはC2-3アルキニルであるが、いずれの基もHではないときには、炭素原子の合計数は4を超えない。
【0012】
式(1)の化合物において、Vは、H、クロロ、ブロモまたはメチルであることが好ましい。
【0013】
式(1)の化合物の好ましい1つのグループでは、VはHである。
【0014】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、Vはクロロである。
【0015】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、Vはブロモである。
【0016】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、Vはメチルである。
【0017】
好ましくは、R3とR4は、独立に、HまたはC1-3アルキルであるか、R3とR4は、これらの基が結合する炭素原子と一緒になって4員または5員の炭素環を形成する。
【0018】
より好ましくは、R3とR4は、独立に、HまたはC1-3アルキルである。
【0019】
R3とR4は両方ともメチルであることが特に好ましい。
【0020】
R3とR4は、これらの基が結合する炭素原子と一緒になって4員または5員の炭素環を形成することがより好ましい。
【0021】
R5は、H、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ-C1-4アルキル、C3-6アルケニルオキシ-C1-4アルキル、C3-6アルキニルオキシ-C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、またはC1-4ハロアルキルであることが好ましい。
【0022】
式(1)の化合物の好ましい1つのグループでは、R5はHである。
【0023】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はC1-4アルキルである。
【0024】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はメチルである。
【0025】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はエチルである。
【0026】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はC1-3アルコキシ-C1-3アルキルである。
【0027】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はC3-4アルケニルオキシ-C1-3アルキルである。
【0028】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はC3-4アルキニルオキシ-C1-3アルキルである。
【0029】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はC1-3ヒドロキシアルキルである。
【0030】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5はC1-3ハロアルキルである。
【0031】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、R5は、CH2OH、CH2OMe、CH2OEt、CH2OCH2CHCH2、またはCH2OCH2CCH、(CH2)2OMeである。
【0032】
式(1)の化合物の好ましい別のグループでは、Vは、H、クロロ、ブロモ、またはメチルであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4は、独立にC1-3アルキルであり、R5は、H、C1-4アルキル、ヒドロキシで置換されたC1-4アルキル、C1-6アルコキシ、C3-4アルケニルオキシ、またはC3-4アルキニルオキシである。
【0033】
好ましくは、Vは、H、クロロ、ブロモまたはメチルであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4はメチルであり、R5は、H、場合によってはヒドロキシ、C1-4アルコキシ、C3-4アルケニルオキシ、またはC3-4アルキニルオキシで置換されたC1-4アルキルである。
【0034】
好ましくは、VはHであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4はメチルであり、R5は、H、場合によってはヒドロキシで置換されたC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C3-4アルケニルオキシまたはC3-4アルキニルオキシであることが好ましい。
【0035】
好ましくは、Vはクロロであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4はメチルであり、R5は、H、場合によってはヒドロキシで置換されたC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C3-4アルケニルオキシまたはC3-4アルキニルオキシである。
【0036】
好ましくは、Vはブロモであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4はメチルであり、R5は、H、場合によってはヒドロキシで置換されたC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C3-4アルケニルオキシまたはC3-4アルキニルオキシである。
【0037】
好ましくは、Vはメチルであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4はメチルであり、R5は、H、場合によってはヒドロキシで置換されたC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C3-4アルケニルオキシまたはC3-4アルキニルオキシである。
【0038】
好ましくは、Vは、H、クロロ、ブロモまたはメチルであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3とR4はメチルであり、R5は、CH2OH、CH2OMe、CH2OEt、CH2OCH2CHCH2、CH2OCH2CCH、または(CH2)2OMeである。
【0039】
本発明の一部をなす化合物を以下の表1〜表6に示す。特徴のデータは、実施例の後の表7に示す。
【0040】
表1
表1の化合物は、Arが式(A)の基であり、VがHであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が表に示した値である化合物である、一般式(1)の化合物である。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表2は、Arが式(A)の基であり、Vがメチルであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が表1に示した値である、一般式(1)の化合物からなる。
【0045】
表3は、Arが式(A)の基であり、Vがフルオロであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が表1に示した値である、一般式(1)の化合物からなる。
【0046】
表4は、Arが式(A)の基であり、Vがクロロであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が表1に示した値である、一般式(1)の化合物からなる。
【0047】
表5は、Arが式(A)の基であり、Vがブロモであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が表1に示した値である、一般式(1)の化合物からなる。
【0048】
表6は、Arが式(A)の基であり、Vがヨードであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が表1に示した値である、一般式(1)の化合物からなる。
【0049】
一般式(1)の化合物は、Ar、R1、R3、R4、R5が上に示したのと同じ意味であり、R6(以下のスキーム1参照)がHまたはC1-4アルキルである、以下のスキーム1〜4に概略を示したようにして調製できる。DMFはN,N-ジメチルホルムアミドであり、NBSはN-ブロモスクシンイミドであり、NCSはN-クロロスクシンイミドであり、MCPBAはm-クロロ過安息香酸である。他の略号は、本文中に定義してある。
【0050】
nが0である式(1)の化合物は、スキーム1に示したようにして調製できる。好適な溶媒(四塩化炭素、アセトニトリルなど)の中で、ラジカル開始剤(AIBN(アゾ-イソブチルニトリル)など)と光源の存在下にて、周囲温度と溶媒の還流温度の間の温度で、式(2)においてR6がC1-4アルキルであるエステルをハロゲン化剤(N-ブロモスクシンイミドなど)と反応させることによってハロゲン化すると、式(3)のハロゲンエステルが得られる(ただし、Halは、臭素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子である)。次に、式(3)の化合物を、好適な溶媒(DMFなど)の中で、塩基(水素ナトリウムなど)の存在下にて、式R1SHのアルカンチオールと反応させると、式(6)の化合物が得られる。あるいは式(3)の化合物を、好適な溶媒(DMFなど)の中でアルカンチオール塩R1S-M+(ただしMはナトリウムやリチウムなどの金属である)と反応させると、式(6)の化合物が得られる。
【0051】
【化3】

【0052】
あるいは好適な溶媒(四塩化炭素、アセトニトリルなど)の中で、0℃と溶媒の還流温度の間の温度にて、式(4)のエステルをハロゲン化剤(N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミドなど)と反応させることによってハロゲン化すると、式(5)のハロゲンエステルが得られる(ただし、Halは、臭素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子である)。式(5)のハロゲンエステルを、好適な溶媒(t-ブタノール、1,4-ジオキサン、DMFなど)の中で、塩基(カリウムt-ブトキシド、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなど)の存在下にて、周囲温度と溶媒の還流温度の間の温度でヒドロキシ(ヘテロ)アリールArOH(ただしArは上に定義した通りである)と反応させると、式(6)の化合物が得られる。式(6)の化合物を、好適な溶媒(メタノール、エタノール、THF(テトラヒドロフラン)などの水溶液)の中で、周囲温度と溶媒の還流温度の間の温度にてアルカリ金属の水酸化物M+OH-と反応させることによって加水分解して式(7)の酸にする。式(7)の酸を、0℃と溶媒の周囲温度の間の温度にて、好適な活性化剤(HOBT(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)やEDC(1-エチル-3-N,N-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドヒドロクロリド)など)を用いて式(8)のアミン(ただしR2は水素である)と縮合させると、式(1)においてnが0の化合物が得られる。
【0053】
式(1)においてnが1または2の化合物は、スキーム2に示したように、酸化してスルホキシド(nが1)またはスルホン(nが2)の酸化状態にすることによって調製される。例えば好適な溶媒(エタノールなど)の中で、0℃と溶媒の周囲温度の間の温度にて、酸化剤(過ヨウ素酸ナトリウム)を用いて式(6)のエステルを酸化して式(9)のスルホキシドにすることができる。式(10)のスルホンは、好適な溶媒(ジクロロメタンなど)の中で、0℃と溶媒の還流温度の間の温度にて、2当量以上の酸化剤(m-クロロ過安息香酸(MCPBA)など)を用いて式(6)の化合物から直接に製造すること、または1当量以上のm-クロロ過安息香酸を用いて式(9)のスルホキシドから製造することができる。好適な溶媒(エタノールなど)の中で、0℃と溶媒の還流温度の間の温度にて、式(6)のスルフィド、式(9)のスルホキシド、式(10)のスルホンをアルカリ金属の水酸化物と反応させることによって加水分解した後、酸性化して対応する酸(7)、(11)または(12)にすることができる。0℃と溶媒の周囲温度の間の温度にて、好適な活性化剤(HOBTやEDCなど)を用いて式(7)、(11)または(12)の酸を式(8)のアミン(ただしR2は水素である)と縮合させると、式(1)においてnが0、1または2の化合物が得られる。
【0054】
【化4】

【0055】
同様に、式(11)のスルホキシドと式(1)においてnが1であるスルホキシドは、酸化剤(上記のメタ過ヨウ素酸ナトリウムやm-クロロ過安息香酸など)を用いてそれぞれ式(7)のスルフィドと式(1)においてnが0であるスルフィドから調製することができる。式(12)のスルホンと式(1)においてnが2であるスルホンは、それぞれ式(7)のスルフィドと式(1)においてnが0であるスルフィドから少なくとも2当量の酸化剤(m-クロロ過安息香酸など)を用いて調製すること、あるいはそれぞれ式(11)のスルホキシドと式(1)においてnが1であるスルホキシドから1当量以上の酸化剤(上記のm-クロロ過安息香酸など)を用いて調製することができる。
【0056】
式(1)の化合物は、スキーム3に示したようにして調製することもできる。0℃と溶媒の周囲温度の間の温度にて、好適な活性化剤(HOBTやEDCなど)を用いて式(13)の酸を式(8)のアミン(ただしR2は水素である)と縮合させ、式(14)の化合物を得ることができる。式(14)の化合物を、好適な溶媒(四塩化炭素、アセトニトリルなど)の中で、0℃と周囲温度の間の温度にて、ハロゲン化剤(N-クロロスクシンイミドなど)を用いてハロゲン化し、式(16)の化合物にすることができる。式(16)のアミドは、式(15)の酸ハロゲン化物から、好適な溶媒(ジクロロメタンなど)の中で、塩基(トリエチルアミンなど)の存在下にて、0℃と周囲温度の間の温度で式(8)のアミン(ただしR2は水素である)と反応させて調製することもできる。
【0057】
【化5】

【0058】
好適な溶媒(DMFなど)の中で、塩基(炭酸カリウムや水素化ナトリウムなど)の存在下にて、0℃〜80℃の間の温度で、式(16)のハロゲンスルフィドをヒドロキシ(ヘテロ)アリールArOHと反応させて式(1)においてnが0の化合物を得ることができる。
【0059】
スキーム4に示したように、式(8)のアミン(ただしR2はHである)の例である式(20)のアミンは、シリルで保護された式(18)のアミノアルキンを、好適な塩基(n-ブチルリチウムなど)を用い、次いで好適なアルキル化試薬R5LG(ヨウ化アルキルであるヨウ化メチルなど)と反応させてアルキル化して式(19)のアルキル化化合物を形成することによって調製できる。同様の手段で、シリルで保護された式(18)のアミノアルキンを、好適な塩基(n-ブチルリチウムなど)を用いてカルボニル誘導体RaCORb(例えばホルムアルデヒド)と反応させ、ヒドロキシアルキル部分を含むアミノアルキン(19)を得ることができる。次に、例えば酸水溶液を用いて式(19)の化合物からシリル保護基を除去し、式(20)のアミノアルキンを形成することができる。式(20)のアミノアルキンはさらに誘導体化することができる。例えばR5がヒドロキシアルキル基である場合には、例えば式(20)の化合物をシリル化剤(例えばt-ブチルジメチルシリルクロリド)と反応させることにより、酸素がシリル化された式(21)の誘導体が得られる。それに加え、式(20)の化合物を塩基(水素化ナトリウムやビス(トリメチルシリル)アミドなど)で処理した後、化合物RcLGで処理して式(22)の化合物を得ることができる。別の反応系列では、式(19)の化合物を塩基(ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドやカリウムビス(トリメチルシリル)アミドなど)で処理した後、化合物RcLG(ただし、LGは、ハロゲン、スルホン酸エステル(OSO2ME、OSO2-4-トリルなど)などの離脱基を表わす)(例えばヨウ化エチル)で処理し、シリル保護基を除去した後に式(22)の化合物を得ることができる。
【0060】
【化6】

【0061】
シリルで保護された式(18)のアミノアルキンは、好適な塩基(第三級有機アミン塩基である例えばトリエチルアミン)の存在下で式(17)のアミンを1,2-ビス-(クロロジメチルシリル)エタンと反応させることによって取得できる。
【0062】
式(17)のアミンは、市場で入手するか、標準的な文献の方法(例えば欧州出願EP-A-0834498)によって調製することができる。
【0063】
3-ヨードキノリン単位(A)を含む誘導体は、当業者に知られている手段に従って調製することができる。一例として、式(1)においてArが式(A)の基である化合物は、対応する3-ブロモキノリニル誘導体から出発し、金属化試薬(有機リチウム(例えばnBuLi)や有機マグネシウム試薬(例えばLiMgBu3)など)を用いた後、ヨウ素源(I2やNISなど)で処理することによって調製することができる。
【0064】
あるいはこのような誘導体は、対応する3-アミノキノリニル誘導体から出発し、ヨウ素源(KI、NaI、CuIなど)の存在下で対応する中間ジアゾ化合物を形成することを通じて調製できる。スキーム5の反応式2と3に示した別の方法では、式(1)においてArが式(A)の基である化合物は、対応する3-ブロモキノリニル誘導体(ただし、R6は、H、C1-4アルキル、またはトリ(C1〜C4)アルキルシリルである)から出発し、好適な溶媒の中で、周囲温度〜120℃の温度にて、触媒である銅塩(CuIなど)と、好適なリガンド(N,N'-ジメチル-テトラメチルエチレンジアミン、N,N'-テトラメチルエチレンジアミンなど)と、ヨウ化物(NaIなど)とを用いて調製することができる(A. Klapars、S.L. Buchwald、J. Am. Chem. Soc.、2002年、第124巻、14844〜14845頁からの類推による)。
【0065】
【化7】

【0066】
式(25a)と(27)の化合物は新規であり、式(1)の化合物を合成するための中間体として特に指摘しておいた。
【0067】
式(1)の化合物は活性な殺菌剤であり、以下に示す病原菌のうちの1種類以上を抑制するのに使用できる:イネとコムギに取り付くピリキュラリア・オリゼ(マグナポルテ・グリセア)と他の宿主に取り付く他のピリキュラリア属;コムギに取り付くプクキニア・トリチキナ(またはレコンディタ)、プクキニア・ストリイフォルミスと他のさび病菌、オオムギに取り付くプクキニア・ホルデイ、プクキニア・ストリイフォルミスと他のさび病菌、他の宿主に取り付くさび病菌(例えば芝、ライムギ、コーヒー、ナシ、リンゴ、ピーナツ、サトウダイコン、野菜、装飾用植物);ウリ科植物(例えばメロン)に取り付くエリシフェ・キコラケアルム;オオムギ、コムギ、ライムギ、芝に取り付くブルメリア(またはエリシフェ)・グラミニス(うどんこ病菌)と、さまざまな宿主に取り付く他のうどんこ病菌(例えばホップに取り付くスフェロテカ・マキュラリス、ウリ科植物(例えばキュウリ)に取り付くスフェロテカ・フュスカ(スフェロテカ・フリギネア)、トマト、ナス、ピーマンに取り付くレベイルラ・タウリカ、リンゴに取り付くポドスフェラ・ロイコトリチャ、ブドウの木に取り付くウンキヌラ・ネカトール);穀類(例えばコムギ、オオムギ、ライムギ)、芝などの宿主に取り付くコクリオボラス属、ヘルミントスポリウム属、ドレクスレラ属(ピレノフォラ属)、リンコスポリウム属、マイコスフェレラ・グラミニコラ(ゼプトリア・トリティキ)、フェオスフェリア・ノドルム(スタゴノスポラ・ノドルムまたはゼプトリア・ノドルム)、プソイドケルコスポレラ・ヘルポトリコイデス、ガエウマノミセス・グラミニス;ピーナツに取り付くケルコスポラ・アラキディコラとケルコスポリジウム・ペルソナツムと、他の宿主(例えばサトウダイコン、バナナ、ダイズ、イネ)に取り付くケルコスポラ属;トマト、イチゴ、野菜、ブドウの木などの宿主に取り付くボトリチス・キネレア(灰色かび病)と、他の宿主に取り付くボトリチス属;野菜(例えばニンジン)、ナタネ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、穀類(例えばコムギ)などの宿主に取り付くアルテルナリア属;リンゴ、ナシ、核果、木の実などの宿主に取り付くベンチュリア属(ベンチュリア・イネクアリス(赤かび病)など);穀類(例えばコムギ)とトマトを含む広範な宿主に取り付くクラドスポリウム属;核果、木の実などの宿主に取り付くモニリニア属;トマト、芝、コムギ、ウリ科植物などの宿主に取り付くジジメラ属;ナタネ、芝、イネ、ジャガイモ、コムギなどの宿主に取り付くフォーマ属;コムギ、挽材などの宿主に取り付くアスペルギルス属とアウレオバシジウム属;エンドウマメ、コムギ、オオムギなどの宿主に取り付くアスコキイタ属;リンゴ、ナシ、タマネギなどの宿主に取り付くステンフィリウム属(プレオスポラ属);リンゴとナシに取り付く夏季病の菌(例えば炭疸病(グロメレラ・キングラタ)、黒斑病または白星病(ボトリオスフェリア・オブツサ)、ブルックス果実斑点病(マイコスフェレラ・ポミ)、コブ病(ギムノスポランギウム・ジュニペリ-ヴィルジニアネ)、すす点病(グレオデス・ポミゲナ)、すす点病(スキゾチリウム・ポミ)、木材白腐れ病(ボトリオスフェリア・ドチデア));ブドウの木に取り付くプラスモパラ・ヴィチコラ;他のべと病菌(例えば、レタスに取り付くブレミア・ラクツケ、ダイズ、タバコ、タマネギなどの宿主に取り付くペロノスポラ属、ホップに取り付くプソイドペロノスポラ・フムリ、ウリ科植物に取り付くプソイドペロノスポラ・クベンシス);芝などの宿主に取り付くピチウム属(ピチウム・ウルチムムなど);ジャガイモとトマトに取り付くフィトフトラ・インフェスタンスと、野菜、イチゴ、アボカド、コショウ、装飾用植物、タバコ、ココアなどの宿主に取り付く他のフィトフトラ属;イネと芝に取り付くサナテフォラス・ククメリスと、さまざまな宿主(例えばコムギ、オオムギ、ピーナツ、野菜、ワタ、芝)に取り付く他のリゾクトニア属;芝、ピーナツ、ジャガイモ、ナタネなどの宿主に取り付くスクレロチニア属;芝、ピーナツなどの宿主に取り付くスクレロチウム属;イネに取り付くギベレラ・フジクロイ;芝、コーヒー、野菜を含む広範な宿主に取り付くコレトトリチュム属;芝に取り付くレチサリア・フキフォルミス;バナナ、ピーナツ、柑橘類、ペカン、パパイヤなどの宿主に取り付くマイコスフェレラ属;柑橘類、ダイズ、メロン、ナシ、ルピナスなどの宿主に取り付くジアポルテ属;柑橘類、ブドウの木、オリーブ、ペカン、バラなどの宿主に取り付くエルシノエ属;ホップ、ジャガイモ、トマトを含む広範な宿主に取り付くヴェルチキリウム属;ナタネなどの宿主に取り付くピレノペジザ属;ココアに取り付いて導管穂枯れ病を引き起こすオンコバシジウム・テオブロメ;多彩な宿主、その中でも特にコムギ、オオムギ、芝、トウモロコシに取り付くフザリウム属、チフラ属、ミクロドチウム・ニヴァレ、ウスチラゴ属、ウロキスチス属、チレチア属、クラヴィケプス・プルプレア;サトウダイコン、オオムギなどの宿主に取り付くラムラリア属;特に果実の収穫後の病気(例えばオレンジに取り付くペニシリウム・ディギタツム、ペニシリウム・イタリクム、トリコデルマ・ヴィリデ、バナナに取り付くコレトトリチュム・ムセ、グレオスポリウム・ムサルム、ブドウに取り付くボトリチス・キネレア);ブドウの木に取り付く他の病原菌で、特にユーティパ・ラタ、グイグナルジア・ビドウェリイ、フェリヌス・イグニアルス、フォモプシス・ヴィチコラ、プソイドペジザ・トラケイフィラ、ステレウム・ヒルスツム;木に取り付く他の病原菌(例えばロフォデルミウム・セディチオスム)または挽木に取り付く他の病原菌(特にケファロゲナスクス・フラグランス、ケラトシスチス属、オフィオストマ・ピケエ、ペニシリウム属、トリコデルマ・プソイドコニンギー、トリコデルマ・ヴィリデ、トリコデルマ・ハルジアヌム、アスペルギルス・ニゲール、レプトグラフィウム・リンドベルギ、アウレオバシジウム・プルランス;ウイルス病の真菌ベクター(例えばオオムギ黄色モザイクウイルス(BYMV)のベクターとして穀類に取り付くポリミクサ・グラミニスと、そう根病のベクターとしてサトウダイコンに取り付くポリミクサ・ベテ)。
【0068】
式(1)の化合物は、卵菌類のクラスの病原体(フィトフトラ・インフェスタンス、プラスモパラ種(例えばプラスモパラ・ヴィチコラ)、ピチウム種(例えばピチウム・ウルチムム)など)に対して特に優れた活性を示す。
【0069】
式(1)の化合物は、植物組織の中で上方に、または下方に、または局所的に移動して1種類以上の真菌に対して活性になることができる。さらに、式(1)の化合物は、植物に取り付く1種類以上の真菌に対して蒸気相において十分な活性を持つよう揮発性にすることができる。
【0070】
したがって、本発明は、植物、植物の種子、植物または種子が存在する場所、土または任意の他の植物成長培地、例えば栄養溶液に、式(1)の化合物または式(1)の化合物を含む組成物の殺菌上有効な量を適用することを含む、植物病原性菌に対抗する方法、または植物病原菌を抑制する方法を提供する。
【0071】
本明細書で用いる用語「植物」には、苗、潅木、木が含まれる。さらに、本発明の殺菌方法には、保護処理、治癒処理、全身処理、根絶処理、胞子形成防止処理が含まれる。
【0072】
式(1)の化合物は、好ましくは、農業、園芸、芝を対象として組成物の形態で使用する。
【0073】
式(1)の化合物は、植物、植物の種子、植物または種子が存在する場所、土またはそれ以外の任意の植物成長培地に適用するため、通常は組成物に調製される。この組成物は、式(1)の化合物に加え、好適な不活性な希釈剤または担体と、必要に応じて界面活性剤(SFA)とを含んでいる。SFAは、面間の張力を低下させることによって界面(例えば液体/固体、液体/空気、液体/液体の界面)の性質を変え、その結果として他の性質(例えば分散、乳化、湿潤化)を変化させることのできる化学物質である。すべての組成物(固体製剤と液体製剤の両方)は、式(1)の化合物を0.0001〜95重量%含んでいることが好ましい。より好ましい含有量は1〜85重量%であり、例えば5〜60重量%含まれる。この組成物は一般に真菌を抑制するのに用いられる。そのとき式(1)の化合物は、1ヘクタールにつき0.1g〜10kgの割合で散布される。より好ましくは、1ヘクタールにつき1g〜6kgの割合で散布され、さらに好ましくは、1ヘクタールにつき1g〜1kgの割合で散布される。
【0074】
式(1)の化合物は、種子の被覆として用いる場合には、種子1キログラムにつき0.0001g〜10g(例えば0.001g〜0.05g)使用される。この値は、好ましくは種子1キログラムにつき0.005g〜10gであり、より好ましくは0.005g〜4gである。
【0075】
別の特徴では、本発明は、殺菌上有効な量の式(1)の化合物と、そのための好適な担体または希釈剤とを含む殺菌組成物を提供する。
【0076】
さらに別の特徴では、本発明は、ある場所にいる真菌に対抗する方法、またはある場所にいる真菌を抑制する方法であって、その真菌、またはその真菌がいる場所を、殺菌上有効な量の式(1)の化合物で処理することを含む方法を提供する。
【0077】
本発明の組成物は、多数の製剤種から選択することができる。その種類としては、ダスト化可能な粉末(DP)、可溶性粉末(SP)、水溶性顆粒(SG)、水に分散させることのできる顆粒(WG)、湿潤化可能な粉末(WP)、顆粒(GR)(ゆっくりとした放出または素早い放出)、可溶性濃縮物(SL)、油と混和可能な液体(OL)、超低容積液体(UL)、乳化可能な濃縮物(EC)、分散可能な濃縮物(DC)、エマルジョン(水中油型(EW)と油中水型(EO)の両方)、マイクロエマルジョン(ME)、懸濁濃縮物(SC)、エーロゾル、噴霧用製剤、カプセル懸濁液(CS)、種子処理用製剤がある。いかなる場合にも、どのタイプの製剤を選択するかは、目的とする具体的な用途と、式(1)の化合物の物理的、化学的及び生物学的な性質とによって決まる。
【0078】
ダスト化可能な粉末(DS)は、式(1)の化合物を1種類以上の固体希釈剤(例えば天然の粘土、カオリン、葉蝋石、ベントナイト、アルミナ、モンモリロナイト、珪藻土、チョーク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、イオウ、石灰、小麦粉、タルク、およびこれら以外の有機固体担体と無機固体担体)と混合した後、機械でこの混合物を粉砕して細かい粉末にすることによって調製できる。
【0079】
可溶性粉末(SP)は、式(1)の化合物を1種類以上の水溶性無機塩(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウム)または1種類以上の水溶性有機固体(例えば多糖)と混合し、必要に応じ、水への分散性/溶解性を向上させるための1種類以上の湿潤剤、1種類以上の分散剤、またはこれら湿潤剤と分散剤の混合物と混合することによって調製できる。次にこの混合物を粉砕して細かい粉末にする。同様の組成物を粒状化して水溶性顆粒(SG)を形成することもできる。
【0080】
湿潤化可能な粉末(WP)は、式(1)の化合物を、1種類以上の固体の希釈剤または担体と、1種類以上の湿潤剤と、好ましくは1種類以上の分散剤と混合し、必要に応じ、液体への分散を容易にするための1種類以上の懸濁剤とも混合することによって調製できる。次にこの混合物を粒状化して細かい粉末にする。同様の組成物を粒状化して水に分散させることのできる顆粒(WG)を形成することもできる。
【0081】
顆粒(GR)は、式(1)の化合物と粉末化した1種類以上の固体希釈剤または固体担体との混合物を粒状化して形成すること、またはあらかじめ形成した未使用の顆粒から、式(1)の化合物(または好適な媒体にこの化合物を溶かした溶液)を多孔性粒状物質(例えば軽石、アタパルジャイト粘土、フーラー土、珪藻土、すりつぶしたトウモロコシの穂軸)に吸収させるか、式(1)の化合物(または好適な媒体にこの化合物を溶かした溶液)を硬いコア材料(例えば砂、ケイ酸塩、無機の炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩)の表面に吸着させた後、必要ならば乾燥させて形成することができる。吸収または吸着を助けるのに一般に使用される媒体としては、溶媒(例えば脂肪族と芳香族の石油溶媒、アルコール、エーテル、ケトン、エステル)や付着剤(例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖、植物油)などがある。他の1種類以上の添加剤(例えば乳化剤、湿潤剤、分散剤)が顆粒に含まれていてもよい。
【0082】
分散可能な濃縮液(DC)は、式(1)の化合物を水または有機溶媒(例えばケトン、アルコール、グリコールエーテル)に溶かすことによって調製できる。この濃縮物は、(例えば水で希釈しやすくするため、またはスプレイ・タンク内での結晶化を防止するため)界面活性剤を含んでいてもよい。
【0083】
乳化可能な濃縮液(EC)または水中油型エマルジョン(EW)は、式(1)の化合物を有機溶媒(必要に応じ、1種類以上の湿潤剤、1種類以上の乳化剤、またはこれら湿潤剤と乳化剤の混合物を含む)の中に溶かすことによって調製できる。ECで用いるのに適した有機溶媒としては、芳香族炭化水素(例えばアルキルベンゼン、アルキルナフタレン(例えばSOLVESSO 100、SOLVESSO 150、SOLVESSO 200;SOLVESSOは登録商標))、ケトン(例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサノン)、アルコール(例えばベンジルアルコール、フルフリルアルコール、ブタノール)、N-アルキルピロリドン(例えばN-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン)、脂肪酸のジメチルアミド(例えばC8〜C10脂肪酸ジメチルアミド)、塩素化炭化水素などが挙げられる。EC製品は、水を添加すると自発的に乳化して十分な安定性を持つエマルジョンになるため、好適な装置を通じてスプレイすることができる。
【0084】
EWの調製には、式(1)の化合物を液体(室温で液体でない場合には、一般に70℃未満の適温で溶かすとよい)または(好適な溶媒に溶かして)溶液にした後、得られた液体または溶液を、1種類以上のSFAを含む水の中で高剪断力のもとで乳化してエマルジョンを得る操作が含まれる。EWで用いるのに適した溶媒としては、植物油、塩素化炭化水素(例えばクロロベンゼン)、芳香族溶媒(例えばアルキルベンゼン、アルキルナフタレン)、水への溶解度が小さい他の好適な有機溶媒などが挙げられる。
【0085】
マイクロエマルジョン(ME)は、水を、1種類以上の溶媒と1種類以上のSFAの混合物に混合して自発的に熱力学的に安定な等張性液体製剤にすることによって調製できる。式(1)の化合物は、最初は水または溶媒/SFA混合物の中に存在している。MEで用いるのに適した溶媒としては、ECまたはEWで使用する上記のものが挙げられる。MEは水中油型または油中水型になることができ(どちらの型が存在しているかは、導電率の測定からわかる)、同じ製剤内で水溶性殺虫剤と油溶性殺虫剤を混合するのに適している。MEは水で希釈するのに適しており、その結果、マイクロエマルジョンのままになるか、従来の水中油型エマルジョンが形成される。
【0086】
懸濁濃縮液(SC)は、式(1)の化合物を細かく分割した不溶性固体粒子を含む水性または非水性の懸濁液を含有することができる。SCは、式(1)の固体化合物を、必要に応じて1種類以上の分散剤とともに好適な媒体中でボールまたはビーズで粉砕してこの化合物の微粒子懸濁液を作ることによって調製できる。1種類以上の湿潤剤もこの組成物の中に含まれていてよい。粒子ができる速度を遅くするために懸濁剤が含まれていてもよい。式(1)の化合物を乾燥状態で粉砕した後、上記の分散剤や湿潤剤が含まれた水に添加して望む最終生成物を作ることもできる。
【0087】
アエロゾル製剤は、式(1)の化合物と好適な推進剤(例えばn-ブタン)を含んでいる。式(1)の化合物を好適な媒体(例えば水、または水と混和する液体(例えばn-プロパノール))に溶解または分散させることにより、手動操作する非加圧式スプレイポンプで使用する組成物を得ることもできる。
【0088】
式(1)の化合物は、乾燥状態で火工混合物と混合することにより、閉鎖空間でこの化合物を含む煙を発生させるのに適した組成物を形成することができる。
【0089】
カプセル懸濁液(CS)は、EW製剤の調製と同様にして調製できるが、油滴の水性分散液を得るための追加の重合段階がある点が異なっている。それぞれの油滴はポリマー殻で覆われており、式(1)の化合物と、必要に応じて担体または希釈剤を含んでいる。ポリマー殻は、界面縮合重合反応またはコアセルベーション法によって作ることができる。得られた組成物は、式(1)の化合物を制御放出することが可能であり、種子の処理に使用できる。式(1)の化合物を生物分解性ポリマー・マトリクスの中で製剤化し、この化合物を制御した状態でゆっくりと放出させることもできる。
【0090】
組成物は、この組成物の生物学的性能を向上させる(例えば表面での湿潤性、保持性、分布性;処理した表面の耐雨性;式(1)の化合物の取り込みまたは移動性を向上させる)ための1種類以上の添加剤を含むことができる。そのような添加剤としては、界面活性剤、油をベースとしたスプレイ添加剤(例えばある種の鉱物油または天然植物油(ダイズ油、ナタネ油など))、これらを他の生物的亢進補充剤(式(1)の化合物の作用を補助したり変化させたりすることのできる成分)と混合したものなどが挙げられる。
【0091】
式(1)の化合物は、種子処理剤として用いるための製剤にすることもできる。この製剤は、例えば粉末組成物(例えば乾燥種子処理のための粉末(DS)、水溶性粉末(SS)、スラリー処理のために水に分散させることのできる粉末(WS))として、または液体組成物(例えば流動可能な濃縮物(FS)、溶液(LS)、カプセル懸濁液(CS))として使用する。DS、SS、WS、FS、LSという組成物の調製法は、それぞれ、上に説明したDP、SP、WP、SC、DCという組成物の調製法と非常によく似ている。種子を処理するための組成物は、この組成物が種子に付着するのを助ける物質(例えば鉱物油、フィルム形成障壁)を含むことができる。
【0092】
湿潤剤、分散剤、乳化剤として、カチオンSFA、アニオンSFA、両性SFA、非イオン性SFAが可能である。
【0093】
カチオン型の好適なSFAとしては、第四級アンモニウム化合物(例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド)、イミダゾリン、アミン塩などが挙げられる。
【0094】
好適なアニオンSFAとしては、脂肪酸のアルカリ金属塩、硫酸の脂肪族モノエステルの塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、スルホン化芳香族化合物の塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、スルホン酸ブチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムとトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの混合物)、エーテル硫酸塩、アルコールエーテル硫酸塩(例えばラウレス-3-硫酸ナトリウム)、エーテルカルボン酸塩(例えばラウレス-3-カルボン酸ナトリウム)、リン酸エステル(1種類以上の脂肪アルコールとリン酸の反応による生成物(主にモノエステル)、1種類以上の脂肪アルコールと五酸化リンの反応による生成物(主にジエステル)(例えばラウリルアルコールと四リン酸の反応);これら生成物はさらにエトキシル化するとよい)、スルホスクシンアミド酸塩、パラフィンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、タウリン酸塩、リグノスルホン酸塩などが挙げられる。
【0095】
両性型の好適なSFAとしては、ベタイン、プロピオン酸塩、グリシン酸塩などが挙げられる。
【0096】
非イオン型の好適なSFAとしては、アルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、これらの混合物)と、脂肪アルコール(例えばオレイルアルコール、セチルアルコール)またはアルキルフェノール(例えばオクチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルクレゾール)との縮合生成物;長鎖の脂肪酸またはヘキシトール無水物に由来する部分エステル;この部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物;(エチレンオキシド、プロピレンオキシドを含む)ブロック・ポリマー;アルカノールアミド;単純なエステル(例えば脂肪酸ポリエチレングリコールエステル);アミンオキシド(例えばラウリルジメチルアミンオキシド);レシチンなどが挙げられる。
【0097】
好適な懸濁剤としては、親水性コロイド(例えば多糖、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、膨潤粘土(例えばベントナイト、アタパルジャイト)などが挙げられる。
【0098】
式(1)の化合物は、殺菌化合物を適用するための公知の任意の方法を利用して適用することができる。例えば製剤化した状態またはしていない状態で、植物の任意の部分(葉、幹、枝、根)、播く前の種子、植物を成長させたり植えたりするための他の媒体(例えば根を取り囲んでいる土、土全般、泥水、水耕栽培システム)に直接適用することや、スプレイによる付着、ダストとしての散布、浸漬による付着、クリーム製剤またはペースト製剤としての付着、蒸気としての付着、土または水性環境への組成物(例えば顆粒状組成物または水溶性の袋に入れた組成物)の散布または組み込みを通じた付着が可能である。
【0099】
式(1)の化合物は、植物の内部に注入すること、電気力学的スプレイ法または他の低容積法を利用して植物の表面にスプレイすること、地上潅漑システムまたは空中潅漑システムにより付着させることが可能である。
【0100】
水性調製物(水溶液または分散液)として使用する組成物は、一般に、活性成分を大きな割合で含む濃縮液の形態で提供され、使用する前に水を添加する。この濃縮物(DC、SC、EC、EW、ME、SG、SP、WP、WG、CSを含んでいる可能性がある)は、長期にわたる保管に耐えねばならないことがしばしばあり、しかもそのような保管期間の後に水に添加して水性調製物を形成したとき、従来のスプレイ装置での付着が可能となるよう、その水性調製物が十分な時間にわたって均一な状態を維持できなくてはならない。このような水性調製物は、使用目的に応じ、式(1)の化合物をさまざまな量(例えば0.0001〜10重量%)含むことができる。
【0101】
式(1)の化合物は、肥料(例えば窒素、カリウム、リンを含有する肥料)との混合物として使用できる。好適なタイプの製剤としては、肥料の顆粒がある。この混合物は、式(1)の化合物を25重量%まで含むことが好ましい。
【0102】
したがって本発明により、肥料と式(1)の化合物を含む肥料組成物も提供される。
【0103】
本発明の組成物は、生物活性を有する他の化合物(例えば微量栄養素、似たような殺菌活性または補助的な殺菌活性を有する化合物、植物の成長制御活性、除草活性、殺虫活性、殺線虫活性、ダニ駆除活性を有する化合物)を含むことができる。
【0104】
他の殺菌剤を含めることにより、得られる組成物は、式(1)の化合物を単独で使用する場合と比べ、より広い活性スペクトル、またはより高いレベルの固有活性を持つことができる。さらに、他の殺菌剤は、式(1)の化合物が持つ殺菌活性に対して相乗的な効果を持つ可能性がある。
【0105】
式(1)の化合物は、組成物に含まれる唯一の活性成分であってもよいし、必要に応じて1種類以上の追加活性成分(例えば殺虫剤、殺菌剤、相乗剤、除草剤、植物生長調節因子)と混合してもよい。追加活性成分により、活性スペクトルがより広くなったり、ある場所における持続力が増大したりした組成物が提供される可能性;(例えば効果が早く現われるようにしたり、反発を阻止することにより)式(1)の化合物の活性が相乗的に大きくなったり、活性が補われたりする可能性;個々の成分に対する抵抗が大きくなるのを停止または阻止するのを補助する可能性がある。具体的な追加活性成分を何にするかは、その組成物を何に使用するかによって異なる。
【0106】
本発明の組成物に含まれる殺菌化合物の例として、以下のものが挙げられる:AC 382042(N-(1-シアノ-1,2-ジメチルプロピル)-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)プロピオンアミド)、アシベンゾラル-S-メチル、アラニカルブ、アルジモルフ、アニラジン、アザコナゾール、アザフェニジン、アゾキシストロビン、ベナラキシル、ベノミル、ベンチアバリカルブ、ビロキサゾール、ビテルタノール、ブラスチサイジンS、ボスカリド(ニコビフェンに対する新名称)、ブロムコナゾール、ブピリメート、キャプタフォル、キャプタン、カルベンダジム、カルベンダジム塩酸塩、カルボキシン、カルプロパミド、カルボーン、CGA 41396、CGA 41397、キノメチオネート、クロルベンズチアゾン、クロロタロゲニル、クロロゾリネート、クロジラコン、銅含有化合物(例えば銅オキシクロリド、銅オキシキノレート、硫酸銅、銅タレート、ボルドー混液)、シアミダゾスルファミド、シアゾファミド(IKF-916)、シフルフェナミド、シモキサニル、シプロコナゾール、シプロジニル、デバカルブ、ジ-2-ピリジルジスルフィド 1,1'-ジオキシド、ジクロフルアニド、ジクロシメット、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジフェノコナゾール、ジフェンゾクアット、ジフルメトリム、O,O-ジ-イソ-プロピル-S-ベンジルチオホスフェート、ジメフルアゾール、ジメトコナゾール、ジメチリモル、ジメトモルフ、ジモキシストロビン、ジニコナゾール、ジノカップ、ジチアノン、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ドデモルフ、ドジン、ドグアジン、エジフェンホス、エポキシコナゾール、エタボキサム、エチリモール、(Z)-N-ベンジル-N([メチル(メチルチオエチリデンアミノオキシカルボニル)アミノ]チオ)-β-アラニン酸エチル、エトリジアゾール、ファモキサドン、フェナミドン、フェナリモル、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンヘキサミド、フェノキサニル(AC 382042)、フェンピクロニル、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、酢酸フェンチン、水酸化フェンチン、フェルバム、フェリムゾン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルメトーバー、フルモルフ、フルオロイミド、フルオキサストロビン、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルスルファミド、フルトラニル、フルトリアフォル、フォルペット、フォセチル-アルミニウム、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、グアザチン、ヘキサコナゾール、ヒドロキシイソオキサゾール、ヒメキサゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イミノクタジン、三酢酸イミノクタジン、イプコナゾール、イプロベンホス、イプロジオン、イプロバリカルブ、イソプロパニルブチルカルバメート、イソプロチオラン、カスガマイシン、クレソキシム-メチル、LY 186054、LY 211795、LY 248908、マンコゼブ、マネブ、メフェノキサム、メパニピリム、メプロニル、メタラキシル、メタラキシルM、メトコナゾール、メチラム、メチラム-亜鉛、メトミノストロビン、メトラフェノン、MON65500(N-アリル-4,5-ジメチル-2-トリメチルシリルチオフェン-3-カルボキサミド)、ミクロブタニル、NTN0301、ネオアソジン、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、ニトロタール-イソプロピル、ヌアリモル、オフレース、有機水銀化合物、オリサストロビン、オキサジキシル、オキサスルフロン、オキソリニック酸、オキスポコナゾール、オキシカルボキシン、ペフラゾエート、ペンコナゾール、ペンシクロン、フェナジンオキシド、亜リン酸、フサライド、ピコキシストロビン、ポリオキシンD、ポリラム、プロベナゾール、プロクロラズ、プロシミドン、プロパモカルブ、プロパモカルブ塩酸塩、プロピコナゾール、プロピネブ、プロピオン酸、プロキナジド、プロチオコナゾール、ピラクロストロビン、ピラゾホス、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピロキロン、ピロキシフル、ピロルニトリン、第四級アンモニウム化合物、キノメチオネート、キノキシフェン、キントゼン、シルチオファム(MON65500)、S-イマザリル、シメコナゾール、シプコナゾール、ペンタクロロフェン酸ナトリウム、スピロキサミン、ストレプトマイシン、イオウ、テブコナゾール、テクロフタラム、テクナゼン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、チフルザミド、2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、チオファネート-メチル、チラム、チアジニル、チミベンコナゾール、トルクロホス-メチル、トリルフルアニド、トリアジメホン、トリアジメノール、トリアズブチル、トリアゾキシド、トリシクラゾール、トリデモルフ、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、バリダマイシンA、バパム、ビンクロゾリン、XRD-563、ジネブ、ジラム、ゾキサミド、ならびに以下の式で表わされる化合物。
【0107】
【化8】

【0108】
式(1)の化合物は、種子が媒介する病気、土が媒介する病気、真菌による葉の病気から植物を保護するため、土、ピート、または根を生やすための他の媒体と混合することができる。
【0109】
混合物によっては、物理的、化学的、生物学的な性質が大きく異なっているために従来と同じタイプの製剤だとそのままでは役立たない活性成分を含むことができる。その場合、他のタイプの製剤を調製することができる。例えば1つの活性成分が水に溶けない固体で他方の成分が水に溶けない液体である場合には、固体活性成分は(SC調製物と同様の調製物を用いて)懸濁液として分散させるが、液体活性成分は(EW調製物と同様の調製物を用いて)エマルジョンとして分散させることによってそれぞれの活性成分を同じ連続的な水相に分散させることができる。得られる組成物は、懸濁エマルジョン(SE)製剤である。
【0110】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0111】
実施例1
この実施例では、スキーム1に示した2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表1の化合物番号1、表7の化合物番号1)の調製を説明する。
【0112】
ステップ1:(メチルチオ)酢酸エチル(10.8ml)をジクロロメタン(300ml)に溶かして-15℃に冷やした溶液を撹拌している中に、塩化スルフリル(8.1ml)を一滴ずつ添加する。得られた混合物を放置して2時間かけて室温まで温めた後、減圧下で濃縮すると、粗クロロ-メチルスルファニル-酢酸エチルエステルが無色の液体として得られる。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用する。1H NMR (CDCl3)δppm:5.35 (1H, s);4.25 (2H, m);2.30 (3H, s);1.30 (3H, t)。
【0113】
ステップ2:3-ヨード-6-ヒドロキシキノリンの調製
アルゴン下にある密封したチューブの中で、3-ブロモ-6-ヒドロキシキノリン(調製法は、Liebigs Ann. Chem.、1966年、98〜106頁に記載)(3.0g)と、ヨウ化ナトリウム(4.0g)と、ヨウ化銅(0.25g)の混合物を含むジオキサン(19.5ml)を撹拌している中に、N,N'-テトラメチル-エタン-1,2-ジアミン(0.24g)を添加する。この混合物を120℃にて14時間にわたって撹拌し、冷却した後、アンモニア水で処理し、次いで塩酸水溶液で処理してpHを5にする。酢酸エチルを用いて抽出し、硫酸マグネシウム上で有機相を乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させると、必要な生成物が明るい茶色の粉末として得られる((M+1)+272)。それをそのまま次のステップで使用する。
【0114】
ステップ3:2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ酢酸エチルの調製
ステップ2からの3-ヨード-キノリン-6-オール(1.0g)を乾燥DMF(10ml)に溶かす。この混合物に2-クロロ-2-メチルスルファニル-酢酸エチルエステル(740mg)と乾燥炭酸カリウム(1.4g)を室温にて添加する。得られた懸濁液を50℃にて3時間にわたって撹拌する。この反応混合物をブラインの中に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出する。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させる。フラッシュ・クロマトグラフィ(シクロヘキサン:酢酸エチル、2:1)の後、2-(3-ヨードキノリン-6-イルオキシ)-2-メチルチオ酢酸エチルが淡い黄色の固形物として1.05g得られる。1H NMR (CDCl3)δppm:8.90 (1H, d);8.45 (1H, d);8.00 (1H, d);7.50 (1H, dd);7.10 (1H, d);5.70 (1H, s);4.35 (2H, m);2.22 (3H, s);1.35 (3H, t)。
【0115】
ステップ4:2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ酢酸の調製
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ酢酸エチル(1.05g)を0℃のテトラヒドロフラン(20ml)に溶かした溶液に0.5MのNaOH水溶液(6.8ml)を添加する。得られた反応混合物を室温にて4時間にわたって撹拌する。酢酸エチルを添加し、2つの相を分離する。水相を1MのHClで(pH2〜3まで)酸性化した後、酢酸エチルで2回抽出する。有機相を1つにまとめ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させると、粗2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ酢酸が0.90g得られる。それをそれ以上精製せずに次のステップで使用する。1H NMR (DMSO-d6)δppm:13.5 (1H, br s);8.90 (1H, d);8.70 (1H, d);7.95 (1H, d);7.55 (1H, dd);7.40 (1H, d);6.05 (1H, s);2.15 (3H, s)。
【0116】
ステップ5:2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ酢酸(250mg)と、N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アミン(67mg)と、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAT)(109mg)と、O-(ベンゾトリアゾル-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)(257mg)と、トリエチルアミン(0.3ml)を含む乾燥CH3CN(8ml)を周囲温度にて一晩撹拌する。この反応混合物を飽和NaHCO3溶液でクエンチさせ、酢酸エチルで抽出する。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させる。粗生成物をフラッシュ・クロマトグラフィ(シクロヘキサン:酢酸エチル、3:1)によって精製すると、2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミドが白色の固形物として233mg得られる。
【0117】
表1の化合物:1H NMR (CDCl3)δppm:8.95 (1H, d);8.45 (1H, d);8.05 (1H, d);7.45 (1H, dd);7.15 (1H, d);6.70 (1H, br s);5.62 (1H, s);2.40 (1H, s);2.20 (3H, s);1.72 (6H, s)。
【0118】
以下のアミドを同様の手段を利用して調製する。
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表1の化合物番号2と表7の化合物番号2)、
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルヘクス-3-イン-2-イル)アセトアミド(表1の化合物番号3と表7の化合物番号5)、
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(5-メトキシ-2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表1の化合物番号20と表7の化合物番号3)、
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(6-メトキシ-2-メチルヘクス-3-イン-2-イル)アセトアミド(表1の化合物番号21と表7の化合物番号4)、
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-エチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表7の化合物番号6)、
2-(3-ヨードキノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-エチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表7の化合物番号7)。
【0119】
実施例2
この実施例では、2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表2の化合物番号2と表7の化合物番号9)の調製を説明する。
【0120】
ステップ1:3-ブロモ-8-メチル-6-ヒドロキシキノリンの調製
水(5ml)とリン酸(60ml)の混合物に6-アミノ-3-ブロモ-8-メチルキノリン(12g)(調製法は、Journal of the American Chemical Society、1955年、4175〜4176頁に記載)を懸濁させ、密封したガラス・チューブの中で3日間にわたって180℃に加熱する。この混合物を周囲温度まで冷却し、水で希釈した後、水酸化ナトリウム水溶液(2M)でpHを3〜4にする。形成された沈殿物を溶液から濾過して取り出し、冷たい水で洗浄し、吸引して乾燥させると、3-ブロモ-6-ヒドロキシ-8-メチルキノリンが灰色の固形物として得られる。
1H NMR (d6-DMSO) δ ppm:8.61 (1H, d);8.38 (1H, d);7.15 (1H, d);6.91 (1H, d);2.56 (3H, s)。
【0121】
出発材料として実施例2のステップ1からの3-ブロモ-8-メチル-6-ヒドロキシキノリンを用いて実施例1、ステップ2〜5の手段を繰り返すと、表2の化合物2である2-(3-ヨード-8-メチル-キノリン-6-イルオキシ)-N-(2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミドが淡い黄色の固形物として得られる。1H NMR (CDCl3) δ ppm:8.93 (1H, d);8.41 (1H, d);7.30 (1H, d);6.97 (1H, d);6.70 (1H, br s);5.60 (1H, s);2.75 (3H, s);2.20 (3H, s);1.82 (3H, s);1.70 (3H, s);1.68 (3H, s)。
【0122】
以下のアミドを同様の手段を利用して調製する。
2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表2の化合物番号1と表7の化合物番号8)、
2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルヘクス-3-イン-2-イル)アセトアミド(表2の化合物番号3と表7の化合物番号12)、
2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(5-メトキシ-2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表2の化合物20番と表7の化合物番号10)、
2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(6-メトキシ-2-メチルヘクス-3-イン-2-イル)アセトアミド(表2の化合物21番と表7の化合物番号11)、
2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-エチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表7の化合物番号13)、
2-(3-ヨード-8-メチル-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-エチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表7の化合物番号14)。
【0123】
実施例3
本実施例では、2-(8-クロロ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表4の化合物番号1と表7の化合物番号15)の調製を説明する。
【0124】
ステップ1:8-クロロ-3-ヨード-6-ヒドロキシキノリンの調製
アルゴン下にある密封したチューブの中で、3-ブロモ-8-クロロ-6-ヒドロキシキノリン(5.0g)(調製法は、WO 2004/108663に記載)と、ヨウ化ナトリウム(5.8g)と、ヨウ化銅(0.37g)との混合物を含むジオキサン(65ml)を撹拌している中にN,N"-ジメチル-エタン-1,2-ジアミン(0.34g)を添加する。この混合物を120℃にて14時間にわたって撹拌し、冷却した後、アンモニア水で処理し、次いで塩酸水溶液で処理する(pHを5にする)。酢酸エチルを用いて抽出し、硫酸マグネシウム上で有機相を乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させると、必要な生成物が得られる((M+1)+306)。それをそのままま次のステップで使用する。
【0125】
上記のステップ1からの8-クロロ-3-ヨード-6-ヒドロキシキノリンを出発材料として用いて実施例1、ステップ3〜5の手段を繰り返すと、2-(8-クロロ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表4の化合物番号1)が白色の固形物として得られる。1H NMR (CDCl3) δ ppm:9.05 (1H, d);8.50 (1H, d);7.61 (1H, d);7.10 (1H, d);6.68 (1H, br s);5.60 (1H, s);2.40 (3H, s);2.20 (3H, s);1.72 (6H, s)。(M+1)+:475。
【0126】
以下のアミドを同様の手段を利用して調製する。
2-(8-クロロ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表4の化合物番号2と表7の化合物番号16)、
2-(8-クロロ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(5-メトキシ-2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表2の化合物番号20と表7の化合物番号17)。
【0127】
実施例4
この実施例では、2-(8-ブロモ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号1と表7の化合物番号18)の調製を説明する。
【0128】
ステップ1:8-ブロモ-3-ヨード-6-ヒドロキシキノリンの調製
ステージ1:実施例1のステップ2と同様の手段により、アルゴン下にある密封したチューブの中で、8-アミノ-3-ブロモ-6-メトキシキノリン(調製法は、Journal of Pharmaceutical Sciences、1984年、第73巻(12)、1854〜1856頁に記載)(6.0g)を、ヨウ化ナトリウムと、ヨウ化銅と、N,N'-ジメチル-エタン-1,2-ジアミンとを含むジオキサンで120℃にて14時間にわたって処理する。ワーク-アップの後、粗生成物をフラッシュ・クロマトグラフィ(酢酸エチル:シクロヘキサン、1:4)によって精製すると、8-アミノ-3-ヨード-6-メトキシキノリンが純粋な生成物として得られる(4.6g)。1H NMR (CDCl3) δ ppm:8.70 (1H, d);8.30 (1H, d);6.55 (1H, d);6.35 (1H, d);5.00 (2H, br s);3.85 (3H, s)。(M+1)+:301。
【0129】
ステージ2:8-アミノ-3-ヨード-6-メトキシキノリン(2.0g)をHBr(20ml)に懸濁させた懸濁液を0℃に冷やし、亜硝酸ナトリウム(0.48g)を水(4ml)に溶かした溶液で処理する。次に、10mlの濃HBrにCuBr2(1.64g)を溶かしてあらかじめ60℃に加熱した紫色の溶液に、このネバネバした冷たい懸濁液を何回かに分けて添加する。3時間後、この混合物にNH4OH水溶液を添加してpHを14にする。この混合物を濾過した後、濾液をフラッシュ・クロマトグラフィ(CH2Cl2)によって精製すると、8-ブロモ-3-ヨード-6-メトキシキノリンが淡い黄色の固形物として得られる(2.2g)。1H NMR (CDCl3) δ ppm:8.92 (1H, d);8.32 (1H, d);7.65 (1H, d);6.82 (1H, d);3.87 (3H, s)。
【0130】
ステージ3:8-ブロモ-3-ヨード-6-メトキシキノリン(0.92g)と濃HBr(11ml)の混合物を3日間にわたって還流温度に加熱すると、出発材料が検出できなくなる。2MのNaOH水溶液を添加してpHを5にした後、得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相をブラインで洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させる。有機相を蒸発させると、8-ブロモ-3-ヨード-6-ヒドロキシキノリンが粗生成物として得られる。それをそのまま次のステップで使用する。1H NMR (DMSO-d6) δ ppm:10.50 (1H, br s);8.9 (1H, d);8.73 (1H, d);7.70 (1H, d);7.15 (1H, d)。(M+1)+:350/352。
【0131】
上記のステップ1、ステージ3からの8-ブロモ-3-ヨード-6-ヒドロキシキノリンを出発材料として用いて実施例1、ステップ3〜5の手段を繰り返すと、2-(8-ブロモ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号2と表7の化合物番号19)が得られる。1H NMR (CDCl3) δ ppm:9.02 (1H, d);8.48 (1H, d);7.82 (1H, d);7.12 (1H, d);6.70 (1H, br s);5.60 (1H, s);2.20 (3H, s);1.80 (3H, s);1.70 (3H, s);1.69 (3H, s)。融点:161〜162℃;(M+1)+:533〜535。
【0132】
以下のアミドを同様の手段を利用して調製する。
2-(8-ブロモ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号1と表7の化合物番号18)、
2-(8-ブロモ-3-ヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(5-メトキシ-2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号20と表7の化合物番号20)。
【0133】
実施例5
この実施例では、2-(3,8-ジヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(5-メトキシ-2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号20と表7の化合物番号23)の調製を説明する。
【0134】
ステップ1:3,8-ジヨード-6-ヒドロキシキノリンの調製
実施例1のステップ2と同様の手段により、アルゴン下にある密封したチューブの中で、3,8-ジブロモ-6-ヒドロキシキノリン(調製法は、WO 2004/108663に記載)(6.0g)を、ヨウ化ナトリウムと、ヨウ化銅と、N,N'-ジメチル-エタン-1,2-ジアミンとを含むジオキサンで120℃にて2日間にわたって処理する。この混合物を冷却した後、アンモニア水で処理し、次いで塩酸水溶液で処理する(pHを5にする)。酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウム上で有機相を乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させると、3,8-ジヨード-6-ヒドロキシキノリンが得られる。それをそのまま次のステップで使用する。1H NMR (DMSO-d6) δ ppm:10.40 (1H, br s);8.80 (1H, d);8.60 (1H, d);7.90 (1H, d);7.10 (1H, d)。(M+1)+:398。
【0135】
上記のステップ1からの3,8-ジヨード-6-ヒドロキシキノリンを出発材料として用いて実施例1、ステップ3〜5の手段を繰り返すと、2-(3,8-ジヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(5-メトキシ-2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号20と表7の化合物番号23)が得られる。1H NMR (CDCl3) δ ppm:9.00 (1H, d);8.40 (1H, d);8.10 (1H, d);7.15 (1H, d);6.70 (1H, br s);5.60 (1H, s);4.10 (2H, s);3.39 (3H, s);2.20 (3H, s);1.72 (6H, s)。(M+1)+:611。
【0136】
以下のアミドを同様の手段を利用して調製する。
2-(3,8-ジヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルブト-3-イン-2-イル)アセトアミド(表6の化合物番号1と表7の化合物番号21)、
2-(3,8-ジヨード-キノリニル-6-オキシ)-2-メチルチオ-N-(2-メチルペント-3-イン-2-イル)アセトアミド(表5の化合物番号2と表7の化合物番号22)。
【0137】
表7
この表には、これまでに調製した化合物(その一部は表1〜6に掲載されている)に関する特徴のデータ(NMR、融点、屈折率のデータ)を示す。
【0138】
【表4】

【0139】
【表5】

【0140】
【表6】

【0141】
【表7】

【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
【表10】

【0145】
実施例6
この実施例では、式(1)の化合物の殺菌特性を説明する。
【0146】
化合物を円板状葉アッセイでテストする。その方法を以下に説明する。テスト化合物をDMSOに溶かし、水の中に希釈して200ppmにする。ピチウム・ウルチムムに関してテストする場合には、テスト化合物をDMSOに溶かし、水の中に希釈して20ppmにする。
【0147】
エリシフェ・グラミニスf.sp.トリティキ(コムギのうどんこ病菌):コムギの葉の切片を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0148】
プクキニア・レコンディタf.sp.トリティキ(コムギのさび病菌):コムギの葉の切片を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後9日間にわたって評価する。
【0149】
セプトリア・ノドルム(コムギの斑点病菌):コムギの葉の切片を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0150】
ピレノフォラ・テレス(オオムギの斑葉病菌)オオムギの葉の切片を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0151】
ピリキュラリア・オリゼ(イネのいもち病菌):イネの葉の切片を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0152】
ボトリティス・キネレア(灰色かび病菌):マメの円板状の葉を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0153】
フィトフトラ・インフェスタンス(トマトでのジャガイモ疫病菌):トマトの円板状の葉を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0154】
プラスモパラ・ヴィチコラ(ブドウの木のべと病菌):ブドウの木の円板状の葉を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後7日間にわたって評価する。
【0155】
ピチウム・ウルチムム(立ち枯れ病菌):新鮮な液体培地から調製したこの真菌の菌糸体の断片をジャガイモのデキストロース・ブロスに混合する。テスト化合物をジメチルスルホキシドに溶かした溶液を水で20ppmに希釈した後、96ウエルの微量滴定プレートに入れ、真菌胞子を含む上記の栄養ブロスを添加する。テスト用プレートを24℃でインキュベートし、48時間後に増殖の抑制を光度計で測定する。
【0156】
以下の化合物(最初に化合物番号、その次に表の番号を括弧の中に示す)は、200ppmの濃度で以下の真菌の感染を少なくとも60%抑制する。
【0157】
プラスモパラ・ヴィチコラ、化合物1 (4)、2 (4)、20 (4)、1 (6)、20 (6)、1 (1)、2 (1)、3 (1)、21 (1)、20 (1)、1 (2)、2 (2)、3 (2)、21 (2)、20 (2)、6 (7)、7 (7)、13 (7)、14 (7)、28 (7)、29 (7)、30 (7)、31 (7)、32 (7)、33 (7)、34 (7)。
【0158】
フィトフトラ・インフェスタンス、化合物1 (5)、2 (5)、20 (5)、1 (4)、2 (4)、20 (4)、20 (6)、1 (1)、2 (1)、3 (1)、21 (1)、20 (1)、1 (2)、2 (2)、3 (2)、21 (2)、20 (2)、6 (7)、7 (7)、13 (7)、14 (7)、28 (7)、29 (7)、30 (7)、31 (7)、32 (7)、33 (7)、34 (7)。
【0159】
エリシフェ・グラミニスf.sp.トリティキ、化合物1 (5)、2 (5)、20 (5)、1 (4)、1 (6)、20 (6)、1 (1)、2 (1)、3 (1)、21 (1)、20 (1)、6 (7)、7 (7)、13 (7)、1 (2)、2 (2)、20 (2)、28 (7)、29 (7)、30 (7)、31 (7)、32 (7)、33 (7)、34 (7)。
【0160】
ピリキュラリア・オリゼ、化合物1 (5)、1 (4)、1 (2)、21 (2)、13 (7)、6 (7)、1 (1)、2 (1)、20 (1)。
【0161】
ボトリティス・キネレア、化合物20 (5)、3 (2)、2 (1)、7 (7)。
【0162】
ピレノフォラ・テレス、化合物1 (5)、1 (2)。
【0163】
プクキニア・レコンディタf.sp.トリティキ、化合物1 (5)、1 (4)、20 (4)、1 (6)、2 (6)、1 (2)、2 (2)、3 (2)、1 (1)、3 (1)、13 (7)、6 (7)、32 (7)、33 (7)、34 (7)。
【0164】
セプトリア・ノドルム、化合物1 (5)、2 (5)、20 (5)、1 (4)、2 (4)、20 (4)、1 (6)、2 (6)、20 (6)、1 (1)、2 (1)、3 (1)、21 (1)、20 (1)、1 (2)、2 (2)、3 (2)、21 (2)、20 (2)、6 (7)、7 (7)、13 (7)、14 (7)、28 (7)、29 (7)、30 (7)、31 (7)、32 (7)、33 (7)、34 (7)。
【0165】
以下の化合物(最初に化合物番号、その次に表の番号を括弧の中に示す)は、20ppmの濃度で以下の真菌の感染を少なくとも60%抑制する。
【0166】
ピチウム・ウルチムム、化合物1 (5)、2 (5)、20 (5)、1 (4)、1 (6)、2 (6)、20 (6)、1 (1)、2 (1)、3 (1)、21 (1)、20 (1)、1 (2)、3 (2)、21 (2)、6 (7)、7 (7)、13 (7)、32 (7)、33 (7)、34 (7)。
【0167】
本発明による表7の化合物番号19の殺菌活性と、構造的に最も密接に関係する従来の化合物(WO 2004/108663 A1の108頁に記載されている表23の化合物番号2)の比較。
【0168】
【表11】

表8:セプトリア・ノドルムに対する活性
【0169】
テストの説明:コムギの葉の切片を24ウエルのプレート内の寒天の上に置き、テスト化合物の溶液をスプレイする。12〜24時間放置して完全に乾燥させた後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を予防殺菌活性として接種後4日間にわたって評価する。
【0170】
【表12】

【0171】
表8は、セプトリア・ノドルムに対して本発明による表7の化合物番号19の化合物が、従来の化合物(WO 2004/108663 A1の108頁の表23に記載されている化合物番号2)よりも実質的に優れた殺菌活性を及ぼすことを示している。本発明の化合物は、どちらの塗布率でも従来の化合物よりもはるかに優れている。増大したこの効果は、これらの化合物が構造的に似ていることを考えると驚くべきことであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、
Arは、式(A):
【化2】

(ここで、Vは、H、ハロゲンまたはメチルである)の基であり、
R1は、メチルまたはエチルであり、
R3とR4は、独立に、H、C1-3アルキル、C2-3アルケニルまたはC2-3アルキニルであるか、
R3とR4は、これらの基が結合する炭素原子と一緒になって4員もしくは5員の炭素環を形成し、その炭素環は、場合により1個のO原子、S原子またはN原子を含み、場合によりハロゲンまたはC1-4アルキルで置換されており、
R5は、H、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C3-6シクロアルコキシまたはC2-4アルケニルであり、該アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基またはアルケニル基は、場合によりハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-4アルコキシ-C1-4アルコキシ、シアノ、C3-5アルケニルオキシまたはC3-5アルキニルオキシで置換されており、そして
nは、0、1または2である。]
で表される化合物。
【請求項2】
Vが、H、クロロ、ブロモまたはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
VがHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R3とR4が、独立に、HまたはC1-3アルキルであるか、R3とR4が、これらの基が結合する炭素原子と一緒になって4員もしくは5員の炭素環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R5が、H、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ-C1-4アルキル、C3-6アルケニルオキシ-C1-4アルキル、C3-6アルキニルオキシ-C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、またはC1-4ハロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Vが、H、クロロ、ブロモまたはメチルであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4が独立にC1-3アルキルであり、R5が、H、C1-4アルキル、またはヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C3-4アルケニルオキシもしくは、C3-4アルキニルオキシで置換されたC1-4アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Vが、H、クロロ、ブロモまたはメチルであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3とR4がメチルであり、R5が、CH2OH、CH2OMe、CH2OEt、CH2OCH2CHCH2、CH2OCH2CCH、または(CH2)2OMeである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
nが0の請求項1に記載の式(1)の化合物の製造方法であって、式:
【化3】

(ただしArとR1は請求項1で定義した通りである)の化合物を、式:
【化4】

(ただしR2は水素であり、R3、R4、R5は請求項1で定義した通りである)(8)の化合物と反応させることを含む、方法。
【請求項9】
nが0の請求項1に記載の式(1)の化合物の製造方法であって、式(16):
【化5】

(ただし、R1、R3〜R5は請求項1で定義した通りであり、R2は水素であり、Halはハロゲンである)の化合物を、化合物ArOH(ただしArは請求項1で定義した通りである)と反応させることを含む、方法。
【請求項10】
式(25a):
【化6】

(ただしVは請求項1で定義した通りである)の化合物の製造方法であって、式(25):
【化7】

の化合物を、金属のヨウ化物とN,N-ジアルキルエチレンジアミン・リガンドの存在下で触媒量の銅塩と反応させることを含む、方法。
【請求項11】
式(27):
【化8】

(ただしVは請求項1で定義した通りであり、R6はアルキル基である)の化合物の製造方法であって、式(26):
【化9】

の化合物を、金属のヨウ化物とN,N-ジアルキルエチレンジアミン・リガンドの存在下で触媒量の銅塩と反応させることを含む、方法。
【請求項12】
式(29):
【化10】

(ただしV、n、R1は請求項1で定義した通りであり、R6はアルキル基である)の化合物の製造方法であって、式(28):
【化11】

の化合物を、金属のヨウ化物とN,N-ジアルキルエチレンジアミン・リガンドの存在下で触媒量の銅塩と反応させることを含む、方法。
【請求項13】
式(1):
【化12】

(ただしV、n、R1、R3〜R5は請求項1で定義した通りである)の化合物の製造方法であって、式(1a):
【化13】

の化合物を、金属のヨウ化物とN,N-ジアルキルエチレンジアミン・リガンドの存在下で触媒量の銅塩と反応させることを含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の式(1)の化合物の殺菌的に有効な量、および好適な担体または希釈剤を含む、殺菌組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の式(1)の化合物の殺菌的に有効な量または請求項14に記載の組成物を植物、植物の種子、植物または種子が存在する場所、または土もしくは任意の他の植物成長培地に適用することを含む、植物病原菌に対抗するかまたは植物病原菌を抑制する方法。

【公表番号】特表2010−538029(P2010−538029A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523321(P2010−523321)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007196
【国際公開番号】WO2009/049716
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】