説明

新規液晶性化合物および該化合物を含有する有機半導体素子

【課題】有機半導体材料として有用な、適度なホールおよび電子輸送特性を有する、可視光透過性の液晶性化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物による。


[式(1)において、Rは独立して、水素または炭素数1〜24のアルキルであり、このアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−または−SiH2−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;Arはナフチレン、アントリレン、フェナントリレンまたはすべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンであり、ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規液晶性化合物ならびに該化合物を含有する有機半導体膜および有機半導体素子に関する。
【0002】
本発明は、芳香環の両端にチアジアゾール基を導入した化合物、ならびに該化合物を含有する有機半導体膜および有機半導体素子に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、有機半導体材料を用いたOFET(有機電界効果トランジスタ)デバイスに代表される薄膜デバイスが注目されている。
【0004】
特に、有機半導体を用いて集積回路を作ることができれば、従来から行われているシリコンを用いた集積回路の製造プロセスに比べて安価に集積回路を作ることができる。
【0005】
現在、一般に使用されている集積回路では、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)と呼ばれる構成がとられている。これは、n−チャンネルトランジスタのゲート電極とp−チャンネルトランジスタのゲート電極、およびn−チャンネルトランジスタのドレイン電極とp−チャンネルトランジスタのドレイン電極とをそれぞれ接続した構造となっている。この構造の特徴は、ノイズに強く、消費電力が少ないことである。
【0006】
このCMOSでは、ホール輸送(正孔輸送)を担うp型半導体と、電子輸送を担うn型半導体の両方が必要である。これを1種類の化合物で担うことができれば、製造プロセスを簡略化できる。このような化合物の例としては、例えば特許文献1に記載の化合物が挙げられる。
【0007】
また、有機半導体で適度なキャリア輸送特性を得るためには、有機半導体分子の配列制御が重要である。この配列制御の方法の1つとして、有機半導体分子の配列を結晶類似の層構造やカラム構造を有しない液晶相を経由して制御するというものがある。実際に、液晶相を有する有機半導体については、多数の文献がある(例えば、特許文献2)。
【0008】
また、1つの化合物で、液晶相を有し、かつホール輸送能および電子輸送能の両方を有する化合物もある(特許文献3)。
【0009】
ただし、上記特許文献1〜3に記載の化合物は可視領域に吸収を有している。そのため、可視光下で用いられる表示素子用のトランジスタ等として使用する際には好ましくない場合がある。
【0010】
また、可視光を吸収せず、かつホール輸送能および電子輸送能の両方を有する化合物もあるが、ホールおよび電子の移動度は高くはない(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−242339号公報
【特許文献2】特開2009−137848号公報
【特許文献3】特開2010−003831号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Yuan-Li Liao et al., Chem. Commun., 1831 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、有機半導体材料として有用な、適度なホールおよび電子輸送特性を有する、可視光透過性の液晶性化合物を提供することを課題の1つとする。
【0014】
また、前記液晶性化合物を用いて、適度なホールおよび電子輸送特性を有し、欠陥密度の低い有機半導体膜、半導体素子およびトランジスタを提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した。その結果、芳香環の両端にチアジアゾール基を導入した棒状化合物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明の具体的な構成例を以下に示す。
【0017】
[1] 式(1)で表される化合物。
【0018】
【化1】

【0019】
[式(1)において、
Rは独立して、水素または炭素数1〜24のアルキルであり、このアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−または−SiH2−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Arはナフチレン、アントリレン、フェナントリレンまたはすべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンであり、ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。]
[2] 前記式(1)において、Rは独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルまたは炭素数2〜20のチオアルケニルであり、これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、[1]に記載の化合物。
【0020】
[3] 前記式(1)において、Arはナフチレン、アントリレン、フェナントリレンまたはすべての水素が塩素またはフッ素で置き換えられたフェニレンであり、ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、[1]または[2]に記載の化合物。
【0021】
[4] 電子移動度およびホール移動度が1.0×10-4〜1.0×102cm2/Vsである、[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
【0022】
[5] 式(2)で表される化合物を含有する有機半導体用組成物。
【0023】
【化2】

【0024】
[式(2)において、
Rは独立して、水素または炭素数1〜24のアルキルであり、このアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−または−SiH2−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Arはフェニレン、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンであり、これらの環における任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。]
[6] 前記式(2)において、Rは独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルまたは炭素数2〜20のチオアルケニルであり、これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、[5]に記載の有機半導体用組成物。
【0025】
[7] 前記式(2)において、Arはフェニレン、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンであり、これらの環における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、[5]または[6]に記載の有機半導体用組成物。
【0026】
[8] [5]〜[7]のいずれかに記載の有機半導体用組成物がスメクチック相もしくはネマチック相を有する、有機半導体用液晶組成物。
【0027】
[9] [1]〜[4]のいずれかに記載の化合物、[5]〜[7]のいずれかに記載の有機半導体用組成物、または[8]に記載の有機半導体用液晶組成物から形成される有機半導体膜。
【0028】
[10] 電極および[9]に記載の有機半導体膜を含有する有機半導体素子。
【0029】
[11] ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極および半導体層を含有するトランジスタであって、該半導体層が[9]に記載の有機半導体膜を含有する電界効果トランジスタ。
【0030】
[12] n−チャンネルトランジスタ(1)とp−チャンネルトランジスタ(2)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)が、[11]に記載のトランジスタであり、
前記p−チャンネルトランジスタ(2)が、任意の材料により形成され、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)のドレイン電極と前記p−チャンネルトランジスタ(2)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(1)のゲート電極と前記p−チャンネルトランジスタ(2)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続した半導体素子。
【0031】
[13] n−チャンネルトランジスタ(3)とp−チャンネルトランジスタ(4)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(3)が、任意の材料により形成され、
前記p−チャンネルトランジスタ(4)が、[11]に記載のトランジスタであり、
前記n−チャンネルトランジスタ(3)のドレイン電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(3)のゲート電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続した半導体素子。
【0032】
[14] n−チャンネルトランジスタ(1)とp−チャンネルトランジスタ(4)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)および前記p−チャンネルトランジスタ(4)が、[11]に記載のトランジスタであり、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)のドレイン電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(1)のゲート電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続した半導体素子。
【発明の効果】
【0033】
本発明の、芳香環の両端にチアジアゾール基を有する液晶性化合物は、適度な電子とホールの両方のキャリア移動度を有し、可視光吸収がなく、有機溶媒等との相溶性に優れることから、有機半導体材料として有用である。
【0034】
また、本発明の有機半導体膜、半導体素子およびトランジスタは、適度なホールおよび電子輸送特性を有し、欠陥密度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、キャリア移動度をTOF法で測定する際のTOF法測定セルの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る化合物およびその用途について詳細に説明する。
【0037】
なお、以下においては、上記式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と称することがあり、また、「化合物(1)」は、式(1)で表わされる化合物の少なくとも1つを意味することもある。他の式で表される化合物についても同様に称することがある。また、化学式において、1つの化合物が、同一の記号で表される複数の基を有するとき、これら基は同一でも異なってもよい。
【0038】
本発明で用いる「任意の」は、個数のみならず位置も任意であることを示す。なお、本発明において、「任意の−CH2−」というときは、個数のみならず位置も任意であるが、連続する複数の−CH2−が同じ基で置き換えられることは好ましくない。環を構成する炭素との結合位置が明確でない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で自由であることを意味する。
【0039】
また、本発明において、スメクチック相、ネマチック相等の液晶相を有する化合物および液晶相を有さないが液晶組成物の成分として有用な化合物を総称して、「液晶性化合物」と称することがある。
【0040】
≪化合物(1)≫
化合物(1)は、芳香環の両端にチアジアゾール基を導入した液晶性化合物であり、有機溶媒等との相溶性に優れる。
【0041】
化合物(1)は液晶性化合物であるため、この化合物(1)または化合物(1)を含有する組成物から半導体膜を形成すると、欠陥密度が低減した半導体膜を得ることができるため、有機半導体材料として好適に用いられる。
【0042】
また、化合物(1)は、有機半導体素子の通常の使用環境(例;0〜100℃)で、溶融状態とならない性質を有する。そのため、化合物(1)は、有機半導体素子の原料(有機半導体材料)として好適に用いられる。
【0043】
さらに、化合物(1)は可視光を吸収しない。そのため、可視光照射下で用いられる半導体素子の原料として好適に用いることができる。
【0044】
化合物(1)は、電子およびホールを輸送することが可能である。これは、電子付加、もしくは電子除去時の分子軌道変化がそれほど大きくないため、ポテンシャルバリアーが小さくなるためではないかと考えられる。
【0045】
この化合物(1)の電子移動度およびホール移動度は、好ましくは1.0×10-4〜1.0×102cm2/Vsであり、さらに好ましくは、1.0×10-3〜1.0×102cm2/Vsである。電子移動度およびホール移動度が上記範囲にあると、化合物(1)は、半導体素子の原料として好適に用いることができる。
【0046】
上記式(1)におけるRは独立して、水素または炭素数1〜24のアルキルである。このアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−または−SiH2−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよい。
【0047】
また、該アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。該アルキル基が直鎖状であるときは液晶相の温度範囲が広い化合物となる傾向にあり、該アルキル基が分岐鎖状であるときは透明点が低下するものの、他の有機半導体材料との相溶性が良好になる傾向がある。
【0048】
化合物(1)において、Rの炭素数が少ないと、有機半導体としての性質に優れる化合物になる傾向がある。一方、Rの炭素数が多いと、化合物(1)は、液晶相を有しやすくなる傾向にある。そのため、本発明では、末端基を適切に選択することで、液晶相の相転移温度および液晶相の温度範囲等を調整することが可能となり、任意のキャリア移動度に調整することができ、また、キャリアが移動可能な温度範囲を適切に調整することができる。このため、化合物(1)は、有機半導体材料として好適に用いることができる。
【0049】
また、化合物(1)は、末端基を適切に選択することで、分子の配列制御が可能となるため、この化合物(1)を含有する有機半導体膜は、欠陥密度を低減することができる。そのため、化合物(1)は、有機半導体素子の原料として好適に用いることができる。
【0050】
特に化合物(1)が液晶相を有する化合物の場合、化合物(1)は、自己配向性(自己組織化)を有する。そのため、トランジスタ等のデバイスなどに用いられる有機半導体膜に生じ得る構造欠陥を容易に低減することができる。
【0051】
上記式(1)におけるRの好ましい例としては、水素、ならびに任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜24の、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、チオアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルチオアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、チオアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ、シラアルキルおよびジシラアルキルが挙げられる。
【0052】
ハロゲンとしては、フッ素および塩素が好ましく、フッ素であることがより好ましい。
【0053】
上記式(1)におけるRのさらに好ましい例としては、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルまたは炭素数2〜20のチオアルケニルである。これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0054】
上記式(1)におけるRの特に好ましい例としては、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル、炭素数1〜20のフルオロアルキルおよび炭素数1〜20のフルオロアルコキシが挙げられる。なお、「フルオロアルキル」とは、任意の1つ以上の水素がフッ素で置き換えられたアルキルのことをいう。
【0055】
上記式(1)におけるRのさらに好ましい例としては、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数1〜20のポリフルオロアルキルおよび炭素数1〜20のポリフルオロアルコキシが挙げられる。
【0056】
上記式(1)におけるRの最も好ましい例としては、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシおよび炭素数1〜20のチオアルキルが挙げられる。
【0057】
上記アルキルの具体的な例としては、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429および−C1531が挙げられる。
【0058】
上記アルコキシの具体的な例としては、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OCH(CH3)C37、−OC613、−OCH(CH3)C49、−OC715、−OCH(CH3)C511、−OC817、−OCH(CH3)C613、−OC919、−OCH(CH3)C715、−OC1021、−OCH(CH3)C817、−OC1123、−OCH(CH3)C919、−OC1225、−OCH(CH3)C1021、−OC1327、−OC1429および−OC1531が挙げられる。
【0059】
上記アルコキシアルキルの具体的な例としては、−(CH22−O−CH3、−(CH22−O−C25、−(CH23−O−CH3、−(CH22−O−(CH22CH3、−(CH23−O−C25、−(CH22−O−(CH23CH3、−(CH23−O−(CH22CH3、−(CH24−O−C25、−(CH22−O−(CH24CH3、−(CH23−O−(CH23CH3、−(CH24−O−(CH22CH3、−(CH25−O−C25および−(CH26−O−CH3が挙げられる。
【0060】
上記アルケニルの具体的な例としては、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、−(CH23CH=CH2、−CH2CH=CH(CH22CH3、−(CH22CH=CHC25、−(CH23CH=CHCH3、−(CH24CH=CH2、−CH2CH=CH(CH23CH3、−(CH22CH=CH(CH22CH3、−(CH23CH=CHC25、−(CH24CH=CHCH3、−(CH25CH=CH2、−CH2CH=CH(CH25CH3、−(CH22CH=CH(CH24CH3、−(CH23CH=CH(CH23CH3、−(CH24CH=CH(CH22CH3、−(CH25CH=CHC25、−(CH26CH=CHCH3および−(CH27CH=CH2が挙げられる。
【0061】
上記アルケニルオキシの具体的な例としては、−OCH2CH=CHCH3、−O(CH22CH=CH2、−OCH2CH=CHC25、−O(CH22CH=CHCH3、−O(CH23CH=CH2、−OCH2CH=CH(CH22CH3、−O(CH22CH=CHC25、−O(CH23CH=CHCH3、−O(CH24CH=CH2、−OCH2CH=CH(CH23CH3、−O(CH22CH=CH(CH22CH3、−O(CH23CH=CHC25、−O(CH24CH=CHCH3、−O(CH25CH=CH2、−OCH2CH=CH(CH25CH3、−O(CH22CH=CH(CH24CH3、−O(CH23CH=CH(CH23CH3、−O(CH24CH=CH(CH22CH3、−O(CH25CH=CHC25、−O(CH26CH=CHCH3および−O(CH27CH=CH2が挙げられる。
【0062】
上記アルキニルの具体的な例としては、−C≡CC25、−C≡C(CH22CH3、−C≡C(CH23CH3、−C≡C(CH24CH3、−C≡C(CH25CH3、−C≡C(CH26CH3および−C≡C(CH27CH3が挙げられる。
【0063】
上記チオアルキルの具体的な例としては、−SC25、−SC37、−SC49、−SC511、−SCH(CH3)C37、−SC613、−SCH(CH3)C49、−SC715、−SCH(CH3)C511、−SC817、−SCH(CH3)C613、−SC919、−SCH(CH3)C715、−SC1021、−SCH(CH3)C817、−SC1123、−SCH(CH3)C919、−SC1225、−SCH(CH3)C1021、−SC1327、−SC1429および−SC1531が挙げられる。
【0064】
上記アルキルチオアルキルの具体的な例としては、−(CH22−S−CH3、−(CH22−S−C25、−(CH23−S−CH3、−(CH22−S−(CH22CH3、−(CH23−S−C25、−(CH22−S−(CH23CH3、−(CH23−S−(CH22CH3、−(CH24−S−C25、−(CH22−S−(CH24CH3、−(CH23−S−(CH23CH3、−(CH24−S−(CH22CH3、−(CH25−S−C25および−(CH26−S−CH3が挙げられる。
【0065】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの具体的な例としては、−CH2CF3、−(CH22CF3、−(CH23CF3、−(CH23CH2F、−(CH23CF2CF3、−(CH23(CF22CF3、−CH2CHF(CH23CH3、−(CH23(CF23CF3、−CH2CHF(CH24CH3、−(CH23(CF24CF3、−CH2CHF(CH25CH3、−(CH23(CF25CF3、−CH2CHF(CH26CH3、−(CH23(CF26CF3および−CH2CHF(CH27CH3が挙げられる。
【0066】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの具体的な例としては、−OCH2CF3、−O(CH22CF3、−O(CH23CF3、−O(CH23CH2F、−O(CH23CF2CF3、−O(CH23(CF22CF3、−OCH2CHF(CH23CH3、−O(CH23(CF23CF3、−OCH2CHF(CH24CH3、−O(CH23(CF24CF3、−OCH2CHF(CH25CH3、−O(CH23(CF25CF3、−OCH2CHF(CH26CH3、−O(CH23(CF26CF3および−OCH2CHF(CH27CH3が挙げられる。
【0067】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられていてもよいアルケニルの具体的な例としては、−CH2CF=CFCF3、−(CH22CH=CF2、−CH2CF=CFC25、−(CH22CF=CFCF3、−(CH23CH=CF2、−CH2CF=CF(CF22CF3、−(CH22CF=CFC25、−(CH23CF=CFCF3、−(CH24CH=CF2、−CH2CF=CF(CF23CF3、−(CH22CF=CF(CF22CF3、−、−(CH23CF=CFC25、−(CH24CF=CFCF3、−(CH25CH=CF2、−CH2CF=CF(CF25CF3、−(CH22CF=CF(CF24CF3、−(CH23CF=CF(CF23CF3、−(CH24CF=CF(CF22CF3、−(CH25CF=CFC25、−(CH26CF=CFCF3および−(CH27CH=CF2が挙げられる。
【0068】
好ましいRの具体的な例としては、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919、−C1021、−C1123、−C1225、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OCH(CH3)C37、−OC613、−OCH(CH3)C49、−OC715、−OCH(CH3)C511、−OC817、−OCH(CH3)C613、−OC919、−OCH(CH3)C715、−OC1021、−OCH(CH3)C817、−OC1123、−OCH(CH3)C919、−OC1225、−OCH(CH3)C1021、−(CH22−O−CH3、−(CH23−O−CH3、−(CH23−O−C25、−(CH24−O−C25、−(CH25−O−C25、−(CH26−O−CH3、−(CH22CH=CH2、−(CH23CH=CH2、−(CH24CH=CH2、−(CH25CH=CH2、−(CH27CH=CH2、−O(CH23CH=CH2、−O(CH24CH=CH2、−O(CH25CH=CH2、−O(CH27CH=CH2、−SC49、−SC511、−SCH(CH3)C37、−SC613、−SCH(CH3)C49、−SC715、−SCH(CH3)C511、−SC817、−SCH(CH3)C613、−SC919、−SCH(CH3)C715、−SC1021、−SCH(CH3)C817、−SC1123、−SCH(CH3)C919、−SC1225、−SCH(CH3)C1021、−(CH22−S−CH3、−(CH22−S−C25、−(CH23−S−CH3、−(CH23−S−C25、−(CH24−S−C25、−(CH25−S−C25、−(CH26−S−CH3、−(CH23CF2CF3、−(CH23(CF22CF3、−CH2CHF(CH23CH3、−(CH23(CF23CF3、−CH2CHF(CH24CH3、−(CH23(CF24CF3、−CH2CHF(CH25CH3、−(CH23(CF25CF3、−CH2CHF(CH26CH3、−(CH23(CF26CF3、−CH2CHF(CH27CH3、−O(CH23CF2CF3、−O(CH23(CF22CF3、−OCH2CHF(CH23CH3、−O(CH23(CF23CF3、−OCH2CHF(CH24CH3、−O(CH23(CF24CF3、−OCH2CHF(CH25CH3、−O(CH23(CF25CF3、−OCH2CHF(CH26CH3、−O(CH23(CF26CF3および−OCH2CHF(CH27CH3が挙げられる。
【0069】
さらに好ましいRの具体的な例としては、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919、−C1021、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OCH(CH3)C37、−OC613、−OCH(CH3)C49、−OC715、−OCH(CH3)C511、−OC817、−OCH(CH3)C613、−OC919、−OCH(CH3)C715、−OC1021、−SC49、−SC511、−SCH(CH3)C37、−SC613、−SCH(CH3)C49、−SC715、−SCH(CH3)C511、−SC817、−SCH(CH3)C613、−SC919、−SCH(CH3)C715、−SC1021、−SCH(CH3)C817、−(CH23CF2CF3、−(CH23(CF22CF3、−(CH23(CF23CF3、−(CH23(CF24CF3、−(CH23(CF25CF3、−(CH23(CF26CF3、−O(CH23CF2CF3、−O(CH23(CF22CF3、−OCH2CHF(CH23CH3、−O(CH23(CF23CF3、−OCH2CHF(CH24CH3、−O(CH23(CF24CF3、−OCH2CHF(CH25CH3、−O(CH23(CF25CF3、−OCH2CHF(CH26CH3、−O(CH23(CF26CF3および−OCH2CHF(CH27CH3が挙げられる。
【0070】
最も好ましいRの具体的な例としては、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919、−C1021、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OCH(CH3)C37、−OC613、−OCH(CH3)C49、−OC715、−OCH(CH3)C511、−OC817、−OCH(CH3)C613、−OC919、−OC1021、−SC49、−SC511、−SCH(CH3)C37、−SC613、−SCH(CH3)C49、−SC715、−SCH(CH3)C511、−SC817、−SCH(CH3)C613、−SC919、−SC1021および−SCH(CH3)C817が挙げられる。
【0071】
上記式(1)におけるArはナフチレン、アントリレン、フェナントリレンまたはすべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンであり、好ましくは、ナフチレン、アントリレンまたはすべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンであり、さらに好ましくは、ナフチレンまたはすべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンである。
【0072】
ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素がハロゲンで置き換えられる場合には、これらの環におけるすべての水素がハロゲンで置き換えられた基が好ましい。
【0073】
ハロゲンとしては、キャリア移動度および熱安定性の点からフッ素および塩素が好ましく、フッ素であることがより好ましい。
【0074】
上記式(1)におけるArがナフチレンであると、化合物(1)は、液晶相−等方性液体温度(以下「透明点」ともいう。)が高い化合物となる傾向にある。また、上記式(1)におけるArがアントリレンであると、化合物(1)は、更に透明点が高い化合物となる傾向にある。また、上記式(1)におけるArがフェナントリレンであると、化合物(1)は、透明点が低い化合物となる傾向にある。また、上記式(1)におけるArが、すべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンであると、化合物(1)は、透明点が低い化合物となる傾向にある。
【0075】
上記式(1)におけるArが、任意の水素がハロゲンで置き換えられていない、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンである場合には、化合物(1)は、ホールおよび電子の両方の輸送に優れる化合物となる傾向にある。また、上記式(1)におけるArが、すべての水素がハロゲンで置き換えられた、フェニレン、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンである場合には、化合物(1)は、電子の輸送に特に優れる化合物となる傾向にある。
【0076】
すべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンの例としては、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−フェニレン、および、これらの化合物の塩素原子をフッ素原子で置き換えた化合物が挙げられる。
【0077】
任意の水素がハロゲンで置き換えられたナフチレンの例としては、1−クロロナフタレン−2,6−ジイル、4−クロロナフタレン−2,6−ジイル、3,4−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、1,5−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、4,7−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、1,7−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、1,8−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、2,3−ジクロロナフタレン−1,5−ジイル、3,7−ジクロロナフタレン−2,6−ジイル、3,6−ジクロロナフタレン−2,7−ジイル、2,3,4−トリクロロナフタレン−1,5−ジイル、1,3,4−トリクロロナフタレン−2,6−ジイル、3,4,8−トリクロロナフタレン−2,6−ジイル、3,4,7−トリクロロナフタレン−2,6−ジイル、3,4,6−トリクロロナフタレン−2,7−ジイル、3,4,5−トリクロロナフタレン−2,6−ジイル、2,3,8−トリクロロナフタレン−1,5−ジイル、2,3,6−トリクロロナフタレン−1,5−ジイル、2,3,7−トリクロロナフタレン−1,5−ジイル、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,6−ジイル、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,5−ジイル、1,3,4,5,7,8−ヘキサクロロナフタレン−2,6−ジイル、2,3,4,6,7,8−ヘキサクロロナフタレン−1,5−ジイル、1,3,4,6,7,8−ヘキサクロロナフタレン−2,5−ジイル、および、これらの化合物の塩素原子をフッ素原子で置き換えた化合物が挙げられる。
【0078】
任意の水素がハロゲンで置き換えられたアントリレンの例としては、1−クロロアントラセン−2,6−ジイル、3−クロロアントラセン−2,6−ジイル、9−クロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,3−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,4−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,5−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、4,7−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,7−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,8−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,9−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,10−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、2,3−ジクロロアントラセン−1,6−ジイル、3,7−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,6−ジクロロアントラセン−2,7−ジイル、3,10−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,9−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、9,10−ジクロロアントラセン−2,6−ジイル、2,3,4−トリクロロアントラセン−1,6−ジイル、1,3,4−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,8−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,7−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,6−トリクロロアントラセン−2,7−ジイル、3,4,5−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,10−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,9−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、2,3,5−トリクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,7−トリクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,9−トリクロロアントラセン−1,6−ジイル、1,9,10−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,9,10−トリクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,4,5,8−テトラクロロアントラセン−2,6−ジイル、2,3,6,7−テトラクロロアントラセン−1,5−ジイル、1,5,9,10−テトラクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,7,9,10−テトラクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,3,5,7−テトラクロロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,7,8−テトラクロロアントラセン−2,6−ジイル、5,6,7,8−テトラクロロアントラセン−1,4−ジイル、2,3,4,8−テトラクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,7−テトラクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,6−テトラクロロアントラセン−1,5−ジイル、2,3,4,5−テトラクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,10−テトラクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,9−テトラクロロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタクロロアントラセン−1,5−ジイル、1,3,4,5,7,8,9,10−オクタクロロアントラセン−2,6−ジイル、1,3,4,5,6,8,9,10−オクタクロロアントラセン−2,7−ジイル、1,3,4,5,6,7,9,10−オクタフルオロアントラセン−2,8−ジイル、および、これらの化合物の塩素原子をフッ素原子で置き換えた化合物が挙げられる。
【0079】
任意の水素がハロゲンで置き換えられたフェナントリレンの例としては、1−クロロフェナントレン−2,7−ジイル、2−クロロフェナントレン−1,7−ジイル、3−クロロフェナントレン−2,7−ジイル、4−クロロフェナントレン−2,7−ジイル、9−クロロフェナントレン−2,7−ジイル、7,8−ジクロロフェナントレン−2,6−ジイル、1,3−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,5−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,6−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,8−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、1,8−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,9−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,10−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,3−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,4−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,5−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,6−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,7−ジクロロフェナントレン−1,6−ジイル、2,9−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,10−ジクロロフェナントレン−1,7−ジイル、3,4−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,5−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,6−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,9−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,10−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、4,5−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、4,9−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、4,10−ジクロロフェナントレン−2,7−ジイル、6,7,8−トリクロロフェナントレン−1,5−ジイル、5,7,8−トリクロロフェナントレン−2,6−ジイル、4,7,8−トリクロロフェナントレン−2,6−ジイル、3,7,8−トリクロロフェナントレン−2,6−ジイル、2,7,8−トリクロロフェナントレン−1,6−ジイル、1,7,8−トリクロロフェナントレン−2,6−ジイル、7,8,10−トリクロロフェナントレン−2,6−ジイル、7,8,9−トリクロロフェナントレン−2,6−ジイル、1,3,4−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,5−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,6−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,6,8−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、1,3,8−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,9−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,10−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,5−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,6−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,5,8−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、1,4,8−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,9−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,10−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,3,4−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,5−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,6−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,7−トリクロロフェナントレン−1,6−ジイル、2,3,8−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,9−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,10−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、3,4,5−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,4,6−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,5,6−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、3,4,8−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,4,9−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、3,4,10−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,9,10−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,9,10−トリクロロフェナントレン−1,7−ジイル、3,9,10−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、4,9,10−トリクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,2,7,8−テトラクロロフェナントレン−3,6−ジイル、1,3,6,8−テトラクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,5,8−テトラクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,3,6,7−テトラクロロフェナントレン−1,8−ジイル、2,4,5,7−テトラクロロフェナントレン−1,6−ジイル、3,4,5,6−テトラクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,8,9,10−テトラクロロフェナントレン−2,7−ジイル、2,7,9,10−テトラクロロフェナントレン−1,6−ジイル、3,6,9,10−テトラクロロフェナントレン−2,7−ジイル、4,5,9,10−テトラクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,4,5,6,8,9,10−オクタクロロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,4,5,6,7,9,10−オクタクロロフェナントレン−2,8−ジイル、1,3,4,5,7,8,9,10−オクタクロロフェナントレン−2,6−ジイル、1,2,4,5,7,8,9,10−オクタクロロフェナントレン−3,6−ジイル、1,2,4,5,6,7,9,10−オクタクロロフェナントレン−3,8−ジイル、2,3,4,5,6,7,9,10−オクタクロロフェナントレン−1,8−ジイル、および、これらの化合物の塩素原子をフッ素原子で置き換えた化合物が挙げられる。
【0080】
好ましいArの具体的な例としては、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、1−フルオロナフタレン−2,6−ジイル、4−フルオロナフタレン−2,6−ジイル、3,4−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、1,4−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、1,5−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、4,7−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、1,7−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、1,8−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、2,3−ジフルオロナフタレン−1,5−ジイル、3,7−ジフルオロナフタレン−2,6−ジイル、3,6−ジフルオロナフタレン−2,7−ジイル、2,3,4−トリフルオロナフタレン−1,5−ジイル、1,3,4−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、3,4,8−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、3,4,7−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、3,4,6−トリフルオロナフタレン−2,7−ジイル、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、2,3,8−トリフルオロナフタレン−1,5−ジイル、2,3,6−トリフルオロナフタレン−1,5−ジイル、2,3,7−トリフルオロナフタレン−1,5−ジイル、1,4,5,8−テトラフルオロナフタレン−2,6−ジイル、2,3,6,7−テトラフルオロナフタレン−1,5−ジイル、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,6−ジイル、2,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,5−ジイル、1,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,5−ジイル、
アントラセン−2,6−ジイル、1−フルオロアントラセン−2,6−ジイル、3−フルオロアントラセン−2,6−ジイル、9−フルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,3−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,4−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,5−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、4,7−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,7−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,8−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,9−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,10−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、2,3−ジフルオロアントラセン−1,6−ジイル、3,7−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,6−ジフルオロアントラセン−2,7−ジイル、3,10−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,9−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、9,10−ジフルオロアントラセン−2,6−ジイル、2,3,4−トリフルオロアントラセン−1,6−ジイル、1,3,4−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,8−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,7−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,6−トリフルオロアントラセン−2,7−ジイル、3,4,5−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,10−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,9−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、2,3,5−トリフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,7−トリフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,9−トリフルオロアントラセン−1,6−ジイル、1,9,10−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,9,10−トリフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,4,5,8−テトラフルオロアントラセン−2,6−ジイル、2,3,6,7−テトラフルオロアントラセン−1,5−ジイル、1,5,9,10−テトラフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,7,9,10−テトラフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,3,5,7−テトラフルオロアントラセン−2,6−ジイル、3,4,7,8−テトラフルオロアントラセン−2,6−ジイル、5,6,7,8−テトラフルオロアントラセン−1,4−ジイル、2,3,4,8−テトラフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,7−テトラフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,6−テトラフルオロアントラセン−1,5−ジイル、2,3,4,5−テトラフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,10−テトラフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,9−テトラフルオロアントラセン−1,6−ジイル、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタフルオロアントラセン−1,5−ジイル、1,3,4,5,7,8,9,10−オクタフルオロアントラセン−2,6−ジイル、1,3,4,5,6,8,9,10−オクタフルオロアントラセン−2,7−ジイル、1,3,4,5,6,7,9,10−オクタフルオロアントラセン−2,8−ジイル、
フェナントレン−2,7−ジイル、1−フルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2−フルオロフェナントレン−1,7−ジイル、3−フルオロフェナントレン−2,7−ジイル、4−フルオロフェナントレン−2,7−ジイル、9−フルオロフェナントレン−2,7−ジイル、7,8−ジフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、1,3−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,5−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,6−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,8−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、1,8−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,9−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,10−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,3−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,4−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,5−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,6−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,7−ジフルオロフェナントレン−1,6−ジイル、2,9−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,10−ジフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、3,4−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,5−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,6−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,9−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,10−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、4,5−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、4,9−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、4,10−ジフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、6,7,8−トリフルオロフェナントレン−1,5−ジイル、5,7,8−トリフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、4,7,8−トリフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、3,7,8−トリフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、2,7,8−トリフルオロフェナントレン−1,6−ジイル、1,7,8−トリフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、7,8,10−トリフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、7,8,9−トリフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、1,3,4−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,5−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,6−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,6,8−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、1,3,8−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,9−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,10−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,5−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,6−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,5,8−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、1,4,8−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,9−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,10−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,3,4−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,5−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,6−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,7−トリフルオロフェナントレン−1,6−ジイル、2,3,8−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,9−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、2,3,10−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、3,4,5−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,4,6−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,5,6−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、3,4,8−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,4,9−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、3,4,10−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,9,10−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,9,10−トリフルオロフェナントレン−1,7−ジイル、3,9,10−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、4,9,10−トリフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,2,7,8−テトラフルオロフェナントレン−3,6−ジイル、1,3,6,8−テトラフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,4,5,8−テトラフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,3,6,7−テトラフルオロフェナントレン−1,8−ジイル、2,4,5,7−テトラフルオロフェナントレン−1,6−ジイル、3,4,5,6−テトラフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,8,9,10−テトラフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、2,7,9,10−テトラフルオロフェナントレン−1,6−ジイル、3,6,9,10−テトラフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、4,5,9,10−テトラフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,4,5,6,8,9,10−オクタフルオロフェナントレン−2,7−ジイル、1,3,4,5,6,7,9,10−オクタフルオロフェナントレン−2,8−ジイル、1,3,4,5,7,8,9,10−オクタフルオロフェナントレン−2,6−ジイル、1,2,4,5,7,8,9,10−オクタフルオロフェナントレン−3,6−ジイル、1,2,4,5,6,7,9,10−オクタフルオロフェナントレン−3,8−ジイル、および、2,3,4,5,6,7,9,10−オクタフルオロフェナントレン−1,8−ジイルが挙げられる。
【0081】
化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、および、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0082】
化合物(1)の合成方法の一例について、下記スキームで説明する。
【0083】
なお、下記スキーム中のRおよびArは上記式(1)中のRおよびArと同義である。
【0084】
【化3】

【0085】
出発原料として、芳香環の2つの水素が酢酸メチル基で置換された化合物(e)を使用する。この化合物(e)をエタノール(EtOH)−クロロホルムの混合溶媒に溶解させ、そこへヒドラジン水和物を添加し、加熱還流を行うことにより化合物(f)が得られる。
【0086】
窒素雰囲気下で、化合物(f)を1,4−ジオキサンに溶解させ、そこに、ピリジンおよびR−COClを添加し、撹拌する。これにより化合物(g)が得られる。
【0087】
化合物(g)をトルエンに溶解させ、そこにローソン試薬を加え、加熱還流下で撹拌する。冷却後反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液へ注ぎ込み撹拌する。その後、吸引濾過にて固体を濾別することにより化合物(1)が得られる。
【0088】
得られた化合物(1)は、所望により精製してもよく、化合物(1)の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の一般的な方法で実施することが可能である。
【0089】
上記スキームに記載の方法により、本発明の化合物(1)を合成することができるが、上記の方法に必ずしも制限されない。上記のような方法で合成される化合物の例を以下に示す。なお、合成された化合物の構造は、例えば、プロトンNMRスペクトルにより確認することができる。
【0090】
【化4】

【0091】
【化5】

【0092】
【化6】

【0093】
【化7】

【0094】
【化8】

【0095】
【化9】

【0096】
【化10】

【0097】
【化11】

【0098】
【化12】

【0099】
【化13】

【0100】
【化14】

【0101】
【化15】

【0102】
【化16】

【0103】
【化17】

【0104】
【化18】

【0105】
【化19】

【0106】
【化20】

【0107】
【化21】

【0108】
【化22】

【0109】
【化23】

【0110】
【化24】

【0111】
【化25】

【0112】
【化26】

【0113】
【化27】

【0114】
【化28】

【0115】
【化29】

【0116】
【化30】

【0117】
【化31】

【0118】
【化32】

【0119】
【化33】

【0120】
【化34】

【0121】
【化35】

【0122】
【化36】

【0123】
≪有機半導体用組成物≫
本発明の有機半導体用組成物は、少なくとも1種の上記化合物(2)を含有し、好ましくは組成物100重量%に対し、化合物(2)を0.01重量%以上、100重量%以下の範囲内で含有し、さらに好ましくは、1重量%以上、80重量%以下の範囲内で含有する。
【0124】
有機半導体用組成物は、下記有機半導体膜、有機半導体素子に好適に用いることができる。
【0125】
上記有機半導体用組成物は、実質的に、化合物(2)のみからなってもよく、必要に応じて溶媒や各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。各種添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、保存安定剤、滑剤、老化防止剤および濡れ性改良剤等を挙げることができる。しかしながら、これらの各種添加剤は、キャリア輸送特性に悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられるため、本発明の有機半導体用組成物は、実質的に、化合物(2)のみからなるか、化合物(2)および溶媒の混合物からなることが好ましい。
【0126】
上記式(2)におけるRとしては、式(1)におけるRとして具体的に挙げた基と同様の基を挙げることができ、好ましい基も式(1)におけるRと同様である。
【0127】
上記式(2)におけるArはフェニレン、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンであり、好ましくは、フェニレン、ナフチレンまたはアントリレンであり、さらに好ましくは、フェニレンまたはナフチレンである。
【0128】
これらの環における任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。任意の水素がハロゲンで置き換えられる場合には、これらの環におけるすべての水素がハロゲンで置き換えられた基が好ましい。ハロゲンとしては、キャリア移動度および熱安定性の点からフッ素および塩素が好ましく、フッ素であることがより好ましい。
【0129】
上記式(2)におけるArがフェニレンであると、化合物(2)は、優れたホールおよび電子輸送特性を示す傾向にある。上記式(2)におけるArがフェニレンである化合物の例を以下に示す。
【0130】
【化37】

【0131】
任意の水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンの例としては、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンが挙げられる。この中でも2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンが好ましい。
【0132】
上記式(2)におけるArが、任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよいフェニレンである化合物は、上記化合物(1)より電子移動度は大きくなる傾向にあるが、他は同様の効果を奏する。ただし一部の水素をハロゲンで置換した場合、分子の対称性が低下するため、結晶性が低下する傾向にある。この影響によりキャリア移動度は大きくならない、もしくは低下する場合がある。
【0133】
任意の水素がハロゲンで置き換えられたナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンの例としては、式(1)におけるArとして具体的に挙げた基と同様の基を挙げることができ、好ましい基も式(1)におけるArと同様である。
【0134】
化合物(2)は、化合物(1)と同様の方法で合成することができるが、必ずしも制限されない。このような方法で合成される化合物(2)の例としては、上記化合物(1)と同様の化合物を挙げることができる。この化合物(2)の構造は、例えば、プロトンNMRスペクトルにより確認することができる。
【0135】
上記有機半導体用組成物に用いてもよい溶媒としては、化合物(2)を溶解することができれば特に制限されない。
【0136】
このような溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、乳酸エチル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ブチルセルソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0137】
≪有機半導体用液晶組成物≫
本発明の有機半導体用液晶組成物(以下「液晶相を有する組成物」ともいう。)は、スメクチック相もしくはネマチック相を有する上記有機半導体用組成物を含む。
【0138】
上記有機半導体用液晶組成物は、実質的に液晶相を有する組成物のみからなってもよく、液晶相を有する上記有機半導体用組成物と液晶相を有しない上記有機半導体用組成物との混合物であってもよい。また、上記有機半導体用液晶組成物は必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記と同様の各種添加剤を配合することもできる。
【0139】
≪有機半導体膜≫
本発明の有機半導体膜は、上記化合物(1)、上記有機半導体用組成物または上記有機半導体用液晶組成物から形成される。このため、電子およびホールを輸送可能であり、欠陥密度の小さい可視光透過性の半導体膜である。
【0140】
化合物(1)および化合物(2)は、透明点を任意に調整することができ、有機溶媒に対する高い溶解性を有するため、キャスト法または印刷法等の簡便な製膜方法を用いることができる。そのため、化合物(1)および(2)が有する本来のキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体膜を製造することができる。
【0141】
したがって、上記有機半導体膜は、下記有機半導体素子に好適に用いることができる。
【0142】
化合物(1)、有機半導体用組成物または有機半導体用液晶組成物から有機半導体膜を形成する際には、化合物(1)を加熱融解させた融解液や化合物(1)を溶媒に溶解させた溶液を用いてもよいし、有機半導体用組成物や有機半導体用液晶組成物が溶媒を含む溶液である場合にはそのままこれらの溶液を用いてもよいし、塗布や印刷性を向上させるためにさらに溶媒を添加した溶液を用いてもよいし、溶媒を含まない有機半導体用組成物や有機半導体用液晶組成物を加熱融解させた融解液を用いてもよい。溶媒としては、上記有機半導体用組成物に用いてもよい溶媒と同様の溶媒等が挙げられる。化合物(1)、有機半導体用組成物および有機半導体用液晶組成物は、有機溶媒に極めてよく溶解するので、高濃度溶液を得ることができる。
【0143】
この融解液または溶液を基板上に塗布または印刷することで有機半導体膜を形成することが好ましい。
【0144】
なお、溶媒を用いる際の溶液中の化合物(1)、または化合物(2)の濃度は、好ましくは0.1〜30重量%であり、より好ましくは10〜30重量%であり、さらに好ましくは10〜20重量%である。
【0145】
溶液中の化合物(1)、または化合物(2)の濃度が前記範囲にあると、nmオーダーの厚さの薄膜を容易に形成することができ、欠陥密度が低減された有機半導体膜を容易に形成することができる。
【0146】
溶媒を用いて、有機半導体膜を形成する際には、該溶媒を除去し、該半導体膜を乾燥するときに、得られる膜が欠陥を有しやすくなる。この場合には、得られた膜をアニーリング等することが、欠陥の少ない膜を得る観点から好ましい。
【0147】
このため、化合物(1)、有機半導体用組成物または有機半導体用液晶組成物から欠陥密度が低い膜を簡便に製造するためには、これらの溶解液を用いることが好ましい。特に、液晶相を有する化合物(1)または有機半導体用液晶組成物から有機半導体膜を形成すると、得られる膜に欠陥が存在したとしても、その液晶性のために、該欠陥が低減する傾向にあるため、特に好ましい。
【0148】
上記基板としては、種々の基板が挙げられるが、好ましい基板としては、ガラス基板、金や銅や銀等の金属基板、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板、トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエステル基板、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板およびポリエチレン基板などが挙げられる。
【0149】
上記塗布する方法としては、種々の方法が挙げられ、例えばスピンコート法、ディップコート法およびブレード法が挙げられる。
【0150】
また、上記印刷する方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、マスク印刷、オフセット印刷、平版印刷、凹版印刷および凸版印刷等の方法が挙げられる。融解液を用いる場合には、毛細管現象を利用して狭間隔のセルに封入させることができるため、ノズルを使った滴下による印刷方法も利用することができる。これらの中でも、融解液をそのままインクとして用いたプリンタにより行うインクジェット印刷は、簡易な方法であり好ましい。
【0151】
有機半導体膜を有機半導体素子の一部としてそのまま使用する際には、印刷によりパターニングを行って有機半導体膜を形成することが好ましい。この場合、化合物(1)、有機半導体用組成物または有機半導体用液晶組成物の高濃度溶液または融解液を用いることが好ましい。高濃度溶液または融解液を用いると、インクジェット印刷、マスク印刷、スクリーン印刷およびオフセット印刷を活用できる。このような印刷による有機半導体膜の製造は、回路の単純化、製造効率の向上および素子の低廉化・軽量化に寄与する。また、印刷による有機半導体膜の製造は、加熱や真空プロセスの必要性がなく、流れ作業によって製造できるので、低コスト化および工程変更への対応性を増すことに寄与する。
【0152】
有機半導体膜の厚さは、所望の目的に応じ、任意に決めることができるが、通常10〜1000nmであり、1000nmより厚い有機半導体膜を作成するときには、融解した化合物(1)をそのまま使用することが好ましい。
【0153】
≪有機半導体素子≫
本発明の有機半導体素子は、電極および上記本発明の有機半導体膜を含有する。
【0154】
本発明の有機半導体素子は、軽量性、柔軟性の点で優れており、化合物(1)または化合物(2)を含有する有機半導体膜を含有するため、化合物(1)または化合物(2)を適宜分子設計することにより、所望の性能を有する。
【0155】
また、化合物(1)または化合物(2)は、可視光透過性であるため、これらを含む有機半導体素子は、可視光下で使用することができる。
【0156】
本発明の有機半導体素子の例としては、電力増幅素子や信号制御素子を挙げることができ、その具体的例として、電界効果トランジスタを挙げることができる。
【0157】
本発明の電界効果トランジスタは、ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極、および本発明の有機半導体膜を含有する半導体層を含む。
【0158】
以下、ゲート電極、誘電体層、ソース電極およびドレイン電極が任意の材料で形成され、半導体層が上記本発明の有機半導体膜を含有する電界効果トランジスタを「本発明のトランジスタ」ともいう。
【0159】
なお、ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極および半導体層がそれぞれ任意の材料で形成されたトランジスタを「任意のトランジスタ」ともいう。
【0160】
本発明のトランジスタは、半導体層が、化合物(1)または化合物(2)を含有する有機半導体層を含み、該化合物(1)または化合物(2)は、適度な電子移動度およびホール移動度を有するため、ソース電極に印加する電圧とゲート電極に印加する電圧を制御することにより、n−チャンネルトランジスタにもなり、p−チャンネルトランジスタともなる。
【0161】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極は、任意の材料で形成されればよいが、導電性材料で形成された電極が好ましい。導電性材料としては、金属や金属酸化物もしくは導電率を向上させた無機および有機半導体などが用いられる。
【0162】
金属の例としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金が挙げられる。また、金属酸化物の例としては、インジウムおよび錫の酸化物、酸化インジウムスズ(ITO)が挙げられる。
【0163】
導電率を向上させた無機および有機半導体の例としては、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレンおよびポリパラフェニレンビニレンが挙げられる。
【0164】
これらの中でも、電極材料としては、有機半導体層との接触面において電気抵抗の小さいものが好ましい。
【0165】
誘電体層は、任意の材料で形成されてよく、誘電率が高く、導電性が低いものが好ましい。このような誘電体層の例としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタルなどの無機酸化物や窒化物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルまたはシロキサン含有ポリマーから形成される層が挙げられる。これらの中でも、表面を平坦化する効果の高いものが好ましい。
【0166】
電界効果トランジスタは、例えば以下の方法で作成することができる。
【0167】
まず、ガラス基板や高分子基板上にゲート電極を形成する。必要に応じてゲート電極を形成した基板上に誘電体層を積層してもよい。その上に、化合物(1)の融解液、化合物(1)を溶媒に溶解させた溶液、上記有機半導体用組成物もしくは上記有機半導体用液晶組成物の融解液、上記有機半導体用組成物もしくは上記有機半導体用液晶組成物、または上記有機半導体用組成物もしくは上記有機半導体用液晶組成物を溶媒に溶解させた溶液を印刷、塗布または滴下することによって半導体層を形成し、さらに必要に応じて、半導体層の上に誘電体層を形成し、その上にソース電極およびドレイン電極を形成すればよい。
【0168】
本発明のトランジスタは、液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス(EL)素子としても用いることができる。また、ゲート電極に印加する電圧によりソース電極とドレイン電極間を流れる電流を制御できるため、階調を表示させることも可能である。
【0169】
また、本発明の有機半導体素子の例としては、電力効率に優れたCMOSを挙げることができる。
【0170】
好ましいCMOSとしては、
(A)n−チャンネルトランジスタ(1)とp−チャンネルトランジスタ(2)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)が、本発明のトランジスタであり、前記p−チャンネルトランジスタ(2)が、任意のトランジスタであり、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)のドレイン電極と前記p−チャンネルトランジスタ(2)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(1)のゲート電極と前記p−チャンネルトランジスタ(2)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続したもの、および、
(B)n−チャンネルトランジスタ(3)とp−チャンネルトランジスタ(4)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(3)が、任意のトランジスタであり、前記p−チャンネルトランジスタ(4)が、本発明のトランジスタであり、
前記n−チャンネルトランジスタ(3)のドレイン電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(3)のゲート電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続したものが挙げられる。
【0171】
特に好ましいCMOSは、(C)前記n−チャンネルトランジスタ(1)と前記p−チャンネルトランジスタ(4)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)のドレイン電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(1)のゲート電極と前記p−チャンネルトランジスタ(4)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続したものである。このCMOS(C)は、n−チャンネルトランジスタおよびp−チャンネルトランジスタの半導体層を実質的に同じ組成とすることができるので、低コストで容易に製造され、キャリア移動度が全体として均一で、機械的強度に優れたものとなる。
【0172】
トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料としては、特に制限されないが、金、銅、金属アルミニウム、ITOおよびZnOなどが挙げられる。
【0173】
本発明の有機半導体素子としては、整流素子、スイッチング動作を行うサイクリスタ、トライアックおよびダイアックなども挙げることができる。これらは有機半導体膜と必要により他の半導体性を有する有機物または無機物と組み合わせることによって製造することができる。さらに、本発明の有機半導体素子は、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子に好適に用いられる。
【0174】
上記表示素子としては、例えば、電子ペーパーやICカードタグなどのフレキシブルなシート状表示装置、および液晶表示素子が挙げられる。これらの表示素子は、可とう性を示す高分子から形成される絶縁基板上に、本発明の有機半導体膜と、この膜を機能させる構成要素を含む1つ以上の層とを形成することで作成することができる。このような方法で作成された表示素子は、可とう性を有しているため、衣類のポケットや財布などに入れて携帯することができる。
【0175】
また、可とう性を有する有機半導体素子の応用先として、RFID(Radio Frequency Identification)タグを挙げることもできる。前記RFIDタグは、再利用可能な乗車券または会員証、代金の決済手段、荷物または商品の識別用シール、荷札または切手の役割をする紙、および、会社または行政サービスに用いる紙などの上に形成することができる。
【実施例】
【0176】
以下、実施例にて、上記のスキームにより化合物(1)または化合物(2)の合成が可能であることを例示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0177】
[相転移点測定方法]
相の同定および相移転温度を決定するために、下記1)および2)の方法で測定した。
【0178】
1)相の同定:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)上に下記実施例で得られた化合物を置き、1℃/分の速度で加熱した。それぞれ発現した相は、偏光顕微鏡において観察される光学組織より同定した。
【0179】
2)相転移温度:パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システムおよびDiamond DSCシステムを用いて測定した。なお、3℃/分速度で加熱した。
【0180】
以下、結晶はCryと表す。結晶の区別がつく場合は、それぞれCry1またはCry2と表す。また、SmXは、スメクチックX相を表し、SmAは、スメクチックA相を表す。液体(アイソトロピック)はIsoと表す。相転移温度の表記として、「Cry 133 SmX 308 Iso」とは、結晶からスメクチックX相への転移温度が133℃であり、スメクチックX相から液体への転移温度が308℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0181】
[紫外可視吸収スペクトル測定方法]
吸収スペクトルは、日本分光製V−660を用いて測定した。下記実施例で得られた化合物の濃度が20μMになるように化合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた溶液を、光路長10mmの石英セル中に入れて測定を行った。
【0182】
1H−NMR分析]
実施例1または2で得られた化合物(3)または化合物(4)をCDCl3に溶解させた溶液を用い、室温にて核磁気共鳴装置DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)製)を用いて測定した。なお、δ値のゼロ点の基準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0183】
[実施例1]
化合物(3)の合成
【0184】
【化38】

【0185】
<第1工程>
テレフタル酸ジメチル(h)10g(51.5mmol)をエタノール15mL、クロロホルム10mLの混合溶媒へ溶解させ、そこにヒドラジン1水和物25.8g(515mmol)を加え、4時間加熱還流させた。冷却後、反応溶液中の固体をろ別し、エタノール10mLを用いて、ろ物を2回洗浄した後、減圧下乾燥させ、10gの化合物(i)を得た。
【0186】
<第2工程>
窒素雰囲気下1,4−ジオキサン200mLに溶解させた10gの化合物(i)に、ピリジン24.4g(309mmol)を加え、続いてノナノイルクロリド21.8g(123.6mmmol)を加え終夜撹拌した。その後、反応液を水中へ流し込み、固体を吸引濾過にてろ別し、ろ物を蒸留水で数回洗浄の後、減圧下乾燥させ、23.7gの化合物(j)を得た。
【0187】
<第3工程>
23.7gの化合物(j)をトルエン300mLに溶解させ、そこにローソン試薬52.1g(128.8mmol)を加え、加熱還流下4時間撹拌した。冷却後、反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液200mLに注ぎ込み、30分撹拌した。その後、吸引濾過にて固体をろ別した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/酢酸エチル=4/1(v/v))で精製し、ヘプタン−メタノール混合溶媒中で再結晶することにより、4.5gの化合物(3)を無色結晶として得た。
【0188】
得られた化合物(3)の1H−NMRの値は以下のとおりである。
【0189】
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm);8.19(s,4H)、3.19(t,4H)、1.89(quint,4H)、1.48(quint,4H)、1.41−1.27(m、16H)、0.91(t、6H).
[相転移温度(℃)]
Cry1 86.7 Cry2 126.8 SmX 128.5 SmA 134.5 Iso
[吸収スペクトル]
可視光での吸収は観測されなかった。
【0190】
[実施例2]
化合物(4)の合成
【0191】
【化39】

【0192】
<第1工程>
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(k)10g(41mmol)をエタノール15mLに溶解させ、そこにヒドラジン1水和物22.3g(446mmol)を加え4時間加熱還流させた。冷却後、反応溶液中の固体をろ別し、エタノール10mLを用いて、ろ物を2回洗浄した後、減圧下乾燥させ、6.01gの化合物(l)を得た。
【0193】
<第2工程>
窒素雰囲気下、1,4−ジオキサン150mLに溶解させた6.01gの化合物(l)(24.6mmol)に、ピリジン11.7g(147.6mmol)を加え、続いてノナノイルクロリド10.4g(59.0mmmol)を加え、終夜撹拌した。その後、反応液を水中へ流し込み、固体を吸引濾過にてろ別し、ろ物を蒸留水で数回洗浄の後、減圧下乾燥させ、12.8gの化合物(m)を得た。
【0194】
<第3工程>
12.8gの化合物(m)(24.4mmmol)をトルエン300mLに溶解させ、そこにローソン試薬25.0g(62.0mmol)を加え、加熱還流下4時間撹拌した。冷却後、反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液200mLに注ぎ込み、30分撹拌した。その後、吸引濾過にて固体を濾別した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/酢酸エチル=9/1(v/v))で精製し、ヘプタン−メタノール混合溶媒中で再結晶することにより、7.6gの化合物(4)を無色結晶として得た。
【0195】
得られた化合物(4)の1H−NMRの値は以下のとおりである。
【0196】
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm);8.40(s,2H)、8.17(dd,2H)、8.02(d,2H)、3.19(t,4H)、1.89(quint,4H)、1.48(quint,4H)、1.41−1.27(m、16H)、0.91(t、6H).
[相転移温度(℃)]
Cry 123.1 SmX 136.9 SmA 222.5 Iso
[吸収スペクトル]
可視光での吸収は観測されなかった。
【0197】
[実施例3]
化合物(3)のキャリア移動度(電子の移動度、ホールの移動度)の測定
実施例1で合成した化合物(3)のキャリア移動度を飛行時間測定法(TOF法)で測定した。この測定法で用いたセルの模式概略図を図1に示す。
【0198】
まず、酸化インジウムスズ(ITO)電極2付きガラス基板1の該電極面上にスペーサーを散布した。スペーサーの上からITO電極5付きガラス基板4を、ITO電極5がスペーサーに接するように接着し、TOF法測定セルを作成した。
【0199】
得られたセルを150℃に加熱し、2枚の基板間の間隙に化合物(3)の結晶を挿入すると化合物(3)は融解し、毛細管現象によって、ITO電極間に素早く拡散した。セルを室温に戻したところ化合物(3)はセル内で固化した。
【0200】
キャリア移動度の測定は以下の手順で行った。ITO電極2とITO電極5を導線で接続し、導線つきセルを温度可変ホットステージ上にセットした。該セルに電圧を印加し、窒素レーザー(波長:337nm)のナノ秒パルスを化合物(3)に照射し、発生した電流の時間変化をオシロスコープにて計測した。
【0201】
キャリア移動度の算出は以下の手順で行った。Harvey Scher and Elliott W. Montroll,Phys. Rev.B,12,2455(1975)に記載の方法を用い、電流の時間変化波形から、キャリアがレーザーパルス光を照射した側にある電極近傍から対向電極に到達する時間(t)を求めた。レーザーパルス光を照射してからキャリアが対向電極に到達するまでの時間(t)、印加電圧および電極間隔からキャリア移動度を算出した。
【0202】
化合物(3)がCry1相を示す、55℃におけるキャリア移動度を、電極間隔16.5μmで測定した。ホールの移動度は、印加電圧50Vから83Vの範囲において3.5×10-4cm2/Vsであった。また電子の移動度は、印加電圧50Vから83Vの範囲において、9.0×10-4cm2/Vsであった。
【0203】
[実施例4]
化合物(4)のキャリア移動度の測定
実施例2で合成した化合物(4)を用いて、実施例3と同様の方法でTOF法測定セルを作成した。なお、セルは250℃に加熱した。
【0204】
化合物(4)がCry相を示す90℃におけるキャリア移動度を、電極間隔19.54μmで測定した。ホールの移動度は、印加電圧15Vから30Vの範囲において、1.0×10-1cm2/Vsであった。また電子の移動度は、印加電圧15Vから30Vの範囲において、1.2×10-1cm2/Vsであった。
【0205】
[比較例1]
吸収スペクトルの記載があり、かつホール、電子両方の伝達の記載がある特許である特開2009−242339号公報の化合物5a〜5cと、実施例2で合成した化合物(4)との物性の比較を行った。その結果、キャリア移動度は化合物(4)よりも低い10-3cm2/Vsであった。また比較例においては600nm近傍に、モル吸収計数が105-1cm-1にも及ぶ大きな吸収を有していた。化合物(4)は可視光域に吸収を有さないため、可視光下で用いられる表示素子への応用に有利である。また、化合物(4)は可視光透過性であるため、さまざまな用途に制限なく使用することができる。これらの点において化合物(4)が優れている。
【0206】
[比較例2]
非特許文献1には、可視光を吸収せず、かつホールおよび電子両方の伝達が可能である化合物2,7−bis(4−tert−butylphenyl−9,9‘−spirobifluorene(下記No.243)が記載されている。また、非特許文献1には、このNo.243の化合物のキャリア移動度を実施例4と同じ測定法であるTOF法により測定した結果が記載されており、温度約60℃において、ホールおよび電子の移動度とも1×10-3cm2/Vsを多少超える程度であった。化合物(4)のホールおよび電子移動度は、No.243の化合物に比べてそれぞれ10倍および100倍程度大きい。この点において化合物(4)が優れている。
【0207】
【化40】

【符号の説明】
【0208】
1,4; ガラス基板
2,5; ITO電極
3; 電荷輸送材料(化合物(1)〜化合物(4))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】

[式(1)において、
Rは独立して、水素または炭素数1〜24のアルキルであり、このアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−または−SiH2−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Arはナフチレン、アントリレン、フェナントリレンまたはすべての水素がハロゲンで置き換えられたフェニレンであり、ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。]
【請求項2】
前記式(1)において、Rは独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルまたは炭素数2〜20のチオアルケニルであり、これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(1)において、Arはナフチレン、アントリレン、フェナントリレンまたはすべての水素が塩素またはフッ素で置き換えられたフェニレンであり、ナフチレン、アントリレンおよびフェナントリレンにおける任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
電子移動度およびホール移動度が1.0×10-4〜1.0×102cm2/Vsである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
式(2)で表される化合物を含有する有機半導体用組成物。
【化2】

[式(2)において、
Rは独立して、水素または炭素数1〜24のアルキルであり、このアルキルにおける任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−または−SiH2−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Arはフェニレン、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンであり、これらの環における任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。]
【請求項6】
前記式(2)において、Rは独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルまたは炭素数2〜20のチオアルケニルであり、これらの基における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、請求項5に記載の有機半導体用組成物。
【請求項7】
前記式(2)において、Arはフェニレン、ナフチレン、アントリレンまたはフェナントリレンであり、これらの環における任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい、請求項5または6に記載の有機半導体用組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機半導体用組成物がスメクチック相もしくはネマチック相を有する、有機半導体用液晶組成物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機半導体用組成物、または請求項8に記載の有機半導体用液晶組成物から形成される有機半導体膜。
【請求項10】
電極および請求項9に記載の有機半導体膜を含有する有機半導体素子。
【請求項11】
ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極および半導体層を含有するトランジスタであって、該半導体層が請求項9に記載の有機半導体膜を含有する電界効果トランジスタ。
【請求項12】
n−チャンネルトランジスタ(1)と、p−チャンネルトランジスタ(2)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)が、請求項11に記載のトランジスタであり、
前記p−チャンネルトランジスタ(2)が、任意の材料により形成され、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)のドレイン電極と、前記p−チャンネルトランジスタ(2)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(1)のゲート電極と、前記p−チャンネルトランジスタ(2)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続した半導体素子。
【請求項13】
n−チャンネルトランジスタ(3)と、p−チャンネルトランジスタ(4)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(3)が、任意の材料により形成され、
前記p−チャンネルトランジスタ(4)が、請求項11に記載のトランジスタであり、
前記n−チャンネルトランジスタ(3)のドレイン電極と、前記p−チャンネルトランジスタ(4)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(3)のゲート電極と、前記p−チャンネルトランジスタ(4)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続した半導体素子。
【請求項14】
n−チャンネルトランジスタ(1)と、p−チャンネルトランジスタ(4)とを含む半導体素子であって、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)および前記p−チャンネルトランジスタ(4)が、請求項11に記載のトランジスタであり、
前記n−チャンネルトランジスタ(1)のドレイン電極と、前記p−チャンネルトランジスタ(4)のドレイン電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続し、かつ、前記n−チャンネルトランジスタ(1)のゲート電極と、前記p−チャンネルトランジスタ(4)のゲート電極とを、トランジスタのオン抵抗が10%未満である材料で接続した半導体素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−31159(P2012−31159A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145505(P2011−145505)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】