説明

新規熱硬化性重合液及びそれを用いた熱硬化性樹脂

【課題】新規熱硬化性重合液及びそれを用いた熱硬化性樹脂の提供。
【解決手段】本発明は、(メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を重合することにより、25℃における粘度を10 mPa・sから2,000,000mPa・sとしたことを特徴とする液状硬化性重合液を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状のアンダーフィル材や層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、LEDの封止材、積層板などの分野への利用が期待される電気絶縁性、光学特性に優れた新規な液状の熱硬化性樹脂におよびその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子工業の著しい発展に伴い、多種多様な高分子材料が広範囲にわたって用いられるようになってきている。特に近年、工業製品の高機能化、高性能化に伴ってより優れた高分子材料の開発が進められている。
【0003】
そのような材料の中で、エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂として、またそれ以外の反応性樹脂として広範囲な工業的用途を有し、様々な分野から検討、開発が行われてきている。
産業界において現在最も広く使用されているエポキシ樹脂はビスフェノ−ルAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるビスフェノールA型エポキシ樹脂が主流である。
この樹脂は液体から固体まで幅広い製品があり、また反応性、耐薬品性、強靱性、接着性、耐熱性などに優れており、土木、建築、塗料、接着剤など広範囲に使用されている。
しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンと反応させるため、樹脂中に塩素が数10ppm〜100ppm含まれ、それが電気部品の電気特性を悪くするなどの問題がある。また、誘電率についてもビスフェノールA型エポキシ樹脂は高く、半導体封止材などには、塩素を含まず電気特性、耐熱性に優れた脂環式エポキシ樹脂が使用されている。
脂環式エポキシ樹脂としては下記の構造を有するものが工業的に製造され使用されている。
【化1】

【化2】

【0004】
また、その他の残留ハロゲンを低減化したエポキシ樹脂として、例えば、4−ビニル−エポキシシクロヘキサンを開環重合した後ビニル基をエポキシ化させたエポキシ樹脂(以下の特許文献1を参照のこと。)、4−ビニル−エポキシシクロヘキサンと酸無水物との交互共重合で得られた化合物をエポキシ化した樹脂(以下の特許文献2を参照のこと。)、エポキシシクロヘキサンメタノールのメタクリル酸エステルを他のメタクリルあるいはアクリル酸エステルと重合させて得られるエポキシ樹脂組成物(以下の特許文献3を参照のこと。)なども提案されている。
【特許文献1】特開昭60−166675号公報
【特許文献2】特開平06−41275号公報
【特許文献3】特開平08−291214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、それぞれ一応の成果を上げているが、未だ不十分な面も少なくない。例えば、(c)で表される化合物は、毒性が強く作業者の皮膚が著しくかぶれるという問題があり、また、(c)および(d)で表される化合物はいずれも低粘度のエポキシ樹脂であるためトランスファー成形などの固形エポキシ樹脂の成形システムが適用できない。
また、特許文献1および特許文献2の場合、4−ビニル−エポキシシクロヘキサンのエポキシ基を開環重合して高分子化し、次工程で過酸を用いエポキシ樹脂化しているが、高分子化後のエポキシ化は工業的に高収率ですべての二重結合をエポキシ基に転化することが難しい。また、特許文献3ではエポキシシクロヘキサンのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルのラジカル重合ポリマーでは分子量の制御が難しいうえに、分子量が大きくなりすぎると、相溶性、溶解性等で問題になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、(メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を併せ持つ化合物をベースとして、(メタ)アリル基のラジカル重合を特定の粘度が得られるように制御して行うことにより、ハロゲン濃度の低い多官能エポキシ基含有化合が得られ、高い電気絶縁性を有すると共に液状であるにもかかわらず、硬化速度も速いことを見出した。また、ビニル重合性化合物(エチレン性不飽和結合を持つ他の化合物)との共重合によりエポキシ価を制御することにより、近年様々な用途での物性に応えることのできる優れた新規なエポキシ含有化合物を得ることに成功し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[11]に関する。
【0008】
[1] (メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を重合することにより、25℃における粘度を10 mPa・sから2,000,000mPa・sとしたことを特徴とする液状硬化性重合液。
【0009】
[2] (メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物が、以下の構造式:
【化3】

{式中、R1〜R41は水素または炭素数1〜8までのアルキルまたはアリール基を表す。}で表されることを特徴とする、前記[1]に記載の液状硬化性重合液。
【0010】
[3] さらに(メタ)アリル化合物(b)および/またはモノビニル重合性化合物(c)を含む化合物群を重合することを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の液状硬化性重合液。
【0011】
[4] エポキシ当量が、150から2,000であることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の液状硬化性重合液。
【0012】
[5] (メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を、使用するラジカル重合開始剤の十時間半減期温度の−10から+50℃の温度範囲で重合を行うことを特徴とする液状硬化性重合液の製造方法。
【0013】
[6] ラジカル重合開始剤が、パーオキシジカーボネート、パーオキシモノカーボネート、パーオキシケタール及びジアルキルパーオキサイドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記[5]に記載の液状硬化性重合液の製造方法。
【0014】
[7] (メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を、酸素濃度が5%以上のガスの気流下で、100℃以上、300℃以下の温度で重合を行うことを特徴とする液状硬化性重合液の製造方法。
【0015】
[8] さらに(メタ)アリル化合物(b)および/または単官能ビニル重合性化合物(c)を含む化合物群を重合することを特徴とする、前記[5]〜[7]のいずれかに記載の液状硬化性重合液の製造方法。
【0016】
[9] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載の液状硬化性重合液100質量部に対して、液状エポキシ樹脂を0〜100質量部含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【0017】
前記[1]〜[4]のいずれかに記載の液状硬化性重合液と液状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して、カチオン硬化剤を0.01〜3質量部およびラジカル開始剤を0〜4質量部含有することを特徴とする、前記[9]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0018】
[11] 前記[1]〜[4]のいずれかの液状硬化性重合液と液状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して、酸無水物を液状硬化性重合液中のエポキシ基1モルに対して0.7〜1.5モル当量用い、さらに硬化促進剤を0〜6質量部およびラジカル開始剤を0〜4質量部含有することを特徴とする、前記[9]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液状のアンダーフィル材や層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、LEDの封止材、積層板などの分野への利用が期待される電気絶縁性、光学特性に優れた新規なエポキシ基含有化合物、その製造法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の原料である(メタ)アリル官能基とエポキシ官能基を1個ずつ持つ化合物は、以下の構造式:
【化4】

{式中、R1〜R41は水素または炭素数1〜8までのアルキルまたはアリール基を表す。}で表される。
【0021】
これらの(メタ)アリル官能基とエポキシ官能基を1個ずつ持つ化合物は、エポキシ基が対応するシクロヘキセンである化合物を、過酸化水素や過酢酸のような過酸化物を用いて無触媒または適当な触媒の存在下に反応させて、シクロヘキセン環の二重結合をエポキシ基に変換することにより、得ることができる。
【0022】
この中では、特にエポキシ基の反応性及び原料の入手容易性の観点から、より好ましいものとしては3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−メチル−1−カルボン酸アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−6−メチル−1−カルボン酸アリルエステル、N−アリルパーヒドロエポキシフタル酸イミドが挙げられる。これらはエポキシ基の炭素は3級であり、カチオン重合等の反応性に富む。また、工業的には、安価なアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、ブタジエンとのディールス・アルダー反応で得られた化合物を、アリルアルコールまたはアリルアミンを用いてエステルまたはイミド化を行うことにより、エポキシ化合物の前駆体であるシクロヘキセン環とアリル基を持った化合物を得ることができる。
【0023】
これらの化合物は(メタ)アリル基を有している。一般には(メタ)アリル基は重合速度が非常に遅く、また重合度も上がらないために、高分子量ポリマーを得ることは困難である。ただし、硬化前の熱硬化性オリゴマーを得るという観点からは、ラジカル重合を行っても暴走しにくく重合制御が容易であり、また連鎖移動剤を存在させなくても適度な分子量で重合を止めることが可能である。従って、重合後に低分子量モノマーを大過剰に希釈するような、操作を行わなくても、モノマー転化率、分子量を制御することにより、物性を犠牲にすることなく無溶媒で注型重合が可能な組成物とすることができる。
【0024】
さらに驚くべきことに、通常無溶媒、短時間でラジカル重合を行おうとした場合には、非常に暴走しやすく、制御が困難な(メタ)アクリル系化合物と組み合わせても、開始剤の種類、量、重合温度等を制御することにより、無溶媒で重合を行っても液状の組成物を得ることが可能である。また、得られた(メタ)アクリル酸はアリル基との共重合性は良くないと言われているが、これらの共重合物中には、一部エポキシ基を有した(メタ)アリル化合物が組み込まれているために、その後カチオン重合や酸無水物との硬化反応を行っても、きれいな透明な硬化物を得ることできる。
【0025】
ここで、液状の硬化性重合液を得る方法としては、重合は一般には無溶媒で行うが、N−アリルパーヒドロエポキシフタル酸イミドのような融点の高い原料の場合には、他のモノマーに溶解させ無溶媒で重合を行うことが望ましいが、それが出来ない場合には低沸点溶媒を用いることも可能である。ただし、最終的には溶媒を留去する必要があるために、溶媒の沸点としては少なくとも200℃以下、より好ましくは150℃以下であることが望ましい。また、当然のことながらエポキシ基と反応するようなアルコール性水酸基やカルボキシル基、アミン基のような官能基を有していないことが必要である。
【0026】
このような溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、THF、ジオキサン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、(ジ)エチレングリコールジアルキルエーテル類、(ジ)プロピレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素等が使用することができる。ただし、ケトン系溶媒やハロゲン炭化水素溶媒は、ラジカルの連鎖移動能が高いので出来るだけ使用を避けたほうが無難である。これらの中で沸点を考慮すると、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル等が望ましい溶媒である。
【0027】
また、本発明においては、前記エポキシ化合物以外の、他の共重合可能なモノビニル重合性化合物を使用することもできる。この共重合可能な化合物としては、モノ(メタ)アリル化合物以外に、モノ(メタ)アクリル化合物のような他のラジカル重合性単量体を使用することも可能である。
【0028】
このようなものとして、例えば(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体、マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体、マレイミド及びその誘導体、末端不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
【0029】
まず、アリル化合物としては、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、n−ヘキサン酸アリル、シクロヘキサンカルボン酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、安息香酸アリル、フェニル酢酸アリル、フェノキシ酢酸アリル、トリフルオロ酢酸アリル、メチル炭酸アリル、エチル炭酸アリル、アリルメチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルベンシルエーテル、アリルオキシトリメチルシランなど化合物である。また使用量に制約はあるが、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等の複数個のアリル基をもつ化合物も使用することが出来る。このようなアリル化合物を用いる場合には、2個アリル基を持つ化合物の場合には、30重量部以下、より好ましくは15重量部以下、3個アリル基を持つ化合物の場合には20重量部、より好ましくは10重量部以下に抑えて、ゲル化は無論のこと、転化率を上げても粘度等が過度に上昇しないようにすることが望ましい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル類及びその誘導体としては、モノビニル化合物かもしくは使用量に制約は出てくるが複数個のビニル基をもつ(メタ)アクリレートも使用でき、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン等である。
【0031】
スチレン及びその誘導体としては、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、2、5−ジメチルスチレン、2、6−ジメチルスチレン、3、4−ジメチルスチレン、3、5−ジメチルスチレン、2、4、6−トリメチルスチレン、2、4、5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン等である。
【0032】
(メタ)アクリルニトリル及びその誘導体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。
【0033】
有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等である。
【0034】
フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル等である。
【0035】
マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル等である。
【0036】
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジル等である。
【0037】
有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体としては、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等である。
【0038】
マレイミド及びその誘導体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等である。
【0039】
末端不飽和炭化水素及びその誘導体としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、アリルアルコール等である。
【0040】
この場合、二重結合を二つ以上持つ化合物を併用する場合には、特に(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン誘導体等、ラジカル重合性の良いものが多いのでアリル化合物よりも使用量の制約はきつく、10重量部より好ましくは5重量部までに抑えることが望ましい。
【0041】
また、アリル以外の単官能ビニル重合性化合物の中では、特に(メタ)アクリル酸誘導体が、得られた重合液の着色が低く、硬化後も透明な硬化物を与えるので好ましい。
【0042】
これらの化合物は任意に選択することができるため、これらを成分とする樹脂に様々な性能を付与させることができ、最終的に得られるエポキシ樹脂組成物に付与したい性能を考慮して、決定することが望ましい。ただし、エポキシ化合物の使用量に関しては、あまりに少ないと得られる化合物のエポキシ当量が大きくなり、耐熱性、耐溶剤性が悪化してしまう。そのため、少なくとも20重量部以上、より望ましくは50重量部以上は使用することが望ましい。また、得られる重合液のエポキシ当量に関しても、重合中に多少エポキシ基が開環することがあるので、それらも考慮してエポキシ当量が150〜2,000、より好ましくは150〜1,000の範囲に入るように、組成、重合条件を決定することが望ましい。
尚、エポキシ当量が150より低いと耐熱性は高くなるものの、非常に脆くなる。また、2000を超えるとカチオン重合速度や酸無水物との硬化速度が遅くなり好ましくない。
【0043】
なお、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量は次の方法により測定する。2〜4mg当量の試料を200mlの共栓三角フラスコに採り、精密天秤にて精秤する。この容器に0.2M塩酸−ジオキサン溶液25mLをホールピペットを用いて加えて溶解し、室温で30分間放置する。次に、10mlのメチルセロソルブで三角フラスコの栓及び内壁を洗いながら加え、指示薬として0.1%クレゾールレッド−エタノール溶液を4〜6滴添加し、試料が均一になるまで十分に攪拌する。これを、0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定し、指示薬の青紫色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果を下記の計算式:
エポキシ当量(g/eq)=10000×S/〔(B−A)×f〕
S:試料の採取量(g)
A:0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液使用量
B:空試験での0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液使用量(ml)
f:0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター
を用いて得た値を、樹脂のエポキシ当量とする。
【0044】
重合開始剤は通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、たとえば、2,2' −アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、1,1ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物系、または分子上の酸素を単独あるいは混合して使用する。開始剤は、分子上の酸素以外は重合液の原料に対して0.1重量%〜10重量%の範囲で配合される。また分子上の酸素を用いる場合には、空気を必要に応じて窒素で希釈して、加熱した重合液に直接吹き込むことにより反応させる。
【0045】
なお、これらの重合開始剤の中で、パーエステルのように分解して酸を発生する開始剤の場合には、発生する酸がエポキシ基と反応してしまうために、エポキシ当量が大きくなるので注意が必要である。また、アゾ系の開始剤の場合には特にアリル基のみで重合させようとした場合には、著しく開始剤効率が悪くなる。
【0046】
従って、このような問題が少ない開始剤としては、パーオキシジカーボネート、パーオキシモノカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドがあり、開始剤としてこれらの開始剤の中から選択することが望ましい。
【0047】
重合温度は、重合開始剤の種類によるが、10〜250℃の間で適宜選択することができ、エポキシ基の安定性、および取り扱いのし易さから、50〜180℃であることが望ましい。この範囲の中で、更に重合開始剤の十時間半減期温度の−10から+50℃の温度範囲より選ぶことが望ましい。また酸素の場合には、100℃以上の重合温度で実施することが望ましい。
【0048】
なお、半減期とはもとの有機過酸化物が分解して活性酸素量が1/2になるまでに要する時間であり、十時間半減期は以下のように測定する。
まず、ラジカル開始剤に対して不活性な溶媒、例えばベンゼンを使用して、0.1mol/Lのうどの有機過酸化物溶液を調製し、窒素置換を行ったガラス管に密封する。これを所定温度に設定した恒温槽に漬し熱分解させる。
有機過酸化物の分解は一般に一次反応で取り扱うことが出来るので、ある一定時間後の熱分解率を測定し、時間との関係を以下の式でプロットし、得られた直線の傾きから分解速度定数を求め、更にその温度における半減期時間を求める。
ln(a/(a−x))=kt ・・・・・ (1)
ここで、a:有機過酸化物の初濃度
x:有機過酸化物の分解した濃度
k:分解速度定数
t:時間
複数の温度で分解速度定数を求め、次のアレニウスプロットにより活性化エネルギーを求める。
lnk=lnA−ΔE/RT ・・・・・ (2)
A:頻度因子
ΔE:活性化エネルギー
R:気体定数
T:絶対温度
(1)式より10時間で半減するのに必要な速度定数を求め、得られた活性化エネルギーを用いて、(2)式より十時間半減期温度を求める。
【0049】
生成する重合液のモノマー転化率、分子量は、開始剤の使用量、重合温度、単量体の種類によって調整が可能である。ここで、アンダーフィル材やLEDの封止材等に使用した場合には、粘度があまりに低すぎる場合には、注型硬化時に液が流れすぎてしまうし、あまりに高すぎる場合には注型操作を行うこと自体が出来なくなる。そこで、重合時のパラメーターを制御することにより、25℃における粘度が50 mPa・sから2,000,000mPa・s、より望ましくは300mPa・s〜500,000mPa・sに制御することが望ましい。
【0050】
粘度の制御方法としては、重合開始剤を多く使えばモノマー転化率が上がり粘度が高くなるし、(メタ)アクリル系のモノマーの併用量を増やしても、分子量が高くなり重合度が上がるので、通常は数回の試行錯誤実験により、最適条件を決める。
【0051】
また、特に、N−アリルパーヒドロエポキシフタル酸のような融点の高いモノマーの場合には、重合後も固体になることがあり、この場合には液状になるモノマーを適度に配合し、固体が析出しないように工夫する必要がある。
【0052】
さらにきめ細かく粘度を調整する目的で、他のエポキシモノマーを更に追添することも出来る。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族ポリアルコールポリグリシジルエーテル等がある。
【0053】
ここで、混合するエポキシ樹脂の配合量としては、全体の液状硬化物の5質量部〜100質量部、より好ましくは5質量部〜80質量部以下に抑えることが好ましい。5質量部以下では配合した場合の粘度調製等の効果がほとんどない。また、100質量部を超えた場合には、本発明組成物の良さであるカチオン硬化性や耐熱性と強靱性のバランスが失われることがあり、望ましくない。
【0054】
なお、粘度についてはJIS-K7233中の単一回転粘度計法にて測定する。なお、量が少ないときは、粘度標準液で検定することを前提に、単一回転粘度計ではなくコーンプレート型粘度計で測定してもよい。
【0055】
このようにして得られた液状重合体は、重合体中にシクロヘキセンオキサイド骨格を有するために、カチオン硬化剤による硬化反応や酸無水物を共存させてエポキシとの硬化反応を行うことが可能である。特に、ポリマー中にシクロヘキセンオキサイドが複数組み込まれているために、非常に速い硬化速度が達成できる。
【0056】
このような硬化系としては、カチオン硬化剤についてはエポキシ樹脂の硬化剤に使用されているルイス酸、ブレンステッド酸について使用することができる。
【0057】
熱硬化触媒としては、例えば、BF3などのルイス酸は、カチオン硬化触媒として用いられているが単独ではポットライフは極端に短く、実用化のためにアミンコンプレックスとして用いられる。BF3−アミンコンプレックスには、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、エタノ−ルアミンなどのBF3−アミンコンプレックスがある。また、ベンジル基を持つスルホニウム塩型、アンモニウム塩型、ピリジニウム塩型化合物、α−置換ベンジルアンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩が知られている。
【0058】
また、ホスホニウム塩型およびヨ−ドニウム塩型カチオン硬化触媒も知られている。これらは一般に、SbF6−、BF4−、AsF6−、PF6−など陰イオン成分とする窒素、イオウ、リンまたはヨ−ドのオニウム塩である。以下にこれらの典型例を挙げる。
【0059】
1)4級アンモニウム塩型化合物:
N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム6フッ化アンチモン
N,N−ジエチル−N−ベンジルアニリニウム4フッ化ホウ素
N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウム6フッ化アンチモン
N,N−ジメチル−N−(4−クロロベンジル)アニリニウム6フッ化アンチモン
N,N−ジエチル−N−ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸
N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム6フッ化アンチモン
N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム6フッ化アンチモン
N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム6フッ化アンチモン
N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム6フッ化アンチモン
【0060】
2)スルホニウム塩型:
トリフェニルスルフォニウム4フッ化ホウ素
トリフェニルスルフォニウム6フッ化アンチモン
トリフェニルスルフォニウム6フッ化ヒ素
トリ(4−メトキシフェニル)スルフォニウム6フッ化ヒ素
ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルフォニウム6フッ化ヒ素
p−t−ブチルベンジルテトラヒドロチオフェニウム6フッ化アンチモン
【0061】
3)ホスホニウム塩型化合物:
エチルトリフェニルホスホニウム6フッ化アンチモン
テトラブチルホスホニウム6フッ化アンチモン
【0062】
4)ヨ−ドニウム塩型化合物:
ジフェニルヨ−ドニウム6フッ化ヒ素
ジ−4−クロロフェニルヨ−ドニウム6フッ化ヒ素
ジ−4−ブロモフェニルヨ−ドニウム6フッ化ヒ素
ジ−p−トリルヨ−ドニウム6フッ化ヒ素
フェニル(4−メトキシフェニル)ヨ−ドニウム6フッ化ヒ素
【0063】
カチオン光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩等が挙げられる。具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート、p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート等が挙げられる。
【0064】
カチオン硬化剤の配合量としては0.01〜3質量部、より好ましくは0.05重量部〜2重量部であり、カチオン硬化剤がこれよりも多い場合には発生するカチオンが硬化物の物性に悪影響を与えるし、これよりも少ない場合には硬化速度が遅くなり好ましくない。
【0065】
また、カチオン以外の硬化系として、酸無水物を併用する系があるが、このようなカルボン酸無水物としては特に限定されるものではないが、例えば、下記式(5)〜式(8)で表される化合物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、 4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレンヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸のほか、α−テルピネンやアロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物等の脂環式カルボン酸無水物系硬化剤が好ましい。なお、該ディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物としては、任意の構造異性体および任意の幾何異性体を使用することができる。
【0066】
また、芳香族酸無水物としては無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等であり、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等がある。
【0067】
これらの酸無水物は、硬化反応を実質的に妨げない限り、適宜に化学的に変性して使用することもできる。
【0068】
組成物の流動性や透明性の点から、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、 4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレンヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0069】
これらの脂環式カルボン酸無水物系硬化剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
また、前記脂肪族カルボン酸無水物および芳香族カルボン酸無水物は、硬化反応を実質的に妨げない限り、適宜に化学的に変性して使用することもできる。
【0071】
脂肪族カルボン酸無水物および芳香族カルボン酸無水物の合計使用割合は、液状を保つことができるように、脂環式カルボン酸無水物との合計量に対して、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0072】
本発明において、カルボン酸無水物の使用量は、エポキシ化合物中のエポキシ基1モルに対するカルボン酸無水物基の当量比として、ガラス転移点(Tg)の低下や着色等の観点から好ましくは0.7〜1.5、さらに好ましくは0.8〜1.3である。
【0073】
さらに本発明においては、カルボン酸無水物以外に、本発明の所期の効果を損なわない範囲で、エポキシ化合物やエポキシ樹脂に対する硬化剤として公知の成分、例えば、フェノール類、ジシアンジアミド類や、アジピン酸ヒドラジッド、フタル酸ヒドラジッド等の有機ヒドラジッド類等を1種以上併用することもできる。
【0074】
他の硬化剤の使用割合は、カルボン酸無水物に対して、通常、50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0075】
特に酸無水物とエポキシ樹脂を硬化させる場合には、硬化反応を速く行うために硬化促進剤を用いることが望ましい。このような硬化促進剤としては、脂環式エポキシ化合物とカルボン酸無水物との硬化反応を促進する成分である。このような硬化促進剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド等の4級フォスフォニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物のほか、ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;イミダゾール系、リン系、フォスフィン系等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化剤促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
【0076】
これらの硬化促進剤のうち、4級フォスフォニウム塩類、ジアザビシクロアルケン類、有機金属化合物および4級アンモニウム塩類が、無色透明で長時間加熱しても変色し難い硬化物が得られる点で好ましい。
【0077】
前記硬化促進剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明において、硬化促進剤を用いる場合の使用量は、エポキシ化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜6重量部、さらに好ましくは0.3〜4重量部である。この場合、硬化促進剤の使用量が0.1重量部未満であると、硬化速度が低下する傾向があり、一方6重量部を超えると、得られる硬化物のTg低下や着色等の不都合を生じるおそれがある。
【0078】
本熱硬化性樹脂組成物は、このままでも熱または光照射により硬化反応を行うことが可能であるが、必要に応じて更に残存する二重結合を反応させる目的で、ラジカル重合開始剤を添加したり、無機及び/又は有機の微粒子、消泡剤を配合することが可能である。
【0079】
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合の開始剤となるものなら使用でき、このようなものとして、最初の重合時と同様にアゾ系、有機過酸化物が上げられるが、有機過酸化物が特に好ましい。
【0080】
例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド、o-メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4-トリメチルペンチル-2-ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、トリス(t-ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシアゼレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシトリメチルアジペ−ト等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボナート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボナート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボナート等のパーカーボナート類があげられる。
【0081】
このようなラジカル重合開始剤を用いる場合には、硬化物の着色等を考慮して、エポキシ化合物に対して好ましくは0.2〜4質量部より好ましくは3質量部以下に抑えるべきである。使用量が多い場合には、用いただけの効果がないだけでなく、着色等の原因になり好ましくない。0.1質量部以下では添加した効果が少なく、むしろ着色等の弊害が出る方が大きい。
【0082】
無機または有機フィラーは公知のものを使用できる。また、その配合比は耐熱性熱硬化性樹脂の選択によって異なり、添加する場合には樹脂組成物全体に対して5〜40wt%の範囲内であることが好ましい。有機フィラーとしては、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、シリコーンパウダー等を、無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉等の無機フィラー等を挙げることができる。
【0083】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、非シリコーン系消泡剤が用いられ、特にスクリーン印刷時の泡巻込み性や泡抜け性を考慮して用いられる。また、これらを数種類併用してもよく、配合量や配合比率も特に制限はなくスクリーン印刷時の泡巻込み性や泡抜け性を考慮して適時変更できる。例えば、シリコーン系消泡剤としては、KS−602A(信越化学工業株式会社製:商品名)、KS−603(信越化学工業株式会社製:商品名)、KS−608(信越化学工業株式会社製:商品名)、FA600(信越化学工業株式会社製:商品名)、BYK−A506(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A525(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A530(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、非シリコーン系消泡剤としては、BYK−A500(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A500(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A501(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A515(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、BYK−A555(ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)等が、好適に使用される。その配合量や配合比も特に制限はない。
【0084】
また、用途に合わせてさらに公知の各種添加剤、例えばガラス繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維等の繊維強化材、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤等、粘度調整剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤などを添加・混合することができる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0086】
本明細書においては、特に断りのない限り、GPCの測定条件は以下のとおりである。
装置名:日本分光(株)製HPLCユニット HSS−2000
カラム:ShodexカラムLF−804
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
検出器:日本分光(株)製 RI−2031Plus
温度:40.0℃
試料量:サンプルループ 100μリットル
試料濃度:0.1wt%前後に調製
【0087】
合成実施例1
50mlフラスコに、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステル(CEA) 20.02g、1,1−ジ−(t−ヘキシパーオキシトリメチルシクロヘキサン)(日本油脂(株)製パーヘキサTMH)0.639gを仕込み、120℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で2時間加熱を続けた。
2時間後、重合液のGPCによる数平均分子量は1410(CEAを除く)、粘度91mPa・sは、エポキシ当量は199であった。
【0088】
合成実施例2
50mlフラスコに、CEA 20.06g、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂(株)製パーブチルI)0.67gを仕込み、130℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で6時間加熱を続けた。
6時間後、重合液のGPCによる数平均分子量は1410(CEAを除く)、粘度2360mPa・sは、エポキシ当量は237であった。
【0089】
合成実施例3
100mlフラスコに、CEA 50.07g、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂(株)製パーブチルD)3.03gを仕込み、130℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で8時間加熱を続けた。
8時間後、重合液のGPCによる数平均分子量は1790(CEAを除く)、粘度618000mPa・sは、エポキシ当量は184であった。
【0090】
合成実施例4
200mlフラスコに、CEA 80.21g、メタクリル酸メチル(MMA;三菱レイヨン(株)製)20.15g、パーヘキサTMH 4.03gを仕込み、100℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で2時間加熱を続けた。
2時間後、重合液のGPCによる数平均分子量は1150(CEAを除く)、エポキシ当量は234であった。
【0091】
合成実施例5
200mlフラスコに、CEA 60.09g、メタクリル酸メチル(MMA;三菱レイヨン(株)製)40.10g、パーヘキサTMH 3.02gを仕込み、100℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で2.5時間加熱を続けた。
2.5時間後、重合液のGPCによる数平均分子量は2430(CEAを除く)、粘度118000mPa・sは、エポキシ当量は293であった。
【0092】
合成実施例6
100mlフラスコに、CEA 30.06g、アクリル酸ブチル 20.30g、パーヘキサTMH 1.50gを仕込み、100℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で6時間加熱を続けた。
6時間後、重合液のGPCによる数平均分子量は1470(CEAを除く)、エポキシ当量は293であった。
【0093】
合成実施例7
100mlフラスコに、CEA 30.05g、メタクリル酸グリシジル 7.54g、パーヘキサTMH 0.77gを仕込み、100℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で2時間加熱を続けた。
2時間後、GPCによる数平均分子量は(CEAを除く)2370、粘度87600mPa・sは、エポキシ当量は176であった。
【0094】
合成実施例8
100mlフラスコに、CEA 30.01g、安息香酸ビニル 8.01g、パーヘキサTMH 0.78gを仕込み、100℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で2.5時間加熱を続けた。
2.5時間後、GPCによる数平均分子量は(CEAを除く)3000、粘度14600mPa・sは、エポキシ当量は241であった。
【0095】
合成比較例1
100mlフラスコに、安息香酸アリル 40.31g、MMA 10.21g、パーヘキサTMH 2.04gを仕込み、100℃のオイルバスに漬けて、窒素気流下で2.5時間加熱を続けた。
2.5時間後、GPCによる数平均分子量は(CEAを除く)3000、粘度1430mPa・sは、エポキシ当量は0.5であった。
【0096】
エポキシ樹脂としての硬化試験
以下の表1に示す配合で液状の硬化性重合液を調製し、熱硬化を行い、物性を測定した。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明によれば、液状で硬化性の優れた組成物を与えるので、アンダーフィル材や層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、LEDの封止材、積層板などの分野への利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を重合することにより、25℃における粘度を10 mPa・sから2,000,000mPa・sとしたことを特徴とする液状硬化性重合液。
【請求項2】
(メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物が、以下の構造式:
【化1】

{式中、R1〜R41は水素または炭素数1〜8までのアルキルまたはアリール基を表す。}で表されることを特徴とする、請求項1に記載の液状硬化性重合液。
【請求項3】
さらに(メタ)アリル化合物(b)および/またはモノビニル重合性化合物(c)を含む化合物群を重合することを特徴とする、請求項1または2に記載の液状硬化性重合液。
【請求項4】
エポキシ当量が、150から2,000であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状硬化性重合液。
【請求項5】
(メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を、使用するラジカル重合開始剤の十時間半減期温度の−10から+50℃の温度範囲で重合を行うことを特徴とする液状硬化性重合液の製造方法。
【請求項6】
ラジカル重合開始剤が、パーオキシジカーボネート、パーオキシモノカーボネート、パーオキシケタール及びジアルキルパーオキサイドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載の液状硬化性重合液の製造方法。
【請求項7】
(メタ)アリル基と脂環式エポキシ基を1個ずつ持つ化合物(a)を主成分とする化合物群を、酸素濃度が5%以上のガスの気流下で、100℃以上、300℃以下の温度で重合を行うことを特徴とする液状硬化性重合液の製造方法。
【請求項8】
さらに(メタ)アリル化合物(b)および/または単官能ビニル重合性化合物(c)を含む化合物群を重合することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の液状硬化性重合液の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の液状硬化性重合液100質量部に対して、液状エポキシ樹脂を0〜100質量部含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の液状硬化性重合液と液状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して、カチオン硬化剤を0.01〜3質量部およびラジカル開始剤を0〜4質量部含有することを特徴とする、請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかの液状硬化性重合液と液状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して、酸無水物を液状硬化性重合液中のエポキシ基1モルに対して0.7〜1.5モル当量用い、さらに硬化促進剤を0〜6質量部およびラジカル開始剤を0〜4質量部含有することを特徴とする、請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−69205(P2008−69205A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247071(P2006−247071)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(非フェノール系樹脂原料を用いたレジスト材料の開発)」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】