新規環状ペプチド
一般式(I)(式中、A,B,R1およびR2は本明細書に規定する)に開示の化合物、およびその薬学的使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の説明>
本願は2009年12月9日付け出願の米国仮出願第61/285,145号の「新規環状ペプチド」の優先権の効果を主張するものであり、その内容のすべてをここに参照して援用する。
【0002】
<技術分野>
本明細書に開示するものは、新規化合物、それを含む組成物、その製造方法およびその治療としての使用、例えば抗ウイルス剤としての使用である。
【背景技術】
【0003】
<発明の背景>
シクロスポリンAは、抗HIV活性に加えて、その免疫抑制活性および抗真菌剤、抗寄生虫剤および抗炎症剤を含む広範囲の治療用途について周知である。シクロスポリンAおよび特定の誘導体が抗HCV活性を有すると報告されている。Watashi et al., 2003, Hepatology 38:1282−1288, Nakagawa et al., 2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 313:42−7,およびShimotohno and K. Watashi, 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issue s8, Pages 1−653)を参照のこと。HCV活性を有するシクロスポリン誘導体は、国際公開第2005/021028号、第2006/039668号および第2006/038088号明細書により公知である。5−バリン窒素が非水素置換基により置換されるシクロスポリンは、Papageorgiou et al., 1997, Bioorganic & Medicinal Chemistry 5(1):187−192により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,845,770号明細書
【特許文献2】米国特許第3,916,899号明細書
【特許文献3】米国特許第3,536,809号明細書
【特許文献4】米国特許第3,598,123号明細書
【特許文献5】米国特許第4,008,719号明細書
【特許文献6】米国特許第5,674,533号明細書
【特許文献7】米国特許第5,059,595号明細書
【特許文献8】米国特許第5,591,767号明細書
【特許文献9】米国特許第5,120,548号明細書
【特許文献10】米国特許第5,073,543号明細書
【特許文献11】米国特許第5,639,476号明細書
【特許文献12】米国特許第5,354,556号明細書
【特許文献13】米国特許第5,733,566号明細書
【特許文献14】国際公開第2000/147883号
【特許文献15】国際公開第2005/000308号
【特許文献16】米国特許第6,924,271号明細書
【特許文献17】米国特許第6,630,343号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Watashi et al., 2003, Hepatology 38:1282-1288
【非特許文献2】Nakagawa et al., 2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 313:42-7
【非特許文献3】Shimotohno and K. Watashi, 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issue s8, Pages 1-653)
【非特許文献4】Papageorgiou et al., 1997, Bioorganic & Medicinal Chemistry 5(1):187-192
【非特許文献5】Ruegger et al., 1976, HeIv. Chim. Acta. 59:1075-92; Borel et al., 1977, Immunology 32:1017-25
【非特許文献6】J. Kallen et al., “Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications”, Biotechnology, second edition, H. -J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p 535-591
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【非特許文献10】Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th and 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990);
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【非特許文献20】Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14
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【非特許文献28】Schetter & Vollmer, 2004, Curr. Opin. Drug Discov. Dev. 7:204-210
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【非特許文献30】Lee et al., 2003, Proc. Natl Acad. Scull USA 100:6646-6651
【非特許文献31】Hosmans et al., 2004, Hepatology 40 (Suppl. 1), 282A
【非特許文献32】Hardman et al., eds., 1996, Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 9th Ed, Mc-Graw-Hill, New York; Physician’s Desk Reference (PDR) 57th Ed., 2003, Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJ
【非特許文献33】Kriger et al., 2001 , Journal of Virology 75:4614-4624
【非特許文献34】Pietschmann et al., 2002, Journal of Virology 76:4008-4021
【非特許文献35】Quesniaux et al., Eur. J Immunol. 1987, 17:1359-1365
【非特許文献36】Blattner et al., 2001, Analytical Biochem., 295:220
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
<発明の概要>
本発明の1つの態様は、一般式(I)の化合物を提供するものである:
【0007】
【化1】
【0008】
式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CH2CH2Rであり、Rはメチル、−CH2SH、−CH2(チオアルキル)、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
【0009】
Bはメチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し
【0010】
R1は:
R21により置換されるメチル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR22基で置換された直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
4〜8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル、または3〜8個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR23基で置換された直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換された直鎖若しくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される、同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
【0011】
R2は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
3〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキニルを示し;
【0012】
R21はハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;−OR5;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;−NR3R4;若しくは3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキルを示し;または
R21は、4〜6個の環原子を含む炭素が結合した飽和若しくは不飽和の複素環であり、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を含み、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、カルボキシルおよびアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜4の置換基で任意に置換され、前記アルキルはアミノ、N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノで置換された複素環を示し;
【0013】
R22およびR23は同じか異なり、それぞれ、ハロゲン、ヒドロキシ;−OR5;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;−NR3R4;−NR6(CH2)mNR3R4;アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、カルボキシルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択される同じか異なる1〜5個の置換基で任意に置換されたベンジルを示すか;、または、3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキルを示し;
【0014】
R3およびR4は同じか異なり、それぞれ:
水素;−C(=O)R5;−S(O)2R5;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニルまたはアルキニル;または
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキルで任意に置換された3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキルを示し;または、
R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和若しくは不飽和の複素環を形成し、前記環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される他のヘテロ原子を任意に含有し、該環はアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される同じか異なる1〜4個の置換基で任意に置換することができる;
【0015】
R5は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5個の置換基で任意に置換されたアリール;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5個の置換基で任意に置換されたヘテロアリール;
アラルキルであり、アリール環はハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシおよびハロアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基は1〜3個の炭素原子を有するアラルキル;または
ヘテロアリールアルキルであり、ヘテロアリール環はハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシまたはハロアルキルで任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基は1〜3個の炭素原子を含む、ヘテロアリールアルキルを示し;
【0016】
R6は水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、シアンまたはアルキルスルホニルを示し;
【0017】
mは1〜4の整数であり;かつ
【0018】
nは0、1または2であり;
【0019】
その薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物である。
【0020】
他の態様は、本明細書に開示の一般式(I)の化合物の調製プロセスを提供するものである。
【0021】
他の態様において、本明細書に開示の被検体においてウイルス感染を治療または予防する方法を提供するものであり、前記方法は被検体に治療に有効な量の本明細書に開示の一般式(I)の化合物を投与する工程を含む。
【0022】
他の態様において、本明細書は、被検体のHCV感染を治療または予防する方法を提供するものであり、前記方法は被検体に治療するのに有効な量の本明細書に開示の一般式(I)の化合物を投与する工程を含む。
【0023】
特定の場合においては、置換基A,B,およびR1が、光学異性体および/または立体異性体を有し得る。これらの形態の全てが本発明に包含される。
【0024】
薬学的に許容可能な塩の例としては、ナトリウム、カリウム若しくはリチウム等のアルカリ金属塩、または、マグネシウム若しくはカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−ベンジルフェニルエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジフェニレンジアミン、ベンズヒドリルアミン、キニン、コリン、アルギニン、リジン、ロイシン若しくはジベンジルアミン等の窒素塩基の塩が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<詳細な説明>
<定義>
本明細書に開示の化合物および複合体を指す場合、下記の用語は、特記しない限り、以下の意味を有するものとする。
【0026】
「シクロスポリン」は、当業者に既知のあらゆるシクロスポリン化合物またはその誘導体とする。例えばRuegger et al., 1976, HeIv. Chim. Acta. 59:1075−92; Borel et al., 1977, Immunology 32:1017−25を引用し、その内容のすべてを本明細書に参照して援用する。本明細書に開示の典型的な化合物は、シクロスポリン誘導体である。特記しない限り、本明細書に記載のシクロスポリンは、シクロスポリンAであり、本明細書に記載のシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンA誘導体である。
【0027】
以下に使用するシクロスポリンの命名法および番号付け方式は、J. Kallen et al., “Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications”, Biotechnology, second edition, H. −J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p 535−591で使用されるものであり、以下に示す通りである:
位置 シクロスポリンA中のアミノ酸
1 N−メチル−ブテニル−トレオニン(MeBmt)
2 [α]−アミノ酪酸(Abu)
3 サルコシン(Sar)
4 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
5 バリン(Val)
6 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
7 アラニン(Ala)
8 (D)−アラニン[(D)−Ala]
9 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
10 N−メチル−ロイシン(Me−Leu)
11 N−メチル−バリン(MeVal)
【0028】
これは、以下に示すような式(I)の化合物の飽和環状炭素原子に相当する:
【0029】
【化2】
【0030】
「アルキル」は一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基であり、好適には約11個までの炭素原子、より好適には1〜8個の炭素原子を有する低級アルキル、さらに好適には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルを有するものを指す。炭化水素鎖は、直鎖または分岐鎖のいずれかである。この用語は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル基等を示す。「低級アルキル」の用語は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0031】
「アルキレン」は直鎖または分岐鎖とすることができ、特に約11個までの炭素原子、より詳細には1〜6個の炭素原子を有する二価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン異性体(例えば−CH2CH2CH2−および−CH(CH3)CH2−)等の基により例示される。
【0032】
「アルケニル」は好ましくは11個までの炭素原子、特に2〜8個の炭素原子、具体的には2〜6個の炭素原子を有する一価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位または特に1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。特に、アルケニル基はエテニル(−CH=CH2)、n−プロペニル(−CH2CH=CH2)、イソプロペニル(−C(CH3)=CH2)、ビニルおよび置換ビニル等を含む。
【0033】
「アルケニレン」は、特に約11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有する二価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば−CH=CHCH2−、−C(CH3)=CH−および−CH=C(CH3)−)等の基により例示される。
【0034】
「アルキニル」は、特に約11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有するアセチレン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位の不飽和アルキニルを有する。アルキニル基のある例としては、アセチレン、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(CH2C≡CH)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
「アルコキシ」は、Rがアルキルである−OR基を指す。特定のアルコキシ基の一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ等が挙げられる。
【0036】
「N−アルキルアミノ」は、アルキル−NR’−基を指し、ここでR’は水素およびアルキルから選択される。
【0037】
「アルキルスルホニル」は、アルキルがここに規定されるものである、ラジカル−S(=O)2−アルキルを指す。
【0038】
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシがここに規定されるものであるラジカル−C(=O)−アルコキシを指す。
【0039】
「アミノ」は、ラジカル−NH2を指す。
【0040】
「アラルキル」は、アリールに置換されたアルキルを指し、前記アルキルおよびアリールは本明細書において定義される。アラルキル基としては、特に制限されるものではないが、ベンジル(−CH2Ph)、フェネチル(−CH2CH2Ph)等が挙げられる。
【0041】
「アリール」は、任意に置換された芳香族炭化水素ラジカル、例えばフェニル基を指すものとする。
【0042】
「アリールアミノ」は、Rが水素、アリールおよびヘテロアリールから選択されるアリールNR’−基を指す。
【0043】
「Bmt」は、2(S)−アミノ−3(R)−ヒドロキシ−4(R)−メチル−6(E)−オクテン酸を指す。
【0044】
「カルボキシル」は、ラジカル−C(=O)OHを指す。
【0045】
「N,N−ジアルキルアミノ」は、ラジカル−NRR’を意味し、RおよびR’は独立して本明細書で定義するアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールを示す。
【0046】
「ホルミル」は、ラジカル−C(=O)Hを指す。
【0047】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨードを指す。
【0048】
「ヘテロアリール」は、任意に置換される飽和または不飽和複素環式ラジカルを指す。一般に、複素環は4〜7個の環原子、例えば5または6個の環原子を含有する。ヘテロアリールの例として、チエニル、フリル、ピロリル、オキサジニル、チアジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、モルホリニル、ピラゾリルおよびテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0049】
「ヒドロキシ」は、ラジカル−OHを指す。
【0050】
「チオアルキル」は、Rがアルキルである−SR基を指す。例としては、特に制限されるものではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等が挙げられる。
【0051】
「薬学的に許容可能な塩」は、生物学的性質を保持し、毒性がないか、若しくは薬学的用途に望ましくないものでない限り、本明細書に開示のあらゆる塩を指すものとする。該塩としては、従来技術から知られている様々な有機および無機カウンターイオンに由来するものが挙げられる。このような塩としては:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオニック酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の有機酸または無機酸から形成された酸付加塩;または(2)親組成物に存在する酸性陽子が、(a)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオン等の金属イオン、またはアルカリ金属の水酸化物若しくはアルカリ土類金属の水酸化物であって、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛、水酸化バリウムおよびアンモニア等に置換された場合;または(b)有機塩基、例えば脂肪族化合物、脂環式化合物または芳香族有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等と組み合された場合に形成される塩が挙げられる。
【0052】
さらに塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等が挙げられ、化合物が塩基性の機能を有する場合、非毒性の有機酸または無機酸の塩、例えば塩酸塩および臭化水素塩等のハロゲン化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾアート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、エタンスルホン酸塩、1,2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン塩酸、ムコン酸塩等が挙げられる。
【0053】
「生理的に許容可能なカチオン」の用語は、酸性官能基の非毒性の生理的に許容可能なカチオンカウンターイオンを指すものとする。該カチオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム等のカチオンが例示される。
【0054】
「溶媒和物」は、本発明の化合物またはその塩を指し、化学量論的または非化学量論的に非共有結合の分子間力によって結合した溶媒が挙げられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0055】
同じ分子式を有するが、原子の結合配列または原子配列の立体構造の異なる化合物を、「異性体」と称する。原子の立体構造の異なる異性体は、「立体異性体」と称する。
【0056】
互いに鏡像でない立体異性体を「ジアステレオ異性体」、互いに重ね合わせることができない鏡像の立体異性体を「鏡像異性体」と称する。化合物に非対称性の中心が存在する場合、例えばそれが4つの異なる基に結合している場合、一対の鏡像異性体が存在し得る。鏡像異性体は、その非対称性の中心の全体的な構成によりその特性が定まり、カーン・インゴルド・プレローグ順位則(Cahn et al., 1966, Angew. Chem. 7:413−447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:385−414 (errata: Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:511); Prelog and Helmchen, 1982, Angew. Chem. 94:614−631, Angew. Chem. Internal. Ed. Eng. 21:567−583; Mata and Lobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry 4:657−668)によって、(R)または(S)のいずれかが決定づけられ、偏光性平面の回転によりその特性が定まり、右旋性または左旋性のいずれかに決定づけられる(即ち、それぞれ(+)−異性体または(−)−異性体とする)。キラル化合物には、各鏡像異性体またはその混合物のいずれかが存在し得る。各鏡像異性体を等量含有する混合物を、「ラセミ混合物」と称する。
【0057】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物が1つ以上の非対称中心を有し得る;従ってかかる化合物を(R)若しくは(S)−鏡像異性体またはその混合物として産生し得る。特記しない限り、例えば式の任意の位置の立体化学の表記により、明細書および請求項における特定の化合物の記載または命名法は、それぞれ鏡像異性体および混合物の双方、ラセミ化合物またはその他のものを含有することを意図する。立体化学の決定および立体異性体の分離方法は、従来技術から周知である。特定の実施形態において、本発明は本明細書に記載した化合物の塩基での処理による立体異性体を提供する。
【0058】
ある実施形態において、本発明の化合物は「立体化学的に純粋」である。立体化学的に純粋な化合物は、当業者に「純粋」として認識される立体化学的純度のレベルを有する。当然、この純度のレベルは100%未満である。ある実施形態において、「立体化学的に純粋」とは、代替異性体を実質的に有さない化合物を示す。ある実施形態において、化合物は他の異性体を85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%有さない。
【0059】
「サルコシン」または「Sar」は、当業者に公知の−N(Me)CH2C(=O)−の構造を有するアミノ酸残基を指すものとする。当業者は、サルコシンをN−メチルグリシンとして認識するであろう。
【0060】
ここでは、「被検体」および「患者」の用語が交互に使用される。被検体(subjectおよびsubjects)の用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)および霊長類(例えばサルであるマカクザル、チンパンジーおよびヒト等)を含む哺乳類を示し、より好ましくはヒトを示す。他の実施形態においては、被検体は家畜(例えばウマ、ウシ、ブタ等)またはペット(例えばイヌまたはネコ)である。好ましい実施形態において被検体はヒトである。
【0061】
ここに使用するように、「治療薬(therapeutic agentおよびtherapeutic agents)」の用語は、病気または1以上のその症状の治療、処置または改善に使用することができる、あらゆる薬剤を示す。ある実施形態においては、「治療薬」の用語は、本明細書に開示の化合物を指す。他の実施形態においては、「治療薬」の用語は、本発明の化合物を指すものまたは指すものとしない。好ましくは、治療薬は、病気若しくは1以上の症状の治療、処置、予防または改善に有効であることが知られているか、以前から若しくは現在使用されている薬剤を指す。
【0062】
「治療有効量」は被検体の疾患を治療するために投与する際に、係る疾患の治療に十分な化合物、複合体または組成物の量を意味する。「治療有効量」は、特に、化合物、疾患およびその重症度ならびに患者の年齢、体重等によって異なる。
【0063】
あらゆる疾患または疾病の「治療(treatingまたはtreatment)」は、1つの実施形態においては、被検体の疾患または疾病の改善を指す。他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、被検体自身によっては認識できない、少なくとも1つの身体パラメータを改善することを指す。さらに他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、物理的(例えば認識可能な症状の安定化)若しくは生理的(例えば身体パラメータの安定化)、またはその両方のいずれかの疾患または疾病の制御を指す。さらに他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、疾患または疾病の発症の遅延を指す。
【0064】
ここで用いる「予防薬(“prophylactic agent”および“prophylactic agents”)」の用語は、病気または1以上のその症状の予防に使用し得るあらゆる薬剤を指す。ある実施形態においては、「予防薬」の用語は、本発明の化合物を指す。ある実施形態においては、「予防薬」の用語は、本明細書に開示の組成物を指さない。好ましくは予防薬は疾患の発症、発達、進行および/もしく重篤化を予防若しくは妨げるのに有効なことが知られているか、以前から若しくは現在使用されている薬剤である。
【0065】
ここでは、「予防(prevent、preventingおよびprevention)」の用語は、治療(例えば予防薬または治療薬)の実施、または組み合わせた治療(例えば予防薬または治療薬の配合)の実施による、被検体における1つ以上の疾患の症状の再発、発症または発達の予防を指す。
【0066】
ここでは、「予防有効量」の用語は、1つ以上の疾患と関連のある症状の発達、再発若しくは発症の予防に至るか、または、他の治療(例えば他の予防薬)の予防効果を向上若しくは改善するのに十分な治療薬(例えば予防薬)の量を指すものとする。
【0067】
「ラベル」という用語は、物品の直接容器上の記入、印刷または図面による、例えば薬学的な活性剤を含有するバイアルに表示された試料等の物品の表示を指す。
【0068】
「ラベル付け」という用語は、物品、またはその容器、包装紙若しくはかかる物品の付属品(例えば、薬学的活性剤の容器に付属するか、添付される、添付文書、指示用ビデオテープ若しくはDVD等)のいずれかに対する全てのラベルおよび他の記入、印刷若しくは図画を指す。
【0069】
<化合物>
ある実施形態において、Aは(E)−CH=CHRを示す。ある実施形態において、Aは−CH2CH2Rを示す。実施形態において、式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CH2CH2Rであり、Rはメチル、カルボニルまたはアルコキシカルボニルを示す。他の実施形態において、Aは(E)−CH=CHRであり、Rはメチルまたはアルコキシカルボニルを示す。1つの実施形態において、Aは(E)−CH=CHRであり、Rはメチルを示す。
【0070】
1つの実施形態において、Rはメチルを示す。
【0071】
ある実施形態において、Bはメチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示す。1つの実施形態において、Bはエチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示す。他の実施形態において、Bはエチルを示す。
【0072】
ある実施形態において、R1は4〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニル、またはR23基により置換される3〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルを示す。さらなる実施形態において、R1は、R23基により任意に置換される4または5個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖のアルケニルを示す。さらなる実施形態において、R1は、R23基により置換される4個の炭素原子を有する直鎖アルケニルを示す。さらなる実施形態において、R1は、R23基により置換されたブタ−2−エニルを示す。さらなる実施形態において、R1はR23基により置換されるトランスブタ−2−エニルを示す。また、さらなる実施形態において、R1は、4位置がR23基に置換されたブタ−2−エニルを指す(即ち−CH2CH=CHCH2R23)。さらなる実施形態において、R1は、R22基により置換される2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。また、さらなる実施形態において、R1は、R22基により置換される、4〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。
【0073】
1つの実施形態において、R22およびR23は、同じか異なり、それぞれヒドロキシ;−OR5;または−NR3R4を示し、ここでR3およびR4は、同じか異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルを示すか、R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、飽和した5または6員の飽和複素環を形成し、該環は任意に窒素および酸素からなる群から選択される他のヘテロ原子を有することができる。さらなる実施形態において、R22はヒドロキシルまたは−NR3R4を示す。
【0074】
1つの実施形態において、R3およびR4は、同じか異なり、それぞれ水素;または1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルを示すか;R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、5若しくは6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環は任意に窒素および酸素からなる群から選択される他のヘテロ原子を含み、任意にアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される同じか異なる1〜4基により置換される。
【0075】
1つの実施形態において、R5はアリールを示し、任意にアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる基から選択される、同じか異なる1または2基により置換されるか;R5はアラルキルを示し、アリール環は任意にハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシおよびハロアルキルからなる群から選択される同じか異なる1または2基により置換され、ここでアルキルは1または2個の炭素原子を有する。さらなる実施形態において、R5はフェニルまたはベンジルを示し、ここでフェニル環は、任意に同じか異なる1または2のアルコキシ基により置換される。
【0076】
さらなる実施形態において、Aは(E)−CH=CHR、ここでRはメチルまたはエトキシカルボニル;Bはエチル;R1はR22基により置換されるn−ブチル;またはR1は4〜6個の炭素原子を有し、R23基により任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖アルケニル;R2はメチル;R22およびR23は、同じか異なり、それぞれヒドロキシ、N,N−ジメチルアミノまたはベンジルを示し、ここでフェニル環は任意に1または2基のアルコキシにより置換される。
【0077】
本発明の例示的な化合物としては、以下の化合物が挙げられる:
1. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
2. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
3. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]− Val5−シクロスポリンA;
4. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
5. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
6. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
7. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
8. [(D)−MeAla]3−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA;
9. [(D)−MeAla]3−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA;または
10. [(E)−7−エトキシカルボニル]1−[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA
【0078】
以後、数1〜10を用いて上記化合物を参照し、特定する。
【0079】
本明細書に開示の化合物を、当業者に明白なあらゆる方法によって調製、分離または得ることができる。典型的な調製方法を後述する例で詳細に説明する。
【0080】
ある実施形態において、式(I)の化合物は塩基を用いて式(II):
【0081】
【化3】
【0082】
(式中、A,BおよびR1は上記に規定される)で表される化合物を処理し、その後、生成したアニオン性化合物を、式R2−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR2は上記に規定され、Yは離脱基、例えば臭化物、塩化物、ヨウ化物等のハロゲン化物であるか;またはメシラート、トルエンスルホナート若しくはトリフルオロメタンスルホナート等のスルホン酸エステルである。好ましくは、式(II)の化合物は、適当な溶媒に溶解され、約−70℃まで冷却される。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタン、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。混合物に塩基を添加した後、生成した混合物は、通常、約1時間反応させて、任意に約−20℃まで加熱することができる。反応混合物は、通常、約−70℃まで冷却され、適切な求電子剤が添加される。この反応に好ましい塩基としては、塩化リチウムおよびナトリウムアミドと、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよびリチウムジイソプロピルアミドの組み合わせが挙げられる。式R2−Yの化合物としては、好適には、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル等が挙げられる。
【0083】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、塩基を用いて式(III)
【0084】
【化4】
【0085】
(式中、A,BおよびR2は上記に規定される)で表される化合物を処理し、生成したアニオン性化合物を、式R1−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR1は上記に規定され、Yは離脱基、例えば臭化物、塩化物、ヨウ化物等のハロゲンであるか;またはメシラート、トルエンスルホナート若しくはトリフルオロメタンスルホナート等のスルホン酸エステルである。好ましくは式(III)の化合物は適当な溶媒に溶解され、約−70℃まで冷却される。塩基が添加され、その後、式R1−Yの求電子剤が添加され、反応混合物はほぼ室温まで加熱することができる。好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン等が挙げられる。反応に適した塩基としては、ホスファゼン塩基、水素化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミドが挙げられるが、これらに限定するものではない。特に好ましい塩基は、従来技術において非求電子塩基として既知のtert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス(トリス(ジメチルアミノ)−ホスホラニリデンアミノ)−25,45−カテナジ(ホスファゼン)(P4−t−ブチル)等のホスファゼン塩基を含む。アニオン性窒素基と反応するのに適当な求電子剤としては、ハロゲン化またはスルホン酸化アルキル;ハロゲン化またはスルホン酸化ベンジル;ハロゲン化またはスルホン酸化ヘテロアルキル;ハロゲン化またはスルホン酸化アリルが挙げられる。式R1−Yの好ましい化合物としては、さらにエーテル基、チオエーテル基およびエステル基、例えばクロロメチルメチルエーテル、クロロメチルメチルスルフィドおよびブロモ酢酸tert−ブチルとさらに置換されるハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0086】
式(II)の化合物は、塩基を用いて式(IV)
【0087】
【化5】
【0088】
(式中、AおよびBは上記に規定される)で表される化合物を処理し、生成したアニオン性化合物を式R1−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR1およびYは上記に規定される。一般的に、反応は式(I)の化合物の調製の際、式(III)の化合物から上記と同様の条件で実施される。
【0089】
また式(II)の化合物は、式(V)
【0090】
【化6】
【0091】
(式中、A,BおよびR1は上記のように規定し、R50は保護基を示す)で表される化合物を脱保護することによって調製することができる。好ましいR50基としては、tert−ブチルジメチルシロキシ、トリエチルシリルオキシ、tert−ブチルジフェニルシリルオキシおよびトリメチルシリルオキシ等のトリアルキルシリルが挙げられる。一般的に、反応はフッ化物源(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化水素/ピリジン、フッ化セシウム)を用いて、非プロトン性溶媒中(例えばTHF)、約−20〜約−50℃で実施される。
【0092】
式(V)の化合物は塩基を用いて式(VI)
【0093】
【化7】
【0094】
(式中、A,BおよびR50は上記に規定される)で表される化合物を処理し、生成したアニオン性化合物を式R1−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR1およびYは上記に規定される。通常、反応条件は、式(III)の化合物から式(I)の化合物の調製のための、上記と同様である。
【0095】
式(III)、(IV)および(VI)の化合物は、文献から知られているか、既知の方法を適用し、または適合させて調製することができる。
【0096】
式(V)または(VI)の化合物は、式(II)または(IV)の対応する化合物を適切な溶媒中、保護効果が知られている試薬を用いて、任意で塩基が存在する条件下で処理することによって調製することができる。試薬は、トリアルキルシリル誘導体、活性カルボン酸またはイソシアネート等、塩基は、トリアリウキルアミンまたはアルカリ土類炭酸塩、溶媒はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、THF等が好ましい。試薬はトリフルオロ酢酸tert−ブチルジメチルシリル、塩基はトリエチルアミン、および反応はジクロロエタン中で実施することがより好ましい。
【0097】
既知の方法を適用して、かつ適合させて、式(I)または(II)の化合物を、式(I)または(III)の他の化合物に変換することができ、かかる相互変換は、例えば下記のような本発明のさらなる特徴を形成する。
【0098】
式(I)または(II)(式中、R1は、フェニルまたは複素環で置換されるアルキルであり、前記フェニルまたは複素環はハロゲン(例えば臭化物)で置換される)の化合物は、式(I)(式中、R1は、フェニルまたは複素環で置換されるアルキルであり、前記フェニルまたは複素環はアルキル、アリールまたはアミノで置換される)に対応する化合物に遷移金属反応、例えばスティル反応、鈴木反応またはブッフバルト・ハートウィッグクロスカップリング反応を用いて変換することができる。
【0099】
式(I)または(II)(式中、R1は非置換アルケニル)の化合物は、式(I)または(II)の他方の化合物(式中、R1は非置換アルキル)に、文献から知られている方法を用いて選択的に変換することができる。例えば係る化合物の選択的炭化水素は、式(I)または(II)に対応する化合物(式中、R1はヒドロキシル置換アルキル)を産出することができ;選択的メタセシス反応は、新たにオレフィン誘導体を生じ、選択的ジヒドロキシル化は式(I)の化合物(式中、R1は2つのヒドロキシルで置換されたアルキルを示す)を生じる。
【0100】
式(I)または(II)(式中、R1はアルコキシカルボキシルで置換されたアルキルを示す)の化合物は、式(I)または(III)(式中、R1はカルボキシルで置換されたアルキルを示す)の対応する化合物に、例えばテトラヒドロフラン中で水酸化リチウムを用いて、またはエタノール中で水酸化ナトリウムを用いて変換することができる。カルボキシルを含む式(I)または(II)の化合物は式(I)または(II)(式中、カルボキシルはアミド、アルコキシカルボニルおよびヒドロキシルに置換される)に対応する化合物に既知の方法を適用して、または適合させて変換することができる。
【0101】
式(I)または(II)(式中、R1はエーテルで置換されたアルキレン)の化合物は、式(I)または(II)(式中、R1はエーテル基が選択的に脱保護されたヒドロキシル)の対応する化合物に変換することができる。この方法に用いることができる好ましいエーテルとしては、4−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、アルキルチオメチル、テトラヒドロピラニル等が挙げられる。
【0102】
式(I)または(II)(式中、R1はヒドロキシル基で置換されたアルケニル)の化合物は、ヒドロキシル基の酸化を伴う、1,4−不飽和カルボニル誘導体の産生;アルケニル基の選択的な還元、カルボニルの還元によるヒドロキシル化合物の産生という一連の手順で、対応するアルキル誘導体に変換することができる。アルケニル基の選択的な還元は、銅ヒドリド、リチウム/アンモニア、水酸化ナトリウム/プロトポルフィリン鉄、水素化ホウ素ナトリウム/塩化ニッケル、水素化ホウ素ナトリウム/硫酸銅等の公知の試薬により、1,4還元を生じて達成することができる。
【0103】
上述したように、本明細書に開示の化合物は、中性型または塩の形態とすることができる。
【0104】
本発明の化合物、例えば本明細書に開示の化合物の塩基部分を置換する場合、酸付加塩を形成される。酸付加塩を調製するのに使用できる酸としては、好ましくは遊離塩基と組み合わせた際に薬学的に許容可能な塩、即ちアニオンが塩の製薬学的な投与量で被検体に非毒性である塩を産生するものが挙げられる。本発明の範囲の薬学的に許容可能な塩は、以下の酸由来のものである:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸および硝酸のような無機酸;および酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1、2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2、2、2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の有機酸。
【0105】
対応する酸付加塩としては、塩酸塩および臭化水素酸塩のようなヒドロハライド、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、エタンスルホン酸塩、1、2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン酸塩、ムコン酸塩等が挙げられる
【0106】
本発明の更なる特徴においては、本発明の酸付加塩の化合物は、既知の方法を適用し、または適合させ、遊離塩基と適切な酸の反応によって調製することができる。例えば、本発明の化合物の酸付加塩は、遊離塩基を水溶液、水溶性アルコール溶液または適切な酸を含有する他の適切な溶媒に溶解し、溶液を蒸発して塩を分離するか、または、遊離塩基および酸を有機溶媒中で反応させ、塩を直接分離若しくは溶液の濃縮により得るかの、いずれかの方法によって調製することができる。
【0107】
本発明の化合物の酸付加塩、例えば本明細書に開示の化合物は、既知の方法の適用し、または適合させることで、塩から再生することができる。例えば本明細書に開示の化合物の親化合物を、その酸付加塩から、重炭酸ナトリウム水溶液またはアンモニア水溶液等のアルカリで処理することによって再生することができる。
【0108】
本明細書に開示の化合物等の本発明の化合物を酸部分で置換する場合、塩基付加塩が形成される。本発明の範囲内で、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩を含む薬学的に許容可能な塩は、以下の塩基に由来するものが挙げられる:水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム;および脂肪族、脂環式または芳香族有機アミンのような有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等。
【0109】
本明細書に開示の化合物等の本発明の化合物の金属塩は、水性または有機溶媒中で、所定金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩または類似の反応性化合物を遊離酸形態の化合物と接触させることによって得られる。使用する水性溶媒は、水とするか、水と有機溶媒の混合物とすることができ、好ましくは、有機溶媒はメタノールまたはエタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、テトロヒドロフラン等の脂肪族エーテルまたは酢酸エチル等のエステルである。このような反応は、通常大気温度で行うが、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。
【0110】
本明細書に開示の化合物のアミン塩は、アミンを水性または有機溶媒中で遊離酸形態の化合物と接触させることによって得られる。適切な水性溶媒は、水、および水とメタノール若しくはエタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトニトリル等のニトリルまたはアセトン等のケトンとの混合物を含む。アミノ酸塩を同様に調製することができる。
【0111】
本明細書に開示の化合物の塩基付加塩は、既知の方法を適用し、または適合させて、塩から再生することができる。例えば本明細書に開示の化合物の親化合物をその塩基付加塩から、塩酸等の酸で処理することによって再生できる。
【0112】
<医薬品組成物および投与法>
本明細書に開示の方法に用いるシクロスポリン化合物は、好ましくは一般式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する医薬品組成物を、塩形態が適切な場合においては、単独で、希釈剤若しくはアジュバンドのような一つ以上の互換性および製薬学的に許容可能な担体または他の抗HCV剤との組み合わせの形態で使用して、提供することができる。臨床診療における本発明のシクロスポリン化合物は、既存のあらゆる経路で、特に経口、非経口、直腸または吸入(例えばエアロゾルの形態)で投与することが可能である。本発明のシクロスポリン化合物は、経口で投与されることが好ましい。
【0113】
経口投与用の固体組成物としては、錠剤、丸剤、硬ゼラチンカプセル、粉末または顆粒を使用することができる。これらの組成物において、本発明に係る活性生成物は、ショ糖、ラクトースまたは澱粉のような一つ以上の不活性希釈剤またはアジュバントと混合される。
【0114】
これら組成物には、希釈剤以外の材料、例えばステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、または放出制御用のコーティングを含有させてもよい。
【0115】
経口投与用の液体組成物として、水または液体パラフィン等の不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容可能な溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルを使用することができる。また、これらの組成物は希釈剤以外の物質、例えば湿潤剤、甘味剤または香味剤を含んでいてもよい。
【0116】
非経口投与用の組成物は、エマルジョンまたは滅菌溶液とすることができる。溶媒または賦形剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、または注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを使用することができる。これらの組成物には、アジュバント、特に湿潤剤、等張剤、乳化剤、分散剤および安定剤も含有させてもよい。殺菌は、いくつかの方法、例えば細菌フィルターの使用、放射線または加熱によって実施することができる。これらは、使用時に滅菌水またはあらゆる他の注射可能な滅菌媒体に溶解可能な、滅菌固体組成物の形態で調製してもよい。
【0117】
直腸投与用の組成物は、有効成分に加えて、カカオバター、半合成グリセリドまたはポリエチレングリコールのような無効成分を含有する坐薬または直腸カプセルである。
【0118】
組成物はまたエアロゾルとすることができる。液体エアロゾルの形態で使用するために、組成物を、安定した滅菌溶液、または使用時に非発熱性の滅菌水、食塩水若しくはあらゆる他の薬学的に許容可能な賦形剤に溶解可能な固体組成物とすることができる。直接吸入すべき乾燥エアロゾルの形態で使用するために、有効成分を微粉砕し、水溶性の固形の希釈剤または賦形剤、例えばデキストラン、マンニトールまたはラクトースと混合する。
【0119】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は医薬品組成物または単一ユニット投与形態である。本発明の医薬品組成物および単一ユニット投与形態は、予防または治療に有効な量の一つ以上の予防薬または治療薬(例えば本発明の化合物または他の予防薬または治療薬)と、通常一つ以上の薬学的に許容可能な担体または無効成分とを含む。ある実施形態および本文において、「薬学的に許容可能な」という用語は、動物、特にヒトへの使用に関して、連邦政府または州政府の監督官庁により承認されたか、米国薬局方または他の通常認識された薬局法に記載されたものを意味する。「担体」という用語は、治療薬を投与する際の希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全および不完全))、無効成分または賦形剤を指す。このような製剤担体は、滅菌液体、例えば水と、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油等の石油系、動物系、野菜系または合成系を含む油である。医薬品組成物を静脈内に投与する場合、水が担体であることが好ましい。生理食塩水、デキストロースおよびグリセロール水溶液を、特に注射可能な溶液に対する液体担体として用いることもできる。適切な薬学的担体の例は、E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
【0120】
典型的な医薬品組成物および剤形は、一つ以上の無効成分を含む。適切な無効成分が、薬学分野の当業者に周知であり、適切な無効成分の例としては、特に限定されるものではないが、澱粉、グルコース、ラクトース、サッカロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。特定の無効成分が、医薬品組成物または剤形に配合するのに適切であるかどうかは、特に制限されるものではないが、剤形を被検体に投与する方法、および剤形中の特定の活性成分を含む当業界で周知の様々な要因に依存する。組成物または単一ユニット剤形には、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤を含有させてもよい。
【0121】
本発明のラクトースを含まない組成物は、当業界において周知で、例えば米国薬事法(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載された無効成分を含有することができる。一般的に、ラクトースを含まない組成物は、薬学的に互換性のある量で、かつ製薬学的に許容可能な量の活性成分、結合剤/重鎮剤および潤滑剤を含有する。典型的なラクトースを含まない剤形としては、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ澱粉およびステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0122】
本発明は、さらに活性成分を含む無水の医薬品組成物および剤形を包含する。いくつかの化合物が水で分解されるからである。例えば、水の添加(例えば5%)は、貯蔵寿命または長期の製剤の安定性等の特徴を決定するために、製剤業界において長期保存をシミュレーションする手段として幅広く受け入れられている。例えばJens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379−80を参照のこと。実際、水および熱は、いくつかの化合物の分解を促進する。従って、水の製剤への作用が非常に重要である。水分および/または湿気が、通常製剤の製造、取扱い、包装、保管、出荷および使用中に影響するからである。
【0123】
本発明の無水性医薬品組成物および剤形は、無水の、または含水量の低い材料を用いて、低水分または低湿度条件下で製造することができる。ラクトースと、一級または二級のアミンを有する少なくとも1つの活性成分と、を含む医薬品組成物および剤形は、製造、包装および/または保存中に、実質的な水分および/または湿気との接触が予期される場合に無水であることが好ましい。
【0124】
無水性医薬品組成物は、その無水性が維持されるように調製し、保存すべきである。従って、無水組成物は、これらを適切な処方キットに包含できるように、水への露出を防ぐことが知られた材料を使用して包装することが好ましい。適切な包装の例はとしては、限定しないが、密封したフォイル、プラスチック、ユニット投与容器(例えばバイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが挙げられる。
【0125】
また、本発明は、活性成分の分解速度を低下させる一つ以上の化合物を含む医薬品組成物および剤形を包含する。かかる化合物は、ここで「安定剤」と称し、特に制限されるものではないが、アスコルビン酸等の酸化防止剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が挙げられる。
【0126】
医薬品組成物および単一ユニット剤形は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続性放出製剤等の形態とすることができる。経口処方剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準の担体を含むことができる。このような組成物および剤形は、予防または治療に有効な量の好適には精製された状態の予防薬または治療薬を、被検体への適切な投与のための形態とするために適した量の担体と共に含有する。製剤は、投与様式に適しているべきである。好ましい実施形態において、医薬品組成物または単一ユニット剤形は無菌で、被検体、好ましくは動物被検体、より好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトへの投与に適した形態である。
【0127】
本発明の医薬品組成物は、その意図する投与ルートに互換性を有するように処方される。投与ルートの例としては、特に制限されるものではないが、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、皮下等の非経口、経口、口腔、舌下、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内、滑膜生内および直腸の投与が挙げられる。ある実施形態においては、組成物をヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適合する医薬品組成物として、常法に従って処方する。ある1つの実施形態においては、医薬品組成物をヒトへの皮下投与用に常法に従って処方する。通常、静脈内投与用の組成物は、滅菌された等張性水性緩衝剤の溶液である。所要に応じて、組成物はまた可溶化剤および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインのような局所麻酔薬を含んでもよい。
【0128】
剤形の例としては、特に制限されるものではないが、錠剤;カプレット;軟ゼラチンカプセルのようなカプセル;カシェ;トローチ;菱形剤;分散液;坐薬;軟膏;湿布(湿布薬);ペースト;粉末;包帯;クリーム;絆創膏;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば点鼻薬または吸入器);ゲル;懸濁液(例えば水性または非水性の液体懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョン)、溶液およびエリキシルを含む被検体への経口または粘膜投与に適した液体剤形;被検体への非経口投与に適した液体剤形;および被検体への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構築し得る無菌の固体(例えば結晶性または非結晶性の固体)が挙げられる。
【0129】
本発明の剤形の組成、形状および種類は、通常その使用によって異なる。例えばウイルス感染の初期治療に用いる剤形は、同じ感染の維持療法に用いる剤形より多い量の一つ以上の活性成分を含有することができる。同様に、非経口剤形は、同じ疾病または疾患を治療するのに用いる経口剤形より少ない量の一つ以上の活性成分を含有することができる。本発明に包含される特徴的な剤形が多様な形態を示す、これらの方法及び他の方法は、当業者にとって、明確に理解できるであろう。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0130】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば乾燥凍結粉末または水を含まない濃縮物として活性剤の量を示す、アンプルまたは小袋のような密封した容器に、個々に、または一緒に混合されたユニット剤形として供給される。組成物を点滴によって投与すべき場合、それは滅菌製薬品質の水または食塩水を含有する点滴ボトルに分注することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができるので、成分を投与前に混合してもよい。
【0131】
本発明の典型的な剤形は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物を、一日一回の服用で朝に、好ましくはその日に摂取する食べ物との分割投与で、一日当たり約0.1mg〜約2000mgの範囲内で含有する。本発明のある剤形は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、100、200、250、500、1000または2000mgの活性型シクロスポリンを有する。
【0132】
<経口剤形>
経口投与に適した本発明の医薬品組成物は、限定しないが、錠剤(例えば咀嚼錠)、カプレット、カプセルおよび液体(例えば風味をつけたシロップ)のような個別の剤形として示すことができる。このような剤形は所定量の活性成分を含有し、当業者に周知の薬学的方法によって調製することができる。一般的にRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0133】
好ましい実施形態において、経口剤形は固体であり、前項に詳細に記載したように、無水成分を用いて無水条件下で調製される。しかしながら、本発明の範囲は無水の固形経口剤形を以外のものも包含する。このようなさらなる形態を、本明細書にて開示する。
【0134】
最近の薬学的合成技術に従って、活性薬剤を、少なくとも1つの無効成分と十分に混合して、本発明の典型的な経口剤形を製造する。無効成分は、投与に好ましい製造形態であれば、多種多様な形態とすることができる。例えば経口液体またはエアロゾルの剤形としての使用に適切な無効成分としては、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤および着色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。固体経口剤形(例えば粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)における使用に適切な無効成分の例として、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
投与を容易とするため、錠剤およびカプセルが最も有利な経口投薬ユニット形態を示し、この場合、固体無効成分が用いられる。必要に応じて、錠剤を標準の水性または非水性の技術によってコーティングすることができる。このような剤形は、あらゆる薬学的方法によって調製することができる。一般に、医薬品組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微粉細固体担体またはその両方と均一且つ徹底的に混合し、必要に応じて生成物を所望の体裁に成形することによって調製することができる。
【0136】
例えば錠剤は、圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械で粉末または顆粒のような自由流動形態の活性成分を、任意に無効成分と混合して圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。
【0137】
本発明の経口投与形態に使用することができる無効成分の例としては、特に制限されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤および潤滑剤が挙げられる。医薬品組成物および剤形の使用に適した結合剤としては、特に制限されるものではないが、穀物澱粉、ジャガイモ澱粉または他の澱粉、ゼラチン、及び、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカントゴム、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばNo.2208、2906、2910)、微結晶性セルロースおよびそれらの混合物等の天然および合成の粘性物質が挙げられる。
【0138】
本明細書に開示の医薬品組成物および剤形の使用に適した充填剤の例としては、特に制限されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、α澱粉およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の医薬品組成物中の結合剤または充填剤は、通常医薬品組成物または剤形の約50〜約99重量%で存在する。
【0139】
微結晶性セルロースの適切な形態は、特に制限されるものではないが、AVICEL PH 101、AVICEL PH 103 AVICEL RC 581、AVICEL PH 105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)、およびそれらの混合物として販売されている材料が挙げられる。ある結合剤は、AVICEL RC 581として販売されている、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適切な無水、低水分無効成分または添加剤としては、AVICEL PH103(商標)およびSTARCH 1500LMが挙げられる。
【0140】
崩壊剤を本発明の組成物に用いて、水性環境にさらした際に崩壊する錠剤を提供する。過剰の崩壊剤を含有する錠剤は保管中崩壊してしまうが、一方で、少なすぎる含有量の錠剤は、所望の速度または所望の条件下で崩壊しない場合がある。従って、活性成分の放出を有害なものに変えるほど過剰でもなく、非常に少なくもない、十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固体剤形を形成すべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類によって異なるが、当業者に容易に認識される。典型的な医薬品組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、特に約1〜約5重量%の崩壊剤を含有する。
【0141】
本発明の医薬品組成物および剤形に使用し得る崩壊剤としては、限定しないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウム澱粉グリコレート、ジャガイモまたはタピオカの澱粉、α澱粉、他の澱粉、粘土、他のアルギン、他のセルロース、粘性物質およびそれらの混合物が挙げられる。
【0142】
本発明の医薬品組成物および剤形に使用し得る潤滑剤としては、特に制限されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる潤滑剤としては、例えばシロイドシリカゲル(メリーランド州、ボルティモアのW.R. Grace社から製造されているAEROSIL 200)、合成シリカの凝固エアロゾル(テキサス州、プラノのDegussa社から市販されている)、CAB O SIL(マサチューセツ州、ボストンのCabot社から販売されている発熱性の二酸化ケイ素製品)およびそれらの混合物が挙げられる。潤滑剤を少しでも使用する場合、通常、それらが組み込まれる医薬品組成物または剤形の約1重量%未満の量にて通常使用される。
【0143】
<遅延放出剤形>
本明細書に開示の化合物のような活性成分を、放出制御手段または当業者に周知の送達装置によって投与することができる。例としては、特に制限されるものではないが、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号および第5,733,566号明細書に記載されており、それぞれここに参照して援用する。このような剤形を用いて、例えば所望の放出プロフィールを異なる割合で提供するために、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマー材料、ゲル、透過性の膜、浸透圧法、多層コーティング、微粒子、リボソーム、微小球またはそれらの組み合わせを使用した、一つ以上の活性成分の徐放または放出制御を提供することができる。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の適切な放出制御製剤を、本発明の活性成分での使用に関し容易に選択することができる。従って、本発明は、特に制限するものではないが、放出制御に適合した錠剤、カプセル、ゲルカプセルおよびカプレットのような経口投与に適した単一ユニット剤形を包含する。
【0144】
全ての放出制御製剤製品は、非制御対応物により達成されるものを超えて、薬物療法を改善するといった共通の目的がある。理想的には、薬物治療に最適に設計された放出制御製剤の使用が、最小限の時間で疾患を治療または制御するための、最小限の薬剤物質を用いることを特徴とする。放出制御製剤の利点として、薬物活性の延長、投薬回数の減少、および被検体への対応性の向上が挙げられる。さらに、放出制御製剤を使用して、薬物の血液レベルといった作用、または他の特徴の発症時間に影響を及ぼすことができ、従って副作用(例えば逆作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0145】
多くの放出制御製剤は、まず所望の治療効果を速やかにもたらす量の薬物(活性成分)を放出し、このレベルの治療的または予防的な効果を長期間にわたって維持する薬物の量を、段階的に、且つ絶えず放出するように設計されている。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は、体内から代謝、分泌される薬物量を置き換えるような速度で剤形から放出される必要がある。活性成分の放出制御は、特に制限されるものではないが、pH、温度、酵素、水または他の生理的条件若しくは化合物を含む様々な条件によって刺激されることがある。
【0146】
<非経口剤形>
固体の無水経口剤形が好ましいが、本発明はまた非経口剤形を提供する。非経口剤形を被検体に、特に制限されるものではないが、皮下、静脈内(急速静注法を含む)、筋肉内および動脈内を含む様々なルートによって投与することができる。かかる投与において、コンタミネーションに対する被検体の自然免疫能を回避するため、通常、非経口剤形は、滅菌であるかまたは被検体への投与前に滅菌することが好ましい。非経口剤形の例としては、特に制限されるものではないが、注射に適した溶液、注射用の薬学的に許容可能な賦形剤に溶解または懸濁された乾燥生成物、注射に適した懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0147】
本発明の非経口剤形を提供するのに使用可能な適切な賦形剤が、当業者に周知である。一例としては、特に制限されるものではないが、注射用水USP;塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射および乳酸化リンガー注射のような水性賦形剤;エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのような水混和性賦形剤;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートおよび安息香酸ベンジルのような非水性賦形剤が挙げられる。
【0148】
本明細書に開示の一つ以上の活性成分の溶解度を向上させる化合物を、本発明の非経口剤形に組み込むこともできる。
【0149】
<経皮、局所および粘膜の剤形>
固体の無水経口剤形が好ましいが、本発明は経皮、局所および経粘膜の剤形をも提供する。本発明の経皮、局所および経粘膜の剤形としては、特に制限されるものではないが、点眼薬、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁液、または他の当業者に知られた形態が挙げられる。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16th and 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990); およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形を、うがい薬または経口ゲルとして処方することができる。さらに、経皮剤形としては、皮膚に塗布し、特定の期間静置して所望量の活性成分の浸透を可能にすることができる、「蓄積タイプ」または「マトリックスタイプ」のパッチが挙げられる。
【0150】
本発明に包含される経皮、局所および粘膜剤形を提供するのに使用することができる適切な無効成分(例えば担体および希釈剤)および他の成分は、製剤の当業者に周知であり、所定の医薬品組成物または剤形を塗布する組織に依存する。その事実を考慮して、典型的な無効成分としては、特に限定されるものではないが、非毒性および薬学的に許容可能なローション、チンキ、クリーム、エマルジョン、ゲルまたは軟膏を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。また、必要に応じて、保湿剤または湿潤剤を医薬品組成物および剤形に添加することができる。このような追加成分の例は、当業界において周知である。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16thおよび18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990)を参照のこと。
【0151】
治療すべき特定の組織に応じて、追加の成分を本発明の活性成分での治療前、治療中、または治療後に使用することができる。例えば、浸透促進剤を使用して活性成分の組織への送達を助けることができる。適切な浸透促進剤としては、特に制限されるものではないが、アセトン;エタノール、オレイルおよびテトラヒドロフリルのような種々のアルコール;ジメチルスルホキシドのようなアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンのようなピロリドン;Kollidon品質(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびにTween80(ポリソルベート80)およびSpan60(ソルビタンモノステアレート)のような種々の水溶性または不溶性の糖エステルが挙げられる。
【0152】
医薬品組成物若しくは剤形のpH、または医薬品組成物若しくは剤形を適用する組織のpHを調節して、一つ以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度または浸透圧を調整して、送達を改善することができる。また、ステアリン酸塩等の化合物を医薬品組成物または剤形に添加して、送達を改善するように、一つ以上の活性成分の親水性または親油性を有利に変更することができる。この点に関して、ステアリン酸塩は、製剤用の脂質賦形剤;乳化剤または界面活性剤;および送達促進剤または浸透促進剤として機能を果たすことができる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を使用して得られる組成物の物性をさらに調整することができる。
【0153】
<被検体の疾患を治療または予防する方法>
本発明の化合物はサイクロフィリンと称する酵素に働き、それらの酵素活性を阻害する。サイクロフィリンは、ヒト、酵母、バクテリア、原生動物、後生動物、昆虫、植物またはウイルスを含む広範囲の異なる生命体に生じる。感染性生命体の場合、本発明の化合物によるサイクロフィリン触媒活性の阻害が、しばしば生命体に対する抑制効果をもたらす。さらに、ヒトにおけるサイクロフィリンの触媒活性は、多くの異なる疾患状態に影響をもたらす。該触媒活性の阻害は、しばしば治療効果と関連する。従って、本発明の特定の化合物を、HCVおよびHIV(以下に詳細に記載する)ならびに菌類の病原体、原生動物およびメタゾア寄生体を含む感染の治療に使用することができる。さらに、本発明の特定の化合物を使用してアルツハイマー病、パーキンソン病および神経障害のような神経変性疾患を治療することができる。本発明の化合物の他の使用としては、脊髄若しくは頭部の損傷後の麻痺性障害、または心筋梗塞症後の心臓障害のような虚血および再かん流に関連する組織の損傷に対する保護がある。さらに、本発明の化合物を使用して、損傷または他の根本的な病状、例えば、緑内障の目の神経障害における再生工程や、髪、肝臓、歯肉または神経組織の再生を誘発することができる。
【0154】
本発明の特定の化合物は、例えば顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(ランドジー・デジェリーヌ)ならびにデュシェンヌおよびベッカー型筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーを含む、肢帯筋ジストロフィーとして診断された患者の筋細胞のミトコンドリア機能およびアポトーシス率に影響を与えることがある。
【0155】
本発明の特定の化合物を使用して、慢性炎症性疾患および自己免疫疾患を治療することができる。また、本明細書に開示のある化合物による免疫反応の調節について、慢性関節リウマチ、全身紅斑性狼瘡、高イムノグロブリンE血症、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、汎発性強皮症、重症筋無力症、I型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎のような自己免疫疾患の治療における有効性が見出された。さらなる用途としては、炎症性および過剰増殖性の皮膚病ならびに免疫を介する疾患の皮膚症状、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎および湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮下気腫、紅斑性狼瘡、にきびおよび円形脱毛症;角結膜炎、春季カタル、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト−コヤナギ−ハラダ症候群、類肉腫症、多発性骨髄腫等の様々な眼病(自己免疫やその他);COPD、喘息(例えば気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性の喘息、外部喘息および塵喘息)、特に慢性的または常習的な喘息(例えば遅発型喘息および気道過敏症)、気管支炎、アレルギー性鼻炎等の疾患を含む閉塞性気道疾患;胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症が原因の脈管損害のような粘膜および血管の炎症の治療および予防が挙げられる。さらに、本明細書に開示のある化合物によって、過剰増殖性血管病、例えば内膜平滑筋細胞増殖、再狭窄および血管閉塞、特に生物学的または機械的に介在する血管損傷を治療または予防することができる。他の治療可能な疾患としては、特に制限されるものではないが、虚血腸管疾患;炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷と関連する腸の病変およびロイコトリエンB4を介在する疾患;腸の炎症/アレルギーである小児脂肪便症、直腸炎、好酸性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病および潰瘍性大腸炎;消化管と関係の薄い症状を有する食品関連のアレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎および湿疹);腎疾患である間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、容血性尿毒症症候群および糖尿病性ネフロパシ;神経系の疾患である多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、多発性神経炎、単発神経炎および神経根神経病;内分泌疾患である甲状腺機能亢進症およびバセドー病;血液疾患である赤芽球癆、無形成性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨大赤芽球性貧血および赤血球形成不全;骨疾患である骨粗鬆症;呼吸器疾患である類肉腫症、肺線維症および原因不明の間質性肺炎;皮膚病である皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光線過敏症および皮膚T細胞リンパ腫;循環疾患である動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎および心筋症;膠原病である硬皮症、ヴェゲナーの肉芽腫およびシェーグレン症候群;脂肪過多;好酸性筋膜炎;歯周病である歯肉、歯周組織、歯槽骨および歯のセメント質の病変;ネフローゼ症候群である糸球体腎炎;脱毛の予防若しくは毛芽の提供および/または髪生成の促進および、育毛による男性型脱毛症または老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;アジソン病;活性酸素の介在された疾患、例えば臓器損傷である保存、移植または虚血性疾患(例えば血栓症および心臓の梗塞)に応じて生じる臓器(例えば心臓、肝臓、腎臓および消化管)の虚血−再かん流傷害;薬物または放射線が原因の腸の疾患であるエンドトキシン−ショック、偽膜性大腸炎および大腸炎;腎疾患である虚血性急性腎不全および慢性腎不全;肺−酸素または薬物が原因の肺疾患である中毒症(例えばパラコートおよびブレオマイシン)、肺癌および肺気腫;眼性疾患である白内障、鉄症、網膜炎、網膜色素変性、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕化および角膜アルカリ熱傷;皮膚炎である多形性紅斑、線状IgA水疱症およびセメント皮膚炎;ならびに他の歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば大気汚染)、老化、発癌、癌の転移および高山病が原因の疾患;ヒスタミンまたはロイコトリエン−C4放出が原因となる疾患;口腔、皮膚、目、外陰部、関節、副睾丸、肺、腎臓等に影響を及ぼすベーチェット病である腸、血管または神経ベーチェット病、ならびにベーチェット病を含む。さらに、本明細書に開示のある化合物は、肝臓疾患、例えば免疫原性の疾病(例えば自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変および硬化性胆管炎からなる群のような慢性自己免疫肝疾患)、肝臓部分的切除、急性肝壊死、肝硬変(例えばアルコール性肝硬変)、肝不全である劇症肝炎、遅発性肝不全および急性肝不全の慢性肝疾患の治療および予防が挙げられる。また、本発明のある化合物は、先天性肝腺維症を有する新生児または移植者、例えば肝臓移植の予防治療としても使用することができる。
【0156】
<被検体のHCVを治療または予防する方法>
本願は、本明細書に開示の化合物または組成物を含有する組成物を必要とする被検体のヘパシウイルス感染の治療または予防のために使用する方法を提供する。一般に、該方法は有効量の化合物または組成物を被検体に投与してヘパシウイルスの感染を治療または予防する工程を備える。好ましい実施形態において、ヘパシウイルス感染はHCV感染である。
【0157】
本発明のある実施形態として、被検体はHCVに感染したか、その感染の危険性のある、あらゆる被検体である。感染または感染の危険性は、当業者に適切であると考えられる、あらゆる技術によって判定することができる。特定の好ましい被検体は、HCVに感染したヒトである。
【0158】
HCVは、当業者に公知のあらゆるHCVとすることができる。現在、当業者に知られているHCVとしては、少なくとも6つのジェノタイプおよび少なくとも50個のサブタイプが存在する。HCVは、当業者に公知のあらゆるジェノタイプまたはサブタイプであってよい。ある実施形態において、HCVは、未同定のジェノタイプまたはサブタイプとする。ある実施形態では、被検体は単一のジェノタイプのHCVに感染している。ある実施形態では、複数のサブタイプまたは複数のジェノタイプのHCVに感染している。
【0159】
ある実施形態において、HCVはジェノタイプ1型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ1a型、1b型または1c型である。ジェノタイプ1型のHCV感染は、最近のインターフェロン療法に対して感受性が低いと考えられている。本発明の方法はジェノタイプ1型のHCV感染症の療法に有効となり得る。
【0160】
特定の実施形態において、HCVはジェノタイプ1型以外のものである。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ2型であり、あらゆるサブタイプとすることができる。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ2a型、2b型または2c型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ3型であり、あらゆるサブタイプとすることができる。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ3a型、3b型または10a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ4型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ4a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ5型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ5a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ6型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ6a型、6b型、7b型、8b型、9a型または11a型である。例えばSimmonds, 2004, J Gen Virol. 85:3173−88; Simmonds, 2001, J. Gen. Virol., 82:693−712を参照し、その内容のすべてをここに取り込む。
【0161】
ある実施形態において、被検体は、一度もHCV感染症に対する治療または予防を受けたことがないものとする。さらなる実施形態において、被検体は、以前HCV感染症に対する治療または予防を受けたことがあるものとする。例えば、ある実施形態において、被検体はHCV療法に反応してこなかったものである。実際、従来のインターフェロン療法において、50%までの、またはそれ以上のHCV被検体が療法に反応しない。ある実施形態において、被検体は治療を受けたことがあるが、ウイルス感染症またはその1つ以上の症状を有する被検体とすることができる。ある実施形態において、被検体は治療を受けたが、持続性ウイルス陰性化の達成に失敗したものとすることができる。ある実施形態において、被検体はHCV感染症の治療を受けたが、療法から12週間後HCVのRNAレベルにおいて、2log10低減することに失敗したものとする。治療12週間後に血清HCVのRNAが、2log10を超える減少を示さない被検体は、97〜100%の確率で反応しないと考えられている。本発明の化合物は、最近のHCV療法以外の機構によって作用するため、本発明の化合物はこのような非応答の被検体の治療に効果的であると考えられる。
【0162】
ある実施形態において、被検体は1つ以上の治療と関連する有害事象のため、HCV療法を中断した被検体としてもよい。ある実施形態において、被検体は最近の治療が勧められない被検体とする。例えば、HCVのためのある治療は、神経精神病学的症状と関連している。インターフェロン(IFN)−αとリバビリンは、高い割合で、うつ病と関連する。うつ病の症状は、数々の治療失敗例に関連している。生死に関わるか、致命的な神経精神病学的現象として、HCV治療中の、自殺および自殺念慮、殺人念慮、うつ病、薬物中毒の再発/過剰摂取および攻撃的な行動等が、前兆としての身体的な不具合を伴って、または伴わずに生じてきた。インターフェロンによって誘発されるうつ病は、特に精神医学的障害を有する被検体に対する、慢性C型肝炎の治療を制限してしまう。精神的な副作用は、インターフェロン療法において一般的であり、最近の対HCV感染症療法の中断原因の約10%〜20%を占める。
【0163】
従って、本発明は、最近のHCV治療では治療禁忌とされる神経精神病学的症状、例えばうつ病の危険性のある被検体におけるHCV感染症の治療または予防方法を提供する。また、本発明は、最近のHCV治療では治療の中断が推奨される神経精神病学的症状、例えばうつ病またはその危険性のある被検体に、HCV感染症の治療または予防の方法を提供する。さらに、本発明は、最近のHCV治療では投薬量の低減が推奨される神経精神病学的症状、例えばうつ病またはその危険性のある被検体に、HCV感染症の治療または予防の方法を提供する。
【0164】
最近の治療は、インターフェロン若しくはリバビリン、またはそれら双方、またはあらゆるインターフェロン若しくはリバビリンの他の製剤製品の成分に対して、過敏性の被検体を禁忌としている。また、最近の治療は、異常血色素症である被検体(例えばサラセミアメジャー、鎌型赤血球貧血症)および最近の治療の血液学的副作用の危険性のある他の被検体には推奨されない。一般的な血液学的な副作用として骨髄抑制、好中球減少および血小板減少が挙げられる。さらに、リバビリンは赤血球に対して毒性があり、溶血と関与する。従って、また本発明はインターフェロン若しくはリバビリンまたはそれら双方に敏感な被検体、異常血色素症を有する被検体であり、例えばサラセミアメジャーの被検体および鎌型赤血球貧血症の被検体、ならびに最近の治療の血液学的な副作用の危険性のある他の被検体における、HCV感染症の治療または予防方法を提供する。
【0165】
ある実施形態において、HCV治療を受けてきた被検体については、本発明の方法を受ける前に、その治療を中断する。またさらなる実施形態において、被検体に治療を実施し、その治療を本発明の方法と併用して継続する。本発明の方法は、当業者の判断に従って、HCVに対する他の療法と併用してもよい。有利な実施形態において、本発明の方法または組成物を、投与量を減じた他のHCV治療と同時に実施し、または投与することができる。
【0166】
ある実施形態において、本発明はインターフェロンによる治療に対して抵抗性のある被検体の治療方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、被検体は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリン、およびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される、1以上の薬剤との治療に対する反応に劣る被検体である。いくつかの実施形態において、被検体は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリンおよびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される、1以上の薬剤との治療に対する反応がない被検体としてもよい。
【0167】
さらなる実施形態において、本発明は、妊婦または妊娠の可能性がある被検体におけるHCV感染の治療方法を提供する。従来の療法が、妊婦に禁忌を示すからである。
【0168】
ある実施形態において、本発明の方法または組成物を肝移植後の被検体に投与する。C型肝炎は、米国において肝移植の原因となり、肝移植を経た多くの被検体は、移植後も依然としてHCV陽性のままである。本発明は、本発明に開示された化合物または組成物及び治療方法を、このようにHCVを再発した被検体に提供する。ある実施形態において、本発明は、HCV感染症の再発を予防するため、肝臓移植前、移植中または移植後の被検体への治療方法を提供する。
【0169】
<投薬およびユニット剤形>
ヒトの治療において、医師は、予防処置かまたは治療処置かによって、かつ治療すべき被検体に特異的な年齢、体重、感染の段階および他の要因によって、最も適切であると考えられる薬量を決定する。通常、投与量は成人1日当たり約1〜約2000mgである。
【0170】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被検体に、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、HCVに対する高い治療指数で投与することにより、被検体のHCV感染を治療または予防する方法を提供する。治療指数は、当業者に既知のあらゆる方法、例えば、以下の実施例に記載した方法に従って測定することができる。ある実施形態において、治療指数は、化合物が有毒性を呈する濃度 対 HCVに有効な濃度の比率である。毒性は、細胞毒性(例えばIC50またはIC90)および致死量(例えばLD50またはLD90)を含む、当業者に既知のあらゆる技術によって決定することができる。同様に、有効濃度は、効果的な濃度(例えばEC50またはEC90)および有効投与量(例えばED50またはED90)を含む、当業者に既知のあらゆる技術によって決定することができる。
【0171】
障害またはその一つ以上の症状の予防または治療に有効な本発明の化合物または組成物の量は、疾病または疾患の特徴ならびに重篤度、活性成分の投与経路によって異なる。また、回数および投薬量は、投与の目的たる特異的療法(例えば治療薬または予防薬)、障害、疾病または疾患の重篤度、投与経路ならびに被検体の年齢、身体、体重、反応および過去の病歴に応じた各被検体に特異的な因子によって異なる。有効投与量は、生体外または動物モデルの試験システムに由来した、投与量―応答曲線から推定することができる。
【0172】
一般に、本発明の疾患に対する本明細書に開示の組成物の、推奨される一日の投与量範囲は、一日あたり約0.1mg〜約2000mgの範囲内であり、一回で一日分を服用するか、一日に何回かに分けて服用する量として投与される。1つの実施形態において、一日の服用量は、等しく分割した服用量で一日二回投与する。いくつかの場合において、本明細書に開示した範囲外の活性成分の投与量を使用する必要があり得ることは、当業者にとって明白である。さらに臨床医または治療医師が、被検体の反応によって、療法を如何に中断、調整または終了するかを知っていることは、留意すべきである。
【0173】
種々の治療に有効な量を、異なる疾病および疾患に適用することができることは、当業者にとって容易に理解できる。同様に、かかる障害を、予防、管理、治療または改善するのに十分であるが、本発明の組成物と関連する副作用を生じるほどではない、または減じさせる量についても、上記投薬量および投薬回数スケジュールに包含される。さらに、被検体に本発明の組成物を複数回の投薬で投与する場合、全ての投薬量が同じである必要はない。例えば、被検体に投与する服用量を増やして組成物の予防または治療効果を向上させてもよく、または減らして特定の被検体が経験する一つ以上の副作用を軽減させてもよい。
【0174】
ある実施形態において、治療または予防は、本発明の化合物または組成物の一つ以上の導入量と、それに続く一つ以上の維持量で開始することができる。かかる実施形態において、導入量は、例えば1日〜48週間または1日〜5週間において約60〜約2000mg/日または約100〜約400mg/日とすることができる。導入量の後に、一つ以上の維持量が続く。
【0175】
ある実施形態において、本発明の化合物または組成物の服用量を投与して、被検体の血液または血清中の活性成分を定常濃度とすることができる。定常濃度は、当業者に利用可能な技術による測定によって決定することができるか、または身長、体重および年齢のような被検体の身体的な特徴に基づくことができる。
【0176】
ある実施形態において、本発明の同じ組成物の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。他の実施形態において、同じ予防薬または治療薬の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。
【0177】
ある態様において、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与に適した形態で含有する単位投与量を提供する。かかる形態は、上記に詳細に記載されている。特定の実施形態において、単位投与量は、活性成分約1〜約2000mg、約5〜約1000mgまたは約10〜約500mgを含有する。特定の実施形態において、単位投与量は、約1、5、10、25、50、100、125、250、500、1000または2000mgの活性成分を含有する。かかる単位投与量は、当業者によく知られている技術に従って調製することができる。
【0178】
<HCV併用療法>
本発明は、HCV感染の治療または予防に効果的な、それを必要とする被検体に第二薬剤を投与することを備えた治療または予防の方法を提供する。第二薬剤は、HCV感染の治療または予防に効果的な、当業者に既知のあらゆる薬剤とすることができる。第二薬剤は、現在当業者に既知の第二薬剤とするか、または第二薬剤はHIVの治療または予防のために開発され現在使用されている第二薬剤とすることができる。ある実施形態において、第二薬剤は、HCVの治療用または予防用として現在承認されている。
【0179】
ある実施形態において、本発明の化合物を1つの第二薬剤と組み合わせて投与する。さらなる実施形態において、第二薬剤を2つの第二薬剤と組み合わせて投与する。なお、さらなる実施形態において、第二薬剤を二つ以上の第二薬剤と組み合わせて投与する。
【0180】
適当な第二薬剤としては、HCV酵素の小分子で、経口の生物学的に利用可能な阻害薬、ウイルスRNAを攻撃する核酸に基づく薬剤、宿主免疫反応を調節することができる薬剤が挙げられる。典型的な第二薬剤としては、(i)現在承認されている治療薬(ペグインターフェロンとリバビリン)、(ii)HCV酵素標的化合物、(iii)ウイルスゲノム標的療法(例えばRNA干渉またはRNAi)および(iv)リバビリン、インターフェロン(INF)およびToll受容体作用薬のような免疫調節性剤が挙げられる。
【0181】
ある実施形態において、第二薬剤は、NS3−4Aプロテアーゼのモジュレータである。NS3−4Aプロテアーゼは、NS3タンパク質のアミノ末端ドメインおよび小NS4A補因子を含むヘテロ二量体プロテアーゼである。その活性は、ウイルスRNA複製複合体の成分を生成するために重要である。
【0182】
1の有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤は、テラプレビル(Vertex/Mitsubishi)、すなわちNS3−4Aプロテアーゼのプロテアーゼ切断産物由来のペプチド模倣薬の阻害剤である。それはケトアミドによる酵素の活性部位において安定化すると考えられる。例えばLin et al., 2005, J. Biol. Chem. Manuscript M506462200 (epublication); Summa, 2005, Curr. Opin. Investig. Drugs. 6:831−7を参照とし、内容をここに完全に援用する。他の有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤は、ボセプレビル(Merck/Shering−Plough)である。
【0183】
ある実施形態において、第二薬剤はHCV NS5Bの調節薬、RNA依存RNAポリメラーゼ(RdRp)である。NS5Bタンパク質内に含まれるRdRpはRNA鋳型を使用してRNAを合成する。この生化学活性は、哺乳類細胞に存在しない。
【0184】
RdRpの他の有用な調節剤は、7−デアザヌクレオシドの類似体を含む。例えば7−デアザ−2’−C−メチル−アデノシンは、優れた薬物動態学的特徴を有するC型肝炎ウイルス複製の有力且つ選択的な阻害剤である。Olsen et al., 2004, Antimicrob. Agents Chemother. 48:3944−3953の内容を、ここに完全に参考として援用した。
【0185】
さらなる実施形態において、第二薬剤はNS5Bの非ヌクレオシド調節剤である。NS5B阻害剤のヌクレオシド阻害剤(NNI)の少なくとも3つの異なる種類が、臨床試験中である。
【0186】
NS5Bの有用な非ヌクレオシド調節剤は、JTK−003およびJTK−009を包含する。JTK−003は、第2相まで開発されている。NS5Bの有用な非ヌクレオシド調節剤は、ベンゾイミダゾールまたはインドール核に基づく6,5−融合複素環化合物を含む。例えばHashimoto et al., 国際公開第2000/147883号を参照とし、内容をここに参考として完全に援用する。
【0187】
さらなる有用なポリメラーゼNNIは、R803(Rigel)と、HCV−371、HCV−086およびHCV−796(ViroPharma/Wyeth)を包含する。さらなる有用なNNIは、NS5Bポリメラーゼの可逆性アロステリックな阻害剤で、ベンゾイミダゾールに基づく阻害剤によって占領された部位に近接しているが、明らかに異なる部位に結合するチオフェン誘導体を包含する。例えばBiswal, et al., 2005, J. Biol. Chem. 280:18202−18210を参照のこと。
【0188】
さらに本発明の方法に有用なNNIは、ベンゾ−1,2,4−チアジアジンのようなベンゾチアジアジンを包含する。ベンゾ−1,2,4−チアジアジンの誘導体は、HCVのRNAポリメラーゼの高度に選択的な阻害剤であることが示された。Dhanak, et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:38322−38327の内容を、ここに完全に参照して援用する。
【0189】
本発明の方法にさらに有用なNNIおよびその機構が、LaPlante et al., 2004 Angew Chem. Int. Ed. Engl. 43:4306−4311; Tomei et al., 2003, J. Virol. 77:13225−13231; Di Marco et al., 2005, J. Biol. Chem. 280:29765−70; Lu, H.,国際公開第2005/000308号; Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:797−800; Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:793−796; Wang et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:9489−9495; Love, et al., 2003, J. Virol. 77:7575−7581; Gu et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:16602−16607; Tomei et al., 2004, J. Virol. 78:938−946;およびNguyen et al., 2003, Antimicrob. Agents Chemother. 47:3525−3530に記載され;内容をここに完全に参照して援用する。
【0190】
さらなる実施形態において、第二薬剤は、HCVポリヌクレオチドに特異的な小抑制RNA(siRNA)または短ヘアピン型RNA(shRNA)のような、HCVのRNAと干渉し得る薬剤である。組織培養において、ウイルスゲノムに対するsiRNA、およびベクターコード化短ヘアピン型RNAであるshRNAは、HCVレプリコンの複製を効果的にブロックする。例えばRandall et al., 2003, Proc. Natl Acad. Sci. USA 100:235−240を参照とし、内容をここに完全に援用した。
【0191】
さらなる実施形態において、第二薬剤は被検体の免疫反応を調節する薬剤である。例えばある実施形態において、第二薬剤はインターフェロン(IFN)、ペグインターフェロン、IFNとリバビリンまたはベグインターフェロンとリバビリンのようなHCV感染に対して、現在承認された治療薬とすることができる。好ましいインターフェロンはIFNα、IFNα2aおよびIFNα2b、特にペグIFNα2a(PEGASYS(登録商標))またはペグIFNα2b(PEG−INTRON(登録商標))を含む。
【0192】
さらなる実施形態において、第二薬剤はToll様受容体(TLR)の調節薬である。TLRは内在的な抗ウイルス反応を刺激する標的であると考えられる。適当なTLRとして、限定しないが、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9が挙げられる。Toll様受容体はバクテリア、ウイルスおよび寄生虫のような微生物の侵入の存在を察知すると考えられる。それらはマクロファージ、単球、樹枝細胞およびB細胞を含む免疫細胞によって発現する。TLRの刺激または活性化は、抗菌性遺伝子、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの誘導によって急性炎症性反応を開始することができる。
【0193】
ある実施形態において、第二薬剤は、CpGモチーフを含有するポリヌクレオチドである。非メチル化CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチドは、TLR−9の有力な作用薬である。これらオリゴヌクレオチドでの樹枝細胞の刺激は、腫瘍壊死因子−α、インターロイキン−12およびIFN−αの産生をもたらす。TLR−9リガンドはまた、B細胞増殖および抗体分泌の有力な刺激剤である。1つの有用なCpG含有オリゴヌクレオチドは、臨床評価されたCPG−10101(Actilon; Coley Pharmaceutical Group)である。
【0194】
TLRの他の有用な調節薬は、ANA975(Anadys)である。ANA975は、TLR−7により作用すると考えられ、誘導による強力な抗ウイルス反応およびIFN−αのような炎症性サイトカインの放出を誘発することが既知である。
【0195】
他の実施形態において、第二薬剤はCelgosivirである。Celgosivirはα−グルコシダーゼI阻害剤であり、宿主に特異的なグリコシル化により作用する。前臨床研究において、CelgosivirはIFNαとリバビリンと強力な相乗効果を示す。例えばWhitby et al., 2004, Antivir Chem Chemother. 15(3):141−51を参照。Celogosivirは、現在カナダにおいて慢性HCV患者の第二相単剤療法研究で評価されている。
【0196】
さらなる免疫調節性剤およびその機構または標的が、Schetter & Vollmer, 2004, Curr. Opin. Drug Discov. Dev. 7:204−210; Takeda et al., 2003, Annu. Rev. Immunol. 21:335−376; Lee et al., 2003, Proc. Natl Acad. Scull USA 100:6646−6651; Hosmans et al., 2004, Hepatology 40 (Suppl. 1), 282A;および米国特許第6,924,271号明細書に記載され、その内容をここに参照として援用する。
【0197】
ある実施形態において、本発明の第二薬剤を、式(I)の化合物と調剤または包装することができる。当然、当業者の判断に従って、このような調剤が薬剤の活性または投与方法のいずれかと干渉しない場合にのみ、第二薬剤を本発明の化合物と調剤する。ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を別途に処方する。当業者の便宜のため、これらを一緒に包装してもよく、別途に包装してもよい。
【0198】
第二薬剤の投与量を、本発明の併用療法に使用すべきである。特定の実施形態において、HCV感染の予防または治療に使用されてきたか、または現在使用されているものより少ない投与量を、本発明の併用療法に使用する。推奨される第二薬剤の投与量は、当業者の知見から理解される。臨床用に承認された第二薬剤に対して、推奨される投与量は、例えばHardman et al., eds., 1996, Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 9th Ed, Mc−Graw−Hill, New York; Physician’s Desk Reference (PDR) 57th Ed., 2003, Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJに記載され、内容をここに参照して援用する。
【0199】
様々な実施形態において、治療薬(例えば式(I)の化合物および第二薬剤)を5分間隔未満、30分間隔未満、1時間間隔、約1時間間隔、約1時〜2時間の間隔、約2時間〜3時間の間隔、約3時間〜4時間の間隔、約4時間〜5時間の間隔、約5時間〜6時間の間隔、約6時間〜7時間の間隔、約7時間〜8時間の間隔、約8時間〜9時間の間隔、約9時間〜10時間の間隔、約10時間〜11時間の間隔、約11時間〜12時間の間隔、約12時間〜18時間の間隔、約18時間〜24時間の間隔、約24時間〜36時間の間隔、約36時間〜48時間の間隔、約48時間〜52時間の間隔、約52時間〜60時間の間隔、約60時間〜72時間の間隔、約72時間〜84時間の間隔、約84時間〜96時間の間隔、または約96時間〜120時間の間隔で投与する。好ましい実施形態において、二つ以上の治療薬を、本願のとり得る範囲内で投与する。
【0200】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を周期的に投与する。周期療法は、一定期間の第一の治療薬(例えば第一の予防薬または治療薬)の投与、その後一定期間の第二治療薬(例えば第二の予防薬または治療薬)の投与、その後一定期間の第三治療薬(例えば第三の予防薬または治療薬)の投与等を伴い、これら薬剤の一つに対する耐性の進展を低減し、薬剤の1つの副作用を回避または減少し、および/または治療の効力を改善するためにこの一連の投与、即ちサイクルを繰り返すことである。
【0201】
ある実施形態において、同じ薬剤の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。他の実施形態において、同じ薬剤の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月の間に分けることができる。
【0202】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を、患者、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに順次、また、化合物が他の薬剤と共に作用して、他の投与のものの場合より大きな効果を奏し得るような時間隔内で投与する。例えば、第二の活性剤を、同時または異なる時点で任意の順番で順次投与することができる;しかしながら、同時に投与しない場合、所望の治療または予防効果を付与するようにこれらを十分に近い時間で投与すべきである。1つの実施形態において、式(I)の化合物および第二活性剤は、それらの効果を重複する時点で発揮する。それぞれの第二活性剤をあらゆる適切な形態、およびあらゆる適当な経路で別途投与することができる。他の実施形態において、式(I)の化合物を第二活性剤の投与前、投与中または投与後に投与する。
【0203】
様々な実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を約1時間未満の間隔、約1時間の間隔、約1時間〜約2時間の間隔、約2時間〜約3時間の間隔、約3時間〜約4時間の間隔、約4時間〜約5時間の間隔、約5時間〜約6時間の間隔、約6時間〜約7時間の間隔、約7時間〜約8時間の間隔、約8時間〜約9時間の間隔、約9時間〜約10時間の間隔、約10時間〜約11時間の間隔、約11時間〜約12時間の間隔、24時間の間隔以下または48時間の間隔以下で投与する。他の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を同時に投与する。
【0204】
他の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を約2〜4日の間隔、約4〜6日の間隔、約1週間の間隔、約1〜2週間の間隔、2週間を超える間隔で投与する。
【0205】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を患者に周期的に投与する。周期的な療法は、一定期間の第一薬剤の投与、その後の一定期間の第二薬剤および/または第三薬剤の投与ならびにこの一連の投与の繰り返しを含む。周期的な療法は治療薬の一つ以上への耐性の進展を減少し、治療薬の1つの副作用を回避または減少し、および/または治療の効力を改善することができる。
【0206】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二活性剤を、約3週間未満、2週間に約1回、10日おきに約1回または1週間に1回の周期で投与する。一回の周期は、周期あたり約90分間、周期あたり約1時間、周期当たり約45分間にわたる点滴による式(I)の化合物および第二薬剤の投与を含む。それぞれの周期は、少なくとも1週間の休止、少なくとも2週間の休止、少なくとも3週間の休止を含むことができる。投与する周期の数は、約1〜約12周期、より一般的には約2〜約10周期、より一般的には約2〜約8周期である。
【0207】
他の実施形態において、複数の治療単位を同時に患者に投与する、即ち第二薬剤の個々の投与量を、式(I)の化合物が第二活性剤と共に作用し得るような時間間隔で別々に投与する。例えば、1つの成分を、二週間毎に一回または三週間毎に一回投与し得る他の成分と組み合わせて、一週間に一回投与することができる。換言すれば、治療薬を同時にまたは同じ日に投与しない場合でも、投薬計画を同時に実施する。
【0208】
第二薬剤は、式(I)の化合物と、付加的またはより好ましくは相乗的に働くことができる。1つの実施形態において、式(I)の化合物を同じ医薬品組成物で一つ以上の第二薬剤と同時に投与する。他の実施形態において、式(I)の化合物を別個の医薬品組成物で一つ以上の第二薬剤と同時に投与する。さらに他の実施形態において、式(I)の化合物を、第二薬剤の投与前または投与後に投与する。本発明は、同じか異なる投与経路、例えば経口および非経口による式(I)の化合物および第二薬剤の投与を意図する。特定の実施形態において、式(I)の化合物を、限定しないが毒性を含む有害な副作用を潜在的に生じる第二薬剤と共に同時に投与する場合、第二薬剤を有害な副作用が誘発される閾値以下の投与量で有利に投与することができる。
【0209】
<キット>
本発明は、HCV感染の治療または予防の方法に用いるためのキットも提供する。キットは、本発明の医薬化合物または組成物と、細菌感染の治療または予防の使用に関する健康管理供給者に情報を提供する説明書とを備えることができる。説明書は、印刷形態、フロッピー(登録商標)ディスク、CD若しくはDVDのような電子媒体形態、または該説明書を入手可能なウェブサイトアドレスの形態で提供することができる。本発明の化合物または組成物の単位投与量は、被検体に投与した際に化合物または組成物の治療または予防に有効な血漿レベルを、被検体にて少なくとも1日間維持することができるような投与量を備えることができる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物または組成物を、滅菌した水性医薬品組成物または乾燥粉末(例えば凍結乾燥)の組成物として含むことができる。1つの実施形態において、化合物は式(I)によるものである。
【0210】
いくつかの実施形態において、適当な包装を提供する。ここで用いる「包装」は、システムに慣習的に使用され、被検体への投与に適した本発明の化合物または組成物を、一定の限度内で保持することができる、固体マトリックスまたは材料を指す。このような材料として、ガラスおよびプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネイト)のボトル、バイアル、紙、プラスチックおよびプラスチック箔積層包装材料等が挙げられる。eビーム滅菌技術を用いる場合、包装は、内容物の滅菌を可能とするのに十分低い密度とするべきである。
【0211】
本発明のキットは、本発明の化合物または組成物に加えて、上記方法に記載したような化合物または組成物との使用のための、第二薬剤または第二薬剤を含有する組成物も備えることができる。
【実施例】
【0212】
以下の実施例は、本発明に使用する典型的なシクロスポリン化合物の合成を例示する。これらの例は、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、そのように解釈されるべきものでもない。本明細書に具体的に記載された態様以外でも、本発明を実施することができることが明白である。本明細書の教示の観点から可能な本発明の多くの修正変更は、本発明の範囲内に含まれるものとする。他に特記しない限り、1H NMRは、DMSO−d6中の、400MHzにおけるデータである。
【0213】
実施例1
[(D)−MeAla]3−シクロスポリンA(590mg、参考例1)およびトランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−1−ブロモ−2−ブテン(参考例2)(630mg)を、炉乾燥フラスコに添加した。無水テトラヒドロフランを反応槽に添加した。この溶液を、−78℃まで不活性雰囲気下で冷却した。ホスファゼン塩基P4−tBu(CAS:[111324−04−0]、1M/ヘキサン、2.1mL)をゆっくり加えた。反応混合物を放置し、−30℃まで加熱し、その後クエン酸(1N)で冷却した。反応物をさらに酢酸エチルで希釈し、その後、酢酸エチルで2回抽出した。有機層の組み合わせを重炭酸ナトリウムの飽和溶液、それから塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、それを濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(ISCOシリカカートリッジ、酢酸エチル/ヘプタンの勾配)で精製し、540mgの[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物1)を白い固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.78 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.96 (s, 3H), 3.04 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 5.84− 5.91 (m, 1H), 6.59 (d, 1H), 6.83−6.91 (m, 4H), 8.00 (d, 1H), 8.55 (d, 1H);質量スペクトル:741.6 (M+2Na)/2.
【0214】
同様の方法で処理することによって、以下の本明細書に開示の化合物を調製した:
臭化3,3−ジメチルアリルを用いた、[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物2);1H NMR δ ppm 2.66 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 7.13 (d, 1H), 8.08 (d, 1H), 8.30 (d, 1H);質量スペクトル:1284.5 (M+H).
トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−1−ブロモ−2−ブテンを用いた[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物3); 1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.67 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 3.72 (s, 3H), 3.73 (s, 3H), 6.82−6.89 (m, 4H), 7.10 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 8.31 (d, 1H);質量スペクトル:1450.5 (M+H).
【0215】
実施例2
ジクロロメタンおよび水の溶媒混合液中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物1)(0.20 g)の溶液に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)(40mg)および生成した混合物を添加し、生成した混合物を室温で2時間撹拌した。それをジクロロメタンで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、140mgの[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物4)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.79 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.96 (s, 3H), 3.00 (s, 3H), 5.78− 5.84 (m, 1H), 6.71 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), 8.49 (d, 1H);質量スペクトル:1286.8 (M+H).
【0216】
同様の方法で処理することによって、以下の本明細書に開示の化合物を調製した:
【0217】
化合物3から開始した[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物5);1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.65 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.09 (s, 3H), 7.18 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 8.29 (d, 1H);質量スペクトル:1300.6 (M+H).
【0218】
実施例3
乾燥ジクロロメタン中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物4)(100mg、0.16mmol)の溶液を、氷浴中0℃で不活性雰囲気下、冷却し、トリエチルアミン(0.04mL、3.0eq.)および塩化メタンスルホニル(0.02mL、3.0eq)を添加した。生成した混合物を、室温で2時間撹拌した。それをジクロロメタンで希釈し、次に水および塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで洗浄し、減圧下濃縮した。残留物をTHF(8.0mL)に溶解し、この溶液にトリエチルアミン(0.04mL、4.0eq)およびジメチルアミン(0.20mL、5.0eq,THF中2.0M溶液)を添加した。生成した混合物を、室温で不活性雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で取り除き、残留物は分取HPLCを用いて精製し、[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物6)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.78 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 6H), 2.86 (s, 3H), 2.91 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 5.78 − 5.86 (m, 1H), 6.50 (d, 1H), 7.97 (d, 1H), 8.59 (d, 1H);質量分析:1313.8 (M+H).
【0219】
同様の方法で処理することによって、以下の本明細書に開示の化合物を調製した:
【0220】
化合物5から開始した[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物7);1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.07 (s, 6H), 2.66 (s, 3H), 2.80 (s, 6H), 2.83 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.07 (s, 3H), 7.09 (d, 1H), 8.08 (d, 1H), 8.32 (d, 1H);質量分析:1327.7 (M+H).
【0221】
実施例4
a)乾燥メタノール中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−オキソブチル]−Val5−シクロスポリンA(下記の参考例3において調製した;0.12g)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(10mg)を添加し、生成した混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水で冷却し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を取り除いた後、0.11gの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンAを得て、下記b)でさらに精製することなく使用した;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.16 (s, 3H), 0.04 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.41 (s, 3H, 2.69 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.82 (s, 6H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 7.39 (d, 1H), 8.05 (d, 1H), 8.21 (d, 1H);質量分析:702.5 および 724.6 [(M+2H)/2およびM+2Na)/2].
【0222】
b)THF(12.0mL)中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA(110mg)の溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中の0.12mL、1.5eq、1.0M溶液)を添加し、生成した混合物を室温で12時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、続けて水および塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下取り除き、残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、[(D)−MeAla]3−N−[4− ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA(化合物8)を白い固体として得た;1H NMR δ ppm 2.72 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.91 (s, 3H), 3.04 (s, 3H), 6.95 (d, 1H), 8.06 (d, 1H), 8.39 (d, 1H);質量分析:1288.7 (M+H).
【0223】
実施例5
酢酸0.01mLを含む乾燥メタノール中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−(4−オキソブチル)−Val5−シクロスポリンA(0.11g)に、ジメチルアミン(THF中の0.10mL、0.20mmol、2.0M溶液)およびシアンボロハイドライドナトリウム(10mg、0.16mmol)を添加し、生成した混合物を室温で12時間撹拌した。その後、減圧下濃縮し、残留物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、0〜70%の濃度勾配をつけた溶媒B(B=DCM/MeOH/NH4OH(90:9:1、v/v/v)の溶媒Aで溶出して100gの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR δ ppm −0.16 (s, 3H), 0.04 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.12 (s, 6H), 2.43 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.82 (s, 6H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 7.34 (d, 1H), 8.02 (m, 1H), 8.22 (d, 1H);質量分析:715.7 (M+2H)/2.
【0224】
THF(10.0mL)中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA(100mg)の溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中0.11mL、1.5eq、1.0M溶液)を添加し、生成した混合物を室温で12時間撹拌した。それを酢酸エチルで希釈し、続けて水および塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下取り除き、残留物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜70%の濃度の勾配をつけた溶媒B(B=DCM/MeOH/NH4OH(90:9:1、v/v/v)の溶媒A(A=DCM)で溶出し、80mgの[(D)−MeAla]3−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA(化合物9)を白い固体として得た;1H NMR δ ppm 2.15 (s, 6H), 2.79 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 3.01 (s, 6H), 6.67 (d, 1 H), 8.01 (d, 1H), 8.50 (d, 1H);質量分析:1315.8 (M+H).
【0225】
実施例6
乾燥ジクロロメタン中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物2)(50mg、0.039mmol)エチルアクリレート(0.064mL、0.584mmol)およびHoveda−Grubbs触媒(第2世代、2.5mg、0.004mmol)の混合物を密封管に加え、アルゴンで流した。試験管を密封し、その含有物を60℃まで加熱し、この温度で24時間撹拌した。その後、それを室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残留物は分取HPLCを用いて精製し、[(E)−7−エトキシカルボニル]1−[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物10)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 1.20 (t, 3H), 2.62 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.93 (s, 3H), 3.12 (s, 3H), 4.10 (q, 2H), 5.89 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 8.28 (d, 1H);質量分析:1342.5 (M+H), 1364.4 (M+Na).
【0226】
参考例1
ジイソプロピルアミン(3.5mL、24.98mmol)を無水テトラヒドロフランに溶解した。この溶液を−78℃まで窒素で冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M/ヘキサン、9.99mL、24.98mmol)を滴下し、その後、混合物を−78℃で30分撹拌した。その後、無水テトラヒドロフラン中のシクロスポリンA(4.0g、3.33mmol)を溶液に添加した。混合物をこの温度に60分維持し、その後ヨードメタン(2.36g、16.63mmol)を溶液に添加した。溶液を−78℃で30分撹拌し、その後放置して、室温まで加熱した。塩化アンモニウム飽和溶液を添加し、その後酢酸エチルで2回抽出することによって、反応物を冷却した。有機層の組み合わせを硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。粗生成物はシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、[(D)−MeAla]3−シクロスポリンAを得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.70 (s, 3H), 2.71 (s, 3H), 3.09 (s, 3H), 3.11 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.27 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 7.15 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.62 (d, 1H), 7.94 (d, 1H);質量分析:609.1, (M+2H)/2.
【0227】
参考例2
ジクロロメタン中のトランス−1,4−ジブロモブタ−2−エン(19.08g、89.18mmol)、3,4−ジメトキシベンジルアルコール(10.0g、59.46mmol)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(2.02g、5.95mmol)に水中の水酸化ナトリウム(21.4g、535.1mmol)を添加し、生成した混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を水で希釈し、ジエチルエーテルで抽出した。有機抽出物の組み合わせを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、11gのトランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−1−ブロモ−2ブテンを得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 3.89 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 3.98 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 4.03 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 4.46 (s, 2H), 6.83 − 6.91 (m, 3H).
【0228】
参考例3
95:5v/vのメタノールおよび水の混合物中のプロトポルフィリン鉄(0.91g、4.63mmol)および水酸化ナトリウム(90mg、2.32mmol)をアルゴンで流し、室温で20分撹拌し、完全に水酸化ナトリウムを消費したことを確認した。この混合物に、同じ溶媒混合物中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−オキソブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA溶液(下記の参考例4に記載;0.27g)を添加し、生成した混合物を室温で72時間、アルゴンと撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルを添加した。混合物を0℃まで撹拌しながら冷却し、塩化鉄(III)をガス発生が観測されなくなるまで加えた。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を取り除いた後、粗生成物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、230mgの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−(4−オキソブチル)−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm −0.16 (s, 3H), 0.04 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.68 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.82 (s, 6H) 2.89 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 7.42 (d, 1H), 8.03 (m, 1H), 8.21 (d, 1H), 9.64 (m, 1H).
【0229】
参考例4
a)乾燥ジクロロメタン中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物1)(0.34g)の溶液にトリエチルアミン(0.33mL,10eq.)およびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸(0.27mL、5.0eq.)を0℃で加え、生成した混合物を室温で5時間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、溶液を水、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、その後、減圧下濃縮した。粗生成物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜80%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.12 (s, 3H), 0.05 (s, 3H), 0.79 (s, 9H, 2.53 (s, 3H), 2.81 (s, 3H) 2.82 (s, 3H), 2.87 (s, 6H), 2.88 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 3.72(s, 3H), 3.73 (s, 3H), 5.82−5.89 (m, 1H), 6.82−6.90 (m, 3H), 6.94 (d, 1H), 7.83 (m, 1H), 8.37 (d, 1H);質量分析:798.7 (M+2Na)/2.
【0230】
b)ジクロロメタンおよび水(18:1)の溶媒混合物中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(0.34g)の溶液に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアン−p−ベンゾキノン(DDQ)(60mg)を添加し、生成した混合物を室温で2時間撹拌した。混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、その後、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.13 (s, 3H), 0.05 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.81 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.87 (s, 3H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 5.76− 5.83 (m, 1H), 7.05 (d, 1H), 7.88 (m, 1H), 8.34 (d, 1H);質量分析:701.2 (M+2H)/2.
【0231】
c)ジクロロメタン(10mL)中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(0.27g)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(160g)を添加し、生成した混合物を室温で1時間撹拌した。それをジクロロメタンで希釈し、10%チオ硫酸ナトリウム溶液、飽和重炭酸ナトリウム溶液および塩水で洗浄した。溶媒を取り除いた後、0.27gの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−オキソブタ−エニル]−Val5−シクロスポリンAを得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.10 (s, 3H), 0.06 (s, 3H), 0.81 (s, 9H), 2.83 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.88 (s, 3H), 2.90 (s, 3H), 2.93 (s, 3H), 3.16 (s, 3H), 6.18−6.25 (m, 1H), 6.90−6.97 (m, 1H), 6.99 (d, 1H), 8.39 (m, 1H), 9.44 (d, 1H).
【0232】
HCV活性
本発明の典型的な化合物をHCVに対する活性についてKriger et al., 2001, Journal of Virology 75:4614−4624, Pietschmann et al., 2002, Journal of Virology 76:4008−4021の記載を応用した方法を使用し、また米国特許第6,630,343号明細書に記載されたHCVのRNAコンストラクトを使用して試験した。化合物を、ヒト肝癌細胞株ET(lub ubi neo/ET)、安定したルシフェラーゼ(LUC)レポータを含有するHCVのRNAレプリコンで試験した。HCVのRNAレプリコンETは、ホタルルシフェラーゼ(LUC)の産生を促進するHCVの5’末端(HCV内部リボソーム結合配列(IRES)およびHCVコアタンパク質の最初の数個のアミノ酸を有する)、ユビキチンおよびネオマイシンホスホトランフェラーゼ(NeoR)融合タンパク質を含有する。ユビキチンの切断は、LUCおよびNeoRタンパク質を放出する。EMCVのIRES要素は、HCV構造タンパク質NS3−NS5の翻訳を制御する。NS3タンパク質は、HCVポリタンパク質を切断して、HCV複製に必要な成熟NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bタンパク質を放出する。レプリコンの3’末端にHCVの本物の3’NTRがある。LUCレポータの活性はHCV複製レベルに直接比例し、陽性対照の抗ウイルス化合物はLUCの端点を使用した再現可能な抗ウイルス反応をもたらす。
【0233】
化合物を、それぞれ0.03〜3μMまたは1〜100μMの範囲の、5つの半対数希釈濃度(half−log concenrations)でDMSOに溶解した。ET株の亜密集培地を、細胞数(細胞毒性)または抗ウイルス活性分析専用の96ウェルプレートに播種し、翌日、化合物を適切なウェルに添加した。72時間後の細胞が依然亜密集のとき、細胞を処理した。抗ウイルス活性をEC50およびEC90として示す。これは、ウイルス複製をそれぞれ50%および90%減少するのに有効な化合物の濃度である。化合物のEC50およびEC90値を、LUC活性由来のHCVのRNAレプリコンとして評価した、HCVのRNAレベルから導く。細胞毒性をIC50およびIC90として示す。これは、それぞれ細胞生存率を50%および90%阻害する化合物の濃度である。化合物のIC50およびIC90値を、比色分析を用いて、細胞数および細胞毒性の指標として算出した。LUCレポータの活性は、ヒト細胞株におけるHCVのRNAレベルと直接比例する。HCVレプリコンアッセイを、インターフェロン−α−2bを陽性対照として用いる平行実験において検証した。シクロスポリンをまた比較の目的で試験した。本明細書に開示の典型的な化合物は、HCVレプリコンをヒト肝細胞で阻害した。特に、本発明の化合物2および4〜10はEC50値が200nM未満であった。また、細胞毒性レベルを考慮した場合、このような化合物は安全域を示した(抗ウイルス剤IC50対細胞毒性EC50)。
【0234】
<シクロフィリン結合活性>
本明細書に開示の化合物のシクロフィリン阻害結合を、Quesniaux et al., Eur. J Immunol. 1987, 17:1359−1365に記載された方法を応用した競合ELISAを使用して求めた。D−Lys8−シクロスポリンA(D−Lys8−Cs)に結合したスクシニルスペーサの活性化エステルを、8位のD−リジル残基によってウシ血清アルブミン(BSA)に結合した。BSAを0.1MのpH9.0のホウ酸塩緩衝剤(1.4mL中4mg)に溶解した。ジメチルホルムアミド(0.6mL)に溶解した100倍のモル過剰なD−Lys8−Csを、BSAに激しい撹拌条件下で滴加した。カップリング反応を室温で穏和な撹拌で2〜3時間実行し、コンジュゲートをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)に対して広範囲に透析した。コンジュゲートタンパク質のアリコートのアセトン沈殿後、共有結合したD−Lys8−Csはアセトン溶液に残存せず、シクロスポリンの共有結合の範囲を算出した。
【0235】
マイクロタイタープレートを、D−Lys8−Cs−BSA共役物で被覆した(24時間4℃でPBS中2μg/mL)。プレートをTween(登録商標)/PBSで、またPBSのみで洗浄した。非特異的な結合をブロックするため、2%BSA/PBS(pH7.4)をウェルに添加し、37℃で2時間培養した。試験する化合物の5倍希釈シリーズを別のマイクロタイタープレートのエタノール中に生成した。出発濃度は、ヒト組み換えシクロフィリンでのアッセイのため0.1mg/mLであった。0.1μg/mLのシクロフィリン溶液198μLをマイクロタイターに添加し、その直後に2μLの希釈したシクロスポリンA(参考化合物として使用)または本発明の化合物を添加した。シクロスポリンAの無い被覆BSA−Cs複合体およびシクロフィリンの間の反応を一晩4℃で平衡にした。シクロフィリンを、PBSを含有する1%BSAに希釈し、4℃で一夜培養した抗シクロフィリンラビット免疫血清で検出した。プレートを上記のように洗浄した。次いで、結合したラビット抗体を、1%BSA−PBSに希釈し、37℃で2時間培養したアルカリホスファターゼに共有結合したヤギの抗ラビットIgGによって検出した。プレートを上記のように洗浄した。4−ニトロフェニルホスフェート(pH9.8のジエタノールアミン緩衝剤中1g/1)を用いて、37℃で1〜2時間培養した後、酵素反応は分光光度計を使用して405nmで分光測光法によって測定した。結果はEC50として現すことができ、本発明の化合物の濃度は50%阻害を達成する必要がある。本発明の化合物2および4〜9は、サイクロフィリンAに対してEC50値50ng/mL未満、サイクロフィリンDに対して60ng/mL未満であった。
【0236】
本明細書に開示の化合物を、Jurkat細胞におけるT細胞刺激(IL−2)について抗CD3および抗CD28の共刺激で試験した。全ての化合物は10μM(n=2)から出発して、0.0015μMの0.5−Log9点の滴定を有する。シクロスポリンA(コントロール)は、また500ng/mLから始めて0.5−Log9点の滴定を有する。試験すべき全ての化合物をジメチルスルホキシドに溶解した。細胞毒性を平行Almar Blueプレートで評価した。Jurkat細胞を96ウェルプレートの190μLの成長培地中に1ウェルあたり2×105細胞で播種した。細胞をRPMI1640培地、10%ウシ胎仔血清およびL−グルタミン中37℃で5%二酸化炭素を用いて培養した。培養から1時間後、細胞を固定抗CD3(0.4μg/ウェル)、抗CD28可溶(2μg/mL)で刺激した。6時間後、サンプル上清を採取し、−80℃に保存した。50μLサンプルの上清をIL−2に関してLuminex(登録商標)1プレックス分析を使用して試験した。本発明の化合物2および4〜10はIL−2値300ng/mL超を示した。同じ試験で、シクロスポリンAはIL−2値6.7ng/mLを有していた。
【0237】
<ミトコンドリア膜透過性遷移>
ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を、Ca2+によって誘導されたミトコンドリアの膨張を測定することによって求めた。方法はBlattner et al., 2001, Analytical Biochem., 295:220に記載された方法を応用した。ミトコンドリアをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で潅流して、血液を除去したラットの肝臓からサッカロース系緩衝剤におけるおだやかな均質化を用いた標準の方法を使用して調製し、その後分画遠心法によってまず細胞破片を取り除き、次いでミトコンドリアをペレットにした。膨張が150マイクロモルのCa2+(CaCl2の濃縮溶液の添加)によって誘発され、535〜540nmでの散乱を測定することによって観測した。代表的な化合物を膨張が誘発される5分前に添加した。EC50は本明細書の化合物の有無で膨張を比較して測定した。本発明の化合物2および4〜9のEC50値は0.5μM未満であった。
【0238】
本明細書に引用した全ての刊行物および特許出願は、それぞれの刊行物および特許出願を明確且つ単独に参考文献としてここに参照して援用する。本発明は、数々の好ましい実施形態を開示しているが一方、当業者はその趣旨から逸脱することなく、様々な修正、置換、省略および変更することができると解釈される。従って、本発明の範囲は下記の請求項の範囲およびそれに相当するもののみに制限する。
【技術分野】
【0001】
<関連出願の説明>
本願は2009年12月9日付け出願の米国仮出願第61/285,145号の「新規環状ペプチド」の優先権の効果を主張するものであり、その内容のすべてをここに参照して援用する。
【0002】
<技術分野>
本明細書に開示するものは、新規化合物、それを含む組成物、その製造方法およびその治療としての使用、例えば抗ウイルス剤としての使用である。
【背景技術】
【0003】
<発明の背景>
シクロスポリンAは、抗HIV活性に加えて、その免疫抑制活性および抗真菌剤、抗寄生虫剤および抗炎症剤を含む広範囲の治療用途について周知である。シクロスポリンAおよび特定の誘導体が抗HCV活性を有すると報告されている。Watashi et al., 2003, Hepatology 38:1282−1288, Nakagawa et al., 2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 313:42−7,およびShimotohno and K. Watashi, 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issue s8, Pages 1−653)を参照のこと。HCV活性を有するシクロスポリン誘導体は、国際公開第2005/021028号、第2006/039668号および第2006/038088号明細書により公知である。5−バリン窒素が非水素置換基により置換されるシクロスポリンは、Papageorgiou et al., 1997, Bioorganic & Medicinal Chemistry 5(1):187−192により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,845,770号明細書
【特許文献2】米国特許第3,916,899号明細書
【特許文献3】米国特許第3,536,809号明細書
【特許文献4】米国特許第3,598,123号明細書
【特許文献5】米国特許第4,008,719号明細書
【特許文献6】米国特許第5,674,533号明細書
【特許文献7】米国特許第5,059,595号明細書
【特許文献8】米国特許第5,591,767号明細書
【特許文献9】米国特許第5,120,548号明細書
【特許文献10】米国特許第5,073,543号明細書
【特許文献11】米国特許第5,639,476号明細書
【特許文献12】米国特許第5,354,556号明細書
【特許文献13】米国特許第5,733,566号明細書
【特許文献14】国際公開第2000/147883号
【特許文献15】国際公開第2005/000308号
【特許文献16】米国特許第6,924,271号明細書
【特許文献17】米国特許第6,630,343号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Watashi et al., 2003, Hepatology 38:1282-1288
【非特許文献2】Nakagawa et al., 2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 313:42-7
【非特許文献3】Shimotohno and K. Watashi, 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issue s8, Pages 1-653)
【非特許文献4】Papageorgiou et al., 1997, Bioorganic & Medicinal Chemistry 5(1):187-192
【非特許文献5】Ruegger et al., 1976, HeIv. Chim. Acta. 59:1075-92; Borel et al., 1977, Immunology 32:1017-25
【非特許文献6】J. Kallen et al., “Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications”, Biotechnology, second edition, H. -J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p 535-591
【非特許文献7】Cahn et al., 1966, Angew. Chem. 7:413-447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:385-414 (errata: Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:511); Prelog and Helmchen, 1982, Angew. Chem. 94:614-631, Angew. Chem. Internal. Ed. Eng. 21:567-583; Mata and Lobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry 4:657-668
【非特許文献8】Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80
【非特許文献9】Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)
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【非特許文献20】Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14
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【非特許文献32】Hardman et al., eds., 1996, Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 9th Ed, Mc-Graw-Hill, New York; Physician’s Desk Reference (PDR) 57th Ed., 2003, Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJ
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
<発明の概要>
本発明の1つの態様は、一般式(I)の化合物を提供するものである:
【0007】
【化1】
【0008】
式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CH2CH2Rであり、Rはメチル、−CH2SH、−CH2(チオアルキル)、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
【0009】
Bはメチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し
【0010】
R1は:
R21により置換されるメチル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR22基で置換された直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
4〜8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル、または3〜8個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR23基で置換された直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換された直鎖若しくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される、同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
【0011】
R2は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
3〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキニルを示し;
【0012】
R21はハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;−OR5;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;−NR3R4;若しくは3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキルを示し;または
R21は、4〜6個の環原子を含む炭素が結合した飽和若しくは不飽和の複素環であり、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を含み、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、カルボキシルおよびアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜4の置換基で任意に置換され、前記アルキルはアミノ、N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノで置換された複素環を示し;
【0013】
R22およびR23は同じか異なり、それぞれ、ハロゲン、ヒドロキシ;−OR5;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;−NR3R4;−NR6(CH2)mNR3R4;アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、カルボキシルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択される同じか異なる1〜5個の置換基で任意に置換されたベンジルを示すか;、または、3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1個以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキルを示し;
【0014】
R3およびR4は同じか異なり、それぞれ:
水素;−C(=O)R5;−S(O)2R5;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルケニルまたはアルキニル;または
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキルで任意に置換された3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキルを示し;または、
R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和若しくは不飽和の複素環を形成し、前記環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される他のヘテロ原子を任意に含有し、該環はアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される同じか異なる1〜4個の置換基で任意に置換することができる;
【0015】
R5は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5個の置換基で任意に置換されたアリール;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5個の置換基で任意に置換されたヘテロアリール;
アラルキルであり、アリール環はハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシおよびハロアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基は1〜3個の炭素原子を有するアラルキル;または
ヘテロアリールアルキルであり、ヘテロアリール環はハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシまたはハロアルキルで任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基は1〜3個の炭素原子を含む、ヘテロアリールアルキルを示し;
【0016】
R6は水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、シアンまたはアルキルスルホニルを示し;
【0017】
mは1〜4の整数であり;かつ
【0018】
nは0、1または2であり;
【0019】
その薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物である。
【0020】
他の態様は、本明細書に開示の一般式(I)の化合物の調製プロセスを提供するものである。
【0021】
他の態様において、本明細書に開示の被検体においてウイルス感染を治療または予防する方法を提供するものであり、前記方法は被検体に治療に有効な量の本明細書に開示の一般式(I)の化合物を投与する工程を含む。
【0022】
他の態様において、本明細書は、被検体のHCV感染を治療または予防する方法を提供するものであり、前記方法は被検体に治療するのに有効な量の本明細書に開示の一般式(I)の化合物を投与する工程を含む。
【0023】
特定の場合においては、置換基A,B,およびR1が、光学異性体および/または立体異性体を有し得る。これらの形態の全てが本発明に包含される。
【0024】
薬学的に許容可能な塩の例としては、ナトリウム、カリウム若しくはリチウム等のアルカリ金属塩、または、マグネシウム若しくはカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−ベンジルフェニルエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジフェニレンジアミン、ベンズヒドリルアミン、キニン、コリン、アルギニン、リジン、ロイシン若しくはジベンジルアミン等の窒素塩基の塩が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<詳細な説明>
<定義>
本明細書に開示の化合物および複合体を指す場合、下記の用語は、特記しない限り、以下の意味を有するものとする。
【0026】
「シクロスポリン」は、当業者に既知のあらゆるシクロスポリン化合物またはその誘導体とする。例えばRuegger et al., 1976, HeIv. Chim. Acta. 59:1075−92; Borel et al., 1977, Immunology 32:1017−25を引用し、その内容のすべてを本明細書に参照して援用する。本明細書に開示の典型的な化合物は、シクロスポリン誘導体である。特記しない限り、本明細書に記載のシクロスポリンは、シクロスポリンAであり、本明細書に記載のシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンA誘導体である。
【0027】
以下に使用するシクロスポリンの命名法および番号付け方式は、J. Kallen et al., “Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications”, Biotechnology, second edition, H. −J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p 535−591で使用されるものであり、以下に示す通りである:
位置 シクロスポリンA中のアミノ酸
1 N−メチル−ブテニル−トレオニン(MeBmt)
2 [α]−アミノ酪酸(Abu)
3 サルコシン(Sar)
4 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
5 バリン(Val)
6 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
7 アラニン(Ala)
8 (D)−アラニン[(D)−Ala]
9 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
10 N−メチル−ロイシン(Me−Leu)
11 N−メチル−バリン(MeVal)
【0028】
これは、以下に示すような式(I)の化合物の飽和環状炭素原子に相当する:
【0029】
【化2】
【0030】
「アルキル」は一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基であり、好適には約11個までの炭素原子、より好適には1〜8個の炭素原子を有する低級アルキル、さらに好適には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルを有するものを指す。炭化水素鎖は、直鎖または分岐鎖のいずれかである。この用語は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル基等を示す。「低級アルキル」の用語は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0031】
「アルキレン」は直鎖または分岐鎖とすることができ、特に約11個までの炭素原子、より詳細には1〜6個の炭素原子を有する二価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン異性体(例えば−CH2CH2CH2−および−CH(CH3)CH2−)等の基により例示される。
【0032】
「アルケニル」は好ましくは11個までの炭素原子、特に2〜8個の炭素原子、具体的には2〜6個の炭素原子を有する一価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位または特に1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。特に、アルケニル基はエテニル(−CH=CH2)、n−プロペニル(−CH2CH=CH2)、イソプロペニル(−C(CH3)=CH2)、ビニルおよび置換ビニル等を含む。
【0033】
「アルケニレン」は、特に約11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有する二価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば−CH=CHCH2−、−C(CH3)=CH−および−CH=C(CH3)−)等の基により例示される。
【0034】
「アルキニル」は、特に約11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有するアセチレン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位の不飽和アルキニルを有する。アルキニル基のある例としては、アセチレン、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(CH2C≡CH)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
「アルコキシ」は、Rがアルキルである−OR基を指す。特定のアルコキシ基の一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ等が挙げられる。
【0036】
「N−アルキルアミノ」は、アルキル−NR’−基を指し、ここでR’は水素およびアルキルから選択される。
【0037】
「アルキルスルホニル」は、アルキルがここに規定されるものである、ラジカル−S(=O)2−アルキルを指す。
【0038】
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシがここに規定されるものであるラジカル−C(=O)−アルコキシを指す。
【0039】
「アミノ」は、ラジカル−NH2を指す。
【0040】
「アラルキル」は、アリールに置換されたアルキルを指し、前記アルキルおよびアリールは本明細書において定義される。アラルキル基としては、特に制限されるものではないが、ベンジル(−CH2Ph)、フェネチル(−CH2CH2Ph)等が挙げられる。
【0041】
「アリール」は、任意に置換された芳香族炭化水素ラジカル、例えばフェニル基を指すものとする。
【0042】
「アリールアミノ」は、Rが水素、アリールおよびヘテロアリールから選択されるアリールNR’−基を指す。
【0043】
「Bmt」は、2(S)−アミノ−3(R)−ヒドロキシ−4(R)−メチル−6(E)−オクテン酸を指す。
【0044】
「カルボキシル」は、ラジカル−C(=O)OHを指す。
【0045】
「N,N−ジアルキルアミノ」は、ラジカル−NRR’を意味し、RおよびR’は独立して本明細書で定義するアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールを示す。
【0046】
「ホルミル」は、ラジカル−C(=O)Hを指す。
【0047】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨードを指す。
【0048】
「ヘテロアリール」は、任意に置換される飽和または不飽和複素環式ラジカルを指す。一般に、複素環は4〜7個の環原子、例えば5または6個の環原子を含有する。ヘテロアリールの例として、チエニル、フリル、ピロリル、オキサジニル、チアジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、モルホリニル、ピラゾリルおよびテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0049】
「ヒドロキシ」は、ラジカル−OHを指す。
【0050】
「チオアルキル」は、Rがアルキルである−SR基を指す。例としては、特に制限されるものではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等が挙げられる。
【0051】
「薬学的に許容可能な塩」は、生物学的性質を保持し、毒性がないか、若しくは薬学的用途に望ましくないものでない限り、本明細書に開示のあらゆる塩を指すものとする。該塩としては、従来技術から知られている様々な有機および無機カウンターイオンに由来するものが挙げられる。このような塩としては:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオニック酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の有機酸または無機酸から形成された酸付加塩;または(2)親組成物に存在する酸性陽子が、(a)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオン等の金属イオン、またはアルカリ金属の水酸化物若しくはアルカリ土類金属の水酸化物であって、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛、水酸化バリウムおよびアンモニア等に置換された場合;または(b)有機塩基、例えば脂肪族化合物、脂環式化合物または芳香族有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等と組み合された場合に形成される塩が挙げられる。
【0052】
さらに塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等が挙げられ、化合物が塩基性の機能を有する場合、非毒性の有機酸または無機酸の塩、例えば塩酸塩および臭化水素塩等のハロゲン化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾアート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、エタンスルホン酸塩、1,2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン塩酸、ムコン酸塩等が挙げられる。
【0053】
「生理的に許容可能なカチオン」の用語は、酸性官能基の非毒性の生理的に許容可能なカチオンカウンターイオンを指すものとする。該カチオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム等のカチオンが例示される。
【0054】
「溶媒和物」は、本発明の化合物またはその塩を指し、化学量論的または非化学量論的に非共有結合の分子間力によって結合した溶媒が挙げられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0055】
同じ分子式を有するが、原子の結合配列または原子配列の立体構造の異なる化合物を、「異性体」と称する。原子の立体構造の異なる異性体は、「立体異性体」と称する。
【0056】
互いに鏡像でない立体異性体を「ジアステレオ異性体」、互いに重ね合わせることができない鏡像の立体異性体を「鏡像異性体」と称する。化合物に非対称性の中心が存在する場合、例えばそれが4つの異なる基に結合している場合、一対の鏡像異性体が存在し得る。鏡像異性体は、その非対称性の中心の全体的な構成によりその特性が定まり、カーン・インゴルド・プレローグ順位則(Cahn et al., 1966, Angew. Chem. 7:413−447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:385−414 (errata: Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:511); Prelog and Helmchen, 1982, Angew. Chem. 94:614−631, Angew. Chem. Internal. Ed. Eng. 21:567−583; Mata and Lobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry 4:657−668)によって、(R)または(S)のいずれかが決定づけられ、偏光性平面の回転によりその特性が定まり、右旋性または左旋性のいずれかに決定づけられる(即ち、それぞれ(+)−異性体または(−)−異性体とする)。キラル化合物には、各鏡像異性体またはその混合物のいずれかが存在し得る。各鏡像異性体を等量含有する混合物を、「ラセミ混合物」と称する。
【0057】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物が1つ以上の非対称中心を有し得る;従ってかかる化合物を(R)若しくは(S)−鏡像異性体またはその混合物として産生し得る。特記しない限り、例えば式の任意の位置の立体化学の表記により、明細書および請求項における特定の化合物の記載または命名法は、それぞれ鏡像異性体および混合物の双方、ラセミ化合物またはその他のものを含有することを意図する。立体化学の決定および立体異性体の分離方法は、従来技術から周知である。特定の実施形態において、本発明は本明細書に記載した化合物の塩基での処理による立体異性体を提供する。
【0058】
ある実施形態において、本発明の化合物は「立体化学的に純粋」である。立体化学的に純粋な化合物は、当業者に「純粋」として認識される立体化学的純度のレベルを有する。当然、この純度のレベルは100%未満である。ある実施形態において、「立体化学的に純粋」とは、代替異性体を実質的に有さない化合物を示す。ある実施形態において、化合物は他の異性体を85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%有さない。
【0059】
「サルコシン」または「Sar」は、当業者に公知の−N(Me)CH2C(=O)−の構造を有するアミノ酸残基を指すものとする。当業者は、サルコシンをN−メチルグリシンとして認識するであろう。
【0060】
ここでは、「被検体」および「患者」の用語が交互に使用される。被検体(subjectおよびsubjects)の用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)および霊長類(例えばサルであるマカクザル、チンパンジーおよびヒト等)を含む哺乳類を示し、より好ましくはヒトを示す。他の実施形態においては、被検体は家畜(例えばウマ、ウシ、ブタ等)またはペット(例えばイヌまたはネコ)である。好ましい実施形態において被検体はヒトである。
【0061】
ここに使用するように、「治療薬(therapeutic agentおよびtherapeutic agents)」の用語は、病気または1以上のその症状の治療、処置または改善に使用することができる、あらゆる薬剤を示す。ある実施形態においては、「治療薬」の用語は、本明細書に開示の化合物を指す。他の実施形態においては、「治療薬」の用語は、本発明の化合物を指すものまたは指すものとしない。好ましくは、治療薬は、病気若しくは1以上の症状の治療、処置、予防または改善に有効であることが知られているか、以前から若しくは現在使用されている薬剤を指す。
【0062】
「治療有効量」は被検体の疾患を治療するために投与する際に、係る疾患の治療に十分な化合物、複合体または組成物の量を意味する。「治療有効量」は、特に、化合物、疾患およびその重症度ならびに患者の年齢、体重等によって異なる。
【0063】
あらゆる疾患または疾病の「治療(treatingまたはtreatment)」は、1つの実施形態においては、被検体の疾患または疾病の改善を指す。他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、被検体自身によっては認識できない、少なくとも1つの身体パラメータを改善することを指す。さらに他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、物理的(例えば認識可能な症状の安定化)若しくは生理的(例えば身体パラメータの安定化)、またはその両方のいずれかの疾患または疾病の制御を指す。さらに他の実施形態においては、「治療(treatingまたはtreatment)」は、疾患または疾病の発症の遅延を指す。
【0064】
ここで用いる「予防薬(“prophylactic agent”および“prophylactic agents”)」の用語は、病気または1以上のその症状の予防に使用し得るあらゆる薬剤を指す。ある実施形態においては、「予防薬」の用語は、本発明の化合物を指す。ある実施形態においては、「予防薬」の用語は、本明細書に開示の組成物を指さない。好ましくは予防薬は疾患の発症、発達、進行および/もしく重篤化を予防若しくは妨げるのに有効なことが知られているか、以前から若しくは現在使用されている薬剤である。
【0065】
ここでは、「予防(prevent、preventingおよびprevention)」の用語は、治療(例えば予防薬または治療薬)の実施、または組み合わせた治療(例えば予防薬または治療薬の配合)の実施による、被検体における1つ以上の疾患の症状の再発、発症または発達の予防を指す。
【0066】
ここでは、「予防有効量」の用語は、1つ以上の疾患と関連のある症状の発達、再発若しくは発症の予防に至るか、または、他の治療(例えば他の予防薬)の予防効果を向上若しくは改善するのに十分な治療薬(例えば予防薬)の量を指すものとする。
【0067】
「ラベル」という用語は、物品の直接容器上の記入、印刷または図面による、例えば薬学的な活性剤を含有するバイアルに表示された試料等の物品の表示を指す。
【0068】
「ラベル付け」という用語は、物品、またはその容器、包装紙若しくはかかる物品の付属品(例えば、薬学的活性剤の容器に付属するか、添付される、添付文書、指示用ビデオテープ若しくはDVD等)のいずれかに対する全てのラベルおよび他の記入、印刷若しくは図画を指す。
【0069】
<化合物>
ある実施形態において、Aは(E)−CH=CHRを示す。ある実施形態において、Aは−CH2CH2Rを示す。実施形態において、式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CH2CH2Rであり、Rはメチル、カルボニルまたはアルコキシカルボニルを示す。他の実施形態において、Aは(E)−CH=CHRであり、Rはメチルまたはアルコキシカルボニルを示す。1つの実施形態において、Aは(E)−CH=CHRであり、Rはメチルを示す。
【0070】
1つの実施形態において、Rはメチルを示す。
【0071】
ある実施形態において、Bはメチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示す。1つの実施形態において、Bはエチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示す。他の実施形態において、Bはエチルを示す。
【0072】
ある実施形態において、R1は4〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニル、またはR23基により置換される3〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルを示す。さらなる実施形態において、R1は、R23基により任意に置換される4または5個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖のアルケニルを示す。さらなる実施形態において、R1は、R23基により置換される4個の炭素原子を有する直鎖アルケニルを示す。さらなる実施形態において、R1は、R23基により置換されたブタ−2−エニルを示す。さらなる実施形態において、R1はR23基により置換されるトランスブタ−2−エニルを示す。また、さらなる実施形態において、R1は、4位置がR23基に置換されたブタ−2−エニルを指す(即ち−CH2CH=CHCH2R23)。さらなる実施形態において、R1は、R22基により置換される2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。また、さらなる実施形態において、R1は、R22基により置換される、4〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。
【0073】
1つの実施形態において、R22およびR23は、同じか異なり、それぞれヒドロキシ;−OR5;または−NR3R4を示し、ここでR3およびR4は、同じか異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルを示すか、R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、飽和した5または6員の飽和複素環を形成し、該環は任意に窒素および酸素からなる群から選択される他のヘテロ原子を有することができる。さらなる実施形態において、R22はヒドロキシルまたは−NR3R4を示す。
【0074】
1つの実施形態において、R3およびR4は、同じか異なり、それぞれ水素;または1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルを示すか;R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、5若しくは6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環は任意に窒素および酸素からなる群から選択される他のヘテロ原子を含み、任意にアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される同じか異なる1〜4基により置換される。
【0075】
1つの実施形態において、R5はアリールを示し、任意にアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる基から選択される、同じか異なる1または2基により置換されるか;R5はアラルキルを示し、アリール環は任意にハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシおよびハロアルキルからなる群から選択される同じか異なる1または2基により置換され、ここでアルキルは1または2個の炭素原子を有する。さらなる実施形態において、R5はフェニルまたはベンジルを示し、ここでフェニル環は、任意に同じか異なる1または2のアルコキシ基により置換される。
【0076】
さらなる実施形態において、Aは(E)−CH=CHR、ここでRはメチルまたはエトキシカルボニル;Bはエチル;R1はR22基により置換されるn−ブチル;またはR1は4〜6個の炭素原子を有し、R23基により任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖アルケニル;R2はメチル;R22およびR23は、同じか異なり、それぞれヒドロキシ、N,N−ジメチルアミノまたはベンジルを示し、ここでフェニル環は任意に1または2基のアルコキシにより置換される。
【0077】
本発明の例示的な化合物としては、以下の化合物が挙げられる:
1. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
2. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
3. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]− Val5−シクロスポリンA;
4. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
5. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
6. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
7. [(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
8. [(D)−MeAla]3−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA;
9. [(D)−MeAla]3−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA;または
10. [(E)−7−エトキシカルボニル]1−[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA
【0078】
以後、数1〜10を用いて上記化合物を参照し、特定する。
【0079】
本明細書に開示の化合物を、当業者に明白なあらゆる方法によって調製、分離または得ることができる。典型的な調製方法を後述する例で詳細に説明する。
【0080】
ある実施形態において、式(I)の化合物は塩基を用いて式(II):
【0081】
【化3】
【0082】
(式中、A,BおよびR1は上記に規定される)で表される化合物を処理し、その後、生成したアニオン性化合物を、式R2−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR2は上記に規定され、Yは離脱基、例えば臭化物、塩化物、ヨウ化物等のハロゲン化物であるか;またはメシラート、トルエンスルホナート若しくはトリフルオロメタンスルホナート等のスルホン酸エステルである。好ましくは、式(II)の化合物は、適当な溶媒に溶解され、約−70℃まで冷却される。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタン、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。混合物に塩基を添加した後、生成した混合物は、通常、約1時間反応させて、任意に約−20℃まで加熱することができる。反応混合物は、通常、約−70℃まで冷却され、適切な求電子剤が添加される。この反応に好ましい塩基としては、塩化リチウムおよびナトリウムアミドと、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよびリチウムジイソプロピルアミドの組み合わせが挙げられる。式R2−Yの化合物としては、好適には、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル等が挙げられる。
【0083】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、塩基を用いて式(III)
【0084】
【化4】
【0085】
(式中、A,BおよびR2は上記に規定される)で表される化合物を処理し、生成したアニオン性化合物を、式R1−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR1は上記に規定され、Yは離脱基、例えば臭化物、塩化物、ヨウ化物等のハロゲンであるか;またはメシラート、トルエンスルホナート若しくはトリフルオロメタンスルホナート等のスルホン酸エステルである。好ましくは式(III)の化合物は適当な溶媒に溶解され、約−70℃まで冷却される。塩基が添加され、その後、式R1−Yの求電子剤が添加され、反応混合物はほぼ室温まで加熱することができる。好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン等が挙げられる。反応に適した塩基としては、ホスファゼン塩基、水素化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミドが挙げられるが、これらに限定するものではない。特に好ましい塩基は、従来技術において非求電子塩基として既知のtert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス(トリス(ジメチルアミノ)−ホスホラニリデンアミノ)−25,45−カテナジ(ホスファゼン)(P4−t−ブチル)等のホスファゼン塩基を含む。アニオン性窒素基と反応するのに適当な求電子剤としては、ハロゲン化またはスルホン酸化アルキル;ハロゲン化またはスルホン酸化ベンジル;ハロゲン化またはスルホン酸化ヘテロアルキル;ハロゲン化またはスルホン酸化アリルが挙げられる。式R1−Yの好ましい化合物としては、さらにエーテル基、チオエーテル基およびエステル基、例えばクロロメチルメチルエーテル、クロロメチルメチルスルフィドおよびブロモ酢酸tert−ブチルとさらに置換されるハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0086】
式(II)の化合物は、塩基を用いて式(IV)
【0087】
【化5】
【0088】
(式中、AおよびBは上記に規定される)で表される化合物を処理し、生成したアニオン性化合物を式R1−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR1およびYは上記に規定される。一般的に、反応は式(I)の化合物の調製の際、式(III)の化合物から上記と同様の条件で実施される。
【0089】
また式(II)の化合物は、式(V)
【0090】
【化6】
【0091】
(式中、A,BおよびR1は上記のように規定し、R50は保護基を示す)で表される化合物を脱保護することによって調製することができる。好ましいR50基としては、tert−ブチルジメチルシロキシ、トリエチルシリルオキシ、tert−ブチルジフェニルシリルオキシおよびトリメチルシリルオキシ等のトリアルキルシリルが挙げられる。一般的に、反応はフッ化物源(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化水素/ピリジン、フッ化セシウム)を用いて、非プロトン性溶媒中(例えばTHF)、約−20〜約−50℃で実施される。
【0092】
式(V)の化合物は塩基を用いて式(VI)
【0093】
【化7】
【0094】
(式中、A,BおよびR50は上記に規定される)で表される化合物を処理し、生成したアニオン性化合物を式R1−Yの化合物と反応させることによって調製することができ、ここでR1およびYは上記に規定される。通常、反応条件は、式(III)の化合物から式(I)の化合物の調製のための、上記と同様である。
【0095】
式(III)、(IV)および(VI)の化合物は、文献から知られているか、既知の方法を適用し、または適合させて調製することができる。
【0096】
式(V)または(VI)の化合物は、式(II)または(IV)の対応する化合物を適切な溶媒中、保護効果が知られている試薬を用いて、任意で塩基が存在する条件下で処理することによって調製することができる。試薬は、トリアルキルシリル誘導体、活性カルボン酸またはイソシアネート等、塩基は、トリアリウキルアミンまたはアルカリ土類炭酸塩、溶媒はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、THF等が好ましい。試薬はトリフルオロ酢酸tert−ブチルジメチルシリル、塩基はトリエチルアミン、および反応はジクロロエタン中で実施することがより好ましい。
【0097】
既知の方法を適用して、かつ適合させて、式(I)または(II)の化合物を、式(I)または(III)の他の化合物に変換することができ、かかる相互変換は、例えば下記のような本発明のさらなる特徴を形成する。
【0098】
式(I)または(II)(式中、R1は、フェニルまたは複素環で置換されるアルキルであり、前記フェニルまたは複素環はハロゲン(例えば臭化物)で置換される)の化合物は、式(I)(式中、R1は、フェニルまたは複素環で置換されるアルキルであり、前記フェニルまたは複素環はアルキル、アリールまたはアミノで置換される)に対応する化合物に遷移金属反応、例えばスティル反応、鈴木反応またはブッフバルト・ハートウィッグクロスカップリング反応を用いて変換することができる。
【0099】
式(I)または(II)(式中、R1は非置換アルケニル)の化合物は、式(I)または(II)の他方の化合物(式中、R1は非置換アルキル)に、文献から知られている方法を用いて選択的に変換することができる。例えば係る化合物の選択的炭化水素は、式(I)または(II)に対応する化合物(式中、R1はヒドロキシル置換アルキル)を産出することができ;選択的メタセシス反応は、新たにオレフィン誘導体を生じ、選択的ジヒドロキシル化は式(I)の化合物(式中、R1は2つのヒドロキシルで置換されたアルキルを示す)を生じる。
【0100】
式(I)または(II)(式中、R1はアルコキシカルボキシルで置換されたアルキルを示す)の化合物は、式(I)または(III)(式中、R1はカルボキシルで置換されたアルキルを示す)の対応する化合物に、例えばテトラヒドロフラン中で水酸化リチウムを用いて、またはエタノール中で水酸化ナトリウムを用いて変換することができる。カルボキシルを含む式(I)または(II)の化合物は式(I)または(II)(式中、カルボキシルはアミド、アルコキシカルボニルおよびヒドロキシルに置換される)に対応する化合物に既知の方法を適用して、または適合させて変換することができる。
【0101】
式(I)または(II)(式中、R1はエーテルで置換されたアルキレン)の化合物は、式(I)または(II)(式中、R1はエーテル基が選択的に脱保護されたヒドロキシル)の対応する化合物に変換することができる。この方法に用いることができる好ましいエーテルとしては、4−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、アルキルチオメチル、テトラヒドロピラニル等が挙げられる。
【0102】
式(I)または(II)(式中、R1はヒドロキシル基で置換されたアルケニル)の化合物は、ヒドロキシル基の酸化を伴う、1,4−不飽和カルボニル誘導体の産生;アルケニル基の選択的な還元、カルボニルの還元によるヒドロキシル化合物の産生という一連の手順で、対応するアルキル誘導体に変換することができる。アルケニル基の選択的な還元は、銅ヒドリド、リチウム/アンモニア、水酸化ナトリウム/プロトポルフィリン鉄、水素化ホウ素ナトリウム/塩化ニッケル、水素化ホウ素ナトリウム/硫酸銅等の公知の試薬により、1,4還元を生じて達成することができる。
【0103】
上述したように、本明細書に開示の化合物は、中性型または塩の形態とすることができる。
【0104】
本発明の化合物、例えば本明細書に開示の化合物の塩基部分を置換する場合、酸付加塩を形成される。酸付加塩を調製するのに使用できる酸としては、好ましくは遊離塩基と組み合わせた際に薬学的に許容可能な塩、即ちアニオンが塩の製薬学的な投与量で被検体に非毒性である塩を産生するものが挙げられる。本発明の範囲の薬学的に許容可能な塩は、以下の酸由来のものである:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸および硝酸のような無機酸;および酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1、2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2、2、2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の有機酸。
【0105】
対応する酸付加塩としては、塩酸塩および臭化水素酸塩のようなヒドロハライド、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、エタンスルホン酸塩、1、2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン酸塩、ムコン酸塩等が挙げられる
【0106】
本発明の更なる特徴においては、本発明の酸付加塩の化合物は、既知の方法を適用し、または適合させ、遊離塩基と適切な酸の反応によって調製することができる。例えば、本発明の化合物の酸付加塩は、遊離塩基を水溶液、水溶性アルコール溶液または適切な酸を含有する他の適切な溶媒に溶解し、溶液を蒸発して塩を分離するか、または、遊離塩基および酸を有機溶媒中で反応させ、塩を直接分離若しくは溶液の濃縮により得るかの、いずれかの方法によって調製することができる。
【0107】
本発明の化合物の酸付加塩、例えば本明細書に開示の化合物は、既知の方法の適用し、または適合させることで、塩から再生することができる。例えば本明細書に開示の化合物の親化合物を、その酸付加塩から、重炭酸ナトリウム水溶液またはアンモニア水溶液等のアルカリで処理することによって再生することができる。
【0108】
本明細書に開示の化合物等の本発明の化合物を酸部分で置換する場合、塩基付加塩が形成される。本発明の範囲内で、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩を含む薬学的に許容可能な塩は、以下の塩基に由来するものが挙げられる:水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム;および脂肪族、脂環式または芳香族有機アミンのような有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等。
【0109】
本明細書に開示の化合物等の本発明の化合物の金属塩は、水性または有機溶媒中で、所定金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩または類似の反応性化合物を遊離酸形態の化合物と接触させることによって得られる。使用する水性溶媒は、水とするか、水と有機溶媒の混合物とすることができ、好ましくは、有機溶媒はメタノールまたはエタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、テトロヒドロフラン等の脂肪族エーテルまたは酢酸エチル等のエステルである。このような反応は、通常大気温度で行うが、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。
【0110】
本明細書に開示の化合物のアミン塩は、アミンを水性または有機溶媒中で遊離酸形態の化合物と接触させることによって得られる。適切な水性溶媒は、水、および水とメタノール若しくはエタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトニトリル等のニトリルまたはアセトン等のケトンとの混合物を含む。アミノ酸塩を同様に調製することができる。
【0111】
本明細書に開示の化合物の塩基付加塩は、既知の方法を適用し、または適合させて、塩から再生することができる。例えば本明細書に開示の化合物の親化合物をその塩基付加塩から、塩酸等の酸で処理することによって再生できる。
【0112】
<医薬品組成物および投与法>
本明細書に開示の方法に用いるシクロスポリン化合物は、好ましくは一般式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する医薬品組成物を、塩形態が適切な場合においては、単独で、希釈剤若しくはアジュバンドのような一つ以上の互換性および製薬学的に許容可能な担体または他の抗HCV剤との組み合わせの形態で使用して、提供することができる。臨床診療における本発明のシクロスポリン化合物は、既存のあらゆる経路で、特に経口、非経口、直腸または吸入(例えばエアロゾルの形態)で投与することが可能である。本発明のシクロスポリン化合物は、経口で投与されることが好ましい。
【0113】
経口投与用の固体組成物としては、錠剤、丸剤、硬ゼラチンカプセル、粉末または顆粒を使用することができる。これらの組成物において、本発明に係る活性生成物は、ショ糖、ラクトースまたは澱粉のような一つ以上の不活性希釈剤またはアジュバントと混合される。
【0114】
これら組成物には、希釈剤以外の材料、例えばステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、または放出制御用のコーティングを含有させてもよい。
【0115】
経口投与用の液体組成物として、水または液体パラフィン等の不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容可能な溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルを使用することができる。また、これらの組成物は希釈剤以外の物質、例えば湿潤剤、甘味剤または香味剤を含んでいてもよい。
【0116】
非経口投与用の組成物は、エマルジョンまたは滅菌溶液とすることができる。溶媒または賦形剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、または注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを使用することができる。これらの組成物には、アジュバント、特に湿潤剤、等張剤、乳化剤、分散剤および安定剤も含有させてもよい。殺菌は、いくつかの方法、例えば細菌フィルターの使用、放射線または加熱によって実施することができる。これらは、使用時に滅菌水またはあらゆる他の注射可能な滅菌媒体に溶解可能な、滅菌固体組成物の形態で調製してもよい。
【0117】
直腸投与用の組成物は、有効成分に加えて、カカオバター、半合成グリセリドまたはポリエチレングリコールのような無効成分を含有する坐薬または直腸カプセルである。
【0118】
組成物はまたエアロゾルとすることができる。液体エアロゾルの形態で使用するために、組成物を、安定した滅菌溶液、または使用時に非発熱性の滅菌水、食塩水若しくはあらゆる他の薬学的に許容可能な賦形剤に溶解可能な固体組成物とすることができる。直接吸入すべき乾燥エアロゾルの形態で使用するために、有効成分を微粉砕し、水溶性の固形の希釈剤または賦形剤、例えばデキストラン、マンニトールまたはラクトースと混合する。
【0119】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は医薬品組成物または単一ユニット投与形態である。本発明の医薬品組成物および単一ユニット投与形態は、予防または治療に有効な量の一つ以上の予防薬または治療薬(例えば本発明の化合物または他の予防薬または治療薬)と、通常一つ以上の薬学的に許容可能な担体または無効成分とを含む。ある実施形態および本文において、「薬学的に許容可能な」という用語は、動物、特にヒトへの使用に関して、連邦政府または州政府の監督官庁により承認されたか、米国薬局方または他の通常認識された薬局法に記載されたものを意味する。「担体」という用語は、治療薬を投与する際の希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全および不完全))、無効成分または賦形剤を指す。このような製剤担体は、滅菌液体、例えば水と、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油等の石油系、動物系、野菜系または合成系を含む油である。医薬品組成物を静脈内に投与する場合、水が担体であることが好ましい。生理食塩水、デキストロースおよびグリセロール水溶液を、特に注射可能な溶液に対する液体担体として用いることもできる。適切な薬学的担体の例は、E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
【0120】
典型的な医薬品組成物および剤形は、一つ以上の無効成分を含む。適切な無効成分が、薬学分野の当業者に周知であり、適切な無効成分の例としては、特に限定されるものではないが、澱粉、グルコース、ラクトース、サッカロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。特定の無効成分が、医薬品組成物または剤形に配合するのに適切であるかどうかは、特に制限されるものではないが、剤形を被検体に投与する方法、および剤形中の特定の活性成分を含む当業界で周知の様々な要因に依存する。組成物または単一ユニット剤形には、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤を含有させてもよい。
【0121】
本発明のラクトースを含まない組成物は、当業界において周知で、例えば米国薬事法(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載された無効成分を含有することができる。一般的に、ラクトースを含まない組成物は、薬学的に互換性のある量で、かつ製薬学的に許容可能な量の活性成分、結合剤/重鎮剤および潤滑剤を含有する。典型的なラクトースを含まない剤形としては、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ澱粉およびステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0122】
本発明は、さらに活性成分を含む無水の医薬品組成物および剤形を包含する。いくつかの化合物が水で分解されるからである。例えば、水の添加(例えば5%)は、貯蔵寿命または長期の製剤の安定性等の特徴を決定するために、製剤業界において長期保存をシミュレーションする手段として幅広く受け入れられている。例えばJens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379−80を参照のこと。実際、水および熱は、いくつかの化合物の分解を促進する。従って、水の製剤への作用が非常に重要である。水分および/または湿気が、通常製剤の製造、取扱い、包装、保管、出荷および使用中に影響するからである。
【0123】
本発明の無水性医薬品組成物および剤形は、無水の、または含水量の低い材料を用いて、低水分または低湿度条件下で製造することができる。ラクトースと、一級または二級のアミンを有する少なくとも1つの活性成分と、を含む医薬品組成物および剤形は、製造、包装および/または保存中に、実質的な水分および/または湿気との接触が予期される場合に無水であることが好ましい。
【0124】
無水性医薬品組成物は、その無水性が維持されるように調製し、保存すべきである。従って、無水組成物は、これらを適切な処方キットに包含できるように、水への露出を防ぐことが知られた材料を使用して包装することが好ましい。適切な包装の例はとしては、限定しないが、密封したフォイル、プラスチック、ユニット投与容器(例えばバイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが挙げられる。
【0125】
また、本発明は、活性成分の分解速度を低下させる一つ以上の化合物を含む医薬品組成物および剤形を包含する。かかる化合物は、ここで「安定剤」と称し、特に制限されるものではないが、アスコルビン酸等の酸化防止剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が挙げられる。
【0126】
医薬品組成物および単一ユニット剤形は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続性放出製剤等の形態とすることができる。経口処方剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準の担体を含むことができる。このような組成物および剤形は、予防または治療に有効な量の好適には精製された状態の予防薬または治療薬を、被検体への適切な投与のための形態とするために適した量の担体と共に含有する。製剤は、投与様式に適しているべきである。好ましい実施形態において、医薬品組成物または単一ユニット剤形は無菌で、被検体、好ましくは動物被検体、より好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトへの投与に適した形態である。
【0127】
本発明の医薬品組成物は、その意図する投与ルートに互換性を有するように処方される。投与ルートの例としては、特に制限されるものではないが、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、皮下等の非経口、経口、口腔、舌下、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内、滑膜生内および直腸の投与が挙げられる。ある実施形態においては、組成物をヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適合する医薬品組成物として、常法に従って処方する。ある1つの実施形態においては、医薬品組成物をヒトへの皮下投与用に常法に従って処方する。通常、静脈内投与用の組成物は、滅菌された等張性水性緩衝剤の溶液である。所要に応じて、組成物はまた可溶化剤および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインのような局所麻酔薬を含んでもよい。
【0128】
剤形の例としては、特に制限されるものではないが、錠剤;カプレット;軟ゼラチンカプセルのようなカプセル;カシェ;トローチ;菱形剤;分散液;坐薬;軟膏;湿布(湿布薬);ペースト;粉末;包帯;クリーム;絆創膏;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば点鼻薬または吸入器);ゲル;懸濁液(例えば水性または非水性の液体懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョン)、溶液およびエリキシルを含む被検体への経口または粘膜投与に適した液体剤形;被検体への非経口投与に適した液体剤形;および被検体への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構築し得る無菌の固体(例えば結晶性または非結晶性の固体)が挙げられる。
【0129】
本発明の剤形の組成、形状および種類は、通常その使用によって異なる。例えばウイルス感染の初期治療に用いる剤形は、同じ感染の維持療法に用いる剤形より多い量の一つ以上の活性成分を含有することができる。同様に、非経口剤形は、同じ疾病または疾患を治療するのに用いる経口剤形より少ない量の一つ以上の活性成分を含有することができる。本発明に包含される特徴的な剤形が多様な形態を示す、これらの方法及び他の方法は、当業者にとって、明確に理解できるであろう。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0130】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば乾燥凍結粉末または水を含まない濃縮物として活性剤の量を示す、アンプルまたは小袋のような密封した容器に、個々に、または一緒に混合されたユニット剤形として供給される。組成物を点滴によって投与すべき場合、それは滅菌製薬品質の水または食塩水を含有する点滴ボトルに分注することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができるので、成分を投与前に混合してもよい。
【0131】
本発明の典型的な剤形は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物を、一日一回の服用で朝に、好ましくはその日に摂取する食べ物との分割投与で、一日当たり約0.1mg〜約2000mgの範囲内で含有する。本発明のある剤形は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、100、200、250、500、1000または2000mgの活性型シクロスポリンを有する。
【0132】
<経口剤形>
経口投与に適した本発明の医薬品組成物は、限定しないが、錠剤(例えば咀嚼錠)、カプレット、カプセルおよび液体(例えば風味をつけたシロップ)のような個別の剤形として示すことができる。このような剤形は所定量の活性成分を含有し、当業者に周知の薬学的方法によって調製することができる。一般的にRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0133】
好ましい実施形態において、経口剤形は固体であり、前項に詳細に記載したように、無水成分を用いて無水条件下で調製される。しかしながら、本発明の範囲は無水の固形経口剤形を以外のものも包含する。このようなさらなる形態を、本明細書にて開示する。
【0134】
最近の薬学的合成技術に従って、活性薬剤を、少なくとも1つの無効成分と十分に混合して、本発明の典型的な経口剤形を製造する。無効成分は、投与に好ましい製造形態であれば、多種多様な形態とすることができる。例えば経口液体またはエアロゾルの剤形としての使用に適切な無効成分としては、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤および着色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。固体経口剤形(例えば粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)における使用に適切な無効成分の例として、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
投与を容易とするため、錠剤およびカプセルが最も有利な経口投薬ユニット形態を示し、この場合、固体無効成分が用いられる。必要に応じて、錠剤を標準の水性または非水性の技術によってコーティングすることができる。このような剤形は、あらゆる薬学的方法によって調製することができる。一般に、医薬品組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微粉細固体担体またはその両方と均一且つ徹底的に混合し、必要に応じて生成物を所望の体裁に成形することによって調製することができる。
【0136】
例えば錠剤は、圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械で粉末または顆粒のような自由流動形態の活性成分を、任意に無効成分と混合して圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。
【0137】
本発明の経口投与形態に使用することができる無効成分の例としては、特に制限されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤および潤滑剤が挙げられる。医薬品組成物および剤形の使用に適した結合剤としては、特に制限されるものではないが、穀物澱粉、ジャガイモ澱粉または他の澱粉、ゼラチン、及び、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカントゴム、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばNo.2208、2906、2910)、微結晶性セルロースおよびそれらの混合物等の天然および合成の粘性物質が挙げられる。
【0138】
本明細書に開示の医薬品組成物および剤形の使用に適した充填剤の例としては、特に制限されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、α澱粉およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の医薬品組成物中の結合剤または充填剤は、通常医薬品組成物または剤形の約50〜約99重量%で存在する。
【0139】
微結晶性セルロースの適切な形態は、特に制限されるものではないが、AVICEL PH 101、AVICEL PH 103 AVICEL RC 581、AVICEL PH 105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)、およびそれらの混合物として販売されている材料が挙げられる。ある結合剤は、AVICEL RC 581として販売されている、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適切な無水、低水分無効成分または添加剤としては、AVICEL PH103(商標)およびSTARCH 1500LMが挙げられる。
【0140】
崩壊剤を本発明の組成物に用いて、水性環境にさらした際に崩壊する錠剤を提供する。過剰の崩壊剤を含有する錠剤は保管中崩壊してしまうが、一方で、少なすぎる含有量の錠剤は、所望の速度または所望の条件下で崩壊しない場合がある。従って、活性成分の放出を有害なものに変えるほど過剰でもなく、非常に少なくもない、十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固体剤形を形成すべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類によって異なるが、当業者に容易に認識される。典型的な医薬品組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、特に約1〜約5重量%の崩壊剤を含有する。
【0141】
本発明の医薬品組成物および剤形に使用し得る崩壊剤としては、限定しないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウム澱粉グリコレート、ジャガイモまたはタピオカの澱粉、α澱粉、他の澱粉、粘土、他のアルギン、他のセルロース、粘性物質およびそれらの混合物が挙げられる。
【0142】
本発明の医薬品組成物および剤形に使用し得る潤滑剤としては、特に制限されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる潤滑剤としては、例えばシロイドシリカゲル(メリーランド州、ボルティモアのW.R. Grace社から製造されているAEROSIL 200)、合成シリカの凝固エアロゾル(テキサス州、プラノのDegussa社から市販されている)、CAB O SIL(マサチューセツ州、ボストンのCabot社から販売されている発熱性の二酸化ケイ素製品)およびそれらの混合物が挙げられる。潤滑剤を少しでも使用する場合、通常、それらが組み込まれる医薬品組成物または剤形の約1重量%未満の量にて通常使用される。
【0143】
<遅延放出剤形>
本明細書に開示の化合物のような活性成分を、放出制御手段または当業者に周知の送達装置によって投与することができる。例としては、特に制限されるものではないが、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号および第5,733,566号明細書に記載されており、それぞれここに参照して援用する。このような剤形を用いて、例えば所望の放出プロフィールを異なる割合で提供するために、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマー材料、ゲル、透過性の膜、浸透圧法、多層コーティング、微粒子、リボソーム、微小球またはそれらの組み合わせを使用した、一つ以上の活性成分の徐放または放出制御を提供することができる。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の適切な放出制御製剤を、本発明の活性成分での使用に関し容易に選択することができる。従って、本発明は、特に制限するものではないが、放出制御に適合した錠剤、カプセル、ゲルカプセルおよびカプレットのような経口投与に適した単一ユニット剤形を包含する。
【0144】
全ての放出制御製剤製品は、非制御対応物により達成されるものを超えて、薬物療法を改善するといった共通の目的がある。理想的には、薬物治療に最適に設計された放出制御製剤の使用が、最小限の時間で疾患を治療または制御するための、最小限の薬剤物質を用いることを特徴とする。放出制御製剤の利点として、薬物活性の延長、投薬回数の減少、および被検体への対応性の向上が挙げられる。さらに、放出制御製剤を使用して、薬物の血液レベルといった作用、または他の特徴の発症時間に影響を及ぼすことができ、従って副作用(例えば逆作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0145】
多くの放出制御製剤は、まず所望の治療効果を速やかにもたらす量の薬物(活性成分)を放出し、このレベルの治療的または予防的な効果を長期間にわたって維持する薬物の量を、段階的に、且つ絶えず放出するように設計されている。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は、体内から代謝、分泌される薬物量を置き換えるような速度で剤形から放出される必要がある。活性成分の放出制御は、特に制限されるものではないが、pH、温度、酵素、水または他の生理的条件若しくは化合物を含む様々な条件によって刺激されることがある。
【0146】
<非経口剤形>
固体の無水経口剤形が好ましいが、本発明はまた非経口剤形を提供する。非経口剤形を被検体に、特に制限されるものではないが、皮下、静脈内(急速静注法を含む)、筋肉内および動脈内を含む様々なルートによって投与することができる。かかる投与において、コンタミネーションに対する被検体の自然免疫能を回避するため、通常、非経口剤形は、滅菌であるかまたは被検体への投与前に滅菌することが好ましい。非経口剤形の例としては、特に制限されるものではないが、注射に適した溶液、注射用の薬学的に許容可能な賦形剤に溶解または懸濁された乾燥生成物、注射に適した懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0147】
本発明の非経口剤形を提供するのに使用可能な適切な賦形剤が、当業者に周知である。一例としては、特に制限されるものではないが、注射用水USP;塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射および乳酸化リンガー注射のような水性賦形剤;エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのような水混和性賦形剤;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートおよび安息香酸ベンジルのような非水性賦形剤が挙げられる。
【0148】
本明細書に開示の一つ以上の活性成分の溶解度を向上させる化合物を、本発明の非経口剤形に組み込むこともできる。
【0149】
<経皮、局所および粘膜の剤形>
固体の無水経口剤形が好ましいが、本発明は経皮、局所および経粘膜の剤形をも提供する。本発明の経皮、局所および経粘膜の剤形としては、特に制限されるものではないが、点眼薬、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁液、または他の当業者に知られた形態が挙げられる。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16th and 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990); およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形を、うがい薬または経口ゲルとして処方することができる。さらに、経皮剤形としては、皮膚に塗布し、特定の期間静置して所望量の活性成分の浸透を可能にすることができる、「蓄積タイプ」または「マトリックスタイプ」のパッチが挙げられる。
【0150】
本発明に包含される経皮、局所および粘膜剤形を提供するのに使用することができる適切な無効成分(例えば担体および希釈剤)および他の成分は、製剤の当業者に周知であり、所定の医薬品組成物または剤形を塗布する組織に依存する。その事実を考慮して、典型的な無効成分としては、特に限定されるものではないが、非毒性および薬学的に許容可能なローション、チンキ、クリーム、エマルジョン、ゲルまたは軟膏を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。また、必要に応じて、保湿剤または湿潤剤を医薬品組成物および剤形に添加することができる。このような追加成分の例は、当業界において周知である。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16thおよび18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990)を参照のこと。
【0151】
治療すべき特定の組織に応じて、追加の成分を本発明の活性成分での治療前、治療中、または治療後に使用することができる。例えば、浸透促進剤を使用して活性成分の組織への送達を助けることができる。適切な浸透促進剤としては、特に制限されるものではないが、アセトン;エタノール、オレイルおよびテトラヒドロフリルのような種々のアルコール;ジメチルスルホキシドのようなアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンのようなピロリドン;Kollidon品質(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびにTween80(ポリソルベート80)およびSpan60(ソルビタンモノステアレート)のような種々の水溶性または不溶性の糖エステルが挙げられる。
【0152】
医薬品組成物若しくは剤形のpH、または医薬品組成物若しくは剤形を適用する組織のpHを調節して、一つ以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度または浸透圧を調整して、送達を改善することができる。また、ステアリン酸塩等の化合物を医薬品組成物または剤形に添加して、送達を改善するように、一つ以上の活性成分の親水性または親油性を有利に変更することができる。この点に関して、ステアリン酸塩は、製剤用の脂質賦形剤;乳化剤または界面活性剤;および送達促進剤または浸透促進剤として機能を果たすことができる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を使用して得られる組成物の物性をさらに調整することができる。
【0153】
<被検体の疾患を治療または予防する方法>
本発明の化合物はサイクロフィリンと称する酵素に働き、それらの酵素活性を阻害する。サイクロフィリンは、ヒト、酵母、バクテリア、原生動物、後生動物、昆虫、植物またはウイルスを含む広範囲の異なる生命体に生じる。感染性生命体の場合、本発明の化合物によるサイクロフィリン触媒活性の阻害が、しばしば生命体に対する抑制効果をもたらす。さらに、ヒトにおけるサイクロフィリンの触媒活性は、多くの異なる疾患状態に影響をもたらす。該触媒活性の阻害は、しばしば治療効果と関連する。従って、本発明の特定の化合物を、HCVおよびHIV(以下に詳細に記載する)ならびに菌類の病原体、原生動物およびメタゾア寄生体を含む感染の治療に使用することができる。さらに、本発明の特定の化合物を使用してアルツハイマー病、パーキンソン病および神経障害のような神経変性疾患を治療することができる。本発明の化合物の他の使用としては、脊髄若しくは頭部の損傷後の麻痺性障害、または心筋梗塞症後の心臓障害のような虚血および再かん流に関連する組織の損傷に対する保護がある。さらに、本発明の化合物を使用して、損傷または他の根本的な病状、例えば、緑内障の目の神経障害における再生工程や、髪、肝臓、歯肉または神経組織の再生を誘発することができる。
【0154】
本発明の特定の化合物は、例えば顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(ランドジー・デジェリーヌ)ならびにデュシェンヌおよびベッカー型筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーを含む、肢帯筋ジストロフィーとして診断された患者の筋細胞のミトコンドリア機能およびアポトーシス率に影響を与えることがある。
【0155】
本発明の特定の化合物を使用して、慢性炎症性疾患および自己免疫疾患を治療することができる。また、本明細書に開示のある化合物による免疫反応の調節について、慢性関節リウマチ、全身紅斑性狼瘡、高イムノグロブリンE血症、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、汎発性強皮症、重症筋無力症、I型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎のような自己免疫疾患の治療における有効性が見出された。さらなる用途としては、炎症性および過剰増殖性の皮膚病ならびに免疫を介する疾患の皮膚症状、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎および湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮下気腫、紅斑性狼瘡、にきびおよび円形脱毛症;角結膜炎、春季カタル、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト−コヤナギ−ハラダ症候群、類肉腫症、多発性骨髄腫等の様々な眼病(自己免疫やその他);COPD、喘息(例えば気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性の喘息、外部喘息および塵喘息)、特に慢性的または常習的な喘息(例えば遅発型喘息および気道過敏症)、気管支炎、アレルギー性鼻炎等の疾患を含む閉塞性気道疾患;胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症が原因の脈管損害のような粘膜および血管の炎症の治療および予防が挙げられる。さらに、本明細書に開示のある化合物によって、過剰増殖性血管病、例えば内膜平滑筋細胞増殖、再狭窄および血管閉塞、特に生物学的または機械的に介在する血管損傷を治療または予防することができる。他の治療可能な疾患としては、特に制限されるものではないが、虚血腸管疾患;炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷と関連する腸の病変およびロイコトリエンB4を介在する疾患;腸の炎症/アレルギーである小児脂肪便症、直腸炎、好酸性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病および潰瘍性大腸炎;消化管と関係の薄い症状を有する食品関連のアレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎および湿疹);腎疾患である間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、容血性尿毒症症候群および糖尿病性ネフロパシ;神経系の疾患である多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、多発性神経炎、単発神経炎および神経根神経病;内分泌疾患である甲状腺機能亢進症およびバセドー病;血液疾患である赤芽球癆、無形成性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨大赤芽球性貧血および赤血球形成不全;骨疾患である骨粗鬆症;呼吸器疾患である類肉腫症、肺線維症および原因不明の間質性肺炎;皮膚病である皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光線過敏症および皮膚T細胞リンパ腫;循環疾患である動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎および心筋症;膠原病である硬皮症、ヴェゲナーの肉芽腫およびシェーグレン症候群;脂肪過多;好酸性筋膜炎;歯周病である歯肉、歯周組織、歯槽骨および歯のセメント質の病変;ネフローゼ症候群である糸球体腎炎;脱毛の予防若しくは毛芽の提供および/または髪生成の促進および、育毛による男性型脱毛症または老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;アジソン病;活性酸素の介在された疾患、例えば臓器損傷である保存、移植または虚血性疾患(例えば血栓症および心臓の梗塞)に応じて生じる臓器(例えば心臓、肝臓、腎臓および消化管)の虚血−再かん流傷害;薬物または放射線が原因の腸の疾患であるエンドトキシン−ショック、偽膜性大腸炎および大腸炎;腎疾患である虚血性急性腎不全および慢性腎不全;肺−酸素または薬物が原因の肺疾患である中毒症(例えばパラコートおよびブレオマイシン)、肺癌および肺気腫;眼性疾患である白内障、鉄症、網膜炎、網膜色素変性、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕化および角膜アルカリ熱傷;皮膚炎である多形性紅斑、線状IgA水疱症およびセメント皮膚炎;ならびに他の歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば大気汚染)、老化、発癌、癌の転移および高山病が原因の疾患;ヒスタミンまたはロイコトリエン−C4放出が原因となる疾患;口腔、皮膚、目、外陰部、関節、副睾丸、肺、腎臓等に影響を及ぼすベーチェット病である腸、血管または神経ベーチェット病、ならびにベーチェット病を含む。さらに、本明細書に開示のある化合物は、肝臓疾患、例えば免疫原性の疾病(例えば自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変および硬化性胆管炎からなる群のような慢性自己免疫肝疾患)、肝臓部分的切除、急性肝壊死、肝硬変(例えばアルコール性肝硬変)、肝不全である劇症肝炎、遅発性肝不全および急性肝不全の慢性肝疾患の治療および予防が挙げられる。また、本発明のある化合物は、先天性肝腺維症を有する新生児または移植者、例えば肝臓移植の予防治療としても使用することができる。
【0156】
<被検体のHCVを治療または予防する方法>
本願は、本明細書に開示の化合物または組成物を含有する組成物を必要とする被検体のヘパシウイルス感染の治療または予防のために使用する方法を提供する。一般に、該方法は有効量の化合物または組成物を被検体に投与してヘパシウイルスの感染を治療または予防する工程を備える。好ましい実施形態において、ヘパシウイルス感染はHCV感染である。
【0157】
本発明のある実施形態として、被検体はHCVに感染したか、その感染の危険性のある、あらゆる被検体である。感染または感染の危険性は、当業者に適切であると考えられる、あらゆる技術によって判定することができる。特定の好ましい被検体は、HCVに感染したヒトである。
【0158】
HCVは、当業者に公知のあらゆるHCVとすることができる。現在、当業者に知られているHCVとしては、少なくとも6つのジェノタイプおよび少なくとも50個のサブタイプが存在する。HCVは、当業者に公知のあらゆるジェノタイプまたはサブタイプであってよい。ある実施形態において、HCVは、未同定のジェノタイプまたはサブタイプとする。ある実施形態では、被検体は単一のジェノタイプのHCVに感染している。ある実施形態では、複数のサブタイプまたは複数のジェノタイプのHCVに感染している。
【0159】
ある実施形態において、HCVはジェノタイプ1型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ1a型、1b型または1c型である。ジェノタイプ1型のHCV感染は、最近のインターフェロン療法に対して感受性が低いと考えられている。本発明の方法はジェノタイプ1型のHCV感染症の療法に有効となり得る。
【0160】
特定の実施形態において、HCVはジェノタイプ1型以外のものである。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ2型であり、あらゆるサブタイプとすることができる。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ2a型、2b型または2c型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ3型であり、あらゆるサブタイプとすることができる。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ3a型、3b型または10a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ4型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ4a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ5型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ5a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ6型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えばある実施形態において、HCVはサブタイプ6a型、6b型、7b型、8b型、9a型または11a型である。例えばSimmonds, 2004, J Gen Virol. 85:3173−88; Simmonds, 2001, J. Gen. Virol., 82:693−712を参照し、その内容のすべてをここに取り込む。
【0161】
ある実施形態において、被検体は、一度もHCV感染症に対する治療または予防を受けたことがないものとする。さらなる実施形態において、被検体は、以前HCV感染症に対する治療または予防を受けたことがあるものとする。例えば、ある実施形態において、被検体はHCV療法に反応してこなかったものである。実際、従来のインターフェロン療法において、50%までの、またはそれ以上のHCV被検体が療法に反応しない。ある実施形態において、被検体は治療を受けたことがあるが、ウイルス感染症またはその1つ以上の症状を有する被検体とすることができる。ある実施形態において、被検体は治療を受けたが、持続性ウイルス陰性化の達成に失敗したものとすることができる。ある実施形態において、被検体はHCV感染症の治療を受けたが、療法から12週間後HCVのRNAレベルにおいて、2log10低減することに失敗したものとする。治療12週間後に血清HCVのRNAが、2log10を超える減少を示さない被検体は、97〜100%の確率で反応しないと考えられている。本発明の化合物は、最近のHCV療法以外の機構によって作用するため、本発明の化合物はこのような非応答の被検体の治療に効果的であると考えられる。
【0162】
ある実施形態において、被検体は1つ以上の治療と関連する有害事象のため、HCV療法を中断した被検体としてもよい。ある実施形態において、被検体は最近の治療が勧められない被検体とする。例えば、HCVのためのある治療は、神経精神病学的症状と関連している。インターフェロン(IFN)−αとリバビリンは、高い割合で、うつ病と関連する。うつ病の症状は、数々の治療失敗例に関連している。生死に関わるか、致命的な神経精神病学的現象として、HCV治療中の、自殺および自殺念慮、殺人念慮、うつ病、薬物中毒の再発/過剰摂取および攻撃的な行動等が、前兆としての身体的な不具合を伴って、または伴わずに生じてきた。インターフェロンによって誘発されるうつ病は、特に精神医学的障害を有する被検体に対する、慢性C型肝炎の治療を制限してしまう。精神的な副作用は、インターフェロン療法において一般的であり、最近の対HCV感染症療法の中断原因の約10%〜20%を占める。
【0163】
従って、本発明は、最近のHCV治療では治療禁忌とされる神経精神病学的症状、例えばうつ病の危険性のある被検体におけるHCV感染症の治療または予防方法を提供する。また、本発明は、最近のHCV治療では治療の中断が推奨される神経精神病学的症状、例えばうつ病またはその危険性のある被検体に、HCV感染症の治療または予防の方法を提供する。さらに、本発明は、最近のHCV治療では投薬量の低減が推奨される神経精神病学的症状、例えばうつ病またはその危険性のある被検体に、HCV感染症の治療または予防の方法を提供する。
【0164】
最近の治療は、インターフェロン若しくはリバビリン、またはそれら双方、またはあらゆるインターフェロン若しくはリバビリンの他の製剤製品の成分に対して、過敏性の被検体を禁忌としている。また、最近の治療は、異常血色素症である被検体(例えばサラセミアメジャー、鎌型赤血球貧血症)および最近の治療の血液学的副作用の危険性のある他の被検体には推奨されない。一般的な血液学的な副作用として骨髄抑制、好中球減少および血小板減少が挙げられる。さらに、リバビリンは赤血球に対して毒性があり、溶血と関与する。従って、また本発明はインターフェロン若しくはリバビリンまたはそれら双方に敏感な被検体、異常血色素症を有する被検体であり、例えばサラセミアメジャーの被検体および鎌型赤血球貧血症の被検体、ならびに最近の治療の血液学的な副作用の危険性のある他の被検体における、HCV感染症の治療または予防方法を提供する。
【0165】
ある実施形態において、HCV治療を受けてきた被検体については、本発明の方法を受ける前に、その治療を中断する。またさらなる実施形態において、被検体に治療を実施し、その治療を本発明の方法と併用して継続する。本発明の方法は、当業者の判断に従って、HCVに対する他の療法と併用してもよい。有利な実施形態において、本発明の方法または組成物を、投与量を減じた他のHCV治療と同時に実施し、または投与することができる。
【0166】
ある実施形態において、本発明はインターフェロンによる治療に対して抵抗性のある被検体の治療方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、被検体は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリン、およびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される、1以上の薬剤との治療に対する反応に劣る被検体である。いくつかの実施形態において、被検体は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリンおよびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される、1以上の薬剤との治療に対する反応がない被検体としてもよい。
【0167】
さらなる実施形態において、本発明は、妊婦または妊娠の可能性がある被検体におけるHCV感染の治療方法を提供する。従来の療法が、妊婦に禁忌を示すからである。
【0168】
ある実施形態において、本発明の方法または組成物を肝移植後の被検体に投与する。C型肝炎は、米国において肝移植の原因となり、肝移植を経た多くの被検体は、移植後も依然としてHCV陽性のままである。本発明は、本発明に開示された化合物または組成物及び治療方法を、このようにHCVを再発した被検体に提供する。ある実施形態において、本発明は、HCV感染症の再発を予防するため、肝臓移植前、移植中または移植後の被検体への治療方法を提供する。
【0169】
<投薬およびユニット剤形>
ヒトの治療において、医師は、予防処置かまたは治療処置かによって、かつ治療すべき被検体に特異的な年齢、体重、感染の段階および他の要因によって、最も適切であると考えられる薬量を決定する。通常、投与量は成人1日当たり約1〜約2000mgである。
【0170】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被検体に、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、HCVに対する高い治療指数で投与することにより、被検体のHCV感染を治療または予防する方法を提供する。治療指数は、当業者に既知のあらゆる方法、例えば、以下の実施例に記載した方法に従って測定することができる。ある実施形態において、治療指数は、化合物が有毒性を呈する濃度 対 HCVに有効な濃度の比率である。毒性は、細胞毒性(例えばIC50またはIC90)および致死量(例えばLD50またはLD90)を含む、当業者に既知のあらゆる技術によって決定することができる。同様に、有効濃度は、効果的な濃度(例えばEC50またはEC90)および有効投与量(例えばED50またはED90)を含む、当業者に既知のあらゆる技術によって決定することができる。
【0171】
障害またはその一つ以上の症状の予防または治療に有効な本発明の化合物または組成物の量は、疾病または疾患の特徴ならびに重篤度、活性成分の投与経路によって異なる。また、回数および投薬量は、投与の目的たる特異的療法(例えば治療薬または予防薬)、障害、疾病または疾患の重篤度、投与経路ならびに被検体の年齢、身体、体重、反応および過去の病歴に応じた各被検体に特異的な因子によって異なる。有効投与量は、生体外または動物モデルの試験システムに由来した、投与量―応答曲線から推定することができる。
【0172】
一般に、本発明の疾患に対する本明細書に開示の組成物の、推奨される一日の投与量範囲は、一日あたり約0.1mg〜約2000mgの範囲内であり、一回で一日分を服用するか、一日に何回かに分けて服用する量として投与される。1つの実施形態において、一日の服用量は、等しく分割した服用量で一日二回投与する。いくつかの場合において、本明細書に開示した範囲外の活性成分の投与量を使用する必要があり得ることは、当業者にとって明白である。さらに臨床医または治療医師が、被検体の反応によって、療法を如何に中断、調整または終了するかを知っていることは、留意すべきである。
【0173】
種々の治療に有効な量を、異なる疾病および疾患に適用することができることは、当業者にとって容易に理解できる。同様に、かかる障害を、予防、管理、治療または改善するのに十分であるが、本発明の組成物と関連する副作用を生じるほどではない、または減じさせる量についても、上記投薬量および投薬回数スケジュールに包含される。さらに、被検体に本発明の組成物を複数回の投薬で投与する場合、全ての投薬量が同じである必要はない。例えば、被検体に投与する服用量を増やして組成物の予防または治療効果を向上させてもよく、または減らして特定の被検体が経験する一つ以上の副作用を軽減させてもよい。
【0174】
ある実施形態において、治療または予防は、本発明の化合物または組成物の一つ以上の導入量と、それに続く一つ以上の維持量で開始することができる。かかる実施形態において、導入量は、例えば1日〜48週間または1日〜5週間において約60〜約2000mg/日または約100〜約400mg/日とすることができる。導入量の後に、一つ以上の維持量が続く。
【0175】
ある実施形態において、本発明の化合物または組成物の服用量を投与して、被検体の血液または血清中の活性成分を定常濃度とすることができる。定常濃度は、当業者に利用可能な技術による測定によって決定することができるか、または身長、体重および年齢のような被検体の身体的な特徴に基づくことができる。
【0176】
ある実施形態において、本発明の同じ組成物の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。他の実施形態において、同じ予防薬または治療薬の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。
【0177】
ある態様において、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与に適した形態で含有する単位投与量を提供する。かかる形態は、上記に詳細に記載されている。特定の実施形態において、単位投与量は、活性成分約1〜約2000mg、約5〜約1000mgまたは約10〜約500mgを含有する。特定の実施形態において、単位投与量は、約1、5、10、25、50、100、125、250、500、1000または2000mgの活性成分を含有する。かかる単位投与量は、当業者によく知られている技術に従って調製することができる。
【0178】
<HCV併用療法>
本発明は、HCV感染の治療または予防に効果的な、それを必要とする被検体に第二薬剤を投与することを備えた治療または予防の方法を提供する。第二薬剤は、HCV感染の治療または予防に効果的な、当業者に既知のあらゆる薬剤とすることができる。第二薬剤は、現在当業者に既知の第二薬剤とするか、または第二薬剤はHIVの治療または予防のために開発され現在使用されている第二薬剤とすることができる。ある実施形態において、第二薬剤は、HCVの治療用または予防用として現在承認されている。
【0179】
ある実施形態において、本発明の化合物を1つの第二薬剤と組み合わせて投与する。さらなる実施形態において、第二薬剤を2つの第二薬剤と組み合わせて投与する。なお、さらなる実施形態において、第二薬剤を二つ以上の第二薬剤と組み合わせて投与する。
【0180】
適当な第二薬剤としては、HCV酵素の小分子で、経口の生物学的に利用可能な阻害薬、ウイルスRNAを攻撃する核酸に基づく薬剤、宿主免疫反応を調節することができる薬剤が挙げられる。典型的な第二薬剤としては、(i)現在承認されている治療薬(ペグインターフェロンとリバビリン)、(ii)HCV酵素標的化合物、(iii)ウイルスゲノム標的療法(例えばRNA干渉またはRNAi)および(iv)リバビリン、インターフェロン(INF)およびToll受容体作用薬のような免疫調節性剤が挙げられる。
【0181】
ある実施形態において、第二薬剤は、NS3−4Aプロテアーゼのモジュレータである。NS3−4Aプロテアーゼは、NS3タンパク質のアミノ末端ドメインおよび小NS4A補因子を含むヘテロ二量体プロテアーゼである。その活性は、ウイルスRNA複製複合体の成分を生成するために重要である。
【0182】
1の有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤は、テラプレビル(Vertex/Mitsubishi)、すなわちNS3−4Aプロテアーゼのプロテアーゼ切断産物由来のペプチド模倣薬の阻害剤である。それはケトアミドによる酵素の活性部位において安定化すると考えられる。例えばLin et al., 2005, J. Biol. Chem. Manuscript M506462200 (epublication); Summa, 2005, Curr. Opin. Investig. Drugs. 6:831−7を参照とし、内容をここに完全に援用する。他の有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤は、ボセプレビル(Merck/Shering−Plough)である。
【0183】
ある実施形態において、第二薬剤はHCV NS5Bの調節薬、RNA依存RNAポリメラーゼ(RdRp)である。NS5Bタンパク質内に含まれるRdRpはRNA鋳型を使用してRNAを合成する。この生化学活性は、哺乳類細胞に存在しない。
【0184】
RdRpの他の有用な調節剤は、7−デアザヌクレオシドの類似体を含む。例えば7−デアザ−2’−C−メチル−アデノシンは、優れた薬物動態学的特徴を有するC型肝炎ウイルス複製の有力且つ選択的な阻害剤である。Olsen et al., 2004, Antimicrob. Agents Chemother. 48:3944−3953の内容を、ここに完全に参考として援用した。
【0185】
さらなる実施形態において、第二薬剤はNS5Bの非ヌクレオシド調節剤である。NS5B阻害剤のヌクレオシド阻害剤(NNI)の少なくとも3つの異なる種類が、臨床試験中である。
【0186】
NS5Bの有用な非ヌクレオシド調節剤は、JTK−003およびJTK−009を包含する。JTK−003は、第2相まで開発されている。NS5Bの有用な非ヌクレオシド調節剤は、ベンゾイミダゾールまたはインドール核に基づく6,5−融合複素環化合物を含む。例えばHashimoto et al., 国際公開第2000/147883号を参照とし、内容をここに参考として完全に援用する。
【0187】
さらなる有用なポリメラーゼNNIは、R803(Rigel)と、HCV−371、HCV−086およびHCV−796(ViroPharma/Wyeth)を包含する。さらなる有用なNNIは、NS5Bポリメラーゼの可逆性アロステリックな阻害剤で、ベンゾイミダゾールに基づく阻害剤によって占領された部位に近接しているが、明らかに異なる部位に結合するチオフェン誘導体を包含する。例えばBiswal, et al., 2005, J. Biol. Chem. 280:18202−18210を参照のこと。
【0188】
さらに本発明の方法に有用なNNIは、ベンゾ−1,2,4−チアジアジンのようなベンゾチアジアジンを包含する。ベンゾ−1,2,4−チアジアジンの誘導体は、HCVのRNAポリメラーゼの高度に選択的な阻害剤であることが示された。Dhanak, et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:38322−38327の内容を、ここに完全に参照して援用する。
【0189】
本発明の方法にさらに有用なNNIおよびその機構が、LaPlante et al., 2004 Angew Chem. Int. Ed. Engl. 43:4306−4311; Tomei et al., 2003, J. Virol. 77:13225−13231; Di Marco et al., 2005, J. Biol. Chem. 280:29765−70; Lu, H.,国際公開第2005/000308号; Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:797−800; Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:793−796; Wang et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:9489−9495; Love, et al., 2003, J. Virol. 77:7575−7581; Gu et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:16602−16607; Tomei et al., 2004, J. Virol. 78:938−946;およびNguyen et al., 2003, Antimicrob. Agents Chemother. 47:3525−3530に記載され;内容をここに完全に参照して援用する。
【0190】
さらなる実施形態において、第二薬剤は、HCVポリヌクレオチドに特異的な小抑制RNA(siRNA)または短ヘアピン型RNA(shRNA)のような、HCVのRNAと干渉し得る薬剤である。組織培養において、ウイルスゲノムに対するsiRNA、およびベクターコード化短ヘアピン型RNAであるshRNAは、HCVレプリコンの複製を効果的にブロックする。例えばRandall et al., 2003, Proc. Natl Acad. Sci. USA 100:235−240を参照とし、内容をここに完全に援用した。
【0191】
さらなる実施形態において、第二薬剤は被検体の免疫反応を調節する薬剤である。例えばある実施形態において、第二薬剤はインターフェロン(IFN)、ペグインターフェロン、IFNとリバビリンまたはベグインターフェロンとリバビリンのようなHCV感染に対して、現在承認された治療薬とすることができる。好ましいインターフェロンはIFNα、IFNα2aおよびIFNα2b、特にペグIFNα2a(PEGASYS(登録商標))またはペグIFNα2b(PEG−INTRON(登録商標))を含む。
【0192】
さらなる実施形態において、第二薬剤はToll様受容体(TLR)の調節薬である。TLRは内在的な抗ウイルス反応を刺激する標的であると考えられる。適当なTLRとして、限定しないが、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9が挙げられる。Toll様受容体はバクテリア、ウイルスおよび寄生虫のような微生物の侵入の存在を察知すると考えられる。それらはマクロファージ、単球、樹枝細胞およびB細胞を含む免疫細胞によって発現する。TLRの刺激または活性化は、抗菌性遺伝子、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの誘導によって急性炎症性反応を開始することができる。
【0193】
ある実施形態において、第二薬剤は、CpGモチーフを含有するポリヌクレオチドである。非メチル化CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチドは、TLR−9の有力な作用薬である。これらオリゴヌクレオチドでの樹枝細胞の刺激は、腫瘍壊死因子−α、インターロイキン−12およびIFN−αの産生をもたらす。TLR−9リガンドはまた、B細胞増殖および抗体分泌の有力な刺激剤である。1つの有用なCpG含有オリゴヌクレオチドは、臨床評価されたCPG−10101(Actilon; Coley Pharmaceutical Group)である。
【0194】
TLRの他の有用な調節薬は、ANA975(Anadys)である。ANA975は、TLR−7により作用すると考えられ、誘導による強力な抗ウイルス反応およびIFN−αのような炎症性サイトカインの放出を誘発することが既知である。
【0195】
他の実施形態において、第二薬剤はCelgosivirである。Celgosivirはα−グルコシダーゼI阻害剤であり、宿主に特異的なグリコシル化により作用する。前臨床研究において、CelgosivirはIFNαとリバビリンと強力な相乗効果を示す。例えばWhitby et al., 2004, Antivir Chem Chemother. 15(3):141−51を参照。Celogosivirは、現在カナダにおいて慢性HCV患者の第二相単剤療法研究で評価されている。
【0196】
さらなる免疫調節性剤およびその機構または標的が、Schetter & Vollmer, 2004, Curr. Opin. Drug Discov. Dev. 7:204−210; Takeda et al., 2003, Annu. Rev. Immunol. 21:335−376; Lee et al., 2003, Proc. Natl Acad. Scull USA 100:6646−6651; Hosmans et al., 2004, Hepatology 40 (Suppl. 1), 282A;および米国特許第6,924,271号明細書に記載され、その内容をここに参照として援用する。
【0197】
ある実施形態において、本発明の第二薬剤を、式(I)の化合物と調剤または包装することができる。当然、当業者の判断に従って、このような調剤が薬剤の活性または投与方法のいずれかと干渉しない場合にのみ、第二薬剤を本発明の化合物と調剤する。ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を別途に処方する。当業者の便宜のため、これらを一緒に包装してもよく、別途に包装してもよい。
【0198】
第二薬剤の投与量を、本発明の併用療法に使用すべきである。特定の実施形態において、HCV感染の予防または治療に使用されてきたか、または現在使用されているものより少ない投与量を、本発明の併用療法に使用する。推奨される第二薬剤の投与量は、当業者の知見から理解される。臨床用に承認された第二薬剤に対して、推奨される投与量は、例えばHardman et al., eds., 1996, Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 9th Ed, Mc−Graw−Hill, New York; Physician’s Desk Reference (PDR) 57th Ed., 2003, Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJに記載され、内容をここに参照して援用する。
【0199】
様々な実施形態において、治療薬(例えば式(I)の化合物および第二薬剤)を5分間隔未満、30分間隔未満、1時間間隔、約1時間間隔、約1時〜2時間の間隔、約2時間〜3時間の間隔、約3時間〜4時間の間隔、約4時間〜5時間の間隔、約5時間〜6時間の間隔、約6時間〜7時間の間隔、約7時間〜8時間の間隔、約8時間〜9時間の間隔、約9時間〜10時間の間隔、約10時間〜11時間の間隔、約11時間〜12時間の間隔、約12時間〜18時間の間隔、約18時間〜24時間の間隔、約24時間〜36時間の間隔、約36時間〜48時間の間隔、約48時間〜52時間の間隔、約52時間〜60時間の間隔、約60時間〜72時間の間隔、約72時間〜84時間の間隔、約84時間〜96時間の間隔、または約96時間〜120時間の間隔で投与する。好ましい実施形態において、二つ以上の治療薬を、本願のとり得る範囲内で投与する。
【0200】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を周期的に投与する。周期療法は、一定期間の第一の治療薬(例えば第一の予防薬または治療薬)の投与、その後一定期間の第二治療薬(例えば第二の予防薬または治療薬)の投与、その後一定期間の第三治療薬(例えば第三の予防薬または治療薬)の投与等を伴い、これら薬剤の一つに対する耐性の進展を低減し、薬剤の1つの副作用を回避または減少し、および/または治療の効力を改善するためにこの一連の投与、即ちサイクルを繰り返すことである。
【0201】
ある実施形態において、同じ薬剤の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。他の実施形態において、同じ薬剤の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月の間に分けることができる。
【0202】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を、患者、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに順次、また、化合物が他の薬剤と共に作用して、他の投与のものの場合より大きな効果を奏し得るような時間隔内で投与する。例えば、第二の活性剤を、同時または異なる時点で任意の順番で順次投与することができる;しかしながら、同時に投与しない場合、所望の治療または予防効果を付与するようにこれらを十分に近い時間で投与すべきである。1つの実施形態において、式(I)の化合物および第二活性剤は、それらの効果を重複する時点で発揮する。それぞれの第二活性剤をあらゆる適切な形態、およびあらゆる適当な経路で別途投与することができる。他の実施形態において、式(I)の化合物を第二活性剤の投与前、投与中または投与後に投与する。
【0203】
様々な実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を約1時間未満の間隔、約1時間の間隔、約1時間〜約2時間の間隔、約2時間〜約3時間の間隔、約3時間〜約4時間の間隔、約4時間〜約5時間の間隔、約5時間〜約6時間の間隔、約6時間〜約7時間の間隔、約7時間〜約8時間の間隔、約8時間〜約9時間の間隔、約9時間〜約10時間の間隔、約10時間〜約11時間の間隔、約11時間〜約12時間の間隔、24時間の間隔以下または48時間の間隔以下で投与する。他の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を同時に投与する。
【0204】
他の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を約2〜4日の間隔、約4〜6日の間隔、約1週間の間隔、約1〜2週間の間隔、2週間を超える間隔で投与する。
【0205】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を患者に周期的に投与する。周期的な療法は、一定期間の第一薬剤の投与、その後の一定期間の第二薬剤および/または第三薬剤の投与ならびにこの一連の投与の繰り返しを含む。周期的な療法は治療薬の一つ以上への耐性の進展を減少し、治療薬の1つの副作用を回避または減少し、および/または治療の効力を改善することができる。
【0206】
ある実施形態において、式(I)の化合物および第二活性剤を、約3週間未満、2週間に約1回、10日おきに約1回または1週間に1回の周期で投与する。一回の周期は、周期あたり約90分間、周期あたり約1時間、周期当たり約45分間にわたる点滴による式(I)の化合物および第二薬剤の投与を含む。それぞれの周期は、少なくとも1週間の休止、少なくとも2週間の休止、少なくとも3週間の休止を含むことができる。投与する周期の数は、約1〜約12周期、より一般的には約2〜約10周期、より一般的には約2〜約8周期である。
【0207】
他の実施形態において、複数の治療単位を同時に患者に投与する、即ち第二薬剤の個々の投与量を、式(I)の化合物が第二活性剤と共に作用し得るような時間間隔で別々に投与する。例えば、1つの成分を、二週間毎に一回または三週間毎に一回投与し得る他の成分と組み合わせて、一週間に一回投与することができる。換言すれば、治療薬を同時にまたは同じ日に投与しない場合でも、投薬計画を同時に実施する。
【0208】
第二薬剤は、式(I)の化合物と、付加的またはより好ましくは相乗的に働くことができる。1つの実施形態において、式(I)の化合物を同じ医薬品組成物で一つ以上の第二薬剤と同時に投与する。他の実施形態において、式(I)の化合物を別個の医薬品組成物で一つ以上の第二薬剤と同時に投与する。さらに他の実施形態において、式(I)の化合物を、第二薬剤の投与前または投与後に投与する。本発明は、同じか異なる投与経路、例えば経口および非経口による式(I)の化合物および第二薬剤の投与を意図する。特定の実施形態において、式(I)の化合物を、限定しないが毒性を含む有害な副作用を潜在的に生じる第二薬剤と共に同時に投与する場合、第二薬剤を有害な副作用が誘発される閾値以下の投与量で有利に投与することができる。
【0209】
<キット>
本発明は、HCV感染の治療または予防の方法に用いるためのキットも提供する。キットは、本発明の医薬化合物または組成物と、細菌感染の治療または予防の使用に関する健康管理供給者に情報を提供する説明書とを備えることができる。説明書は、印刷形態、フロッピー(登録商標)ディスク、CD若しくはDVDのような電子媒体形態、または該説明書を入手可能なウェブサイトアドレスの形態で提供することができる。本発明の化合物または組成物の単位投与量は、被検体に投与した際に化合物または組成物の治療または予防に有効な血漿レベルを、被検体にて少なくとも1日間維持することができるような投与量を備えることができる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物または組成物を、滅菌した水性医薬品組成物または乾燥粉末(例えば凍結乾燥)の組成物として含むことができる。1つの実施形態において、化合物は式(I)によるものである。
【0210】
いくつかの実施形態において、適当な包装を提供する。ここで用いる「包装」は、システムに慣習的に使用され、被検体への投与に適した本発明の化合物または組成物を、一定の限度内で保持することができる、固体マトリックスまたは材料を指す。このような材料として、ガラスおよびプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネイト)のボトル、バイアル、紙、プラスチックおよびプラスチック箔積層包装材料等が挙げられる。eビーム滅菌技術を用いる場合、包装は、内容物の滅菌を可能とするのに十分低い密度とするべきである。
【0211】
本発明のキットは、本発明の化合物または組成物に加えて、上記方法に記載したような化合物または組成物との使用のための、第二薬剤または第二薬剤を含有する組成物も備えることができる。
【実施例】
【0212】
以下の実施例は、本発明に使用する典型的なシクロスポリン化合物の合成を例示する。これらの例は、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、そのように解釈されるべきものでもない。本明細書に具体的に記載された態様以外でも、本発明を実施することができることが明白である。本明細書の教示の観点から可能な本発明の多くの修正変更は、本発明の範囲内に含まれるものとする。他に特記しない限り、1H NMRは、DMSO−d6中の、400MHzにおけるデータである。
【0213】
実施例1
[(D)−MeAla]3−シクロスポリンA(590mg、参考例1)およびトランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−1−ブロモ−2−ブテン(参考例2)(630mg)を、炉乾燥フラスコに添加した。無水テトラヒドロフランを反応槽に添加した。この溶液を、−78℃まで不活性雰囲気下で冷却した。ホスファゼン塩基P4−tBu(CAS:[111324−04−0]、1M/ヘキサン、2.1mL)をゆっくり加えた。反応混合物を放置し、−30℃まで加熱し、その後クエン酸(1N)で冷却した。反応物をさらに酢酸エチルで希釈し、その後、酢酸エチルで2回抽出した。有機層の組み合わせを重炭酸ナトリウムの飽和溶液、それから塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、それを濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(ISCOシリカカートリッジ、酢酸エチル/ヘプタンの勾配)で精製し、540mgの[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物1)を白い固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.78 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.96 (s, 3H), 3.04 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 5.84− 5.91 (m, 1H), 6.59 (d, 1H), 6.83−6.91 (m, 4H), 8.00 (d, 1H), 8.55 (d, 1H);質量スペクトル:741.6 (M+2Na)/2.
【0214】
同様の方法で処理することによって、以下の本明細書に開示の化合物を調製した:
臭化3,3−ジメチルアリルを用いた、[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物2);1H NMR δ ppm 2.66 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 7.13 (d, 1H), 8.08 (d, 1H), 8.30 (d, 1H);質量スペクトル:1284.5 (M+H).
トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−1−ブロモ−2−ブテンを用いた[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物3); 1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.67 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 3.72 (s, 3H), 3.73 (s, 3H), 6.82−6.89 (m, 4H), 7.10 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 8.31 (d, 1H);質量スペクトル:1450.5 (M+H).
【0215】
実施例2
ジクロロメタンおよび水の溶媒混合液中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物1)(0.20 g)の溶液に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)(40mg)および生成した混合物を添加し、生成した混合物を室温で2時間撹拌した。それをジクロロメタンで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、140mgの[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物4)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.79 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.96 (s, 3H), 3.00 (s, 3H), 5.78− 5.84 (m, 1H), 6.71 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), 8.49 (d, 1H);質量スペクトル:1286.8 (M+H).
【0216】
同様の方法で処理することによって、以下の本明細書に開示の化合物を調製した:
【0217】
化合物3から開始した[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物5);1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.65 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.09 (s, 3H), 7.18 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 8.29 (d, 1H);質量スペクトル:1300.6 (M+H).
【0218】
実施例3
乾燥ジクロロメタン中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物4)(100mg、0.16mmol)の溶液を、氷浴中0℃で不活性雰囲気下、冷却し、トリエチルアミン(0.04mL、3.0eq.)および塩化メタンスルホニル(0.02mL、3.0eq)を添加した。生成した混合物を、室温で2時間撹拌した。それをジクロロメタンで希釈し、次に水および塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで洗浄し、減圧下濃縮した。残留物をTHF(8.0mL)に溶解し、この溶液にトリエチルアミン(0.04mL、4.0eq)およびジメチルアミン(0.20mL、5.0eq,THF中2.0M溶液)を添加した。生成した混合物を、室温で不活性雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で取り除き、残留物は分取HPLCを用いて精製し、[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物6)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.78 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 6H), 2.86 (s, 3H), 2.91 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 5.78 − 5.86 (m, 1H), 6.50 (d, 1H), 7.97 (d, 1H), 8.59 (d, 1H);質量分析:1313.8 (M+H).
【0219】
同様の方法で処理することによって、以下の本明細書に開示の化合物を調製した:
【0220】
化合物5から開始した[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物7);1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.07 (s, 6H), 2.66 (s, 3H), 2.80 (s, 6H), 2.83 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.92 (s, 3H), 3.07 (s, 3H), 7.09 (d, 1H), 8.08 (d, 1H), 8.32 (d, 1H);質量分析:1327.7 (M+H).
【0221】
実施例4
a)乾燥メタノール中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−オキソブチル]−Val5−シクロスポリンA(下記の参考例3において調製した;0.12g)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(10mg)を添加し、生成した混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水で冷却し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を取り除いた後、0.11gの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンAを得て、下記b)でさらに精製することなく使用した;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.16 (s, 3H), 0.04 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.41 (s, 3H, 2.69 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.82 (s, 6H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 7.39 (d, 1H), 8.05 (d, 1H), 8.21 (d, 1H);質量分析:702.5 および 724.6 [(M+2H)/2およびM+2Na)/2].
【0222】
b)THF(12.0mL)中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA(110mg)の溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中の0.12mL、1.5eq、1.0M溶液)を添加し、生成した混合物を室温で12時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、続けて水および塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下取り除き、残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、[(D)−MeAla]3−N−[4− ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA(化合物8)を白い固体として得た;1H NMR δ ppm 2.72 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 2.91 (s, 3H), 3.04 (s, 3H), 6.95 (d, 1H), 8.06 (d, 1H), 8.39 (d, 1H);質量分析:1288.7 (M+H).
【0223】
実施例5
酢酸0.01mLを含む乾燥メタノール中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−(4−オキソブチル)−Val5−シクロスポリンA(0.11g)に、ジメチルアミン(THF中の0.10mL、0.20mmol、2.0M溶液)およびシアンボロハイドライドナトリウム(10mg、0.16mmol)を添加し、生成した混合物を室温で12時間撹拌した。その後、減圧下濃縮し、残留物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、0〜70%の濃度勾配をつけた溶媒B(B=DCM/MeOH/NH4OH(90:9:1、v/v/v)の溶媒Aで溶出して100gの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR δ ppm −0.16 (s, 3H), 0.04 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.12 (s, 6H), 2.43 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.82 (s, 6H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 7.34 (d, 1H), 8.02 (m, 1H), 8.22 (d, 1H);質量分析:715.7 (M+2H)/2.
【0224】
THF(10.0mL)中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA(100mg)の溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中0.11mL、1.5eq、1.0M溶液)を添加し、生成した混合物を室温で12時間撹拌した。それを酢酸エチルで希釈し、続けて水および塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下取り除き、残留物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜70%の濃度の勾配をつけた溶媒B(B=DCM/MeOH/NH4OH(90:9:1、v/v/v)の溶媒A(A=DCM)で溶出し、80mgの[(D)−MeAla]3−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA(化合物9)を白い固体として得た;1H NMR δ ppm 2.15 (s, 6H), 2.79 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 3.01 (s, 6H), 6.67 (d, 1 H), 8.01 (d, 1H), 8.50 (d, 1H);質量分析:1315.8 (M+H).
【0225】
実施例6
乾燥ジクロロメタン中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物2)(50mg、0.039mmol)エチルアクリレート(0.064mL、0.584mmol)およびHoveda−Grubbs触媒(第2世代、2.5mg、0.004mmol)の混合物を密封管に加え、アルゴンで流した。試験管を密封し、その含有物を60℃まで加熱し、この温度で24時間撹拌した。その後、それを室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残留物は分取HPLCを用いて精製し、[(E)−7−エトキシカルボニル]1−[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物10)を白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 1.20 (t, 3H), 2.62 (s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.83 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.93 (s, 3H), 3.12 (s, 3H), 4.10 (q, 2H), 5.89 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 8.28 (d, 1H);質量分析:1342.5 (M+H), 1364.4 (M+Na).
【0226】
参考例1
ジイソプロピルアミン(3.5mL、24.98mmol)を無水テトラヒドロフランに溶解した。この溶液を−78℃まで窒素で冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M/ヘキサン、9.99mL、24.98mmol)を滴下し、その後、混合物を−78℃で30分撹拌した。その後、無水テトラヒドロフラン中のシクロスポリンA(4.0g、3.33mmol)を溶液に添加した。混合物をこの温度に60分維持し、その後ヨードメタン(2.36g、16.63mmol)を溶液に添加した。溶液を−78℃で30分撹拌し、その後放置して、室温まで加熱した。塩化アンモニウム飽和溶液を添加し、その後酢酸エチルで2回抽出することによって、反応物を冷却した。有機層の組み合わせを硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。粗生成物はシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、[(D)−MeAla]3−シクロスポリンAを得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.70 (s, 3H), 2.71 (s, 3H), 3.09 (s, 3H), 3.11 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.27 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 7.15 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.62 (d, 1H), 7.94 (d, 1H);質量分析:609.1, (M+2H)/2.
【0227】
参考例2
ジクロロメタン中のトランス−1,4−ジブロモブタ−2−エン(19.08g、89.18mmol)、3,4−ジメトキシベンジルアルコール(10.0g、59.46mmol)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(2.02g、5.95mmol)に水中の水酸化ナトリウム(21.4g、535.1mmol)を添加し、生成した混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を水で希釈し、ジエチルエーテルで抽出した。有機抽出物の組み合わせを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、11gのトランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−1−ブロモ−2ブテンを得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 3.89 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 3.98 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 4.03 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 4.46 (s, 2H), 6.83 − 6.91 (m, 3H).
【0228】
参考例3
95:5v/vのメタノールおよび水の混合物中のプロトポルフィリン鉄(0.91g、4.63mmol)および水酸化ナトリウム(90mg、2.32mmol)をアルゴンで流し、室温で20分撹拌し、完全に水酸化ナトリウムを消費したことを確認した。この混合物に、同じ溶媒混合物中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−オキソブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA溶液(下記の参考例4に記載;0.27g)を添加し、生成した混合物を室温で72時間、アルゴンと撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルを添加した。混合物を0℃まで撹拌しながら冷却し、塩化鉄(III)をガス発生が観測されなくなるまで加えた。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を取り除いた後、粗生成物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、230mgの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−(4−オキソブチル)−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm −0.16 (s, 3H), 0.04 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.68 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.82 (s, 6H) 2.89 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 7.42 (d, 1H), 8.03 (m, 1H), 8.21 (d, 1H), 9.64 (m, 1H).
【0229】
参考例4
a)乾燥ジクロロメタン中の[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(化合物1)(0.34g)の溶液にトリエチルアミン(0.33mL,10eq.)およびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸(0.27mL、5.0eq.)を0℃で加え、生成した混合物を室温で5時間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、溶液を水、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、その後、減圧下濃縮した。粗生成物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜80%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.12 (s, 3H), 0.05 (s, 3H), 0.79 (s, 9H, 2.53 (s, 3H), 2.81 (s, 3H) 2.82 (s, 3H), 2.87 (s, 6H), 2.88 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 3.72(s, 3H), 3.73 (s, 3H), 5.82−5.89 (m, 1H), 6.82−6.90 (m, 3H), 6.94 (d, 1H), 7.83 (m, 1H), 8.37 (d, 1H);質量分析:798.7 (M+2Na)/2.
【0230】
b)ジクロロメタンおよび水(18:1)の溶媒混合物中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(0.34g)の溶液に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアン−p−ベンゾキノン(DDQ)(60mg)を添加し、生成した混合物を室温で2時間撹拌した。混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、その後、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、0〜100%の濃度勾配をつけた酢酸エチルのヘプタン溶液で溶出し、[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンAを白い固体として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.13 (s, 3H), 0.05 (s, 3H), 0.79 (s, 9H), 2.81 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.87 (s, 3H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 5.76− 5.83 (m, 1H), 7.05 (d, 1H), 7.88 (m, 1H), 8.34 (d, 1H);質量分析:701.2 (M+2H)/2.
【0231】
c)ジクロロメタン(10mL)中の[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA(0.27g)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(160g)を添加し、生成した混合物を室温で1時間撹拌した。それをジクロロメタンで希釈し、10%チオ硫酸ナトリウム溶液、飽和重炭酸ナトリウム溶液および塩水で洗浄した。溶媒を取り除いた後、0.27gの[(D)−MeAla]3−[3’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチル−Bmt]1−N−[トランス−4−オキソブタ−エニル]−Val5−シクロスポリンAを得た;1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm −0.10 (s, 3H), 0.06 (s, 3H), 0.81 (s, 9H), 2.83 (s, 3H), 2.84 (s, 3H), 2.88 (s, 3H), 2.90 (s, 3H), 2.93 (s, 3H), 3.16 (s, 3H), 6.18−6.25 (m, 1H), 6.90−6.97 (m, 1H), 6.99 (d, 1H), 8.39 (m, 1H), 9.44 (d, 1H).
【0232】
HCV活性
本発明の典型的な化合物をHCVに対する活性についてKriger et al., 2001, Journal of Virology 75:4614−4624, Pietschmann et al., 2002, Journal of Virology 76:4008−4021の記載を応用した方法を使用し、また米国特許第6,630,343号明細書に記載されたHCVのRNAコンストラクトを使用して試験した。化合物を、ヒト肝癌細胞株ET(lub ubi neo/ET)、安定したルシフェラーゼ(LUC)レポータを含有するHCVのRNAレプリコンで試験した。HCVのRNAレプリコンETは、ホタルルシフェラーゼ(LUC)の産生を促進するHCVの5’末端(HCV内部リボソーム結合配列(IRES)およびHCVコアタンパク質の最初の数個のアミノ酸を有する)、ユビキチンおよびネオマイシンホスホトランフェラーゼ(NeoR)融合タンパク質を含有する。ユビキチンの切断は、LUCおよびNeoRタンパク質を放出する。EMCVのIRES要素は、HCV構造タンパク質NS3−NS5の翻訳を制御する。NS3タンパク質は、HCVポリタンパク質を切断して、HCV複製に必要な成熟NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bタンパク質を放出する。レプリコンの3’末端にHCVの本物の3’NTRがある。LUCレポータの活性はHCV複製レベルに直接比例し、陽性対照の抗ウイルス化合物はLUCの端点を使用した再現可能な抗ウイルス反応をもたらす。
【0233】
化合物を、それぞれ0.03〜3μMまたは1〜100μMの範囲の、5つの半対数希釈濃度(half−log concenrations)でDMSOに溶解した。ET株の亜密集培地を、細胞数(細胞毒性)または抗ウイルス活性分析専用の96ウェルプレートに播種し、翌日、化合物を適切なウェルに添加した。72時間後の細胞が依然亜密集のとき、細胞を処理した。抗ウイルス活性をEC50およびEC90として示す。これは、ウイルス複製をそれぞれ50%および90%減少するのに有効な化合物の濃度である。化合物のEC50およびEC90値を、LUC活性由来のHCVのRNAレプリコンとして評価した、HCVのRNAレベルから導く。細胞毒性をIC50およびIC90として示す。これは、それぞれ細胞生存率を50%および90%阻害する化合物の濃度である。化合物のIC50およびIC90値を、比色分析を用いて、細胞数および細胞毒性の指標として算出した。LUCレポータの活性は、ヒト細胞株におけるHCVのRNAレベルと直接比例する。HCVレプリコンアッセイを、インターフェロン−α−2bを陽性対照として用いる平行実験において検証した。シクロスポリンをまた比較の目的で試験した。本明細書に開示の典型的な化合物は、HCVレプリコンをヒト肝細胞で阻害した。特に、本発明の化合物2および4〜10はEC50値が200nM未満であった。また、細胞毒性レベルを考慮した場合、このような化合物は安全域を示した(抗ウイルス剤IC50対細胞毒性EC50)。
【0234】
<シクロフィリン結合活性>
本明細書に開示の化合物のシクロフィリン阻害結合を、Quesniaux et al., Eur. J Immunol. 1987, 17:1359−1365に記載された方法を応用した競合ELISAを使用して求めた。D−Lys8−シクロスポリンA(D−Lys8−Cs)に結合したスクシニルスペーサの活性化エステルを、8位のD−リジル残基によってウシ血清アルブミン(BSA)に結合した。BSAを0.1MのpH9.0のホウ酸塩緩衝剤(1.4mL中4mg)に溶解した。ジメチルホルムアミド(0.6mL)に溶解した100倍のモル過剰なD−Lys8−Csを、BSAに激しい撹拌条件下で滴加した。カップリング反応を室温で穏和な撹拌で2〜3時間実行し、コンジュゲートをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)に対して広範囲に透析した。コンジュゲートタンパク質のアリコートのアセトン沈殿後、共有結合したD−Lys8−Csはアセトン溶液に残存せず、シクロスポリンの共有結合の範囲を算出した。
【0235】
マイクロタイタープレートを、D−Lys8−Cs−BSA共役物で被覆した(24時間4℃でPBS中2μg/mL)。プレートをTween(登録商標)/PBSで、またPBSのみで洗浄した。非特異的な結合をブロックするため、2%BSA/PBS(pH7.4)をウェルに添加し、37℃で2時間培養した。試験する化合物の5倍希釈シリーズを別のマイクロタイタープレートのエタノール中に生成した。出発濃度は、ヒト組み換えシクロフィリンでのアッセイのため0.1mg/mLであった。0.1μg/mLのシクロフィリン溶液198μLをマイクロタイターに添加し、その直後に2μLの希釈したシクロスポリンA(参考化合物として使用)または本発明の化合物を添加した。シクロスポリンAの無い被覆BSA−Cs複合体およびシクロフィリンの間の反応を一晩4℃で平衡にした。シクロフィリンを、PBSを含有する1%BSAに希釈し、4℃で一夜培養した抗シクロフィリンラビット免疫血清で検出した。プレートを上記のように洗浄した。次いで、結合したラビット抗体を、1%BSA−PBSに希釈し、37℃で2時間培養したアルカリホスファターゼに共有結合したヤギの抗ラビットIgGによって検出した。プレートを上記のように洗浄した。4−ニトロフェニルホスフェート(pH9.8のジエタノールアミン緩衝剤中1g/1)を用いて、37℃で1〜2時間培養した後、酵素反応は分光光度計を使用して405nmで分光測光法によって測定した。結果はEC50として現すことができ、本発明の化合物の濃度は50%阻害を達成する必要がある。本発明の化合物2および4〜9は、サイクロフィリンAに対してEC50値50ng/mL未満、サイクロフィリンDに対して60ng/mL未満であった。
【0236】
本明細書に開示の化合物を、Jurkat細胞におけるT細胞刺激(IL−2)について抗CD3および抗CD28の共刺激で試験した。全ての化合物は10μM(n=2)から出発して、0.0015μMの0.5−Log9点の滴定を有する。シクロスポリンA(コントロール)は、また500ng/mLから始めて0.5−Log9点の滴定を有する。試験すべき全ての化合物をジメチルスルホキシドに溶解した。細胞毒性を平行Almar Blueプレートで評価した。Jurkat細胞を96ウェルプレートの190μLの成長培地中に1ウェルあたり2×105細胞で播種した。細胞をRPMI1640培地、10%ウシ胎仔血清およびL−グルタミン中37℃で5%二酸化炭素を用いて培養した。培養から1時間後、細胞を固定抗CD3(0.4μg/ウェル)、抗CD28可溶(2μg/mL)で刺激した。6時間後、サンプル上清を採取し、−80℃に保存した。50μLサンプルの上清をIL−2に関してLuminex(登録商標)1プレックス分析を使用して試験した。本発明の化合物2および4〜10はIL−2値300ng/mL超を示した。同じ試験で、シクロスポリンAはIL−2値6.7ng/mLを有していた。
【0237】
<ミトコンドリア膜透過性遷移>
ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を、Ca2+によって誘導されたミトコンドリアの膨張を測定することによって求めた。方法はBlattner et al., 2001, Analytical Biochem., 295:220に記載された方法を応用した。ミトコンドリアをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で潅流して、血液を除去したラットの肝臓からサッカロース系緩衝剤におけるおだやかな均質化を用いた標準の方法を使用して調製し、その後分画遠心法によってまず細胞破片を取り除き、次いでミトコンドリアをペレットにした。膨張が150マイクロモルのCa2+(CaCl2の濃縮溶液の添加)によって誘発され、535〜540nmでの散乱を測定することによって観測した。代表的な化合物を膨張が誘発される5分前に添加した。EC50は本明細書の化合物の有無で膨張を比較して測定した。本発明の化合物2および4〜9のEC50値は0.5μM未満であった。
【0238】
本明細書に引用した全ての刊行物および特許出願は、それぞれの刊行物および特許出願を明確且つ単独に参考文献としてここに参照して援用する。本発明は、数々の好ましい実施形態を開示しているが一方、当業者はその趣旨から逸脱することなく、様々な修正、置換、省略および変更することができると解釈される。従って、本発明の範囲は下記の請求項の範囲およびそれに相当するもののみに制限する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】
(式中、Aは(E)−CH=CHRまたは−CH2CH2Rであり、Rはメチル、−CH2SH、−CH2(チオアルキル)、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
Bは、メチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
R1は:
R21で置換されたメチル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR22基で置換された直鎖または分岐鎖アルキル;
4〜8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルまたは3〜8個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR23基で置換された直鎖または分岐鎖アルケニル;
3〜6個の炭素原子を有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で置換された直鎖または分岐鎖アルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で置換されたシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコキシカルボニルを示し;
R2は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル
3〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキニルを示し;
R21は:
ハロゲン、ヒドロキシ;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;−OR5;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;NR3R4;若しくは
3〜6個の炭素原子を有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキルを示し;または
R21は、4〜6個の環原子を有する炭素に結合した飽和若しくは不飽和の複素環を示し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、該環はアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、カルボキシルおよびアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜4の置換基で任意に置換され、前記アルキルは、アミノ、N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノにより置換される;
R22およびR23は、同じか異なり、それぞれ:
ハロゲン;ヒドロキシ;−OR5;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;−NR3R4;−NR6(CH2)mNR3R4;同じか異なるアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、カルボキシルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択される1〜5の置換基で任意に置換されたベンジルを示し;または3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ;アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキル;
R3およびR4は、同じか異なり、それぞれ
水素;−C(=O)R5;−S(O)2R5;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルまたはアルキニル;または
3〜6個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルで任意に置換されたシクロアルキル;または
R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される他のヘテロ原子を任意に含み、該環はアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される同じか異なる1〜4の置換基で任意に置換され;
R5は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換されたアリール;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換されたヘテロアリール;
アリール環が、ハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシおよびハロアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基が1〜3個の炭素原子を有するアラルキル;または
ヘテロアリール環が、ハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシまたはハロアルキルによって任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基は1〜3個の炭素原子を含む、ヘテロアリールアルキル;
R6は、水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル、シアノまたはアルキルスルホニルを示し、
mは1〜4の整数であり;
nは0,1または2である)
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
R2はメチルを示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aは(E)−CH=CHR、Rはメチルまたはアルコキシカルボニル、Bはエチルを示す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R1は、
(a)R2基で置換された、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルであり、R22は請求項1に規定される;または
(b)4〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルまたはR23で置換された、3〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルであり、R23は請求項1に規定される、請求項1,2または3に記載の化合物。
【請求項5】
R22およびR23は、同じか異なり、それぞれヒドロキシ;−OR5;−NR3R4を示し、R3およびR4は同じか異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルであるか、または、R3およびR4はこれらが結合した窒素原子と共に、飽和の5または6員の飽和複素環を形成し、該環は窒素および酸素からなる群から選択される他のヘテロ原子を任意に含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA;または
[(E)−7−エトキシカルボニル]1−[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンAである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に規定されている一般式(I)の化合物を含む、組成物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に規定されている一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項9】
C型肝炎を治療するための、請求項1〜6のいずれか1項に規定されている一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に規定された一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を、被検体に投与する工程を含む、被検体においてサイクロフィリンを阻害する方法。
【請求項11】
請求項1に記載された一般式(I)の化合物を調製するプロセスであって、
(a)一般式(II)
【化2】
(式中、A,BおよびR1は請求項1に規定される)
の化合物を塩基で処理する工程、その後、生成したアニオン性化合物を一般式R2−Y(式中、R2は請求項1で規定され、Yは離脱基である)の化合物と反応させる工程;または
(b)一般式(III)
【化3】
(式中、A,BおよびR2は請求項1に規定される)の化合物を塩基で処理し、その後、生成したアニオン性化合物を一般式R1−Y(R1は請求項1で規定され、Yは前記に規定される)の化合物と反応させる工程;その後、任意に、一般式(I)の化合物を転換して、その薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を生成する工程を含むプロセス。
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】
(式中、Aは(E)−CH=CHRまたは−CH2CH2Rであり、Rはメチル、−CH2SH、−CH2(チオアルキル)、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
Bは、メチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
R1は:
R21で置換されたメチル;
2〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR22基で置換された直鎖または分岐鎖アルキル;
4〜8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルまたは3〜8個の炭素原子を有し、同じか異なる1以上のR23基で置換された直鎖または分岐鎖アルケニル;
3〜6個の炭素原子を有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で置換された直鎖または分岐鎖アルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で置換されたシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコキシカルボニルを示し;
R2は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル
3〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキニルを示し;
R21は:
ハロゲン、ヒドロキシ;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;−OR5;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;NR3R4;若しくは
3〜6個の炭素原子を有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキルを示し;または
R21は、4〜6個の環原子を有する炭素に結合した飽和若しくは不飽和の複素環を示し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、該環はアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、カルボキシルおよびアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜4の置換基で任意に置換され、前記アルキルは、アミノ、N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノにより置換される;
R22およびR23は、同じか異なり、それぞれ:
ハロゲン;ヒドロキシ;−OR5;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−C(=O)NR3R4;ホルミル;−C(=O)R5;−S(O)nR5;−NR3R4;−NR6(CH2)mNR3R4;同じか異なるアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、カルボキシルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択される1〜5の置換基で任意に置換されたベンジルを示し;または3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ;アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1以上の置換基で任意に置換されたシクロアルキル;
R3およびR4は、同じか異なり、それぞれ
水素;−C(=O)R5;−S(O)2R5;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルまたはアルキニル;または
3〜6個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルで任意に置換されたシクロアルキル;または
R3およびR4は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される他のヘテロ原子を任意に含み、該環はアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される同じか異なる1〜4の置換基で任意に置換され;
R5は:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換されたアリール;
アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換されたヘテロアリール;
アリール環が、ハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシおよびハロアルキルからなる群から選択される同じか異なる1〜5の置換基で任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基が1〜3個の炭素原子を有するアラルキル;または
ヘテロアリール環が、ハロゲン、アミノ、N−アルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、アルコキシまたはハロアルキルによって任意に置換され、アリール環に結合したアルキレン基は1〜3個の炭素原子を含む、ヘテロアリールアルキル;
R6は、水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル、シアノまたはアルキルスルホニルを示し、
mは1〜4の整数であり;
nは0,1または2である)
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
R2はメチルを示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aは(E)−CH=CHR、Rはメチルまたはアルコキシカルボニル、Bはエチルを示す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R1は、
(a)R2基で置換された、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルであり、R22は請求項1に規定される;または
(b)4〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルまたはR23で置換された、3〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルケニルであり、R23は請求項1に規定される、請求項1,2または3に記載の化合物。
【請求項5】
R22およびR23は、同じか異なり、それぞれヒドロキシ;−OR5;−NR3R4を示し、R3およびR4は同じか異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキルであるか、または、R3およびR4はこれらが結合した窒素原子と共に、飽和の5または6員の飽和複素環を形成し、該環は窒素および酸素からなる群から選択される他のヘテロ原子を任意に含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−(3’,4’−ジメトキシ)ベンジルオキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ヒドロキシ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチル−4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[4−ヒドロキシブチル]−Val5−シクロスポリンA;
[(D)−MeAla]3−N−[4−ジメチルアミノブチル]−Val5−シクロスポリンA;または
[(E)−7−エトキシカルボニル]1−[(D)−MeAla]3−N−[トランス−3−メチルブタ−2−エニル]−Val5−シクロスポリンAである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に規定されている一般式(I)の化合物を含む、組成物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に規定されている一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項9】
C型肝炎を治療するための、請求項1〜6のいずれか1項に規定されている一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に規定された一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を、被検体に投与する工程を含む、被検体においてサイクロフィリンを阻害する方法。
【請求項11】
請求項1に記載された一般式(I)の化合物を調製するプロセスであって、
(a)一般式(II)
【化2】
(式中、A,BおよびR1は請求項1に規定される)
の化合物を塩基で処理する工程、その後、生成したアニオン性化合物を一般式R2−Y(式中、R2は請求項1で規定され、Yは離脱基である)の化合物と反応させる工程;または
(b)一般式(III)
【化3】
(式中、A,BおよびR2は請求項1に規定される)の化合物を塩基で処理し、その後、生成したアニオン性化合物を一般式R1−Y(R1は請求項1で規定され、Yは前記に規定される)の化合物と反応させる工程;その後、任意に、一般式(I)の化合物を転換して、その薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を生成する工程を含むプロセス。
【公表番号】特表2013−513595(P2013−513595A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542620(P2012−542620)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052057
【国際公開番号】WO2011/070364
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(508296370)サイネクシス,インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052057
【国際公開番号】WO2011/070364
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(508296370)サイネクシス,インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
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