新規生体トレーサー及びその濾過設備の制御における使用
本発明は、新規生体トレーサー、これを調製する方法、及び当該生体トレーサーを検出する方法、及び濾過系をモニタリングする方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
膜濾過方法は、液体を濃縮又は精製する多くの分野で使用されている。幾つかの用途(水処理、農業-食料産業)において、使用中の膜の状態(完全性(integrity)とも言う)をモニタリングできる性能は、最終産物の品質を保証するのに重要である。
【背景技術】
【0002】
例えば、濾過系を備えた上水道及び処理施設において、生産される水中の生物的汚染物質及び他の群体(ウイルス、細菌等)の混入を制限することが言及され得る。膜技術(特に限外濾過)は、ウイルス除去能力に優れていることから、広く使用される。
【0003】
濾過系の除去(又は保持)率は、保持される化合物のパーセンテージにより定義される。
【0004】
処理設備のモニタリング及び品質を保証するためには、保証される処理設備の衛生レベルを向上させ、また化学的殺菌剤の必要性を減少させるために、濾過系の保持性能のレベルの客観的な定量が可能となるように、使用される濾過系による保持を、直列的に(導入に直結して)、又は動的に(時間の関数として)、特徴付けられることが必要である。
【0005】
現在、膜カットオフ閾値(即ち標的化合物の保持率が90%となること)は、PEG(ポリエチレングリコール)やデキストラン等のポリマー又はタンパク質型の極小のトレーサーを利用して評価されている。これらのトレーサーは、サイズ、形状又は密度のいずれかにおいて、ウイルスと異なる特徴を有する。故に、それらは、濾過の際のウイルスの挙動を模倣するのに不適切で、そのため、濾過の際の膜系の保持動態を十分に特徴付けることが出来ない。よって、容易に検出可能かつ定量可能な、そして濾過におけるウイルスの挙動を最も良好に再現できるトレーサーを提供する必要がある。
【0006】
バクテリオファージ(ファージとも呼ぶ)は、ヒト及びその周囲に病原性を有しない、細菌のウイルスである。これらは、膜系のウイルス保持を定量するための参照微生物としてしばしば使用される(Membrane Filtration Guidance Manual: Environmental Protection Agency, 2005; US 5 645 984 A、及びUS 5 731 164 A)。これらは、サイズ、形状、及び表面状態の観点で、水により運搬される病原性ウイルスと極めて類似している。しかしながら、バクテリオファージを定量する既存の方法(溶解プラークカウント、定量PCR、フローサイトメトリー等)は、標的の装置において濾過される量を十分に迅速かつ的確に表示するものではない。
【0007】
病原性ウイルスの代替物は、文献中で想定されている。電位差測定法により検出される金ナノ粒子は、特に注目される(Gitis et al, Journal of Membrane Science, 276, 2006, 1999-207)。しかしながら、サイズは同様であっても、これらの粒子は、ウイルスよりも密度が大きく、表面がより滑らかであるため、ウイルスを模倣しない。加えて、それらは変形性が遥かに劣る。
【0008】
他のアプローチにおいて、細菌等のトレーサーも知られており、それらの表面は、磁力により回収及び検出が可能となるように、常磁性体の粒子で修飾されている(US 2003/168408)。しかしながら、前記トレーサーによる検出の実施は、依然として困難である。他の研究において、修飾されたバクテリオファージもトレーサーとして想定されている(Gitis et al., Water Research, 36(2002), 4227-4234 and application WO2007/046095)。提案されている修飾は、フルオロメトリーによる修飾バクテリオファージの直接検出を可能とする、MS2バクテリオファージ表面上への蛍光色素のグラフトである。しかしながら、これに関するアプローチは、解析可能な体積が小サイズとなるため、なおも限定的である(最大1mlで、全ての生物懸濁物の強い汚染の性質のため、フルオロメトリーセルの継続的な供給は不可能である)。T4バクテリオファージの表面上への酵素のグラフト(前記蛍光色素の200倍超の分子量を有する)も想定されている。この場合、主要な限定要因はT4ファージのサイズが大きくなることである(長さ150nm及び幅78nm)ため、斯かる旧式のトレーサーは、少量の体積の解析に用いられる(20マイクロリットルのオーダー)、限外濾過又はナノ濾過、及び関連する検出方法(ECL化学発光)に利用される。前記トレーサーにおいて、著者らは、記載されたトレーサーの特徴を提供しておらず、そして試料中に存在するトレーサーの数を定量する方法も、検出閾値を提供する方法も記載していない点に注目すべきである。
【0009】
故に、生体トレーサーにおいて、ウイルスを可能な限り模倣し、迅速で持続的な、大容量にも適用できる検出方法を提供ことが望まれる。また、前記トレーサーの再現可能かつ定量可能な特徴を保証できることも望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
故に、本発明は、生体トレーサーをアンペロメトリーにより検出する新規方法であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、前記方法に関する。
【0011】
故に、分析対象試料中の生体トレーサーを検出するための本発明の方法は、好ましくは;
アンペロメトリーセルを調製する工程と、
-発生した電流をアンペロメトリーにより測定する工程と
を含み、
当該セルが:
-作用電極、
-対電極、
-参照電極を有し、
これらの3つの電極が定電位-定電流により接続されており;
-分析対象試料及び上記で定義された1つ以上の生体トレーサーを含む溶液、
-電解質、
-酸化剤、
-電子供与体(R)を有する。
【0012】
好ましくは、前記電解質は、溶液のpHを固定する緩衝剤を含有する。
【0013】
好ましくは、本発明の検出方法は、生体トレーサーの検出閾値の下限が、通常102以上、より好ましくは104pfu/mL以上である。
【0014】
本発明に適したファージとして、その表面に任意の種類のタンパク質を有するものが挙げられる。
【0015】
使用されるファージは、好ましくは、細菌株中で容易に増幅できるファージの中から選択される。好ましくは、選択されるファージは、非病原性細菌中での複製サイクルを有する。これらのファージは、任意の公知のファージファミリーから選択できる。ファージの種類(サイズ)は、好ましくは、特徴付けられる濾過の種類に関連して選択される(具体的には膜のカットオフ閾値に関連する)。マイクロ濾過(MF)、限外濾過(UF)及び/又はナノ濾過(NF)の種類の濾過において、使用されるファージは、最も好ましくはMS2ファージである。しかしながら、よりサイズ又は分子量の大きなファージも、マイクロ濾過手段において適している場合がある。
【0016】
故に、具体的なMS2ファージは、平均直径30nmの球状のウイルスで、キャプシドと呼ばれるタンパク質の殻で囲まれ、本発明に適している。当該バクテリオファージは、ATCC又はパスツール研究所等の機関から取得できる。例えば、MS2バクテリオファージは、ATCCの15 597-B1株に対応する。
【0017】
故に、標識したファージは、生体トレーサーとも呼ばれる。
【0018】
ファージ及びバクテリオファージという用語は、相互に変換可能で、いずれもバクテリアに感染するウイルスを指す。
【0019】
ビオチン分子は、ファージキャプシドの1つ以上のタンパク質と結合する。使用されるビオチンは、反応性の末端基を提供するように改変されている。前記改変されたビオチンは、本明細書中では、活性化ビオチンと称する。ビオチンは、極めて小型の親水性分子であって、作用する結合部位に向かって容易に分散する。タンパク質と共有結合を形成する能力及びサイズの小ささのため、生化学の試験に広く使用される。
【0020】
使用されるビオチンは、使用されるファージのキャプシドタンパク質の優先部位(priority site)と反応するように活性化される。例えば、リシンアミノ酸中に存在するような第一級アミン基-NH2と反応するように活性化されたビオチン分子が、アミド型の共有結合を形成するように、MS2ファージに対して選択される。ファージのキャプシドは、1つ以上のリシンを含有するタンパク質で構成されているのが有効な場合がある。この種類の結合のためのアクセス可能なリシン部位をそれぞれ有する180個の同一のタンパク質でキャプシドが構成されるMS2ファージは、これに当てはまる(Lin et al., J. Mol. Biol., 1967, 25(3), 455-463)。
【0021】
例えば、活性化ビオチン分子は、Perbio Scienceから商業的に取得することができ、例えばEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinが挙げられる。
【0022】
酵素プローブは、共有結合に類似の強力な相互作用(高い結合定数を特徴とする)を介して、広範なpH及び温度範囲にわたり、活性化ビオチンと結合する。
【0023】
酵素プローブとして:
-活性化ビオチンと相互作用できるタンパク質担体、及び
-酸化還元酵素型の酵素
からなる、任意の複合体を使用することが出来る。
【0024】
酵素プローブ(酵素/タンパク質担体の複合体)の選択は、一般に:
-特徴付けられる膜との関係で所望される生体リアクターの最終的なサイズ、
-酵素検出感度、及び
-前記分子と特徴付けられる濾過系の膜との相互作用
に依存する。
【0025】
前記酵素プローブのタンパク質担体は、例えば、ニュートラビジン、アビジン又はストレプトアビジン等の中から選択できる。
【0026】
酵素として、強力な活性及び分子量の小ささから免疫学で一般に使用される酸化還元酵素である、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)が有力である。
【0027】
故に、酵素プローブとして、例えばPerbio Scienceにより販売されている、ニュートラビジン-HRP複合体が特に好ましい。
【0028】
好ましくは、本発明の生体トレーサーは:
-遊離プローブの存在しない懸濁物の形態で入手可能で、及び/又は
-ファージあたりにグラフトする平均の酵素プローブ数が、合成の条件に応じて20〜150個、好ましくは40〜60個であって、及び/又は
-生体トレーサーの平均の触媒活性kcatが、2.104〜4.104min-1である。
【0029】
本発明の方法を実施するとき、電子供与体Rの酸化反応は、酸化剤及び本発明の生体トレーサーの存在下で起こり、酸化されて対応する酸化供与体(oxidized donor)Oとなり、ここで、当該酸化反応は、前記生体トレーサーにより触媒される。より正確には、当該酸化反応は、前記生体トレーサーの酵素プローブの酵素により不可逆的に触媒される。
【0030】
そして、形成された前記酸化供与体Oは、作用電極に向かい分散する。分極電圧<<Vpolarisation>>は、酸化-還元対である酸化供与体O/電子供与体Rの平衡電位よりも低く、作用電極と参照電極の間に適用され、作用電極付近に到達した酸化供与体Oを電子供与体化合物Rに還元して、還元電流I(カソード電流と呼ばれる)を生じさせる。一定時間測定した還元電流Iは、溶液中で形成された酸化供与体Oの濃度に正比例し、従ってグラフトされた酵素プローブの総量にも正比例し、従ってグラフトされた酵素の総量にも正比例する。
【0031】
故に、前記検出方法は、定性的であることも定量的であることも出来る。
【0032】
電子供与体Rとして、ヨウ化物又はテトラメチルベンジアジン(一般にTMBと呼ばれる)が、特に注目される。酸化剤として適切なのは、生体トレーサー上にグラフトされた酵素プローブの酵素により触媒される酸化還元反応を可能とする酸化剤である。例えば、過酸化水素はHRP酵素においてとりわけ適している。HRP酵素は、過酸化水素の存在下でRの酸化反応を高効率で不可逆的に触媒して、対応する酸化供与体O及び水を形成する。この反応は、以下の式で表される:
電子供与体(R)+H2O2→酸化電子供与体(O)+H2O
【0033】
電子供与体(R)の濃度に対する酸化剤の濃度の比率は、1〜10であってもよい。この選択は、酸化剤の存在下での電子供与体Rの自然発生的な酸化反応を制限するのに特に貢献する。
【0034】
前記電解質は、NaCl、KCl等の、通常使用される任意の電解質の中から選択できる。電解質の濃度は、通常1M未満、好ましくは0.3M未満である。分析対象溶液のpHは、電子供与体Rの自然発生的な酸化を最小限にしつつ、グラフトされた酵素の活性を最大限に促進するように選択される。当該酵素がHRPで電子供与体がTMBである場合、pHは5〜7に固定される。
【0035】
本発明に適した緩衝剤は、クエン酸-リン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤等の、通常使用される任意の緩衝剤の中から選択できる。
【0036】
作用電極は、回転円盤電極(RDE)であるのが有利で、特にプラチナ、ガラス状炭素又は金で構成されてもよい。作用電極の活性表面の寸法は溶液中の酸化供与体Oの量に依存し、従って分析対象溶液の体積に依存するため:溶液の体積が大きくなるほど、選択できる活性表面は大きくなる。
【0037】
対電極は、プラチナ電極が有利である。一般に、作用電極の表面は対電極の表面と比較して小さい。故に、例えば、プラチナ対電極の表面は、作用電極の表面の5〜10倍の大きさであってもよい。参照電極は、電気化学で通常使用される参照電極(例えばAg/AgCl)から選択できる。
【0038】
分極電圧は、通常、電子供与対Rの自然発生的な酸化に最も不利であり、かつ作用電極での酸化供与体Oの還元に最も有利である。
【0039】
定電圧又は定電流モードで実施される任意の定電圧-定電流の部品を使用することができるが;好ましいのは、定常的な測定が可能な定電流モードである。一般に、解析時間は1〜30分である。
【0040】
また、本発明は、濾過系をモニタリングする方法にも関する。
【0041】
前記方法は:
-系の供給物(feed)に、1つ以上の生体トレーサーを加える工程であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、工程、
-本発明の前記濾過系の透過物(permeate)(又は保持物(retentate))中の、生体トレーサーを検出する工程
を含む。
【0042】
好ましくは、透過物(又は保持物)中の生体トレーサーを検出する前記工程は、透過物中の試料において行われる。
【0043】
分析対象試料(例えば透過試料)中の電流の検出は、排水中のウイルスを模倣する生体トレーサーの存在の特定を可能とする。
【0044】
透過物(又は保持物)中の生体トレーサーを定量する必要がある場合、特に、測定された電流を参照値と比較する工程が加えられる。
【0045】
加えて、トレーサーの量(又は濃度)との関連での電流の調整による参照値の取得は、電流を測定するだけで、解析された試料中の生体トレーサーの量(又は濃度)へのアクセスを提供する。
【0046】
特定の態様において、前記モニタリング方法は、前記濾過系による除去のパーセントの決定を可能とする。除去パーセントAbは、供給物中の生体トレーサーの濃度Caと透過物中の生体トレーサーの濃度Cpとの間の比率の常用対数(decimal logarithm)として定義される:
Ab=log(Ca/Cp) [等式 0]
【0047】
このために、前記方法は、更に、
-前記系の供給物中の生体トレーサーを検出する工程、続いて
-前記系の透過物及び/又は保持物中の生体トレーサーを検出する工程、続いて
-透過物(又は保持物)中の電流と、供給物中で得られる電流とを比較する工程
を含む。
【0048】
好ましくは、前記手順は、供給物及び透過物(又は保持物)のサンプリングを必要とするが、解析は、公知のアンペロメトリーセルを使用して、インラインで行うことが出来る。
【0049】
本発明の更なる目的は、酵素活性を検出するための公知のアンペロメトリーセルの使用に関する。
【0050】
前記生体トレーサーは、標識したMS2型のバクテリオファージからなり、例えば:
-前記バクテリオファージはキャプシド表面上にタンパク質を有し、
-活性化ビオチンの分子が1つ以上の当該タンパク質にグラフトし、そして
-1つ以上の酵素プローブが当該ビオチンと結合する。
【0051】
故に、本発明の更なる目的は、標識したバクテリオファージからなる生体トレーサーに関し、ここで前記バクテリオファージはその表面に、当該バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた、1つ以上の酵素プローブを有するMS2ファージである。
【0052】
好ましくは、本発明の生体トレーサーは、上記に記載した態様を含み、本発明の方法を参照する。
【0053】
本発明の更なる目的において、本発明は、前記生体トレーサーを調製する方法にも関する。
【0054】
故に、当該方法は、以下の工程:
-ラベルされるバクテリオファージの表面上に存在する1つ以上のタンパク質上に活性化ビオチンを不動化する工程、続いて
-当該ビオチンに1つ以上の酵素プローブをグラフトさせる工程
を含む。
【0055】
特定の側面において、本発明の方法は、更に、1個あたりのバクテリオファージにグラフトされたプローブの平均数を定量する工程を含む。従って、本発明の方法は、前記生体トレーサーの特徴付けを可能とする。
【0056】
ビオチンの不動化及び酵素プローブの結合の技術は、当業者に周知である。好ましくは、前記活性化ビオチンの分子は、バクテリオファージの表面のタンパク質上に不動化されている。
【0057】
一つの好ましい態様において、過剰のビオチンが使用されることで、ラベルされるバクテリオファージの表面上のタンパク質の各アクセス可能なリシン上に活性化ビオチンが不動化される。
【0058】
また、前記方法は、その後の精製工程も含み、好ましくは、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(HPLC-SEC)を用いて、遊離酵素プローブを分離、回収及び評価する。グラフトされたプローブの質量は、クロマトグラフィーカラムに注入された酵素プローブの既知の質量と、カラムの排出口で回収された遊離酵素プローブの質量の差から推定できる。グラフトされた酵素プローブの質量の値は、ファージあたりにグラフトされた酵素プローブの平均数を評価するのに使用できる。前記定量は、精製が透析により実行された場合は行うことが出来ない。プローブが評価出来ない程に透析水中に希釈されるからである。
【0059】
必要に応じて、精製工程は、ファージ上の活性化ビオチンの不動化の後に行われて、ファージは、グラフトしていない活性化ビオチン分子から分離される。この精製工程は、HPLC-SECを使用して有利に行われる。
【0060】
一つの態様において、前記方法は、標識されるファージを生産する予備的工程を含んでもよい。この生産工程は:
-ラベルされるファージを増幅する工程;
-増幅された当該ファージを懸濁液中に置く工程;
-当該ファージを精製する工程
を含む。
【0061】
前記ファージは、宿主細菌の存在下で増幅され、例えば、ATCCにより推奨される固相プロトコールに従う。この増幅は、液体又は固体培地中で実行できることに注目されたい。増幅条件及び時間は使用されるファージの種類に依存し、当業者は容易に決定できる。
【0062】
こうして増幅したファージを、生理食塩水又は好ましくは中性リン酸緩衝生理食塩水(一般にPBSとも呼ばれる)等の液体培地中に映して懸濁する。
【0063】
精製工程は、クロロホルムの使用等による細菌の溶解、及び1回以上の遠心分離、続いて濾過の工程を含んでも良い。こうして精製されたファージは、液体培地、好ましくはPBS中で保存できる。
【0064】
また、前記方法は、例えば、水性培地中で、HPLC-SEC又はファージカウント技術を使用しての、増幅及び精製したファージのカウントの決定を含んでもよい(ISO 10705-1の基準の通り)。
【0065】
また、本発明の更なる目的は:
-1つ以上の生体トレーサーを含む溶液であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、溶液;及び
-作用電極、対電極及び参照電極を含むアンペロメトリーセル、
-電解質、
-電子供与体R、及び
-酸化剤
を含むキットに関する。
【0066】
前記電子供与体、酸化剤、電解質、緩衝剤、作用電極、対電極及び参照電極は、本発明の生体トレーサー検出方法に好ましいものの中から選択できる。
【0067】
前記溶液は、最大で1012 pfu/mLの濃度の生体トレーサーを含んでもよい。
【0068】
好ましくは、前記電解質は、緩衝剤を含む。
【0069】
本発明は、下記図面を参考にすることで、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の生体トレーサーの模式図を示し、参照1は、ファージのキャプシドのタンパク質を示し、2は活性化ビオチンの分子を示し、4は、5に示されるHRP C酵素の1つ又は2つの分子に共有結合する酵素プローブ(例えばニュートラビジン分子)のタンパク質担体を示し、3は酵素プローブを示す。
【0071】
【図2】図2は、実施例1で得られるファージのバッチのサイズ分布を示す(増幅及びクロロホルムによる抽出の後)。
【0072】
【図3】図3は、増幅されクロロホルムで抽出された天然のファージの懸濁物の、濃度C0、C0/4及びC0/10の254nmでのクロマトグラムを示し、1は天然のファージ、2はタンパク質ドメインのピークを表す。
【0073】
【図4】図4は、ビオチン単独(曲線1)、天然のファージ(曲線2)、ビオチン標識ファージ(曲線3)の254nmでのクロマトグラムを示す。
【0074】
【図5】図5は、酵素プローブ単独(曲線1)、精製したビオチン標識ファージ懸濁液(曲線2)、生体トレーサーと過剰のプローブの混合物(曲線3)、プローブが不足している場合の生体トレーサーとビオチン標識ファージの混合物(曲線4)の、210nmでのクロマトグラムを示す。
【0075】
【図6】図6は、検出方法を模式的に記載したもので、例示目的であるが、MS2ファージを使用して、透過物が解析の対象である。あるいは、保持物又は供給物が解析される場合や、他のファージが使用される場合もある。
【0076】
【図7】図7aは1つの同一のトレーサー供給物のアンペロメトリー曲線の例を示し(4つの試料で体積を増大させている);図7bは、当該実施例に関する較正線を示す(測定セル中トレーサー濃度の関数として測定される勾配を与え、天然ファージカウントユニットで表される)。
【0077】
【図8】図8は、トレーサーと過剰のプローブの混合物の210nmでのクロマトグラムであり(図5の曲線3)、T1及びS1においてそれぞれトレーサー及びプローブのピークを示し、各ピークの回収された体積(collected volume)を示す。
【0078】
【図9】図9は、ファージ表面にグラフトさせたプローブの量を評価するのに利用される方法の詳細を示す。
【0079】
【図10】図10は、供給物並びにマイクロ濾過(MF)及び限外濾過(UF)膜による濾過の後に回収した透過物を解析することにより得られるアンペロメトリー応答の例を示す。
【0080】
【図11】図11は、飲用可能な水を生産するために使用される限外濾過中空糸の損傷のあるモジュールを用いて得た保持の動的特性の例である。15本の繊維からなる当該モジュールは、15本の繊維の一本に25μmの環状の傷を形成して、意図的に傷を付けてあった。この実験において、トレーサーの増量は、具体的には合計の濾過時間の3分の1あたりで行われ(膜透過圧が定常状態になる前に行われる)、透過物は、解析の為に濾過の間に回収された。濾過の間に回収された透過物において測定したトレーサー濃度は、濾過の時間の関数として示される。
【実施例】
【0081】
下記実施例は、本発明の例示を目的としており、限定の意図はない。
【0082】
実施例1:生体トレーサーの調製
生体トレーサーは、図1に図示されている。
試薬:
-MS2バクテリオファージ(ATCC、15 597-B1株)
-非病原性E. coli K-12細菌(LISBPから入手可能)
-活性化ビオチン(Perbio Science, EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin, ref. 21335)
-ニュートラビジン-HRP型の酵素プローブ(Perbio Science, ImmunoPure NeutrAvidin, HRP Conjugated, ref. 31 001)
-市販の中性PBS緩衝剤(Perbio Science, BupH Phosphate Buffered Saline Packs, ref. 28 372)
-ピロガロール(Sigma Aldrich, ref. 25 4002)
-過酸化水素(Roth, Hydrogen Peroxide 30 % 安定化済み, ref. 8070)
-緩衝剤及び電解質を生産するのに必要な塩:
NaCl (Roth, ref. 3957)
Na2HPO4, 2H2O (Roth, ref. 4984)
NaH2PO4, 2H2O (Roth, ref. T879)
【0083】
使用する機材
-プレートスペクトロフォトメーター(Multiscan Ascent)
-Akta-Purifier液体クロマトグラフィー装置及びUV測定(210、254及び280nm)及び回収システム(GE Healthcare)
-サイズ排除液体クロマトグラフィーカラム:Superose6カラム(GE Healthcare, ref. 10/300 GL)
-NanoSizer ZS パーティクルサイザー(Malvern Instruments)
【0084】
方法:
-固相ファージ増幅用のATCCプロトコール
-水性培地中のファージカウント用のISO 10 705-1標準
【0085】
トレーサーを得るための第一の工程は、濃縮され、精製され、カウントされたファージの懸濁物の取得である。
【0086】
ファージの精製
ATCCプロトコール等の公知の方法を使用して、濃縮ファージが得られる。増幅したファージの懸濁物の精製は、全ての細菌の破片を除去し、及び/又は宿主細菌中に依然として含まれるファージを放出させるのに必要である。細菌の破片は、活性化ビオチンの分子と反応し得るリシン部位をも含む。
【0087】
二つの精製工程が必要となる。第一の工程は、クロロホルムを用いた抽出工程であり、バクテリオファージにダメージを与えずに残った細菌を溶解する(Adams, Bacteriophages, Intersciences Publishers, 1959)。当該クロロホルム/懸濁物の混合物を、9000rpmで2回遠心分離する。上澄を回収し、滅菌0.2ミクロンフィルターで濾過する。懸濁液を、中性PBS懸濁液中で、タンパク質吸着現象を抑えるためにガラス容器に入れて、4℃で保存する。ファージの保存条件は、文献中のデータに従い、長期間キャプシドの劣化を抑えるような条件が選択された。
【0088】
ファージのサイズを定量するのに、粒子サイズの特定は、Nano ZS ZetaSizer (Malvern)を使用して実行された(Figure 2)。サイズ分布曲線は、平均値31nm(5回試行した数値の平均)の単一の再現可能なピークを示す。これは、直径が文献に記載の値と合致していることを示す。
【0089】
サイズ排除液体クロマトグラフィー(HPLC-SEC)は、取得された懸濁液中のファージの濃度を定量するのにも使用できる(図3)。当該解析は、5〜5000kDaの範囲の分子量の分解能を有するカラム(最大限度で40000kDa)を使用して行われる。天然のMS2ファージの分子量は、3600kDaである(Kuzmanovic et al., Structure. 2003 Nov; 11(11):1339-48.)。
【0090】
溶出液は、中性PBS緩衝剤である。UVスペクトロフォトメトリーを使用して、検出が行われる。UV254nmで測定された吸光度を、溶出した体積との関数として示す。溶出した体積が小さいものほど、この体積に対応する化合物の分子量は大きい。図3において、11.3mLあたりにある溶出ピーク1は、天然のファージに相当する。ピーク2は、細菌の溶解物に由来する、又は増幅したファージを懸濁液に移したときに付いてきた固体培養培地に由来する可能性が高いタンパク質に相当する。ピーク1の面積は、試料中の化合物の濃度に正比例し、HPLC-SEC技術も、ファージ懸濁物の定量に使用出来る。
【0091】
また、ファージ懸濁物は、9.5〜14mLの溶出画分を回収することにより、タンパク質を排して精製できる。しかしながら、精製は、ファージ懸濁液を希釈しないように行うことは出来ない。
【0092】
カウント
精製されたファージの濃度の正確に決定することで、トレーサーの濃度の決定が可能となる。精製されたファージの懸濁液のカウントは、グラフト工程の前に行うことができる。プロトコールは、ISO 10 705-1の標準に従う。
【0093】
そして、生体トレーサーを取得する第二の工程は、予め取得した(即ちファージの増幅、クロロホルムによる抽出、遠心及び0.2μm濾過を経て)ファージの懸濁物のビオチン分子による標識、及びHPLC-SECによるグラフトしなかったビオチン分子の除去からなる。
【0094】
大過剰に添加された活性ビオチンを数mLのファージ懸濁物中に直接溶解することにより、試薬間の接触を促進する。当該反応は、室温、中性pH(即ちファージ保存用のpH)及び遮光の条件で、ガラス容器中で行う。当該混合物を1時間15分攪拌した後、4℃で一昼夜以上静置する。
【0095】
グラフトしなかったビオチン分子を除去するために、グラフト反応の後、当該混合物を、HPLC-SECで精製する。溶出液は尚も中性PBSである。図4にクロマトグラムを示す。
【0096】
当該図は、3つの曲線を示す:
-曲線1:ビオチン単独のクロマトグラムで、20mLの領域に当該分子の特徴的なピークを示す。
-曲線2:グラフト前のファージ懸濁物のクロマトグラムで、11.3mL周辺にファージの特徴的なピークを示し、20mL以後に当該懸濁物の残留タンパク質のピークを示す。
-曲線3:グラフト後の懸濁物のクロマトグラムで、11.3mL周辺にグラフトファージに相当するピークを示し(ビオチン分子のグラフトがもたらす分子量の変化は、天然のファージとグラフトファージとをクロマトグラムで見分けることが出来ない程度に僅かである[2.8%])、そして20mL超の位置に過剰のビオチンに相当する飽和ピークを示す。
【0097】
ビオチン分子により標識されたファージに相当する画分として9.5〜14mLがガラスチューブに回収され、次の酵素プローブによる標識のために、4℃で保存する。この段階で、ビオチン分子による標識の成否を判断することはできない。酵素プローブとの反応後の混合物の特定により初めて、このグラフトの効率の判定が可能となる。
【0098】
続いて、第三の工程は、上記で得られたビオチン化ファージへの酵素プローブのグラフト、及びグラフトしなかった酵素プローブの除去からなる。酵素プローブは超純水中で再構成され、上記ビオチン標識ファージの画分に大過剰で添加される。当該反応は、室温、中性pH、遮光で、攪拌(120rpm)しながら30分間行われる。
【0099】
グラフトしなかった酵素プローブを除去するために、反応後の混合物を、HPLC-SECで精製する。前記生体トレーサーの分子量は、5000kDa(酵素プローブの分子量を考慮する)を超えるが40000kDa(クロマトグラフィーカラムの最大限度)を下回ると推定され、それらは全排除ピーク(exclusion peak)から回収することが出来る。溶出液は、依然として中性のPBSである。
【0100】
酵素プローブの感度が最も良好な波長である210nmでクロマトグラムを得る(図5)。当該クロマトグラムは:
-酵素プローブ(曲線1)は、約15mLにピークの中心が来ることを特徴とする。
-HPLC-SECにより精製されたビオチン化ファージの懸濁物(曲線2)は、前述のように11.3mL周辺にピークが来ることを特徴とする。
-大過剰の酵素プローブをグラフトさせて合成した生体トレーサーの懸濁物(曲線3)は、8.5mL周辺に当該生体トレーサーのピークがあり、過剰の酵素プローブのピークも認められる(ピークの中心が15mlの位置に来る)(後者のピークと曲線1のピークとの間に非常に僅かなオフセットが見られるが、これは両試験に使用されるプローブのバッチが完全に同一の特性を有していなかったからである)。
【0101】
曲線2及び3を比較して、ビオチン化ファージのピーク(11.3ml)が最小の体積(8.5ml)の位置にまで顕著にシフトしていることが認められる。ΔV=2.8mlで、相当な解離である。これは、天然のファージの分子量の増大と解釈され、並びにビオチン及び酵素プローブのグラフトの効率、即ち生体トレーサーの取得を保証するものである。
【0102】
添加される酵素プローブの量が不足していると、HPLC-SEC解析で、酵素プローブがグラフトしていないビオチン化ファージのピークが顕著になる(曲線4、8.5mlのピークショルダー及び11mlのピーク)。
【0103】
生体トレーサーの回収は、7.5ml〜10mlの溶出体積において行われる(曲線3)。回収されたバッチの活性は、選択された酵素の活性を適切な基質を用いて試験することによりスペクトロフォトメトリーにより定量的に特定される。例えば、HRP活性(酸化還元酵素)はピロガロール及び過酸化水素の反応で酵素活性の存在下で染色した生産物が生じることにより評価される。これらの陽性の定量試験により、迅速に酵素の存在及び活性が確認され、並びに良好な生体トレーサーの生産が示唆される。
【0104】
また、生体トレーサーは、グラフトされたプローブの量を決定するために、及び生体トレーサーの触媒活性を測定するためにも、定量的に特定される。HPLC-SECによる生体トレーサーの精製は、過剰なプローブに相当する画分を効率的に回収できる。そして、このフラクションは、当業者に周知の技術を使用して、スペクトロフォトメトリーによりアッセイされる。グラフトされたプローブの質量は、クロマトグラフィーカラムに注入した既知のプローブの質量と回収された過剰のプローブの質量の差から推定される。グラフトされた酵素プローブの質量の値から、ファージあたりにグラフトされたプローブの平均数を評価できる。必要に応じて、トレーサーの量をグラフトされたプローブの量で表現することも可能で、この場合、当業者に周知の技術を使用して、グラフトされたプローブの触媒活性(言い換えると、生体トレーサーの触媒活性)のスペクトロメトリーによる測定が可能である。同一の実験を、実施例2の方法に従い、アンペロメトリーを使用して行うことも出来る。前記精製方法の効率を保証するために、生体トレーサーのバッチの精製が連続して行われたことに留意されたい。
【0105】
グラフトされたプローブの定量の一例をここで説明する。前記トレーサーは、具体的には、精製したビオチン化ファージの懸濁物をCiが71.46±1.79μgmL-1の過剰の酵素プローブで標識することにより得られ(前記プロトコールに従い)、この処理により、過剰の酵素プローブ及びトレーサーの混合物が得られる。当該過剰の酵素プローブ及びトレーサーの混合物のHPLC-SECによる精製後に2つのピークが認められ:それぞれトレーサーのピークT1(全排除ピーク)及び過剰の遊離プローブのピークS1(中央が15.09±0.07mL)である。後半の過剰のプローブは、過剰遊離プローブと称され、トレーサーに関するファージとグラフトされたプローブと対立する。ファージにグラフトされたプローブの質量の決定は、過剰の遊離プローブの質量のスペクトロメトリーアッセイ及びこの質量をカラムに注入したプローブの質量(即ち初期の71.46±2.00μg)から差し引くことにより行われる。
【0106】
トレーサーのピークと過剰の遊離プローブのピークの分離は効果的である(平均の分離係数<R>=1.29±0.1%)が、そして標識に使用する遊離プローブの濃度(即ち71.46±1.79μgmL-1)は最適化(グラフト反応の完遂及び過剰のプローブの最小化の観点で)最適化されていたが、それにもかかわらず、2つのピークは分離が困難(溶出体積12.00〜13.50ml)な帯域を示し、そこでは上記ピークはベースラインに戻らない(図8)。故に、各ピークの一部分のみ(それぞれVcollT1及びVcollS1)を回収し、アッセイした;特に、VcollT1(溶出体積7.50〜10.00mL)及びVcollS1(溶出体積13.50〜18.00mL)は、トレーサーピークT1の回収された画分と過剰の遊離プローブのピークS1の回収された画分との間の莢雑(soiling)のリスクを最小にするように定められる。
【0107】
図9は、前記ファージにグラフトされたプローブの質量mT1totalを評価するのに使用する方法の詳細を図示する。図9において、曲線1及び3は、それぞれ図5における、酵素プローブ単独、及びトレーサーと過剰プローブの混合物に関するものである。ここでは、以下の記号が用いられる:
Ci ファージの標識に使用される遊離プローブの濃度
Vinjection カラムに注入されるトレーサーと過剰のプローブの混合物の体積
mS0 カラムに注入されたプローブの質量
[S1]collected 過剰な遊離プローブの回収されたフラクションS1中のプローブの濃度
mS1collected 過剰の遊離プローブの回収された質量
mS1total 過剰の遊離プローブの全質量
mS1T1 トレーサーの回収された画分T1中に存在する過剰の遊離プローブの質量
rS1 過剰のプローブのピークS1の下の回収された面積とピークS1の下の全面積との比率
mT1total ファージにグラフトされたプローブの質量
【0108】
最初に、過剰の遊離プローブの濃度[S1]collectedを、精製後の過剰の遊離プローブの回収された画分(13.50〜18.00mL)において、ピロガロールを用いて、当業者に周知の技術により、スペクトロフォトメトリーアッセイにより決定する。このために、トレーサーを生産するのに使用される遊離プローブの特異的酵素活性kcatPROBEHPLCを予め測定しておき、HPLCカラムの透過後、ピロガロールスペクトロメトリーにより:回収された過剰の遊離プローブの画分中の過剰の遊離プローブの濃度の決定が、kcatPROBEHPLCを使用して実施される(例えば本実施例で、kcatPROBEHPLC=4.76x104min-1、±2.1%である)。過剰の遊離プローブの画分S1の回収されたVcollS1体積を求められれば、過剰の遊離プローブの回収された体積mS1collectedを評価することができる。
mS1collected = [S1]collected .VcollS1 (5)
【0109】
次に、HPLC-SECのピーク面積と質量が比例するという特性を使用して、パラメーターrS1は、過剰の遊離プローブの合計質量mS1totalを評価するのに使用される。mS1total=mS1collected / rS1 (6)
【0110】
工程2において、グラフトされたプローブの全質量mT1totalは、最初に注入したプローブの質量mS0から過剰の遊離プローブの全質量mS1totalを引くことにより計算される。
mT1total = mS0 - mS1total (7)
【0111】
本実施例における、既知のパラメーター、又はグラフトされたプローブの全質量mT1totalの決定の前に測定されるパラメーターを、下記表1にまとめる。
【0112】
表1:本実施例における、既知のパラメーター、又はmT1totalの決定の前に測定されるパラメーター
【表1】
【0113】
下記表2は、グラフトされたプローブの全質量mT1total及びその計算の為に使用される中間質量(intermediate mass)を、同一の合成条件下、同一のバッチの天然のファージから生産したトレーサーの3つのバッチについて示すものである。
【0114】
表2:同一の合成条件下、同一のバッチの天然のファージから生産したトレーサーの3つのバッチについてのグラフトされたプローブの全質量mT1total
【表2】
【0115】
結局、採用したアプローチは、グラフトされたプローブの全平均質量<mT1total>(即ち38.83±3.92μg)へのアクセスを提供し、これは、カラムに最初に注入したプローブの全質量mS0(即ち71.46±2.00μg)の54.3%を占める。この結果は、標識の効率が良好であることを示し、また、最初にプローブの注入量を半分にする(即ち35.30±0.82μg)場合は、プローブの不足のため、全てのビオチン化ファージが当該プローブにより標識され得ない(図5、曲線4)ことが確認される。加えて、表2の結果は、トレーサー合成のプロトコールの良好な再現性を定量的に示唆する。
【0116】
この段階で、ファージあたりのグラフトされたプローブの平均数を決定することが出来る。供給者のデータによると、トレーサーの合成に使用した酵素プローブの分子量Mprobeは、140kDaである。従って、グラフトされたプローブの全平均質量<mT1total>は、グラフトされたプローブの分子の平均の総数Nに対応する:N=1.67x1014プローブ分子(±14.3%)。また、精製されるべきトレーサーと過剰の遊離プローブの混合物中のトレーサーの平均数Qは、pfuと同等のものとして表され、プローブの標識に使用されるビオチン化ファージの平均濃度(即ち対応するHPLC-SECピーク面積の測定から推定される2.75±0.27x1012pfu mL-1)及び注入体積Vinjection(プローブの標識に使用される希釈は無視されるという事実を考慮する)から定量出来る。従って、カラムに注入したトレーサーの平均数Qは、以下のようになる:Q=2.75x1012pfu (CV=10.1%)。ファージあたりのグラフトされたプローブの平均数Nbは、NをQで割ることにより求められ、即ちNb=61±18となり;これはファージのキャプシド上の180個の利用可能な結合部位の約三分の一に相当する。特に、より少量の天然のファージの懸濁物で行った類似の試験では、標識の効率の改善が示された。
【0117】
上記で挙げた標識方法の再現性は、同一の条件下、同一の天然のファージのバッチから生産した9個の生体トレーサーのバッチについて評価された。得られた結果(4回繰り返された定性試験及び2つの定量試験:1つは3回、もう1つは2回繰り返された)は、前記方法の再現性が非常に良好であることを示す。
【0118】
生体トレーサーの粒子サイズの特徴付けを行うことが出来る。例えば、ビオチンで標識されたMS2ファージ及びニュートラビジン-HRP複合体から合成された生体トレーサーの平均の直径は65.4nmで、限外濾過又はマイクロ濾過系の特徴付けと完全に関連する。
【0119】
本標識技術は、構造が標識に適する任意のタンパク質キャプシドに一般化することが出来る。
【0120】
実施例2:アンペロメトリー検出
工程1:
溶液中で、酵素が飽和状態で機能しており(即ち基質に関して限定されない)、そして当該触媒反応が不可逆的である場合、以下の式が成り立つ:
[O](t) = [酵素]total. kcat .t [等式1]
ここで:
-[O](t):時間tにおける溶液中に形成された酸化供与体の濃度(mol.L-1),
-[酵素]total:溶液中に存在するグラフトされた酵素の全濃度(mol.L-1)
-kcat:グラフトされた酵素の分子活性(mol.mol-1.min-1又はmin-1)
-t:グラフトされた酵素により触媒される反応の時間(min)
【0121】
定数は、より正確には、溶液中に存在する酵素分子あたり、及び単位時間あたりに形成される酸化供与体の分子の数を表す。
【0122】
選択された酵素において、その動態がミカエリスメンテン型の動態によりモデル化することができ(文献Veitch et al. Phytochemistry 65, 249-259 (2004)に記載、実験的に実証された)、当該酵素は、基質[S]の濃度が限定されないとき、飽和状態で機能する:[S]>10xKm(Km=当該選択された酵素のミカエリスメンテン定数で、mol.L-1で表される)。本実験のために、固定された濃度[S]は、使用される酵素濃度の範囲に関係無く、常にこの条件に適合するように選択される。
【0123】
工程2:
拡散によりコントロールされるスケジュールにおいて、時間tで生じた電流:I(t)は、電極の酸化供与体の還元に関連し、限定的な拡散電流である。この電流は、陰極還元電流であるため、以下の式により消極的にカウントされる:
I(t)=-n.F.S.Do.[O](t)/δ [等式2]
ここで:
-I(t):時間tで生じた還元電流(A又はC.s-1)
-[O](t):時間tでの溶液中に形成される酸化供与体の濃度(mol.m-3)
-n:e-が交換されたもの(-)のnb
-F:ファラデー定数(C.mol-1)
-S:活性電極の表面積(m2)
-Do:OからのRDEに向けての拡散の係数(m2.s-1)
-δ:拡散層(m)
【0124】
当該式は、電流の減少を、一定時間に形成される酸化供与体の量の増大に置き換えるものである。
【0125】
溶液中の流体の流れが作用電極に固定されている場合:この場合、回転円盤電極が使用され、及び当該電極の回転の速度が、電極で消費される酸化供与体Oの量が、溶液中に存在する酸化供与体Oの総数の1%未満となるように、任意の1つの時間に選択される場合、酸化供与体の作用電極への移動は、拡散によりコントロールされる。
【0126】
等式1と等式2を組み合わせて、以下の当式を得られる:
I(t)=-n.F.S.Do.kcat.t.[酵素]total/δ [等式3]
【0127】
一定時間後、この電流は安定化する(電子供与体Rが全て酸化することにより)。これらの条件下、酸化供与体Oの濃度は一定となり、そして限界拡散電流は一定となる。いわゆる定常モードの限界拡散電流であり、Istationaryと表記される。
【0128】
等式3によると、有意な電流のために充分な時間tが選択される場合、当該時間で測定された電流を、溶液中に存在する酵素の全量と関連付けることが出来ると考えられる。
【0129】
しかしながら、より正確を期するために、及び電流基準の制限を免れるため、好ましくは、等式3を時間との関連で導き出すことにより定められる原点Vo(A.s-1)を通る勾配を使用するのが好ましい:
Vo = (dI/dt)t=0 = - n.F.S.Do.kcat.[酵素]total/δ=一定 [等式4]
即ち絶対値において:|Vo|=|(dI/dt)t=0|= n.F.S.Do.kcat.[酵素]total/δ [等式5]
【0130】
従って、勾配Voの実験的な測定により、並びにアンペロメトリー及び/又はスペクトロメトリーにより得られた較正曲線を用いて、測定セル中のグラフトされた酵素の量、即ち測定セル中の生体トレーサーの量を、そして体積を考慮することで、供給物中のトレーサーの量を評価することが可能である。
【0131】
前記生体トレーサーと検討中の試験における検出方法との組合せの使用を説明するために、一般的なフローチャートを図6に示す。
【0132】
異なる時点で実施した前記試験は、濾過の過程での、透過物中の生体トレーサーの濃度の変化についての知見を提供する。供給物及び保持物(又は濃縮物)は、同様のアプローチを使用して解析できる。
【0133】
1.測定系及びプロトコール
試薬及び機材
試薬:
- -3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMBとも称される)(SIGMA Aldrich, ref. 8 7750)
- 過酸化水素 (ROTH, Hydrogen Peroxide 30 %安定化、ref. 8070)
- 緩衝剤及び電解質の生産に必要な塩:
NaCl (Roth, ref. 3957)
Na2HPO4, 2H2O (Roth, ref. 4984)
NaH2PO4, 2H2O (Roth, ref. T879)
クエン酸(Sigma, ref. 251275)
【0134】
機材
完全アンペロメトリー検出システム(Metrohm)
選択された定電位電解装置はMicroAutolab(Metrohm)であり、30fAの分解能を有し、良好な反復性でnAまで測定する。アンペロメトリーセルは、温度調節が可能な、Karl Fisherガラスセル(Metrohm)に平らな蓋を付けて、電極の洗浄及び配置を容易とし、当該セルの最大容積は130mlである。選択された作用電極はMetrohm回転円盤電極(RDE)であり、その活性表面は、直径5〜3mmのプラチナ円盤で、セルの動作量(work volume)に適合させられる。作用電極は、電極の本態と回転シャフトの間が水銀で接触させられているため、最小のノイズでシグナルが伝達される。RDE用のサーボコントロールシステムは、100〜1000rpmの速度の回転を可能とする。対電極はプラチナのワイヤー電極で、作用電極の6.5倍の面積の選択された活性表面を有する。選択された参照電極は、ダブルジャンクションAg/AgCl電極である。
【0135】
セルの体積、作用電極の材料及び表面積、対電極の表面積及び寸法等のパラメーターは、検出システムの最適化及び様々な所望の応用に関連して変化してもよい旨留意されたい。
【0136】
b.測定プロトコール
選択された酵素は、様々な電子供与体の使用を可能とする。参照した文献(Volpe et al., Analyst, June 1998, Vol. 123 (1303-1307))の記載を考慮して、本実施例において、電子供与体としてTMBを使用する。酵素はHRPであるため、酸化剤は過酸化水素とする。過酸化水素の濃度のTMBの濃度に対する比率は、5とする。
【0137】
分析対象溶液の全量は、このシステムにおいて、78mlに固定される。試薬:即ちTMB及び過酸化水素の濃度は、酵素が飽和的に機能するように選択される。自然発生的な反応を制限するため、TMBの量は、過酸化水素の量よりも少なくする。選択される緩衝電解質は、pH=5の0.1mol.L-1クエン酸-リン酸緩衝剤で、0.1mol.L-1のNaCl電解質も含有する。作用電極の活性表面として、5mmのプラチナ円盤が選択される。RDEの回転速度は、1130rpmに設定される。
【0138】
いずれかの測定を行う前に、ブランク(即ちTMB及び過酸化水素のみ存在する状態)の解析を行い、生じた電流の中で、つまり測定された原点を通る勾配の中で、自然発生的な反応によるものの占める割合を定量する。
【0139】
TMBの酸化のメカニズムは、2段階メカニズムであって(Josephy et al., The Journal of Biological Chemistry, Vol. 257, n°7, Issue of April 10, pp. 36669-3675, 1982)、TMBの2つの酸化形態を生じ:第一段階でTMBox1と表記される部分的に酸化した中間体を生じ、そして第二段階でTMBox2と表記される完全に酸化した化合物を生じる。
【0140】
TMBox1又はTMBox2のいずれをアッセイの対象に選択してもよい。TMBox2をアッセイの対象とする場合(Fanjul-Bolado et al., Anal. Bioanal. Chem. (2005) 382: 297-302)、測定プロトコールは、以下の工程を含むものとなる:
-1つ以上の生体トレーサー、試薬のTMB及び過酸化水素、並びに緩衝電解質を含有する溶液をインキュベーションする工程(アンペロメトリー測定セル中で、攪拌しながら1〜30分行われる)
-溶液中に存在し得る全てのTMBox1を酸化してTMBox2とするように、濃縮リン酸を添加する工程
-リン酸添加後に電流を測定する工程
【0141】
本実施例において、TMBox1をアッセイに用いるのが好ましい。試料を解析するにあたり、測定セル中に試料が置かれる。分極電圧は、240mVに固定される。試料の体積は、最大で60mLと設定されている。セルの体積は、それから試薬の体積を引いて、緩衝電解質で完結する。RDEは固定して回転させられ、解析される体積の混合を保証するのに充分である。続いてTMBを添加し、更に過酸化水素を添加する。過酸化水素を添加した直後、データ取得を開始する。解析は、溶液の脱酸素をせずに、室温で実施される。ブランクのデータ取得時間は、解析の最長継続時間で固定される。試料の解析のデータ取得時間は、データを取得する点の数が勾配Voの測定を良好な正確性で行うのに充分となるように選択される。解析の時間は、1〜15分である。
【0142】
図7aは、アンペロメトリー曲線の一例である。同一の生体トレーサー供給物の4つの体積が解析され、それらは測定セル中の生体トレーサーの4つの濃度に対応し、天然ファージカウントユニットで表現される:C0、2.00 x C0、4.65 x C0及び5.80 x C0)。図7bは、本実施例に関する較正線を示す(測定された勾配とセル中のトレーサー濃度との関数を与える)。トレーサー濃度と勾配の関数の直線性は、当該濃度範囲では、グラフトは均一とみなすことが出来るという事実を示す。
【0143】
図10は、供給物、並びにマイクロ濾過膜MF及び限外濾過膜UFにおける濾過後に回収された透過物を解析して得られたアンペロメトリー応答の例を示す。特に、MF透過物で得られた応答は、マイクロ濾過膜が、トレーサーの通過を部分的に可能にすることを実証している。なぜなら、MF透過物に対応するアンペロメトリー勾配が、供給物の勾配よりも緩いからである。UF透過物の応答はブランクの応答と類似しており、これは、UF透過物中にトレーサーが検出されなかったことを示す。図10に示されたこの結果は、当該開発された方法の、異なる膜の挙動を特徴付ける能力を強調する。
【0144】
図11は、飲用水の生産に使用される損傷のある中空糸を有する限外濾過モジュールを用いて得た保持の動的特性の例を示す。この実験において、トレーサーの増量は、具体的には合計の濾過時間の3分の1あたりで行われ(膜透過圧が定常状態になる前に行われる)、透過物は、解析の為に濾過の間に回収された。濾過の間に回収された透過物において測定したトレーサー濃度は、濾過の時間の関数として示される。得られた結果は、特に、膜によるトレーサーの保持の動的なモニタリングが可能であることを示す。従って、トレーサーの濃度は、最初に注入時間の中間にかけて最大値に達するまで増大し、それから低下したことを観察することが出来た。
【技術分野】
【0001】
膜濾過方法は、液体を濃縮又は精製する多くの分野で使用されている。幾つかの用途(水処理、農業-食料産業)において、使用中の膜の状態(完全性(integrity)とも言う)をモニタリングできる性能は、最終産物の品質を保証するのに重要である。
【背景技術】
【0002】
例えば、濾過系を備えた上水道及び処理施設において、生産される水中の生物的汚染物質及び他の群体(ウイルス、細菌等)の混入を制限することが言及され得る。膜技術(特に限外濾過)は、ウイルス除去能力に優れていることから、広く使用される。
【0003】
濾過系の除去(又は保持)率は、保持される化合物のパーセンテージにより定義される。
【0004】
処理設備のモニタリング及び品質を保証するためには、保証される処理設備の衛生レベルを向上させ、また化学的殺菌剤の必要性を減少させるために、濾過系の保持性能のレベルの客観的な定量が可能となるように、使用される濾過系による保持を、直列的に(導入に直結して)、又は動的に(時間の関数として)、特徴付けられることが必要である。
【0005】
現在、膜カットオフ閾値(即ち標的化合物の保持率が90%となること)は、PEG(ポリエチレングリコール)やデキストラン等のポリマー又はタンパク質型の極小のトレーサーを利用して評価されている。これらのトレーサーは、サイズ、形状又は密度のいずれかにおいて、ウイルスと異なる特徴を有する。故に、それらは、濾過の際のウイルスの挙動を模倣するのに不適切で、そのため、濾過の際の膜系の保持動態を十分に特徴付けることが出来ない。よって、容易に検出可能かつ定量可能な、そして濾過におけるウイルスの挙動を最も良好に再現できるトレーサーを提供する必要がある。
【0006】
バクテリオファージ(ファージとも呼ぶ)は、ヒト及びその周囲に病原性を有しない、細菌のウイルスである。これらは、膜系のウイルス保持を定量するための参照微生物としてしばしば使用される(Membrane Filtration Guidance Manual: Environmental Protection Agency, 2005; US 5 645 984 A、及びUS 5 731 164 A)。これらは、サイズ、形状、及び表面状態の観点で、水により運搬される病原性ウイルスと極めて類似している。しかしながら、バクテリオファージを定量する既存の方法(溶解プラークカウント、定量PCR、フローサイトメトリー等)は、標的の装置において濾過される量を十分に迅速かつ的確に表示するものではない。
【0007】
病原性ウイルスの代替物は、文献中で想定されている。電位差測定法により検出される金ナノ粒子は、特に注目される(Gitis et al, Journal of Membrane Science, 276, 2006, 1999-207)。しかしながら、サイズは同様であっても、これらの粒子は、ウイルスよりも密度が大きく、表面がより滑らかであるため、ウイルスを模倣しない。加えて、それらは変形性が遥かに劣る。
【0008】
他のアプローチにおいて、細菌等のトレーサーも知られており、それらの表面は、磁力により回収及び検出が可能となるように、常磁性体の粒子で修飾されている(US 2003/168408)。しかしながら、前記トレーサーによる検出の実施は、依然として困難である。他の研究において、修飾されたバクテリオファージもトレーサーとして想定されている(Gitis et al., Water Research, 36(2002), 4227-4234 and application WO2007/046095)。提案されている修飾は、フルオロメトリーによる修飾バクテリオファージの直接検出を可能とする、MS2バクテリオファージ表面上への蛍光色素のグラフトである。しかしながら、これに関するアプローチは、解析可能な体積が小サイズとなるため、なおも限定的である(最大1mlで、全ての生物懸濁物の強い汚染の性質のため、フルオロメトリーセルの継続的な供給は不可能である)。T4バクテリオファージの表面上への酵素のグラフト(前記蛍光色素の200倍超の分子量を有する)も想定されている。この場合、主要な限定要因はT4ファージのサイズが大きくなることである(長さ150nm及び幅78nm)ため、斯かる旧式のトレーサーは、少量の体積の解析に用いられる(20マイクロリットルのオーダー)、限外濾過又はナノ濾過、及び関連する検出方法(ECL化学発光)に利用される。前記トレーサーにおいて、著者らは、記載されたトレーサーの特徴を提供しておらず、そして試料中に存在するトレーサーの数を定量する方法も、検出閾値を提供する方法も記載していない点に注目すべきである。
【0009】
故に、生体トレーサーにおいて、ウイルスを可能な限り模倣し、迅速で持続的な、大容量にも適用できる検出方法を提供ことが望まれる。また、前記トレーサーの再現可能かつ定量可能な特徴を保証できることも望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
故に、本発明は、生体トレーサーをアンペロメトリーにより検出する新規方法であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、前記方法に関する。
【0011】
故に、分析対象試料中の生体トレーサーを検出するための本発明の方法は、好ましくは;
アンペロメトリーセルを調製する工程と、
-発生した電流をアンペロメトリーにより測定する工程と
を含み、
当該セルが:
-作用電極、
-対電極、
-参照電極を有し、
これらの3つの電極が定電位-定電流により接続されており;
-分析対象試料及び上記で定義された1つ以上の生体トレーサーを含む溶液、
-電解質、
-酸化剤、
-電子供与体(R)を有する。
【0012】
好ましくは、前記電解質は、溶液のpHを固定する緩衝剤を含有する。
【0013】
好ましくは、本発明の検出方法は、生体トレーサーの検出閾値の下限が、通常102以上、より好ましくは104pfu/mL以上である。
【0014】
本発明に適したファージとして、その表面に任意の種類のタンパク質を有するものが挙げられる。
【0015】
使用されるファージは、好ましくは、細菌株中で容易に増幅できるファージの中から選択される。好ましくは、選択されるファージは、非病原性細菌中での複製サイクルを有する。これらのファージは、任意の公知のファージファミリーから選択できる。ファージの種類(サイズ)は、好ましくは、特徴付けられる濾過の種類に関連して選択される(具体的には膜のカットオフ閾値に関連する)。マイクロ濾過(MF)、限外濾過(UF)及び/又はナノ濾過(NF)の種類の濾過において、使用されるファージは、最も好ましくはMS2ファージである。しかしながら、よりサイズ又は分子量の大きなファージも、マイクロ濾過手段において適している場合がある。
【0016】
故に、具体的なMS2ファージは、平均直径30nmの球状のウイルスで、キャプシドと呼ばれるタンパク質の殻で囲まれ、本発明に適している。当該バクテリオファージは、ATCC又はパスツール研究所等の機関から取得できる。例えば、MS2バクテリオファージは、ATCCの15 597-B1株に対応する。
【0017】
故に、標識したファージは、生体トレーサーとも呼ばれる。
【0018】
ファージ及びバクテリオファージという用語は、相互に変換可能で、いずれもバクテリアに感染するウイルスを指す。
【0019】
ビオチン分子は、ファージキャプシドの1つ以上のタンパク質と結合する。使用されるビオチンは、反応性の末端基を提供するように改変されている。前記改変されたビオチンは、本明細書中では、活性化ビオチンと称する。ビオチンは、極めて小型の親水性分子であって、作用する結合部位に向かって容易に分散する。タンパク質と共有結合を形成する能力及びサイズの小ささのため、生化学の試験に広く使用される。
【0020】
使用されるビオチンは、使用されるファージのキャプシドタンパク質の優先部位(priority site)と反応するように活性化される。例えば、リシンアミノ酸中に存在するような第一級アミン基-NH2と反応するように活性化されたビオチン分子が、アミド型の共有結合を形成するように、MS2ファージに対して選択される。ファージのキャプシドは、1つ以上のリシンを含有するタンパク質で構成されているのが有効な場合がある。この種類の結合のためのアクセス可能なリシン部位をそれぞれ有する180個の同一のタンパク質でキャプシドが構成されるMS2ファージは、これに当てはまる(Lin et al., J. Mol. Biol., 1967, 25(3), 455-463)。
【0021】
例えば、活性化ビオチン分子は、Perbio Scienceから商業的に取得することができ、例えばEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinが挙げられる。
【0022】
酵素プローブは、共有結合に類似の強力な相互作用(高い結合定数を特徴とする)を介して、広範なpH及び温度範囲にわたり、活性化ビオチンと結合する。
【0023】
酵素プローブとして:
-活性化ビオチンと相互作用できるタンパク質担体、及び
-酸化還元酵素型の酵素
からなる、任意の複合体を使用することが出来る。
【0024】
酵素プローブ(酵素/タンパク質担体の複合体)の選択は、一般に:
-特徴付けられる膜との関係で所望される生体リアクターの最終的なサイズ、
-酵素検出感度、及び
-前記分子と特徴付けられる濾過系の膜との相互作用
に依存する。
【0025】
前記酵素プローブのタンパク質担体は、例えば、ニュートラビジン、アビジン又はストレプトアビジン等の中から選択できる。
【0026】
酵素として、強力な活性及び分子量の小ささから免疫学で一般に使用される酸化還元酵素である、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)が有力である。
【0027】
故に、酵素プローブとして、例えばPerbio Scienceにより販売されている、ニュートラビジン-HRP複合体が特に好ましい。
【0028】
好ましくは、本発明の生体トレーサーは:
-遊離プローブの存在しない懸濁物の形態で入手可能で、及び/又は
-ファージあたりにグラフトする平均の酵素プローブ数が、合成の条件に応じて20〜150個、好ましくは40〜60個であって、及び/又は
-生体トレーサーの平均の触媒活性kcatが、2.104〜4.104min-1である。
【0029】
本発明の方法を実施するとき、電子供与体Rの酸化反応は、酸化剤及び本発明の生体トレーサーの存在下で起こり、酸化されて対応する酸化供与体(oxidized donor)Oとなり、ここで、当該酸化反応は、前記生体トレーサーにより触媒される。より正確には、当該酸化反応は、前記生体トレーサーの酵素プローブの酵素により不可逆的に触媒される。
【0030】
そして、形成された前記酸化供与体Oは、作用電極に向かい分散する。分極電圧<<Vpolarisation>>は、酸化-還元対である酸化供与体O/電子供与体Rの平衡電位よりも低く、作用電極と参照電極の間に適用され、作用電極付近に到達した酸化供与体Oを電子供与体化合物Rに還元して、還元電流I(カソード電流と呼ばれる)を生じさせる。一定時間測定した還元電流Iは、溶液中で形成された酸化供与体Oの濃度に正比例し、従ってグラフトされた酵素プローブの総量にも正比例し、従ってグラフトされた酵素の総量にも正比例する。
【0031】
故に、前記検出方法は、定性的であることも定量的であることも出来る。
【0032】
電子供与体Rとして、ヨウ化物又はテトラメチルベンジアジン(一般にTMBと呼ばれる)が、特に注目される。酸化剤として適切なのは、生体トレーサー上にグラフトされた酵素プローブの酵素により触媒される酸化還元反応を可能とする酸化剤である。例えば、過酸化水素はHRP酵素においてとりわけ適している。HRP酵素は、過酸化水素の存在下でRの酸化反応を高効率で不可逆的に触媒して、対応する酸化供与体O及び水を形成する。この反応は、以下の式で表される:
電子供与体(R)+H2O2→酸化電子供与体(O)+H2O
【0033】
電子供与体(R)の濃度に対する酸化剤の濃度の比率は、1〜10であってもよい。この選択は、酸化剤の存在下での電子供与体Rの自然発生的な酸化反応を制限するのに特に貢献する。
【0034】
前記電解質は、NaCl、KCl等の、通常使用される任意の電解質の中から選択できる。電解質の濃度は、通常1M未満、好ましくは0.3M未満である。分析対象溶液のpHは、電子供与体Rの自然発生的な酸化を最小限にしつつ、グラフトされた酵素の活性を最大限に促進するように選択される。当該酵素がHRPで電子供与体がTMBである場合、pHは5〜7に固定される。
【0035】
本発明に適した緩衝剤は、クエン酸-リン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤等の、通常使用される任意の緩衝剤の中から選択できる。
【0036】
作用電極は、回転円盤電極(RDE)であるのが有利で、特にプラチナ、ガラス状炭素又は金で構成されてもよい。作用電極の活性表面の寸法は溶液中の酸化供与体Oの量に依存し、従って分析対象溶液の体積に依存するため:溶液の体積が大きくなるほど、選択できる活性表面は大きくなる。
【0037】
対電極は、プラチナ電極が有利である。一般に、作用電極の表面は対電極の表面と比較して小さい。故に、例えば、プラチナ対電極の表面は、作用電極の表面の5〜10倍の大きさであってもよい。参照電極は、電気化学で通常使用される参照電極(例えばAg/AgCl)から選択できる。
【0038】
分極電圧は、通常、電子供与対Rの自然発生的な酸化に最も不利であり、かつ作用電極での酸化供与体Oの還元に最も有利である。
【0039】
定電圧又は定電流モードで実施される任意の定電圧-定電流の部品を使用することができるが;好ましいのは、定常的な測定が可能な定電流モードである。一般に、解析時間は1〜30分である。
【0040】
また、本発明は、濾過系をモニタリングする方法にも関する。
【0041】
前記方法は:
-系の供給物(feed)に、1つ以上の生体トレーサーを加える工程であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、工程、
-本発明の前記濾過系の透過物(permeate)(又は保持物(retentate))中の、生体トレーサーを検出する工程
を含む。
【0042】
好ましくは、透過物(又は保持物)中の生体トレーサーを検出する前記工程は、透過物中の試料において行われる。
【0043】
分析対象試料(例えば透過試料)中の電流の検出は、排水中のウイルスを模倣する生体トレーサーの存在の特定を可能とする。
【0044】
透過物(又は保持物)中の生体トレーサーを定量する必要がある場合、特に、測定された電流を参照値と比較する工程が加えられる。
【0045】
加えて、トレーサーの量(又は濃度)との関連での電流の調整による参照値の取得は、電流を測定するだけで、解析された試料中の生体トレーサーの量(又は濃度)へのアクセスを提供する。
【0046】
特定の態様において、前記モニタリング方法は、前記濾過系による除去のパーセントの決定を可能とする。除去パーセントAbは、供給物中の生体トレーサーの濃度Caと透過物中の生体トレーサーの濃度Cpとの間の比率の常用対数(decimal logarithm)として定義される:
Ab=log(Ca/Cp) [等式 0]
【0047】
このために、前記方法は、更に、
-前記系の供給物中の生体トレーサーを検出する工程、続いて
-前記系の透過物及び/又は保持物中の生体トレーサーを検出する工程、続いて
-透過物(又は保持物)中の電流と、供給物中で得られる電流とを比較する工程
を含む。
【0048】
好ましくは、前記手順は、供給物及び透過物(又は保持物)のサンプリングを必要とするが、解析は、公知のアンペロメトリーセルを使用して、インラインで行うことが出来る。
【0049】
本発明の更なる目的は、酵素活性を検出するための公知のアンペロメトリーセルの使用に関する。
【0050】
前記生体トレーサーは、標識したMS2型のバクテリオファージからなり、例えば:
-前記バクテリオファージはキャプシド表面上にタンパク質を有し、
-活性化ビオチンの分子が1つ以上の当該タンパク質にグラフトし、そして
-1つ以上の酵素プローブが当該ビオチンと結合する。
【0051】
故に、本発明の更なる目的は、標識したバクテリオファージからなる生体トレーサーに関し、ここで前記バクテリオファージはその表面に、当該バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた、1つ以上の酵素プローブを有するMS2ファージである。
【0052】
好ましくは、本発明の生体トレーサーは、上記に記載した態様を含み、本発明の方法を参照する。
【0053】
本発明の更なる目的において、本発明は、前記生体トレーサーを調製する方法にも関する。
【0054】
故に、当該方法は、以下の工程:
-ラベルされるバクテリオファージの表面上に存在する1つ以上のタンパク質上に活性化ビオチンを不動化する工程、続いて
-当該ビオチンに1つ以上の酵素プローブをグラフトさせる工程
を含む。
【0055】
特定の側面において、本発明の方法は、更に、1個あたりのバクテリオファージにグラフトされたプローブの平均数を定量する工程を含む。従って、本発明の方法は、前記生体トレーサーの特徴付けを可能とする。
【0056】
ビオチンの不動化及び酵素プローブの結合の技術は、当業者に周知である。好ましくは、前記活性化ビオチンの分子は、バクテリオファージの表面のタンパク質上に不動化されている。
【0057】
一つの好ましい態様において、過剰のビオチンが使用されることで、ラベルされるバクテリオファージの表面上のタンパク質の各アクセス可能なリシン上に活性化ビオチンが不動化される。
【0058】
また、前記方法は、その後の精製工程も含み、好ましくは、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(HPLC-SEC)を用いて、遊離酵素プローブを分離、回収及び評価する。グラフトされたプローブの質量は、クロマトグラフィーカラムに注入された酵素プローブの既知の質量と、カラムの排出口で回収された遊離酵素プローブの質量の差から推定できる。グラフトされた酵素プローブの質量の値は、ファージあたりにグラフトされた酵素プローブの平均数を評価するのに使用できる。前記定量は、精製が透析により実行された場合は行うことが出来ない。プローブが評価出来ない程に透析水中に希釈されるからである。
【0059】
必要に応じて、精製工程は、ファージ上の活性化ビオチンの不動化の後に行われて、ファージは、グラフトしていない活性化ビオチン分子から分離される。この精製工程は、HPLC-SECを使用して有利に行われる。
【0060】
一つの態様において、前記方法は、標識されるファージを生産する予備的工程を含んでもよい。この生産工程は:
-ラベルされるファージを増幅する工程;
-増幅された当該ファージを懸濁液中に置く工程;
-当該ファージを精製する工程
を含む。
【0061】
前記ファージは、宿主細菌の存在下で増幅され、例えば、ATCCにより推奨される固相プロトコールに従う。この増幅は、液体又は固体培地中で実行できることに注目されたい。増幅条件及び時間は使用されるファージの種類に依存し、当業者は容易に決定できる。
【0062】
こうして増幅したファージを、生理食塩水又は好ましくは中性リン酸緩衝生理食塩水(一般にPBSとも呼ばれる)等の液体培地中に映して懸濁する。
【0063】
精製工程は、クロロホルムの使用等による細菌の溶解、及び1回以上の遠心分離、続いて濾過の工程を含んでも良い。こうして精製されたファージは、液体培地、好ましくはPBS中で保存できる。
【0064】
また、前記方法は、例えば、水性培地中で、HPLC-SEC又はファージカウント技術を使用しての、増幅及び精製したファージのカウントの決定を含んでもよい(ISO 10705-1の基準の通り)。
【0065】
また、本発明の更なる目的は:
-1つ以上の生体トレーサーを含む溶液であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、溶液;及び
-作用電極、対電極及び参照電極を含むアンペロメトリーセル、
-電解質、
-電子供与体R、及び
-酸化剤
を含むキットに関する。
【0066】
前記電子供与体、酸化剤、電解質、緩衝剤、作用電極、対電極及び参照電極は、本発明の生体トレーサー検出方法に好ましいものの中から選択できる。
【0067】
前記溶液は、最大で1012 pfu/mLの濃度の生体トレーサーを含んでもよい。
【0068】
好ましくは、前記電解質は、緩衝剤を含む。
【0069】
本発明は、下記図面を参考にすることで、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の生体トレーサーの模式図を示し、参照1は、ファージのキャプシドのタンパク質を示し、2は活性化ビオチンの分子を示し、4は、5に示されるHRP C酵素の1つ又は2つの分子に共有結合する酵素プローブ(例えばニュートラビジン分子)のタンパク質担体を示し、3は酵素プローブを示す。
【0071】
【図2】図2は、実施例1で得られるファージのバッチのサイズ分布を示す(増幅及びクロロホルムによる抽出の後)。
【0072】
【図3】図3は、増幅されクロロホルムで抽出された天然のファージの懸濁物の、濃度C0、C0/4及びC0/10の254nmでのクロマトグラムを示し、1は天然のファージ、2はタンパク質ドメインのピークを表す。
【0073】
【図4】図4は、ビオチン単独(曲線1)、天然のファージ(曲線2)、ビオチン標識ファージ(曲線3)の254nmでのクロマトグラムを示す。
【0074】
【図5】図5は、酵素プローブ単独(曲線1)、精製したビオチン標識ファージ懸濁液(曲線2)、生体トレーサーと過剰のプローブの混合物(曲線3)、プローブが不足している場合の生体トレーサーとビオチン標識ファージの混合物(曲線4)の、210nmでのクロマトグラムを示す。
【0075】
【図6】図6は、検出方法を模式的に記載したもので、例示目的であるが、MS2ファージを使用して、透過物が解析の対象である。あるいは、保持物又は供給物が解析される場合や、他のファージが使用される場合もある。
【0076】
【図7】図7aは1つの同一のトレーサー供給物のアンペロメトリー曲線の例を示し(4つの試料で体積を増大させている);図7bは、当該実施例に関する較正線を示す(測定セル中トレーサー濃度の関数として測定される勾配を与え、天然ファージカウントユニットで表される)。
【0077】
【図8】図8は、トレーサーと過剰のプローブの混合物の210nmでのクロマトグラムであり(図5の曲線3)、T1及びS1においてそれぞれトレーサー及びプローブのピークを示し、各ピークの回収された体積(collected volume)を示す。
【0078】
【図9】図9は、ファージ表面にグラフトさせたプローブの量を評価するのに利用される方法の詳細を示す。
【0079】
【図10】図10は、供給物並びにマイクロ濾過(MF)及び限外濾過(UF)膜による濾過の後に回収した透過物を解析することにより得られるアンペロメトリー応答の例を示す。
【0080】
【図11】図11は、飲用可能な水を生産するために使用される限外濾過中空糸の損傷のあるモジュールを用いて得た保持の動的特性の例である。15本の繊維からなる当該モジュールは、15本の繊維の一本に25μmの環状の傷を形成して、意図的に傷を付けてあった。この実験において、トレーサーの増量は、具体的には合計の濾過時間の3分の1あたりで行われ(膜透過圧が定常状態になる前に行われる)、透過物は、解析の為に濾過の間に回収された。濾過の間に回収された透過物において測定したトレーサー濃度は、濾過の時間の関数として示される。
【実施例】
【0081】
下記実施例は、本発明の例示を目的としており、限定の意図はない。
【0082】
実施例1:生体トレーサーの調製
生体トレーサーは、図1に図示されている。
試薬:
-MS2バクテリオファージ(ATCC、15 597-B1株)
-非病原性E. coli K-12細菌(LISBPから入手可能)
-活性化ビオチン(Perbio Science, EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin, ref. 21335)
-ニュートラビジン-HRP型の酵素プローブ(Perbio Science, ImmunoPure NeutrAvidin, HRP Conjugated, ref. 31 001)
-市販の中性PBS緩衝剤(Perbio Science, BupH Phosphate Buffered Saline Packs, ref. 28 372)
-ピロガロール(Sigma Aldrich, ref. 25 4002)
-過酸化水素(Roth, Hydrogen Peroxide 30 % 安定化済み, ref. 8070)
-緩衝剤及び電解質を生産するのに必要な塩:
NaCl (Roth, ref. 3957)
Na2HPO4, 2H2O (Roth, ref. 4984)
NaH2PO4, 2H2O (Roth, ref. T879)
【0083】
使用する機材
-プレートスペクトロフォトメーター(Multiscan Ascent)
-Akta-Purifier液体クロマトグラフィー装置及びUV測定(210、254及び280nm)及び回収システム(GE Healthcare)
-サイズ排除液体クロマトグラフィーカラム:Superose6カラム(GE Healthcare, ref. 10/300 GL)
-NanoSizer ZS パーティクルサイザー(Malvern Instruments)
【0084】
方法:
-固相ファージ増幅用のATCCプロトコール
-水性培地中のファージカウント用のISO 10 705-1標準
【0085】
トレーサーを得るための第一の工程は、濃縮され、精製され、カウントされたファージの懸濁物の取得である。
【0086】
ファージの精製
ATCCプロトコール等の公知の方法を使用して、濃縮ファージが得られる。増幅したファージの懸濁物の精製は、全ての細菌の破片を除去し、及び/又は宿主細菌中に依然として含まれるファージを放出させるのに必要である。細菌の破片は、活性化ビオチンの分子と反応し得るリシン部位をも含む。
【0087】
二つの精製工程が必要となる。第一の工程は、クロロホルムを用いた抽出工程であり、バクテリオファージにダメージを与えずに残った細菌を溶解する(Adams, Bacteriophages, Intersciences Publishers, 1959)。当該クロロホルム/懸濁物の混合物を、9000rpmで2回遠心分離する。上澄を回収し、滅菌0.2ミクロンフィルターで濾過する。懸濁液を、中性PBS懸濁液中で、タンパク質吸着現象を抑えるためにガラス容器に入れて、4℃で保存する。ファージの保存条件は、文献中のデータに従い、長期間キャプシドの劣化を抑えるような条件が選択された。
【0088】
ファージのサイズを定量するのに、粒子サイズの特定は、Nano ZS ZetaSizer (Malvern)を使用して実行された(Figure 2)。サイズ分布曲線は、平均値31nm(5回試行した数値の平均)の単一の再現可能なピークを示す。これは、直径が文献に記載の値と合致していることを示す。
【0089】
サイズ排除液体クロマトグラフィー(HPLC-SEC)は、取得された懸濁液中のファージの濃度を定量するのにも使用できる(図3)。当該解析は、5〜5000kDaの範囲の分子量の分解能を有するカラム(最大限度で40000kDa)を使用して行われる。天然のMS2ファージの分子量は、3600kDaである(Kuzmanovic et al., Structure. 2003 Nov; 11(11):1339-48.)。
【0090】
溶出液は、中性PBS緩衝剤である。UVスペクトロフォトメトリーを使用して、検出が行われる。UV254nmで測定された吸光度を、溶出した体積との関数として示す。溶出した体積が小さいものほど、この体積に対応する化合物の分子量は大きい。図3において、11.3mLあたりにある溶出ピーク1は、天然のファージに相当する。ピーク2は、細菌の溶解物に由来する、又は増幅したファージを懸濁液に移したときに付いてきた固体培養培地に由来する可能性が高いタンパク質に相当する。ピーク1の面積は、試料中の化合物の濃度に正比例し、HPLC-SEC技術も、ファージ懸濁物の定量に使用出来る。
【0091】
また、ファージ懸濁物は、9.5〜14mLの溶出画分を回収することにより、タンパク質を排して精製できる。しかしながら、精製は、ファージ懸濁液を希釈しないように行うことは出来ない。
【0092】
カウント
精製されたファージの濃度の正確に決定することで、トレーサーの濃度の決定が可能となる。精製されたファージの懸濁液のカウントは、グラフト工程の前に行うことができる。プロトコールは、ISO 10 705-1の標準に従う。
【0093】
そして、生体トレーサーを取得する第二の工程は、予め取得した(即ちファージの増幅、クロロホルムによる抽出、遠心及び0.2μm濾過を経て)ファージの懸濁物のビオチン分子による標識、及びHPLC-SECによるグラフトしなかったビオチン分子の除去からなる。
【0094】
大過剰に添加された活性ビオチンを数mLのファージ懸濁物中に直接溶解することにより、試薬間の接触を促進する。当該反応は、室温、中性pH(即ちファージ保存用のpH)及び遮光の条件で、ガラス容器中で行う。当該混合物を1時間15分攪拌した後、4℃で一昼夜以上静置する。
【0095】
グラフトしなかったビオチン分子を除去するために、グラフト反応の後、当該混合物を、HPLC-SECで精製する。溶出液は尚も中性PBSである。図4にクロマトグラムを示す。
【0096】
当該図は、3つの曲線を示す:
-曲線1:ビオチン単独のクロマトグラムで、20mLの領域に当該分子の特徴的なピークを示す。
-曲線2:グラフト前のファージ懸濁物のクロマトグラムで、11.3mL周辺にファージの特徴的なピークを示し、20mL以後に当該懸濁物の残留タンパク質のピークを示す。
-曲線3:グラフト後の懸濁物のクロマトグラムで、11.3mL周辺にグラフトファージに相当するピークを示し(ビオチン分子のグラフトがもたらす分子量の変化は、天然のファージとグラフトファージとをクロマトグラムで見分けることが出来ない程度に僅かである[2.8%])、そして20mL超の位置に過剰のビオチンに相当する飽和ピークを示す。
【0097】
ビオチン分子により標識されたファージに相当する画分として9.5〜14mLがガラスチューブに回収され、次の酵素プローブによる標識のために、4℃で保存する。この段階で、ビオチン分子による標識の成否を判断することはできない。酵素プローブとの反応後の混合物の特定により初めて、このグラフトの効率の判定が可能となる。
【0098】
続いて、第三の工程は、上記で得られたビオチン化ファージへの酵素プローブのグラフト、及びグラフトしなかった酵素プローブの除去からなる。酵素プローブは超純水中で再構成され、上記ビオチン標識ファージの画分に大過剰で添加される。当該反応は、室温、中性pH、遮光で、攪拌(120rpm)しながら30分間行われる。
【0099】
グラフトしなかった酵素プローブを除去するために、反応後の混合物を、HPLC-SECで精製する。前記生体トレーサーの分子量は、5000kDa(酵素プローブの分子量を考慮する)を超えるが40000kDa(クロマトグラフィーカラムの最大限度)を下回ると推定され、それらは全排除ピーク(exclusion peak)から回収することが出来る。溶出液は、依然として中性のPBSである。
【0100】
酵素プローブの感度が最も良好な波長である210nmでクロマトグラムを得る(図5)。当該クロマトグラムは:
-酵素プローブ(曲線1)は、約15mLにピークの中心が来ることを特徴とする。
-HPLC-SECにより精製されたビオチン化ファージの懸濁物(曲線2)は、前述のように11.3mL周辺にピークが来ることを特徴とする。
-大過剰の酵素プローブをグラフトさせて合成した生体トレーサーの懸濁物(曲線3)は、8.5mL周辺に当該生体トレーサーのピークがあり、過剰の酵素プローブのピークも認められる(ピークの中心が15mlの位置に来る)(後者のピークと曲線1のピークとの間に非常に僅かなオフセットが見られるが、これは両試験に使用されるプローブのバッチが完全に同一の特性を有していなかったからである)。
【0101】
曲線2及び3を比較して、ビオチン化ファージのピーク(11.3ml)が最小の体積(8.5ml)の位置にまで顕著にシフトしていることが認められる。ΔV=2.8mlで、相当な解離である。これは、天然のファージの分子量の増大と解釈され、並びにビオチン及び酵素プローブのグラフトの効率、即ち生体トレーサーの取得を保証するものである。
【0102】
添加される酵素プローブの量が不足していると、HPLC-SEC解析で、酵素プローブがグラフトしていないビオチン化ファージのピークが顕著になる(曲線4、8.5mlのピークショルダー及び11mlのピーク)。
【0103】
生体トレーサーの回収は、7.5ml〜10mlの溶出体積において行われる(曲線3)。回収されたバッチの活性は、選択された酵素の活性を適切な基質を用いて試験することによりスペクトロフォトメトリーにより定量的に特定される。例えば、HRP活性(酸化還元酵素)はピロガロール及び過酸化水素の反応で酵素活性の存在下で染色した生産物が生じることにより評価される。これらの陽性の定量試験により、迅速に酵素の存在及び活性が確認され、並びに良好な生体トレーサーの生産が示唆される。
【0104】
また、生体トレーサーは、グラフトされたプローブの量を決定するために、及び生体トレーサーの触媒活性を測定するためにも、定量的に特定される。HPLC-SECによる生体トレーサーの精製は、過剰なプローブに相当する画分を効率的に回収できる。そして、このフラクションは、当業者に周知の技術を使用して、スペクトロフォトメトリーによりアッセイされる。グラフトされたプローブの質量は、クロマトグラフィーカラムに注入した既知のプローブの質量と回収された過剰のプローブの質量の差から推定される。グラフトされた酵素プローブの質量の値から、ファージあたりにグラフトされたプローブの平均数を評価できる。必要に応じて、トレーサーの量をグラフトされたプローブの量で表現することも可能で、この場合、当業者に周知の技術を使用して、グラフトされたプローブの触媒活性(言い換えると、生体トレーサーの触媒活性)のスペクトロメトリーによる測定が可能である。同一の実験を、実施例2の方法に従い、アンペロメトリーを使用して行うことも出来る。前記精製方法の効率を保証するために、生体トレーサーのバッチの精製が連続して行われたことに留意されたい。
【0105】
グラフトされたプローブの定量の一例をここで説明する。前記トレーサーは、具体的には、精製したビオチン化ファージの懸濁物をCiが71.46±1.79μgmL-1の過剰の酵素プローブで標識することにより得られ(前記プロトコールに従い)、この処理により、過剰の酵素プローブ及びトレーサーの混合物が得られる。当該過剰の酵素プローブ及びトレーサーの混合物のHPLC-SECによる精製後に2つのピークが認められ:それぞれトレーサーのピークT1(全排除ピーク)及び過剰の遊離プローブのピークS1(中央が15.09±0.07mL)である。後半の過剰のプローブは、過剰遊離プローブと称され、トレーサーに関するファージとグラフトされたプローブと対立する。ファージにグラフトされたプローブの質量の決定は、過剰の遊離プローブの質量のスペクトロメトリーアッセイ及びこの質量をカラムに注入したプローブの質量(即ち初期の71.46±2.00μg)から差し引くことにより行われる。
【0106】
トレーサーのピークと過剰の遊離プローブのピークの分離は効果的である(平均の分離係数<R>=1.29±0.1%)が、そして標識に使用する遊離プローブの濃度(即ち71.46±1.79μgmL-1)は最適化(グラフト反応の完遂及び過剰のプローブの最小化の観点で)最適化されていたが、それにもかかわらず、2つのピークは分離が困難(溶出体積12.00〜13.50ml)な帯域を示し、そこでは上記ピークはベースラインに戻らない(図8)。故に、各ピークの一部分のみ(それぞれVcollT1及びVcollS1)を回収し、アッセイした;特に、VcollT1(溶出体積7.50〜10.00mL)及びVcollS1(溶出体積13.50〜18.00mL)は、トレーサーピークT1の回収された画分と過剰の遊離プローブのピークS1の回収された画分との間の莢雑(soiling)のリスクを最小にするように定められる。
【0107】
図9は、前記ファージにグラフトされたプローブの質量mT1totalを評価するのに使用する方法の詳細を図示する。図9において、曲線1及び3は、それぞれ図5における、酵素プローブ単独、及びトレーサーと過剰プローブの混合物に関するものである。ここでは、以下の記号が用いられる:
Ci ファージの標識に使用される遊離プローブの濃度
Vinjection カラムに注入されるトレーサーと過剰のプローブの混合物の体積
mS0 カラムに注入されたプローブの質量
[S1]collected 過剰な遊離プローブの回収されたフラクションS1中のプローブの濃度
mS1collected 過剰の遊離プローブの回収された質量
mS1total 過剰の遊離プローブの全質量
mS1T1 トレーサーの回収された画分T1中に存在する過剰の遊離プローブの質量
rS1 過剰のプローブのピークS1の下の回収された面積とピークS1の下の全面積との比率
mT1total ファージにグラフトされたプローブの質量
【0108】
最初に、過剰の遊離プローブの濃度[S1]collectedを、精製後の過剰の遊離プローブの回収された画分(13.50〜18.00mL)において、ピロガロールを用いて、当業者に周知の技術により、スペクトロフォトメトリーアッセイにより決定する。このために、トレーサーを生産するのに使用される遊離プローブの特異的酵素活性kcatPROBEHPLCを予め測定しておき、HPLCカラムの透過後、ピロガロールスペクトロメトリーにより:回収された過剰の遊離プローブの画分中の過剰の遊離プローブの濃度の決定が、kcatPROBEHPLCを使用して実施される(例えば本実施例で、kcatPROBEHPLC=4.76x104min-1、±2.1%である)。過剰の遊離プローブの画分S1の回収されたVcollS1体積を求められれば、過剰の遊離プローブの回収された体積mS1collectedを評価することができる。
mS1collected = [S1]collected .VcollS1 (5)
【0109】
次に、HPLC-SECのピーク面積と質量が比例するという特性を使用して、パラメーターrS1は、過剰の遊離プローブの合計質量mS1totalを評価するのに使用される。mS1total=mS1collected / rS1 (6)
【0110】
工程2において、グラフトされたプローブの全質量mT1totalは、最初に注入したプローブの質量mS0から過剰の遊離プローブの全質量mS1totalを引くことにより計算される。
mT1total = mS0 - mS1total (7)
【0111】
本実施例における、既知のパラメーター、又はグラフトされたプローブの全質量mT1totalの決定の前に測定されるパラメーターを、下記表1にまとめる。
【0112】
表1:本実施例における、既知のパラメーター、又はmT1totalの決定の前に測定されるパラメーター
【表1】
【0113】
下記表2は、グラフトされたプローブの全質量mT1total及びその計算の為に使用される中間質量(intermediate mass)を、同一の合成条件下、同一のバッチの天然のファージから生産したトレーサーの3つのバッチについて示すものである。
【0114】
表2:同一の合成条件下、同一のバッチの天然のファージから生産したトレーサーの3つのバッチについてのグラフトされたプローブの全質量mT1total
【表2】
【0115】
結局、採用したアプローチは、グラフトされたプローブの全平均質量<mT1total>(即ち38.83±3.92μg)へのアクセスを提供し、これは、カラムに最初に注入したプローブの全質量mS0(即ち71.46±2.00μg)の54.3%を占める。この結果は、標識の効率が良好であることを示し、また、最初にプローブの注入量を半分にする(即ち35.30±0.82μg)場合は、プローブの不足のため、全てのビオチン化ファージが当該プローブにより標識され得ない(図5、曲線4)ことが確認される。加えて、表2の結果は、トレーサー合成のプロトコールの良好な再現性を定量的に示唆する。
【0116】
この段階で、ファージあたりのグラフトされたプローブの平均数を決定することが出来る。供給者のデータによると、トレーサーの合成に使用した酵素プローブの分子量Mprobeは、140kDaである。従って、グラフトされたプローブの全平均質量<mT1total>は、グラフトされたプローブの分子の平均の総数Nに対応する:N=1.67x1014プローブ分子(±14.3%)。また、精製されるべきトレーサーと過剰の遊離プローブの混合物中のトレーサーの平均数Qは、pfuと同等のものとして表され、プローブの標識に使用されるビオチン化ファージの平均濃度(即ち対応するHPLC-SECピーク面積の測定から推定される2.75±0.27x1012pfu mL-1)及び注入体積Vinjection(プローブの標識に使用される希釈は無視されるという事実を考慮する)から定量出来る。従って、カラムに注入したトレーサーの平均数Qは、以下のようになる:Q=2.75x1012pfu (CV=10.1%)。ファージあたりのグラフトされたプローブの平均数Nbは、NをQで割ることにより求められ、即ちNb=61±18となり;これはファージのキャプシド上の180個の利用可能な結合部位の約三分の一に相当する。特に、より少量の天然のファージの懸濁物で行った類似の試験では、標識の効率の改善が示された。
【0117】
上記で挙げた標識方法の再現性は、同一の条件下、同一の天然のファージのバッチから生産した9個の生体トレーサーのバッチについて評価された。得られた結果(4回繰り返された定性試験及び2つの定量試験:1つは3回、もう1つは2回繰り返された)は、前記方法の再現性が非常に良好であることを示す。
【0118】
生体トレーサーの粒子サイズの特徴付けを行うことが出来る。例えば、ビオチンで標識されたMS2ファージ及びニュートラビジン-HRP複合体から合成された生体トレーサーの平均の直径は65.4nmで、限外濾過又はマイクロ濾過系の特徴付けと完全に関連する。
【0119】
本標識技術は、構造が標識に適する任意のタンパク質キャプシドに一般化することが出来る。
【0120】
実施例2:アンペロメトリー検出
工程1:
溶液中で、酵素が飽和状態で機能しており(即ち基質に関して限定されない)、そして当該触媒反応が不可逆的である場合、以下の式が成り立つ:
[O](t) = [酵素]total. kcat .t [等式1]
ここで:
-[O](t):時間tにおける溶液中に形成された酸化供与体の濃度(mol.L-1),
-[酵素]total:溶液中に存在するグラフトされた酵素の全濃度(mol.L-1)
-kcat:グラフトされた酵素の分子活性(mol.mol-1.min-1又はmin-1)
-t:グラフトされた酵素により触媒される反応の時間(min)
【0121】
定数は、より正確には、溶液中に存在する酵素分子あたり、及び単位時間あたりに形成される酸化供与体の分子の数を表す。
【0122】
選択された酵素において、その動態がミカエリスメンテン型の動態によりモデル化することができ(文献Veitch et al. Phytochemistry 65, 249-259 (2004)に記載、実験的に実証された)、当該酵素は、基質[S]の濃度が限定されないとき、飽和状態で機能する:[S]>10xKm(Km=当該選択された酵素のミカエリスメンテン定数で、mol.L-1で表される)。本実験のために、固定された濃度[S]は、使用される酵素濃度の範囲に関係無く、常にこの条件に適合するように選択される。
【0123】
工程2:
拡散によりコントロールされるスケジュールにおいて、時間tで生じた電流:I(t)は、電極の酸化供与体の還元に関連し、限定的な拡散電流である。この電流は、陰極還元電流であるため、以下の式により消極的にカウントされる:
I(t)=-n.F.S.Do.[O](t)/δ [等式2]
ここで:
-I(t):時間tで生じた還元電流(A又はC.s-1)
-[O](t):時間tでの溶液中に形成される酸化供与体の濃度(mol.m-3)
-n:e-が交換されたもの(-)のnb
-F:ファラデー定数(C.mol-1)
-S:活性電極の表面積(m2)
-Do:OからのRDEに向けての拡散の係数(m2.s-1)
-δ:拡散層(m)
【0124】
当該式は、電流の減少を、一定時間に形成される酸化供与体の量の増大に置き換えるものである。
【0125】
溶液中の流体の流れが作用電極に固定されている場合:この場合、回転円盤電極が使用され、及び当該電極の回転の速度が、電極で消費される酸化供与体Oの量が、溶液中に存在する酸化供与体Oの総数の1%未満となるように、任意の1つの時間に選択される場合、酸化供与体の作用電極への移動は、拡散によりコントロールされる。
【0126】
等式1と等式2を組み合わせて、以下の当式を得られる:
I(t)=-n.F.S.Do.kcat.t.[酵素]total/δ [等式3]
【0127】
一定時間後、この電流は安定化する(電子供与体Rが全て酸化することにより)。これらの条件下、酸化供与体Oの濃度は一定となり、そして限界拡散電流は一定となる。いわゆる定常モードの限界拡散電流であり、Istationaryと表記される。
【0128】
等式3によると、有意な電流のために充分な時間tが選択される場合、当該時間で測定された電流を、溶液中に存在する酵素の全量と関連付けることが出来ると考えられる。
【0129】
しかしながら、より正確を期するために、及び電流基準の制限を免れるため、好ましくは、等式3を時間との関連で導き出すことにより定められる原点Vo(A.s-1)を通る勾配を使用するのが好ましい:
Vo = (dI/dt)t=0 = - n.F.S.Do.kcat.[酵素]total/δ=一定 [等式4]
即ち絶対値において:|Vo|=|(dI/dt)t=0|= n.F.S.Do.kcat.[酵素]total/δ [等式5]
【0130】
従って、勾配Voの実験的な測定により、並びにアンペロメトリー及び/又はスペクトロメトリーにより得られた較正曲線を用いて、測定セル中のグラフトされた酵素の量、即ち測定セル中の生体トレーサーの量を、そして体積を考慮することで、供給物中のトレーサーの量を評価することが可能である。
【0131】
前記生体トレーサーと検討中の試験における検出方法との組合せの使用を説明するために、一般的なフローチャートを図6に示す。
【0132】
異なる時点で実施した前記試験は、濾過の過程での、透過物中の生体トレーサーの濃度の変化についての知見を提供する。供給物及び保持物(又は濃縮物)は、同様のアプローチを使用して解析できる。
【0133】
1.測定系及びプロトコール
試薬及び機材
試薬:
- -3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMBとも称される)(SIGMA Aldrich, ref. 8 7750)
- 過酸化水素 (ROTH, Hydrogen Peroxide 30 %安定化、ref. 8070)
- 緩衝剤及び電解質の生産に必要な塩:
NaCl (Roth, ref. 3957)
Na2HPO4, 2H2O (Roth, ref. 4984)
NaH2PO4, 2H2O (Roth, ref. T879)
クエン酸(Sigma, ref. 251275)
【0134】
機材
完全アンペロメトリー検出システム(Metrohm)
選択された定電位電解装置はMicroAutolab(Metrohm)であり、30fAの分解能を有し、良好な反復性でnAまで測定する。アンペロメトリーセルは、温度調節が可能な、Karl Fisherガラスセル(Metrohm)に平らな蓋を付けて、電極の洗浄及び配置を容易とし、当該セルの最大容積は130mlである。選択された作用電極はMetrohm回転円盤電極(RDE)であり、その活性表面は、直径5〜3mmのプラチナ円盤で、セルの動作量(work volume)に適合させられる。作用電極は、電極の本態と回転シャフトの間が水銀で接触させられているため、最小のノイズでシグナルが伝達される。RDE用のサーボコントロールシステムは、100〜1000rpmの速度の回転を可能とする。対電極はプラチナのワイヤー電極で、作用電極の6.5倍の面積の選択された活性表面を有する。選択された参照電極は、ダブルジャンクションAg/AgCl電極である。
【0135】
セルの体積、作用電極の材料及び表面積、対電極の表面積及び寸法等のパラメーターは、検出システムの最適化及び様々な所望の応用に関連して変化してもよい旨留意されたい。
【0136】
b.測定プロトコール
選択された酵素は、様々な電子供与体の使用を可能とする。参照した文献(Volpe et al., Analyst, June 1998, Vol. 123 (1303-1307))の記載を考慮して、本実施例において、電子供与体としてTMBを使用する。酵素はHRPであるため、酸化剤は過酸化水素とする。過酸化水素の濃度のTMBの濃度に対する比率は、5とする。
【0137】
分析対象溶液の全量は、このシステムにおいて、78mlに固定される。試薬:即ちTMB及び過酸化水素の濃度は、酵素が飽和的に機能するように選択される。自然発生的な反応を制限するため、TMBの量は、過酸化水素の量よりも少なくする。選択される緩衝電解質は、pH=5の0.1mol.L-1クエン酸-リン酸緩衝剤で、0.1mol.L-1のNaCl電解質も含有する。作用電極の活性表面として、5mmのプラチナ円盤が選択される。RDEの回転速度は、1130rpmに設定される。
【0138】
いずれかの測定を行う前に、ブランク(即ちTMB及び過酸化水素のみ存在する状態)の解析を行い、生じた電流の中で、つまり測定された原点を通る勾配の中で、自然発生的な反応によるものの占める割合を定量する。
【0139】
TMBの酸化のメカニズムは、2段階メカニズムであって(Josephy et al., The Journal of Biological Chemistry, Vol. 257, n°7, Issue of April 10, pp. 36669-3675, 1982)、TMBの2つの酸化形態を生じ:第一段階でTMBox1と表記される部分的に酸化した中間体を生じ、そして第二段階でTMBox2と表記される完全に酸化した化合物を生じる。
【0140】
TMBox1又はTMBox2のいずれをアッセイの対象に選択してもよい。TMBox2をアッセイの対象とする場合(Fanjul-Bolado et al., Anal. Bioanal. Chem. (2005) 382: 297-302)、測定プロトコールは、以下の工程を含むものとなる:
-1つ以上の生体トレーサー、試薬のTMB及び過酸化水素、並びに緩衝電解質を含有する溶液をインキュベーションする工程(アンペロメトリー測定セル中で、攪拌しながら1〜30分行われる)
-溶液中に存在し得る全てのTMBox1を酸化してTMBox2とするように、濃縮リン酸を添加する工程
-リン酸添加後に電流を測定する工程
【0141】
本実施例において、TMBox1をアッセイに用いるのが好ましい。試料を解析するにあたり、測定セル中に試料が置かれる。分極電圧は、240mVに固定される。試料の体積は、最大で60mLと設定されている。セルの体積は、それから試薬の体積を引いて、緩衝電解質で完結する。RDEは固定して回転させられ、解析される体積の混合を保証するのに充分である。続いてTMBを添加し、更に過酸化水素を添加する。過酸化水素を添加した直後、データ取得を開始する。解析は、溶液の脱酸素をせずに、室温で実施される。ブランクのデータ取得時間は、解析の最長継続時間で固定される。試料の解析のデータ取得時間は、データを取得する点の数が勾配Voの測定を良好な正確性で行うのに充分となるように選択される。解析の時間は、1〜15分である。
【0142】
図7aは、アンペロメトリー曲線の一例である。同一の生体トレーサー供給物の4つの体積が解析され、それらは測定セル中の生体トレーサーの4つの濃度に対応し、天然ファージカウントユニットで表現される:C0、2.00 x C0、4.65 x C0及び5.80 x C0)。図7bは、本実施例に関する較正線を示す(測定された勾配とセル中のトレーサー濃度との関数を与える)。トレーサー濃度と勾配の関数の直線性は、当該濃度範囲では、グラフトは均一とみなすことが出来るという事実を示す。
【0143】
図10は、供給物、並びにマイクロ濾過膜MF及び限外濾過膜UFにおける濾過後に回収された透過物を解析して得られたアンペロメトリー応答の例を示す。特に、MF透過物で得られた応答は、マイクロ濾過膜が、トレーサーの通過を部分的に可能にすることを実証している。なぜなら、MF透過物に対応するアンペロメトリー勾配が、供給物の勾配よりも緩いからである。UF透過物の応答はブランクの応答と類似しており、これは、UF透過物中にトレーサーが検出されなかったことを示す。図10に示されたこの結果は、当該開発された方法の、異なる膜の挙動を特徴付ける能力を強調する。
【0144】
図11は、飲用水の生産に使用される損傷のある中空糸を有する限外濾過モジュールを用いて得た保持の動的特性の例を示す。この実験において、トレーサーの増量は、具体的には合計の濾過時間の3分の1あたりで行われ(膜透過圧が定常状態になる前に行われる)、透過物は、解析の為に濾過の間に回収された。濾過の間に回収された透過物において測定したトレーサー濃度は、濾過の時間の関数として示される。得られた結果は、特に、膜によるトレーサーの保持の動的なモニタリングが可能であることを示す。従って、トレーサーの濃度は、最初に注入時間の中間にかけて最大値に達するまで増大し、それから低下したことを観察することが出来た。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象試料中の生体トレーサーをアンペロメトリーにより検出する方法であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、前記方法。
【請求項2】
前記検出方法が:
-アンペロメトリーセルを調製する工程と、
-発生した電流をアンペロメトリーにより測定する工程と
を含み、
当該セルが:
-作用電極、
-対電極、
-参照電極を有し、
これらの3つの電極が定電位-定電流により接続されており;
-分析対象試料及び請求項1で定義された1つ以上の生体トレーサーを含む溶液、
-電解質、
-酸化剤、
-電子供与体(R)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子供与体が、ヨウ化物又は3,3'、5,5'-テトラメチルベンジジンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記作用電極が、プラチナ、ガラス状炭素又は金からなる群から選択される材料からなる、請求項2又は3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記対電極がプラチナ電極である、請求項2、3又は4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が過酸化水素である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バクテリオファージがMS2ファージである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電解質が更に緩衝剤を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性化ビオチン分子が、1級アミンと反応することが可能なビオチンの中から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素プローブが:
-活性化ビオチンと相互作用することが可能なタンパク質担体、及び
-酸化還元酵素タイプの酵素
を含有する複合体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質担体が、ニュートラビジン、アビジン又はストレプトアビジンの中から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項10又は11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
濾過系をモニタリングする方法であって:
-系の供給物(feed)に1つ以上の生体トレーサーを加える工程であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、工程、
-請求項1〜12のいずれか1項の記載に従い、アンペロメトリーにより、濾過系の透過物(permeate)及び/又は保持物(retentate)中の、生体トレーサーを検出する工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、更に:
-前記系の供給物の中の生体トレーサーを検出する工程、続いて
-透過物及び/又は保持物で得られる電流と当該供給物において得られる電流を比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項15】
標識されたMS2バクテリオファージからなる生体トレーサーであって、当該バクテリオファージがその表面に、当該バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた、1つ以上の酵素プローブを有する、前記生体トレーサー。
【請求項16】
前記酵素プローブ及び/又は活性化ビオチン分子が、請求項1〜12のいずれか1項に定義されたものである、請求項15に記載の生体トレーサー。
【請求項17】
以下の工程:
-標識されるバクテリオファージの表面に存在する1つ以上のタンパク質に1つ以上の活性化ビオチン分子を不動化させる工程、及び
-当該ビオチンに酵素プローブをグラフトさせる工程
を含む、請求項15又は16のいずれかに記載の生体トレーサーを調製する方法。
【請求項18】
前記標識されて得られた生体トレーサーを精製する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記精製がHPLC-SECにより実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
標識されるバクテリオファージを増幅により生産し、続いて懸濁及び精製する前工程を更に含む、請求項17、18又は19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記活性化ビオチン分子が、バクテリオファージの表面タンパク質のリシン上に不動化される、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
バクテリオファージあたりにグラフトされたプローブの平均数を定量する工程を更に含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
キットであって:
- 1つ以上の生体トレーサーを含む溶液であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、溶液;及び
-作用電極、対電極及び参照電極を含むアンペロメトリーセル、
-電解質、
-電子供与体、及び
-酸化剤
を含むキット。
【請求項24】
更に緩衝剤を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記溶液、電極及び/又は生体トレーサーが、請求項2〜12のいずれか1項に定義されたものである、請求項23又は24のいずれかに記載のキット。
【請求項1】
分析対象試料中の生体トレーサーをアンペロメトリーにより検出する方法であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、前記方法。
【請求項2】
前記検出方法が:
-アンペロメトリーセルを調製する工程と、
-発生した電流をアンペロメトリーにより測定する工程と
を含み、
当該セルが:
-作用電極、
-対電極、
-参照電極を有し、
これらの3つの電極が定電位-定電流により接続されており;
-分析対象試料及び請求項1で定義された1つ以上の生体トレーサーを含む溶液、
-電解質、
-酸化剤、
-電子供与体(R)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子供与体が、ヨウ化物又は3,3'、5,5'-テトラメチルベンジジンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記作用電極が、プラチナ、ガラス状炭素又は金からなる群から選択される材料からなる、請求項2又は3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記対電極がプラチナ電極である、請求項2、3又は4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が過酸化水素である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バクテリオファージがMS2ファージである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電解質が更に緩衝剤を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性化ビオチン分子が、1級アミンと反応することが可能なビオチンの中から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素プローブが:
-活性化ビオチンと相互作用することが可能なタンパク質担体、及び
-酸化還元酵素タイプの酵素
を含有する複合体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質担体が、ニュートラビジン、アビジン又はストレプトアビジンの中から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項10又は11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
濾過系をモニタリングする方法であって:
-系の供給物(feed)に1つ以上の生体トレーサーを加える工程であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、工程、
-請求項1〜12のいずれか1項の記載に従い、アンペロメトリーにより、濾過系の透過物(permeate)及び/又は保持物(retentate)中の、生体トレーサーを検出する工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、更に:
-前記系の供給物の中の生体トレーサーを検出する工程、続いて
-透過物及び/又は保持物で得られる電流と当該供給物において得られる電流を比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項15】
標識されたMS2バクテリオファージからなる生体トレーサーであって、当該バクテリオファージがその表面に、当該バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた、1つ以上の酵素プローブを有する、前記生体トレーサー。
【請求項16】
前記酵素プローブ及び/又は活性化ビオチン分子が、請求項1〜12のいずれか1項に定義されたものである、請求項15に記載の生体トレーサー。
【請求項17】
以下の工程:
-標識されるバクテリオファージの表面に存在する1つ以上のタンパク質に1つ以上の活性化ビオチン分子を不動化させる工程、及び
-当該ビオチンに酵素プローブをグラフトさせる工程
を含む、請求項15又は16のいずれかに記載の生体トレーサーを調製する方法。
【請求項18】
前記標識されて得られた生体トレーサーを精製する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記精製がHPLC-SECにより実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
標識されるバクテリオファージを増幅により生産し、続いて懸濁及び精製する前工程を更に含む、請求項17、18又は19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記活性化ビオチン分子が、バクテリオファージの表面タンパク質のリシン上に不動化される、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
バクテリオファージあたりにグラフトされたプローブの平均数を定量する工程を更に含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
キットであって:
- 1つ以上の生体トレーサーを含む溶液であって、前記生体トレーサーが標識されたバクテリオファージからなり、前記バクテリオファージがその表面に、前記バクテリオファージのキャプシドの1つ以上のタンパク質に予め結合させた1つ以上の活性化ビオチン分子を介してグラフトされた1つ以上の酵素プローブを含む、溶液;及び
-作用電極、対電極及び参照電極を含むアンペロメトリーセル、
-電解質、
-電子供与体、及び
-酸化剤
を含むキット。
【請求項24】
更に緩衝剤を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記溶液、電極及び/又は生体トレーサーが、請求項2〜12のいずれか1項に定義されたものである、請求項23又は24のいずれかに記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−513598(P2012−513598A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542869(P2011−542869)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052571
【国際公開番号】WO2010/072947
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052571
【国際公開番号】WO2010/072947
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】
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