説明

新規生理活性組成物

【課題】シノブノキ由来化合物から得られる有用な抗酸化剤等の生理活性化合物の提供。
【解決手段】次式(1)


[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基を表す]で表される化合物の他、アグリコン部分が異なる特定の7種類の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シノブノキ由来の優れた生理活性を示す新規天然化合物、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの配糖体ならびに該化合物を有効成分とする抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の開発において天然物化学の寄与するところが極めて大きく、天然有機化合物をモデルとしてさまざまな医薬品が開発されるようになってきた。重要な薬理活性を有する医薬品素材となる天然有機化合物を探索することは極めて重要である。沖縄県は本邦南西部に位置し、その温暖な気候と海に囲まれた特徴的な環境から本州とは異なった生態系を持っており、未利用植物資源の宝庫となっている。この地域に自生する植物には化学的研究がなされていないものも多く、有用資源探索研究の対象として非常に興味深い。
【0003】
一方、好気性条件化で生存している生命体において、酸化ストレスにより産生されるフリーラジカルは、生体分子の傷害因子としてとらえられてきたが、フリーラジカルとしてNO(一酸化チッソ)が、生体内(細胞内)での重要な情報伝達因子として理解されるようになり、フリーラジカルが生命現象に普遍的な、そして重要な細胞・生体調節因子としての役割が明らかとなってきている。
【0004】
酸化ストレスは多くの疾患、例えば腫瘍(癌)、炎症、神経変性疾患、循環器疾患、消化器疾患、腎疾患、皮膚疾患、代謝疾患、呼吸器疾患、血液疾患、眼疾患、歯科疾患等との関連が報告されており(非特許文献1)、生体における重要な反応と認識されている。
【非特許文献1】吉川敏一編、別冊「医学のあゆみ」酸化ストレス Ver.2、フリーラジカル医学生物学の最前線、3−445p、(2006)(医歯薬出版)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のごとく、酸化ストレス等に対応できる、有用な抗酸化剤の出現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、驚くべきことにシノブノキ由来の優れた抗酸化効果を有する化合物(1)−化合物(8)の新規化合物を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、化学式(1)−化学式(8)で表される化合物、それらの塩、それらのエステル誘導体およびそれらの配糖体からなる群から選択される1以上の有効量の化合物を有効成分として含有する抗酸化剤を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【0016】
【化5】

【0017】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【0018】
【化6】

【0019】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【0020】
【化7】

【0021】
【化8】



【0022】
[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
Glc:(β−D−グルコピラノシル基) は、以下に示すものである。
【0023】
【化9】

【0024】
それらの塩とは、化合物(1)−化合物(8)のフェノール性の水酸基の水素にナ
トリウムまたはカリウムなど一価の金属イオンのみならず2価のカルシウム、亜鉛、マグネシウムなどが置換した塩を含む。またそれらのエステルとは、化合物(1)−化合物
(8)のフェノール性の水酸基と酢酸等の脂肪酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸とのエ
ステルなどを含む。脂肪酸とは飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸を含み、鎖長については短
鎖、中鎖および長鎖を含み、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリ
ル酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン
酸、リグノセリン酸、デセン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、ア
ラキドン酸,エイコサペンタエン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また芳
香族脂肪酸とは、安息香酸、安息香酸のオルト、メタおよび/またはパラ位にアミノ基、水
酸基等の置換基を有するものも含まれ、ナフトエ酸等の多環芳香族のカルボン酸も含む。
【0025】
配糖体の糖の種類としてはエリトロース、 トレオース、 リボース、 アラビノース、 キシロース、 リキソース、 アロース、 アルトロース、 グルコース、マンノース、 グロース、 イドース、 ガラクトース、 タロースなどのアルドース類のほか、エリトルロース、 リブロース、 キシルロース、プシコース、 フラクトース、 ソルボース、 タガトースなどのケトース類を含む。またこれらの糖はD-系列およびL-系列のいずれであってもよく、一つであっても複数個が結合してもよい。また単一種類の糖でも複数種の糖が結合してもよい。結合位置は酸素を介しても炭素に直接結合してもよい。
【0026】
それらのエステル誘導体および配糖体は、標的到達性および/または徐放性プロドラッグ等として使用可能である。
【0027】
本発明の化合物は、腫瘍(癌)、炎症、神経変性疾患、循環器疾患、消化器疾患、腎疾患(腎不全等)、皮膚疾患(老化皮膚等)、代謝疾患、呼吸器疾患(急性肺障害、気管支喘息など)、血液疾患、眼疾患(網膜疾患、白内障等)および歯科疾患(歯周病、顎関節症)等の治療、予防および/または予後の改善に使用することが出来る。
【0028】
本発明によって治療、予防、および/または予後の改善が可能な悪性腫瘍(癌)には、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、胆嚢癌、ホジキン病、下咽頭癌、喉頭癌、口唇口腔癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、睾丸癌、および、甲状腺癌が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
代謝疾患としては、血圧、血糖、中性脂肪、HDLのレベルで基準が決められており、関連する疾患としては動脈硬化症、高脂血症、高血圧症、糖尿病・耐糖能異常(境界型糖尿病)、心筋梗塞、脳梗塞、インスリン抵抗性・高インスリン血症などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALSポリグルタミン病(ハンチントン舞踏病などの遺伝性疾患)、プリオン病(BSE(ウシ海綿状脳症)、クロイツフェルト-ヤコブ病など)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
循環器疾患としては動脈硬化、虚血性心疾患(狭心症 心筋梗塞 )、弁の疾患(リウマチ熱 、僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症 、僧帽弁閉鎖不全症 )、 大動脈弁閉鎖不全症、先天性心疾患、動静脈の疾患(高血圧、低血圧、大動脈疾患および静脈疾患)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、シノブノキ由来の優れた抗酸化活性を有する化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0034】
(略号の説明)
以下に本明細書で使用される略号を説明する。
1H NMR: Proton Nuclear Magnetic Resonance
1H核磁気共鳴)
13C NMR: Carbon-13 Nuclear Magnetic Resonance
13C核磁気共鳴)
HR-FAB-MS: High Resolution Fast Atom Bombardment Mass Spectroscopy(高分解能高速原子衝撃質量分析法)
HR-ESI-MS: High Resolution Electro Spray Ionization Mass Spectroscopy
(高分解能エレクトロスプレーイオン化質量分析法)
COSY: HH-Correlation Spectroscopy
HMBC: Heteronuclear Multiple Bond Connectivity
PNOESY: Phase sensitive NOE correlated Spectroscopy
(位相検知NOE相関スペクトル)
IR: Infrared Spectroscopy
(赤外吸収スペクトル)
UV: Ultraviolet Spectroscopy
(紫外線吸収スペクトル)
CD: Circular Dichroism
(円二色性スペクトル)
HPLC: High-Performance Liquid Chromatography
(高速液体クロマトグラフィー)
DCCC: Droplet Counter Current Chromatography
(液滴向流分配クロマトグラフィー)
CC: Column Chromatography
(カラムクロマトグラフィー)
TLC: Thin Layer Chromatography
(薄層クロマトグラフィー)
ODS: Octadecylsilanized Silica gel
(オクタデシルシリル化シリカゲル)
Cpd: Compound
(化合物)
fr.: fraction
(画分)
br.: broad
s : singlet
d: doublet
t: triplet
q: quartet
quint.: quintet
m: multiplet
(活性の評価)
DPPH(α,α−diphenyl−β−picrylhydradil)は517nmに極大吸収を持つ紫色の安定ラジカルであり、水素を得ることにより無色のヒドラジンになる。この呈色反応を利用してラジカル捕捉活性を測定した。まず、上記有機化合物をエタノールに溶解して試料溶液を0.5ml調整した。続いて、各試料溶液に0.15mMのDPPH溶液(溶媒はエタノール)を0.5ml加えて攪拌し、暗所にて1時間反応させた後に517nmにおける吸光度を測定した。一方、α−トコフェロールを比較対照として抗酸化活性を評価した。
【0035】
(処方)
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または薬学的アジュバント。
【0036】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0037】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0038】
(薬学的組成物)
本明細書において薬剤の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効を発現することができる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
【0039】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間〜1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0040】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0041】
本発明では、いったん類似の種類(例えば、ヒトに対するマウスなど)の生物、培養細胞、組織などに関し、ある特定の糖鎖構造の分析結果と、疾患レベルとが相関付けられた場合、対応する糖鎖構造の分析結果と、疾患レベルとが相関付けることができることは、当業者は容易に理解する。そのような事項は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。
【0042】
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、疾患または障害(例えば、感染症)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
【0043】
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、例えば、「治療薬マニュアル2006」医学書院 監修:高久 史麿/矢崎 義雄、編集:関 顕/北原 光夫/上野 文昭/越前 宏俊に従って処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
【0044】
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0045】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0046】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
【0047】
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
【0048】
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
【0049】
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0050】
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブラン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0051】
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した1%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
【0052】
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
【0053】
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらにより本発明がなんら限定されるものではない。
【0055】
<化合物の分析方法>
(旋光度)
旋光度はJASCO P-1030 (日本分光工業)デジタル旋光度計を用いて測定した。測定溶媒
及び温度は各測定値に付記した。
(核磁気共鳴(NMR)スペクトル)
JEOL a-400およびJEOL ECA-600(日本電子)核磁気共鳴装置を使用して測定した(共鳴周波数:1H NMR:400 MHzおよび600 MHz、13C NMR:100 MHzおよび150 MHz)。いずれも
溶媒中のDシグナルをinternal lock signalとした。ケミカルシフト値の表示は内部標準
物質テトラメチルシラン (TMS) からのδ値 (ppm) で示し、1H NMRスペクトルにおける結合定数は括弧内にHz単位で記した。シグナルの多重度の表記には以下の略号を用いた。s :singlet, d :doublet, t :triplet, q :quartet, m :multiplet, br. :broad
(質量分析(MS))
高分解能ESI-MSはApplied BiosystemsのQSTAR XL systemにより測定した。
(赤外吸収 (IR) スペクトル)
赤外吸収スペクトルはHORIBA FT-710(堀場製作所)分光光度計を使用し、フィルム法
にて試料を調製し測定した。
(紫外吸収 (UV) スペクトル) JASCO V-520(日本分光工業)分光光度計を使用し、層長1 cmの石英製セルを用いて測
定した。測定溶媒はメタノールを用いた。
(円偏光二色性 (CD) スペクトル)
円偏光二色性はJASCO J-720(日本分光工業)円二色性分散計を使用して測定した。測
定溶媒はメタノールを用いた。
<クロマトグラフィー>
(順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー)
230-400 meshのkiesel gel 60 Silica gel (Merck) を使用した。
【0056】
(逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー)
Cosmosil75 C18OPN (NacalaiTesque) を使用した。
【0057】
(逆相系多孔性樹脂カラムクロマトグラフィー)
DiaionHP-20 (三菱化学) を使用した。
【0058】
(サイズ排除カラムクロマトグラフィー)
SephadexLH-20 (GE Healthcare)を使用した。
【0059】
(高速液体クロマトグラフィー)
分取用カラムにInertsil ODS(6.0×250 mm, ガスクロ工業)およびCosmosil 5C18-AR-II (20×250 mm, NacalaiTesque) を使用し、検出にUV 8000(東ソー)、RI 8000(東ソー)、溶媒にメタノール‐水系、メタノール‐2-プロパノール‐水系およびアセトニトリル‐水系を用いて、流速1.6 ml/min または5.0 ml/minで、紫外部吸収の検出波長
は254 nmで行った。
(薄層クロマトグラフィー (TLC))
TLCプレートとして厚さ0.25 mmのSilica gel 60 F254 (Merck) を使用し、プレート上のスポットはUV (254 nm) 照射及び10%硫酸を噴霧後、加熱し呈色させ検出した。
【0060】
<化合物(1)〜(9)の製造方法>
シノブノキの乾燥葉 (6.37 kg) をメタノールで3回 (4.5 L×3) 抽出し、3.0 Lに濃縮後、ヘキサン3 Lで分配抽出。メタノール層を濃縮後、水3.0 Lで懸濁し、酢酸エチル、ブタノールそれぞれ3.0 Lで連続的に分配、濃縮し、ヘキサン層 (32.6 g)、酢酸エチル層 (160 g)、ブタノール層 (405 g)、水層 (475 g) を得た。
【0061】
このうちブタノール可溶画分 (237 g) を水とメタノールの混合溶媒 [水‐メタノール (4 : 1, 6 L)、(3 : 2, 6L)、(2 : 3, 6 L)、(1 : 4, 6 L)、メタノール6 L]を用いた逆相系多孔性樹脂Diaion HP-20カラムクロマトグラフィー(内径7.5cm×高さ50cm、1フラクション=1L)に付した。
【0062】
Diaion HP-20カラムクロマトグラフィーで得られた20 %メタノール溶出画分 (フラクション4〜6, 19.9 g)を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒 [クロロホルム3 L、クロロホルム‐メタノール(98 : 2, 3 L)、(96 : 4, 3 L)、(92 : 8, 3 L)、(90 : 10, 3 L)、(87.5 : 12.5, 3 L)、(85 : 15, 3 L)、(80 : 20, 3 L)、(75 : 25, 3 L)、(70 : 30, 3 L)、(60 : 40, 3 L)、クロロホルム‐メタノール‐水 (60 : 40 : 3) 3.12L]を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー (内径5 cm×高さ48.5 cm、1フラクション=500mL) に付し、20〜25 %メタノール溶出画分のフラクション46〜52 (3.84 g) を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー (10 %メタノール1 L→50 %メタノール1 L ; linear gradient) にかけ、フラクション62〜69より化合物(6)(187 mg) を得た。
【0063】
Diaion HP-20カラムクロマトグラフィーで得られた20〜40 %メタノール溶出画分の母液 (フラクション7〜12, 45.1 g)を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒[クロロホルム4.5 L、クロロホルム‐メタノール (98 : 2, 4.5L)、(96 : 4, 4.5L)、(95 : 5, 4.5 L) (92 : 8, 4.5 L)、(90 : 10, 4.5 L)、(87.5 : 12.5, 4.5 L)、(85 : 15, 4.5 L)、(82.5 : 17.5, 4.5 L)、(80 : 20, 4.5 L)、(75 : 25, 4.5 L)、(70 : 30, 4.5 L)、クロロホルム‐メタノール‐水 (70 : 30 : 4) 4.68L]を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー (内径5.5 cm×高さ45.8 cm、1フラクション=500mL) に付した。
【0064】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーで得られた12.5〜15 %メタノール溶出画分のフラクション61〜66 (2.61 g)のうち1.76 gを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー (10 %メタノール1 L→50 %メタノール1 L ; linear gradient) にかけ、フラクション88〜99 (204mg) とフラクション100〜119 (548 mg) とフラクション133〜159 (435 mg) を得た。そのうち、フラクション88〜99 (204mg)を液滴向流クロマトグラフィーにかけ、フラクション20〜24 (27.2mg) とフラクション25〜28 (38.5 mg) とフラクション29〜34 (39.0 mg) を得た。そのうち、フラクション20〜24 (27.2 mg) を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 3) で精製し、その保持時間15分のピークから化合物(1)(7.9 mg) を得た。液滴向流クロマトグラフィーで得られたフラクション25〜28 (38.5 mg)を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 3) で精製し、その保持時間16分のピークから化合物(1) (3.7 mg)を得た。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで得られたフラクション100〜119 (548 mg)を液滴向流クロマトグラフィーにかけ、フラクション25〜35 (170mg)を得た。フラクション25〜35 (170mg) を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 3) で精製し、その保持時間13分のピーク(80.4 mg)を得、再度、高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 4) で精製し、その保持時間43分のピークから化合物(2)(21.3 mg)を得た。
【0065】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーで得られた12.5〜15 %メタノール溶出画分のフラクション67〜73 (2.01 g)のうち1.85 gを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー (10 %メタノール1 L→50 %メタノール1 L ; linear gradient) にかけ、フラクション70〜88 (273mg) とフラクション100〜115 (458 mg) を得た。そのうち、フラクション70〜88 (273mg) を液滴向流クロマトグラフィーにかけ、フラクション12〜18 (130mg) とフラクション19〜23 (64.7 mg) を得た。そのうち、フラクション12〜18 (130mg) を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 4) で精製し、その保持時間10分のピークからフラクション1(33.8 mg)を、その保持時間13分のピークからフラクション2 (27.7 mg)を得た。そのうちフラクション1(33.8 mg)を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 4) で精製し、その保持時間10分のピークから化合物(7)(3.8 mg)を、その保持時間13分のピークから化合物7 (5.4 mg)を得た。この溶出時間の異なるピークはアノマー位の異性化によるもので、しばらく静置すると平衡状態に達することがわかった。高速液体クロマトグラフィーで得られたフラクション2 (27.7 mg) を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 4) で精製し、その保持時間10分のピークから化合物(7) (8.7 mg)を、その保持時間13分のピークからフラクション2 (7.0 mg)を、残渣から11.2mgを得た。高速液体クロマトグラフィーで得られたフラクション2 (7.0 mg) を高速液体クロマトグラフィー (メタノール : 水=1 : 4) で精製し、その保持時間8分のピークから化合物(5) (1.0 mg)を、その保持時間13分のピークから化合物(7) (4.5 mg)を得た。高速液体クロマトグラフィーで得られた残渣(11.2mg)を高速液体クロマトグラフィー(メタノール : 水=1 : 4) で精製し、その保持時間8分のピークから化合物(5) (0.9 mg)を得た。液滴向流クロマトグラフィーで得られたフラクション19〜23 (64.7 mg) を再度、液滴向流クロマトグラフィーにかけ、フラクション14〜16から化合物(4)(12.2mg)を得た。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで得られたフラクション100〜115 (458 mg)を液滴向流クロマトグラフィーにかけ、フラクション23〜27より化合物(3)(175mg)を得た。
【0066】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーで得られた17.5〜25 %メタノール溶出画分のフラクション74〜87 (3.85 g)のうち1.74 gを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー (10 %メタノール1 L→50 %メタノール1 L ; linear gradient) にかけ、フラクション70〜88 より化合物(4)(41.7mg) を得た。
【0067】
化合物(1)の性状および分析データを表1および表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
化合物(2)の性状および分析データを表3および表4に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
化合物(3)の性状および分析データを表5および表6に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
【表6】



【0076】
化合物(4)の性状および分析データを表7および表8に示す。
【0077】
【表7】

【0078】
【表8】



【0079】
化合物(5)の性状および分析データを表9および表10に示す。
【0080】
【表9】

【0081】
【表10】

【0082】
化合物(6)の性状および分析データを表11および表12に示す。
【0083】
【表11】

【0084】
【表12】

【0085】
化合物(7)の性状および分析データを表13および表14に示す。
【0086】
【表13】

【0087】
【表14】

【0088】
化合物(8)の性状および分析データを表15および表16に示す。
【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
<抗酸化効果試験>
DPPH(α,α−diphenyl−β−picrylhydradil)は517nmに極大吸収を持つ紫色の安定ラジカルであり、水素を得ることにより無色のヒドラジンになる。この呈色反応を利用してラジカル捕捉活性を測定した。まず、上記有機化合物をエタノールに溶解して試料溶液を0.5ml調整した。続いて、各試料溶液に0.15mMのDPPH溶液(溶媒はエタノール)を0.5ml加えて攪拌し、暗所にて1時間反応させた後に517nmにおける吸光度を測定した。一方、α−トコフェロールを比較対照として評価した。表17には、活性がほとんど確認されなかった場合は、“±”で示し、活性が確認されたが弱い場合は“+”で示し、活性が十分に確認された場合は“++”で示し、強い活性が確認された場合は、“+++”で示している。
【0092】
【表17】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に従って、効能の優れた抗酸化活性化合物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される化合物。
【化1】



[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【請求項2】
下記化学式(2)で表される化合物。
【化2】


[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【請求項3】
下記化学式(3)で表される化合物。
【化3】


[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【請求項4】
下記化学式(4)で表される化合物。
【化4】


[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【請求項5】
下記化学式(5)で表される化合物。
【化5】


[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【請求項6】
下記化学式(6)で表される化合物。
【化6】


[式中、Glcはβ-D-グルコピラノシル基である]
【請求項7】
下記化学式(7)で表される化合物。
【化7】

【請求項8】
下記化学式(8)で表される化合物。
【化8】

【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、または請求項8に記載の化合物の塩。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、または請求項8に記載の化合物のエステル誘導体。
【請求項11】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、または請求項8に記載の化合物にさらに糖が結合した配糖体。
【請求項12】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10および請求項11に記載の化合物、それらの塩、それらのエステル誘導体およびそれらの配糖体からなる群から選択される、少なくとも1以上の有効量の化合物を有効成分として含有する、薬学的生理活性組成物。
【請求項13】
前記生理活性組成物が、抗酸化活性組成物である請求項12に記載の薬学的生理活性組成物。


【公開番号】特開2009−209060(P2009−209060A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51508(P2008−51508)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:日本生薬学会、「日本生薬学会第54回(2007年)年会講演要旨集」平成19年9月1日、表紙、奥付、第57ページに関する部分
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】