説明

新規細菌及び該細菌を用いたグリセロールからのモノアセチンの製造方法

【課題】グリセロールからモノアセチンを生産することができる微生物、及び該細菌を用いたモノアセチン製造方法の提供。
【解決手段】Enterobacter属に属し、グリセロールを基質としてモノアセチンを生産する細菌、特に、受託番号がFERM P-21130、FERM P-21131 または FERM P-21132 である細菌。特定の塩基配列を含む16S rDNAを有する、該細菌。該細菌を、グリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、モノアセチンの製造方法。該細菌を、グリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、グリセロールの分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロールからモノアセチンを生産することができる新規の細菌および該細菌を用いたグリセロールからのモノアセチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題の中でも二酸化炭素排出による地球温暖化が深刻な問題となっている。バイオマスは再生可能なエネルギーの中でもカーボンニュートラルであることから、バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料の導入が世界的規模で進行している。バイオディーゼルは油脂類の主成分であるトリグリセリドをエステル交換反応により脂肪酸メチルエステルにして燃料とするが、本反応に伴って副生するグリセロールの有効利用法の開発がプロセス開発の鍵となっている。近年のバイオディーゼル使用量の急速な増加を考えると、グリセロール問題の解決は急務といえる。またオレオケミカル産業においても、石油代替・再生産可能資源である植物油脂を原料としたプロセスが導入されていることから、同様にグリセロールの有効活用が大きな問題となっている。
【0003】
これまでに、生物的および化学的な触媒システムを用いてグリセロールから有用物質を生産する試みが数多くなされてきた。特にバイオプロセスを利用したグリセロールからの物質生産は、生産コストの低減や、様々な物質が生産可能であるなど利点があり、例えば、クレブシエラ(Klebsiella)属、シトロバクター(Citrobacter)属、クロストリジウム(Clostridium)属、エンテロバクター(Enterobacter)属の細菌による1,3−プロパンジオール生産(非特許文献1、非特許文献2)、ラクトバチルス(Lactobacillus)属の細菌による3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド生産(非特許文献3)、シュードモナス(Pseudomonas)属(非特許文献4)、アルカリゲネス(Alcaligenes)属(非特許文献5)の細菌によるポリ−3−ヒドロキシブチル酸生産、グルコノバクター(Gluconobacter)属の細菌によるD−グリセリン酸生産(特許文献1)などが知られている。
しかしながら、上記の物質は産業的に実用化するに十分な量で得ることは容易ではなく、また、今後産業廃棄物としてますますの増加が予想される余剰グリセロールの有効利用法を拡大していく上で、前述した以外にもバイオプロセスを用いた新たなグリセロール変換物を見出していく必要がある。よって、既知のグリセロール代謝物とは異なる有用化学物質を生産可能な新規微生物を得ることが求められている。
【0004】
【特許文献1】特公平07−51069
【非特許文献1】H.Biebl, K.Menzel, A.P. Zeng, W.D. Deckwer: Appl.Microbiol.Biotechnol.,52,289(1999).
【非特許文献2】H.Biebl, S.Marten, H. Hippe, W.D. Deckwer: Appl.Microbiol.Biotechnol.,36,592(1992).
【非特許文献3】Y.Doleyres, P.Beck, S.Vollenweider, C. Lacroix: Appl.Microbiol.Biotechnol.,68,467(2005).
【非特許文献4】R.D.Ashby, D.K.Y.Solaiman, T.A.Foglia: Biomacromolecules,6,2106(2005).
【非特許文献5】B.Taidi, A.J.Anderson, E.A.Dawes, D.Byron: Appl.Microbiol.Biotechnol.,40,786(1994).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、植物油脂等のエステル交換反応により副生する余剰グリセロールの有効利用のために、グリセロールを基質として物質生産が可能な微生物、特に既知のグリセロール代謝物とは異なる有用化合物を生産可能な新規微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明者等は、各種土壌を分離源とし、グリセロールを炭素源として生育可能な微生物を単離して同定すべく鋭意検討した結果、従来公知の微生物には分類されない、複数の新規微生物を単離することに成功し、本願発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、グリセロールを基質としてモノアセチンを生産する、Enterobacter属の細菌を提供する。
また、本発明はさらに、前記細菌を、グリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、モノアセチンの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前記細菌を、グリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、グリセロールの分解方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、グリセロールから、工業的利用価値のあるモノアセチンを生産することが可能な新規なEnterobacter属の細菌を提供することができる。モノアセチンは、食品乳化剤、溶剤、可塑剤、香料固定剤、潤滑剤等工業的に非常に有用な物質であり、微生物を利用したグリセロールからの変換産物として、これまでにモノアセチンの報告はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者らは、前記細菌を、余剰グリセロールの有効利用を研究目的として、沖縄・伊江島の土壌から17重量%濃度のグリセロールを資化する微生物をスクリーニングすることによって見出したものである。具体的には、本発明の細菌は、グリセロールを基質としてモノアセチンを生産する、Enterobacter属の細菌である。モノアセチンは、食品乳化剤、溶剤、可塑剤、香料固定剤、潤滑剤等工業的に非常に有用な物質であり、微生物を利用したグリセロールからの変換産物として、これまでにモノアセチンの報告はない。
なお、本発明において、グリセロールを基質として生産されるモノアセチンは、下記構造式(1)又は(2)で表される化合物である。また、これらの混合物であってもよい。



【0010】
単離した細菌はグラム陰性の短桿菌で、その菌株についての生理・生化学的試験および16S rDNA塩基配列の相同性解析の結果、腸内細菌(Enterobacteraceae)科エンテロバクター(Enterobacter)属に属する細菌であることが判明した。なお、これら試験は、Bergey's Manual of Systematic Bacteriologyに記載された方法・手段に従って行なった。これまで腸内細菌(Enterobacteraceae)科エンテロバクター(Enterobacter)属に属する細菌が、グリセロールを資化してモノアセチンへを生産するということは報告されていない。
【0011】
本発明の細菌は、腸内細菌(Enterobacteraceae)科エンテロバクター(Enterobacter)属に属し、25〜45℃でグリセロールを炭素源として生育し、グリセロールをモノアセチンへと変換する能力を有する。また、本発明の細菌は、グリセロールを炭素源とした培地の他にも、Nutrient Broth(NB)培地上で生育良好であり、NB培地で継体培養を行なってもグリセロールに対する資化能を失わない、通性嫌気性の細菌である。そして、25〜45℃の温度で、好気条件下で培養できる。
【0012】
以上の性質に加え、今回単離、同定した新規細菌(後述するように、HH7、HH12及びHH31株と命名した)は、以下の表1〜3に記載された菌学的性質を有する。
【0013】
【表1】













【0014】
【表2】






















【0015】
【表3】

【0016】
HH7、HH12及びHH31については、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、それぞれ受託番号FERM P-21130、FERM P-21131及びFERM P-21132として寄託した。従って、本発明の細菌は、好ましくは受託番号がFERM P-21130、FERM P-21131 または FERM P-21132 である細菌である。また、グリセロールからモノアセチンを生産することができる限り、上記細菌の変異株も本発明に包含される。これは、自然突然変異によるものであってもよいし、紫外線照射や化学的変異原処理等、何らかの物理的または化学的処理を施すことによって塩基の付加、欠失、置換等を人工的に誘発したものであってもよい。
【0017】
また、本発明はさらに、配列番号1、2または3に記載の塩基配列との相同性が99.8%以上である塩基配列を含む16S rDNAを有し、かつ、グリセロールを基質としてモノアセチンを生産するEnterobacter属の細菌をも含む。ここで、配列番号1、2、および3は、それぞれ、前述のHH7、HH12及びHH31株の16S rDNAのほぼ全長に相当する領域の塩基配列である。一般的に16S リボソームRNA遺伝子で99.8%以上の相同性を有するものが同一の種であると考えられているため(杉山ら編、新版微生物学実験法、p241-242、講談社サイエンティフィック、1999年)、このような細菌もまた、グリセロールを基質としてモノアセチンを生産し得る限り本発明の範囲に含まれる。なお、本発明における相同性は、ホモロジー検索ソフトBLASTに従って測定される。
【0018】
また、本発明の別の態様では、本発明の細菌をグリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、モノアセチンの製造方法、および前期工程を含むグリセロールの分解方法が提供される。
ここで、本発明の細菌を培養するグリセロールを含む培地の基本的組成は、当該技術分野に知られるものを任意に選択することができる。培地中のグリセロールの量は当業者が適宜決定することができるが、例えば1〜30重量%、好ましくは10〜20重量%、より好ましくは15〜20%、例えば17重量%である。その他、例えば Na2HPO4、KH2PO4、NH4NO3、MgSO4・7H2O、CaCl2・2H2O、FeCl3・6H2O や、酵母抽出液(例えばDIFCO社製BactoTM Yeast Extractなど)を加えることができる。
培養条件は特に制限はないが、例えば25〜45℃、好ましくは25〜35℃、より好ましくは30℃の温度で、試験管中で好気条件下で振とう培養することができる。
【0019】
モノアセチンは当業者が任意の方法により同定することができるが、例えば、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリーにて解析を行ない、保持時間およびマススペクトルに関してモノアセチン標品サンプルと比較をすることなどにより同定することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0021】
(1)細菌の分離・同定
微生物分離源とした、つくば市内及び沖縄・伊江島内より採取した各種土壌サンプルを、薬さじ一杯分、5 mlの培地が入った試験管に入れ、それを約26℃、165 rpmで一週間振とう培養した。培地の組成を表4に示す。
【表4】

【0022】
前述した振とう培養の操作を3−4日に1回繰り返した培養液(3回連続培養)を希釈し、NB平面寒天培地に塗布して約26℃で培養後、生育した細菌のコロニーを、再度、表4に示す培地で培養し、同培地中での菌の生育を基準としてグリセロール資化能を確認した。
【0023】
分離した35の細菌株のゲノムDNAを抽出した。細菌の系統学的位置付けの検討に用いられ、菌種の同定に利用されている16S rDNAを、表5に示す配列番号4及び5のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、4塩基認識制限酵素(HaeIII、HhaI及びAluI)による切断パターンについて解析を行なった。
【表5】

【0024】
上記プライマー及びゲノムDNAを含む反応液を、95℃で1分処理した後、95℃で1分、55℃で1分及び72℃で1.5分からなるサイクルを35サイクル処理し、その後72℃で10分処理した。得られた各細菌株のDNA断片を、上記3種の制限酵素により切断し、切断パターンが同じ菌株は同種の菌株としてグループ化を行なった。その結果、35の菌株は4グループに分類され、各グループの代表株をそれぞれ1株選抜(それぞれ、HH7、HH7-2、HH12、HH31株と命名)した。
【0025】
選抜した各菌株のゲノムDNAについて、表5に示す配列番号4及び5のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、増幅したDNA断片のシークエンス解析を行なった。さらに、表5に示す配列番号6及び7のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、同様に増幅したDNA断片のシークエンス解析を行なった。これらのシークエンスデータをつなぎ合わせて16S rDNAの塩基配列を決定し、選抜菌株の16S rDNAの塩基配列を得た(HH7、HH12、HH31株について、それぞれ配列番号1、2、3)。それらの配列をもとにデータベース(GenBank/DDBJ/EMBL)及びホモロジー検索ソフト(BLAST)を用いてホモロジー検索をしたところ、HH7の16S rDNAの塩基配列は、”Enterobacter cancerogenus”として登録された塩基配列と高い相同性(98.5%)を示し、HH12の16S rDNAの塩基配列は、”Enterobacter aerogenes”として登録された塩基配列と高い相同性(99.6%)を示し、HH31の16S rDNAの塩基配列は、”Enterobacter aerogenes”として登録された塩基配列と高い相同性(98.7%)を示した。しかしながら、これら16S rDNAの塩基配列の全てにおいて、16S rDNAの塩基配列比較時に同種と判断する基準とされる99.8%以上の相同性を示す、在来の微生物は存在しなかった。なお、前述の通り、一般的に16S リボソームRNA遺伝子で99.8%以上の相同性を有するものが同一の種であると考えられており(杉山ら編、新版微生物学実験法、p241-242、講談社サイエンティフィック、1999年)、本願発明における16S リボソームRNA遺伝子の塩基配列比較はこの基準に基づく。
【0026】
また、得られた1400塩基対程度の配列をもとに、分子系統解析を行なった。分子系統解析には、解析ソフトウェアMEGA ver3.1(Kumar et al., Briefings in Bioinformatics. 5, 150-163, (2004))を使用した。また、系統樹作成には、NJ(neighbor-joining: 近隣結合)法を用い、系統樹の枝の信頼性を示すブートストラップ値を求めるためのブートストラップは1000回行った。
【0027】
HH7の16S rDNAは、図1に示すように、K. oxytocaの16S rDNAと系統枝を形成しているため、HH7は既知種ではK. oxytocaに最も近縁と考えられた。しかし、HH7とK. oxytocaが形成する系統枝と周囲に形成される各種の系統枝を比較すると、エンテロバクター(Enterobacter)属の多数の菌株が形成する系統枝内に存在していることがわかる。また、クレブシエラ(Klebsiella)の基準株はK. pneumoniaeだが、図1に示すようにHH7とK. oxytocaの位置はK. pneumoniaeの位置と大きく異なることから、属レベルにおいてクレブシエラ(Klebsiella)には含まれないと考えられた。よって、HH7株の属レベルにおける帰属分類群は、エンテロバクター(Enterobacter)属とするのが妥当であり、HH7株は腸内細菌(Enterobacteraceae)科エンテロバクター(Enterobacter)属の新規微生物と判定した(受託番号FERM P-21130)。
【0028】
HH7-2の16S rDNAは、図1に示すように、セラチア(Serratia)及びセデセア(Cedecea)の形成するクラスターと、シトロバクター(Citrobacter)及びエンテロバクター(Enterobacter)の形成するクラスターの間に単独で系統枝を形成し、これら細菌の16S rDNAとは97-98%程度の相同性しか示さなかった。よって、HH7-2株は既知の腸内細菌(Enterobacteraceae)科に属する種とは系統枝を形成せず、属レベルにおける帰属分類群の推定は困難であると考えられたため、HH7-2株は腸内細菌(Enterobacteraceae)科の新規微生物と判定した。
HH12の16S rDNAは、図1に示すように、E. aerogenesの16S rDNAと系統枝を形成しているため、HH12は既知種ではE. aerogenesに最も近縁と考えられた。しかし、DNA相同性が99.7%以下であることから、HH12株は腸内細菌(Enterobacteraceae)科エンテロバクター(Enterobacter)属の新規微生物と判定した(受託番号FERM P-21131)。
HH31の16S rDNAは、図1に示すように、E. amnigenusの16S rDNAと系統枝を形成しているため、HH31は既知種ではE. amnigenusに最も近縁と考えられた。しかし、DNA相同性が99.7%以下であることから、HH31株は腸内細菌(Enterobacteraceae)科エンテロバクター(Enterobacter)属の新規微生物と判定した(受託番号FERM P-21132)。
【0029】
(2)モノアセチンへの変換能
HH7株を、表4に示した組成からなる培地が5 ml入った試験管に植菌し、それを30℃、200 rpmで72時間振とう培養したところ、図2の右試験管の矢印に示したように、試験管内壁に粘性物質が付着した。
【0030】
試験管内から培養液5mlを除去し、表4に示した組成からなる培地のうち、グリセロール及び酵母抽出液を除いた培地を作製し、試験管内部を数回洗浄した。5mlの超純水に1 mol/lの水酸化ナトリウムを数的滴下したアルカリ水で粘性物質を溶解し、5mlの酢酸エチルにて抽出を行なった。抽出した酢酸エチルを脱水、濃縮後、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリーにて解析を行ない、保持時間およびマススペクトルに関してモノアセチン標品サンプルと比較を行なった。その結果、抽出物の保持時間及びマススペクトルが、モノアセチン標品の保持時間及びマススペクトルと完全に一致したことより、試験管内壁に付着した粘性物質はモノアセチンであると同定された(図3)。
【0031】
HH7株の培養液を遠心分離後、上清液をディスポーザブルフィルターによりろ過し、高速液体クロマトグラフィーにてグリセロール消費量を定量した。グリセロール消費量は0.94 g/Lがあったことから、モノアセチン量は0.68 g/L以下と概算できる。
【0032】
HH12株、HH31株についても、HH7株と同様に培養したところ、同様の粘性物質が試験管内壁に付着した。粘性物質をHH7株の場合と同じように回収してガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリーで解析を行ったところ、これらの粘性物質も同様にモノアセチンであることが確認された。前述の方法の通りに、高速液体クロマトグラフィーにてグリセロール消費量を定量したところ、HH12株についてはグリセロール消費量は0.75 g/Lがあったことから、モノアセチン量は0.55 g/L以下と概算された。また、HH31株についてはグリセロール消費量は0.041 g/Lがあったことから、モノアセチン量は0.031 g/L以下と概算された。
なお、HH7-2株については、同様に振とう培養しても試験管内壁に粘性物質は付着しなかった(図2、左試験管)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】HH7、HH7-2、HH12及びHH31及び近縁種の16S rDNA塩基配列を含む分子系統樹図である。枝の分岐付近の数字はブートストラップ値、左下の線はスケールバーを示す。株名の末尾のTはその種の基準株、太字は各属の基準種であることを示す。
【図2】HH7の生育菌体が試験管内で粘性物質(モノアセチン)を生産している様子を示した写真である(写真試験管右)。HH12及びHH31についても同様の現象が見られる。写真試験管左はモノアセチン非生産菌のHH7-2の培養液を示す。
【図3】粘性物質のマススペクトルを示す。試薬として販売しているモノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、グリセロール混合試薬のうち、モノアセチンの保持時間及びマススペクトルと完全に一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールを基質としてモノアセチンを生産する、Enterobacter属の細菌。
【請求項2】
配列番号1、2または3に記載の塩基配列との相同性が99.8%以上である塩基配列を含む16S rDNAを有する、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
配列番号1、2または3に記載の塩基配列を含む16S rDNAを有する、請求項1または2に記載の細菌。
【請求項4】
受託番号がFERM P-21130、FERM P-21131 または FERM P-21132 の細菌またはこれらの変異株である、請求項1から3のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の細菌を、グリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、モノアセチンの製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の細菌を、グリセロールを含む培地中で培養する工程を含む、グリセロールの分解方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−245600(P2008−245600A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92935(P2007−92935)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】