説明

新規置換ピペリジン誘導体

【課題】M4ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト作用とセロトニン7受容体アンタゴニスト作用を示し、さらに経口活性を持つ化合物、それを含む医薬組成物、および統合失調症、不安症状またはうつ病の治療薬を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中、R,Rは、水素原子,水酸基,シアノ基等を、R,R,R,Rは水素原子,ハロゲン原子等を、またRとR、又はRとRはそれぞれ結合して5ないし6員環を形成してもよく、ZはC1−6アルキルスルホニル,アリールスルホニル等を示す。)で表されるピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はM4ムスカリン性アセチルコリン受容体(以下、M4-mAChRと記すこともある)アゴニスト作用とセロトニン7受容体(以下、5-HT7Rと記すこともある)アンタゴニスト作用を有する新規ピペリジン化合物、それを含む医薬組成物およびその医薬用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
統合失調症モデルラットに対し、クロザピンの慢性投与を行うことにより、前頭前野、視床、側坐核において有意な5-HT7R蛋白質レベルの上昇および前頭前野におけるM4-mAChR のmRNAレベルの低下が確認された。この前頭前野、視床、側坐核は統合失調症の病態と関連深い脳部位として知られている。これらの変化からクロザピンの5-HT7Rアンタゴニスト作用およびM4-mAChRアゴニスト作用がクロザピンの臨床での特徴的な効果の発現に寄与しており、5-HT7Rアンタゴニスト作用とM4-mAChRアゴニスト作用を併せ持つ化合物が新規統合失調症治療薬になるというコンセプトが提唱されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
また従来のドーパミン2(D2)受容体アンタゴニストは錐体外路系や内分泌系への副作用が問題であるとされていることから、新規な作用機序としてM4-mAChRアゴニスト作用と5-HT7Rアンタゴニスト作用を併せもつ化合物が、副作用を軽減し、かつ統合失調症の諸症状に奏効する新規統合失調症治療薬となることが考えられる。
【0004】
これらの作用をもつ化合物としてアミジノ化合物が知られている(特許文献1)。しかしこれら化合物は親和性、陽性症状の動物モデルに対する経口活性などの活性の点から、必ずしも満足のいくものとはいえない。またフェニルピペリジン誘導体はM4-mAChRアゴニストとして知られている(特許文献2)。しかしこれら化合物は5-HT7Rへの親和性、陽性症状の動物モデルに対する経口活性は満足いくものではない。
【特許文献1】国際公開第2004/087124号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/023852号パンフレット
【非特許文献1】Neuropsychopharmacology 28, 265-275 (2003).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、M4-mAChRアゴニスト作用と5-HT7Rアンタゴニスト作用を示し、さらに経口活性を持つ化合物、それを含む医薬組成物、および統合失調症、不安症状またはうつ病の治療薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造をもつ新規ピペリジン化合物が優れたM4-mAChRアゴニスト作用と5-HT7Rアンタゴニスト作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
さらに鋭意研究を重ねた結果、本発明の新規ピペリジン化合物を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下の(1)ないし(13)の塩またはそれらの溶媒和物、医薬組成物、方法、又は治療薬に存する。
(1) 一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、k及びmはそれぞれ同一又は異なって1又は2を示し、
l及びn、はそれぞれ同一又は異なって1、2又は3を示し、
R1及びR2はそれぞれ同一または異なって、水素原子、水酸基、シアノ、フッ素原子、C1-6アルキル、ヒドロキシメチル、C1-6アルキルオキシメチル、C2-6アシルオキシメチル、C2-6アシルアミノメチル、またはC1-6カルボキシル を示し、また2つのR1又はR2が同一の炭素上に置換してオキソを示してもよく、
【0010】
【化2】

【0011】
は単結合又は二重結合を示し、
R3、R4、及びR5はそれぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、またはC1-6アルキルを示し、またR3とR4、又はR4とR5はそれぞれ結合して5ないし6員環を形成してもよく、該5ないし6員環は酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から成る群より選ばれる1又は2の原子を含んだ複素環であってもよく、
R6は、R3とR4、又はR4とR5により形成された5ないし6員環に置換していてもよく、水素、ハロゲン原子、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アシル、C2-6アルケニル、水酸基、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノ、ジC1-6アルキルアミノ、C1-6アルキルチオ、環状アミド、アリールスルホニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシカルボニル、C3-7シクロアルキスルホニル、ヘテロ環スルホニル、アリールスルフィニル、C3-7シクロアルキルスルフィニル、ヘテロ環スルフィニル、アリールカルボニル、C3-7シクロアルキルカルボニル、ジC1-6アルキルカルバモイル、低級環状アミノカルボニル、芳香族ヘテロ環、飽和へテロ環、不飽和へテロ環、およびヘテロ環カルボニルからなる群より選ばれる置換基を示す。
このときC1-6アルキル、アリール、C3-7シクロアルキルまたはヘテロ環は、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C2-6アシル、C2-6アルケニル、水酸基、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノ、ジC1-6アルキルアミノ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシカルボニル、シアノ、5ないし6員環の環状アミド、5ないし6員環の環状ウレア、または5ないし6員環の環状カーバメートを有していてもよく、
Zは、C1-6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C3-7シクロアルキルスルホニル、ヘテロ環スルホニル、C2-6アシル、C1-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C3-7シクロアルキルオキシカルボニル、ヘテロ環オキシカルボニルまたはC1-6アルキルカルバモイルを示す。このときアリール、C3-7シクロアルキルまたはヘテロ環は、環上にハロゲン原子、水酸基、アミノ、C1-6アルコキシまたはシアノを有していてもよく、
qは、0、1又は2を示す。)で表されるピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(2) 式(2)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、k、mはそれぞれ同一又は異なって1又は2を示し、
R1a及びR2bはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、水酸基、シアノ、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ヒドロキシメチル、C1-6アルキルオキシメチル、C2-6アシルオキシメチル、C1-6アシルアミノメチル、またはC1-6カルボキシルを示し、
R6aは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、水酸基またはC1-6アルキルオキシで置換されたC1-6アルキル、またはC1-6アルキルオキシを示し、
G、J、及びLは、いずれか2つが-CR6-(式中、R6は、水素、またはハロゲン原子、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アシル、C1-6アルコキシ、アリールスルホニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、ヘテロ環スルホニル、アリールスルフィニル、C3-7シクロアルキルスルフィニル、ヘテロ環スルフィニル、ジC1-6アルキルカルバモイル、低級環状アミノカルボニル、芳香族ヘテロ環、飽和へテロ環、不飽和へテロ環、およびヘテロ環カルボニルからなる群より選ばれる置換基を示す。このときC1-6アルキル、アリール、C3-7シクロアルキル、低級環状アミノカルボニルにおける低級環状アミノ、またはヘテロ環スルホニル、ヘテロ環スルフィニル、芳香族ヘテロ環、飽和へテロ環、不飽和へテロ環、およびヘテロ環カルボニルにおけるヘテロ環は、置換基上もしくは環上にハロゲン原子、C1-6アルキル、C2-6アシル、C2-6アルケニル、水酸基、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノ、ジC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシカルボニル、シアノ、5ないし6員環の環状アミド、5ないし6員環の環状ウレア、5ないし6員環の環状カーバメートを有していてもよい。) を示し、残りの1つが-NR7- (式中、R7は、水素原子、C2-6アシル、C1-6アルキルを示す。) 、-O-又は-S-を示し、Z及びqは請求項1の記号と同義である。) により表される前記(1)に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(3) R1aおよびR2aが水素原子である前記(2)に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(4) R6aが水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、水酸基で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキルオキシで置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、ジC1-6アルキルカルバモイル、または低級環状アミノカルボニルである前記(3)に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(5) 式(3)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、mは1又は2を示し、R2cはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、水酸基、シアノ、フッ素原子、C1-6アルキル、ヒドロキシメチル、C1-6アルキルオキシメチル、C2-6アシルオキシメチル、C2-6アシルアミノメチル、またはC1-6カルボキシルを示す。) を示し、
R6cは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、またはC1-6アルキルオキシを示し、
X及びYは一方が-CR6C-(式中、R6Cは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、またはC1-6アルキルオキシを示す。) を示し残りが窒素原子を示すか、又は全て-CR6C-(式中、R6Cは前記と同義である。) を示し、
Z及びqは前記(1)の各記号と同義である。)により表される前記(1)に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(6) 4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸エチル、4-(ベンゾフラン-4-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸メチル、4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸2-フルオロエチルからなる群より選ばれる前記(1)又は(2)のいずれかに記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(7) 4-(キノリン-8-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(ナフタレン-1-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチルからなる群より選ばれる前記(1)又は(5)のいずれかに記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(8) 前記(1)ないし(7)のいずれかに記載のピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩および製薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
(9) M4ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト作用及びセロトニン7受容体アンタゴニスト作用を有することを特徴とする前記(8)記載の医薬組成物。
(10) 中枢神経系の疾患であり、アセチルコリン神経系とセロトニン神経系により調節される疾患若しくは状態を有する対象を処置または予防するための方法であって、当該対象に治療有効量の前記(8)に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
(11) アセチルコリン神経系とセロトニン神経系により調節される疾患若しくは状態が統合失調症、不安症状またはうつ病である、前記(10)に記載の方法。
(12) 対象が哺乳動物またはヒトである前記(10)又は(11)に記載の方法。
(13) 前記(1)ないし(7)のいずれかに記載のピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする統合失調症の治療薬。
【発明の効果】
【0016】
新規ピペリジン化合物の塩若しくはそれらの溶媒和物は、M4-mAChRアゴニスト作用と5-HT7Rアンタゴニスト作用を併せ持ち、アポモルフィン誘発運動量亢進の抑制作用を有しており、統合失調症、不安症状、またはうつの治療のための医薬品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明化合物の製造方法について説明する。
【0018】
一般式(1)により表されるピペリジン化合物は、以下の製造方法1〜7で示す方法をはじめとする種々の方法により製造することができる。
【0019】

製造方法1
一般式(1)において、qが0である化合物は、以下に示す方法により製造することができる。
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、各記号は、qが0であるほかは、前記と同義である。)
一般式(2)の化合物と一般式(3)の化合物とを複合水素化合物の存在下または水素雰囲気中、水素添加用触媒存在下で反応させることにより、一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
【0022】
複合水素化合物としては、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムおよび水素化リチウムアルミニウム等が挙げられ、これらのうちトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。水素添用加触媒としては、例えば、パラジウム-炭素およびラネーニッケル触媒等が挙げられる。複合水素化合物や水素添加用触媒は、反応に供する一般式(2)や一般式(3)の化合物に応じて、適宜、その種類および使用量を定めればよい。
【0023】
反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば任意であり、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと記す)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下DMAと記す)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと記す)、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(以下THFと記す)、アセトニトリル、クロロホルム(以下CHCl3と記す)、塩化メチレン、ジクロロエタン、ベンゼン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ジエチルエーテルおよびジメトキシエタン等が挙げられる。また、これらの混合溶媒を用いてもよい。
【0024】
反応温度および反応時間は、反応に供する化合物および反応溶媒に応じて適宜定めればよい。通常は、約-78〜100℃で、数十分間〜5日間反応させればよい。
【0025】
反応終了後、通常の処理を行うことにより、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
いずれかの、又はすべての前記反応の終了後、常法により反応液から目的化合物を回収することができる。例えば、1つの適切な方法は、以下の工程を含む:反応液を水に注ぎ、有機溶媒で抽出し、目的化合物を含有する有機層を分離し、水洗し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥し、そして溶媒を留去する。こうして得た目的化合物は、必要であれば、再結晶、再沈殿又は種々のクロマトグラフィー法(特に、カラムクロマトグラフィー)などの常法により更に精製することができる。
【0026】

製造方法2
一般式(1)において、qが1または2である化合物は、以下に示す方法により、製造することができる。
【0027】
【化6】

【0028】
(式中、各記号は、qが1または2であるほかは、前記と同義である。)
一般式(2)と一般式(4)の化合物を、製造方法1に準じて、還元条件下で反応させることにより、一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
【0029】

製造方法3
一般式(1)において、Zが水素ではない化合物は、以下に示す方法により、製造することができる。
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、各記号は、Zが水素ではないほかは、前記と同義である。Qは脱離基を示す。)
式(2)の化合物と式(5)の化合物とを、好ましくは塩基の存在下に、反応させことにより、一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
Qとしては、例えば、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子;メタンスルホニル、エタンスルホニルまたはベンゼンスルホニル等;メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシまたはp-トルエンスルホニルオキシ等の有機スルホニルオキシ;および1-イミダゾリルなどが挙げられる。
【0032】
塩基はとしては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよび4-(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0033】
塩基は、反応に供する一般式(2)や一般式(5)の化合物に応じて、適宜、その種類および使用量を定めればよい。一般式(2)の化合物1モルに対して、通常は1モルないし過剰モル、好ましくは1ないし10モルの塩基を用いる。
【0034】
反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば任意であり、例えば、DMF、DMA、DMSO、ピリジン、ジオキサン、THF、アセトニトリル、CHCl3、塩化メチレン、ジクロロエタン、ベンゼン、酢酸エチル、メタノール、エタノールおよびジエチルエーテル等が挙げられる。また、これらの混合溶媒を用いてもよい。
【0035】
反応温度および反応時間は反応に供する化合物および反応溶媒に応じて適宜定めればよい。通常は、約-78〜100℃で、数十分間〜24時間反応させればよい。
【0036】
反応終了後、通常の処理を行い、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0037】
Zが後述するアミノの保護基である場合には、その保護基を除去することにより、Zが水素である一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
【0038】

製造方法4
【0039】
【化8】

【0040】
(式中、各記号は、Zが水素ではないほかは、前記と同義である。)
一般式(6)と一般式(7)の化合物を、製造方法3に準じて、反応させることにより、一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
【0041】

製造方法5(化合物(2)の合成方法)
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
(式中、各記号は、前記と同義である。Qは脱離基、Vはボリル、Zはアミノ基の保護基を示す)
1) Qはハロゲン原子などの脱離基、Vがボリルの場合、化合物(8)もしくは(11)と化合物(9)もしくは(12)を通常の鈴木反応の条件(塩基、パラジウム触媒存在下)に従い反応させることにより、一般式(10)で表される化合物を製造することができる。
【0046】
パラジウム触媒としては、たとえばPd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、PdCl2(OAc)2、Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)、PdCl2(dppf) [1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム等があげられる。
【0047】
触媒は、反応に供する一般式(8)もしくは(11)や一般式(9)もしくは(12)の化合物に応じて、適宜、その種類および使用量を定めればよい。
【0048】
反応させる化合物によってはリガンド、たとえば2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル等や塩化リチウムなどの添加物を添加することができる。このリガンドや添加物は反応に供する一般式(8)もしくは(11)や一般式(9)もしくは(12)の化合物に応じて、適宜、その種類および使用量を定めればよい。
【0049】
塩基はK3PO4、NaHCO3、NaOEt、Na3CO3、K2CO3、Ba(OH)3、Cs2CO3、CsF、NaOH、Ag2CO3等が挙げられる。
【0050】
反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば任意であり、例えば、DMF、DMA、DMSO、ピリジン、ジオキサン、THF、アセトニトリル、CHCl3、塩化メチレン、ジクロロエタン、ベンゼン、酢酸エチル、メタノール、エタノールおよびジエチルエーテル等が挙げられる。また、これらの混合溶媒または水との混合系を用いてもよい。
【0051】
反応温度および反応時間は反応に供する化合物および反応溶媒に応じて適宜定めればよい。通常は、約0℃〜溶媒の還流温度で、数十分間〜48時間反応させればよい。
【0052】
反応終了後、通常の処理を行い、一般式(10)で表される化合物を得ることができる。
【0053】
Zが後述するアミノの保護基である場合には、その保護基を除去することにより、一般式(2)で表される化合物を製造することができる。
【0054】
互いに反応させる化合物における置換基Vは、鈴木反応等(有機合成化学協会誌, 51(11) , 91(1993)、Chemical Communication, 866(1979)、P.R.Eastwoodら, Tetrahedron Letters, 41, 3705(2000)、D. J. Wustrowら, Synthesis, 11, 993(1991))に適応可能なボリル基であればいずれでもよく、好ましくはピナコールボリルやジヒドロキシボリルである。また、他方は鈴木反応に適応可能な脱離基であればいずれでもよく、たとえばハロゲン原子または-OSO2(CqF2q+1)(ここでqは1から4の整数)等を用いることができる。特にハロゲン原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ等が好ましい。
【0055】
得られた化合物(10)は水素雰囲気中、水素添加用触媒存在下で反応させることにより二重結合を単結合にすることができる。
【0056】

2) 化合物(8)のVがヨウ素原子の場合
化合物(9)と亜鉛により活性化した化合物(8)をE.G.Corleyらの条件(J.Org.Chem., 69,5120-5123(2004))に従い反応させることにより、一般式(10)で表される化合物を製造することができる。
【0057】
【化12】

【0058】
(式中、各記号は、前記と同義である。)
一般式(9)で表される化合物1モルに対して、一般式(8)で表される化合物を1モルないし過剰モル、好ましくは1ないし2モルである。
【0059】
ヨウ化銅存在下、パラジウム触媒としては、たとえばPdCl2(dppf)([1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム)等があげられる。ヨウ化銅やパラジウム触媒は、反応に供する一般式(8)や一般式(9)の化合物に応じて、適宜、その種類および使用量を定めればよい。好ましくは一般式(9)の化合物1モルに対して、通常は0.01〜0.1モルである。
【0060】
反応溶媒としては、DMF、DMA、DMSO、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、CHCl3、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジメトキシエタン、ベンゼン、酢酸エチル等、またはこれらの混合溶媒が用いられる。
【0061】
反応温度および反応時間は反応に供する化合物および反応溶媒に応じて適宜定めればよい。通常は、約0℃〜溶媒の還流温度で、数十分間〜48時間反応させればよい。
反応終了後、通常の処理を行い、一般式(10)で表される化合物を得ることができる。
【0062】
Zが後述するアミノの保護基である場合には、その保護基を除去することにより、一般式(2)で表される化合物を製造することができる。
【0063】
原料となるヨウ化物は、対応するオキソピペリジンから還元体(-OH体)を経て、ヨウ素体とすることにより製造することができる。
【0064】
【化13】


【0065】
(式中、各記号は、前記と同義である。)
製造方法6
【0066】
【化14】

【0067】
(式中、各記号は、Mがアルカリ金属である以外、前記と同義である。)
アリール有機金属試薬(たとえばアリールリチウムもしくはグリニヤール試薬)(12)は一般式(3)の化合物と反応させることにより、一般式(13)で表される化合物を製造することができる。
【0068】
一般式(13)の化合物をフッ素化剤(たとえば(Diethylamino)sulfur Trifluoride(DAST)、[Bis(2-methoxyethyl)amino]sulfur Trifluoride(Deoxofluor)など)と反応させることにより一般式(14)の化合物を製造することができる。
【0069】
【化15】

【0070】
原料化合物である一般式(9)の化合物の一部(インダゾール、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェンまたはインドール化合物など)は、公知の方法に準じて製造することができる。例えば、ブロム体は以下の方法により製造することができる(J. Heterocycle. Chem., 4, 651(1967)、Synth. Commun., 19, 257(1989)、Heterocycles, 39(9), 1749(1992))。また公知のフェノール体をトリフレートのような脱離基にすることにより製造することができる。
【0071】
一般式(3)のオキソピペリジン化合物の一部は、公知の方法に準じて製造することができる。例えば、Israel Journal of Chem., 39, 163(1999)、J. Med. Chem., 42, 2087(1999)がある。
【0072】

製造方法7
【0073】
【化16】



【0074】
(式中、各記号は、前記と同義である。)
ベンジルニトリル(16)に塩基存在下(たとえばn-C16H33P(n-C4H9)3Br-、50% NaOHやSodium hexamethyldisilazide(NaHMDS)等)、適当に保護したビス(2-クロルエチル)アミンを反応させることによりピペリジン環(17)を構築することができる。シアノ基は還元(例えばDIBAHに続いてNaBH4など)することによりヒドロキシメチル体(18)に変換することができ、アルキル化、アミノ化等することにより適当な官能基に変換することができる。
【0075】
なお、製造方法1〜7において、反応に供する化合物中にアミノや水酸基等の反応性官能基が存在する場合には、その反応性官能基を保護してから反応に供すればよい。
【0076】
1級または2級アミノの保護基としては、例えば、ベンジルやp-クロロベンジル、m-トリフルオロメチルベンジル、α-フェニルエチル、ベンズヒドリルおよびトリチル等の置換ベンジル;アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ヘキサノイルおよびピバロイル等の脂肪族アシル;クロロアセチル、トリフルオロアセチル等のハロゲン置換脂肪族アシル;ベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、フタロイル等の芳香族アシル;フェニルアセチル、3-フェニルプロピオニル、3-(p-メトキシフェニル)プロピオニル、3-(p-クロロフェニル)プロピオニル等のアラルキルアシル;チエニルアセチル、イミダゾリルアセチル、フリルアセチル、トリアゾリルアセチル、チアジアゾリルプロピオニル等の芳香族ヘテロ環脂肪族アシル;フェノキシアセチル、フェノキシプロピオニルアリールオキシ脂肪族アシル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等のC1-6アルコキシカルボニル;クロロメトキシカルボニル、トリクロロエトキシカルボニル等のハロゲン置換C1-6アルコキシカルボニル;アセトキシメトキシカルボニル、(1-アセトキシエチル)オキシカルボニル、プロピオニルオキシメトキシカルボニル、ピバロイルオキシメトキシカルボニル、ブチリルオキシメトキシカルボニル等の脂肪族アシルオキシメトキシカルボニル;アリルオキシカルボニル等のアルケニルオキシカルボニル;フェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル;フェノキシグリオキシロイル、ナフチルグリオキシロイル等のアリールグリオキシロイル;ベンジルオキシカルボニルやフェネチルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル等の置換ベンジルオキシカルボニル;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ペンチルスルホニル等のC1-6アルキルスルホニル;トリフルオロメチルスルホニル等のハロゲン置換C1-6アルキルスルホニル;ベンジルスルホニル、p-クロロベンジルスルホニル、フェネチルスルホニル等のアラルキルスルフォニル;フェニルスルホニル、p-クロロフェニルスルホニル、トリルスルホニル、ナフチルスルホニル等のアリールスルホニルなどが挙げられる。
【0077】
水酸基の保護基としては、例えば、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル等のシリル;メトキシメチル、2-メトキシエトキシメチル等のアルコキシメチル;ベンジル、p-メトキシベンジル、2,3-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、トリチル等の置換ベンジル;アセチル等のC2-6アシル;テトラヒドロピラニルおよびトリメチルシリルエトキシメチルなどが挙げられる。
【0078】
上述した方法により製造される一般式(1)により表されるピペリジン化合物は、慣用の精製手段、例えば、濃縮、抽出、クロマトグラフィー、再沈殿、再結晶等の手段を施すことにより、任意の純度に精製することができる。また、必要に応じて慣用の造塩手段を施して薬理学的に許容される塩とすることもできる。
【0079】
本発明に係るピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩に、薬理学的および製剤学的に許容される添加物を加え、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤または注射剤等の当業者に周知の製剤とすることにより、ピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩を含む医薬組成物を製造することができる。
【0080】
薬理学的および製剤学的に許容される添加物としては、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-マンニトール、デンプンまたは結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプンまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤または崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウムまたはタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコールまたは酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水またはハードファット等の基剤;注射用蒸留水、生理食塩水若しくはプロピレングリコール等の水性または用時溶解型注射剤を調製することができる溶解剤または溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール、またはグリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基等のpH調節剤;色素;希釈剤;安定化剤;噴射剤および粘着剤などが挙げられる。一般式(1)により表されるピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩が約1〜500mg含まれるように、医薬組成物を製造するのが好ましい。
【0081】
医薬組成物の投与方法は、経口投与または非経口投与のいずれでもよい。また、その投与量は、患者の年齢、体重および症状等を考慮して、適宜、定めればよい。 一般に、非経口投与の場合、1日あたり、通常0.01〜10mg/kg、好ましくは0.1〜1mg/kgのピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩を投与する。また、経口投与の場合、1日あたり、通常0.5〜10mg/kg、好ましくは1〜5mg/kgのピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩を投与する。医師はそれぞれの患者にもっとも適した実際の投与量を決定するが、それは特定患者の年齢、体重および応答により変わり得る。上記の投与量は平均的事例である。なお、医薬組成物は、単独で投与しても、または他の医薬と混合物して投与してもよい。
【0082】
本明細書において用いる用語の意味は以下のとおりである。
【0083】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
【0084】
「C1-6アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキルを意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピルおよび1,2,2-トリメチルプロピル等が挙げられる。
【0085】
「C2-6アルケニル」とは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルケニルを意味し、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニルおよび3-ブテニル等が挙げられる。
【0086】
「C1-6アルコキシ」とは、C1-6アルキルを有するアルコキシを意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびブトキシ等が挙げられる。
【0087】
「C1-6アルコキシ」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ又はブトキシ等が挙げられる。
【0088】
「ジC1-6アルキルアミノ」とは、C1-6アルキルによりジ置換されたアミノを意味し、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノおよびエチルメチルアミノ等が挙げられる。
【0089】
「低級環状アミノ」とは、環内にC1-6アルキルで置換されていてもよい窒素を有し、さらに酸素原子または硫黄原子を有していてもよく、かつ環上にC1-6アルキルを有していてもよい3ないし7員の環状アミノを意味し、例えば、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、4-メチルピペラジノ等が挙げられる。
【0090】
「ハロゲン置換C1-6アルキル」とは、C1-6アルキルにハロゲン原子が置換した基を意味し、例えば、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、ジフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチル等が挙げられる。
【0091】
「C1-6アルキルカルバモイル」とは、C1-6アルキルによりモノ置換されたカルバモイルを意味し、例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイルおよびブチルカルバモイル等が挙げられる。
【0092】
「ジC1-6アルキルカルバモイル」とは、C1-6アルキルによりジ置換されたカルバモイルを意味し、例えば、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジプロピルカルバモイル、ジイソプロピルカルバモイルおよびエチルメチルカルバモイル等が挙げられる。
【0093】
「アリール」としては、環上にハロゲン原子、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノおよびジC1-6アルキルアミノからなる群から選ばれる基を有していてもよいフェニルおよびナフチル等が挙げられる。
【0094】
「C3-8シクロアルキル」とは、還上にハロゲン原子、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノおよびジC1-6アルキルアミノからなる群から選ばれる基を有していてもよい3ないし8員の環式飽和炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル等が挙げられる。
【0095】
「ヘテロ環」とは、環の構成原子として窒素、酸素および硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を1ないし3個含む5ないし6員単環または2環性の環状化合物を意味する。該ヘテロ環は、芳香族へテロ環、飽和へテロ環または不飽和ヘテロ環を包含する。
【0096】
「芳香族ヘテロ環」とは、上記ヘテロ環のうち、2以上の不飽和結合とヘテロ原子とが共役系を構成し芳香性を有している環状化合物を意味する。)、例えば、フラン、ピロール、ピラゾール、チオフェン、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリンおよびキノキサリン等が挙げられる。
【0097】
「飽和へテロ環」とは、上記へテロ環のうち、環内に不飽和結合をまったく有していない環状化合物を意味する。例えば、テトラヒドロフラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
【0098】
「不飽和へテロ環」とは、上記ヘテロ環のうち、不飽和結合とヘテロ原子とが共役系を構成せず芳香性を有していない環状化合物を意味する。例えば、ジヒドロフラン、ピロリン、ピラゾリン、チアゾリン、イミダゾリン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン等が挙げられる。
「M4ムスカリン性アセチルコリン受容体」とは、7回膜貫通領域を有するG-蛋白結合受容体のスーパーファミリーに属するムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)に存在する5種のサブタイプ(M1ないしM5と称される)の一つである。神経伝達物質アセチルコリンの受容体の一種であり、主に中枢神経系に分布しておりシグナル伝達の調整に関与している。本明細書中においてM4ムスカリン性アセチルコリン受容体をM4-mAChRと記すこともある。
【0099】


「セロトニン7受容体」とは、モノアミン神経伝達物質であるセロトニンのGタンパク質結合受容体の一種である。セロトニン7受容体は脳内でも特に視床に多く分布していることが知られているセロトニン受容体のグループのひとつであり、抗精神病薬の作用部位の可能性もある受容体である。視床は、網様賦活系、情動や記憶に関与する扁桃体および大脳皮質の連合野から入力を受ける重要な中継点として、さまざまな情報を濾過、検閲、処理し、伝達する役割を演じている。本明細書中においてセロトニン7受容体を5-HT7Rと記すこともある。
「治療上有効な量」とは、疾患を治療する;特定の疾患の一つまたはそれ以上の症状を改善する、軽減するまたは除去する;または疾患の一つまたはそれ以上の症状の開始を妨げるまたは遅らせる一定量の化合物または化合物の組合せを意味する。
【0100】
「対象」とは、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジおよびヒトのような動物を意味する。特に好ましい対象は、両性のヒトを含めた哺乳動物である。
【0101】
「アセチルコリン神経系とセロトニン神経系により調節される疾患若しくは状態」とは、アセチルコリン神経系またはセロトニン神経系それぞれ単独、又はそれらの両方による正常な調節が成り立たず、これらの機能不全の結果として中枢神経系の疾患に至った状態または該疾患に至る状態を意味する。より具体的な疾患若しくは状態の例として統合失調症、統合失調症の諸症状、不安症状またはうつ病等が挙げられる。
【0102】
「M4ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト」とは、アセチルコリン受容体を活性化するムスカリン4受容体リガンドを意味する。
【0103】
「セロトニン7受容体アンタゴニスト」とは、セロトニン受容体の活性化を阻止するセロトニン7受容体リガンドを意味する。
【実施例】
【0104】

以下に実施例及び実験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0105】

実施例1
1) 4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-ピペリジン
活性亜鉛1.96g、DMA 10mL混合物に室温でトリメチルシラン0.3mLとジブロモエタン0.3mLの混合物を加え、15分間攪拌した。さらに活性化した亜鉛に4-ヨウ化ピペリジン-1-tert-ブチルエステル7.78gのDMA 15mL溶液を滴下し、4時間攪拌した。 別途4-ブロムベンゾ[b]チオフェン2.80g、DMA 15mL溶液に先の亜鉛試薬を滴下し、80℃で4時間加熱攪拌した。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し4-ベンゾ[b]チオフェン-4-イルピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル 2.78gを得た。
【0106】
上記化合物を酢酸エチル30mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液30mLを加え、1時間攪拌した。反応液は炭酸カリウム水溶液で塩基性、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し表題化合物1.71gを得た。

2) 4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-ピペリジン282mg、4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチル306mg、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム873mg、酢酸111μLをジクロルエタン30mLに加え19時間攪拌した。反応液を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し表題化合物410mgを得た。
【0107】

実施例2
1) 4-ブロムベンゾフラン
2-ブロムフェノール20.0g、ブロムアセトアルデヒドジエチルアセタール19.1mL、DMF 80mL、炭酸カリウム19.2gを160℃で3時間加熱攪拌した。反応液を水に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製しエーテル体34.7gを得た。 116% ポリリン酸80g、クロルベンゼン250mLを130℃に加熱し、先のエーテル体34.7gとクロルベンゼン50mLの溶液を40分かけて滴下し、4.5時間160℃で加熱攪拌した。クロルベンゼン層をとり、減圧下濃縮、残渣はクロロホルムに溶解し、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し表題化合物14.5gを得た。

2) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-ピペリジン
4-ブロムベンゾ[b]チオフェンに替えて4-ブロムベンゾフラン31.7gを用い、実施例1に準じて表題化合物を9.50g得た。

3) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-ピペリジンに替えて4-(ベンゾフラン-7-イル)-ピペリジン200mgを用い、実施例1に準じて表題化合物160mgを得た。
【0108】

実施例3
1) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-2-メチルピペリジン
活性亜鉛654mg、DMA 2mL混合物に室温でトリメチルシラン0.13mLとジブロモエタン0.09mLの混合物を加え、15分間攪拌した。 さらに、活性化した亜鉛に4-ヨウ化-2-メチルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル2.58gのDMA 5mL溶液を滴下し、3時間攪拌した。
【0109】
別途7-ブロムベンゾフラン804mg、DMA 5mL溶液に先の亜鉛試薬を滴下し、80℃で3時間加熱攪拌した。実施例1と同様に処理し、4-(ベンゾフラン-7-イル)-2-メチルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを得た。
【0110】
上記化合物を酢酸エチル10mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液10mLを加え、1時間攪拌した。反応液を炭酸カリウム水溶液で塩基性とした後、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、表題化合物370mgを得た。

2) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-2-メチル-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾフラン-7-イル)-2-メチル-ピペリジン370mg、4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチル258μL、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム768mg、酢酸98μLをジクロルエタン20mLに加え18時間攪拌した。反応液を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に加え、クロロホルムで抽出した。 有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し表題化合物150mgを得た。
【0111】

実施例4
4-(4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸エチル
2-(クロルメチル)モルホリン-4-カルボン酸エチルに替えて4-(メタンスルフォニルオキシメチル)ピペリジン-1-カルボン酸エチルを用い、実施例7に準じて表題化合物を得た。
【0112】

実施例5
3-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イル)-8-アザビシクロ[3,2,1]オクタン-8-カルボン酸エチル
トロピノン5.00g、炭酸カリウム496mg、クロル炭酸エチル5.79mL、トルエン80mLを2時間加熱還流した。反応液を水に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。 得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し3-オキソ-8-アザビシクロ[3、2、1]オクタン-8-カルボン酸エチル1.48gを得た。
【0113】
先の化合物295mg、4-(ベンゾフラン-7-イル)-ピペリジン300mgを塩化メチレン-ジメトキシエタン(1/1)50mL溶液に溶解し、トリエチルアミン207μL、チタニウム(IV)プロポキサイド440μLを順次加え、室温で50時間攪拌した。反応液にメタノール20mLを加え、-50℃に冷却し、窒素雰囲気下、水素化ホウ素ナトリウム177mgを少しずつくわえ、そのままの温度で1時間、室温で3時間攪拌した。反応液を水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物を再結晶(酢酸エチル)し、表題化合物151mgを得た。
【0114】

実施例6
4-(ベンゾフラン-7-イル)-4-フルオロ-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
7-ブロムベンゾフラン 2.00gをエーテル 40mLに溶解し、-78℃冷却下、1.6M n-ブチルリチウム ヘキサン溶液6.88mLを滴下した後、溶液を0.5時間攪拌した。この溶液に4-(1-tert-ブトキシカルボニル)ピペリドン2.19gのエーテル(30mL)溶液を滴下し、40分攪拌した。反応液を塩化アンモニウム飽和水溶液に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し4-(ベンゾフラン-7-イル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル2.36gを得た。
【0115】
上記化合物2.36g、塩化メチレン 20mL溶液に-78℃でDeoxofluor 1.51mLの塩化メチレン20mL溶液を10分かけて滴下、そのままの温度で2時間、室温で19時間攪拌した。反応液を塩化アンモニウム飽和水溶液に加え、塩化メチレンで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し4-(ベンゾフラン-7-イル)-4-フルオロピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル1.99gを得た。
【0116】
上記化合物を酢酸エチル30mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液30mLを加え、1時間攪拌した。反応液は炭酸カリウム水溶液に加え、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し脱Boc体を得た。
【0117】
脱Boc体、4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチル930μL、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム2.77g、酢酸354μLをジクロルエタン50mLに加え5時間攪拌した。反応液を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し表題化合物1.48gを得た。
【0118】

実施例7
2-(4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン-1-イルメチル)モルホリン-4-カルボン酸エチル
4-ベンジル-2-クロルメチルモルフォリン(Synthetic Communications, 10, 59, (1980))2.00g、ジクロルエタン15mL溶液にクロル炭酸エチル1.69mLを滴下し、1.5時間還流した。反応液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し2-クロルメチルモルホリン-4-カルボン酸エチル1.54gを得た。
【0119】
2-クロルメチルモルホリン-4-カルボン酸エチル518mg、4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン500mg、炭酸カリウム690mg、ヨウ化ナトリウム450mg、DMF 10mL、トルエン10mLを3.5時間加熱還流した。反応液を水に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物440mgを得た。
【0120】

実施例8
3-(4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン-1-イルメチル)-ピペリジン-1-カルボン酸エチル
2-クロルメチルモルホリン-4-カルボン酸エチルに替えて3-メタンスルフォニルオキシメチルピペリジン-1-カルボン酸エチルを用い、実施例7に準じて表題化合物を得た。
【0121】

実施例9
4-(ベンゾフラン-7-イル)-4’-メチル-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
シアノ体(実施例11) 300mg、THF 5mL溶液に室温下3M メチルマグネシウムブロミド エーテル溶液1.6mLを滴下し、4時間攪拌した。反応液を塩化アンモニウム飽和水溶液に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物180mgを得た。
【0122】

実施例10
1) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-3’-フルオロ[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸tert-ブチル
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチルに替えて3-フルオロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(J. Med. Chem., 42, 2087(1999))を用い、実施例2に準じて表題化合物を得た。

2) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-3’-フルオロ[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾフラン-7-イル)-3’-フルオロ[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸tert-ブチル750mgを酢酸エチル10mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液10mLを加え、1時間攪拌した。反応液は炭酸カリウム水溶液で塩基性、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し脱Boc体160mgを得た。
【0123】
脱Boc体160mg、クロロホルム20mL、トリエチルアミン167μLにクロル炭酸エチル57μLを滴下、室温で1時間攪拌した。反応液を水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し表題化合物160mgを得た。
【0124】

実施例11
4-(ベンゾフラン-7-イル)-4’-シアノ-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾフラン-7-イル)-ピペリジン塩酸塩1.18g、メタノール 5mL、水 5mL溶液に4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチル747μL、シアン化ナトリウム281mg水溶液(3mL)を加え、30℃で11時間攪拌した。析出物を濾取、水洗、乾燥して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物1.33gを得た。
【0125】

実施例12
1) 3-メチル-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチル
1、3-ジメチルピペリジン-4-オン3.0g、ジクロロエタン20mL溶液に、氷冷下クロル炭酸エチル2.92mLを滴下し、6時間加熱還流した。反応液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し表題化合物3.78gを得た。

2) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-3’-メチル[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-ピペリジンに替えて4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジンを用い、実施例1に準じて表題化合物を得た。
【0126】

実施例13
1) 4-メトキシベンゾフラン
4-メトキシベンゾフラン-2-カルボン酸7.50g、銅粉1.00g、キノリン50mLを200℃で2時間加熱攪拌した。反応液は冷却後、セライトろ過、酢酸エチル洗浄した。得られた有機物は1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物5.70gを得た。

2) 4-ヒドロキシベンゾフラン
メトキシ体5.70g、塩化メチレン120mL溶液に-78℃冷却下1M三臭化ホウ素57.5mLを滴下し、続いて室温で4時間攪拌した。氷冷下エタノール50mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応液は氷水に少しずつ加え、酢酸エチル抽出、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物1.03gを得た。

3) 4-(ベンゾフラン-4-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
ヒドロキシル体1.03g、塩化メチレン30mL、トリエチルアミン1.18mL溶液に氷冷下無水トリフルオロメタンスルホン酸1.18mL滴下、3.5時間攪拌した。反応液を水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製しトリフレート体1.83gを得た。
【0127】
7-ブロモベンゾフランに替えて上記トリフレート体1.83gを用い、実施例22に準じて4-ベンゾフラン-4-イル-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル910mg(Boc体)を得た。
【0128】
実施例1に従いBoc体910mgから、脱Boc、還元アミノ化を行い、表題化合物850mgを得た。
【0129】

実施例14
1) 3-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチルに替えて4-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを用い、実施例3に準じて表題化合物を得た。

2) 3-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジンー1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸エチル
3-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを用い、実施例10に準じて表題化合物を得た。
【0130】

実施例15
4-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イル)アゼパン-1-カルボン酸エチル
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチルに替えて4-オキソアゼパン-1-カルボン酸エチルを用い、実施例3に準じて表題化合物を得た。
【0131】

実施例16
1) 4-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
2-クロルメチルモルホリン-4-カルボン酸エチルに替えて4-メタンスルフォニルオキシメチルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを用い、実施例7に準じて表題化合物を得た。

2) 4-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸
上記化合物1.28gを酢酸エチル50mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液10mLを加え、1時間攪拌した。反応液は炭酸カリウム水溶液で塩基性、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し表題化合物(脱Boc体)955mgを得た。

3) 4-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸メチル
脱Boc体160mg、塩化メチレン20mL、トリエチルアミン300μLにクロル炭酸メチル85μLを滴下、室温で1時間攪拌した。反応液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し表題化合物350mgを得た。

実施例17
4-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸n-プロピル
クロル炭酸メチルに替えてクロル炭酸n-プロピルを用い、実施例16に準じて表題化合物を得た。
【0132】

実施例18
4-(4-ベンゾフラン-7-イル-ピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸イソプロピル
クロル炭酸メチルに替えてクロル炭酸イソプロピルを用い、実施例16に準じて表題化合物を得た。
【0133】

実施例19
1) 4-(ベンゾフラン-7-イル)-3-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸エチルに替えて4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを用い、実施例2に準じて4-(4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを得た。この化合物を酢酸エチル10mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液10mLを加え、1時間攪拌した。反応液は炭酸カリウム水溶液で塩基性、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し表題化合物(脱Boc体)1.29gを得た。

2) 4-ベンゾフラン-7-イル-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸メチル
脱Boc体300mg、クロロホルム20mL、トリエチルアミン306μLにクロル炭酸メチル85μLを滴下、室温で1時間攪拌した。反応液を水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し表題化合物350mgを得た。
【0134】

実施例20
4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸イソプロピル
クロル炭酸エチルに替えてクロル炭酸イソプロピルを用い、実施例10に準じて表題化合物を得た。
【0135】

実施例21
4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸n-プロピル
クロル炭酸エチルに替えてクロル炭酸n-プロピルを用い、実施例10に準じて表題化合物を得た。
【0136】

実施例22
4-(1H-インドール-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
7-ブロムインドール3.2g、4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチル5.3g、PdCl2dppf・CH2Cl2 666mg、炭酸カリウム6.6g、DMF 80mLを窒素雰囲気下80℃で6時間加熱攪拌した。反応液を水に加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製しカップリング体2.62gを得た。
【0137】
カップリング体2.62g、10% パラジウム炭素触媒1g、エタノール40mLを水素雰囲気下3時間攪拌した。反応液はセライトろ過し、濃縮し、ピペリジン体1.00gを得た。
【0138】
上記化合物を酢酸エチル10mLに溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液10mLを加え、1時間攪拌した。反応液は炭酸カリウム水溶液に加え、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮しピペリジンを得た。
【0139】
4-(ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-ピペリジンに替えて4-(1H-インドール-7-イル)-ピペリジンを用い、実施例1に準じて表題化合物を800mg得た。
【0140】

実施例23
4-(1-アセチル-1H-インドール-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(1H-インドール-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル200mg、DME 3mL溶液に氷冷下水素化ナトリウム(60%)48mgを添加、10分攪拌した。さらに無水酢酸47μLを加え1時間攪拌した。反応液は水に加え、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し表題化合物80mgを得た。
【0141】

実施例24
4-(1-エチル-1H-インドール-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
無水酢酸に替えてヨウ化エチルを用い、実施例23に準じて表題化合物を得た。
【0142】

実施例25
4-シアノ-4-(ナフタレン-1-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
1-ナフタレンアセトニトリル5.00g、50% 水酸化ナトリウム水溶液45mL中にビス-(2-クロルエチル)カルバモイル酸tert-ブチル8.50g、続いてヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロマイド750mgを加え、1時間加熱還流した。反応液は水に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し4-シアノ-4-(ナフタレン-1-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル3.92gを得た。
上記化合物を用い、実施例22に準じて表題化合物を得た。
【0143】

実施例26
4-メトキシメチル-4-(ナフタレン-1-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-シアノ-4-(ナフタレン-1-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル2.00g、トルエン20mL溶液に-78℃冷却下、1M 水素化ジイソブチルアルミニウム-トルエン溶液20mL滴下し、1時間攪拌した。氷浴(氷-水)に替えさらに1時間攪拌した。反応液は1N塩酸に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣にメタノール20mLを加え、氷浴(氷-水)下水素化ホウ素ナトリウム227mgを加え、1時間攪拌した。反応液は水に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製しヒドロキシルメチル体270mgを得た。
【0144】
ヒドロキシルメチル体500mg、THF 5mL溶液に氷冷下水素化ナトリウム(60%)64mgを添加、10分攪拌した。さらにヨウ化メチル200μLを加え1時間攪拌した。反応液は水に加え、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製しメトキシメチル体400mgを得た。
【0145】
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルに替えて4-メトキシメチル-4-(ナフタレン-1-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルを用い、実施例1に準じて表題化合物を得た。
【0146】

実施例27
1) 7-ブロム-5-メトキシベンゾフラン-2-カルボン酸エチル
3-ブロム-2、5-ジメトキシベンズアルデヒド8.75g、ブロム酢酸エチル6.28mL、炭酸カリウム7.84g、DMF 40mLを120℃で1時間加熱攪拌した。反応液は水に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣を再結晶(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物5.40gを得た。

2) 4-(2-エトキシカルボニル-5-メトキシベンゾフラン-7-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
4-ブロムベンゾ[b]チオフェンに替えて7-ブロム-5-メトキシベンゾフラン-2-カルボン酸エチルを用い、実施例1に準じて表題化合物を得た。

3) 4-(2-エトキシカルボニル-5-メトキシベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルに替えて4-[2-エトキシカルボニル-5-メトキシベンゾフラン-7-イル]ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルを用い、実施例1に準じて表題化合物を得た。

4) 4-(2-ジメチルカルバモイル-5-メトキシベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
エトキシカルボニル体2.40g、メタノール80mL、水50mL、水酸化リチウム1.10gを2時間加熱還流した。反応液に1N塩酸を加え、濃縮し、水洗し、カルボン酸1.64gを得た。
【0147】
先のカルボン酸500mg、DMF 30mL、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド240mg、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物191mg、2Mジメチルアミン-メタノール溶液1.50mLを室温で14時間攪拌した。反応液は水に加え、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣を再結晶(クロロホルム)し表題化合物490mgを得た。
【0148】

実施例43
4-(ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-ピペリジンに替えて4-(ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-ピペリジン100mgを用い、実施例1に準じて表題化合物80mgを得た。
【0149】

実施例76
1) 7-ブロム-2-メチルベンゾ[b]チオフェン
2-ブロムチオフェノール13.0g、プロパルギルブロマイド8.20g、炭酸カリウム9.50g、アセトン130mLを50℃で6時間過熱攪拌した。反応液は減圧下濃縮し、残渣は水に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮しチオエーテル体15.7gを得た。
【0150】
チオエーテル体、キノリン70mLを200℃で4.5時間過熱攪拌した。反応液は1N塩酸に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し表題化合物を得た。

2) 4-(2-メチルベンゾ[b]チオフェン-7-イル)ピペリジン
4-ブロムベンゾ[b]チオフェンに替えて4-ブロムベンゾフラン31.7gを用い、実施例1に準じて表題化合物を9.50g得た。

3) 4-(2-メチルベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-ピペリジンに替えて4-(ベンゾフラン-7-イル)-ピペリジン200mgを用い、実施例1に準じて表題化合物160mgを得た。
【0151】

実施例87
4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸2-フルオロエチル
クロル炭酸メチルに替えてクロル炭酸 2-フルオロエチル(2-フルオロエタノールとトリホスゲンから調整)を用い、実施例19に準じて脱Boc体250mgから表題化合物290mgを得た。
【0152】

以下の化合物は実施例1〜27、43、76、87と同様の方法により、目的物を得た。
【0153】
【表1】

【0154】
【表2】

【0155】
【表3】

【0156】
【表4】

【0157】
【表5】

【0158】
【表6】

【0159】
【表7】

【0160】
【表8】

【0161】
【表9】

【0162】
【表10】

【0163】
【表11】

【0164】
【表12】

【0165】
【表13】

【0166】
【表14】

【0167】
【表15】

【0168】
【表16】

【0169】
【表17】

【0170】
【表18】

【0171】
【表19】

【0172】
【表20】

【0173】
【表21】

【0174】
【表22】

【0175】
【表23】

【0176】
【表24】

【0177】
【表25】

【0178】
【表26】

【0179】
【表27】


【実験例】
【0180】
実験例に使用した化合物は以下に示したとおりである。
化合物A(WO2004/087124、化合物32)
【0181】
【化17】

【0182】
化合物B(WO2006/058294、化合物211)
【0183】
【化18】

【0184】
化合物C(WO2006/058294、化合物106)
【0185】
【化19】

【0186】
実験例1: M4ムスカリン性アセチルコリン受容体結合試験
J. Med. Chem., 43, 2514(2000)に記載の方法に準じて、以下のとおりM4ムスカリン性アセチルコリン受容体結合試験を行った。
<膜液の調製>
ヒト型M4ムスカリン性アセチルコリン受容体発現CHO細胞(EUROSCREEN社製、ES-213-C)を、10% Fetal Bovine Serum(以下FBSと略す)、 400μg/mL geneticin、 100units/mL penicillin、 100μg/mL streptomycinおよび2.5μg/mL amphotericin Bを含むHam’s F-12 nutrient mixtureを用いて、37℃, 5% CO2の条件下で培養した。得られた細胞に20mmol/L HEPES-NaOH(pH7.4)を加え、ホモゲナイズした。ホモジェネートを、900×g(9.8m/sec2)、4℃で10分間遠心した。上清をさらに40,000×g, 4℃で30分間遠心した。沈査にHEPES-NaOHを加えホモゲナイズした。
<結合阻害試験>
膜液200μL、10% DMSOに溶解した被験化合物溶液25μLおよび12nmol/L相当の[3H]オキソトレモリン 25μLを混合して、23℃で120分間インキュベートした。これを0.2%ポリエチレンイミンで処理した後、GF/Bグラスフィルターにハーベストし、HEPES-NaOHで洗浄し、実施例1又は2の化合物存在下の結合量を測定した。なお、非特異的結合量の測定には100μmol/L atropineを被験化合物溶液の代わりに加えた。
<計算方法>
被験化合物による結合阻害率を下記の式より算出した。
阻害率(%)={1-(B-N)/(T-N)}×100
T:全結合量
N:非特異的結合量
B:被験化合物存在下の結合量
次にIC50値を,50%阻害を挟む2濃度の結果を用いて,直線回帰にて算出した.
さらに,標識化合物溶液の放射活性を液体シンチレーションカウンターにて測定し,比放射能よりその濃度を補正したのち,Ki値を下記の式より算出した。
Ki=IC50/(1+C/Kd)
C:加えた標識化合物の終濃度(補正値)
Kd:標識化合物の解離定数

結果を下表に示す。
化合物のKiが0.01μM以下のとき「+++」、0.01〜0.1μMのとき「++」、0.1μM以上のとき「+」と示した。
【0187】

実験例2:セロトニン5-HT7受容体結合試験
<膜液の調製>
ヒト型5-HT7受容体発現HEK293細胞を、10% FBS, 100 units/mL hygromycin B, 100 units/mL penicillinおよび100μg/mL streptomycinを含むD-MEM(low glucose)を用いて、37℃、 5% CO2の条件下で培養した。得られた細胞に0.5 mmol/L EDTAおよび10 mmol/L MgCl2を含む50 mmol/L Tris-HCl(pH7.4)を加え、ホモゲナイズした。ホモジェネートを、900×g(9.8 m/sec2)、4℃で10分間遠心した。上清をさらに40,000×g、4℃で30分間遠心した。沈査にEDTAおよびMgCl2を含むTris-HClを加えホモゲナイズした。
<結合阻害試験>
膜液200μL、10% DMSOに溶解した被験化合物溶液25μLおよび2nmol/L相当の[3H]5-CT 25μLを混合して、30℃で120分間インキュベートした。これをGF/Bグラスフィルターにハーベストし、Tris-HClで洗浄し、実施例1又は2の化合物存在下の結合量を測定した。なお、非特異的結合量の測定には100μmol/L 8-OH-DPATを被験化合物溶液の代わりに加えた。
計算方法は実験例1と同様に行った。
【0188】
結果を下表に示す。化合物のKiが0.01μM以下のとき「+++」、0.01〜0.1μMのとき「++」、0.1μM以上のとき「+」と示した。
【0189】

実験例3:ラット抗アポモルフィン誘発運動量亢進作用
雄性Wistarラット(日本エスエルシー株式会社)に実施例1または実施例2の化合物を経口投与し、60分後にアポモルフィン(apomorphine)0.25mg/kgを皮下投与して直ちにSCANET運動量測定装置(ケージ内寸: 45×45×30cm:株式会社メルクエスト)内に入れ、40分間の運動量を赤外線ビームの横切り回数として測定した。
【0190】
結果を下表に示す。上記実験における有効性を、100%〜75%阻害を「+++」、75〜50%阻害を「++」、50〜25%阻害を「+」、25%以下の阻害を「-」として示した。
【0191】
【表28】

【0192】
実験例1、2の結果から実施例1、2の化合物はM4ムスカリン性アセチルコリン受容体と、セロトニン7受容体に親和性をもつ化合物であることがわかった。実験例3の結果からはin vivo試験での経口活性が確認できた。
【0193】

実験例4、ファンクショナルアッセイ
(1) M4 ファンクショナルアッセイ(アゴニストの評価方法)
1) 薬物溶液の調製
10 mM HEPES-NaOH(pH 7.4)、2 mM 3-isobutyl-1-methylxanthine (IBMX)および10 μM forskolinを含むHam’s F-12 Nutrient mixture(F-12培地)に、DMSOに溶解した実施例1、2の化合物を培地0.5 mLあたり1 μLを添加した。
【0194】
2) 細胞懸濁液の調製
10% fetal bovine serum (FBS)、400 μg/mL G418、100 units/mL penicillin、100 μg/mL streptomycinおよび2.5 μg/mL amphotericin Bを含むF-12培地を用いて、37℃、5% CO2の条件下で培養したM2もしくはM4発現CHO細胞を回収し、10 mM HEPES-NaOHを含むF-12培地に、4×105cells/mLとなるように懸濁した。
【0195】
3) 反応
チューブに細胞懸濁液を100 μLずつ分注し、37℃にて25分間インキュベーションした。薬物溶液を100μL /tube添加し、37℃にて45分間インキュベーションした。0.5% Triton X-100を含むF-12培地を200μL /tube添加して反応を停止し、cAMP測定サンプルとした。
【0196】
4) cAMP濃度の測定
HEPES-NaOHを含むF-12培地(ないしはD-MEM)でサンプルを10倍に希釈した後、サンプル中のcAMP濃度をcAMP enzyme immunoassay system (GEヘルスケア・バイオサイエンス)を使用して測定した。すなわち、Donkey anti-rabbit IgG抗体を固相化した96 wellプレートに、
rabbit anti-cAMP抗体(“antiserum”)液:50μL /well
測定サンプル:50μL /well
cAMP-peroxidase conjugated液:25μL /well
を加えて、4℃にて一晩インキュベーションした。“Wash buffer”で洗浄後、”TMB substrate”液を75μL /wellずつ添加し、室温にて3-5分間インキュベーションした。1 M硫酸を50μL /wellずつ添加して反応を停止させた後、直ちに分光光度計でOD450nmを測定した。
【0197】
5)評価
培地中のcAMP濃度を測定した。なお、溶媒を加えないもの(basal)におけるcAMP濃度を100 %とし、実施例1、2の化合物を加えたものにおけるcAMP濃度をbasalに対する相対値に変換した。

(2)5-HT7 ファンクショナルアッセイ(アンタゴニストの評価方法)
1) 薬物溶液の調製
10 mM HEPES-NaOHおよび2 mM IBMXを含むlow glucose D-MEMに、DMSOに溶解した実施例1、2の化合物を培地0.25 mLあたり0.5μLを添加した。
【0198】
2) 細胞懸濁液の調製
10% FBS、100 units/mL hygromycin B、100 units/mL penicillinおよび100μg/mL streptomycinを含むD-MEMを用いて、37℃、5% CO2の条件下で培養した5-HT7発現HEK293細胞を回収し、10 mM HEPES-NaOHを含むD-MEMに5×106 cells/mLとなるように懸濁した。
【0199】
3) 反応
チューブに細胞懸濁液を100μLずつ分注し、37℃にて25分間インキュベーションした。薬物溶液を100μL /tube添加し、37℃にて45分間インキュベーションした。0.5% Triton X-100を含むD-MEMを200μL /tube添加して反応を停止し、cAMP測定サンプルとした。
【0200】
4) cAMP濃度の測定・評価
上記M4ファンクショナルアッセイと同様に測定を行った。
【0201】

M4アゴニストとして既知である (5R,6R)-6-(3-propylthio-1,2,5-thiadiazol-4-yl)-1-azabicyclo[3,2,1]octane (PTAC) (chirality, 9, 739-749(1997))と比較して、実施例1、2の化合物がM4アゴニストであることを確認した。 また、5-HT7アンタゴニストとして既知であるSB-258741(J. Med. Chem., 41, 655-657(1998))と比較して、実施例1、2の化合物が5-HT7アンタゴニストであることを確認した。

以上の結果から本発明化合物はM4ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト活性とセロトニン7受容体アンタゴニスト活性を併せもち、さらに経口活性を有した化合物であることが認められた。したがって、本発明の化合物はムスカリン受容体およびセロトニン受容体と関連する疾患または状態を処置するための医薬組成物を提供するものであり、なかでも統合失調症の治療に有用な化合物であるといえる。
【0202】
なお、本明細書中に記載される化合物および組成物は経口または非経口的に投与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


(式中、k及びmはそれぞれ同一又は異なって1又は2を示し、
l及びn、はそれぞれ同一又は異なって1、2又は3を示し、
R1及びR2はそれぞれ同一または異なって、水素原子、水酸基、シアノ、フッ素原子、C1-6アルキル、ヒドロキシメチル、C1-6アルキルオキシメチル、C2-6アシルオキシメチル、C2-6アシルアミノメチル、またはC1-6カルボキシルを示し、また2つのR1又はR2が同一の炭素上に置換してオキソを示してもよく、
【化2】


は単結合又は二重結合を示し、
R3、R4、及びR5はそれぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、またはC1-6アルキルを示し、またR3とR4、又はR4とR5はそれぞれ結合して5ないし6員環を形成してもよく、該5ないし6員環は酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から成る群より選ばれる1又は2の原子を含んだ複素環であってもよく、
R6は、R3とR4、又はR4とR5により形成された5ないし6員環に置換していてもよく、水素、ハロゲン原子、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アシル、C2-6アルケニル、水酸基、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノ、ジC1-6アルキルアミノ、C1-6アルキルチオ、環状アミド、アリールスルホニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシカルボニル、C3-7シクロアルキスルホニル、ヘテロ環スルホニル、アリールスルフィニル、C3-7シクロアルキルスルフィニル、ヘテロ環スルフィニル、アリールカルボニル、C3-7シクロアルキルカルボニル、ジC1-6アルキルカルバモイル、低級環状アミノカルボニル、芳香族ヘテロ環、飽和へテロ環、不飽和へテロ環、およびヘテロ環カルボニルからなる群より選ばれる置換基を示す。
このときC1-6アルキル、アリール、C3-7シクロアルキルまたはヘテロ環は、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C2-6アシル、C2-6アルケニル、水酸基、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノ、ジC1-6アルキルアミノ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシカルボニル、シアノ、5ないし6員環の環状アミド、5ないし6員環の環状ウレア、または5ないし6員環の環状カーバメートを有していてもよく、
Zは、C1-6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C3-7シクロアルキルスルホニル、ヘテロ環スルホニル、C2-6アシル、C1-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C3-7シクロアルキルオキシカルボニル、ヘテロ環オキシカルボニルまたはC1-6アルキルカルバモイルを示す。このときアリール、C3-7シクロアルキルまたはヘテロ環は、環上にハロゲン原子、水酸基、アミノ、C1-6アルコキシまたはシアノを有していてもよく、
qは、0、1又は2を示す。)で表されるピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
式(2)
【化3】


(式中、k、mはそれぞれ同一又は異なって1又は2を示し、
R1a及びR2bはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、水酸基、シアノ、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ヒドロキシメチル、C1-6アルキルオキシメチル、C2-6アシルオキシメチル、C1-6アシルアミノメチル、またはC1-6カルボキシルを示し、
R6aは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、水酸基またはC1-6アルキルオキシで置換されたC1-6アルキル、またはC1-6アルキルオキシを示し、
G、J、及びLは、いずれか2つが-CR6-(式中、R6は、水素、またはハロゲン原子、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アシル、C1-6アルコキシ、アリールスルホニル、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、ヘテロ環スルホニル、アリールスルフィニル、C3-7シクロアルキルスルフィニル、ヘテロ環スルフィニル、ジC1-6アルキルカルバモイル、低級環状アミノカルボニル、芳香族ヘテロ環、飽和へテロ環、不飽和へテロ環、およびヘテロ環カルボニルからなる群より選ばれる置換基を示す。このときC1-6アルキル、アリール、C3-7シクロアルキル、低級環状アミノカルボニルにおける低級環状アミノ、またはヘテロ環スルホニル、ヘテロ環スルフィニル、芳香族ヘテロ環、飽和へテロ環、不飽和へテロ環、およびヘテロ環カルボニルにおけるヘテロ環は、置換基上もしくは環上にハロゲン原子、C1-6アルキル、C2-6アシル、C2-6アルケニル、水酸基、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノ、ジC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシカルボニル、シアノ、5ないし6員環の環状アミド、5ないし6員環の環状ウレア、5ないし6員環の環状カーバメートを有していてもよい。) を示し、残りの1つが-NR7- (式中、R7は、水素原子、C2-6アシル、またはC1-6アルキルを示す。) 、-O-又は-S-を示し、Z及びqは請求項1の記号と同義である。) により表される請求項1に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項3】
R1aおよびR2aが水素原子である請求項2に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項4】
R6aが水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、水酸基で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキルオキシで置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、ジC1-6アルキルカルバモイル、または低級環状アミノカルボニルである請求項3に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項5】
式(3)
【化4】


(式中、mは1又は2を示し、R2cはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、水酸基、シアノ、フッ素原子、C1-6アルキル、ヒドロキシメチル、C1-6アルキルオキシメチル、C2-6アシルオキシメチル、C2-6アシルアミノメチル、またはC1-6カルボキシルを示す。) を示し、
R6cは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、またはC1-6アルキルオキシを示し、
X及びYは一方が-CR6C-(式中、R6Cは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、またはC1-6アルキルオキシを示す。) を示し残りが窒素原子を示すか、又は全て-CR6C-(式中、R6Cは前記と同義である。) を示し、
Z及びqは請求項1の各記号と同義である。)により表される請求項1に記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項6】
4-(ベンゾ[b]チオフェン-4-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(4-ベンゾフラン-7-イルピペリジン-1-イルメチル)ピペリジン-1-カルボン酸エチル、4-(ベンゾフラン-4-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸メチル、4-(ベンゾフラン-7-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸2-フルオロエチルからなる群より選ばれる請求項1又は2のいずれかに記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項7】
4-(キノリン-8-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチル、4-(ナフタレン-1-イル)-[1,4’]ビピペリジニル-1’-カルボン酸エチルからなる群より選ばれる請求項1又は5のいずれかに記載のピペリジン化合物、またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩および製薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
M4ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト作用及びセロトニン7受容体アンタゴニスト作用を有することを特徴とする請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
中枢神経系の疾患であり、アセチルコリン神経系とセロトニン神経系により調節される疾患若しくは状態を有する対象を処置または予防するための方法であって、当該対象に治療有効量の請求項8に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項11】
アセチルコリン神経系とセロトニン神経系により調節される疾患若しくは状態が統合失調症、不安症状またはうつ病である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象が哺乳動物またはヒトである請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1ないし7のいずれかに記載のピペリジン化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする統合失調症の治療薬。

【公開番号】特開2008−37850(P2008−37850A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218372(P2006−218372)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】