説明

新規菌株および新規子実体の栽培方法

【課題】白霊茸(Pleurotus nebrodensis)で採用されるような複雑な変温管理工程を必要とせず、従来のエリンギ栽培技術をそのまま採用することで容易に栽培が可能なプレオロウタス属に属する新規な菌株を提供する。
【解決手段】エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、オガコと栄養源とを混合して水分調整したエリンギ栽培用培養基で交配菌を培養して選抜を行うことにより、プレオロウタス属菌株であるKX−EN2001菌株(FERM P−20576)を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規菌株の作出方法および新規菌株ならびに新規子実体の栽培方法に関し、詳しくは、食用きのことして有用なプレオロウタス属に属する新規菌株の作出方法および新規菌株:KX−EN2001菌株(FERM P−20576)並びに新規子実体の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国などから導入された「白霊茸(Pleurotus nebrodensis)」が日本においても人工栽培されるようになってきている。具体的には、適宜に調整した培養基に白霊茸(Pleurotus nebrodensis)の種菌を接種し、培養前期の温度を20℃前後に40日間維持した後、培養後期において培養前期に維持していた温度を10日間程度10℃前後に一旦低下させ、その後の10日間を30℃前後まで著しく上昇させるようにして培養基内に菌糸を蔓延させた後、発生時においては、前期の数日間を−1℃前後と低温に維持し、その後5℃前後で7日間程度維持した後に菌掻きを行い、菌掻き後に温度を18℃前後に上昇させて発生させる栽培方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−201645号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような白霊茸(Pleurotus nebrodensis)の栽培においては、従来のエリンギ(Pleurotus eryngii)の栽培に比べ栽培サイクルが長く、しかも栽培工程において−1〜10℃までの変温管理による低温ショックを付与しなければきのこが発生しない等の栽培工程上の問題点が多く、既存施設での新規の栽培きのことしての導入においては経営上のメリットのないことが欠点となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、白霊茸(Pleurotus nebrodensis)で採用されるような複雑な変温管理工程を必要とせず、従来のエリンギ栽培技術をそのまま採用することで容易に栽培が可能なプレオロウタス属に属する新規な菌株を開発することにある。
【0005】
本発明者らは、種の異なるプレオロウタス属のきのこに属するエリンギ「Pleurotus eryngii(DC.:Fr.)Quel.」とその変種である白霊茸「Pleurotus nebrodensis(Inzenga)Quel.」とが交配する事実を見出し、その交配させた新菌株を使用してエリンギ栽培用の人工培養基を使用して交配により作出した菌株の選抜を行った結果、エリンギと同様の栽培方法で栽培が可能なプレオロウタス属に属する新規な菌株と栽培法を見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明の第1の要旨は、エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、オガコと栄養源とを混合して水分調整したエリンギ栽培用培養基で交配菌を培養して選抜を行うことを特徴とする新規菌株の作出方法に存する。
【0007】
本発明の第2の要旨は、プレオロウタス属菌株であるKX−EN2001菌株(FERM P−20576)に存する。
【0008】
そして、本発明の第3の要旨は、栽培容器にオガコと栄養源とを混合して水分調整した培養基を充填し、培養基を加熱殺菌した後、請求項1で得られた新規菌株の種菌を接種し、芽出室に搬入し、芽出しを行ない、次いで、原基の生育を行なうことを特徴とする新規子実体の栽培方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エリンギ(Pleurotus eryngii)と白霊茸(Pleurotus nebrodensis)とを交配させて作出した新規な菌株を使用することにより、エリンギ(Pleurotus eryngii)と同様の人工栽培方法で新規な菌株の栽培を行うことが出来るため、白霊茸(Pleurotus nebrodensis)のような多段階の変温管理工程を必要とすることなく、プレオロウタス属に属する新規なきのこを容易に栽培することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<新規菌株の作出方法>
本発明に係る新規菌株の作出方法は、エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、オガコと栄養源とを混合して水分調整したエリンギ栽培用培養基で交配菌を培養して選抜を行うことを特徴とする。
【0011】
交配に使用するエリンギ「Pleurotus eryngii(DC.:Fr.)Quel.」と白霊茸「Pleurotus nebrodensis(Inzenga)Quel.」は、その組み合わせであれば、特に親株が限定されるものではない。通常、交配は次に様に行われる。
【0012】
先ず、落下法により、エリンギ子実体と白霊茸の傘をペトリー皿に入れて静置し、得られた胞子紋に滅菌水を加えて胞子を懸濁させる。血球計算板を使用し、胞子懸濁液中の胞子数を計数後、適当な胞子濃度に希釈し、PDA(ポテト・デキストロース寒天)平板培地に接種する。常温で7〜10日間培養した後、発芽した1次菌糸を分離し、各々の1次菌糸株を得る。次いで、PDA平板培地に両1次菌糸株を接種し、常温で7〜30日間培養し、総当りの交配を行う。交配の有無は、光学顕微鏡下でクランプ結合を確認することにより行う。
【0013】
交配菌の選抜は、適当な培養基を使用して行う。培養基としては、エリンギ栽培の可能な培養基であれば何れの培養基であってもよい。一般的には木粉培養基が使用され、好ましくはエリンギ栽培用培養基、すなわち、オガコと栄養源とを混合して水分調整したエリンギ栽培用培養基が使用される。培養基の調整に使用されるオガコとしては、針葉樹オガコが好適であるが、広葉樹オガコも使用することが出来る。また、3ヶ月以上堆積した針葉樹オガコが好適であるが、新鮮な針葉樹オガコも使用することが出来る。オガコと共にコーンコブ粉砕物やコットンハル等の代替培地基材を使用することも出来る。その場合、オガコ:コーンコブ粉砕物の容積比は、通常10:0〜0:10、好ましくは8:2程度とされる。一方、栄養源としては、米糠、フスマ、大麦糠、トウモロコシ糠などの穀類糠が好適に使用される。穀類糠は、出来る限り新鮮なものが好ましい。培養基総重量に対し、栄養源の使用割合は、通常0〜30重量%、好ましくは12〜16重量%(850cc1ビン当たり70〜100g)の範囲とされる。木粉培養基の含水率は、通常55〜75重量%、好ましくは64〜68重量%の範囲とされる。
【0014】
上記の木粉培養基による培養(選抜)は、二段階以上に分け、木粉培地適応性を有する交配菌を選抜し、木粉培地に順応性を有する交配菌について更に選抜を行うことが出来る。この場合、第1段目の選抜と第2段目の選抜とで使用する培養基の組成は異ならせることが出来、第1段目の選抜の培養基には栄養源の配合を省略することも出来る。また、第2段目の選抜の選抜は、第1段目の選抜の培養基で製造した菌床を種菌として使用して行われる。そして、最終選抜は、培養の終了した菌床の表面を約15mmの深さに掻き取り、倒立状態で環境温度15〜16℃、炭酸ガス濃度800〜2,000ppm、昼間の時間帯のみ400Lx程度の光を照射し、環境湿度70〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後に容器を正立状態に戻し、環境温度を16〜18℃、環境湿度を80〜90%に変更し、芽出し管理と同様の照度環境下で生育管理を行うという、一般的なエリンギの栽培管理で行う。
【0015】
<新規菌株>
本発明者らは、従来のエリンギ栽培技術をそのまま採用することで容易に栽培が可能な新規な菌株を見出し、KX−EN2001と命名した。このKX−EN2001株は、プレオロウタス属に属する新規な菌株であり、平成17年6月29日から、独立行政法人産業技術総合研究所に17産生寄第88号(FERM P−20576)として寄託されている。本発明の菌株の菌学的諸性質は次の(1)〜(11)に示す通りである。
【0016】
(1)麦芽エキス寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は26.8mm。菌糸は白色で密。気中菌糸の量は中程度で、直線的に伸びる。
【0017】
(2)バレイショ・・ブドウ糖寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は30.4mm。菌糸は白色で密。気中菌糸の量は中程度で、直線的に伸びる。
【0018】
(3)ツアペック・・ドックス寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は13.2mm。菌糸は白色で極めて希薄。気中菌糸の量は極めて少なく、直線的に伸びる。
【0019】
(4)サブロー寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は29.9mm。菌糸は白色で密。気中菌糸の量は中程度で、直線的に伸びる。
【0020】
(5)オートミール寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は28.5mm。菌糸は白色で希薄。気中菌糸の量は極めて少なく、直線的に伸びる。
【0021】
(6)合成ムコール寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は5.5mm。菌糸は白色で密。気中菌糸の量が多く、樹状に伸びる。
【0022】
(7)YpSs寒天培地における生育状態(23℃):
7日目のコロニー直径は38.8mm。菌糸は白色で密。気中菌糸の量は中程度で、直線的に伸びる。
【0023】
(8)フェノールオキシダーゼ検定培地における生育状態(23℃)
0.5%タンニン酸と0.5%没食子酸添加PDA培地、および0.5%没食子酸添加麦芽エキス寒天培地のいずれの培地とも、菌糸は活着、生長せずに不活着症状を示し、接種源の周辺培地が少し褐変する症状が認められる。
【0024】
(9)菌糸生育最適温度:
PDA培地上に直径5mmの種菌を接種し、各温度帯でそれぞれ培養して、7日後に各コロニー径を測定したところ、菌糸伸長の最適温度は30℃付近であった。
【0025】
(10)菌糸生育最適pH:
YGT液体培地(酵母エキス・ブドウ糖・チアミン塩酸培地)16mlずつを滅菌後、各pHに調整し、種菌を接種後、23℃で7日間静置培養した後、乾燥菌体重量を測定したところ、菌糸生育最適pHは5.5付近であった。
【0026】
(11)遺伝的特性:
遺伝的特性については、両菌糸が持っている性因子が異なれば、その菌糸は互いに異なる菌糸であるという菌類分類学的事実に基づき、両親株ならびに近縁品種との寒天培地上における対峙培養により性因子の同異判定を行った。
【0027】
供試したエリンギ「Pleurotus eryngii(DC.:Fr.)Quel.」の菌株としては、親株(KX−EG079号)の他にATCC36047、ATCC90212、ATCC90787、ATCC90887、ATCC96054の各菌株を使用した。
【0028】
白霊茸「Pleurotus nebrodensis(Inzenga)Quel.」の菌株としては、親株(中国遼寧省瀋陽農業大学所有の白霊茸)の他に新宇食用菌研究所所有白霊茸(Pnkw−1株)を使用した。
【0029】
また、プレオロウタス属の近縁株としては、Pleurotus ostreatus(DC.:Fr.)Quel.(ヒラタケ:弊社保有株)、Pleurotus pulmonarius(DC.:Fr.)Quel.(ウスヒラタケ:弊社保有株)、Pleurotus salmoneostramineus(DC.:Fr.)Quel.(トキイロヒラタケ:弊社保有株)、Pleurotus cornucopiae var. citrinopileatus(DC.:Fr.)Quel.(タモギタケ:弊社保有株)、Pleurotus djamor(Fries)Boedjin(NBRC32398)、Pleurotus dryinus(Persoon:Fries)Kummer(NBRC32797)、Pleurotus ferulae Lanzi(新宇食用菌研究所所有:Pnkw−4)を使用した。
【0030】
常法によりPDA寒天培地上に3cmの間隔で上記の各菌株を接種し、23℃で14日間培養した後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。結果を表1に示す(帯線形成は+、形成しないものは−で表示)。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示す通り、前記の各菌株は、KX−EN2001と明確な帯線を形成することから、当菌株はプレオロウタス属に属する新規な菌株であることが明らかである。
【0033】
<新規子実体の栽培方法>
本発明に係る新規子実体の栽培方法は、栽培容器にオガコと栄養源とを混合して水分調整した培養基を充填し、培養基を加熱殺菌した後、請求項1で得られた新規菌株の種菌を接種し、芽出室に搬入し、芽出しを行ない、次いで、原基の生育を行なうことを特徴とする。
【0034】
上記の培養基としては、前述のエリンギ栽培用培養基を使用することが出来、栽培管理は、ポリプロピレン製栽培瓶(850cc)に正味重量で530〜540gの培養基を充填し、培養基の中央部に直径が約15mmで底部に到達する接種孔を設けて施栓し、常法に従って高圧殺菌釜中で殺菌処理を行った後、クリーンルーム内で無菌的に冷却して、プレオロウタス属に属する新規な菌株(KX‐EN2001)を接種し、23℃で35日間の培養管理を行った。次いで、培養の終了した菌床の表面を約15mmの深さに掻き取り、倒立状態で環境温度15〜16℃、炭酸ガス濃度800〜2,000ppm、昼間の時間帯のみ400Lx程度の光を照射し、環境湿度70〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で繰り返しながら芽出し管理を行い、芽切り確認後に容器を正立状態に戻して、環境温度を16〜18℃、環境湿度を80〜90%に変更して、芽出し管理と同様の照度環境下で生育管理を行った。
【0035】
本発明の新規な菌株における子実体の形態的特性は次の通りである。すなわち、子実体は散生、菌傘の大きさは8〜10cm、円形または不正形で丸ないし漏斗形、傘色は淡黄白色ないし灰黄色、表面は平滑で艶があり、筋状の紋様を有する。肉は白色かつ厚く緻密である。ヒダは淡灰黄色、密度は密生で、菌柄への付き方は強い垂生である。菌柄は中心ないし偏心生、太さは3〜4cm、長さ6〜8cmで、色は白色、形は下太、肉質は白色、中実で非常に硬い。胞子は楕円ないし紡錘形、表面は平滑、大きさは5〜6×7〜9μmで、胞子紋は白色である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1:
<新規菌株の作出>
【0038】
<新規菌株>
子実体としては、株式会社キノックス所有のエリンギの子実体(Pleurotus eryngii、品種名KX−EG079号)と中国遼寧省瀋陽農業大学所有の白霊茸(Pleurotus nebrodensis)の子実体とを使用した。
【0039】
先ず、落下法により、エリンギ子実体と白霊茸の傘をペトリー皿に入れて静置し、得られた胞子紋に滅菌水を加えて胞子を懸濁させ、血球計算板を使用し、胞子懸濁液中の胞子数を計数後、適当な胞子濃度に希釈し、PDA平板培地に接種し、23℃で8日間培養した後、発芽した1次菌糸を分離し、各々の1次菌糸株を得た。次いで、PDA平板培地に両1次菌糸株を接種し、23℃で20日間培養し、総当りの交配を行った。交配の有無は、光学顕微鏡下でクランプ結合を確認することにより行った。そして、エリンギ(Pleurotus eryngii)と白霊茸(Pleurotus nebrodensis)の交配株約50株を得た。
【0040】
先ず、スギオガコとコーンコブミールを容積比で8:2の割合で混合し、培養基総重量当たり10重量%の専管フスマを添加(1ビン当たり52g添加)した後、含水率を約68重量%に調整した培養基に、上記の交配株約50株を接種し、23℃で40日間培養することで、木粉培地に順応性の高い10株の交配株を選抜した。
【0041】
次いで、スギオガコとコーンコブミールを容積比で8:2の割合で混合し、培養基総重量当たり12重量%のフスマを添加(1ビン当たり60g添加)した後、含水率を約66重量%に調整した培養基に、上記の菌株10菌株を接種し、23℃で35日間の培養管理を行った。培養の終了した菌床は、表面を約15mmの深さに菌掻き処理を行った後、倒立状態で環境温度15〜16℃、炭酸ガス濃度が800〜2,000ppm、昼間の時間帯のみ400Lx程度の光を照射して、環境湿度70〜98%の湿度範囲で芽出し管理を行った。
【0042】
芽切り確認後は、正立状態に戻した後、環境温度を16〜18℃、環境湿度を80〜90%に変更して、芽出し管理と同様の照度環境下で生育管理を行い、優良交配株を5株選抜し、再度同培地にて同様の生育管理を5回繰り返し、最良な1菌株を育成した。この菌株は、「KX−EN2001」と命名され「FERM P−20576」として寄託されている。
【0043】
<新規子実体の栽培方法>
先ず、スギオガコとコーンコブミールを容積比で8:2の割合に混合し、培養基総重量当たり3重量%の専かんフスマと同6重量%の乾燥オカラ、更に1重量%のネオビタスNを添加(合計で1ビン当たり80g添加)した後、含水率を約68重量%に調節して培養基を調製した。充填機を使用し、ポリプロピレン製栽培瓶(850cc)に正味重量で530〜540gの培養基を充填し、培養基の中央部に直径が約15mmで底部に到達する接種孔を設けて施栓した。次いで、常法に従って高圧殺菌釜で殺菌した後に冷却した。冷却は、放冷時における戻り空気による再汚染を防止するため、クリーンルーム内で行った。
【0044】
その後、同クリーンルーム内で無菌的にKX−EN2001菌株を接種して培養を開始した。培養は23℃で35日間の培養管理を行った後、培地の表面も含めて約15mmの深さに菌掻き処理を行った。その後、倒立状態で直ちに、環境温度15〜16℃、炭酸ガス濃度が800〜2,000ppm、昼間の時間帯のみ400Lx程度の光を照射して、環境湿度70〜98%の湿度範囲で低湿度環境と高湿度環境とを一定間隔で保持しながら繰り返す、芽出し管理を行った。
【0045】
芽切り確認後は、容器を正立状態に戻した後、環境温度を16〜18℃、環境湿度を80〜90%に変更して、芽出し管理と同様の照度環境下で生育を行った。そして、きのこは菌傘が平らになるまで生長させた段階で、1本づつ収穫を行った。収穫までの日数は14.3日(標準偏差値0.6)、1瓶当たりの収量は139.4g(21.7)、有効茎本数は3.1本(1.4)、子実体の個重は45.0g(9.4)であった。子実体の形態を図1に示す。
【0046】
比較例1:
実施例1において、使用する種菌の種類を白霊茸(Pleurotus nebrodensis)に変更した以外は、実施例1と同様の管理で白霊茸(Pleurotus nebrodensis)の栽培を行った。結果においては、実施例1とは異なり、子実体の発生をまったく認めることは出来なかった。
【0047】
上記の実施例1及び比較例1の結果から明らかな通り、本発明に従い、エリンギ(Pleurotus eryngii)と白霊茸(Pleurotus nebrodensis)との変種間きのこを交配させて作出した新規な菌株は、白霊茸(Pleurotus nebrodensis)栽培と異なり、一般的に使用されるエリンギ栽培用の人工培養基を使用して容易に人工栽培を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で得られた新規子実体の形態説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリンギの胞子と白霊茸の胞子とを交配させた後、交配菌を培養して選抜を行うことを特徴とする新規菌株の作出方法。
【請求項2】
プレオロウタス属菌株であるKX−EN2001菌株(FERM P−20576)。
【請求項3】
栽培容器にオガコと栄養源とを混合して水分調整した培養基を充填し、培養基を加熱殺菌した後、請求項1で得られた新規菌株の種菌を接種し、芽出室に搬入し、芽出しを行ない、次いで、原基の生育を行なうことを特徴とする新規子実体の栽培方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−53928(P2007−53928A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240753(P2005−240753)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(591225039)株式会社キノックス (5)
【Fターム(参考)】