新規製剤
本発明は、医薬活性剤;水、;ポリエチレングリコール又はポロキサマー;及びポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む医薬製剤に関する。好ましくは、前記医薬活性剤は、抗真菌又は抗カビ剤である。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。本発明は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症などの爪又は皮膚の病気、疾患、又は病理状態の治療における前記製剤の使用にも関する。本発明は、医薬活性剤を含む前記製剤を対象の爪又は皮膚に適用することによって、前記対象に前記医薬活性剤を投与する方法にも関する。本発明は、前記製剤の製造方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬活性剤;水;ポリエチレングリコール又はポロキサマー;及びポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む医薬製剤に関する。好ましくは、前記医薬活性剤は抗真菌又は抗カビ剤である。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。本発明は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症などの爪又は皮膚の病気、疾患、又は病理状態の治療における前記製剤の使用にも関する。本発明は、医薬活性剤を含む前記製剤を対象の爪又は皮膚に適用することによって、前記対象に前記医薬活性剤を投与する方法にも関する。本発明は、前記製剤の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の病気又は疾患は多くの場合において医薬活性剤の局所投与によって効果的に治療され得るが、爪の病気及び疾患の治療の成功は得られにくい状況のままである。大半の爪の病理状態の原因が発生している爪の中又は下に、医薬活性剤を効果的に送達することが困難である。
【0003】
特に、爪の真菌感染は効果的に治療し得ない状況のままである。手の爪及び足の爪の中、下、及び周囲における真菌感染は、一般的に、爪甲真菌症と称される。爪甲真菌症は、大半の場合において、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、及びエルデルモフィトン・フロッコーズム(Epidermophyton floccosum)などの皮膚糸状菌によって生じるが、カビ及び酵母などを含む他のタイプの真菌によっても生じ得る。皮膚糸状菌によって生じない爪甲真菌症は、通常、カンジダ種によって生じる。混合感染も生じ得る。
【0004】
爪甲真菌症は、爪の肥厚、凹凸、割れ、及び変色を生じさせ、爪の欠損又は損失すら生じさせ得る。加えて、痛み、不十分な血液供給、歩行に関連する問題、及び他の望ましくない症状を生じさせ得る。
【0005】
過去においては、爪甲真菌症は、とりわけ、爪の感染部分又は爪全体を除去することによって治療されていた。しかしながら、このタイプの治療は、爪に永続的な損傷を生じさせ得る。また、新たに生じた爪は不恰好な形状で現れ得る。さらに、爪を除去することによって爪甲真菌症を完全に治療し得る補償はない。
【0006】
爪を除去する代わりに、爪甲真菌症は、各種の効カビ剤の使用によっても治療され得る。好カビ剤は、例えば経口投与され得る。しかしながら、当該態様の治療では、身体全体へのストレスがかかり、少量のみの抗カビ活性物質が爪のマトリックスを介して爪に到達する。経口治療は、足の爪には少なくとも12週の治療時間が必要であり、指に爪には約6から8週の治療時間が必要であるという更なる欠点がある。その様な長期の治療時間は、治療を高額にし、患者の薬剤服用遵守を低減させる。さらに、経口治療は、例えば、胃腸管の刺激、吐き気、望ましくない他の医薬との相互作用、活性成分に誘導された皮膚発疹などの副作用のリスクを増大させる。爪甲真菌症の経口治療は、吸収及び代謝の可変速度によって更に困難となる。
【0007】
爪甲真菌症の他の治療方法は、抗カビ活性成分を含有する医薬製剤の局所適用を含む。例えば、抗カビ活性成分を含有するネイルラッカー製剤で爪甲真菌症を治療することが知られている。しかしながら、爪は抗真菌化合物が浸透するのが困難な障壁であるため、そのような抗真菌ネイルラッカーは、真菌感染に到達するために必要な浸透力を欠いている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.A. Walters et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1985, vol. 37, pages 771-775
【非特許文献2】D. Mertin et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1997, vol. 49, pages 30-34
【非特許文献3】Y. Kobayashi et al., European Journal of Pharmaceutical Sciences, 2004, vol. 21, pages 471-477
【非特許文献4】D. Spruit, Journal of Investigative Dermatology, 1971, vol. 56, pages 359-361
【非特許文献5】K.A. Walters et al., Journal of Investigative Dermatology, 1981, vol. 36, pages 101-103
【非特許文献6】de Berker & Baran, Int. J. Cosmetic Science, 2007, vol. 29, pages 241-275
【非特許文献7】Spruit, Am. Cosmet. Perfum., 1972, vol. 87, pages 57-58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、爪甲真菌症などの爪の病気、疾患、及び病理状態の効果的な治療が依然として必要とされている。爪の障壁に浸透することが可能であり、且つ、爪の真菌症を効果的に治療することが可能であり、かくして、抗真菌剤の経口投与及び爪を除去する必要性を除去する局所性剤を有することが有益であろう。効果的には、爪甲真菌症の局所治療は、病原体に強力な効能を示すべきであり、且つ、爪の障壁に浸透できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第一の態様は、
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー;及び
(d)ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル
を含む製剤を提供する。
【0011】
ポリエチレングリコール(PEG)は、一般式HO−(CH2CH2O)n−Hを有する。好ましくはn=4−2000であり、好ましくはn=6−750であり、好ましくはn=150−500である。好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールは、少なくとも400、好ましくは少なくとも500、好ましくは少なくとも700、好ましくは少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、好ましくは少なくとも4500、好ましくは少なくとも5000、好ましくは少なくとも6000、更に好ましくは少なくとも8000の平均分子量を有する。好ましくはポリエチレングリコールの平均分子量は、100000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下である。これらの好ましい分子量の下限のいずれかが、好ましい分子量の範囲を与えるために好ましい分子量の上限のいずれかと組み合わされてよい。好ましくは、ポリエチレングリコールの平均分子量は、200−100000の範囲、好ましくは300−30000の範囲である。好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールは、PEG8000−20000、すなわち、8000と20000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコールである。代替的な好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールの平均分子量は200−600の範囲、好ましくは300−500の範囲であり、より好ましくはポリエチレングリコールの平均分子量は約400である。好ましい実施態様では、前記製剤は、5−50%の量、好ましくは10−40%の量、好ましくは15−35%の量でポリエチレングリコールを含む。
【0012】
本発明に関しては、特に言及しない限り、全ての量の割合は重量%を示す。
【0013】
ポロキサマーは、一般式HO−(CH2CH2O)a−(CH(CH3)CH2O)b−(CH2CH2O)c−Hを有するポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマーである。好ましくはa=4−200である。好ましくはb=15−300である。好ましくは、c=4−200である。好ましくはポロキサマーのポリオキシエチレン含量は、全ポリマー重量の10−80%である。好ましい実施態様では、ポロキサマーは、少なくとも1000、好ましくは少なくとも2000、好ましくは少なくとも4500、好ましくは少なくとも5000、好ましくは少なくとも6000、より好ましくは少なくとも8000の平均分子量を有する。好ましくは、ポロキサマーの平均分子量は、100000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは15000以下である。これらの好ましい分子量の下限のいずれかが、好ましい分子量の範囲を与えるために、好ましい分子量の上限のいずれかと組み合わされてよい。好ましくは、ポロキサマーの平均分子量は、1000−16000の範囲、好ましくは2000−15000の範囲である。好ましい実施態様では、前記製剤は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%の量でポロキサマーを含む。好ましくは、前記製剤は、5−50%の量、好ましくは10−40%の量、好ましくは15−35%の量でポロキサマーを含む。
【0014】
本発明の製剤は、ポリエチレングリコール又はポロキサマーを含んでよい。好ましくは、前記製剤はポリエチレングリコールを含む。1つの実施態様では、前記製剤はポロキサマーを含まない。
【0015】
ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルは、一般式RO−(CH2CH2O)m−Rを有する。好ましくはm=2−250であり、好ましくはm=4−175であり、好ましくはm=6−125である。好ましくは、各Rが、水素又は任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、若しくはアルキニルアリール基から独立に選択され、より好ましくは各Rが水素又は任意に置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル、若しくはアルキルアリール基から独立に選択され、より好ましくは各Rが水素又は任意に置換されたアルキル基から独立に選択され、更に好ましくは各Rが水素又はメチル若しくはエチル基から独立に選択されるが、少なくとも1つのRは水素でない。好ましい実施態様では、1つのRが水素である。好ましくはRが置換されていない。好ましくは、Rが、その炭素骨格に複素原子を含まない。好ましくは、Rが1から20の炭素原子、好ましくは1から15の炭素原子、好ましくは1から10の炭素原子、好ましくは1から5の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を含有する。好ましくは、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルは、単独の−(CH2CH2O)m−を含有し、すなわち、Rは−(CH2CH2O)m−基を含まない。好ましくはポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルの平均分子量は、120−10000の範囲、好ましくは200−8000の範囲、好ましくは300−5000の範囲である。好ましい実施態様では、前記製剤は、0.1−30%の量、好ましくは2−15%の量、好ましくは3−10%の量、より好ましくは約5%の量でポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む。代替的な好ましい実施態様では、前記製剤は、4−30%の量、好ましくは4−20%の量、より好ましくは約5%の量でポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む。
【0016】
好ましくは、前記製剤は、ポリエチレングリコールモノ−エーテルを含む。
【0017】
1つの実施態様では、前記製剤は、ポリエチレングリコールジ−エーテルを含み、各Rは1から20の炭素原子、好ましくは1から15の炭素原子、好ましくは1から10の炭素原子、好ましくは1から5の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を独立に含有する。
【0018】
好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルは、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−メチル又はエチルエーテルであり、より好ましくはポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)である。好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルはMPEG350−10000であり、すなわち、350と10000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。より好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがMEPG350−5000であり、すなわち、350と5000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルはMPEG2000であり、すなわち、約2000の平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。好ましい実施態様では、前記製剤は、2−15%の量、好ましくは3−10%の量でポリエチレングリコールモノメチルエーテルを含む。
【0019】
好ましくは、一方がポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー、他方がポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルで、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1の比率で使用される。好ましくは、一方がポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー、他方がポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルで、10:1以下、好ましくは8:1以下、より好ましくは6:1以下の比率で使用される。これらの好ましい比率の下限は、好ましい比率の範囲を与えるために、好ましい上限のいずれかと組み合わされてよい。好ましくは、一方がポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー、他方がポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルで、10:1から1:1の比率、好ましくは約4:1の比率で使用される。
【0020】
本発明に関して、「アルキル」基は、一価の飽和炭化水素として定義され、直鎖又は分枝鎖であってよく、或いは環式基であるか又は環式基を含んでよい。アルキル基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSを、その炭素骨格に任意に含んでよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、及びn−ペンチル基である。好ましくは、アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であり、且つ、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アルキル基は、1から12の炭素原子を含有するアルキル基として規定されるC1−C12アルキル基である。より好ましくは、アルキル基は、1から6の炭素原子を含有するアルキル基として規定されるC1−C6アルキル基である。アルキレン基は、二価のアルキル基として同様に定義される。
【0021】
「アルケニル」基は、一価の炭化水素として定義され、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖又は分枝鎖であってよく、或いは環式基であるか又は環式基を含んでよい。アルケニル基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSをその炭素骨格に任意に含んでよい。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブテ−1−ニル、及びブテ−2−ニル基である。好ましくは、アルケニル基は、直鎖又は分枝鎖であり、且つ、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アルケニル基は、2から12の炭素原子を含有するアルケニル基として規定されるC2−C12アルケニル基である。より好ましくは、アルケニル基は、2から6の炭素原子を含有するアルケニル基として規定されるC2−C6アルケニル基である。「アルケニレン」基は、二価のアルケニル基として同様に定義される。
【0022】
「アルキニル」基は、一価の炭化水素として定義され、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖又は分枝鎖であってよく、或いは環式基であるか又は環式基を含んでよい。アルキニル基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSをその炭素骨格に任意に含んでよい。アルキニル基の例は、エチニル、プロパルギル、ブチ−1−ニル、及びブチ−2−ニル基である。好ましくは、アルキニル基は、直鎖又は分枝鎖であり、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アルキニル基は、2から12の炭素原子を含有するアルキニル基として規定されるC2−C12アルキニル基である。より好ましくは、アルキニル基は、2から6の炭素原子を含有するアルキニル基として規定されるC2−C6アルキニル基である。「アルキニレン」基は、二価アルキニル基として同様に定義される。
【0023】
「アリール」基は、一価の芳香族炭化水素として定義される。アリール基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSをその炭素骨格に任意に含んでよい。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナントレニル基である。好ましくは、アリール基は、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アリール基は、4から14の炭素原子を含有するアリール基として規定されるC4−C14アリール基である。より好ましくは、アリール基は、6から10の炭素原子を含有するアリール基として規定されるC6−C10アリール基である。「アリーレン」基は二価のアリール基として同様に規定される。
【0024】
本発明に関して、基の組み合わせが1つの部分として参照される、例えば、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、又はアルキニルアリールである場合は、最後に言及される基が、その部分が分子の残りに結合する原子を含有する。アリールアルキルの典型例はベンジルである。
【0025】
本発明に関して、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール基は、−F、−Cl、−Br、−I、−CF3、−CCl3、−CBr3、−CI3、−OH、−SH、−NH2、−CN、−NO2、−COOH、−Rα−O−Rβ、−Rα−S−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO2−Rβ、−Rα−SO2−ORβ、−RαO−SO2−Rβ、−Rα−SO2−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−SO2−Rβ、−Rα−SO2−ORβ、−RαO−SO2−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−SO2−ORβ、−Rα−NRβ−SO2−N(Rβ)2、−RαN(Rβ)2、−Rα−N(Rβ)3+、−Rα−P(Rβ)2、−Rα−Si(Rβ)3、−Rα−CO−Rβ、−Rα−CO−ORβ、−RαO−CO−Rβ、−Rα−CO−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CO−Rβ、−RαO−CO−ORβ、−RαO−CO−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CO−ORβ、−Rα−NRβ−CO−N(Rβ)2、−Rα−CS−Rβ、−Rα−CS−ORβ、−RαO−CS−Rβ、−Rα−CS−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CS−Rβ、−RαO−CS−ORβ、−RαO−CS−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CS−ORβ、−Rα−NRβ−CS−N(Rβ)2、−Rβ、架橋置換基、例えば、−O−、−S−、−NRβ−、−Rα−、又はπ−結合置換基、例えば、=O、=S、若しくは=NRβの1つ又は複数で置換されてよい。こうした背景において、−Rα−は、独立に、化学結合C1−C10アルキレン、C1−C10アルケニレン、又はC1−C10アルキニレン基である。−Rβは、独立に、水素、非置換のC1−C6アルキル又は非置換C6−C10アリールである。任意の置換基で置換された親基における炭素原子の総数を算出する際に、任意の置換基を考慮に入れる。好ましくは、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、又はアルキニルアリール基は架橋置換基で置換されていない。好ましくは、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、又はアルキニルアリール基はπ−結合置換基で置換されていない。好ましくは、置換された基は、1、2、又は3の置換基、より好ましくは1又は2の置換基、更により好ましくは1の置換基を含む。
【0026】
任意の置換基が保護されてよい。任意の置換基の保護に適切な保護基が、当該技術分野において知られており、例えば、'Protective Groups in Organic Synthesis' by T.W. Greene and P.G.M. Wuts (Wiley- Interscience, 4th edition, 2006)から既知である。
【0027】
好ましい実施態様では、前記製剤は、
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG);
(d)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)
を含む。
【0028】
他の好ましい実施態様では、前記製剤は、
(a)0.1−30%医薬活性剤;
(b)5−50%水;
(c)5−50%ポリエチレングリコール;
(d)2−15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;及び任意に
(e)0−70%アルコール
(f)0−5%pH調節のための酸又は塩基;
(g)0−10%浸透促進剤;
(h)0−6%可塑剤
を含む。
【0029】
他の好ましい実施態様では、前記製剤は、
(a)0.1−30%医薬活性剤;
(b)5−50%水;
(c)5−50%ポリエチレングリコール;
(d)2−15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;及び任意に
(e)0−70%アルコール
(f)0−5%pH調節のための酸又は塩基;
(g)0−1%イソプロピルミリステート;
(h)0−4%トランスクトール
(i)0−5%プロピレングリコール
を含む。
【0030】
好ましい実施態様では、前記医薬活性剤は、抗真菌又は抗カビ剤である。用語「抗真菌」及び「抗カビ」は、本明細書において互換的に使用される。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。
【0031】
他の好ましい実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤は、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、グアニジン、ピリミジン、イミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、又はチオカルバメートである。抗真菌又は抗カビ剤がイミダゾールである場合は、ビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がトリアゾールである場合は、好ましくは、フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がチアゾールである場合は、好ましくは、2−アミノ−チアゾール、好ましくはアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がグアニジンである場合は、好ましくは、アリールグアニジン、好ましくはアバファンジン又はその製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がピリミジンである場合は、好ましくは、2−ピリミジンイミンであり、好ましくはアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がイミンである場合は、好ましくは、2−ピリミジンイミンであり、好ましくはアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がモルホリンである場合は、好ましくは、アモロルフィン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤が2−ピリドンである場合は、シクロピロックス又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤が2−ピリミドンである場合は、好ましくは、フルシトシン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がアリルアミンである場合は、好ましくは、テルビナフィン、ナフチフィン、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がベンジルアミンである場合は、好ましくは、ブテナフィン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がポリエンである場合は、好ましくは、アンホテリシンB、ナイスタチン、ピマルシン(ナタマイシンとも称される)、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がエチノカンジンである場合は、カスポファンジン、ミカファンジン、アニデュラファンジン、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。好ましくは、抗真菌又は抗カビ剤はアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩であり、好ましくはアバファンジンである。
【0032】
本発明に関して、化合物がアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、2−アミノチアゾール、チアジアゾール、グアニジン、アリールグアニジン、ピリミジン、イミン、2−ピリミジンイミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、チオカルバメートなどと称される場合は、前記化合物がアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、2−アミノ−チアゾール、チアジアゾール、グアニジン、アリールグアニジン、ピリミジン、イミン、2−ピリミジンイミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、チオカルバメートなどの官能基を含むことを意味する。
【0033】
アゾールは、1つの窒素及び窒素、酸素、又は硫黄原子などの少なくとも1つの更なる複素原子を含む芳香族複素5員環と一般的に解される。したがって、イミダゾール(2つの窒素原子を含む芳香族複素5員環)、トリアゾール(3つの窒素原子を含む芳香族複素5員環)、チアゾール(1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む芳香族複素5員環)、及びチアジアゾール(2つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む芳香族複素5員環)がアゾールであると一般的に解される。
【0034】
しかしながら、アゾール抗真菌剤と称する際には、一般的にはイミダゾール及びトリアゾール抗真菌剤を意味し、チアゾール又はチアジアゾール抗真菌剤ではない。理論と結びつけることを望まないが、これは、イミダゾール及びトリアゾール抗真菌剤の抗真菌活性が現在は、14α−デメチラーゼの阻害によるエルゴステロール生合成の阻害によるものであると解されるためである。チアゾール抗真菌剤は、一方で、14α−デメチラーゼを阻害すると現在解されておらず、それらの抗真菌活性は、現在、24−ステロールメチルトランスフェラーゼを阻害することによってエルゴステロール生合成を阻害することに少なくとも部分的に起因すると解されている。
【0035】
したがって、本発明に関して、用語「アゾール」は、1つの窒素原子及び少なくとも1つの更なる複素原子を含む全ての芳香族複素5員環を包含し、したがって、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、及びチアジアゾールを含む。好ましい実施態様では、用語「アゾール」は、イミダゾール及びトリアゾールのみを包含する。
【0036】
本発明の1つの実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤はトリアゾールでない。他の実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤はイミダゾールでない。他の実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤はチアゾール又はチアジアゾールである。
【0037】
本発明の好ましい実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤は、一般式(I)の化合物又は製薬学的に許容されるその塩である。
【0038】
【化1】
【0039】
式中、
R1は水素又はアルキルであり;
R2は下式の基である。
【0040】
【化2】
【0041】
式中、
R3、R4、R5、及びR6は、独立に、水素、ハロゲン、窒素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ−カルボニル、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、ハロアルキルスルフィニル、又はハロアルキルスルホニルであり;
Xは酸素、硫黄、スルフィニル、又はスルホニルであり;及び
Arは任意に置換されたアリール基である。
【0042】
式(I)の化合物は、式(Ia)及び(Ib)のそれらの互変異性体と平衡状態にある。
【0043】
【化3】
【0044】
好ましくは、R1は水素又はC1−3アルキルであり、好ましくは水素である。好ましくは、R3、R4、R5、及びR6は、独立に、水素又はC1−3アルキルであり、好ましくは水素である。好ましくは、Xは酸素である。好ましくは、Arはフェニル基であり、任意に1、2、又は3のC1−3アルキル又はC1−3アルコキシ基で置換されている。好ましくは、R2は下式の基である。
【0045】
【化4】
【0046】
式(I)の化合物は、2−アミノ−チアゾール又はアリールグアニジン或いは2−ピリミジンイミンであると分類されてよい。
【0047】
一般式(I)の好ましい化合物は、式(II)のアバファンジンである。
【0048】
【化5】
【0049】
上記式(II)のアバファンジンは、式(IIa)及び(IIb)の互変異性体と平衡状態にある。
【0050】
【化6】
【0051】
他の好ましい実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤がアバファンジン、シクロピロックスオラミン、テルビナフィン塩酸、又はアモロルフィンである。好ましくは、抗真菌又は抗微生物剤がアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩であり、好ましくはアバファンジンである。抗真菌又は抗カビ剤がアバファンジンである場合は、前記製剤は、好ましくは、pH調節のためにギ酸などの酸を更に含む。好ましくは、前記製剤は、約5−8、好ましくは約5−7、好ましくは約5−6、好ましくは約5.5の範囲のpHを有し、これはヒトの皮膚及び爪の条件と類似している。代替的な実施態様では、前記製剤は、約1−7、好ましくは約2−6、好ましくは約3−6、好ましくは約3−5、より好ましくは4−5の範囲のpHを有する。
【0052】
好ましい実施態様では、前記製剤は、0.1−30%の量、好ましくは0.5−20%の量、好ましくは1−15%の量で医薬活性剤を含む。好ましくは、前記製剤は、少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも4%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは約10%の量で医薬活性剤を含む。
【0053】
好ましい実施態様では、医薬活性剤が、前記製剤に実質的に溶解されており、すなわち、前記製剤に存在する医薬活性剤の少なくとも75%が前記製剤の溶液にある。前記製剤に存在する医薬活性剤の好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.9%が、前記製剤の溶液にある。
【0054】
好ましい実施態様では、前記製剤は、5−50%の量、好ましくは10−50%の量、好ましくは17−25%又は20−40%の量で水を含む。より好ましくは、前記製剤は、約20%の量で水を含む。
【0055】
好ましい実施態様では、前記製剤は、2−プロパノール、エタノール、ベンジルアルコール、又は2−フェノキシエタノールなどのアルコールを更に含む。前記製剤は、70%までのアルコールを含んでよい。前記製剤がアルコールを含む場合は、10−70%の量、好ましくは20−60%の量、好ましくは30−50%の量でアルコールを含む。
【0056】
ある実施態様では、前記製剤は、pH調節のために酸又は塩基を更に含む。適切な酸は、飽和又は不飽和であってよい有機酸(例えば、クエン酸、ミリスチン酸、及びギ酸)を及び無機酸(例えば、塩酸及び硫酸)を含む。好ましい酸はギ酸である。適切な塩基は水酸化ナトリウムを含む。前記製剤は、5%までの酸又は塩基を含んでよい。好ましくは、前記製剤は、約5−8の範囲、好ましくは約5−7、好ましくは約5−6、好ましくは約5.5のpHを有しており、これはヒトの皮膚及び爪の条件と類似している。代替的な実施態様では、前記製剤は、約1−7、好ましくは約2−6、好ましくは約3−6、好ましくは約3−5、より好ましくは約4−5の範囲のpHを有する。
【0057】
好ましい実施態様では、前記製剤は、浸透促進剤及び/又は可塑剤を更に含む。好ましい浸透促進剤及び/又は可塑剤は、イソプロピルミリステート、トランスクトール、プロピレングリコール、イソプロピルパルミテート、テルペノイド、デシルオレート、オレイン酸、スルホキシド、ケラチン分解剤(例えば、尿素)、アゾン、テルペン、精油、界面活性剤(例えば、Tween20、Tween80、Span、Labrasol、Isoceteth−20)、アルコール、ポリオール、脂肪酸、グリコール、及びピロリドンを含むが、それらに限らない。前記製剤は、10%まで、好ましくは6%までの浸透促進剤を含んでよい。前記製剤は、6%まで、好ましくは5%までの可塑剤を含んでよい。
【0058】
好ましい実施態様では、前記製剤はイソプロピルミリステートを含む。前記製剤は、1%までのイソプロピルミリステートを含んでよい。前記製剤がイソプロピルミリステートを含む場合は、0.1−1%、好ましくは0.5−1%の量で存在する。
【0059】
好ましい実施態様では、前記製剤は、トランスクトールなどの浸透促進剤を含む。前記製剤は、4%までのトランスクトールを含んでよい。前記製剤がトランスクトールを含む場合は、0.5−4%の量、好ましくは1−4%の量、好ましくは2−4%の量で存在する。
【0060】
好ましい実施態様では、前記製剤はプロピレングリコールを含む。前記製剤は、5%までのプロピレングリコールを含んでよい。前記製剤がプロピレングリコールを含む場合は、0.5−5%の量、好ましくは0.5−4%の量、好ましくは0.5−3%の量で存在する。
【0061】
好ましい実施態様では、前記製剤は、少なくとも1100mPas、好ましくは少なくとも1200mPas、好ましくは少なくとも1300mPas、好ましくは少なくとも1500mPas、好ましくは少なくとも2000mPas、好ましくは少なくとも5000mPas、好ましくは少なくとも10000mPasの粘度を有する。代替的な好ましい実施態様では、前記製剤は、2と1000mPasの間、好ましくは5と900mPasとの間、好ましくは10と750mPasとの間、好ましくは30と500mPasとの間の粘度を有する。
【0062】
特に好ましい実施態様では、前記製剤は、100と500mPasとの間、好ましくは200と300mPasとの間、より好ましくは約250mPasの粘度を有する。好ましくは、その様な製剤は、好ましくはゲルとして、爪への適用に適切である。
【0063】
他の特に好ましい実施態様では、前記製剤は、30と100mPasとの間、好ましくは40と80との間、より好ましくは約60mPasの粘度を有する。好ましくは、その様な製剤は、好ましくはスプレーとして、皮膚への適用に適切である。
【0064】
好ましい実施態様では、前記製剤は固体ではない。好ましくは、前記製剤がスプレー、クリーム、軟膏、ゲル、又はペーストである。更に好ましくは、前記製剤は親水性の水系ゲルである。
【0065】
本発明の製剤は、爪又は皮膚の病気、疾患、病理状態の治療に使用されてよい。例えば、本発明の製剤は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、口腔、膣、若しくは肛門の真菌症、ニキビなどの皮膚疾患、黄色ブドウ球菌などの局所的細菌感染、或いはヘルペスなどの局所的ウイルス感染の治療に使用されてよい。本発明の製剤は、創傷治癒を補助するためにも使用されてよい。
【0066】
したがって、好ましくは、本発明の製剤は、局所適用、好ましくは爪又は皮膚への局所適用に適切である。
【0067】
代替的には、本発明の製剤は、対象、好ましくは非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、又はネコの蹄、角、爪、又は皮膚の病気、疾患、病理状態の治療に使用されてよい。好ましくは、前記病気、疾患、又は病理状態は真菌感染症である。
【0068】
本発明の第二の態様は、対象の爪への本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、医薬活性剤の対象への投与方法を提供する。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。
【0069】
脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤は、多くの場合において、皮膚に浸透することが可能である。親水性医薬活性剤は、多くの場合において、爪に浸透することが可能である。本発明の第二の態様の方法は、親水性製剤を使用して、脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤が爪に浸透することを可能にする。
【0070】
好ましくは、前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物であり、好ましくはヒトである。好ましくは、前記医薬活性剤は、爪及び爪を覆う皮膚に浸透することによって、対象の爪及び爪マトリックスに浸透する。
【0071】
本発明の第三の態様は、爪甲真菌症に罹患している対象の爪に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、爪甲真菌症を治療する方法を提供する。
【0072】
本発明の第三の態様は、皮膚真菌症に罹患している対象の皮膚に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、皮膚真菌症を治療する方法も提供する。
【0073】
本発明の第三の態様は、口腔、膣、又は肛門の真菌症に罹患している対象の皮膚又は粘膜に本発明の第一の態様に係る製剤を提供する工程を含む、口腔、膣、又は肛門の真菌症を治療する方法も提供する。
【0074】
本発明の第三の態様は、皮膚疾患に罹患している対象の皮膚に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、皮膚疾患(例えば、ニキビ)を治療する方法も提供する。
【0075】
本発明の第三の態様は、局所感染に罹患している対象の皮膚又は粘膜に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、局所細菌感染(例えば、黄色ブドウ球菌)又は局所ウイルス感染(例えば、ヘルペス)を治療する方法も提供する。
【0076】
本発明の第三の態様は、対象の創傷に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、創傷治癒を補助する方法も提供する。
【0077】
本発明の第三の態様の任意の方法において、対象はヒト又は非ヒト哺乳動物であってよい。好ましくは、前記対象はヒトである。
【0078】
本発明の第四の態様は、
(a)医薬活性剤並びに存在する場合は酸又は塩基を水に溶解する工程
(b)ポリエチレングリコール又はポロキサマー、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル、並びに存在する場合にはアルコール、浸透促進剤、及び可塑剤を溶液に添加する工程;並びに
(c)親水性ゲルが得られるまで混合物を攪拌する工程
を含む、本発明の第一の態様に係る製剤を調製する方法を提供する。
【0079】
好ましい実施態様では、医薬活性剤はプロトン化されてよく、酸が工程(a)で使用され、医薬活性剤をプロトン化する。プロトン化されてよい好ましい医薬活性剤は、アバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。代替的な実施態様では、医薬活性剤は脱プロトン化されてよく、工程(a)で塩基が使用されて、前記医薬活性剤を脱プロトン化する。
【0080】
誤解を避けるために述べると、実施可能な限りにおいて、本発明の所定の態様の任意の実施態様は、本発明の同一の態様の任意の他の実施態様と組み合わせてよい。さらに、実施可能な限りにおいて、本発明の任意の態様の任意の好ましい又は任意の実施態様が、本発明の任意の他の態様の好ましい又は任意の実施態様と解されるべきでもある。
【0081】
加えて、本発明の変数に関して特定した任意の下限が、本発明に包含される範囲を形成するために、同じ変数について特定した任意の上限と組み合わされてよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、アバファンジンを含む3種の製剤を適用した24時間後の3つのウマの蹄角の膜(1、2、及び3と記した)を示す。
【図2】図2は、アバファンジンを含む3種の製剤を適用した24時間後のウマ蹄角膜に浸透したアバファンジンの量を示すグラフである。
【図3】図3は、アバファンジンを含む本発明の製剤の局所適用後の、爪甲真菌症に罹患しているボランティアの足の爪を示す。
【図4】図4は、イトラコナゾール経口投与及びそれと共にアバファンジンを含む本発明の製剤の局所投与する前又は後の、爪甲真菌症に罹患している他のボランティアの足の爪を示す。図4において、「(1)」は経口イトラコナゾール投与を示し、「Abagel 10%」はアバファンジン製剤の局所投与を示す。
【図5】図5は、アバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミンを含む5種の製剤を適用した24時間後のウマ蹄角膜に浸透したアバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミンの量を示すグラフである。
【図6】図6は、アバファンジン又はヒドロコルチゾンを含む4種の製剤を適用した24時間後のブタの耳の皮膚に浸透したアバファンジン又はヒドロコルチゾンの量を示すグラフである。
【図7】図7は、治療前の測定に対する、Batrafen(登録商標)、Loceryl(登録商標)、又は本発明に係る製剤を用いた治療の一時間後のTEWL(経表皮水損失)測定のパーセント偏差を示すグラフである。
【図8】図8は、真菌阻害領域の図を示す。
【図9】図9は、紅色白癬菌34を播種して、アバファンジンを含む4種の製剤で処理したウシ蹄角膜で処理したサブロープレートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明の好ましい製剤は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症(実施例5及び10を参照のこと)の治療に適切な、水系であり親水性の非刺激性ゲル製剤である。前記製剤は、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル(好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG))及びポリエチレングリコール又はポロキサマー(好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG))を接着剤及び皮膜形成剤として含み、前記製剤が医薬活性剤をゆっくりと放出可能にする。
【0084】
ポリエチレングリコール及びポロキサマー、特にPEGは、既知の浸透促進剤であり、医薬活性剤の持続放出について知られている。ポリエチレングリコールエーテル、特にMEPGは、可溶化剤及び皮膜形成剤である。理論に結びつけることを望まないが、それらは共に接着剤及び皮膜形成剤として働き、本発明の製剤に医薬活性剤を含む通気性皮膜を形成させると解される。爪又は皮膚に天然に存在する水が、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル貯蔵庫から医薬活性剤を溶解し、医薬活性剤をゆっくりと放出させる。ポリエチレングリコールエーテルの存在は、関連する全ての物質の高度の相互作用を引き起こすと解されており、例えば、エーテル基は有機物である爪又は皮膚物質に対する製剤のより強力な接着を引き起こすと解される。エーテル基は、製剤において脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤の高度の可溶性が認められた要因であるとも解される。
【0085】
既知の水系製剤は、膨潤ゲル形成剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース)及び/又は水溶性アクリル酸コポリマーを使用する。これらのゲル形成剤は、そうしなければ製剤の濃度が高すぎるため、水中で1.5%までの濃度でのみ使用されてよい。しかしながら、その様な少量のゲル形成剤は、医薬活性剤の効果的な貯蔵を提供するには十分でない。
【0086】
本発明に係る親水性ゲル製剤は、一方で、医薬活性剤の貯蔵庫として働く。爪又は皮膚に天然に存在する水が、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル貯蔵庫から医薬活性剤を溶解し、医薬活性剤をゆっくりと放出させ、遅延型、延長型、持続型、又は制御型放出などの改良した放出を提供する。
【0087】
本発明の製剤に使用するために適切な医薬活性剤は、脂溶性及び/又は好ケラチン性物質、例えば、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症、例えば、口腔、膣、及び直腸粘膜の感染症の治療のために爪、皮膚、及び粘膜に適用可能な好カビ剤を含む。適切な抗カビ剤は、アゾール(例えば、イミダゾール及びトリアゾール)、イミダゾール(例えば、ビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、セルタコナゾール、及びスルコナゾール)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、及びボリコナゾール)、チアゾール(例えば、2−アミノ−チアゾール、例えば、アバファンジン)、チアジアゾール、グアニジン(例えば、アリールグアニジン、例えば、アバファンジン)、ピリミジン(例えば、ピリミジンイミン、例えば、アバファンジン)、イミン(例えば、ピリミジンイミン、例えば、アバファンジン)、モルホリン(例えば、アモロルフィン)、2−ピリドン(例えば、シクロピロックス)、2−ピリミドン(例えば、フルシトシン)、アリルアミン(例えば、テルビナフィン及びナフチフィン)、ベンジルアミン(例えば、ブテナフィン)、ポリエン(例えば、アンホテリシンB、ナイスタチン、及びピマリシン(ナタマイシンとも称される))、エチノカンジン(例えば、カスポファンジン、ミカファンジン、及びアニデュラファンジン)、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、及びチオカルバメートなどを含むが、それらに限らない。
【0088】
本発明の好ましい実施態様では、前記製剤は、アバファンジン、シクロピロックスオラミン、テルビナフィン塩酸、又はアモロルフィンを含み、より好ましくはアバファンジンを含む。アバファンジンを含む製剤は、好ましくは、製剤のpHを調節するための酸も含み、製剤中のアバファンジンを活性分子であるグアニジニウムイオンへとプロトン化する。
【0089】
脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤、例えば、アバファンジン、シクロピロックスオラミン、及びテルビナフィン塩酸は、驚くべきことに、本発明の製剤中で安定且つ可溶性である。例えば、アバファンジンは、脂溶性であり、多くの賦形剤において可溶性に乏しい(実施例1参照のこと)。したがって、許容可能な浸透率に十分な量の医薬製剤中のアバファンジンなどの医薬活性剤を可溶化することは困難である(実施例2、3、4、6、及び7参照のこと)。本発明の製剤のPEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物は、脂溶性且つ/又は好ケラチン性医薬活性剤、例えば、アバファンジンが適当に可溶化されることを可能にし、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物が、脂溶性且つ/又は好ケラチン性医薬活性剤が製剤から結晶化することを妨げると解される。例えば、30%までのアバファンジンの濃度を本発明の製剤において達成し得る(実施例8参照のこと)。
【0090】
医薬活性剤、例えば、アバファンジンは、驚くべきことに、従来のラッカー製剤及びポリエチレングリコールエーテルを含まない親水性爪用ゲルと比較して、本発明の製剤から爪に若しくは爪を超えて又は皮膚に浸透する非常に高い割合も示した。
【0091】
ヒトの爪は、親水性の膜のように振る舞い、高度な水の経爪分散(1.8から3.1mg/cm2)(K.A. Walters et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1985, vol. 37, pages 771-775; D. Mertin et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1997, vol. 49, pages 30-34; Y. Kobayashi et al., European Journal of Pharmaceutical Sciences, 2004, vol. 21, pages 471-477)を有する。水に対する爪の浸透性は、角質層の約1000倍以上である(D. Spruit, Journal of Investigative Dermatology, 1971, vol. 56, pages 359-361 ; K.A. Walters et al., Journal of Investigative Dermatology, 1981, vol. 36, pages 101-103)。
【0092】
健康な爪に関しては、フリーな爪の水の高い経爪分散が特に重要である。本発明に係る製剤は、親水性の水系ゲルであり、製剤を爪に適用した後に、水が爪に又は爪から移動することを可能にする。これは、水の経爪分散を顕著に低減する従来のラッカーとは対照的である(de Berker & Baran, Int. J. Cosmetic Science, 2007, vol. 29, pages 241-275; Spruit, Am. Cosmet. Perfum., 1972, vol. 87, pages 57-58)。これは、下記の実施例9でも確認した。
【0093】
現在は、水が爪に自由に浸透し、本発明の製剤へと浸透し得るため、前記製剤に含まれる医薬活性剤は、ゲル製剤から爪へと経時的溶解すると解されている。皮膜形成剤として水に不溶性のポリマーを使用する従来のラッカーは、爪を覆い、爪の水の自由な浸透を阻害し、かくして、疎水性ラッカー皮膜からの医薬活性剤の溶解が、本発明の親水性ゲル製剤と比較して顕著に少ない。
【0094】
従来の抗カビネイルラッカー、例えば、Aventis社製のPenlac(登録商標)(Batrafen(登録商標)とも称される)(シクロピロックス)及びGalderma社製のLoceryl(登録商標)(アモロルフィン)は、溶媒としてアルコールを使用し、水に不溶性のポリマーを使用している。したがって、その様な従来のラッカーから形成されるラッカー皮膜は水に不溶性であり、爪に天然に存在する水は、水に不溶性のポリマーマトリックスから抗カビ剤に溶解し得ない。これによって、従来のラッカーから爪への抗カビ剤の浸透速度が遅れる。本発明の製剤は、一方で、親水性であり、医薬活性剤が親水性の製剤から爪の水へと容易に移動する。
【0095】
さらに、従来のネイルラッカーは皮膚を刺激及び損傷するため、皮膚には使用できない。一方で、本発明の製剤は、医薬活性剤が爪の周りの皮膚から爪床及び爪マトリックスへと浸透することを可能にする。
【0096】
本発明の製剤は、爪甲及び爪の周囲を介して、爪甲(爪角質層)及び爪床(爪甲が成長するとその上にスライドする、爪の下の表皮の改質領域)へと抗真菌又は抗カビ剤を送達し得る。望ましくは、抗真菌又は抗カビ剤は、爪マトリックス、爪上皮、下爪皮(爪のフリーな末端の下の厚い表皮)に同時に送達される。
【0097】
本発明の製剤の親水性の性質は、ヒトの皮膚、特に爪の親水性の膜の状態及び特徴に類似している。ポリエチレングリコール及びポロキサマーは、爪の水和レベルを向上させる閉塞効果を有する。さらに、従来のネイルラッカーとは異なり、本発明の製剤のPEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物は皮膚適合性であり、通気性である。好ましくは、前記製剤は、約5.5のpHを有し、ヒトの皮膚の状態に類似している。患者の爪に適用される際は、本発明の製剤は、2つの経路で、すなわち、爪自体及び爪の周囲の皮膚を介して、爪マトリックスを含む患者の爪及び爪床に医薬活性剤が浸透することを可能にすると解される。したがって、本発明の製剤の他の利点は、親水性の爪への又は爪を経る医薬活性剤の2つの輸送経路:経皮及び経爪である。爪甲真菌症は、爪にだけでなく、爪の周囲の領域への、本発明の製剤の適用によって治療されるであろう。
【0098】
本発明の製剤の他の利点は、他の親水性ゲル(例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はPEGに基づくもの)と比較して、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物が、従来のラッカー(例えば、ポリビニルアセテート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマー、又はメチルビニルエーテルマレイン酸モノアルキルエステルコポリマー)と同等又はそれよりも優れた驚くべきほど良好な乾燥時間を示したことである。
【0099】
さらに、従来のネイルラッカーとは異なり、本発明の製剤は洗い落とすことが可能である。これによって、やすり又は溶媒系製剤を使用することによって時間をかけて従来のネイルラッカーを除去する必要がなくなり、より良好な患者のコンプライアンスが得られる。標準的なネイルラッカーは、アルコールワイプ及び爪やすりを使用して少なくとも一週間に一回は除去する必要がある。特に、年配の患者の場合は、この治療計画を採用することは困難である。さらに、爪やすりを使用することは、爪の周囲の皮膚の激しい損傷を引き起こし、真菌の全身への取り込みを生じさせ得る。前記製剤は洗浄によって容易に除去し得るため、本発明の製剤は患者の治療計画を用意にするであろう。したがって、本発明の製剤は、患者のコンプライアンスを増大する。
【実施例】
【0100】
(実施例1)
アバファンジン溶解性
アバファンジンの溶解性を試験するために、アバファンジンを多数の賦形剤に溶解した。溶解性試験の結果を表1にまとめる。
【0101】
【表1】
【0102】
アバファンジンは、殆どの賦形剤に不溶であり、水、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルにすら不溶である。しかしながら、驚くべきことに、アバファンジンは、水、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及びギ酸などの酸の混合物に可溶性であることを発見した。
【0103】
(実施例2)
ウマ蹄角膜への3種のアバファンジン製剤の近位流束及び親和性
爪に浸透するアバファンジンの能力を試験するために、表2に記載の成分を含む3種のアバファンジン製剤を調製した。製剤1及び2は親水性ゲルであり、製剤3はラッカーであった。製剤2は本発明に係るものであり、製剤1及び3は比較例としての製剤である。
【0104】
【表2】
【0105】
アバファンジン浸透量を試験するために、前記製剤を24時間に亘って、約600から700μmの厚みのウマ蹄角膜に適用した。ウマ蹄角膜を図1に示し、結果を表3にまとめる。
【0106】
【表3】
【0107】
本発明に係る製剤(製剤2)を適用する際は、アバファンジンが、比較例の製剤(製剤1及び3)を適用する際より良好に、すなわち、より多くの全体量(4641.11μg/g及び5284.49μg/gと比較して9341.57μg/g)且つより長く(18−30mmの浸透距離における高い割合)ウマ蹄角膜に浸透した。
【0108】
(実施例3)
ウマ蹄角膜へのアバファンジン製剤のex vivo浸透試験
ヒトin vivo条件と類似させるために、ウマ蹄角膜に対するex vivo浸透試験を実施した。動物の蹄はヒトの爪と本質的に同一の物質でできている。ヒトの爪を形成するために、ウマの蹄を、約2cm2の面積且つ600から700μmの厚みを有する角膜に切り取った。ヒトの指の爪は約500μmの厚みがあり、ヒトの足の爪は約800μmの厚みがある。
【0109】
実施例2の製剤1、2、及び3の各々の1mlをウマ蹄角膜に適用した。ウマ蹄角膜をFranz拡散セル(1.76cm2の面積)において、セルを調整血液類似緩衝液(リン酸緩衝液)で満たした。前記緩衝液を300rpmで攪拌した。24時間後、ウマ蹄角膜をFranz拡散セルから除去して、製剤の残留物を除去した。1.76cm2の効果的な浸透領域を小片に切り取って、アバファンジンを80%アセトニトリル、19.6%水、及び0.4%過塩素酸で抽出した。試料を60℃の超音波浴を使用して30分間に亘って抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。
【0110】
結果を図2に示す。本発明に係る製剤(製剤2)を適用した際は、比較例の製剤(製剤1及び3)を適用した際よりも多くのアバファンジンがウマ蹄角膜に浸透した。
【0111】
(実施例4)
角質層及び表皮/真皮へのアバファンジンの浸透
アバファンジンの皮膚への浸透能力を試験するために、実施例2のアバファンジン製剤2を用いた振盪試験を実施した。剥いでいないブタ耳皮膚(2mmの厚み)を用いた浸透試験を、Franz拡散セル(緩衝液条件:サーモジャケット36℃、300rpm、BPS緩衝液)を使用して実施した。実施例2の製剤2の1mlを皮膚に適用した。24時間のインキュベーション後に、角質層を除去し、80%アセトニトリル、19.6%水、及び0.4%過塩素酸の混合物を1ml用いて60℃で1.5時間に亘って、アバファンジンを角質層及び表皮/真皮から抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。アバファンジンの殺真菌濃度(16−30μg/ml)を、角質層及び表皮/真皮の双方で達成した(Franz拡散セル、n=3)。表皮/真皮のアバファンジン濃度は32.19±1.19μg/gであり、角質層では4617.50±731.86μg/gであった。
【0112】
(実施例5)
爪甲真菌症の治療のためのアバファンジン
表4に記載の成分を含む本発明に係る親水性ゲル製剤を調製した。前記製剤は、実施例2の製剤2と同一であった。
【0113】
【表4】
【0114】
前記ゲル製剤は、アバファンジン及びギ酸を水に溶解することによって調製した。次いで、残りの成分(すなわち、2−プロパノール、PEG20000、PEG8000、MEPG2000、イソプロピルミリステート、トランスクトール、及びプロピレングリコール)をこの溶液に添加して、この溶液を、ゲルが形成するまで攪拌した。
【0115】
爪甲真菌症に罹患している男性のボランティア(32歳)の左の足の爪に、ゲル製剤を一日一回適用した。結果を図3に示す。図3では、製剤を一日一回適用した一ヶ月後(a)、二ヵ月後(b)、及び3ヵ月後(c)の足の爪を示す。足の爪の状態の顕著な改善が認められる。
【0116】
爪甲真菌症に罹患している、二人目の男性のボランティア(55歳)を100mgのイトラコナゾール(Itracol(登録商標))を、一週間に亘って一日二回経口で治療した後、3週間の中断した。イトラコナゾール投与の一ヶ月後に、前記ボランティアは足の爪に前記ゲル製剤を一日一回更に適用された。結果を図4に示す。図4では、治療前(a)、イトラコナゾール投与の一ヶ月後(b)、イトラコナゾール投与の2ヵ月及びアバファンジン製剤投与の一ヶ月後(c)、イトラコナゾール投与の3ヶ月及びアバファンジン製剤投与の2ヶ月後(d)、及びイトラコナゾール投与の4ヶ月及びアバファンジン製剤投与の3ヶ月後(e)の足の爪を示す。足の爪の状態における顕著な改善が認められる。
【0117】
(実施例6)
ウマ蹄角膜へのアバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミンを含む5種の製剤のex vivo浸透試験
ヒトのin vivo条件に類似させるために、ウマ蹄角膜へのex vivo浸透試験を実施した。動物の蹄はヒトの爪と本質的に同一の物質でできている。ヒトの爪を形成するために、ウマの蹄を、約2cm2の面積且つ600から700μmの厚みを有する角膜に切り取った。ヒトの指の爪は約500μmの厚みがあり、ヒトの足の爪は約800μmの厚みがある。
【0118】
表5に記載の成分を含む製剤1から3及び5を調製し、製剤4を購入した。製剤1、2、及び5は親水性ゲルであり、製剤3及び4はラッカーであった。製剤2及び5は本発明に係るものであり、製剤1、3、及び4は比較例の製剤である。
【0119】
【表5】
【0120】
製剤1から5の250μlをウマ蹄角膜に適用した。ウマ蹄角膜をFranz拡散セル(1.76cm2の面積)に置いて、セルを調整血液類似緩衝液(リン酸緩衝液)で満たした。前記緩衝液を300rpmで攪拌した。24時間後、ウマ蹄角膜をFranz拡散セルから除去して、製剤の残留物を除去した。1.76cm2の効果的な浸透領域を小片に切り取って、API(アバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミン)を適当な溶媒を用いて抽出した。試料を60℃の超音波浴を使用して30分間に亘って抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。
【0121】
【表6】
【0122】
結果を表6及び図5に示す。本発明に係る製剤(製剤2及び5)を適用した際は、比較例の製剤(製剤1、3、及び4)を適用した際よりも多くのアバファンジン及びオラミンがウマ蹄角膜に浸透した。
【0123】
本発明に係る製剤(製剤5)におけるシクロピロックスを用いたin vitro試験は、Batrafen(登録商標)(製剤4)で使用した市販のシクロピロックスラッカーと比較して、爪により高度に浸透する割合を示す。
【0124】
(実施例7)
アバファンジン又はヒドロコルチゾンを含む4種の製剤のブタ耳皮膚へのex vivo浸透試験
ヒトのin vivo条件に類似させるために、ブタ耳皮膚に対するex vivo浸透試験を実施した。ブタ耳はヒトの皮膚と本質的に同一の物質からできている。ブタ耳皮膚を軟骨組織から注意深く取り出し、ヒトの皮膚と一致する約2cm2の面積及び約2000μmの厚みを有する断片に切り取った。
【0125】
表7に記載の成分を含む製剤a、b、及びdを調製し、製剤cを購入した。製剤a及びbは本発明に係る親水性ゲルであり、製剤b及びcは比較例のクリーム製剤であった。
【0126】
【表7】
【0127】
製剤aからdの250μlをブタ耳皮膚の断片に適用した。ブタ耳皮膚断片をFranz拡散セル(1.76cm2の面積)において、セルを調整血液類似緩衝液(リン酸緩衝液)で満たした。前記緩衝液を300rpmで攪拌した。24時間後、皮膚断片をFranz拡散セルから除去して、製剤の残留物を除去した。1.76cm2の効果的な浸透領域を小片に切り取って、API(アバファンジン又はヒドロコルチゾン)を適当な溶媒を用いて抽出した。試料を60℃の超音波浴を使用して30分間に亘って抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。
【0128】
【表8】
【0129】
結果を表8及び図6に示す。本発明に係る製剤(製剤a及びd)を適用した際は、比較例の製剤(製剤b及びc)を適用した際よりも多くのアバファンジン及びヒドロコルチゾンがブタ耳皮膚に浸透した。
【0130】
本発明に係るヒドロコルチゾン製剤(製剤d)は、市販の製剤であるHydrodexan Creme(登録商標)(製剤c)と比較すると、コルチコステロイドヒドロコルチゾンの浸透率が向上している。
【0131】
(実施例8)
アバファンジン、ヒドロコルチゾン、シクロピロックスオラミンを用いた溶解性及び安定性試験
アバファンジン、ヒドロコルチゾン、及びシクロピロックスオラミンの溶解性及び安定性を、標準的なエタノールゲル(Ethanolhaltiges Erythromycin Gel,NRF 11.84、ABDA,Govi Verlag Pharmazeutischer Verlag GmbH、Eschborn)、純水、及び純粋なエタノール中で、本発明に係る製剤において試験した。異なる製剤において結晶化しない3つのAPIの最大の溶解度を表9にまとめる。
【0132】
【表9】
【0133】
標準的なエタノールゲル、純水、純粋なエタノールと比較して、本発明に係る製剤は結晶化を妨げ、3種のAPI(アバファンジン、ヒドロコルチゾン、及びシクロピロックスオラミン)の溶解性及び安定性を増大させることが認められた。
【0134】
(実施例9)
TEWL(経表皮水損失)試験
標準的なネイルラッカー(Batrafen(登録商標)及びLoceryl(登録商標))並びに本発明に係る製剤の適用のTEWL(経表皮水損失)に対する影響を試験した。
【0135】
3人のボランティアの親指の爪を3種の製剤、すなわち、本発明に係る製剤(実施例2の製剤2)並びに市販のラッカー製剤であるBatrafen(登録商標)及びLoceryl(登録商標)で処置した。3人のボランティアの処置前及び一時間後に親指の爪のTEWLを測定した。結果を図7に示す。図7では、処置前の測定に対する、処置の一時間後の測定のパーセント偏差を示す。
【0136】
Batrafen(登録商標)及びLoceryl(登録商標)の双方のラッカーは、水の損失及び爪の上の湿度の顕著な低減を生じた。本発明の製剤を用いた場合にのみ、フリーな爪の水が爪甲を自由に超えて浸透し、爪甲を潤し、親水性ゲル製剤から爪に医薬活性剤を溶解することが依然として可能である。
【0137】
(実施例10)
真菌阻害アッセイ
本試験の目的は、本発明によって製剤化されたアバファンジンの、ウシ蹄角膜(ヒトの爪のモデル)に浸透し、紅色白癬菌(trichophyton rubrum)34の増殖を阻害する能力を測定することであった。紅色白癬菌は、足の爪の爪甲真菌症の最も一般的な病原である(W.K. Foster, M.A. Ghannoum and B. E. Elewski, J. Am. Acad. Dermatol., 2004, vol. 50, pages 748-752)。本発明に係る1つの製剤(A)を、比較の目的のための本発明に係るものではない3種の代替的なアバファンジン製剤(B〜D)とともに試験した。
【0138】
ウシ蹄角膜を、2時間に亘ってペトリ皿において滅菌蒸留水で水和した。その後、ウシ蹄角膜をペトリ皿から取り出して、濾紙上で乾燥させた。
【0139】
紅色白癬菌34の播種材料を調製するために、1から2mlの滅菌生理食塩水を、ペトリ皿中の寒天ゲルの対応するコロニーの表面に添加し、表面を綿棒で攪拌した。次いで、懸濁物をUniversal管に移し、その濁度を(滅菌生理食塩水又は懸濁物を使用して)McFarland Standard2まで調整した。新しいサブロー寒天プレートの表面に播種材料を塗った。
【0140】
薬物製剤AからDをウシ蹄角膜に適用した。空の未処理のウシ蹄角膜を対照として使用した。処置したものを乾燥させて、ウシ蹄角膜を、処理表面を上にして、播種したサブロープレートの中央に置き、プレートを27℃で5日間に亘ってインキュベートした。各試験条件を三回繰り返して実施した。
【0141】
5日のインキュベートの後に、薬剤がウシ蹄角膜に浸透し、その後に寒天ゲルに浸透して、阻害領域を観察した(図8参照のこと)。寒天プレートの写真を撮って(図9参照のこと)、阻害領域の直径は下式により算出した。
【0142】
【数1】
【0143】
結果は表10に示す。表10は、製剤AからDで処理したウシ蹄角膜のインキュベート後の紅色白癬菌34の阻害領域の直径を記載する。各試験条件を3回繰り返した結果を提供する。
【0144】
【表10】
【0145】
本発明に係るアバファンジン製剤(A)の適用によって、プレートの完全なクリアランスを達成した。これは、本発明に係るものではない3種の代替的なアバファンジン製剤(B〜D)の何れの適用によっても達成されなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬活性剤;水;ポリエチレングリコール又はポロキサマー;及びポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む医薬製剤に関する。好ましくは、前記医薬活性剤は抗真菌又は抗カビ剤である。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。本発明は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症などの爪又は皮膚の病気、疾患、又は病理状態の治療における前記製剤の使用にも関する。本発明は、医薬活性剤を含む前記製剤を対象の爪又は皮膚に適用することによって、前記対象に前記医薬活性剤を投与する方法にも関する。本発明は、前記製剤の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の病気又は疾患は多くの場合において医薬活性剤の局所投与によって効果的に治療され得るが、爪の病気及び疾患の治療の成功は得られにくい状況のままである。大半の爪の病理状態の原因が発生している爪の中又は下に、医薬活性剤を効果的に送達することが困難である。
【0003】
特に、爪の真菌感染は効果的に治療し得ない状況のままである。手の爪及び足の爪の中、下、及び周囲における真菌感染は、一般的に、爪甲真菌症と称される。爪甲真菌症は、大半の場合において、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、及びエルデルモフィトン・フロッコーズム(Epidermophyton floccosum)などの皮膚糸状菌によって生じるが、カビ及び酵母などを含む他のタイプの真菌によっても生じ得る。皮膚糸状菌によって生じない爪甲真菌症は、通常、カンジダ種によって生じる。混合感染も生じ得る。
【0004】
爪甲真菌症は、爪の肥厚、凹凸、割れ、及び変色を生じさせ、爪の欠損又は損失すら生じさせ得る。加えて、痛み、不十分な血液供給、歩行に関連する問題、及び他の望ましくない症状を生じさせ得る。
【0005】
過去においては、爪甲真菌症は、とりわけ、爪の感染部分又は爪全体を除去することによって治療されていた。しかしながら、このタイプの治療は、爪に永続的な損傷を生じさせ得る。また、新たに生じた爪は不恰好な形状で現れ得る。さらに、爪を除去することによって爪甲真菌症を完全に治療し得る補償はない。
【0006】
爪を除去する代わりに、爪甲真菌症は、各種の効カビ剤の使用によっても治療され得る。好カビ剤は、例えば経口投与され得る。しかしながら、当該態様の治療では、身体全体へのストレスがかかり、少量のみの抗カビ活性物質が爪のマトリックスを介して爪に到達する。経口治療は、足の爪には少なくとも12週の治療時間が必要であり、指に爪には約6から8週の治療時間が必要であるという更なる欠点がある。その様な長期の治療時間は、治療を高額にし、患者の薬剤服用遵守を低減させる。さらに、経口治療は、例えば、胃腸管の刺激、吐き気、望ましくない他の医薬との相互作用、活性成分に誘導された皮膚発疹などの副作用のリスクを増大させる。爪甲真菌症の経口治療は、吸収及び代謝の可変速度によって更に困難となる。
【0007】
爪甲真菌症の他の治療方法は、抗カビ活性成分を含有する医薬製剤の局所適用を含む。例えば、抗カビ活性成分を含有するネイルラッカー製剤で爪甲真菌症を治療することが知られている。しかしながら、爪は抗真菌化合物が浸透するのが困難な障壁であるため、そのような抗真菌ネイルラッカーは、真菌感染に到達するために必要な浸透力を欠いている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.A. Walters et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1985, vol. 37, pages 771-775
【非特許文献2】D. Mertin et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1997, vol. 49, pages 30-34
【非特許文献3】Y. Kobayashi et al., European Journal of Pharmaceutical Sciences, 2004, vol. 21, pages 471-477
【非特許文献4】D. Spruit, Journal of Investigative Dermatology, 1971, vol. 56, pages 359-361
【非特許文献5】K.A. Walters et al., Journal of Investigative Dermatology, 1981, vol. 36, pages 101-103
【非特許文献6】de Berker & Baran, Int. J. Cosmetic Science, 2007, vol. 29, pages 241-275
【非特許文献7】Spruit, Am. Cosmet. Perfum., 1972, vol. 87, pages 57-58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、爪甲真菌症などの爪の病気、疾患、及び病理状態の効果的な治療が依然として必要とされている。爪の障壁に浸透することが可能であり、且つ、爪の真菌症を効果的に治療することが可能であり、かくして、抗真菌剤の経口投与及び爪を除去する必要性を除去する局所性剤を有することが有益であろう。効果的には、爪甲真菌症の局所治療は、病原体に強力な効能を示すべきであり、且つ、爪の障壁に浸透できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第一の態様は、
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー;及び
(d)ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル
を含む製剤を提供する。
【0011】
ポリエチレングリコール(PEG)は、一般式HO−(CH2CH2O)n−Hを有する。好ましくはn=4−2000であり、好ましくはn=6−750であり、好ましくはn=150−500である。好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールは、少なくとも400、好ましくは少なくとも500、好ましくは少なくとも700、好ましくは少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、好ましくは少なくとも4500、好ましくは少なくとも5000、好ましくは少なくとも6000、更に好ましくは少なくとも8000の平均分子量を有する。好ましくはポリエチレングリコールの平均分子量は、100000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下である。これらの好ましい分子量の下限のいずれかが、好ましい分子量の範囲を与えるために好ましい分子量の上限のいずれかと組み合わされてよい。好ましくは、ポリエチレングリコールの平均分子量は、200−100000の範囲、好ましくは300−30000の範囲である。好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールは、PEG8000−20000、すなわち、8000と20000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコールである。代替的な好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールの平均分子量は200−600の範囲、好ましくは300−500の範囲であり、より好ましくはポリエチレングリコールの平均分子量は約400である。好ましい実施態様では、前記製剤は、5−50%の量、好ましくは10−40%の量、好ましくは15−35%の量でポリエチレングリコールを含む。
【0012】
本発明に関しては、特に言及しない限り、全ての量の割合は重量%を示す。
【0013】
ポロキサマーは、一般式HO−(CH2CH2O)a−(CH(CH3)CH2O)b−(CH2CH2O)c−Hを有するポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマーである。好ましくはa=4−200である。好ましくはb=15−300である。好ましくは、c=4−200である。好ましくはポロキサマーのポリオキシエチレン含量は、全ポリマー重量の10−80%である。好ましい実施態様では、ポロキサマーは、少なくとも1000、好ましくは少なくとも2000、好ましくは少なくとも4500、好ましくは少なくとも5000、好ましくは少なくとも6000、より好ましくは少なくとも8000の平均分子量を有する。好ましくは、ポロキサマーの平均分子量は、100000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは15000以下である。これらの好ましい分子量の下限のいずれかが、好ましい分子量の範囲を与えるために、好ましい分子量の上限のいずれかと組み合わされてよい。好ましくは、ポロキサマーの平均分子量は、1000−16000の範囲、好ましくは2000−15000の範囲である。好ましい実施態様では、前記製剤は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%の量でポロキサマーを含む。好ましくは、前記製剤は、5−50%の量、好ましくは10−40%の量、好ましくは15−35%の量でポロキサマーを含む。
【0014】
本発明の製剤は、ポリエチレングリコール又はポロキサマーを含んでよい。好ましくは、前記製剤はポリエチレングリコールを含む。1つの実施態様では、前記製剤はポロキサマーを含まない。
【0015】
ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルは、一般式RO−(CH2CH2O)m−Rを有する。好ましくはm=2−250であり、好ましくはm=4−175であり、好ましくはm=6−125である。好ましくは、各Rが、水素又は任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、若しくはアルキニルアリール基から独立に選択され、より好ましくは各Rが水素又は任意に置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル、若しくはアルキルアリール基から独立に選択され、より好ましくは各Rが水素又は任意に置換されたアルキル基から独立に選択され、更に好ましくは各Rが水素又はメチル若しくはエチル基から独立に選択されるが、少なくとも1つのRは水素でない。好ましい実施態様では、1つのRが水素である。好ましくはRが置換されていない。好ましくは、Rが、その炭素骨格に複素原子を含まない。好ましくは、Rが1から20の炭素原子、好ましくは1から15の炭素原子、好ましくは1から10の炭素原子、好ましくは1から5の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を含有する。好ましくは、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルは、単独の−(CH2CH2O)m−を含有し、すなわち、Rは−(CH2CH2O)m−基を含まない。好ましくはポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルの平均分子量は、120−10000の範囲、好ましくは200−8000の範囲、好ましくは300−5000の範囲である。好ましい実施態様では、前記製剤は、0.1−30%の量、好ましくは2−15%の量、好ましくは3−10%の量、より好ましくは約5%の量でポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む。代替的な好ましい実施態様では、前記製剤は、4−30%の量、好ましくは4−20%の量、より好ましくは約5%の量でポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む。
【0016】
好ましくは、前記製剤は、ポリエチレングリコールモノ−エーテルを含む。
【0017】
1つの実施態様では、前記製剤は、ポリエチレングリコールジ−エーテルを含み、各Rは1から20の炭素原子、好ましくは1から15の炭素原子、好ましくは1から10の炭素原子、好ましくは1から5の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を独立に含有する。
【0018】
好ましい実施態様では、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルは、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−メチル又はエチルエーテルであり、より好ましくはポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)である。好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルはMPEG350−10000であり、すなわち、350と10000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。より好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがMEPG350−5000であり、すなわち、350と5000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルはMPEG2000であり、すなわち、約2000の平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。好ましい実施態様では、前記製剤は、2−15%の量、好ましくは3−10%の量でポリエチレングリコールモノメチルエーテルを含む。
【0019】
好ましくは、一方がポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー、他方がポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルで、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1の比率で使用される。好ましくは、一方がポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー、他方がポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルで、10:1以下、好ましくは8:1以下、より好ましくは6:1以下の比率で使用される。これらの好ましい比率の下限は、好ましい比率の範囲を与えるために、好ましい上限のいずれかと組み合わされてよい。好ましくは、一方がポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー、他方がポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルで、10:1から1:1の比率、好ましくは約4:1の比率で使用される。
【0020】
本発明に関して、「アルキル」基は、一価の飽和炭化水素として定義され、直鎖又は分枝鎖であってよく、或いは環式基であるか又は環式基を含んでよい。アルキル基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSを、その炭素骨格に任意に含んでよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、及びn−ペンチル基である。好ましくは、アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であり、且つ、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アルキル基は、1から12の炭素原子を含有するアルキル基として規定されるC1−C12アルキル基である。より好ましくは、アルキル基は、1から6の炭素原子を含有するアルキル基として規定されるC1−C6アルキル基である。アルキレン基は、二価のアルキル基として同様に定義される。
【0021】
「アルケニル」基は、一価の炭化水素として定義され、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖又は分枝鎖であってよく、或いは環式基であるか又は環式基を含んでよい。アルケニル基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSをその炭素骨格に任意に含んでよい。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブテ−1−ニル、及びブテ−2−ニル基である。好ましくは、アルケニル基は、直鎖又は分枝鎖であり、且つ、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アルケニル基は、2から12の炭素原子を含有するアルケニル基として規定されるC2−C12アルケニル基である。より好ましくは、アルケニル基は、2から6の炭素原子を含有するアルケニル基として規定されるC2−C6アルケニル基である。「アルケニレン」基は、二価のアルケニル基として同様に定義される。
【0022】
「アルキニル」基は、一価の炭化水素として定義され、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖又は分枝鎖であってよく、或いは環式基であるか又は環式基を含んでよい。アルキニル基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSをその炭素骨格に任意に含んでよい。アルキニル基の例は、エチニル、プロパルギル、ブチ−1−ニル、及びブチ−2−ニル基である。好ましくは、アルキニル基は、直鎖又は分枝鎖であり、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アルキニル基は、2から12の炭素原子を含有するアルキニル基として規定されるC2−C12アルキニル基である。より好ましくは、アルキニル基は、2から6の炭素原子を含有するアルキニル基として規定されるC2−C6アルキニル基である。「アルキニレン」基は、二価アルキニル基として同様に定義される。
【0023】
「アリール」基は、一価の芳香族炭化水素として定義される。アリール基は、1つ又は複数の複素原子N、O、又はSをその炭素骨格に任意に含んでよい。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナントレニル基である。好ましくは、アリール基は、その炭素骨格にいずれの複素原子も含まない。好ましくは、アリール基は、4から14の炭素原子を含有するアリール基として規定されるC4−C14アリール基である。より好ましくは、アリール基は、6から10の炭素原子を含有するアリール基として規定されるC6−C10アリール基である。「アリーレン」基は二価のアリール基として同様に規定される。
【0024】
本発明に関して、基の組み合わせが1つの部分として参照される、例えば、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、又はアルキニルアリールである場合は、最後に言及される基が、その部分が分子の残りに結合する原子を含有する。アリールアルキルの典型例はベンジルである。
【0025】
本発明に関して、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール基は、−F、−Cl、−Br、−I、−CF3、−CCl3、−CBr3、−CI3、−OH、−SH、−NH2、−CN、−NO2、−COOH、−Rα−O−Rβ、−Rα−S−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO2−Rβ、−Rα−SO2−ORβ、−RαO−SO2−Rβ、−Rα−SO2−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−SO2−Rβ、−Rα−SO2−ORβ、−RαO−SO2−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−SO2−ORβ、−Rα−NRβ−SO2−N(Rβ)2、−RαN(Rβ)2、−Rα−N(Rβ)3+、−Rα−P(Rβ)2、−Rα−Si(Rβ)3、−Rα−CO−Rβ、−Rα−CO−ORβ、−RαO−CO−Rβ、−Rα−CO−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CO−Rβ、−RαO−CO−ORβ、−RαO−CO−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CO−ORβ、−Rα−NRβ−CO−N(Rβ)2、−Rα−CS−Rβ、−Rα−CS−ORβ、−RαO−CS−Rβ、−Rα−CS−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CS−Rβ、−RαO−CS−ORβ、−RαO−CS−N(Rβ)2、−Rα−NRβ−CS−ORβ、−Rα−NRβ−CS−N(Rβ)2、−Rβ、架橋置換基、例えば、−O−、−S−、−NRβ−、−Rα−、又はπ−結合置換基、例えば、=O、=S、若しくは=NRβの1つ又は複数で置換されてよい。こうした背景において、−Rα−は、独立に、化学結合C1−C10アルキレン、C1−C10アルケニレン、又はC1−C10アルキニレン基である。−Rβは、独立に、水素、非置換のC1−C6アルキル又は非置換C6−C10アリールである。任意の置換基で置換された親基における炭素原子の総数を算出する際に、任意の置換基を考慮に入れる。好ましくは、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、又はアルキニルアリール基は架橋置換基で置換されていない。好ましくは、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、又はアルキニルアリール基はπ−結合置換基で置換されていない。好ましくは、置換された基は、1、2、又は3の置換基、より好ましくは1又は2の置換基、更により好ましくは1の置換基を含む。
【0026】
任意の置換基が保護されてよい。任意の置換基の保護に適切な保護基が、当該技術分野において知られており、例えば、'Protective Groups in Organic Synthesis' by T.W. Greene and P.G.M. Wuts (Wiley- Interscience, 4th edition, 2006)から既知である。
【0027】
好ましい実施態様では、前記製剤は、
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG);
(d)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)
を含む。
【0028】
他の好ましい実施態様では、前記製剤は、
(a)0.1−30%医薬活性剤;
(b)5−50%水;
(c)5−50%ポリエチレングリコール;
(d)2−15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;及び任意に
(e)0−70%アルコール
(f)0−5%pH調節のための酸又は塩基;
(g)0−10%浸透促進剤;
(h)0−6%可塑剤
を含む。
【0029】
他の好ましい実施態様では、前記製剤は、
(a)0.1−30%医薬活性剤;
(b)5−50%水;
(c)5−50%ポリエチレングリコール;
(d)2−15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;及び任意に
(e)0−70%アルコール
(f)0−5%pH調節のための酸又は塩基;
(g)0−1%イソプロピルミリステート;
(h)0−4%トランスクトール
(i)0−5%プロピレングリコール
を含む。
【0030】
好ましい実施態様では、前記医薬活性剤は、抗真菌又は抗カビ剤である。用語「抗真菌」及び「抗カビ」は、本明細書において互換的に使用される。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。
【0031】
他の好ましい実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤は、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、グアニジン、ピリミジン、イミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、又はチオカルバメートである。抗真菌又は抗カビ剤がイミダゾールである場合は、ビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がトリアゾールである場合は、好ましくは、フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がチアゾールである場合は、好ましくは、2−アミノ−チアゾール、好ましくはアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がグアニジンである場合は、好ましくは、アリールグアニジン、好ましくはアバファンジン又はその製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がピリミジンである場合は、好ましくは、2−ピリミジンイミンであり、好ましくはアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がイミンである場合は、好ましくは、2−ピリミジンイミンであり、好ましくはアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がモルホリンである場合は、好ましくは、アモロルフィン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤が2−ピリドンである場合は、シクロピロックス又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤が2−ピリミドンである場合は、好ましくは、フルシトシン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がアリルアミンである場合は、好ましくは、テルビナフィン、ナフチフィン、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がベンジルアミンである場合は、好ましくは、ブテナフィン又は製薬学的に許容されるその塩である。抗真菌又は抗カビ剤がポリエンである場合は、好ましくは、アンホテリシンB、ナイスタチン、ピマルシン(ナタマイシンとも称される)、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。抗真菌又は抗カビ剤がエチノカンジンである場合は、カスポファンジン、ミカファンジン、アニデュラファンジン、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である。好ましくは、抗真菌又は抗カビ剤はアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩であり、好ましくはアバファンジンである。
【0032】
本発明に関して、化合物がアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、2−アミノチアゾール、チアジアゾール、グアニジン、アリールグアニジン、ピリミジン、イミン、2−ピリミジンイミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、チオカルバメートなどと称される場合は、前記化合物がアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、2−アミノ−チアゾール、チアジアゾール、グアニジン、アリールグアニジン、ピリミジン、イミン、2−ピリミジンイミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、チオカルバメートなどの官能基を含むことを意味する。
【0033】
アゾールは、1つの窒素及び窒素、酸素、又は硫黄原子などの少なくとも1つの更なる複素原子を含む芳香族複素5員環と一般的に解される。したがって、イミダゾール(2つの窒素原子を含む芳香族複素5員環)、トリアゾール(3つの窒素原子を含む芳香族複素5員環)、チアゾール(1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む芳香族複素5員環)、及びチアジアゾール(2つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む芳香族複素5員環)がアゾールであると一般的に解される。
【0034】
しかしながら、アゾール抗真菌剤と称する際には、一般的にはイミダゾール及びトリアゾール抗真菌剤を意味し、チアゾール又はチアジアゾール抗真菌剤ではない。理論と結びつけることを望まないが、これは、イミダゾール及びトリアゾール抗真菌剤の抗真菌活性が現在は、14α−デメチラーゼの阻害によるエルゴステロール生合成の阻害によるものであると解されるためである。チアゾール抗真菌剤は、一方で、14α−デメチラーゼを阻害すると現在解されておらず、それらの抗真菌活性は、現在、24−ステロールメチルトランスフェラーゼを阻害することによってエルゴステロール生合成を阻害することに少なくとも部分的に起因すると解されている。
【0035】
したがって、本発明に関して、用語「アゾール」は、1つの窒素原子及び少なくとも1つの更なる複素原子を含む全ての芳香族複素5員環を包含し、したがって、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、及びチアジアゾールを含む。好ましい実施態様では、用語「アゾール」は、イミダゾール及びトリアゾールのみを包含する。
【0036】
本発明の1つの実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤はトリアゾールでない。他の実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤はイミダゾールでない。他の実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤はチアゾール又はチアジアゾールである。
【0037】
本発明の好ましい実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤は、一般式(I)の化合物又は製薬学的に許容されるその塩である。
【0038】
【化1】
【0039】
式中、
R1は水素又はアルキルであり;
R2は下式の基である。
【0040】
【化2】
【0041】
式中、
R3、R4、R5、及びR6は、独立に、水素、ハロゲン、窒素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ−カルボニル、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、ハロアルキルスルフィニル、又はハロアルキルスルホニルであり;
Xは酸素、硫黄、スルフィニル、又はスルホニルであり;及び
Arは任意に置換されたアリール基である。
【0042】
式(I)の化合物は、式(Ia)及び(Ib)のそれらの互変異性体と平衡状態にある。
【0043】
【化3】
【0044】
好ましくは、R1は水素又はC1−3アルキルであり、好ましくは水素である。好ましくは、R3、R4、R5、及びR6は、独立に、水素又はC1−3アルキルであり、好ましくは水素である。好ましくは、Xは酸素である。好ましくは、Arはフェニル基であり、任意に1、2、又は3のC1−3アルキル又はC1−3アルコキシ基で置換されている。好ましくは、R2は下式の基である。
【0045】
【化4】
【0046】
式(I)の化合物は、2−アミノ−チアゾール又はアリールグアニジン或いは2−ピリミジンイミンであると分類されてよい。
【0047】
一般式(I)の好ましい化合物は、式(II)のアバファンジンである。
【0048】
【化5】
【0049】
上記式(II)のアバファンジンは、式(IIa)及び(IIb)の互変異性体と平衡状態にある。
【0050】
【化6】
【0051】
他の好ましい実施態様では、抗真菌又は抗カビ剤がアバファンジン、シクロピロックスオラミン、テルビナフィン塩酸、又はアモロルフィンである。好ましくは、抗真菌又は抗微生物剤がアバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩であり、好ましくはアバファンジンである。抗真菌又は抗カビ剤がアバファンジンである場合は、前記製剤は、好ましくは、pH調節のためにギ酸などの酸を更に含む。好ましくは、前記製剤は、約5−8、好ましくは約5−7、好ましくは約5−6、好ましくは約5.5の範囲のpHを有し、これはヒトの皮膚及び爪の条件と類似している。代替的な実施態様では、前記製剤は、約1−7、好ましくは約2−6、好ましくは約3−6、好ましくは約3−5、より好ましくは4−5の範囲のpHを有する。
【0052】
好ましい実施態様では、前記製剤は、0.1−30%の量、好ましくは0.5−20%の量、好ましくは1−15%の量で医薬活性剤を含む。好ましくは、前記製剤は、少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも4%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは約10%の量で医薬活性剤を含む。
【0053】
好ましい実施態様では、医薬活性剤が、前記製剤に実質的に溶解されており、すなわち、前記製剤に存在する医薬活性剤の少なくとも75%が前記製剤の溶液にある。前記製剤に存在する医薬活性剤の好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.9%が、前記製剤の溶液にある。
【0054】
好ましい実施態様では、前記製剤は、5−50%の量、好ましくは10−50%の量、好ましくは17−25%又は20−40%の量で水を含む。より好ましくは、前記製剤は、約20%の量で水を含む。
【0055】
好ましい実施態様では、前記製剤は、2−プロパノール、エタノール、ベンジルアルコール、又は2−フェノキシエタノールなどのアルコールを更に含む。前記製剤は、70%までのアルコールを含んでよい。前記製剤がアルコールを含む場合は、10−70%の量、好ましくは20−60%の量、好ましくは30−50%の量でアルコールを含む。
【0056】
ある実施態様では、前記製剤は、pH調節のために酸又は塩基を更に含む。適切な酸は、飽和又は不飽和であってよい有機酸(例えば、クエン酸、ミリスチン酸、及びギ酸)を及び無機酸(例えば、塩酸及び硫酸)を含む。好ましい酸はギ酸である。適切な塩基は水酸化ナトリウムを含む。前記製剤は、5%までの酸又は塩基を含んでよい。好ましくは、前記製剤は、約5−8の範囲、好ましくは約5−7、好ましくは約5−6、好ましくは約5.5のpHを有しており、これはヒトの皮膚及び爪の条件と類似している。代替的な実施態様では、前記製剤は、約1−7、好ましくは約2−6、好ましくは約3−6、好ましくは約3−5、より好ましくは約4−5の範囲のpHを有する。
【0057】
好ましい実施態様では、前記製剤は、浸透促進剤及び/又は可塑剤を更に含む。好ましい浸透促進剤及び/又は可塑剤は、イソプロピルミリステート、トランスクトール、プロピレングリコール、イソプロピルパルミテート、テルペノイド、デシルオレート、オレイン酸、スルホキシド、ケラチン分解剤(例えば、尿素)、アゾン、テルペン、精油、界面活性剤(例えば、Tween20、Tween80、Span、Labrasol、Isoceteth−20)、アルコール、ポリオール、脂肪酸、グリコール、及びピロリドンを含むが、それらに限らない。前記製剤は、10%まで、好ましくは6%までの浸透促進剤を含んでよい。前記製剤は、6%まで、好ましくは5%までの可塑剤を含んでよい。
【0058】
好ましい実施態様では、前記製剤はイソプロピルミリステートを含む。前記製剤は、1%までのイソプロピルミリステートを含んでよい。前記製剤がイソプロピルミリステートを含む場合は、0.1−1%、好ましくは0.5−1%の量で存在する。
【0059】
好ましい実施態様では、前記製剤は、トランスクトールなどの浸透促進剤を含む。前記製剤は、4%までのトランスクトールを含んでよい。前記製剤がトランスクトールを含む場合は、0.5−4%の量、好ましくは1−4%の量、好ましくは2−4%の量で存在する。
【0060】
好ましい実施態様では、前記製剤はプロピレングリコールを含む。前記製剤は、5%までのプロピレングリコールを含んでよい。前記製剤がプロピレングリコールを含む場合は、0.5−5%の量、好ましくは0.5−4%の量、好ましくは0.5−3%の量で存在する。
【0061】
好ましい実施態様では、前記製剤は、少なくとも1100mPas、好ましくは少なくとも1200mPas、好ましくは少なくとも1300mPas、好ましくは少なくとも1500mPas、好ましくは少なくとも2000mPas、好ましくは少なくとも5000mPas、好ましくは少なくとも10000mPasの粘度を有する。代替的な好ましい実施態様では、前記製剤は、2と1000mPasの間、好ましくは5と900mPasとの間、好ましくは10と750mPasとの間、好ましくは30と500mPasとの間の粘度を有する。
【0062】
特に好ましい実施態様では、前記製剤は、100と500mPasとの間、好ましくは200と300mPasとの間、より好ましくは約250mPasの粘度を有する。好ましくは、その様な製剤は、好ましくはゲルとして、爪への適用に適切である。
【0063】
他の特に好ましい実施態様では、前記製剤は、30と100mPasとの間、好ましくは40と80との間、より好ましくは約60mPasの粘度を有する。好ましくは、その様な製剤は、好ましくはスプレーとして、皮膚への適用に適切である。
【0064】
好ましい実施態様では、前記製剤は固体ではない。好ましくは、前記製剤がスプレー、クリーム、軟膏、ゲル、又はペーストである。更に好ましくは、前記製剤は親水性の水系ゲルである。
【0065】
本発明の製剤は、爪又は皮膚の病気、疾患、病理状態の治療に使用されてよい。例えば、本発明の製剤は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、口腔、膣、若しくは肛門の真菌症、ニキビなどの皮膚疾患、黄色ブドウ球菌などの局所的細菌感染、或いはヘルペスなどの局所的ウイルス感染の治療に使用されてよい。本発明の製剤は、創傷治癒を補助するためにも使用されてよい。
【0066】
したがって、好ましくは、本発明の製剤は、局所適用、好ましくは爪又は皮膚への局所適用に適切である。
【0067】
代替的には、本発明の製剤は、対象、好ましくは非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、又はネコの蹄、角、爪、又は皮膚の病気、疾患、病理状態の治療に使用されてよい。好ましくは、前記病気、疾患、又は病理状態は真菌感染症である。
【0068】
本発明の第二の態様は、対象の爪への本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、医薬活性剤の対象への投与方法を提供する。好ましくは、前記医薬活性剤は脂溶性且つ/又は好ケラチン性である。
【0069】
脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤は、多くの場合において、皮膚に浸透することが可能である。親水性医薬活性剤は、多くの場合において、爪に浸透することが可能である。本発明の第二の態様の方法は、親水性製剤を使用して、脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤が爪に浸透することを可能にする。
【0070】
好ましくは、前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物であり、好ましくはヒトである。好ましくは、前記医薬活性剤は、爪及び爪を覆う皮膚に浸透することによって、対象の爪及び爪マトリックスに浸透する。
【0071】
本発明の第三の態様は、爪甲真菌症に罹患している対象の爪に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、爪甲真菌症を治療する方法を提供する。
【0072】
本発明の第三の態様は、皮膚真菌症に罹患している対象の皮膚に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、皮膚真菌症を治療する方法も提供する。
【0073】
本発明の第三の態様は、口腔、膣、又は肛門の真菌症に罹患している対象の皮膚又は粘膜に本発明の第一の態様に係る製剤を提供する工程を含む、口腔、膣、又は肛門の真菌症を治療する方法も提供する。
【0074】
本発明の第三の態様は、皮膚疾患に罹患している対象の皮膚に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、皮膚疾患(例えば、ニキビ)を治療する方法も提供する。
【0075】
本発明の第三の態様は、局所感染に罹患している対象の皮膚又は粘膜に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、局所細菌感染(例えば、黄色ブドウ球菌)又は局所ウイルス感染(例えば、ヘルペス)を治療する方法も提供する。
【0076】
本発明の第三の態様は、対象の創傷に本発明の第一の態様に係る製剤を適用する工程を含む、創傷治癒を補助する方法も提供する。
【0077】
本発明の第三の態様の任意の方法において、対象はヒト又は非ヒト哺乳動物であってよい。好ましくは、前記対象はヒトである。
【0078】
本発明の第四の態様は、
(a)医薬活性剤並びに存在する場合は酸又は塩基を水に溶解する工程
(b)ポリエチレングリコール又はポロキサマー、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル、並びに存在する場合にはアルコール、浸透促進剤、及び可塑剤を溶液に添加する工程;並びに
(c)親水性ゲルが得られるまで混合物を攪拌する工程
を含む、本発明の第一の態様に係る製剤を調製する方法を提供する。
【0079】
好ましい実施態様では、医薬活性剤はプロトン化されてよく、酸が工程(a)で使用され、医薬活性剤をプロトン化する。プロトン化されてよい好ましい医薬活性剤は、アバファンジン又は製薬学的に許容されるその塩である。代替的な実施態様では、医薬活性剤は脱プロトン化されてよく、工程(a)で塩基が使用されて、前記医薬活性剤を脱プロトン化する。
【0080】
誤解を避けるために述べると、実施可能な限りにおいて、本発明の所定の態様の任意の実施態様は、本発明の同一の態様の任意の他の実施態様と組み合わせてよい。さらに、実施可能な限りにおいて、本発明の任意の態様の任意の好ましい又は任意の実施態様が、本発明の任意の他の態様の好ましい又は任意の実施態様と解されるべきでもある。
【0081】
加えて、本発明の変数に関して特定した任意の下限が、本発明に包含される範囲を形成するために、同じ変数について特定した任意の上限と組み合わされてよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、アバファンジンを含む3種の製剤を適用した24時間後の3つのウマの蹄角の膜(1、2、及び3と記した)を示す。
【図2】図2は、アバファンジンを含む3種の製剤を適用した24時間後のウマ蹄角膜に浸透したアバファンジンの量を示すグラフである。
【図3】図3は、アバファンジンを含む本発明の製剤の局所適用後の、爪甲真菌症に罹患しているボランティアの足の爪を示す。
【図4】図4は、イトラコナゾール経口投与及びそれと共にアバファンジンを含む本発明の製剤の局所投与する前又は後の、爪甲真菌症に罹患している他のボランティアの足の爪を示す。図4において、「(1)」は経口イトラコナゾール投与を示し、「Abagel 10%」はアバファンジン製剤の局所投与を示す。
【図5】図5は、アバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミンを含む5種の製剤を適用した24時間後のウマ蹄角膜に浸透したアバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミンの量を示すグラフである。
【図6】図6は、アバファンジン又はヒドロコルチゾンを含む4種の製剤を適用した24時間後のブタの耳の皮膚に浸透したアバファンジン又はヒドロコルチゾンの量を示すグラフである。
【図7】図7は、治療前の測定に対する、Batrafen(登録商標)、Loceryl(登録商標)、又は本発明に係る製剤を用いた治療の一時間後のTEWL(経表皮水損失)測定のパーセント偏差を示すグラフである。
【図8】図8は、真菌阻害領域の図を示す。
【図9】図9は、紅色白癬菌34を播種して、アバファンジンを含む4種の製剤で処理したウシ蹄角膜で処理したサブロープレートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明の好ましい製剤は、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症(実施例5及び10を参照のこと)の治療に適切な、水系であり親水性の非刺激性ゲル製剤である。前記製剤は、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル(好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG))及びポリエチレングリコール又はポロキサマー(好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG))を接着剤及び皮膜形成剤として含み、前記製剤が医薬活性剤をゆっくりと放出可能にする。
【0084】
ポリエチレングリコール及びポロキサマー、特にPEGは、既知の浸透促進剤であり、医薬活性剤の持続放出について知られている。ポリエチレングリコールエーテル、特にMEPGは、可溶化剤及び皮膜形成剤である。理論に結びつけることを望まないが、それらは共に接着剤及び皮膜形成剤として働き、本発明の製剤に医薬活性剤を含む通気性皮膜を形成させると解される。爪又は皮膚に天然に存在する水が、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル貯蔵庫から医薬活性剤を溶解し、医薬活性剤をゆっくりと放出させる。ポリエチレングリコールエーテルの存在は、関連する全ての物質の高度の相互作用を引き起こすと解されており、例えば、エーテル基は有機物である爪又は皮膚物質に対する製剤のより強力な接着を引き起こすと解される。エーテル基は、製剤において脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤の高度の可溶性が認められた要因であるとも解される。
【0085】
既知の水系製剤は、膨潤ゲル形成剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース)及び/又は水溶性アクリル酸コポリマーを使用する。これらのゲル形成剤は、そうしなければ製剤の濃度が高すぎるため、水中で1.5%までの濃度でのみ使用されてよい。しかしながら、その様な少量のゲル形成剤は、医薬活性剤の効果的な貯蔵を提供するには十分でない。
【0086】
本発明に係る親水性ゲル製剤は、一方で、医薬活性剤の貯蔵庫として働く。爪又は皮膚に天然に存在する水が、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル貯蔵庫から医薬活性剤を溶解し、医薬活性剤をゆっくりと放出させ、遅延型、延長型、持続型、又は制御型放出などの改良した放出を提供する。
【0087】
本発明の製剤に使用するために適切な医薬活性剤は、脂溶性及び/又は好ケラチン性物質、例えば、爪甲真菌症、皮膚真菌症、及び他の真菌症、例えば、口腔、膣、及び直腸粘膜の感染症の治療のために爪、皮膚、及び粘膜に適用可能な好カビ剤を含む。適切な抗カビ剤は、アゾール(例えば、イミダゾール及びトリアゾール)、イミダゾール(例えば、ビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、セルタコナゾール、及びスルコナゾール)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、及びボリコナゾール)、チアゾール(例えば、2−アミノ−チアゾール、例えば、アバファンジン)、チアジアゾール、グアニジン(例えば、アリールグアニジン、例えば、アバファンジン)、ピリミジン(例えば、ピリミジンイミン、例えば、アバファンジン)、イミン(例えば、ピリミジンイミン、例えば、アバファンジン)、モルホリン(例えば、アモロルフィン)、2−ピリドン(例えば、シクロピロックス)、2−ピリミドン(例えば、フルシトシン)、アリルアミン(例えば、テルビナフィン及びナフチフィン)、ベンジルアミン(例えば、ブテナフィン)、ポリエン(例えば、アンホテリシンB、ナイスタチン、及びピマリシン(ナタマイシンとも称される))、エチノカンジン(例えば、カスポファンジン、ミカファンジン、及びアニデュラファンジン)、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、及びチオカルバメートなどを含むが、それらに限らない。
【0088】
本発明の好ましい実施態様では、前記製剤は、アバファンジン、シクロピロックスオラミン、テルビナフィン塩酸、又はアモロルフィンを含み、より好ましくはアバファンジンを含む。アバファンジンを含む製剤は、好ましくは、製剤のpHを調節するための酸も含み、製剤中のアバファンジンを活性分子であるグアニジニウムイオンへとプロトン化する。
【0089】
脂溶性且つ/又は好ケラチン性の医薬活性剤、例えば、アバファンジン、シクロピロックスオラミン、及びテルビナフィン塩酸は、驚くべきことに、本発明の製剤中で安定且つ可溶性である。例えば、アバファンジンは、脂溶性であり、多くの賦形剤において可溶性に乏しい(実施例1参照のこと)。したがって、許容可能な浸透率に十分な量の医薬製剤中のアバファンジンなどの医薬活性剤を可溶化することは困難である(実施例2、3、4、6、及び7参照のこと)。本発明の製剤のPEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物は、脂溶性且つ/又は好ケラチン性医薬活性剤、例えば、アバファンジンが適当に可溶化されることを可能にし、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物が、脂溶性且つ/又は好ケラチン性医薬活性剤が製剤から結晶化することを妨げると解される。例えば、30%までのアバファンジンの濃度を本発明の製剤において達成し得る(実施例8参照のこと)。
【0090】
医薬活性剤、例えば、アバファンジンは、驚くべきことに、従来のラッカー製剤及びポリエチレングリコールエーテルを含まない親水性爪用ゲルと比較して、本発明の製剤から爪に若しくは爪を超えて又は皮膚に浸透する非常に高い割合も示した。
【0091】
ヒトの爪は、親水性の膜のように振る舞い、高度な水の経爪分散(1.8から3.1mg/cm2)(K.A. Walters et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1985, vol. 37, pages 771-775; D. Mertin et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1997, vol. 49, pages 30-34; Y. Kobayashi et al., European Journal of Pharmaceutical Sciences, 2004, vol. 21, pages 471-477)を有する。水に対する爪の浸透性は、角質層の約1000倍以上である(D. Spruit, Journal of Investigative Dermatology, 1971, vol. 56, pages 359-361 ; K.A. Walters et al., Journal of Investigative Dermatology, 1981, vol. 36, pages 101-103)。
【0092】
健康な爪に関しては、フリーな爪の水の高い経爪分散が特に重要である。本発明に係る製剤は、親水性の水系ゲルであり、製剤を爪に適用した後に、水が爪に又は爪から移動することを可能にする。これは、水の経爪分散を顕著に低減する従来のラッカーとは対照的である(de Berker & Baran, Int. J. Cosmetic Science, 2007, vol. 29, pages 241-275; Spruit, Am. Cosmet. Perfum., 1972, vol. 87, pages 57-58)。これは、下記の実施例9でも確認した。
【0093】
現在は、水が爪に自由に浸透し、本発明の製剤へと浸透し得るため、前記製剤に含まれる医薬活性剤は、ゲル製剤から爪へと経時的溶解すると解されている。皮膜形成剤として水に不溶性のポリマーを使用する従来のラッカーは、爪を覆い、爪の水の自由な浸透を阻害し、かくして、疎水性ラッカー皮膜からの医薬活性剤の溶解が、本発明の親水性ゲル製剤と比較して顕著に少ない。
【0094】
従来の抗カビネイルラッカー、例えば、Aventis社製のPenlac(登録商標)(Batrafen(登録商標)とも称される)(シクロピロックス)及びGalderma社製のLoceryl(登録商標)(アモロルフィン)は、溶媒としてアルコールを使用し、水に不溶性のポリマーを使用している。したがって、その様な従来のラッカーから形成されるラッカー皮膜は水に不溶性であり、爪に天然に存在する水は、水に不溶性のポリマーマトリックスから抗カビ剤に溶解し得ない。これによって、従来のラッカーから爪への抗カビ剤の浸透速度が遅れる。本発明の製剤は、一方で、親水性であり、医薬活性剤が親水性の製剤から爪の水へと容易に移動する。
【0095】
さらに、従来のネイルラッカーは皮膚を刺激及び損傷するため、皮膚には使用できない。一方で、本発明の製剤は、医薬活性剤が爪の周りの皮膚から爪床及び爪マトリックスへと浸透することを可能にする。
【0096】
本発明の製剤は、爪甲及び爪の周囲を介して、爪甲(爪角質層)及び爪床(爪甲が成長するとその上にスライドする、爪の下の表皮の改質領域)へと抗真菌又は抗カビ剤を送達し得る。望ましくは、抗真菌又は抗カビ剤は、爪マトリックス、爪上皮、下爪皮(爪のフリーな末端の下の厚い表皮)に同時に送達される。
【0097】
本発明の製剤の親水性の性質は、ヒトの皮膚、特に爪の親水性の膜の状態及び特徴に類似している。ポリエチレングリコール及びポロキサマーは、爪の水和レベルを向上させる閉塞効果を有する。さらに、従来のネイルラッカーとは異なり、本発明の製剤のPEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物は皮膚適合性であり、通気性である。好ましくは、前記製剤は、約5.5のpHを有し、ヒトの皮膚の状態に類似している。患者の爪に適用される際は、本発明の製剤は、2つの経路で、すなわち、爪自体及び爪の周囲の皮膚を介して、爪マトリックスを含む患者の爪及び爪床に医薬活性剤が浸透することを可能にすると解される。したがって、本発明の製剤の他の利点は、親水性の爪への又は爪を経る医薬活性剤の2つの輸送経路:経皮及び経爪である。爪甲真菌症は、爪にだけでなく、爪の周囲の領域への、本発明の製剤の適用によって治療されるであろう。
【0098】
本発明の製剤の他の利点は、他の親水性ゲル(例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はPEGに基づくもの)と比較して、PEG又はポロキサマー/PEG−エーテル混合物が、従来のラッカー(例えば、ポリビニルアセテート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマー、又はメチルビニルエーテルマレイン酸モノアルキルエステルコポリマー)と同等又はそれよりも優れた驚くべきほど良好な乾燥時間を示したことである。
【0099】
さらに、従来のネイルラッカーとは異なり、本発明の製剤は洗い落とすことが可能である。これによって、やすり又は溶媒系製剤を使用することによって時間をかけて従来のネイルラッカーを除去する必要がなくなり、より良好な患者のコンプライアンスが得られる。標準的なネイルラッカーは、アルコールワイプ及び爪やすりを使用して少なくとも一週間に一回は除去する必要がある。特に、年配の患者の場合は、この治療計画を採用することは困難である。さらに、爪やすりを使用することは、爪の周囲の皮膚の激しい損傷を引き起こし、真菌の全身への取り込みを生じさせ得る。前記製剤は洗浄によって容易に除去し得るため、本発明の製剤は患者の治療計画を用意にするであろう。したがって、本発明の製剤は、患者のコンプライアンスを増大する。
【実施例】
【0100】
(実施例1)
アバファンジン溶解性
アバファンジンの溶解性を試験するために、アバファンジンを多数の賦形剤に溶解した。溶解性試験の結果を表1にまとめる。
【0101】
【表1】
【0102】
アバファンジンは、殆どの賦形剤に不溶であり、水、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルにすら不溶である。しかしながら、驚くべきことに、アバファンジンは、水、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及びギ酸などの酸の混合物に可溶性であることを発見した。
【0103】
(実施例2)
ウマ蹄角膜への3種のアバファンジン製剤の近位流束及び親和性
爪に浸透するアバファンジンの能力を試験するために、表2に記載の成分を含む3種のアバファンジン製剤を調製した。製剤1及び2は親水性ゲルであり、製剤3はラッカーであった。製剤2は本発明に係るものであり、製剤1及び3は比較例としての製剤である。
【0104】
【表2】
【0105】
アバファンジン浸透量を試験するために、前記製剤を24時間に亘って、約600から700μmの厚みのウマ蹄角膜に適用した。ウマ蹄角膜を図1に示し、結果を表3にまとめる。
【0106】
【表3】
【0107】
本発明に係る製剤(製剤2)を適用する際は、アバファンジンが、比較例の製剤(製剤1及び3)を適用する際より良好に、すなわち、より多くの全体量(4641.11μg/g及び5284.49μg/gと比較して9341.57μg/g)且つより長く(18−30mmの浸透距離における高い割合)ウマ蹄角膜に浸透した。
【0108】
(実施例3)
ウマ蹄角膜へのアバファンジン製剤のex vivo浸透試験
ヒトin vivo条件と類似させるために、ウマ蹄角膜に対するex vivo浸透試験を実施した。動物の蹄はヒトの爪と本質的に同一の物質でできている。ヒトの爪を形成するために、ウマの蹄を、約2cm2の面積且つ600から700μmの厚みを有する角膜に切り取った。ヒトの指の爪は約500μmの厚みがあり、ヒトの足の爪は約800μmの厚みがある。
【0109】
実施例2の製剤1、2、及び3の各々の1mlをウマ蹄角膜に適用した。ウマ蹄角膜をFranz拡散セル(1.76cm2の面積)において、セルを調整血液類似緩衝液(リン酸緩衝液)で満たした。前記緩衝液を300rpmで攪拌した。24時間後、ウマ蹄角膜をFranz拡散セルから除去して、製剤の残留物を除去した。1.76cm2の効果的な浸透領域を小片に切り取って、アバファンジンを80%アセトニトリル、19.6%水、及び0.4%過塩素酸で抽出した。試料を60℃の超音波浴を使用して30分間に亘って抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。
【0110】
結果を図2に示す。本発明に係る製剤(製剤2)を適用した際は、比較例の製剤(製剤1及び3)を適用した際よりも多くのアバファンジンがウマ蹄角膜に浸透した。
【0111】
(実施例4)
角質層及び表皮/真皮へのアバファンジンの浸透
アバファンジンの皮膚への浸透能力を試験するために、実施例2のアバファンジン製剤2を用いた振盪試験を実施した。剥いでいないブタ耳皮膚(2mmの厚み)を用いた浸透試験を、Franz拡散セル(緩衝液条件:サーモジャケット36℃、300rpm、BPS緩衝液)を使用して実施した。実施例2の製剤2の1mlを皮膚に適用した。24時間のインキュベーション後に、角質層を除去し、80%アセトニトリル、19.6%水、及び0.4%過塩素酸の混合物を1ml用いて60℃で1.5時間に亘って、アバファンジンを角質層及び表皮/真皮から抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。アバファンジンの殺真菌濃度(16−30μg/ml)を、角質層及び表皮/真皮の双方で達成した(Franz拡散セル、n=3)。表皮/真皮のアバファンジン濃度は32.19±1.19μg/gであり、角質層では4617.50±731.86μg/gであった。
【0112】
(実施例5)
爪甲真菌症の治療のためのアバファンジン
表4に記載の成分を含む本発明に係る親水性ゲル製剤を調製した。前記製剤は、実施例2の製剤2と同一であった。
【0113】
【表4】
【0114】
前記ゲル製剤は、アバファンジン及びギ酸を水に溶解することによって調製した。次いで、残りの成分(すなわち、2−プロパノール、PEG20000、PEG8000、MEPG2000、イソプロピルミリステート、トランスクトール、及びプロピレングリコール)をこの溶液に添加して、この溶液を、ゲルが形成するまで攪拌した。
【0115】
爪甲真菌症に罹患している男性のボランティア(32歳)の左の足の爪に、ゲル製剤を一日一回適用した。結果を図3に示す。図3では、製剤を一日一回適用した一ヶ月後(a)、二ヵ月後(b)、及び3ヵ月後(c)の足の爪を示す。足の爪の状態の顕著な改善が認められる。
【0116】
爪甲真菌症に罹患している、二人目の男性のボランティア(55歳)を100mgのイトラコナゾール(Itracol(登録商標))を、一週間に亘って一日二回経口で治療した後、3週間の中断した。イトラコナゾール投与の一ヶ月後に、前記ボランティアは足の爪に前記ゲル製剤を一日一回更に適用された。結果を図4に示す。図4では、治療前(a)、イトラコナゾール投与の一ヶ月後(b)、イトラコナゾール投与の2ヵ月及びアバファンジン製剤投与の一ヶ月後(c)、イトラコナゾール投与の3ヶ月及びアバファンジン製剤投与の2ヶ月後(d)、及びイトラコナゾール投与の4ヶ月及びアバファンジン製剤投与の3ヶ月後(e)の足の爪を示す。足の爪の状態における顕著な改善が認められる。
【0117】
(実施例6)
ウマ蹄角膜へのアバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミンを含む5種の製剤のex vivo浸透試験
ヒトのin vivo条件に類似させるために、ウマ蹄角膜へのex vivo浸透試験を実施した。動物の蹄はヒトの爪と本質的に同一の物質でできている。ヒトの爪を形成するために、ウマの蹄を、約2cm2の面積且つ600から700μmの厚みを有する角膜に切り取った。ヒトの指の爪は約500μmの厚みがあり、ヒトの足の爪は約800μmの厚みがある。
【0118】
表5に記載の成分を含む製剤1から3及び5を調製し、製剤4を購入した。製剤1、2、及び5は親水性ゲルであり、製剤3及び4はラッカーであった。製剤2及び5は本発明に係るものであり、製剤1、3、及び4は比較例の製剤である。
【0119】
【表5】
【0120】
製剤1から5の250μlをウマ蹄角膜に適用した。ウマ蹄角膜をFranz拡散セル(1.76cm2の面積)に置いて、セルを調整血液類似緩衝液(リン酸緩衝液)で満たした。前記緩衝液を300rpmで攪拌した。24時間後、ウマ蹄角膜をFranz拡散セルから除去して、製剤の残留物を除去した。1.76cm2の効果的な浸透領域を小片に切り取って、API(アバファンジン、シクロピロックス、又はシクロピロックスオラミン)を適当な溶媒を用いて抽出した。試料を60℃の超音波浴を使用して30分間に亘って抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。
【0121】
【表6】
【0122】
結果を表6及び図5に示す。本発明に係る製剤(製剤2及び5)を適用した際は、比較例の製剤(製剤1、3、及び4)を適用した際よりも多くのアバファンジン及びオラミンがウマ蹄角膜に浸透した。
【0123】
本発明に係る製剤(製剤5)におけるシクロピロックスを用いたin vitro試験は、Batrafen(登録商標)(製剤4)で使用した市販のシクロピロックスラッカーと比較して、爪により高度に浸透する割合を示す。
【0124】
(実施例7)
アバファンジン又はヒドロコルチゾンを含む4種の製剤のブタ耳皮膚へのex vivo浸透試験
ヒトのin vivo条件に類似させるために、ブタ耳皮膚に対するex vivo浸透試験を実施した。ブタ耳はヒトの皮膚と本質的に同一の物質からできている。ブタ耳皮膚を軟骨組織から注意深く取り出し、ヒトの皮膚と一致する約2cm2の面積及び約2000μmの厚みを有する断片に切り取った。
【0125】
表7に記載の成分を含む製剤a、b、及びdを調製し、製剤cを購入した。製剤a及びbは本発明に係る親水性ゲルであり、製剤b及びcは比較例のクリーム製剤であった。
【0126】
【表7】
【0127】
製剤aからdの250μlをブタ耳皮膚の断片に適用した。ブタ耳皮膚断片をFranz拡散セル(1.76cm2の面積)において、セルを調整血液類似緩衝液(リン酸緩衝液)で満たした。前記緩衝液を300rpmで攪拌した。24時間後、皮膚断片をFranz拡散セルから除去して、製剤の残留物を除去した。1.76cm2の効果的な浸透領域を小片に切り取って、API(アバファンジン又はヒドロコルチゾン)を適当な溶媒を用いて抽出した。試料を60℃の超音波浴を使用して30分間に亘って抽出した。HPLCを用いて上清を分析した。
【0128】
【表8】
【0129】
結果を表8及び図6に示す。本発明に係る製剤(製剤a及びd)を適用した際は、比較例の製剤(製剤b及びc)を適用した際よりも多くのアバファンジン及びヒドロコルチゾンがブタ耳皮膚に浸透した。
【0130】
本発明に係るヒドロコルチゾン製剤(製剤d)は、市販の製剤であるHydrodexan Creme(登録商標)(製剤c)と比較すると、コルチコステロイドヒドロコルチゾンの浸透率が向上している。
【0131】
(実施例8)
アバファンジン、ヒドロコルチゾン、シクロピロックスオラミンを用いた溶解性及び安定性試験
アバファンジン、ヒドロコルチゾン、及びシクロピロックスオラミンの溶解性及び安定性を、標準的なエタノールゲル(Ethanolhaltiges Erythromycin Gel,NRF 11.84、ABDA,Govi Verlag Pharmazeutischer Verlag GmbH、Eschborn)、純水、及び純粋なエタノール中で、本発明に係る製剤において試験した。異なる製剤において結晶化しない3つのAPIの最大の溶解度を表9にまとめる。
【0132】
【表9】
【0133】
標準的なエタノールゲル、純水、純粋なエタノールと比較して、本発明に係る製剤は結晶化を妨げ、3種のAPI(アバファンジン、ヒドロコルチゾン、及びシクロピロックスオラミン)の溶解性及び安定性を増大させることが認められた。
【0134】
(実施例9)
TEWL(経表皮水損失)試験
標準的なネイルラッカー(Batrafen(登録商標)及びLoceryl(登録商標))並びに本発明に係る製剤の適用のTEWL(経表皮水損失)に対する影響を試験した。
【0135】
3人のボランティアの親指の爪を3種の製剤、すなわち、本発明に係る製剤(実施例2の製剤2)並びに市販のラッカー製剤であるBatrafen(登録商標)及びLoceryl(登録商標)で処置した。3人のボランティアの処置前及び一時間後に親指の爪のTEWLを測定した。結果を図7に示す。図7では、処置前の測定に対する、処置の一時間後の測定のパーセント偏差を示す。
【0136】
Batrafen(登録商標)及びLoceryl(登録商標)の双方のラッカーは、水の損失及び爪の上の湿度の顕著な低減を生じた。本発明の製剤を用いた場合にのみ、フリーな爪の水が爪甲を自由に超えて浸透し、爪甲を潤し、親水性ゲル製剤から爪に医薬活性剤を溶解することが依然として可能である。
【0137】
(実施例10)
真菌阻害アッセイ
本試験の目的は、本発明によって製剤化されたアバファンジンの、ウシ蹄角膜(ヒトの爪のモデル)に浸透し、紅色白癬菌(trichophyton rubrum)34の増殖を阻害する能力を測定することであった。紅色白癬菌は、足の爪の爪甲真菌症の最も一般的な病原である(W.K. Foster, M.A. Ghannoum and B. E. Elewski, J. Am. Acad. Dermatol., 2004, vol. 50, pages 748-752)。本発明に係る1つの製剤(A)を、比較の目的のための本発明に係るものではない3種の代替的なアバファンジン製剤(B〜D)とともに試験した。
【0138】
ウシ蹄角膜を、2時間に亘ってペトリ皿において滅菌蒸留水で水和した。その後、ウシ蹄角膜をペトリ皿から取り出して、濾紙上で乾燥させた。
【0139】
紅色白癬菌34の播種材料を調製するために、1から2mlの滅菌生理食塩水を、ペトリ皿中の寒天ゲルの対応するコロニーの表面に添加し、表面を綿棒で攪拌した。次いで、懸濁物をUniversal管に移し、その濁度を(滅菌生理食塩水又は懸濁物を使用して)McFarland Standard2まで調整した。新しいサブロー寒天プレートの表面に播種材料を塗った。
【0140】
薬物製剤AからDをウシ蹄角膜に適用した。空の未処理のウシ蹄角膜を対照として使用した。処置したものを乾燥させて、ウシ蹄角膜を、処理表面を上にして、播種したサブロープレートの中央に置き、プレートを27℃で5日間に亘ってインキュベートした。各試験条件を三回繰り返して実施した。
【0141】
5日のインキュベートの後に、薬剤がウシ蹄角膜に浸透し、その後に寒天ゲルに浸透して、阻害領域を観察した(図8参照のこと)。寒天プレートの写真を撮って(図9参照のこと)、阻害領域の直径は下式により算出した。
【0142】
【数1】
【0143】
結果は表10に示す。表10は、製剤AからDで処理したウシ蹄角膜のインキュベート後の紅色白癬菌34の阻害領域の直径を記載する。各試験条件を3回繰り返した結果を提供する。
【0144】
【表10】
【0145】
本発明に係るアバファンジン製剤(A)の適用によって、プレートの完全なクリアランスを達成した。これは、本発明に係るものではない3種の代替的なアバファンジン製剤(B〜D)の何れの適用によっても達成されなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー;及び
(d)ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル
を含む製剤。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が200〜100000の範囲内である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールがPEG8000〜20000である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ポロキサマーの平均分子量が1000〜16000の範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
5〜50%の量で前記ポリエチレングリコール又はポロキサマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
ポリエチレングリコールを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールエーテルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがアルキルエーテルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがメチル又はエチルエーテルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがモノ−エーテルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルの平均分子量が120〜10000の範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)の平均分子量が350〜10000の範囲内である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルはMPEG350〜5000である、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
2〜15%の量で前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
10:1から1:1の比率で前記ポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー及びポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG);及び
(d)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
(a)0.1〜30%医薬活性剤;
(b)5〜50%水;
(c)5〜50%ポリエチレングリコール;
(d)2〜15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;
(e)0〜70%アルコール;
(f)0〜5%酸又は塩基;
(g)0〜10%浸透促進剤;及び
(h)0〜6%可塑剤
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
(a)0.1〜30%医薬活性剤;
(b)5〜50%水;
(c)5〜50%ポリエチレングリコール;
(d)2〜15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;
(e)0〜70%アルコール;
(f)0〜5%酸又は塩基;
(h)0〜1%イソプロピルミリステート;
(i)0〜4%トランスクトール;及び
(j)0〜5%プロピレングリコール
を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記医薬活性剤が抗真菌又は抗カビ剤である、請求項1から19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
前記医薬活性剤が脂溶性且つ/又は好ケラチン性である、請求項1から20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
前記医薬活性剤がアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、グアニジン、ピリミジン、イミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、又はチオカルバメートである、請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
前記イミダゾールがビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
前記トリアゾールがフルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項25】
前記チアゾールが2−アミノチアゾールである、請求項22に記載の製剤。
【請求項26】
前記2−アミノチアゾールがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
前記グアニジンがアリールグアニジンである、請求項22に記載の製剤。
【請求項28】
前記アリールグアニジンがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
前記ピリミジンが2−ピリミジンイミンである、請求項22に記載の製剤。
【請求項30】
前記2−ピリミジンイミンがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記イミンが2−ピリミジンイミンである、請求項22に記載の製剤。
【請求項32】
前記2−ピリミジンイミンがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
前記モルホリンがアモロルフィン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項34】
前記2−ピリドンがシクロピロックス又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項35】
前記2−ピリミドンがフルシトシン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項36】
前記アリルアミンがテルビナフィン、ナフチフィン、又はそれらの製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項37】
前記ベンジルアミンがブテナフィン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項38】
前記ポリエンが、アンホテリシンB、ナイスタチン、ピマリシン(ナタマイシンとも称される)、又はそれらの製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項39】
エチノカンジンがカスポファンジン、ミカファンジン、アニデュラファンジン、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項40】
前記医薬活性剤がアバファンジン、シクロピロックス、オラミン、テルビナフィン塩酸塩、又はアモロルフィンである、請求項1から22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
前記医薬活性剤がアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項1から22、25から32、又は40のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項42】
前記医薬活性剤が製剤中で実質的に溶解している、請求項1から41のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項43】
アルコールを更に含む、請求項1から42のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項44】
前記アルコールが2−プロパノール又はエタノールである、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
酸又は塩基を更に含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項46】
前記酸がギ酸である、請求項45に記載の製剤。
【請求項47】
浸透促進剤及び/又は可塑剤を更に含む、請求項1から46のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項48】
イソプロピルミリステートを更に含む、請求項1から47のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項49】
浸透促進剤を更に含む、請求項1から48のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項50】
前記浸透促進剤がトランスクトールである、請求項49に記載の製剤。
【請求項51】
プロピレングリコールを更に含む、請求項1から50のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項52】
少なくとも1100mPasの粘度を有する、請求項1から51のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項53】
親水性水系ゲルである、請求項1から52のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項54】
局所適用のための、請求項1から53のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項55】
爪又は皮膚の病気、疾患、又は病理状態の治療のための、請求項1から54のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項56】
爪甲真菌症、皮膚真菌症、口腔、膣、若しくは肛門の真菌症、皮膚病、局所的な細菌感染、又は局所的なウイルス感染の治療のための、請求項1から55のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項57】
創傷治癒の補助のための、請求項1から56のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項58】
請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を対象の爪に適用する工程を含む、対象に医薬活性剤を投与する方法。
【請求項59】
前記医薬活性剤が、爪及び爪の周囲の皮膚に浸透することによって、対象の爪及び爪マトリックスに浸透する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
爪甲真菌症に罹患している対象の爪に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、爪甲真菌症の治療方法。
【請求項61】
皮膚真菌症に罹患している対象の皮膚に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、皮膚真菌症の治療方法。
【請求項62】
口腔、膣、又は肛門の真菌症に罹患している対象に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、経口、膣、又は肛門の真菌症の治療方法。
【請求項63】
皮膚病に罹患している対象の皮膚に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、皮膚病の治療方法。
【請求項64】
局所的な細菌感染又は局所的なウイルス感染に罹患している対象に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、局所的な細菌感染又は局所的なウイルス感染の治療方法。
【請求項65】
請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を対象の創傷に適用する工程を含む、創傷治癒を補助する方法。
【請求項66】
前記対象がヒトである、請求項58から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
(a)医薬活性剤及び存在する場合には酸又は塩基を水に溶解する工程;
(b)ポリエチレングリコール又はポロキサマー、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル、及び存在する場合にはアルコール、浸透促進剤、及び可塑剤を溶液に添加する工程;並びに
(c)親水性ゲルが得られるまで混合物を攪拌する工程
を含む、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤の調製方法。
【請求項68】
前記医薬活性剤がプロトン化されてよく、酸が工程(a)で使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬活性剤がアバファンジンである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記医薬活性剤が脱プロトン化されてよく、塩基が工程(a)で使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項1】
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー;及び
(d)ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル
を含む製剤。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が200〜100000の範囲内である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールがPEG8000〜20000である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ポロキサマーの平均分子量が1000〜16000の範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
5〜50%の量で前記ポリエチレングリコール又はポロキサマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
ポリエチレングリコールを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールエーテルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがアルキルエーテルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがメチル又はエチルエーテルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがモノ−エーテルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルの平均分子量が120〜10000の範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルがポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)の平均分子量が350〜10000の範囲内である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルはMPEG350〜5000である、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
2〜15%の量で前記ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
10:1から1:1の比率で前記ポリエチレングリコール(PEG)又はポロキサマー及びポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテルを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
(a)医薬活性剤;
(b)水;
(c)ポリエチレングリコール(PEG);及び
(d)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
(a)0.1〜30%医薬活性剤;
(b)5〜50%水;
(c)5〜50%ポリエチレングリコール;
(d)2〜15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;
(e)0〜70%アルコール;
(f)0〜5%酸又は塩基;
(g)0〜10%浸透促進剤;及び
(h)0〜6%可塑剤
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
(a)0.1〜30%医薬活性剤;
(b)5〜50%水;
(c)5〜50%ポリエチレングリコール;
(d)2〜15%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル;
(e)0〜70%アルコール;
(f)0〜5%酸又は塩基;
(h)0〜1%イソプロピルミリステート;
(i)0〜4%トランスクトール;及び
(j)0〜5%プロピレングリコール
を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記医薬活性剤が抗真菌又は抗カビ剤である、請求項1から19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
前記医薬活性剤が脂溶性且つ/又は好ケラチン性である、請求項1から20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
前記医薬活性剤がアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、グアニジン、ピリミジン、イミン、モルホリン、2−ピリドン、2−ピリミドン、アリルアミン、ベンジルアミン、ポリエン、エチノカンジン、ベンゾフラン、ベンゾキサボロール、ピリジン、又はチオカルバメートである、請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
前記イミダゾールがビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
前記トリアゾールがフルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項25】
前記チアゾールが2−アミノチアゾールである、請求項22に記載の製剤。
【請求項26】
前記2−アミノチアゾールがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
前記グアニジンがアリールグアニジンである、請求項22に記載の製剤。
【請求項28】
前記アリールグアニジンがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
前記ピリミジンが2−ピリミジンイミンである、請求項22に記載の製剤。
【請求項30】
前記2−ピリミジンイミンがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記イミンが2−ピリミジンイミンである、請求項22に記載の製剤。
【請求項32】
前記2−ピリミジンイミンがアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
前記モルホリンがアモロルフィン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項34】
前記2−ピリドンがシクロピロックス又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項35】
前記2−ピリミドンがフルシトシン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項36】
前記アリルアミンがテルビナフィン、ナフチフィン、又はそれらの製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項37】
前記ベンジルアミンがブテナフィン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項38】
前記ポリエンが、アンホテリシンB、ナイスタチン、ピマリシン(ナタマイシンとも称される)、又はそれらの製薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項39】
エチノカンジンがカスポファンジン、ミカファンジン、アニデュラファンジン、又は製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項22に記載の製剤。
【請求項40】
前記医薬活性剤がアバファンジン、シクロピロックス、オラミン、テルビナフィン塩酸塩、又はアモロルフィンである、請求項1から22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
前記医薬活性剤がアバファンジン又はその製薬学的に許容される塩である、請求項1から22、25から32、又は40のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項42】
前記医薬活性剤が製剤中で実質的に溶解している、請求項1から41のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項43】
アルコールを更に含む、請求項1から42のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項44】
前記アルコールが2−プロパノール又はエタノールである、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
酸又は塩基を更に含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項46】
前記酸がギ酸である、請求項45に記載の製剤。
【請求項47】
浸透促進剤及び/又は可塑剤を更に含む、請求項1から46のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項48】
イソプロピルミリステートを更に含む、請求項1から47のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項49】
浸透促進剤を更に含む、請求項1から48のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項50】
前記浸透促進剤がトランスクトールである、請求項49に記載の製剤。
【請求項51】
プロピレングリコールを更に含む、請求項1から50のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項52】
少なくとも1100mPasの粘度を有する、請求項1から51のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項53】
親水性水系ゲルである、請求項1から52のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項54】
局所適用のための、請求項1から53のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項55】
爪又は皮膚の病気、疾患、又は病理状態の治療のための、請求項1から54のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項56】
爪甲真菌症、皮膚真菌症、口腔、膣、若しくは肛門の真菌症、皮膚病、局所的な細菌感染、又は局所的なウイルス感染の治療のための、請求項1から55のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項57】
創傷治癒の補助のための、請求項1から56のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項58】
請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を対象の爪に適用する工程を含む、対象に医薬活性剤を投与する方法。
【請求項59】
前記医薬活性剤が、爪及び爪の周囲の皮膚に浸透することによって、対象の爪及び爪マトリックスに浸透する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
爪甲真菌症に罹患している対象の爪に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、爪甲真菌症の治療方法。
【請求項61】
皮膚真菌症に罹患している対象の皮膚に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、皮膚真菌症の治療方法。
【請求項62】
口腔、膣、又は肛門の真菌症に罹患している対象に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、経口、膣、又は肛門の真菌症の治療方法。
【請求項63】
皮膚病に罹患している対象の皮膚に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、皮膚病の治療方法。
【請求項64】
局所的な細菌感染又は局所的なウイルス感染に罹患している対象に、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を適用する工程を含む、局所的な細菌感染又は局所的なウイルス感染の治療方法。
【請求項65】
請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤を対象の創傷に適用する工程を含む、創傷治癒を補助する方法。
【請求項66】
前記対象がヒトである、請求項58から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
(a)医薬活性剤及び存在する場合には酸又は塩基を水に溶解する工程;
(b)ポリエチレングリコール又はポロキサマー、ポリエチレングリコールモノ−又はジ−エーテル、及び存在する場合にはアルコール、浸透促進剤、及び可塑剤を溶液に添加する工程;並びに
(c)親水性ゲルが得られるまで混合物を攪拌する工程
を含む、請求項1から57のいずれか一項に記載の製剤の調製方法。
【請求項68】
前記医薬活性剤がプロトン化されてよく、酸が工程(a)で使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬活性剤がアバファンジンである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記医薬活性剤が脱プロトン化されてよく、塩基が工程(a)で使用される、請求項67に記載の方法。
【図1】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−500779(P2011−500779A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530562(P2010−530562)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050978
【国際公開番号】WO2009/053741
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(304051609)ヨーク・ファーマ・ピーエルシー (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050978
【国際公開番号】WO2009/053741
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(304051609)ヨーク・ファーマ・ピーエルシー (4)
【Fターム(参考)】
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