説明

新規複合粉体及びこれを配合した化粧料

【課題】粘土鉱物表面を水酸化アルミニウムで処理した化粧料用複合粉体を提供する。
【解決手段】粘土鉱物及び、この表面に固着する水酸化アルミニウムを含有する複合粉体であって、当該固着する水酸化アルミニウムが、蓋付きカップ形状を構成しカップ底面で当該粘土鉱物表面上に固着する多数の水酸化アルミニウム粒子(形状物)を含み、当該粘土鉱物表面上に固着する水酸化アルミニウム粒子が、当該粘土鉱物表面上に固着する全水酸化アルミニウムに対して、少なくとも30重量%存在する複合粉体を化粧料に使用すれば、色くすみが少なく透明感があり肌色を明るく仕上げる、優れた効果が得られる。当該複合粉体表面に、更に水酸化アルミニウム被覆層を設けたり、シリコーン表面処理を施すことにより上記効果を一段と高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘土鉱物の粒子表面が特定形状を有する水酸化アルミニウムにより固着された水酸化アルミニウム−粘土鉱物複合粒子を含む新規複合粉体、更に詳しくは、シワ、毛穴の開き、肌のきめの粗さを見え難くする肌の形態トラブル修正効果とシミ、ソバカス、にきび跡等を見え難くする肌色の色調トラブル修正効果の両方について優れた効果を同時に持つと共に、特に従来品に比較して滑らかな使用感で色くすみが少なく透明感があり肌色を明るく仕上げる効果を有する優れた複合粉体、及びこれを配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メークアップ化粧料としては、肌のシミ、ソバカス、にきび跡等の肌色の色調トラブルを隠すために隠蔽カの高い酸化チタンの高濃度配合タイプのものが多かった。このタイプのものには色調トラブル修正効果はあるものの、肌の形態トラブル修正効果については全く逆の効果を示す。一般的には、肌色を隠蔽することで肌色の色調トラブルと肌の形態トラブルを修正することが可能と思われ勝ちである。しかし、実際には、肌色の隠蔽カのみでは、肌の形態トラブル修正効果を見出すどころか逆に形態トラブルを目立たせる場合が圧倒的に多い。こうした事実から、形態トラブル修正効果を持たせるために上記隠蔽カ以外の視点から研究がなされて来ている。
【0003】
特開昭61−69708号公報には、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト等の体質顔料の表面にアクリル樹脂を被覆した化粧料の提案がなされているが、体質顔料の表面を被覆しているアクリル樹脂の感触が悪く5重量%以上配合した場合、肌に違和感(痛み)が生じ、実質効果を示す濃度配合は困難である。ドライパウダー処方で高濃度に配合した場合、形態トラブル修正効果は得られるものの、光の表面拡散散乱により、顔の輪郭がぼやけて、視覚的に顔が大きく見える欠点を有している。また、この種の複合粉体はシミが目立つ欠点を有している。更には、肌から分泌される皮脂や、水分により濡れて、完全に透明化し形態トラブル修正効果を消失してしまう欠点を持っている。
【0004】
特開平7−2619号公報には、使用感、成型性に優れ、かつ光沢の少ないセリサイトで代替できる化粧料に好適な雲母粉体の提案がなされている。この雲母粉体は、皮膚表面の光の反射パターンとは大きく異なり、皮膚感を全く感じさせないものであり、メークアップに要求される皮膚感のあるメーク仕上りが期待できないものである。更には、鏡面反射に近似した反射パターンを示し、不自然なつやが目立つと共にシワが目立つ欠点を有している。
【0005】
特開昭59−36160号公報にはタルク表面に金属水酸化物を被覆したタルクの提案がなされている。これはタルク粒子の表面の疎水性が改善され、分散性の良好な体質顔料であり、また使用する水溶性金属化合物の種類により、黒、赤、黄、青、橙等の所望の色彩に着色加工された分散性の良好な着色顔料特性を示すタルク顔料が開示されている。しかしながら、肌の形態トラブル修正効果や肌色の色調トラブル修正効果、更には滑らかな使用感で色くすみが少なく、透明感があり肌色を明るく仕上げる効果については全く開示されていない。また、実施例について肌の形態トラブル修正効果と肌色の色調トラブル修正効果について評価した結果、そのような本発明で目的とする効果は何ら認められなかった。
【0006】
特開昭61−56258号公報には、タルク粒子の全表面が金属水酸化物及び(又は)金属酸化物のみからなる組成物で均一かつ完全に被覆されてなる被覆タルク及び該被覆タルクの焼成物で、所望の色彩に着色加工された分散性に優れた顔料特性を有するタルク顔料が提案されている。しかしながら、肌の形態トラブル修正効果や肌色の色調トラブル修正効果、更には滑らかな使用感で色くすみが少なく透明感があり肌色を明るく仕上げる効果に関しては全く開示されていない。また、実施例について肌の形態トラブル修正効果と肌色の色調トラブル修正効果について評価した結果、前記同様に本発明で目的とするそれらの効果は何ら認められなかった。
【0007】
更に、特開平9−20609号公報には、粘土鉱物の表面を被覆した無機金属水酸化物の被覆構造が下記(A)、(B)、(C)又は(D)である被覆粉体を配合する化粧料が提案されている。
【0008】
(A)粘土鉱物の表面を被覆している無機金属水酸化物の被覆構造が超微粒子(平均粒子径50〜250Å)で形成された膜上にハニカム様の構造を形成している複合体。
(B)粘土鉱物の表面を被覆している無機金属水酸化物の被覆構造が超微粒子膜(平均粒子径50〜250Å)で形成されている複合体。
(C)粘土鉱物の表面を被覆している無機金属水酸化物の被覆構造が平均粒子径50〜250Åの超微粒子で形成された膜とその膜上にハニカム様構造が混在した構造を有する複合体。
(D)粘土鉱物の表面を被覆している平均粒子径が50〜250Åの超微粒子の無機金属水酸化物膜の被覆構造中に平均粒子径が0.08〜0.8μmの粒子が埋め込まれた構造を有する複合体。
【0009】
この被覆粉体の最外層がハニカム構造を有している場合、その構造に起因し肌の凹凸面とのからみ合いから付着性が良好であるが、このハニカム構造が逆に化粧料に使用したときに必要な要件である使用感を大幅に損なう欠点を有している。また、同様に最外層が超微粒子で被覆された複合体では、通常の超微粒子粉体の性質と同様に伸びが重く、伸延性に欠け、化粧料に配合した場合、特に5重量%以上の配合では肌に大幅に負担をかける欠点を持っているため、実質効果を示す濃度配合は困難である。
【0010】
近年、セリサイトの良質品は枯渇してきており、セリサイトに代替し得る素材の要求が強くなってきている。特に、そのためにマイカ表面を摩擦することにより、その表面を凹凸状にし、マイカの光沢を抑えた素材開発もなされているが、伸びが非常に重くなるのに加え、マイカの光沢度にバラツキが大きく品質の安定性に欠ける欠点がある。更には、経時変化で皮膚から分泌される皮脂や水分でマイカ表面が濡れたとき、マイカのグレイッシュブラウンの色味が強調され、期待されるメーク効果が得られない。また、肌から分泌される過剰な皮脂や水分が微細凹凸状の表面を覆ったとき、つやが強調され、シワが目立つ欠点をも有する。
【0011】
メークアップ化粧料には化粧効果上の質感の変化への対応から、種々の異った光沢が要求される。そのために、マイカ、セリサイト、タルク等表面の平滑性の高い粘土鉱物にシリカ粉末や炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の光沢を有しない白色体質顔料等や球状粒子を適宜に組合せ、その配合等を調整することにより化粧料全体の光沢度の調節がなされている。
【0012】
しかし、肌に化粧料を塗布した場合、表面が平滑な粘土鉱物により、その化粧膜がてかり易く、かえって、肌の形態トラブルが目立つ原因にもなっていた。この問題を解決するために平滑な表面を有する粘土鉱物の配合量を少な目に調整する必要があった。その結果、平滑な表面を有する粘土鉱物の持つ透明感、肌上での滑らかな伸び、付着力等に優れた特性を充分に発揮できなくなるという問題が生じていた。
【0013】
角質層の屈折率が1.55に対し、化粧料に用いられる代表的な粘土鉱物のマイカの屈折率は1.59、タルクの屈折率は1.53、化粧料全般に適用される油剤の屈折率は1.39〜1.51の値を示す。これらの値から理解されるように、通常の粉体を化粧料に用いた場合、屈折率が近似した非常に薄いメーク膜のため皮膚から分泌される皮脂により、粉体が吸油量又はそれ以上で濡れたとき、透明化現象を起こすと共に過剰な皮脂により皮脂膜の表面の反射及び皮脂中に分散している粘土鉱物の表面からの光反射により、てかり現象が強調されて、見る角度によっては、シワが目立ったり、場合によっては非常に疲れた表情に見えることから好ましくない。
【0014】
これらのてかりを防止するために吸油量を高める素材として、多孔質アクリルビーズ、酸化チタン内包多孔質アクリルビーズ、多孔質シリカ、アエロジル、炭酸マグネシウム等が使用されるが、これらを配合した化粧料には、特に化粧直後に、強く肌をかさつかせ、肌を乾燥させたり、肌に違和感を強く感じさせてしまう欠点がある。
【0015】
てかり防止効果素材としてフッ素処理粉体を配合した化粧料があるが、例えば通常の固型化粧料を製造するときのオイルコーティング法ではフッ素化合物の特性である撥油効果が消失してしまうばかりか、肌から分泌された水分や皮脂がそのメーク膜上に存在するようになり、経時変化で、てかり現象が出てくる。そのため素材を使いこなすには余りにも課題が多い。
【0016】
より美しいメーク膜を形成し、化粧効果を高める視点から、ファンデーションの下地料としてコントロールカラーが用いられている。それらの色調の主なものにはグリーン、イエロー、パープル、オレンジ等がある。それらの色調の狙いは、肌の赤味を消し(肌の赤味との補色関係の利用)、肌色をより自然(ナチュラル)に、色白に或は健康的に見せる効果等色調により大きく異なる。肌のシミ、ソバカスを見え難くするために、例えばシミの色調をした化粧料は、黒ずんだ化粧膜になり、望ましい化粧効果を得るのは難しい。肌のシミを見え難くするには、グリーンを使用すると効果がある。しかし、その場合実質的には、それらのコントロールカラーがファンデーションと混和する、減色混合効果によりファンデーションの色調の低彩度化が生じ、ファンデーション本来の色彩効果が大きく損われるという問題が生じる。更には、化粧ステップが複雑になるばかりか、それらを使用する量加減が難しく、化粧する者自らが希望する化粧効果を得るには非常に高度な美容テクニックが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のような情況下に、化粧料に使用したときに優れた透明感を有し、シワ、毛穴の開き、肌のきめの粗さを見え難くする肌の形態トラブル修正効果とシミ、ソバカス、にきび跡を見え難くする肌色の色調トラブル修正効果の双方の機能を同時に持ち合わせると共に滑らかな使用感で色くすみが少なく透明感があり肌色を明るく仕上げる効果に優れた粉体が望まれている。
【0018】
本発明の目的は、先に本発明者等により提案された前記特開平9−20609号公報に記載の発明を改良し、前記形態トラブル修正効果や色調トラブル修正効果を更に向上させながら、特に化粧料に使用した場合の使用感(滑らかさ)及び色くすみを改善する、即ち肌への滑らかさを改善し肌をより明るく見せる粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、前記課題解決に向けて鋭意研究を行った結果、粘土鉱物の表面に、特定形状を構成するように水酸化アルミニウム(粒子、複数粒子)を固着することにより得られる複合粒子を含む粉体が、化粧料に使用したときに、透明性が高く、かつ形態トラブル修正効果と肌色の色調トラブル修正効果の双方の機能を有すると共に滑らかな使用感で色くすみが少なく透明感があり肌色を明るく仕上げる効果に優れた複合粉体が得られること、更にその表面に水酸化アルミニウム被覆層、特に超微粒子による被覆層を設けたり、シリコーン表面処理を施すことにより目的とする上記効果が一段と高まることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0020】
本発明においては、粘土鉱物及びその表面に固着する水酸化アルミニウムを含有し、この水酸化アルミニウムが特定形状を構成して固着する水酸化アルミニウムを含む複合粒子粉体であって、好ましくは特定の粒子、例えば特定の大きさ、厚さ及び屈折率を有する粘土鉱物粒子と、その表面に特定の形状を構成して固着し好ましい屈折率(1.56)や、密度(2.77g/cm3)を有する水酸化アルミニウムとを少なくとも有し、化粧料に使用したときに従来にない優れた効果を呈する複合粒子を含む粉体(「複合粉体」とも称する。)を提供することができる。
【0021】
即ち、本発明は下記の通りである。
[1]
粘土鉱物(粘土鉱物粒子で構成される粉体等)及び、この表面に固着する水酸化アルミニウムを含有する複合粉体であって、当該固着する水酸化アルミニウムが、蓋付きカップ形状を構成しカップ底面で当該粘土鉱物表面上に固着する多数の水酸化アルミニウム粒子(水酸化アルミニウム粒子の構成物として)を含み、当該蓋付きカップ形状を構成しカップ底面で当該粘土鉱物表面に固着する水酸化アルミニウム粒子が、当該粘土鉱物表面上に固着する全水酸化アルミニウムに対して、少なくとも30重量%存在することに特徴を有する、化粧料に使用可能な複合粉体。
【0022】
本発明の目的、効果を阻害しない範囲では、更に他の成分(基材粉体成分、固着粒子成分等)を含有したり、他の表面処理を行ったり、被覆層を更に設けることもでき、これらも全てこの発明の中に含まれる。
【0023】
この複合粉体は化粧料に使用することができる他、塗料その他、各種顔料等に使用することができる。
【0024】
[2]
固着する水酸化アルミニウム粒子で構成される蓋付きカップ形状の蓋部表面が、カップ形状のカップ底面に対し略(おおよそ)平行面状にあるもの、又は略(おおよそ)マフィン状に頂部が外部に膨らんだ曲面形状にあるものを含む上記記載の複合粉体。
【0025】
カップ形状のカップ側面部はカップ水平方向の断面(横断面)が略円形状、略楕円形状を有していてもよく、また外部に突出する形で略多角形(四角形)状を有していてもよい。更に、多角形状の場合等このような形状において二つの面(断面形状の場合には二つの辺)で形成される角部が丸味を帯びた曲面形状を有している方がより好ましく、本発明においてはこのように角部が曲面形状であるものも、横断面多角形状に含めることができる。
【0026】
前記蓋部表面を滑らかな平面構造或いは外部に膨らんだ形で緩やかな曲面形状(マフィン状)に構成することにより本発明で目的とする優れた効果(滑らかさ等)が得られるものと考えられる。
【0027】
本発明においては、上記の如く形状の表現に関し「おおよそ」とか「略」とかの用語を多用しているが、これは完全にそのような形状を有してもよいし、概略そのような形状でも、またそれらに近似又は類似する形状でもよいことを意味している。従って、「略平行面」或いは「おおよそ平行面」には完全に平行な面も含むし、ほぼ平行関係にあるとみなし得るような平行面の関係にあるものを含む。また、「略円形状」には完全に円の形状にあるもの、ほぼ円の形状にあると認められるもの、楕円の形状にあるもの、及びほぼ楕円の形状にあるもの全てが含まれる。
【0028】
[3]
複合粉体を構成する粘土鉱物が、平均粒子径0.2〜50μm程度、好ましくは0.3〜30μm程度、更に好ましくは2〜15μm程度の粒子であるか、又は粒子径0.2〜50μm程度、好ましくは0.3〜30μm程度、更に好ましくは2〜15μm程度の粒子を含む上記記載の複合粉体。
【0029】
[4]
粘土鉱物が、平均的厚さ0.05〜1.5μm程度、好ましくは0.2〜1.0μm程度の粒子であるか、又は厚さ0.05〜1.5μm程度、好ましくは0.2〜1.0μm程度の粒子を含む上記記載の複合粉体。
【0030】
[5]
水酸化アルミニウムで構成される蓋付きカップ形状物において、カップ形状カップ底面から頂面(蓋部表面が平面の場合は当該平面まで、蓋部表面が外部に膨らむ曲面の場合は膨らんだ頂部)までの平均的な高さ(h)が0.05〜0.5μm程度、好ましくは0.08〜0.5μm程度、更に好ましくは0.1〜0.25μm程度の範囲内であるか、又はカップ形状カップ底面から頂面(蓋部表面が平面の場合は当該平面まで、蓋部表面が外部に膨らむ曲面の場合は膨らんだ頂部)までの高さ(h)が0.05〜0.5μm程度、好ましくは0.08〜0.5μm程度、更に好ましくは0.1〜0.2μm程度の範囲内のものを含む上記記載の複合粉体。
【0031】
水酸化アルミニウムで構成されるカップ形状のカップ蓋部表面直径(上部方向からの観察)は、50〜750nm程度、より好ましくは120〜380nm程度、更に好ましくは200〜320nm程度であり、固着面の直径は前記蓋部表面直径と同じか、それより短い方が好ましく、例えば50〜410nm程度、より好ましくは80〜330nm程度、更に好ましくは120〜220nm程度が選択される。尚、前記直径の測定及び数値範囲に関し、上部方向からの蓋部形状やカップ形状物の固着面(底面)の形状が多角形、楕円形、或いはこれらに近似する形状の場合のように測定位置によりその長さが異なり均一の長さを有しないような場合には最長部の直径で表している。
【0032】
[6]
蓋付きカップ形状物において、蓋部を除くカップ縦方向断面(縦断面)形状が逆台形状(型)、四角形状或いはこれらに近似する形状の何れかを有する上記記載の複合粉体。
【0033】
複数の面で形成される角部については、その角部は丸みを帯びた曲面形状を少なくともその一部に有していてもよく、これらの形状も上記近似する形状に含まれる。
【0034】
[7]
固着する水酸化アルミニウム、特に蓋付きカップ形状を構成する固着水酸化アルミニウムが、平均粒子径1〜80nm(0.001〜0.08μm)程度、好ましくは10〜50nm(0.01〜0.05μm)程度、更に好ましくは20〜40nm程度の超微粒子で構成され、又は粒子径1〜80nm(0.001〜0.08μm)程度、好ましくは10〜50nm(0.01〜0.05μm)程度、更に好ましくは20〜40nm程度の超微粒子を含む上記記載の複合粉体。
【0035】
このように、本発明において固着のために使用する水酸化アルミニウム:Al(OH)3の粒子に Rayleigh 領域の粒子径を採用することにより高い透明性を確保することができる。
【0036】
尚、前記蓋付きカップ形状を構成する水酸化アルミニウム粒子の数について、1個の粒子で当該蓋付きカップ形状を構成することもできるが、通常は前記複数の超微粒子によりこの形状物が構成される。本発明において、このようなカップ形状、或いは中でも後記マフィン状を構成する水酸化アルミニウムについて、単に「カップ形状の粒子」、「マフィン形状の粒子」等と称することがある。
【0037】
[8]
粉体を構成する粘土鉱物が、屈折率1.40〜1.80程度、好ましくは1.45〜1.65程度であるか、又は屈折率1.40〜1.80程度、好ましくは1.45〜1.65程度の粘土鉱物を含む上記記載の複合粉体。
【0038】
[9]
複合粉体において固着した水酸化アルミニウムが、水酸化アルミニウムが固着した粘土鉱物全量(複合粉体全体)に対して3〜75重量%程度、好ましくは10〜75重量%程度、より好ましくは20〜60重量%程度、更に好ましくは30〜50重量%程度存在する上記記載の複合粉体。
【0039】
[10]
更に、水酸化アルミニウムの被覆層を有する上記記載の複合粉体。
【0040】
[11]
被覆層において、平均的厚さが0.001〜0.5μm程度、より好ましくは0.01〜0.4μm程度、更に好ましくは0.03〜0.2μm程度の範囲内であるか、又は厚さが0.001〜0.5μm程度、より好ましくは0.01〜0.4μm程度、更に好ましくは0.03〜0.2μm程度の範囲内のものを含む上記記載の複合粉体。
【0041】
この場合、被覆層を構成する水酸化アルミニウム粒子の粒子径又は平均粒子径として、好ましくは0.001〜0.08μm程度、より好ましくは0.01〜0.05μm程度、更に好ましくは0.03〜0.05μm程度の超微粒子を採用することができる。
【0042】
[12]
更に、シリコーン表面処理層を有する上記[1]又は[10]記載の複合粉体。
【0043】
[13]
当該蓋付きカップ形状を構成する水酸化アルミニウム(粒子)は、粘土鉱物表面上に固着する全水酸化アルミニウム(粒子)に対して少なくとも30重量%程度存在するが、好ましくは少なくとも50重量%程度、更に好ましくは少なくとも70重量%程度存在する。
【0044】
この算定に際し、蓋付きカップ形状についてはその縦断面形状において蓋が存在するカップ形状又はそれに近似する形状を有しておればよく、例えば逆台形状のものは当然、その他四角形状、それらにおいて角部が曲面形状のもの、蓋部表面がマフィン状に曲面を有するもの等略逆台形状、略四角形状や、それらに近似するものと認められる形状の粒子等全てが前記蓋付きカップ形状の形状物に含められる。
【0045】
上記記載の複合粉体は、粘土鉱物(粒子粉体等)と、この表面に固着する水酸化アルミニウム(粒子、粒子構成物等)とを含有する複合粉体で、固着する水酸化アルミニウムの粒子の30%以上又は水酸化アルミニウムの30重量%以上(好ましくは50%以上又は50重量%以上、より好ましくは70%以上又は70重量%以上)は当該蓋付きカップ形状を構成しカップ底面で当該粘土鉱物表面に固着する。
[14]
当該蓋付きカップ形状物の底面から蓋部頂面までの平均的高さが0.05〜0.5μm程度、好ましくは0.08〜0.5μm程度、更に好ましくは0.1〜0.25μm程度である上記記載の複合粉体。
【0046】
蓋部頂面の定義及び蓋付きカップ形状の範囲に関しては前記の通りである。
【0047】
[15]
複合粉体を構成する粘土鉱物の全表面積に対し、固着する水酸化アルミニウムの底面(固着する水酸化アルミニウムと粘土鉱物との接触面)が占める割合が3〜95重量%程度、好ましくは10〜95%程度、より好ましくは20〜90%程度、更に好ましくは50〜90%程度である上記記載の複合粉体。
【0048】
前記粘土鉱物の全表面積は水酸化アルミニウムが固着する前の全表面積であり、当然のことながら水酸化アルミニウムが固着していない部分の表面積と水酸化アルミニウムが固着する底面(固着したアルミニウムが粘土鉱物表面と接触する面)が占める表面積の総和である。
【0049】
[16]
上記何れか記載の複合粉体を1〜100重量%含有する化粧料。
化粧料の種類、形態、目的等に応じて更に必要な成分を任意に配合することができる。従って、従来から使用される粉体や複合粉体等も当然配合可能である。
好ましくは、例えば粉体固型化粧料の場合1〜80重量%程度、乳化化粧料の場合1〜30重量%程度、化粧料中に当該複合粉体を配合することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の複合粉体により、化粧料に使用したときに優れた透明感を有し、シワ、毛穴の開き、肌のきめの粗さを見え難くする肌の形態トラブル修正効果とシミ、ソバカス、にきび跡を見え難くする肌色の色調トラブル修正効果の双方の機能を同時に有すると共に、従来品と比較して滑らかな使用感で、色くすみが少なく透明感があり肌色を明るく仕上げることができる優れた粉体が得られる。
【0051】
当該複合粉体表面に水酸化アルミニウム被覆層を設けたり、或いはこれらにシリコーン表面処理を施すことにより上記目的とする効果を一段と高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に、本発明の実施の形態について説明するが、好ましい形態を中心に説明するものであり、本発明の範囲はそれらの好ましい形態の内容を含むがそれらに限定されるものではない。
【0053】
本発明において複合粉体を構成する粘土鉱物については、粘土鉱物に属する鉱物であれば特に制限は無い。例えば、セリサイト(絹雲母)、白雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母等のイライト族、カオリオナイト、ナクライト、デッカイト、ハロイサイト等のカオリン族、珪線石、藍晶石等のシリマナイト族、タルク(滑石)、蛇絞石等のマグネシウムシリケート系等を挙げることができる。それらの平均粒子径として好ましくは0.2〜50μm程度(レーザー回析法平均粒子径、堀場製作所製)であり、それらの粘土鉱物の平均的厚さとして好ましくは0.1〜1.5μm程度(樹脂で包埋し、その切片をTEM観察する方法)のものである。また、これらの本発明に適用される粘土鉱物の屈折率として好ましくは1.40〜1.80程度、より好ましくは1.45〜1.65程度、また平均粒子径としてより好ましくは0.3〜30μm程度、更に好ましくは2〜15μm程度のものである。
【0054】
本発明の複合粉体において基質の粒子として使用する粘土鉱物の替わりに硫酸バリウム、或いはパール顔料、例えばシルバーや金色、赤色、橙色、緑色、青色、紫色等の干渉色を有する虹彩箔パール顔料、着色パール顔料(虹彩箔パール顔料に無機顔料、有機顔料、レーキ顔料等を被覆したものを含む。)、オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマスコーティングマイカ等を採用することもできる。その場合の硫酸バリウムやパール顔料粒子の物性等については、平均的厚さ、平均粒子径、その他を含め前記粘土鉱物の物性等を採用することができる。
【0055】
これらの粘土鉱物の粒子形状は平面を有する点で板状が好ましい。その他球状粘土鉱物が好ましい。粘土鉱物の中でも特にマイカや、イライト族で一般に使用されている絹雲母、白雲母、合成雲母等が、粉砕強度が高く粉砕に対する粒子径の変化が極めて小さい点でより好ましい。
【0056】
粘土鉱物表面上に固着する特定形状物の構成に用いられる水酸化アルミニウム粒子は結晶質でも非晶質でもよいが、格子内乱反射が多い点で結晶質が好ましい。その屈折率は1.56である。
【0057】
本発明で使用する粘土鉱物の種類や、その平均粒子径の大きさ等にもよるが固着する水酸化アルミニウムの配合、使用量については、水酸化アルミニウムが固着する粘土鉱物、即ち全複合粉体に対して好ましくは10〜75重量%程度、より好ましくは20〜60重量%程度、更に好ましくは30〜50重量%程度となるよう水酸化アルミニウムを使用することができる。多過ぎると拡散反射光が極めて多くなり透明感のある明るい仕上がりが白っぽくなり、少な過ぎると本発明での効果が十分に得られないので、何れも好ましくない。後述の水酸化アルミニウム超微粒子被覆層を有する複合粉体の場合にも、この被覆層に存在する水酸化アルミニウムの分も含めて全水酸化アルミニウムが上記配合のための数値範囲に含まれるよう調整するのが好ましい。
【0058】
本発明で粘土鉱物表面への特定の形状を構成するために使用する水酸化アルミニウムは粒子又は粒子状物が好ましい。粘土鉱物の表面がこのような水酸化アルミニウムの粒子又は粒子状物(複数の粒子、粒子状物を含む。)により、特定形状に水酸化アルミニウムが固着した複合粒子を含む、又はこの粒子で構成される粉体(「複合粉体」とも称する。)が本発明の複合粉体であるが、その水酸化アルミニウム粒子による形状物の固着形状、構造については、製造条件(後記実施例等も参照。)や粘土鉱物の微細な表面形態の相違や水酸化アルミニウムの表面活性度等の違いに応じて本発明の特定形状、構造に調製することができる。
【0059】
固着する粒子で構成される特定の形状や、この特定の形状物が粘土鉱物に固着する形状・構造については、複合粉体を構成する粘土鉱物の粒子表面に水酸化アルミニウム粒子が固着し特定の形状(水酸化アルミニウム)を構成すると共にこの特定形状の水酸化アルミニウムが固着する複合粒子を形成し、このような粒子を含む粉体が化粧料用粉体として好適である。このような複合粒子を含む粉体が本発明の複合粉体を構成している。固着水酸化アルミニウム粒子で構成される前記特定の形状として、蓋付きカップ形状が好ましく、カップ底面を粘土鉱物表面に固着する構造を有し、このような形状、固着構造を多く粘土鉱物表面上に有している方が好ましい。
【0060】
蓋付きカップ形状とは種々のカップとして採用され、また採用され得る形状であればよく、特に制限は無い。蓋部表面形状やカップ側面形状はカップとしての容器の目的に使用可能な範囲内で各種の形状を採ることができる。
【0061】
蓋付きカップ形状物を、カップとして粘土鉱物表面上に置いて水平方向にカップを見た場合の水平方向に対する垂直断面(カップ形状のカップの底面に対して垂直方向に切断した断面で、「縦方向断面」又は「縦断面」と称する。)形状は、逆台形状や、四角形状が代表的ではあるが、更にこれらの蓋部表面に該当する辺がマフィン状に外部に膨らんだ曲面形状(「マフィン状」と称する。)を有する形状や、これらの形状において角部(複数の面で構成され角を有する部分)が丸みを帯びた曲面を有する形状でもよい。また、これらに近似する形状であってもよい。前述の通り、カップの形状と認められるような形状を有しておればよい。蓋部表面形状に関しても、カップの蓋として通常存在し得るような蓋の表面形状であれば特に制限は無い。
【0062】
同様に、カップの水平方向断面(カップ形状のカップの底面に対して平行に切断した断面で、「横方向断面」又は「横断面」と称する。)の形状はカップ側面部の横断面形状であり、円、楕円、多角形(正方形、長方形を含む4角形等)が代表的形状である。多角形の角部が一部、又は全て丸みを帯びた曲面を有する形状でもよく、更にこれらに近似する形状や、これらの形状を部分的に有する形状であってもよい。
【0063】
以上の断面形状に実質的に含まれるものは、粘土鉱物表面に固着する水酸化アルミニウム特定形状物について本発明で規定する蓋付きカップ形状に該当する。
【0064】
更に、底面からカップ蓋部頂面(蓋部上部表面が平面の場合は当該平面、マフィン状の場合は外部(上部方向)に膨らんだ頂部)までの長さ(底面に対して垂直方向の長さ)、即ち高さ(h)(「高さ」と称する。)は特定範囲に調整されている方が好ましい。
【0065】
以上のような粘土鉱物表面への水酸化アルミニウムの固着は、粘土鉱物の一表面に限定されるものではなく、粘土鉱物の全ての表面にほぼ均一に見られるものであり、故に全ての表面(カップを上方向に置いた形で)に同様に説明されるものである。本明細書では粘土鉱物の一表面を、カップが置いてある側を上方向にして、水平方向に見てその上に前記カップ状形状物がカップを平面上に置いた形で説明されている。従って、この粘土鉱物の一表面の反対側の表面を観察すると、カップ形状のカップが逆さまに粘土鉱物表面にその底面で接して固着していることになるが、前記のようにこの反対面を観察する場合には、カップを上に置いた形で水平方向になるように位置を変更してこれを観察して、同様に形状、固着構造が説明される。
【0066】
本発明の複合粉体を構成する粘土鉱物粉体に固着する水酸化アルミニウムについては、全水酸化アルミニウムに対し好ましくは少なくとも30重量%程度、より好ましくは少なくとも50重量%程度、更に好ましくは少なくとも70重量%程度が前記本発明で特定する形状構造で固着するのが好ましい。粘土鉱物粒子についてその全表面積(水酸化アルミニウム特定形状物底面が固着する面積も含む。)に占める固着水酸化アルミニウムの特定形状物の全底面(固着する水酸化アルミニウムの粘土鉱物との接触面)が占める割合については好ましくは3〜95%程度、より好ましくは10〜95%程度、更に好ましくは20〜90%程度、より更に好ましくは50〜90%程度である。
【0067】
図6には、水酸化アルミニウムが粘土鉱物粒子の一つの表面に固着する特定形状のカップ形状として典型的な形状を選択して並べた縦断面形状(I)及び横断面形状(II)を例として示している。図6-Iは粘土鉱物表面の一つの表面のみに典型的な形状モデルA〜Eを横に並べてその部分について水平方向に対する垂直方向の一断面(一縦断面)形状を示す。図6-IIは上記各モデルA〜Eについて、上記縦断面図に対応するカップ側面部の横断面形状の代表的例を示している。一つの縦断面図に対して、横断面形状は複数考えられるので、その代表的なものを幾つか示している。
【0068】
モデルA、C、Dは逆台形状(型)、モデルB、Eは四角形状に属するが、特にD、Eはマフィン状と称する。本件明細書中、水酸化アルミニウム粒子で構成される特定形状物が粘土鉱物表面に固着する面を「底面」と称し、これが前記カップ形状のカップ底面に該当する。この底面と蓋付きカップ形状の蓋部表面とは平行面又は略平行面の関係にある。前記説明の如くこの底面或いは頂面に対し平行な方向を「横方向」、またこれと垂直な方向を「縦方向」と称している。本件明細書中で、逆台形状(型)とは、前記カップ形状に固着する特定形状物のカップの縦断面図(縦方向の断面図)が逆台形型であることを意味する(モデルA、C、D参照。)。同様に、横方向の断面を「横断面」と称し、カップ(粒子構成物)の横方向断面を意味する。「高さ(h)」とは、底面から蓋部表面までの高さであり、マフィン状の場合底面から蓋部の膨らんだ頂部までの垂直方向の長さである。
【0069】
蓋部外部表面の形状は平面形状、或いは外部に膨らんだ緩やかな曲面形状(マフィン状)を有することができる。
【0070】
蓋部表面を上部方向から見た場合の形状は、略円形、略楕円形、略四角形等略多角形を有していてもよい。多角形の場合の角部は丸味を帯びている方が好ましい。前述の如く、蓋部の表面形状はカップ側面の上端部で形成される面を(カップの中味が出ないように)カバーするに適当な蓋の表面形状に構成される。
【0071】
カップ側面は水平方向断面(横断面)の形状で、略円形、略楕円形、外側に突出した形で多角形を有していてもよい。この場合も多角形の角部は丸味を帯びている方が好ましい。この横断面が、断面の位置(底面からの垂直方向の長さ)、無関係にほぼ均一の場合(円柱、角柱の側面形状)、底面に近づく程横断面の面積が広くなる場合(円錐形、角錐形の頂部(頭部)を水平方向にカットした形状)、上部横断面程面積が広くなるような場合(円錐形、角錐形の頂部(頭部)を水平方向にカットした形状でこのカット面が固着面となる形状、前記逆台形型)、真ん中辺り(底面から頂面までの高さの半分位)程度の高さの横断面の面積が広くなる場合等があるが、上部(頂面に近い位置)横断面程面積が広くなるような形状(前記逆台形型又はこれに類似した形状)が好ましい。カップ底面に対して縦方向(垂直方向)の断面(縦断面)で観察すると、四角形、長方形、台形、逆台形、これらに類似するもの等の形状が採用可能であるが、逆台形状(型)又はこれに類似した形状が好ましい。前記したように、面と面で構成される角部については丸味を帯びている方が好ましい。
【0072】
カップ蓋部表面直径(上部方向からの観察)はカップ側面上方先端横断面形状の直径に相当するが、この長さは50〜750nm程度、より好ましくは120〜380nm程度、更に好ましくは200〜320nm程度であり、固着面(カップ側面下端の横断面に相当。)の直径は前記蓋部表面直径よりも同じか、短い方が好ましく、50〜410nm程度、より好ましくは80〜330nm程度、更に好ましくは120〜220nm程度が選択される。尚、前記直径の測定及び数値範囲に関し、上部方向からの蓋部形状や固着面(底面)の形状が多角形や楕円形の場合には最長部の直径で表している。
【0073】
特定形状物の高さ:h(前記定義したように、粘土鉱物表面を基準に固着する水酸化アルミニウム頂部表面までの高さ、即ちカップ底面から頂部表面(頂面)までの長さを意味する。)については、ほぼ同じ高さに調整された形状物が並ぶ方が好ましく、その高さについては好ましくは0.05〜0.5μm程度、より好ましくは0.08〜0.5μm程度、更に好ましくは0.1〜0.25μm程度である。平均値でその範囲内に含まれる方が望ましい。
【0074】
このような水酸化アルミニウム粒子で構成される特定の形状物が、粘土鉱物表面全体にできるだけ均一に、しかも多く固着する方が望ましい。
【0075】
複合粉体について粘土鉱物表面を斜め上方向から見た場合、代表的には立方体、直方体、円筒形、角筒形、円錐台形、逆円錐台形(円錐台を逆さまにした形状)、角錐台形、逆角錐台形(角錐台を逆さまにした形状)、これら形状において複数面で構成される角部を有する場合の角部が少なくとも一部で曲面を有する形状等が存在する。
【0076】
このように粘土鉱物に水酸化アルミニウム粒子で構成される特定形状物が固着する複合粉体の表面に、更に水酸化アルミニウム被覆層を形成することにより目的とする効果が更に改善される。その平均的厚さについては、好ましくは0.001〜0.5μm程度、より好ましくは0.01〜0.4μm程度、更に好ましくは0.03〜0.2μm程度である。また、この被覆層を構成する水酸化アルミニウム粒子の大きさについては超微粒子が好ましく、平均粒子径で表すと好ましくは0.001〜0.08μm程度、より好ましくは0.01〜0.05μm程度、更に好ましくは0.03〜0.05μm程度の大きさの超微粒子を採用することができる。尚、これらの被覆状態(被覆構造)は通状の粒状、球状、針状、紡錘状、ハニカム状の粒子を単に被覆したものとは全く異なる形態である。
【0077】
粘土鉱物の平均粒子径が0.2μm未満の場合、位相差散乱が大きくなり透明性が失なわれ、白っぽさが目立ってきて、本素材の目的に合致しないものになる。また、平均粒子径が50μmを超える場合には、粉体粒子の大きさからくる肌上でのざらついた感触や違和感が生じ好ましくない。
【0078】
粘土鉱物と特定の形状を有する水酸化アルミニウム複合体の表面を更に水酸化アルミニウム被覆層を有する場合、粘土鉱物の平均的厚さ(厚さとは粒子の一つの面とこれに対向する面の距離が最短でる部分の長さを意味する。)が0.05μmより薄い場合、粘土鉱物の粉砕強度は向上するが、光の透過光が強過ぎて、粘土鉱物の表面での戻りの反射光や粘土鉱物内からの戻りの反射光が少なくなり好ましくない。また、平均的厚さが1.5μmを超える場合には被覆層内の内部散乱に与える影響は変らない。更には、平均的厚さが1.5μmを超える場合には粘土鉱物の種類によっては粉砕強度が低下する他に、被覆粉体の透明性を減ずる方向にあり好ましくない。
【0079】
粘土鉱物表面に固着する特定形状物を構成する粒子に水酸化アルミニウムを選択することにより得られる粉体において、基質である粘土鉱物に固着する水酸化アルミニウムの屈折率は1.56である。この結果、特定形状物を構成する水酸化アルミニウム粒子の粒界や水酸化アルミニウムの特定形状の形態に由来する拡散反射光や透過光及びその屈折率と粘土鉱物の屈折率の相互作用により、形態トラブル修正や色調トラブル修正に足りる十分な光散乱効果により光散乱光と透過光のバランスがとれ透明感のある明るいくすみのない化粧膜を得、自然に仕上げることができる。
【0080】
その表面に固着する特定形状の水酸化アルミニウムを有する粘土鉱物表面に超微粒子の前記水酸化アルミニウムを被覆した場合、被覆した層の膜厚が0.5μmを超えると、被覆層内で超微粒子の水酸化アルミニウム粒界面での光の内部散乱効果が強過ぎて不透明感の強い乳白色になり、透明感があり肌色で明るく仕上げる効果が発現し難い。一方、0.001μm未満の厚さの場合には、逆に光の内部散乱効果は期待できない。本発明で固着する特定の水酸化アルミニウムの形状と固着構造(特に、固着底面に対し垂直方向である特定形状物の縦断面が逆台形型[マフィン状の場合は蓋部表面は曲面形状]及びその形状に類似した、例えば結晶形)を利用した光の乱反射効果により、透明感があり肌色を明るく仕上げる効果を与える。この場合には、前記特定の水酸化アルミニウム形状と固着構造(特に、前記逆台形型及びその形状に類似した結晶形)の固着面から蓋部頂面、即ち蓋部表面、マフィン状の場合は頂部までの高さ:hを長くして、粘土鉱物表面に直接光が当たる量を加減する必要がある。この場合、透明感があり肌色を明るく仕上げるには、それらの前記高さ(h)には、好ましくは0.05〜0.5μm程度、より好ましくは0.08〜0.5μm程度、更に好ましくは0.1〜0.25μm程度を採用することができる。
【0081】
前記高さが0.05μm未満の場合には光が直接粘土鉱物に入射し、光の散乱光が少なく透過する光量が多くなり、目的とする透明感や、肌色を明るく仕上げる効果は得られないばかりか、粘土鉱物に由来する光沢が出てしまい、かえって肌の形態トラブル等を目立たせる結果になる。また、前記高さが0.5μmを超えると光散乱効果により、肌の形態トラブルや色調トラブルを修正(シワ等或いはシミ等を見え難くする)する効果は得られるものの、光散乱効果が強過ぎて、不透明で白さのある仕上がりになり易く、透明感のある肌を仕上げる効果は期待できない。
【0082】
本発明の水酸化アルミニウム固着複合粉体は、前述の通り更にその表面を水酸化アルミニウム(好ましくはその超微粒子)で被覆していてもよく(水酸化アルミニウム被覆層)、またシリコーン表面処理による表面処理層を有していてもよい。このような被覆層や表面処理層を有することにより、目的とする効果をより一段と多く取得することができる。
【0083】
(製造方法)
本発明の複合粉体を製造するには特に困難は無く、本件明細書の記載、特に後述の実施例等によれば容易に製造することができるが、若干、補足すると次の通りである。
【0084】
粘土鉱物の使用量に対し(粘土鉱物の替わりに硫酸バリウム又はパール顔料を使用する場合は硫酸バリウム又はパール顔料使用量に対し)、精製水を3〜15倍量(重量)程度使用する。水酸化アルミニウム調製のためのアルミニウム塩は、粘土鉱物を含んだ総重量に対し2〜75重量%程度使用する。アルミニウム塩を精製水に溶解し粘土鉱物を均一に分散させた分散液を50〜100℃程度に加温し、これに種晶を加えて撹拌した後40〜−10℃程度に冷却する。水溶液を濾過して水洗洗浄後乾燥することにより、水酸化アルミニウムが固着した粘土鉱物の複合粉体を製造することができる。
【0085】
水酸化アルミニウム超微粒子による被覆層を構成するには、上記複合粉体の製造において、40〜−10℃程度に冷却して得られた複合粉体の水溶液を、更に無機酸又は酸性ガスを用いてpH値を7〜10の範囲に中和した後、この溶液を、同様に濾過、水洗洗浄した後、これを40〜130℃で乾燥することにより目的とする被覆複合粉体を製造することができる。
【0086】
水酸化アルミニウムが固着する粘土鉱物又はこれに更に超微粒子水酸化アルミニウム被覆層を有する複合粉体に対して、シリコーン表面処理を行う場合には、慣用方法(例えば、特開平9−48716号公報参照。)により容易に行うことができる。
【0087】
本発明の複合粉体(上記被覆複合粉体やシリコーン表面処理粉体等を含む。)を化粧料に配合して使用することができ、その場合化粧料における複合粉体の使用量(配合量)については特に制限は無い。例えば、パウダー状の化粧料の場合には好ましくは1〜100重量%(重量%は全組成物に対する重量基準)程度配合することができる。ケーキ状の化粧料及び練物、化粧料の場合には、好ましくは配合する全粉体の重量の1〜100重量%程度、より好ましくは1〜80重量%程度となるように配合することができる。また、乳化状化粧料の場合には全乳化物の重量組成に対し、好ましくは1〜60重量%程度、より好ましくは1〜30重量%程度配合することができる。中でも、特にメークアップ化粧料、例えばファンデーション、粉白粉、アイシャドー、ブラッシャー、クリーム、乳液、化粧水、ネイルカラー、口紅等に配合するのに好適である。本発明の複合粉体は化粧料に配合されるに当って必要に応じ、前記シリコーン処理以外でフッ素処理、レシチン処理、アミノ酸処理、金属石ケン処理、界面活性剤処理、更には、シリコーン処理を含めてこれらの複合処理を行ってもよい。
【0088】
次いで、作用機序について考察してみると、シワを見え難くする公知の方法の一つとして、基質(粘土鉱物)の表面をポリマーの樹脂で固定化し、そのポリマーの凹凸により光の拡散反射効果をもたらせシワを見え難くする方法がある。もう一つとして、粉体を蝶の形に近似させ、その複雑な形状を利用し、拡散散乱効果をもたらす方法がある。何れもその素材の表面での光散乱効果を利用したものである。本発明は、基質の表面に、特定の屈折率(1.56)を有する水酸化アルミニウム粒子を選択、使用して、この粒子を前記特定形状にかつ特定構造(蓋付きカップ形状のカップ底面で固着:特に前記逆台形状(型)やこれに類似した形状を有する。)で粘土鉱物に固着することにより、また特に好ましくはこのような固着粒子で構成する特定形状物の前記高さ:hを特定範囲に調整すると、固着粒子の屈折率及び粘土鉱物の屈折率の相互作用により光の透過光量と光の反射光量を調整し、直接粘土鉱物に入射する光量を加減して、光の拡散反射効果を調整することができる。その結果、形態トラブルや色調トラブルを修正(シワ等或いはシミ等を見え難くする)と共に透明感を保持しつつ、くすんだ肌色を綺麗に明るく仕上げることができる。
【0089】
また、上記複合粉体表面に特定範囲の厚さに調整した超微粒子水酸化アルミニウムの被覆層を形成させることにより超微粒子層内の粒界において、光の内部散乱効果と肌の角質層に近似した特定の屈折率(1.56)を持ち、かつ前記特定形状を構成する固着粒子の形態を利用した光散乱効果により肌の形態や色調トラブルであるシワ等或いはシミ等を見え難くするぼかし効果(肌の形態トラブル修正効果及び肌色の色調トラブル修正効果)と、透明感を保持し、肌色を明るく仕上げる作用をもたらす。このような複合粉体を開発することにより、特開平9−20609号公報に記載の発明に比較して、形態トラブル修正効果や、色調トラブル修正効果に優れ、更にはくすんだ肌色を透明感のある明るい肌に仕上げることを可能にした。
【0090】
本発明の複合粉体には、特開平9−20609号公報記載の発明と比較して、明らかに滑らかな使用感が得られている。特開平9−20609号公報記載の発明においては、被覆粉体の最外層(部)がハニカム構造を有していて、その表面の凹凸が著しい。そのために、別に塗布したとき肌の凹凸との相互作用により延展性が無く肌に負担がかかる結果となる。また、最外層が超微粒子の不均一な面であると共に超微粒子は比表面積が大きいことも手伝い、肌上の水分や油分の吸着能が高く、延展性が悪く、伸びの重い使用感になる。
【0091】
これに対して、本発明は粘土鉱物及びこれに固着する水酸化アルミニウムを含む複合粉体で、粘土鉱物の粒子表面に水酸化アルミニウム粒子で構成する特定形状物が固着する複合粒子を含む複合粉体である。当該水酸化アルミニウム粒子は蓋付きカップ形状を構成しその底面で粘土鉱物表面に固着する形態のものを含み、このように固着する水酸化アルミニウムを、好ましくは粘土鉱物表面上比較的に多く有し、その高さ(h)がほぼ均一に調整され、その縦断面は前記逆台形型及びそれに類似した形状を有するように、多くの水酸化アルミニウムが固着している。また、前記逆台形型の形状は高倍率のTEM観察からも理解されるように(図1〜3参照。)層状に、被覆されるように積層されているために滑らかな使用感が得られるものと考えられる。
【0092】
また、本発明には上述の複合粉体を水酸化アルミニウム(好ましくはその超微粒子で)被覆した被覆複合粉体を含み、これは被覆した水酸化アルミニウムの構造に起因する肌への接触面積が比較的少ないことと、肌に接した面が極めて平滑な面であることに起因して、更に好ましい使用感が得られるものと考えられる。
【0093】
本発明の化粧料には、本発明の複合粉体(前記被覆複合粉体やシリコーン表面処理複合粉体等も含む。)の他に、通常化粧料に用いられる他の成分を必要に応じて適宜配合することができる。例えば、タルク、カオリン、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアバタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミックスパウダー等の無機粉末、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリ四弗化エチレンパウダー、ジスチレンベンゼンポリマーパウダー、エポキシパウダー、アクリルパウダー、シリコーンパウダー、微結晶性セルロース等の有機粉体、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料、γ酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸鉄、黄土等の
【0094】
無機黄色系顔料、四酸酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料、酸化チタン鉄ドープ、酸化亜鉛鉄ドープ等の複合着色顔料、
【0095】
赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号及び青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、橙色3号及び青色1号のジルコニウム、バリウム、若しくはアルミニウムレーキ等の有機顔料、クロロフイル、β−カロチン等の天然色素、
【0096】
スクワラン、流動パラフイン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、セレシン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、インステアリン酸、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オイレンアルコール、2−エチルヘキサン酸セチル、バルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、オレイン酸2−オクチルドシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセリン、トリ(カプリル、カプロン酸)グリセリン、オリーブ油、アボカド油、ミツロウ、ミリスチン酸ミリスチル、ミンク油、ラノリン等の各種炭化水素、シリコーン油、高級脂肪酸、油脂類のエステル類、高級アルコール、ロウ類等の油性成分、アセトン、トルエン、酢酸ブラル、酢酸エステル等の有機溶剤等を適宜配合して使用することができる。
【0097】
アルキッド樹脂、尿素樹脂等の樹脂、カンファー、クエン酸アセトルトリブチル等の可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤等も使用することができる。
【0098】
本発明による化粧料の形態は特に限定されない。例えば、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スチック状、ペレット状、軟膏状、液状、乳液状、クリーム状等各種の形態で使用することができる。本発明において複合粉体は、特に粘土鉱物として雲母を使用する複合粉体については、化粧料用として特に有用なものであるが、その他塗料、プラスチック、ゴム等の添加剤、ゴム等の離型剤、潤滑剤等各種の成分として使用することもでき、化粧料分野のみならず広く利用可能であり、工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、これら実施例等により何ら本発明を限定するものではない。実施例、比較例等において用いられるつやの評価、シワの評価、シミのぼかし効果、色くすみの評価及び滑らかさの評価については以下の方法により測定、評価を行った。尚、実施例中の配合割合については重量部で表している。
【0100】
(変角光沢計によるつやの評価)
試料を掌の付け根付近に1.25mg/cm2の条件で塗布し、その塗布した面を入射角45°に設定し、受光角を−70〜70°に変化させ、変角光沢計(日本電子工業社製SZ−Σ90型)を使用して評価を行った。
【0101】
(シワの評価)
鼻深溝から頬にかけての部位のシリコンレプリカを作成し、その表面に試料を載せ、刷毛でブラッシュして0.4mg/cm2の量を塗布し、写真撮影し、その写真をパネル25名で観察し、シワの目立ち具合について評価した。
【0102】
(シミのぼかし効果)
試料をヒマシ油10gに対し3.5gを採取し、均一に混合した後、スライドグラスで28μmのドクターブレードを用い膜厚を調整した。別に、色白肌用の肌色紙の上に直径0.5mmの円形の小麦肌色票を同一模様に配置させる。この肌色紙の上に前記膜厚を調整した試料を載せ白色肌紙と円形の小麦肌紙の見え方を観察しシミの見え具合について官能評価を行った。
【0103】
(油濡れによるくすみの評価)
乾粉色の測定については試料を石英ガラスセルに入れ分光測色し、油濡れ色については流動パラフィンを用い、各試料の吸油量に相当する量で混合し分光測色した。乾粉色と油濡れ色(湿粉色)のΔE値(色差)及び彩度の移動の仕方(移行方向と変化度)からくすみの度合を評価した。
【0104】
(動摩擦係数の測定による滑らかさの評価)
摩擦感テスター(カトーテック社製)にて試料上を摩擦センサーにて5回滑らせ、5回目の測定値(MIU)を測定した。
【0105】
〔実施例1〕
精製水2,520ml中にアルミン酸ナトリウム168gを溶解させた後、白雲母252gを分散させた。均一に分散させた後、95℃まで昇温させた。これに、水酸化アルミニウム0.84gを加えて、80℃まで冷水で冷却した後、更に氷水で20℃まで急冷した。その後、20℃以下で8時間熟成反応を行った。得られた反応溶液に、塩酸を加えてpH8.0まで中和して濾過乾燥することにより、白雲母の表面に固着する、逆台形型水酸化アルミニウム(結晶)を多く形成するように粒子を析出させ、それら特定形状を構成する固着粒子(複合粉体)の表面に超微粒子水酸化アルミニウム(平均粒子径:0.01μm)を被覆(厚さ約0.08μm)した被覆複合粉体を得た。
【0106】
尚、前記逆台形型とは、前記説明の通り白雲母表面(水平方向)に対して固着する特定形状物の垂直(縦)方向断面の形状が、白雲母表面を基準(底辺)にして逆台形型であることを意味する。
【0107】
全被覆複合粉体に対する水酸化アルミニウムの含有量は約36重量%である。
【0108】
得られた被覆複合粉体について、SEM写真を撮り図1(×15,000)、図2(×50,000)及び図3(×10,000)に示した。これらの図から本発明品は多くの固着粒子で蓋付きカップ状を構成するものの縦方向断面の形状が、白雲母表面を基準(底辺)にして逆台形型であること、その高さについてもほぼ一定の高さ(固着粒子で構成される特定形状物の高さ:0.1μm)を維持していることが分かる。
【0109】
〔実施例2〕
実施例1において8時間熟成反応を行った後、中和しないでそのまま濾過乾燥する以外は、実施例1と同様に実施した。白雲母の表面に逆台形型水酸化アルミニウムを構成するように粒子を固着した複合粉体を得た。
【0110】
[実施例3]
イオン交換水302mlを90℃まで昇温、加温した後、アルミン酸ナトリウム40.26gを加え95℃まで昇温させた。95℃になった時点でパール顔料100g(メルク社製)を加えて均一に分散した後、水酸化アルミニウムを分散させた上澄液(1.5%水酸化アルミニウム分散液の上澄液)30gを加え10分間撹拌した。その後、冷水で70℃まで冷却し、更に氷水で急冷し20℃以下で7時間熟成反応を行った。反応終了後、濾過、水洗浄を繰り返した後、乾燥して、特定形状を有するマフィン状水酸化アルミニウム(高さ0.1μm、直径0.2μm)を固着した複合紛体を得た。
【0111】
[実施例4]
精製水167ml中に塩化アルミニウム6水和物32.76gを溶解させた。得られた溶解液にセリサイト11.14gを均一に分散させた後、昇温し、煮沸状態にした。この煮沸した分散液に1.5%水酸化アルミニウム分散液の上澄液60gを加えた。これに、別途用意した200mlの精製水に水酸化ナトリウム11.75gを溶解させたアルカリ溶液を滴下し、冷水で70℃まで冷却した。更に、氷水で急冷した後、20℃以下で12時間保持した。濾過、水洗浄を繰り返した後、これを乾燥し、セリサイト表面に特定形状を有するカップ上の水酸化アルミニウム(高さ0.15μm、直径0.3μm)を固着した複合紛体を得た。
【0112】
〔比較例1〕(特開平09−20609号公報記載の製法)
精製水2000mlに硫酸アルミニウム400gを加え溶解させた後、白雲母200gを加えて均一に分散させる。この分散液に尿素457gを加えて95℃にて6時間処理し、冷却し、水洗した後、エタノール洗浄し、70℃で乾燥して水酸化アルミニウム被覆粉体を得た。
【0113】
得られた被覆粉体についてのSEM写真を撮った結果を図4(×5,000)に示した。この図から粉体粒子表面がハニカム状となり、表面凹凸が著しいことが分かる。
【0114】
〔実施例5〕パウダーファンデーションの製造

【0115】
(製造方法)
ヘンシェルミキサーに上記粉体成分(1)〜(5)を仕込み低速回転で4分間攪拌し、取り出し、粉砕した。粉砕物を再度ヘンシェルミキサーに移し、更に成分(6)及び(7)を加え、10分間攪拌した後取り出し、パラベライザー(細川ミクロン社製)で解砕した後40メッシュのふるいを通し、中皿に充填して目的とする製品を得た。
【0116】
〔実施例6〕乳化型ファンデーションの製造

【0117】
(製造方法)
上記成分(1)〜(8)を85℃で加熱溶解混合した後、成分(9)を添加して均一に分散させた。これに、85℃で加熱溶解した成分(10)〜(14)の混合物を徐々に添加して乳化させた。乳化時の温度を13分間保持して攪拌した後、攪拌しながら冷却し50℃にした。これに、成分(15)を加え40℃まで冷却し、生成物を取り出し、容器に充填して本発明の乳化型ファンデーションを得た。
【0118】
〔実施例7〕油性ファンデーションの製造

【0119】
(製造方法)
上記成分(1)〜(4)を85℃で加熱溶解混合した後、加熱温度を100℃まで上げた。その後温度を85℃に戻し、完全に加熱溶解したことを確認した。これに、更に成分(5)〜(7)を加え攪拌しながら均一分散させた。その後、真空脱泡処理をし、成分(8)を加え、容器に充填し本発明の油性ファンデーションを得た。
【0120】
〔比較例2〕
実施例5において、シリコーン処理白雲母(被覆複合粉体;実施例1)の代替に比較例1で得られた被覆粉体(特開平09−20609号公報記載の製法によるもの)を使用する以外は実施例5と同様に実施した。
【0121】
〔比較例3〕
実施例5においてシリコーン処理白雲母(被覆複合粉体;実施例1)を実施例2で得られた複合粉体(シリコーン処理)に代替した以外は何ら変更することなく実施例5と同様に実施した。
【0122】
〔比較例4〕
実施例5において、シリコーン処理白雲母(被覆複合粉体;実施例1)を白雲母(シリコーン処理)に代替した以外は何ら変更せずに実施例5を繰り返した。
【0123】
(使用感:滑らかさの評価)
〔動摩擦係数の測定(滑り測定)〕
各種試料について、前記した方法で動摩擦係数を測定し、滑らかさを評価した。結果は次の通りである。シリコーン処理は4%のα−トリエトキシポリジメチルポリシロキサンにより処理したものである。
【0124】

【0125】
数値が小さい程滑りが良いことを示しており、本発明品は化粧料用粉体として使用感の良い絹雲母と同等かそれ以上の滑らかさを有することが分かる。更に、シリコーン処理によりその効果が著しく向上することも理解される。
【0126】
(色くすみの評価)
各種試料について、前記方法に従いくすみの評価を行った。結果は次の通りである。尚、L、a、b値はハンターの式であり、それぞれ、L:明るさ;a:赤味の度合;及びb:黄味の度合を表す。
【0127】

【0128】

【0129】
実施例1、2の製品はL値(明るさの値)の変化が小さいのに対し比較例1(特開平09−20609号公報記載)や白雲母は大きい値を示し油により明度が低くなっている。b値(黄味の度合を表す)を見ても、実施例1、2の製品の変化が小さいのに対し比較例1の製品や白雲母は大きい変化を示す。この結果は比較例1の製品や白雲母は油分に濡れると明るさが暗くなり黄味がより強く出て、くすみの度合が大きいことを示している。本発明品については、くすみが著しく改善していることが分かる。
【0130】
(変角光沢計によるつやの評価)
各種試料について前記評価方法に従い測定した結果を図5に示した。
この結果から、本発明品は全ての受光角において皮膚に近似しているがそれより明度が少し明るく、その結果くすみが著しく改善されていることが分かる。
【0131】
(官能評価)
各試料について官能評価を次の通り行った。
評価基準として、「全く」、「僅かに」、「少し」、「割合」、「かなり」、「非常に」及び「極端に」の7段階評価で行った。シワの目立ち具合及びシミの見え具合についての評価方法は前記の通りである。
【0132】
つや 全くない 6点〜極端にある 0点
シワの目立ち具合 全く目立たない 6点〜極端に目立つ 0点
透明感 全くない 0点〜極端にある 6点
シミの見え具合 全く目立たない 6点〜極端に目立つ 0点
肌(化粧膜)の明るさ 全くない 0点〜極端にある 6点
肌(化粧膜)のくすみ 全くない 6点〜極端にある 0点
【0133】
(素材としての評価)
各試料について素材としての評価の結果は下記の通りである。
【0134】

【0135】
本発明品を特開平09−20609号公報記載の製品と比較した場合、肌に塗布したときのつやが抑えられ、透明感も向上している。特に、形態トラブル修正効果(シワを目立たせなくする効果)や色調トラブル修正効果(シミを目立たせなくする効果)に優れると共にくすみを抑制し、肌色を明るく仕上げる効果にも優れていることが分かる。
【0136】
(剤型としての評価)
各試料について剤型としての評価の結果は下記の通りである。
【0137】

【0138】
以上の結果から、本発明品については素材及び剤型何れも比較品に比べて著しく優れていることが分かる。本発明品のうち、素材につては剤型中に配合した場合、他の化粧料基剤により希釈され、本来の効果は少し低下するものの、剤型についても素材の評価と同様に優れた効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】実施例1(被覆複合粉体)のSEM写真(×15,000)を図示したものである。
【図2】実施例1(被覆複合粉体)のSEM写真(×50,000)を図示したものである。
【図3】実施例1(被覆複合粉体)のSEM写真(×10,000)を図示したものである。
【図4】比較例1(被覆粉体)のSEM写真(×5,000)を図示したものである。
【図5】変角光沢計によるつやの評価結果を図示したものである。 縦軸:Y値(明るさ)、横軸:受光角(度)グラフ中、それぞれ◆:実施例1;■:実施例2;*:比較例1;×:マイカ;及び▲:皮膚を表す。
【図6】本発明の複合粉体を構成する水酸化アルミニウム−粘土鉱物複合粒子において、粘土鉱物の一つの表面を水平方向に見て、この表面に固着する水酸化アルミニウム粒子で構成する特定形状物の代表例として、特に代表的な形状物を横に1列に並べ、その並んだ部分の縦方向の一断面を図6-Iに示した。この並んだ状態で、図6−Iに対応する形状物の横方向の一断面図の代表例を幾つか図6-IIに示した。
【符号の説明】
【0140】
1:粘土鉱物、A〜E:水酸化アルミニウムの特定形状物の代表的モデル、h:高さ(カップ底面からカップ蓋部頂面までの長さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物及び、この表面に固着する水酸化アルミニウムを含有し、当該水酸化アルミニウムが、蓋付きカップ形状を構成しカップ底面で当該粘土鉱物表面上に固着する多数の水酸化アルミニウム粒子を含み、当該蓋付きカップ形状を構成しカップ底面で当該粘土鉱物表面に固着する水酸化アルミニウム粒子が、当該粘土鉱物表面上に固着する全水酸化アルミニウムに対して、少なくとも30重量%存在することを特徴とする複合粉体。
【請求項2】
蓋付きカップ形状の蓋部表面が、当該カップ形状のカップ底面に対し略平行面状にあるもの、又は略マフィン状に頂部が外部に膨らんだ曲面形状にあるものを含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項3】
粘土鉱物が、平均粒子径0.2〜50μmの粒子であるか、又は粒子径0.2〜50μmの粒子を含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項4】
粘土鉱物が、平均的厚さ0.05〜1.5μmの粒子であるか、又は厚さ0.05〜1.5μmの粒子を含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項5】
蓋付きカップ形状物において、カップ形状カップ底面から蓋部頂面までの平均的高さが0.05〜0.5μmの範囲内であるか、又はカップ形状カップ底面から蓋部頂面までの高さが0.05〜0.5μmの範囲内のものを含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項6】
蓋付きカップ形状物において、蓋部を除くカップ縦断面形状が逆台形状、四角形状及びこれらに近似する形状の何れかを含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項7】
固着する水酸化アルミニウムが、平均粒子径1〜80nmの粒子で構成されるか、又は粒子径1〜80nmの粒子を含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項8】
粘土鉱物が、屈折率1.40〜1.80であるか、又は屈折率1.40〜1.80の粘土鉱物を含む請求項1記載の複合粉体。
【請求項9】
水酸化アルミニウムが固着した粘土鉱物全量に対して、水酸化アルミニウムが3〜75重量%存在する請求項1記載の複合粉体。
【請求項10】
更に、水酸化アルミニウムの被覆層を有する請求項1記載の複合粉体。
【請求項11】
被覆層において、平均的厚さが0.001〜0.5μmの範囲内であるか、又は厚さが0.001〜0.5μmの範囲内のものを含む請求項10記載の複合粉体。
【請求項12】
更に、シリコーン表面処理層を有する請求項1又は10記載の複合粉体。
【請求項13】
当該カップ底面から蓋部頂面までの平均的高さが0.05〜0.5μmである請求項5記載の複合粉体。
【請求項14】
粘土鉱物の全表面積に対し、固着する水酸化アルミニウムの底面が占める割合が3〜95%である請求項1記載の複合粉体。
【請求項15】
請求項1〜14何れか記載の複合粉体を1〜100重量%配合する化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−260940(P2008−260940A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109186(P2008−109186)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【分割の表示】特願2000−265026(P2000−265026)の分割
【原出願日】平成12年9月1日(2000.9.1)
【出願人】(391024700)三好化成株式会社 (17)
【Fターム(参考)】