説明

新規調味料及び新規スプレッドの製造方法、並びにそれらを添加した食品

【課題】本発明は、マヨネーズ又はマヨネーズ様ドレッシングに他の液状調味料や野菜・果物等のジュースを混合する調味料の製造方法、及びバター若しくはマーガリンのような常温で固体の油脂に他の液状調味料や野菜・果物等のジュースを混合するスプレッドの製造方法の提供することを目的とする。
【解決手段】
(1)増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品と、マヨネーズ又はマヨネーズ様ドレッシングを混合することを特徴とする新規調味料の製造方法。
(2)増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品と、バター又はマーガリンを混合することを特徴とする新規スプレッドの製造方法。
(3)液状又はペースト状の食品とバター又はマーガリンとの混合物の、バター又はマーガリンの含有量が50重量%以下である請求項2に記載の新規スプレッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズ又はマヨネーズ様ドレッシングに他の液状調味料や野菜・果物等のジュースを混合する調味料の製造方法、及びバター若しくはマーガリンのような常温で固体の油脂に他の液状調味料や野菜・果物等のジュースを混合するスプレッドの製造方法に関する。更に詳しくは醤油のような調味液や野菜・果物等のジュースに増粘安定剤若しくはゲル化剤を添加して流動性を低下させ、比重の違いによる分離を抑制することでマヨネーズやバターのような常温で半固形状或いは固形状の油脂と均一に混合した後、その状態を安定的に保持する半固形状或いは液状の調味料及びスプレッドの製造方法に関する。本願発明により得られる様々な調味料やスプレッドは、ベースにマヨネーズやバター等のコクと風味を有し、新しいソースやドレッシングとして食品に豊かな味を付与することができる。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズは広く用いられている半固形状ドレッシングで、必須原材料として卵黄、卵白、たん白加水分解物、食塩、砂糖類、はちみつ、香辛料、調味料(アミノ酸等)及び香辛料抽出物以外のものを含まず、食用植物油脂の重量の割合が65%以上のものと日本農林規格で定められている。物性としては、卵を界面活性剤として油が少量の水溶液中に分散しているO/W型エマルジョンである。
適度の旨味、酸味と卵や油脂に由来する深いコクを持つため、家庭では単独で使用されるだけでなく、醤油、ポン酢醤油、ウスターソース等の他の液状調味料と混ぜて使用されることも多い。しかしながら、マヨネーズと醤油やソース等の液体調味料を予め混ぜ合わせた商品は非常に少なく、トマトケチャップを加えたオーロラソースや、オーロラソースを発展させたサウザンアイランドというドレッシングが知られている程度である。
【0003】
一方、バターは融点が35℃〜40℃で、室温(20℃〜25℃)では固体の食用油脂である。乳特有の風味と油脂のコクが強く、家庭ではマヨネーズと同様に単独で使用されるだけでなく他の調味料と混ぜて使用されてきた。特に醤油との相性は良く、蒸かしたジャガイモには醤油を混ぜたバターをのせて食べるのが定番となっているほどである。マーガリンは植物や動物の食用油脂を主原料して、バターの代替品として登場したスプレッドである。バターに近い風味を持つものが多く、物性的にもバターとほぼ同じである。日本農林規格では、マーガリン類のなかで油脂含有率80%以上がマーガリン、80%未満がファットスプレッドと分類されている。
【0004】
マヨネーズとキムチ(例えば、特許文献1参照)、マヨネーズと海苔(例えば、特許文献2参照)、マヨネーズと唐辛子(例えば、特許文献3参照)、マヨネーズとケチャップ(例えば、特許文献4参照)、マヨネーズとわさび(例えば、特許文献5参照)を混合した調味料が提案されている。これらはマヨネーズにキムチや海苔の佃煮、磨り潰した唐辛子、ケチャップ、わさびの茎片とわさび細片を単に混ぜ合わせたものに過ぎず、特にキムチやケチャップのような水分の多いものについては混合状態の安定性に疑問が残る(安定性についての記述は無い)。
【0005】
一方、増粘安定剤は乳化物の安定剤として良く使用される。通常は他の原料と共に添加したのち、乳化操作を行うのが普通である(例えば、特許文献6及び特許文献7参照)。しかしながら、醤油や味噌のような調味料として完成している液体若しくは半固形状調味料を分離することなくマヨネーズやバターに添加、混合するために、増粘安定剤で予め調味料の物性を変えた後マヨネーズに混合するような製造方法は報告されていない。
液体の醤油入りマヨネーズや醤油入りバターは市販されていないが、粉末醤油を混合したバターは開発されている(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−275610
【特許文献2】特開2000−152766
【特許文献3】特開2005−73692
【特許文献4】特開2002−95440
【特許文献5】特開平6−339359
【特許文献6】特開平5−30941
【特許文献7】特開平3−91460
【特許文献8】特開2000−157201
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キムチや海苔、唐辛子等、特定のものとマヨネーズを混ぜて作られる調味料の提案はあるが、多くの液体調味料を対象としてマヨネーズと安定的に混合させる技術は提案されていない。従って、本発明は不特定多種類の液体調味料をマヨネーズと混合し、混合状態を長期間安定して保持する技術を提供することを課題とする。また、マヨネーズは主に生野菜(サラダ)を美味しく食べるための調味料(ドレッシング)として使用される。ほとんど油味の無い野菜に植物性油脂と卵が持つ濃厚な風味を付与し、フレッシュな野菜を引き立てる。従って、野菜や果物のジュースやピューレとマヨネーズを混合したものは新規調味料として魅力的であり、本発明はこの混合状態を長期間安定して保持する技術を提供することをも課題とする。同様に、バターやマーガリンのような油脂分の多いスプレッドを多くの液体調味料或いは野菜や果物のジュースやピューレに混合し、混合状態を長期間安定して保持する技術を提供することをも課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、液体調味料に適当な増粘安定剤又はゲル化剤を加えてマヨネーズに近いか又はマヨネーズよりも高い粘度を付加することにより、マヨネーズと混合した後液体調味料とマヨネーズが分離せず長期間安定して混合状態を保つことを見出した。また、野菜ジュースや野菜ピューレに対しても同様に適当な増粘安定剤又はゲル化剤を加えて粘度を付加することにより、マヨネーズと混合した後野菜ジュースや野菜ピューレとマヨネーズが分離せず長期間安定して混合状態を保つことを見出した。更に、バターに対しても適当な濃度の増粘安定剤を加えた液体調味料を混合したところ、バターが溶ける40℃付近の温度で数時間放置してもバターと液体調味料が分離せず、その後室温で長期間安定して混合状態を保つことを見出したことにより、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、下記の請求項1〜請求項15により構成されている。
<請求項1>増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品と、マヨネーズ又はマヨネーズ様ドレッシングを混合することを特徴とする新規調味料の製造方法。
<請求項2>増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品と、バター又はマーガリンを混合することを特徴とする新規スプレッドの製造方法。
<請求項3>液状又はペースト状の食品とバター又はマーガリンとの混合物の、バター又はマーガリンの含有量が50重量%以下である請求項2に記載の新規スプレッドの製造方法。
<請求項4>液状又はペースト状の食品が、5重量%以上の食塩を含んでいる請求項1〜請求項3に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項5>増粘安定剤又はゲル化剤が、5重量%以上の食塩に耐性を持つ請求項1、又は請求項2に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項6>液状又はペースト状の食品が、醤油、魚醤、味噌、又はこれらを原料としたものである請求項1〜請求項4に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項7>増粘安定剤又はゲル化剤が、キサンタンガム、又はこれを原料としている請求項1、請求項2、又は請求項5に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項8>キサンタンガムの添加量が0.4重量%以上である請求項7に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項9>増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品が、野菜の搾汁液、野菜のピューレ、果汁、濃縮果汁、果物のピューレ、又はこれらのジャムである請求項1〜請求項3に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項10>増粘安定剤若しくはゲル化剤が、キサンタンガム若しくはペクチン、又はこれらを原料としている請求項9に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項11>キサンタンガムの添加量が0.2重量%以上である請求項10に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項12>ペクチンの添加量が1.2重量%以上である請求項10に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項13>請求項9の野菜のピューレ、果汁、濃縮果汁、果物のピューレ、又はこれらのジャムに、ペクチンを添加、若しくは添加せずして、ペクチンの含有量を1.2%以上に調整したものを使用する新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
<請求項14>請求項1〜請求項13に記載の製造方法で製造された新規調味料、又は新規スプレッド。
<請求項15>請求項14に記載の新規調味料、又は新規スプレッドを添加した食品。
【0009】
本願発明を以上のように構成する理由は、一般的な液体調味料(例えば醤油)やペースト状調味料(例えば味噌)及び野菜搾汁液や果汁などの水溶液とマヨネーズを本技術によって混合した場合、長期安定的に混合された状態を保つことが期待できるからである(普通は比重の差ですぐに分離してしまう)。また、バターやマーガリンを上記のような調味料や水溶液に本技術によって混合した場合、バターやマーガリンが融解する温度に達しても容易には分離せず、長期安定的に混合された状態を保つことが期待できるからである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、混合するだけでマヨネーズやマヨネーズ様ドレッシングをベースとする新規調味料、或いはバターやマーガリンをベースとする新規スプレッドが容易に得られるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
食品添加物として使用できる増粘安定剤やゲル化剤としてペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、プルラン、ゼラチン、アラビアガム、カゼインナトリウム、寒天、ジェランガム、カードラン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、タラガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、カラヤガム、カルボキシメチルセルロース、ガラクトマンナン、トラガントガム等がある。また、食品素材でも、澱粉やデキストリンは多糖類なので、増粘安定剤として使用する場合がある。本願発明では、マヨネーズやバターに混合したい溶液やペーストに、マヨネーズやバターが混合溶液中で移動できなくなるよう粘度を付与することが最重要ポイントであるため、上記の増粘安定剤やゲル化剤は全て使用可能である。しかしながら、これらの増粘安定剤やゲル化剤はどんな種類の溶液に対しても粘度の付与やゲル化が行えるわけではなく、溶液の成分組成により選択しなければならない。特に、醤油のような塩分濃度の高い調味液を対象とする場合、少ない添加量で使用できる増粘安定剤やゲル化剤は限られる。
【0012】
マヨネーズは食用植物油脂の割合が65重量%以上であるため、油分の入っていない一般の液体調味料やペースト状調味料よりも比重が軽い。従って、マヨネーズに醤油やソースを混合して使用する場合、混合してから短期間のうちに使用しないと分離してしまう。分離を防ぐには、混合後、混合液中のマヨネーズが移動しないようにすればよい。そのためには、マヨネーズに混合する溶液の粘度を上げてマヨネーズが溶液中で移動しないような粘度にして混合する。例えば、醤油をマヨネーズと混合する場合、増粘安定剤を醤油に添加して醤油に粘度を付加してから混合する。醤油は塩分濃度が非常に高いため、耐塩性の増粘安定剤やゲル化剤を選択しなければならない。そのような耐塩性の増粘安定剤やゲル化剤としては、キサンタンガムが利用できる。マヨネーズは油滴を水溶液がコーティングしたような状態になっているため、比重の違いによる油滴の移動さえ抑えられれば、水溶液の多少に関係なく均一な混合状態を作ることができる。従って、例えば0.4重量%以上のキサンタンガムを含む醤油(粘度:1.68×10mPa・s)とマヨネーズは、任意の混合比率で安定的に混合することができる。増粘安定剤やゲル化剤はほとんどが水溶性であるため、マヨネーズよりも水溶性成分が多く添加されている半固形状ドレッシング(マヨネーズ様ドレッシング)に対しては、本技術で混合状態をより安定的に維持できる。
【0013】
バターやマーガリンは15%〜20%の水分を含む。高性能のホモミキサーで攪拌して製造されるため、細かい油滴の周囲を薄く水が覆っている状態になっており、カゼインなどの乳タンパク質が乳化剤の役割を果たしている。硬さの違いを除けば、マヨネーズとバター、マーガリンは似た構造をしている。但し、乳タンパク質の乳化力はあまり強くないため、バターやマーガリンを融解温度以上で保温すると油脂と水分が分離してしまう。よって、融点に達しても分離しないようにするためには、マヨネーズの場合と同様に混合する溶液の粘度を上げて液状バターや液状マーガリンが溶液中で移動しないようにすればよい。例えば0.4重量%以上のキサンタンガムを含む醤油(粘度:1.68×10mPa・s)とバターは、バターの混合比率が50重量%以下であれば任意の混合比率で安定的に混合することができる。バターの混合比率が50重量%を超えると、バターやマーガリンの融解温度以上ではキサンタンガムの混合比率が1.0重量%でも混合状態を保つことができない。
【0014】
溶液に粘度を付加したりゲル化したりする場合に考慮しなければならない要因としては、塩分濃度以外に溶液の温度、pH、糖度等がある。例えば、ゼラチンは冷蔵庫で冷却すればゲル化するが、融点が低いため室温程度の温度でも一部が液化して安定性が無い。ペクチンはジャムなどに多用されているが、pHが低く糖度が高くないとゲル化しないものや、ゲル化にカルシウムイオンを要求するものがある。マヨネーズは酢酸を使用しているためpHが低く、ペクチンで固めたジャムを混合した場合混合状態を安定的に保持できる。例えば、野菜や果物の搾汁液やピューレにペクチンを添加してゲル化すると、マヨネーズと安定的に混合できる。バターやマーガリンは水分含有量が20%以下のため、混合する溶液の性質が大きく関る。野菜搾汁液を混合したい場合、ペクチンで粘度を付加するにはレモン果汁や醸造酢等を添加してpHを調製したり、砂糖を添加して糖度を上げたりして野菜搾汁液の性質を調整した後ペクチンを添加してゲル化させて混合すると良い。キサンタンガムは、塩分、pH、糖度等に大きく影響されず、ペクチンよりも低濃度で野菜や果物の搾汁液やピューレに粘度を付与することができる。
【0015】
野菜や果物には、もともとペクチンが含まれている。ペクチナーゼ等の分解酵素を使わずに得た搾汁液を濃縮すると、ペクチン含有量の高い溶液が得られる。ペクチン含有量が1.2%以上の濃縮液は、マヨネーズやバターと混合すると混合状態を安定して保持する。但し、バターの場合混合比率が50重量%を超えると、ペクチンの混合比率が2.0重量%でもバターの融解温度以上では混合状態を保つことができない。
【0016】
マヨネーズの原料の配合比率は、例えば植物油70%、卵黄15%、酢12%、その他3%である(キューピー株式会社ホームページ、http://WWW.nara−wu.ac.jp/fusyo/class/obatag/H19_shigoto/3/3.htm参照)。この配合比を参考に、例えば酢の部分を他の有機酸水溶液に変えれば、酢酸臭の無いマヨネーズ様調味料が製造できる。果汁や濃縮果汁、果物ピューレを使用する場合酢酸臭が果物の風味を損なう場合があるので、このようなマヨネーズ様調味料を使うことが望ましい。同様の考え方でマヨネーズの原料を一部他の成分に変えたり、卵黄の変わりに他の成分で同様の乳化効果を付与したりしたマヨネーズ様調味料やマヨネーズ様ドレッシングは、マヨネーズと同様に使用できる。
【実施例1】
【0017】
10本の50ml遠心チューブを用意し、キサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)をそれぞれに0、0.01g、0.02g、0.04g、0.06g、0.10g、0.12g、0.16g、0.20g,0.30g入れてから各チューブの内容量が20.0gとなるよう醤油(濃口醤油、株式会社テンヨ武田)を注入した。チューブを専用キャップで密封した後、沸騰水に浸してキサンタンガムを溶解した。溶解後各チューブを水道水に浸して冷却し、キサンタンガムをゲル化させた。その後各チューブにマヨネーズ(業務用マヨネーズ205(JAS規格適合品)、キューピー株式会社)を20.0gずつ加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後は室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1に示されるように、醤油とマヨネーズを1:1で混合する場合、醤油のキサンタンガム含有量を0.4重量%以上にすると混合状態を安定に保つのに必要な粘度を醤油に付与できることがわかった。また、キサンタンガム含有量0.4重量%の醤油の粘度をB型粘度計(B8H型、株式会社トキメック)で測定したところ、室温(25.2℃)で1.68×10mPa・sであった。
【実施例2】
【0020】
10本の50ml遠心チューブを用意し、キサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)をそれぞれに0、0.01g、0.02g、0.04g、0.06g、0.10g、0.12g、0.16g、0.20g,0.30g入れてから各チューブの内容量が20.0gとなるよう醤油(濃口醤油、株式会社テンヨ武田)を注入した。チューブを専用キャップで密封した後、沸騰水に浸してキサンタンガムを溶解した。溶解後各チューブを水道水に浸して冷却し、キサンタンガムをゲル化させた。その後各チューブに無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を20.0gずつ加え、50℃の孵卵器に入れてバターを融解後、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後は冷蔵庫で1時間冷却し、バターを固形化させた。各チューブを50℃に設定したウォーターバスに1時間浸漬した後、取り出して目視で混合状態を確認した。確認後60℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、その後取り出して目視で混合状態を確認した。確認後更に70℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、取り出して目視で混合状態を確認した。結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
表2に示されるように、醤油とバターを1:1で混合する場合、醤油のキサンタンガム含有量を0.4%以上にすると70℃以下の温度で醤油とバターの混合状態を少なくとも1時間安定に保つのに必要な粘度を醤油に付与できることがわかった。バターの場合、固形化できる温度では増粘安定剤が無くても混合状態を維持できそうであるが、水溶液の比率が大きくなると流動性が生じて数日後には分離する。醤油のキサンタンガム含有量を0.4%以上にすると70℃、1時間の保温でも分離しないが、−30℃の冷凍庫で一晩保存してもバターのように硬くならず半固形状のままであった。
【実施例3】
【0023】
醤油(濃口醤油、株式会社テンヨ武田)99.6gにキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.4g加え、密閉容器に入れて沸騰水に浸し溶解した。50ml遠心チューブを7本用意し、上記醤油をそれぞれに20g、15g、20g、15g、10g、5g、5g分注した。これらのチューブを冷蔵庫(5℃)で30分冷却した後、マヨネーズ(業務用マヨネーズ205、キューピー株式会社)をそれぞれのチューブに対して5g、5g、10g、15g、20g、15g、20g加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した(それぞれのチューブのマヨネーズと醤油の混合比率は、マヨネーズ:醤油=1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1となっている)。攪拌後は室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。結果を表3に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
表3に示されるように、キサンタンガムを0.4重量%以上添加して粘度を上げた醤油は、任意の混合割合で安定的にマヨネーズと混合できることがわかった。
【実施例4】
【0026】
50ml遠心チューブを7本用意し、醤油をそれぞれに20g、15g、20g、15g、10g、5g、5g分注した後、それぞれのチューブに対して無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を5g、5g、10g、15g、20g、15g、20g加えた(それぞれのチューブのバターと醤油の重量比は、バター:醤油=1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1となっている)。この7本のセットを4セット作製し、それぞれのセットに対してキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.2重量%、0.4重量%、0.6重量%、1.0重量%になるよう添加し、専用キャップで密封した後100℃に設定した孵卵器に入れて時々チューブを振りながらキサンタンガムを溶解した。溶解後、各チューブ内をホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後各チューブを冷蔵庫(5℃)に1時間放置してバターを固化させてから50℃に設定したウォーターバスに1時間浸漬した後、取り出して目視で混合状態を確認した。確認後60℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、その後取り出して目視で混合状態を確認した。確認後更に70℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、取り出して目視で混合状態を確認した。結果を表4〜表6に示す。
【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】
【表6】

【0030】
表4〜表6で示されるように、バターの混合比率が50重量%を超えなければ、0.2重量%以上のキサンタンガムを添加することにより70℃、1時間の保温でも均一な混合状態が維持される。しかしながら、バターの混合比率が50重量%を超えると、1.0重量%になるようキサンタンガムを添加しても分離を抑えることができないことがわかる。尚、キサンタンガムの添加量が0.2重量%でバター:醤油=1:1の混合物は、キサンタンガム添加量が0.4重量%の醤油:バター=1:1の混合物と同じである。
【実施例5】
【0031】
6本の50ml遠心チューブを用意し、キサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)をそれぞれに0、0.02g、0.04g、0.06g、0.08g、0.10g入れてから各チューブの内容量が20.0gとなるようリンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)を注入した(この果汁は透明で澱が無い。製造工程でペクチナーゼ等の酵素による食物繊維の切断と濾過により、ペクチンが除去されている)。チューブを専用キャップで密封した後、沸騰水に浸してキサンタンガムを溶解した。溶解後各チューブを水道水に浸して冷却し、キサンタンガムをゲル化させた。その後各チューブにマヨネーズ(業務用マヨネーズ205(JAS規格適合品)、キューピー株式会社)を20.0gずつ加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後は室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。結果を表7に示す。
【0032】
【表7】

【実施例6】
【0033】
表7で示されるように、リンゴ濃縮果汁とマヨネーズを1:1で混合する場合、醤油のような塩分濃度の高い水溶液に比べて少ない添加量(0.2重量%)のキサンタンガムで混合状態を安定に保つことができる。キサンタンガムを0.2重量%含有するリンゴ濃縮果汁の粘度をB型粘度計(B8H型、株式会社トキメック)で測定したところ、室温(25.2℃)で68.9mPa・sであった。
【0034】
6本の50ml遠心チューブを用意し、キサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)をそれぞれに0、0.02g、0.04g、0.06g、0.08g、0.10g入れてから各チューブの内容量が20.0gとなるようリンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)を注入した(この果汁は透明で澱が無い。製造工程でペクチナーゼ等の酵素による食物繊維の切断と濾過により、ペクチンが除去されている)。チューブを専用キャップで密封した後、沸騰水に浸してキサンタンガムを溶解した。溶解後各チューブを水道水に浸して冷却し、キサンタンガムをゲル化させた。その後各チューブに無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を20.0gずつ加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後は冷蔵庫で1時間冷却し、バターを固形化させた。各チューブを50℃に設定したウォーターバスに1時間浸漬した後、取り出して目視で混合状態を確認した。確認後60℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、その後取り出して目視で混合状態を確認した。確認後更に70℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、取り出して目視で混合状態を確認した。結果を表8に示す。
【0035】
【表8】

【0036】
表8に示されたように、リンゴ濃縮果汁とバターを1:1で混合する場合、リンゴ濃縮果汁に0.2重量%以上のキサンタンガムを添加すれば70℃以下で少なくとも1時間混合状態を安定に保つことができる。
【実施例7】
【0037】
リンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)99.8gにキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.2g加え、密閉容器に入れて沸騰水に浸し溶解した。50ml遠心チューブを7本用意し、上記濃縮果汁をそれぞれに20g、15g、20g、15g、10g、5g、5g分注した。これらのチューブを冷蔵庫(5℃)で30分冷却した後、マヨネーズ(業務用マヨネーズ205、キューピー株式会社)をそれぞれのチューブに対して5g、5g、10g、15g、20g、15g、20g加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した(それぞれのチューブのマヨネーズとリンゴ濃縮果汁の混合比率は、マヨネーズ:リンゴ濃縮果汁=1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1となっている)。攪拌後は室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。結果を表9に示す。
【0038】
【表9】

【0039】
表9に示されるように、キサンタンガムを0.2重量%以上添加して粘度を上げたリンゴ濃縮果汁は、任意の混合割合で安定的にマヨネーズと混合できることがわかった。
【実施例8】
【0040】
50ml遠心チューブを7本用意し、リンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)をそれぞれに20g、15g、20g、15g、10g、5g、5g分注した後、それぞれのチューブに対して無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を5g、5g、10g、15g、20g、15g、20g加えた(それぞれのチューブのバターとリンゴ濃縮果汁の重量比は、バター:リンゴ濃縮果汁=1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1となっている)。この7本のセットを4セット作製し、それぞれのセットに対してキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1.0重量%になるよう添加し、専用キャップで密封した後100℃に設定した孵卵器に入れて時々チューブを振りながらキサンタンガムを溶解した。溶解後、各チューブ内をホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後各チューブを冷蔵庫(5℃)に1時間放置してバターを固化させてから50℃に設定したウォーターバスに1時間浸漬した後、取り出して目視で混合状態を確認した。確認後60℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、その後取り出して目視で混合状態を確認した。確認後更に70℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、取り出して目視で混合状態を確認した。結果を表10〜表12に示す。
【0041】
【表10】

【0042】
【表11】

【0043】
【表12】

【0044】
表10〜表12で示されるように、バターの混合比率が50重量%を超えなければ、0.1重量%以上のキサンタンガムを添加することにより70℃、1時間の保温でも均一な混合状態が維持される。しかしながら、バターの混合比率が50重量%を超えると、1.0重量%になるようキサンタンガムを添加しても分離を抑えることができないことがわかる。尚、キサンタンガムの添加量が0.1重量%でバター:リンゴ濃縮果汁=1:1の混合物は、キサンタンガム添加量が0.2重量%のリンゴ濃縮果汁:バター=1:1の混合物と同じである。
【実施例9】
【0045】
10本の50ml遠心チューブを用意し、LMペクチン(ペクチンD−210、株式会社タカラゲン)をそれぞれに0.04g、0.08g、0.12g、0.16g、0.20g、0.24g、0.28g、0.32g、0.36g、0.40g入れてから各チューブの内容量が20.0gとなるよう予め0.5重量%の乳酸カルシウムを添加したリンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)を注入した(この果汁は透明で澱が無い。製造工程でペクチナーゼ等の酵素による食物繊維の切断と濾過により、ペクチンが除去されている)。チューブを専用キャップで密封した後、沸騰水に浸してペクチンを溶解した。溶解後各チューブを水道水に浸して冷却し、ペクチンをゲル化させた。その後各チューブにマヨネーズ(業務用マヨネーズ205(JAS規格適合品)、キューピー株式会社)を20.0gずつ加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後は室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。結果を表13に示す。
【0046】
【表13】

【0047】
表13に示されるように、ペクチンを添加したリンゴ濃縮果汁とマヨネーズを1:1で混合する場合、1.2重量%の添加量で混合状態を安定に保つことができる。ペクチンを1.2重量%含有するリンゴ濃縮果汁の粘度をB型粘度計(B8H型、株式会社トキメック)で測定したところ、室温(25.2℃)で2.57×10mPa・sであった。
【実施例10】
【0048】
10本の50ml遠心チューブを用意し、LMペクチン(ペクチンD−210、株式会社タカラゲン)をそれぞれに0.04g、0.08g、0.12g、0.16g、0.20g、0.24g、0.28g、0.32g、0.36g、0.40g入れてから各チューブの内容量が20.0gとなるよう予め0.5重量%の乳酸カルシウムを添加したリンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)を注入した(この果汁は透明で澱が無い。製造工程でペクチナーゼ等の酵素による食物繊維の切断と濾過により、ペクチンが除去されている)。チューブを専用キャップで密封した後、沸騰水に浸してペクチンを溶解した。溶解後各チューブを水道水に浸して冷却し、ペクチンをゲル化させた。その後各チューブに無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を20.0gずつ加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後は冷蔵庫で1時間冷却し、バターを固形化させた。各チューブを50℃に設定したウォーターバスに1時間浸漬した後、取り出して目視で混合状態を確認した。確認後60℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、その後取り出して目視で混合状態を確認した。確認後更に70℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、取り出して目視で混合状態を確認した。結果を表14に示す。
【0049】
【表14】

【0050】
表14に示されるように、リンゴ濃縮果汁とバターを1:1で混合する場合、リンゴ濃縮果汁に1.2重量%以上のペクチンを添加すれば70℃以下で少なくとも1時間混合状態を安定に保つことができる。
【実施例11】
【0051】
リンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)98.3gに0.5gの乳酸カルシウムとLMペクチン(ペクチンD−210、株式会社タカラゲン)を1.2g加え、密閉容器に入れて沸騰水に浸し溶解した。50ml遠心チューブを7本用意し、上記濃縮果汁をそれぞれに20g、15g、20g、15g、10g、5g、5g分注した。これらのチューブを冷蔵庫(5℃)で30分冷却した後、マヨネーズ(業務用マヨネーズ205、キューピー株式会社)をそれぞれのチューブに対して5g、5g、10g、15g、20g、15g、20g加え、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した(それぞれのチューブのマヨネーズとリンゴ濃縮果汁の混合比率は、マヨネーズ:リンゴ濃縮果汁=1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1となっている)。攪拌後は室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。結果を表15に示す。
【0052】
【表15】

【0053】
表15に示されるように、ペクチンを1.2重量%以上添加して粘度を上げたリンゴ濃縮果汁は、任意の混合割合で安定的にマヨネーズと混合できることがわかった。
【実施例12】
【0054】
50ml遠心チューブを7本用意し、予め0.5重量%の乳酸カルシウムを添加したリンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)をそれぞれに20g、15g、20g、15g、10g、5g、5g分注した後、それぞれのチューブに対して無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を5g、5g、10g、15g、20g、15g、20g加えた(それぞれのチューブのバターとリンゴ濃縮果汁の重量比は、バター:リンゴ濃縮果汁=1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1となっている)。この7本のセットを4セット作製し、それぞれのセットに対してLMペクチン(ペクチンD−210、株式会社タカラゲン)を0.6重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%になるよう添加し、専用キャップで密封した後100℃に設定した孵卵器に入れて時々チューブを振りながらペクチンを溶解した。溶解後、各チューブ内をホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後各チューブを冷蔵庫(5℃)に1時間放置してバターを固化させてから50℃に設定したウォーターバスに1時間浸漬した後、取り出して目視で混合状態を確認した。確認後60℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、その後取り出して目視で混合状態を確認した。確認後更に70℃に設定したウォーターバスに各チューブを1時間浸漬し、取り出して目視で混合状態を確認した。結果を表16〜表18に示す。
【0055】
【表16】

【0056】
【表17】

【0057】
【表18】

【0058】
表16〜表18で示されるように、バターの混合比率が50重量%を超えなければ、0.6重量%以上のペクチンを添加することにより70℃、1時間の保温でも均一な混合状態が維持される。しかしながら、バターの混合比率が50重量%を超えると、2.0重量%になるようペクチンを添加しても分離を抑えることができないことがわかる。尚、ペクチンの添加量が0.6重量%でバター:リンゴ濃縮果汁=1:1の混合物は、ペクチン添加量が1.2重量%のリンゴ濃縮果汁:バター=1:1の混合物と同じである。
【実施例13】
【0059】
野沢菜の浅漬用調味液(濃縮液)を表19のような配合で調製した。モール法で塩分濃度を分析したところ、12.8%であった。この調味液50gにキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.2g添加し、沸騰水中で溶解した。溶解後水道水に浸して冷却し、ゲル化させてから50ml遠心チューブ2本にそれぞれ20.0gずつ分注した。更にそれぞれのチューブにマヨネーズ(業務用マヨネーズ205、キューピー株式会社)と無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を20.0gずつ加え、それぞれをホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後、調味液入りマヨネーズは室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。また、調味液入りバターは、実施例2の場合と同様に50℃、60℃、70℃のウォーターバスに順次1時間ずつ浸漬し、混合状態を観察した。結果を表20に示す。
【0060】
【表19】

【0061】
【表20】

【0062】
表20に示されるように、醤油とマヨネーズ及び醤油とバターをそれぞれ1:1で混合した場合安定化できるキサンタンガムの添加量で、一般的な浅漬用調味液をマヨネーズやバターと1:1で安定的に混合できることがわかった。
【実施例14】
【0063】
キムチの素調味液を表21のような配合で調製した。モール法で塩分濃度を分析したところ、4.3%であった。この調味液50gにキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.3重量%添加し、沸騰水中で溶解した。溶解後水道水に浸して冷却し、ゲル化させてから50ml遠心チューブ2本にそれぞれ20.0gずつ分注した。更にそれぞれのチューブにマヨネーズ(業務用マヨネーズ205、キューピー株式会社)と無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を20.0gずつ加え、それぞれをホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後、キムチの素調味液入りマヨネーズは室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。また、キムチの素調味液入りバターは、実施例2の場合と同様に50℃、60℃、70℃のウォーターバスに順次1時間ずつ浸漬し、混合状態を観察した。結果を表22に示す。
【0064】
【表21】

【0065】
【表22】

【0066】
表22に示されるように、本キムチの素調味液は塩分濃度が5%以下のため、醤油や実施例13で使用した調味液の場合よりも少ない添加量のキサンタンガムで均一な混合状態を保つことが可能であった。また、本キムチの素調味液にはおろしニンニクや唐辛子、胡麻等水に不溶な成分が目視できる大きさで混在しているが、これらは全体的に均一に分散し、試験中偏りが生じる事は無かった。
【実施例15】
【0067】
グレープフルーツ混濁濃縮果汁(Brix:64.52、TEXAS CITRUS EXCHANGE)の粘度をB型粘度計(B8H型、株式会社トキメック)で測定したところ、室温(25.2℃)で9.86×10mPa・sであった。この濃縮果汁を50ml遠心チューブ2本にそれぞれ20.0gずつ分注した。更にそれぞれのチューブにマヨネーズ(業務用マヨネーズ205、キューピー株式会社)と無塩バター(十勝牧場バター、よつ葉乳業株式会社)を20.0gずつ加え、それぞれをホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後、キムチの素調味液入りマヨネーズは室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。また、キムチの素調味液入りバターは、実施例2の場合と同様に50℃、60℃、70℃のウォーターバスに順次1時間ずつ浸漬し、混合状態を観察した。結果を表23に示す。
【0068】
【表23】

【0069】
濃縮果汁が持つ粘性は、主にペクチンが原因である。使用したグレープフルーツ混濁濃縮果汁の粘度は9.86×10mPa・sで、ペクチン含有量1.2重量%のリンゴ濃縮果汁の粘度の約3.8倍であるため、表23に示されるようにリンゴ濃縮果汁の場合と同様混合状態を安定に保つことができたと考えられる。
【実施例16】
【0070】
醤油(濃口醤油、株式会社テンヨ武田)99.6gにキサンタンガム(キサンタンガムTXG−R、株式会社タカラゲン)を0.4g加え、密閉容器に入れて沸騰水に浸し溶解した。50ml遠心チューブを2本用意し、上記醤油をそれぞれに20g分注した。更にこのうちの1本にはサラダクリーミードレッシング(キューピーハーフ、キューピー株式会社)を20g添加し、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。このドレッシングは、見た目はマヨネーズのようであるが、脂質含有量をマヨネーズの半分にした商品とのことである。他の1本は、マーガリン(適量適価バター風味マーガリン、株式会社シジシージャパン)を20g添加した後、50℃の孵卵器中に置いてマーガリンを溶解してからホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後、チューブを冷蔵庫(5℃)に1時間放置してマーガリンを固化させた。
攪拌後、醤油入りサラダクリーミードレッシングは室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。また、醤油入りマーガリンは、実施例2の場合と同様に50℃、60℃、70℃のウォーターバスに順次1時間ずつ浸漬し、混合状態を観察した。結果を表24に示す。
【0071】
【表24】

【0072】
表24に示されるように、マヨネーズ(食用植物油含有量65%以上)に比べて脂質含有量が半分である半固形状ドレッシングに対しても、マヨネーズの場合と同様に0.4重量%のキサンタンガムを添加した醤油を均一且つ安定的に混合できることがわかった。また、マーガリンに対しても、バターの場合と同様に0.4重量%のキサンタンガムを添加した醤油を均一且つ安定的に混合できることがわかった。しかしながら、マーガリン:キサンタンガム入り醤油=2:1で混合すると、低温下でマーガリンを固化させて混合状態を一時的に保っても、35℃以上で保温するとすぐに分離した。
【実施例17】
【0073】
リンゴ濃縮果汁(糖度50°、株式会社アルプス)98.3gに0.5gの乳酸カルシウムとLMペクチン(ペクチンD−210、株式会社タカラゲン)を1.2g加え、密閉容器に入れて沸騰水に浸し溶解した。50ml遠心チューブを2本用意し、上記果汁をそれぞれに20g分注した。更にこのうちの1本にはサラダクリーミードレッシング(キューピーハーフ、キューピー株式会社)を20g添加し、ホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。他の1本は、マーガリン(適量適価バター風味マーガリン、株式会社シジシージャパン)を20g添加した後、50℃の孵卵器中に置いてマーガリンを溶解してからホモジナイザー(AHG−160D、アズワン株式会社)で8,000rpm、均一になるまで攪拌した。攪拌後、チューブを冷蔵庫(5℃)に1時間放置してマーガリンを固化させた。攪拌後、果汁入りサラダクリーミードレッシングは室温で静置し、1ヶ月間混合状態を観察した。また、果汁入りマーガリンは、実施例2の場合と同様に50℃、60℃、70℃のウォーターバスに順次1時間ずつ浸漬し、混合状態を観察した。結果を表25に示す。
【0074】
【表25】

【0075】
表25に示されるように、マヨネーズ(食用植物油含有量65%以上)に比べて脂質含有量が半分である半固形状ドレッシングに対しても、マヨネーズの場合と同様に1.2重量%のペクチンを添加したリンゴ濃縮果汁を均一且つ安定的に混合できることがわかった。マーガリンに対しては、50℃、1時間では均一な混合状態を保っていたが、60℃以上の温度では分離が認められた。ペクチンを1.4重量%添加した同様のリンゴ濃縮果汁では、60℃、1時間及び70℃、1時間の保温で均一な混合状態を保持した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の技術は、マヨネーズやバター、マーガリン等の油脂含有量の高い調味料やスプレッドに対し、調味液や果汁を均一に混合してその状態を安定的に保つことができる。マヨネーズやバター等の独特のコクに様々な味を付与できるため、従来種類の少なかったマヨネーズ様ドレッシングや果汁入りファットスプレッド等のバリエーションを飛躍的に増やすことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品と、マヨネーズ又はマヨネーズ様ドレッシングを混合することを特徴とする新規調味料の製造方法。
【請求項2】
増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品と、バター又はマーガリンを混合することを特徴とする新規スプレッドの製造方法。
【請求項3】
液状又はペースト状の食品とバター又はマーガリンとの混合物の、バター又はマーガリンの含有量が50重量%以下である請求項2に記載の新規スプレッドの製造方法。
【請求項4】
液状又はペースト状の食品が、5重量%以上の食塩を含んでいる請求項1〜請求項3に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項5】
増粘安定剤又はゲル化剤が、5重量%以上の食塩に耐性を持つ請求項1、又は請求項2に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項6】
液状又はペースト状の食品が、醤油、魚醤、味噌、又はこれらを原料としたものである請求項1〜請求項4に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項7】
増粘安定剤又はゲル化剤が、キサンタンガム、又はこれを原料としている請求項1、請求項2、又は請求項5に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項8】
キサンタンガムの添加量が0.4重量%以上である請求項7に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項9】
増粘安定剤又はゲル化剤を添加して流動性を抑制した液状又はペースト状の食品が、野菜の搾汁液、野菜のピューレ、果汁、濃縮果汁、果物のピューレ、又はこれらのジャムである請求項1〜請求項3に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項10】
増粘安定剤若しくはゲル化剤が、キサンタンガム若しくはペクチン、又はこれらを原料としている請求項9に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項11】
キサンタンガムの添加量が0.2重量%以上である請求項10に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項12】
ペクチンの添加量が1.2重量%以上である請求項10に記載の新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項13】
請求項9の野菜のピューレ、果汁、濃縮果汁、果物のピューレ、又はこれらのジャムに、ペクチンを添加、若しくは添加せずして、ペクチンの含有量を1.2%以上に調整したものを使用する新規調味料、又は新規スプレッドの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項13に記載の製造方法で製造された新規調味料、又は新規スプレッド。
【請求項15】
請求項14に記載の新規調味料、又は新規スプレッドを添加した食品。


【公開番号】特開2012−110282(P2012−110282A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262679(P2010−262679)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509189488)
【Fターム(参考)】