説明

新規遺伝子検出用マイクロアレイとその設計手法及びその応用

【課題】本発明は、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブを設計する方法を提供することや、かかる設計方法により設計されたポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイを提供することや、かかるマイクロアレイを使用する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブに適したアルゴリズムであって、本発明者らが独自に開発したアルゴリズムを採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のマイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブを設計する方法や、かかる設計方法により設計されたポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイや、かかるマイクロアレイを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代シーケンサーや次世代マイクロアレイが開発されたことにより、これらを利用して、主要な生物のゲノムデータ(生物の持つ総遺伝子情報)や、トランスクリプトームデータ(生物の様々な条件における遺伝子発現データ)が大量に取得されている。これらのデータにより、主にモデル生物(例えば、ヒト、マウス、ラット、チンパンジー、ゴリラ、ウマ、ウシ、ネコ、イヌ、ゾウ、ニワトリ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグ、ホヤ、ヤツメウナギ、線虫、ウニ、プラナリア、シロイヌナズナ、イネ、コムギ、タバコ、ショウジョウバエ、カイコ、ミツバチ、大腸菌、枯草菌、藍藻など)と呼ばれる生物や、その近縁種においては、詳細な遺伝子解析が着々と進められている。しかし、モデル生物から進化的に離れているモデル生物(非モデル生物)においては、ゲノムデータやトランスクリプトームデータがほとんど取得されていないため、モデル生物と同様の詳細なレベルでの遺伝子解析は困難であり、遺伝子解析も非常に遅れている。
【0003】
しかし、地球上に生息するとされる全生物の種類が数百万〜1億種類であることからすれば、動物で約30〜40種類、植物で約10〜12種類、微生物で約20〜30種類程度とされているモデル生物の種類はほんの僅かに過ぎない。そして、このモデル生物以外の非モデル生物の中でも、特に、熱帯雨林、海洋、土壌、極地に生息する生物、あるいは、特殊な進化過程をへてきた生物などには、未知の有用遺伝子資源が無数に存在するといわれている。しかし、モデル生物をターゲットとしたマイクロアレイ等の従来の手段では、非モデル生物の遺伝子の探索や発現解析を効率よく行うことが困難であった。
【0004】
DNAマイクロアレイ技術とは、20〜60ヌクレオチド長のDNAプローブを、物理的あるいは生化学的にスライドガラス上に固定化したマイクロアレイに対して、蛍光標識したDNA又はRNAサンプルを接触させ、DNAプローブとサンプル間のハイブリダイゼーション反応を利用して、特定の遺伝子の発現を検出及び定量する技術である。この技術を利用することで、最大数百万種類の遺伝子の検出及び定量を一度に行うことができる。そして、このような極めて多数の遺伝子の検出と定量を精度良く行うために、マイクロアレイのプローブは、通常、対象とするサンプルの生物種に特化して、特定の遺伝子に対する特異性が非常に高くなるように設計されている。したがって、ある種類の生物用のマイクロアレイを、他の種類の生物のサンプルに用いることはできない。ただし、例外として、ある種類の生物用のマイクロアレイを、その生物に非常に近縁な生物種に対して利用可能な場合もある。例えば、「キイロショウジョウバエ」用のマイクロアレイを、その近縁種である「オナジキイロショウジョウバエ」に用いることは可能であることが知られている(非特許文献1)。様々な生物間の推定分岐年代を記載した“TIME TREE”というウェブサイト上のデータベース(http://www.timetree.org/about.php)によれば、この「キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)」と、「オナジキイロショウジョウバエ(Drosophila simulans)」は、推定分岐年代で約280万年〜450万年程度(http://www.timetree.org/time_query.php?taxon_a=7227&taxon_b=7240)しか離れていないほど近縁な生物である。
【0005】
また、この他に、多種生物種間でマイクロアレイ解析を行う技術として、異種間ハイブリダイゼーション(Cross-species hybridization)という手法が知られている(非特許文献2〜5)。しかしながら、この異種間ハイブリダイゼーションは、各生物種に特化したプローブを生物種ごとにそれぞれ同じマイクロアレイに配置したものを用いることで、多種生物間の発現比較を行う技術である。具体的には、ヒト、チンパンジー、オランウータンから同一祖先遺伝子由来の現存する遺伝子を1つずつ選択し、そのヒト遺伝子に特異的なプローブ、チンパンジー遺伝子に特異的なプローブ及びオランウータン遺伝子に特異的なプローブをそれぞれ配置したマイクロアレイを用いることによって、ヒト、チンパンジー、オランウータンの3種におけるそれらの遺伝子発現の違いを観察することが可能となる。しかし、このように、異種間ハイブリダイゼーションは、ある種類の生物用のプローブを異種のサンプルに適用する技術ではないし、ましてや、異種のサンプルからの新規な相同遺伝子のスクリーニングや、その異種のサンプル中のその相同遺伝子の発現解析に適用する技術でもない。すなわち、異種間ハイブリダイゼーションにおいても、マイクロアレイに用いるプローブは、特定の1種の生物の特定の遺伝子に特異的に設計されているため、かかるマイクロアレイを用いて、異種の新規相同遺伝子をスクリーニングしたり、その異種のサンプル中のその相同遺伝子の発現解析を行うことは不可能である。
【0006】
また、新規な遺伝子を探索する一般的な方法として、既知の類似遺伝子の配列に基づいて設計したプライマーを用いてPCR増幅を試みる方法がある。しかし、この方法では、一度に1〜数百種類程度の遺伝子しか探索することができず、また、探索対象の遺伝子の配列とほぼ100%一致するプライマーを設計できた場合にしか、その遺伝子配列を増幅することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Michalak and Noor. Genome-wide patterns of expression in Drosophila pure species and hybrid males. Mol Biol Evol (2003) vol. 20 (7) pp. 1070-6.
【非特許文献2】Erwin TL (1982) Tropical forests: their richness in Coleoptera and other arthropod species. The Coleopterists Bulletin 36: 74-75.
【非特許文献3】Novotny et al. (2002) Low host specificity of herbivorous insects in a tropical forest. Nature 416: 841-844.
【非特許文献4】Wheeler, Q. D. 1990. Ontogeny and character phylogeny. Cladistics 6: 225-264.
【非特許文献5】Liolios K, Chen IM, Mavromatis K, Tavernarakis N, Hugenholtz P, Markowitz VM, Kyrpides NC. The Genomes On Line Database (GOLD) in 2009: status of genomic and metagenomic projects and their associated metadata. NAR Epub, Nov 13, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブを設計する方法を提供することや、かかる設計方法により設計されたポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイを提供することや、かかるマイクロアレイを使用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
背景技術において前述したように、従来のマイクロアレイに用いるプローブは、特定の1種の生物の特定の遺伝子に特異的に設計されているため、かかるマイクロアレイを用いて、異種の新規な相同遺伝子をスクリーニングしたり、その異種のサンプル中のその相同遺伝子の発現解析を行うことは不可能であった。また、かかる従来のマイクロアレイの性質から、マイクロアレイにて、配列未知の対象を検出するという発想自体が当業者にはなかった。
【0010】
本発明者らは、このような状況の下、鋭意研究を行い、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブの設計に関する独自のアルゴリズムを開発し、かかる設計方法を利用して、各相同遺伝子に対応する、ヒト遺伝子由来のポリヌクレオチドプローブを設計し、そして、これらのポリヌクレオチドプローブを備えたマイクロアレイを作製した。
【0011】
次いで、このマイクロアレイのポリヌクレオチドプローブの配列に各種の変異を導入し、該ポリヌクレオチドプローブのどのような位置にどの程度の変異を導入しても、相同遺伝子に対する検出感度があまり低下しないかを調べた。本発明者らは、この結果を前述のアルゴリズムに反映させて、前述の設計方法の改良を行った。
【0012】
改良した設計方法を利用して、各オーソロガス遺伝子に対応する、ヒト遺伝子由来のポリヌクレオチドプローブを7987種類設計し、これらのポリヌクレオチドプローブを備えたマイクロアレイを作製した。このマイクロアレイを、ヒトとの推定分岐年代が7億年以上であるゲノム未知生物であるヒメイカのmRNAに適用したところ、ヒト遺伝子と相同な遺伝子を5千4百種類以上も検出することができた。
【0013】
これらの知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)マイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブ配列を設計する方法であって、以下の工程(a)〜(h)を含み、前記ポリヌクレオチドプローブ配列が30〜60ヌクレオチド長であり、かつ、前記マイクロアレイが、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイであることを特徴とする方法;
(a)少なくとも2種類のゲノム既知生物におけるオーソロガス遺伝子のセットを2セット以上同定する工程;
(b)同定したセットのうち、1つのセット中のオーソロガス遺伝子について、ヌクレオチド配列同一性に基づいたマルチプルアライメント処理を行うことによって、マルチプルアライメント配列を作成する工程;
(c)前記マルチプルアライメント配列から、ポリヌクレオチドプローブのヌクレオチド長のプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、隣接するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の末端同士が前記ヌクレオチド長の少なくとも15%以上のヌクレオチド長で重複するように、順に取得する工程;
(d)各プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列に含まれるゲノム既知生物間のプローブ予備候補配列のヌクレオチド配列同一性を算出し、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列において、各ゲノム既知生物のプローブ予備候補配列間で、配列が同一でない部位のうち、95%以上に相当する部位が、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の3’末端側から33%以内に相当する領域に位置するという条件を充足するかどうかを、ヌクレオチド配列同一性が高いプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列から順に確認し、前記条件を初めて充足するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物のプローブ予備候補配列を第1プローブ候補配列とする工程;
(e)前記第1プローブ候補配列が、前記工程(a)における少なくとも2種類のゲノム既知生物の前記工程(b)におけるセットのオーソロガス遺伝子以外のいずれの遺伝子のヌクレオチド配列とも、前記第1プローブ候補配列のヌクレオチド長の18%以上に相当するヌクレオチド数のヌクレオチドが異なっているという条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記第1プローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(f)前記第1プローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(d)において、次に前記工程(d)記載の条件を充足するプローブ候補マルチプルアラインメント配列を、次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記の次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物の配列を次のプローブ候補配列とし、前記の次のプローブ候補配列が前記工程(e)記載の条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(g)前記次のプローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(e)記載の条件を充足するまで、前記工程(f)を順に繰り返し、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(h)前記工程(b)から(g)までの工程を、前記工程(a)で同定した他のセットについて行う工程;や、
(2)ゲノム未知生物と、工程(a)における各ゲノム既知生物との推定分岐年代が、5百万年以上であることを特徴とする上記(1)に記載の方法や、
(3)ゲノム未知生物と、工程(a)における各ゲノム既知生物との推定分岐年代が、1千万年以上7億年以下であることを特徴とする上記(1)に記載の方法や、
(4)前記工程(a)における2セット以上のオーソロガス遺伝子が、2000セット以上のオーソロガス遺伝子であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法に関する。
【0015】
また、本発明は、(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法により設計されたポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイを、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に使用する方法や、
(6)少なくとも2種類のゲノム既知生物が、ヒト、マウス及びラットから選択される2種類以上の生物であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の方法に関する。
【0016】
さらに、本発明は、(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法により設計されたポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のマイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブを設計する方法によれば、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイに非常に好適なポリヌクレオチドプローブを設計することができる。また、本発明のマイクロアレイによれば、様々なゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析を、きわめて効率よく、かつ、高感度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイにおけるポリヌクレオチドプローブ配列を1ヌクレオチド置換した場合の検出感度を示す図である。横軸はマイクロアレイにおける検出感度(Expression Intensities[RAW])を、縦軸には、変異を導入していないポリヌクレオチドプローブ配列との検出感度の比率(2−4、2−3、2−2、2−1、2、2、2倍)を示す。○は、各々のポリヌクレオチドプローブ配列で検出した結果を示す。変異を導入した箇所を示すヌクレオチドの位置番号は、ポリヌクレオチドプローブ配列の5’末端を1とし、3’末端を60とした場合に基づいている。
【図2】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイにおけるポリヌクレオチドプローブ配列を3ヌクレオチド置換した場合の検出感度を示す図である。横軸はマイクロアレイにおける検出感度(RAW)を、縦軸には、変異を導入していないポリヌクレオチドプローブ配列との検出感度の比率(2−4、2−3、2−2、2−1、2、2、2倍)を示す。○は、各々のポリヌクレオチドプローブ配列で検出した結果を示す。変異を導入した箇所を示すヌクレオチドの位置番号は、ポリヌクレオチドプローブ配列の5’末端を1とし、3’末端を60とした場合に基づいている。
【図3】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイにおけるポリヌクレオチドプローブ配列を5ヌクレオチド置換した場合の検出感度を示す図である。横軸はマイクロアレイにおける検出感度(RAW)を、縦軸には、変異を導入していないポリヌクレオチドプローブ配列との検出感度の比率(2−4、2−3、2−2、2−1、2、2、2倍)を示す。○は、各々のポリヌクレオチドプローブ配列で検出した結果を示す。
【図4】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイにおけるポリヌクレオチドプローブ配列を7ヌクレオチド置換した場合の検出感度を示す図である。横軸はマイクロアレイにおける検出感度(RAW)を、縦軸には、変異を導入していないポリヌクレオチドプローブ配列との検出感度の比率(2−4、2−3、2−2、2−1、2、2、2倍)を示す。○は、各々のポリヌクレオチドプローブ配列で検出した結果を示す。
【図5】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイにおける再現性を示す図である。図1〜図4で行ったマイクロアレイによる検出をさらに5回行い、横軸には左から順に1回目〜6回目の結果を、縦軸には上から順に1回目〜6回目を並べ、それぞれ比較して示す。○は、各々のポリヌクレオチドプローブ配列で検出した結果を示す。
【図6】ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイにおける再現性と信頼性との関係を示す図である。図5で得られた結果を基に、横軸にはマイクロアレイにおける検出感度(RAW)を、縦軸には6回の結果における標準誤差を示す。●は、各々のポリヌクレオチドプローブ配列で検出した結果を示す。
【図7】ゲノム未知生物であるヒメイカにおける実際の検出実験の結果を示す図である。A:ヒトの配列をベースにデザインした新規遺伝子検出用マイクロアレイを用いて、ヒメイカの二つの組織(Head又はBody)由来のRNAに対して相同性検出を行った結果を示す。B:グラフの左半分は、ヒトの既知遺伝子の配列をベースにデザインしたプローブを備えた新規遺伝子検出用マイクロアレイを用いて検出された、ヒメイカにおける相同遺伝子の検出感度と相同遺伝子の累計和を示し、グラフの右半分は、イカの既知遺伝子をベースにデザインしたプローブを備えたマイクロアレイ(コントロールのマイクロアレイ)を用いて検出された、ヒメイカにおける遺伝子の累計和を示す。
【図8】ヒメイカの頭部及び胴部で発現強度が大きく異なる15種類の遺伝子を同定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.マイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブ配列を設計する方法
本発明の「マイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブ配列を設計する方法」(以下、単に「本発明のプローブ設計方法」とも表示する。)は、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイ用の30〜60ヌクレオチド長のポリヌクレオチドプローブ配列を設計する方法であり、かつ、以下の工程(a)〜(h)を含んでいる限り特に制限されない。
(a)少なくとも2種類のゲノム既知生物におけるオーソロガス遺伝子のセットを2セット以上同定する工程;
(b)同定したセットのうち、1つのセット中のオーソロガス遺伝子について、ヌクレオチド配列同一性に基づいたマルチプルアライメント処理を行うことによって、マルチプルアライメント配列を作成する工程;
(c)前記マルチプルアライメント配列から、ポリヌクレオチドプローブのヌクレオチド長のプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、隣接するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の末端同士が前記ヌクレオチド長の少なくとも15%以上のヌクレオチド長で重複するように、順に取得する工程;
(d)各プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列に含まれるゲノム既知生物間のプローブ予備候補配列のヌクレオチド配列同一性を算出し、
該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列において、各ゲノム既知生物のプローブ予備候補配列間で、配列が同一でない部位のうち、95%以上に相当する部位が、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の3’末端側から33%以内に相当する領域に位置するという条件を充足するかどうかを、ヌクレオチド配列同一性が高いプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列から順に確認し、
前記条件を初めて充足するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物のプローブ予備候補配列を第1プローブ候補配列とする工程;
(e)前記第1プローブ候補配列が、前記工程(a)における少なくとも2種類のゲノム既知生物の前記工程(b)におけるセットのオーソロガス遺伝子以外のいずれの遺伝子のヌクレオチド配列とも、前記第1プローブ候補配列のヌクレオチド長の18%以上に相当するヌクレオチド数のヌクレオチドが異なっているという条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記第1プローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(f)前記第1プローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(d)において、次に前記工程(d)記載の条件を充足するプローブ候補マルチプルアラインメント配列を、次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記の次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物の配列を次のプローブ候補配列とし、前記の次のプローブ候補配列が前記工程(e)記載の条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(g)前記次のプローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(e)記載の条件を充足するまで、前記工程(f)を順に繰り返し、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(h)前記工程(b)から(g)までの工程を、前記工程(a)で同定した他のセットについて行う工程;
【0020】
本発明のプローブ設計方法は、前述の工程(a)〜(h)を含んでいることによって、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析を効率よく、かつ、高感度で行うことが可能なマイクロアレイに非常に好適なポリヌクレオチドプローブ配列を設計することができる。なお、本明細書における「相同遺伝子」とは、オーソロガス遺伝子とパラロガス遺伝子のいずれをも含む概念である。本明細書における「オーソロガス遺伝子(orthologous gene)」とは、相同遺伝子のうち、その相同性が種分岐によってもたらされた遺伝子を意味し、「パラロガス遺伝子(paralogous gene)」とは、相同遺伝子のうち、ある生物種において遺伝子重複によってもたらされた遺伝子を意味する。本発明のプローブ設計方法では、オーソロガス遺伝子の配列を用いているが、パラロガス遺伝子も相同遺伝子であることには変わりないため、パラロガス遺伝子のスクリーニングや発現解析についても同様に行うことができる。
【0021】
上記工程(a)としては、少なくとも2種類のゲノム既知生物におけるオーソロガス遺伝子のセットを2セット以上同定する工程である限り特に制限されず、かかるオーソロガス遺伝子を同定する方法として、例えば、Genbank等の配列データベースからゲノム既知生物の遺伝子配列(コード領域の配列)を入手し、その遺伝子配列のゲノム既知生物間の同一性をBLAST等のプログラムを用いて計算し、その計算結果に基づいて「single linkage clustering」(シングルリンケージクラスタリング)アルゴリズムを用いた分類処理(クラスタリング処理)を行うことによって、ゲノム既知生物間のオーソロガス遺伝子のセットを同定する方法を好適に例示することができる。
【0022】
上記工程(a)において用いるゲノム既知生物の種類数としては、少なくとも2種類である限り特に制限されないが、2〜30種類の範囲内であることを好適に例示することができ、中でも、2〜10種類の範囲内であることをより好適に例示することができ、中でも、2〜5種類の範囲内であることをさらに好適に例示することができ、中でも、2〜3種類の範囲内であることをより好適に例示することができる。
【0023】
本明細書における「ゲノム既知生物」とは、全ゲノムデータ(総遺伝子情報)が明らかになっている動物、植物、細菌、原生生物等の生物である限り特に制限されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、チンパンジー、ゴリラ、ウマ、ウシ、ネコ、イヌ、ゾウ、ニワトリ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグ、ホヤ、ヤツメウナギ、線虫、ウニ、プラナリア、シロイヌナズナ、イネ、コムギ、タバコ、ショウジョウバエ、カイコ、ミツバチ、大腸菌、枯草菌、藍藻などを好適に例示することができる。ある生物がゲノム既知生物かどうかは、GOLD Genomes OnLine Database(http://www.genomesonline.org/cgi-bin/GOLD/bin/gold.cgi)等のデータベースにアクセスすることによって、容易に確認することができる。
【0024】
上記工程(a)において用いるゲノム既知生物の種類としては、相同遺伝子のスクリーニングや発現解析の対象とするゲノム未知生物と近縁な種類のゲノム既知生物(例えば、そのゲノム未知生物との推定分岐年代が5百万年未満の種類のゲノム既知生物)であってもよいが、該ゲノム未知生物との推定分岐年代が5百万年以上の種類のゲノム既知生物であってもよいし、1千万年以上7億年以下(あるいは1億年以上7億年以下、又は2億年以上7億年以下)の種類のゲノム既知生物であってもよい。このように、本発明のプローブ設計方法によれば、工程(a)で用いたゲノム既知生物と進化的にきわめて離れたゲノム未知生物に対しても用いうるプローブを設計することができる。したがって、本発明のプローブ設計方法により設計したポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを備えたマイクロアレイは、対象とするゲノム未知生物との推定分岐年代をほとんど問わずに汎用することができるため、コスト面でも非常に優れている。
【0025】
なお、二つの生物種間の推定分岐年代は、その両生物の遺伝子配列(1つ以上)について、ClustalW, Muscleなどのマルチプルアラインメント作成ソフトを用いて、アラインメントを作成し、Kimura-1 parameter methodなどを用いて推定してもよいし、例えば“TIME TREE”というウェブサイト上のデータベースにアクセスして(http://www.timetree.net)、両生物名を入力して検索してもよい。
【0026】
上記工程(a)において同定するオーソロガス遺伝子のセット数は、2セット以上であれば特に制限されないが、より多くの相同遺伝子を1度で解析し得るマイクロアレイを作製する観点から、10セット以上であることが好ましく、100セット以上であることがより好ましく、500セット以上であることがさらに好ましく、1000セット以上であることがより好ましく、2000セット以上であることがさらに好ましく、4000セット以上であることがより好ましく、6000セット以上であることがさらに好ましく、また、同定可能なすべてのオーソロガス遺伝子を同定することが特に好ましい。
【0027】
上記工程(b)としては、同定したセットのうち、1つのセット中のオーソロガス遺伝子について、ヌクレオチド配列同一性に基づいたマルチプルアライメント処理を行うことによって、マルチプルアライメント配列を作成する工程である限り特に制限されず、かかるマルチプルアラインメント配列を作成する方法として、BLAST等のプログラムを用いてマルチプルアラインメント処理する方法を好適に例示することができる。
【0028】
上記工程(c)としては、前記マルチプルアライメント配列から、ポリヌクレオチドプローブのヌクレオチド長のプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、隣接するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の末端同士が前記ヌクレオチド長の少なくとも15%以上(好ましくは15%以上70%以下、より好ましくは15%以上50%以下)のヌクレオチド長で重複するように、順に取得する工程である限り特に制限されず、かかるプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を順に取得する方法として、ClustalW等を用いた方法を好適に例示することができる。
【0029】
上記工程(c)において、かかるプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を重複するように取得すると、優れたプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列が偶然に漏れる可能性を低下させることができる。
【0030】
上記工程(d)としては、各プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列に含まれるゲノム既知生物間のプローブ予備候補配列のヌクレオチド配列同一性を算出し、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列において、各ゲノム既知生物のプローブ予備候補配列間で、配列が同一でない部位のうち、95%以上に相当する部位が、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の3’末端側から33%以内に相当する領域に位置するという条件を充足するかどうかを、ヌクレオチド配列同一性が高いプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列から順に確認し、前記条件を初めて充足するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物のプローブ予備候補配列を第1プローブ候補配列とする工程である限り特に制限されない。また、詳細な原理は不明であるが、かかる工程(d)を備えていることにより、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニングや発現解析の感度が特に優れたポリヌクレオチドプローブ配列を設計することができる。
【0031】
上記工程(d)において、各プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列に含まれるゲノム既知生物間のプローブ予備候補配列のヌクレオチド配列同一性を算出したり、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列において、各ゲノム既知生物のプローブ予備候補配列間で、配列が同一でない部位(ヌクレオチド)のうち、95%以上(好ましくは98%以上、最も好ましくは100%)に相当する部位(ヌクレオチド)が、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の3’末端側から33%以内(好ましくは25%以内、より好ましくは20%以内)に相当する領域に位置するという条件を充足するかどうかを、ヌクレオチド配列同一性が高いプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列から順に確認する方法として、ClustalW等を用いた方法を好適に例示することができる。
【0032】
上記工程(e)としては、前記第1プローブ候補配列が、前記工程(a)における少なくとも2種類のゲノム既知生物の前記工程(b)におけるセットのオーソロガス遺伝子以外のいずれの遺伝子のヌクレオチド配列とも、前記第1プローブ候補配列のヌクレオチド長の18%以上(好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上)に相当するヌクレオチド数のヌクレオチドが異なっているという条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記第1プローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程である限り特に制限されず、前述の条件を充足するかどうかを確認する方法として、ClustalW等を用いた方法を好適に例示することができる。かかる工程(e)を備えていることにより、設計したポリヌクレオチドプローブ配列がクロスハイブリダイゼーションするのを抑制することができる。クロスハイブリダイゼーションとは、2種類のプローブが同じ遺伝子を検出してしまったり、あるいは、1種類のプローブが2種類の遺伝子を検出してしまうハイブリダイゼーションを意味する。
【0033】
上記工程(e)において、第1プローブ候補配列と、その相補配列のいずれを選択するかは、本発明のプローブ設計方法で設計したポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを備えたマイクロアレイを使用する際に、ゲノム未知生物由来のmRNAを鋳型として用いた逆転写反応及び/又はポリメラーゼ反応をどのように行って、標識された検出用ポリヌクレオチドサンプルを調製するかによって判断することができる。すなわち、検出用ポリヌクレオチドサンプルがアンチセンス配列となる場合は、第1プローブ候補配列(センス配列)を選択し、検出用ポリヌクレオチドサンプルがセンス配列となる場合は、第1プローブ候補配列の相補配列(アンチセンス配列)を選択することになる。このように選択することにより、検出用ポリヌクレオチドサンプルと適切にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブ配列を選択することができる。
【0034】
上記工程(f)としては、前記第1プローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(d)において、次に前記工程(d)記載の条件を充足するプローブ候補マルチプルアラインメント配列を、次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記の次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物の配列を次のプローブ候補配列とし、前記の次のプローブ候補配列が前記工程(e)記載の条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程である限り特に制限されず、かかる工程(f)において、次のプローブ候補配列と、その相補配列のいずれを選択するかは、前述した工程(e)と同じ基準に基づいて判断することができる。
【0035】
上記工程(g)としては、前記次のプローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(e)記載の条件を充足するまで、前記工程(f)を順に繰り返し、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程である限り特に制限されず、かかる工程(g)において、次のプローブ候補配列と、その相補配列のいずれを選択するかは、前述した工程(e)と同じ基準に基づいて判断することができる。
【0036】
上記工程(h)としては、前記工程(b)から(g)までの工程を、前記工程(a)で同定した他のセットについて行う工程である限り特に制限されない。ここで、「前記工程(a)で同定した他のセット」とは、前記工程(a)で同定したオーソロガス遺伝子のセットのうち、上記工程(b)でマルチプルアラインメント処理を行ったセット以外のセットを意味し、前記工程(a)で同定したオーソロガス遺伝子のセットの一部であってもよいが、前記工程(a)で同定したオーソロガス遺伝子のすべてのセットであることが好ましい。
【0037】
本発明のプローブ設計方法が設計するポリヌクレオチドプローブ配列として、一本鎖DNAのプローブ配列を好適に例示することができる。また、本発明の効果が得られる限り、設計したポリヌクレオチドプローブ配列と95%以上(好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上)の配列同一性を有し、かつ、上記工程(d)の条件及び上記工程(e)の条件を充足するポリヌクレオチドプローブ配列についても、ポリヌクレオチドプローブ配列として用いることができる。
【0038】
2.マイクロアレイ
本発明のマイクロアレイは、本発明のプローブ設計方法により設計されたポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイである限り特に制限されないが、より多くの相同遺伝子を1度で解析し得ることから、前記ポリヌクレオチドプローブを10種類以上備えていることが好ましく、100種類以上備えていることがより好ましく、500種類以上備えていることがさらに好ましく、1000種類以上備えていることがより好ましく、2000種類以上備えていることがさらに好ましく、4000種類以上備えていることがより好ましく、6000種類以上備えていることがさらに好ましく、また、本発明のプローブ設計方法において同定可能なオーソロガス遺伝子のすべてにそれぞれ対応するポリヌクレオチドプローブを備えていることが特に好ましい。
【0039】
本発明のマイクロアレイが備えるポリヌクレオチドプローブとしては、一本鎖DNAのプローブを好適に例示することができる。かかるポリヌクレオチドプローブは、例えば、核酸合成装置によって化学的に合成することで取得することができる。核酸合成装置としては、DNAシンセサイザー、全自動核酸合成装置、核酸自動合成装置等と呼ばれる装置を用いることができる。
【0040】
本発明のマイクロアレイは、前述のポリヌクレオチドプローブを担体上に固定化することにより、作製することができる。ポリヌクレオチドプローブを担体上に固定化する方法としては、特に制限されず、Agilent社等のカスタムアレイ受託作製サービスを利用してもよいが、例えば以下のような方法を用いることができる。
【0041】
ポリヌクレオチドプローブを、スポッティング用バッファーに溶解してスポッティング用溶液を調製し、これを96穴もしくは384穴プラスチックプレート等に分注し、分注した溶液をスポッター装置等によって担体上にスポッティングする。あるいは、スポッティング溶液をマイクロピペッターにて手動でスポッティングしてもよい。スポッティング後、ポリヌクレオチドプローブが担体に結合する反応を進行させるため、インキュベーションを行うことが好ましい。インキュベーションは、−20〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で、通常0.5〜16時間、好ましくは1〜2時間にわたって行う方法を例示することができる。インキュベーションは、高湿度の雰囲気下、例えば、湿度50〜90%の条件で行うことを好適に例示することができる。インキュベーションに続き、担体に結合していないポリヌクレオチドプローブを除去するため、洗浄液(例えば、50mM TBS/0.05% Tween20、2×SSC/0.2%SDS溶液、超純水など)を用いて洗浄を行うことが好ましい。
【0042】
上記担体の材料としては、特に制限されず、当技術分野で公知のもの等を使用することができる。担体の材料の例としては、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステン、及びそれらを含む化合物などの貴金属、並びに、グラファイト、カ−ボンファイバ−に代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド及びポリスルホンなどの有機材料;等が挙げられる。上記担体の形状も特に制限されず、長方形、正方形、丸形などであって、かつ、平板状であることを好適に例示することができる。
【0043】
上記の担体として、好適には、表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体を用いることができる。表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体には、担体の表面にカーボン層と化学修飾基とを有するもの、及び、カーボン層からなる担体の表面に化学修飾基を有するものが包含される。
【0044】
上記カーボン層としては、特に制限されないが、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたものを用いることが好ましい。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を用いてもよい。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。カーボン層は、化学的安定性に優れておりその後の化学修飾基の導入や分析対象物質との結合における反応に耐えることができる点、分析対象物質と静電結合によって結合するためその結合が柔軟性を持っている点、UV吸収がないため検出系UVに対して透明性である点、およびエレクトロブロッティングの際に通電可能な点において有利である。また、分析対象物質との結合反応において、非特異的吸着が少ない点においても有利である。
【0045】
本発明においてカーボン層の形成は公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザ蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。
【0046】
前述の高周波プラズマCVD法では、高周波によって電極間に生じるグロー放電により原料ガス(メタン)を分解し、担体上にカーボン層を合成する。イオン化蒸着法では、タングステンフィラメントで生成される熱電子を利用して、原料ガス(ベンゼン)を分解・イオン化し、バイアス電圧によって担体上にカーボン層を形成する。水素ガス1〜99体積%と残りメタンガス99〜1体積%からなる混合ガス中で、イオン化蒸着法によりカーボン層を形成してもよい。
【0047】
前述のアーク式蒸着法では、固体のグラファイト材料(陰極蒸発源)と真空容器(陽極)の間に直流電圧を印加することにより真空中でアーク放電を起こして陰極から炭素原子のプラズマを発生させ蒸発源よりもさらに負のバイアス電圧を担体に印加することにより担体に向かってプラズマ中の炭素イオンを加速しカーボン層を形成することができる。
【0048】
前述のレーザ蒸着法では、例えばNd:YAGレーザ(パルス発振)光をグラファイトのターゲット板に照射して溶融させ、ガラス担体上に炭素原子を堆積させることによりカーボン層を形成することができる。
【0049】
担体の表面にカーボン層を形成する場合、カーボン層の厚さは、通常、単分子層〜100μm程度であり、薄すぎると下地担体の表面が局部的に露出する可能性があり、逆に厚くなると生産性が悪くなるので、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0050】
カーボン層が形成された担体の表面に化学修飾基を導入することにより、ポリヌクレオチドプローブを担体に強固に固定化できる。導入する化学修飾基は、当業者であれば適宜選択することができ、特に制限されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ホルミル基、ヒドロキシル基および活性エステル基を例示することができる。
【0051】
前述のアミノ基の導入は、例えば、カーボン層をアンモニアガス中で紫外線照射することによりまたはプラズマ処理することにより実施できる。または、カーボン層を塩素ガス中で紫外線を照射して塩素化し、さらにアンモニアガス中で紫外線照射することにより実施できる。または、メチレンジアミン、エチレンジアミンで等の多価アミン類ガス中を、塩素化したカーボン層と反応させることによって実施することもできる。
【0052】
前述のカルボキシル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な化合物を反応させることにより実施できる。カルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X−R−COOH(式中、Xはハロゲン原子、Rは炭素数10〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、3−クロロアクリル酸、4−クロロ安息香酸;式:HOOC−R−COOH(式中、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R−CO−R−COOH(式中、Rは水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X−OC−R−COOH(式中、Xはハロゲン原子、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
【0053】
前述のエポキシ基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な多価エポキシ化合物を反応させることによって実施できる。あるいは、カーボン層が含有する炭素=炭素2重結合に有機過酸を反応させることにより得ることができる。有機過酸としては、過酢酸、過安息香酸、ジペルオキシフタル酸、過ギ酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられる。
【0054】
前述のホルミル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に、グルタルアルデヒドを反応させることにより実施できる。
【0055】
前述のヒドロキシル基の導入は、例えば、前記のように塩素化したカーボン層に、水を反応させることにより実施できる。
【0056】
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味する。エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、水酸基等の基に対する反応性を有する。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。より具体的には、活性エステル基としては、たとえばp−ニトロフェニル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基等が挙げられ、特に、N−ヒドロキシスクシンイミド基が好ましく用いられる。
【0057】
前述の活性エステル基の導入は、例えば、前記のように導入したカルボキシル基を、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN−ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物で活性エステル化することにより実施できる。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N−ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる(特開2001−139532号参照)。
【0058】
なお、本発明のマイクロアレイは、本発明におけるポリヌクレオチドプローブのすべてを単一の担体に固定する必要はかならずしもなく、複数の担体を併用してもよい。また、本発明のマイクロアレイは、特定のセットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブを1本だけ備えていてもよいし、場合によっては、2本以上備えていてもよい。
【0059】
3.マイクロアレイを使用する方法
本発明のマイクロアレイを使用する方法としては、本発明のマイクロアレイを、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に使用する方法である限り特に制限されないが、以下の工程(A)〜(D)を含む方法を好適に例示することができ、中でも、これらの工程に加えてさらに以下の工程(E)を含む方法をより好適に例示することができる。
(A)ゲノム未知生物由来の試料からRNAサンプルを抽出する工程;
(B)前記RNAサンプルを鋳型として用いた逆転写反応及び/又はポリメラーゼ反応を行うことによって、標識された検出用ポリヌクレオチドサンプルを調製する工程;
(C)前記の検出用ポリヌクレオチドサンプルと、本発明のマイクロアレイとを接触させて、ハイブリダイゼーション反応を行う工程;
(D)本発明のマイクロアレイにハイブリダイズした検出用ポリヌクレオチドサンプルを、標識を指標として検出する工程;
(E)前記工程(D)で検出した結果を分析することによって、前記ゲノム未知生物における相同遺伝子をスクリーニングし、又は、該相同遺伝子の発現解析を行う工程;
【0060】
上記工程(A)としては、ゲノム未知生物由来の試料からRNAサンプルを抽出する工程である限り特に制限されず、かかる方法としては、タンパク変性剤による処理、フェノール/クロロホルム抽出を含む常法を採用することができるが、市販のキットを用いることにより、RNAサンプルを容易に精製することができる。上記RNAサンプルとしては、mRNAを含むRNAサンプルであればトータルRNAであってもよいが、スクリーニングや発現解析をより高精度で行う観点からはmRNAを好適に例示することができる。また、上記試料としては、RNAサンプルを含みうる試料である限り特に制限されないが、細胞、組織又は臓器(例えば、心臓、膵臓、肝臓、卵巣、肺、脳、骨髄、リンパ節および腎臓など)の破砕物及び抽出液、並びに、血液関連試料(血液、血清及び血漿など)、リンパ液、汗、涙、唾液、腹水および髄液等の体液などを例示することができ、中でも、細胞、組織又は臓器の破砕物及び抽出液を好適に例示することができる。
【0061】
また、本明細書における「ゲノム未知生物」とは、ゲノムの全データ(総遺伝子情報)は明らかになっていない動物、植物、細菌、原生生物等の生物を意味し、一部のゲノムデータ(遺伝子情報)が知られている生物をも含む。ゲノム未知生物として、例えば、うなぎ、イカ(好ましくはヒメイカ)、タコ、イモ、キンギョ、セミ、はくさい、きゃべつ、にんじん等を例示することができる。
【0062】
上記工程(B)としては、前記RNAサンプルを鋳型として用いた逆転写反応及び/又はポリメラーゼ反応を行うことによって、標識された検出用ポリヌクレオチドサンプルを調製する工程である限り特に制限されず、かかる標識としては、蛍光色素、放射性同位元素、ジゴキシゲニン(DIG)、ビオチン等を例示することができ、中でも、検出が容易であることから、蛍光標識を好適に例示することができる。また、上記の検出用ポリヌクレオチドサンプルとしては、cDNA(アンチセンス配列)やcRNA(アンチセンス配列)を好適に例示することができるが、cDNAの相補配列(センス配列)や、cRNAの相補配列(センス配列)であってもよい。
【0063】
上記工程(B)において、標識された検出用ポリヌクレオチドサンプルを調製する好適な方法の一例として、ゲノム未知生物由来のmRNAに適切なプライマー(オリゴdTプロモータープライマー等)と逆転写酵素(MMLV−RT等)を作用させることによって、そのmRNAに相補的なcDNA(第1ストランドcDNA)を作製し、次いで、その第1ストランドcDNAに逆転写酵素又はDNAポリメラーゼを作用させることによって、第1ストランドcDNAに相補的なcDNA(第2ストランドcDNA)を作製し、次いで、第2ストランドcDNAにRNAポリヌクレオチドサンプル(T7 RNAポリメラーゼ等)及び蛍光標識したヌクレオチドを含むヌクレオチドを作用させることによって、第2ストランドcDNAに相補的であって、かつ、蛍光標識されたcRNAを作製し、かかるcRNAを精製して、検出用ポリヌクレオチドサンプルとする方法を例示することができる。
【0064】
上記工程(C)としては、前記の検出用ポリヌクレオチドサンプルと、本発明のマイクロアレイとを接触させて、ハイブリダイゼーション反応を行う工程である限り特に制限されず、かかるハイブリダイゼーション反応の条件としては、例えば、50℃で16時間ハイブリダイズ反応させた後、2×SSC/0.2%SDSで、25℃、10分間、及び、2×SSCで、25℃、5分間の条件で洗浄する条件等の通常のストリンジェントな条件を好適に例示することができる。本発明のマイクロアレイは精度が高いので、通常のストリンジェントな条件で、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニングや発現解析を行うことができる。
【0065】
上記工程(D)としては、本発明のマイクロアレイにハイブリダイズした検出用ポリヌクレオチドサンプルを、標識を指標として検出する工程である限り特に制限されず、かかる検出は、用いた標識に応じて適宜実施することができる。例えば、蛍光標識を用いた場合は、蛍光スキャナを用いて蛍光シグナル検出し、これを画像解析ソフトによって解析することによって、数値化したその蛍光シグナル強度を指標として、ハイブリダイズした検出用ポリヌクレオチドサンプルの有無や量を検出することができる。
【0066】
上記工程(E)としては、前記工程(D)で検出した結果を分析することによって、前記ゲノム未知生物における相同遺伝子をスクリーニングし、又は、該相同遺伝子の発現解析を行う工程である限り特に制限されない。ゲノム未知生物における相同遺伝子をスクリーニングする方法としては、特に制限されないが、工程(D)で検出した結果から、検出用ポリヌクレオチドサンプルがハイブリダイズしたポリヌクレオチドプローブを特定し、そのポリヌクレオチドプローブにハイブリダイズした検出用ポリヌクレオチドサンプルを変性剤処理することにより単離し、かかるポリヌクレオチドサンプルの配列を同定し、この配列に基づいてプライマーを設計し、該プライマー及び前記ゲノム未知生物のcDNAを用いたPCRにより、前記ポリヌクレオチドプローブに対応する相同遺伝子を単離する方法を好適に例示することができる。また、ゲノム未知生物における相同遺伝子の発現解析を行う方法としては、特に制限されないが、工程(D)で検出した結果から、検出用ポリヌクレオチドサンプルがハイブリダイズしたポリヌクレオチドプローブを特定し、そのポリヌクレオチドプローブについて検出されたシグナル強度を、ハイブリダイズした検出用ポリヌクレオチドサンプルの量と評価する方法を好適に例示することができる。
【0067】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
【実施例1】
【0068】
[オーソロガス遺伝子の同定法]
Ensemblデータベース(ホームページhttp://uswest.ensembl.org/index.html参照)を基にしたヒトの全遺伝子21077種類、マウスの全遺伝子22085種類及びラットの全遺伝子21472種類間の配列同一性検索を、「BLAST」アルゴリズムを用いて行った。ここで配列同一性検索とは、遺伝子配列における各々のヌクレオチド配列が同一の場合に同一性有りとし、相違、挿入又は欠失している場合に同一性無しとする作業を遺伝子配列全領域及び全遺伝子配列に対して行うことをいう。かかる検索結果を基に、「single linkage clustering」(シングルリンケージクラスタリング)アルゴリズムを用いた分類処理(クラスタリング処理)を行った結果、ヒト、マウス及びラットのオーソロガス遺伝子として13498セット(種類)同定した。
【実施例2】
【0069】
[オーソロガス遺伝子を基にしたポリヌクレオチドプローブ配列の設計方法]
上記実施例1により同定した13498セットのオーソロガス遺伝子のヌクレオチド配列について、ヒト、マウス及びラット間でかかるヌクレオチド配列の同一性が最も高い状態として並列に表示させるために、「BLAST」アルゴリズムを用いたマルチプルアライメント処理を行った。ここでヌクレオチド配列同一性が最も高い状態で並列に表示させるとは、各生物間で対応するヌクレオチド同士が同一の場合にそのヌクレオチドについて同一性有りとし、各生物間でヌクレオチドが相違、挿入又は欠失している場合にそのヌクレオチドについて同一性無しとする処理をヒト、マウス及びラット間のオーソロガス遺伝子配列全域において実施した場合、同一性有りとする割合が最も高い状態にヌクレオチド配列を並列に表示させることをいう。上記マルチプルアライメント処理により、ヒト、マウス及びラットの各オーソロガス遺伝子について、マルチプルアライメント配列を1つずつ作成した。
【0070】
上記マルチプルアライメント配列からポリヌクレオチドプローブ配列の候補をピックアップするために、かかるマルチプルアラインメント配列に対してまずはウィンドウ解析(Window size=60bp,Step size=50bp)を行った。すなわち、上記マルチプルアライメント配列において、ポリヌクレオチドプローブ配列の長さ(60ヌクレオチド長)に相当する領域をWindow sizeとして選択し、また10ヌクレオチド長の重複領域をもってウィンドウ解析を実施するために、Step sizeを50ヌクレオチド長として、プローブ予備候補マルチプルアライメント配列を順に取得した。かかるプローブ予備候補マルチプルアライメント配列におけるヒト、マウス及びラットのプローブ予備候補配列について、各生物間で対応するヌクレオチド同士が同一の場合にそのヌクレオチドについて同一性有りとし、各生物間でヌクレオチドが相違、挿入又は欠失している場合にそのヌクレオチドについて同一性無しとした評価をプローブ予備候補配列全領域について行い、プローブ予備候補マルチプルアライメント配列の同一性を算出した。次に、同一性の高いプローブ予備候補マルチプルアライメント配列から順に、プローブ予備候補マルチプルアライメント配列の3’末端側から20ヌクレオチド長以内に相当する領域に、配列同一性を示さないヌクレオチドの95%以上が含まれるという条件を充足するまで確認を行い、かかる条件を初めて充足したプローブ予備候補マルチプルアライメント配列を第1プローブ候補マルチプルアライメント配列として選択した。また、第1プローブ候補マルチプルアライメント配列のうち、ヒトにおける第1プローブ候補マルチプルアライメント配列を第1プローブ候補配列として選択した。
【0071】
マイクロアレイにおいて、異なるポリヌクレオチドプローブ配列であっても互いに配列同一性が高い場合、同一の遺伝子を検出したり、またポリヌクレオチドプローブ配列が検出する遺伝子と配列同一性が高い遺伝子が他に存在する場合、プローブが本来検出する遺伝子に加えて配列同一性の高い別の遺伝子を検出(クロスハイブリダイゼーション)してしまうことが知られている。かかるクロスハイブリダイゼーションを防ぐため、ヒトにおける第1プローブ候補配列と、Ensemblデータベースを基にしたヒトの全遺伝子21077種類、マウスの全遺伝子22085種類及びラットの全遺伝子21472種類及びのうち、上記ヒトの第1プローブ候補配列由来のオーソロガス遺伝子以外の全遺伝子間で配列同一性を比較し、11ヌクレオチド以上のヌクレオチドの相違、挿入又は欠失があるという条件を充足するものを、ポリヌクレオチドプローブ配列として選択した。また、上記条件を満たさない場合は、第1プローブ候補マルチプルアライメント配列を選択する前述の条件を、この第1プローブ候補マルチプルアライメント配列の次に充足するプローブ予備候補マルチプルアライメント配列を選択し、かかるプローブ予備候補マルチプルアライメント配列がポリヌクレオチドプローブ配列を選択する条件を充たすまで、プローブ予備候補マルチプルアライメント配列の選択を繰り返し行った。その結果、ヒトのポリヌクレオチドプローブ配列として、7987種類を選択した。かかる7987種類のヒト由来のポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブ(DNAプローブ)を備えたマイクロアレイの作製は、Agilent社のカスタムアレイ受託作製サービスを利用して行った。
【実施例3】
【0072】
[選択したポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブの検出感度の検定]
選択したポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブが、どのような位置にどの程度の変異を導入しても、対応する相同遺伝子に対する検出感度があまり低下しないかを調べるために、前述のポリヌクレオチドプローブに様々な変異を導入し、かかる変異型ポリヌクレオチドプローブと、変異を導入していないポリヌクレオチドプローブ(以下、「野生型ポリヌクレオチドプローブ」と表示します。)とで、相同遺伝子に対するハイブリダイゼーション効率にどの程度違いが生じるかについて、ヒト由来のポリヌクレオチドプローブを用いて解析した。これらの各ポリヌクレオチドプローブの5’末端から3’末端にかけて、1ヌクレオチド変異、3ヌクレオチド変異、5ヌクレオチド変異又は7ヌクレオチド変異を恣意的に導入した変異型ポリヌクレオチドプローブ(変異型DNAプローブ)を備えたマイクロアレイの作製を、Agilent社のカスタムアレイ受託作製サービスを利用して行った。なお、1ヌクレオチド変異の変異型ポリヌクレオチドプローブとしては、1997種類作製し、3ヌクレオチド変異の変異型ポリヌクレオチドプローブとしては、1751種類作製し、5ヌクレオチド変異の変異型ポリヌクレオチドプローブとしては、292種類作製し、7ヌクレオチド変異の変異型ポリヌクレオチドプローブとしては、219種類作製した。これらのマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせるテンプレートとしては、Human reference RNA(Clontech社製)からAgilent's Quick Amp Labeling Kit(Agilent社製)を用いて合成及び標識を行ったcRNAを使用した。なお、かかるcRNAの合成及び標識のためのプロトコールは、Agilent社製品のものに準拠した。上記標識したcRNAと作製したマイクロアレイとのハイブリダイゼーション処理は、Gene Expression Hybridization Kit(Agilent社製)を用いて行った。なお、ハイブリダイゼーション処理のプロトコールは、Agilent社製品のものに準拠した。その結果を、図1〜図4に示す。
【0073】
1ヌクレオチド変異及び3ヌクレオチド変異を導入したポリヌクレオチドプローブについては、変異箇所に関わらず野生型ポリヌクレオチドプローブとの検出感度の差が±50%(2−1)以内のポリヌクレオチドプローブの割合は、96%であった(図1及び図2)。これらの結果は、ポリヌクレオチドプローブと3ヌクレオチド異なるテンプレートDNAであっても、ポリヌクレオチドプローブと同一のヌクレオチド配列を有するテンプレートDNAを検出する場合の検出感度の50%で検出することができることを示している。また、5ヌクレオチド変異を導入したポリヌクレオチドプローブについては、その大部分が野生型ポリヌクレオチドプローブと比べ、25%(2−2)〜50%(2−1)の検出感度で検出することができた(図3)。さらに、7ヌクレオチド変異を導入したポリヌクレオチドプローブについては、ポリヌクレオチドプローブ上に均等な間隔で変異を導入した場合、大幅に検出感度が低下していたが、5’末端側若しくは3’末端側に変異が集中している場合、野生型ポリヌクレオチドプローブの25%(2−2)〜50%(2−1)の検出感度で検出することができた(図4)。これらの結果は、ポリヌクレオチドプローブと5ヌクレオチド又は7ヌクレオチド異なるテンプレートDNAであっても、ポリヌクレオチドプローブと同一のヌクレオチド配列を有するテンプレートDNAを検出する場合の検出感度の少なくとも25%で検出することができることを示している。なお、特記すべき点として、ポリヌクレオチドプローブ上に均等な間隔で変異を導入したり、5’末端側に変異を導入するよりも、3’末端側に変異を導入した方が高い検出感度を維持することができた。
【実施例4】
【0074】
[再現性の確認]
次に、作製したマイクロアレイを用いた検出法の再現性について検証するために、上記実施例3において作製したマイクロアレイ及び標識したcRNAを用いたハイブリダイゼーション処理をさらに5回、計6回行った(図5)。得られた1回目〜6回目の結果の相関関係を検証したところ、両者に高い相関関係(r[相関関数]>0.98)が認められた。このことは、本発明のマイクロアレイを用いた相同遺伝子の検出の再現性が、非常に優れていることを示す。
【0075】
さらに、マイクロアレイの結果から算出したデータにおける信頼性と、検出感度との関係を調べるために、マイクロアレイにより得られた1回目〜6回目の全結果を元に標準誤差を算出し、かかる標準誤差とマイクロアレイの検出強度とを比較した(図6)。検出感度が特に低いプローブに関しては、実験誤差が認められたが、検出感度1000以上のプローブについては、98%が±100%以内の誤差範囲の中に収まっていた。このことは、検出感度1000以上のプローブに関するデータについては、信頼性が非常に高いことを示している。
【実施例5】
【0076】
[ゲノム未知生物(ヒメイカ)における新規遺伝子の検出]
上記実施例3で作製したマイクロアレイを用いた検出実験により、ポリヌクレオチドプローブと少なくとも7ヌクレオチド異なっているテンプレートcRNAをも十分検出することができ、さらに再現性良く且つ信頼性が高いデータを取得できることがわかったので、かかる検出法を用いてゲノム情報が未知な生物の遺伝子(例えばcRNA)を実際に検出できるかどうかを検証することとした。ゲノム情報が未知な生物として、推定分岐年代がヒトと比べ約7億年も離れている軟体動物であるヒメイカ(Idiosepius paradoxus)を選択した。かかるヒメイカを瀬戸内海(岡山県)で採取した後、頭部及び胴部からOmega Biotek E.Z.N.A. Mollusc RNA Kit(OMG社製)を用いてmRNAを抽出し、その後Agilent's Quick Amp Labeling Kit(Agilent社製)を用いてcRNAの作製及び標識を行った。かかる標識したヒメイカのcRNAと、上記実施例2で作製したヒト由来の7987種類のポリヌクレオチドプローブを備えたマイクロアレイとのハイブリダイゼーション処理を、Gene Expression Hybridization Kit(Agilent社製)を用いて行った。なお、ハイブリダイゼーション処理のプロトコールは、Agilent社製品のものに準拠した。その結果、ヒメイカの頭部サンプルからは5435種類の遺伝子が、またヒメイカの胴部サンプルからは5431種類の遺伝子が発現していることが認められた(図7B)。すなわち、マイクロアレイに固定された7987種類のポリヌクレオチドプローブうち、約68%の割合のポリヌクレオチドプローブにおいて、ヒメイカの各サンプルから、相同遺伝子(Homolog candidates)を検出することができた(図7A)。なお、ヒメイカ胴部で同定された5431種類の遺伝子は、すべてヒメイカ頭部から同定された5435種類の遺伝子に含まれていた。ヒメイカにおいては、ゲノム情報や遺伝情報についてはほとんど知られていなかったが、本発明のマイクロアレイを用いた解析によって、ヒト等の遺伝子と相同な遺伝子であるヒメイカの新規遺伝子を大量に検出することができた。なお、ポジティブコントロール実験として、イカの既知遺伝子をベースにデザインした3572種類のプローブを備えたマイクロアレイを、前述のヒメイカのcRNAとハイブリダイゼーションさせたところ、ヒメイカ頭部サンプルから3496種類の遺伝子が、また、胴部サンプルからは3465種類の遺伝子が発現していることが認められた(図7B)。
【0077】
上記ヒメイカから同定された新規遺伝子5435種類のうち、マイクロアレイによる検出感度が1000以上と特に発現量が高いものに絞ったところ、170種類の遺伝子が選択された。かかる170種類の遺伝子のうち、ヒメイカの頭部及び胴部で発現強度が大きく異なる15種類全長をクローニングし、そのヌクレオチド配列を同定した。その結果を図8に示す。図8に示すように、本発明のマイクロアレイにより、ヒメイカからヒトの相同遺伝子を的確に同定することができた。これらの結果は、本発明のマイクロアレイが、ゲノム情報が未知な生物の遺伝子発現の検出に応用可能であることを示している。また、上記170種類の遺伝子のうち、52種類(31%)はヒメイカにおいてすでに報告のある遺伝子であったが、残りの118遺伝子(69%)については、ヒメイカにおいて新規遺伝子であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析の分野に好適に利用することができる。特に、熱帯雨林、海洋、土壌、極地あるいは、特殊な進化過程を経てきたゲノム未知生物など、ゲノム未知生物には、豊富な遺伝子資源が存在していることが予測されているにもかかわらず、それらの生物は非モデル生物であるため遺伝子解析が非常に困難であった。本発明は、これらのゲノム未知生物から新規で有用な遺伝子資源を探索したり、ゲノム未知生物の発現解析を行うために好適に利用することが可能である。具体的には、新薬開発に利用できる新規遺伝子を熱帯雨林における草木から探索や、エネルギー問題の解決に役立つバイオエタノール産生遺伝子を高効率化する遺伝子の探索や、基礎科学としての非モデル生物における遺伝子解析などに役立つと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアレイ用のポリヌクレオチドプローブ配列を設計する方法であって、以下の工程(a)〜(h)を含み、前記ポリヌクレオチドプローブ配列が30〜60ヌクレオチド長であり、かつ、前記マイクロアレイが、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に用いるためのマイクロアレイであることを特徴とする方法;
(a)少なくとも2種類のゲノム既知生物におけるオーソロガス遺伝子のセットを2セット以上同定する工程;
(b)同定したセットのうち、1つのセット中のオーソロガス遺伝子について、ヌクレオチド配列同一性に基づいたマルチプルアライメント処理を行うことによって、マルチプルアライメント配列を作成する工程;
(c)前記マルチプルアライメント配列から、ポリヌクレオチドプローブのヌクレオチド長のプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、隣接するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の末端同士が前記ヌクレオチド長の少なくとも15%以上のヌクレオチド長で重複するように、順に取得する工程;
(d)各プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列に含まれるゲノム既知生物間のプローブ予備候補配列のヌクレオチド配列同一性を算出し、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列において、各ゲノム既知生物のプローブ予備候補配列間で、配列が同一でない部位のうち、95%以上に相当する部位が、該プローブ予備候補マルチプルアラインメント配列の3’末端側から33%以内に相当する領域に位置するという条件を充足するかどうかを、ヌクレオチド配列同一性が高いプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列から順に確認し、前記条件を初めて充足するプローブ予備候補マルチプルアラインメント配列を、第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記第1プローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物のプローブ予備候補配列を第1プローブ候補配列とする工程;
(e)前記第1プローブ候補配列が、前記工程(a)における少なくとも2種類のゲノム既知生物の前記工程(b)におけるセットのオーソロガス遺伝子以外のいずれの遺伝子のヌクレオチド配列とも、前記第1プローブ候補配列のヌクレオチド長の18%以上に相当するヌクレオチド数のヌクレオチドが異なっているという条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記第1プローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(f)前記第1プローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(d)において、次に前記工程(d)記載の条件を充足するプローブ候補マルチプルアラインメント配列を、次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列として選択し、前記の次のプローブ候補マルチプルアラインメント配列に含まれるいずれかのゲノム既知生物の配列を次のプローブ候補配列とし、前記の次のプローブ候補配列が前記工程(e)記載の条件を充足するかどうかを確認し、充足する場合は、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(g)前記次のプローブ候補配列が、前記工程(e)記載の条件を充足しない場合は、前記工程(e)記載の条件を充足するまで、前記工程(f)を順に繰り返し、前記次のプローブ候補配列又はその相補配列を、前記セットのオーソロガス遺伝子用のポリヌクレオチドプローブ配列として選択する工程;
(h)前記工程(b)から(g)までの工程を、前記工程(a)で同定した他のセットについて行う工程。
【請求項2】
ゲノム未知生物と、工程(a)における各ゲノム既知生物との推定分岐年代が、5百万年以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ゲノム未知生物と、工程(a)における各ゲノム既知生物との推定分岐年代が、1千万年以上7億年以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)における2セット以上のオーソロガス遺伝子が、2000セット以上のオーソロガス遺伝子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により設計されたポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイを、ゲノム未知生物の相同遺伝子のスクリーニング又は発現解析に使用する方法。
【請求項6】
少なくとも2種類のゲノム既知生物が、ヒト、マウス及びラットから選択される2種類以上の生物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により設計されたポリヌクレオチドプローブ配列からなるポリヌクレオチドプローブを2種類以上備えたマイクロアレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−115169(P2012−115169A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265734(P2010−265734)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(305013910)国立大学法人お茶の水女子大学 (32)
【Fターム(参考)】