説明

新規酵素阻害剤

【課題】 キサンチンオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、および/または、ヒアルロニダーゼについての新規酵素阻害剤を提供することが、本発明の課題である。さらに、これら新規酵素阻害剤を含有する医薬および皮膚外用剤を提供することが本発明の課題である。
【解決手段】リグニンのフェノール類であるリグノフェノール誘導体について、種々の酵素阻害活性を検討したところ、リグノフェノール誘導体がキサンチンオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、および、ヒアルロニダーゼに対する阻害活性を示すことを見出すことによって、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規酵素阻害剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、リグノフェノール誘導体を含有する、キサンチンオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、および、ヒアルロニダーゼの阻害剤の分野に関連する。さらに、本発明は、これら阻害剤を含有する医薬および皮膚外用剤の分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の結合組織はコラーゲンやプロテオグリカンなどを主成分とする細胞外マトリックスにより構成されている。細胞外マトリックスの代謝はこれを分解する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼと、その生体内阻害因子であるTIMP(tissue inhibitor of metalloproteinases)とのバランスにより主に調節されている。マトリックスメタロプロテアーゼはその構造と基質特異性の違いから、コラゲナーゼ(MMP−1)、ゼラチナーゼ(MMP−2及び9)、ストロメライシン(MMP−3及び10)などの酵素分子種が知られている。コラゲナーゼ(MMP−1)及びゼラチナーゼ(MMP−2)はゼラチン(変性コラーゲン)、IV型コラーゲン(基底膜)、V型コラーゲン、フィブロネクチン(軟結合組織及び基底膜に存在する高度にクロスリンクした高分子の多機能性糖タンパク質)及びエラスチン(動脈、腱、皮膚などの弾性組織の特殊成分をなす構造タンパク質)を変性させることが知られている。
【0003】
マトリックスメタロプロテアーゼと生体内阻害因子とのバランスが崩れ、マトリックスメタロプロテアーゼが過剰の状態になると、細胞外マトリックスの分解が促進する。これらの病的状態は関節炎、腫瘍性湿潤及び転移、歯周疾患、異所性脈管形成、組織の腫瘍、血管再閉塞及び再狭窄、骨疾患、HIV感染並びに糖尿病合併症等の治癒を遅延させる主要な原因となっている。従って、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤はこれらの疾病の治療薬または予防剤として有用である。
【0004】
そこで、疾患の治療及び予防を目的としたマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)に対する阻害剤の開発が行われている。例えば、これまでにポリフェノール化合物であるフラボン類、アントシアニジン類(特許文献1参照)、柑橘類に由来するフラボノイド類(特許文献2参照)、種々のカテキン化合物(特許文献3参照)、タンニン化合物(特許文献4参照)がMMPsを阻害することが明らかとなり、種々の疾患治療剤としての可能性が示唆されている。
【0005】
尚、ポリフェノール化合物に関しては、従来より、緑茶ポリフェノールの主成分カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のフラボノイド類に抗酸化性や殺菌作用があることが知られている。さらに抗ガン作用、抗炎症作用、紫外線吸収作用、毛細血管の強化、血圧上昇抑制、血圧降下作用、記憶力向上、肝機能向上、脂肪吸収抑制、ストレス抑制、女性ホルモンバランス調整、抗腫瘍作用、突然変異抑制、血中コレステロール抑制、整腸作用等の効果も知られており、食品、香粧品素材や生医学分野への応用が期待されている。
【0006】
また、人の皮膚は表皮、真皮、皮下組織の三層に大別され、表皮と真皮は基底膜を介して接している。真皮は結合組織からなり、細胞外空間は細胞外マトリックスによって満たされている。真皮は皮膚の弾力、張りに大きく影響する。皮膚の老化に伴う変化、例えばしわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等に紫外線が大きく関与し、これらの変化が細胞外マトリックス成分の減少・変性や基底膜損傷によることが知られている。皮膚上でのゼラチナーゼの発現は紫外線照射により大きく増加し、紫外線による細胞外マトリックスの減少変性の原因の一つとなり、皮膚のしわの形成の主要な要因であると考えられている。そのため、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤の中でもゼラチナーゼ阻害剤は、種々の細胞外マトリックスを保護し、皮膚の老化を防ぐ上で重要である。
【0007】
ヒアルロニダーゼは動物の結合組織に広く分布するヒアルロン酸の加水分解酵素であり、動物の睾丸や蛇毒、細菌等に存在する。ヒアルロニダーゼは皮膚の保湿を保つヒアルロン酸を減少させ、皮膚のはりを失わせる原因となる。また、ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸の分解により炎症やアレルギーを引き起こすことが知られている。従って、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、炎症、抗アレルギー症等の皮膚疾病の治療剤もしくは予防剤、または皮膚老化の抑制剤として有用である。ヒアルロニダーゼ阻害剤に関し、茶抽出カテキン類に阻害活性があることが知られている(特許文献5参照)。
【0008】
キサンチンオキシダーゼは、キサンチンに反応して尿酸を生成する酵素である。痛風および高尿酸血症は、血中での尿酸が増加することにより引き起こされる病気であるが、そのメカニズムは、体内のキサンチンがキサンチンオキシダーゼの作用によって尿酸に変化することにより引き起こされる(特許文献6参照)。すなわち、痛風および高尿酸血症の予防と治療は、血中尿酸値が好ましくない水準に達しないようにコントロールすることが基本である。重症の痛風患者も、血中尿酸値を適正水準に低下させることにより、急性発作の減少、慢性化への停止、腎−血管系の合併症の予防、および悪化を防ぐことが可能である(特許文献7および8参照)。
【0009】
上記酵素の阻害剤は、医薬の分野における重要性が認識されており、その開発も行われている。しかしながら、十分に安価かつ安全な医薬品は、未だ開発されていない。
【特許文献1】特開平8−104628号公報
【特許文献2】特開2000−80035号公報
【特許文献3】特開2000−226329号公報
【特許文献4】特開2000−344672号公報
【特許文献5】特開平6−9391号公報
【特許文献6】特開平3−77830号公報
【特許文献7】特開平6−172185号公報
【特許文献8】特開平6−247868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
キサンチンオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、および/または、ヒアルロニダーゼについての新規酵素阻害剤を提供することが、本発明の課題である。さらに、これら新規酵素阻害剤を含有する医薬および皮膚外用剤を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
リグニンのフェノール類であるリグノフェノール誘導体について、種々の酵素阻害活性を検討したところ、リグノフェノール誘導体がキサンチンオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、および、ヒアルロニダーゼに対する阻害活性を示すことを見出すことによって、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(項目1) リグノフェノール誘導体を含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目2) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体、リグニンの2価フェノール類誘導体、および、リグニンの3価フェノール類誘導体からなる群から選択される、項目1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目3) 前記リグノフェノール誘導体が、
a)フェノール類のベンゼン環の水素が置換されていないリグノフェノール誘導体、および、
b)フェノール類のベンゼン環の水素が1〜4の炭素原子を含むアルキル基で置換されているリグノフェノール誘導体、
からなる群から選択される、項目1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目4) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの3価フェノール類誘導体である、項目1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目5) 前記リグニンの3価フェノール類誘導体が、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、4−エチルピロガロール、および、5−エチルピロガロールからなる群から選択される構造を含む、項目4に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目6) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの2価フェノール類誘導体である、項目1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目7) 前記リグニンの2価フェノール類誘導体が、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、および、4−エチルカテコールからなる群から選択される構造を含む、項目6に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目8) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体である、項目1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目9) 前記リグニンの1価フェノール類誘導体が、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、フェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、4−クロロフェノール、4−ブロモフェノール、4−フェニルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、および、4−メトキシフェノールからなる群から選択される構造を含む、項目8に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
(項目10) キサンチンオキシダーゼ活性を阻害する有効量の項目1〜9に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤を含む、通風または高尿酸血症の予防または治療のための薬学的組成物。
(項目11) リグノフェノール誘導体を含有する、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目12) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体、リグニンの2価フェノール類誘導体、および、リグニンの3価フェノール類誘導体からなる群から選択される、項目11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目13) 前記リグノフェノール誘導体が、
a)フェノール類のベンゼン環の水素が置換されていないリグノフェノール誘導体、および、
b)フェノール類のベンゼン環の水素が1〜4の炭素原子を含むアルキル基で置換されているリグノフェノール誘導体、
からなる群から選択される、項目11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目14) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの3価フェノール類誘導体である、項目11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目15) 前記リグニンの3価フェノール類誘導体が、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、4−エチルピロガロール、および、5−エチルピロガロールからなる群から選択される構造を含む、項目14に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目16) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの2価フェノール類誘導体である、項目11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目17) 前記リグニンの2価フェノール類誘導体が、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、および、4−エチルカテコールからなる群から選択される構造を含む、項目16に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目18) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体である、項目11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目19) 前記リグニンの1価フェノール類誘導体が、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、フェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、4−クロロフェノール、4−ブロモフェノール、4−フェニルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、および、4−メトキシフェノールからなる群から選択される構造を含む、項目18に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
(項目20) マトリックスメタロプロテアーゼ活性を阻害する有効量の項目11〜19に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を含む、マトリックスメタロプロテアーゼ関連疾患の予防または治療のための、薬学的組成物。
(項目21) 前記マトリックスメタロプロテアーゼ関連疾患が、胃潰瘍、表面的な創傷、表皮水疱症、皮膚癌、天疱瘡、敗血症性ショック、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、組織の潰瘍、糸球体障害、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、骨関節炎、リウマチ性関節炎、敗血症性関節炎、歯周病、角膜潰瘍、蛋白尿、大動脈瘤疾患、栄養障害型表皮剥離、水疱症、骨減少症、顎関節疾患、神経系の脱髄疾患、腫瘍転移、外傷性関節損傷に続く変成性軟骨損失、アテローム斑破裂に由来する冠状動脈血栓症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、癌、動脈硬化症、動脈瘤、肝硬変、潰瘍、骨粗鬆症、肺線維症、異所性脈管形成、多発性硬化症、対宿主性移植片反応、および、自己免疫病からなる群から選択される、項目20に記載の薬学的組成物。
(項目22) マトリックスメタロプロテアーゼ活性を阻害する有効量の項目11〜19に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を含む、皮膚外用剤。
(項目23) リグノフェノール誘導体を含有する、ヒアルロニダーゼ阻害剤。
(項目24) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの2価フェノール類誘導体である、項目23に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
(項目25) 前記リグノフェノール誘導体が、
a)フェノール類のベンゼン環の水素が置換されていないリグノフェノール誘導体、および、
b)フェノール類のベンゼン環の水素が1〜4の炭素原子を含むアルキル基で置換されているリグノフェノール誘導体、
からなる群から選択される、項目23に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
(項目26) 前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの3価フェノール類誘導体である、項目23に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
(項目27) 前記リグニンの3価フェノール類誘導体が、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、4−エチルピロガロール、および、5−エチルピロガロールからなる群から選択される構造を含む、項目26に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
(項目28) ヒアルロニダーゼ活性を阻害する有効量の項目23〜27に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤を含む、炎症またはアレルギーの予防または治療のための、薬学的組成物。
(項目29) ヒアルロニダーゼ活性を阻害する有効量の項目23〜27に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤を含む、皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従って、キサンチンオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、および/または、ヒアルロニダーゼについての新規酵素阻害剤が提供された。さらに、これら新規酵素阻害剤を含有する医薬および皮膚外用剤が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0015】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0016】
本願明細書において使用する場合、用語「リグノフェノール誘導体」とは、リグニンに対して、フェノール類を反応させた化合物をいう。
【0017】
本願明細書において使用する場合、用語「リグニン」とは、維管束植物の木部に特に多量に含まれ、ヒドロキシフェニルプロパン単位(C−C)を基本単位として重合した高分子物質をいう。リグニンとしては、例えば、任意のリグノセルロース系材料中に存在するリグニンが使用可能であるが、これに限定されない。リグニンの供給源としては、例えば、植物の木質化した部分(例えば、木材)またはその加工製品(例えば、紙)中に存在するリグニンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0018】
リグニンの供給源として木材を用いる場合、その樹木の種類は特に限定されない。針葉樹であってもよく、広葉樹であってもよい。また、イネ、トウモロコシ、サトウキビ等の各種草本植物をリグノセルロース系材料の原料として用いることもできる。また、リグノセルロース系材料は、リグノセルロース系材料の廃材、端材であってもよく、リグノセルロース系材料からなる飼料や農産廃棄物等も用いることができる。なお、リグノセルロース系材料は、粉状、チップ状等形態を問わずに用いることができるが、粉状のものが、リグノフェノール誘導体を効率的に抽出するのに都合がよい。
【0019】
本願明細書において使用する場合、用語「フェノール類」とは、1価フェノール(すなわち、フェノール)、2価フェノール、および、3価フェノール、ならびに、これらの誘導体をいう。
【0020】
本願明細書において、フェノールの誘導体である、フェノールのベンゼン環に置換基を有する化合物としては、フェノールのベンゼン環の水素の1または数個(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または、5つ)が、アルキル基で置換された化合物(例えば、クレゾール)が挙げられる。置換するアルキル基の炭素原子の数としては、例えば、1〜18、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜7、さらにより好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4が挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
本願明細書において使用する場合、用語「2価フェノール」とは、ベンゼン環の水素の2つが水酸基に置換した化合物をいう。2価フェノールとしては、例えば、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノンが挙げられるが、これに限定されない。本願明細書において、2価フェノールの誘導体である2価フェノールのベンゼン環に置換基を有する化合物としては、2価フェノールのベンゼン環の水素の1または数個(例えば、1つ、2つ、3つ、または、4つ)が、アルキル基で置換された化合物が挙げられる。置換するアルキル基の炭素原子の数としては、例えば、1〜18、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜7、さらにより好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4が挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
本願明細書において使用する場合、用語「3価フェノール」とは、ベンゼン環の水素の3つが水酸基に置換した化合物をいう。3価フェノールとしては、例えば、フロログルシノール、ヒドロキシヒドロキノン、ピロガロールが挙げられるが、これに限定されない。本願明細書において、3価フェノールの誘導体である3価フェノールのベンゼン環に置換基を有する化合物としては、3価フェノールのベンゼン環の水素の1または数個(例えば、1つ、2つ、または、3つ)が、アルキル基で置換された化合物が挙げられる。置換するアルキル基の炭素原子の数としては、例えば、1〜18、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜7、さらにより好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4が挙げられるが、これに限定されない。
【0023】
フェノール性の水酸基が酵素タンパク質との相互作用に関与していることから、好ましいフェノール類としては、水酸基の量が多い2価あるいは3価フェノールおよびその誘導体が挙げられる。特に好ましいフェノール類としては、カテコール、ピロガロールならびにその構造を含む誘導体が挙げられる。
【0024】
リグノフェノール誘導体の分子量は、特に限定されない。ただし、物性などの点から、分子量500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。また、取り扱い易さなどから、分子量10万以下であることが好ましく、1万以下であることがより好ましい。
【0025】
本願明細書において使用する場合、「リグニンの1価フェノール類誘導体」とは、フェノールまたはその誘導体を含む、リグノフェノール誘導体をいう。代表的なリグニンの1価フェノール類誘導体は、限定されることはないが、以下の構造を有する。
【0026】
【化1】

本願明細書において使用する場合、「リグニンの2価フェノール類誘導体」とは、2価フェノールまたはその誘導体を含む、リグノフェノール誘導体をいう。本願明細書において使用する場合、「リグニンの3価フェノール類誘導体」とは、3価フェノールまたはその誘導体を含む、リグノフェノール誘導体をいう。
【0027】
本願明細書において使用する場合、用語「キサンチンオキシダーゼ」とは、ヒポキサンチンやキサンチンを酸化して、尿酸を生成する酵素をいう。キサンチンオキシダーゼの阻害剤とは、起源に関わらず、いずれかのキサンチンオキシダーゼの活性を阻害する物質をいう。
【0028】
キサンチンオキシダーゼは、ヒポキサンチンやキサンチンを酸化して、尿酸を生成する酵素であることから、キサンチンオキシダーゼの阻害剤は、過剰な尿酸の生成に起因する疾患である、通風および高尿酸血症の治療薬・予防薬として有用であることが公知である。
【0029】
本願明細書において使用する場合、用語「マトリックスメタロプロテアーゼ」とは、「MMP」と互換可能に使用され、細胞外マトリックスを構築しているタンパク質を分解する酵素をいう。マトリックスメタロプロテアーゼは14種類の異なる分子から構成され、5群、すなわち、コラゲナーゼ群(MMP−1,8,13)、ゼラチナーゼ群(MMP−2,9)、ストロムライシン群(MMP−3,10)、細胞膜貫通型MMP群(MT1,2,3,4−MMPs)、その他の群(MMP−7,11,13)に分類される。本発明のMMPは、これら全てを包含する。マトリックスメタロプロテアーゼの阻害剤とは、上記のMMPの種類およびその起源に関わらず、いずれかの起源のいずれかのタイプのマトリックスメタロプロテアーゼを阻害する物質をいう。
【0030】
マトリックスメタロプロテアーゼは、細胞外マトリックス(ECM)のたんぱく質を分解、再構築する酵素で、その恒常性を保つのに重要な役割を果たしており、その発現や活性のバランスが崩れると様々な病態が発症する。例えば、胃潰瘍、表面的な創傷、表皮水疱症、皮膚癌、天疱瘡、敗血症性ショック、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、組織の潰瘍、糸球体障害、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、骨関節炎、リウマチ性関節炎、敗血症性関節炎、歯周病、角膜潰瘍、蛋白尿、大動脈瘤疾患、栄養障害型表皮剥離、水疱症、骨減少症、顎関節疾患、神経系の脱髄疾患、外傷性関節損傷に続く変成性軟骨損失、アテローム斑破裂に由来する冠状動脈血栓症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、動脈硬化症、動脈瘤、肝硬変、潰瘍、骨粗鬆症、肺線維症、異所性脈管形成、多発性硬化症、対宿主性移植片反応、および、自己免疫病などの疾患の際には、ECMが過剰に分解される。従って、マトリックスメタロプロテアーゼは、これら疾患の症状の治療・予防に有効である。また、癌の転移の際には、ECMの破壊を伴うので、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤は、癌(例えば、腫瘍転移)の治療・予防に有用である。
【0031】
本願明細書において使用する場合、用語「ヒアルロニダーゼ」とは、ヒアルロン酸を分解する酵素の全てを包含する。ヒアルロニダーゼは、その供給源によって限定されることはなく、哺乳動物由来であっても、細菌由来であっても、ヒル・寄生虫・甲殻類由来であってもよい。ヒアルロニダーゼの阻害剤とは、起源に関わらず、いずれかのヒアルロニダーゼの活性を阻害する物質をいう。
【0032】
ヒアルロニダーゼは人間の肌や眼球、鶏のとさかに含まれる保湿成分であるヒアルロン酸を分解する酵素である。真皮中に存在する酵素ヒアルロニダーゼは活性化して、かゆみ・ひりつき・毛細血管の拡張による赤み、むくみなどの炎症を引き起こす。またヒアルロニダーゼは炎症時の血管透過性を増加させることにより、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎やじんましんなどのI型アレルギー症状にも深く関わっている。従って、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、抗炎症剤、抗アレルギー剤として有用であることが公知である。
【0033】
(本発明のリグノフェノール誘導体の合成)
リグノフェノール誘導体は、リグニンにフェノール類を濃酸存在下、常温解放系でたとえば以下に記載する国際公開WO99/14223号公報に記された手法を用いて、付加させることによって得ることができる。
【0034】
リグノセルロース系材料にフェノール類を濃酸存在下、常温解放系で反応させると、リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール類でグラフト化されて、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン単位の専ら側鎖α位(ベンジル位)にフェノール類が導入されたリグノフェノール誘導体が得られる。リグノセルロース系材料は、一般に、炭水化物に代表されるリグニン以外の成分を多量に含むが、リグノセルロース系材料をフェノール類で処理した場合の生成物は、通常、比重差の利用や水への分散等を通じて親水相と疎水相に容易に分離できるため、リグノフェノール誘導体以外の化合物を少量含んだ状態で得られることになる。このため、これらの不純物を除去することにより、純度の高いリグノフェノール誘導体が得られる。
【0035】
より具体的には、以下のとおりである。
【0036】
第1の方法に従って、木粉等のリグノセルロース系材料に液体状のフェノール類(クレゾール等)を浸透させ、リグニンをフェノール類により溶媒和させた後、次に、リグノセルロース系材料に濃酸(一例として72%硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール類と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール類により溶媒和されたリグニンは、フェノール類相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触し、酸との接触により生じたリグニン基本構成単位の高反応サイトである側鎖α位(ベンジル位)のカチオンが、同時にフェノール類により攻撃されることになる。この結果、前記α位にフェノール類がC−C結合で導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が解裂することにより低分子化される。この結果、リグニンが低分子化され、かつ、その基本構成単位のベンジル位にフェノール類が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール類相に生成される。このフェノール類相から、リグノフェノール誘導体が抽出される。リグノフェノール誘導体は、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が解裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体の一部として得られる。なお、ベンジル位へのフェノール類の導入形態は、存在比率は低いがそのフェノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知られている。
【0037】
フェノール類相からのリグノフェノール誘導体の抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、フェノール類相を大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒を留去した後、五酸化二リン入りデシケータ中で減圧乾燥し、リグノフェノール誘導体を得る。なお、粗リグノフェノール誘導体は、フェノール類相を単に減圧蒸留により除去することによって得ることもできる。なお、アセトン可溶部を、そのままリグノフェノール誘導体溶液として、二次誘導体化処理に用いることもできる。
【0038】
第2の具体的方法は、国際公開WO99/14223号公報の図5に示されるように、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール類を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール類の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様、フェノール類により溶媒和された状態のリグニンは、濃酸と接触して生じたリグニンの高反応サイト(側鎖α位)のカチオンがフェノール類により攻撃され、フェノール類が導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が解裂してリグニンが低分子化される。得られるリグノフェノール誘導体の特性は、第1の方法で得られるものと変わりはない。そして、リグノフェノール誘導体を液体フェノール類にて抽出する。液体フェノール類相からのリグノフェノール誘導体の抽出も、第1の方法と同様にして行うことができる。あるいは、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶区分として得る。
【0039】
第3の具体的方法は、特開2003−268116号公報に記載されているように、リグニンにフェノール類を添加し、酸を添加し、過剰の水を加えて可溶区分と不溶区分とに分離し、不溶区分を乾燥し、酸化防止剤およびアルカリ水溶液を添加し、その後固液分離(例えば、遠心分離など)を行ってリグノフェノール誘導体を得る方法である。
【0040】
上述した方法のいずれで得られたリグノフェノール誘導体も、本発明に好ましく使用可能である。
【0041】
(酵素阻害活性の測定)
本発明の阻害剤による酵素活性の阻害活性は、種々の公知の方法によって測定することが可能である。阻害活性の測定の具体的な方法として、例えば、以下に列挙する方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0042】
(1.キサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定)
キサンチンオキシダーゼは、キサンチン+O→尿酸+Oという反応を触媒する。そこで、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害活性を、尿酸の吸収を測定することによって測定した。
【0043】
(2.マトリックスメタロプロテアーゼ阻害活性の測定)
マトリックスメタロプロテアーゼは、種々のタンパク質を分解するプロテアーゼである。マトリックスメタロプロテアーゼの一例として、コラゲナーゼを用い、その酵素活性に対する活性阻害について以下に記載するが、以下の方法は、種々のタンパク質に対して適応可能であるので、同様の方法を用いて、コラゲナーゼ以外のマトリックスメタロプロテアーゼについての阻害活性を測定することが可能である。
【0044】
基質としてN−(3−[2−フリル]アクリロイル)−LEU−GLY−PRO−ALA(FALGPAと略する)を用い、コラゲナーゼによるFALGPAの324nmの吸収の減少を測定することによってコラゲナーゼ活性を評価した。具体的には、以下のとおりである。
【0045】
0.4M NaCl、10mM CaClを含む50mMトリシン緩衝液(pH7.5)を用いて、0.4mM FALGPA溶液および0.75 U/mL コラゲナーゼ(Clostridium histolyticum由来、1.9 FALGPA U/mg)溶液を調製した。サンプルのリグノフェノール誘導体は30%のDMSOを含む蒸留水で各濃度に調製した。
【0046】
96ウェルプレートに、試料溶液20μLとコラゲナーゼ溶液20μLを混合した。FALGPA溶液160μLを加えて反応を開始させ、324nmの吸光度を5分間、37℃で測定した。阻害能は次式のように求めた:
阻害活性(%)=((Abs(コントロール)−Abs(サンプル))/Abs(コントロール)×100
Abs:5分間の324nmにおける吸光度の減少量。
【0047】
(3.ヒアルロニダーゼ阻害活性の測定)
ヒアルロン酸を基質に用いてMogan−Elson法により発色させたものをUVで検出することにより決定した。
【0048】
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、油脂類、ロウ類、炭化水素、シリコーン類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、増粘剤、粉末等の基材の他、医薬品および医薬部外品の有効成分、PH調整剤、防腐剤、色素、香料、甘味料、酸化防止剤、味覚調整剤等も必要に応じて配合することができる。
【0049】
本発明の酵素阻害剤はまた、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合わせて、処方することができる。本発明に使用する特定のシタン誘導体を配合した酵素阻害剤を治療剤として使用する場合、個々の固体、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
【0050】
本発明の酵素阻害剤は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包剤または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および間接内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0051】
本発明の酵素阻害剤はまた、除放性システムにより適切に投与される。除放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intractistemally)、膣内、腹腔内、局所的、(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体、または、液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
【0052】
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sindmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981)、およびLager、Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Lagerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
【0053】
徐放性治療剤はまた、リポソームに包含された本発明の酵素阻害剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら、Liosomes in the Therapy of InfectiousDisease and Cancer,Lopez−Berestein and Filder(編),Liss,New York,317−327ページ、および、353−365ページ(1989)を参照のこと)。酵素阻害剤を含有するリポゾームは、それ自体が公知である方法により調整され得る。:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980); EP52,322;EP36,676;EP88,046 ; EP143,949; EP142,641;日本国特許出願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
【0054】
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
【0055】
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、酵素阻害剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および、酵素阻害剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
【0056】
一般に、酵素阻害剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調整する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビクトルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液、および、デキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
【0057】
キャリアは、等張性および化学的安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸、または、その塩類のような緩衝液;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチン、または、免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、または、アルギニンのようなアミノ酸;セルロース、または、その誘導体、ブドウ糖、マンノース、または、デキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭化水素、EDTAのようなキレート剤;マンニトール、または、ソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
酵素阻害剤は、代表的には約0.001mg/ml〜1mg/ml、好ましくは0.01〜0.5mg/mlの濃度で、約3〜10のpHで、このようなビヒクル中に処方される。前記の特定の賦形剤、キャリアまたは安定化剤を使用することにより、塩が形成されることが理解される。
【0059】
酵素阻害剤投与に用いられるべき任意の薬剤は、生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌ろ過膜(例えば0.2ミクロンメンブレンフィルター)でろ過することにより容易に達成される。一般に、酵素阻害剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射器で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0060】
酵素阻害剤は、通常、単位用量、または、複数用量容器、例えば、密封アンプル、または、バイアルに、水溶液、または、再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌ろ過した1%(W/V)酵素阻害剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した酵素阻害剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調整する。
【0061】
本発明はまた、本発明の酵素阻害剤の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関の承認を表す。さらに、酵素阻害剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
【0062】
本発明の酵素阻害剤は、単独または他の治療剤と組み合わせて投与され得る。本発明の治療剤と組み合わせて投与され得る治療剤としては、他の抗癌剤、化学療法剤、抗生物質、ステロイドおよび非ステロイドの抗炎症剤、従来の免疫治療剤、他のサイトカイニン、および/または、増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない。組み合わせは、例えば、混合物として同時に(同時に、または、並行してだが、別々に)、あるいは経時的のいずかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物、または、薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【0063】
特定の実施態様において、本発明の酵素阻害剤は、抗レトロウイルス薬剤、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および/または、プロテアーゼインヒビターとの組み合わせで投与される。
【0064】
さらなる実施態様において、本発明の酵素阻害剤は、抗生物質と組み合わせて投与される。使用され得る抗生物質としては、アミノグリコシド系抗生物質、ポリエン系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、ペプチド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
さらなる実施例において、本発明の酵素阻害剤は、単独または抗炎症剤と組み合わせて投与される。本発明の酵素阻害剤とともに投与され得る抗炎症剤としては、グルココルチコイドおよび非ステロイド抗炎症剤、アミノアリールカルボン酸誘導体、アリール酢酸誘導体、アリールカルボン酸、アリールプロピオン酸誘導体、ピラゾール、ピラゾロン、サリチル酸誘導体、チアジンカルボキサミド、e−アセトアミドカプロン酸、S−アデノシルメチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン(amixetrine)、ベンダザック、ベンジドアミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾリン、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オルゴテイン、オキサセプロール、パラニリン、ペリゾキサル、ピフオキシム、プロキアゾリン、プロキサゾール、および、テニダップが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明の酵素阻害剤は、他の治療レジメまたは予防レジメ(例えば、放射線治療)と組み合わせて投与される。
【0067】
(皮膚外用剤)
皮膚外用剤の形状は特に問わない。その投与方法に応じて如何なる形状をも選択することができる。例えば、液状、ゲル状、クリーム状、顆粒状、固体、エアロゾルのような気体などの形態で使用できる。本発明の美白剤および抗酸化剤、活性酸素除去剤を皮膚外用剤として使用する場合、化粧水、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、美容液、パック、洗顔料、クレンジング剤、ヘアケア剤、石鹸、浴用剤、シャンプー、リンス、リップスティック、口紅、ファンデーション等の化粧品や医薬部外品、医薬品に配合することができる。
【0068】
本発明の酵素阻害剤を配合した皮膚外用剤は、油脂類、ロウ類、炭化水素類、シリコーン類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、増粘剤、粉末等の化粧品の基材の他、医薬品および医薬部外品の有効成分、pH調整剤、防腐剤、色素、香料、酸化防止剤、天然由来エキス等も必要に応じて配合することができる。
【0069】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1.リグノクレゾールの調製)
針葉樹(ヒノキ,学名:Chamaecyparis Obtusa)の木粉を、p−クレゾールを加えて浸潤させた。この木粉に72%硫酸を添加した。室温で攪拌を行った後、遠心分離によって2相分離系を形成した。上層(クレゾール層)に過剰のエチルエーテルを加えて、溶解物と不溶物とに分離した。その不溶物をアセトンに投入し,抽出液を濃縮後再びエチルエーテルに滴下し,不溶解区分としてリグノクレゾールを得た。具体的な手順としては、特開2003−268116号公報の0017段落および0018段落に記載された手順と同様に行った。得られたサンプルを、針葉樹由来のリグノクレゾールのサンプルとして以後の実験に用いた。
【0071】
(実施例2.リグノカテコールの調製)
ヒノキ(学名:Chamaecyparis Obtusa)脱脂木粉に含まれるリグニン基本単位(フェニルプロパン単位、C)あたり、カテコール3モルをアセトンに溶解させた。そのアセトン溶液にヒノキ脱脂木粉を一昼夜浸漬させ、アセトンを完全に留去、風乾することにより、カテコールを木粉に収着させた。この収着木粉に95%リン酸(20ml/g脱脂木粉)を加えて50℃、1時間、攪拌した。攪拌後、反応混合物を過剰の水に激しく攪拌しながら投入し分散させた。不溶解区分を沈殿させ、上澄みを交換して酸を除去後、沈殿を乾燥させアセトンで抽出した。得られたアセトン溶液を濃縮しベンゼン/ヘキサン(2:1,v/v)混液に投入し、不溶解区分得た。有機相に可溶なリグノフェノール及び未反応フェノール化合物がベンゼン:ヘキサン混液で抽出されなくなるまでこの洗浄を数回繰り返し、最後にエチルエーテルで洗浄し、沈殿物としてリグノカテコールを得た。
【0072】
(実施例3.リグノピロガロールの調製)
カテコールの代わりにピロガロールを用いる以外は実施例2と同様の操作を行い、リグノピロガロールを得た。
【0073】
(実施例4.リグノフェノール誘導体のキサンチンオキシダーゼ阻害活性)
リグノフェノール誘導体として、実施例1〜3で合成したリグノピロガロール、リグノカテコール、および、リグノクレゾールを使用した。
【0074】
0.05mM EDTAを含む100mM リン酸緩衝液(pH 7)を用いて0.15U/ml キサンチンオキシダーゼ(バターミルク由来、0.25U/mg)溶液を調製した。またキサンチン 7.5mgを1N NaOH 600μLに溶解させた後、蒸留水7.5mLを加え、さらにリン酸緩衝液16.9mLを加えて希釈し、2mMとした。リグノフェノール誘導体は30%のDMSOを含む蒸留水で各濃度に調製した。
【0075】
リン酸緩衝液180μLとサンプルのリグノフェノール誘導体溶液10μL、キサンチンオキシダーゼ溶液60μLを混合し、37℃で5分間保温した。キサンチン溶液50μLを加えた直後から、5分間の295nmでの吸光度を96ウェルマイクロプレートリーダーで測定した。阻害能は次式のように求めた:
阻害活性(%)=((Abs(コントロール)−Abs(サンプル))/Abs(コントロール)×100
Abs:5分間の295nmにおける吸光度の増加量。
【0076】
その結果を図1に示す(◆:リグノクレゾール、■:リグノカテコール、●:リグノピロガロール)。図1に示すように、リグノピロガロール、リグノカテコール、および、リグノクレゾールのいずれもが、キサンチンオキシダーゼ阻害活性を示した。従って、本発明のリグノフェノール類が、分子内に含まれるフェノール類の構造に関わらずキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有することが明らかとなった。また、阻害活性がリグノピロガロール>リグノカテコール>p−リグノクレゾールの順であることがわかった。
【0077】
(実施例5.リグノフェノール誘導体のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害活性)
リグノフェノール誘導体として、実施例1〜3で合成したリグノピロガロール、リグノカテコール、および、リグノクレゾールを使用した。
【0078】
基質としてN−(3−[2−フリル]アクリロイル)−LEU−GLY−PRO−ALA(FALGPAと略する)を用い、コラゲナーゼによるFALGPAの324nmの吸収の減少を測定することによってコラゲナーゼ活性を評価した。具体的には、以下のとおりである。
【0079】
0.4M NaCl、10mM CaClを含む50mMトリシン緩衝液(pH7.5)を用いて、0.4mM FALGPA溶液および0.75 U/mL コラゲナーゼ(Clostridium histolyticum由来、1.9 FALGPA U/mg)溶液を調製した。サンプルのリグノフェノール誘導体は30%のDMSOを含む蒸留水で各濃度に調製した。
【0080】
96ウェルプレートに、試料溶液20μLとコラゲナーゼ溶液20μLを混合した。FALGPA溶液160μLを加えて反応を開始させ、324nmの吸光度を5分間、37℃で測定した。阻害能は次式のように求めた:
阻害活性(%)=((Abs(コントロール)−Abs(サンプル))/Abs(コントロール)×100
Abs:5分間の324nmにおける吸光度の減少量。
【0081】
リグノフェノール類のコラゲナーゼに対する阻害活性の結果を図2に示す(◆:リグノクレゾール、■:リグノカテコール、●:リグノピロガロール)。図2に示すように、リグノピロガロール、リグノカテコール、および、リグノクレゾールのいずれもが、コラゲナーゼ阻害活性を示した。従って、本発明のリグノフェノール類が、分子内に含まれるフェノール類の構造に関わらずMMP阻害活性を有することが明らかとなった。また、低濃度でリグノピロガロールとリグノカテコールに高い阻害活性が見られ、特にリグノピロガロールの阻害活性が高かった。コラゲナーゼ阻害の機構を調べるためにリグノピロガロールとリグノカテコールを阻害剤に用いて定常状態分析を行った。図3および図4に示すように、リグノフェノール類はラインウィーバー−バークプロットプロットにおいて拮抗阻害と非拮抗阻害の混合型を示した(◆:0mg/L、■:7.5mg/L、▲:10mg/L、●:15mg/L)。ディクソンプロットより求めたリグノピロガロールの阻害定数はKi=15mg/L、Ki’=35mg/L、リグノカテコールの阻害定数はKi=25mg/L、Ki’=48mg/Lであった。いずれの場合もKi<Ki’であり、阻害剤は酵素−基質複合体よりフリーの酵素と強い相互作用を示すことがわかった。
【0082】
(実施例6.リグノフェノール誘導体のヒアルロニダーゼ阻害活性)
リグノフェノール誘導体として、実施例1〜3で合成したリグノピロガロール、リグノカテコール、および、リグノクレゾールを使用した。
【0083】
ヒアルロニダーゼ(ウシ精巣由来、SIGMA)およびヒアルロン酸ナトリウムを100mM酢酸緩衝液(pH5.0)に溶かしそれぞれ7.5mg/ml (3750 U/ml)、1mg/mlとした。サンプルのリグノフェノール誘導体は5%のDMSOを含む酢酸緩衝液で各濃度に調製した。またCompound 48/80(SIGMA)、CaCl、NaClの最終濃度がそれぞれ0.1mg/ml、2.5mM、0.15MとなるようにpH5酢酸緩衝液に溶解させ、活性化剤とした。p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(p−DABA)は1gを10N HCl 2.5mLに溶解させ、酢酸緩衝液7.5mLを加えて希釈した。
【0084】
試料40μL、ヒアルロニダーゼ溶液40μL、pH5酢酸緩衝液200μLを混合し、37℃で15分保温後、活性化剤160μLを加えてさらに20分保温した。ここにヒアルロン酸ナトリウム溶液400μLを加え、37℃で40分反応させた。0.4N NaOH 160μLを加え10分氷冷して反応を止めた後、pH9.1ホウ酸緩衝液160μLを加え3分煮沸、10分氷冷した。この反応溶液120μLを96ウェルプレートにとり、p−DABA溶液100μLを加えて585nmの吸光度を37℃で10分間測定した。阻害能は次式のように求めた:
阻害活性(%)=((Abs(コントロール)−Abs(サンプル))/Abs(コントロール)×100
Abs:5分間の585nmにおける吸光度の増加量。
【0085】
結果を図5に示す(◆:リグノフェノール、●:リグノピロガロール)。図5に示されるように、リグノピロガロールはヒアルロニダーゼに対して優れた阻害活性を示した、リグノフェノールは阻害活性を示さなかった。従って、3価のフェノール類を含む本発明のリグノフェノール類がヒアルロニダーゼ阻害活性を有することが明らかとなった。また、2価のフェノール類を含む本発明のリグノフェノール類も同様に、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有すると考えられる。
【0086】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に従って、種々の酵素の阻害剤が提供される。本発明の酵素阻害剤は、医薬品のみならず、化粧品のような皮膚外用剤にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、種々のリグノフェノール誘導体によるキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示すグラフである。
【図2】図2は、種々のリグノフェノール誘導体によるコラゲナーゼ阻害活性を示すグラフである。
【図3】図3は、コラゲナーゼ阻害活性についてのリグノカテコールのラインウィーバー−バークプロットである。
【図4】図4は、コラゲナーゼ阻害活性についてのリグノピロガロールのラインウィーバー−バークプロットである。
【図5】図5は、種々のリグノフェノール誘導体によるヒアルロニダーゼ阻害活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノフェノール誘導体を含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項2】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体、リグニンの2価フェノール類誘導体、および、リグニンの3価フェノール類誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項3】
前記リグノフェノール誘導体が、
a)フェノール類のベンゼン環の水素が置換されていないリグノフェノール誘導体、および、
b)フェノール類のベンゼン環の水素が1〜4の炭素原子を含むアルキル基で置換されているリグノフェノール誘導体、
からなる群から選択される、請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項4】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの3価フェノール類誘導体である、請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項5】
前記リグニンの3価フェノール類誘導体が、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、4−エチルピロガロール、および、5−エチルピロガロールからなる群から選択される構造を含む、請求項4に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項6】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの2価フェノール類誘導体である、請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項7】
前記リグニンの2価フェノール類誘導体が、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、および、4−エチルカテコールからなる群から選択される構造を含む、請求項6に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項8】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体である、請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項9】
前記リグニンの1価フェノール類誘導体が、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、フェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、4−クロロフェノール、4−ブロモフェノール、4−フェニルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、および、4−メトキシフェノールからなる群から選択される構造を含む、請求項8に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項10】
キサンチンオキシダーゼ活性を阻害する有効量の請求項1〜9に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤を含む、通風または高尿酸血症の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項11】
リグノフェノール誘導体を含有する、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項12】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体、リグニンの2価フェノール類誘導体、および、リグニンの3価フェノール類誘導体からなる群から選択される、請求項11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項13】
前記リグノフェノール誘導体が、
a)フェノール類のベンゼン環の水素が置換されていないリグノフェノール誘導体、および、
b)フェノール類のベンゼン環の水素が1〜4の炭素原子を含むアルキル基で置換されているリグノフェノール誘導体、
からなる群から選択される、請求項11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項14】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの3価フェノール類誘導体である、請求項11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項15】
前記リグニンの3価フェノール類誘導体が、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、4−エチルピロガロール、および、5−エチルピロガロールからなる群から選択される構造を含む、請求項14に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項16】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの2価フェノール類誘導体である、請求項11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項17】
前記リグニンの2価フェノール類誘導体が、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、および、4−エチルカテコールからなる群から選択される構造を含む、請求項16に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項18】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの1価フェノール類誘導体である、請求項11に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項19】
前記リグニンの1価フェノール類誘導体が、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、フェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、4−クロロフェノール、4−ブロモフェノール、4−フェニルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、および、4−メトキシフェノールからなる群から選択される構造を含む、請求項18に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項20】
マトリックスメタロプロテアーゼ活性を阻害する有効量の請求項11〜19に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を含む、マトリックスメタロプロテアーゼ関連疾患の予防または治療のための、薬学的組成物。
【請求項21】
前記マトリックスメタロプロテアーゼ関連疾患が、胃潰瘍、表面的な創傷、表皮水疱症、皮膚癌、天疱瘡、敗血症性ショック、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、組織の潰瘍、糸球体障害、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、骨関節炎、リウマチ性関節炎、敗血症性関節炎、歯周病、角膜潰瘍、蛋白尿、大動脈瘤疾患、栄養障害型表皮剥離、水疱症、骨減少症、顎関節疾患、神経系の脱髄疾患、腫瘍転移、外傷性関節損傷に続く変成性軟骨損失、アテローム斑破裂に由来する冠状動脈血栓症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、癌、動脈硬化症、動脈瘤、肝硬変、潰瘍、骨粗鬆症、肺線維症、異所性脈管形成、多発性硬化症、対宿主性移植片反応、および、自己免疫病からなる群から選択される、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
マトリックスメタロプロテアーゼ活性を阻害する有効量の請求項11〜19に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を含む、皮膚外用剤。
【請求項23】
リグノフェノール誘導体を含有する、ヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項24】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの2価フェノール類誘導体である、請求項23に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項25】
前記リグノフェノール誘導体が、
a)フェノール類のベンゼン環の水素が置換されていないリグノフェノール誘導体、および、
b)フェノール類のベンゼン環の水素が1〜4の炭素原子を含むアルキル基で置換されているリグノフェノール誘導体、
からなる群から選択される、請求項23に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項26】
前記リグノフェノール誘導体が、リグニンの3価フェノール類誘導体である、請求項23に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項27】
前記リグニンの3価フェノール類誘導体が、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、4−エチルピロガロール、および、5−エチルピロガロールからなる群から選択される構造を含む、請求項26に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項28】
ヒアルロニダーゼ活性を阻害する有効量の請求項23〜27に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤を含む、炎症またはアレルギーの予防または治療のための、薬学的組成物。
【請求項29】
ヒアルロニダーゼ活性を阻害する有効量の請求項23〜27に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤を含む、皮膚外用剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−291034(P2007−291034A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122722(P2006−122722)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】