説明

新規重合体およびその製造方法

【課題】洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された再汚染防止能、親水/疎水性複合汚れの分散性の向上効果を兼ね備えた重合体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で酸基含有不飽和単量体および疎水性基含有不飽和単量体を必須として重合して得られる重合体であって、前記ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造と、全単量体に由来する構造の合計の質量100質量%に対し、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造の質量割合が50〜98質量%であり、カルボキシル基含有単量体に由来する構造の質量割合が1〜49質量%であり、疎水性基含有単量体に由来する構造の質量割合が1〜49質量%である、重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料類に用いられる洗剤には、洗剤の洗浄効果を向上させることを目的として、ゼオライト、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの洗剤ビルダー(洗剤助剤)を配合することが行われている。
【0003】
また、上記の各種洗剤ビルダーに加えて、近年では、ポリアルキレングリコールに各種単量体をグラフト重合した重合体が洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリアルキレンオキシドに、酢酸ビニルを1:0.2ないし1:10の重量比でグラフトさせることにより得られ、そのアセテート基を所望により15%までけん化されているグラフト重合体が、洗浄時の灰色化防止剤として使用できることが開示されている。
【0005】
更に、特許文献2には、ポリアルキレングリコールに(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸をグラフトさせたグラフト重合体の主鎖の末端に位置する構造単位を構成する炭素数が一定以上異なる2種以上のグラフト重合体を混在させることにより、ビルダー性能および液体洗剤に対する相溶性に優れることが開示されている。
【0006】
ここで、近年の市場動向としては、液体洗剤は高濃縮タイプ(水の組成比が低い)が好まれる傾向にあり、需要者の嗜好として、濁りのない、透明度の高い液体洗剤が好まれる傾向にある。従って、重合体に求められる、界面活性剤等に代表される他の液体洗剤成分との相溶性が、従来と比較して非常に厳しくなってきている。
また、ビルダー性能に関しても、近年の消費者の環境問題への意識の高まりより、消費者が風呂の残り湯を洗濯に使用することにより節水を図ったりすることが定着してきている。残り湯の使用により、カルシウム成分の濃縮による高硬度条件下や、汚れ成分の多い条件下で洗濯をしなければならないという問題に対応する為、汚れ成分の洗濯中の繊維などへの再付着を抑制する、いわゆる再汚染防止能が従来より一層改善された剤や、疎水/親水性複合汚れの分散性が従来より一層改善された剤が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−95399号公報
【特許文献2】特開2002−332391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来、種々のグラフト重合体が報告されてはいるものの、上述した現在の消費者ニーズに適応した洗剤ビルダーの開発が求められている。
そこで、本発明は、洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された再汚染防止能、疎水/親水性複合汚れの分散性の向上効果を兼ね備えた重合体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体を重合させた、所定の構造を有する重合体の再汚染防止能および疎水/親水性複合汚れの分散性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で酸基含有不飽和単量体および疎水性基含有単量体を必須として重合して得られる重合体であって、当該重合体は、前記ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造と、全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)に由来する構造の合計の質量100質量%に対し、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造の質量割合が50〜98質量%であり、カルボキシル基含有単量体に由来する構造の質量割合が1〜49質量%であり、疎水性基含有単量体に由来する構造の質量割合が1〜49質量%であり、当該重合体は、カルボキシル基含有単量体を主体とする部位と、疎水性基含有単量体を主体とする部位を有する、重合体である。
【0011】
本発明の別の局面では、重合体の製造方法が提供される。すなわち、本発明の製造方法は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、カルボキシル基含有単量体と、疎水性基含有単量体を重合して得られる重合体であって、当該重合方法は、(i)重合容器にカルボキシル基含有単量体を主体として添加する工程と、(ii)重合容器に疎水性基含有不飽和単量体を主体として添加する工程とを含み、前記ポリオキシアルキレン系化合物と全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)の合計の質量100モル%に対し、ポリオキシアルキレン系化合物を50〜98質量%、カルボキシル基含有単量体を1〜49質量%、疎水性基含有単量体を1〜49質量%で重合することを特徴とする重合体の製造方法であり、カルボキシル基含有単量体を主体とする単量体成分と、前記疎水性基含有単量体を主体とする単量体成分を別個に反応系に添加することを特徴とする重合体の製造方法、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重合体を洗剤ビルダーとして使用すれば、本発明の重合体が、高い再汚染防止能、優れた疎水/親水性複合汚れの分散性(分散能)を有していることに起因して、洗剤組成物の再汚染防止能や疎水/親水性複合汚れの分散性が顕著に向上する。また、本発明の重合体を液体洗剤用ビルダーとして使用すれば、本発明の重合体が優れた界面活性剤との相溶性を有していることに起因して、液体洗剤組成物の透明性、経時安定性が顕著に良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の重合体は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下でカルボキシル基含有単量体および疎水性基含有単量体を必須として重合して得られる重合体である。
具体的には、上記重合によって、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造にカルボキシル基含有単量体に由来する構造を含む側鎖(グラフト鎖)および疎水性基含有単量体に由来する構造を含む側鎖(グラフト鎖)を有する、グラフト重合体を含む重合体である。
【0015】
[ポリオキシアルキレン系化合物]
本発明の重合体は、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造aという)を有することを特徴としている。ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造aとは、重合原料のポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造であるが、本発明の重合体は、通常未反応のポリアルキレン系化合物を含んでいる(すなわち本発明の重合体は通常、共重合体と未反応のポリアルキレン系化合物を含む混合物(組成物)である。)為、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造aは、ポリオキシアルキレン系化合物、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、必要に応じて、その他の単量体を重合して得られる重合体に含まれるポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造と、未反応のポリオキシアルキレン系化合物自体の構造の両方を含む。
本発明で用いられるポリオキシアルキレン系化合物は、エチレンオキサイド、および他のアルキレンオキサイドを、水またはアルコールを開始点として公知の方法で重合することにより得られる化合物である。上記開始点のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の炭素数1〜22の1級アルコール;炭素数3〜18の2級アルコール;t−ブタノール等の3級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類;ソルビトール等のポリオール類が例示される。エチレンオキサイドと共重合可能な他のアルキレンオキサイドとしては、特に限定はないがプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが好ましい。また、本発明で用いられるポリオキシアルキレン系化合物は、全アルキレンオキサイド由来の構造100mol%に対し、エチレンオキサイド由来の構造(−CH2CH2O−)を80mol%以上構成単位として有し、エチレンオキサイドと共重合可能な他のアルキレンオキサイド由来の構造を、0〜20mol%有する化合物であることが好ましい。他のアルキレンオキサイド由来の構造が20mol%を超えると、得られるグラフト重合体のグラフト率が低下する傾向にある。さらに、ポリオキシアルキレン系化合物として、上記のようにして得られた化合物のすべての末端、または一部の末端の水酸基を炭素数2〜22の脂肪酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸等のジカルボン酸でエステル化したものも挙げられる。
また、本発明で用いられる上記ポリオキシアルキレン系化合物の分子量は200以上であり、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上である。分子量の上限は、特にないが、好ましくは20000以下であり、ポリエーテルが水酸基を2つ以上有する場合は、6000以下が好ましい。分子量が200より小さいと、重合に関与しないポリオキシアルキレン系化合物が多くなる。
【0016】
上記ポリオキシアルキレン系化合物は、商品が市販されている場合には当該商品を購入したものであってもよいし、自ら調製したものであってもよい。ポリオキシアルキレン系化合物を自ら調製する手法としては、例えば、1)アルカリ金属の水酸化物、アルコキシド等の強アルカリや、アルキルアミン等を塩基触媒として用いるアニオン重合、2)金属および半金属のハロゲン化物、鉱酸、酢酸等を触媒として用いるカチオン重合、3)アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属のアルコキシド、アルカリ土類化合物、ルイス酸等を組み合わせたものを用いる配位重合などの手法を用いて、ポリオキシアルキレン系化合物の炭化水素基部分を含むアルコール、エステル、アミン、アミド、チオール、スルホン酸などに、上述したアルキレンオキサイドを付加する手法が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン系化合物の例としては、例えば、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコールが挙げられる。なお、ラジカル重合性の炭素炭素二重結合を有する化合物は、本発明のポリオキシアルキレン系化合物には該当しない。
【0017】
本発明の重合体は、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)を、前記ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造と、全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)由来の構造の合計の質量100質量%に対し、50〜98質量%含んでいる。重合体の界面活性剤との相溶性が更に向上するとの観点から、好ましくは60〜96質量%であり、より好ましくは65〜94質量%であり、さらに好ましくは68〜92質量%であり、最も好ましくは70〜90質量%である。
【0018】
[カルボキシル基含有単量体]
本発明の重合体は、カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造bという)を有することを特徴としている。ここで、カルボキシル基含有単量体由来の構造とは、カルボキシル基含有単量体が重合することにより形成される構造であり、例えばカルボキシル基含有単量体がアクリル酸(CH=CHCOOH)であるとき、カルボキシル基含有単量体由来の構造とは、−CH−CH(COOH)−で表すことができる。なお、カルボキシル基含有単量体が塩である場合、全原料由来の構造(ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)と、全単量体に由来する構造)に対する、カルボキシル基含有単量体由来の構造の質量割合を計算するときは、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。更に、本発明において、ポリオキシアルキレン系化合物にもカルボキシル基含有単量体にも該当する化合物は、他の原料由来の構造に対する質量比を計算するときは、カルボキシル基含有単量体として計算をする。
本願の重合体が、カルボキシル基含有単量体由来の構造を有することにより、良好な親水性よごれの分散能を有する。
【0019】
上記カルボキシル基含有単量体は、カルボキシル基と炭素炭素不飽和二重結合を有する単量体である。例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸、およびこれらの塩等が例示される。なかでも、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、これらの塩であることがより好ましく、アクリル酸、マレイン酸であることがさらに好ましく、アクリル酸であることが特に好ましい。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
本発明の重合体は、カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)と、全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)に由来する構造の合計の質量100質量%に対し、1〜49質量%含んでいる。重合体の再汚染防止能が更に向上するとの観点から、好ましくは2〜38質量%であり、より好ましくは3〜32質量%であり、さらに好ましくは4〜28質量%であり、最も好ましくは5〜25質量%である。
【0021】
[疎水性基含有単量体]
本発明の重合体は、疎水性基含有単量体に由来する構造(構造cという)を有することを特徴としている。ここで、疎水性基含有単量体に由来する構造(疎水性基含有単量体由来の構造)とは、疎水性基含有単量体が重合することにより形成される構造であり、例えば疎水性基含有単量体がアクリル酸ブチル(CH=CHCOOC)であるとき、疎水性基含有単量体由来の構造とは、−CH−CH(COOC)−で表すことができる。なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系化合物にも疎水性基含有単量体にも該当する化合物は、他の原料由来の構造に対する質量比を計算するときは、疎水性基含有単量体として計算をする。
疎水性基含有単量体としては、炭素数3以上のアルキル基、アリール基、アルケニル基を有する疎水基と炭素炭素不飽和二重結合を有する単量体であり、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸セカンダリーブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の疎水基含有(メタ)アクリル酸アルキル;スチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、インデン等のビニルアリール;イソプロピルビニルエーテル、ターシャリーブチルビニルエーテル等の疎水基含有ビニルエーテル;ヘキセン、オクテン等の疎水基含有アルケン類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等の疎水基含有マレイミド類、イソプロピルアクリルアミド、イソブチルアクリルアミド等の疎水基含有アミド類等が例示される。この中でも、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルやスチレンが更に好ましく、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましく、その場合、アルキル基は、炭素原子と水素原子のみで形成されているものが特に好ましい。
【0022】
本願の重合体が、疎水性基含有単量体由来の構造を有することにより、疎水成分への重合体の吸着性が向上することに伴い、良好な再汚染防止能を有する。
【0023】
また、重合体の原料として炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルやスチレンを使用することにより、重合後に残存する単量体を低く抑えることができるため、液体洗剤と混合したときの透明性を特に高めることができる。更に、本発明の重合体が、カルボキシル基含有単量体由来の構造と疎水性基含有単量体由来の構造をバランスよく有することにより、疎水/親水性複合汚れの分散性が向上するという効果を奏する。
【0024】
本発明の重合体は、疎水性基含有単量体に由来する構造(構造c)を、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)と、全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)に由来する構造の合計の質量100質量%に対し、1〜49質量%含んでいる。重合体の界面活性剤との相溶性および再汚染防止能が更に向上するとの観点から、好ましくは2〜38質量%であり、より好ましくは3〜32質量%であり、さらに好ましくは4〜28質量%であり、最も好ましくは5〜25質量%である。
【0025】
[その他の単量体]
なお、本発明の重合体は、カルボキシル基含有単量体や疎水性基含有単量体に由来する構造に加えて、必要に応じて他の単量体由来の構造(構造単位eという)が含まれてもよい。その他の単量体としては、重合性の炭素炭素不飽和二重結合を有するものであれば特に制限はないが(当然、上記ポリオキシアルキレン系化合物、上記カルボキシル基含有単量体、上記疎水性基含有単量体に該当するものは、その他の単量体には含まれない。)、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸などのホスホン酸基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の上記疎水性基含有単量体以外の(メタ)アクリル酸アルキル;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートまたはその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;マレイミド、メチルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール:ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;アリルアルコールやイソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した構造を有する単量体、(メタ)アクリレートのアルコキシアルキレングリコール等のアルキレングリコール鎖含有単量体、等が挙げられる。これらの他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
本発明の重合体における、任意成分であるその他の単量体に由来する構造(構造e)の、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)と、全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)に由来する構造の合計の質量100モル%に対する、他の単量体由来の構造の割合は、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点から、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%であり、さらに好ましくは0〜5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0027】
[本発明の重合体]
本発明の重合体は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下でカルボキシル基含有単量体および疎水性基含有単量体を必須として重合して得られる重合体であるが、疎水性汚れや親水性汚れの分散性が向上することから、本発明の重合体は、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)と、カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を主体とする部位と、疎水性基含有単量体に由来する構造(構造c)を主体とする部位を有することが好ましく、具体的には、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造(構造a)からなる主鎖と、カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を主体とする側鎖(グラフト鎖)と、疎水性基含有単量体に由来する構造(構造c)を主体とする側鎖(グラフト鎖)を有する重合体を含むことが更に好ましい。
【0028】
ここで、「カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を主体とする側鎖(グラフト鎖)」とは、カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)が、当該側鎖を構成する全単量体由来の構造100質量%に対して、カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を50質量%以上有する鎖をいう。同様に、「疎水性基含有単量体に由来する構造(構造c)を主体とする側鎖(グラフト鎖)」とは、当該側鎖を構成する全単量体由来の構造100質量%に対して、疎水性基含有単量体に由来する構造(構造c)を50質量%以上有する鎖をいう。このように、重合体が構造bを主体とする側鎖と、構造cを主体とする側鎖の両方を含むことにより、重合体の再汚染防止能が顕著に向上する。
構造bを主体とする側鎖と、構造cを主体とする側鎖の両方を有するグラフト重合体は、例えば、ポリオキシアルキレン系化合物および水素引抜き能力のある重合開始剤の存在下で、(i)カルボキシル基含有単量体を主体とする単量体成分と、(ii)疎水性基含有単量体を主体とする単量体成分を主体とする単量体成分を滴下する時間をそれぞれ別にして反応容器(重合容器)に添加して重合することにより、製造することができる。
上記「カルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を主体とする側鎖(グラフト鎖)」、「疎水性基含有単量体に由来する構造(構造c)を主体とする側鎖(グラフト鎖)」は、それぞれ構造b、構造cを80質量%以上100質量%以下有することが更に好ましく、90質量%以上100質量%以下有することが特に好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。
【0029】
上記の通り、本発明の重合体は、通常、共重合体と未反応のポリアルキレン系化合物を含む混合物(組成物)である。再汚染防止能を向上させる観点からは、未反応のポリアルキレン系化合物をなるべく減少させることが好ましい。
なお、上記カルボキシル基含有単量体に由来する構造を主体とする部位は、ポリアルキレン系化合物の存在下で、カルボキシル基含有単量体を主体とする単量体成分(1種または2種以上の単量体をいう。)を重合することにより形成した部位であることが好ましく、上記疎水性基含有不飽和単量体に由来する構造を主体とする部位は、ポリアルキレン系化合物の存在下で、疎水性基含有不飽和単量体を主体とする単量体成分を重合することにより形成した部位であることが好ましい。「カルボキシル基含有単量体を主体」、「疎水性基含有不飽和単量体を主体」に関しては、後述の通りである。
【0030】
本発明の重合体の重量平均分子量は、洗剤ビルダーとしての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明の重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜50000であり、より好ましくは500〜30000であり、さらに好ましくは1000〜20000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明の重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0031】
また、本発明の重合体の数平均分子量は、洗剤ビルダーとしての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明の重合体の数平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜40000であり、より好ましくは200〜25000であり、さらに好ましくは500〜15000である。この数平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この数平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明の重合体の数平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0032】
[重合体組成物]
重合体組成物中には、本願の重合体が必須として含まれる。その他、未反応のポリオキシアルキレン系化合物、未反応のカルボキシル基含有単量体、未反応の疎水性基含有単量体、未反応の他の単量体、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物、カルボキシル基含有単量体と疎水性基含有単量体からなる重合体等が含まれうる。
【0033】
なお、本願でいう重合体組成物は、特に制限されるものではないが、生産効率性の観点から、好ましくは、不純物除去などの精製工程を経ずに得られる。さらに、重合工程の後に、得られた混合物を、取り扱いの便のため、少量の水にて希釈(得られた混合物に対して1〜400質量%程度)したものも本願でいう重合体組成物に含まれる。
【0034】
[本発明の重合体の製造方法]
本発明の製造方法は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、カルボキシル基含有単量体および疎水性基含有単量体を必須とする単量体を重合する方法において、前記ポリオキシアルキレン系化合物と全単量体(カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体)の合計の質量100モル%に対し、ポリオキシアルキレン系化合物を50〜98質量%、カルボキシル基含有単量体を1〜49質量%、疎水性基含有単量体を1〜49質量%で重合することを特徴とする重合体の製造方法、である。
【0035】
本発明の製造方法におけるポリオキシアルキレン系化合物、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体(全原料ということがある)の合計100質量%に対するポリオキシアルキレン系化合物の使用量は50〜98質量%であるが、好ましくは60〜96質量%であり、より好ましくは65〜94質量%であり、さらに好ましくは68〜92質量%であり、最も好ましくは70〜90質量%である。
上記範囲内であれば、得られる重合体が良好な界面活性剤との相溶性を発現することとなる。
【0036】
本発明の製造方法におけるポリオキシアルキレン系化合物、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体(全原料)の合計100質量%に対するカルボキシル基含有単量体の使用量は1〜49質量%であるが、好ましくは2〜38質量%であり、より好ましくは3〜32質量%であり、さらに好ましくは4〜28質量%であり、最も好ましくは5〜25質量%である。
上記範囲内であれば、得られる重合体が良好な再汚染防止能を発現することとなる。
【0037】
本発明の製造方法におけるポリオキシアルキレン系化合物、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体(全原料)の合計100質量%に対する疎水性基含有単量体の使用量は1〜49質量%であるが、好ましくは2〜38質量%であり、より好ましくは3〜32質量%であり、さらに好ましくは4〜28質量%であり、最も好ましくは5〜25質量%である。上記範囲内であれば、得られる重合体が良好な界面活性剤との相溶性および再汚染防止能を発現することとなる。
【0038】
本発明の製造方法におけるポリオキシアルキレン系化合物、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有単量体、その他の単量体(全原料)の合計100質量%に対する任意成分であるその他の単量体の使用量は、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%であり、さらに好ましくは0〜5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。本発明の製造方法は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、カルボキシル基含有単量体および疎水性基含有単量体を必須とする単量体を重合する方法において、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、(i)カルボキシル基含有単量体を主体とする単量体成分と、(ii)疎水性基含有不飽和単量体を主体とする単量体成分と、を別々に重合して製造することが好ましい。別々に重合して製造する方法としては、カルボキシル基含有単量体を主体とする単量体成分と、疎水性基含有不飽和単量体を主体とする単量体成分を時間をずらして反応容器(重合容器)に添加する製造方法や、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有不飽和単量体、必要に応じてその他の単量体を、別々に添加する方法において、それぞれの単量体の添加量を、重合中に変化させることにより(添加速度を0に調整することを含む)、重合中の重合系に含まれる各単量体濃度を変化させる製造方法が例示される。
すなわち本発明の製造方法は、ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、単量体を重合する方法において、(i)重合容器にカルボキシル基含有単量体を主体として添加する工程と、(ii)重合容器に疎水性基含有不飽和単量体を主体として添加する工程を含む。これらの工程を含むことにより、重合中に、カルボキシル基含有単量体を主体とする重合と、疎水性基含有不飽和単量体を主体とする重合が行われることとなる。
【0039】
「カルボキシル基含有単量体を主体」とは、カルボキシル基含有単量体が全単量体100質量%に対して、50質量%以上であることを表し、80質量%以上100質量%以下有することが更に好ましく、90質量%以上100質量%以下有することが特に好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。「疎水性基含有不飽和単量体を主体」も同様である。例えば、重合時のある時点において、重合容器に添加される全単量体100質量%に対し、カルボキシル基含有単量体が50質量%以上であれば「カルボキシル基含有単量体を主体に添加している」あるいは「カルボキシル基含有単量体を主体に添加する工程」と言うことになる。未反応のポリオキシアルキレン系化合物量がより低減する傾向にあることから、また、得られる重合体の洗浄性能が向上する傾向にあることから、カルボキシル基含有単量体を主体とする重合を、疎水性基含有不飽和単量体を主体とする重合の前に行うことが好ましい。
【0040】
<重合開始剤>
本発明の重合体は、好ましくは、重合開始剤として、有機化酸化物の存在下で重合を行なうことが好ましい。重合開始剤として有機化酸化物を使用することにより、効率よくグラフト重合体を製造することができる(すなわち効率よくポリオキシアルキレン系化合物にカルボキシル基含有単量体や疎水性基含有不飽和単量体からなるグラフト鎖を形成することができる)。このため、本発明の重合体の界面活性剤との相溶性が向上する。有機化酸化物は、比較的、ポリオキシアルキレン系化合物の水素原子を引抜く能力に優れているので好ましい。
使用可能な有機過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1’−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、n−ブチル4、4’−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレエートなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機過酸化物のうち、ジ−t−ブチルペルオキシド(PBDと略す)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(PBZと略す)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(PBIと略す)、n−ブチル4、4’−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレエート(PHVと略す)が好適である。
【0041】
その他の使用可能な重合開始剤としては、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾ化合物等が挙げられる。しかし、効率よくグラフト重合体を製造するという観点から、これらの重合開始剤を使用する場合でも、有機過酸化物を併用することが好ましい。
【0042】
重合反応における重合開始剤の使用量は、単量体成分の使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、単量体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、20質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上、15質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上、10質量部以下である。
重合開始剤、特に有機過酸化物の使用量が少なすぎると、ポリオキシアルキレン系化合物への単量体がグラフトした、グラフト体の収率が低下する虞がある。一方、有機過酸化物重合開始剤の使用量が多すぎると、品質が劣化する虞や製造コストが上昇する虞がある。
【0043】
本発明の重合体の製造方法において、重合の際には、上述した重合開始剤に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0045】
本発明の重合体の製造方法において、重合反応を行う際には、重合開始剤の他に、必要に応じて、任意の連鎖移動剤、pH調節剤、緩衝剤などを用いることができる。
【0046】
<重合溶媒>
本発明の重合体の製造方法においては、重合反応は好ましくは、実質的に塊状重合(バルク重合)の形態で、具体的には、このグラフト重合の反応系として、溶媒の含有量が使用するポリオキシアルキレン系化合物に対して10質量%以下で重合が行われる。重合の具体的な形態は特に制限されず、塊状重合(バルク重合)に関する従来公知の知見が適宜参照され、さらに必要に応じて改良されうる。
【0047】
溶媒の使用量は、使用するポリオキシアルキレン系化合物に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下であり、最も好ましくは実質的に溶媒を含まない。「実質的に溶媒を含まない」とは、グラフト重合時に積極的に溶媒を添加しない形態を意味し、不純物程度の溶媒の混入は許容されうることを意味する。
【0048】
重合時に、重合反応系が溶媒を含む場合、用いられる溶媒は特に制限されないが、単量体成分の溶媒への連鎖移動定数が小さいものや、常圧下で使用可能な沸点70℃以上のもの等が好ましい。このような溶媒としては、例えば、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のジエーテル類;酢酸、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル等の酢酸系化合物;等が挙げられる。これらの溶媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。上記アルコール類およびジエーテル類中のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0049】
得られた重合体(重合体組成物)は、取り扱いの便のため、少量の水で希釈して保存してもよい。
【0050】
<重合温度>
本発明の重合体の製造方法における、重合の際の温度は好ましくは100℃以上であり、より好ましくは100〜160℃であり、さらに好ましくは110〜150℃である。重合温度が上記範囲にあれば、上記グラフト重合が効率よく起こる為、得られる重合体の界面活性剤との相溶性や再汚染防止能が良好となる傾向にある。
なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させてもよい。
【0051】
<重合時間>
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜240分である。なお、本発明において、「重合時間」とは単量体を添加している時間を表す。
【0052】
<重合圧力>
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0053】
<原料の添加>
本発明の重合体の製造方法において、重合の際には、ポリオキシアルキレン系化合物の一部または全部を反応系に仕込んだ状態で、重合を開始するとよい。このようにすることで、グラフト重合体の収率が向上する。例えば、ポリオキシアルキレン系化合物の全量を反応系に仕込み、反応系を昇温させた後、単量体成分および重合開始剤を別々に添加して、重合反応を進行させる形態が例示される。かような形態によれば、グラフト重合体の収率の向上に加え、得られる重合体の分子量が容易に調整されうるため、好ましい。なお、重合は、回分式で行われてもよいし、連続式で行われてもよい。
【0054】
なお、本発明の製造方法においては、重合時に、上記の通り、カルボキシル基含有単量体を主体として添加する工程と疎水性基含有不飽和単量体を主体として添加する工程が存在することが好ましいが、この場合、カルボキシル基含有単量体を主体として添加する工程が先であっても、疎水性基含有不飽和単量体を主体として添加する工程が先であっても構わない。好ましくは、カルボキシル基含有単量体を主体として添加する工程が先である。
なお、本発明の重合方法において、カルボキシル基含有単量体の重合条件と疎水性基含有不飽和単量体の重合条件が全く異なる場合(例えば反応温度や重合開始剤の種類)には、各単量体を一定速度で添加してもカルボキシル基含有単量体に由来する構造(構造b)を主体とする側鎖(グラフト鎖)と疎水性基含有不飽和単量体に由来する構造(構造c)を主体とする側鎖(グラフト鎖)が別々に形成されることとなる。
【0055】
重合開始剤、カルボキシル基含有単量体、疎水性基含有不飽和単量体、必要に応じてその他の単量体は溶剤に溶解して重合容器に添加しても構わないが、上記の通り、グラフト重合体の収率を向上させる面では、溶剤の使用量を最小限に設定することが好ましく、溶剤を使用しないことがより好ましい。
【0056】
[重合体、重合体組成物の用途]
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0057】
<水処理剤>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0058】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0059】
<繊維処理剤>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体(あるいは重合体組成物)を含む。
【0060】
上記繊維処理剤における本発明の重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0061】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0062】
本発明の重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0063】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0064】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0065】
上記無機顔料分散剤中における、本発明の重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0066】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0067】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0068】
<洗剤組成物>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、洗剤組成物にも添加しうる。
【0069】
洗剤組成物における本発明の重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、本発明の重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0070】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0071】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0072】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0073】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0074】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜80質量%であり、好ましくは15〜75質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%であり、特に好ましくは25〜65質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0075】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するためのその他の再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0076】
上記洗剤組成物は、本発明の重合体(あるいは重合体組成物)に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0077】
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0078】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0079】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0080】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明における共重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗浄剤組成物は、再汚染防止能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0082】
また、本発明の重合体の重量平均分子量、数平均分子量、重合体組成物および重合体水溶液の固形分量は、下記の方法に従って測定した。重合体の生成は、GPC、キャピラリー電気泳動のよる分析等で確認した。
【0083】
<ポリオキシアルキレン化合物、疎水基含有不飽和単量体、カルボキシル基含有単量体の定量方法>
重合体組成物中の未反応のポリオキシアルキレン化合物や疎水基含有不飽和単量体等の定量は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)。
【0084】
<重量平均分子量および数平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ,GF−710−HQ,GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYETHYLENGLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
【0085】
<重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0086】
<電気泳動測定条件>
未反応のポリオキシアルキレン系化合物、グラフト重合体の有する酸基の分布(偏在性)は、下記条件で調べた。電荷を有さないポリオキシアルキレン系化合物は早くに、電荷の大きいグラフト重合体は遅く、より電荷の大きい未グラフト重合体はさらに遅く検出される。
装置名:Photal OTSUKA ELECTRONICS CAPI−3300
CAPILLARY ELECTROPHORESIS SYSTEM
カラム:大塚電子株式会社 GLキャピラリー管75μ×50cm
電圧:15kV
展開溶媒:50mmol/L 4−ホウ酸ナトリウム水溶液
泳動時間:30分
検出:UV210nm。
【0087】
<クレー分散能>
(i)グリシン67.6g、塩化ナトリウム52.6g、1mol/lのNaOH水溶液60mlにイオン交換水を加えて600gとしたグリシン緩衝溶液を調整した。
(ii)塩化カルシウム2水和物0.074g、ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル0.20g、グリシン緩衝溶液54gに、純水を加えて900gとし、分散液を調整した。また、固形分換算で0.1%の重合体水溶液を調整した。
(iii)約30ccの実験に用いる一般的な試験管に、JIS試験用粉体I,11種(関東ローム,微粒:日本粉体工業技術協会)0.30gを入れ、(ii)の分散液27g、重合体水溶液3gを添加した。この時、試験液のカルシウム濃度は炭酸カルシウム換算50ppmとなっている。
(iv)試験管をゴム栓で密封した後、クレーが全体に分散するように上下に60回振った。この試験管を直射日光の当たらないところに2時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5ml採取した。
(v)UV分光器を用いて、波長380nmの条件で、1cmのセルで吸光度 (ABS)を測定し、この値をクレー分散能値(単にクレー分散能とも言う)とした。
【0088】
<カーボンブラック分散能>
(i)グリシン67.6g、塩化ナトリウム52.6g、1mol/lのNaOH水溶液60mlにイオン交換水を加えて600gとしたグリシン緩衝溶液を調整した。
(ii)塩化カルシウム2水和物0.074g、ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル0.20g、カーボンブラック(洗濯科学協会より入手)1.0g、グリシン緩衝溶液54gに、純水を加えて900gとし、分散液を調整した。また、固形分換算で0.05%の重合体水溶液を調整した。
(iii)約30ccの実験に用いる一般的な試験管に、(ii)の分散液27g、重合体水溶液3gを添加した。この時、試験液のカルシウム濃度は炭酸カルシウム換算50ppmとなっている。
(iv)試験管をゴム栓で密封した後、上下に60回振った。この試験管を直射日光の当たらないところに20時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5ml採取した。
(v)UV分光器を用いて、波長380nmの条件で、1cmのセルで吸光度 (ABS)を測定し、この値をカーボンブラック分散能値(単にカーボンブラック分散能とも言う)とした。
【0089】
<再汚染防止能>
(i)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作製した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(ii)塩化カルシウム2水和物1.1gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。
(iii)ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル4.0g、に、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
(iv)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で5%の重合体水溶液1g、カーボンブラック1.0gをポットに入れ、150rpmで1分間撹拌した。その後、白布5枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(v)手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。
(vi)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した。
(vii)以上の測定結果から、下式により再汚染防止能を求めた。
(viii)再汚染防止能(%)=〔(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)〕×100。
【0090】
<実施例1−1>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%アクリル酸(以下、100%AAと略す。)25.6g、100%アクリル酸ブチル(以下、100%BAと略す。)25.6g、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(以下、PBIと略す。)2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始20分後から100分間、100%BAはPBI滴下開始120分後から140分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%BAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度90%、重量平均分子量6,300の重合体1の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は18%であった。
【0091】
<実施例1−2>
実施例1−1において、滴下時間を、100%AAはPBI滴下開始120分後から140分間、100%BAはPBI滴下開始20分後から100分間とし、100%AAの滴下終了後、更に60分間、反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した以外は実施例1−1と同様にして重合を行った。
このようにして、固形分濃度88%、重量平均分子量4,300の重合体2の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は28%であった。
【0092】
<実施例1−3>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AA 25.6g、100%BA 25.6g、ジ−tert−ブチルパーオキシド(以下、PBDと略す。)2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBDは180分間、100%AAはPBD滴下開始20分後から100分間、100%BAはPBD滴下開始120分後から140分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%BAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度91%、重量平均分子量10,000の重合体3の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は21%であった。
【0093】
<実施例1−4>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均10モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AA 25.6g、100%BA 25.6g、PBI 2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始20分後から100分間、100%BAはPBI滴下開始120分後から140分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%BAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度89%、重量平均分子量4,200の重合体4の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は37%であった。
【0094】
<実施例1−5>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AA 10.2g、100%BA 41.0g、PBI 2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始180分後から60分間、100%BAはPBI滴下開始20分後から180分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%AAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度88%、重量平均分子量3,700の重合体5の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は16%であった。
【0095】
<実施例1−6>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AA 41.0g、100%BA 10.2g、PBI 2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始20分後から160分間、100%BAはPBI滴下開始180分後から80分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%BAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度90%、重量平均分子量6,700の重合体6の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は25%であった。
【0096】
<実施例1−7>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AA 41.0g、100%アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、100%EHAと略す)10.2g、PBI 2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始20分後から160分間、100%EHAはPBI滴下開始180分後から80分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%EHAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度89%、重量平均分子量7,900の重合体7の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は27%であった。
【0097】
<実施例1−8>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AA 25.6g、100%EHA 25.6g、PBI 2.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始20分後から100分間、100%EHAはPBI滴下開始120分後から140分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%EHAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度88%、重量平均分子量5,200の重合体8の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は13%であった。
【0098】
<参考例1−1>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AAを25.6g、100%BAを25.6g、PBIを2.6g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%AAはPBI滴下開始20分後から240分間、100%BAはPBI滴下開始20分後から180分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%AAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水17.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度90%、重量平均分子量3,700の参考重合体1の水溶液を得た。
上記重合体の水溶液におけるアクリル酸、アクリル酸ブチルの含有量は、1000ppm未満であり、未反応のメトキシポリエチレングリコールの割合は25%であった。
【0099】
<比較例1−1>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量300mlのSUS製セパラブルフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキシドを平均25モル付加して得られたもの)119.4gを仕込み、窒素を吹き込み、撹拌しながら128℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、128℃に保持された重合反応系中に、100%AAを51.2g、PBIを2.6g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBIは250分間、100%BAはPBI滴下開始20分後から240分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
100%AAの滴下終了後、更に60分間、上記反応溶液を128℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水14.0gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度90%、重量平均分子量7,200の比較重合体1の水溶液を得た。
【0100】
<実施例2>
次に、上記重合体1〜8、比較重合体1の、クレー分散能を上記評価方法に従って評価した。結果は以下の表1の通りである。
【0101】
【表1】


<実施例3>
次に、上記重合体1〜8、比較重合体1の、カーボンブラック分散能を上記評価方法に従って評価した。結果は以下の表2の通りである。
【0102】
【表2】

【0103】

<実施例4>
次に、上記重合体、比較重合体1の、再汚染防止能を上記評価方法に従って評価した。結果は以下の表3の通りである。
【0104】
【表3】

【0105】

表1〜3に示す結果から、本発明の重合体は、従来の重合体組成物と比較して、優れた再汚染防止能、疎水性汚れ及び親水性汚れの分散能を有していることが示される。
従って、本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして用いると、風呂の残り湯を用いて洗浄しても汚れの再汚染が効果的に防止されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で酸基含有不飽和単量体および疎水性基含有不飽和単量体を必須として重合して得られる重合体であって、
前記ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造と、全単量体に由来する構造の合計の質量100質量%に対し、ポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造の質量割合が50〜98質量%であり、カルボキシル基含有単量体に由来する構造の質量割合が1〜49質量%であり、疎水性基含有単量体に由来する構造の質量割合が1〜49質量%であり、当該重合体は、カルボキシル基含有単量体に由来する構造を主体とする部位と、疎水性基含有単量体に由来する構造を主体とする部位を有する、
重合体。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、酸基含有不飽和単量体および疎水性基含有不飽和単量体を必須とする単量体を重合する方法であって、
当該重合方法は、
(i)重合容器にカルボキシル基含有単量体を主体として添加する工程と、
(ii)重合容器に疎水性基含有不飽和単量体を主体として添加する工程とを含み、
前記ポリオキシアルキレン系化合物と全単量体の合計の質量100モル%に対し、ポリオキシアルキレン系化合物を50〜98質量%、カルボキシル基含有単量体を1〜49質量%、疎水性基含有単量体を1〜49質量%を重合することを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の重合体を含む洗剤組成物。

【公開番号】特開2011−105840(P2011−105840A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261690(P2009−261690)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】