新規重合体又は共重合体及びその製造方法
【課題】水和反応及び脱水反応の基質となりうる新規な重合体又は共重合体、およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1);
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体、およびこれらを酸化、および水和がより得られる重合体又は共重合体、そしてそれらの製造方法からなり、これらの重合体又は共重合体が、吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用である。
【解決手段】下記一般式(1);
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体、およびこれらを酸化、および水和がより得られる重合体又は共重合体、そしてそれらの製造方法からなり、これらの重合体又は共重合体が、吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規重合体又は共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機化合物の水和、脱水に関して多くの報告があり、無機化合物を用いた水和及び脱水反応は、例えば、吸湿材料、調湿材料、建材等に応用されている。
一方、有機化合物を基質とする水和反応としては、隣接トリカルボニル構造を有する環状化合物を基質とする反応が知られており、有機化合物を基質とする脱水反応としては、上記水和反応の逆反応が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、これまで直鎖状隣接トリカルボニル構造を有する重合体は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bulletin of The Chemical Society of Japan 1979, 52, 2733
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水和反応又は脱水反応の基質となりうる新規な重合体又は共重合体及び当該重合体又は共重合体の新規な前駆体、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルボニル−メチレン−カルボニル部位と炭素−炭素不飽和結合とを有する特定の化合物を含有するモノマーを重合又は共重合し、次いで得られた重合体又は共重合体を酸化することにより、隣接トリカルボニル構造を有する新規重合体又は共重合体が得られることを見出した。
さらに、隣接トリカルボニル構造を有する重合体又は共重合体は、容易に水和することが可能であり、またその水和物は脱水反応が容易に進行するとの知見を得、隣接トリカルボニル構造を有する重合体又は共重合体が吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1);
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R4は、−CO−、−CH2−又は−C(OH)2−を示す。)
で表される構造単位を含むことを特徴とする、重合体又は共重合体を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、下記一般式(1−2);
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を水和することを特徴とする、下記一般式(1−3)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
【0014】
更に、本発明は、上記一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を脱水することを特徴とする、上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
【0015】
また更に、本発明は、下記一般式(1−1);
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を酸化することを特徴とする、上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
【0018】
更にまた、本発明は、上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を有効成分として含有する、吸湿剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸水又は脱水反応の基質となりうる重合体及び共重合体、及び当該重合体又は共重合体の前駆体が提供される。とりわけ、隣接トリカルボニル構造を有する重合体又は共重合体は、吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】4−ビニルジベンゾイルメタン、実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】4−ビニルジベンゾイルメタン、実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)のIRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の紫外可視吸収スペクトル(250〜600nm)及びモル吸光係数を示す図である。
【図4】実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の紫外可視吸収スペクトル(350〜600nm)及びモル吸光係数を示す図である。
【図5】実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の熱重量曲線を示す図である。
【図6】DPPT−OHの脱水物、DPPT及びDPPT−OHのIRスペクトルを示す図である。
【図7】DPPT−OHの脱水物及びDPPTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)のIRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)のCHCl3中での紫外可視吸収スペクトル(250〜600nm)(5×10-3濃度に調整し、更に100倍希釈した後、可溶部でUV測定を行なった。)を示す図である。
【図11】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)のCHCl3中での紫外可視吸収スペクトル(400〜600nm)(5×10-3濃度に調整し可溶部でUV測定を行なった。)を示す図である。
【図12】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)の熱重量曲線を示す図である。
【図13】DPPT_OH−PSの脱水物、DPPT_OH−PS及びDPPT−PSのIRスペクトルを示す図である。
【図14】実施例8〜10で得られた共重合体(DPPD−MMA、DPPT−MMA及びDPPT_OH−MMA)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図15】実施例8〜10で得られた共重合体(DPPD−MMA、DPPT−MMA及びDPPT_OH−MMA)のIRスペクトルを示す図である。
【図16】実施例8〜10で得られた共重合体(DPPD−MMA、DPPT−MMA及びDPPT_OH−MMA)の熱重量曲線を示す図である。
【図17】DPPT_OH−MMAの脱水物、DPPT_OH−MMA及びDPPT−MMAのIRスペクトルを示す図である。
【図18】実施例11〜13で得られた共重合体(DPPD−NVP、DPPT−NVP及びDPPT_OH−NVP)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図19】実施例11〜13で得られた共重合体(DPPD−NVP、DPPT−NVP及びDPPT_OH−NVP)のIRスペクトルを示す図である。
【図20】実施例11〜13で得られた共重合体(DPPD−NVP、DPPT−NVP及びDPPT_OH−NVP)の熱重量曲線を示す図である。
【図21】DPPT_OH−NVPの脱水物、DPPT_OH−NVP及びDPPT−NVPのIRスペクトルを示す図である。
【図22】DPPT、DPPT−MMA及びDPPT−NVPの水和能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本明細書において使用する、各式中の記号の定義を説明する。
式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基である。
上記R1において、「炭素数1〜5の炭化水素基」としては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜5の脂環式炭化水素基が挙げられ、中でも炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が好ましい。当該炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基において、「炭化水素基」としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
上記アルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
【0022】
また、R1としては、水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基のうち、水素原子が特に好ましい。
【0023】
式(1)中、R2において「炭素数1〜20の2価の炭化水素基」としては、炭素数1〜20の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0024】
上記炭素数1〜20の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜12の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0025】
上記炭素数1〜20の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基において、「炭化水素基」としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレンが挙げられる。
上記アルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜8の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0027】
炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基において、「脂環式炭化水素基」の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基等が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0028】
上記炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、フェナントレン基、アンスリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
また、上記「炭素数1〜20の2価の炭化水素基」の好適な具体例としては、アリーレン基が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
【0029】
また、R2において、炭素数1〜20の2価の炭化水素基に置換し得る基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;水酸基;アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基等の含窒素基;トリアルキルシリル基等の含ケイ素基;メルカプト基、アルキルチオ基等の含硫黄基等が挙げられる。これら置換基の位置及び数は任意であり、当該置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0030】
中でも、R2としては、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリーレン基がより好ましく、フェニレン基が特に好ましい。なお、かかる2価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0031】
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であるが、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
R3において「炭素数1〜20の炭化水素基」としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0032】
上記炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0033】
上記炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基において、「炭化水素基」としては、上記R1と同様のものが挙げられる。
上記アルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等が挙げられる。
【0034】
上記炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0035】
炭素数3〜20の脂環式炭化水素基において、「脂環式炭化水素基」の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0036】
上記炭素数6〜18の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
また、上記「炭素数1〜20の炭化水素基」の好適な具体例としては、アリール基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
また、R3において、「炭素数1〜20の炭化水素基」に置換し得る基としては、R2と同様である。
【0037】
中でも、R3としては、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。なお、かかる芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0038】
R4は、−CO−、−CH2−及び−C(OH)2−のうちのいずれかである。
【0039】
次に、本発明の重合体又は共重合体について説明する。
本発明の重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位を有するものであるが、本発明の共重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位に加えて、それ以外の構造単位を有することができる。
上記一般式(1)以外の構造単位を与える共重合モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル類;メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニルニトリル類;N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−5−ブチルピロリドン、N−エチル−3−ビニルピロリドン、N−エチル−5−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルラクタム類;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。
一般式(1)で表される構造単位と、一般式(1)以外の構造単位との比率(モル比)は、0.1:99.9〜99.9:0.1が好ましく、特に10:90〜90:10がより好ましい。なお、本発明の共重合体の構造は特に限定されず、ランダム共重合体、交互共重合体及びブロック共重合体の何れであってもよい。
【0040】
本発明の重合体又は共重合体の数平均分子量は特に限定されないが、2000〜1000000が好ましく、10000〜100000がより好ましく、20000〜40000が更に好ましい。ここで、本明細書において「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶出溶媒:DMF)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
また、本発明の重合体又は共重合体のMw/Mnとしては、1.01〜7.00が好ましく、1.50〜3.00がより好ましい。ここで、「Mw」とは、GPC(溶出溶媒:DMF)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0041】
次に、本発明の重合体又は共重合体の製造方法について説明する。
下記一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体は、下記式に例示されるように、重合開始剤存在下で、一般式(2)で表される化合物を重合させることにより得ることができる。
【0042】
【化5】
【0043】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
【0044】
上記一般式(2)で表される化合物は、例えば、The Journal of Organic Chemistry 2005.70. 9036-9039に記載されている方法により得ることができる。
【0045】
上記反応において、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、上記一般式(2)で表される化合物で表される化合物に対し、例えば、0.005〜0.1当量程度である。
【0046】
また、上記反応は、溶媒存在下及び溶媒非存在下のいずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては特に限定されないが、例えば、クロロベンセン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられ、中でもハロゲン化芳香族炭化水素類、とりわけクロロベンセンが好ましい。溶媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対し、例えば、10〜300当量程度である。
【0047】
上記反応の反応時間としては、1〜48時間が好ましく、12〜36時間がより好ましい。反応温度としては、60〜180℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。反応圧力としては、特に限定されないが、常圧が好ましい。
【0048】
上記反応は、円滑な重合反応の促進の点で、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0049】
一方、上記一般式(1−1)で表される構造単位を含む本発明の共重合体を得る場合には、芳香族ビニル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニルニトリル類、N−ビニルラクタム類、N−ビニルアミド類等の上記共重合モノマーを重合反応の際に共存させればよく、共重合反応は上記と同様にして行うことができる。
【0050】
上記一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。なお、上記反応により得られる一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は新規化合物である。
【0051】
本発明の重合体又は共重合体のうち、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、下記式に例示されるように、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を酸化することにより得られる。
【0052】
【化6】
【0053】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
【0054】
上記酸化反応は、ハロゲン化剤存在下で行うのが好ましく、当該ハロゲン化剤としては、通常の反応においてハロゲン化剤として用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、フッ素(F2)、フルオロキシトリフルオロメタン、二フッ化キセノン、フッ化過クロリル、フッ化硫酸セシウム、アセチルハイポフルオライト、N−フルオロスルホンアミド、ジエチルアミノサルファトリフルオリド、N−フルオロピリジニウム、N−フルオロ−2,6−ジ(メトキシカルボニル)ピリジニウム、N−フルオロ−3,5−ジクロロピリジニウム、N−フルオロ−2,4,6−トリメチルピリジニウム等のフッ素化剤;塩素(Cl2)、塩化チオニル、N−クロロスクシンイミド、塩化第二銅、スルフリルクロライド、トリクロロイソシアヌル酸、四塩化チタン、2,3,4,5,6,6−ヘキサクロロ−2,4−シクロヘキサジエノン、2,3,4,4,5,6−ヘキサクロロ−2,5−シクロヘキサジエノン、N−クロロトリエチルアンモニウムクロライド、ベンゼンセレネニルクロライド等の塩素化剤;臭素(Br2)、臭化水素、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、臭化第二銅、テトラメチルアンモニウムトリブロマイド、トリフルオロアセチルハイポブロマイト、ジブロモイソシアヌル酸(DBI)、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサ−2,5−ジエンオン、2,4−ジアミノー1,3−チアゾールハイドロトリブロマイド等の臭素化剤;ヨウ素(I2)、塩化ヨウ素(ICl)、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン、トリフルオロアセチルハイポヨーダイト、エチレンヨードクロライド、N−ヨードスクシンイミド等のヨウ素化剤が挙げられえる。これらのうち、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミドが好ましい。ハロゲン化剤の使用量は、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体に対し、例えば、1当量程度である。
【0055】
また、上記反応は、溶媒存在下及び溶媒非存在下のいずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、特に限定されないが、酸化能を有する有機溶剤が好ましい。当該酸化能を有する有機溶剤としては、例えば、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン、亜硝酸ブチル、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。溶媒の使用量は、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体に対し、例えば、10〜300当量程度である。
【0056】
また、上記反応においては、ハロゲン化剤の他に触媒を用いてもよく、当該触媒としては、酸化剤が好ましい。当該酸化剤としては、オキソ酸系化合物、オゾン、過酸化水素、及び上述の酸化能を有する有機溶剤等が挙げられる。上記オキソ酸系化合物としては、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、塩素酸銀、過塩素酸銀、硫酸、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸銀、五酸化二窒素、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸バリウム等が挙げられる。触媒の使用量は、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体に対し、例えば、0.5当量程度である。
【0057】
上記反応の反応時間としては、1〜168時間が好ましく、36〜60時間がより好ましい。反応温度としては、30〜100℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。反応圧力としては、特に限定されないが、常圧が好ましい。
【0058】
上記反応は、円滑な酸化反応の促進の点で、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0059】
上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。なお、上記反応により得られる一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は新規化合物である。
【0060】
本発明の重合体又は共重合体のうち、一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、下記式に例示されるように、水存在下で、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を水和することにより得られる。
【0061】
【化7】
【0062】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
【0063】
上記反応に使用される水の量は、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体に対し、例えば、1〜1000当量が好ましい。
【0064】
上記反応は、溶媒存在下及び溶媒非存在下のいずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で行うことが好ましい。
当該溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、DMSO、DMF等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体に対し、例えば、10〜1500当量程度である。
【0065】
上記反応の反応時間としては、5分〜24時間が好ましく、10〜20分がより好ましい。反応温度としては、0〜60℃が好ましく20〜40℃がより好ましい。反応圧力としては、特に限定されないが、常圧が好ましい。
【0066】
上記反応は、円滑な水和反応の促進の点で、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0067】
上記一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、溶媒留去、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。なお、上記反応により得られる一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は新規化合物である。
【0068】
さらに、下記式に例示されるように、一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を脱水反応させることにより、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体が得られる。
【0069】
【化8】
【0070】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
【0071】
上記反応は、通常の脱水反応であれば特に限定されず、例えば、減圧乾燥、脱水剤による脱水等が挙げられる。上記減圧乾燥する場合、反応温度としては、50〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応圧力としては、1000Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましい。なお、圧力の下限値は、脱水反応促進の観点から、10Paであることが好ましい。反応時間としては1時間〜10日が好ましく、6〜24時間がより好ましい。上記脱水剤としては、例えば、モレキュラーシーブ、五酸化二リン等が挙げられる。
【0072】
このように、一般式(1−2)及び(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、脱水又は水和反応により、容易に相互に変換されるので、吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用である。とりわけ、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、吸湿剤、調湿剤、脱水剤等の有効成分として用いることが可能であり、また公知の吸湿剤、調湿剤、脱水剤等に含有せしめて使用することもできる。
また、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、これを出発物質として簡便な操作により、一般式(1−2)又は(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を製造することが可能である。したがって、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、一般式(1−2)又は(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造のための前駆体として有用である。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
ポリ(4−ビニルジベンゾイルメタン) (以下、「DPPD」ともいう)の合成
4−ビニルジベンゾイルメタン(5.0g,4.0mmol)とAIBN(2.0×102mg,0.08mmol)を40mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、アルゴン下、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を800mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿物を10mLのメタノールに懸濁させ、室温下、1.5時間攪拌した後白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。さらに沈殿物を10mLのクロロホルムに溶解し、200mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別した後、メタノールで洗浄した。得られた白色沈殿物は室温で減圧乾燥させることにより白色固体の重合体を得た(収量4.3g,収率85%)。
【0074】
得られた重合体について、下記の方法により、構造分析、分子量、有機溶媒への溶解性、Td及びTgを評価した。
(1)構造分析
1H−NMR(400MHz、CDCl3)、FT−IR(KBr法)、紫外可視近赤外分光法により行った。
(2)重量平均分子量及び数平均分子量
重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてDMFを用い、測定温度40℃にて、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(3)有機溶媒への溶解性
得られた重合体1.0mgに0.5mLの溶媒を加え、室温(25℃)にて1分間放置した後に溶解性を確認した。
(4)Td及びTg
得られた重合体の熱分解温度(Td)について熱重量測定装置(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA6200型番)を用いて測定した。また、ガラス転移温度(Tg)について、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル株式会社製、DSC6200型番)を用いて測定した。ここで、「Td5」は、得られた重合体が測定開始から5質量%減少したときの温度を示し、「Td10」は、得られた重合体が測定開始から10質量%減少したときの温度を示し、「Td15」は、得られた重合体が測定開始から15質量%減少したときの温度を示す。
【0075】
得られた重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図1、図2に示す。また、得られた重合体の紫外可視吸収スペクトル及びモル吸光係数を図3、図4に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ(4−ビニルジベンゾイルメタン)(DPPD)であることを確認した。
また、得られた重合体の有機溶媒への溶解性を評価した結果、クロロホルム、DMSO、ジクロロメタン、クロロベンゼン、THF、DMF、1,4-ジオキサンに可溶であり、アセトンに一部可溶であることを確認した。
更に、得られた重合体の数平均分子量(Mn)は3.27×104、重量平均分子量(Mw)は9.20×104、Mw/Mnは、2.81であった。
また、得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は、104℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=328℃,Td10=356℃,Td15=370℃であった。得られた重合体の熱重量曲線を図5に示す。
【0076】
(実施例2)
ポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン](以下、「DPPT」ともいう)の合成
実施例1で得られた重合体(4.0g,16mmol)とNBS(2.8g,16mmol)を80mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を1.0Lの蒸留水に注ぎ、析出した橙色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた橙色沈殿を40mLのDMSOに溶解し、1.0Lのメタノールに注いだ後、溶媒留去した。さらに橙色油状物を40mLのDMSOに溶解し、1.0Lの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物は80℃で5日間減圧乾燥させた後、さらに100℃で2日間減圧乾燥させることにより黄色固体の重合体を得た(収量4.1g,収率98%)。得られた重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、有機溶媒への溶解性、Td及びTgを評価した。
【0077】
得られた重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図1、図2に示す。また、得られた紫外可視吸収スペクトル及びモル吸光係数を図3、図4に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]であることを確認した。
また、得られた重合体の有機溶媒への溶解性はクロロホルム、DMSO、DMFに一部可溶であることを確認した。
得られた重合体の数平均分子量(Mn)は4.68×104、重量平均分子量(Mw)は1.04×105、Mw/Mnは、2.23であった。また、得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は、111℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=289℃、Td10=325℃、Td15=341℃であった。得られた重合体の熱重量曲線を図5に示す。
【0078】
(実施例3)
ポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の水和反応
実施例2で得られた重合体(199mg,0.75mmol)を75mLのアセトンに溶解した後、8.3mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の重合体ポリ[2,2−ジヒドロキシ−1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニル−1,3−プロパンジオン]を得た(収量197mg,収率93%)。得られた重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、有機溶媒への溶解性、Td及びTgを評価した。
【0079】
得られた重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図1、図2に示す。また、得られた紫外可視吸収スペクトル及びモル吸光係数を図3、図4に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の水和物であることを確認した。
また、得られた重合体の有機溶媒への溶解性はクロロホルム、DMSO、DMFに一部可溶であることを確認した。
得られた重合体の数平均分子量(Mn)は5.10×104、重量平均分子量(Mw)は1.84×105、Mw/Mnは、3.61であった。また、得られた重合体の熱分解温度(Td)は、Td5=187℃,Td10=305℃,Td15=331℃であった。得られた重合体の熱重量曲線を図5に示す。
【0080】
(実施例4)
ポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の水和物(以下、「DPPT−OH」ともいう)の脱水反応
実施例3で得られた重合体(58mg,0.21mmol)を、60Paの減圧下、100℃で12時間乾燥させることによりポリ(1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン)が得られ、脱水反応が進行することを確認した。得られたポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の収量は55mg、収率は99%以上であった。
【0081】
得られた重合体のFT−IRスペクトル及び1H−NMRスペクトルを、実施例2で得られた重合体(DPPT)及び実施例3で得られた重合体(DPPT−OH)のFT−IRスペクトル及び1H−NMRスペクトルとあわせてそれぞれ図6、図7に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]であることを確認した。
【0082】
(実施例5)
4−ビニルジベンゾイルメタンとスチレンモノマーとの共重合体の合成
4−ビニルジベンゾイルメタン(501mg,2.0mmol)、スチレンモノマー(0.23mL,2.0mmol)及びAIBN(13mg,0.08mmol)を8mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、脱気封管中、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を200mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた白色沈殿物を室温で減圧乾燥させることにより白色固体の共重合体を得た(収量35mg,収率66%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0083】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図8、図9に示す。また、得られた共重合体の紫外可視吸収スペクトルを図10、図11に示す。これらの構造分析から、得られた重合体が4−ビニルジベンゾイルメタンとスチレンモノマーとの共重合体(DPPD−PS)であることを確認した。
得られたDPPD−PSの数平均分子量(Mn)は4.66×104、重量平均分子量(Mw)は11.80×104、Mw/Mnは2.53であった。得られたDPPD−PSのガラス転移温度(Tg)は、122℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=325℃、Td10=366℃,Td15=380℃であった。得られたDPPD−PSの熱重量曲線を図12に示す。
【0084】
(実施例6)
ポリ(1,3−ジフェニルプロパントリオン−co−スチレン)(以下、「DPPT−PS」ともいう)の合成
DPPD−PS(404mg,2.0mmol)とNBS(238mg,1.3mmol)を10mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を200Lの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。さらに得られた沈殿物を5mLのクロロホルムに溶解し、200mLのヘキサンに注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別した後、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物を80℃で5日間減圧乾燥させた後、さらに100℃で2日間減圧乾燥させることにより黄色固体の共重合体を得た(収量395mg,収率94%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0085】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図8、図9に示す。また、得られた共重合体の紫外可視吸収スペクトルを図10、図11に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ(1,3−ジフェニルプロパントリオン−co−スチレン)(DPPT−PS)であることを確認した。
得られたDPPT−PSの数平均分子量(Mn)は3.35×104、重量平均分子量(Mw)は7.93×104、Mw/Mnは2.37であった。得られたDPPT−PSのガラス転移温度(Tg)は、130℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=269℃、Td10=317℃,Td15=339℃であった。得られたDPPT−PSの熱重量曲線を図12に示す。
【0086】
(実施例7)
DPPT−PSの水和反応
DPPT−PS(159mg,0.75mmol)を45mLのアセトンに溶解した後、5.0mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の共重合体DPPT_OH−PSを得た(収量155mg,収率92%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造解析、分子量及びTdを評価した。
【0087】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図8、図9に示す。また、得られた共重合体の紫外可視吸収スペクトルを図10、図11に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ(1,3−ジフェニルプロパントリオン−co−スチレン)の水和物(DPPT_OH−PS)であることを確認した。
得られたDPPT_OH−PSの数平均分子量(Mn)は2.68×104、重量平均分子量(Mw)は10.95×104、Mw/Mnは4.08であった。得られたDPPT_OH−PSの熱分解温度(Td)は、Td5=154℃、Td10=252℃,Td15=305℃であった。得られたDPPT_OH−PSの熱重量曲線を図12に示す。
【0088】
また、水和により得られたDPPT_OH−PS(60mg,0.21mmol)を、60Paの減圧下、100℃で7時間乾燥させることによりDPPT−PSへと脱水反応が進行することも確認した(収量57mg,収率>99%)。DPPT_OH−PSの脱水物、DPPT_OH−PS及びDPPT−PSのFT−IRスペクトルを図13に示す。FT−IR測定結果において、水和、脱水反応の前後でスペクトルが同等なことから、可逆的な水和、脱水反応が可能であることを示唆された。
【0089】
(実施例8)
4−ビニルジベンゾイルメタンとメタクリル酸メチルモノマーとの共重合体の合成
【0090】
【化9】
【0091】
4−ビニルジベンゾイルメタン(500mg,2.0mmol)、メタクリル酸メチルモノマー(0.21mL,2.0mmol)及びAIBN(39mg,0.24mmol)を8mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、脱気封管中、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を200mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた白色沈殿物は室温で減圧乾燥させることにより白色固体の共重合体(DPPD−MMA)を得た(収量580mg,収率69%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0092】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図14、図15に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体が4−ビニルジベンゾイルメタンとメタクリル酸メチルモノマーとの共重合体(DPPD−MMA)であることを確認した。
得られたDPPD−MMAの数平均分子量(Mn)は8.3×103、重量平均分子量(Mw)は2.64×104、Mw/Mnは3.15であった。また、得られたDPPD−MMAのガラス転移温度(Tg)は、Tg=114℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=303℃、Td10=335℃、Td15=352℃であった。得られたDPPD−MMAの熱重量曲線を図16に示す。
【0093】
(実施例9)
ポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン-co-メタクリル酸メチル](以下、「DPPT−MMA」ともいう)の合成
【0094】
【化10】
【0095】
DPPD−MMA(420mg,2.0mmol)とNBS(260mg,1.5mmol)を7.3mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を160mLの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物は100℃で45時間減圧乾燥させることにより黄色固体の共重合体(DPPT−MMA)を得た(収量413mg,収率94%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0096】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図14、図15に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン-co-メタクリル酸メチル](DPPT−MMA)であることを確認した。
得られたDPPT−MMAの数平均分子量(Mn)は6.8×103、重量平均分子量(Mw)は2.15×104、Mw/Mnは、3.19であった。また、得られたDPPT−MMA共重合体のガラス転移温度(DSC,Tg)は、Tg=92℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=310℃、Td10=341℃、Td15=358℃であった。得られたDPPT−MMAの熱重量曲線を図16に示す。
【0097】
(実施例10)
DPPT−MMAの水和反応
【0098】
【化11】
【0099】
DPPT−MMA(101mg,0.45mmol)を33mLのアセトンに溶解した後、3.7mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の共重合体を得た(収量106mg,収率>99%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0100】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図14、図15に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン-co-メタクリル酸メチル]の水和物(DPPT_OH−MMA)であることを確認した。
得られたDPPT_OH−MMAの数平均分子量(Mn)は3.6×103、重量平均分子量(Mw)は1.10×104、Mw/Mnは、3.06であった。また、得られた共重合体の熱分解温度(Td)は、Td5=121℃、Td10=304℃、Td15=328℃であった。得られたDPPT_OH−MMAの熱重量曲線を図16に示す。
【0101】
また、水和により得られたDPPT_OH−MMA(35mg,0.15mmol)を、60Paの減圧下、100℃で6時間乾燥させることによりDPPT−MMAへと脱水反応が進行することも確認した(収量33mg,収率>99%)。DPPT_OH−MMAの脱水物、DPPT_OH−MMA及びDPPT−MMAのFT−IRスペクトルを図17に示す。FT−IR測定結果において、水和、脱水反応の前後でスペクトルが同等であることから、可逆的な水和、脱水反応が可能であることが示唆された。
【0102】
(実施例11)
4−ビニルジベンゾイルメタンとN−ビニルピロリドンモノマーとの共重合体の合成
【0103】
【化12】
【0104】
4−ビニルジベンゾイルメタン(300mg,1.2mmol)、N−ビニルピロリドンモノマー(0.30mL,2.8mmol)及びAIBN(39mg,0.24mmol)を8mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、脱気封管中、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を200mLのエーテルに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、エーテルで洗浄した。得られた白色沈殿物は50℃で減圧乾燥させることにより白色固体の共重合体を得た(収量326mg,収率38%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0105】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体が4−ビニルジベンゾイルメタンとN−ビニルピロリドンモノマーとの共重合体(DPPD−NVP)であることを確認した。
得られたDPPD−NVPの数平均分子量(Mn)は4.6×103、重量平均分子量(Mw)は1.41×104、Mw/Mnは、3.06であった。また、得られた共重合体のガラス転移温度(DSC,Tg)は、Tg=120℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=333℃、Td10=363℃、Td15=377℃であった。得られたDPPD−NVP共重合体の熱重量曲線を図20に示す。
【0106】
(実施例12)
ポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン−co−N−ビニルピロリドン](以下、「DPPT−NVP」ともいう)の合成
【0107】
【化13】
【0108】
DPPD−NVP(217mg,1.0mmol)とNBS(136mg,0.76mmol)を3.8mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を80mLの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物は100℃で45時間減圧乾燥させることにより黄色固体の共重合体を得た(収量215mg,収率94%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0109】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン−co−N−ビニルピロリドン(DPPT−NVP)であることを確認した。
得られたDPPT−NVPの数平均分子量(Mn)は3.8×103、重量平均分子量(Mw)は1.04×104、Mw/Mnは、2.76であった。また、得られたDPPT−NVPのガラス転移温度(DSC,Tg)は、Tg=96℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=301℃、Td10=327℃、Td15=342℃であった。得られたDPPT−NVPの熱重量曲線を図20に示す。
【0110】
(実施例13)
DPPT−NVPの水和反応
【0111】
【化14】
【0112】
DPPT−NVP(103mg,0.45mmol)を34mLのアセトンに溶解した後、3.8mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の共重合体を得た(収量109mg,>99%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0113】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン−co−N−ビニルピロリドン]の水和物(DPPT_OH−NVP)であることを確認した。
得られたDPPT_OH−NVPの数平均分子量(Mn)は2.6×103、重量平均分子量(Mw)は7.3×104、Mw/Mnは、2.84であった。また、得られたDPPT_OH−NVPの熱分解温度(Td)は、Td5=216℃、Td10=301℃、Td15=326℃であった。得られたDPPT_OH−NVPの熱重量曲線を図20に示す。
【0114】
また、水和により得られたDPPT_OH−NVP(36mg,0.15mmol)を100℃で6時間減圧乾燥させることによりDPPT−NVPへと脱水反応が進行することも確認した(収量34mg,>99%)。DPPT_OH−NVPの脱水物、DPPT_OH−NVP及びDPPT−NVPのFT−IRスペクトルを図21に示す。FT−IR測定結果において、水和・脱水反応の前後でスペクトルが同等であることから、可逆的な水和・脱水反応が可能であることが示唆された。
【0115】
(実施例14)
DPPT、DPPT−MMA及びDPPT−NVPの固体状態における50℃での飽和水蒸気中の水和能比較
DPPT(12mg,0.05mmol)、DPPT−MMA(11mg,0.05mmol)及びDPPT−NVP(11mg,0.05mmol)をそれぞれ50℃の飽和水蒸気中に保存した。一部のサンプルを抜き出し、1H−NMR測定を行うことで飽和水蒸気中での水和反応の進行を確認した。反応時間と、各水和物への変化率との関係を図22に示す。図22から、DPPT、DPPT−MMA及びDPPT−NVPのいずれも優れた水和能を有することが確認された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規重合体又は共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機化合物の水和、脱水に関して多くの報告があり、無機化合物を用いた水和及び脱水反応は、例えば、吸湿材料、調湿材料、建材等に応用されている。
一方、有機化合物を基質とする水和反応としては、隣接トリカルボニル構造を有する環状化合物を基質とする反応が知られており、有機化合物を基質とする脱水反応としては、上記水和反応の逆反応が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、これまで直鎖状隣接トリカルボニル構造を有する重合体は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bulletin of The Chemical Society of Japan 1979, 52, 2733
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水和反応又は脱水反応の基質となりうる新規な重合体又は共重合体及び当該重合体又は共重合体の新規な前駆体、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルボニル−メチレン−カルボニル部位と炭素−炭素不飽和結合とを有する特定の化合物を含有するモノマーを重合又は共重合し、次いで得られた重合体又は共重合体を酸化することにより、隣接トリカルボニル構造を有する新規重合体又は共重合体が得られることを見出した。
さらに、隣接トリカルボニル構造を有する重合体又は共重合体は、容易に水和することが可能であり、またその水和物は脱水反応が容易に進行するとの知見を得、隣接トリカルボニル構造を有する重合体又は共重合体が吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1);
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R4は、−CO−、−CH2−又は−C(OH)2−を示す。)
で表される構造単位を含むことを特徴とする、重合体又は共重合体を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、下記一般式(1−2);
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を水和することを特徴とする、下記一般式(1−3)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
【0014】
更に、本発明は、上記一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を脱水することを特徴とする、上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
【0015】
また更に、本発明は、下記一般式(1−1);
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を酸化することを特徴とする、上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
【0018】
更にまた、本発明は、上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を有効成分として含有する、吸湿剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸水又は脱水反応の基質となりうる重合体及び共重合体、及び当該重合体又は共重合体の前駆体が提供される。とりわけ、隣接トリカルボニル構造を有する重合体又は共重合体は、吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】4−ビニルジベンゾイルメタン、実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】4−ビニルジベンゾイルメタン、実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)のIRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の紫外可視吸収スペクトル(250〜600nm)及びモル吸光係数を示す図である。
【図4】実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の紫外可視吸収スペクトル(350〜600nm)及びモル吸光係数を示す図である。
【図5】実施例1〜3で得られた重合体(DPPD、DPPT及びDPPT−OH)の熱重量曲線を示す図である。
【図6】DPPT−OHの脱水物、DPPT及びDPPT−OHのIRスペクトルを示す図である。
【図7】DPPT−OHの脱水物及びDPPTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)のIRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)のCHCl3中での紫外可視吸収スペクトル(250〜600nm)(5×10-3濃度に調整し、更に100倍希釈した後、可溶部でUV測定を行なった。)を示す図である。
【図11】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)のCHCl3中での紫外可視吸収スペクトル(400〜600nm)(5×10-3濃度に調整し可溶部でUV測定を行なった。)を示す図である。
【図12】実施例5〜7で得られた共重合体(DPPD−PS、DPPT−PS及びDPPT_OH−PS)の熱重量曲線を示す図である。
【図13】DPPT_OH−PSの脱水物、DPPT_OH−PS及びDPPT−PSのIRスペクトルを示す図である。
【図14】実施例8〜10で得られた共重合体(DPPD−MMA、DPPT−MMA及びDPPT_OH−MMA)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図15】実施例8〜10で得られた共重合体(DPPD−MMA、DPPT−MMA及びDPPT_OH−MMA)のIRスペクトルを示す図である。
【図16】実施例8〜10で得られた共重合体(DPPD−MMA、DPPT−MMA及びDPPT_OH−MMA)の熱重量曲線を示す図である。
【図17】DPPT_OH−MMAの脱水物、DPPT_OH−MMA及びDPPT−MMAのIRスペクトルを示す図である。
【図18】実施例11〜13で得られた共重合体(DPPD−NVP、DPPT−NVP及びDPPT_OH−NVP)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図19】実施例11〜13で得られた共重合体(DPPD−NVP、DPPT−NVP及びDPPT_OH−NVP)のIRスペクトルを示す図である。
【図20】実施例11〜13で得られた共重合体(DPPD−NVP、DPPT−NVP及びDPPT_OH−NVP)の熱重量曲線を示す図である。
【図21】DPPT_OH−NVPの脱水物、DPPT_OH−NVP及びDPPT−NVPのIRスペクトルを示す図である。
【図22】DPPT、DPPT−MMA及びDPPT−NVPの水和能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本明細書において使用する、各式中の記号の定義を説明する。
式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基である。
上記R1において、「炭素数1〜5の炭化水素基」としては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜5の脂環式炭化水素基が挙げられ、中でも炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が好ましい。当該炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基において、「炭化水素基」としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
上記アルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
【0022】
また、R1としては、水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基のうち、水素原子が特に好ましい。
【0023】
式(1)中、R2において「炭素数1〜20の2価の炭化水素基」としては、炭素数1〜20の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0024】
上記炭素数1〜20の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜12の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0025】
上記炭素数1〜20の2価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基において、「炭化水素基」としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレンが挙げられる。
上記アルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜8の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0027】
炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基において、「脂環式炭化水素基」の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基等が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0028】
上記炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、フェナントレン基、アンスリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
また、上記「炭素数1〜20の2価の炭化水素基」の好適な具体例としては、アリーレン基が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
【0029】
また、R2において、炭素数1〜20の2価の炭化水素基に置換し得る基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;水酸基;アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基等の含窒素基;トリアルキルシリル基等の含ケイ素基;メルカプト基、アルキルチオ基等の含硫黄基等が挙げられる。これら置換基の位置及び数は任意であり、当該置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0030】
中でも、R2としては、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリーレン基がより好ましく、フェニレン基が特に好ましい。なお、かかる2価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0031】
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であるが、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
R3において「炭素数1〜20の炭化水素基」としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0032】
上記炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0033】
上記炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基において、「炭化水素基」としては、上記R1と同様のものが挙げられる。
上記アルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等が挙げられる。
【0034】
上記炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0035】
炭素数3〜20の脂環式炭化水素基において、「脂環式炭化水素基」の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0036】
上記炭素数6〜18の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
また、上記「炭素数1〜20の炭化水素基」の好適な具体例としては、アリール基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
また、R3において、「炭素数1〜20の炭化水素基」に置換し得る基としては、R2と同様である。
【0037】
中でも、R3としては、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。なお、かかる芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0038】
R4は、−CO−、−CH2−及び−C(OH)2−のうちのいずれかである。
【0039】
次に、本発明の重合体又は共重合体について説明する。
本発明の重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位を有するものであるが、本発明の共重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位に加えて、それ以外の構造単位を有することができる。
上記一般式(1)以外の構造単位を与える共重合モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル類;メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニルニトリル類;N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−5−ブチルピロリドン、N−エチル−3−ビニルピロリドン、N−エチル−5−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルラクタム類;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。
一般式(1)で表される構造単位と、一般式(1)以外の構造単位との比率(モル比)は、0.1:99.9〜99.9:0.1が好ましく、特に10:90〜90:10がより好ましい。なお、本発明の共重合体の構造は特に限定されず、ランダム共重合体、交互共重合体及びブロック共重合体の何れであってもよい。
【0040】
本発明の重合体又は共重合体の数平均分子量は特に限定されないが、2000〜1000000が好ましく、10000〜100000がより好ましく、20000〜40000が更に好ましい。ここで、本明細書において「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶出溶媒:DMF)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
また、本発明の重合体又は共重合体のMw/Mnとしては、1.01〜7.00が好ましく、1.50〜3.00がより好ましい。ここで、「Mw」とは、GPC(溶出溶媒:DMF)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0041】
次に、本発明の重合体又は共重合体の製造方法について説明する。
下記一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体は、下記式に例示されるように、重合開始剤存在下で、一般式(2)で表される化合物を重合させることにより得ることができる。
【0042】
【化5】
【0043】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
【0044】
上記一般式(2)で表される化合物は、例えば、The Journal of Organic Chemistry 2005.70. 9036-9039に記載されている方法により得ることができる。
【0045】
上記反応において、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、上記一般式(2)で表される化合物で表される化合物に対し、例えば、0.005〜0.1当量程度である。
【0046】
また、上記反応は、溶媒存在下及び溶媒非存在下のいずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては特に限定されないが、例えば、クロロベンセン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられ、中でもハロゲン化芳香族炭化水素類、とりわけクロロベンセンが好ましい。溶媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対し、例えば、10〜300当量程度である。
【0047】
上記反応の反応時間としては、1〜48時間が好ましく、12〜36時間がより好ましい。反応温度としては、60〜180℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。反応圧力としては、特に限定されないが、常圧が好ましい。
【0048】
上記反応は、円滑な重合反応の促進の点で、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0049】
一方、上記一般式(1−1)で表される構造単位を含む本発明の共重合体を得る場合には、芳香族ビニル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニルニトリル類、N−ビニルラクタム類、N−ビニルアミド類等の上記共重合モノマーを重合反応の際に共存させればよく、共重合反応は上記と同様にして行うことができる。
【0050】
上記一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。なお、上記反応により得られる一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は新規化合物である。
【0051】
本発明の重合体又は共重合体のうち、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、下記式に例示されるように、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を酸化することにより得られる。
【0052】
【化6】
【0053】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
【0054】
上記酸化反応は、ハロゲン化剤存在下で行うのが好ましく、当該ハロゲン化剤としては、通常の反応においてハロゲン化剤として用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、フッ素(F2)、フルオロキシトリフルオロメタン、二フッ化キセノン、フッ化過クロリル、フッ化硫酸セシウム、アセチルハイポフルオライト、N−フルオロスルホンアミド、ジエチルアミノサルファトリフルオリド、N−フルオロピリジニウム、N−フルオロ−2,6−ジ(メトキシカルボニル)ピリジニウム、N−フルオロ−3,5−ジクロロピリジニウム、N−フルオロ−2,4,6−トリメチルピリジニウム等のフッ素化剤;塩素(Cl2)、塩化チオニル、N−クロロスクシンイミド、塩化第二銅、スルフリルクロライド、トリクロロイソシアヌル酸、四塩化チタン、2,3,4,5,6,6−ヘキサクロロ−2,4−シクロヘキサジエノン、2,3,4,4,5,6−ヘキサクロロ−2,5−シクロヘキサジエノン、N−クロロトリエチルアンモニウムクロライド、ベンゼンセレネニルクロライド等の塩素化剤;臭素(Br2)、臭化水素、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、臭化第二銅、テトラメチルアンモニウムトリブロマイド、トリフルオロアセチルハイポブロマイト、ジブロモイソシアヌル酸(DBI)、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサ−2,5−ジエンオン、2,4−ジアミノー1,3−チアゾールハイドロトリブロマイド等の臭素化剤;ヨウ素(I2)、塩化ヨウ素(ICl)、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン、トリフルオロアセチルハイポヨーダイト、エチレンヨードクロライド、N−ヨードスクシンイミド等のヨウ素化剤が挙げられえる。これらのうち、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミドが好ましい。ハロゲン化剤の使用量は、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体に対し、例えば、1当量程度である。
【0055】
また、上記反応は、溶媒存在下及び溶媒非存在下のいずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、特に限定されないが、酸化能を有する有機溶剤が好ましい。当該酸化能を有する有機溶剤としては、例えば、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン、亜硝酸ブチル、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。溶媒の使用量は、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体に対し、例えば、10〜300当量程度である。
【0056】
また、上記反応においては、ハロゲン化剤の他に触媒を用いてもよく、当該触媒としては、酸化剤が好ましい。当該酸化剤としては、オキソ酸系化合物、オゾン、過酸化水素、及び上述の酸化能を有する有機溶剤等が挙げられる。上記オキソ酸系化合物としては、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、塩素酸銀、過塩素酸銀、硫酸、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸銀、五酸化二窒素、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸バリウム等が挙げられる。触媒の使用量は、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体に対し、例えば、0.5当量程度である。
【0057】
上記反応の反応時間としては、1〜168時間が好ましく、36〜60時間がより好ましい。反応温度としては、30〜100℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。反応圧力としては、特に限定されないが、常圧が好ましい。
【0058】
上記反応は、円滑な酸化反応の促進の点で、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0059】
上記一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。なお、上記反応により得られる一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は新規化合物である。
【0060】
本発明の重合体又は共重合体のうち、一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、下記式に例示されるように、水存在下で、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を水和することにより得られる。
【0061】
【化7】
【0062】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
【0063】
上記反応に使用される水の量は、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体に対し、例えば、1〜1000当量が好ましい。
【0064】
上記反応は、溶媒存在下及び溶媒非存在下のいずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で行うことが好ましい。
当該溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、DMSO、DMF等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体に対し、例えば、10〜1500当量程度である。
【0065】
上記反応の反応時間としては、5分〜24時間が好ましく、10〜20分がより好ましい。反応温度としては、0〜60℃が好ましく20〜40℃がより好ましい。反応圧力としては、特に限定されないが、常圧が好ましい。
【0066】
上記反応は、円滑な水和反応の促進の点で、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0067】
上記一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、溶媒留去、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。なお、上記反応により得られる一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は新規化合物である。
【0068】
さらに、下記式に例示されるように、一般式(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を脱水反応させることにより、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体が得られる。
【0069】
【化8】
【0070】
(式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である。)
【0071】
上記反応は、通常の脱水反応であれば特に限定されず、例えば、減圧乾燥、脱水剤による脱水等が挙げられる。上記減圧乾燥する場合、反応温度としては、50〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応圧力としては、1000Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましい。なお、圧力の下限値は、脱水反応促進の観点から、10Paであることが好ましい。反応時間としては1時間〜10日が好ましく、6〜24時間がより好ましい。上記脱水剤としては、例えば、モレキュラーシーブ、五酸化二リン等が挙げられる。
【0072】
このように、一般式(1−2)及び(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、脱水又は水和反応により、容易に相互に変換されるので、吸湿材料、調湿材料、脱水材料、建材等として有用である。とりわけ、一般式(1−2)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、吸湿剤、調湿剤、脱水剤等の有効成分として用いることが可能であり、また公知の吸湿剤、調湿剤、脱水剤等に含有せしめて使用することもできる。
また、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、これを出発物質として簡便な操作により、一般式(1−2)又は(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を製造することが可能である。したがって、一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体は、一般式(1−2)又は(1−3)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造のための前駆体として有用である。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
ポリ(4−ビニルジベンゾイルメタン) (以下、「DPPD」ともいう)の合成
4−ビニルジベンゾイルメタン(5.0g,4.0mmol)とAIBN(2.0×102mg,0.08mmol)を40mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、アルゴン下、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を800mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿物を10mLのメタノールに懸濁させ、室温下、1.5時間攪拌した後白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。さらに沈殿物を10mLのクロロホルムに溶解し、200mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別した後、メタノールで洗浄した。得られた白色沈殿物は室温で減圧乾燥させることにより白色固体の重合体を得た(収量4.3g,収率85%)。
【0074】
得られた重合体について、下記の方法により、構造分析、分子量、有機溶媒への溶解性、Td及びTgを評価した。
(1)構造分析
1H−NMR(400MHz、CDCl3)、FT−IR(KBr法)、紫外可視近赤外分光法により行った。
(2)重量平均分子量及び数平均分子量
重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてDMFを用い、測定温度40℃にて、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(3)有機溶媒への溶解性
得られた重合体1.0mgに0.5mLの溶媒を加え、室温(25℃)にて1分間放置した後に溶解性を確認した。
(4)Td及びTg
得られた重合体の熱分解温度(Td)について熱重量測定装置(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA6200型番)を用いて測定した。また、ガラス転移温度(Tg)について、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル株式会社製、DSC6200型番)を用いて測定した。ここで、「Td5」は、得られた重合体が測定開始から5質量%減少したときの温度を示し、「Td10」は、得られた重合体が測定開始から10質量%減少したときの温度を示し、「Td15」は、得られた重合体が測定開始から15質量%減少したときの温度を示す。
【0075】
得られた重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図1、図2に示す。また、得られた重合体の紫外可視吸収スペクトル及びモル吸光係数を図3、図4に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ(4−ビニルジベンゾイルメタン)(DPPD)であることを確認した。
また、得られた重合体の有機溶媒への溶解性を評価した結果、クロロホルム、DMSO、ジクロロメタン、クロロベンゼン、THF、DMF、1,4-ジオキサンに可溶であり、アセトンに一部可溶であることを確認した。
更に、得られた重合体の数平均分子量(Mn)は3.27×104、重量平均分子量(Mw)は9.20×104、Mw/Mnは、2.81であった。
また、得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は、104℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=328℃,Td10=356℃,Td15=370℃であった。得られた重合体の熱重量曲線を図5に示す。
【0076】
(実施例2)
ポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン](以下、「DPPT」ともいう)の合成
実施例1で得られた重合体(4.0g,16mmol)とNBS(2.8g,16mmol)を80mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を1.0Lの蒸留水に注ぎ、析出した橙色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた橙色沈殿を40mLのDMSOに溶解し、1.0Lのメタノールに注いだ後、溶媒留去した。さらに橙色油状物を40mLのDMSOに溶解し、1.0Lの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物は80℃で5日間減圧乾燥させた後、さらに100℃で2日間減圧乾燥させることにより黄色固体の重合体を得た(収量4.1g,収率98%)。得られた重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、有機溶媒への溶解性、Td及びTgを評価した。
【0077】
得られた重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図1、図2に示す。また、得られた紫外可視吸収スペクトル及びモル吸光係数を図3、図4に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]であることを確認した。
また、得られた重合体の有機溶媒への溶解性はクロロホルム、DMSO、DMFに一部可溶であることを確認した。
得られた重合体の数平均分子量(Mn)は4.68×104、重量平均分子量(Mw)は1.04×105、Mw/Mnは、2.23であった。また、得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は、111℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=289℃、Td10=325℃、Td15=341℃であった。得られた重合体の熱重量曲線を図5に示す。
【0078】
(実施例3)
ポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の水和反応
実施例2で得られた重合体(199mg,0.75mmol)を75mLのアセトンに溶解した後、8.3mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の重合体ポリ[2,2−ジヒドロキシ−1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニル−1,3−プロパンジオン]を得た(収量197mg,収率93%)。得られた重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、有機溶媒への溶解性、Td及びTgを評価した。
【0079】
得られた重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図1、図2に示す。また、得られた紫外可視吸収スペクトル及びモル吸光係数を図3、図4に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の水和物であることを確認した。
また、得られた重合体の有機溶媒への溶解性はクロロホルム、DMSO、DMFに一部可溶であることを確認した。
得られた重合体の数平均分子量(Mn)は5.10×104、重量平均分子量(Mw)は1.84×105、Mw/Mnは、3.61であった。また、得られた重合体の熱分解温度(Td)は、Td5=187℃,Td10=305℃,Td15=331℃であった。得られた重合体の熱重量曲線を図5に示す。
【0080】
(実施例4)
ポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の水和物(以下、「DPPT−OH」ともいう)の脱水反応
実施例3で得られた重合体(58mg,0.21mmol)を、60Paの減圧下、100℃で12時間乾燥させることによりポリ(1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン)が得られ、脱水反応が進行することを確認した。得られたポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]の収量は55mg、収率は99%以上であった。
【0081】
得られた重合体のFT−IRスペクトル及び1H−NMRスペクトルを、実施例2で得られた重合体(DPPT)及び実施例3で得られた重合体(DPPT−OH)のFT−IRスペクトル及び1H−NMRスペクトルとあわせてそれぞれ図6、図7に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4−ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン]であることを確認した。
【0082】
(実施例5)
4−ビニルジベンゾイルメタンとスチレンモノマーとの共重合体の合成
4−ビニルジベンゾイルメタン(501mg,2.0mmol)、スチレンモノマー(0.23mL,2.0mmol)及びAIBN(13mg,0.08mmol)を8mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、脱気封管中、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を200mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた白色沈殿物を室温で減圧乾燥させることにより白色固体の共重合体を得た(収量35mg,収率66%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0083】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図8、図9に示す。また、得られた共重合体の紫外可視吸収スペクトルを図10、図11に示す。これらの構造分析から、得られた重合体が4−ビニルジベンゾイルメタンとスチレンモノマーとの共重合体(DPPD−PS)であることを確認した。
得られたDPPD−PSの数平均分子量(Mn)は4.66×104、重量平均分子量(Mw)は11.80×104、Mw/Mnは2.53であった。得られたDPPD−PSのガラス転移温度(Tg)は、122℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=325℃、Td10=366℃,Td15=380℃であった。得られたDPPD−PSの熱重量曲線を図12に示す。
【0084】
(実施例6)
ポリ(1,3−ジフェニルプロパントリオン−co−スチレン)(以下、「DPPT−PS」ともいう)の合成
DPPD−PS(404mg,2.0mmol)とNBS(238mg,1.3mmol)を10mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を200Lの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。さらに得られた沈殿物を5mLのクロロホルムに溶解し、200mLのヘキサンに注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別した後、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物を80℃で5日間減圧乾燥させた後、さらに100℃で2日間減圧乾燥させることにより黄色固体の共重合体を得た(収量395mg,収率94%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0085】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図8、図9に示す。また、得られた共重合体の紫外可視吸収スペクトルを図10、図11に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ(1,3−ジフェニルプロパントリオン−co−スチレン)(DPPT−PS)であることを確認した。
得られたDPPT−PSの数平均分子量(Mn)は3.35×104、重量平均分子量(Mw)は7.93×104、Mw/Mnは2.37であった。得られたDPPT−PSのガラス転移温度(Tg)は、130℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=269℃、Td10=317℃,Td15=339℃であった。得られたDPPT−PSの熱重量曲線を図12に示す。
【0086】
(実施例7)
DPPT−PSの水和反応
DPPT−PS(159mg,0.75mmol)を45mLのアセトンに溶解した後、5.0mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の共重合体DPPT_OH−PSを得た(収量155mg,収率92%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造解析、分子量及びTdを評価した。
【0087】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図8、図9に示す。また、得られた共重合体の紫外可視吸収スペクトルを図10、図11に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ(1,3−ジフェニルプロパントリオン−co−スチレン)の水和物(DPPT_OH−PS)であることを確認した。
得られたDPPT_OH−PSの数平均分子量(Mn)は2.68×104、重量平均分子量(Mw)は10.95×104、Mw/Mnは4.08であった。得られたDPPT_OH−PSの熱分解温度(Td)は、Td5=154℃、Td10=252℃,Td15=305℃であった。得られたDPPT_OH−PSの熱重量曲線を図12に示す。
【0088】
また、水和により得られたDPPT_OH−PS(60mg,0.21mmol)を、60Paの減圧下、100℃で7時間乾燥させることによりDPPT−PSへと脱水反応が進行することも確認した(収量57mg,収率>99%)。DPPT_OH−PSの脱水物、DPPT_OH−PS及びDPPT−PSのFT−IRスペクトルを図13に示す。FT−IR測定結果において、水和、脱水反応の前後でスペクトルが同等なことから、可逆的な水和、脱水反応が可能であることを示唆された。
【0089】
(実施例8)
4−ビニルジベンゾイルメタンとメタクリル酸メチルモノマーとの共重合体の合成
【0090】
【化9】
【0091】
4−ビニルジベンゾイルメタン(500mg,2.0mmol)、メタクリル酸メチルモノマー(0.21mL,2.0mmol)及びAIBN(39mg,0.24mmol)を8mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、脱気封管中、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を200mLのメタノールに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。得られた白色沈殿物は室温で減圧乾燥させることにより白色固体の共重合体(DPPD−MMA)を得た(収量580mg,収率69%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0092】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図14、図15に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体が4−ビニルジベンゾイルメタンとメタクリル酸メチルモノマーとの共重合体(DPPD−MMA)であることを確認した。
得られたDPPD−MMAの数平均分子量(Mn)は8.3×103、重量平均分子量(Mw)は2.64×104、Mw/Mnは3.15であった。また、得られたDPPD−MMAのガラス転移温度(Tg)は、Tg=114℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=303℃、Td10=335℃、Td15=352℃であった。得られたDPPD−MMAの熱重量曲線を図16に示す。
【0093】
(実施例9)
ポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン-co-メタクリル酸メチル](以下、「DPPT−MMA」ともいう)の合成
【0094】
【化10】
【0095】
DPPD−MMA(420mg,2.0mmol)とNBS(260mg,1.5mmol)を7.3mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を160mLの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物は100℃で45時間減圧乾燥させることにより黄色固体の共重合体(DPPT−MMA)を得た(収量413mg,収率94%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0096】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図14、図15に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン-co-メタクリル酸メチル](DPPT−MMA)であることを確認した。
得られたDPPT−MMAの数平均分子量(Mn)は6.8×103、重量平均分子量(Mw)は2.15×104、Mw/Mnは、3.19であった。また、得られたDPPT−MMA共重合体のガラス転移温度(DSC,Tg)は、Tg=92℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=310℃、Td10=341℃、Td15=358℃であった。得られたDPPT−MMAの熱重量曲線を図16に示す。
【0097】
(実施例10)
DPPT−MMAの水和反応
【0098】
【化11】
【0099】
DPPT−MMA(101mg,0.45mmol)を33mLのアセトンに溶解した後、3.7mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の共重合体を得た(収量106mg,収率>99%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、分子量、Td及びTgを評価した。
【0100】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図14、図15に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン-co-メタクリル酸メチル]の水和物(DPPT_OH−MMA)であることを確認した。
得られたDPPT_OH−MMAの数平均分子量(Mn)は3.6×103、重量平均分子量(Mw)は1.10×104、Mw/Mnは、3.06であった。また、得られた共重合体の熱分解温度(Td)は、Td5=121℃、Td10=304℃、Td15=328℃であった。得られたDPPT_OH−MMAの熱重量曲線を図16に示す。
【0101】
また、水和により得られたDPPT_OH−MMA(35mg,0.15mmol)を、60Paの減圧下、100℃で6時間乾燥させることによりDPPT−MMAへと脱水反応が進行することも確認した(収量33mg,収率>99%)。DPPT_OH−MMAの脱水物、DPPT_OH−MMA及びDPPT−MMAのFT−IRスペクトルを図17に示す。FT−IR測定結果において、水和、脱水反応の前後でスペクトルが同等であることから、可逆的な水和、脱水反応が可能であることが示唆された。
【0102】
(実施例11)
4−ビニルジベンゾイルメタンとN−ビニルピロリドンモノマーとの共重合体の合成
【0103】
【化12】
【0104】
4−ビニルジベンゾイルメタン(300mg,1.2mmol)、N−ビニルピロリドンモノマー(0.30mL,2.8mmol)及びAIBN(39mg,0.24mmol)を8mLのクロロベンゼンに溶解した。凍結脱気法により溶存酸素を除去した後、脱気封管中、70℃で24時間攪拌した。反応混合物を200mLのエーテルに注ぎ、析出した白色沈殿をろ別し、エーテルで洗浄した。得られた白色沈殿物は50℃で減圧乾燥させることにより白色固体の共重合体を得た(収量326mg,収率38%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0105】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体が4−ビニルジベンゾイルメタンとN−ビニルピロリドンモノマーとの共重合体(DPPD−NVP)であることを確認した。
得られたDPPD−NVPの数平均分子量(Mn)は4.6×103、重量平均分子量(Mw)は1.41×104、Mw/Mnは、3.06であった。また、得られた共重合体のガラス転移温度(DSC,Tg)は、Tg=120℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=333℃、Td10=363℃、Td15=377℃であった。得られたDPPD−NVP共重合体の熱重量曲線を図20に示す。
【0106】
(実施例12)
ポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン−co−N−ビニルピロリドン](以下、「DPPT−NVP」ともいう)の合成
【0107】
【化13】
【0108】
DPPD−NVP(217mg,1.0mmol)とNBS(136mg,0.76mmol)を3.8mLのDMSOに溶解した。窒素下、50℃で48時間攪拌した後、反応混合物を80mLの蒸留水に注ぎ、析出した黄色沈殿をろ別し、蒸留水で洗浄した。得られた黄色沈殿物は100℃で45時間減圧乾燥させることにより黄色固体の共重合体を得た(収量215mg,収率94%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0109】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。これらの構造分析から、得られた共重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン−co−N−ビニルピロリドン(DPPT−NVP)であることを確認した。
得られたDPPT−NVPの数平均分子量(Mn)は3.8×103、重量平均分子量(Mw)は1.04×104、Mw/Mnは、2.76であった。また、得られたDPPT−NVPのガラス転移温度(DSC,Tg)は、Tg=96℃であり、熱分解温度(Td)は、Td5=301℃、Td10=327℃、Td15=342℃であった。得られたDPPT−NVPの熱重量曲線を図20に示す。
【0110】
(実施例13)
DPPT−NVPの水和反応
【0111】
【化14】
【0112】
DPPT−NVP(103mg,0.45mmol)を34mLのアセトンに溶解した後、3.8mLの蒸留水を加えた。窒素下、室温で15分間攪拌した後、溶媒を減圧留去することで淡黄色固体の共重合体を得た(収量109mg,>99%)。得られた共重合体について、実施例1と同様に、構造分析、分子量、Td及びTgを評価した。
【0113】
得られた共重合体の1H−NMRスペクトル及びFT−IRスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。これらの構造分析から、得られた重合体がポリ[1−(4―ビニルフェニル)−3−フェニルプロパントリオン−co−N−ビニルピロリドン]の水和物(DPPT_OH−NVP)であることを確認した。
得られたDPPT_OH−NVPの数平均分子量(Mn)は2.6×103、重量平均分子量(Mw)は7.3×104、Mw/Mnは、2.84であった。また、得られたDPPT_OH−NVPの熱分解温度(Td)は、Td5=216℃、Td10=301℃、Td15=326℃であった。得られたDPPT_OH−NVPの熱重量曲線を図20に示す。
【0114】
また、水和により得られたDPPT_OH−NVP(36mg,0.15mmol)を100℃で6時間減圧乾燥させることによりDPPT−NVPへと脱水反応が進行することも確認した(収量34mg,>99%)。DPPT_OH−NVPの脱水物、DPPT_OH−NVP及びDPPT−NVPのFT−IRスペクトルを図21に示す。FT−IR測定結果において、水和・脱水反応の前後でスペクトルが同等であることから、可逆的な水和・脱水反応が可能であることが示唆された。
【0115】
(実施例14)
DPPT、DPPT−MMA及びDPPT−NVPの固体状態における50℃での飽和水蒸気中の水和能比較
DPPT(12mg,0.05mmol)、DPPT−MMA(11mg,0.05mmol)及びDPPT−NVP(11mg,0.05mmol)をそれぞれ50℃の飽和水蒸気中に保存した。一部のサンプルを抜き出し、1H−NMR測定を行うことで飽和水蒸気中での水和反応の進行を確認した。反応時間と、各水和物への変化率との関係を図22に示す。図22から、DPPT、DPPT−MMA及びDPPT−NVPのいずれも優れた水和能を有することが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、
R4は、−CO−、−CH2−、又は−C(OH)2−を示す。)
で表される構造単位を含むことを特徴とする重合体又は共重合体。
【請求項2】
R2が置換基を有していてもよいアリーレン基であり、R3が置換基を有していてもよいアリール基である、請求項1記載の重合体又は共重合体。
【請求項3】
下記一般式(1−2);
【化2】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を有効成分として含有する、吸湿剤。
【請求項4】
下記一般式(1−1);
【化3】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を酸化することを特徴とする、下記一般式(1−2);
【化4】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体が下記一般式(2);
【化5】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される化合物を含むモノマーを重合又は共重合して得られたものである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1−2);
【化6】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を水和することを特徴とする、下記一般式(1−3);
【化7】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1−3);
【化8】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を脱水することを特徴とする、下記一般式(1−2);
【化9】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、
R4は、−CO−、−CH2−、又は−C(OH)2−を示す。)
で表される構造単位を含むことを特徴とする重合体又は共重合体。
【請求項2】
R2が置換基を有していてもよいアリーレン基であり、R3が置換基を有していてもよいアリール基である、請求項1記載の重合体又は共重合体。
【請求項3】
下記一般式(1−2);
【化2】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を有効成分として含有する、吸湿剤。
【請求項4】
下記一般式(1−1);
【化3】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を酸化することを特徴とする、下記一般式(1−2);
【化4】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1−1)で表される構造単位を含む重合体又は共重合体が下記一般式(2);
【化5】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される化合物を含むモノマーを重合又は共重合して得られたものである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1−2);
【化6】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を水和することを特徴とする、下記一般式(1−3);
【化7】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1−3);
【化8】
(式中、
R1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、
R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体を脱水することを特徴とする、下記一般式(1−2);
【化9】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表される構造単位を含む重合体又は共重合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−68854(P2011−68854A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99934(P2010−99934)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】
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