説明

新規金属錯体およびこれを用いた発光材料

【課題】高輝度・高効率発光が可能で耐久性に優れた発光素子、並びに該発光素子に使用でき、有機電界発光素子用材料、エレクトロケミルミネッセンス(ECL)素子材料、発光センサ−、光増感剤、ディスプレイ、蛍光増白剤、写真用材料、レ−ザ−色素、カラ−フィルタ−用染料、光通信、色変換フィルタ−、バックライト、照明、光増感色素、各種光源等にも適用できる金属錯体、及び該化合物を用いた発光材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される金属錯体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料、エレクトロケミルミネッセンス(ECL)素子材料、発光センサ−、光増感剤、ディスプレイ、蛍光増白剤、写真用材料、レ−ザ−色素、カラ−フィルタ−用染料、光通信、色変換フィルタ−、バックライト、照明、光増感色素、各種光源などに有用な新規金属錯体、並びに該化合物からなる発光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は次世代の携帯情報端末などのディスプレイ素子として注目されており、近年になって発光素子に用いられる各種有機材料の開発が活発に進められるようになってきた。
【0003】
ここで、発光材料に関して言えば、励起一重項からの発光を利用する蛍光材料と、励起三重項からの発光を利用する燐光材料に大きく分類できる。励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率の限界は5%とされている。
【0004】
一方で、これに励起三重項をも利用できると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となることから注目されている。
【0005】
その中でも、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体に代表される燐光材料であるオルトメタル化イリジウム錯体は、発光効率の観点から有望視されており、特に注目されている発光素子材料である(特許文献1)。そのため、近年では発光素子材料として用いられる金属錯体の開発が活発に行われている。
【0006】
例えば、本発明と関連した化合物として、特許文献2には種々のイリジウム錯体が羅列されている。しかし、具体的な実証例をもって開示されているのは、下式(A)で示される赤橙色に発光するイリジウム錯体だけであり、その他の化合物については、何ら実証的な裏付けがなされていない。更にこの明細書の中には、イリジウム錯体として、下式(B)で示される化合物がたまたま例示されているが、その具体的な合成例や、発光特性に関しても何ら触れられていない。
さらに、特許文献3には、式(C)で表されるイリジウム錯体が示されている。このものは青色発光を示すものであるが、発光特性が未だ十分でなく、また、化合物としての安定性に問題があった。
【化4】

【0007】
【特許文献1】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献2】特許公開2004−127598号公報
【特許文献3】特許公開2005−298483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高輝度・高効率発光が可能で耐久性に優れた発光素子、並びに該発光素子に使用でき、有機電界発光素子用材料、エレクトロケミルミネッセンス(ECL)素子材料、発光センサ−、光増感剤、ディスプレイ、蛍光増白剤、写真用材料、レ−ザ−色素、カラ−フィルタ−用染料、光通信、色変換フィルタ−、バックライト、照明、光増感色素、各種光源等にも適用できる新規な金属錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記実状に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)又は(2)で表される新規金属錯体が強発光特性を有し、発光材料として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉下記一般式(1)で表される金属錯体。
【化1】

(一般式(1)中、Mはイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+n=2または3である。Xは脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)を表す。R〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Qはカウンタ−アニオンを表す。kは1〜3の整数を表す。Lは2座配位子であり、2−フェニルキノリン誘導体、1−フェニルイソキノリン誘導体、3−フェニルイソキノリン誘導体、2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジン誘導体、2−チエニルピリジン誘導体、1−フェニルピラゾ−ル誘導体、1−フェニル−1H−インダゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾチアゾ−ル誘導体、2−フェニルチアゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾオキサゾ−ル誘導体、2−フェニルオキサゾ−ル誘導体、2−フラニルピリジン誘導体、2−(2−ベンゾフラニル)ピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、7,8−ベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体、ベンゾ[h]−5,6−ジヒドロキノリン誘導体、9−(2−ピリジル)カルバゾ−ル誘導体、1−(2−ピリジル)インド−ル誘導体、1−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、1−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(2−ナフチル)キノリン誘導体、2−(1−ナフチル)キノリン誘導体、3−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、3−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−(2−ナフチル)ピリジン誘導体、6−フェニルフェナントリジン誘導体、6−(1−ナフチル)フェナントリジン誘導体、6−(2−ナフチル)フェナントリジン誘導体、ベンゾ[c]アクリジン誘導体、ベンゾ[c]フェナジン誘導体、ジベンゾ[a,c]アクリジン誘導体、ジベンゾ[a,c]フェナジン誘導体、2−フェニルキノキサリン誘導体、2,3−ジフェニルキノキサリン誘導体、2−ベンジルピリジン誘導体、2−フェニルベンゾイミダゾ−ル誘導体、3−フェニルピラゾ−ル誘導体、4−フェニルイミダゾ−ル誘導体、1−フェニルイミダゾ−ル誘導体、4−フェニルトリアゾ−ル誘導体、5−フェニルテトラゾ−ル誘導体、カルベン誘導体、2−アルケニルピリジン誘導体、2,2’−ビピリジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、および、2,2’−ビキノリン誘導体である。)
〈2〉下記一般式(2)で表される金属錯体。
【化2】

(一般式(2)中、Mはイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+n=2または3である。Xは脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)を表す。R〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Qはカウンタ−アニオンを表す。kは1〜3の整数を表す。Aは−C(R15)−または−N−であり、Eは−C(R17)−または−N−である。R10〜R17は、各々独立に、水素原子又は置換基であり、R10〜R17の少なくとも1つは置換基である。R10〜R13よりなる群から選択された2つ以上の置換基、R13とR14、R14〜R17よりなる群から選択された2つ以上の置換基は、互いに連結されて飽和または不飽和の炭素環、飽和または不飽和のヘテロ環を形成していてもよい。)
〈3〉R10〜R17の少なくとも1つが、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリ−ル基、置換または非置換の炭素原子数7〜20のアリ−ルアルキル基、置換または非置換の炭素原子数2〜20のアルキルアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数7〜20のアリ−ルアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリ−ルアミノ基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のジアルキルアミノ基、または置換または非置換の炭素原子数2〜20のヘテロ環基である前記2に記載の金属錯体。
〈4〉R10〜R17の少なくとも1つが、フェニル基、置換フェニル基、もしくは、それらを部分構造として含有する置換基である前記2又は3に記載の金属錯体。
〈5〉R14とR16のうち少なくとも1つが、フッ素原子である前記2乃至4何れかに記載の金属錯体。
〈6〉R15が電子吸引性基である前記2乃至5何れかに記載の金属錯体。
〈7〉Aが−C(R15)−である前記2乃至6何れかに記載の金属錯体。
〈8〉Aが−N−である前記2乃至7何れかに記載の金属錯体。
〈9〉Xが炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)である前記1乃至8何れかに記載の金属錯体。
〈10〉Mがイリジウムである前記1乃至9何れかに記載の金属錯体。
〈11〉Mが白金である前記1乃至9何れかに記載の金属錯体。
〈12〉前記1乃至11何れかに記載の金属錯体からなる発光材料。
〈13〉下記一般式(3)で表される部分構造を有する金属錯体からなる発光材料。
【化3】

(一般式(3)中、Mはイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。Xは炭素原子数2〜30の脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)である。R〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
〈14〉Mがイリジウムである前記13に記載の発光材料。
〈15〉Mが白金である前記13に記載の発光材料。
〈16〉前記12乃至15何れかに記載の発光材料を用いた発光素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規な金属錯体は、低消費電力で効率よく高輝度発光を示すことから、該化合物を用いた発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア等の分野に好適である。また、本発明の化合物は、医療用途、蛍光増白剤、写真用材料、UV吸収材料、レ−ザ−色素、カラ−フィルタ−用染料、色変換フィルタ−、光通信等にも適用可能である。また、青色発光素子を基本とし、赤〜橙色発光材料、赤〜橙色発光素子を組み合わせることにより、高効率白色発光素子も作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る前記一般式(1)又は(2)で表される金属錯体は新規化合物であるとともに、それらが強発光性を示す実験事実は、従来全く知られていない事柄であり、本発明者らの、数多くの緻密な実験の積み重ねによって初めて見いだされた新規な知見である。すなわち、本発明の新規金属錯体は、一般式(1)又は(2)で表され、これら新規イリジウム錯体を発光素子の発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物層に含有させることで、可視光領域に優れた発光色を有する発光素子が得られる。
【0013】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の化合物は、前記一般式(1)又は(2)で表される構造を有すれば良く、互変異性体を含有しても良い。さらに、化合物中に遷移金属原子を一つ有しても良いし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であっても良い。異種の金属原子を同時に含有していても良い。
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物の中でも、溶液中または固体状態での発光量子収率は、0.01以上のものが好ましく、0.1以上のものがさらに好ましい。
【0014】
前記一般式(1)〜(3)に記載した記号(R〜R、R10〜R17、M、X、X、L、Q、m、n、k、A、および、E)について以下に説明する。
【0015】
〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、フェノキシ基、アリ−ル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルコキシ基、アリ−ルオキシ基、ヘテロアリ−ルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリ−ルオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、ヘテロアリ−ルチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、及びシリル基であり、これらの置換基は更に置換されてもよい。好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20の置換アルキル基、炭素原子数6〜20のアリ−ル基、炭素原子数6〜20の置換アリ−ル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基および炭素原子数1〜20の置換アルコキシ基であり、特に好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基および炭素原子数1〜10の置換アルキル基である。最も好ましくは水素原子である。
【0016】
10〜R17は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリ−ル基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリ−ルオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリ−ルオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリ−ルオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリ−ルチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられ、特に好ましい置換基は、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜10のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜12のアリ−ル基、置換または非置換の炭素原子数0〜10のアミノ基、または置換または非置換の炭素原子数1〜12のヘテロ環基である。R10〜R17の少なくとも1つは置換基である。
【0017】
さらに、R10〜R13よりなる群から選択された2つ以上の置換基、R13とR14、R14〜R17よりなる群から選択された2つ以上の置換基は、互いに連結されて飽和または不飽和の炭素環、飽和または不飽和のヘテロ環を形成するのも好ましい。
【0018】
また、R10〜R17の少なくとも1つは、フェニル基、置換フェニル基、もしくは、それらを部分構造として含有する置換基であるのも好ましく、R11〜R16の少なくとも1つは、フェニル基、置換フェニル基、もしくは、それらを部分構造として含有する置換基であるのがより好ましく、R14〜R16の少なくとも1つは、フェニル基、置換フェニル基、もしくは、それらを部分構造として含有する置換基であるのが特に好ましい。ここで、置換フェニル基の置換基は、R10〜R17の置換基と同義であり、望ましい範囲も同じである。フェニル誘導体を含有する置換基とは、例えば、フルオレン基、フルオレノン基、カルバゾ−ル基、ジベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基などを表す。
【0019】
また、R14又はR16の少なくとも1つは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アリ−ル基、ヘテロ環基であることも好ましく、水素原子、アルキル基、フッ素原子がより好ましく、水素原子、フッ素原子がさらに好ましい。R14またはR16の少なくとも1つがフッ素原子であることが好ましく、R14およびR16が共にフッ素原子であることがより好ましい。
【0020】
また、R15は電子吸引性基であることも好ましい。電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、アシル基、スルホニル基、ハロゲン原子などであり、好ましくはトリフルオロメチル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、フッ素原子であり、より好ましくはシアノ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基である。R14またはR16がフッ素原子であり、R15が電子吸引性基であることが好ましく、R14およびR16が共にフッ素原子であり、R15が電子吸引性基であることがより好ましい。
【0021】
11及びR13はそれぞれ好ましくは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基である。R10は好ましくは水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基又はジアルキルアミノ基であり、より好ましくは水素原子、フッ素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子である。R12は好ましくは水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基又はジアルキルアミノ基であり、より好ましくは水素原子、フッ素原子、アルキル基又はアルコキシ基である。
【0022】
一般式(1)〜(3)中、Mはイリジウム、白金、ロジウム、およびパラジウムであり、好ましくはイリジウム、白金であり、特に好ましくはイリジウムである。
【0023】
は脂肪族炭化水素基(炭化水素中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)を表す。脂肪族炭化水素基の中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、および、置換アルキニル基が好ましく、アルキル基、および、置換アルキル基がより好ましい。これらの基は直鎖状または分岐状でも構わなく、炭化水素基中の水素原子の一部がフッ素原子に置換されても良い。これらの置換基としては、R10〜R17の置換基と同義であり、望ましい範囲も同じである。Xとして用いられる脂肪族炭化水素基の中でも、炭素原子数1〜50が好ましく、炭素原子数1〜30がより好ましい。さらに、本発明化合物の溶媒への溶解性を向上させるという観点から、炭素原子数2〜30が好ましく、炭素原子数3〜30がより好ましく、炭素原子数5〜30が特に好ましい。
【0024】
は脂肪族炭化水素基(炭化水素中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)を表す。脂肪族炭化水素基の中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、および、置換アルキニル基が好ましく、アルキル基、および、置換アルキル基がより好ましい。これらの基は直鎖状または分岐状でも構わなく、炭化水素基中の水素原子の一部がフッ素原子に置換されても良い。これらの置換基としては、R10〜R17の置換基と同義であり、望ましい範囲も同じである。Xとして用いられる脂肪族炭化水素基の炭素原子数は2〜30であり、本発明化合物の溶媒への溶解性をさらに向上させるという観点から、炭素原子数3〜30がより好ましく、炭素原子数5〜30が特に好ましい。
【0025】
mは1〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表し、m+n=2または3である。m=1または2が好ましく、m=1が特に好ましい。nは0〜2の整数を表す。Mがイリジウムおよびロジウムのときは、n=1または2が好ましく、n=2が特に好ましい。Mが白金およびパラジウムのときは、n=1または2が好ましく、n=1が特に好ましい。
【0026】
はカウンタ−アニオンを表す。カウンタ−アニオンとしては特に制限はないが、好ましくはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、パ−クロレイトイオン、PF6イオン、アンモニウムイオン、CFCFCFCOOイオン、SbFイオン、ジシアンアミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン、ボレ−トイオン又はホスホニウムイオンである。
【0027】
kは1〜3の整数を表す。k=1または2が好ましく、k=1が特に好ましい。
【0028】
Aは−C(R15)−または−N−を表す。
【0029】
Eは−C(R17)−または−N−を表し、−C(R17)−がより好ましい。
【0030】
一般式(2)中、R10〜R17、A、E、窒素原子および炭素原子から構成される2座配位子の好ましい構造としては、例えば、表1に記載の配位子があげられるが、本発明はこれに限定されない。
【表1】

【0031】
Lは2座配位子であり、2−フェニルキノリン誘導体、1−フェニルイソキノリン誘導体、3−フェニルイソキノリン誘導体、2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジン誘導体、2−チエニルピリジン誘導体、1−フェニルピラゾ−ル誘導体、1−フェニル−1H−インダゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾチアゾ−ル誘導体、2−フェニルチアゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾオキサゾ−ル誘導体、2−フェニルオキサゾ−ル誘導体、2−フラニルピリジン誘導体、2−(2−ベンゾフラニル)ピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、7,8−ベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体、ベンゾ[h]−5,6−ジヒドロキノリン誘導体、9−(2−ピリジル)カルバゾ−ル誘導体、1−(2−ピリジル)インド−ル誘導体、1−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、1−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(2−ナフチル)キノリン誘導体、2−(1−ナフチル)キノリン誘導体、3−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、3−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−(2−ナフチル)ピリジン誘導体、6−フェニルフェナントリジン誘導体、6−(1−ナフチル)フェナントリジン誘導体、6−(2−ナフチル)フェナントリジン誘導体、ベンゾ[c]アクリジン誘導体、ベンゾ[c]フェナジン誘導体、ジベンゾ[a,c]アクリジン誘導体、ジベンゾ[a,c]フェナジン誘導体、2−フェニルキノキサリン誘導体、2,3−ジフェニルキノキサリン誘導体、2−ベンジルピリジン誘導体、2−フェニルベンゾイミダゾ−ル誘導体、3−フェニルピラゾ−ル誘導体、4−フェニルイミダゾ−ル誘導体、1−フェニルイミダゾ−ル誘導体、4−フェニルトリアゾ−ル誘導体、5−フェニルテトラゾ−ル誘導体、カルベン誘導体、2−アルケニルピリジン誘導体、2,2’−ビピリジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、および、2,2’−ビキノリン誘導体であり、
【0032】
好ましくは、2−フェニルキノリン誘導体、1−フェニルイソキノリン誘導体、3−フェニルイソキノリン誘導体、2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジン誘導体、2−チエニルピリジン誘導体、1−フェニルピラゾ−ル誘導体、1−フェニル−1H−インダゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾチアゾ−ル誘導体、2−フェニルチアゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾオキサゾ−ル誘導体、2−フェニルオキサゾ−ル誘導体、2−フラニルピリジン誘導体、2−(2−ベンゾフラニル)ピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、7,8−ベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体、ベンゾ[h]−5,6−ジヒドロキノリン誘導体、9−(2−ピリジル)カルバゾ−ル誘導体、1−(2−ピリジル)インド−ル誘導体、1−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、1−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(2−ナフチル)キノリン誘導体、2−(1−ナフチル)キノリン誘導体、3−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、3−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−(2−ナフチル)ピリジン誘導体、6−フェニルフェナントリジン誘導体、6−(1−ナフチル)フェナントリジン誘導体、6−(2−ナフチル)フェナントリジン誘導体、ベンゾ[c]アクリジン誘導体、ベンゾ[c]フェナジン誘導体、ジベンゾ[a,c]アクリジン誘導体、ジベンゾ[a,c]フェナジン誘導体、2−フェニルキノキサリン誘導体、2,3−ジフェニルキノキサリン誘導体、2−ベンジルピリジン誘導体、2−フェニルベンゾイミダゾ−ル誘導体、3−フェニルピラゾ−ル誘導体、4−フェニルイミダゾ−ル誘導体、1−フェニルイミダゾ−ル誘導体、4−フェニルトリアゾ−ル誘導体、5−フェニルテトラゾ−ル誘導体、カルベン誘導体、および、2−アルケニルピリジン誘導体であり、
【0033】
より好ましくは、2−フェニルキノリン誘導体、1−フェニルイソキノリン誘導体、3−フェニルイソキノリン誘導体、2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジン誘導体、2−チエニルピリジン誘導体、1−フェニルピラゾ−ル誘導体、1−フェニル−1H−インダゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾチアゾ−ル誘導体、2−フェニルチアゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾオキサゾ−ル誘導体、2−フェニルオキサゾ−ル誘導体、2−フラニルピリジン誘導体、2−(2−ベンゾフラニル)ピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、7,8−ベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体、ベンゾ[h]−5,6−ジヒドロキノリン誘導体、9−(2−ピリジル)カルバゾ−ル誘導体、1−(2−ピリジル)インド−ル誘導体、1−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、1−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(2−ナフチル)キノリン誘導体、2−(1−ナフチル)キノリン誘導体、3−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、3−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−(2−ナフチル)ピリジン誘導体、6−フェニルフェナントリジン誘導体、6−(1−ナフチル)フェナントリジン誘導体、6−(2−ナフチル)フェナントリジン誘導体、ベンゾ[c]アクリジン誘導体、ベンゾ[c]フェナジン誘導体、ジベンゾ[a,c]アクリジン誘導体、ジベンゾ[a,c]フェナジン誘導体、2−フェニルキノキサリン誘導体、2,3−ジフェニルキノキサリン誘導体、2−ベンジルピリジン誘導体、2−フェニルベンゾイミダゾ−ル誘導体、3−フェニルピラゾ−ル誘導体、4−フェニルイミダゾ−ル誘導体、1−フェニルイミダゾ−ル誘導体、4−フェニルトリアゾ−ル誘導体、5−フェニルテトラゾ−ル誘導体、および、2−アルケニルピリジン誘導体である。
【0034】
一般式(1)に記載のLの例を、表2〜表4に示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。表2〜表4中のRは水素原子又は置換基である。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
一般式(1)に記載のLとして、また、カルベン誘導体が挙げられるが、例えば、国際公開WO2005/113704号に記載の以下に示す配位子が好ましく用いられる。
【化5】

【0039】
前記一般式(1)〜(3)に示される本発明化合物の中心金属の価数について説明する。Mがイリジウムおよびロジウムのときは3価が好ましい。白金およびパラジウムのときは2価が好ましい。
【0040】
また、前記一般式(1)又は(2)に示されるイリジウム錯体は、低分子化合物であっても、また前記一般式(1)又は(2)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む、いわゆるオリゴマ−化合物およびポリマ−化合物(質量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)として用いてもよい。
【0041】
一般式(1)〜(3)中の、R1〜R、X(又はX)、および、窒素原子から構成される2座配位子について説明する。当該2座配位子については、市販品を用いても良いし、過去に報告されている方法(例えば、Polyhedron, 2001年, 20巻, 2935頁. の記載の方法など)を用いて、式(D)のように容易に合成することができる。
【化6】

【0042】
当該2座配位子として好ましい例を表5に示す。
【表5】

【0043】
本発明に係る前記一般式(1)又は(2)に示される金属錯体を製造するには、例えば、式(E)又は式(F)に従い、架橋ダイマ−と配位子を通常の方法(溶媒の存在下または非存在下、塩基の存在下または非存在下、脱ハロゲン化剤としての銀化合物の存在下または非存在下、常温または加熱すること)で反応させれば良い。窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下で反応を行うのも好ましい。また、加熱手段は特に制約されないが、反応を円滑するために、マイクロ波を照射することも好ましい。マイクロ波の波長に特に制限はないが、2000〜3000MHz、好ましくは2400〜2500MHzである。マイクロ波発振装置としては、市販されている従来公知の発振装置が全て適用できる。また、加熱手段として、オイルバス、マントルヒ−タ−等を用いても良い。架橋ダイマ−については、例えば、Inorganic Chemistry, 2001年, 40巻, 1704頁、Inorganic Chemistry, 2002年, 41巻, 3055頁に記載の方法を用いて、容易に得ることができる。
【化7】

【化8】

【0044】
また、該反応を更に円滑に進めるために、反応溶媒を用いることが望ましい。このような溶媒としては特に制限はないが、アルコ−ル系溶媒、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、ニトリル系溶媒などが好ましく用いられ、具体的には、クロロホルム、ジクロロメタン、2−メトキシエタノ−ル、2−エトキシエタノ−ル、メタノ−ル、エタノ−ル、アセトニトリルなどが好ましい。
【0045】
また、前記一般式(1)又は(2)に示されるイリジウム錯体を製造する場合の、反応温度、反応圧力、反応時間は、使用する原料、マイクロ波の出力、溶媒などによって異なるが、通常、反応温度は40〜200℃、好ましくは50〜150℃、反応圧力は1〜30atm、好ましくは1〜5atmである。
【0046】
本発明に係るイリジウム錯体は、通常の合成反応の後処理に従って処理した後、必要があれば精製してあるいは精製せずに供することができる。後処理の方法としては、例えば、抽出、冷却、水または有機溶媒を添加することによる晶析、反応混合物からの溶媒を留去する操作等を単独あるいは組み合わせて行うことができる。精製の方法としては再結晶、蒸留、昇華あるいはカラムクロマトグラフィ−等を単独あるいは組み合わせて行うことができる。
【0047】
以下に、本発明に係る、前記一般式(1)又は(2)で示されるイリジウム錯体の代表例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[本発明化合物の合成]
【0051】
実施例1(本発明化合物(K−1)の合成)
架橋ダイマ−(D−1)を50mg、配位子(L−1)を27mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を90分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−1)であり、単離収率は89%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=758.6
1H−NMR (CDCl3) d 8.35 (d, 2H), 8.08 (d, 2H), 7.88−7.96 (m, 4H), 7.62 (d, 2H), 7.58 (d, 2H), 7.23 (dd, 2H), 6.93 (dd, 2H), 6.50 (dd, 2H), 5.63 (d, 2H), 3.54 (s, 3H).
【化9】

【0052】
実施例2(本発明化合物(K−2)の合成)
架橋ダイマ−(D−1)を50mg、配位子(L−5)を35mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を90分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−2)であり、単離収率は90%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=814.7
1H−NMR (CDCl3) d 8.36 (d, 2H), 7.93−7.97(m, 4H), 7.89 (dd, 2H), 7.60−7.65 (m, 4H), 7.18 (dd, 2H), 6.96 (dd, 2H), 6.51 (dd, 2H), 5.61 (d, 2H), 4.24 (dd, 1H), 3.69(dd, 1H), 0.60−1.36 (m, 9H).
【化10】

【0053】
実施例3(本発明化合物(K−3)の合成)
架橋ダイマ−(D−1)を50mg、配位子(L−7)を41mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を60分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−3)であり、単離収率は77%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=856.9
1H−NMR (CDCl3) d 8.38 (d, 2H), 7.90−7.99 (m, 6H), 7.70−7.75 (m, 2H), 7.48 (d, 2H), 7.16 (dd, 2H), 7.02 (dd, 2H), 6.55 (dd, 2H), 5.66 (d, 2H), 4.15 (dd, 1H), 3.65 (dd, 1H), 0.60−1.38 (m, 15H).
【化11】

【0054】
実施例4(本発明化合物(K−5)の合成)
架橋ダイマ−(D−2)を50mg、配位子(L−5)を31mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を120分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−5)であり、単離収率は92%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=894.8
1H−NMR (CDCl3) d 8.07 (d, 2H), 8.02 (brs, 2H), 7.86−7.94 (m, 6H), 7.79 (brs, 2H), 7.61 (d, 2H), 7.54 (d, 4H), 7.40 (dd, 4H), 7.30 (dd, 2H), 7.19 (dd, 2H), 7.13 (d, 2H), 6.91 (t, 2H), 6.31 (d, 2H), 4.25 (dd, 1H), 3.72(dd, 1H), 0.70−1.41 (m, 9H).
【化12】

【0055】
実施例5(本発明化合物(K−18)の合成)
架橋ダイマ−(D−3)を50mg、配位子(L−5)を31mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を120分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−18)であり、単離収率は76%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=894.8
1H−NMR (CDCl3) d 7.97−8.03 (m, 4H), 7.91 (dd, 2H), 7.85 (dd, 2H), 7.80 (brs, 2H), 7.71 (d, 2H), 7.61 (d, 2H), 7.29−7.34 (m, 8H), 7.22−7.28 (m, 4H), 7.13 (dd, 2H), 6.89 (dd, 2H), 6.45 (d, 2H), 4.25 (dd, 1H), 3.72(dd, 1H), 0.70−1.38 (m, 9H).
【化13】

【0056】
実施例6(本発明化合物(K−13)の合成)
架橋ダイマ−(D−4)を50mg、配位子(L−1)を25mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を90分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた橙色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、橙色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−13)であり、単離収率は96%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=786.6
1H−NMR (CDCl3) d 8.92 (d, 2H), 8.23 (d, 2H), 7.98 (d, 2H), 7.93 (d, 2H), 7.86 (dd, 2H), 7.82 (dd, 2H), 7.78 (dd, 2H), 7.56 (d, 4H), 7.48 (d, 2H), 7.04 (dd, 2H), 6.77−6.83 (m, 4H), 6.33 (d, 2H), 3.52 (s, 3H).
【化14】

【0057】
実施例7(本発明化合物(K−15)の合成)
架橋ダイマ−(D−5)を50mg、配位子(L−1)を28mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を90分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−15)であり、単離収率は92%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=734.6
1H−NMR (CDCl3) d 8.48 (d, 2H), 8.35 (d, 2H), 7.81−7.86 (m, 4H), 7.70 (d, 4H), 7.61 (dd, 2H), 7.58 (d, 2H), 7.39 (d, 2H), 7.05 (t, 2H), 6.72 (dd, 2H), 6.13 (d, 2H), 3.61 (s, 3H).
【化15】

【0058】
実施例8(本発明化合物(K−19)の合成)
架橋ダイマ−(D−6)を50mg、配位子(L−7)を32mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を4時間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、反応溶液をろ過した。続いてろ液をエバポレ−タを用いて溶媒を減圧留去した。得られた赤色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、赤色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−19)であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=1038.8
【化16】

【0059】
実施例9(本発明化合物(K−4)の合成)
架橋ダイマ−(D−7)を50mg、配位子(L−7)を41mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を90分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、茶褐色固体を得た。これをアルミナカラムクロマトグラフィ−(溶離液:ジクロロメタンとメタノ−ルの混合溶媒)を用いて分離精製し、黄色固体を得た。さらに、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望のイリジウム錯体(K−4)であり、単離収率は35%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=858.6
1H−NMR (CD2Cl2) d 8.39 (d, 2H), 8.00−8.05 (m, 4H), 7.95 (brs, 2H), 7.65 (brs, 2H), 7.54 (d, 2H), 7.30 (dd, 2H), 7.06 (dd, 2H), 5.65 (s, 2H), 4.18 (dd, 1H), 3.69 (dd, 1H), 0.59−1.37 (m, 15H).
【化17】

【0060】
実施例10(本発明化合物(K−10)の合成)
架橋ダイマ−(D−8)を40mg、配位子(L−7)を47mg、2−エトキシエタノ−ル10mlをナスフラスコに入れた。このナスフラスコをマイクロ波合成装置(マイルスト−ンゼネラル製 MicroSYNTH)に入れ、アルゴンガスを通気しながら、マイクロ波(2450MHz)を120分間照射した。反応溶液を室温まで冷却した後、アルゴンガスを止め、溶媒を減圧留去した。得られた黄色固体をエタノ−ルと水の混合溶媒に溶解させ、NH4PF6飽和水溶液を滴下し、黄色固体を得た。その後、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶した。エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析およびプロトンNMRによる分析の結果、得られた化合物は所望の白金錯体(K−10)であり、単離収率は20%であった。
エレクトロ−スプレ−イオン化質量分析:m/z=669.3
【化18】

【0061】
本発明化合物の発光特性を以下に示す。
【0062】
実施例11(本発明化合物(K−1)の発光)
(K−1)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い青色発光(発光極大波長:457nmおよび486nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.29であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0063】
実施例12(本発明化合物(K−2)の発光)
(K−2)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い青色発光(発光極大波長:457nmおよび486nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.35であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0064】
実施例13(本発明化合物(K−3)の発光)
(K−3)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い青色発光(発光極大波長:457nmおよび486nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.34であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0065】
実施例14(本発明化合物(K−5)の発光)
(K−5)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い緑色発光(発光極大波長:494nmおよび524nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.27であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0066】
実施例15(本発明化合物(K−18)の発光)
(K−18)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い黄緑色発光(発光極大波長:521nmおよび556nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.60であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0067】
実施例16(本発明化合物(K−13)の発光)
(K−13)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い赤橙色発光(発光極大波長:650nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.32であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0068】
実施例17(本発明化合物(K−15)の発光)
(K−15)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い黄緑色発光(発光極大波長:521nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.68であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0069】
実施例18(本発明化合物(K−19)の発光)
(K−19)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い赤色発光を示した。
【0070】
実施例19(本発明化合物(K−4)の発光)
(K−4)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、島津製作所製RF−5300PCを用いて、室温での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、強い青色発光(発光極大波長:440nmおよび469nm)を示した。「新実験化学講座4 基礎技術3光(II) 第8章 けい光とりん光の測定」(丸善出版)に記載の方法に従い、発光量子収率を測定したところ、0.72であった(キニン硫酸塩の0.5M硫酸溶液中での量子収率0.546を基準とした)。
【0071】
比較例1
特許公開2005−298483号に記載の式(C)のイリジウム錯体を合成し、室温THF中で発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定した。前式(C)で表されるイリジウム錯体は青色発光を示したが、発光量子収率は0.008であり、本発明化合物と比較して非常に低かった。
【化19】

【0072】
以上の実施例より、一般式(1)又は(2)で表される本発明化合物は強発光性を有し、多様な発光色(青色〜緑色〜赤色)を示す発光材料として有用であり、有機電界発光素子用材料、エレクトロケミルミネッセンス(ECL)素子材料、発光センサ−、光増感剤、ディスプレイ、蛍光増白剤、写真用材料、レ−ザ−色素、カラ−フィルタ−用染料、光通信、色変換フィルタ−、バックライト、照明、光増感色素、各種光源等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明化合物(K−1)の室温THF中の発光スペクトル
【図2】本発明化合物(K−2)の室温THF中の発光スペクトル
【図3】本発明化合物(K−3)の室温THF中の発光スペクトル
【図4】本発明化合物(K−5)の室温THF中の発光スペクトル
【図5】本発明化合物(K−15)の室温THF中の発光スペクトル
【図6】本発明化合物(K−18)の室温THF中の発光スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される金属錯体。
【化1】

(一般式(1)中、Mはイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+n=2または3である。Xは脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)を表す。R〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Qはカウンタ−アニオンを表す。kは1〜3の整数を表す。Lは2座配位子であり、2−フェニルキノリン誘導体、1−フェニルイソキノリン誘導体、3−フェニルイソキノリン誘導体、2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジン誘導体、2−チエニルピリジン誘導体、1−フェニルピラゾ−ル誘導体、1−フェニル−1H−インダゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾチアゾ−ル誘導体、2−フェニルチアゾ−ル誘導体、2−フェニルベンゾオキサゾ−ル誘導体、2−フェニルオキサゾ−ル誘導体、2−フラニルピリジン誘導体、2−(2−ベンゾフラニル)ピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、7,8−ベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体、ベンゾ[h]−5,6−ジヒドロキノリン誘導体、9−(2−ピリジル)カルバゾ−ル誘導体、1−(2−ピリジル)インド−ル誘導体、1−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、1−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(2−ナフチル)キノリン誘導体、2−(1−ナフチル)キノリン誘導体、3−(1−ナフチル)イソキノリン誘導体、3−(2−ナフチル)イソキノリン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−(2−ナフチル)ピリジン誘導体、6−フェニルフェナントリジン誘導体、6−(1−ナフチル)フェナントリジン誘導体、6−(2−ナフチル)フェナントリジン誘導体、ベンゾ[c]アクリジン誘導体、ベンゾ[c]フェナジン誘導体、ジベンゾ[a,c]アクリジン誘導体、ジベンゾ[a,c]フェナジン誘導体、2−フェニルキノキサリン誘導体、2,3−ジフェニルキノキサリン誘導体、2−ベンジルピリジン誘導体、2−フェニルベンゾイミダゾ−ル誘導体、3−フェニルピラゾ−ル誘導体、4−フェニルイミダゾ−ル誘導体、1−フェニルイミダゾ−ル誘導体、4−フェニルトリアゾ−ル誘導体、5−フェニルテトラゾ−ル誘導体、カルベン誘導体、2−アルケニルピリジン誘導体、2,2’−ビピリジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、および、2,2’−ビキノリン誘導体である。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される金属錯体。
【化2】

(一般式(2)中、Mはイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+n=2または3である。Xは脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)を表す。R〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Qはカウンタ−アニオンを表す。kは1〜3の整数を表す。Aは−C(R15)−または−N−であり、Eは−C(R17)−または−N−である。R10〜R17は、各々独立に、水素原子又は置換基であり、R10〜R17の少なくとも1つは置換基である。R10〜R13よりなる群から選択された2つ以上の置換基、R13とR14、R14〜R17よりなる群から選択された2つ以上の置換基は、互いに連結されて飽和または不飽和の炭素環、飽和または不飽和のヘテロ環を形成していてもよい。)
【請求項3】
10〜R17の少なくとも1つが、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリ−ル基、置換または非置換の炭素原子数7〜20のアリ−ルアルキル基、置換または非置換の炭素原子数2〜20のアルキルアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数7〜20のアリ−ルアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリ−ルアミノ基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のジアルキルアミノ基、または置換または非置換の炭素原子数2〜20のヘテロ環基である請求項2に記載の金属錯体。
【請求項4】
10〜R17の少なくとも1つが、フェニル基、置換フェニル基、もしくは、それらを部分構造として含有する置換基である請求項2又は3に記載の金属錯体。
【請求項5】
14とR16のうち少なくとも1つが、フッ素原子である請求項2乃至4何れかに記載の金属錯体。
【請求項6】
15が電子吸引性基である請求項2乃至5何れかに記載の金属錯体。
【請求項7】
Aが−C(R15)−である請求項2乃至6何れかに記載の金属錯体。
【請求項8】
Aが−N−である請求項2乃至7何れかに記載の金属錯体。
【請求項9】
が炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)である請求項1乃至8何れかに記載の金属錯体。
【請求項10】
Mがイリジウムである請求項1乃至9何れかに記載の金属錯体。
【請求項11】
Mが白金である請求項1乃至9何れかに記載の金属錯体。
【請求項12】
請求項1乃至11何れかに記載の金属錯体からなる発光材料。
【請求項13】
下記一般式(3)で表される部分構造を有する金属錯体からなる発光材料。
【化3】

(一般式(3)中、Mはイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。Xは炭素原子数2〜30の脂肪族炭化水素基(炭化水素基中の水素原子はフッ素原子に置換されても良い)である。R〜Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項14】
Mがイリジウムである請求項13に記載の発光材料。
【請求項15】
Mが白金である請求項13に記載の発光材料。
【請求項16】
請求項12乃至15何れかに記載の発光材料を用いた発光素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−217364(P2007−217364A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41070(P2006−41070)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】