説明

新規風疹E1エンベロープタンパク質変異体および抗風疹抗体の検出におけるその使用

本発明は可溶性風疹E1抗原およびこれらの抗原の変異体に関する。この抗原はアミノ酸201-432または169-432を含み、アミノ酸453-481および少なくともアミノ酸143-164を欠く。それらは更に、2つのジスルフィド架橋にわたる領域を含有する。本発明はまた、この風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子、シャペロン融合タンパク質としての風疹E1抗原の発現、およびサンプル中の風疹に対する抗体の検出方法におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組換え風疹E1抗原およびその変異体に関する。該抗原は、アミノ酸201-432または169-432を含み、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメント(アミノ酸453-481)ならびに少なくともアミノ酸143-164を欠くことにより特徴づけられる。該抗原は更に、2つのジスルフィド架橋を含有する。すなわち、それらは、ジスルフィド架橋Cys 225-Cys 235からCys 349-Cys 352までの領域、またはCys 225-Cys 235からCys 368-Cys 401までの領域、またはCys 176-Cys 186からCys 225-Cys 235までの領域、またはCys 176-Cys 185からCys 349-Cys 352までの領域、またはCys 176-Cys 185からCys 368-Cys 401までの領域を含有する。本発明はまた、これらの二重ジスルフィド架橋抗原の製造、およびヒト血清中の抗風疹抗体の検出方法におけるそれらの使用に関する。可能な限り多数の天然様の安定なエピトープを得ることは、免疫グロブリンの検出を意図したイムノアッセイのための抗原試薬の開発における重要な目標である。したがって、本発明のもう1つの態様は、種々の抗原におけるジスルフィド結合の組合せが互いに異なるよう少なくとも2つのジスルフィド架橋をそれぞれが含む少なくとも2つの風疹E1抗原を含む組成物である。
【背景技術】
【0002】
風疹ウイルスはトガウイルス科のルビウイルス属の唯一のメンバーである。この小さな包膜(+)RNAウイルスはヒト病原体であり、発疹、リンパ節障害および軽度の発熱により特徴づけられる軽度の自己限定性小児疾患(三日はしか、すなわち、風疹)を引き起こす。しかし、妊娠の最初の3ヶ月間にそれに罹ると、それは、死産、自然流産、または先天性風疹症候群に関連した幾つかの異常を引き起こしうる。先天性風疹症候群の特徴的三徴候には、胎児の白内障、心臓欠陥および難聴が含まれる。そのため、出産可能年齢の女性の風疹ワクチン接種計画および免疫状態の監視が必要となる。
【0003】
風疹ウイルスの構造タンパク質は単一の110kDaのポリペプチド前駆体に由来し、これはタンパク質分解により切断されて、カプシドタンパク質Cならびにエンベロープタンパク質E2およびE1を与える。E2およびE1はグリコシル化され、これらはビリオンの表面に非共有結合性ヘテロ二量体を形成し、体液性免疫応答の好ましい標的である。特にE1タンパク質の膜結合エクトドメインは免疫優性であり、E1に対する抗体は風疹感染個体からの血清中に豊富に存在する。
【0004】
風疹E1タンパク質は、風疹赤血球凝集素とも称され(図1を参照されたい)、おそらくは、大きなエクトドメイン(残基1-452)およびそれに続く単一の膜貫通ヘリックス(残基453-468)および短い細胞質尾部(残基469-481)よりなる。該膜貫通領域の直前に位置する残基438-452も、おそらく、ヘリックスを形成している。E1のエクトドメインは20個のシステイン残基を含有し、これらは10個のジスルフィド結合に関与している。システイン対C(1)-C(2)、C(3)-C(15)、C(6)-C(7)、C(9)-C(10)、C(11)-C(12)、C(13)-C(14)、C(17)-C(18)およびC(19)-C(20)は疑いなく確認可能であったが、システイン残基C(4)、C(5)、C(8)およびC(16)の対形成は依然として明らかでない(Grosら, 1997, Virology 230, 179-186)。該エクトドメインは3つのアスパラギン76、177および209においてグリコシル化されている。
【0005】
風疹E1タンパク質を診断目的で製造するために、これまでに幾つかの試みがなされている。まず、イムノアッセイのために抗原として使用されるE1の可溶性断片が感染乳児ハムスター腎(BHK-21)またはVero細胞の上清から単離された。後に、真核細胞宿主においてE1の可溶性および免疫反応性形態を産生させるために、種々の発現および分泌系が開発された(Hobmanら, 1994, Virus Res. 31, 277-289およびSetoら, 1994, J. Med. Virol. 44, 192-199)。完全長E1のグリコシル化および可溶性形態がバキュロウイルス感染Spodoptera frugiperda(Seppanenら, 1991, J. Clin. Microbiol. 29, 1877-1882およびOker-Blom 1989, Virology 172, 82-91)およびCHO細胞(Perrenoudら, 2004, Vaccine 23, 480-488)において、そして最も最近のものとしてはPichia pastoris(WenおよびWang 2005, Intervirology 48, 321-328)において産生可能であった。BHK細胞(Grangeot-Kerosら, J. lin. Microbiol. 33, 2392-2394)および安定にトランスフェクトされたCHO細胞系(Giessaufら, 2005, Arch. Virol. 150, 2077-2090)における風疹様粒子の発現は、診断目的に適した風疹抗原を与えた。これらの風疹様粒子は、共有結合性風疹タンパク質C、E2およびE1の、十分には特徴づけられていない非感染性集塊物であり、MおよびG型の免疫グロブリンの検出に有用である。
【0006】
E1の非グリコシル化形態は、原理的には、原核細胞宿主内のほうが遥かに効率的に産生されうるであろう。初期の試みにおいては、風疹E1の完全長形態およびトランケート化形態(207-353)がStaphylococcus aureus由来のプロテインAに融合され、大腸菌(E. coli)内で産生された(Terryら, 1989, Arch. Virol. 104, 63-75)。これらの融合タンパク質は抗原として活性であったが、十分には可溶性ではなく、したがって、抗E1抗体の特異的検出には限られた価値しか有さなかった。一般に、原核生物宿主からのE1の変異体は、より強い凝集傾向を示した。これは恐らく、それらが非グリコシル化体であるからか、あるいはそれらが不適切にジスルフィド結合しているからであろう。グルタチオン-S-トランスフェラーゼとの融合においては、75または44アミノ酸残基しか含まないE1の小さな断片のみが可溶性および機能性形態で発現可能であった(Newcombeら, 1994, Clinical and Diagnostic Virology 2, 149-163およびStarkeyら, 1995, J. Clin. Microbiol. 33, 270-274)。RecAおよびβ-ガラクトシダーゼの両方に融合された場合には、82または171アミノ酸残基を含む、より大きなE1断片が入手可能であった(Wolinskyら, 1991, J. Virol. 65, 3986-3994)。
【0007】
E1のような、システインに富む大きなタンパク質の酸化的リフォールディングは、非常に困難である。なぜなら、リフォールディング中に捕捉される、誤ったジスルフィドを有するミスフォールド中間体は、非常に高い凝集傾向を有するからである。したがって、多数の試みは、E1ポリペプチド鎖に沿った連続的B細胞エピトープを見出すこと、および対応する短い可溶性ペプチドをイムノアッセイにおける抗原として使用することに集中した。抗体は、一般に、小さなペプチド抗原に対しては、限られたアフィニティしか示さない。したがって、理想的には原核生物宿主における封入体としての大量生産およびそれに続く確固たる再生法により、高い抗原性を有する、E1の安定な可溶性断片を大量に産生させることが、依然として重要な目標である。
【0008】
Newcombeら(前掲)においては、大腸菌(E. coli)内で風疹E1抗原断片を可溶性形態で産生させるために、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)E1融合タンパク質が使用された。しかし、E1配列の相当なトランケート化の後でのみ、システイン非含有領域243-286(44アミノ酸残基)の可溶性発現が可能であった。欧州特許出願EP-A-0299673は、風疹Ig特異的結合特性を保有するアミノ酸残基207-353からのペプチドを開示している。
【0009】
さらに、Starkeyら(前掲)は、風疹E1の44〜75アミノ酸残基の非常に短いセグメントが、GSTに融合された場合に可溶性であったことを開示している。全E1配列および大きなE1亜断片を含有するGST融合タンパク質が不溶性封入体として発現され、それは精製も再生も不可能であり、したがって廃棄された。
【0010】
欧州特許出願第EP-A-1780282号は、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメントならびに該分子の中央部分における少なくともアミノ酸143-164のセグメントを欠くことにより特徴づけられる可溶性風疹E1エンベロープ抗原の組換え発現および産生を開示している。これらの風疹E1抗原は、少なくとも、ジスルフィド架橋Cys 349-Cys 352およびCys 368-Cys 401および場合によってはCys 225-Cys 235にわたる領域を含有する。EP-A-1782082の教示によれば、十分に抗原性でありサンプル中の風疹ウイルスに対する抗体の検出に適した風疹E1変異体を得るためには、C末端部分に両方のジスルフィド架橋を無傷(すなわち、閉じた状態)で有することが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0299673号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1780282号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Gros et al. 1997, Virology 230, 179-186
【非特許文献2】Hobman et al. 1994, Virus Res. 31, 277-289
【非特許文献3】Seto et al. 1994, J. Med. Virol. 44, 192-199
【非特許文献4】Seppaenen et al. 1991, J. Clin. Microbiol. 29, 1877-1882
【非特許文献5】Oker-Blom 1989, Virology 172, 82-91
【非特許文献6】Perrenoud et al. 2004, Vaccine 23, 480-488
【非特許文献7】Wen and Wang 2005, Intervirology 48, 321-328
【非特許文献8】Grangeot-Keros et al. J. lin. Microbiol. 33, 2392-2394
【非特許文献9】Giessauf et al. 2005, Arch. Virol. 150, 2077-2090
【非特許文献10】Terry et al. 1989, Arch. Virol. 104, 63-75
【非特許文献11】Newcombe et al. 1994, Clinical and Diagnostic Virology 2, 149-163
【非特許文献12】Starkey et al. 1995, J. Clin. Microbiol. 33, 270-274
【非特許文献13】Wolinsky et al. 1991, J. Virol. 65, 3986-3994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、解決すべき課題は、ジスルフィド安定化エピトープの更なる組合せを含有し高度に可溶性であり免疫学的な点で高度に反応性(すなわち、高度に抗原性)であり従って診断用途のための抗原として好適な可溶性風疹E1変異体を作製することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は風疹E1抗原およびこれらの抗原の変異体に関する。該抗原は、アミノ酸201-432または169-432を含み、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメント(アミノ酸453-481)ならびに該分子の中央部の少なくともアミノ酸143-164を欠くことにより特徴づけられる。それらは更に、2つのジスルフィド架橋にわたる領域、すなわち、ジスルフィド架橋Cys 225-Cys 235からCys 349-Cys 352までの領域、またはCys 225-Cys 235からCys 368-Cys 401までの領域、またはCys 176-Cys 185からCys 225-Cys 235までの領域、またはCys 176-Cys 185からCys 349-Cys 352までの領域、またはCys 176-Cys 185からCys 368-Cys 401までの領域を含有する。本発明はまた、これらの風疹E1抗原の少なくとも2つを含む組成物、およびこれらの二重ジスルフィド架橋抗原の製造、ならびにサンプル中の風疹に対する抗体の検出方法におけるそれらの使用に関する。
【0015】
好ましくは、該風疹E1抗原は更に、それらが、アミノ酸残基438-452を含むアルファ-ヘリックス領域をC末端において欠くことにより特徴づけられる。
【0016】
本発明はまた、アミノ酸201-432または169-432をそれぞれが含む少なくとも2つの風疹E1抗原を含む組成物に関する。ただし、該抗原のそれぞれは、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、該風疹E1抗原のそれぞれは、異なる組合せの2つのジスルフィド架橋を含有する。
【0017】
また、本発明は、該風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子に関する。好ましくは、該風疹E1抗原は組換え的に発現され、より好ましくは、それはシャペロン融合タンパク質として発現される。本発明はまた、機能しうる形で連結された又は組込まれた、風疹E1抗原をコードする前記DNAを含有する発現ベクターに関する。本発明はまた、発現ベクターで形質転換された宿主細胞、そしてまた、可溶性および免疫反応性風疹E1抗原の製造方法、好ましくは、E1部分とシャペロン部分(最も好ましくは、ペプチジルプロリルイソメラーゼのクラスに属するシャペロン)とを含有する融合タンパク質の製造方法に関する。
【0018】
本発明は、ヒトサンプル中の抗風疹抗体の検出のための方法であって、該風疹E1抗原が該抗風疹抗体に対する結合相手として使用される、方法を開示する。本発明は更に、該風疹E1抗原の少なくとも1つを含有する、抗風疹抗体の検出のための診断試験および試薬キットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】Grosら(1997, Virology 230, 179-186)から適合化された膜結合風疹E1タンパク質のトポロジースキームを示す。24個のシステイン残基が、Grosらに従い連続的に番号付けされている。それらは、黒色の十字形記号を伴う白色の円として示されている。成熟ウイルスE1の3つのN-グリコシル化部位は黒色で示されており、Yを付けて表示されている。Grosらにより帰属されたジスルフィド対形成は、介在配列領域を外へ環化する隣接システインにより示される。E1の可溶性N断片は薄灰色の円で示されており、E1の可溶性C断片は灰色の円で示されている。アミノ酸143-162の強力に凝集を促進する領域は濃灰色の円で示されており、中等度に凝集を促進する領域である134-142および163-168は灰色の円で示されている。推定膜隣接ヘリカル領域438-452はヘリックス状配置の灰色の円として示されている。
【図2】ルベラ・テリエン(Rubella Therien)株(Dominguezら, 1990, Virology 177, 225-238)からのE1エンベロープタンパク質のアミノ酸配列を示す。110kDaの前駆体ポリペプチドのプロセシングの後、成熟E1は481残基を含む。推定膜貫通セグメント453-468(灰色の背景上の太字)はE1エクトドメイン(1-452)をウイルス表面に繋ぎ止める。隣接推定ヘリックスセグメント438-452はイタリック体で示されている。E1内の24個のシステイン残基は太字のCで示されており、Grosら(前掲)に従い連続的に番号付けされている。E1の可溶性N-およびC-断片内の重要なジスルフィド結合は枠で囲まれている。N断片1-133(薄灰色)およびC断片201-432(濃灰色)は縦列SlyD*との融合体として大腸菌(E. coli)内で発現され、封入体からリフォールディングされて、可溶性E1抗原を与えた。
【図3】種々の風疹E1抗原がヒト血清中の抗風疹免疫グロブリンを特異的に検出する能力に関する、該風疹E1抗原の評価を示す。実施例6に記載されているとおりにElecsys(登録商標)2010分析装置を使用することにより、イムノアッセイを行った。7つの風疹陰性サンプルに関して得られた平均値に対して相対シグナルが正規化されている。風疹陽性血清はBavarian Red Cross(ドイツ国)から購入し、風疹陰性対照はTrina International Bioreactives AG(スイス国)から購入した。全てのE1変異体は可溶性SlyD-SlyD融合タンパク質であり、それらのそれぞれのジスルフィド結合の組合せが括弧内に示されている(E1分子内のシステイン残基の連続的番号付け)。陽性として分類された全ての血清はそれで正しいと確認された。
【図4】ヒト血清中の風疹ウイルスに対する抗体を検出するために設計されたイムノアッセイ設定の更なる実験結果を示す。実施例6に記載されているとおりにElecsys(登録商標)2010分析装置を使用することにより、イムノアッセイを行った。7つの風疹陰性サンプルに関して得られた平均値に対して相対シグナルが正規化されている。風疹陽性血清はBavarian Red Cross(ドイツ国)から購入し、風疹陰性対照はTrina International Bioreactives AG(スイス国)から購入した。全てのE1変異体は可溶性SlyD-SlyD融合タンパク質であり、それらのそれぞれのジスルフィド結合の組合せが括弧内に示されている(E1分子内のシステイン残基の連続的番号付け)。陽性として分類された全ての血清はそれで正しいと確認された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、アミノ酸169-432からのE1ポリペプチドセグメントを含み2つのジスルフィド架橋を含有する、可溶性かつ免疫反応性(すなわち、抗原性)の風疹E1断片に関する。
【0021】
本発明の風疹E1抗原はアミノ酸201-432を含み、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメントならびに該分子の中央部の少なくともアミノ酸143-164のセグメントを欠くことにより特徴づけられる。すなわち、特許請求される風疹E1抗原は、成熟または天然様のフォールディングした風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、2つのジスルフィド架橋を含有し、ここで、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235(C13-C14)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352(C17-C18)の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235(C13-C14)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401(C19-C20)の間で形成されている。
【0022】
さらに、本発明の風疹E1抗原はE1アミノ酸169-432を含み、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメントならびに該分子の中央部の少なくともアミノ酸143-164のセグメントを欠くことによっても特徴づけられる。すなわち、特許請求される風疹E1抗原は、成熟または天然様のフォールディングした風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、2つのジスルフィド架橋を含有し、ここで、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185(C11-C12)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235(C13-C14)の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185(C11-C12)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352(C17-C18)の間で形成されており、または
c)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185(C11-C12)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401(C19-C20)の間で形成されている。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態は、アミノ酸169-432を含み、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメントならびに該分子の中央部の少なくともアミノ酸143-164のセグメントを欠くことにより特徴づけられる風疹E1抗原である。すなわち、特許請求される風疹E1抗原は、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、Cys 176およびCys 185の間でジスルフィド架橋が形成されている。
【0024】
前記のジスルフィド架橋の番号付けは図1を参照したものであり、システイン残基C11-C12(Cys 176-Cys 185)、C13-C14(Cys 225-Cys 235)、C17-C18(Cys 349-Cys 352)およびC19-C20(Cys 368-Cys 401)に対応する。したがって、システイン残基の連続的番号付けによれば、2つのジスルフィド架橋を含有する好ましい風疹E1抗原はジスルフィド結合の組合せC13-C14およびC17-C18、またはC13-C14およびC19-C20、またはC13-C14およびC11-C12、またはC11-C12およびC17-C18、またはC11-C12およびC19-C20を含む。
【0025】
好ましい風疹E1抗原はアミノ酸201から432まで(201-432)のE1ポリペプチド断片を含み、ジスルフィド架橋C13-C14およびC17-C18、すなわち、ジスルフィド架橋Cys 225-Cys 235およびCys 349-Cys 352を含有する。もう1つの好ましい風疹E1抗原は、E1アミノ酸配列169-432を含むE1ポリペプチド断片において、同じジスルフィドの組合せを含有する。
【0026】
好ましくは、本発明の風疹E1抗原は更に、それがC末端において、アミノ酸残基438-452に局在化されている推定アルファ-ヘリックス領域(Grosら,1997, Virology 230, 179-186)を欠くことにより特徴づけられる。
【0027】
本発明においては、風疹E1抗原は、好ましくは、2つのジスルフィド架橋の組合せを含有する。これは1つの風疹E1抗原内で2つ以下のジスルフィド架橋が形成されていることを意味する。風疹E1抗原内の限定されたジスルフィド結合の組合せが確保されるためには、所望のジスルフィド結合に関与しない成熟E1の全システイン残基が、サイズおよび構造においてシステインに類似した別のアミノ酸により置換される。好ましくは、これらの望ましくないシステイン残基はアラニンまたはセリンにより置換される。結果として、置換されたアミノ酸残基は不完全なジスルフィド架橋を形成することも、また、ジスルフィドシャフリングのような有害な副反応に関与することもない。所望の対形成システインペアはin vitroリフォールディング過程中に接近して配置されると考えられ、それにより、それらは適切なジスルフィド結合を容易に形成して、酸化還元電位が上昇するやいなや、予め形成されたエピトープを安定化しうる。適切なジスルフィド架橋を形成することにより、成熟風疹E1抗原の天然様三次元フォールド(すなわち、天然コンホメーションまたは構造)が局所限定領域において実質的に復元され、それにより、抗風疹抗体が本発明の風疹E1抗原変異体を認識し、それに結合しうる。例えば、Cys 225およびCys 235(C13-C14)の間で第1ジスルフィド架橋を、そしてCys 349およびCys 352(C17-C18)の間で第2ジスルフィド架橋を形成すると予想される風疹E1(201-432)抗原は、225、235、349および352位にシステイン残基を含有する。しかし、242(C15)、287(C16)、368(C19)および401(C20)位におけるそのシステイン残基は、アラニン、セリン、またはチオール部分を欠く他のアミノ酸残基に変換される。置換アミノ酸残基は立体的および化学的要件に従い選択される。すなわち、一方においては、それらは風疹E1の局所的および全体的構造に適合すべきであり、他方においては、それらは、ミスフォールディングした不完全なタンパク質種を与える混合ジスルフィドを形成することにより適切なジスルフィド結合を妨害するものであってはならない。
【0028】
本発明においては、ジスルフィド架橋なる語は、酸化されて共有ジスルフィド結合を形成しうるチオール部分を有する、タンパク質の三次元構造において接近した2つのシステイン残基に関するものである。ジスルフィド結合形成の速度は、それらの2つのシステイン残基の接近性(これは、チオール/ジスルフィド交換に要求される距離の範囲内にそれらの硫黄原子が来る確率として定義される)に左右される。ジスルフィド架橋はジスルフィド結合(同義語はそれぞれSS結合およびSS架橋である)とも称され、共有的三次接触を構成し、通常、フォールディングしたコンホメーションの安定化に寄与する。これは、アンフォールディングしたポリペプチド鎖のコンホメーション的柔軟性の制限により、もたらされる。すなわち、タンパク質の安定性へのSS結合の寄与は、性質上、エンタルピー的ではなくエントロピー的である。ジスルフィド結合の形成は酸化的環境を要する。したがって、細胞内タンパク質はジスルフィド架橋をほとんど含有しない。なぜなら、細菌細胞質または真核生物サイトゾルのような細胞内区画は本質的に還元的だからである。しかし、HIV-1およびHIV-2からのそれぞれgp41およびgp36エクトドメインのような分泌または輸送されたタンパク質ならびに風疹エンベロープタンパク質E1およびE2においては、ジスルフィド架橋が頻繁に生じる。
【0029】
通常、ジスルフィド結合はタンパク質のコンホメーションを安定化する。すなわち、タンパク質において、それらは、天然様フォールドを固定する役割を果たす。これは、コンホメーション的および酸化的リフォールディングの脱共役に基づく逐次的リフォールディング技術を可能にする。コンホメーション的リフォールディングは、天然様フォールドをとるような、生理的バッファー条件(=リフォールディング条件)に移した際の無秩序なアンフォールディングしたポリペプチド鎖の再構成を意味する。この天然様フォールドにおいては、対形成するシステインペアは、通常、それらがジスルフィド結合を形成して既存天然様コンホメーションを安定化しうるよう、接近して適当な配向で配置される。また、三次元フォールドが局所的または全体的に安定化されるという結果を伴うジスルフィド結合の形成は、「酸化的リフォールディング」と称される。本発明においては、適切なジスルフィド結合を限定的に導入するために、コンホメーション的および酸化的リフォールディングの脱共役を用いる。まず、種々のE1抗原変異体のin vitroコンホメーション的リフォールディングを還元条件下で行う。ついで、それぞれの還元剤を除去し、酸化還元電位を上昇させて、有利(すなわち、適切)なジスルフィドの自発的形成を誘導することにより、酸化的リフォールディングを行う。好ましくは、このリフォールディング過程は、凝集反応を避けるために、低い有効タンパク質濃度により特徴づけられる条件下で行う。リフォールディング中の低い有効タンパク質濃度はそれぞれの標的タンパク質の収率を増加させることが十分に確認されている。in vitroでのタンパク質リフォールディングの十分に確立された技術として、いわゆる、マトリックス共役(matrix-coupled)リフォールディングが挙げられる。アンフォールディングしたタンパク質分子の、固相への固定化、および該マトリックス結合タンパク質のリフォールディングは、低い有効濃度を保証する。なぜなら、該タンパク質分子は孤立(無限希釈)しており、隣接タンパク質分子と相互作用し得ないからである。したがって、疎水性リフォールディング中間体の凝集のような望ましくない有害な副反応が効果的に抑制される。
【0030】
本発明の風疹E1抗原は、それらのNもしくはC末端または両末端に1以上の追加的アミノ酸を含有しうる。追加的アミノ酸が付加される場合には、これらの追加的アミノ酸が該抗原の抗原性を弱めないこと、すなわち、それらが例えば該抗原の全体としての溶解性を低下させることによりイムノアッセイにおける該抗原の使用を妨げないことが重要である。サンプル中の抗風疹抗体により認識され結合される該抗原の能力が維持される必要がある。
【0031】
EP-A-1780282によれば、抗風疹抗体の検出のためのイムノアッセイにおける使用に適した組換え的に発現される可溶性風疹E1エンベロープ抗原が産生されうることが示されうる。これらの抗原は、少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメントならびにE1の中央部分における少なくともアミノ酸143-164のセグメントを欠くことにより特徴づけられる。これらの抗原は、少なくとも、ジスルフィド架橋Cys 349-Cys 352およびCys 368-Cys 401(C17-18およびC19-20)および場合によってはCys 225-Cys 235(C13-C14)にわたる領域を含有し、このことは、第3のジスルフィド架橋でさえも、イムノアッセイにおいて使用する適当な抗原を得るのに有利でありうることを示している。
【0032】
驚くべきことに、アミノ酸201-432またはアミノ酸169-432を含む他の可溶性抗原風疹E1変異体が、膜貫通領域およびC末端アンカーセグメント、好ましくは、アミノ酸残基453-481の欠失により得られることが判明した。本発明においては、風疹E1抗原は、2つのジスルフィド結合を含有する可溶性断片を含む。好ましくは、抗E1免疫グロブリンにより認識され結合されるのに好適であり従って抗E1免疫グロブリンの検出に好適である抗原コンホメーションを安定化するために、該抗原内で実質的に2つのジスルフィド結合が形成される。2つのジスルフィド架橋を含有するE1セグメントは、ジスルフィド結合Cys 225-Cys 235からCys 349-Cys 352(C13-C14からC17-C18)まで、またはジスルフィド結合Cys 225-Cys 235から368-Cys 401(C13-C14からC19-C20)まで、またはジスルフィド結合Cys 176 -Cys 185からCys 225-Cys 235(C11-C12からC13-C14)まで、またはジスルフィド結合Cys 176-Cys 185からCys 349-Cys 352(C11-C12からC13-C14)まで、またはジスルフィド結合Cys 176-Cys 185からCys 368-Cys 401(C11-C12からC19-C20)までに及びうる。
【0033】
最も好ましくは、アミノ酸453-約468の膜貫通領域も欠失している。風疹E1の中央部分においては、少なくともアミノ酸残基143-164も欠失している。
【0034】
これらの新規風疹E1抗原が、界面活性剤の添加を伴わない生理的バッファー条件下、例えばリン酸バッファー系において外界温度で、可溶性であり安定であることを示した。これらは血清学的アッセイにおいて高度に免疫反応性であり(すなわち、それらは抗原性であり)、ヒト血清中の抗風疹抗体の検出に好適である。
【0035】
本発明においては、該風疹E1抗原の変異体も含まれる。この文脈における「変異体」なる語は、該タンパク質に実質的に類似したタンパク質を意味する。特に、変異体は、最も一般的なタンパク質アイソフォームのアミノ酸配列と比べてアミノ酸の置換、欠失または挿入を示すアイソフォームでありうる。好ましくは、そのような実質的に類似したタンパク質は、該タンパク質の最も一般的なアイソフォームに対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有する。また、「変異体」なる語は、翻訳後修飾されたタンパク質、例えばグリコシル化タンパク質またはリン酸化タンパク質を意味する。変異体はまた、例えば、該タンパク質または抗原への標識または担体部分の共有結合または非共有結合により修飾されたタンパク質または抗原である。可能な標識、レポーター基またはシグナリング部分としては、放射能、蛍光、化学発光、電気化学発光、酵素または他のもの、例えばジゴキシゲニンが挙げられる。これらの標識は当業者に公知である。他の標識変異体としては、タンパク質に結合した例えばビオチンまたはビオチン誘導体のような固相結合基が挙げられ、標識の詳細な説明は本明細書中、後記に開示する。
【0036】
「風疹E1抗原」は、免疫学的アッセイにおける使用に適した風疹E1アミノ酸配列を含有するタンパク質である。これは、該抗原が、サンプル中に存在する風疹に特異的な抗体、例えば抗風疹E1抗体に結合し、または該抗体により認識され結合されることを意味する。
【0037】
本発明のもう1つの態様は少なくとも2つの異なる風疹E1抗原の組成物に関する。「風疹E1抗原」なる語は、2以上の風疹E1抗原の組合せを含有するそのような組成物を含む。特に、本発明の好ましい実施形態は、アミノ酸201-432またはアミノ酸169-432をそれぞれが含む少なくとも2つの風疹E1抗原を含む組成物である。ただし、該抗原のそれぞれは、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、ここで、そのような少なくとも2つの風疹E1抗原のそれぞれは、異なる組合せの2つのジスルフィド架橋を含有する。
【0038】
少なくとも2つの異なる風疹E1抗原の好ましい組成物は、Cys 176およびCys 185(C11-C12)の間のジスルフィド架橋ならびにCys 225およびCys 235(C13-C14)の間の第2のジスルフィド架橋を含有する抗原を含む。この組成物における他方の抗原は、好ましくは、Cys 225およびCys 235(C13-C14)の間のジスルフィド架橋ならびにCys 349およびCys 352(C17-C18)の間の第2のジスルフィド架橋を含有する。場合によっては、この組成物中に、他の抗原、好ましくは、Cys 349およびCys 352(C17-C18)の間のジスルフィド架橋ならびにCys 368およびCys 401(C19-C20)の間のジスルフィド架橋を含有する第3の風疹E1抗原も含まれうる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態においては、該風疹E1抗原は組換え融合タンパク質として製造される。本発明において用いる「融合タンパク質」なる語は、本発明の風疹E1タンパク質に対応する少なくとも1つのタンパク質部分と、融合相手の役割を果たす別のタンパク質に由来する少なくとも1つタンパク質部分とを含むタンパク質を意味する。
【0040】
タンパク質のフォールディングおよび精製は、しばしば、それらを、自ら活発にフォールディングするパートナータンパク質またはタグと共有結合により融合させることにより促進される。これらの融合モジュールには、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、チオレドキシン、NusA、DsbA、およびFkpAのようなシャペロンが含まれる。これらの融合モジュールの使用は、通常、過剰生産性大腸菌(E. coli)宿主のサイトゾルまたはペリプラズムにおけるそれぞれの標的タンパク質の可溶性発現(すなわち、天然様フォールディング)の向上を目的としている。好ましくは、シャペロン、より好ましくは、ペプチジルプロリルイソメラーゼクラスのシャペロン、最も好ましくは、ペプチジルプロリルイソメラーゼのFKBPファミリーからのシャペロンが、該風疹E1融合ポリペプチドにおける融合タンパク質として使用される。
【0041】
シャペロンは、古典的な「フォールディング補助体(folding helper)」として公知であり、他のタンパク質のフォールディングおよび構造的完全性の維持を補助するタンパク質である。それらは、in vivoおよびin vitroの両方においてタンパク質のフォールディングを促進する能力を有する。一般に、フォールディング補助体はフォールディング触媒およびシャペロンに細分される。フォールディング触媒は、その触媒機能により、タンパク質のフォールディングにおける律速段階を加速させる。シャペロンは、変性した又は部分的に変性したタンパク質に結合して、タンパク質の再生または分解を助けることが知られている。したがって、フォールディング触媒とは異なり、シャペロンは単なる結合機能を発揮するに過ぎない。触媒およびシャペロンの具体例はWO 03/000877に詳細に記載されている。
【0042】
現在までに、いくつかの異なるシャペロンファミリーが公知である。すべてのこれらのシャペロンは、アンフォールディングした又は部分的にアンフォールディングしたタンパク質に結合するそれらの能力により特徴づけられ、タンパク質の適切なフォールディングまたは変性もしくは凝集タンパク質の分解および除去に関連した生理的機能を有する。さらに、シャペロンの発現の増強はタンパク質の組換え産生を促進しうることが示されている。また、標的タンパク質配列とシャペロン配列との両方をコードする遺伝子構築物を使用することにより、タンパク質の産生の増加が達成されうることが公知である。バイオテクノロジーにおける手段としてのシャペロンの全てのこれらの適用において、大きな障害は、所定の標的分子のための適当な機能性シャペロンを見出すことである。多数のシャペロンは狭い基質特異性を示し、エネルギー依存的に機能するため、所定の標的タンパク質に対する適当な(すなわち、可溶化)結合相手の探索は決して容易ではない。簡潔に説明すると、天然様にフォールディングするタンパク質の産生収率の増加のためにシャペロンを使用するアプローチは、主として、シャペロンタンパク質の結合機能およびそれによる可溶化機能に基づくものである。シャペロンと標的タンパク質とを含む融合タンパク質の組換え産生の後、通常、シャペロン部分を、生じた融合ポリペプチドから切り離して、所望のタンパク質を純粋な形態で得る。
【0043】
本発明においては、融合モジュールおよび風疹E1抗原を含有する組換え産生融合タンパク質は封入体から可溶性かつ機能性形態で容易に得られうる。さらに、開示されている風疹E1タンパク質は融合タンパク質の一部であり、それは生理的バッファー条件において高い溶解度を示し、天然様の免疫反応性(すなわち、抗原性)構造またはコンホメーションで容易に得られうる。
【0044】
本発明の風疹E1融合タンパク質は、取扱いが非常に容易である。言い換えると、確固たる(robust)簡便なリフォールディングプロトコールに従い高収率でそのような融合タンパク質を再生させることが容易である。変性剤でアンフォールディングされた非構造性ポリペプチドは種々の方法でリフォールディングされて、すべて、抗原性である熱力学的に安定かつ可溶性の天然様形態を与えうる。リフォールディングは、透析および急速希釈のどちらによっても並びに再生サイズ排除クロマトグラフィーまたはマトリックス介助リフォールディングによっても、高収率で達成される。好ましくは、変性中に非常に低い有効タンパク質濃度を可能にするリフォールディング技術、例えば再生サイズ排除クロマトグラフィーまたはマトリックス介助リフォールディングが用いられる。リフォールディング過程中にタンパク質濃度が低く維持される場合には、透析または急速希釈のようなリフォールディング技術も同様に上手くいく。
【0045】
好ましくは、本発明の可溶性タンパク質は、風疹E1抗原をペプチジル-プロピル-イソメラーゼのクラスのシャペロンに融合させることにより製造される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、風疹E1抗原とペプチジル-プロピル-イソメラーゼクラスのシャペロンとの、好ましくは、FKBPシャペロンとの、最も好ましくは、SlyDまたはFkpAシャペロンとの融合体に関する。
【0046】
組換え製造方法とは別に、本発明の風疹E1抗原は化学合成によっても製造可能であり、この場合、該合成は、当技術分野で知られているとおり、均一溶液中または固相中で行われうる。
【0047】
前記の風疹E1抗原は、抗風疹抗体の検出のための具体的なイムノアッセイの要件に従い最適化されうる。例えば、該抗原は一定の単量体またはオリゴマー状態にされうる。オリゴマー形態においては、該抗原は、ヒトサンプル中のIgM抗体の検出のための免疫学的アッセイにおける使用に適している。本発明のE1融合ポリペプチドを、例えば化学的架橋により重合させて、好ましくはIgM抗体により認識され結合される抗原を得ることが可能である。本発明のもう1つの好ましい実施形態においては、風疹タンパク質E1、E2およびコアタンパク質Cから構成される混合重合体が得られうる。風疹E2およびコアタンパク質は、当技術分野でよく知られた免疫優勢風疹抗原である。
【0048】
本発明の風疹E1タンパク質は組換えDNA技術によっても製造されうる。「組換えDNA分子」なる語は、遺伝子工学技術または化学合成による単離ポリヌクレオチド断片の人工的操作により達成される、合体しなければ分離している2つの配列断片の合体により製造された分子を意味する。それを行う場合、所望の機能を有するポリヌクレオチド断片同士を互いに連結させて、所望の機能の組合せを得ることが可能である。
【0049】
適当な宿主細胞内での複製により、大量の該ポリヌクレオチドを製造することが可能である。タンパク質またはその断片をコードする天然または合成DNA断片を、例えばSambrookら(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual)に記載されている原核生物細胞または下等もしくは高等真核生物細胞内への導入およびそのような細胞内での複製が可能な組換えポリヌクレオチド構築物(典型的にはDNA構築物)内に組込む。
【0050】
下等真核生物なる語は、酵母、真菌などのような宿主細胞を意味する。下等真核生物は、一般には(必ずしもそうではないが)単細胞である。「原核生物」なる語は、大腸菌(E. coli)、乳酸菌(Lactobacillus)、乳酸連鎖球菌(Lactococcus)、サルモネラ菌(Salmonella)、連鎖球菌(Streptococcus)、枯草菌(Bacillus subtillis)またはストレプトマイセス(Streptomyces)のような宿主を意味する。これらの宿主も本発明において想定される。好ましい下等真核生物としては、酵母、特に、分裂酵母(Schizosaccharomyces)、酵母(Saccharomyces)、クルイベロマイセス(Kluiveromyces)、ピキア(Pichia)(例えば、Pichia pastoris)、ハンゼヌラ(Hansenula)(例えば、Hansenula polymorpha)、シワニオマイッス(Schwaniomyces)、分裂酵母(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarowia)、ザイゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)などの種が挙げられる。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)およびビール酵母(S. carlsbergensis)は、最もよく使用される酵母宿主であり、簡便な真菌宿主である。「高等真核生物」なる語は、動物、例えば哺乳動物、爬虫類動物、昆虫などに由来する宿主細胞を意味する。現在好ましい高等真核生物宿主細胞は、チャイニーズハムスター(例えば、CHO)、サル(例えば、COSおよびVero細胞)、子ハムスター腎細胞(BHK)、ブタ腎臓(PK15)、ウサギ腎臓13細胞(RK13)、ヒト骨肉腫細胞系143B、ヒト細胞系HeLaおよびヒト肝細胞癌細胞系、例えばHep G2および昆虫細胞系(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda))に由来するものである。宿主細胞は、懸濁またはフラスコ培養、組織培養、器官培養などにおいて供給されうる。
【0051】
本発明のもう1つの主題は、後記のとおりの2つのジスルフィド架橋を含有する領域に及ぶ風疹E1抗原をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子に関する。本発明の好ましい主題は、風疹E1抗原をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、その上流に位置する、ペプチジル-プロピル-イソメラーゼクラスのシャペロン、好ましくはFKBPシャペロンをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列とを含む、風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子に関する。本発明のこの組換えDNA分子は、アミノ酸201-432を含む風疹E1抗原をコードし、ここで、該抗原は、成熟風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、ここで、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401の間で形成されている。
【0052】
また、風疹E1抗原をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、その上流に位置する、ペプチジル-プロピル-イソメラーゼクラスのシャペロン、好ましくはFKBPシャペロンをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列とを含む、風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子も想定される。この組換えDNA分子においては、風疹E1抗原をコードする核酸配列はアミノ酸169-432を含み、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、ここで、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352の間で形成されており、または
c)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401の間で形成されている。
【0053】
プロリルイソメラーゼは、種々の機能の種々のサブユニットまたはモジュール(例えば、触媒活性を示すモジュール、およびシャペロンまたは結合活性を示すモジュール)を含みうる。FKBPファミリーのそのようなモジュラーメンバーとしては、FkpA、SlyDおよび誘発因子(trigger factor)が挙げられる。好ましい実施形態においては、本発明は、FKBPシャペロンをコードする核酸が、FkpA、SlyDおよび誘発因子よりなる群から選ばれることにより特徴づけられる組換えDNA分子に関する。
【0054】
分子シャペロンの完全な配列を常に使用する必要はない。要求される構造、機能および安定性を尚も有する、シャペロンの機能性断片(いわゆる、モジュール)も使用されうる(WO 98/13496を参照されたい)。
【0055】
本発明において発現手段として使用されるFkpAはそのN末端シグナル配列を欠く。FkpAの近縁体、すなわちSlyDは、触媒機能およびシャペロン機能をもたらす構造化N末端ドメインと、例外的にヒスチジンおよびシステイン残基に富む、大部分が非構造化されたC末端とよりなる。WO 03/000878は、アミノ酸1-165を含むSlyDのC末端切断型変異体が標的タンパク質の効率的発現および過剰産生に対して例外的に正の効果を及ぼすことを開示している。野生型SlyD(これは、おそらくは非構造化された環境における6つの反応性システイン残基を含有する)の場合とは異なり、WO 03/000878に開示されている末端切断型SlyD変異体(1-165*)においては、誤って結合した、不完全な及び凝集しやすいタンパク質種を与える有害なジスルフィドシャフリングの危険性が成功裏に排除されている。末端切断型SlyD(1-165*)および前記の2つのジスルフィド架橋に及ぶ領域を有する風疹E1抗原を含む組換えDNA分子は本発明の好ましい実施形態の1つである。もう1つの好ましい実施形態は縦列SlyDシャペロンの使用である。好ましくは、2つの縦列SlyD(1-165*)シャペロンを風疹E1のN末端に融合させる(実施例1も参照されたい)。
【0056】
本発明の風疹E1抗原を設計する好ましい態様においては、ペリプラズム性でありうる融合相手のシグナルペプチドは含まれない。本発明の発現系は、サイトゾル発現系として働く場合に最も有利であることが判明している。このサイトゾル発現が効率的になればなるほど、不溶性および不活性封入体内の標的融合ポリペプチドの蓄積が不可避となる。通常、発現および過剰産生方法は、封入体形成を妨げることによる細菌サイトゾルにおける可溶性産生を目的としている。本発明のアプローチは、大量のサイトゾル過剰産生が有利であり、それに続き天然様にフォールディングした(すなわち十分に構造化された天然様にフォールディングした)抗原性タンパク質の高収率産生を促進する再生プロトコールが行われる点において、これと全く異なる。大量の風疹E1抗原が産生され、封入体内で蓄積されるが、本発明の組換え風疹E1タンパク質は非常に取り扱い易く、例えば、可溶化、および機能性(すなわち、抗原性)コンホメーションへのリフォールディングが容易である。
【0057】
好ましくは、本発明の組換えDNA分子は更に、それが、風疹E1抗原をコードする配列とFKBPシャペロンをコードする配列との間に位置する10〜100アミノ酸のペプチド性リンカーをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むことにより特徴づけられる。当業者に理解されるとおり、そのようなリンカーポリペプチドは、特に長さ、柔軟性、電荷および親水性の点で、意図される用途に最も適したものとして設計される。さらに、リンカーをコードするそのようなDNA配列は発現タンパク質のタンパク質分解切断部位を含みうる。そのようなDNA配列はポリリンカーとしても働きうる。すなわち、それは、風疹E1抗原をコードするDNA断片とシャペロンドメインをコードするDNA断片との融合を促進する複数のDNA制限部位を与えうる。得られた融合タンパク質の発現および精製ならびに可溶性かつ免疫反応性コンホメーションへの後続のリフォールディングの後、該ポリリンカーは融合タンパク質複合体からの風疹E1タンパク質の遊離をも促進しうる。
【0058】
本発明の可溶性風疹E1抗原およびこのタンパク質の変異体は該融合構築物から正確に切り出されて、アミノ酸201-432または169-432を含み少なくともC末端膜貫通領域およびアンカーセグメント(アミノ酸453-481)ならびに該分子の中央部における少なくともアミノ酸143-164のセグメントを欠くことにより特徴づけられる唯一の風疹E1抗原を与えうる。該抗原は更に、2つのジスルフィド結合にわたる領域、すなわち、ジスルフィド結合Cys 225-Cys 235からCys 349-Cys 352までの領域、またはジスルフィド結合Cys 225-Cys 235からCys 368-Cys 401までの領域、またはジスルフィド結合Cys 176-Cys 186からCys 225-Cys 235までの領域、またはジスルフィド結合Cys 176-Cys 185からCys 349-Cys 352までの領域、またはジスルフィド結合Cys 176-Cys 185からCys 368-Cys 401までの領域を含有する。
【0059】
本発明のもう1つの主題は、FKBPシャペロンをコードする単一のヌクレオチド配列と風疹E1タンパク質をコードする単一のヌクレオチド配列とを含む組換えDNAに関する。
【0060】
少なくとも2つのFKBPシャペロンドメインと1つの標的タンパク質または標的抗原ドメインとを含む融合タンパク質も非常に有利である。もう1つの好ましい実施形態においては、本発明の組換えDNA分子は、FKBPシャペロンをコードする2つの配列と風疹E1タンパク質をコードする1つの配列とを含む。2つのFKBPシャペロンドメインの融合は該風疹E1タンパク質に溶解度の改善をもたらす。
【0061】
「少なくとも2つ」なる表現は、FKBPシャペロンドメインをコードする2以上のヌクレオチド配列が、本発明の範囲から逸脱するこなく組換えDNA分子の構築において使用されうることを示すために用いられる。好ましくは、風疹E1シャペロン融合タンパク質は、シャペロンをコードする少なくとも2つ且つ最大で4つの配列を含有する。
【0062】
該DNA分子は、標的タンパク質の上流にFKBPシャペロンをコードするDNA配列の両方を含むように設計されうる。あるいは、それらの2つのFKBPドメインは、標的タンパク質を挟むように配置されうる。風疹E1抗原をコードする配列の上流に両方のFKBPドメインを含む組換えDNA分子は、本発明の好ましい実施形態の1つである。発現系の遺伝的安定性を増強するべく、および宿主細胞内の相同組換えを妨げるべく、標的分子に融合される同一シャペロン部分をコードするために、種々のヌクレオチド配列を用いることができる。簡潔に説明すると、該タンパク質構造(例えば、縦列シャペロン融合体または反復リンカーセグメントなど)における全ての反復要素のコード配列を変化させるべきであり、その際それぞれの宿主系のコドン使用頻度を考慮すべきである。これは、タンパク質技術の分野の当業者によく知られた遺伝暗号の縮重を利用することにより容易に達成される。
【0063】
本発明のもう1つの実施形態においては、該組換えDNA分子は、ペプチジルプロリルイソメラーゼシャペロンをコードする一方の配列が風疹E1抗原の上流に位置し、ペプチジルプロリルイソメラーゼシャペロンをコードする他方の配列が、風疹E1抗原をコードする配列の下流に位置することにより特徴づけられる。
【0064】
2つのシャペロンドメインおよび風疹E1抗原をコードする配列を含むDNA構築物は、好ましくは、これらのドメインの間に10〜100アミノ酸の2つのリンカーペプチドをも含有する。組織的クローニングを可能にするために、これらの2つのリンカーペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、好ましくは、異なる。ヌクレオチド配列におけるこの相違は、リンカーペプチドのアミノ酸配列における相違を必ずしももたらさない。
【0065】
シャペロンの1つ又は全てを本発明の融合タンパク質から遊離させたい場合には、該リンカーペプチドを、タンパク質分解切断部位を含むように構築する。前記のとおり、該タンパク質分解切断部位はポリリンカーとしても働きうる。すなわち、それは、風疹E1タンパク質をコードするDNA断片とシャペロンドメインをコードするDNA断片との融合を促進する複数のDNA制限部位を与えうる。風疹E1タンパク質をコードする少なくとも1つのポリペプチド配列と、その上流の、FkpA、SlyDおよび誘発因子よりなる群から選ばれるFKBPシャペロンをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、さらに、タンパク質分解切断部位を含むペプチドリンカーをコードする核酸配列とを含む、融合タンパク質をコードする組換えDNA分子は、本発明のもう1つの実施形態である。
【0066】
本発明のもう1つの態様は、機能しうる形で連結された本発明の組換えDNA分子である。すなわち、風疹E1タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列と、その上流の、ペプチジルプロリルイソメラーゼシャペロン、好ましくはFKBPシャペロン(該FKBPシャペロンはFkpA、SlyDおよび誘発因子から選ばれる)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列とを含む、融合タンパク質をコードする組換えDNA分子は、非常に有利であることを示した。
【0067】
本発明の組換えDNAを含む発現ベクターは、無細胞翻訳系において融合タンパク質を発現させるために使用でき、あるいは宿主細胞を形質転換するために使用することができる。好ましい実施形態においては、本発明は、本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【0068】
発現およびクローニングベクターは、選択マーカー、すなわち該ベクターで形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする遺伝子を有することが多いが、かかるマーカー遺伝子は、宿主細胞内に共に導入される別のポリヌクレオチド配列上に含有されることも可能である。マーカー遺伝子を発現する宿主細胞のみが選択条件下で生存し成長することになる。典型的な選択遺伝子には、(a)抗生物質または他の毒性物質、例えばアンピシリン、テトラサイクリンなどに対する耐性を付与するタンパク質をコードするもの、(b)栄養要求性欠損を相補するタンパク質をコードするもの、あるいは(c)複合培地からは得られない決定的に重要な栄養素を供給するタンパク質をコードするものが含まれるが、これらに限定されるものではない。適当な選択マーカーは宿主細胞に応じて選択され、種々の宿主のための適当なマーカーが当技術分野で公知である。
【0069】
対象の風疹E1タンパク質を含有するベクターは、当技術分野で公知の任意の方法により宿主細胞内に導入されうる。これらの方法は細胞宿主の型によって様々であり、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、他の物質を使用するトランスフェクション、およびウイルスによる感染を包含するが、これらに限定されるものではない。大量の本発明の風疹E1タンパク質は、和合性宿主内でベクターまたは他の発現ビヒクル中の本発明のポリペプチドを発現させることにより製造されうる。
【0070】
本発明のベクターの構築は通常の連結技術を用いる。単離されたプラスミドまたはDNA断片を切断し、操作し、必要なプラスミドを得るのに望ましい形態で再連結する。所望により、構築されたプラスミド内の配列が正しいことを確認するための分析を公知様態で行う。発現ベクターを構築し、in vitro転写産物を調製し、宿主細胞内にDNAを導入し、発現および機能の評価のための分析を行うための適当な方法は、当業者に公知である。遺伝子の存在、増幅および/または発現は、例えば、本発明で提供される配列に基づきうる適当に標識されたプローブを使用する、通常のサザンブロット法、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロット法、ドットブロット法(DNAまたはRNA分析)、またはin situハイブリダイゼーションにより、サンプル中で直接的に測定されうる。当業者は、所望によりこれらの方法をどのように改変しうるかを容易に予想するであろう。
【0071】
本発明はまた、該発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【0072】
また、好ましくは、E1抗原とペプチジルプロリルイソメラーゼクラスシャペロンとを含有する融合タンパク質としての、可溶性かつ免疫反応性風疹E1抗原の製造方法が想定される。好ましくは、該ペプチジルプロリルイソメラーゼはFKBPシャペロンであり、より好ましくは、SlyD、FkpAおよび誘発因子よりなる群から選ばれるFKBPシャペロンである。この方法は、
a)風疹E1抗原とペプチジルプロリルイソメラーゼクラスシャペロンまたはシャペロニング結合活性を尚も有するその機能性断片とを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含有する前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養し、
b)該融合タンパク質をコードする遺伝子を発現させ、
c)該融合タンパク質を精製し、
d)可溶性かつ免疫反応性(すなわち、抗原性)コンホメーションへリフォールディングする工程を含む。
【0073】
本発明は、単離されたヒトサンプルにおける抗風疹抗体の検出のための方法を開示し、この場合、該風疹E1抗原を該抗体に対する結合相手として使用する。したがって、本発明は、
a)体液サンプルを本発明の風疹E1抗原と混合することにより免疫反応混合物を形成させ、
b)該体液サンプル中に存在する該風疹E1抗原に対する抗体が該風疹E1抗原と免疫反応して免疫反応産物を形成するのを可能にするのに十分な時間にわたり、免疫反応混合物を維持し、
c)該免疫反応産物のいずれかの存在を検出することを含む、単離されたサンプルにおける風疹に特異的な抗体の検出方法に関する。
【0074】
本発明のもう1つの主題は、サンプル中のサブクラスIgGまたはIgMまたはそれらの両方の抗風疹抗体の検出、測定および定量のための方法であり、この場合、該風疹E1抗原を該抗体に対する捕捉試薬または結合相手またはそれらの両方として使用する。当業者に公知のすべての生物学的液体が、抗風疹抗体の検出のためのサンプルとして使用されうる。好ましいサンプルは、全血、血清、血漿、尿、唾液などの体液である。
【0075】
診断方法に関しては、本発明の可溶性風疹E1抗原-融合タンパク質、より好ましくは、可溶性風疹E1抗原-シャペロン融合タンパク質の明らかな利点は、例えば、生理的バッファー条件下の該風疹E1タンパク質の可溶性および安定性の増強、ならびにそれに伴う診断感度の一貫性の増加、接近可能な天然様コンホメーションエピトープの数の増加、適切にフォールディングした風疹E1抗原を容易に標識する可能性、ならびに製造工程におけるロット間の一貫性である。
【0076】
特定の免疫グロブリンクラスの特異的抗体の検出は、特異的抗原が固定化されている固相に該免疫グロブリンを捕捉することにより行われうる。ついで該捕捉免疫グロブリンを、あるクラスのヒト免疫グロブリンに特異的な標識抗体により検出する。しかし、この間接的アッセイ形態は、検出前に非特異的免疫グロブリンを除去する洗浄工程を可能にする2工程形態によってのみ行われうる。自動イムノアッセイ分析装置においてしばしば実施される1工程アッセイ形態は二重抗原サンドイッチの直接アッセイ形態を要する。すなわち、該特異的抗体は、固相に固定化された又は固相への固定化を媒介する第1抗原に、および標識を含有する第2抗原に結合する免疫複合体を形成して、該特異的結合抗体アナライトの定量的または定性的検出を可能にする。1工程二重抗原サンドイッチ形態における同じ特異性のIgM抗体の存在下での特異的IgG抗体の選択的測定は、例えば欧州特許出願EP 0 944 838に記載されているとおり、可溶性単量体または既定オリゴマー抗原の使用を厳格に要する。
【0077】
よく知られた標識は、マーカー基またはエフェクター基、例えば固相結合基である。標識された可溶性風疹E1抗原-融合タンパク質、より好ましくは、標識された可溶性風疹E1抗原-シャペロンタンパク質は、本発明のもう1つの好ましい実施形態である。
【0078】
標識基は、任意の公知のシグナリング基、例えば色素、発光標識基、例えば化学発光基、例えばアクリジニウムエステルもしくはジオキセタン、または蛍光色素、例えばフルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニンおよびそれらの誘導体から選ばれうる。シグナリング基またはマーカー基の他の具体例としては、発光性金属錯体、例えばルテニウムまたはユーロピウム錯体、酵素、例えばELISAまたはCEDIA(クローン化酵素ドナーイムノアッセイ(Cloned Enzyme Donor Immunoassay)、例えばEP-A-0 061 888)に使用される酵素、および放射性同位体が挙げられる。
【0079】
エフェクター基は、例えば、バイオアフィン(bioaffine)結合ペアのうちの一方のパートナーを含む。アッセイの実施中に、エフェクター基は、バイオアフィン結合ペアのもう一方のパートナーと特異的に、そして好ましくは非共有結合的に相互作用する。適当な結合ペアの具体例としては、ハプテンまたは抗原/抗体、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸または核酸類似体/相補的核酸、および受容体/リガンド、例えばステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモンが挙げられる。好ましい結合ペアメンバーはハプテン、抗原およびホルモンを含む。特に好ましいのは、ジゴキシンのようなハプテンおよびビオチンならびにその類似体である。
【0080】
好ましくは、風疹E1タンパク質とプロリルペプチジルイソメラーゼシャペロンとを含む可溶性複合体が、抗風疹抗体、すなわち、風疹に特異的な抗体の検出のためのイムノアッセイにおいて使用される。もう1つの好ましい実施形態においては、風疹E1抗原とプロリルペプチジルイソメラーゼシャペロンとを含む標識された可溶性複合体が、風疹に対する抗体の検出のためのイムノアッセイにおいて使用される。最も好ましくは、該標識複合体は、該シャペロンと風疹E1抗原とを含む組換えポリペプチドにおける分子内複合体である。
【0081】
イムノアッセイならびにそのようなアッセイを行うための方法および実用的な適用および手法は当業者によく知られている。該新規可溶性風疹E1抗原-融合タンパク質、より好ましくは、該新規可溶性風疹E1抗原シャペロン融合ポリペプチドは、検出の様式(例えば、放射性同位体アッセイ、酵素イムノアッセイ、電気化学発光アッセイなど)またはアッセイ原理(例えば、試験ストリップアッセイ、サンドイッチアッセイまたは均一系アッセイなど)には無関係に、抗風疹抗体の検出のためのアッセイを改良するために使用されうる。
【0082】
風疹感染の、信頼しうる且つ高感度の検出のためには、体液サンプル中の抗ウイルス抗体を測定することが必須である。本発明の可溶性複合体は生理的バッファー条件における(すなわち、該抗原を可溶性形態で維持する界面活性剤の添加を要することなく)抗風疹抗体の検出を可能にする。抗風疹抗体の検出はそのような複合的な風疹検出系の重要な部分である。したがって、好ましい実施形態においては、本発明は、風疹E1抗原-融合タンパク質の使用、より好ましくは、風疹E1抗原シャペロンタンパク質の使用に基づく抗風疹抗体の検出を含む風疹検出系に関する。
【0083】
当技術分野で公知のとおり、細菌、真菌またはウイルスのような感染因子に対する抗体は、好ましくは、二重抗原サンドイッチ形態(時には、このアッセイ形態は、2つの抗原が抗体アナライトにより架橋されるため、二重抗原架橋形態とも称される)に従うアッセイにより検出される。そのようなアッセイにおいては、所定の抗原の、少なくとも2つの異なる分子に、抗体がその2個(IgG、IgE)、4個(IgA)または10個(IgM)のパラトープで結合する能力が要求され、用いられる。
【0084】
該架橋概念による、体液からの抗体の検出は、多種多様なアッセイ形態で行われうる。単純な形態は、固相への抗原の直接的なコーティング、およびシグナル生成のための、標識された形態の同じ抗原の使用を含む。適当なアッセイ条件下、サンプル中の特異的抗体アナライトは該固相結合抗原と該標識抗原との間で架橋を形成する。したがって、検査中の抗体がサンプル内に存在する場合にのみ、架橋が形成され、シグナルが検出されうる。
【0085】
「固相抗原」および「検出抗原」の基本的構造は、好ましくは同じである。例えば、1個または数個のエピトープを含むタンパク質(すなわち抗原)が、直接的または間接的に固相にコートされて使用されうる。標識またはマーカーに結合した同じ抗原が検出抗原として使用される。また、二重抗原架橋アッセイにおいて、類似しており免疫学的に交差反応性であるが異なる風疹E1抗原を使用することも可能である。そのようなアッセイを行うための必須要件は、関連エピトープが両方の抗原上に存在することである。二重抗原架橋アッセイ形態の多数の変法が存在することは自明である。そのような変法は、例えば、固相への風疹E1抗原の間接的コーティングを含む。好ましくは、特異的結合ペア、最も好ましくは、ビオチン-ストレプトアビジン(または-アビジン)系が、風疹抗原を固相に間接的に固定化するために使用される。一方、そのような系における検出に使用される風疹E1抗原は直接的にはマーカー(例えば、放射性同位体、酵素、蛍光分子など)を担持していないことも可能であり、その代わりに、例えばハプテン(例えばジゴキシン)を担持することにより間接的に検出されうることが可能である。その場合、そのような間接的検出は、例えば、標識された抗ジゴキシン抗体により行われうる。
【0086】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、本発明の第1風疹E1抗原と本発明の第2風疹E1抗原とを含む、二重抗原架橋概念に従うイムノアッセイである。
【0087】
より詳細には、該二重抗原架橋形態に従う抗風疹抗体の測定のためのイムノアッセイは、抗風疹抗体を含有するサンプルを2つの異なる風疹E1抗原(すなわち、第1および第2風疹E1抗原)と共にインキュベートすることにより行われ、この場合、該抗原はそれぞれ該抗風疹抗体に特異的に結合する。第1抗原は固相に直接的または間接的に結合することが可能であり、好ましくは、バイオアフィン結合ペアの一部である例えばビオチンのようなエフェクター基を含有する。第2抗原は標識またはシグナリング部分を含有する。したがって、免疫反応混合物が形成される。第1抗原が固定化されうる固相は、該抗原へのサンプルの添加の前または好ましくは該免疫反応混合物が形成された後に加える。体液サンプル中の風疹E1抗原に対する抗風疹抗体が該風疹E1抗原と免疫反応して免疫反応産物を形成しうるのに十分な時間にわたり、この免疫反応混合物を維持する。後続の分離工程において、該液相を該固相から分離する。最後に、該固相または液相またはそれらの両方において、該免疫反応産物のいずれかの存在を検出する。
【0088】
もう1つの好ましい実施形態においては、本発明は、第1風疹E1抗原-融合タンパク質複合体が捕捉抗原として使用され、第2風疹E1抗原-融合タンパク質複合体が検出抗原として使用されることにより特徴づけられる、二重抗原架橋概念に従うイムノアッセイに関する。
【0089】
本発明において開示されている風疹E1抗原-融合タンパク質複合体、好ましくは、風疹E1抗原-シャペロン複合体は、それを使用しなければ取り扱いが困難な種々のタンパク質(例えば、風疹E1)の可溶性の改善をもたらすだけでなく、有利な様態で二重抗原架橋概念に従うイムノアッセイをも促進する。
【0090】
二重抗原架橋概念に従うかかるイムノアッセイの特に魅力的な特徴は、異なりはするが機能的には同等であるシャペロンを、固相結合抗原との複合体形成のために及び検出抗原との複合体形成のためにそれぞれ、使用することが今や可能になったことである。アッセイのそのような改変は更に、免疫学的交差反応性による非特異的結合の遍在的問題を軽減する。シャペロンに対して反応性であり従って偽陽性シグナルを生成しうるサンプル中の抗体は、それぞれ固相抗原および検出抗原を可溶化するために異なるシャペロンが使用されると直ちに、架橋形成が妨げられるあろう。したがって、本発明のこの態様においては、非特異的結合による陽性シグナルの可能性が著しく減少する。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、第1および第2シャペロン-風疹E1抗原複合体の第1シャペロンと第2シャペロンとが互いに異なることにより特徴づけられる、二重抗原架橋概念に従うイムノアッセイに関する。好ましくは、第1および第2シャペロンは、異なるFKBPシャペロンに由来する。本発明の好ましい実施形態において、一方ではSlyD-E1融合タンパク質が、そして他方ではFkpA-E1融合タンパク質が、二重抗原サンドイッチイムノアッセイにおいて使用される。好ましいFKBPシャペロンは、大腸菌(Escherichia coli)、 梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ペスト菌(Yersinia pestis)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)およびサーモコッカス属種(Thermococcus sp.)に由来する。
【0091】
二重抗原サンドイッチ形態における2つの融合ポリペプチドのシャペロン部分を介した免疫学的交差反応は、明らかに、偽陽性シグナルを生成してイムノアッセイの特異性を損なう。2つの機能的に同等であるが異なるシャペロンの、該架橋形態の両側の融合相手としての使用は、イムノアッセイにおける交差反応性のこの遍在的危険性を軽減しうる。「異なるシャペロン」は、異なる生物からの相同性(すなわち関連性のある)シャペロン、および同じ生物からの異なるシャペロンを使用する方法を意味しうる。しかし、二重抗原サンドイッチアッセイにおいて用いられる抗原について異なるシャペロン融合相手を両側に使用することに加え、実際の抗原の一部ではない全ての部分およびネオエピトープを、可溶性重合化抗干渉性成分において提示すべきであり、これを十分な量で該アッセイに加える。抗干渉性物質は、例えば、同様にシャペロン-抗原ポリペプチドの一部である任意のリンカー、スペーサーおよびタグ配列を含む縦列SlyD分子を含みうる。それは更に、不活性形態の標識部分を含むことができ、すなわちそれは、真の陽性シグナルを消失させることなく標識部分模擬体を含みうる。
【0092】
固相への固定化を媒介する結合部分にも同じことが言える。すなわち、抗干渉性物質の設計においては、この結合部分の、化学的修飾によりもはや結合に適合しない模擬体も想定されうる。次いでこの抗干渉性物質を化学架橋剤により重合化し、例えば風疹免疫診断における風疹E1タンパク質のような抗体検出に使用される真性ウイルスタンパク質の一部ではない抗原ポリペプチドの部分に対する任意の種類の免疫グロブリンを捕捉するために、可溶性重合体として反応混合物に加えることができる。化学的に重合化された抗干渉性物質の高いエピトープ密度は、例えばシャペロン、リンカー、スペーサーまたは標識エピトープに対して反応性であり従ってイムノアッセイにおける干渉の頻発原因であるIgM分子の効率的な結合および排除を保証することとなる。
【0093】
最もよく特徴付けされているシャペロンのほとんどは、大腸菌(Escherichia coli)から単離されており、これはバイオテクノロジー研究において広く使用されている。大腸菌(Escherichia coli)は広く分布する細菌種であるため、多数の哺乳動物は、この細菌に由来するタンパク質に対する抗体を持つようになっている。前記のとおり、そのような抗体により引き起こされる偽陽性反応の可能性を減少させるためには、異なる細菌種に由来するプロリルペプチジルイソメラーゼシャペロンペア(例えば、一方のシャペロンは中温菌に由来し、一方のシャペロンは好熱菌に由来する)を使用することが好ましい。もう1つの好ましい実施形態においては、該シャペロンは、好極限性細菌、特に、サーモトーガ・マリティマ(Thermatoga maritima)、アクィフェクス・エオリカス(Aquifex aeolicus)、サーモコッカス属種(Thermococcus sp.)、メタノコッカス・サーモリソトロフィカス(Methanococcus thermolithotrophicus)、メタノコッカス・ジャナシィ(Methanococcus jannaschii)、ピロコッカス・ホリコシィ(Pyrococcus Horikoshii)、エロピルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)およびサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)を含む細菌群の好極限性細菌に由来する。
【0094】
イムノアッセイ全般および好ましくは該架橋概念に従うイムノアッセイにおけるシャペロン-抗原複合体の使用は、抗原自体を修飾することなく、そのような複合体のシャペロンを特異的に誘導体化できる可能性をももたらす。任意の化学基によるタンパク質の修飾、例えば、その分子への標識のカップリングは、該ポリペプチドに負の影響を及ぼす危険性を有することは明白である。例えば、そのような標識により、検査中のエピトープが改変されて損なわれたり、非特異的結合が優先される可能性があり、あるいはネオエピトープが生成してイムノアッセイの特異性を妨げる可能性がある。本発明では今や、風疹E1抗原-シャペロン複合体内のシャペロンを特異的に誘導体化することが可能となった。
【0095】
好ましい実施形態においては、二重抗原架橋概念に従うイムノアッセイは更に、捕捉抗原として使用される第1風疹E1抗原-シャペロン複合体が固相結合基を含むことを特徴とする。もう1つの好ましい実施形態においては、検出抗原として使用される第2風疹E1抗原-シャペロン複合体がマーカー基またはシグナリング部分を含むことを更に特徴とする、該架橋概念に従うイムノアッセイを行う。
【0096】
本発明は更に、抗風疹抗体の検出のための診断試験における、2つのジスルフィド架橋を含有する、風疹E1の少なくとも1つの抗原の使用に関する。本発明はまた、抗風疹抗体の検出のための診断試験における、2つのジスルフィド架橋をそれぞれが含有する少なくとも2つの異なる風疹E1抗原を含む組成物の使用に関する。開示されている使用およびアッセイは、必要に応じて使用される当技術分野でよく知られた他の一般的な添加剤の添加を含む。
【0097】
本発明のもう1つの主題は、測定すべき風疹抗体への特異的結合に適しており、標識を有する可能性もある、風疹E1抗原の少なくとも1つを含有する、風疹に対する抗体の検出のための試薬キットに関する。必要に応じて、該キットは他の通常の添加剤を含有しうる。特に、該試験キットが含有する風疹E1抗原はアミノ酸201-432を含み、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、2つのジスルフィド架橋を含有し、ここで、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401の間で形成されており、抗原a)が最も好ましい。
【0098】
もう1つの好ましい試験キットにおいては、含有される少なくとも1つの風疹E1抗原はアミノ酸169-432を含み、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、2つのジスルフィド架橋を含有し、ここで、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352の間で形成されており、または
c)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401の間で形成されている。
【0099】
本発明の更にもう1つの実施形態においては、該試薬キットは、アミノ酸201-432または169-432をそれぞれが含む少なくとも2つの異なる風疹E1抗原を含む組成物を含有し、ここで、該抗原のそれぞれは、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、それらの少なくとも2つの風疹E1抗原のそれぞれは2つのジスルフィド架橋を含有する。
【0100】
また、前記で開示されている試薬キットのそれぞれは、対照および標準溶液、ならびに当業者により使用される通常の添加剤、バッファー、塩、界面活性剤などを伴う1以上の溶液中の試薬を含有する。
【0101】
もう1つの実施形態は、本発明の風疹E1抗原の、ワクチンとしての使用である。有効成分として免疫原性ポリペプチドを含有するワクチンの製造は当技術分野において公知である。そのようなワクチンは、液体溶液または懸濁液としての注射剤として一般に製造される。有効成分、すなわち、風疹E1抗原またはその融合タンパク質は、医薬上許容され該有効成分に適合しうる賦形剤、例えば水、水性生理学的バッファー、塩類液(食塩水)、デキストロース、グリセロール、エタノールと混合される。該ワクチンは通常、注射により投与される。
【0102】
(実施例)
以下の実施例は本発明を例示するものである。
【実施例1】
【0103】
縦列EcSlyDおよび風疹E1エクトドメイン断片E1(201-432)および(169-432)を含む発現プラスミドの構築
風疹株Therien(Dominguezら, 1990, Virology 177, 225-238)からのE1前駆体タンパク質の配列をSwissProtデータベース(登録番号P07566)から取り出した。風疹E1(aa 1-432)をコードする合成遺伝子をMedigenomix(Martinsried, Germany)から購入した。
【0104】
風疹E1エクトドメインは20個のシステインを含有する。このジスルフィドの複雑性は、大腸菌(E. coli.)のような原核生物宿主における風疹E1エクトドメインの単純な組換え産生の場合の大きな障害である。該エクトドメイン内の20個のシステイン残基はジスルフィド誤対形成の可能性を劇的に増加させ、これは通常、ミスフォールディングした凝集傾向のあるタンパク質のコンホメーションを与える。ジスルフィドの複雑性を軽減するために、全システイン残基がアラニンまたはセリンに突然変異された変異体を使用した。このジスルフィド非含有E1変異体から出発して、2つの大きな可溶性単量体E1変異体、すなわち、それぞれ風疹E1断片201-432および169-432を得た。その後、ジスルフィドペアを、まず個々に、ついで2個または3個の組合せとして、該E1断片内に導入した。この目的のために、ジスルフィド形成に必要なシステインのみを部位特異的突然変異誘発により導入し、一方、その他のシステイン残基の全ては尚もアラニンに突然変異したままとした。QuikChange(Stratagene, La Jolla, CA, USA)および標準的なPCR技術を用いて、点突然変異、欠失および伸長変異体または制限部位をそれぞれの発現カセット内に作製した。Novagen(Madison, WI, USA)のpET24a発現プラスミドに基づき、以下のクローニング工程を行った。該ベクターをNdeIおよびXhoIで消化し、縦列SlyDおよびそれぞれ風疹E1断片201-432または169-432を含む半合成カセットを挿入した。全ての組換えE1融合ポリペプチド変異体は、Ni-NTA補助精製およびリフォールディングを促進するC末端ヘキサヒスチジンタグを含有していた。
【0105】
以下の図は、得られた風疹E1抗原201-432のスキームを示し、該抗原はそのN末端に2つの縦列SlyDシャペロンを有する。
【化1】

【0106】
得られたプラスミドのインサートを配列決定したところ、所望の融合タンパク質をコードすることが判明した。挿入されている風疹E1抗原のアミノ酸配列は本発明の配列表に示されている。
【0107】
この方法を用いて、以下の風疹E1抗原の、そのN末端に融合した縦列SlyD部分を含有するものを、以下のとおりに得た:
ジスルフィド架橋を含有しないもの(システイン残基を欠く対照E1変異体):
配列番号2に示すE1 169-432。
【0108】
配列番号1に示すE1 201-432。
【0109】
配列番号1(201-432)および2(169-432)は、Swiss ProtデータベースID P07566においてアクセス可能な風疹E1(Therien株)のアミノ酸配列を示す。
【0110】
単一ジスルフィド架橋:
E1 169-432 (C11-C12), E1 201-432 (C13-C14), E1 201-432 (C17-C18), E1 201-432 (C19-C20)。
【0111】
二重ジスルフィド架橋:
配列番号3に示すE1 201-432 (C17-C18, C19-C20)。
配列番号4に示すE1 201-432 (C13-C14, C17-C18)。
配列番号5に示すE1 201-432 (C13-C14, C19-C20)。
配列番号6に示すE1 169-432 (C11-C12, C13-C14)。
配列番号7に示すE1 169-432 (C11-C12, C17-C18)。
配列番号8に示すE1 169-432 (C11-C12, C19-C20)。
三重ジスルフィド架橋:
配列番号11に示すE1 201-432 (C13-C14, C17-C18, C19-C20)。
配列番号9に示すE1 169-432 (C11-C12, C17-C18, C19-C20)。
【0112】
実施例6および7に記載されている抗風疹抗体の検出のためのイムノアッセイにおけるこれらの風疹E1抗原の免疫学的反応性に関する実験結果を表1〜4に示す。表3および4はそれぞれ図3および4に示されていることに注意されたい。
【0113】
実施例に記載されている方法に基づき、以下の構築物を得ることも可能である。
【0114】
三重ジスルフィド架橋:
配列番号10に示されているE1 169-432 (C11-C12, C13-C14, C17-C18)。
【実施例2】
【0115】
SS-E1(201-432および169-432)融合タンパク質の共役精製およびリフォールディング
実質的に同じプロトコールに従い、全てのE1シャペロン融合タンパク質を精製し、リフォールディングさせた。発現プラスミドを含有する大腸菌(E. coli)BL21(DE3)細胞をLB培地+ カナマイシン(30μg/ml)内で、OD600が1になるまで増殖させ、37℃の増殖温度でイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を最終濃度1mMまで加えることによりサイトゾル過剰発現を誘導した。誘導の4時間後、細胞を遠心分離(5000×gで20分間)し、凍結させ、-20℃で保存した。細胞溶解のために、該凍結ペレットを100mMリン酸ナトリウム(pH8.0)、7.0M GuHCl、10mM イミダゾールに室温で再懸濁させ、得られた懸濁液を2時間攪拌して細胞溶解を完了させた。遠心分離および濾過の後、前記細胞溶解バッファー中で予め平衡化されたNi-NTA(ニッケル-ニトリロ-トリアセタート)カラム上にライセートをアプライした。不完全なジスルフィド架橋およびジスルフィドシャフリングを避けるために、金属キレート化カラムに適合しうる還元剤として5mM TCEPを洗浄バッファー中に加えた。過剰の洗浄工程(>20カラム容量の細胞溶解バッファー + TCEP)の後、マトリックス結合タンパク質のコンホメーションリフォールディングを誘導するために、該カオトロピック細胞溶解バッファーを50mMリン酸ナトリウム(pH7.8)、100mM塩化ナトリウム、5mM TCEPで置換した(残留GuHClがカオトロピック濃度で存在しないことが保証されるよう、少なくとも10カラム容量のリフォールディングバッファーをアプライした)。ついで、酸化的フォールディング(すなわち、システイン残基の酸化的架橋)を、50mMリン酸ナトリウム pH7,8、100mM塩化ナトリウムでの洗浄により誘導した。二価Ni2+イオンの有効濃度が高いため、マトリックス結合融合タンパク質内のジスルフィド架橋の形成は非常に速い過程である。溶出前に、約50kDaの見掛け分子量を有する汚染タンパク質を除去するために、イミダゾール濃度を55mMまで上昇させた。ついで、50mMリン酸ナトリウム(pH7.8)、100mM塩化ナトリウム中の55mMから500mMまでのイミダゾール勾配を適用することにより、ネイティブ融合タンパク質を溶出した。タンパク質含有画
分を純度に関して評価し(SDS-PAGEによる判定で>95%)、プールした。最後に、該タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーに付し、見掛け上の二量体画分をプールし、濃縮し、その分光学的特性に関して評価した。
【実施例3】
【0116】
SS-E1(201-432)へのビオチンおよびルテニウム部分のカップリング
組換え風疹エクトドメインのリシンε-アミノ基を約10mg/mlのタンパク質濃度で、それぞれN-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化ビオチンおよびルテニウム標識により修飾した。標識/タンパク質のモル比は、それぞれの融合タンパク質に応じて1:1から5:1まで様々となった。反応バッファーは150mM リン酸ナトリウム(pH8.0)、50mM NaCl、1mM EDTAであった。反応を室温で15分間行い、緩衝化L-リシンを最終濃度10mMまで加えることにより停止させた。該カップリング反応の後、該粗タンパク質コンジュゲートをゲル濾過カラム(Superdex 200 HI Load)に通すことにより未反応遊離標識を除去した。
【実施例4】
【0117】
免疫診断試験における組換え風疹E1融合タンパク質SS-E1(aa201-432)の免疫学的反応性の検査:ヒト血清中の抗風疹IgG抗体の検出
種々の融合タンパク質の免疫学的反応性を自動Elecsys(登録商標)2010分析装置(Roche Diagnostics GmbH)において評価した。二重抗原サンドイッチ形態で測定を行った。このとき、ビオチン-コンジュゲート(すなわち捕捉抗原)はストレプトアビジンコート化磁気ビーズの表面上に固定化され、一方、検出抗原はシグナリング部分として錯化ルテニウムカチオンを有する。Elecsys(登録商標)2010におけるシグナル検出は電気化学発光に基づくものである。
【0118】
特異的免疫グロブリンアナライトの存在下では、発色性ルテニウム錯体は固相へ架橋され、白金電極における励起の後に620nmの光を発する。シグナル出力は任意光単位のものである。ババリア(Bavarian)赤十字の血清パネルからの抗風疹IgG陽性サンプルを用いて測定を行った。
【実施例5】
【0119】
FPLC分析(高速タンパク質液体クロマトグラフィー分析)
その抗原性のほかに、SS-E1融合タンパク質のオリゴマー状態、溶解度および安定性が診断目的のその適合性を決定する。長さの最適化のために、E1 N断片(アミノ酸1-314)およびC断片(アミノ酸315-432)のシステイン非含有変異体をクローニングし、発現させ、精製した(縦列SlyDとの融合タンパク質として)。組換え風疹エクトドメイン断片の見掛け上のオリゴマー状態を明らかにするために、風疹E1 N断片およびC断片をSuperdex 200 HR 10/30カラム上の分析用ゲル濾過に付した。ランニングバッファーは50mM リン酸カリウム(pH 7.5)、100 mM KClであった。約200μlのSS-E1溶液(タンパク質濃度約1.0mg/ml)をSECカラム上にアプライし、溶出を280nmでの吸収によりモニターした。E1 N断片1-55、1-104、1-133および1-142ならびにE1 C断片169-432、201-432、260-432および315-432は全て、Superdex 200カラムの分離範囲内で溶出した。SlyD*-SlyD*-E1変異体は全て、見掛け上の二量体を示唆する、予想分子サイズの約2倍の位置で溶出した。
【実施例6】
【0120】
免疫診断試験における単一ジスルフィドを含有する風疹E1 C断片201-432の免疫学的反応性の検査:ヒト血清中の抗風疹IgG抗体の検出
種々の融合タンパク質の免疫学的反応性を自動Elecsys(登録商標)2010分析装置(Roche Diagnostics GmbH)において評価した。二重抗原サンドイッチ形態で測定を行った。そこでは、ビオチン-コンジュゲート(すなわち捕捉抗原)はストレプトアビジンコート化磁気ビーズの表面上に固定化され、一方、検出抗原はシグナリング部分として錯化ルテニウムカチオンを含有する。Elecsys(登録商標)2010におけるシグナル検出は電気化学発光に基づくものである。特異的免疫グロブリンアナライトの存在下では、発色性ルテニウム錯体は固相へ架橋され、白金電極における励起の後に620nmの光を発する。シグナル出力は任意光単位のものである。ババリア(Bavarian)赤十字の血清パネルからの抗風疹IgG陽性サンプルを用いて測定を行った。結果を表1に示す。
【表1】

【0121】
イムノアッセイは、実施例6に記載されているとおりにElecsys(登録商標)2010分析装置を使用することにより行った。相対シグナルは、7つの風疹陰性サンプルで得られた平均値に対して正規化した。風疹陽性血清はBavarian Red Cross(ドイツ国)から購入し、風疹陰性対照はTrina International Bioreactives AG(スイス国)から購入した。全てのE1変異体は可溶性SlyD*-SlyD*融合タンパク質であり、それらのそれぞれのジスルフィド結合が該表に示されている。陽性として分類された全ての血清はそれで正しいと確認された。表1から明らかなとおり、風疹E1抗原がジスルフィド架橋を含有する場合には該相対シグナルは相当に増加し、一方、該E1抗原がいずれかのジスルフィド架橋を欠く場合には該シグナルは相対的に低い。E1 201-432断片内の単一ジスルフィド結合の導入は、免疫グロブリン結合に重要であるコンホメーションエピトープを恐らく安定化することにより、免疫学的活性を著しく増加させる。これは、単一ジスルフィド結合Cys 225-Cys 235、Cys 349-Cys 351およびCys 368-Cys 401のそれぞれについて言える。しかし、風疹E1 201-432の免疫反応性、すなわち、抗原性は、ジスルフィド結合Cys 225-Cys 235(C13-C14)の回復に際して特に増加し、このことは恐らく、抗E1抗体の惹起におけるこのジスルフィド安定化エピトープの中心的役割を表している(表1を参照されたい)。
【実施例7】
【0122】
免疫診断試験における複数のジスルフィドの組合せを含有する風疹E1 C断片201-432の免疫学的反応性の検査:ヒト血清中の抗風疹IgG抗体の検出
EP-A-1780282から公知のシステインCys 349-Cys 352(C17-C18)およびCys 368-Cys 401(C19-C20)の間に2つのジスルフィド架橋を形成する3つの異なる風疹E1変異体(左欄)、Cys 225-Cys 235(C13-C14)およびCys 349-Cys 352(C17-C18)の間に2つのジスルフィド架橋を含有する本発明の変異体(中央欄)、ならびにシステインCys 225-Cys 235(C13-C14)、Cys 349-Cys 352(C17-C18)およびCys 368-Cys 401(C19-C20)の間に3つのジスルフィド架橋を含有する変異体(右欄)の評価。
【0123】
サンプル(WHO-標準から)およびBavarian Red Crossの血清パネルからの抗風疹IgG陽性サンプルを用いて測定を行った。実施例6に記載されている二重抗原サンドイッチ形態を使用して、自動Elecsys(登録商標)2010分析装置(Roche Diagnostics GmbH)において測定を行った。結果を表2に示す。
【表2】

【0124】
該イムノアッセイは、実施例6および7に記載されているとおりにElecsys(登録商標)2010分析装置を使用することにより行った。該相対シグナルは、7つの風疹陰性サンプルで得られた平均値に対して正規化した。風疹陽性血清はBavarian Red Cross(ドイツ国)から購入し、風疹陰性対照はTrina International Bioreactives AG(スイス国)から購入した。全てのE1変異体は可溶性SlyD*-SlyD*融合タンパク質であり、それらのそれぞれのジスルフィド結合の組合せが該表に示されている。陽性として分類された全ての血清はそれで正しいと確認された。
【0125】
表2から明らかなとおり、全てのE1変異体は該イムノアッセイにおいて反応性である。すなわち、該抗原はサンプル中の抗風疹抗体に特異的に結合する。驚くべきことに、免疫学的活性(すなわち抗原性)は、第2のジスルフィド結合を加えた場合に著しく増加する。この増加は相加的ではなく協同的である。すなわち、単一ジスルフィド結合変異体のシグナルの寄与が単に加え合わされて全体的なシグナルが生じるのではない。そうではなく、全体的なシグナルは、該単一ジスルフィド結合構築物により生じる個々のシグナルの総和より有意に高い(表2を参照されたい)。
【0126】
2つのジスルフィド架橋の回復の際のこの顕著なシグナル増加は、試験した全ての変異体に当てはまる。しかし、シグナルの高さは、異なる二重ジスルフィド構築物に関して異なる。例えば、ジスルフィド結合組合せCys 225-Cys 235およびCys 349-Cys 351(C13-C14およびC17-C18)を有するE1 201-432は優れた抗原であり、それはヒト血清中の抗E1免疫グロブリンの検出に好適であることが分かる(表2を参照されたい)。10個中9個のサンプルにおいて、本発明の2つのジスルフィド架橋を有するこの変異体(C13-C14およびC17-C18、中央欄)は、従来技術において公知の二重ジスルフィド変異体(C17-C18およびC19-C20)および右欄内の三重架橋変異体より相当に高いシグナルを示す。本発明の風疹E1抗原はヒトサンプル中の抗風疹抗体の検出のためのイムノアッセイにおける抗原としての使用に好適であることを伺うことができる。
【0127】
表1および2ならびに表3(図3)および4(図4)に関する更なる説明
表3および4に示されている結果は、それぞれ表1および2の結果を証明している。すなわち、風疹E1抗原が2つのジスルフィド架橋の組合せを有すると直ちに、相対シグナルが実質的に増加し、一方、E1抗原がジスルフィド架橋をただ1つ含有するか又はシステイン残基を完全に欠く場合には、シグナルは多少劣る。
【0128】
E1 201-432断片内の単一ジスルフィド結合の回復(表3)は免疫学的活性を若干増強する。最良の結果は単一ジスルフィド結合Cys 225-Cys 235(C13-C14)で得られる。追加的なジスルフィド結合、特に、ジスルフィド架橋C17-C18およびC19-C20の組合せ、ならびにジスルフィド架橋C13-C14およびC17-C18の組合せの導入は、シグナルの有意な増強をもたらす。しかし、第3のジスルフィド架橋の付加はシグナルにそれ以上は有意に寄与しない。
【0129】
表4は、E1 169-432断片内の単一ジスルフィド結合Cys 176-Cys 185(C11-C12)の回復が免疫学的活性をほとんど改変しないことを示している。しかし、その他のジスルフィド架橋の1つとの組合せにおいては、該C11-C12ジスルフィド架橋はシグナルを有意に増強する。それぞれの二重ジスルフィド構築物は、単一ジスルフィド構築物の反応性の総和を明らかに超える免疫反応性を示し、これは協同的作用を示している。最良の結果は、ジスルフィド架橋C11-C12およびC13-C14を組合せることにより得られ、それに続くものとしては、ジスルフィド架橋C11-C12とC19-C20との組合せ、およびC11-C12とC17-C18との組合せで得られる。また、風疹E1抗原内のジスルフィド架橋C13-C14とC19-C20との組合せも、高い相対シグナルにおいて表される優れた免疫学的反応性をもたらす。また、見掛け上不活性な単一ジスルフィド架橋C11-C12が二重ジスルフィドの組合せC17-C18/C19-C20に加えられて三重ジスルフィド構築物C11-C12/C17-C18/C19-C20を与えた場合に、シグナルにおける有意な増強が観察される。特筆すべきことに、この三重ジスルフィドE1構築物の免疫反応性は単一(C11-C12)および二重ジスルフィド構築物(C17-C18/C19-C20)の免疫反応性の総和を上回り、又しても、これは協同的作用を示している。
【0130】
結論としては、ジスルフィド架橋Cys 176-Cys 185(C11-C12)は、単独の場合には、風疹E1抗原の免疫学的反応性(すなわち抗原性)に顕著には寄与しない。しかし、見掛け上不活性な単一ジスルフィド架橋Cys 176-Cys 185(C11-C12)がその他のジスルフィド架橋の少なくとも1つと組合されると直ちに、この組合せは、驚くべきことに、非常に優れた免疫学的反応性を有する協同的に改善された抗原を与える。ジスルフィド架橋C13-C14もしくはC17-C18もしくはC19-C20と組合されたC11-C12ジスルフィド架橋を含有する、またはジスルフィド架橋C17-C18およびC19-C20の両方と組合されたC11-C12ジスルフィド架橋を含有するE1変異体は、ヒト血清中の抗風疹E1抗体の検出のための非常に優れた手段である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸201-432を含み、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、2つのジスルフィド架橋を含有する風疹E1抗原であって、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235(C13-C14)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352(C17-C18)の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 225およびCys 235(C13-C14)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401(C19-C20)の間で形成されている、風疹E1抗原。
【請求項2】
アミノ酸169-432を含み、天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、2つのジスルフィド架橋を含有する風疹E1抗原であって、
a)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185(C11-C12)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 349およびCys 352(C17-C18)の間で形成されており、または
b)1つのジスルフィド架橋はCys 176およびCys 185(C11-C12)の間で形成されており、もう1つのジスルフィド架橋はCys 368およびCys 401(C19-C20)の間で形成されている、風疹E1抗原。
【請求項3】
抗原が合成的に製造される、請求項1または2記載の風疹E1抗原。
【請求項4】
抗原が組換え的に製造される、請求項1または2記載の風疹E1抗原。
【請求項5】
抗原が組換え融合タンパク質として製造される、請求項4記載の風疹E1抗原。
【請求項6】
抗原がペプチジル-プロリル-イソメラーゼクラスのシャペロンに融合されている、請求項5記載の風疹E1抗原。
【請求項7】
アミノ酸201-432または169-432をそれぞれが含む少なくとも2つの異なる風疹E1抗原を含んでなる組成物であって、該抗原のそれぞれが天然風疹E1抗原のアミノ酸143-164および454-481に対応する配列を欠き、前記の少なくとも2つの風疹E1抗原のそれぞれが2つのジスルフィド架橋を含有する前記組成物。
【請求項8】
請求項1または2記載の風疹E1抗原をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子。
【請求項9】
請求項7記載の風疹E1抗原をコードする組換えDNA分子であって、その上流に、ペプチジル-プロピル-イソメラーゼクラスのシャペロンをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が存在する、組換えDNA分子。
【請求項10】
機能しうる形で連結された、請求項8記載の組換えDNA分子を含んでなる発現ベクター。
【請求項11】
請求項9記載の発現ベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項12】
可溶性かつ免疫反応性風疹E1抗原融合タンパク質の製造方法であって、
a)請求項11記載の宿主細胞を培養し、
b)該融合タンパク質を発現させ、
c)該融合タンパク質を精製し、
d)該融合タンパク質を可溶性かつ免疫反応性コンホメーションへリフォールディングさせる工程を含んでなる製造方法。
【請求項13】
a)体液サンプルを請求項1〜6のいずれか1項記載の風疹E1抗原または請求項7記載の少なくとも2つの風疹E1抗原の組成物と混合することにより免疫反応混合物を形成させ、
b)該体液サンプル中に存在する該風疹E1抗原に対する抗体が該風疹E1抗原と免疫反応して免疫反応産物を形成するのを可能にするのに十分な時間にわたり、該免疫反応混合物を維持し、
c)免疫反応産物の存在を検出することを含んでなる、単離されたサンプルにおける風疹に特異的な抗体の検出方法。
【請求項14】
単離されたサンプルにおける風疹に対する抗体の検出方法における、請求項1〜7のいずれか1項記載の風疹E1抗原の使用。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項記載の風疹E1抗原を含有する、風疹に対する抗体の検出のための試薬キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−505811(P2011−505811A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537314(P2010−537314)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010532
【国際公開番号】WO2009/074318
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】