説明

新規高分子化合物及びその中間体

【課題】導電性ポリマーの原料として有用な新規高分子化合物の提供。
【解決手段】


〔R1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を示し、R2は、重合性官能基を示し、nは、1〜6の整数である。〕を重合させて得られる高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規高分子化合物、その中間体及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明電極の代替品として導電性ポリマーの開発が行われており、斯かる導電性ポリマーとして、ポリチオフェンが特に注目を浴びている。斯様なポリチオフェンとしては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−207750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、有機エレクトロニクス製品の性能や生産性の更なる向上が要求されており、斯かる要求を満たす導電性ポリマーだけでなく、この導電性ポリマーの原料として有用な化合物の開発が望まれている。
したがって、本発明の課題は、導電性ポリマーの原料として有用な新規高分子化合物、その中間体及びこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、(I)本発明は、下記式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
〔式(1)中、R1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を有する2価の連結基を示し、R2は、重合性官能基を示し、nは、1〜6の整数である。〕
で表される化合物(以下、化合物(1)とも称する)の前記重合性官能基を重合させて得られる高分子化合物を提供するものである。
【0008】
また、(II)本発明は、化合物(1)の前記重合性官能基を重合させる工程を含む高分子化合物の製造方法を提供するものである。
【0009】
更に、(III)本発明は、化合物(1)を提供するものである。
【0010】
更に、(IV)本発明は、下記式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
〔式(2)中、R3は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、−(OCH2m−OH(mは、1〜20の整数である)又は−(OC24q−OH(qは、1〜10の整数である)を示し、nは、前記と同義である。〕
で表される化合物(以下、化合物(2)とも称する)と下記式(3)
【0013】
【化3】

【0014】
〔式(3)中、R4は、−R5−SO2X、−R5X、−R5COOH又は−R5−(C=O)Xを示し(R5は、単結合、メチレン基、又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す)、R2は、前記と同義である。〕
で表される化合物(以下、化合物(3)とも称する)とを反応させる工程を含む化合物(1)の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高分子化合物は、導電性ポリマーの原料として有用である。したがって、本発明の高分子化合物の製造方法によれば、簡便且つ容易に、導電性ポリマーの原料として有用な高分子化合物を得ることができ、本発明の化合物(1)は、導電性ポリマーの原料の前駆体として有用である。また、本発明の化合物(1)の製造方法によれば、簡便且つ容易に、化合物(1)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】SS−EDOTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】PSS−EDOTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】SM−EDOTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】PSM−EDOTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】SC−EDOTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】PSC−EDOTの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本明細書で使用する記号の定義について説明する。
1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を有する2価の連結基を示す。斯かる連結基は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−の片末端又は両末端に、メチレン基又はアルキレン基を有していてもよい。該アルキレン基の炭素数としては、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6が更に好ましく、2〜4が特に好ましい。また、斯かるアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、その具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0018】
前記−SO2−O−を有する2価の連結基としては、例えば、−SO2−O−;−SO2−O−CH2−;−SO2−O−(CH22−等の−SO2−O−C220アルキレン−;−CH2−SO2−O−CH2−;−CH2−SO2−O−(CH22−等の−CH2−SO2−O−C220アルキレン−;−(CH22−SO2−O−(CH22−等の−C220アルキレン−SO2−O−C220アルキレン−が挙げられる。
これらの中でも、−SO2−O−CH2−、−SO2−O−C220アルキレン−が好ましく、−SO2−O−CH2−が特に好ましい。
【0019】
前記−O−を有する2価の連結基としては、例えば、−O−;−CH2−O−CH2−;−CH2−O−(CH22−等の−CH2−O−C220アルキレン−;−(CH22−O−(CH22−、−(CH22−O−(CH24−等の−C220アルキレン−O−C220アルキレン−;−CH2−O−;−(CH22−O−、−(CH23−O−等の−C220アルキレン−O−が挙げられ、−O−(CH2O)6−等の−O−(CH2O)120−であってもよい。
これらの中でも、−CH2−O−CH2−、−CH2−O−C220アルキレン−、−C220アルキレン−O−C220アルキレン−が好ましく、−CH2−O−CH2−が特に好ましい。
【0020】
前記−(C=O)O−を有する2価の連結基としては、例えば、−(C=O)O−;−(C=O)O−CH2−;−(C=O)O−(CH22−等の−(C=O)O−C220アルキレン−;−CH2−(C=O)O−CH2−;−CH2−(C=O)O−(CH22−等の−CH2−(C=O)O−C220アルキレン−;−(CH22−(C=O)O−(CH22−、−(CH22−(C=O)O−(CH23−等の−C220アルキレン−(C=O)O−C220アルキレン−が挙げられる。
これらの中でも、−(C=O)O−CH2−、−(C=O)O−C220アルキレン−が好ましく、−(C=O)O−CH2−が特に好ましい。
【0021】
また、上述のようなR1の中でも、導電性の点から、−SO2−O−を有する2価の連結基が好ましい。
【0022】
なお、R1で示される連結基は、置換基を有していてもよく、斯かる置換基としては、アルコキシ基、フェニル基等が挙げられる。
【0023】
2は、重合性官能基を示す。斯かる重合性官能基の炭素数としては、2〜20が好ましく、2〜14がより好ましく、2〜8が更に好ましく、2〜4が特に好ましい。
また、重合性官能基としては、オキシラニル基、オキセタニル基等のエポキシ基;エチレン性不飽和基が挙げられる。なお、エポキシ基とは、環の一部又は鎖における炭素2原子に直接酸素原子が結合している基をいう。
この中でも、オキシラニル基、エチレン性不飽和基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。
前記エチレン性不飽和基の好適な具体例としては、アルケニル基が挙げられ、この中でも、末端に二重結合を有するものが好ましい。このようなアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。
なお、R2で示される重合性官能基は、置換基を有していてもよく、斯かる置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0024】
3は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、−(OCH2m−OH(mは、1〜20の整数である)又は−(OC24q−OH(qは、1〜10の整数である)を示す。
前記ヒドロキシアルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。また、斯かるヒドロキシアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、その具体例としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。
また、前記ヒドロキシアルキル基は、置換基を有していてもよく、斯かる置換基としては、R1の置換基と同様のものが挙げられる。
【0025】
また、mとしては、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。また、−(OCH2m−OHとしては、−OCH2−OH、−(OCH22−OH等が挙げられる。
また、qとしては、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。また、−(OC24q−OHとしては、−OC24−OH、−(OC242−OH等が挙げられる。
【0026】
また、上述のようなR3中でも、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。
【0027】
4は、−R5−SO2X、−R5X、−R5COOH又は−R5−(C=O)Xを示し、斯かるR5は、単結合、メチレン基、又は炭素数2〜20のアルキレン基を示す。該アルキレン基としては、R1中のアルキレン基と同様のものが好ましい。
また、Xは、ハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。この中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0028】
また、上述のようなR4の中でも、−R5−SO2X、−R5X、−R5COOHが好ましい。
【0029】
nは、1〜6の整数であるが、1〜3が好ましい。
【0030】
次に、本発明の高分子化合物について、詳細に説明する。
本発明の高分子化合物は、前記化合物(1)の重合性官能基を重合させて得られることを特徴とするものである。
<化合物(1)>
化合物(1)としては、例えば、以下の式(1−a)〜(1−i)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
化合物(1)は、例えば、前記化合物(2)と前記化合物(3)とを反応(例えば、縮合反応、エーテル化反応、エステル化反応)させることによって得られる。
化合物(3)の使用量は特に限定されないが、通常、化合物(2)に対し、0.5〜2モル当量程度であり、好ましくは1〜1.5モル当量である。
【0033】
また、前記反応は、触媒存在下及び非存在下のいずれでも行うことができる。斯かる触媒としては、水素化ナトリウム、DMAP等の塩基;1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩等の脱水縮合剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
前記触媒の使用量は特に限定されないが、触媒を使用する場合は、通常、化合物(2)100質量部に対し、5〜150質量部程度である。
【0034】
また、前記反応には、溶媒を用いるのが好ましい。斯かる溶媒としては、ピリジン等のアミン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
前記溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、化合物(2)100gに対し、0.5〜5L程度である。
【0035】
また、前記反応の反応温度は、通常、20〜100℃程度であり、反応時間は、通常、4〜144時間程度である。
また、化合物(1)は、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、遠心分離、各種溶媒による抽出、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて、反応系から、単離、精製することで分離することができる。
【0036】
<重合反応>
前記重合反応には、重合開始剤(熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤等)を用いるのが好ましい。斯かる重合開始剤としては、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)等のアゾ系重合開始剤;t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキシド系重合開始剤が挙げられる。この中でも、アゾ系重合開始剤が好ましい。
前記重合開始剤の使用量は特に限定されないが、化合物(1)に対し、0.001〜0.2モル当量程度である。
【0037】
また、前記重合反応は、溶媒の存在下で反応させるのが好ましい。斯かる溶媒は、化合物(1)等を溶解できるものであればよいが、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶剤、芳香族系溶媒、脂肪族系溶媒が挙げられ、これら以外のジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン系極性溶剤を用いてもよい。なお、これら溶媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
前記ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
前記エステル系溶媒としは、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸アルキルエステル等が挙げられる。
前記芳香族系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等が挙げられる。
前記脂肪族系溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
前記溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、化合物(1)100gに対し、1.5〜50L程度である。
【0039】
また、前記重合反応の反応温度は、通常、20〜120℃程度であり、反応効率の点から、50〜110℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5〜144時間程度であるが、1〜72時間が好ましく、2〜48時間がより好ましい。
また、前記重合反応は、大気雰囲気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでも行うことができる。斯かる不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
また、本発明の高分子化合物は、前述の化合物(1)と同様にして分離できる。
【0040】
また、本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)の下限としては、1×103が好ましく、一方、その上限としては、5×105が好ましく、4.5×105がより好ましく、4×105が更に好ましく、5.5×104が特に好ましい。また、Mw/Mnとしては、1〜6が好ましく、1〜5がより好ましい。なお、これら重量平均分子量(Mw)、Mw/Mnは、GPC(溶出溶媒:THF)を用い、ポリスチレン換算することにより測定可能である。
【0041】
そして、本発明の高分子化合物は、共役ポリマーであり、導電性ポリマーの原料として有用である。したがって、本発明の高分子化合物の製造方法によれば、簡便且つ容易に、導電性ポリマーの原料として有用な高分子化合物を得ることができ、本発明の化合物(1)は、導電性ポリマーの原料の前駆体として有用である。また、本発明の化合物(1)の製造方法によれば、簡便且つ容易に、前記のような化合物(1)を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例における各化合物の分析条件は以下に示すとおりである。
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、CDCl3を溶媒、テトラメチルシランを内部標準物質として用いて、Varian製Inova 400(400MHz)により測定した。
<分子量測定>
重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒として用いて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8320GPC(東ソー(株)製)により測定温度40℃で測定した。測定値は、ポリスチレン換算によるものである。
【0044】
実施例1 SS−EDOTの合成
【0045】
【化5】

【0046】
前記の合成経路にしたがい、SS−EDOTを合成した。
3,4−[1−(ヒドロキシメチル)エチレンビスオキシ]チオフェン(0.50g,2.90mmol)とピリジン(5mL)との混合溶液に、0℃でp−スチレンスルホン酸クロリド(0.71g、3.48mmol)とピリジン(3mL)との混合液を加え、室温で6時間攪拌した。反応終了後、反応溶液に酢酸エチル(50mL)を加え、5%塩酸水溶液(30mL)と水(30mL)で洗浄した。次いで、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。残存物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル及びヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し白色固体のSS−EDOT(0.71g)を72%の収率で得た。
図1及び以下に得られたSS−EDOTの1H−NMR(400MHz,CDCl3)の測定結果を示す。
【0047】
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 4.04 (dd,J=6.6 and 11.8 Hz, -CH2-, 1H), 4.18-4.28 (m, -CH2-, 3H), 4.35-4.40 (m, -CH-, 1H), 5.50 (d, J=11.0 Hz, -CH=CH2, 1H), 5.93 (d, J=17.8 Hz, -CH=CH2, 1H), 6.25 (d, J=3.8 Hz, Th-H, 1H), 6.32 (d, J=3.8 Hz, Th-H, 1H), 6.77 (dd, J=11.0 and 17.8 Hz, -CH=CH2, 1H), 7.57 (d, J=8.6 Hz, Ph-H, 2H), 7.87 (d, J=8.6 Hz, Ph-H, 1H)
【0048】
実施例2 PSS−EDOTの合成
【0049】
【化6】

【0050】
前記の合成経路にしたがい、PSS−EDOTを合成した。
SS−EDOT(0.47g,1.40mmol)に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(23mg,0.14mmol)とテトラヒドロフラン(14mL)との混合溶液を加え、窒素雰囲気下75℃で24時間攪拌した後、これをヘキサン(200mL)に注いだ。沈殿物をろ過した後、得られた固形物をテトラヒドロフラン(10mL)に溶かし、ヘキサン(200mL)で再沈殿した。沈殿物をメンブレンフィルターでろ過し白色固体のPSS−EDOT(0.21g,Mw=3300,Mw/Mn=1.55)を78%の収率で得た。
図2及び以下に得られたPSS−EDOTの1H−NMR(400MHz,CDCl3)の測定結果を示す。
【0051】
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 0.90-2.10 (br, -CH- and -CH2-, 3H), 4.00-4.41 (m, -CH- and -CH2-, 5H), 6.30 (br, TH-H, 2H), 6.53-7.97 (br, Ph-H, 4H)
【0052】
実施例3 SM−EDOTの合成
【0053】
【化7】

【0054】
前記の合成経路にしたがい、SM−EDOTを合成した。
3,4−[1−(ヒドロキシメチル)エチレンビスオキシ]チオフェン(0.50g,2.90mmol)、NaH(84mg,3.48mmol)及びテトラヒドロフラン(10mL)の混合溶液を室温で1時間攪拌し、これに4−ビニルベンジルクロリド(0.44g,2.90mmol)を加え、この混合物を室温で72時間攪拌した。次いで、この混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。残存物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル及びヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し無色オイル状のSM−EDOT(0.35g)を42%の収率で得た。
図3及び以下に得られたSM−EDOTの1H−NMR(400MHz,CDCl3)の測定結果を示す。
【0055】
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 3.64 (dd, J=5.8 and 10.0 Hz, -CH2-, 1H), 3.72 (dd, J=5.0 and 10.0 Hz, -CH2-, 1H), 4.07 (dd, J=7.4 and 11.4 Hz, -CH2-, 1H), 4.24 (dd, J=2.2 and 11.8 Hz, -CH2-, 1H), 4.31-4.36 (m, -CH-, 1H), 4.58 (s, -CH2-, 2H), 5.26 (d, J=10.6 Hz, -CH=CH2, 1H), 5.76 (d, J=17.6 Hz, -CH=CH2, 1H), 6.32 (d, J=3.6 Hz, Th-H, 1H), 6.34 (d, J=3.6 Hz, Th-H, 1H), 6.71 (dd, J=10.8 and 17.6 Hz, -CH=CH2, 1H), 7.29 (d, J=8.2 Hz, Ph-H, 2H), 7.40 (d, J=8.2 Hz, Ph-H, 2H)
【0056】
実施例4 PSM−EDOTの合成
【0057】
【化8】

【0058】
前記の合成経路にしたがい、PSM−EDOTを合成した。
SM−EDOT(0.25g,0.87mmol)に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(14mg,0.087mmol)とテトラヒドロフラン(8.7mL)との混合溶液を加え、窒素雰囲気下75℃で24時間攪拌した後、これをヘキサン(200mL)に注いだ。沈殿物をメンブレンフィルターでろ過し白色固体のPSM−EDOT(0.13g,Mw=3100,Mw/Mn=1.55)を52%の収率で得た。
図4及び以下に得られたPSM−EDOTの1H−NMR(400MHz,CDCl3)の測定結果を示す。
【0059】
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 0.84-2.04 (br, -CH- and -CH2-, 3H), 3.65-4.51 (m, -CH- and -CH2-, 7H), 6.32 (br, TH-H, 2H), 6.46-7.42 (br, Ph-H, 4H)
【0060】
実施例5 SC−EDOTの合成
【0061】
【化9】

【0062】
前記の合成経路にしたがい、SC−EDOTを合成した。
3,4−[1−(ヒドロキシメチル)エチレンビスオキシ]チオフェン(0.50g,2.90mmol)、4−カルボキシスチレン(0.52g,3.48mmol)及びジクロロメタン(10mL)の混合液に、EDC・HCl(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)(0.56g,2.90mmol)とDMAP(35mg,0.29mmol)を加え、この混合液を室温で6時間攪拌した。次いで、この混合液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。残存物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル及びヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し無色オイル状のSC−EDOT(0.77g)を88%の収率で得た。
図5及び以下に得られたSC−EDOTの1H−NMR(400MHz,CDCl3)の測定結果を示す。
【0063】
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 4.15 (dd, J=6.4 and 11.6 Hz, -CH2-, 1H), 4.32 (dd, J=2.0 and 11.6 Hz, -CH2-, 1H), 4.52 (m, -CH2- and -CH-, 3H), 5.42 (d, J=10.8 Hz, -CH=CH2, 1H), 5.88 (d, J=17.6 Hz, -CH=CH2, 1H), 6.37 (d, J=3.8 Hz, Th-H, 1H), 6.39 (d, J=3.8 Hz, Th-H, 1H), 6.76 (dd, J=10.8 and 17.6 Hz, -CH=CH2, 1H), 7.47 (d, J=8.2 Hz, Ph-H, 2H), 8.00 (d, J=8.2 Hz, Ph-H, 2H)
【0064】
実施例6 PSC−EDOTの合成
【0065】
【化10】

【0066】
前記の合成経路にしたがい、PSC−EDOTを合成した。
SC−EDOT(0.50g,1.65mmol)に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(27mg,0.165mmol)とテトラヒドロフラン(16.5mL)との混合液を加え、窒素雰囲気下75℃で24時間攪拌した後、これをヘキサン(200mL)に注いだ。沈殿物をメンブレンフィルターでろ過し白色固体のPSC−EDOT(0.34g,Mw=51300,Mw/Mn=1.80)を69%の収率で得た。
図6及び以下に得られたPSC−EDOTの1H−NMR(400MHz,CDCl3)の測定結果を示す。
【0067】
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 1.11-2.03 (br, -CH- and -CH2-, 3H), 4.14-4.53 (m, -CH- and -CH2-, 5H), 6.35 (br, TH-H, 2H), 6.53-7.80 (br, Ph-H, 4H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

〔式(1)中、R1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を有する2価の連結基を示し、R2は、重合性官能基を示し、nは、1〜6の整数である。〕
で表される化合物の前記重合性官能基を重合させて得られる高分子化合物。
【請求項2】
2が、エポキシ基又はエチレン性不飽和基である請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
下記式(1)
【化2】

〔式(1)中、R1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を有する2価の連結基を示し、R2は、重合性官能基を示し、nは、1〜6の整数である。〕
で表される化合物の前記重合性官能基を重合させる工程を含む高分子化合物の製造方法。
【請求項4】
下記式(1)
【化3】

〔式(1)中、R1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を有する2価の連結基を示し、R2は、重合性官能基を示し、nは、1〜6の整数である。〕
で表される化合物。
【請求項5】
2が、エポキシ基又はエチレン性不飽和基である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
下記式(2)
【化4】

〔式(2)中、R3は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、−(OCH2m−OH(mは、1〜20の整数である)又は−(OC24q−OH(qは、1〜10の整数である)を示し、nは、1〜6の整数である。〕
で表される化合物と下記式(3)
【化5】

〔式(3)中、R2は、重合性官能基を示し、R4は、−R5−SO2X、−R5X、−R5COOH又は−R5−(C=O)Xを示す(R5は、単結合、メチレン基、又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す)。〕
で表される化合物とを反応させる工程を含む下記式(1)
【化6】

〔式(1)中、R1は、−SO2−O−、−O−又は−(C=O)O−を有する2価の連結基を示し、R2及びnは、前記と同義である。〕
で表される化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153847(P2012−153847A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16218(P2011−16218)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】