説明

新規3,4−ジ置換1,2,3,6−テトラヒドロピリジン誘導体

【課題】新規な3,4-ジ置換1,2,3,6-テトラヒドロピリジン誘導体および関連化合物の提供および医薬組成物の製造における活性成分としての上記誘導体および関連化合物の使用を提供する。
【解決手段】本発明は、新規な3,4-ジ置換1,2,3,6-テトラヒドロピリジン誘導体および関連化合物ならびに医薬組成物の製造における活性成分としての上記誘導体および関連化合物の使用により達成される。本発明は、また、上記誘導体および関連化合物の製造方法、上記誘導体またはその関連化合物の一種または一種以上を含む医薬組成物、特にレニン阻害剤としてのそれらの使用によっても達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式Iの新規化合物に関する。本発明はまた、該化合物類の調製法、式Iの化合物の1種または2種以上を含有する医薬組成物およびとりわけ心臓血管障害および腎不全におけるレニン阻害剤としてのそれらの使用を含む関連様相に関する。さらに、これらの化合物は、他のアスパルチルプロテアーゼ類の阻害剤であるとみなすことができ、それゆえ、マラリア治療用のプラスメプシン阻害剤として、また真菌感染症治療のためのカンジダ・アルビカンス分泌アスパルチルプロテアーゼの阻害剤として有用であろう。
【0002】
レニン・アンギオテンシン系(RAS)において、生理活性物質であるアンギオテンシンII(AngII)が、2段階機構によって生成される。特異性の高い酵素であるレニンがアンギオテンシノーゲンを切断して、アンギオテンシンI(AngI)にする。これがさらに、それほど特異的ではないアンギオテンシン変換酵素(ACE)によって処理されて、AngIIになる。AngIIは、AT1およびAT2と呼ばれる少なくとも2つの受容体サブタイプに作用することが知られている。AT1は、AngIIの既知の機能のほとんどを伝達するようであるが、AT2の役割はいまだ不明である。
【0003】
RASの調節は、心臓血管疾患の治療における大きい進歩を意味している。ACE阻害剤およびAT1遮断剤は、高血圧の治療のためにすでに受入れられている(例えば、非特許文献1および2参照。)。さらに、ACE阻害剤は、腎保護のために(非特許文献3、4参照)、うっ血性心不全の予防に(例えば、非特許文献5および6参照。)および心筋梗塞の予防に(例えば、非特許文献7参照。)使用されている。
【非特許文献1】W・H・ベルケンハーゲル(Berkenhager)、J・L・リード(Reid)(編):高血圧(Hypertension)、アムステルダム、エルセヴィア・サイエンス・パブリッシング・カンパニー(Elsevier Science Publishing Co)、1996、489−519のB・ウェーバー(Waeber)ら、「レニン・アンギオテンシン系:実験的およびヒトの高血圧における役割」
【非特許文献2】M・A・ウェーバー(Weber)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ハイパーテンション(Am. J. Hypertens.)、1992、5、247S
【非特許文献3】M・E・ローゼンベルク(Rosenberg)ら、キドニー・インタナショナル(Kidney International)、1994、45、403
【非特許文献4】J・A・ブライヤー(Breyer)ら、キドニー・インタナショナル、1994、45、S156
【非特許文献5】D・E・ヴォーン(Vaughan)ら、カーディオヴァスキュラー・リサーチ(Cardiovasc. Res.)、1994、28、159
【非特許文献6】F・フォウアド-タラジ(Fouad-Tarazi)ら、アメリカン・ジャーナル・オブ・メディシン(Am. J. Med.)、1988、84(補遺3A)、83
【非特許文献7】M・A・ファイファー(Pfeffer)ら、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N. Eengl. J. Med.)、1992、327、669
【0004】
レニン阻害剤開発の理論的根拠は、レニンの特異性である(例えば、非特許文献8参照。)。レニンに対して既知の唯一の基質が、アンギオテンシノーゲンであり、これはレニンによって(生理的条件下で)作用を受けうるだけである。これに対し、ACEは、AngI以外にブラジキニンをも切断でき、セリンプロテアーゼであるキマーゼによって代替されうる(例えば、非特許文献9参照。)。かくして、患者でのACE阻害はブラジキニン蓄積に至らしめ、これが咳(5−20%)ならびに致命的となる可能性のある血管神経性浮腫(0.1−0.2%)の原因となる(例えば、非特許文献10参照。)。キマーゼはACE阻害剤によって阻害されない。それゆえ、ACE阻害剤処置患者において、AngIIの生成がなお可能である。他方、AT1受容体の(例えばロサルタンによる)遮断は、AT1受容体の遮断によってその濃度が劇的に上昇したAngIIに他のAT−受容体サブタイプを過剰暴露させることになる。このことは、AT1受容体拮抗物質の安全性および効果のプロフィールに関して深刻な問題を提起するかもしれない。要するに、レニン阻害剤は、安全性に関してACE阻害剤およびAT1遮断剤と異なると期待されるだけでなく、より重要なことであるが、それらのRAS遮断効果についても異なると期待される。
【非特許文献8】H・D・クライネルト(Kleinert)、カーディオヴァスキュラー・ドラッグズ(Cardiovasc. Drugs)、1995、9、645
【非特許文献9】A・フサイン(Husain)、ジャーナル・オブ・ハイパテンション(J. Hypertens.)、1993、11、1155
【非特許文献10】Z・H・イズレイリ(Israili)ら、アナルズ・オブ・インターナル・メディシン(Annals of Internal Medicine)、1992,117,234
【0005】
レニン阻害剤は、それらのペプチド擬似性のために経口活性が不十分であるので(例えば、非特許文献11参照。)、それらを用いたきわめて限られた臨床経験(例えば、非特許文献12および13参照。)が得られているだけである。数種の化合物の臨床開発が、この問題ならびに製品の高価格のゆえに中止されている。4つのキラル中心をもつ1種の化合物のみが、臨床試験に入っている(例えば、非特許文献14および15参照。)。このように、大規模に調製でき、代謝に対して安定で、経口で生体利用率がよく、可溶性が十分なレニン阻害剤は、見つかっておらず、探索されている。最近、高いガラス器内活性を示す最初の非ペプチドレニン阻害剤類が記載されている(例えば、非特許文献16、特許文献1および非特許文献17参照。)。しかしながら、これらの化合物の開発状況は不明である。
【非特許文献11】H・D・クライネルト(Kleinert)、カーディオヴァスキュラー・ドラッグズ、1995,9,645
【非特許文献12】M・アジジ(Azizi)ら、ジャーナル・オブ・ハイパテンション、1994,12,419
【非特許文献13】J・M・ニューテル(Neutel)ら、アメリカン・ハート(Am. Heart )、1991,122,1094
【非特許文献14】J.ラフエル(Rahuel)ら、ケミストリー・アンド・バイオロジー(Chem. Biol.)、2000、7、493
【非特許文献15】N・E・ミーリー(Mealy)、ドラッグズ・オブ・ザ・フューチャー(Drugs of the Future)、2001、26、1139
【非特許文献16】C・エフナー(Oefner)ら、ケミストリー・アンド・バイオロジー(Chem. Biol.)、1999、6,127
【特許文献1】国際公開第97/09311
【非特許文献17】H・P・メルキ(Marki)ら、イル・ファルマコ(Il Farmaco)、2001、56,21
【発明の開示】
【0006】
本発明は、非ペプチド性で、低分子量のレニン阻害剤の予期しない同定・確認に関するものである。組織のレニン・キマーゼ系が活性化されて、腎、心臓および血管のリモデリング、アテローム性動脈硬化、あるいは再狭窄などの病的に変化した局所機能に至らしめる可能性のある血圧調節の範囲を超えた適応症において活性な持続性の経口活性レニン阻害剤を記述する。
【0007】
特に、本発明は、一般式Iの新規な化合物に関する。
【化2】

式中、

XおよびWは、窒素原子またはCH-基を独立して表し;

Vは、-(CH)-;-A-(CH)-;-CH-A-(CH)-;-(CH)-A-;-(CH)-A-(CH)-;-A-(CH)-B-;-CH-CH-CH-A-CH-;-A-CH-CH-B-CH-;-CH-A-CH-CH-B-;-CH-CH-CH-A-CH-CH-; -CH-CH-CH-CH-A-CH-;-A-CH-CH-B-CH-CH-;-CH-A-CH-CH-B-CH-;-CH-A-CH-CH-CH-B-;-CH-CH-A-CH-CH-B-を表す;

AおよびBは、-O-; -S-; -SO-; -SO-を独立して表す;

Uは、アリール;ヘテロアリールを表す;

Tは、-CONR-;-(CH)OCO-;-(CH)N(R)CO-;-(CH)N(R)SO-;-COO-;-(CH)OCONR-; -(CH)N(R')CONR-を表す;

Qは、低級アルキレン; 低級アルケニレンを表す;

Mは、水素;シクロアルキル;アリール;ヘテロシクリル;ヘテロアリール;アリール-O(CH); ヘテロアリール-O(CH); アリール-O(CH)O(CH); ヘテロアリール-(CH)O(CH); アリール-OCHCH(R)CH; ヘテロアリール-OCHCH(R)CHを表す;

およびR'は、水素;低級アルキル;低級アルケニル; 低級アルキニル; シクロアルキル;アリール;シクロアルキル-低級アルキルを独立に表す;

は、-OH、低級アルコキシ、-OCOR、-COOR、-NR3’、-OCONR'、-NCONR'、シアノ、-CONR'、SOH、-SONR'、-CO-モルホリン-4-イル、-CO-((4-低級アルキル)ピペラジン-1-イル)、-NH(NH)NH、-NR'を表す、但し、炭素原子がsp-混成軌道の場合、この炭素原子は多くても1個のヘテロ原子に結合していることを条件とする;

およびR' は、水素; 低級アルキル; 低級アルケニル; シクロアルキル; シクロアルキル-低級アルキルを独立に表す;

およびR' は、水素; 低級アルキル; シクロアルキル; シクロアルキル-低級アルキル; ヒドロキシ-低級アルキル; -COOR; -CONHを独立に表す;

は、-OH、 -OR; -OCOR; -OCOORを表し; またはR および R は、これらの基が結合している炭素原子と共に、2位がR および R’で置換された1,3-ヂオキソラン環を形成するか;または R および R は、これらの基が結合している炭素原子と共に、1,3-ジオキソラン-2-オン環を形成する;

pは、整数1、2、3または4であり;
rは、整数3、4、5、または6であり;
sは、整数2、3、4、または5であり;
tは、整数1、2、3、または4であり;
uは、整数1、2、または3であり;
vは、整数2、3、または4であり;
wは、整数1または2である;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックスおよび形態学的形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物、およびメソ形。
【0008】
一般式Iの定義において、もし他のところで述べられていないなら、用語の低級アルキルは、単独でまたは他の基と組み合わせて、1乃至7個、好ましくは1乃至4個の炭素原子をもつ飽和の直鎖および分岐鎖の基を意味し、これらはハロゲンによって任意に置換されていてもよい。低級アルキル基の例はメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルである。メチル、エチルおよびイソプロピル基が好ましい。
【0009】
用語の低級アルコキシは、R-O基で示され、Rは低級アルキルである。低級アルコキシ基の例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシである。
【0010】
用語の低級アルケニルは、単独であるいは他の基と共に、オレフィン結合を含み、2乃至7個、好ましくは2乃至4個の炭素原子からなる直鎖および分岐鎖基を意味し、これらはハロゲンで任意に置換されていてもよい。低級アルケニルの例は、ビニル、プロペニルまたはブテニルである。
【0011】
用語の低級アルキニルは、単独でまたは他の基と共に、三重結合を含み、2乃至7個、好ましくは2乃至4個の炭素原子からなる直鎖および分岐鎖基を意味し、これらはハロゲンで任意に置換されていてもよい。低級アルキニルの例は、エチニル、プロピニルまたはブチニルである。
【0012】
用語の低級アルキレンは、単独でまたは他の基と共に、1乃至7個、好ましくは1乃至4個の炭素原子の直鎖および分岐鎖の2価の基を意味し、これらはハロゲンで任意に置換されていてもよい。低級アルキレンの例はエチレン、プロピレンまたはブチレンである。
【0013】
用語の低級アルケニレンは、単独でまたは他の基と共に、オレフィン結合を有し、2乃至7個、好ましくは2乃至4個の炭素原子からなる直鎖および分岐鎖の2価の基を意味し、ハロゲンで置換されていてもよい。低級アルケニレンの例はビニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0014】
用語の低級アルキレンジオキシは、低級アルキレンの両末端が酸素原子で置換されたものを意味する。低級アルキレンジオキシ基の例は、メチレンジオキシおよびエチレンジオキシが好ましい。
【0015】
用語の低級アルキレンオキシは、低級アルキレンの1末端が酸素原子で置換されているものを意味する。低級アルキレンオキシ基の例はエチレンオキシおよびプロピレンオキシが好ましい。
【0016】
用語のハロゲンは、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素または沃素を意味し、好ましくはフッ素、塩素および臭素である。
【0017】
用語のシクロアルキルは、単独でまたは組み合わせて、3乃至7個の炭素原子をもつ飽和環式炭素環系を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルであり、これらは低級アルキル、低級アルケニル、低級アルケニレン、低級アルコキシ、低級アルキレンオキシ、低級アルキレンジオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、-CF、-NR1'、-NRC(O)R1'、-NRS(O)R1'、C(O)NR1'、低級アルキルカルボニル、-COOR、-SR、-SOR、-SO、SONR1’により任意にモノ-、ジ-またはトリ置換されていてもよい。シクロプロピル基が好ましい基である。
【0018】
用語のアリールは、単独であるいは組み合わせて、フェニル、ナフチルまたはインダニル基、好ましくはフェニル基を言い、これらは、独立に、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール環とで5員または6員環を形成する低級アルケニレンまたは低級アルキレン、低級アルコキシ、低級アルキレンジオキシ、低級アルキレンオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ-低級アルキル、ハロゲン、シアノ、-CF、-OCF、-NR1’、-NR1’-低級アルキル、-NRC(O)R1’、-NRS(O)、-C(O)NR1’、-NO、低級アルキルカルボニル、-COOR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-SONR1’、ベンジルオキシによって任意にモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-置換されていてもよい。
【0019】
用語のアリールオキシはAr-O-基を言い、ここで、Arはアリールである。アリールオキシ基の例はフェノキシである。
【0020】
用語のヘテロシクリルは、単独でまたは組み合わせて、1個または2個の窒素、酸素または硫黄原子を含み、これらは同一または異なってもよい、飽和または不飽和(ただし、芳香族でない)の5、6または7員環を意味し、これらの環は、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシおよびハロゲンで任意に置換されてもよい。窒素原子は、もし存在するなら、-COOR基で置換されていてもよい。このような環系の例は、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、1,4-ジオキサニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロピロリル、イミダゾリジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルである。
【0021】
用語のヘテロアリールは、単独でまたは組み合わせて、1個乃至4個の窒素原子を含む6員の芳香族環;1個乃至3個の窒素原子を含むベンゼン縮合6員芳香族環;1個の酸素、1個の窒素または1個の硫黄原子を含む5員芳香族環;1個の酸素、1個の窒素または1個の硫黄原子を含むベンゼン縮合5員芳香族環;1個の酸素および1個の窒素原子を含む5員芳香族環およびこれらのベンゼン縮合誘導体;硫黄および窒素または酸素原子を含む5員芳香族環およびこれらのベンゼン縮合誘導体;2個の窒素原子を含む5員芳香族環およびこれらのベンゼン縮合誘導体;3個の窒素原子を含む5員芳香族環およびこれらのベンゼン縮合誘導体、またはテトラアゾリル環を意味する。このような環系の例は、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾリル、トリアジニル、チアジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、クマリニル、ベンゾチオフェニル、キナゾリニル、キノキサリニルである。これらの環は、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキレン、低級アルケニレン、低級アルキレンジオキシ、低級アルキレンオキシ、ヒドロキシ-低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、-CF、-OCF、-NR1'、-NR1'-低級アルキル、-N(R)COR、-N(R)SO、-CONR1'、-NO、低級アルキルカルボニル、-COOR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-SONR1'、別のアリール、別のヘテロアリール、または別のヘテロシクリル等で適当に置換されていてもよい。
【0022】
用語のヘテロアリールオキシはHet-O基を言い、ここで、Hetはヘテロアリールである。
【0023】
シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールおよびアリールなる表現に関して略述した置換基は、一般式Iの定義および請求項1乃至6における定義では、簡素化、明確性の理由で省略されているが、しかし、一般式Iの定義や請求項1乃至6における定義は、そこに含まれているものと解すべきである。
【0024】
用語の医薬品として許容し得る塩は、塩酸または臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等で、生きている生体に対して非毒性である無機酸または有機酸との塩、または一般式Iの化合物が事実上酸性である場合、アルカリまたはアルカリ土類塩基などの無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等との塩のどちらかの塩を包含する。
【0025】
本発明の化合物は、また酸素(水酸基縮合)、硫黄(スルフィドリル縮合)および/または窒素などの1個またはそれ以上の部位を介してニトロソ化された一般式Iのニトロソ化合物を含む。本発明のニトロソ化された化合物は当該技術に熟練した者に知られている通常の方法で製造できる。例えば、化合物をニトロソ化する既知の方法は米国特許第5,380,758および5,703,073;国際公開第97/27749;国際公開第98/19672;国際公開第98/21193;国際公開第99/00361およびOaeら、Org. Prep. Proc. Int., 15(3):165-198 (1983)に記載されている。これらの文献の各開示はその全部がここに文献によって組み込まれる。
【0026】
一般式Iの化合物は1個または1個以上の不斉炭素原子を含有することができ、また、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物、およびメソ形ならびにこれらの医薬品として許容し得る塩の形で製造してもよい。本発明はこれらの形態のすべてを包含する。混合物はそれ自体既知の方法、すなわち、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、HPLCまたは結晶化により分離することができる。
【0027】
一般式Iの好ましい化合物のグループは、X、W、V、およびUが上記一般式Iで定義したものと同義一であり、Tが、-CONR-であり;Qがメチレンであり;Mがアリール; ヘテロアリール; アリール-O(CH); ヘテロアリール-O(CH)である化合物である。
【0028】
一般式Iのさらに好ましい化合物の別のグループは、X、W、T、QおよびMが一般式Iで定義されたものと同じであり、Vが次の基:-CHCHO-; -CHCHCHO-; -OCHCHO-の一つであり;Uが上記一般式Iで定義したものと同義である化合物である。
【0029】
一般式Iのもっと好ましい化合物の別のグループは、V、U、T、QおよびMが一般式Iで定義されたものと同じであり、XおよびWが-CH-を表す化合物である。
【0030】
一般式Iのもっと好ましい化合物の別のグループは、X、W、V、Q、TおよびMが一般式Iで定義したものと同じであり、Uがモノ、ジ、またはトリ置換フェニルまたはヘテロアリールである化合物である。好ましい置換基は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、CFから独立に選ばれる。
【0031】
一般式Iの特に好ましい化合物は、下記のグループから選ばれる化合物である:

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-フルオロベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロベンジル)エチルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-フルオロ-5-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(3-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(5-フルオロ-2-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-6-フルオロベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-ブロモベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジメチルベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]-フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,5-ビス-トリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-5-トリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-3,6-ジフルオロベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(3-メチルベンジル)アミド.
【0032】
一般式Iの化合物および医薬品として許容可能な同化合物の塩は、例えば医薬組成物の形で治療として用いることができる。これらの医薬組成物は、一般式Iの化合物を少なくとも1種および通常の担体物質および補助剤を含み、特に、心臓血管疾患および腎疾患を含むレニン・アンギオテンシン系(RAS)の調節不全に関連する疾患の治療または予防に使用することができる。このような疾患の例としては、高血圧、うっ血性心不全、肺心不全、冠状動脈性心臓病、心不全、腎臓機能障害、腎または心筋虚血、アテローム性動脈硬化症、腎不全がある。これらの医薬組成物は、また、バルーンまたはステントによる血管形成後の再狭窄の予防、勃起障害、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障の治療にも用いることができる。さらに、これらは、糖尿病性合併症、血管手術または心臓手術後の合併症、臓器移植後の免疫抑制剤による治療の合併症、サイクロスポリン治療の合併症、およびRASに関連していることが現在知られている他の疾患の治療および予防にも用いることができる。
【0033】
別の具体例においては、本発明は、高血圧、うっ血性心不全、肺高血圧、心不全、腎臓機能障害、腎または心筋虚血、アテローム性動脈硬化症、腎不全、勃起障害、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障、糖尿病性合併症、血管手術または心臓手術後の合併症、再狭窄、臓器移植後の免疫抑制剤による治療の合併症を含むRASに関連する疾患、およびRASに関連している他の疾患の治療および/または予防のための方法に関し、該方法は一般式Iに従う化合物をヒトまたは動物に投与することからなる。
【0034】
本発明は、さらに、高血圧、うっ血性心不全、肺高血圧、心不全、腎臓機能障害、腎または心筋虚血、アテローム性動脈硬化症、腎不全、勃起障害、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障、糖尿病性合併症、血管手術または心臓手術後の合併症、再狭窄、臓器移植後の免疫抑制剤による治療の合併症を含むRASに関連する疾患、およびRASに関連していることが現在知られている他の疾患の治療および/または予防のために上記に定義した一般式Iの化合物の使用に関する。
【0035】
加えて、本発明は、高血圧、冠疾患、心不全、腎臓機能障害、腎臓または心筋虚血、 および腎不全などのRASに関連する疾患の治療および/または予防のための医薬の製造のために上記に定義した化合物の使用に関する。
【0036】
一般式Iの化合物は、また、上記した疾患の治療のために、一種または一種以上の薬理学的に活性な化合物、例えば、他のレニン阻害剤、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、エンドセリン受容体拮抗薬、血管拡張薬、カルシウム拮抗薬、カリウム賦活剤、利尿剤、交感神経遮断薬、β-アドレナリン拮抗薬、中性エンドペプチダーゼ阻害薬、α-アドレナリン拮抗薬と組み合わせて使用することもできる。
【0037】
上記の一般式Iによって包含される活性成分をもたらすあらゆる形のプロドラッグは本発明に含まれる。
【0038】
一般式Iの化合物は、以下に説明する方法、実施例中に記載する方法もしくは類似の方法により製造することができる。
【0039】
前駆体の製造:

前駆体は、主要な中間体および/または成分として製造された化合物で併発化学反応におけるさらなる転換に適したものである。

理想的な出発物質は、市場で入手可能な任意の4-オキソ-ピペリジン-3-カルボン酸エステル誘導体類、例えば1-ベンジル-4-オキソ-ピペリジン-3-カルボン酸メチルエステル、場合によっては塩として、である。実用的な目的のため、別のエステル誘導体A(但し、Rは任意に、低級アルキル、低級アルケニル、またはベンジル基である。)にエステル交換し(例えば、Seebach D.ら、 Synthesis, 1982, 138に基づく)、その後、N-保護基(PG:略号はすべて実施例項の冒頭に概述されている)をタイプBの誘導体に変える必要があるかもしれない(スキーム 1)。
【0040】
【化3】

ビニールトリフラートCを形成し、その後、Pd(0)錯体の触媒作用でカップリングしてタイプDのテトラヒドロピリジン誘導体にする。なお、R は一般式Iで定義したと同義の任意のU-V基、またはこのような基の化学前駆体を任意に表す(スキーム 2)。
【化4】

もし、例えばRがシラニルエーテルを有する末端結合基の場合、タイプDの化合物を脱保護してタイプEの化合物にしてから、さらにミツノブ反応を用いてフェノールまたは芳香族アルコールにカップリングさせてタイプFの誘導体にする。なお、VおよびUは上記一般式Iで定義した意味を有する(スキ−ム 3)。エステルFは、さらに、塩基性条件下で開裂させて前駆体Gを生成し、一方、二重結合は部分的または完全に4,5-位に移動するであろう。
【化5】

その他の化学的方法として国際公開第03/093267および国際公開第04/002957に類似する方法を用いてもよい。 これらの方法は一般式Iに含まれるその他の化合物の製造を可能とする。

最終化合物の製造

タイプGの化合物をアミンにカップリングさせて対応アミン(なお、V、UおよびMは上記一般式で定義した意味を有する)を得ることができる。N-保護基(PG)を脱離させて最終化合物にする(なお、V、 U、 Q およびM は上記一般式で定義した意味を有する)(スキーム4)。もし、前駆体Gが、その3,4-位が二重結合をもつ対応する構造異性体に混ざっている場合には、今では両者をフラッシュクロマトグラフィーで分離するか、溶離液としてある種のアンモニア性物質を用いて、あるいはHPLCによって分離することが可能である。
【化6】

【0041】
式Iの化合物および医薬品として許容可能な同化合物の酸付加塩を、例えば経腸投与、非経口投与、あるいは局所投与の医薬品の形で、薬剤として用いることができる。例えば、これらは、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬カプセルおよび軟カプセル剤、液剤、乳剤もしくは懸濁剤等の形で経口的に、坐薬等の形で直腸から、注射液や輸液の形で非経口的に、あるいは軟膏、クリームまたはオイル等の形で局所的に投与(塗布)できる。
【0042】
医薬品の製造は、説明している式Iの化合物および医薬品として許容可能な同化合物の酸付加塩を、任意で他の治療的に有用な物質と組合わせて、当該技術に熟練した者によく知られている方法で、適切で、無毒性で、不活性な治療的に適合性のある固形または液体のキャリアーとともに、もし必要な場合は、通常の製薬補助剤を加えて、製剤形態にして、達成できる。
【0043】
適しているキャリアー物質としては、無機的なキャリアー物質だけではなく、有機的なキャリアー物質もある。したがって、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠および硬カプセルのキャリアー物質として、ラクトース、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩を用いることができる。軟カプセルに適したキャリアー物質には、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固形ポリオールおよび液体ポリオールがある(ただし、軟カプセルでは、活性成分の性質によってはキャリアーが不要の場合がある)。液剤およびシロップの製造に適したキャリアー物質には、例えば、水、ポリオール、サッカロース、転化糖などがある。注射剤に適したキャリアー物質には、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロールおよび植物油がある。坐薬に適したキャリアー物質には、例えば、天然油および硬化油、ワックス、脂肪および半固形または液体ポリオールがある。局所用製剤に適したキャリアー物質は、グリセリド、半合成グリセリドおよび合成グリセリド、硬化油、液体ワックス、液体パラフィン、液体脂肪アルコール、ステロール、ポリエチレングリコールおよびセルロース誘導体である。
【0044】
製薬補助剤として考慮対象となるのは、通常の安定剤、保存料、湿潤剤および乳化剤、コンシステンシー改善剤、フレーバー改善剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝物質、可溶化剤、着色剤、マスキング剤および酸化防止剤である。
【0045】
式Iの化合物の用量は、コントロールの対象となる疾患、患者の年齢および個人的な条件、投与方法に応じて幅の広い範囲内で変化し、もちろん、個々の具体的な事例の個別要件に合わせることになる。成人患者の場合は、約1mgから約1000mg、特に約50mgから約500mgの1日投与量が検討対象となる。子供の場合、投薬は体重や年齢に適合されるべきである。
【0046】
医薬品は、式Iの化合物を、通常は約1〜500mg含む、好ましくは5〜200mg含む。
【0047】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明する働きをする。ただし、これらは、いかなる方法によっても、その範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0048】
全般注記

次の化合物が、一般式Iで包含される化合物の合成に対して、記述された方法に従って製造された。化合物はすべて、H-NMR(300 MHz)により、場合によっては13C-NMR(75 MHz)(バリアン オックスフォ−ド、300 MHz;化学シフトをTMSに対するppmで示す)により、そして高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)により:A:2分<t<10分;(ウォーターズ マイクロマス;Alliance 2790 HTを持つESIプローブを装備したZMDプラットフォーム;カラム:2×30 mm、グロムシルODS4、3μM、120A;グラディエント:0-100%アセトニトリル水溶液、6分、0.05%ギ酸、流速:0.45 mL/分;t単位は分)、B:0.1分<t<2分;(HP110 DADとHP110バイナリーポンプを持つESIプローブを装備したフィニガンAQA;カラム:ディベロシルRP-AQUEOUS、5 μM、4.6 mm × 50 mm;グラディエント:5-95%メタノール水溶液、(0.04% TFA)、1分、95%メタノール水溶液、(0.04% TFA)、0.4分、4.5 mL/分)、それからTLC(メルク社製TLCプレート、シリカゲル60 F254)により特徴付けられた。高速液体クロマトグラフィー質量分析法及びTLCの分析データのみが、ここでは示されている。
【0049】
略記

ACE アンギオテンシン変換酵素
Ang アンギオテンシン
aq. 水性の、水を含む
Bn ベンジル
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
BuLi n-ブチルリチウム
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4-N,N-ジメチルアミノピリジン
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC.HClエチル-N,N-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩
EIA 酵素免疫測定法
eq. 当量
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
FC フラッシュ・クロマトグラフィー
HOBt ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeOH メタノール
org. 有機的な、有機の
PBS リン酸緩衝食塩水
PG 保護基
Ph フェニル
RAS レニン・アンジオテンシン系
RP18 C18炭化水素を充填した逆相カラム
rt 室温
sol. 溶液、水溶液、水剤
TBDMS tert-ブチルジメチルシリル
Tf トリフルオロメチルスルホニル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0050】
前駆体の製造

4-オキソピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチル エステル 3-メチル エステル (B)

1-ベンジル-4-オキソピペリジン-3-カルボン酸メチルエステル塩酸塩 (5.00 g、 17.6 mmol)、トリエチルアミン (2.45 mL、 17.6 mmol)およびBocO (4.20 g、 20.0 mmol)をEtOH (30 mL)中に含む縣濁液をNでパージした。Pd/C (10%、 600 mg)を加え、この縣濁液をHでパージした。 反応混合物をH雰囲気下で24時間撹拌し、ついでセライトで濾過した。濾液を減圧条件下で蒸発させた。残留物をFC(EtOAc/ヘプタン 1:4 → 2:3)で精製して表題化合物を得た(4.02 g、 89%)。Rf = 0.60 (EtOAc/ヘプタン 1:1)。 LC-MS: Rt = 1.09 min、 ES+= 202.03。
【0051】
4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-5,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸1-tert-ブチル エステル 3-メチル エステル (C)

化合物 B (4.00 g、 15.6 mmol)をTHF (100 mL)中に溶解した0℃の溶液にNaH (油中縣濁液、 55-65%、 1.20 g、 約31 mmol)を添加した。この縣濁液を30分間0℃で撹拌し、TfNPh (8.27 g、 23.1 mmol)を添加した。氷浴を取り除き、反応混合物を3日間室温で撹拌した. 氷を加え、溶媒を減圧条件下で除去した。 残留物をEtOAcで希釈し、10%のNaCO水溶液で洗浄した。 有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧条件下で除去した。 残留物をFC (EtOAc/ヘプタン 1:4) で精製して表題化合物を得た(5.19 g、 86%)。 LC-MS: Rt = 1.17、 ES+= 374.96。
【0052】
4-{4-[3-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]フェニル}-5,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸1-tert-ブチル エステル 3-メチル エステル (D)

[3-(4-ブロモフェニル)プロポキシ]-tert-ブチルジメチルシラン(Kiesewetter D. O., Tetrahedron Asymmetry, 1993, 4, 2183; 6.19 g, 19.7 mmol)をTHF(100 mL)中に溶解した-78℃の溶液にn-BuLi ( ヘキサン中1.5M、 14.0 mL、 21.0 mmol)を添加した。 この溶液を-78℃で30分間撹拌してからZnCl (THF中に1M、 22.3 mL、 22.3 mmol)を添加した。得れた溶液を放置して室温にまで温め、化合物C (5.10 g、 13.1 mmol)とPd(PPh) (300 mg、 0.26 mmol)を添加した。室温で20分後に、反応混合液に氷を加えた。溶媒を減圧条件下で除去し、残留物をEtOAcで希釈した。この混合液を1MのNaOH水溶液で洗浄した。有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧条件下で除去した。残留物をFC (EtOAc/ヘプタン 1:9)で精製して表題化合物を得た(5.77 g、 90%)。LC-MS: Rt = 7.27 min、 ES+= 512.54。
【0053】
4-[4-(3-ヒドロキシプロピル)フェニル]-5,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチル エステル 3-メチル エステル (E)

TBAF(1.90 g、 6.00 mmol)を、化合物D(1.95 g、 4.00 mmol)をTHF(40 mL)中に溶解した溶液に添加した。反応混合物を6時間室温で撹拌しEtOAcで稀釈した。得られた混合物を水と塩水で洗浄した。有機抽出物をMgSOで乾燥し、 濾過してから溶媒を減圧条件下で除去した。残留物をFC(EtOAc/ヘプタン 2:3)で精製して表題化合物を得た(1.27 g、 84%)。LC-MS: Rt = 1.06、 ES+= 376.18。
【0054】
4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-5,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸1-tert-ブチル エステル 3-メチル エステル (F)

化合物E(4.7 g、 12.5 mmol)、2,3,6-トリフルオロフェノール(3.7 g、 25.0 mmol)、アゾジカルボン酸ジピペリジン(6.32 g、 34.2 mmol)、トリ-n-ブチルホスフィン(85%、 9.3 mL、 37.6 mmol)およびDIPEA( 0.035 mL、 0.20 mmoL)をトルエン(20 mL)中に溶解した溶液を1 時間室温で撹拌し、ついで、2時間60℃で撹拌した。 反応混合物を放置し室温にまで冷却し、EtOAcで希釈してから水で洗浄した。有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧条件下で除去した。残留物をFC (EtOAc/ヘプタン 1:4 → 3:7)で精製して表題化合物を得た(5.23 g、 83%)。
【0055】
4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2-ジヒドロ-5H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸1-tert-ブチル エステル (G)

化合物F(5.23 g、 10.3 mmol)をEtOH (90 mL)中に溶解した溶液に1MのNaOH(90 mL)水溶液を加えた。得られた混合物を35分間80℃で撹拌し、それから放置して室温にまで冷却した。1MのHCl水溶液(13 mL)を加え、得られた混合物をEtOAc(3×)で抽出した。一緒にした有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過してから溶媒を減圧条件下で除去した。残留物をFC (EtOAc/ヘプタン 2:3)で精製して表題化合物を得た(4.55 g、 89%)。
【0056】
最終化合物の製造

アミドカップリングの一般的方法A

所望のカルボン酸(1.00 eq)、所望のアミン (2.00 eq)、 EDC.HCl (1.10 eq.)、HOBt (触媒量)、DMAP(触媒量)およびDIPEA (2.00 eq.)をCHCl (20 mL/g 酸)中に溶解する溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を珪藻土(diatomac earth)(Isolute Sorbent Technology, Johnson, C. R.ら, Tetrahedron, 1998, 54, 4097)で洗浄し、有機抽出物を減圧条件下で蒸発させた。 残留物をさらに精製せずに用いた。
【0057】
Boc-保護基を除去するための一般的方法 B

出発物質をCHCl (10 mL/g出発物質)中に溶解させた溶液を0℃にまで冷却した。4Mの HClを含むジオキサン(CHClと同じ容量)を添加し、反応混合物を90分間室温のままに維持した。溶媒を減圧条件下で除去した。残留物をHPLCで精製し所望の化合物を得た。
【0058】
還元的アミノ化の一般的方法 C

アルデヒド (液体)をMeOH (0.5 mL/mmol)中に溶解した溶液にアミン (1.2 eq.)を添加した。この溶液を2時間撹拌した。水素化ほう素ナトリウム (1.2 eq.)を0℃で部分状に添加し、撹拌を室温で4時間続けた。1M NaOH水溶液を加え、MeOHを蒸発させた。混合物をEtOAcで2回抽出し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し濾過した。溶媒を減圧条件下で除去した。分離したアミンを、純度により、さらに精製せずに、またはフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン: 2/8)で精製して用いた。
【0059】
第二アミン類の製造

シクロプロピル(2-フルオロベンジル)アミン

2-フルオロベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

(2-クロロベンジル)シクロプロピルアミン

2-クロロベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

(2-クロロベンジル)エチルアミン
Y.イシハラら; Chem. Pharm. Bull., 1991, 39, 3225参照。

シクロプロピル-(2-フルオロ-5-メトキシベンジル)アミン

2-フルオロ-5-メトキシベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

シクロプロピル-(3-メトキシベンジル)アミン

3-メトキシベンズアルデヒド およびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

シクロプロピル-(2-メトキシベンジル)アミン

2-メトキシベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

シクロプロピル-(5-フルオロ-2-メトキシベンジル)アミン

5-フルオロ-2-メトキシベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

(2-クロロ-6-フルオロベンジル)シクロプロピルアミン

2-クロロ-6-フルオロベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

(2-ブロモベンジル)シクロプロピルアミン

2-ブロモベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

シクロプロピル-(2,3-ジメチルベンジル)アミン

2,3-ジメチルベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

(3,5-ビストリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミン

3,5-ビストリフルオロメチルベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

(2-クロロ-3,6-ジフルオロベンジル)シクロプロピルアミン

2-クロロ-3,6-ジフルオロベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。

シクロプロピル-(3-メチルベンジル)アミン

3-メチルベンズアルデヒドおよびシクロプロピルアミンから一般的方法Cに従って合成した。
【0060】
実施例:

実施例 1

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-フルオロベンジル)アミド

シクロプロピル-(2-フルオロベンジル)アミンを用い一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.93; ES+: 539.21。
【0061】
実施例 2

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(2-クロロベンジル)エチルアミド

(2-クロロベンジル)エチルアミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.94; ES+: 543.17。
【0062】
実施例 3

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(2-クロロベンジル)シクロプロピルアミド

(2-クロロベンジル)シクロプロピルアミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.94; ES+: 555.19。
【0063】
実施例 4

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-フルオロ-5-メトキシベンジル)アミド ギ酸塩

シクロプロピル (2-フルオロ-5-メトキシベンジル)アミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.94; ES+: 569.14。
【0064】
実施例 5

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(3-メトキシベンジル)アミド ギ酸塩

シクロプロピル (3-メトキシベンジル)アミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.93; ES+: 551.18。
【0065】
実施例 6

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-メトキシベンジル)アミド ギ酸塩

シクロプロピル (2-メトキシベンジル)アミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.94; ES+: 551.18。
【0066】
実施例 7

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(5-フルオロ-2-メトキシベンジル)アミド ギ酸塩

シクロプロピル (5-フルオロ-2-メトキシベンジル)アミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.95; ES+: 569.15。
【0067】
実施例 8

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-6-フルオロベンジル)シクロプロピルアミド ギ酸塩

(2-クロロ-6-フルオロベンジル)シクロプロピルアミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.95; ES+: 573.10。
【0068】
実施例 9

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(2-ブロモベンジル)シクロプロピルアミド ギ酸塩

(2-ブロモベンジル)シクロプロピルアミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した 。 LC-MS: Rt = 0.96; ES+: 599.04。
【0069】
実施例 10

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジメチルベンジル)アミド ギ酸塩

シクロプロピル-(2,3-ジメチルベンジル)アミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.97; ES+: 549.17。
【0070】
実施例 11

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]-フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,5-ビストリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミド ギ酸塩

(3,5-ビストリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 1.00; ES+: 657.13。
【0071】
実施例 12

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-3,6-ジフルオロベンジル)シクロプロピルアミド-ギ酸塩

(2-クロロ-3,6-ジフルオロベンジル)シクロプロピルアミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.96; ES+: 591.12。
【0072】
実施例 13

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(3-メチルベンジル)アミド ギ酸塩

シクロプロピル-(3-メチルベンジル)アミンを用い、一般的方法AおよびBに従って製造した。 LC-MS: Rt = 0.95; ES+: 535.19。
【0073】
一般式Iの化合物およびそれらの塩の活性を決定するために次の試験法を実施した。

本発明の化合物によるヒト組換えレニンの阻害
ガラス器内酵素アッセイを、384ウエルのポリプロピレン製プレート(ヌンク社)を用いて実施した。アッセイ用緩衝液は、1mMのEDTAと0.1%のBSAを含有する10mMのPBS(ギブコBRL社)からなっていた。培養物は、各ウエル当り50μLの酵素含有混合物および2.5μLのレニン阻害剤のDMSO溶液からなっていた。酵素含有混合物を4℃で予備混合した。それは次の成分からなる:
・ヒト組換えレニン(0.16ng/mL)
・合成ヒトアンギオテンシン(1−14)(0.5μM)
・ヒドロキシキノリン硫酸塩(1mM)。
次に、それらの混合物を37℃で3時間インキュベートした。
酵素活性およびその阻害率を求めるために、384ウエルのプレート(ヌンク)での酵素免疫アッセイ(EIA)によって、蓄積AngIを検出した。5μLの培養物または標準を、事前にAngIとウシ血清アルブミンとの共有結合複合体(AngI−BSA)でコーティングした免疫プレートに移した。0.01%のトゥイーン(Tween)20を含有する上記アッセイ緩衝液中のAngI抗体溶液75μLを加え、4℃で一夜一次インキュベーションを行った。プレートを0.01%トゥイーン20含有PBSで3回洗い、次に、抗ウサギペルオキシダーゼ結合抗体(WA934、アマーシャム社)とともに室温で2時間インキュベートした。プレートを3回洗浄後、ペルオキシダーゼ基質ABTS(2,2’−アジノ-ジ(3−エチルベンズチアゾリンスルホネート)を加え、プレートを室温で60分間インキュベートした。0.1Mクエン酸(pH4.3)で反応を停止させたのち、マイクロプレートリーダーを用い、405nmでプレートを評価した。各濃度点について阻害百分率を計算し、酵素活性を50%阻害するレニン阻害濃度(IC50)を求めた。試験したすべての化合物のIC50値は、1μM未満である。選択された化合物は、非常に良好な生物学的利用能を示し、代謝学的に既知の化合物に比べてより高い安定性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物
【化1】



式中、
XおよびWは、窒素原子またはCH-基を独立して表し;

Vは、-(CH)-;-A-(CH)-;-CH-A-(CH)-;-(CH)-A-;-(CH)-A-(CH)-;-A-(CH)-B-;-CH-CH-CH-A-CH-;-A-CH-CH-B-CH-;-CH-A-CH-CH-B-;-CH-CH-CH-A-CH-CH-; -CH-CH-CH-CH-A-CH-;-A-CH-CH-B-CH-CH-;-CH-A-CH-CH-B-CH-;-CH-A-CH-CH-CH-B-;-CH-CH-A-CH-CH-B-を表す;

AおよびBは、-O-; -S-; -SO-; -SO-を独立して表す;

Uは、アリール;ヘテロアリールを表す;

Tは、-CONR-;-(CH)OCO-;-(CH)N(R)CO-;-(CH)N(R)SO-;-COO-;-(CH)OCONR-; -(CH)N(R')CONR-を表す;

Qは、低級アルキレン; 低級アルケニレンを表す;

Mは、水素;シクロアルキル;アリール;ヘテロシクリル;ヘテロアリール;アリール-O(CH); ヘテロアリール-O(CH); アリール-O(CH)O(CH); ヘテロアリール-(CH)O(CH); アリール-OCHCH(R)CH; ヘテロアリール- OCHCH(R)CHを表す;

およびR' は、水素;低級アルキル;低級アルケニル; 低級アルキニル; シクロアルキル; アリール; シクロアルキル- 低級アルキルを独立に表す;

は、-OH, 低級アルコキシ, -OCOR, -COOR, -NR3’, -OCONR', -NCONR', シアノ, -CONR', SOH, -SONR', -CO-モルホリン-4-イル, -CO-((4-低級アルキル)ピペラジン-1-イル), -NH(NH)NH, -NR'を表す, 但し、炭素原子が sp-混成軌道の場合、この炭素原子は多くても1個のヘテロ原子に結合していることを条件とする;

およびR' は、水素; 低級アルキル; 低級アルケニル; シクロアルキル; シクロアルキル-低級アルキルを独立に表す;

およびR' は、水素; 低級アルキル; シクロアルキル; シクロアルキル- 低級アルキル; ヒドロキシ- 低級アルキル; -COOR; -CONHを独立に表す;

は、-OH, -OR; -OCOR; -OCOORを表し; またはR および R は、これらの基が結合している炭素原子と共に、2位がR および R’で置換された1,3-ヂオキソラン環を形成するか;または R および R は、これらの基が結合している炭素原子と共に、1,3-ジオキソラン-2-オン環を形成する;

pは、整数1、2、3または4であり;
rは、整数3、4、5、または6であり;
sは、整数2、3、4、または5であり;
tは、整数1、2、3、または4であり;
uは、整数1、2、または3であり;
vは、整数2、3、または4であり;
wは、整数1または2である;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックスおよび形態学的形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物、およびメソ形。
【請求項2】
請求項1に記載の一般式Iの化合物、但し、式中のX、W、V、およびUは、一般式Iで定義したものと同義であり、

T は、-CONR-を表し;
Q は、メチレンを表し;
M は、アリール; ヘテロアリール; アリール-O(CH); ヘテロアリール-O(CH)を表す;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックスおよび形態学的形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物およびメソ形。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式Iの化合物、但し、式中のX、W、T、Q、およびMは一般式Iに定義したものと同義であり、

V は、-CHCHO-; -CHCHCHO-; -OCHCHO-を表し;

U は、一般式Iで定義したものと同義である;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックスおよび形態学的形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物およびメソ形。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式Iの化合物、但し、式中のV、U、T、QおよびMは、上記一般式Iで定義したものと同義であり、

XおよびWは -CH-を表す;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックスおよび形態学的形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物およびメソ形。
【請求項5】
請求項1に記載の一般式Iの化合物、但し、式中のX、W、V、Q、TおよびMは上記一般式Iで定義したものと同義であり、

Uは、置換基がハロゲン, 低級アルキル, 低級アルコキシ, CFであるモノ-, ジ-, またはトリ置換フェニルまたはヘテロアリールを独立に表す;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックスおよび形態学的形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物およびメソ形。
【請求項6】
下記化合物から選ばれる請求項1乃至5のいずれか一つに記載の化合物:

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-フルオロベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロベンジル)エチルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-フルオロ-5-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(3-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(5-フルオロ-2-メトキシベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-6-フルオロベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-ブロモベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジメチルベンジル)アミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]-フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,5-ビス-トリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-5-トリフルオロメチルベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-3,6-ジフルオロベンジル)シクロプロピルアミド;

(rac.)-4-{4-[3-(2,3,6-トリフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-3-カルボン酸シクロプロピル-(3-メチルベンジル)アミド.
【請求項7】
心臓血管症および腎臓症、高血圧、うっ血性心不全、肺高血圧、心不全、 腎臓機能障害、腎または心筋虚血、アテローム性動脈硬化症、腎不全、勃起障害、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障、糖尿病合併症、血管または心臓外科手術後の合併症、再狭窄、臓器移植後の免疫反応抑制剤使用による合併症を含むレニン-アンギオテンシン系(RAS)の調節不全に関連する疾患、およびRASに関連する既知のその他の疾患の治療または予防のための請求項1乃至6のいずれか一つの少なくとも一つの化合物および通常の担体物質および補助剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
高血圧、うっ血性心不全、肺高血圧、心不全、腎臓機能障害、腎または心筋虚血、アテローム性動脈硬化症、腎不全、勃起障害、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障、糖尿病合併症、血管または心臓外科手術後の合併症、再狭窄、臓器移植後の免疫反応抑制剤使用による合併症を含むRASに関連する疾患、およびRASに関連するその他の疾患の治療または予防のための方法であり、該方法は請求項1乃至6のいずれか一つに記載の化合物をヒトまたは動物に投与することからなる。
【請求項9】
高血圧、うっ血性心不全、肺高血圧、心不全、腎臓機能障害、腎臓または心筋虚血、アテローム性動脈硬化症、腎不全、勃起障害、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障、糖尿病合併症、血管または心臓外科手術後の合併症、再狭窄、臓器移植後の免疫反応抑制剤使用による合併症を含むRASに関連する疾患およびRASに関連する既知のその他の疾患の治療または予防のために請求項1乃至6のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一つに記載した疾患の治療のために、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、エンドセリン受容体拮抗薬、血管拡張薬、カルシウム拮抗薬、カリウム活性化剤、利尿薬、交感神経遮断薬、β-アドレナリン拮抗薬、 α-アドレナリン拮抗薬、および中性エンドペプチダーゼ抑制剤を含むその他の薬理学的に活性な化合物と組み合わせた請求項1乃至6のいずれか一つに記載の一種または一種以上の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−523845(P2007−523845A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505259(P2006−505259)
【出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004370
【国際公開番号】WO2004/096769
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】