新規CTLA4−IG免疫アドヘシン
本出願は、CD80およびCD86を標的とするCTLA4−Ig免疫アドヘシン、ならびに、特に治療目的でのその使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2010年11月10日に出願されたUSSN第61/412,309号、2010年5月14日に出願されたUSSN第61/334,806号、および2010年2月19日に出願されたUSSN第61/306,311号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、CD80およびCD86を標的化するCTLA4−Ig免疫アドヘシン、ならびに、特に治療目的でのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Tリンパ球は、抗原に対する適応的免疫反応において中心的役割を果たす。ナイーブT細胞は、その完全な活性化のために2つのシグナルを必要とする(Bretscher 1999,Proc Natl Acad Sci USA 96:185−90)。第1のシグナルは、抗原特異的であり、抗原提示細胞(APC)上でのT細胞受容体(TCR)と抗原MHC/ペプチド複合体との相互作用により提供される。第2のシグナルは、T細胞上の受容体とAPC上のそのリガンドとの間の相互作用により提供される共刺激シグナルである。TCR/MHC結合および共刺激相互作用の両方により、カルシウム−カルシニューリンおよびRASマイトジェン活性化タンパク質キナーゼを含む複数の細胞内経路を介してT細胞活性化がもたらされ、続いてIL−2等のサイトカインを含む複数のエフェクター化合物の転写因子の活性化がもたらされる。これらの事象は、T細胞増殖、CD4+ヘルパーT細胞(TH)プールの生成、および活性化CD8+細胞毒性T細胞の拡張をもたらす。完全T細胞活性化には共刺激が重要であるだけでなく、TCR/MHC結合中にそれが存在しないと、アネルギーおよび/またはアポトーシスが引き起こされる。
【0004】
T細胞調節には複数の正および負の共刺激経路が関与するが、最も重要なのは、T細胞上のCD28とAPC上のB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)との間である。CD28は、T細胞のTH1表現型細胞への分化を促進し、B細胞による抗体産生およびT細胞の活性化を向上させる。樹状細胞(DC)およびB細胞等のAPC上に発現するB7−1およびB7−2は、重複するが別個の機能を有する。B7−2は、構成的に発現され、TCR/MHC結合(シグナル1)と同期してAPC上で急速に上方調節される。B7−1発現は、休止細胞上では非常に低いが、典型的には長期T細胞刺激後に誘導される。これらの差は、B7−2はT細胞活性化の開始において重要となり得るが、B7−1は免疫応答を持続させる上でより大きな役割を果たし得ることを示唆している。
【0005】
T細胞活性化に続いて、負の調節受容体細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA4またはCTLA−4、CD152とも呼ばれる)が、T細胞上で上方調節される(Alegre et al.,2001,Nat Rev Immunol 1:220−8)。CTLA4は、CD28と構造的に相同であるが、B7−1およびB7−2リガンドの両方により強固に結合する。CLTA4は、2つの主要な様式で免疫応答を阻害する、すなわち、B7リガンドに関してCD28と競合し、ひいては共刺激を阻止し、またT細胞活性化を阻害するように負の信号伝達を行う(Krummel and Allison,1995,J Exp Med 182:459−465;Walunas et al.,1994,Immunity 1:405−413)。最近の研究では、B7−2が免疫シナプスにおいてCTLA4よりもCD28に結合し、一方B7−1は、CD28よりもCTLA4を連結することが示されている(Collins et al.,2002,Immunity 17:201−210;Jansson et al.,2005,J Immunol 175:1575−1585)。
【0006】
免疫応答の促進および維持におけるB7共刺激経路の重要な役割により、それに拮抗するように設計された治療薬剤は、自己免疫疾患および障害の治療のために有望である。アバタセプト(Orencia(登録商標))は、ヒトIgGのFcドメインに連結したCTLA4の細胞外結合ドメインからなるCTLA4−Ig免疫アドヘシンである。アバタセプトは、B7媒介共刺激を阻害するように開発されたものであり(Bluestone et al.,2006,Immunity 24:233−238)、関節リウマチ(RA)の治療に認可されており、いくつかの他の自己免疫性適応症について臨床試験中である。しかしながら、アバタセプトはRAの治療においてある程度の活性を示すものの、他の適応症には効果的ではない。例えば、CTLA4−Igは、移植片拒絶反応に対する耐性においては到底有効ではない(Kirk et al.,1997,Proc Natl Acad Sci USA 94:8789−8794;Levisetti et al.,1997,J Immunol 159:5187−5191)。
【0007】
アバタセプトの不十分な臨床成績は、そのB7リガンド、特にB7−2に対する天然CTLA4の最適ではない親和性(これが免疫の開始において重要と考えられるため)に起因するとされている。本発明は、改善されたB7親和性および増強されたT細胞阻害活性を有する新規変異体CTLA4−Ig免疫アドヘシンを提供する。そのような新規免疫アドヘシンは、様々な用途において、特に以下で詳細に議論するように免疫関連障害の治療に有益である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の相互作用を阻害する新規CTLA4−Ig免疫アドヘシンを提供する。本発明のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、ヒトB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)に高い親和性で結合するCTLA4部分を含み、また1つ以上のFc受容体またはFcリガンドと結合し得るIg Fc部分(またはFc領域)を含む。
【0009】
本発明の一態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4タンパク質を含み、前記変異体は、天然CTLA4タンパク質内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記修飾は、A29E、A29F、A29H、A29K、A29N、A29Q、A29R、T30E、T30H、T30R、T30V、E31D、E31I、E31M、E31T、E31V、R33E、R33F、R33I、R33L、R33M、R33Q、R33T、R33W、R33Y、T35D、T35E、T35F、T35M、T35V、T35Y、A49D、A49E、A49F、A49T、A49W、A49Y、T51D、T51E、T51H、T51L、T51N、T51Q、T51R、T51S、T51V、M53E、M53F、M53H、M53Q、M53W、M53Y、T59H、T59I、T59L、T59N、T59Q、T59V、T59Y、L61A、L61D、L61E、L61F、L61G、L61H、L61I、L61K、L61M、L61N、L61P、L61Q、L61R、L61S、L61T、L61V、L61W、L61Y、D63E、S64K、S64R、S64Y、K93D、K93E、K93F、K93H、K93N、K93Q、K93R、K93S、K93T、K93V、K93W、K93Y、E95D、E95H、E95L、E95Q、E95Y、M97D、M97F、M97I、M97N、M97V、Y98F、Y98W、Y102F、Y102W、Y103D、Y103E、Y103F、Y103H、Y103N、Y103Q、Y103W、L104F、L104H、L104M、L104V、L104Y、G105D、G105E、I106E、およびI106Yからなる群から選択される置換であり、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、A29H、T51N、M53Y、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の最も好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、A29H、T51N、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB
7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の一態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、A29H、A29K、T51N、L61E、およびY103Qからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の他の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、K93V、L61Q、およびL104Hからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。
【0010】
本発明の別の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4タンパク質を含み、前記変異体は、A29H/K93Q、A29H/M53Y、A29H/T51N、T51N/K93Q、T51N/M53Y、A29H/L61E/K93Q、A29H/M53Y/K93Q、A29H/M53Y/L61E、A29H/T51N/L61E、M53Y/L61E/K93Q、T51N/L61E/K93Q、T51N/M53Y/L61E、A29H/M53Y/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/M53Y/K93Q、A29H/T51N/M53Y/L61E、T51N/M53Y/L61E/K93Q、およびA29H/T51N/M53Y/L61E/K93Qからなる群から選択されるCTLA4置換の組み合わせを含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Qからなる群から選択されるCTLA4置換の組み合わせを含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の他の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N、T51N/M53Y、およびT51N/M53Y/L61Eからなる群から選択されるCTLA4置換の組み合わせを含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。
【0011】
本発明の別の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4タンパク質を含み、前記変異体は、35、49、51、53、59、61、および95からなる群から選択されるCTLA4位置における置換を含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CLTA4タンパク質を含み、前記変異体は、51および61からなる群から選択されるCTLA4位置における置換を含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。
【0012】
追加的態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Fx(30〜50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜60)−Vb(61)−Fx(62〜92)−Vb(93)−Fx(94〜124)[配列番号1](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号1の位置1〜28)であり;Vb(29)は、AおよびHからなる群から選択され;Fx(30〜50)は、配列TEVRVTVLRQADSQVTEVCAA(配列番号1の位置30〜50)であり;Vb(51)は、TおよびNからなる群から選択され;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、MおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜60)は、配列MGNELTF(配列番号1の位置54〜60)であり;Vb(61)は、LおよびEからなる群から選択され;Fx(62〜92)は、配列DDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号1の位置62〜92)であり;Vb(93)は、KおよびQからなる群から選択され;Fx(94〜124)は、配列VELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号1の位置94〜124)である)を有し、前記変異体は、配列番号2 6と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Fx(30〜50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜60)−Vb(61)−Fx(62〜92)−Vb(93)−Fx(94〜124)[配列番号2](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号2の位置1〜28)であり;Vb(29)は、Hであり;Fx(30〜50)は、配列TEVRVTVLRQADSQVTEVCAA(配列番号2の位置30〜50)であり;Vb(51)は、TおよびNからなる群から選択され;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、MおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜60)は、配列MGNELTF(配列番号2の位置54〜60)であり;Vb(61)はLおよびEからなる群から選択され;Fx(62〜92)は、配列DDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号2の位置62〜92)であり;Vb(93)は、KおよびQからなる群から選択され;Fx(94〜124)は、配列VELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号2の位置94〜124)である)を有し、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0014】
追加的態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Fx(30〜50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜60)−Vb(61)−Fx(62〜92)−Vb(93)−Fx(94〜124)[配列番号3](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号3の位置1〜28)であり;Vb(29)は、AおよびHからなる群から選択され;Fx(30〜50)は、配列TEVRVTVLRQADSQVTEVCAA(配列番号3の位置30〜50)であり;Vb(51)は、Nであり;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、MおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜60)は、配列MGNELTF(配列番号3の位置54〜60)であり;Vb(61)は、LおよびEからなる群から選択され;Fx(62〜92)は、配列DDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号3の位置62〜92)であり;Vb(93)は、KおよびQからなる群から選択され;Fx(94〜124)は、配列VELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号3の位置94〜124)である)を有し、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Vb(30)−Vb(31)−Fx(32)−Vb(33)−Fx(34)−Vb(35)−Fx(36〜48)−Vb(49)−Fx(50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜58)−Vb(59)−Fx(60)−Vb(61)−Fx(62)−Vb(63)−Vb(64)−Fx(65−92)−Vb(93)−Fx(94)−Vb(95)−Fx(96)−Vb(97)−Vb(98)−Fx(99〜101)−Vb(102)−Vb(103)−Vb(104)−Vb(105)−Vb(106)−Fx(107〜124)[配列番号4](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号4の位置1〜28)であり;Vb(29)は、A、E、F、H、K、N、QおよびRからなる群から選択され;Vb(30)は、T、HおよびVからなる群から選択され;Vb(31)は、E、D、I、M、TおよびVからなる群から選択され;Fx(32)は、Vであり;Vb(33)は、R、E、F、I、L、M、Q、T、WおよびYからなる群から選択され;Fx(34)は、Vであり;Vb(35)は、T、D、E、F、M、VおよびYからなる群から選択され;Fx(36〜48)は、配列VLRQADSQVTEVC(配列番号4の位置36〜48)であり;Vb(49)は、A、D、E、F、T、WおよびYからなる群から選択され;Fx(50)は、Aであり;Vb(51)は、T、D、E、H、L、N、Q、R、SおよびVからなる群から選択され;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、M、E、F、H、Q、WおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜58)は、配列MGNELT(配列番号4の位置54〜58)であり;Vb(59)は、T、H、I、L、N、Q、VおよびYからなる群から選択され;Fx(60)は、Fであり;Vb(61)は、L、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群から選択され;Fx(62)は、Dであり;Vb(63)は、DおよびEからなる群から選択され;Vb(64)は、S、
K、RおよびYからなる群から選択され;Fx(65〜92)は、配列ICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号3の位置65〜92)であり;Vb(93)は、K、D、E、F、H、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群から選択され;Fx(94)は、Vであり;Vb(95)は、E、D、H、L、QおよびYからなる群から選択され;Fx(96)は、Lであり;Vb(97)は、M、D、F、I、NおよびVからなる群から選択され;Vb(98)は、Y、FおよびWからなる群から選択され;Fx(99〜101)は、配列PPPであり;Vb(102)は、Y、FおよびWからなる群から選択され;Vb(103)は、Y、D、E、F、H、N、QおよびWからなる群から選択され;Vb(104)は、L、F、H、M、VおよびYからなる群から選択され;Vb(105)は、G、DおよびEからなる群から選択され;Vb(106)は、I、EおよびYからなる群から選択され;Fx(107〜124)は、配列GNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号4の位置107〜124)である)の式を有し、前記変異体は、配列番号2 6と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0016】
追加的態様において、本発明は、配列番号34 8を含む免疫アドヘシンを提供し、前記免疫アドヘシンは、配列番号2 6と比較してアミノ酸修飾を含む。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、配列番号2 6と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記CTLA4変異体は、T51N、A29H、M53Y、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する。
【0018】
追加的態様において、本発明は、免疫アドヘシン配列番号6と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記CTLA4変異体は、配列番号2 6の数を使用した51、53、61および93からなる群から選択される位置にアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する。
【0019】
本発明の一態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、天然Fc領域を含む。本発明の好ましい天然Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 Fc領域を含むがこれらに限定されない。
【0020】
本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体Fc領域を含む。本発明の好ましい態様において、変異体Fc領域は、新生児Fc受容体FcRnに対する親和性を増強する。本発明のもっとも好ましい態様において、変異体Fc領域は、生体内でのCTLA4−Igの半減期を延長する。FcRn親和性の増強および/または生体内での半減期の延長に好ましい変異体は、259I、307Q、308F、311I、311V、378V、378T、426V、428L、434S、436I、436V、250Q、434A、252Y、254T、および256E(付番はEU指標に従う)を含むが、これらに限定されない。FcRn親和性の増強および/または生体内での半減期の延長に最も好ましい変異体は、428Lおよび434S(付番はEU指標に従う)である。
【0021】
本発明は、本明細書に記載の新規CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする単離核酸を提供する。本発明は、随意に制御配列に操作可能に連結される核酸を含むベクターを提供する。本発明は、ベクターを含有する宿主細胞、および免疫アドヘシンを産生し、随意に回収するための方法を提供する。
【0022】
本発明は、新規CTLA4−Igタンパク質を提供する。前記新規CTLA4−Igタンパク質は、治療製品に用途を見出し得る。
【0023】
本発明は、本明細書に記載のCTLA4−Igタンパク質、および生理学的または薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明は、本明細書に記載のCTLA4−Ig 免疫アドヘシンの治療および診断用途を企図する。本発明のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、好ましくは、免疫関連障害を治療するために使用される。本発明の最も好ましい実施形態において、本明細書に記載のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、クローン病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、および/または移植片拒絶反応を治療するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】全長ヒトCTLA4、ヒトCTLA4の細胞外ドメイン(ECD)、およびヒトCTLA4のベラタセプトA29Y/L104E変異体型のアミノ酸配列である。CTLA4のECDは、全長CTLA4配列においてグレーでハイライトされている。ベラタセプト配列のグレー部分は、A29Y/L104E置換[配列番号5〜8]を強調している。
【図2】例示的Fc領域のアミノ酸配列である。ここでのFc領域は、EU付番規定に基づくC末端(230〜447)に対する位置230として定義される。グレーハイライトは、天然IgG Fc領域[配列番号9〜15]からの修飾を示す。
【図3】例示的リンカーのアミノ酸配列である。リンカーの付番はEU指標に基づき、残基216〜229を含有し、216は、EU付番に基づく天然IgGイソタイプのN末端216Eである。N末端Qの付加によって番号が変わることはない(すなわち、216Eはまだ216Eである)。グレーハイライトは、天然IgGリンカー[配列番号16〜23]からの修飾を示す。
【図4】本研究において使用されたリンカーおよびFc領域の例示的組み合わせのアミノ酸配列である。グレーハイライトは、天然IgG定常領域配列[配列番号24〜27]からの修飾を示す。
【図5】本研究において試験された、選択されたCTLA4−Ig免疫アドヘシンのアミノ酸配列である[配列番号 28〜30]。
【図6】グレーの三角形により表される、スクリーニングした一置換CTLA4−Ig変異体の全てに関する、アバタセプトに対する倍数(koff)のプロットである。黒の正方形は、親CTLA4−Igアバタセプトを表し、黒の中空の円は、ベラタセプトを表す。
【図7】アバタセプトおよびベラタセプトと比較したCTLA4−Ig変異体に対するCD80およびCD86 KDのプロットである。本研究のCTLA4−Ig変異体は、グレーの三角形として表されている。黒の正方形は、親CTLA4−Igアバタセプトを表し、黒の中空の円は、ベラタセプトを表す。
【図8】CTLA4−Ig変異体HNEQ(A29H/T51N/L61E/K93Q)をアバタセプトおよびベラタセプトと比較した、CD86(上)およびCD80(下)に対する結合のBiacoreセンサグラムである。
【図9】例示的変異体CTLA4および変異体CTLA4−Igタンパク質[配列番号31〜34]のアミノ酸配列である。
【図10】CTLA4−Ig変異体のT細胞阻害活性である。T細胞は、抗CD3抗体を使用したCD3および組み換えB7−2−Igを使用したB7−2の共連結により活性化された。CFSE標識化T細胞は、フローサイトメトリーを使用して監視した。
【図11】生体内半減期を延長するFc変異体を有する例示的CTLA4−Ig変異体のアミノ酸配列である[配列番号35〜38]。
【図12】CTLA4−Igタンパク質の天然型およびFc変異体型による、pH 6.0でのヒトFcRnに対する結合のBiacoreセンサグラムである。LSは、428L/434S変異体を指す。
【図13】Biacoreにより決定される、CTLA4−Igタンパク質の天然Fcおよび変異体Fc型のFcRn結合親和性(pH6.0)のプロットである。LSは、428L/434Sバリアントを指す。
【図14】CTLA4−Ig変異体のT細胞阻害活性である。T細胞は、抗CD3抗体を使用したCD3および組み換えB7−2−Igを使用したB7−2の共連結により活性化された。CFSE標識化T細胞は、フローサイトメトリーを使用して監視した。
【図15】混合リンパ球反応におけるCTLA4−Ig変異体のT細胞阻害活性である。T細胞は、2組の実験において、同種異系PBMCの混合により活性化された(1つはドナー2336および3070を用い(上)、1つはドナー3070および3995を用いた(下))。活性化は、ELISAにより測定されるIL−2の放出を測定することにより定量化した。
【図16】生体内での変異体CTLA4−Igタンパク質の阻害活性である。破傷風に対するヒト免疫応答を阻害するCTLA4−Igタンパク質の能力を、ヒト末梢血白血球(PBL)を移植した重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて検討した。グラフは、PBS(PBS+TT)、アバタセプト、および変異体CTLA4(NEQ)−Ig(ab)(B7−1およびB7−2に対する増強された親和性を有する51N/61E/93Q)で処置した場合の、PBL移植後21日目の破傷風負荷後の抗破傷風抗体(抗TT IgG)の血清濃度を示す。陰性対照として、PBS単独(破傷風なし)による処置を行った。
【発明を実施するための形態】
【0026】
概要
【0027】
本発明は、改善されたB7親和性および増強されたT細胞阻害活性を有する新規変異体CTLA4−Ig免疫アドヘシンに関する。そのような新規免疫アドヘシンは、以下で詳細に議論するように、様々な用途において有益である。
【0028】
CTLA−4とも呼ばれ、またCD152(表面抗原分類152)としても知られるCTLA4(細胞毒性Tリンパ球抗原4)は、免疫系において重要な調節機能を果たすタンパク質である。人間においては、CTLA4タンパク質は、CTLA4遺伝子によりコードされ、その翻訳されたアミノ酸配列は、配列番号1に規定される。CTLA4は、免疫グロブリン上科のメンバーであり、細胞共刺激タンパク質CD28と構造的に相同である。CTLA4は、抗原提示細胞(APC)の表面上の共刺激リガンドB7−1およびB7−2に結合する。CLTA4は、2つの主要な様式で免疫応答を阻害する、すなわち、B7−1およびB7−2への結合に関してCD28と競合し、それにより共刺激を阻止し、またT細胞活性化を阻害するように負の信号伝達を行う。本発明において、CTLA4タンパク質の特に重要な領域は、細胞外ドメイン(ECD)(配列番号2)であり、これは、APC上のB7−1およびB7−2リガンドへの結合を仲介する。
【0029】
免疫応答の促進および維持におけるB7共刺激経路の重要な役割により、この経路に拮抗するように設計された治療薬剤を提供することが望ましい。したがって、本発明は、CTLA4Ig免疫接着を提供する。
【0030】
CTLA4−Ig免疫アドヘシン
【0031】
本発明は、CTLA4Ig免疫アドヘシンを提供する。「免疫アドヘシン」は、1つ以上のポリペプチドがFc領域に操作可能に連結されるタンパク質を指す。本明細書において使用される免疫アドヘシンは、先行技術において使用される用語「Fc融合物」、「Ig融合物」、「受容体Fc融合物」「Igキメラ」、および「受容体グロブリン」(時折ダッシュを伴う)、ならびに「TRAP」の同義語である(Chamow et al.,1996,Trends Biotechnol 14:52−60、Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195−200、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される)。免疫アドヘシンは、免疫グロブリンのFc領域を、一般的に標的タンパク質に対する特異性を有する任意のタンパク質または小分子であり得る融合パートナーと結合させる。したがって、免疫アドヘシンは、2つの主要な部分、すなわち標的結合部分およびFc部分を有する。標的結合部分は、実質的に任意の標的または標的抗原に対する特異性を有し得る。Fc部分は、1つ以上のFc受容体またはFcリガンドに結合し得る。融合パートナーは、NもしくはC末端、または末端間のある残基を含む、Fc領域の任意の領域に連結されてもよい。実質的に、いかなるタンパク質または小分子もFcに連結され、Fc融合物を生成し、したがって実質的にいかなる標的をも標的とし得るが、本発明の免疫アドヘシンは、融合パートナーとしてCTLA4またはCTLA4の変異体を含む。CTLA4のIg Fc領域との融合物は、本明細書においてCTLA4−IgまたはCTLA4−Igタンパク質と呼ばれる。
【0032】
CTLA4変異体
【0033】
本発明の免疫アドヘシンの標的結合部分または融合パートナーは、タンパク質CTLA4を含む。したがって、本発明の免疫アドヘシンは、B7−1、B7−2、および、CTLA4により結合される、既知または未知の任意の他のリガンドまたは受容体を結合するように誘導される。本発明の標的結合部分は、ヒトCTLA4タンパク質(配列番号1)の全て、いずれか、または一部で構成されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、免疫アドヘシン結合部分んは、CTLA4(配列番号2)のECDの全てまたは一部を含む。実施例に記載されるように、免疫アドヘシン結合は、好ましくは、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する結合を改善するCTLA4の変異体であり、いくつかの場合において、いずれかへの優先的結合を示す。
【0034】
CTLA4変異体は、天然CTLA4タンパク質、一般的には配列番号1に示されるヒトCTLA4タンパク質における少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、殆どの場合、全CTLA4タンパク質は一般的に本発明の融合タンパク質において使用されないため、変異体は、細胞外ドメイン内にある。この実施形態において、1つ以上の修飾は、以下の位置1つ以上において行われる(配列番号2における付番):29、30、31、33、35、49、51、53、59、61、63、64、93、95、97、98、102、103、104、105または106。いくつかの実施形態において、修飾は、以下の置換の1つ以上である:A29E、A29F、A29H、A29K、A29N、A29Q、A29R、T30E、T30H、T30R、T30V、E31D、E31I、E31M、E31T、E31V、R33E、R33F、R33I、R33L、R33M、R33Q、R33T、R33W、R33Y、T35D、T35E、T35F、T35M、T35V、T35Y、A49D、A49E、A49F、A49T、A49W、A49Y、T51D、T51E、T51H、T51L、T51N、T51Q、T51R、T51S、T51V、M53E、M53F、M53H、M53Q、M53W、M53Y、T59H、T59I、T59L、T59N、T59Q、T59V、T59Y、L61A、L61D、L61E、L61F、L61G、L61H、L61I、L61K、L61M、L61N、L61P、L61Q、L61R、L61S、L61T、L61V、L61W、L61Y、D63E、S64K、S64R、S64Y、K93D、K93E、K93F、K93H、K93N、K93Q、K93R、K93S、K93T、K93V、K93W、K93Y、E95D、E95H、E95L、E95Q、E95Y、M97D、M97F、M97I、M97N、M97V、Y98F、Y98W、Y102F、Y102W、Y103D、Y103E、Y103F、Y103H、Y103N、Y103Q、Y103W、L104F、L104H、L104M、L104V、L104Y、G105D、G105E、I106E、およびI106Y。いくつかの実施形態において、特に有用であるのは、A29H、T51N、M53Y、L61E、およびK93Qから選択される1つ以上の置換を有するCTLA4変
異体であり、特に有用な組み合わせは、A29H/K93Q、A29H/M53Y、A29H/T51N、T51N/K93Q、T51N/M53Y、A29H/L61E/K93Q、A29H/M53Y/K93Q、A29H/M53Y/L61E、A29H/T51N/L61E、M53Y/L61E/K93Q、T51N/L61E/K93Q、T51N/M53Y/L61E、A29H/M53Y/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/M53Y/K93Q、A29H/T51N/M53Y/L61E、T51N/M53Y/L61E/K93Q、およびA29H/T51N/M53Y/L61E/K93Qを含む。
【0035】
本明細書における位置および置換の一覧の全てに関して、個々の置換の組み合わせは、ありとあらゆる可能な組み合わせから形成することができ、またいかなる個々の位置または置換も、独立して可能性の一覧に含まれ得る、またはそこから除外され得ることが理解されるべきである。一般に、野生型または親CTLA4(またはFc領域)と比較して、本発明の変異体は、一般的に、CTLA4領域において1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸置換を有するが、いくつかの場合において、所望の機能が保存される限り、より多くの置換を使用することができる。同様に、以下に記載されるように、Fcドメインもまたこのように置換を有し得る。
【0036】
別の場所に記載されるように、CTLA4変異体は、B7−1および/またはB7−2への増強された結合等、一般にCTLA4リガンドの1つ以上に対する結合を保存または増強する。
【0037】
Fcドメイン
【0038】
本発明の免疫アドヘシンのFc部分は、抗体のFc領域またはFc領域のある部分を含む。抗体は、特定の抗原に結合する免疫グロブリンである。ヒトおよびマウスを含む大半の哺乳類において、抗体は、対のポリペプチド重鎖および軽鎖から構成される。軽鎖および重鎖可変領域は、抗体間で大幅な配列の多様性を示し、標的抗原の結合に関与する。各鎖は、個別の免疫グロブリン(Ig)ドメインで構成され、したがって、一般的な用語の免疫グロブリンが、このようなタンパク質に使用される。
【0039】
従来の天然抗体の構造単位は、典型的に、四量体を含む。各四量体は、典型的に、同一の2対のポリペプチド鎖から成り、各対は、「軽鎖」(典型的に、約25kDaの分子量を有する)1本と、「重鎖」(典型的に、約50〜70kDaの分子量を有する)1本とを有する。ヒトの軽鎖は、κおよびλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のイソタイプを定義する。IgGは、これらに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、これらに限定されないが、IgM1およびIgM2を含むサブクラスを有する。IgAは、これらに限定されないが、IgA1およびIgA2を含む、いくつかのサブクラスを有する。したがって、本明細書で使用される、「イソタイプ」とは、それらの定常領域の化学的および抗原特性により定義される、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスのいずれかを意味する。既知のヒト免疫グロブリンイソ型は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2, IgD、およびIgEである。微妙な相違が、可変領域に存在する場合があるが、これらの抗体クラス間の際立った特徴は、それらの定常領域である。
【0040】
軽鎖および重鎖のそれぞれは、可変領域および定常領域と称される、2つの個別の領域から構成される。IgG重鎖は、VH−CH1−CH2−CH3の順に、NからC末端まで連結される4つの免疫グロブリンドメインから成り、それぞれ、重鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメイン1、重鎖定常ドメイン2、および重鎖定常ドメイン3を指す(VH−Cγ1−Cγ2−Cγ3とも称され、それぞれ、重鎖可変ドメイン、定常γ1ドメイン、定常γ2ドメイン、および定常γ3ドメインを指す)。IgG軽鎖は、VL−CLの順に、NからC末端まで連結される2つの免疫グロブリンドメインから成り、それぞれ、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを指す。定常領域は、配列の多様性が低く、重要な生化学事象を顕在化するいくつかの天然タンパク質の結合に関与する。可変および定常領域を含む、抗体の天然な生物学的形態を構成する構造は、本明細書において「完全長抗体」と呼ばれる。ヒトおよびマウスを含む大半の哺乳類において、IgGイソタイプの完全長抗体は、四量体であり、同一の2対の2つの免疫グロブリン鎖からなり、各対は、1つの軽鎖および1つの重鎖を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVLおよびCLを含み、各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、Cγ1、Cγ2、およびCγ3を含む。
【0041】
この可変領域は、典型的に、抗体のアミノ末端部であり、分子の抗原結合決定因子を含有し、したがって、その標的抗原に対する抗原の特異性を決定する。可変領域は、同一クラス内の他の抗体と配列が最も異なるため、そう呼ばれる。
【0042】
各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を定義する。免疫グロブリンのIgGサブクラスにおいて、重鎖には、重鎖定常(CH)領域と呼ばれるいくつかの免疫グロブリンドメインが存在する。IgG抗体と関連して、IgGイソタイプは、それぞれ、3つのCH領域を有する。したがって、IgGと関連して、「CH」ドメインとは、以下の通りである:「CH1」は、KabatのEU指標に従い、位置118〜220を指す。「CH2」は、KabatのEU指標に従い、位置237〜340を指し、「CH3」は、KabatのEU指標に従い、位置341〜447を指す。
【0043】
重鎖の別の重要な領域は、ヒンジ領域である。本明細書において、「ヒンジ」、もしくは「ヒンジ領域」、もしくは「抗体ヒンジ領域」、もしくは「免疫グロブリンヒンジ領域」とは、抗体の第1と第2の定常ドメインの間にアミノ酸を含む、柔軟なポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EUの位置220で終わり、IgG CH2ドメインは、残基EUの位置237で始まる。したがって、IgGにおいて、抗体ヒンジは、本明細書において、位置221(IgG1でD221)〜236(IgG1でG236)を含むように定義され、付番は、KabatのEU指標に従う。いくつかの実施形態において、例えば、Fc領域と関連して、一般的に、「下方ヒンジ」が、位置226または230から236を指す、下方ヒンジが含まれる。
【0044】
本発明において議論される全ての定常領域位置に関して、付番は、のEU指標に従う(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda、参照によりその全体が本明細書に援用される)。抗体の技術分野の当業者には、これらの規則が、免疫グロブリン配列特定領域における非連続的付番からなり、免疫グロブリンファミリーにおける保存された位置の正規化された参照を可能とすることが理解される。したがって、EU指標により定義されるような所与の免疫グロブリンの位置は、必ずしもその連続的配列に対応するわけではない。
【0045】
本発明の免疫アドヘシンは、CTLA4と抗体のFc領域との融合物であるタンパク質である。本明細書で使用される、「Fc」または「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン、およびいくつかの場合において、ヒンジの一部を除外する抗体の定常領域を含む、ポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対する柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMにいて、Fcは、J鎖を含み得る。IgGにおいて、Fcは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)、ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間の下方ヒンジを含む。Fc領域の境界は変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、残基230〜C末端までを含むように定義され、付番は、EU付番規定に基づく。Fcは、単独でこの領域を指すか、またはFcポリペプチドと関連してこの領域を指してもよい。本明細書で使用される、「Fcポリペプチド」とは、Fc領域の全てまたは一部を含むポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドは、抗体、Fc融合物、単離されたFc、およびFc断片を含む。
【0046】
抗体のFc領域は、いくつかのFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と称される、数々の重要な機能的能力を付与する。Fc領域のIgGにおいて、Fcは、IgドメインCγ2およびCγ3、ならびにCγ2に通じるN末端ヒンジを含む。IgGクラスのFc受容体の重要なファミリーは、Fcγ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫系の細胞アームとの間の連通を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275−290、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。ヒトにおいて、このタンパク質ファミリーは、イソタイプFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64)、イソタイプFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb−1およびFcγRIIb−2を含む)、およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)、ならびにイソタイプFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb−NA1およびFcγRIIIb−NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)を含む(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が本明細書に援用される)。これらの受容体は、典型的に、Fcへの結合を媒介する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内のいくつかのシグナル伝達事象を媒介してもよい細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、天然キラー(NK)細胞、およびγδT細胞を含む、種々の免疫細胞で発現しもよい。Fc/FcγR複合体の編成は、これらのエフェクター細胞を結合抗原の部位に動員し、典型的に、細胞内のシグナル伝達事象、ならびに炎症メディエーターの放出、B細胞の活性、エンドサイトーシス、ファゴサイトーシスおよび細胞障害性攻撃等の、その後の重要な免疫反応をもたらす。細胞障害性および食細胞性エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞
を破壊する潜在的機構である。FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞の溶解を生じる細胞媒介性反応は、抗体依存性の細胞媒介性細胞障害性(ADCC)と称される(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766; Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275−290、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞のファゴトーシスを生じる、細胞媒介性反応は、抗体依存性の細胞媒介性ファゴトーシス(ADCP)と称される。
【0047】
異なるIgGサブクラスは、FcγRに対して異なる親和性を有し、IgG1およびIgG3は、典型的に、IgG2およびIgG4よりこの受容体に実質的に良く結合する(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が本明細書に援用される)。FcγRsは、異なる親和性でIgG Fc領域に結合する。FcγRIIIaおよびFcγRIIIbの細胞外ドメインは、96%が同一であるが、FcγRIIIbは、細胞内シグナル伝達ドメインを有さない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、およびFcγRIIIaは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することにより特徴付けられる、免疫複合体により引き起こされる活性の正の調節因子であるが、FcγRIIbは、免疫受容抑制チロシンモチーフ(ITIM)を有し、したがって、阻害性である。したがって、前者は、活性化受容体と呼ばれ、FcγRIIbは、抑制受容体と呼ばれる。親和性および活性化におけるこれらの相違にも関わらず、全てのFcγRは、Cγ2ドメインのN末端および前述のヒンジで、Fc上の同じ領域に結合する。
【0048】
重複しているが、別個であるFc上の部位は、補体タンパク質C1qの接触面として機能する。Fc/FcγR結合が、ADCCを媒介する同じ方式で、Fc/C1q結合は、補体依存性細胞障害性(CDC)を媒介する。Cγ2ドメインとCγ3ドメインとの間のFc上の部位は、エンドソームから形質膜陥入された抗体を血流に再循環させる結合である、新生受容体FcRnとの相互作用を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。この過程は、大型の完全長分子による腎臓濾過の防止とともに、1〜3週間にわたる好適な抗体血清半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合は、抗体輸送において主要な役割も果たす。Fc上でのFcRnの結合部位は、細菌タンパク質AおよびGが結合する部位でもある。これらのタンパク質の密着結合は、典型的に、タンパク質の精製中に、プロテインAまたはプロテインGの親和性クロマトグラフィーを利用することにより、抗体を精製する手段として活用される。これらの領域の再現性、補体、およびFcRn/プロテインA結合領域は、抗体の臨床特性およびそれらの発達の両方に重要である。
【0049】
Fc領域の主な特徴は、N297で生じる、保存されたN結合グリコシル化である。場合によってオリゴ糖と称されるこの糖は、抗体にとって重要な構造的かつ機能的役割を担い、抗体が哺乳類発現系を使用して生成されなければならない、主な理由の1つである。FcγRおよびC1qへの効率的なFc結合は、この修飾を必要とし、N297糖の組成物における変更、またはその消失は、これらのタンパク質への結合に影響を及ぼす。
【0050】
本明細書に開示される実施形態の免疫グロブリンは、抗体クラスのいずれかに属する、免疫グロブリン遺伝子によっても実質的にコードされてもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含む抗体のIgGクラスに属する配列を含む。代替の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、抗体のIgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、またはIgMクラスに属する配列を含む。本明細書に開示される免疫グロブリンは、1本以上のタンパク質鎖を含んでもよく、例えば、ホモまたはヘテロオリゴマーを含む単量体もしくはオリゴマーである、抗体またはFc融合物であってもよい。
【0051】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、任意の生物、例えば、哺乳類(これらに限定されないが、ヒト、ゲッ齒類(これらに限定されないが、マウスおよびラットを含む)、ウサギ目(これらに限定されないが、ウサギおよびノウサギを含む)、ラクダ科(これらに限定されないが、ラクダ、ラマ、およびヒトコブラクダを含む)、ならびにこれらに限定されないが、原猿、広鼻猿類(新世界ザル)、オナガザル上科(旧世界ザル)、およびテナガザル、小型および大型類人猿を含むヒト上科を含むヒト以外の霊長類からの遺伝子により実質的にコードされてもよい。最も好ましい実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、実質的にヒトであってもよい。
【0052】
当該分野に周知のように、免疫グロブリン多型が、ヒト集団に存在する。Gm多型は、ヒトIgG1、IgG2、およびIgG3分子のマーカーのG1m、G2m、およびG3mアロタイプと称される、アロタイプ抗原決定基をコードする対立遺伝子を有する、IGHG1、IGHG2およびIGHG3遺伝子により決定される(γ4鎖上で、Gmアロタイプは発見されていない)。マーカーは、「アロタイプ」と「イソアロタイプ」とに分類され得る。これらは、イソタイプ間の強い配列の相同性に応じて、異なる血清学的根拠により区別される。アロタイプは、Ig遺伝子の対立遺伝子型により特定される抗原決定基である。アロタイプは、異なる個別の重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のわずかな相違を表す。たった1つのアミノ酸の相違でさえ、アロタイプ決定基を引き起こすことができるが、多くの場合、いくつかのアミノ酸置換が生じている。アロタイプは、抗血清が対立遺伝子の相違のみを認識する、サブクラスの対立遺伝子間の配列相違である。イソアロタイプは、1つ以上の他のイソタイプの非多型相同領域と共有されるエピトープを生成する一イソタイプにおける対立遺伝子であり、このため、抗血清は、関連するアロタイプと関連する相同イソタイプの両方と反応する(Clark,1997,IgG effector mechanisms,Chem Immunol.65:88−110;Gorman & Clark,1990,Semin Immunol 2(6):457−66、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0053】
ヒト免疫グロブリンの対立遺伝子型は、明確に特徴付けされている(WHO Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins.J Immunogen 1976,3:357−362、WHO Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins.1976,Eur.J.Immunol.6,599−601、Loghem E van,1986,Allotypic markers,Monogr Allergy 19:40−51、全て参照によりその全体が本明細書に援用される)。加えて、他の多型も特徴付けされている(Kim et al.,2001,J.Mol.Evol.54:1−9、参照によりその全体が本明細書に援用される)。現在、18のGmアロタイプが知られている:G1m(1、2、3、17)もしくはG1m(a、x、f、z)、G2m(23)もしくはG2m(n)、G3m(5、6、10、11、13、14、15、16、21、24、26、27、28)もしくはG3m(b1、c3、b5、b0、b3、b4、s、t、g1、c5、u、v、g5)(Lefranc,et al.,The human IgG subclasses:molecular analysis of structure,function and regulation.Pergamon,Oxford,pp.43−78(1990)、Lefranc,G.et al.,1979,Hum.Genet.:50,199−211、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される)。固定された組み合わせで受け継がれるアロタイプは、Gmハプロタイプと呼ばれる。本明細書に開示される免疫グロブリンは、任意の免疫グロブリン遺伝子の任意のアロタイプ、イソアロタイプ、またはハプロタイプにより実質的にコードされ得る。
【0054】
CTLA4タンパク質は、リンカーを介してFc領域に連結されてもよい。「リンカー」という用語は、ペプチド結合により結合され、1つ以上の抗原結合部分を連結するように使用される2つ以上のアミノ酸残基を含むポリペプチドを指すように使用される。そのようなリンカーポリペプチドは、当該分野において周知である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448、Poljak,R.J.,et al.(1994) Structure 2:1121−1123を参照のこと)。種々のリンカーは、融合パートナーにFc領域を共有結合的に連結するように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に用途を見出し得る。本明細書における「リンカー」はまた、「リンカー配列」、「スペーサー」、「係留配列」、またはそれらの文法上の同義語として呼ばれる。ホモまたはヘテロ二機能性リンカーが、周知である(参照によりその全体が援用される、1994 Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers,pages 155−200を参照のこと)。いくつかの方法を、分子を共有結合的に一緒に連結するように使用することができる。これらは、これらに限定されないが、タンパク質またはタンパク質ドメインのNとC末端の間のポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介した連結、および化学的架橋試薬を介した連結を含む。この実施形態の一態様において、リンカーは、組み換え技術またはペプチド合成により生成される、ペプチド結合である。リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主に含み得る:Gly、Ser、Ala、またはThr。リンカーペプチドは、所望の活性を維持するように、相互に対して適切な高次構造を成すような方式で、2つの分子を連結するのに適当な長さを有するべきである。一実施形態において、リンカーは、約1〜50のアミノ酸の長さであり、好ましくは約1〜30のアミノ酸の長さである。一実施形態において、長さが1〜20のアミノ酸のリンカーが使用されてもよい。有用なリンカーは、例えば(GS)n、(GSGGS)n[配列番号39]、(GGGGS)n[配列番号40]、および(GGGS)n[配列番号41](式中、nは、少
なくとも1の整数である)を含むグリシン−セリンポリマー、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、ならびに他の柔軟なリンカーを含む。代替的に、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を含む、種々の非タンパク質性重合体が、リンカーとしての用途を見出し得、つまりリンカーとしての用途を見出し得る。
【0055】
本発明の好ましいリンカーは、抗体ヒンジ領域からの配列を含む。例えばIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4からのヒンジ配列を含む、任意の抗体イソタイプからのヒンジ領域配列が使用されてもよい。リンカー配列はまた、任意の長さのCL/CH1ドメインの任意の配列を含んでもよいがCL/CH1ドメインの全ての残基ではなく、例えば、CL/CH1ドメインの最初の5〜12のアミノ酸残基を含んでもよい。リンカーは、例えばCγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε、およびCμを含む任意のイソタイプの免疫グロブリン重鎖から得ることができる。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えばCκまたはCλから得ることができる。リンカー配列はまた、Ig様タンパク質(例えばTCR、FcR、KIR)等の他のタンパク質、ヒンジ領域誘導配列、および他のタンパク質からの他の天然の配列から得られてもよい。
【0056】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンにおけるアミノ酸修飾
【0057】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4、変異体Fc領域、または変異体CTLA4および変異体Fc領域の両方を含んでもよい。変異体は、親CTLA4−Igタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸修飾を含み、該アミノ酸修飾は、1つ以上の最適化された特性を提供する。本明細書において、「修飾」とは、タンパク質、ポリペプチド、抗体、またはCTLA4−Ig免疫アドヘシンの物理的、化学的、または配列特性の変更を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸」および「アミノ酸同一性」とは、特定の定義された位置で存在し得る、20の自然に生じるアミノ酸または任意の非天然類似体の1つを意味する。したがって、本明細書で使用される「アミノ酸」は、自然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的におけるアミノ酸とみなされる。「アミノ酸」はまた、プロリンおよびヒドロキシプロリン等のイミノ酸残基を含む。側鎖は、(R)または(S)配置のいずれかであってもよい。好ましい実施形態において、アミノ酸は、(S)またはL配置である。非天然発生的側鎖が使用される場合、例えば生体内分解を防止または遅延させるために、非アミノ酸置換基が使用されてもよい。アミノ酸修飾は、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、および/または欠失であり得る。本明細書における、「アミノ酸置換」または「置換」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の別のアミノ酸による置換を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸挿入」または「挿入」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の追加を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸欠失」または「欠失」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の除去を意味する。
【0058】
本明細書に開示される変異体は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、その親とアミノ酸配列が異なる。本明細書で使用される、「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、または「前駆体タンパク質」とは、変異体を生成するように後に修飾される、無修飾のポリペプチドを意味する。前記親ポリペプチドは、自然に生じるポリペプチド、すなわちWTもしくは天然タンパク質、または自然に生じるポリペプチドの変異体もしくは操作された変型であってもよい。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。本明細書において、「野生型」、「WT」、または「天然」とは、対立遺伝子変型を含む、天然界に認められるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。例えばWT CTLA4またはWT Fc領域タンパク質を含むWTタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、親と比較して、1つ以上のアミン酸修飾、例えば、約1〜50のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して、約1〜10のアミノ酸修飾、約1〜5のアミノ酸修飾等を有してもよい。したがって、この変異体の配列、および親ポリペプチドの配列は、実質的に相同である。例えば、本明細書において、変異体配列は、親変異体配列と約80%の相同性、例えば、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、少なくとも98%の相同性、少なくとも約99%の相同性等を有する。本明細書に開示される修飾は、グリコフォーム修飾も含む。修飾は、一般的に、分子生物学を使用して行われるか、または酵素的に、もしくは化学的に行われてもよい。
【0059】
本明細書に開示される変異体は、それらを構成するアミノ酸修飾によって定義される。したがって、例えば、CTLA4における置換T51Nは、位置51におけるトレオニンがアスパラギンで置き換えられたCTLA4変異体を指す。別の例として、Fc領域における置換N434Sは、位置434におけるアスパラギンがセリンで置き換えられたFc変異体を指す。同様に、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対して、置換M428LおよびN434Sを伴うFc変異体を定義する。野生型アミノ酸の同一性は、不特定であってもよく、この場合、前述の変異体は、428L/434Sと称される。置換が提供される順番は、恣意的であり、つまり、例えば、428L/434Sは、434S/428Lと同じ変異体であることに留意する。CTLA4における修飾に関して、本明細書における位置の付番は、配列番号6に規定されるCTLA4の細胞外領域の連続番号に従う。本明細書において議論される抗体定常領域およびFc領域の位置は、EU指標またはEU付番規定に従い番号付けされる(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda、参照によりその全体が本明細書に援用される)。KabatもしくはEU付番のEU指標またはEU指標は、EU抗体の番号付けを指す(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78−85、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0060】
本明細書における変異体の目標は、典型的には標的リガンドまたはFc受容体との親和性を改変することにより、1つ以上の最適化された特性を提供することである。親和性は、親タンパク質に関連して増強または低減され得る。本明細書で使用される、親ポリペプチドより「大きな親和性」または「改善された親和性」または「増強された親和性」または「良好な親和性」とは、例えば結合アッセイの変異体および親ポリペプチドの量が基本的に同じである時、変異体が、同じ条件下で行われた親ポリペプチドより有意に高い会合平衡定数(KAもしくはKa)、または低い解離平衡定数(KDもしくはKd)で、リガンドまたは受容体に結合することを意味する。
【0061】
例えば、改善されたB7−2結合親和性を有するCTLA4変異体は、親CTLA4ポリペプチドと比較して約1.2、1.5、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍またはそれ以上のB7−2結合親和性の改善を示してもよく、B7−2結合親和性は、例えば、当業者によって、Biacore(商標)を含むがこれに限定されない本明細書に開示される結合方法により決定される。
【0062】
したがって、本明細書で使用される、親ポリペプチドと比較して「低減された親和性」とは、変異体が、親ポリペプチドより有意に低いKAまたは高いKDで、リガンドまたは受容体に結合することを意味する。より大きいまたは低減された親和性は、親和性の絶対レベルに対しても定義され得る。
【0063】
本明細書における免疫アドヘシンは、好ましくは、変異体CTLA4を含む。CTLA4変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する結合を改善してもよい。CTLA4変異体は、B7−1に比べて選択的にB7−2への結合を改善してもよい。すなわち、変異体は、CTLA4のB7−2への親和性を増強してもよいが、B7−1への親和性を低減するか、またはB7−1への親和性に影響しないか、またはB7−2に対する親和性の改善よりも低くB7−1への親和性を改善する。代替的に、変異体は、B7−2に比べて選択的にB7−1に対する結合を改善してもよい。
【0064】
本明細書における免疫アドヘシンは、好ましくは、Fc変異体を含む。本明細書におけるFc変異体は、Fc受容体またはFcリガンドに対する改善または低減された結合のために最適化されてもよい。本明細書で使用される、「Fc受容体」または「Fcリガンド」とは、抗体のFc領域に結合してFcリガンド複合体を形成する、任意の生物からの分子、好ましくは、ポリペプチドを意味する。Fcリガンドは、FcγRs、FcγRs、FcγRs、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、およびウイルスFcγRを含むが、これらに限定されない。Fcリガンドはまた、FcγRsと相同であるFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)を含む。Fcリガンドは、Fcを結合する未発見の分子を含んでもよい。
【0065】
好ましい実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、FcRn結合を改善するFc変異体を組み込む。そのような変異体は、CTLA4−Ig 免疫アドヘシンの生体内薬物動態特性を向上させてもよい。FcRnへの結合を増加する、および/または薬物動態特性を改善する好適な変異体は、これらに限定されないが、例えば、259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Y、および434Mを含む、位置259、308、428、および434での置換を含むが、これらに限定されない(「Fc Variants with Altered Binding to FcRn」の表題で、2008年12月22日に出願されたUSSN第12/341,769号、参照によりその全体が援用される)。FcのFcRnへの結合を増加する他の変異体は、これらに限定されないが、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al.,2004,J.Biol.Chem.279(8):6213−6216,Hinton et al.2006 Journal of Immunology 176:346−356)、256A、272A、286A、305A、307A、307Q、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al,Journal of Biological Chemistry,2001,276(9):6591−6604、参照によりその全体が援用される)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acqua et al.Journal of Immunology,2002,169:5171−5180,Dall’Acqua et al.,2006,Journal of Biological Chemistry 281:23514−23524、参照によりその全体が援用される)を含む。FcRn結合を調節するための他の修飾は、Yeung et al
.,2010,J Immunol,182:7663−7671に記載されている。
【0066】
本発明における使用のための他のFc修飾は、FcγRsおよび/または補体タンパク質に対する結合を低減または切断し、それによりFc媒介エフェクター機能、例えばADCC、ADCP、およびCDCを低減または切断する変異体を含む。そのような変異体はまた、本明細書において「ノックアウト変異体」または「KO変異体」と呼ばれる。FcγRsおよび補体に対する結合を低減する変異体は、Fc領域により媒介される望ましくない相互作用の低減、およびCTLA4−Ig免疫アドヘシンの選択性の調整に有用である。好ましいノックアウト変異体は、参照により本明細書に明示的に援用される、10/2/2008に公開された米国特許出願公開第2008−0242845A1号、名称「Fc Variants with Optimized Properties」に記載されている。好ましい修飾は、位置234、235、236、237、267、269、325、および328における置換、挿入、および欠失を含むがこれらに限定されず、付番はEU指標に従う。好ましい置換は、234G、235G、236R、237K、267R、269R、325L、および328Rを含むがこれらに限定されず、付番はEU指標に従う。好ましい変異体は、236R/328Rを含む。変異体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4を含むがこれらに限定されない、任意のIgGイソタイプまたはIgGイソタイプFc領域に関して使用され得る。FcγRおよび補体結合の低減ならびにFc仲介エフェクター機能の低減に好ましいIgG Fc領域は、IgG2およびIgG4 Fc領域である。ハイブリッドのイソタイプ、例えばUSSN第11/256,060号に記載のハイブリッドIgG1/IgG2イソタイプもまた有用となり得る。FcγRおよび補体相互作用を低減するための他の修飾は、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233P、および234V、ならびに、突然変異もしくは酵素による手段による、またはタンパク質をグリコシル化しないバクテリア等の生物における産生による、位置297におけるグリコシル化の除去を含むが、これらに限定されない。これらの他の修飾は、参照によりその全体が
援用される、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685−691において考察されている。
【0067】
FcγRsおよび/または補体に対する結合を改善するFc修飾はまた、本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに用途を見出す。そのようなFc変異体は、ADCC、ADCP、および/またはCDC等のFc媒介エフェクター機能を増強してもよい。FcγRおよび補体結合を改善するために好ましい修飾は、参照により本明細書に明示的に援用される、2/2/2006に公開された米国特許出願公開第2006−0024298A1号、および10/19/2006に公開された米国特許出願公開第2006−0235208A1号に記載されている。好ましい修飾は、236、239、268、324、および332からなる群から選択される位置における置換を含み、付番はEU指標に従う。好ましい置換は、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332D、および332Eを含むが、これらに限定されない。好ましい変異体は、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、および267E/268F/324Tを含むが、これらに限定されない。FcγRおよび補体相互作用を増強するための他の修飾は、置換298A、333A、334A、326A、247I、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、305I、および396Lを含むが、これらに限定されない。これらおよび他の修飾は、Strohl,2009(同上)において考察されている。
【0068】
一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、阻害受容体FcγRIIbに対する親和性を増強するFc変異体を組み込んでもよい。そのような変異体は、本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに、例えばB細胞および単球を含むFcγRIIb+細胞に関連した免疫調節活性を提供してもよい。一実施形態において、Fc変異体は、1つ以上の活性化受容体に比べ、FcγRIIbに対する選択的に増強された親和性を提供する。FcγRIIbに対する結合を改変するための修飾は、参照により明示的に本明細書に援用される、2008年5月30日出願のUSSN第12/156,183号、名称「Methods and Compositions for Inhibiting CD32b Expressing Cells」に記載されている。特に、FcγRIIbに対する結合を改善するFc変異体は、EU指標に従う234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328、および332からなる群から選択される位置において、1つ以上の修飾を含んでもよい。FcγRIIb親和性を増強するための好ましい置換は、234D、234E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、および332Eを含む。より好ましくは、置換は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、および328Yを含むが、これらに限定されない。FcγRIIbに対する結合を増強するための好ましいFc変異体は、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268E、および267E/328Fを含むが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書に記載のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4を含むがこれらに限定されない、任意のIgGイソタイプまたはIgGイソタイプFc領域に関して、Fc修飾を組み込む。IgGイソタイプは、FcγR−および/または補体媒介エフェクター機能(複数を含む)を改変するように選択されてもよい。ハイブリッドIgGイソタイプもまた有用となり得る。例えば、USSN第11/256,060号は、具体的発明における用途を見出し得るいくつかのハイブリッドIgG1/IgG2定常領域を記載している。本発明のいくつかの実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、イソタイプの修飾、つまり、親IgGの別のIgGのアミノ酸タイプへの修飾のための手段を含んでもよい。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッド変異体は、2つのイソタイプが異なる位置で、CH2および/またはCH3領域のIgG1位置をIgG3からのアミノ酸と置換するための置換手段によって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換手段、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435R、および436Fを含む、ハイブリッド変異体IgG抗体が、構築されてもよい。本発明の他の実施形態において、IgG1/IgG2ハイブリッド変異体は、2つのイソタイプが異なる位置で、CH2および/またはCH3領域のIgG2を、IgG1からのアミノ酸と置換するための置換手段によって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換手段、例えば、次のアミノ酸置換:233E、234L、235L、−236G(位置236での、グリシンの挿入を指す)、および327Aの1つ以上を含む、ハイブリッド変異体gG抗体が、構築されてもよい。
【0070】
当業者に理解されるように、Fc領域における個々の変異体および変異体の組み合わせの開示は、本明細書に記載のCTLA4変異体のいずれかと独立して、および随意に組み合わせることができる。すなわち、本明細書に記載される場合、CTLA4変異体は、開示される変異体の組内で、任意の組み合わせで、個々に、および随意に選択および/または組み合わされる。同様に、好適なFcドメイン変異体の上記一覧は、Fc領域内だけでなく、任意のCTLA4変異体と、任意の様式で個々に、および随意に組み合わせることができる。すなわち、いくつかの変異体、例えばA29H/T51N/L61E/K93Qを含むCTLA4変異体が選択されてもよく、これらの変異体は、239D/332E、および/または428L/434S等のFcドメイン変異体と組み合わせることができる。したがって、可能な個々の変異体の「一覧」の開示は、その一覧内、および同じまたは他の目的のための変異体の他の一覧内のありとあらゆる可能な組み合わせを含むことを意図する。
【0071】
グリコフォーム修飾
【0072】
抗体Fc領域は、重鎖の定常領域の保存位置で糖を含有する。各抗体のイソタイプは、明確な種々のN結合型糖構造を有する。重鎖に結合される糖とは別に、ヒトIgGの最大30%は、グリコシル化Fab領域を有する。IgGは、CH2ドメインのAsn297で、単一結合型二触角性糖を有する。血清からか、またはハイブリドーマもしくは操作された細胞で生体外で産生されるIgGにおいて、IgGは、Asn297結合型糖に関して異種である。ヒトIgGにおいて、コアオリゴ糖は、通常、異なる数の外側残基を有する、GlcNAc2Man3GlcNAcからなる。
【0073】
本明細書に開示される免疫アドヘシンの糖鎖は、オリゴ糖の説明に通常使用される命名法を参照して説明される。この命名法を使用する糖化学の総説は、Hubbard et al.1981,Ann.Rev.Biochem.50:555−583に見られる。この命名法は、例えば、マンノースを表すMan、2−N−アセチルグルコサミンを表すGlcNAc、ガラクトースを表すGal、フコースを表すFuc、およびグルコースを表すGlcを含む。シアル酸は、5−N−アセチルノイラミン酸についてはNeuNAc、および5−グルコリルノイラミン酸についてはNeuNGcの省略標記によって記載される。
【0074】
「グリコシル化」とは、オリゴ糖(2つ以上の単糖の連結、例えば、2〜約12の単糖の連結を含有する糖)の糖タンパク質への結合を意味する。オリゴ糖測鎖は、典型的に、NまたはO結合のいずれかを通して、糖タンパク質の骨格に連結される。本明細書に開示される免疫アドヘシンのオリゴ糖は、一般的に、N結合型オリゴ糖としてFc領域のCH2ドメイに結合される。「N結合型グリコシル化」とは、糖タンパク質鎖における、糖鎖のアスパラギン残基への結合を指す。当業者は、例えば、マウスIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3のそれぞれ、ならびにヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgD CH2ドメインが、残基297で、N結合型グリコシル化のための単一部位を有することを認識するであろう。
【0075】
本明細書の目的において、「成熟型コア糖構造」とは、一般的に、二触角性オリゴ糖に典型的な、次の糖構造:GlcNAc(Fucose)−GlcNAc−Man−(Man−GlcNAc)2からなる、Fc領域に結合される処理されたコア糖構造を指す。成熟型コア糖構造は、一般的に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合を介して、糖タンパク質のFc領域に結合される。「二分GlcNAc」とは、成熟型コア糖構造のα1,4マンノースに結合されるGlcNAc残基である。二分GlcNAcは、α(1,4)−N−アセチルグルコサミン転移酵素III酵素(GnTIII)により、酵素的に成熟型コア糖構造に結合され得る。CHO細胞は、通常、GnTIIIを発現しないが(Stanley et al.,1984,J.Biol.Chem.261:13370−13378)、そのように操作することができる(Umana et al.,1999,Nature Biotech.17:176−180)。
【0076】
本明細書において、修飾されたグリコフォームまたは操作されたグリコフォームを含むCTLA4−Ig免疫アドヘシンが記載される。本明細書で使用される、「修飾されたグリコフォーム」、または「操作されたグリコフォーム」とは、タンパク質、例えば、抗体に共有結合的に結合される糖組成物を意味し、該糖組成物は、親タンパク質のそれと化学的に異なる。操作されたグリコフォームは、これらに限定されないが、FcγR媒介性エフェクター機能の増強または低減を含む、種々の目的に有用であり得る。一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、Fc領域に共有結合的に結合される、フコシル化および/または二分オリゴ糖のレベルを制御するように修飾される。
【0077】
修飾されたグリコフォームを生成するための種々の方法は、当該分野において周知である(Umana et al.,1999,Nat Biotechnol 17:176−180、Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294、Shields et al.,2002,J Biol Chem 277:26733−26740、Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466−3473、USSN第12/434,533号、参照により全てが明示的に援用される)。これらの技法は、例えば、操作された、種々の生物または細胞株(例えば、Lec−13CHO細胞、またはラットハイブリドーマYB2/0細胞)でIgGを発現させることにより、さもさければ、グリコシル化経路に関与する酵素(例えば、FUT8[α1,6−フコシル基転移酵素]および/またはβ1−4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III[GnTIII])を調節することにより、IgGが発現した後に、糖(類)を修飾することにより、または酵素阻害剤としてのフコース類似体の存在下で抗体を発現させることにより、Fc領域に共有結合的に結合される、フコシル化および/または二分オリゴ糖のレベルを制御する。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンのグリコフォームを修飾するための他の方法は、糖操作された酵母株(Li et al.,2006,Nature Biotechnology 24(2):210−215)、蘚類(Nechansky et al.,2007,Mol Immunjol 44(7):1826−8)、および植物(Cox et al.,2006,Nat Biotechnol 24(12):1591−7)の使用を含む。修飾されたグリコフォームを生成するための特定の方法の使用は、その方法に実施形態を制限するものではない。むしろ、本明細書に開示される実施形態は、それらがどのように生成されるかに関係なく、修飾されたグリコフォームを伴うCTLA4−Ig免疫アドヘシンを包含する。
【0078】
一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、シアル化のレベルを変更するために、糖操作される。CTLA4−Ig免疫アドヘシンG分子における、高レベルのシアル化Fcグリカンは、機能性に悪影響を与える可能性があり(Scallon et al.,2007,Mol Immunol.44(7):1524−34)、Fcシアル化のレベルの相違は、変更された抗炎症性活性をもたらす可能性がある(Kaneko et al.,2006,Science 313:670−673)。抗体は、Fcコア多糖のシアル化の際に抗炎症性特性を取得し得るため、Fcシアル酸含有量の増加または低減のために、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを糖操作することは、有益であり得る。
【0079】
操作されたグリコフォームは、典型的に、異なる糖またはオリゴ糖を指し、したがって、例えば、免疫グロブリンは、操作されたグリコフォームを含み得る。代替的に、操作されたグリコフォームは、異なる糖またはオリゴ糖を含むCTLA4−Ig免疫アドヘシンを指す場合がある。一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、Fc領域を有するグリコシル化CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含み、グリコシル化抗体の約51〜100%、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%、90〜100%、95〜100%等が、フコースを欠失する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、フコースを欠失する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。代替の実施形態において、組成物は、Fc領域を有するグリコシル化CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含み、約51〜100%のグリコシル化抗体、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%または90〜100%は、シアル酸を欠失する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、シアル酸を欠失する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。また別の実施形態において、組成物は、Fc領域を有するグリコシル化CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含み、グリコシル化抗体の約51〜100%、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%または90〜100%は、シアル酸を含有する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、シアル酸を含有する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。別の実施形態において、操作されたグリコフォームとアミノ酸修飾の組み合わせは、抗体に最適なFc受容体結合特性を提供する。
【0080】
他の修飾
【0081】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、最適化された特性を提供する1つ以上の修飾を含んでもよい。該修飾は、アミノ酸修飾であるか、または酵素的に、もしくは化学的に行われる修飾であってもよい。このような修飾は、例えば、その安定性、溶解性、または臨床使用の増強等の、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのある程度の改善を提供する可能性が高い。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをさらなる修飾と結合することにより行わせてもよい、種々の改善を本明細書に開示する。
【0082】
一実施形態において、修飾は、これらに限定されないが、安定性、溶解性、およびオリゴマー状態を含む、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物物理学的特性を改善するように行われる。修飾は、例えば、より高い安定性を提供するように、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのより好適な分子内相互作用を提供する置換、または高溶解性のために、露出非極性アミノ酸の極性アミノ酸との置換を含むことができる。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに対する他の修飾は、特定の構造、またはホモ二量体もしくはホモ多量体分子を可能にするものを含む。そのような修飾は、これらの限定されないが、操作されたジスルフィド、および化学修飾または集合法を含む。
【0083】
さらなる実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、タンパク質分解部位を除去する修飾を含む。これらは、例えば、生産収量を低減するプロテアーゼ部位、ならびに生体内で投与タンパク質を分解するプロテアーゼ部位を含み得る。一実施形態において、さらなる修飾は、脱アミド(すなわち、グルタミニルおよびアスパラギニル残基の対応するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド)、酸化、およびタンパク質分解部位等の、共有結合分解部位を除去するように行われる。除去に特に有用である脱アミド部位は、これらに限定されないが、グリシンが続く、アスパラギニルおよびグルタミル(gltuamyl)残基、(それぞれ、NGおよびQGモチーフ)を含む、脱アミドの傾向を増強するものである。このような場合、いずれの残基の置換も、脱アミドの傾向を有意に低減することができる。一般的な酸化部位は、メチオニンおよびシステイン残基を含む。導入または除去され得る他の共有結合性修飾は、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖の”−アミノ基のメチル化、およびN末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。さらなる修飾は、限定されないが、N結合型またはO結合型グリコシル化およびリン酸化等の、翻訳後修飾も含み得る。
【0084】
修飾は、生物学の産生に通常使用される、宿主または宿主細胞から得られる発現および/または精製収量を改善するものを含んでもよい。これらは、これらに限定されないが、種々の哺乳類細胞株(例えば、CHO)、酵母細胞株、バクテリア細胞、および植物を含む。さらなる修飾は、重鎖が、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を除去する、または低減する修飾を含む。さらなる修飾は、重鎖が、鎖内ジスルフィド結合を形成する能力を除去する、または低減する修飾を含む。
【0085】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、限定されないが、参照により本明細書に明示的に援用される、Liu & Schultz,2010,Annu Rev Biochem 79:413−444に記載される方法を含む方法を使用して組み込まれた、非天然アミノ酸の使用を含む修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態において、これらの修飾は、上述の種々の機能的、生物物理学的、免疫学的、または製造特性の操作を可能にする。さらなる実施形態において、これらの修飾は、他の目的のために、さらなる化学修飾を可能にする。
【0086】
他の修飾が、本明細書において企図される。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体等の、種々の非タンパク質性重合体の1つに連結されてもよい。さらなるアミノ酸修飾が、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの特異的または非特異的な化学修飾もしくは翻訳後修飾を可能にするように行われてもよい。このような修飾は、これらに限定されないが、ペグ化およびグリコシル化を含む。ペグ化を可能にするように利用され得る特異的置換は、これらに限定されないが、効率的かつ特異的なカップリング化学法が、PEGか、さもなければ重合体部分を結合するために使用され得るような、新規システイン残基または非天然アミノ酸の導入を含む。特定のグリコシル化部位の導入は、新規N−X−T/S配列を本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに導入することにより、達成され得る。
【0087】
免疫原性を低減するための修飾は、親配列由来の処理されたペプチドのMHCタンパク質への結合を低減する修飾を含んでもよい。例えば、アミノ酸修飾は、任意の一般的なMHC対立遺伝子を高親和性で結合することが予測される免疫エピトープが存在しないか、または最小数であるように操作されるだろう。タンパク質配列におけるMHC結合型エピトープの同定のいくつかの方法は、当該分野で知られており、本明細書に開示される抗体のエピトープをスコアするために使用されてもよい。
【0088】
共有結合修飾は、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの範囲内に含まれ、必ずではないが、概して翻訳後に行われる。例えば、共有結合的修飾のいくつかの種類は、特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖、またはNもしくはC末端残基と反応することができる有機誘導化剤と反応させることにより、分子に導入され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンの共有結合的修飾は、1つ以上の標識の追加を含む。「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を意味する。いくつかの実施形態において、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、種々の長さのスペーサーのアームを介してCTLA4−Ig免疫アドヘシンに結合される。タンパク質を標識するための種々の方法が、当該分野において知られており、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に使用され得る。
【0089】
一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、「融合タンパク質」であり、本明細書において時折「共役体」と呼ばれる。融合パートナーまたは共役パートナーは、タンパク質性または非タンパク質性であり得、後者は、一般的に、CTLA4−Ig免疫アドヘシン上および共役パートナー上の官能基を使用して生成される。共役パートナーおよび融合パートナーは、小分子化学化合物およびポリペプチドを含む、任意の分子であってもよい。例えば、種々の共役体および方法が、Trail et al.,1999,Curr.Opin.Immunol.11:584−588に記載されており、参照によりその全体が援用される。可能な共役パートナーは、これらに限定されないが、サイトカイン、細胞障害性薬剤、毒素、ラジオアイソトープ、化学療法剤、反脈管形成物質、チロシンキナーゼ阻害剤、および他の治療活性剤を含む。いくつかの実施形態において、共役パートナーは、むしろ負荷量と考えられてもよい、つまり、共役体の目的は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンによる、共役パートナーの標的細胞、例えば、癌細胞または免疫細胞への標的送達である。したがって、例えば、毒素のCTLA4−Ig免疫アドヘシンの共役は、該毒素の標的抗原を発現する細胞への送達を標的とする。当業者により理解されるように、実際には、融合および複合の概念および定義は、重複する。融合または複合の意味は、本明細書に開示される任意の特定の実施形態にそれを制限するものではない。むしろ、これらの用語は、本明細書に開示される任意のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、ある所望の特性を提供するように、遺伝的に、化学的に、または他の方法で、1つ以上のポリペプチドもしくは分子に連結されてもよいという、広範な概念を伝達するように漠然と使用される。
【0090】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンの産生
【0091】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンを産生し、実験的に試験するための方法もまた、本明細書に開示される。開示される方法は、実施形態を任意の特定の操作の用途または理論に限定するものではない。むしろ、提供される方法は、1つ以上のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを取得するように産生され、実験的に試験され得ることを、一般的に例示して説明するものである。抗体およびタンパク質分子生物学、発現、精製、およびスクリーニングのための一般的な方法は、Antibody Engineering,Kontermann & Dubel編集,Springer,Heidelberg,2001、およびHayhurst & Georgiou,2001,Curr Opin Chem Biol 5:683−689、Maynard & Georgiou,2000,Annu Rev Biomed Eng 2:339−76に記載されている。
【0092】
本明細書に開示される一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードし、その後、所望する場合、宿主細胞内にクローン化、発現、および測定され得る核酸が作製される。したがって、各タンパク質配列をコードする、核酸、および特にDNAが作製され得る。これらの実践は、周知の手順を使用して実施される。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に用途を見出し得る種々の方法は、Molecular Cloning − A Laboratory Manual,3rd Ed.(Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2001)、および Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons)に記載されており、ともに、参照によりその全体が援用される。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードするDNAを効率的に生成するために使用され得る、種々の技術がある。このような方法は、これらに限定されないが、遺伝子アセンブリ法、PCRに基づく方法、およびPCRの変形を使用する方法、リガーゼ連鎖反応に基づく方法、合成組み換え、エラーを起こしやすい増幅法、およびランダム変異を伴うオリゴを使用する方法等の混合オリゴ法、古典的な部位指定変異導入法、カセット変異導入法、ならびに他の増幅および遺伝子合成法を含む。当該分野において知られているように、遺伝子アセンブリ、変異導入、ベクターサブクローン化等のための種々の市販のキットおよび方法があり、このような市販製品は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸の生成に用途を見出す。
【0093】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンタンパク質は、タンパク質の発現を誘発する、または生じるような適切な条件下で、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸を含有する、核酸、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することにより生成することができる。発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択により異なり、日常の実験を通して、当業者によって容易に確認されるであろう。これらに限定されないが、哺乳類細胞、バクテリア、昆虫細胞、酵母、および植物細胞を含む、多種多様の適切な宿主細胞が使用されてもよい。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に用途を見出し得る、種々の細胞株は、American Type Culture Collectionから入手可能な、ATCC(登録商標)細胞株カタログに記載されている。
【0094】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、発現コンストラクトが、レトロウイルスまたはアデノウイルス等のウイルスを用いて哺乳類細胞に導入される系を含む、哺乳類発現系で発現される。任意の哺乳類細胞、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、および霊長類の細胞を使用することができる。適切な細胞は、限定されないが、ジャーカットT細胞、NIH3T3、CHO、BHK、COS、HEK293、PER C.6、HeLa、Sp2/0、NS0細胞、およびそれらの変異体を含む、既知の研究細胞も含む。代替の実施形態において、ライブラリタンパク質が、バクテリア細胞で発現される。バクテリア発現系は、当該分野に周知であり、大腸菌(E.coli)、枯草菌、ストレプトコッカスクレモリス、およびストレプトコッカスリビダンスを含む。代替の実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサギンウラバBti−Tn5b1−4)または酵母細胞(例えば、出芽酵母、ピキア等)で産生される。代替の実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、無細胞翻訳系を使用して、生体外で発現される。原核(例えば、E.coli)および真核(例えば、麦芽、ウサギ網状赤血球)細胞の両方に由来する生体外翻訳系が、利用可能であり、対象とするタンパク質の発現レベル、および機能特性に基づき選択されてもよい。例えば、当業者に理解されるように、生体外翻訳が、例えば、リボソーム提示等の、いくつかの提示技術に必要である。加えて、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、化学合成法により産生されてもよい。動物(例えば、ウシ、ヒツジ、またはヤギの乳、発育鶏卵、全昆虫幼虫等)および植物(例えば、トウモロコシ、タバコ、ウキクサ等)の両方の形質転換発現系も同様。
【0095】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸が、タンパク質を発現するために、発現ベクターに導入されてもよい。種々の発現ベクターが、タンパク質発現のために利用されてもよい。発現ベクターは、自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムに組み入れられるベクターを含んでもよい。発現ベクターは、宿主細胞型と適合可能であるように構築される。したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に用途を見出す発現ベクターは、これらに限定されないが、哺乳類細胞、バクテリア、昆虫細胞、酵母、および生体外系で、タンパク質発現を可能にするものを含む。当該分野において知られているように、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを発現するための用途を見出し得る、種々の発現ベクターが、商業的または別様に入手可能である。
【0096】
発現ベクターは、典型的に、制御もしくは調節配列と操作可能に連結するタンパク質、選択可能マーカー、任意の融合パートナー、および/または追加要素を含む。本明細書において、「操作可能に連結される」とは、核酸が、別の核酸配列と機能的関係に配置されることを意味する。概して、これらの発現ベクターは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸に操作可能に連結される転写および翻訳調節核酸を含み、典型的に、タンパク質を発現するために使用される宿主細胞に適している。一般的に、転写および翻訳調節配列は、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、ならびに転写促進因子または活性化因子配列を含み得る。また当該分野において知られているように、発現ベクターは、典型的に、発現ベクターを含有する形質転換宿主細胞の選択を可能にする、選択遺伝子またはマーカーを含有する。選択遺伝子は、当該分野に周知であり、使用される宿主細胞により異なる。
【0097】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、発現タンパク質の標的、精製、スクリーニング、提示等を可能にするように、融合パートナーに操作可能に連結されてもよい。融合パートナーは、リンカー配列を介して、CTLA4−Ig免疫アドヘシン配列に連結されてもよい。リンカー配列は、一般的に、少数のアミノ酸、典型的には、10より少ないアミノ酸を含むが、それより長いリンカーも使用されてもよい。典型的には、リンカー配列は、柔軟かつ分解に対して耐性であるように選択される。当業者に理解されるように、広範な種々の配列のいずれをも、リンカーとして使用することができる。例えば、一般的なリンカー配列は、アミノ酸配列GGGGS [配列番号40]を含む。融合パートナーは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび任意の関連する融合パートナーを所望の細胞部位または細胞外媒体に誘導する、標的またはシグナル配列であってもよい。当該分野において知られているように、特定のシグナル伝達配列は、成長媒体か、細胞の内膜と外膜との間に位置する細胞膜周辺腔のいずれかの中に分泌されるタンパク質を標的とし得る。融合パートナーは、精製および/またはスクリーニングを可能にする、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列でもあってよい。このような融合パートナーは、これらに限定されないが、ポリヒスチジンタグ(His−タグ)(例えば、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)システムで使用するためのH6およびH10、または他のタグ(例えば、Ni+2親和性カラム))、GST融合物、MBP融合物、Strepタグ、バクテリア酵素BirAのBSPビオチン化標的配列、および抗体の標的とされるエピトープタグ(例えば、c−mycタグ、flagタグ等)を含む。当業者に理解されるように、このようなタグは、精製、スクリーニング、または両方に有用であり得る。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、Ni+2親和性カラムに固定することにより、Hisタグを使用して生成されてもよく、次いで、精製後、同じHisタグは、(以下に記載するように)ELISAまたは他の結合測定法を実施するために、抗体をNi+2被覆プレートに固定するために使用されてもよい。融合パートナーは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをスクリーニングするための選択法の使用を可能にし得る(以下を参照)。種々の選択法を
可能にする融合パートナーは、当該分野において周知である。
【0098】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、発現後に精製または単離される。タンパク質は、当業者に知られている種々の方式で、単離または精製することができる。本発明において、精製は、本明細書に記載のように、ヘテロ二量体重鎖種をホモ二量体重鎖から分離するために特に有用である。標準的な精製方法は、FPLCおよびHPLC等のシステムを使用して大気圧力または高圧で実施される、イオン交換、粗水性相互作用、親和性、サイズまたはゲル濾過、および逆相を含むクロマトグラフィー技術を含む。精製法は、電気泳動法、等電点分離法、免疫学、沈降法、透析法、および等電点電気泳動法も含む。タンパク質濃度と併用して、限外濾過法および透析濾過法も、有用である。当該分野に周知のように、種々の天然のタンパク質が、Fcおよび抗体に結合し、これらのタンパク質は、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを精製するために用途を見出すことができる。例えば、細菌タンパク質AおよびGは、Fc領域に結合する。同様に、細菌タンパク質Lは、いくつかの抗体のFab領域に結合し、当然、抗体の標的抗原にも同様に結合する。精製は、多くの場合、特定の融合パートナーにより可能となり得る。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、GST融合が採用される場合、グルタチオン樹脂、Hisタグが採用される場合、Ni+2親和性クロマトグラフィー、またはflagタグが使用される場合、固定抗flag抗体を使用して、精製されてもよい。適切な精製技法の一般的な指針については、例えば、参照によりその全体が援用される、Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Scopes,Springer−Verlag,NY,1994を参照のこと。必要な精製の程度は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのスクリーニングまたは使用に応じて異なる。いくつかの場合においては、精製は必要ない。例えば、一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンが分泌される場合、スクリーニングが、媒体から直接行われてもよい。当該分野に周知のように、いくつかの選択の方法は、タンパク質の精製を含まない。
【0099】
生体外実験
【0100】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、これらに限定されないが、結合検定法、細胞を用いた検定法、および選択技術を使用するものを含む、種々の生体外法を使用して実験的に試験されてもよい。自動高処理スクリーニング技術が、スクリーニング手順に利用されてもよい。スクリーニングは、融合パートナーまたは標識の使用を採用してもよい。融合パートナーの使用は、上で論じられた。本明細書において、「標識化」とは、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、スクリーニングにおける検出を可能とする1つ以上の元素、同位体、または化学化合物を有することを意味する。一般的に、標識は、次の3つに分類される:a)抗体により認識される融合パートナーとして組み込まれるエピトープであってもよい、免疫標識、b)放射性活性もしくは重同位体であってもよい、同位体標識、およびc)蛍光色素および比色色素、もしくは他の標識法を可能にするビオチン等の分子を含んでもよい、小分子標識。標識が、任意の位置で化合物に組み込まれてもよく、タンパク質発現中に、生体外または生体内に組み込まれてもよい。
【0101】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの機能的および/または生物物理学的特性は、生体外検定でスクリーニングされる。生体外検定は、対象とするスクリーニング特性の広範なダイナミックレンジを可能にし得る。本発明に特に関連して、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、1つ以上の抗原に対する親和性に関して試験され得る。スクリーニングされ得る特性は、これらに限定されないが、安定性、溶解性、およびFcリガンド、例えば、FcγRに対する親和性を含む。複数の特性が、同時または個別にスクリーニングされてもよい。タンパク質は、検定の必要条件に応じて、精製されていても、精製されていなくてもよい。一実施形態において、スクリーンニングは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを結合することが既知の、またはそう思われる、タンパク質または非タンパク質分子へのCTLA4−Ig免疫アドヘシンの結合に対する定性もしくは定量性結合検定である。一実施形態において、スクリーニングは、標的抗原への結合を測定するための結合検定である。代替の実施形態において、スクリーニングは、これらに限定されないが、FcγRsのファミリー、新生児型受容体FcRn、補体タンパク質C1q、ならびに細菌プロテイン質AおよびGを含む、FcリガンドへのCTLA4−Ig免疫アドヘシンの結合についての検定である。前記Fcリガンドは、任意の生物からであってもよい。一実施形態において、Fcリガンドは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、および/またはサルからのものである。結合検定は、限定されないが、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)および BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)を用いた検定、AlphaScreen(登録商標)(増幅発光性近接均質アッセイ)、シンチレーション近接アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、SPR(表面プラズモン共鳴法、BIACORE(登録商標)としても知られる)、等温滴定熱量測定法、示差走査熱量測定法、ゲル電気泳動法、およびゲル濾過を含むクロマトグラフィーを含む、当該分野において知られている種々の方法を使用して実施され得る。これら、および他の方法は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのある融合パートナーまたは標識をうまく利用し得る。検定は、限定されないが、発色性、蛍光性、発光性、または同位体標識を含む、種々の検出方法を採用し
てもよい。
【0102】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物物理学的特性、例えば、安定性および溶解性は、当該分野において知られている種々の方法を使用して試験され得る。タンパク質の安定性は、折り畳み状態と非折り畳み状態との間の熱力学的平衡を測定することにより決定され得る。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、化学変性剤、熱、またはpHを使用してほどかれてもよく、この移行は、これらに限定されないが、円二色性分光法、蛍光分光法、吸光分光法、NMR分光法、熱量測定法、およびタンパク質分解を含む方法を使用して監視されてもよい。当業者により理解されるように、フォールドおよびアンフォールドの移行の動態パラメータも、これら、および他の技法を使用して監視され得る。CTLA4−Ig免疫アドヘシンの溶解性および全体的な構造の統合性は、当該分野において知られている広範な方法を使用して、定量的、または定性的に決定され得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物物理学的特性を特徴付けるための用途を見出し得る方法は、ゲル電気泳動法、等電点電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および逆相高速液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、ペプチドマッピング、オリゴ糖マッピング、質量分析法、紫外吸光分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、等温滴定熱量測定法、示差走査熱量測定法、超遠心分析法、動的光散乱法、タンパク質分解および架橋結合、濁度測定、フィルタ遅延アッセイ、免疫学的検定、蛍光色素結合検定、タンパク質染色法、顕微鏡法、およびELISAまたは他の結合検定を介した凝集物の検出を含む。X線結晶学的技法およびNMR分光法を採用した構造分析にも、用途を見出し得る。一実施形態において、安定性および/または溶解性は、所定の時間期間の後に、タンパク質溶液の量を決定することにより測定され得る。この検定において、タンパク質は、例えば、高温、低pH、または変性剤の存在等の、ある極端な条件に曝されても、曝されなくてもよい。機能は、典型的に、安定性、溶解性、および/またはよく折り畳まれた構造のタンパク質を必要とするため、前述の機能検定および結合検定も、このような測定を実施するための方式を提供する。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含む溶液は、
標的抗原を結合するその能力について測定され、その後、1つ以上の所定の時間期間の間、高温に曝され、その後、再び、抗原結合について測定され得る。アンフォールドおよび凝集タンパク質は、抗原に結合する能力があると予期されないため、活性残存量は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの安定性および溶解性の尺度を提供する。
【0103】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、1つ以上の細胞を用いた検定、または生体外検定を使用して試験されてもよい。このような検定において、細胞が本明細書に記載のCTLA4−Ig免疫アドヘシンに曝されるように、精製もしくは未精製のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、典型的に、外因的に添加される。これらの検定は、必ずしもそうではないが、典型的に、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの標的抗原に結合し、例えば、細胞溶解、ファゴサイトーシス、リガンド/受容体結合阻害、成長および/または増殖の阻害、カルシウム放出および/またはシグナル伝達の阻害、アポトーシスのようなエフェクター機能等の、ある生化学事象を媒介する能力の生物学に基づく。このような検定は、多くの場合、細胞のCTLA4−Ig免疫アドヘシンへの応答、例えば、細胞生存、細胞死、細胞ファゴサイトーシス、細胞溶解、細胞形態の変化、または天然遺伝子もしくはリポーター遺伝子の細胞発現等の転写活性化を監視することを含む。例えば、このような検定は、例えば、ADCC、ADCP、およびCDCの殺細胞を誘発する、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの能力を測定し得る。抗原の共結合により媒介される殺細胞を測定する検定が、本発明に特に関連する。いくつかの検定において、例えば、血清補体、または末梢血単球(PBMC)、NK細胞、マクロファージ、T細胞等のエフェクター細胞等の、追加の細胞または構成要素が、つまり、標的細胞に加え、添加される必要がある場合がある。このような追加細胞は、任意の生物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルからであってもよい。架橋または単量体抗体は、抗体の標的抗原を発現する特定の細胞株のアポトーシスをもたらすか、または検定に添加された免疫細胞による、標的細胞への攻撃を媒介する場合がある。細胞の死または生存を監視するための方法は、当該分野において知られており、色素、フルオロフォア、免疫化学、細胞化学、および放射性試薬の使用を含む。例えば、カスパーゼ検定またはアネキシン−フルオロ結合物は、アポトーシスの測定を可能にし得、放射性基質(例えば、クロム−51放出検定)の取り込み、もしくは放出、またはアラマーブルー等の蛍光色素の代謝減少は、細胞成長、増殖、または活性の監視を可能にし得る。一実施形態において、DELFIA EuT
DAを用いた、細胞障害性検定(Perkin Elmer,MA)が使用される。代替的に、死んだ、または損傷した標的細胞は、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ等の、1つ以上の天然の細胞内タンパク質の放出を測定することにより監視され得る。転写の活性化も、細胞を用いた検定の機能を測定するための方法として機能する。この場合、上方制御または下方制御されてもよい天然遺伝子またはタンパク質について測定することにより、応答が監視されてもよく、例えば、特定のインターロイキンの放出が測定されてもよく、代替的に、ルシフェラーゼまたはGFPリポーターコンストラクトを介して、読出しが行われてもよい。細胞を用いた検定は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの存在に対する応答としての、細胞の形態変化の測定も含み得る。このような検定用の細胞型は、原核または真核であってもよく、当該分野において知られている種々の細胞株が採用されてもよい。代替的に、細胞を用いたスクリーニングは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸を形質転換またはそれを形質移入した細胞を使用して実施される。
【0104】
生体内実験
【0105】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物学的特性は、細胞、組織、および全生物実験において特徴付けされてもよい。
【0106】
本明細書に示されるように、一般に、本発明の免疫アドヘシンの変異体CTLA4ドメインの結合および関連した親和性の試験は、実施例に概説した結合検定を使用して行われる。上述のように、親和性は、親ポリペプチドに比べて変異体ポリペプチドのKAが有意に高い場合、または変異体ポリペプチドのKDが親ポリペプチドに比べて有意に低い場合、増強されていると言うことができる。比に関して、例えばKA(変異体ポリペプチド)/KA(親ポリペプチド)またはKD(親ポリペプチド)/KD(変異体ポリペプチド)に関して表現される場合、親和性の有意な増加は、例えば、これらの比の1つおよび/または両方が約1.2、1.5、2.0、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、100、250、500、1000またはそれ以上である場合に確認される。
【0107】
当該分野において知られているように、薬物は、多くの場合、疾病または疾病モデルに対する治療における薬物の効果を測定するために、または薬物の薬物動態、毒性、および他の特性を測定するために、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、およびサルを含む動物において試験される。該動物は、疾病モデルと称される場合がある。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに関して、候補ポリペプチドのヒトでの効果の可能性を評価するために動物モデルを使用する時、特別な課題が生じる。これは、少なくとも部分的に、ヒトFc受容体に対する親和性に特定の作用を有するCTLA4−Ig免疫アドヘシンのFcドメインが、オルソロガスな動物の受容体と同じ親和性作用を有さない可能性があるという事実による。これらの問題は、真のオルソロガスの正確な割り当てに関連する、回避不可能な不明確さ(Mechetina et al.,2002,Immunogenetics 54:463−468、参照によりその全体が援用される)、およびいくつかのオルソロガスが、単純に動物に存在しないという事実により、さらに深刻化し得る。治療用物質は、多くの場合、これらに限定されないが、ヌードマウス、Rag欠損マウス、SCIDマウス、異種移植マウス、および遺伝子導入マウス(ノックインおよびノックアウトを含む)を含むマウスにおいて試験される。本明細書における治療CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、マウス株NZB、NOD、BXSB、MRL/lpr、K/BxNおよび遺伝子導入(ノックインおよびノックアウトを含む)において試験され得る。このようなマウスは、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および関節リウマチ(RA)等の、ヒト臓器に特異的な、全身性自己免疫または炎症性疾患病変に似た、種々の自己免疫状態を発症させることができる。例えば、自己免疫疾患に対して意図される本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの疾患病変の発達を低減する、または阻害する能力を決定するようにマウスを処置することにより、このようなマウスモデルにおいて試験することができる。マウスとヒトFcγ受容体系との間の不和合性のため、代替的なアプローチとして、ヒトPBLまたはPBMC(huPBL−SCID、huPBMC−SCID)を免疫欠損マウ
スに植え付けることにより、ヒトエフェクター細胞およびFc受容体を伴う半機能的なヒト免疫系を提供する、マウスSCIDモデルを使用する。他の生物、例えば、哺乳類も、試験に使用されてもよい。例えば、サルは、ヒトに対するその遺伝子的類似性のため、治療モデルに適している場合があり、したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの効果、毒性、薬物動態、または他の特性を試験するために使用することができる。ヒトにおける本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの試験が、最終的に、薬物としての承認のために必要となり、したがって、当然のことながら、これらの実験が意図される。したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、その治療効果、毒性、薬物動態、および/または他の臨床特性を決定するように、ヒトにおいて試験され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、種々のヒト疾患の臨床的適切な動物モデルにおける効果について評価することができる。多くの場合、適切なモデルは、特定の抗原および受容体に対する種々の遺伝子導入動物を含む。
【0109】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの試験は、標的抗原を持つ特定の標的細胞の欠乏の評価を容易にするために、霊長類(例えば、カニクイザルモデル)における効果の試験を含んでもよい。さらなる霊長類のモデルは、限定されないが、自己免疫、移植、および癌の治療試験における、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを評価するための、アカゲザルの使用を含む。
【0110】
毒性試験は、標準的な薬理学的プロファイルで評価できない、または薬剤の反復投与後にのみに発生する、薬物に関連する効果を決定するために実施される。大半の毒性試験は、新規治療学的実体がヒトに導入される前に、任意の予測できない有害作用が見過ごされないことを確実にするために、ゲッ齒類およびゲッ齒類以外の2つの種属において実施される。一般的に、これらのモデルは、遺伝子毒性、慢性毒性、免疫原性、生殖/発生毒性、および発癌を含む、種々の毒性を測定することができる。前述のパラメータには、食消費量、体重、抗体産生、臨床化学の標準的な測定、および標準的な臓器/組織の肉眼および顕微鏡検査(例えば、心毒性)を含む。測定のさらなるパラメータは、もしあれば、注入部位損傷および中和抗体の測定である。従来、裸または複合のモノクローナル抗体治療学は、放射標識種属の正常組織、免疫原性/抗体産生、複合体またはリンカー毒性、および「傍観者」毒性を用いた、交差反応について評価される。それにもかかわらず、このような試験は、特定の問題に対処するように個別化され、ICH S6(上記される、生物工学製品についての安全性試験)で規定されるガイダンスに従わなければならない場合がある。したがって、原則として、製品は、十分に良く特徴付けされ、不純物/汚染物が除去され、試験材料が、開発全体を通して同等であり、GLPコンプライアンスが維持されることが、原則である。
【0111】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの薬物動態(PK)は、種々の動物系で試験され得、最も適切なのは、カニクイザルおよびアカゲザル等のヒト以外の霊長類である。血漿濃度およびクリアランスを使用して、6000倍(0.05〜300mg/kg)の用量範囲にわたる単一または反復静脈内/皮下投与が、半減期(日〜週)について評価され得る。定常状態での分布量および全身吸収レベルも測定され得る。このような測定のパラメータの例としては、一般的に、最大観測血漿濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、時間0〜無限大[AUC(0−inf)] の血漿濃度時間曲線下面積、および見かけ消失半減期(T1/2)が挙げられる。さらなる測定パラメータは、静脈内投与および生体利用性の後に得た、濃度−時間データの区画解析を含み得る。
【0112】
薬力学試験は、限定されないが、特異的細胞の標的化、またはシグナル伝達機構の遮断、抗原特異的抗体の阻害の測定等を含み得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、特定のエフェクター細胞集団を標的とし、それによって、有効性を改善するか、または特定の好ましい生理的区画の中への貫通を増加するように、特定の活性を誘発するように薬物を誘導することができる。このような薬力学作用は、動物モデル、またはヒトにおいて実証され得る。
【0113】
臨床使用
【0114】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、広範な製品において用途を見出し得る。一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、治療、診断、または研究試薬である。CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、モノクローナルまたはポリクローナルである組成物において用途を見出し得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、治療目的に使用されてもよい。CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、障害を治療するように患者に投与されてもよい。
【0115】
本明細書に開示される目的における「患者」とは、ヒトおよび他の動物、例えば、他の哺乳動物の両方を含む。したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、ヒト治療および獣医学的用途の両方を有する。本明細書に開示される、「治療」または「治療する」とは、疾病または疾患に対する治療的処置、ならびに予防的もしくは抑制手段を含むことを意味する。したがって、例えば、疾病の発現前のCTLA4−Ig免疫アドヘシンの良好な投与は、疾病の治療をもたらす。別の実施例として、疾病の症状と戦うための、疾病の臨床病態後の最適化されたCTLA4−Ig免疫アドヘシンの良好な投与は、疾病の治療に含まれる。「治療」および「治療する」とは、疾病を根絶するための、疾病出現後の、最適化されたCTLA4−Ig免疫アドヘシンの投与も包含する。予想される臨床症状の軽減、および疾病の回復の可能性を伴った、発現後、および臨床症状が発達した後の薬剤の良好な投与は、疾病の治療に含まれる。これらの「治療の必要な」とは、既に疾病または疾患を有する哺乳類、ならびに疾病または疾患が予防されるべきものを含む、疾病または疾患を有する傾向があるものを含む。
【0116】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、好ましくは、免疫関連状態または障害を治療するために使用される。免疫関連状態は、自己免疫疾患、炎症性障害、およびドナー組織の拒絶に関連した免疫応答の防止を含むが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、自己免疫疾患を治療するために使用され得る。本明細書における「自己免疫疾患」は、同種異系間膵島移植拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアックスプルー−皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠損、線維筋痛−線維筋炎、糸球体腎炎、グレーヴス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、IgM多発性神経障害、免疫性の血小板減少、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、スティフマン症候群、全身性紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、例えば疱疹状皮膚炎脈管炎、白斑、およびウェーグナー肉芽腫症を含む。
【0118】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、炎症性障害を治療するために使用され得る。本明細書における「炎症性障害」は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性敗血症性関節炎、アジュバント関節炎、若年性特発性関節炎、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性血管炎、アレルギー、喘息、アテローム性動脈硬化症、慢性細菌性またはウイルス性感染による慢性炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠動脈疾患、脳炎、炎症性大腸炎、炎症性骨溶解、急性および遅延型過敏反応に関連する炎症、腫瘍、末梢神経損傷または脱髄疾患に関連する炎症、火傷および虚血等の組織損傷に関連する炎症、髄膜炎、多臓器損傷症候群、肺線維症、敗血症および敗血性ショックによる炎症、スティーブンス・ジョンソン症候群、未分化関節化膿症、ならびに未分化脊椎関節症を含む。
【0119】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、移植者によるドナー組織、細胞、移植片、または移植臓器の拒絶に関連する免疫応答を防止または抑制するために使用され得る。移植片関連疾患または障害は、例えば骨髄移植に関連する移植片対宿主病(GVDH)、および、例えば皮膚、筋肉、ニューロン、膵島、臓器、肝臓の実質細胞等を含む、臓器、組織、または細胞移植片移植(例えば、組織または細胞同種移植片または異種移植片)の拒絶による、またはそれに関連する免疫障害を含む。移植者におけるドナー組織、細胞、移植片または固形移植臓器に関して、本明細書に開示される本発明のそのような分子(例えば、変異体CTLA−4 ECDポリペプチドまたは変異体CTLA−4−Ig融合タンパク質)は、移植者におけるそのような移植片の急性拒絶反応を防止する上で、および/または移植者におけるそのような移植片の拒絶反応を防止するための長期維持治療(例えば、糖尿病に罹患した対象移植者における、ドナーからのインスリン産生膵島細胞の拒絶反応の阻害)に有効となり得ると考えられる
【0120】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンにより治療され得る好ましい免疫関連障害は、クローン病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、ならびに、腎臓移植、肝臓移植、および膵臓移植を含むがこれらに限定されない移植片拒絶反応を含む。
【0121】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、癌を治療するために使用され得る。本明細書における「癌」および「癌性」は、典型的に制御されない細胞成長により特徴付けられる、哺乳類における生理学的状態を指す、または説明している。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺癌、メラノーマ、および白血病またはリンパ性悪性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0122】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、感染症を治療するために使用され得る。本明細書における「感染症」は、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、および寄生動物等の病原体により引き起こされる疾患を含む。
【0123】
さらに、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、うっ血性心不全(CHF)、心筋炎および心筋の他の状態等の心臓の状態、酒さ、座瘡、および湿疹等の皮膚の状態、骨量減少、骨粗しょう症、パジェット病、ランゲルハンス細胞組織球増加症、歯周病、廃用性骨減少、骨軟化症、単発性線維性形成異常、多骨性線維性骨異形成症、骨への転移、骨痛処理、液性悪性高カルシウム血症、歯周組織再建、脊髄損傷、および骨折等の骨および歯の状態、ゴーシェ病等の代謝の状態、クッシング症候群等の内分泌状態、ならびに、アルツハイマー病等の神経および神経変性状態を含むがこれらに限定されない追加的状態を予防または治療するために使用され得る。
【0124】
製剤
【0125】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび1つ以上の治療的活性剤が製剤化される医薬組成物が企図される。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの製剤は、所望の程度の純度を有する該CTLA4−Ig免疫アドヘシンを任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980、参照によりその全体が援用される)、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保存用に調製される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、採用される投与量および濃度において、受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、酢酸、および他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルオルベンジル(orbenzyl)アルコール、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、またはCTLA4−Ig免疫アドヘシン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の糖類、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール等の糖類、甘味料および他の風味剤、微結晶セルロース、ラクトース、コーンスターチおよび他のスターチ類等の増量剤、結合剤、添加剤、着色剤、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体)、ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを含む薬学的組成物は、酸および塩基付加塩の両方を含むものとする、医薬的に許容される塩として存在する等の、水溶性形態であってもよい。「医薬的
に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的効果を維持し、生物学的に、または別の点で望ましくないことがなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸で形成される塩類を指す。「医薬的に許容される塩基付加塩類」とは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等に由来するものを含む。いくつかの実施形態は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩の少なくとも1つを含む。医薬的に許容される有機非毒性塩基由来の塩類は、一級、二級、および三級アミン類、自然に生じる置換アミン類を含む置換アミン類、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、およびエタノールアミン等の環式アミンならびにイオン交換樹脂の塩類を含む。生体内投与に使用される製剤は、無菌であってもよい。これは、無菌濾過膜を通した濾過、または他の方法により容易に達成される。
【0126】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンはまた、免疫リポソームとして製剤化されてもよい。リポソームは、治療薬を哺乳類に送達するのに有用である、様々な種類の脂質、リン脂質、および/または界面活性物質を含む小胞である。CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含有するリポソームは、当該分野において知られている方法により調製される。リポソームの構成要素は、通常、生体膜の脂質配置に類似する、二分子層構造に配列される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む、脂質組成物を用いた逆相蒸発法により生成され得る。リポソームは、所定の孔径のフィルタを通して押出され、所望の径のリポソームが得られる。
【0127】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび他の治療活性剤は、限定されないが、コロイド脱混合現象技法、界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル、またはポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル)、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微細球、微小乳濁液、ナノ粒子およびナノカプセル)、およびマクロエマルションを含む方法により調製される、マイクロカプセルに封入されてもよい。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されており、参照によりその全体が援用される。徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例としては、マトリックスが、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である、固体疎水性重合体の、半透過性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸との共重合体、非分解性エチレン−ビニル酢酸、Lupron Depot(登録商標)(乳酸−グリコール酸共重合体と酢酸リュープロリドから成る注射可能な微小球)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸、およびポリ−DL−ラクチド−co−グリコリド(PLG)のマトリックスに組み込まれる、所望の生理活性分子からなる微小球に基づく送達系である、ProLease(登録商標)(Alkermesから市販)が挙げられる。
【0128】
投与
【0129】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを含む、例えば、無菌水溶液の形態での医薬組成物の投与は、限定されないが、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳内、経皮、局所(例えばゲル、塗剤、ローション、クリーム等)、腹膜内、筋肉内、肺内、膣内、非経口、直腸、または眼内を含む、様々な方式で行われてもよい。いくつかの場合において、例えば、創傷、炎症等の治療において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンが、溶液またはスプレーとして直接適用されてもよい。当該分野において知られているように、医薬組成物は、導入様式に応じて製剤化されてもよい。
【0130】
皮下投与は、患者が、医薬組成物を自分で投与し得る状況において使用されてもよい。多くのタンパク質治療は、皮下投与の最大許容量で、治療有効量の製剤を可能にするのに十分に強力ではない。この問題は、アルギニン−HCl、ヒスチジン、およびポリソルベートを含む、タンパク質製剤の使用により、ある程度対処され得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、例えば、効力の増加、血清半減期の改善、または溶解性の増強により、皮下投与により適し得る。当該分野において知られているように、タンパク質治療物質は、多くの場合、静脈内注入、またはボーラスにより送達され得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンはまた、このような方法を使用して送達されてもよい。例えば、注入ビヒクルとして0.9%の塩化ナトリウムを含む、静脈内注入による投与であってもよい。
【0131】
肺送達は、吸入器具または噴霧器、およびエアロゾル化剤を含む製剤を使用して達成されてもよい。例えば、Aradigmから市販されるAERx(登録商標)吸入可能技術、またはNektar Therapeuticsから市販されるInhance(商標)肺送達システムが使用されてもよい。さらに、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、経口投与に適し得る。
【0132】
加えて、いくつかの送達系のいずれも、当該分野において知られており、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを投与するために使用されてもよい。例としては、これらに限定されないが、リポソーム、微小粒子、微小球(例えば、PLA/PGA 微小球)等への封入が挙げられる。代替的に、膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、ゼラチン様物質の移植が使用されてもよい。徐放系は、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクチド、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタミン酸(gutamate)との共重合体、エチレン−ビニル酢酸、Lupron Depot(登録商標)等の乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸等の、重合物質またはマトリックスを含んでもよい。例えば、レトロウイルス感染、直接注射、または脂質、細胞表面受容体、または他の形質導入剤でのコーティングにより、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸を投与することも可能である。全ての場合において、制御放出系が、所望の動作位置で、またはその近くで、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを放出するように使用されてもよい。
【0133】
用量
【0134】
投与の用量および頻度は、一実施形態において、治療的または予防的に有効であるように選択される。当該分野において知られているように、タンパク質分解、全身に対して局所的送達、および新しいプロテアーゼ合成の速度、ならびに年齢、体重、一般健康状態、性別、食生活、投与の時間、薬物相互作用、および症状の重篤度に対する調整、必要不である場合があり、当業者により、日常の実験で確認可能である。
【0135】
製剤における治療的に活性なCTLA4−Ig免疫アドヘシンの濃度は、約0.1〜100重量%まで変動し得る。一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの濃度は、0.003〜1.0モルの範囲である。患者を治療するために、本明細書に開示される、治療有効量のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが投与され得る。本明細書において、「治療有効量」とは、効果を生じる、投与される用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、既知の技法を使用して、当業者により確認可能である。投与量は、0.0001〜100mg/体重kgの範囲、もしくはそれ以上、例えば、0.1、1、10、または50mg/体重kgであってもよい。一実施形態において、投与量は、1〜10mg/kgの範囲である。
【0136】
いくつかの実施形態において、単一用量のCTLA4−Ig免疫アドヘシンのみが使用される。他の実施形態において、多用量のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが投与される。投与間の経過時間は、1時間未満、約1時間、約1〜2時間、約2〜3時間、約3〜4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約2〜4日間、約4〜6日間、約1週間、約2週間、または2週間以上であり得る。
【0137】
他の実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、連続注入または長期休息期間なしの頻繁な投与のいずれかにより、メトロノミック投与計画で投与される。このようなメトロノミック投与は、休息期間なしの一定の間隔での投与を含み得る。典型的に、このような計画は、長期間、例えば、1〜2日間、1〜2週間、1〜2ヶ月間、または最大6ヶ月もしくはそれ以上の、慢性的な小用量、または連続注入を含む。小用量の使用は、副作用および休息期間の必要性を最小限にし得る。
【0138】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシン、および1つ以上の他の予防薬もしくは治療薬が、患者に周期的に投与される。周期治療は、一回目で第1の薬剤、2回目で第2の薬剤、任意に、追加回で追加の薬剤を投与し、任意の休息期間、そして1回またはそれ以上、この投与順序を繰り返すことを含む。反復の数は、典型的に2〜10回である。治療の反復は、1つ以上の薬剤への耐性の発生を低減し得るか、副作用を最小限にし得るか、または治療効果を改善し得る。
【0139】
併用療法
【0140】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、1つ以上の他の治療計画または薬剤と同時に投与されてもよい。追加の治療計画または薬剤は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの効力または安全性を改善するために使用されてもよい。また、追加の治療計画または薬剤は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの作用を改変するのではなく、同じ疾患または共存症を治療するために使用されてもよい。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、化学療法、放射線療法、または化学療法および放射線療法の両方と併せて患者に投与されてもよい。
【0141】
「〜と組み合わせて」および「同時投与」という用語は、正確に同時である予防薬または治療薬の投与に限定されない。代わりに、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび他の薬剤(複数を含む)が、順番に、および、一緒に作用して、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンまたは他の薬剤(複数を含む)のいずれかのみでの治療に対し増加した利益を提供し得るような時間間隔内で投与されることを意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシン、および他の薬剤(複数を含む)は、追加的に、および時折相乗的に作用する。そのような分子は、好適には、意図される目的のために効果的である量で組み合わせて存在する。熟練した医療従事者は、実験的に、または薬物の薬物動態および作用機序を考慮することにより、各治療薬の適切な用量(複数を含む)、ならびに適切な投与のタイミングおよび方法を決定することができる。
【0142】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、細胞障害性薬剤、化学療法剤、抗体、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤、キナーゼ阻害剤、反脈管形成物質、心臓保護薬、免疫刺激剤、血液細胞の増殖を促進する薬剤、血管形成阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、他の抗体、Fc融合体、またはCTLA4−Ig免疫アドヘシン、または他の治療薬を含むがこれらに限定されない、1つ以上の他の予防薬または治療薬と組み合わせて投与されてもよい。本発明の療法は、他の免疫療法と組み合わされてもよい。本発明の療法はまた、抗体およびFc融合体を含むがこれらに限定されないケモカインまたはサイトカインの拮抗薬と組み合わされてもよい。
【0143】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、他の治療計画と組み合わされてもよい。例えば、一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンで治療されるべき患者はまた、放射線療法を受けてもよい。放射線療法は、当該分野において一般的に採用され、当業者に知られているプロトコルに従い施すことができる。そのような療法は、セシウム、イリジウム、ヨウ素、またはコバルト放射線を含むが、これらに限定されない。放射線療法は、全身照射法であってもよく、または、肺、膀胱もしくは前立腺等の身体内もしくは身体上の特定の部位もしくは組織に対して、局所的に向けられてもよい。随意に、放射線療法は、単一線量として、または複数の順次的線量として施されてもよい。熟練した医療従事者は、実験的に、本明細書において有用な放射線療法の適切な線量(複数を含む)を決定することができる。別の実施形態によれば、生体外で癌細胞を処置するために、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび1つ以上の他の抗癌療法が採用される。そのような生体外治療は、骨髄移植、特に自家骨髄移植において有用となり得ることが企図される。例えば、移植患者内への移植前に癌細胞を枯渇させる、または実質的に枯渇させるために、癌細胞を含有する細胞または組織(複数を含む)の、CTLA4−Ig免疫アドヘシン、および上述したような1つ以上の他の抗癌療法による処置を採用することができる当然ながら、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、手術等のさらに他の治療技術と組み合わせて採用されてもよい。
【0144】
本発明の特定の実施形態が、例示の目的のため、上で説明されたが、詳細の多くの変形が、添付の特許請求の範囲で記載される、本発明から逸脱することなく行われてもよいことを、当業者は理解するであろう。本明細書において引用される全ての参考文献は、その全体が援用される。
【実施例】
【0145】
本発明を例示するために、以下に実施例を記載する。これらの実施例は、本発明をいかなる特定の用途または実施の理論にも制限することを意図しない。
【0146】
実施例1.B7−1およびB7−2の結合を増強する操作されたCTLA4−Ig変異体
【0147】
全長ヒトCTLA4のアミノ酸配列を図1に示す。B7−1およびB7−2との相互作用を担う細胞外ドメイン(ECD)もまた図1に示す。
【0148】
CTLA4の免疫アドヘシン(Fc融合体)は、ECD(またはECDのいくつかの変異体)をIgGのFc領域に結合させることにより構築することができる。天然ヒトIgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のFc領域を図2に示す。図2に示されるIgG1 Fcは、356D/358Lハプロタイプを含有するが、他のハロタイプまたはアロタイプ形態が使用されてもよい(例えば、356E/358M)。本明細書におけるFc領域は、EU付番規定に基づき、位置230からC末端として定義される。アバタセプトは、P238S置換を含有する修飾IgG1に結合したCTLA4の免疫アドヘシンである(図2中Fc(IgG1−238S)と呼ばれる)。本発明のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、位置238にセリンまたはプロリンを含んでもよい(すなわち、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、238Sまたは238Pを含んでもよい)。下方ヒンジ領域に4つのIgG1修飾を有するIgG2 Fc領域を含む、IgG Fc領域の他の変異体型も図2に示す(Fc(IgG2−233E/234L/235L/236G)と呼ばれる)。
【0149】
CTLA4 ECDは、種々のリンカーを介してFc領域に結合され得る。本発明において使用されるリンカーは、CH1ドメインのC末端および上方ヒンジを含む、ヒトIgG定常鎖からの配列を含む。天然IgGイソタイプに基づく例示的リンカー配列を、図3に示す。修飾されたリンカーが使用されてもよい。本研究において使用される例示的リンカーは、修飾されたIgGリンカー(例えば、IgG1またはIgG2ベースリンカー)であり、システインがセリンと置き換えられている。アバタセプトは、N末端グルタミンの挿入に加え、修飾されたIgG1リンカーのシステインからセリンへの置換を使用する。そのようなリンカーの例もまた図3に示す。
【0150】
本研究において使用されるリンカーおよびFc領域の例示的組み合わせの例を、図4に示す。これらは、Ig(ab)と呼ばれるアバタセプトのFc領域、ならびに、Ig(G2)およびIg(G2−ELLG)と呼ばれるIgG2 Fc領域に基づく2つの融合体を含み、IgG2 Fc領域内に組み込まれた下方ヒンジ(233E/234L/235L/236G)において4つのIgG1修飾を含有する。例示的なCTLA4−Ig免疫アドヘシンを、図5に示す。これらは、CTLA4−Ig(ab)とも呼ばれるアバタセプト、CTLA4−Ig(G2)と呼ばれるアバタセプトのIgG2 Fcベースの型、ならびに、B7−1およびB7−2に対する親和性を増強するCTLA4位置における2つの置換A29YおよびL104Eを有するアバタセプトの変異体型である、ベラタセプトを含む。
【0151】
ヒトCTLA4のヒトB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)に対する親和性を増強するために、理論的構造に基づく手法を使用して、CTLA4変異体を設計した。ヒトCTLA4とヒトB7−1(Stamper et al.,2001,Nature 410:608−611)およびB7−2(Schwartz et al.,2001,Nature 410:604−608)との間の複合体の高分解能構造が利用可能である。設計された変異体のライブラリを以下に示す:A29K、A29N、A29E、A29W、A29F、A29Y、A29H、A29Q、A29R、T30D、T30V、T30A、T30N、T30E、T30H、T30R、E31I、E31M、E31T、E31V、E31D、R33F、R33T、R33M、R33W、R33I、R33Y、R33L、R33E、R33Q、T35E、T35V、T35M、T35D、T35F、T35Y、A49T、A49F、A49Y、A49W、A49D、A49E、T51V、T51L、T51N、T51H、T51Q、T51E、T51S、T51R、T51D、M53E、M53Q、M53Y、M53W、M53F、M53H、T59V、T59L、T59N、T59Y、T59H、T59Q、T59I、L61D、L61E、L61I、L61A、L61F、L61G、L61H、L61K、L61M、L61N、L61P、L61Q、L61R、L61S、L61T、L61V、L61W、L61Y、D63E、S64K、S64R、S64Y、K93D、K93E、K93F、K93H、K93Q、K93R、K93T、K93V、K93W、K93Y、K93N、K93S、E95D、E95Q、E95Y、E95H、E95L、M97F、M97D、M97N、M97I、M97V、Y98F、Y98W、Y102F、Y102W、Y103F、Y103W、Y103H、Y103D、Y103E、Y103N、Y103Q、L104D、L104E、L104V、L104M、L104Y、L104W、L104F、L104H、G105D、G105E、I106E、およびI106Y。
【0152】
CTLA4タンパク質をコードする遺伝子は、商業的に合成され(Blue Heron Biotechnologies、Bothell、WA)、ヒトIgG定常領域を含有する哺乳類発現ベクターpTT5にサブクローン化された(Durocher Y,et al.,2002,Nucleic Acids Res 30[2]:E9)。アミノ酸修飾は、QuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発法(Stratagene,La Jolla CA)を使用した部位特異的突然変異誘発法を用い、アバタセプトCTLA4−Ig(ab)コンストラクト上に構築した。また、ベラタセプトCTLA4(A29Y/L104E)−Ig(ab)を対照として構築した。全てのDNAは、配列の忠実度を確認するために配列決定された。lipofectamine(商標)(Invitrogen、Carlsbad CA)を6ウェルプレート形式で小規模(3ml)で使用して、CTLA4−Ig遺伝子を含有するプラスミドを293E細胞に形質移入し(Durocher Y,et al.,2002,Nucleic Acids Res 30[2]:E9;Biotechnology Research Institute,National Research Council Canada)、FreeStyle(商標)293培地(Invitrogen、Carlsbad CA)中で成長させた。成長5日後、直接上澄みからの変異体タンパク質を、標的結合についてスクリーニングした。成長5日後、MabSelect(商標)樹脂(GE Healthcare)を使用して、プロテインA親和性により、このタンパク質を培養上澄みから精製した。
【0153】
表面プラズモン共鳴を使用して、B7−1およびB7−2への結合について変異体CTLA4−Ig Fc融合体タンパク質をスクリーニングした。結合測定は、Biacore(商標)3000機器(Biacore)を使用して行った。センサチップは、抗HisタグmAbで誘導体化し、続いてB7−1−IgまたはB7−2−Ig(ともにR&D Systems製)をそれぞれ100nMおよび200nMで1.5分間捕捉した。HBS−EP緩衝液(Biacore)中の変異体および対照CTLA4−Igタンパク質を、1分間注入し、続いて2分間解離させた。データは、適切な非特異的信号(流動緩衝液の対照チャネルおよび注入の応答)を減算することにより、受容体の注入前の時間および応答をゼロにすることにより処理された。 BIAevaluationソフトウェアを用いて解離センサグラムをフィッティングし、解離速度定数(オフ速度またはkdまたはkoff)を得た。3回の別個の結合実験からの結果を、両方の抗原への結合のオフ速度の改善または低減の倍数とともに表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0154】
アバタセプトに対する倍数(koff)のプロットを図6に示す。表1および図6から見ることができるように、複数の置換が、アバタセプト親タンパク質よりも遅い解離(高い結合)を示した。
【0155】
アバタセプトよりも遅いB7−1および/またはB7−2に対する解離速度を有する変異体を、より大規模で再び発現させ、上述のように精製した。タンパク質濃度は、280nmにおける吸光度により測定した。B7−1およびB7−2に対する結合親和性は、CTLA4−Igタンパク質の一連の濃度を使用して、Biacore(商標)で測定した。全ての変異体CTLA4−Igタンパク質は、1uMに正規化し、次いでプロテインA結合によりQCした。抗Hisチップを上述のように生成し、B7−1およびB7−2を、それぞれ50nMで1分間および100nMで2分間固定した。CTLA4−Igタンパク質を、50、25、12.5および6.25nMで始まる一連の2倍濃度で希釈し、1分間注入し、続いて2分間解離させた。BIAevaluationソフトウェアを使用して動力学的データを1:1結合モデル(Langmuir)にフィッティングし、解離速度定数(kdまたはkoff)、会合速度定数(kaまたはkon)、および平衡解離定数(KDまたはKD)を得た。結合親和性を表2(B7−1)および表3(B7−2)に示す。
【表4】
【表5】
【0156】
単一置換スクリーニングの結果に基づき、組み合わせの変異体および追加的な単一置換変異体のライブラリを設計した。新たな変異体を表4および5に列挙する。変異体は、上述のように構築、発現、および精製した。B7標的への結合は、上述のように測定し、フィッティングした動力学的速度定数および親和性を表4(B7−1)および表5(B7−2)に示す。
【表6】
【表7】
【0157】
アバタセプトおよびベラタセプトと比較した、変異体の全てに対するCD80およびCD86 KDのプロットを、図7に示す。組み合わせの変異体のいくつかが、アバタセプト親CTLA4−Igに比べてB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)の両方により強固に結合し、B7−1に対する最大3.6倍の結合の改善、およびB7−2に対する最大19.2倍の結合の改善を示した。B7−2結合において最良の三重置換変異体は、T51N/L61E/K93Q(NEQと呼ばれる)であり、B7−2親和性を437pMから40pMに改善し、B7−1親和性を59pMから36pMに改善した。B7−2結合において最良の四重置換変異体は、A29H/T51N/L61E/K93Q(HNEQと呼ばれる)であり、B7−2親和性を437pMから23pMに改善し、B7−1親和性を59pMから16pMに改善した。アバタセプトおよびベラタセプトと比較したHNEQ変異体の最高CTLA4−Ig濃度からのセンサグラムのプロットを、図8に示す。これらのCTLA4変異体およびCTLA4−Ig変異体タンパク質のアミノ酸配列を、図9に示す。
【0158】
実施例2.操作されたCTLA4−Ig変異体は、より大きな生体内でのT細胞阻害活性を有する。
【0159】
NEQおよびHNEQ変異体CTLA4−Igタンパク質を、T細胞増殖を阻害する能力について、細胞を用いた検定法において試験した。アバタセプト、ベラタセプト、およびB7−1またはB7−2に対する親和性を有さない抗RSV IgG1抗体(陰性対照)を、対照として試験した。この検定法において、T細胞活性化および増殖を、抗CD3抗体OKT3および組み換えB7−2 Fc融合体(R&D Systems)を使用して刺激した。U字型組織培養プレートを、PBS中、4℃で一晩2ug/mlのCD86−Fcおよび0.5ug/mlの抗OKT3で被覆した。プレートをPBSで3回洗浄した。Ficoll−Paque(商標)Plus密度勾配(Amersham Biosciences、Newark、NJ)を使用して、ヒト末梢血単核球(PBMC)を匿名の健常志願者の白血球分離により精製した(HemaCare、VanNuys、CA)。EasySep(登録商標)Human T Cell Enrichment Kit(StemCell Technologies)を使用してT細胞をPBMCから単離し、T細胞をCSFE(10uM)で標識化した。CTLA4−Igタンパク質変異体および対照を、最高濃度を50 ug/mlとして、8つの濃度にわたる4倍希釈で添加した。試料を繰り返し試験した。約500,000個のT細胞を被覆されたプレートに加え、37℃で4日間インキュベートした。CD86−Fc/OKT3被覆ウェル上の細胞および細胞のみ(被覆無し)について対照条件を行った。4日間の培養後、FACSCanto(商標)を使用してFITC染色(CSFE)について試料を分析した。図10中のデータは、試験したCTLA4−Ig変異体T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Qが、その改善されたB7−1およびB7−2親和性に一致して、親CTLA4−Igアバタセプトよりも優れていることを示している。さらに、T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Q変異体の両方が、そのより大きなB7−2親和性に一致して、ベラタセプトに比べてより大きい阻害活性を示した。
【0160】
実施例3.延長された生体内半減期のための、増強されたFcRnへの結合を有するCTLA4−Ig免疫アドヘシン
【0161】
生体内血清半減期を改善することを目的として、CTLA4−Igタンパク質のFc領域を、新生児型Fc受容体FcRnに対する親和性を増強するように操作した。FcRn結合を改善し、増強された薬物動態特性を提供し得るFc変異体は、例えば、259I、307Q、308F、311I、311V、378V、378T、426V、428L、434S、434H、434F、434Y、434M、436I、および436V(参照により本明細書に明示的に援用される、12/22/2008出願のUSSN第12/341,769)を含むがこれらに限定されない、位置259、307、308、311、378、426、428、434、および436における置換を含むがこれらに限定されない。FcRnに結合するFcを増加させる他の変異体は、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al.,2004,J.Biol.Chem.279(8):6213−6216、Hinton et al.2006 Journal of Immunology 176:346−356)、256A、272A、286A、305A、307A、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al,Journal of Biological Chemistry,2001,276(9):6591−6604、参照によりその全体が援用される)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、および308T/309P/311S(Dall Acqua et al.Journal of Immunology,2002,169:5171−5180、Dall’Acqua et al.,2006,The Journal of Biological Chemistry 281:23514−23524、参照によりその全体が援用される)を含むが、これらに限定されない。
【0162】
増強されたFcRn親和性および延長された半減期を提供する置換M428LおよびN434Sを、アバタセプトCTLA4−Ig(ab)、CTLA4−Ig(G2)、ベラタセプト、ならびにCTLA4(HNEQ)およびCTLA4(NEQ)変異体のIg(G2−ELLG)型のFc領域内に導入した。これらのCTLA4−Ig変異体タンパク質のアミノ酸配列を、図11に示す。
【0163】
CTLA4−Ig変異体タンパク質は、上述のように構築、発現、および精製した。Biacore(商標)3000機器(Biacore(商標))を使用した抗原媒介免疫アドヘシン捕捉/ヒトFcRn検体形式で、pH6.0でのこれらの変異体のFcRnへの親和性をBiacore(商標)を用いて測定した。B7−1およびB7−2は、標準アミンカップリング法を用いて、それぞれ6500および8400RUの密度までCM5チップ上に固定した。リガンドをpH4.0のアセテート緩衝液中にそれぞれ200nMまで希釈した。表面を全長1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)+N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo−NHS)で4分間活性化し、続いてB7−1またはB7−2 Fc融合リガンド(R&D Systems)の注入を2ul/分で15分間行った。最後に、表面をエタノールアミンでブロックした。CTLA4−Igタンパク質の捕捉は、pH6.0のリン酸緩衝液中で、20nM(WT IgG1 Fc)または10nM(M428L/N434S変異体Fc)で2分間行い、それぞれ1500または700のRUを達成した。次いで、500、250、および125nMの濃度のヒトFcRn検体溶液を、示された濃度で注入し、続いて、次のサイクルの前に、B7表面をpH4.0のアセテート+500mM NaCl緩衝液で再生した。B7上に存在するFc融合体に起因して、表面に直接結合するhFcRnの高いバックグラウンドがあり、したがって、一連の濃度のhFcRnを非固定(空の)表面上に注ぎ、BIAevaluation分析中に手動でこのバックグラウンドを差し引いた。バックグラウンド/ドリフトを差し引き、軸のゼロ補正を行った後、BIAevaluationソフトウェア(Biacore(商標))を使用して、センサグラムを全体的に1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングした。
【0164】
アバタセプトCTLA4−Ig(ab)およびFc操作型CTLA4−Ig(ab−LS)(LS=428L/434S)の代表的センサグラムを、図12に示す。アバタセプトCTLA4−Ig(ab)およびCTLA4−Ig(G2)、ならびにFc操作型CTLA4−Ig(ab−LS)およびCTLA4−Ig(G2−LS)によるFcRnへの結合のフィッティングされた親和性を、表6に示し、図13にプロットする。結果は、Fc操作型のCTLA4−Igタンパク質のFcRnに対する増強された親和性、ひいてはFc変異体型の生体内でのより長い半減期の可能性を実証している。
【表8】
【0165】
実施例4.混合リンパ球反応における増強されたT細胞阻害活性を有するCTLA4−Ig免疫アドヘシン
【0166】
FcRnへの増強された結合を有する選択されたCTLA4−Ig変異体を、そのT細胞阻害活性について試験した。T細胞増殖を、抗CD3抗体およびB7−2Fc融合体を使用して刺激する上述の細胞を用いた検定法において、CTLA4−Igタンパク質を試験した。図14におけるデータは、FcRn親和性を増強するFc変異体(M428L/N434S)とともに、B7親和性が増強されたCTLA4変異体(T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Q)の強力で優れた阻害活性を示している。
【0167】
CTLA4−Ig変異体を混合リンパ球反応(混合白血球反応またはMLRとしても知られる)において試験することにより、それらののT細胞阻害活性をさらに測定した。MLRは、Tヘルパー(TH)細胞増殖の分析および細胞障害性Tリンパ球(CTL)の集団の生成のための生体外法である。同種異系(異なるMHCハロタイプ)リンパ球が一緒に培養されると、TH細胞集団が増殖し、続いてCTL集団が増殖する。MHC/TCRおよびB7/CD28共刺激経路は、同種異系反応に重要である。T細胞活性化を監視するために、インターロイキン−2(IL−2)分泌を使用した。2つの別個の実験において、Ficoll−Paque(商標)Plus密度勾配(Amersham Biosciences、Newark、NJ)を使用して、ヒトPBMCの2つの異なる組を2名の異なる匿名の健常志願者の白血球分離により精製した(HemaCare、VanNuys、CA)。PBMCを、ウェル当たり約1.2×10E6で、それぞれ300ulのRPMI1640/10%FBSと混合した。2つの実験のうちの一方では、ドナー2336および3070からのPBMCを混合し、他方の実験では、ドナー3070および3995からのPBMCを混合した。CTLA4−Igタンパク質および抗RSV IgG1陰性対照を、10点の一連の4倍希釈で調製し、示された最終濃度で混合PBMCに添加した。PBMC単独(別個に)もまた、対照として試験した。プレートを6日間インキュベートした。上澄みを回収し、IL−2 ELISA LegendMax(商標)Kit(BioLegend)を使用してIL−2の濃度を測定した。分析結果を図15に示す。
【0168】
図15におけるデータは、CTLA4−Ig変異体の強力な阻害活性、およびそのOrencia(登録商標)(アバタセプト)に勝る優位性を裏付けている。驚くべきことに、HNEQ変異体はB7−1およびB7−2に対する親和性がより大きい(表4および5)にもかかわらず、NEQ変異体がHNEQ変異体よりも優れていた。HNEQ変異体はアバタセプトに比べてB7−1親和性を3.6倍、およびB7−2親和性を19.2倍改善し、一方NEQ変異体はアバタセプトに比べてB7−1親和性を1.6倍、およびB7−2親和性を10.8倍改善する。NEQ変異体のより大きいT細胞阻害活性は、免疫応答におけるB7−1およびB7−2の異なる生物学的役割を反映している可能性がある。最近の研究では、B7−2はCD28の支配的なリガンドであり、一方B7−1はCTLA4の支配的なリガンドであること、さらに、B7−2はCTLA−4を免疫シナプスに動員することができないことが実証されている(Collins et al.,2002,Immunity 17:201−210、Jansson et al.,2005,J Immunol 175:1575−1585)。T細胞の下方制御における内因性CTLA4の役割(Alegre et al.,2001,Nat Rev Immunol 1:220−8)、および免疫応答の制御性T細胞(Treg)媒介抑制におけるその役割(Sakaguchi et al.,2009,International Immunology 21[10]:1105−1111)のために、内因性CTLA4を優先的に結合するB7−1に対する増加した親和性は、天然阻害剤を阻害し、ひいてはT細胞活性化を促進し得る。この点において、治療目的のために、B7−2は、阻害により重要なリガンドとなり得、したがって、CTLA4最適化のための最適な変異体は、B7−1と比べたB7−2への親和性における選択的増強となり得る。B7−1と比べてB7−2への親和性を選択的に改善する置換は、例えば、A29H、A29K、T51N、L61E、およびY103Qを含む。実験目的で、この選択性の仮説の試験は、例えばK93V、L61Q、およびL104Hを含む、反対の選択性、すなわちB7−2と比べたB7−1への改善された結合を提供する変異体から恩恵が得られる可能性があ
る。全体的に、結果は、NEQ組み合わせ変異体T51N/L61E/K93Qが選択的に関して最適な変異体であり、B7−2に対しては10.8倍の親和性を提供するが、B7−1に対してはわずかに大きい(1.6倍)結合しか提供しないことを示している。この親和性および選択性のプロファイルは、B7−2に対しては6.5〜7倍、B7−1に対しては2.3倍の親和性しか提供しない(表2〜5)ベラタセプトよりも優れている。
【0169】
実施例5.新規CTLA4−Ig免疫アドヘシンの生体内活性
【0170】
操作したCTLA4−Ig変異体の活性を試験するために、マウスにおける生体内実験を行った。破傷風に対するヒト免疫応答を阻害するCTLA4−Igタンパク質の能力を、ヒト末梢血白血球(PBL)を移植した重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて検討した。SCIDマウスは免疫障害を有し、ヒトPBMCno移植を受け付けるため、この試験の動物モデルとしてこれらのマウスを選択した。生体内試験用のCTLA4−Igタンパク質は、CHO細胞(Biotechnology Research Institute、National Research Council Canada)において発現させ、上述のように精製した。
【0171】
ヒト末梢血単核球(PBMC)は、無作為ドナーから収集したロイコパックから得られた(Hemacare、Van Nuys、CA)。Ficoll密度勾配遠心分離(Ficoll−Paque(商標)Plus、GE Healthcare)によりPBMCを精製し、RPMI 1640(Mediatech)中に再懸濁させ、3×107細胞の用量で腹腔内(i.p.)に注入した。PBMC注入の1日前、マウスに100ulの抗シアロGM(Wako、Richmond、VA)を腹腔内に注入し、マウスNK細胞を枯渇した。翌日、マウスに、0.5mL量の3x107 PBMCを腹腔内に注入した。全体で約70匹のマウスに注入した。細胞注入の日を試験0日目と定義した。全ての動物に同じ日にPBMCを注入した。
【0172】
PBMC注入後、マウスを無作為に群に割り当て、体重を測定した。PBMC注入後7日目に、ヒトIgGレベルを決定するために(hIgG ELISA、ZeptoMetrix、Buffalo、NY)、後眼窩洞/神経叢(OSP)穿刺を介して血液を全てのマウスから採取した。血液採取後の同じ日に(7日目)、マウスに1mg/kgの被験物質または陰性対照としてのPBSを腹腔内に注入した。引き続き、試験を通して3日または4日毎にマウスに注入した。被験物質は、最も最近の体重測定値を使用して、mg/kgベースで注入した。9日目に、マウスに15μgの破傷風トキソイド(List Biological Labs、Campbell、CA、カタログ番号191B)またはPBSを腹腔内に注入した。21日目(抗原ワクチン接種後12日目)、ヒトIgGおよび抗破傷風IgGを決定するために、血液を全てのマウスから採取した。
【0173】
PBMC移植後7日目および21日目に、後眼窩洞/神経叢(OSP)を用いて(局所的プロパラカイン麻酔薬および吸入イソフルランを使用して)血液試料(25〜50ul)を採取した。血液試料を血清分離管に移し、30分〜1時間静置して血液を凝固させ、次いで遠心分離機で遠心分離した(3500rpmで30分)。得られた血清を、試験番号、動物番号、日付、採取時点をラベルしたポリプロピレン管に移した。血清試料を約20℃で保存した。抗破傷風抗体(抗TT IgG)の血清濃度を、標準的抗破傷風ELISAキット(IBL−America)を使用して測定した。
【0174】
図16の結果は、PBS+破傷風のみに対する親和性が増強されたNEQ変異体CTLA4−Ig免疫アドヘシンの活性を実証している。さらに、データは、NEQ変異体が、親CTLA4−Igアバタセプトよりも強力な阻害活性を有していたことを示している。これらのデータは、免疫関連障害の治療のための本明細書に記載のCTLA4−Ig変異体の使用を裏付けている。
【0175】
引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に援用される。本発明の特定の実施形態が、例示の目的のため、上で説明されたが、詳細の多くの変形が、特許請求の範囲で記載される、本発明から逸脱することなく行われてもよいことを、当業者は理解するであろう。
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2010年11月10日に出願されたUSSN第61/412,309号、2010年5月14日に出願されたUSSN第61/334,806号、および2010年2月19日に出願されたUSSN第61/306,311号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、CD80およびCD86を標的化するCTLA4−Ig免疫アドヘシン、ならびに、特に治療目的でのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Tリンパ球は、抗原に対する適応的免疫反応において中心的役割を果たす。ナイーブT細胞は、その完全な活性化のために2つのシグナルを必要とする(Bretscher 1999,Proc Natl Acad Sci USA 96:185−90)。第1のシグナルは、抗原特異的であり、抗原提示細胞(APC)上でのT細胞受容体(TCR)と抗原MHC/ペプチド複合体との相互作用により提供される。第2のシグナルは、T細胞上の受容体とAPC上のそのリガンドとの間の相互作用により提供される共刺激シグナルである。TCR/MHC結合および共刺激相互作用の両方により、カルシウム−カルシニューリンおよびRASマイトジェン活性化タンパク質キナーゼを含む複数の細胞内経路を介してT細胞活性化がもたらされ、続いてIL−2等のサイトカインを含む複数のエフェクター化合物の転写因子の活性化がもたらされる。これらの事象は、T細胞増殖、CD4+ヘルパーT細胞(TH)プールの生成、および活性化CD8+細胞毒性T細胞の拡張をもたらす。完全T細胞活性化には共刺激が重要であるだけでなく、TCR/MHC結合中にそれが存在しないと、アネルギーおよび/またはアポトーシスが引き起こされる。
【0004】
T細胞調節には複数の正および負の共刺激経路が関与するが、最も重要なのは、T細胞上のCD28とAPC上のB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)との間である。CD28は、T細胞のTH1表現型細胞への分化を促進し、B細胞による抗体産生およびT細胞の活性化を向上させる。樹状細胞(DC)およびB細胞等のAPC上に発現するB7−1およびB7−2は、重複するが別個の機能を有する。B7−2は、構成的に発現され、TCR/MHC結合(シグナル1)と同期してAPC上で急速に上方調節される。B7−1発現は、休止細胞上では非常に低いが、典型的には長期T細胞刺激後に誘導される。これらの差は、B7−2はT細胞活性化の開始において重要となり得るが、B7−1は免疫応答を持続させる上でより大きな役割を果たし得ることを示唆している。
【0005】
T細胞活性化に続いて、負の調節受容体細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA4またはCTLA−4、CD152とも呼ばれる)が、T細胞上で上方調節される(Alegre et al.,2001,Nat Rev Immunol 1:220−8)。CTLA4は、CD28と構造的に相同であるが、B7−1およびB7−2リガンドの両方により強固に結合する。CLTA4は、2つの主要な様式で免疫応答を阻害する、すなわち、B7リガンドに関してCD28と競合し、ひいては共刺激を阻止し、またT細胞活性化を阻害するように負の信号伝達を行う(Krummel and Allison,1995,J Exp Med 182:459−465;Walunas et al.,1994,Immunity 1:405−413)。最近の研究では、B7−2が免疫シナプスにおいてCTLA4よりもCD28に結合し、一方B7−1は、CD28よりもCTLA4を連結することが示されている(Collins et al.,2002,Immunity 17:201−210;Jansson et al.,2005,J Immunol 175:1575−1585)。
【0006】
免疫応答の促進および維持におけるB7共刺激経路の重要な役割により、それに拮抗するように設計された治療薬剤は、自己免疫疾患および障害の治療のために有望である。アバタセプト(Orencia(登録商標))は、ヒトIgGのFcドメインに連結したCTLA4の細胞外結合ドメインからなるCTLA4−Ig免疫アドヘシンである。アバタセプトは、B7媒介共刺激を阻害するように開発されたものであり(Bluestone et al.,2006,Immunity 24:233−238)、関節リウマチ(RA)の治療に認可されており、いくつかの他の自己免疫性適応症について臨床試験中である。しかしながら、アバタセプトはRAの治療においてある程度の活性を示すものの、他の適応症には効果的ではない。例えば、CTLA4−Igは、移植片拒絶反応に対する耐性においては到底有効ではない(Kirk et al.,1997,Proc Natl Acad Sci USA 94:8789−8794;Levisetti et al.,1997,J Immunol 159:5187−5191)。
【0007】
アバタセプトの不十分な臨床成績は、そのB7リガンド、特にB7−2に対する天然CTLA4の最適ではない親和性(これが免疫の開始において重要と考えられるため)に起因するとされている。本発明は、改善されたB7親和性および増強されたT細胞阻害活性を有する新規変異体CTLA4−Ig免疫アドヘシンを提供する。そのような新規免疫アドヘシンは、様々な用途において、特に以下で詳細に議論するように免疫関連障害の治療に有益である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の相互作用を阻害する新規CTLA4−Ig免疫アドヘシンを提供する。本発明のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、ヒトB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)に高い親和性で結合するCTLA4部分を含み、また1つ以上のFc受容体またはFcリガンドと結合し得るIg Fc部分(またはFc領域)を含む。
【0009】
本発明の一態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4タンパク質を含み、前記変異体は、天然CTLA4タンパク質内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記修飾は、A29E、A29F、A29H、A29K、A29N、A29Q、A29R、T30E、T30H、T30R、T30V、E31D、E31I、E31M、E31T、E31V、R33E、R33F、R33I、R33L、R33M、R33Q、R33T、R33W、R33Y、T35D、T35E、T35F、T35M、T35V、T35Y、A49D、A49E、A49F、A49T、A49W、A49Y、T51D、T51E、T51H、T51L、T51N、T51Q、T51R、T51S、T51V、M53E、M53F、M53H、M53Q、M53W、M53Y、T59H、T59I、T59L、T59N、T59Q、T59V、T59Y、L61A、L61D、L61E、L61F、L61G、L61H、L61I、L61K、L61M、L61N、L61P、L61Q、L61R、L61S、L61T、L61V、L61W、L61Y、D63E、S64K、S64R、S64Y、K93D、K93E、K93F、K93H、K93N、K93Q、K93R、K93S、K93T、K93V、K93W、K93Y、E95D、E95H、E95L、E95Q、E95Y、M97D、M97F、M97I、M97N、M97V、Y98F、Y98W、Y102F、Y102W、Y103D、Y103E、Y103F、Y103H、Y103N、Y103Q、Y103W、L104F、L104H、L104M、L104V、L104Y、G105D、G105E、I106E、およびI106Yからなる群から選択される置換であり、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、A29H、T51N、M53Y、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の最も好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、A29H、T51N、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB
7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の一態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、A29H、A29K、T51N、L61E、およびY103Qからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の他の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、K93V、L61Q、およびL104Hからなる群から選択されるCTLA4置換を含み、前記置換は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。
【0010】
本発明の別の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4タンパク質を含み、前記変異体は、A29H/K93Q、A29H/M53Y、A29H/T51N、T51N/K93Q、T51N/M53Y、A29H/L61E/K93Q、A29H/M53Y/K93Q、A29H/M53Y/L61E、A29H/T51N/L61E、M53Y/L61E/K93Q、T51N/L61E/K93Q、T51N/M53Y/L61E、A29H/M53Y/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/M53Y/K93Q、A29H/T51N/M53Y/L61E、T51N/M53Y/L61E/K93Q、およびA29H/T51N/M53Y/L61E/K93Qからなる群から選択されるCTLA4置換の組み合わせを含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Qからなる群から選択されるCTLA4置換の組み合わせを含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の他の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N、T51N/M53Y、およびT51N/M53Y/L61Eからなる群から選択されるCTLA4置換の組み合わせを含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。
【0011】
本発明の別の態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4タンパク質を含み、前記変異体は、35、49、51、53、59、61、および95からなる群から選択されるCTLA4位置における置換を含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CLTA4タンパク質を含み、前記変異体は、51および61からなる群から選択されるCTLA4位置における置換を含み、前記変異体は、B7−1および/またはB7−2に対する増強された結合を提供する。
【0012】
追加的態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Fx(30〜50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜60)−Vb(61)−Fx(62〜92)−Vb(93)−Fx(94〜124)[配列番号1](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号1の位置1〜28)であり;Vb(29)は、AおよびHからなる群から選択され;Fx(30〜50)は、配列TEVRVTVLRQADSQVTEVCAA(配列番号1の位置30〜50)であり;Vb(51)は、TおよびNからなる群から選択され;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、MおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜60)は、配列MGNELTF(配列番号1の位置54〜60)であり;Vb(61)は、LおよびEからなる群から選択され;Fx(62〜92)は、配列DDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号1の位置62〜92)であり;Vb(93)は、KおよびQからなる群から選択され;Fx(94〜124)は、配列VELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号1の位置94〜124)である)を有し、前記変異体は、配列番号2 6と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Fx(30〜50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜60)−Vb(61)−Fx(62〜92)−Vb(93)−Fx(94〜124)[配列番号2](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号2の位置1〜28)であり;Vb(29)は、Hであり;Fx(30〜50)は、配列TEVRVTVLRQADSQVTEVCAA(配列番号2の位置30〜50)であり;Vb(51)は、TおよびNからなる群から選択され;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、MおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜60)は、配列MGNELTF(配列番号2の位置54〜60)であり;Vb(61)はLおよびEからなる群から選択され;Fx(62〜92)は、配列DDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号2の位置62〜92)であり;Vb(93)は、KおよびQからなる群から選択され;Fx(94〜124)は、配列VELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号2の位置94〜124)である)を有し、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0014】
追加的態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Fx(30〜50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜60)−Vb(61)−Fx(62〜92)−Vb(93)−Fx(94〜124)[配列番号3](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号3の位置1〜28)であり;Vb(29)は、AおよびHからなる群から選択され;Fx(30〜50)は、配列TEVRVTVLRQADSQVTEVCAA(配列番号3の位置30〜50)であり;Vb(51)は、Nであり;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、MおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜60)は、配列MGNELTF(配列番号3の位置54〜60)であり;Vb(61)は、LおよびEからなる群から選択され;Fx(62〜92)は、配列DDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号3の位置62〜92)であり;Vb(93)は、KおよびQからなる群から選択され;Fx(94〜124)は、配列VELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号3の位置94〜124)である)を有し、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、変異体ヒトCTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記第1のドメインは、式:Fx(1〜28)−Vb(29)−Vb(30)−Vb(31)−Fx(32)−Vb(33)−Fx(34)−Vb(35)−Fx(36〜48)−Vb(49)−Fx(50)−Vb(51)−Fx(52)−Vb(53)−Fx(54〜58)−Vb(59)−Fx(60)−Vb(61)−Fx(62)−Vb(63)−Vb(64)−Fx(65−92)−Vb(93)−Fx(94)−Vb(95)−Fx(96)−Vb(97)−Vb(98)−Fx(99〜101)−Vb(102)−Vb(103)−Vb(104)−Vb(105)−Vb(106)−Fx(107〜124)[配列番号4](式中、Fx(1〜28)は、配列MHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGK(配列番号4の位置1〜28)であり;Vb(29)は、A、E、F、H、K、N、QおよびRからなる群から選択され;Vb(30)は、T、HおよびVからなる群から選択され;Vb(31)は、E、D、I、M、TおよびVからなる群から選択され;Fx(32)は、Vであり;Vb(33)は、R、E、F、I、L、M、Q、T、WおよびYからなる群から選択され;Fx(34)は、Vであり;Vb(35)は、T、D、E、F、M、VおよびYからなる群から選択され;Fx(36〜48)は、配列VLRQADSQVTEVC(配列番号4の位置36〜48)であり;Vb(49)は、A、D、E、F、T、WおよびYからなる群から選択され;Fx(50)は、Aであり;Vb(51)は、T、D、E、H、L、N、Q、R、SおよびVからなる群から選択され;Fx(52)は、Yであり;Vb(53)は、M、E、F、H、Q、WおよびYからなる群から選択され;Fx(54〜58)は、配列MGNELT(配列番号4の位置54〜58)であり;Vb(59)は、T、H、I、L、N、Q、VおよびYからなる群から選択され;Fx(60)は、Fであり;Vb(61)は、L、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群から選択され;Fx(62)は、Dであり;Vb(63)は、DおよびEからなる群から選択され;Vb(64)は、S、
K、RおよびYからなる群から選択され;Fx(65〜92)は、配列ICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYIC(配列番号3の位置65〜92)であり;Vb(93)は、K、D、E、F、H、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群から選択され;Fx(94)は、Vであり;Vb(95)は、E、D、H、L、QおよびYからなる群から選択され;Fx(96)は、Lであり;Vb(97)は、M、D、F、I、NおよびVからなる群から選択され;Vb(98)は、Y、FおよびWからなる群から選択され;Fx(99〜101)は、配列PPPであり;Vb(102)は、Y、FおよびWからなる群から選択され;Vb(103)は、Y、D、E、F、H、N、QおよびWからなる群から選択され;Vb(104)は、L、F、H、M、VおよびYからなる群から選択され;Vb(105)は、G、DおよびEからなる群から選択され;Vb(106)は、I、EおよびYからなる群から選択され;Fx(107〜124)は、配列GNGTQIYVIDPEPCPDSD(配列番号4の位置107〜124)である)の式を有し、前記変異体は、配列番号2 6と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2の両方に対する増加した結合を示す。
【0016】
追加的態様において、本発明は、配列番号34 8を含む免疫アドヘシンを提供し、前記免疫アドヘシンは、配列番号2 6と比較してアミノ酸修飾を含む。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、配列番号2 6と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記CTLA4変異体は、T51N、A29H、M53Y、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する。
【0018】
追加的態様において、本発明は、免疫アドヘシン配列番号6と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンを提供し、前記CTLA4変異体は、配列番号2 6の数を使用した51、53、61および93からなる群から選択される位置にアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する。
【0019】
本発明の一態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、天然Fc領域を含む。本発明の好ましい天然Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 Fc領域を含むがこれらに限定されない。
【0020】
本発明の好ましい態様において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体Fc領域を含む。本発明の好ましい態様において、変異体Fc領域は、新生児Fc受容体FcRnに対する親和性を増強する。本発明のもっとも好ましい態様において、変異体Fc領域は、生体内でのCTLA4−Igの半減期を延長する。FcRn親和性の増強および/または生体内での半減期の延長に好ましい変異体は、259I、307Q、308F、311I、311V、378V、378T、426V、428L、434S、436I、436V、250Q、434A、252Y、254T、および256E(付番はEU指標に従う)を含むが、これらに限定されない。FcRn親和性の増強および/または生体内での半減期の延長に最も好ましい変異体は、428Lおよび434S(付番はEU指標に従う)である。
【0021】
本発明は、本明細書に記載の新規CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする単離核酸を提供する。本発明は、随意に制御配列に操作可能に連結される核酸を含むベクターを提供する。本発明は、ベクターを含有する宿主細胞、および免疫アドヘシンを産生し、随意に回収するための方法を提供する。
【0022】
本発明は、新規CTLA4−Igタンパク質を提供する。前記新規CTLA4−Igタンパク質は、治療製品に用途を見出し得る。
【0023】
本発明は、本明細書に記載のCTLA4−Igタンパク質、および生理学的または薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明は、本明細書に記載のCTLA4−Ig 免疫アドヘシンの治療および診断用途を企図する。本発明のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、好ましくは、免疫関連障害を治療するために使用される。本発明の最も好ましい実施形態において、本明細書に記載のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、クローン病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、および/または移植片拒絶反応を治療するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】全長ヒトCTLA4、ヒトCTLA4の細胞外ドメイン(ECD)、およびヒトCTLA4のベラタセプトA29Y/L104E変異体型のアミノ酸配列である。CTLA4のECDは、全長CTLA4配列においてグレーでハイライトされている。ベラタセプト配列のグレー部分は、A29Y/L104E置換[配列番号5〜8]を強調している。
【図2】例示的Fc領域のアミノ酸配列である。ここでのFc領域は、EU付番規定に基づくC末端(230〜447)に対する位置230として定義される。グレーハイライトは、天然IgG Fc領域[配列番号9〜15]からの修飾を示す。
【図3】例示的リンカーのアミノ酸配列である。リンカーの付番はEU指標に基づき、残基216〜229を含有し、216は、EU付番に基づく天然IgGイソタイプのN末端216Eである。N末端Qの付加によって番号が変わることはない(すなわち、216Eはまだ216Eである)。グレーハイライトは、天然IgGリンカー[配列番号16〜23]からの修飾を示す。
【図4】本研究において使用されたリンカーおよびFc領域の例示的組み合わせのアミノ酸配列である。グレーハイライトは、天然IgG定常領域配列[配列番号24〜27]からの修飾を示す。
【図5】本研究において試験された、選択されたCTLA4−Ig免疫アドヘシンのアミノ酸配列である[配列番号 28〜30]。
【図6】グレーの三角形により表される、スクリーニングした一置換CTLA4−Ig変異体の全てに関する、アバタセプトに対する倍数(koff)のプロットである。黒の正方形は、親CTLA4−Igアバタセプトを表し、黒の中空の円は、ベラタセプトを表す。
【図7】アバタセプトおよびベラタセプトと比較したCTLA4−Ig変異体に対するCD80およびCD86 KDのプロットである。本研究のCTLA4−Ig変異体は、グレーの三角形として表されている。黒の正方形は、親CTLA4−Igアバタセプトを表し、黒の中空の円は、ベラタセプトを表す。
【図8】CTLA4−Ig変異体HNEQ(A29H/T51N/L61E/K93Q)をアバタセプトおよびベラタセプトと比較した、CD86(上)およびCD80(下)に対する結合のBiacoreセンサグラムである。
【図9】例示的変異体CTLA4および変異体CTLA4−Igタンパク質[配列番号31〜34]のアミノ酸配列である。
【図10】CTLA4−Ig変異体のT細胞阻害活性である。T細胞は、抗CD3抗体を使用したCD3および組み換えB7−2−Igを使用したB7−2の共連結により活性化された。CFSE標識化T細胞は、フローサイトメトリーを使用して監視した。
【図11】生体内半減期を延長するFc変異体を有する例示的CTLA4−Ig変異体のアミノ酸配列である[配列番号35〜38]。
【図12】CTLA4−Igタンパク質の天然型およびFc変異体型による、pH 6.0でのヒトFcRnに対する結合のBiacoreセンサグラムである。LSは、428L/434S変異体を指す。
【図13】Biacoreにより決定される、CTLA4−Igタンパク質の天然Fcおよび変異体Fc型のFcRn結合親和性(pH6.0)のプロットである。LSは、428L/434Sバリアントを指す。
【図14】CTLA4−Ig変異体のT細胞阻害活性である。T細胞は、抗CD3抗体を使用したCD3および組み換えB7−2−Igを使用したB7−2の共連結により活性化された。CFSE標識化T細胞は、フローサイトメトリーを使用して監視した。
【図15】混合リンパ球反応におけるCTLA4−Ig変異体のT細胞阻害活性である。T細胞は、2組の実験において、同種異系PBMCの混合により活性化された(1つはドナー2336および3070を用い(上)、1つはドナー3070および3995を用いた(下))。活性化は、ELISAにより測定されるIL−2の放出を測定することにより定量化した。
【図16】生体内での変異体CTLA4−Igタンパク質の阻害活性である。破傷風に対するヒト免疫応答を阻害するCTLA4−Igタンパク質の能力を、ヒト末梢血白血球(PBL)を移植した重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて検討した。グラフは、PBS(PBS+TT)、アバタセプト、および変異体CTLA4(NEQ)−Ig(ab)(B7−1およびB7−2に対する増強された親和性を有する51N/61E/93Q)で処置した場合の、PBL移植後21日目の破傷風負荷後の抗破傷風抗体(抗TT IgG)の血清濃度を示す。陰性対照として、PBS単独(破傷風なし)による処置を行った。
【発明を実施するための形態】
【0026】
概要
【0027】
本発明は、改善されたB7親和性および増強されたT細胞阻害活性を有する新規変異体CTLA4−Ig免疫アドヘシンに関する。そのような新規免疫アドヘシンは、以下で詳細に議論するように、様々な用途において有益である。
【0028】
CTLA−4とも呼ばれ、またCD152(表面抗原分類152)としても知られるCTLA4(細胞毒性Tリンパ球抗原4)は、免疫系において重要な調節機能を果たすタンパク質である。人間においては、CTLA4タンパク質は、CTLA4遺伝子によりコードされ、その翻訳されたアミノ酸配列は、配列番号1に規定される。CTLA4は、免疫グロブリン上科のメンバーであり、細胞共刺激タンパク質CD28と構造的に相同である。CTLA4は、抗原提示細胞(APC)の表面上の共刺激リガンドB7−1およびB7−2に結合する。CLTA4は、2つの主要な様式で免疫応答を阻害する、すなわち、B7−1およびB7−2への結合に関してCD28と競合し、それにより共刺激を阻止し、またT細胞活性化を阻害するように負の信号伝達を行う。本発明において、CTLA4タンパク質の特に重要な領域は、細胞外ドメイン(ECD)(配列番号2)であり、これは、APC上のB7−1およびB7−2リガンドへの結合を仲介する。
【0029】
免疫応答の促進および維持におけるB7共刺激経路の重要な役割により、この経路に拮抗するように設計された治療薬剤を提供することが望ましい。したがって、本発明は、CTLA4Ig免疫接着を提供する。
【0030】
CTLA4−Ig免疫アドヘシン
【0031】
本発明は、CTLA4Ig免疫アドヘシンを提供する。「免疫アドヘシン」は、1つ以上のポリペプチドがFc領域に操作可能に連結されるタンパク質を指す。本明細書において使用される免疫アドヘシンは、先行技術において使用される用語「Fc融合物」、「Ig融合物」、「受容体Fc融合物」「Igキメラ」、および「受容体グロブリン」(時折ダッシュを伴う)、ならびに「TRAP」の同義語である(Chamow et al.,1996,Trends Biotechnol 14:52−60、Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195−200、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される)。免疫アドヘシンは、免疫グロブリンのFc領域を、一般的に標的タンパク質に対する特異性を有する任意のタンパク質または小分子であり得る融合パートナーと結合させる。したがって、免疫アドヘシンは、2つの主要な部分、すなわち標的結合部分およびFc部分を有する。標的結合部分は、実質的に任意の標的または標的抗原に対する特異性を有し得る。Fc部分は、1つ以上のFc受容体またはFcリガンドに結合し得る。融合パートナーは、NもしくはC末端、または末端間のある残基を含む、Fc領域の任意の領域に連結されてもよい。実質的に、いかなるタンパク質または小分子もFcに連結され、Fc融合物を生成し、したがって実質的にいかなる標的をも標的とし得るが、本発明の免疫アドヘシンは、融合パートナーとしてCTLA4またはCTLA4の変異体を含む。CTLA4のIg Fc領域との融合物は、本明細書においてCTLA4−IgまたはCTLA4−Igタンパク質と呼ばれる。
【0032】
CTLA4変異体
【0033】
本発明の免疫アドヘシンの標的結合部分または融合パートナーは、タンパク質CTLA4を含む。したがって、本発明の免疫アドヘシンは、B7−1、B7−2、および、CTLA4により結合される、既知または未知の任意の他のリガンドまたは受容体を結合するように誘導される。本発明の標的結合部分は、ヒトCTLA4タンパク質(配列番号1)の全て、いずれか、または一部で構成されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、免疫アドヘシン結合部分んは、CTLA4(配列番号2)のECDの全てまたは一部を含む。実施例に記載されるように、免疫アドヘシン結合は、好ましくは、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する結合を改善するCTLA4の変異体であり、いくつかの場合において、いずれかへの優先的結合を示す。
【0034】
CTLA4変異体は、天然CTLA4タンパク質、一般的には配列番号1に示されるヒトCTLA4タンパク質における少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、殆どの場合、全CTLA4タンパク質は一般的に本発明の融合タンパク質において使用されないため、変異体は、細胞外ドメイン内にある。この実施形態において、1つ以上の修飾は、以下の位置1つ以上において行われる(配列番号2における付番):29、30、31、33、35、49、51、53、59、61、63、64、93、95、97、98、102、103、104、105または106。いくつかの実施形態において、修飾は、以下の置換の1つ以上である:A29E、A29F、A29H、A29K、A29N、A29Q、A29R、T30E、T30H、T30R、T30V、E31D、E31I、E31M、E31T、E31V、R33E、R33F、R33I、R33L、R33M、R33Q、R33T、R33W、R33Y、T35D、T35E、T35F、T35M、T35V、T35Y、A49D、A49E、A49F、A49T、A49W、A49Y、T51D、T51E、T51H、T51L、T51N、T51Q、T51R、T51S、T51V、M53E、M53F、M53H、M53Q、M53W、M53Y、T59H、T59I、T59L、T59N、T59Q、T59V、T59Y、L61A、L61D、L61E、L61F、L61G、L61H、L61I、L61K、L61M、L61N、L61P、L61Q、L61R、L61S、L61T、L61V、L61W、L61Y、D63E、S64K、S64R、S64Y、K93D、K93E、K93F、K93H、K93N、K93Q、K93R、K93S、K93T、K93V、K93W、K93Y、E95D、E95H、E95L、E95Q、E95Y、M97D、M97F、M97I、M97N、M97V、Y98F、Y98W、Y102F、Y102W、Y103D、Y103E、Y103F、Y103H、Y103N、Y103Q、Y103W、L104F、L104H、L104M、L104V、L104Y、G105D、G105E、I106E、およびI106Y。いくつかの実施形態において、特に有用であるのは、A29H、T51N、M53Y、L61E、およびK93Qから選択される1つ以上の置換を有するCTLA4変
異体であり、特に有用な組み合わせは、A29H/K93Q、A29H/M53Y、A29H/T51N、T51N/K93Q、T51N/M53Y、A29H/L61E/K93Q、A29H/M53Y/K93Q、A29H/M53Y/L61E、A29H/T51N/L61E、M53Y/L61E/K93Q、T51N/L61E/K93Q、T51N/M53Y/L61E、A29H/M53Y/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/M53Y/K93Q、A29H/T51N/M53Y/L61E、T51N/M53Y/L61E/K93Q、およびA29H/T51N/M53Y/L61E/K93Qを含む。
【0035】
本明細書における位置および置換の一覧の全てに関して、個々の置換の組み合わせは、ありとあらゆる可能な組み合わせから形成することができ、またいかなる個々の位置または置換も、独立して可能性の一覧に含まれ得る、またはそこから除外され得ることが理解されるべきである。一般に、野生型または親CTLA4(またはFc領域)と比較して、本発明の変異体は、一般的に、CTLA4領域において1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸置換を有するが、いくつかの場合において、所望の機能が保存される限り、より多くの置換を使用することができる。同様に、以下に記載されるように、Fcドメインもまたこのように置換を有し得る。
【0036】
別の場所に記載されるように、CTLA4変異体は、B7−1および/またはB7−2への増強された結合等、一般にCTLA4リガンドの1つ以上に対する結合を保存または増強する。
【0037】
Fcドメイン
【0038】
本発明の免疫アドヘシンのFc部分は、抗体のFc領域またはFc領域のある部分を含む。抗体は、特定の抗原に結合する免疫グロブリンである。ヒトおよびマウスを含む大半の哺乳類において、抗体は、対のポリペプチド重鎖および軽鎖から構成される。軽鎖および重鎖可変領域は、抗体間で大幅な配列の多様性を示し、標的抗原の結合に関与する。各鎖は、個別の免疫グロブリン(Ig)ドメインで構成され、したがって、一般的な用語の免疫グロブリンが、このようなタンパク質に使用される。
【0039】
従来の天然抗体の構造単位は、典型的に、四量体を含む。各四量体は、典型的に、同一の2対のポリペプチド鎖から成り、各対は、「軽鎖」(典型的に、約25kDaの分子量を有する)1本と、「重鎖」(典型的に、約50〜70kDaの分子量を有する)1本とを有する。ヒトの軽鎖は、κおよびλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のイソタイプを定義する。IgGは、これらに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、これらに限定されないが、IgM1およびIgM2を含むサブクラスを有する。IgAは、これらに限定されないが、IgA1およびIgA2を含む、いくつかのサブクラスを有する。したがって、本明細書で使用される、「イソタイプ」とは、それらの定常領域の化学的および抗原特性により定義される、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスのいずれかを意味する。既知のヒト免疫グロブリンイソ型は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2, IgD、およびIgEである。微妙な相違が、可変領域に存在する場合があるが、これらの抗体クラス間の際立った特徴は、それらの定常領域である。
【0040】
軽鎖および重鎖のそれぞれは、可変領域および定常領域と称される、2つの個別の領域から構成される。IgG重鎖は、VH−CH1−CH2−CH3の順に、NからC末端まで連結される4つの免疫グロブリンドメインから成り、それぞれ、重鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメイン1、重鎖定常ドメイン2、および重鎖定常ドメイン3を指す(VH−Cγ1−Cγ2−Cγ3とも称され、それぞれ、重鎖可変ドメイン、定常γ1ドメイン、定常γ2ドメイン、および定常γ3ドメインを指す)。IgG軽鎖は、VL−CLの順に、NからC末端まで連結される2つの免疫グロブリンドメインから成り、それぞれ、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを指す。定常領域は、配列の多様性が低く、重要な生化学事象を顕在化するいくつかの天然タンパク質の結合に関与する。可変および定常領域を含む、抗体の天然な生物学的形態を構成する構造は、本明細書において「完全長抗体」と呼ばれる。ヒトおよびマウスを含む大半の哺乳類において、IgGイソタイプの完全長抗体は、四量体であり、同一の2対の2つの免疫グロブリン鎖からなり、各対は、1つの軽鎖および1つの重鎖を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVLおよびCLを含み、各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、Cγ1、Cγ2、およびCγ3を含む。
【0041】
この可変領域は、典型的に、抗体のアミノ末端部であり、分子の抗原結合決定因子を含有し、したがって、その標的抗原に対する抗原の特異性を決定する。可変領域は、同一クラス内の他の抗体と配列が最も異なるため、そう呼ばれる。
【0042】
各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を定義する。免疫グロブリンのIgGサブクラスにおいて、重鎖には、重鎖定常(CH)領域と呼ばれるいくつかの免疫グロブリンドメインが存在する。IgG抗体と関連して、IgGイソタイプは、それぞれ、3つのCH領域を有する。したがって、IgGと関連して、「CH」ドメインとは、以下の通りである:「CH1」は、KabatのEU指標に従い、位置118〜220を指す。「CH2」は、KabatのEU指標に従い、位置237〜340を指し、「CH3」は、KabatのEU指標に従い、位置341〜447を指す。
【0043】
重鎖の別の重要な領域は、ヒンジ領域である。本明細書において、「ヒンジ」、もしくは「ヒンジ領域」、もしくは「抗体ヒンジ領域」、もしくは「免疫グロブリンヒンジ領域」とは、抗体の第1と第2の定常ドメインの間にアミノ酸を含む、柔軟なポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EUの位置220で終わり、IgG CH2ドメインは、残基EUの位置237で始まる。したがって、IgGにおいて、抗体ヒンジは、本明細書において、位置221(IgG1でD221)〜236(IgG1でG236)を含むように定義され、付番は、KabatのEU指標に従う。いくつかの実施形態において、例えば、Fc領域と関連して、一般的に、「下方ヒンジ」が、位置226または230から236を指す、下方ヒンジが含まれる。
【0044】
本発明において議論される全ての定常領域位置に関して、付番は、のEU指標に従う(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda、参照によりその全体が本明細書に援用される)。抗体の技術分野の当業者には、これらの規則が、免疫グロブリン配列特定領域における非連続的付番からなり、免疫グロブリンファミリーにおける保存された位置の正規化された参照を可能とすることが理解される。したがって、EU指標により定義されるような所与の免疫グロブリンの位置は、必ずしもその連続的配列に対応するわけではない。
【0045】
本発明の免疫アドヘシンは、CTLA4と抗体のFc領域との融合物であるタンパク質である。本明細書で使用される、「Fc」または「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン、およびいくつかの場合において、ヒンジの一部を除外する抗体の定常領域を含む、ポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対する柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMにいて、Fcは、J鎖を含み得る。IgGにおいて、Fcは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)、ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間の下方ヒンジを含む。Fc領域の境界は変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、残基230〜C末端までを含むように定義され、付番は、EU付番規定に基づく。Fcは、単独でこの領域を指すか、またはFcポリペプチドと関連してこの領域を指してもよい。本明細書で使用される、「Fcポリペプチド」とは、Fc領域の全てまたは一部を含むポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドは、抗体、Fc融合物、単離されたFc、およびFc断片を含む。
【0046】
抗体のFc領域は、いくつかのFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と称される、数々の重要な機能的能力を付与する。Fc領域のIgGにおいて、Fcは、IgドメインCγ2およびCγ3、ならびにCγ2に通じるN末端ヒンジを含む。IgGクラスのFc受容体の重要なファミリーは、Fcγ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫系の細胞アームとの間の連通を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275−290、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。ヒトにおいて、このタンパク質ファミリーは、イソタイプFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64)、イソタイプFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb−1およびFcγRIIb−2を含む)、およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)、ならびにイソタイプFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb−NA1およびFcγRIIIb−NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)を含む(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が本明細書に援用される)。これらの受容体は、典型的に、Fcへの結合を媒介する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内のいくつかのシグナル伝達事象を媒介してもよい細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、天然キラー(NK)細胞、およびγδT細胞を含む、種々の免疫細胞で発現しもよい。Fc/FcγR複合体の編成は、これらのエフェクター細胞を結合抗原の部位に動員し、典型的に、細胞内のシグナル伝達事象、ならびに炎症メディエーターの放出、B細胞の活性、エンドサイトーシス、ファゴサイトーシスおよび細胞障害性攻撃等の、その後の重要な免疫反応をもたらす。細胞障害性および食細胞性エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞
を破壊する潜在的機構である。FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞の溶解を生じる細胞媒介性反応は、抗体依存性の細胞媒介性細胞障害性(ADCC)と称される(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766; Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275−290、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞のファゴトーシスを生じる、細胞媒介性反応は、抗体依存性の細胞媒介性ファゴトーシス(ADCP)と称される。
【0047】
異なるIgGサブクラスは、FcγRに対して異なる親和性を有し、IgG1およびIgG3は、典型的に、IgG2およびIgG4よりこの受容体に実質的に良く結合する(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が本明細書に援用される)。FcγRsは、異なる親和性でIgG Fc領域に結合する。FcγRIIIaおよびFcγRIIIbの細胞外ドメインは、96%が同一であるが、FcγRIIIbは、細胞内シグナル伝達ドメインを有さない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、およびFcγRIIIaは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することにより特徴付けられる、免疫複合体により引き起こされる活性の正の調節因子であるが、FcγRIIbは、免疫受容抑制チロシンモチーフ(ITIM)を有し、したがって、阻害性である。したがって、前者は、活性化受容体と呼ばれ、FcγRIIbは、抑制受容体と呼ばれる。親和性および活性化におけるこれらの相違にも関わらず、全てのFcγRは、Cγ2ドメインのN末端および前述のヒンジで、Fc上の同じ領域に結合する。
【0048】
重複しているが、別個であるFc上の部位は、補体タンパク質C1qの接触面として機能する。Fc/FcγR結合が、ADCCを媒介する同じ方式で、Fc/C1q結合は、補体依存性細胞障害性(CDC)を媒介する。Cγ2ドメインとCγ3ドメインとの間のFc上の部位は、エンドソームから形質膜陥入された抗体を血流に再循環させる結合である、新生受容体FcRnとの相互作用を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。この過程は、大型の完全長分子による腎臓濾過の防止とともに、1〜3週間にわたる好適な抗体血清半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合は、抗体輸送において主要な役割も果たす。Fc上でのFcRnの結合部位は、細菌タンパク質AおよびGが結合する部位でもある。これらのタンパク質の密着結合は、典型的に、タンパク質の精製中に、プロテインAまたはプロテインGの親和性クロマトグラフィーを利用することにより、抗体を精製する手段として活用される。これらの領域の再現性、補体、およびFcRn/プロテインA結合領域は、抗体の臨床特性およびそれらの発達の両方に重要である。
【0049】
Fc領域の主な特徴は、N297で生じる、保存されたN結合グリコシル化である。場合によってオリゴ糖と称されるこの糖は、抗体にとって重要な構造的かつ機能的役割を担い、抗体が哺乳類発現系を使用して生成されなければならない、主な理由の1つである。FcγRおよびC1qへの効率的なFc結合は、この修飾を必要とし、N297糖の組成物における変更、またはその消失は、これらのタンパク質への結合に影響を及ぼす。
【0050】
本明細書に開示される実施形態の免疫グロブリンは、抗体クラスのいずれかに属する、免疫グロブリン遺伝子によっても実質的にコードされてもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含む抗体のIgGクラスに属する配列を含む。代替の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、抗体のIgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、またはIgMクラスに属する配列を含む。本明細書に開示される免疫グロブリンは、1本以上のタンパク質鎖を含んでもよく、例えば、ホモまたはヘテロオリゴマーを含む単量体もしくはオリゴマーである、抗体またはFc融合物であってもよい。
【0051】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、任意の生物、例えば、哺乳類(これらに限定されないが、ヒト、ゲッ齒類(これらに限定されないが、マウスおよびラットを含む)、ウサギ目(これらに限定されないが、ウサギおよびノウサギを含む)、ラクダ科(これらに限定されないが、ラクダ、ラマ、およびヒトコブラクダを含む)、ならびにこれらに限定されないが、原猿、広鼻猿類(新世界ザル)、オナガザル上科(旧世界ザル)、およびテナガザル、小型および大型類人猿を含むヒト上科を含むヒト以外の霊長類からの遺伝子により実質的にコードされてもよい。最も好ましい実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、実質的にヒトであってもよい。
【0052】
当該分野に周知のように、免疫グロブリン多型が、ヒト集団に存在する。Gm多型は、ヒトIgG1、IgG2、およびIgG3分子のマーカーのG1m、G2m、およびG3mアロタイプと称される、アロタイプ抗原決定基をコードする対立遺伝子を有する、IGHG1、IGHG2およびIGHG3遺伝子により決定される(γ4鎖上で、Gmアロタイプは発見されていない)。マーカーは、「アロタイプ」と「イソアロタイプ」とに分類され得る。これらは、イソタイプ間の強い配列の相同性に応じて、異なる血清学的根拠により区別される。アロタイプは、Ig遺伝子の対立遺伝子型により特定される抗原決定基である。アロタイプは、異なる個別の重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のわずかな相違を表す。たった1つのアミノ酸の相違でさえ、アロタイプ決定基を引き起こすことができるが、多くの場合、いくつかのアミノ酸置換が生じている。アロタイプは、抗血清が対立遺伝子の相違のみを認識する、サブクラスの対立遺伝子間の配列相違である。イソアロタイプは、1つ以上の他のイソタイプの非多型相同領域と共有されるエピトープを生成する一イソタイプにおける対立遺伝子であり、このため、抗血清は、関連するアロタイプと関連する相同イソタイプの両方と反応する(Clark,1997,IgG effector mechanisms,Chem Immunol.65:88−110;Gorman & Clark,1990,Semin Immunol 2(6):457−66、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0053】
ヒト免疫グロブリンの対立遺伝子型は、明確に特徴付けされている(WHO Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins.J Immunogen 1976,3:357−362、WHO Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins.1976,Eur.J.Immunol.6,599−601、Loghem E van,1986,Allotypic markers,Monogr Allergy 19:40−51、全て参照によりその全体が本明細書に援用される)。加えて、他の多型も特徴付けされている(Kim et al.,2001,J.Mol.Evol.54:1−9、参照によりその全体が本明細書に援用される)。現在、18のGmアロタイプが知られている:G1m(1、2、3、17)もしくはG1m(a、x、f、z)、G2m(23)もしくはG2m(n)、G3m(5、6、10、11、13、14、15、16、21、24、26、27、28)もしくはG3m(b1、c3、b5、b0、b3、b4、s、t、g1、c5、u、v、g5)(Lefranc,et al.,The human IgG subclasses:molecular analysis of structure,function and regulation.Pergamon,Oxford,pp.43−78(1990)、Lefranc,G.et al.,1979,Hum.Genet.:50,199−211、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される)。固定された組み合わせで受け継がれるアロタイプは、Gmハプロタイプと呼ばれる。本明細書に開示される免疫グロブリンは、任意の免疫グロブリン遺伝子の任意のアロタイプ、イソアロタイプ、またはハプロタイプにより実質的にコードされ得る。
【0054】
CTLA4タンパク質は、リンカーを介してFc領域に連結されてもよい。「リンカー」という用語は、ペプチド結合により結合され、1つ以上の抗原結合部分を連結するように使用される2つ以上のアミノ酸残基を含むポリペプチドを指すように使用される。そのようなリンカーポリペプチドは、当該分野において周知である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448、Poljak,R.J.,et al.(1994) Structure 2:1121−1123を参照のこと)。種々のリンカーは、融合パートナーにFc領域を共有結合的に連結するように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に用途を見出し得る。本明細書における「リンカー」はまた、「リンカー配列」、「スペーサー」、「係留配列」、またはそれらの文法上の同義語として呼ばれる。ホモまたはヘテロ二機能性リンカーが、周知である(参照によりその全体が援用される、1994 Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers,pages 155−200を参照のこと)。いくつかの方法を、分子を共有結合的に一緒に連結するように使用することができる。これらは、これらに限定されないが、タンパク質またはタンパク質ドメインのNとC末端の間のポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介した連結、および化学的架橋試薬を介した連結を含む。この実施形態の一態様において、リンカーは、組み換え技術またはペプチド合成により生成される、ペプチド結合である。リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主に含み得る:Gly、Ser、Ala、またはThr。リンカーペプチドは、所望の活性を維持するように、相互に対して適切な高次構造を成すような方式で、2つの分子を連結するのに適当な長さを有するべきである。一実施形態において、リンカーは、約1〜50のアミノ酸の長さであり、好ましくは約1〜30のアミノ酸の長さである。一実施形態において、長さが1〜20のアミノ酸のリンカーが使用されてもよい。有用なリンカーは、例えば(GS)n、(GSGGS)n[配列番号39]、(GGGGS)n[配列番号40]、および(GGGS)n[配列番号41](式中、nは、少
なくとも1の整数である)を含むグリシン−セリンポリマー、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、ならびに他の柔軟なリンカーを含む。代替的に、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を含む、種々の非タンパク質性重合体が、リンカーとしての用途を見出し得、つまりリンカーとしての用途を見出し得る。
【0055】
本発明の好ましいリンカーは、抗体ヒンジ領域からの配列を含む。例えばIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4からのヒンジ配列を含む、任意の抗体イソタイプからのヒンジ領域配列が使用されてもよい。リンカー配列はまた、任意の長さのCL/CH1ドメインの任意の配列を含んでもよいがCL/CH1ドメインの全ての残基ではなく、例えば、CL/CH1ドメインの最初の5〜12のアミノ酸残基を含んでもよい。リンカーは、例えばCγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε、およびCμを含む任意のイソタイプの免疫グロブリン重鎖から得ることができる。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えばCκまたはCλから得ることができる。リンカー配列はまた、Ig様タンパク質(例えばTCR、FcR、KIR)等の他のタンパク質、ヒンジ領域誘導配列、および他のタンパク質からの他の天然の配列から得られてもよい。
【0056】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンにおけるアミノ酸修飾
【0057】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、変異体CTLA4、変異体Fc領域、または変異体CTLA4および変異体Fc領域の両方を含んでもよい。変異体は、親CTLA4−Igタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸修飾を含み、該アミノ酸修飾は、1つ以上の最適化された特性を提供する。本明細書において、「修飾」とは、タンパク質、ポリペプチド、抗体、またはCTLA4−Ig免疫アドヘシンの物理的、化学的、または配列特性の変更を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸」および「アミノ酸同一性」とは、特定の定義された位置で存在し得る、20の自然に生じるアミノ酸または任意の非天然類似体の1つを意味する。したがって、本明細書で使用される「アミノ酸」は、自然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的におけるアミノ酸とみなされる。「アミノ酸」はまた、プロリンおよびヒドロキシプロリン等のイミノ酸残基を含む。側鎖は、(R)または(S)配置のいずれかであってもよい。好ましい実施形態において、アミノ酸は、(S)またはL配置である。非天然発生的側鎖が使用される場合、例えば生体内分解を防止または遅延させるために、非アミノ酸置換基が使用されてもよい。アミノ酸修飾は、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、および/または欠失であり得る。本明細書における、「アミノ酸置換」または「置換」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の別のアミノ酸による置換を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸挿入」または「挿入」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の追加を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸欠失」または「欠失」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の除去を意味する。
【0058】
本明細書に開示される変異体は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、その親とアミノ酸配列が異なる。本明細書で使用される、「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、または「前駆体タンパク質」とは、変異体を生成するように後に修飾される、無修飾のポリペプチドを意味する。前記親ポリペプチドは、自然に生じるポリペプチド、すなわちWTもしくは天然タンパク質、または自然に生じるポリペプチドの変異体もしくは操作された変型であってもよい。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。本明細書において、「野生型」、「WT」、または「天然」とは、対立遺伝子変型を含む、天然界に認められるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。例えばWT CTLA4またはWT Fc領域タンパク質を含むWTタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、親と比較して、1つ以上のアミン酸修飾、例えば、約1〜50のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して、約1〜10のアミノ酸修飾、約1〜5のアミノ酸修飾等を有してもよい。したがって、この変異体の配列、および親ポリペプチドの配列は、実質的に相同である。例えば、本明細書において、変異体配列は、親変異体配列と約80%の相同性、例えば、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、少なくとも98%の相同性、少なくとも約99%の相同性等を有する。本明細書に開示される修飾は、グリコフォーム修飾も含む。修飾は、一般的に、分子生物学を使用して行われるか、または酵素的に、もしくは化学的に行われてもよい。
【0059】
本明細書に開示される変異体は、それらを構成するアミノ酸修飾によって定義される。したがって、例えば、CTLA4における置換T51Nは、位置51におけるトレオニンがアスパラギンで置き換えられたCTLA4変異体を指す。別の例として、Fc領域における置換N434Sは、位置434におけるアスパラギンがセリンで置き換えられたFc変異体を指す。同様に、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対して、置換M428LおよびN434Sを伴うFc変異体を定義する。野生型アミノ酸の同一性は、不特定であってもよく、この場合、前述の変異体は、428L/434Sと称される。置換が提供される順番は、恣意的であり、つまり、例えば、428L/434Sは、434S/428Lと同じ変異体であることに留意する。CTLA4における修飾に関して、本明細書における位置の付番は、配列番号6に規定されるCTLA4の細胞外領域の連続番号に従う。本明細書において議論される抗体定常領域およびFc領域の位置は、EU指標またはEU付番規定に従い番号付けされる(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda、参照によりその全体が本明細書に援用される)。KabatもしくはEU付番のEU指標またはEU指標は、EU抗体の番号付けを指す(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78−85、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0060】
本明細書における変異体の目標は、典型的には標的リガンドまたはFc受容体との親和性を改変することにより、1つ以上の最適化された特性を提供することである。親和性は、親タンパク質に関連して増強または低減され得る。本明細書で使用される、親ポリペプチドより「大きな親和性」または「改善された親和性」または「増強された親和性」または「良好な親和性」とは、例えば結合アッセイの変異体および親ポリペプチドの量が基本的に同じである時、変異体が、同じ条件下で行われた親ポリペプチドより有意に高い会合平衡定数(KAもしくはKa)、または低い解離平衡定数(KDもしくはKd)で、リガンドまたは受容体に結合することを意味する。
【0061】
例えば、改善されたB7−2結合親和性を有するCTLA4変異体は、親CTLA4ポリペプチドと比較して約1.2、1.5、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍またはそれ以上のB7−2結合親和性の改善を示してもよく、B7−2結合親和性は、例えば、当業者によって、Biacore(商標)を含むがこれに限定されない本明細書に開示される結合方法により決定される。
【0062】
したがって、本明細書で使用される、親ポリペプチドと比較して「低減された親和性」とは、変異体が、親ポリペプチドより有意に低いKAまたは高いKDで、リガンドまたは受容体に結合することを意味する。より大きいまたは低減された親和性は、親和性の絶対レベルに対しても定義され得る。
【0063】
本明細書における免疫アドヘシンは、好ましくは、変異体CTLA4を含む。CTLA4変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する結合を改善してもよい。CTLA4変異体は、B7−1に比べて選択的にB7−2への結合を改善してもよい。すなわち、変異体は、CTLA4のB7−2への親和性を増強してもよいが、B7−1への親和性を低減するか、またはB7−1への親和性に影響しないか、またはB7−2に対する親和性の改善よりも低くB7−1への親和性を改善する。代替的に、変異体は、B7−2に比べて選択的にB7−1に対する結合を改善してもよい。
【0064】
本明細書における免疫アドヘシンは、好ましくは、Fc変異体を含む。本明細書におけるFc変異体は、Fc受容体またはFcリガンドに対する改善または低減された結合のために最適化されてもよい。本明細書で使用される、「Fc受容体」または「Fcリガンド」とは、抗体のFc領域に結合してFcリガンド複合体を形成する、任意の生物からの分子、好ましくは、ポリペプチドを意味する。Fcリガンドは、FcγRs、FcγRs、FcγRs、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、およびウイルスFcγRを含むが、これらに限定されない。Fcリガンドはまた、FcγRsと相同であるFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)を含む。Fcリガンドは、Fcを結合する未発見の分子を含んでもよい。
【0065】
好ましい実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、FcRn結合を改善するFc変異体を組み込む。そのような変異体は、CTLA4−Ig 免疫アドヘシンの生体内薬物動態特性を向上させてもよい。FcRnへの結合を増加する、および/または薬物動態特性を改善する好適な変異体は、これらに限定されないが、例えば、259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Y、および434Mを含む、位置259、308、428、および434での置換を含むが、これらに限定されない(「Fc Variants with Altered Binding to FcRn」の表題で、2008年12月22日に出願されたUSSN第12/341,769号、参照によりその全体が援用される)。FcのFcRnへの結合を増加する他の変異体は、これらに限定されないが、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al.,2004,J.Biol.Chem.279(8):6213−6216,Hinton et al.2006 Journal of Immunology 176:346−356)、256A、272A、286A、305A、307A、307Q、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al,Journal of Biological Chemistry,2001,276(9):6591−6604、参照によりその全体が援用される)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acqua et al.Journal of Immunology,2002,169:5171−5180,Dall’Acqua et al.,2006,Journal of Biological Chemistry 281:23514−23524、参照によりその全体が援用される)を含む。FcRn結合を調節するための他の修飾は、Yeung et al
.,2010,J Immunol,182:7663−7671に記載されている。
【0066】
本発明における使用のための他のFc修飾は、FcγRsおよび/または補体タンパク質に対する結合を低減または切断し、それによりFc媒介エフェクター機能、例えばADCC、ADCP、およびCDCを低減または切断する変異体を含む。そのような変異体はまた、本明細書において「ノックアウト変異体」または「KO変異体」と呼ばれる。FcγRsおよび補体に対する結合を低減する変異体は、Fc領域により媒介される望ましくない相互作用の低減、およびCTLA4−Ig免疫アドヘシンの選択性の調整に有用である。好ましいノックアウト変異体は、参照により本明細書に明示的に援用される、10/2/2008に公開された米国特許出願公開第2008−0242845A1号、名称「Fc Variants with Optimized Properties」に記載されている。好ましい修飾は、位置234、235、236、237、267、269、325、および328における置換、挿入、および欠失を含むがこれらに限定されず、付番はEU指標に従う。好ましい置換は、234G、235G、236R、237K、267R、269R、325L、および328Rを含むがこれらに限定されず、付番はEU指標に従う。好ましい変異体は、236R/328Rを含む。変異体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4を含むがこれらに限定されない、任意のIgGイソタイプまたはIgGイソタイプFc領域に関して使用され得る。FcγRおよび補体結合の低減ならびにFc仲介エフェクター機能の低減に好ましいIgG Fc領域は、IgG2およびIgG4 Fc領域である。ハイブリッドのイソタイプ、例えばUSSN第11/256,060号に記載のハイブリッドIgG1/IgG2イソタイプもまた有用となり得る。FcγRおよび補体相互作用を低減するための他の修飾は、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233P、および234V、ならびに、突然変異もしくは酵素による手段による、またはタンパク質をグリコシル化しないバクテリア等の生物における産生による、位置297におけるグリコシル化の除去を含むが、これらに限定されない。これらの他の修飾は、参照によりその全体が
援用される、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685−691において考察されている。
【0067】
FcγRsおよび/または補体に対する結合を改善するFc修飾はまた、本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに用途を見出す。そのようなFc変異体は、ADCC、ADCP、および/またはCDC等のFc媒介エフェクター機能を増強してもよい。FcγRおよび補体結合を改善するために好ましい修飾は、参照により本明細書に明示的に援用される、2/2/2006に公開された米国特許出願公開第2006−0024298A1号、および10/19/2006に公開された米国特許出願公開第2006−0235208A1号に記載されている。好ましい修飾は、236、239、268、324、および332からなる群から選択される位置における置換を含み、付番はEU指標に従う。好ましい置換は、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332D、および332Eを含むが、これらに限定されない。好ましい変異体は、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、および267E/268F/324Tを含むが、これらに限定されない。FcγRおよび補体相互作用を増強するための他の修飾は、置換298A、333A、334A、326A、247I、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、305I、および396Lを含むが、これらに限定されない。これらおよび他の修飾は、Strohl,2009(同上)において考察されている。
【0068】
一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、阻害受容体FcγRIIbに対する親和性を増強するFc変異体を組み込んでもよい。そのような変異体は、本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに、例えばB細胞および単球を含むFcγRIIb+細胞に関連した免疫調節活性を提供してもよい。一実施形態において、Fc変異体は、1つ以上の活性化受容体に比べ、FcγRIIbに対する選択的に増強された親和性を提供する。FcγRIIbに対する結合を改変するための修飾は、参照により明示的に本明細書に援用される、2008年5月30日出願のUSSN第12/156,183号、名称「Methods and Compositions for Inhibiting CD32b Expressing Cells」に記載されている。特に、FcγRIIbに対する結合を改善するFc変異体は、EU指標に従う234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328、および332からなる群から選択される位置において、1つ以上の修飾を含んでもよい。FcγRIIb親和性を増強するための好ましい置換は、234D、234E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、および332Eを含む。より好ましくは、置換は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、および328Yを含むが、これらに限定されない。FcγRIIbに対する結合を増強するための好ましいFc変異体は、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268E、および267E/328Fを含むが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書に記載のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4を含むがこれらに限定されない、任意のIgGイソタイプまたはIgGイソタイプFc領域に関して、Fc修飾を組み込む。IgGイソタイプは、FcγR−および/または補体媒介エフェクター機能(複数を含む)を改変するように選択されてもよい。ハイブリッドIgGイソタイプもまた有用となり得る。例えば、USSN第11/256,060号は、具体的発明における用途を見出し得るいくつかのハイブリッドIgG1/IgG2定常領域を記載している。本発明のいくつかの実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、イソタイプの修飾、つまり、親IgGの別のIgGのアミノ酸タイプへの修飾のための手段を含んでもよい。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッド変異体は、2つのイソタイプが異なる位置で、CH2および/またはCH3領域のIgG1位置をIgG3からのアミノ酸と置換するための置換手段によって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換手段、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435R、および436Fを含む、ハイブリッド変異体IgG抗体が、構築されてもよい。本発明の他の実施形態において、IgG1/IgG2ハイブリッド変異体は、2つのイソタイプが異なる位置で、CH2および/またはCH3領域のIgG2を、IgG1からのアミノ酸と置換するための置換手段によって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換手段、例えば、次のアミノ酸置換:233E、234L、235L、−236G(位置236での、グリシンの挿入を指す)、および327Aの1つ以上を含む、ハイブリッド変異体gG抗体が、構築されてもよい。
【0070】
当業者に理解されるように、Fc領域における個々の変異体および変異体の組み合わせの開示は、本明細書に記載のCTLA4変異体のいずれかと独立して、および随意に組み合わせることができる。すなわち、本明細書に記載される場合、CTLA4変異体は、開示される変異体の組内で、任意の組み合わせで、個々に、および随意に選択および/または組み合わされる。同様に、好適なFcドメイン変異体の上記一覧は、Fc領域内だけでなく、任意のCTLA4変異体と、任意の様式で個々に、および随意に組み合わせることができる。すなわち、いくつかの変異体、例えばA29H/T51N/L61E/K93Qを含むCTLA4変異体が選択されてもよく、これらの変異体は、239D/332E、および/または428L/434S等のFcドメイン変異体と組み合わせることができる。したがって、可能な個々の変異体の「一覧」の開示は、その一覧内、および同じまたは他の目的のための変異体の他の一覧内のありとあらゆる可能な組み合わせを含むことを意図する。
【0071】
グリコフォーム修飾
【0072】
抗体Fc領域は、重鎖の定常領域の保存位置で糖を含有する。各抗体のイソタイプは、明確な種々のN結合型糖構造を有する。重鎖に結合される糖とは別に、ヒトIgGの最大30%は、グリコシル化Fab領域を有する。IgGは、CH2ドメインのAsn297で、単一結合型二触角性糖を有する。血清からか、またはハイブリドーマもしくは操作された細胞で生体外で産生されるIgGにおいて、IgGは、Asn297結合型糖に関して異種である。ヒトIgGにおいて、コアオリゴ糖は、通常、異なる数の外側残基を有する、GlcNAc2Man3GlcNAcからなる。
【0073】
本明細書に開示される免疫アドヘシンの糖鎖は、オリゴ糖の説明に通常使用される命名法を参照して説明される。この命名法を使用する糖化学の総説は、Hubbard et al.1981,Ann.Rev.Biochem.50:555−583に見られる。この命名法は、例えば、マンノースを表すMan、2−N−アセチルグルコサミンを表すGlcNAc、ガラクトースを表すGal、フコースを表すFuc、およびグルコースを表すGlcを含む。シアル酸は、5−N−アセチルノイラミン酸についてはNeuNAc、および5−グルコリルノイラミン酸についてはNeuNGcの省略標記によって記載される。
【0074】
「グリコシル化」とは、オリゴ糖(2つ以上の単糖の連結、例えば、2〜約12の単糖の連結を含有する糖)の糖タンパク質への結合を意味する。オリゴ糖測鎖は、典型的に、NまたはO結合のいずれかを通して、糖タンパク質の骨格に連結される。本明細書に開示される免疫アドヘシンのオリゴ糖は、一般的に、N結合型オリゴ糖としてFc領域のCH2ドメイに結合される。「N結合型グリコシル化」とは、糖タンパク質鎖における、糖鎖のアスパラギン残基への結合を指す。当業者は、例えば、マウスIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3のそれぞれ、ならびにヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgD CH2ドメインが、残基297で、N結合型グリコシル化のための単一部位を有することを認識するであろう。
【0075】
本明細書の目的において、「成熟型コア糖構造」とは、一般的に、二触角性オリゴ糖に典型的な、次の糖構造:GlcNAc(Fucose)−GlcNAc−Man−(Man−GlcNAc)2からなる、Fc領域に結合される処理されたコア糖構造を指す。成熟型コア糖構造は、一般的に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合を介して、糖タンパク質のFc領域に結合される。「二分GlcNAc」とは、成熟型コア糖構造のα1,4マンノースに結合されるGlcNAc残基である。二分GlcNAcは、α(1,4)−N−アセチルグルコサミン転移酵素III酵素(GnTIII)により、酵素的に成熟型コア糖構造に結合され得る。CHO細胞は、通常、GnTIIIを発現しないが(Stanley et al.,1984,J.Biol.Chem.261:13370−13378)、そのように操作することができる(Umana et al.,1999,Nature Biotech.17:176−180)。
【0076】
本明細書において、修飾されたグリコフォームまたは操作されたグリコフォームを含むCTLA4−Ig免疫アドヘシンが記載される。本明細書で使用される、「修飾されたグリコフォーム」、または「操作されたグリコフォーム」とは、タンパク質、例えば、抗体に共有結合的に結合される糖組成物を意味し、該糖組成物は、親タンパク質のそれと化学的に異なる。操作されたグリコフォームは、これらに限定されないが、FcγR媒介性エフェクター機能の増強または低減を含む、種々の目的に有用であり得る。一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、Fc領域に共有結合的に結合される、フコシル化および/または二分オリゴ糖のレベルを制御するように修飾される。
【0077】
修飾されたグリコフォームを生成するための種々の方法は、当該分野において周知である(Umana et al.,1999,Nat Biotechnol 17:176−180、Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294、Shields et al.,2002,J Biol Chem 277:26733−26740、Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466−3473、USSN第12/434,533号、参照により全てが明示的に援用される)。これらの技法は、例えば、操作された、種々の生物または細胞株(例えば、Lec−13CHO細胞、またはラットハイブリドーマYB2/0細胞)でIgGを発現させることにより、さもさければ、グリコシル化経路に関与する酵素(例えば、FUT8[α1,6−フコシル基転移酵素]および/またはβ1−4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III[GnTIII])を調節することにより、IgGが発現した後に、糖(類)を修飾することにより、または酵素阻害剤としてのフコース類似体の存在下で抗体を発現させることにより、Fc領域に共有結合的に結合される、フコシル化および/または二分オリゴ糖のレベルを制御する。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンのグリコフォームを修飾するための他の方法は、糖操作された酵母株(Li et al.,2006,Nature Biotechnology 24(2):210−215)、蘚類(Nechansky et al.,2007,Mol Immunjol 44(7):1826−8)、および植物(Cox et al.,2006,Nat Biotechnol 24(12):1591−7)の使用を含む。修飾されたグリコフォームを生成するための特定の方法の使用は、その方法に実施形態を制限するものではない。むしろ、本明細書に開示される実施形態は、それらがどのように生成されるかに関係なく、修飾されたグリコフォームを伴うCTLA4−Ig免疫アドヘシンを包含する。
【0078】
一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、シアル化のレベルを変更するために、糖操作される。CTLA4−Ig免疫アドヘシンG分子における、高レベルのシアル化Fcグリカンは、機能性に悪影響を与える可能性があり(Scallon et al.,2007,Mol Immunol.44(7):1524−34)、Fcシアル化のレベルの相違は、変更された抗炎症性活性をもたらす可能性がある(Kaneko et al.,2006,Science 313:670−673)。抗体は、Fcコア多糖のシアル化の際に抗炎症性特性を取得し得るため、Fcシアル酸含有量の増加または低減のために、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを糖操作することは、有益であり得る。
【0079】
操作されたグリコフォームは、典型的に、異なる糖またはオリゴ糖を指し、したがって、例えば、免疫グロブリンは、操作されたグリコフォームを含み得る。代替的に、操作されたグリコフォームは、異なる糖またはオリゴ糖を含むCTLA4−Ig免疫アドヘシンを指す場合がある。一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、Fc領域を有するグリコシル化CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含み、グリコシル化抗体の約51〜100%、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%、90〜100%、95〜100%等が、フコースを欠失する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、フコースを欠失する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。代替の実施形態において、組成物は、Fc領域を有するグリコシル化CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含み、約51〜100%のグリコシル化抗体、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%または90〜100%は、シアル酸を欠失する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、シアル酸を欠失する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。また別の実施形態において、組成物は、Fc領域を有するグリコシル化CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含み、グリコシル化抗体の約51〜100%、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%または90〜100%は、シアル酸を含有する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、シアル酸を含有する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。別の実施形態において、操作されたグリコフォームとアミノ酸修飾の組み合わせは、抗体に最適なFc受容体結合特性を提供する。
【0080】
他の修飾
【0081】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、最適化された特性を提供する1つ以上の修飾を含んでもよい。該修飾は、アミノ酸修飾であるか、または酵素的に、もしくは化学的に行われる修飾であってもよい。このような修飾は、例えば、その安定性、溶解性、または臨床使用の増強等の、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのある程度の改善を提供する可能性が高い。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをさらなる修飾と結合することにより行わせてもよい、種々の改善を本明細書に開示する。
【0082】
一実施形態において、修飾は、これらに限定されないが、安定性、溶解性、およびオリゴマー状態を含む、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物物理学的特性を改善するように行われる。修飾は、例えば、より高い安定性を提供するように、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのより好適な分子内相互作用を提供する置換、または高溶解性のために、露出非極性アミノ酸の極性アミノ酸との置換を含むことができる。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに対する他の修飾は、特定の構造、またはホモ二量体もしくはホモ多量体分子を可能にするものを含む。そのような修飾は、これらの限定されないが、操作されたジスルフィド、および化学修飾または集合法を含む。
【0083】
さらなる実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、タンパク質分解部位を除去する修飾を含む。これらは、例えば、生産収量を低減するプロテアーゼ部位、ならびに生体内で投与タンパク質を分解するプロテアーゼ部位を含み得る。一実施形態において、さらなる修飾は、脱アミド(すなわち、グルタミニルおよびアスパラギニル残基の対応するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド)、酸化、およびタンパク質分解部位等の、共有結合分解部位を除去するように行われる。除去に特に有用である脱アミド部位は、これらに限定されないが、グリシンが続く、アスパラギニルおよびグルタミル(gltuamyl)残基、(それぞれ、NGおよびQGモチーフ)を含む、脱アミドの傾向を増強するものである。このような場合、いずれの残基の置換も、脱アミドの傾向を有意に低減することができる。一般的な酸化部位は、メチオニンおよびシステイン残基を含む。導入または除去され得る他の共有結合性修飾は、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖の”−アミノ基のメチル化、およびN末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。さらなる修飾は、限定されないが、N結合型またはO結合型グリコシル化およびリン酸化等の、翻訳後修飾も含み得る。
【0084】
修飾は、生物学の産生に通常使用される、宿主または宿主細胞から得られる発現および/または精製収量を改善するものを含んでもよい。これらは、これらに限定されないが、種々の哺乳類細胞株(例えば、CHO)、酵母細胞株、バクテリア細胞、および植物を含む。さらなる修飾は、重鎖が、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を除去する、または低減する修飾を含む。さらなる修飾は、重鎖が、鎖内ジスルフィド結合を形成する能力を除去する、または低減する修飾を含む。
【0085】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、限定されないが、参照により本明細書に明示的に援用される、Liu & Schultz,2010,Annu Rev Biochem 79:413−444に記載される方法を含む方法を使用して組み込まれた、非天然アミノ酸の使用を含む修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態において、これらの修飾は、上述の種々の機能的、生物物理学的、免疫学的、または製造特性の操作を可能にする。さらなる実施形態において、これらの修飾は、他の目的のために、さらなる化学修飾を可能にする。
【0086】
他の修飾が、本明細書において企図される。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体等の、種々の非タンパク質性重合体の1つに連結されてもよい。さらなるアミノ酸修飾が、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの特異的または非特異的な化学修飾もしくは翻訳後修飾を可能にするように行われてもよい。このような修飾は、これらに限定されないが、ペグ化およびグリコシル化を含む。ペグ化を可能にするように利用され得る特異的置換は、これらに限定されないが、効率的かつ特異的なカップリング化学法が、PEGか、さもなければ重合体部分を結合するために使用され得るような、新規システイン残基または非天然アミノ酸の導入を含む。特定のグリコシル化部位の導入は、新規N−X−T/S配列を本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに導入することにより、達成され得る。
【0087】
免疫原性を低減するための修飾は、親配列由来の処理されたペプチドのMHCタンパク質への結合を低減する修飾を含んでもよい。例えば、アミノ酸修飾は、任意の一般的なMHC対立遺伝子を高親和性で結合することが予測される免疫エピトープが存在しないか、または最小数であるように操作されるだろう。タンパク質配列におけるMHC結合型エピトープの同定のいくつかの方法は、当該分野で知られており、本明細書に開示される抗体のエピトープをスコアするために使用されてもよい。
【0088】
共有結合修飾は、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの範囲内に含まれ、必ずではないが、概して翻訳後に行われる。例えば、共有結合的修飾のいくつかの種類は、特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖、またはNもしくはC末端残基と反応することができる有機誘導化剤と反応させることにより、分子に導入され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンの共有結合的修飾は、1つ以上の標識の追加を含む。「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を意味する。いくつかの実施形態において、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、種々の長さのスペーサーのアームを介してCTLA4−Ig免疫アドヘシンに結合される。タンパク質を標識するための種々の方法が、当該分野において知られており、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に使用され得る。
【0089】
一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、「融合タンパク質」であり、本明細書において時折「共役体」と呼ばれる。融合パートナーまたは共役パートナーは、タンパク質性または非タンパク質性であり得、後者は、一般的に、CTLA4−Ig免疫アドヘシン上および共役パートナー上の官能基を使用して生成される。共役パートナーおよび融合パートナーは、小分子化学化合物およびポリペプチドを含む、任意の分子であってもよい。例えば、種々の共役体および方法が、Trail et al.,1999,Curr.Opin.Immunol.11:584−588に記載されており、参照によりその全体が援用される。可能な共役パートナーは、これらに限定されないが、サイトカイン、細胞障害性薬剤、毒素、ラジオアイソトープ、化学療法剤、反脈管形成物質、チロシンキナーゼ阻害剤、および他の治療活性剤を含む。いくつかの実施形態において、共役パートナーは、むしろ負荷量と考えられてもよい、つまり、共役体の目的は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンによる、共役パートナーの標的細胞、例えば、癌細胞または免疫細胞への標的送達である。したがって、例えば、毒素のCTLA4−Ig免疫アドヘシンの共役は、該毒素の標的抗原を発現する細胞への送達を標的とする。当業者により理解されるように、実際には、融合および複合の概念および定義は、重複する。融合または複合の意味は、本明細書に開示される任意の特定の実施形態にそれを制限するものではない。むしろ、これらの用語は、本明細書に開示される任意のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、ある所望の特性を提供するように、遺伝的に、化学的に、または他の方法で、1つ以上のポリペプチドもしくは分子に連結されてもよいという、広範な概念を伝達するように漠然と使用される。
【0090】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンの産生
【0091】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンを産生し、実験的に試験するための方法もまた、本明細書に開示される。開示される方法は、実施形態を任意の特定の操作の用途または理論に限定するものではない。むしろ、提供される方法は、1つ以上のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを取得するように産生され、実験的に試験され得ることを、一般的に例示して説明するものである。抗体およびタンパク質分子生物学、発現、精製、およびスクリーニングのための一般的な方法は、Antibody Engineering,Kontermann & Dubel編集,Springer,Heidelberg,2001、およびHayhurst & Georgiou,2001,Curr Opin Chem Biol 5:683−689、Maynard & Georgiou,2000,Annu Rev Biomed Eng 2:339−76に記載されている。
【0092】
本明細書に開示される一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードし、その後、所望する場合、宿主細胞内にクローン化、発現、および測定され得る核酸が作製される。したがって、各タンパク質配列をコードする、核酸、および特にDNAが作製され得る。これらの実践は、周知の手順を使用して実施される。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に用途を見出し得る種々の方法は、Molecular Cloning − A Laboratory Manual,3rd Ed.(Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2001)、および Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons)に記載されており、ともに、参照によりその全体が援用される。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードするDNAを効率的に生成するために使用され得る、種々の技術がある。このような方法は、これらに限定されないが、遺伝子アセンブリ法、PCRに基づく方法、およびPCRの変形を使用する方法、リガーゼ連鎖反応に基づく方法、合成組み換え、エラーを起こしやすい増幅法、およびランダム変異を伴うオリゴを使用する方法等の混合オリゴ法、古典的な部位指定変異導入法、カセット変異導入法、ならびに他の増幅および遺伝子合成法を含む。当該分野において知られているように、遺伝子アセンブリ、変異導入、ベクターサブクローン化等のための種々の市販のキットおよび方法があり、このような市販製品は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸の生成に用途を見出す。
【0093】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンタンパク質は、タンパク質の発現を誘発する、または生じるような適切な条件下で、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸を含有する、核酸、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することにより生成することができる。発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択により異なり、日常の実験を通して、当業者によって容易に確認されるであろう。これらに限定されないが、哺乳類細胞、バクテリア、昆虫細胞、酵母、および植物細胞を含む、多種多様の適切な宿主細胞が使用されてもよい。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に用途を見出し得る、種々の細胞株は、American Type Culture Collectionから入手可能な、ATCC(登録商標)細胞株カタログに記載されている。
【0094】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、発現コンストラクトが、レトロウイルスまたはアデノウイルス等のウイルスを用いて哺乳類細胞に導入される系を含む、哺乳類発現系で発現される。任意の哺乳類細胞、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、および霊長類の細胞を使用することができる。適切な細胞は、限定されないが、ジャーカットT細胞、NIH3T3、CHO、BHK、COS、HEK293、PER C.6、HeLa、Sp2/0、NS0細胞、およびそれらの変異体を含む、既知の研究細胞も含む。代替の実施形態において、ライブラリタンパク質が、バクテリア細胞で発現される。バクテリア発現系は、当該分野に周知であり、大腸菌(E.coli)、枯草菌、ストレプトコッカスクレモリス、およびストレプトコッカスリビダンスを含む。代替の実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサギンウラバBti−Tn5b1−4)または酵母細胞(例えば、出芽酵母、ピキア等)で産生される。代替の実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、無細胞翻訳系を使用して、生体外で発現される。原核(例えば、E.coli)および真核(例えば、麦芽、ウサギ網状赤血球)細胞の両方に由来する生体外翻訳系が、利用可能であり、対象とするタンパク質の発現レベル、および機能特性に基づき選択されてもよい。例えば、当業者に理解されるように、生体外翻訳が、例えば、リボソーム提示等の、いくつかの提示技術に必要である。加えて、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、化学合成法により産生されてもよい。動物(例えば、ウシ、ヒツジ、またはヤギの乳、発育鶏卵、全昆虫幼虫等)および植物(例えば、トウモロコシ、タバコ、ウキクサ等)の両方の形質転換発現系も同様。
【0095】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸が、タンパク質を発現するために、発現ベクターに導入されてもよい。種々の発現ベクターが、タンパク質発現のために利用されてもよい。発現ベクターは、自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムに組み入れられるベクターを含んでもよい。発現ベクターは、宿主細胞型と適合可能であるように構築される。したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生成に用途を見出す発現ベクターは、これらに限定されないが、哺乳類細胞、バクテリア、昆虫細胞、酵母、および生体外系で、タンパク質発現を可能にするものを含む。当該分野において知られているように、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを発現するための用途を見出し得る、種々の発現ベクターが、商業的または別様に入手可能である。
【0096】
発現ベクターは、典型的に、制御もしくは調節配列と操作可能に連結するタンパク質、選択可能マーカー、任意の融合パートナー、および/または追加要素を含む。本明細書において、「操作可能に連結される」とは、核酸が、別の核酸配列と機能的関係に配置されることを意味する。概して、これらの発現ベクターは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸に操作可能に連結される転写および翻訳調節核酸を含み、典型的に、タンパク質を発現するために使用される宿主細胞に適している。一般的に、転写および翻訳調節配列は、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、ならびに転写促進因子または活性化因子配列を含み得る。また当該分野において知られているように、発現ベクターは、典型的に、発現ベクターを含有する形質転換宿主細胞の選択を可能にする、選択遺伝子またはマーカーを含有する。選択遺伝子は、当該分野に周知であり、使用される宿主細胞により異なる。
【0097】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、発現タンパク質の標的、精製、スクリーニング、提示等を可能にするように、融合パートナーに操作可能に連結されてもよい。融合パートナーは、リンカー配列を介して、CTLA4−Ig免疫アドヘシン配列に連結されてもよい。リンカー配列は、一般的に、少数のアミノ酸、典型的には、10より少ないアミノ酸を含むが、それより長いリンカーも使用されてもよい。典型的には、リンカー配列は、柔軟かつ分解に対して耐性であるように選択される。当業者に理解されるように、広範な種々の配列のいずれをも、リンカーとして使用することができる。例えば、一般的なリンカー配列は、アミノ酸配列GGGGS [配列番号40]を含む。融合パートナーは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび任意の関連する融合パートナーを所望の細胞部位または細胞外媒体に誘導する、標的またはシグナル配列であってもよい。当該分野において知られているように、特定のシグナル伝達配列は、成長媒体か、細胞の内膜と外膜との間に位置する細胞膜周辺腔のいずれかの中に分泌されるタンパク質を標的とし得る。融合パートナーは、精製および/またはスクリーニングを可能にする、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列でもあってよい。このような融合パートナーは、これらに限定されないが、ポリヒスチジンタグ(His−タグ)(例えば、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)システムで使用するためのH6およびH10、または他のタグ(例えば、Ni+2親和性カラム))、GST融合物、MBP融合物、Strepタグ、バクテリア酵素BirAのBSPビオチン化標的配列、および抗体の標的とされるエピトープタグ(例えば、c−mycタグ、flagタグ等)を含む。当業者に理解されるように、このようなタグは、精製、スクリーニング、または両方に有用であり得る。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、Ni+2親和性カラムに固定することにより、Hisタグを使用して生成されてもよく、次いで、精製後、同じHisタグは、(以下に記載するように)ELISAまたは他の結合測定法を実施するために、抗体をNi+2被覆プレートに固定するために使用されてもよい。融合パートナーは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをスクリーニングするための選択法の使用を可能にし得る(以下を参照)。種々の選択法を
可能にする融合パートナーは、当該分野において周知である。
【0098】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、発現後に精製または単離される。タンパク質は、当業者に知られている種々の方式で、単離または精製することができる。本発明において、精製は、本明細書に記載のように、ヘテロ二量体重鎖種をホモ二量体重鎖から分離するために特に有用である。標準的な精製方法は、FPLCおよびHPLC等のシステムを使用して大気圧力または高圧で実施される、イオン交換、粗水性相互作用、親和性、サイズまたはゲル濾過、および逆相を含むクロマトグラフィー技術を含む。精製法は、電気泳動法、等電点分離法、免疫学、沈降法、透析法、および等電点電気泳動法も含む。タンパク質濃度と併用して、限外濾過法および透析濾過法も、有用である。当該分野に周知のように、種々の天然のタンパク質が、Fcおよび抗体に結合し、これらのタンパク質は、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを精製するために用途を見出すことができる。例えば、細菌タンパク質AおよびGは、Fc領域に結合する。同様に、細菌タンパク質Lは、いくつかの抗体のFab領域に結合し、当然、抗体の標的抗原にも同様に結合する。精製は、多くの場合、特定の融合パートナーにより可能となり得る。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、GST融合が採用される場合、グルタチオン樹脂、Hisタグが採用される場合、Ni+2親和性クロマトグラフィー、またはflagタグが使用される場合、固定抗flag抗体を使用して、精製されてもよい。適切な精製技法の一般的な指針については、例えば、参照によりその全体が援用される、Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Scopes,Springer−Verlag,NY,1994を参照のこと。必要な精製の程度は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのスクリーニングまたは使用に応じて異なる。いくつかの場合においては、精製は必要ない。例えば、一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンが分泌される場合、スクリーニングが、媒体から直接行われてもよい。当該分野に周知のように、いくつかの選択の方法は、タンパク質の精製を含まない。
【0099】
生体外実験
【0100】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、これらに限定されないが、結合検定法、細胞を用いた検定法、および選択技術を使用するものを含む、種々の生体外法を使用して実験的に試験されてもよい。自動高処理スクリーニング技術が、スクリーニング手順に利用されてもよい。スクリーニングは、融合パートナーまたは標識の使用を採用してもよい。融合パートナーの使用は、上で論じられた。本明細書において、「標識化」とは、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、スクリーニングにおける検出を可能とする1つ以上の元素、同位体、または化学化合物を有することを意味する。一般的に、標識は、次の3つに分類される:a)抗体により認識される融合パートナーとして組み込まれるエピトープであってもよい、免疫標識、b)放射性活性もしくは重同位体であってもよい、同位体標識、およびc)蛍光色素および比色色素、もしくは他の標識法を可能にするビオチン等の分子を含んでもよい、小分子標識。標識が、任意の位置で化合物に組み込まれてもよく、タンパク質発現中に、生体外または生体内に組み込まれてもよい。
【0101】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの機能的および/または生物物理学的特性は、生体外検定でスクリーニングされる。生体外検定は、対象とするスクリーニング特性の広範なダイナミックレンジを可能にし得る。本発明に特に関連して、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、1つ以上の抗原に対する親和性に関して試験され得る。スクリーニングされ得る特性は、これらに限定されないが、安定性、溶解性、およびFcリガンド、例えば、FcγRに対する親和性を含む。複数の特性が、同時または個別にスクリーニングされてもよい。タンパク質は、検定の必要条件に応じて、精製されていても、精製されていなくてもよい。一実施形態において、スクリーンニングは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを結合することが既知の、またはそう思われる、タンパク質または非タンパク質分子へのCTLA4−Ig免疫アドヘシンの結合に対する定性もしくは定量性結合検定である。一実施形態において、スクリーニングは、標的抗原への結合を測定するための結合検定である。代替の実施形態において、スクリーニングは、これらに限定されないが、FcγRsのファミリー、新生児型受容体FcRn、補体タンパク質C1q、ならびに細菌プロテイン質AおよびGを含む、FcリガンドへのCTLA4−Ig免疫アドヘシンの結合についての検定である。前記Fcリガンドは、任意の生物からであってもよい。一実施形態において、Fcリガンドは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、および/またはサルからのものである。結合検定は、限定されないが、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)および BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)を用いた検定、AlphaScreen(登録商標)(増幅発光性近接均質アッセイ)、シンチレーション近接アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、SPR(表面プラズモン共鳴法、BIACORE(登録商標)としても知られる)、等温滴定熱量測定法、示差走査熱量測定法、ゲル電気泳動法、およびゲル濾過を含むクロマトグラフィーを含む、当該分野において知られている種々の方法を使用して実施され得る。これら、および他の方法は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンのある融合パートナーまたは標識をうまく利用し得る。検定は、限定されないが、発色性、蛍光性、発光性、または同位体標識を含む、種々の検出方法を採用し
てもよい。
【0102】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物物理学的特性、例えば、安定性および溶解性は、当該分野において知られている種々の方法を使用して試験され得る。タンパク質の安定性は、折り畳み状態と非折り畳み状態との間の熱力学的平衡を測定することにより決定され得る。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、化学変性剤、熱、またはpHを使用してほどかれてもよく、この移行は、これらに限定されないが、円二色性分光法、蛍光分光法、吸光分光法、NMR分光法、熱量測定法、およびタンパク質分解を含む方法を使用して監視されてもよい。当業者により理解されるように、フォールドおよびアンフォールドの移行の動態パラメータも、これら、および他の技法を使用して監視され得る。CTLA4−Ig免疫アドヘシンの溶解性および全体的な構造の統合性は、当該分野において知られている広範な方法を使用して、定量的、または定性的に決定され得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物物理学的特性を特徴付けるための用途を見出し得る方法は、ゲル電気泳動法、等電点電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および逆相高速液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、ペプチドマッピング、オリゴ糖マッピング、質量分析法、紫外吸光分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、等温滴定熱量測定法、示差走査熱量測定法、超遠心分析法、動的光散乱法、タンパク質分解および架橋結合、濁度測定、フィルタ遅延アッセイ、免疫学的検定、蛍光色素結合検定、タンパク質染色法、顕微鏡法、およびELISAまたは他の結合検定を介した凝集物の検出を含む。X線結晶学的技法およびNMR分光法を採用した構造分析にも、用途を見出し得る。一実施形態において、安定性および/または溶解性は、所定の時間期間の後に、タンパク質溶液の量を決定することにより測定され得る。この検定において、タンパク質は、例えば、高温、低pH、または変性剤の存在等の、ある極端な条件に曝されても、曝されなくてもよい。機能は、典型的に、安定性、溶解性、および/またはよく折り畳まれた構造のタンパク質を必要とするため、前述の機能検定および結合検定も、このような測定を実施するための方式を提供する。例えば、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含む溶液は、
標的抗原を結合するその能力について測定され、その後、1つ以上の所定の時間期間の間、高温に曝され、その後、再び、抗原結合について測定され得る。アンフォールドおよび凝集タンパク質は、抗原に結合する能力があると予期されないため、活性残存量は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの安定性および溶解性の尺度を提供する。
【0103】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、1つ以上の細胞を用いた検定、または生体外検定を使用して試験されてもよい。このような検定において、細胞が本明細書に記載のCTLA4−Ig免疫アドヘシンに曝されるように、精製もしくは未精製のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが、典型的に、外因的に添加される。これらの検定は、必ずしもそうではないが、典型的に、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの標的抗原に結合し、例えば、細胞溶解、ファゴサイトーシス、リガンド/受容体結合阻害、成長および/または増殖の阻害、カルシウム放出および/またはシグナル伝達の阻害、アポトーシスのようなエフェクター機能等の、ある生化学事象を媒介する能力の生物学に基づく。このような検定は、多くの場合、細胞のCTLA4−Ig免疫アドヘシンへの応答、例えば、細胞生存、細胞死、細胞ファゴサイトーシス、細胞溶解、細胞形態の変化、または天然遺伝子もしくはリポーター遺伝子の細胞発現等の転写活性化を監視することを含む。例えば、このような検定は、例えば、ADCC、ADCP、およびCDCの殺細胞を誘発する、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの能力を測定し得る。抗原の共結合により媒介される殺細胞を測定する検定が、本発明に特に関連する。いくつかの検定において、例えば、血清補体、または末梢血単球(PBMC)、NK細胞、マクロファージ、T細胞等のエフェクター細胞等の、追加の細胞または構成要素が、つまり、標的細胞に加え、添加される必要がある場合がある。このような追加細胞は、任意の生物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルからであってもよい。架橋または単量体抗体は、抗体の標的抗原を発現する特定の細胞株のアポトーシスをもたらすか、または検定に添加された免疫細胞による、標的細胞への攻撃を媒介する場合がある。細胞の死または生存を監視するための方法は、当該分野において知られており、色素、フルオロフォア、免疫化学、細胞化学、および放射性試薬の使用を含む。例えば、カスパーゼ検定またはアネキシン−フルオロ結合物は、アポトーシスの測定を可能にし得、放射性基質(例えば、クロム−51放出検定)の取り込み、もしくは放出、またはアラマーブルー等の蛍光色素の代謝減少は、細胞成長、増殖、または活性の監視を可能にし得る。一実施形態において、DELFIA EuT
DAを用いた、細胞障害性検定(Perkin Elmer,MA)が使用される。代替的に、死んだ、または損傷した標的細胞は、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ等の、1つ以上の天然の細胞内タンパク質の放出を測定することにより監視され得る。転写の活性化も、細胞を用いた検定の機能を測定するための方法として機能する。この場合、上方制御または下方制御されてもよい天然遺伝子またはタンパク質について測定することにより、応答が監視されてもよく、例えば、特定のインターロイキンの放出が測定されてもよく、代替的に、ルシフェラーゼまたはGFPリポーターコンストラクトを介して、読出しが行われてもよい。細胞を用いた検定は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの存在に対する応答としての、細胞の形態変化の測定も含み得る。このような検定用の細胞型は、原核または真核であってもよく、当該分野において知られている種々の細胞株が採用されてもよい。代替的に、細胞を用いたスクリーニングは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸を形質転換またはそれを形質移入した細胞を使用して実施される。
【0104】
生体内実験
【0105】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの生物学的特性は、細胞、組織、および全生物実験において特徴付けされてもよい。
【0106】
本明細書に示されるように、一般に、本発明の免疫アドヘシンの変異体CTLA4ドメインの結合および関連した親和性の試験は、実施例に概説した結合検定を使用して行われる。上述のように、親和性は、親ポリペプチドに比べて変異体ポリペプチドのKAが有意に高い場合、または変異体ポリペプチドのKDが親ポリペプチドに比べて有意に低い場合、増強されていると言うことができる。比に関して、例えばKA(変異体ポリペプチド)/KA(親ポリペプチド)またはKD(親ポリペプチド)/KD(変異体ポリペプチド)に関して表現される場合、親和性の有意な増加は、例えば、これらの比の1つおよび/または両方が約1.2、1.5、2.0、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、100、250、500、1000またはそれ以上である場合に確認される。
【0107】
当該分野において知られているように、薬物は、多くの場合、疾病または疾病モデルに対する治療における薬物の効果を測定するために、または薬物の薬物動態、毒性、および他の特性を測定するために、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、およびサルを含む動物において試験される。該動物は、疾病モデルと称される場合がある。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンに関して、候補ポリペプチドのヒトでの効果の可能性を評価するために動物モデルを使用する時、特別な課題が生じる。これは、少なくとも部分的に、ヒトFc受容体に対する親和性に特定の作用を有するCTLA4−Ig免疫アドヘシンのFcドメインが、オルソロガスな動物の受容体と同じ親和性作用を有さない可能性があるという事実による。これらの問題は、真のオルソロガスの正確な割り当てに関連する、回避不可能な不明確さ(Mechetina et al.,2002,Immunogenetics 54:463−468、参照によりその全体が援用される)、およびいくつかのオルソロガスが、単純に動物に存在しないという事実により、さらに深刻化し得る。治療用物質は、多くの場合、これらに限定されないが、ヌードマウス、Rag欠損マウス、SCIDマウス、異種移植マウス、および遺伝子導入マウス(ノックインおよびノックアウトを含む)を含むマウスにおいて試験される。本明細書における治療CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、マウス株NZB、NOD、BXSB、MRL/lpr、K/BxNおよび遺伝子導入(ノックインおよびノックアウトを含む)において試験され得る。このようなマウスは、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および関節リウマチ(RA)等の、ヒト臓器に特異的な、全身性自己免疫または炎症性疾患病変に似た、種々の自己免疫状態を発症させることができる。例えば、自己免疫疾患に対して意図される本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの疾患病変の発達を低減する、または阻害する能力を決定するようにマウスを処置することにより、このようなマウスモデルにおいて試験することができる。マウスとヒトFcγ受容体系との間の不和合性のため、代替的なアプローチとして、ヒトPBLまたはPBMC(huPBL−SCID、huPBMC−SCID)を免疫欠損マウ
スに植え付けることにより、ヒトエフェクター細胞およびFc受容体を伴う半機能的なヒト免疫系を提供する、マウスSCIDモデルを使用する。他の生物、例えば、哺乳類も、試験に使用されてもよい。例えば、サルは、ヒトに対するその遺伝子的類似性のため、治療モデルに適している場合があり、したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの効果、毒性、薬物動態、または他の特性を試験するために使用することができる。ヒトにおける本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの試験が、最終的に、薬物としての承認のために必要となり、したがって、当然のことながら、これらの実験が意図される。したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、その治療効果、毒性、薬物動態、および/または他の臨床特性を決定するように、ヒトにおいて試験され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、種々のヒト疾患の臨床的適切な動物モデルにおける効果について評価することができる。多くの場合、適切なモデルは、特定の抗原および受容体に対する種々の遺伝子導入動物を含む。
【0109】
一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの試験は、標的抗原を持つ特定の標的細胞の欠乏の評価を容易にするために、霊長類(例えば、カニクイザルモデル)における効果の試験を含んでもよい。さらなる霊長類のモデルは、限定されないが、自己免疫、移植、および癌の治療試験における、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを評価するための、アカゲザルの使用を含む。
【0110】
毒性試験は、標準的な薬理学的プロファイルで評価できない、または薬剤の反復投与後にのみに発生する、薬物に関連する効果を決定するために実施される。大半の毒性試験は、新規治療学的実体がヒトに導入される前に、任意の予測できない有害作用が見過ごされないことを確実にするために、ゲッ齒類およびゲッ齒類以外の2つの種属において実施される。一般的に、これらのモデルは、遺伝子毒性、慢性毒性、免疫原性、生殖/発生毒性、および発癌を含む、種々の毒性を測定することができる。前述のパラメータには、食消費量、体重、抗体産生、臨床化学の標準的な測定、および標準的な臓器/組織の肉眼および顕微鏡検査(例えば、心毒性)を含む。測定のさらなるパラメータは、もしあれば、注入部位損傷および中和抗体の測定である。従来、裸または複合のモノクローナル抗体治療学は、放射標識種属の正常組織、免疫原性/抗体産生、複合体またはリンカー毒性、および「傍観者」毒性を用いた、交差反応について評価される。それにもかかわらず、このような試験は、特定の問題に対処するように個別化され、ICH S6(上記される、生物工学製品についての安全性試験)で規定されるガイダンスに従わなければならない場合がある。したがって、原則として、製品は、十分に良く特徴付けされ、不純物/汚染物が除去され、試験材料が、開発全体を通して同等であり、GLPコンプライアンスが維持されることが、原則である。
【0111】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの薬物動態(PK)は、種々の動物系で試験され得、最も適切なのは、カニクイザルおよびアカゲザル等のヒト以外の霊長類である。血漿濃度およびクリアランスを使用して、6000倍(0.05〜300mg/kg)の用量範囲にわたる単一または反復静脈内/皮下投与が、半減期(日〜週)について評価され得る。定常状態での分布量および全身吸収レベルも測定され得る。このような測定のパラメータの例としては、一般的に、最大観測血漿濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、時間0〜無限大[AUC(0−inf)] の血漿濃度時間曲線下面積、および見かけ消失半減期(T1/2)が挙げられる。さらなる測定パラメータは、静脈内投与および生体利用性の後に得た、濃度−時間データの区画解析を含み得る。
【0112】
薬力学試験は、限定されないが、特異的細胞の標的化、またはシグナル伝達機構の遮断、抗原特異的抗体の阻害の測定等を含み得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、特定のエフェクター細胞集団を標的とし、それによって、有効性を改善するか、または特定の好ましい生理的区画の中への貫通を増加するように、特定の活性を誘発するように薬物を誘導することができる。このような薬力学作用は、動物モデル、またはヒトにおいて実証され得る。
【0113】
臨床使用
【0114】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、広範な製品において用途を見出し得る。一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、治療、診断、または研究試薬である。CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、モノクローナルまたはポリクローナルである組成物において用途を見出し得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、治療目的に使用されてもよい。CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、障害を治療するように患者に投与されてもよい。
【0115】
本明細書に開示される目的における「患者」とは、ヒトおよび他の動物、例えば、他の哺乳動物の両方を含む。したがって、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、ヒト治療および獣医学的用途の両方を有する。本明細書に開示される、「治療」または「治療する」とは、疾病または疾患に対する治療的処置、ならびに予防的もしくは抑制手段を含むことを意味する。したがって、例えば、疾病の発現前のCTLA4−Ig免疫アドヘシンの良好な投与は、疾病の治療をもたらす。別の実施例として、疾病の症状と戦うための、疾病の臨床病態後の最適化されたCTLA4−Ig免疫アドヘシンの良好な投与は、疾病の治療に含まれる。「治療」および「治療する」とは、疾病を根絶するための、疾病出現後の、最適化されたCTLA4−Ig免疫アドヘシンの投与も包含する。予想される臨床症状の軽減、および疾病の回復の可能性を伴った、発現後、および臨床症状が発達した後の薬剤の良好な投与は、疾病の治療に含まれる。これらの「治療の必要な」とは、既に疾病または疾患を有する哺乳類、ならびに疾病または疾患が予防されるべきものを含む、疾病または疾患を有する傾向があるものを含む。
【0116】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、好ましくは、免疫関連状態または障害を治療するために使用される。免疫関連状態は、自己免疫疾患、炎症性障害、およびドナー組織の拒絶に関連した免疫応答の防止を含むが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、自己免疫疾患を治療するために使用され得る。本明細書における「自己免疫疾患」は、同種異系間膵島移植拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアックスプルー−皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠損、線維筋痛−線維筋炎、糸球体腎炎、グレーヴス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、IgM多発性神経障害、免疫性の血小板減少、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、スティフマン症候群、全身性紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、例えば疱疹状皮膚炎脈管炎、白斑、およびウェーグナー肉芽腫症を含む。
【0118】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、炎症性障害を治療するために使用され得る。本明細書における「炎症性障害」は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性敗血症性関節炎、アジュバント関節炎、若年性特発性関節炎、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性血管炎、アレルギー、喘息、アテローム性動脈硬化症、慢性細菌性またはウイルス性感染による慢性炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠動脈疾患、脳炎、炎症性大腸炎、炎症性骨溶解、急性および遅延型過敏反応に関連する炎症、腫瘍、末梢神経損傷または脱髄疾患に関連する炎症、火傷および虚血等の組織損傷に関連する炎症、髄膜炎、多臓器損傷症候群、肺線維症、敗血症および敗血性ショックによる炎症、スティーブンス・ジョンソン症候群、未分化関節化膿症、ならびに未分化脊椎関節症を含む。
【0119】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、移植者によるドナー組織、細胞、移植片、または移植臓器の拒絶に関連する免疫応答を防止または抑制するために使用され得る。移植片関連疾患または障害は、例えば骨髄移植に関連する移植片対宿主病(GVDH)、および、例えば皮膚、筋肉、ニューロン、膵島、臓器、肝臓の実質細胞等を含む、臓器、組織、または細胞移植片移植(例えば、組織または細胞同種移植片または異種移植片)の拒絶による、またはそれに関連する免疫障害を含む。移植者におけるドナー組織、細胞、移植片または固形移植臓器に関して、本明細書に開示される本発明のそのような分子(例えば、変異体CTLA−4 ECDポリペプチドまたは変異体CTLA−4−Ig融合タンパク質)は、移植者におけるそのような移植片の急性拒絶反応を防止する上で、および/または移植者におけるそのような移植片の拒絶反応を防止するための長期維持治療(例えば、糖尿病に罹患した対象移植者における、ドナーからのインスリン産生膵島細胞の拒絶反応の阻害)に有効となり得ると考えられる
【0120】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンにより治療され得る好ましい免疫関連障害は、クローン病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、ならびに、腎臓移植、肝臓移植、および膵臓移植を含むがこれらに限定されない移植片拒絶反応を含む。
【0121】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、癌を治療するために使用され得る。本明細書における「癌」および「癌性」は、典型的に制御されない細胞成長により特徴付けられる、哺乳類における生理学的状態を指す、または説明している。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺癌、メラノーマ、および白血病またはリンパ性悪性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0122】
本明細書におけるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、感染症を治療するために使用され得る。本明細書における「感染症」は、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、および寄生動物等の病原体により引き起こされる疾患を含む。
【0123】
さらに、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、うっ血性心不全(CHF)、心筋炎および心筋の他の状態等の心臓の状態、酒さ、座瘡、および湿疹等の皮膚の状態、骨量減少、骨粗しょう症、パジェット病、ランゲルハンス細胞組織球増加症、歯周病、廃用性骨減少、骨軟化症、単発性線維性形成異常、多骨性線維性骨異形成症、骨への転移、骨痛処理、液性悪性高カルシウム血症、歯周組織再建、脊髄損傷、および骨折等の骨および歯の状態、ゴーシェ病等の代謝の状態、クッシング症候群等の内分泌状態、ならびに、アルツハイマー病等の神経および神経変性状態を含むがこれらに限定されない追加的状態を予防または治療するために使用され得る。
【0124】
製剤
【0125】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび1つ以上の治療的活性剤が製剤化される医薬組成物が企図される。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンの製剤は、所望の程度の純度を有する該CTLA4−Ig免疫アドヘシンを任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980、参照によりその全体が援用される)、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保存用に調製される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、採用される投与量および濃度において、受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、酢酸、および他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルオルベンジル(orbenzyl)アルコール、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、またはCTLA4−Ig免疫アドヘシン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の糖類、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール等の糖類、甘味料および他の風味剤、微結晶セルロース、ラクトース、コーンスターチおよび他のスターチ類等の増量剤、結合剤、添加剤、着色剤、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体)、ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを含む薬学的組成物は、酸および塩基付加塩の両方を含むものとする、医薬的に許容される塩として存在する等の、水溶性形態であってもよい。「医薬的
に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的効果を維持し、生物学的に、または別の点で望ましくないことがなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸で形成される塩類を指す。「医薬的に許容される塩基付加塩類」とは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等に由来するものを含む。いくつかの実施形態は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩の少なくとも1つを含む。医薬的に許容される有機非毒性塩基由来の塩類は、一級、二級、および三級アミン類、自然に生じる置換アミン類を含む置換アミン類、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、およびエタノールアミン等の環式アミンならびにイオン交換樹脂の塩類を含む。生体内投与に使用される製剤は、無菌であってもよい。これは、無菌濾過膜を通した濾過、または他の方法により容易に達成される。
【0126】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンはまた、免疫リポソームとして製剤化されてもよい。リポソームは、治療薬を哺乳類に送達するのに有用である、様々な種類の脂質、リン脂質、および/または界面活性物質を含む小胞である。CTLA4−Ig免疫アドヘシンを含有するリポソームは、当該分野において知られている方法により調製される。リポソームの構成要素は、通常、生体膜の脂質配置に類似する、二分子層構造に配列される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む、脂質組成物を用いた逆相蒸発法により生成され得る。リポソームは、所定の孔径のフィルタを通して押出され、所望の径のリポソームが得られる。
【0127】
CTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび他の治療活性剤は、限定されないが、コロイド脱混合現象技法、界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル、またはポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル)、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微細球、微小乳濁液、ナノ粒子およびナノカプセル)、およびマクロエマルションを含む方法により調製される、マイクロカプセルに封入されてもよい。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されており、参照によりその全体が援用される。徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例としては、マトリックスが、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である、固体疎水性重合体の、半透過性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸との共重合体、非分解性エチレン−ビニル酢酸、Lupron Depot(登録商標)(乳酸−グリコール酸共重合体と酢酸リュープロリドから成る注射可能な微小球)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸、およびポリ−DL−ラクチド−co−グリコリド(PLG)のマトリックスに組み込まれる、所望の生理活性分子からなる微小球に基づく送達系である、ProLease(登録商標)(Alkermesから市販)が挙げられる。
【0128】
投与
【0129】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを含む、例えば、無菌水溶液の形態での医薬組成物の投与は、限定されないが、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳内、経皮、局所(例えばゲル、塗剤、ローション、クリーム等)、腹膜内、筋肉内、肺内、膣内、非経口、直腸、または眼内を含む、様々な方式で行われてもよい。いくつかの場合において、例えば、創傷、炎症等の治療において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンが、溶液またはスプレーとして直接適用されてもよい。当該分野において知られているように、医薬組成物は、導入様式に応じて製剤化されてもよい。
【0130】
皮下投与は、患者が、医薬組成物を自分で投与し得る状況において使用されてもよい。多くのタンパク質治療は、皮下投与の最大許容量で、治療有効量の製剤を可能にするのに十分に強力ではない。この問題は、アルギニン−HCl、ヒスチジン、およびポリソルベートを含む、タンパク質製剤の使用により、ある程度対処され得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、例えば、効力の増加、血清半減期の改善、または溶解性の増強により、皮下投与により適し得る。当該分野において知られているように、タンパク質治療物質は、多くの場合、静脈内注入、またはボーラスにより送達され得る。本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンはまた、このような方法を使用して送達されてもよい。例えば、注入ビヒクルとして0.9%の塩化ナトリウムを含む、静脈内注入による投与であってもよい。
【0131】
肺送達は、吸入器具または噴霧器、およびエアロゾル化剤を含む製剤を使用して達成されてもよい。例えば、Aradigmから市販されるAERx(登録商標)吸入可能技術、またはNektar Therapeuticsから市販されるInhance(商標)肺送達システムが使用されてもよい。さらに、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、経口投与に適し得る。
【0132】
加えて、いくつかの送達系のいずれも、当該分野において知られており、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンを投与するために使用されてもよい。例としては、これらに限定されないが、リポソーム、微小粒子、微小球(例えば、PLA/PGA 微小球)等への封入が挙げられる。代替的に、膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、ゼラチン様物質の移植が使用されてもよい。徐放系は、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクチド、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタミン酸(gutamate)との共重合体、エチレン−ビニル酢酸、Lupron Depot(登録商標)等の乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸等の、重合物質またはマトリックスを含んでもよい。例えば、レトロウイルス感染、直接注射、または脂質、細胞表面受容体、または他の形質導入剤でのコーティングにより、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンをコードする核酸を投与することも可能である。全ての場合において、制御放出系が、所望の動作位置で、またはその近くで、CTLA4−Ig免疫アドヘシンを放出するように使用されてもよい。
【0133】
用量
【0134】
投与の用量および頻度は、一実施形態において、治療的または予防的に有効であるように選択される。当該分野において知られているように、タンパク質分解、全身に対して局所的送達、および新しいプロテアーゼ合成の速度、ならびに年齢、体重、一般健康状態、性別、食生活、投与の時間、薬物相互作用、および症状の重篤度に対する調整、必要不である場合があり、当業者により、日常の実験で確認可能である。
【0135】
製剤における治療的に活性なCTLA4−Ig免疫アドヘシンの濃度は、約0.1〜100重量%まで変動し得る。一実施形態において、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの濃度は、0.003〜1.0モルの範囲である。患者を治療するために、本明細書に開示される、治療有効量のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが投与され得る。本明細書において、「治療有効量」とは、効果を生じる、投与される用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、既知の技法を使用して、当業者により確認可能である。投与量は、0.0001〜100mg/体重kgの範囲、もしくはそれ以上、例えば、0.1、1、10、または50mg/体重kgであってもよい。一実施形態において、投与量は、1〜10mg/kgの範囲である。
【0136】
いくつかの実施形態において、単一用量のCTLA4−Ig免疫アドヘシンのみが使用される。他の実施形態において、多用量のCTLA4−Ig免疫アドヘシンが投与される。投与間の経過時間は、1時間未満、約1時間、約1〜2時間、約2〜3時間、約3〜4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約2〜4日間、約4〜6日間、約1週間、約2週間、または2週間以上であり得る。
【0137】
他の実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、連続注入または長期休息期間なしの頻繁な投与のいずれかにより、メトロノミック投与計画で投与される。このようなメトロノミック投与は、休息期間なしの一定の間隔での投与を含み得る。典型的に、このような計画は、長期間、例えば、1〜2日間、1〜2週間、1〜2ヶ月間、または最大6ヶ月もしくはそれ以上の、慢性的な小用量、または連続注入を含む。小用量の使用は、副作用および休息期間の必要性を最小限にし得る。
【0138】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシン、および1つ以上の他の予防薬もしくは治療薬が、患者に周期的に投与される。周期治療は、一回目で第1の薬剤、2回目で第2の薬剤、任意に、追加回で追加の薬剤を投与し、任意の休息期間、そして1回またはそれ以上、この投与順序を繰り返すことを含む。反復の数は、典型的に2〜10回である。治療の反復は、1つ以上の薬剤への耐性の発生を低減し得るか、副作用を最小限にし得るか、または治療効果を改善し得る。
【0139】
併用療法
【0140】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、1つ以上の他の治療計画または薬剤と同時に投与されてもよい。追加の治療計画または薬剤は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの効力または安全性を改善するために使用されてもよい。また、追加の治療計画または薬剤は、CTLA4−Ig免疫アドヘシンの作用を改変するのではなく、同じ疾患または共存症を治療するために使用されてもよい。例えば、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、化学療法、放射線療法、または化学療法および放射線療法の両方と併せて患者に投与されてもよい。
【0141】
「〜と組み合わせて」および「同時投与」という用語は、正確に同時である予防薬または治療薬の投与に限定されない。代わりに、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび他の薬剤(複数を含む)が、順番に、および、一緒に作用して、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンまたは他の薬剤(複数を含む)のいずれかのみでの治療に対し増加した利益を提供し得るような時間間隔内で投与されることを意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシン、および他の薬剤(複数を含む)は、追加的に、および時折相乗的に作用する。そのような分子は、好適には、意図される目的のために効果的である量で組み合わせて存在する。熟練した医療従事者は、実験的に、または薬物の薬物動態および作用機序を考慮することにより、各治療薬の適切な用量(複数を含む)、ならびに適切な投与のタイミングおよび方法を決定することができる。
【0142】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、細胞障害性薬剤、化学療法剤、抗体、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤、キナーゼ阻害剤、反脈管形成物質、心臓保護薬、免疫刺激剤、血液細胞の増殖を促進する薬剤、血管形成阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、他の抗体、Fc融合体、またはCTLA4−Ig免疫アドヘシン、または他の治療薬を含むがこれらに限定されない、1つ以上の他の予防薬または治療薬と組み合わせて投与されてもよい。本発明の療法は、他の免疫療法と組み合わされてもよい。本発明の療法はまた、抗体およびFc融合体を含むがこれらに限定されないケモカインまたはサイトカインの拮抗薬と組み合わされてもよい。
【0143】
本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、他の治療計画と組み合わされてもよい。例えば、一実施形態において、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンで治療されるべき患者はまた、放射線療法を受けてもよい。放射線療法は、当該分野において一般的に採用され、当業者に知られているプロトコルに従い施すことができる。そのような療法は、セシウム、イリジウム、ヨウ素、またはコバルト放射線を含むが、これらに限定されない。放射線療法は、全身照射法であってもよく、または、肺、膀胱もしくは前立腺等の身体内もしくは身体上の特定の部位もしくは組織に対して、局所的に向けられてもよい。随意に、放射線療法は、単一線量として、または複数の順次的線量として施されてもよい。熟練した医療従事者は、実験的に、本明細書において有用な放射線療法の適切な線量(複数を含む)を決定することができる。別の実施形態によれば、生体外で癌細胞を処置するために、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンおよび1つ以上の他の抗癌療法が採用される。そのような生体外治療は、骨髄移植、特に自家骨髄移植において有用となり得ることが企図される。例えば、移植患者内への移植前に癌細胞を枯渇させる、または実質的に枯渇させるために、癌細胞を含有する細胞または組織(複数を含む)の、CTLA4−Ig免疫アドヘシン、および上述したような1つ以上の他の抗癌療法による処置を採用することができる当然ながら、本明細書に開示されるCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、手術等のさらに他の治療技術と組み合わせて採用されてもよい。
【0144】
本発明の特定の実施形態が、例示の目的のため、上で説明されたが、詳細の多くの変形が、添付の特許請求の範囲で記載される、本発明から逸脱することなく行われてもよいことを、当業者は理解するであろう。本明細書において引用される全ての参考文献は、その全体が援用される。
【実施例】
【0145】
本発明を例示するために、以下に実施例を記載する。これらの実施例は、本発明をいかなる特定の用途または実施の理論にも制限することを意図しない。
【0146】
実施例1.B7−1およびB7−2の結合を増強する操作されたCTLA4−Ig変異体
【0147】
全長ヒトCTLA4のアミノ酸配列を図1に示す。B7−1およびB7−2との相互作用を担う細胞外ドメイン(ECD)もまた図1に示す。
【0148】
CTLA4の免疫アドヘシン(Fc融合体)は、ECD(またはECDのいくつかの変異体)をIgGのFc領域に結合させることにより構築することができる。天然ヒトIgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のFc領域を図2に示す。図2に示されるIgG1 Fcは、356D/358Lハプロタイプを含有するが、他のハロタイプまたはアロタイプ形態が使用されてもよい(例えば、356E/358M)。本明細書におけるFc領域は、EU付番規定に基づき、位置230からC末端として定義される。アバタセプトは、P238S置換を含有する修飾IgG1に結合したCTLA4の免疫アドヘシンである(図2中Fc(IgG1−238S)と呼ばれる)。本発明のCTLA4−Ig免疫アドヘシンは、位置238にセリンまたはプロリンを含んでもよい(すなわち、CTLA4−Ig免疫アドヘシンは、238Sまたは238Pを含んでもよい)。下方ヒンジ領域に4つのIgG1修飾を有するIgG2 Fc領域を含む、IgG Fc領域の他の変異体型も図2に示す(Fc(IgG2−233E/234L/235L/236G)と呼ばれる)。
【0149】
CTLA4 ECDは、種々のリンカーを介してFc領域に結合され得る。本発明において使用されるリンカーは、CH1ドメインのC末端および上方ヒンジを含む、ヒトIgG定常鎖からの配列を含む。天然IgGイソタイプに基づく例示的リンカー配列を、図3に示す。修飾されたリンカーが使用されてもよい。本研究において使用される例示的リンカーは、修飾されたIgGリンカー(例えば、IgG1またはIgG2ベースリンカー)であり、システインがセリンと置き換えられている。アバタセプトは、N末端グルタミンの挿入に加え、修飾されたIgG1リンカーのシステインからセリンへの置換を使用する。そのようなリンカーの例もまた図3に示す。
【0150】
本研究において使用されるリンカーおよびFc領域の例示的組み合わせの例を、図4に示す。これらは、Ig(ab)と呼ばれるアバタセプトのFc領域、ならびに、Ig(G2)およびIg(G2−ELLG)と呼ばれるIgG2 Fc領域に基づく2つの融合体を含み、IgG2 Fc領域内に組み込まれた下方ヒンジ(233E/234L/235L/236G)において4つのIgG1修飾を含有する。例示的なCTLA4−Ig免疫アドヘシンを、図5に示す。これらは、CTLA4−Ig(ab)とも呼ばれるアバタセプト、CTLA4−Ig(G2)と呼ばれるアバタセプトのIgG2 Fcベースの型、ならびに、B7−1およびB7−2に対する親和性を増強するCTLA4位置における2つの置換A29YおよびL104Eを有するアバタセプトの変異体型である、ベラタセプトを含む。
【0151】
ヒトCTLA4のヒトB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)に対する親和性を増強するために、理論的構造に基づく手法を使用して、CTLA4変異体を設計した。ヒトCTLA4とヒトB7−1(Stamper et al.,2001,Nature 410:608−611)およびB7−2(Schwartz et al.,2001,Nature 410:604−608)との間の複合体の高分解能構造が利用可能である。設計された変異体のライブラリを以下に示す:A29K、A29N、A29E、A29W、A29F、A29Y、A29H、A29Q、A29R、T30D、T30V、T30A、T30N、T30E、T30H、T30R、E31I、E31M、E31T、E31V、E31D、R33F、R33T、R33M、R33W、R33I、R33Y、R33L、R33E、R33Q、T35E、T35V、T35M、T35D、T35F、T35Y、A49T、A49F、A49Y、A49W、A49D、A49E、T51V、T51L、T51N、T51H、T51Q、T51E、T51S、T51R、T51D、M53E、M53Q、M53Y、M53W、M53F、M53H、T59V、T59L、T59N、T59Y、T59H、T59Q、T59I、L61D、L61E、L61I、L61A、L61F、L61G、L61H、L61K、L61M、L61N、L61P、L61Q、L61R、L61S、L61T、L61V、L61W、L61Y、D63E、S64K、S64R、S64Y、K93D、K93E、K93F、K93H、K93Q、K93R、K93T、K93V、K93W、K93Y、K93N、K93S、E95D、E95Q、E95Y、E95H、E95L、M97F、M97D、M97N、M97I、M97V、Y98F、Y98W、Y102F、Y102W、Y103F、Y103W、Y103H、Y103D、Y103E、Y103N、Y103Q、L104D、L104E、L104V、L104M、L104Y、L104W、L104F、L104H、G105D、G105E、I106E、およびI106Y。
【0152】
CTLA4タンパク質をコードする遺伝子は、商業的に合成され(Blue Heron Biotechnologies、Bothell、WA)、ヒトIgG定常領域を含有する哺乳類発現ベクターpTT5にサブクローン化された(Durocher Y,et al.,2002,Nucleic Acids Res 30[2]:E9)。アミノ酸修飾は、QuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発法(Stratagene,La Jolla CA)を使用した部位特異的突然変異誘発法を用い、アバタセプトCTLA4−Ig(ab)コンストラクト上に構築した。また、ベラタセプトCTLA4(A29Y/L104E)−Ig(ab)を対照として構築した。全てのDNAは、配列の忠実度を確認するために配列決定された。lipofectamine(商標)(Invitrogen、Carlsbad CA)を6ウェルプレート形式で小規模(3ml)で使用して、CTLA4−Ig遺伝子を含有するプラスミドを293E細胞に形質移入し(Durocher Y,et al.,2002,Nucleic Acids Res 30[2]:E9;Biotechnology Research Institute,National Research Council Canada)、FreeStyle(商標)293培地(Invitrogen、Carlsbad CA)中で成長させた。成長5日後、直接上澄みからの変異体タンパク質を、標的結合についてスクリーニングした。成長5日後、MabSelect(商標)樹脂(GE Healthcare)を使用して、プロテインA親和性により、このタンパク質を培養上澄みから精製した。
【0153】
表面プラズモン共鳴を使用して、B7−1およびB7−2への結合について変異体CTLA4−Ig Fc融合体タンパク質をスクリーニングした。結合測定は、Biacore(商標)3000機器(Biacore)を使用して行った。センサチップは、抗HisタグmAbで誘導体化し、続いてB7−1−IgまたはB7−2−Ig(ともにR&D Systems製)をそれぞれ100nMおよび200nMで1.5分間捕捉した。HBS−EP緩衝液(Biacore)中の変異体および対照CTLA4−Igタンパク質を、1分間注入し、続いて2分間解離させた。データは、適切な非特異的信号(流動緩衝液の対照チャネルおよび注入の応答)を減算することにより、受容体の注入前の時間および応答をゼロにすることにより処理された。 BIAevaluationソフトウェアを用いて解離センサグラムをフィッティングし、解離速度定数(オフ速度またはkdまたはkoff)を得た。3回の別個の結合実験からの結果を、両方の抗原への結合のオフ速度の改善または低減の倍数とともに表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0154】
アバタセプトに対する倍数(koff)のプロットを図6に示す。表1および図6から見ることができるように、複数の置換が、アバタセプト親タンパク質よりも遅い解離(高い結合)を示した。
【0155】
アバタセプトよりも遅いB7−1および/またはB7−2に対する解離速度を有する変異体を、より大規模で再び発現させ、上述のように精製した。タンパク質濃度は、280nmにおける吸光度により測定した。B7−1およびB7−2に対する結合親和性は、CTLA4−Igタンパク質の一連の濃度を使用して、Biacore(商標)で測定した。全ての変異体CTLA4−Igタンパク質は、1uMに正規化し、次いでプロテインA結合によりQCした。抗Hisチップを上述のように生成し、B7−1およびB7−2を、それぞれ50nMで1分間および100nMで2分間固定した。CTLA4−Igタンパク質を、50、25、12.5および6.25nMで始まる一連の2倍濃度で希釈し、1分間注入し、続いて2分間解離させた。BIAevaluationソフトウェアを使用して動力学的データを1:1結合モデル(Langmuir)にフィッティングし、解離速度定数(kdまたはkoff)、会合速度定数(kaまたはkon)、および平衡解離定数(KDまたはKD)を得た。結合親和性を表2(B7−1)および表3(B7−2)に示す。
【表4】
【表5】
【0156】
単一置換スクリーニングの結果に基づき、組み合わせの変異体および追加的な単一置換変異体のライブラリを設計した。新たな変異体を表4および5に列挙する。変異体は、上述のように構築、発現、および精製した。B7標的への結合は、上述のように測定し、フィッティングした動力学的速度定数および親和性を表4(B7−1)および表5(B7−2)に示す。
【表6】
【表7】
【0157】
アバタセプトおよびベラタセプトと比較した、変異体の全てに対するCD80およびCD86 KDのプロットを、図7に示す。組み合わせの変異体のいくつかが、アバタセプト親CTLA4−Igに比べてB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)の両方により強固に結合し、B7−1に対する最大3.6倍の結合の改善、およびB7−2に対する最大19.2倍の結合の改善を示した。B7−2結合において最良の三重置換変異体は、T51N/L61E/K93Q(NEQと呼ばれる)であり、B7−2親和性を437pMから40pMに改善し、B7−1親和性を59pMから36pMに改善した。B7−2結合において最良の四重置換変異体は、A29H/T51N/L61E/K93Q(HNEQと呼ばれる)であり、B7−2親和性を437pMから23pMに改善し、B7−1親和性を59pMから16pMに改善した。アバタセプトおよびベラタセプトと比較したHNEQ変異体の最高CTLA4−Ig濃度からのセンサグラムのプロットを、図8に示す。これらのCTLA4変異体およびCTLA4−Ig変異体タンパク質のアミノ酸配列を、図9に示す。
【0158】
実施例2.操作されたCTLA4−Ig変異体は、より大きな生体内でのT細胞阻害活性を有する。
【0159】
NEQおよびHNEQ変異体CTLA4−Igタンパク質を、T細胞増殖を阻害する能力について、細胞を用いた検定法において試験した。アバタセプト、ベラタセプト、およびB7−1またはB7−2に対する親和性を有さない抗RSV IgG1抗体(陰性対照)を、対照として試験した。この検定法において、T細胞活性化および増殖を、抗CD3抗体OKT3および組み換えB7−2 Fc融合体(R&D Systems)を使用して刺激した。U字型組織培養プレートを、PBS中、4℃で一晩2ug/mlのCD86−Fcおよび0.5ug/mlの抗OKT3で被覆した。プレートをPBSで3回洗浄した。Ficoll−Paque(商標)Plus密度勾配(Amersham Biosciences、Newark、NJ)を使用して、ヒト末梢血単核球(PBMC)を匿名の健常志願者の白血球分離により精製した(HemaCare、VanNuys、CA)。EasySep(登録商標)Human T Cell Enrichment Kit(StemCell Technologies)を使用してT細胞をPBMCから単離し、T細胞をCSFE(10uM)で標識化した。CTLA4−Igタンパク質変異体および対照を、最高濃度を50 ug/mlとして、8つの濃度にわたる4倍希釈で添加した。試料を繰り返し試験した。約500,000個のT細胞を被覆されたプレートに加え、37℃で4日間インキュベートした。CD86−Fc/OKT3被覆ウェル上の細胞および細胞のみ(被覆無し)について対照条件を行った。4日間の培養後、FACSCanto(商標)を使用してFITC染色(CSFE)について試料を分析した。図10中のデータは、試験したCTLA4−Ig変異体T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Qが、その改善されたB7−1およびB7−2親和性に一致して、親CTLA4−Igアバタセプトよりも優れていることを示している。さらに、T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Q変異体の両方が、そのより大きなB7−2親和性に一致して、ベラタセプトに比べてより大きい阻害活性を示した。
【0160】
実施例3.延長された生体内半減期のための、増強されたFcRnへの結合を有するCTLA4−Ig免疫アドヘシン
【0161】
生体内血清半減期を改善することを目的として、CTLA4−Igタンパク質のFc領域を、新生児型Fc受容体FcRnに対する親和性を増強するように操作した。FcRn結合を改善し、増強された薬物動態特性を提供し得るFc変異体は、例えば、259I、307Q、308F、311I、311V、378V、378T、426V、428L、434S、434H、434F、434Y、434M、436I、および436V(参照により本明細書に明示的に援用される、12/22/2008出願のUSSN第12/341,769)を含むがこれらに限定されない、位置259、307、308、311、378、426、428、434、および436における置換を含むがこれらに限定されない。FcRnに結合するFcを増加させる他の変異体は、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al.,2004,J.Biol.Chem.279(8):6213−6216、Hinton et al.2006 Journal of Immunology 176:346−356)、256A、272A、286A、305A、307A、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al,Journal of Biological Chemistry,2001,276(9):6591−6604、参照によりその全体が援用される)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、および308T/309P/311S(Dall Acqua et al.Journal of Immunology,2002,169:5171−5180、Dall’Acqua et al.,2006,The Journal of Biological Chemistry 281:23514−23524、参照によりその全体が援用される)を含むが、これらに限定されない。
【0162】
増強されたFcRn親和性および延長された半減期を提供する置換M428LおよびN434Sを、アバタセプトCTLA4−Ig(ab)、CTLA4−Ig(G2)、ベラタセプト、ならびにCTLA4(HNEQ)およびCTLA4(NEQ)変異体のIg(G2−ELLG)型のFc領域内に導入した。これらのCTLA4−Ig変異体タンパク質のアミノ酸配列を、図11に示す。
【0163】
CTLA4−Ig変異体タンパク質は、上述のように構築、発現、および精製した。Biacore(商標)3000機器(Biacore(商標))を使用した抗原媒介免疫アドヘシン捕捉/ヒトFcRn検体形式で、pH6.0でのこれらの変異体のFcRnへの親和性をBiacore(商標)を用いて測定した。B7−1およびB7−2は、標準アミンカップリング法を用いて、それぞれ6500および8400RUの密度までCM5チップ上に固定した。リガンドをpH4.0のアセテート緩衝液中にそれぞれ200nMまで希釈した。表面を全長1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)+N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo−NHS)で4分間活性化し、続いてB7−1またはB7−2 Fc融合リガンド(R&D Systems)の注入を2ul/分で15分間行った。最後に、表面をエタノールアミンでブロックした。CTLA4−Igタンパク質の捕捉は、pH6.0のリン酸緩衝液中で、20nM(WT IgG1 Fc)または10nM(M428L/N434S変異体Fc)で2分間行い、それぞれ1500または700のRUを達成した。次いで、500、250、および125nMの濃度のヒトFcRn検体溶液を、示された濃度で注入し、続いて、次のサイクルの前に、B7表面をpH4.0のアセテート+500mM NaCl緩衝液で再生した。B7上に存在するFc融合体に起因して、表面に直接結合するhFcRnの高いバックグラウンドがあり、したがって、一連の濃度のhFcRnを非固定(空の)表面上に注ぎ、BIAevaluation分析中に手動でこのバックグラウンドを差し引いた。バックグラウンド/ドリフトを差し引き、軸のゼロ補正を行った後、BIAevaluationソフトウェア(Biacore(商標))を使用して、センサグラムを全体的に1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングした。
【0164】
アバタセプトCTLA4−Ig(ab)およびFc操作型CTLA4−Ig(ab−LS)(LS=428L/434S)の代表的センサグラムを、図12に示す。アバタセプトCTLA4−Ig(ab)およびCTLA4−Ig(G2)、ならびにFc操作型CTLA4−Ig(ab−LS)およびCTLA4−Ig(G2−LS)によるFcRnへの結合のフィッティングされた親和性を、表6に示し、図13にプロットする。結果は、Fc操作型のCTLA4−Igタンパク質のFcRnに対する増強された親和性、ひいてはFc変異体型の生体内でのより長い半減期の可能性を実証している。
【表8】
【0165】
実施例4.混合リンパ球反応における増強されたT細胞阻害活性を有するCTLA4−Ig免疫アドヘシン
【0166】
FcRnへの増強された結合を有する選択されたCTLA4−Ig変異体を、そのT細胞阻害活性について試験した。T細胞増殖を、抗CD3抗体およびB7−2Fc融合体を使用して刺激する上述の細胞を用いた検定法において、CTLA4−Igタンパク質を試験した。図14におけるデータは、FcRn親和性を増強するFc変異体(M428L/N434S)とともに、B7親和性が増強されたCTLA4変異体(T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Q)の強力で優れた阻害活性を示している。
【0167】
CTLA4−Ig変異体を混合リンパ球反応(混合白血球反応またはMLRとしても知られる)において試験することにより、それらののT細胞阻害活性をさらに測定した。MLRは、Tヘルパー(TH)細胞増殖の分析および細胞障害性Tリンパ球(CTL)の集団の生成のための生体外法である。同種異系(異なるMHCハロタイプ)リンパ球が一緒に培養されると、TH細胞集団が増殖し、続いてCTL集団が増殖する。MHC/TCRおよびB7/CD28共刺激経路は、同種異系反応に重要である。T細胞活性化を監視するために、インターロイキン−2(IL−2)分泌を使用した。2つの別個の実験において、Ficoll−Paque(商標)Plus密度勾配(Amersham Biosciences、Newark、NJ)を使用して、ヒトPBMCの2つの異なる組を2名の異なる匿名の健常志願者の白血球分離により精製した(HemaCare、VanNuys、CA)。PBMCを、ウェル当たり約1.2×10E6で、それぞれ300ulのRPMI1640/10%FBSと混合した。2つの実験のうちの一方では、ドナー2336および3070からのPBMCを混合し、他方の実験では、ドナー3070および3995からのPBMCを混合した。CTLA4−Igタンパク質および抗RSV IgG1陰性対照を、10点の一連の4倍希釈で調製し、示された最終濃度で混合PBMCに添加した。PBMC単独(別個に)もまた、対照として試験した。プレートを6日間インキュベートした。上澄みを回収し、IL−2 ELISA LegendMax(商標)Kit(BioLegend)を使用してIL−2の濃度を測定した。分析結果を図15に示す。
【0168】
図15におけるデータは、CTLA4−Ig変異体の強力な阻害活性、およびそのOrencia(登録商標)(アバタセプト)に勝る優位性を裏付けている。驚くべきことに、HNEQ変異体はB7−1およびB7−2に対する親和性がより大きい(表4および5)にもかかわらず、NEQ変異体がHNEQ変異体よりも優れていた。HNEQ変異体はアバタセプトに比べてB7−1親和性を3.6倍、およびB7−2親和性を19.2倍改善し、一方NEQ変異体はアバタセプトに比べてB7−1親和性を1.6倍、およびB7−2親和性を10.8倍改善する。NEQ変異体のより大きいT細胞阻害活性は、免疫応答におけるB7−1およびB7−2の異なる生物学的役割を反映している可能性がある。最近の研究では、B7−2はCD28の支配的なリガンドであり、一方B7−1はCTLA4の支配的なリガンドであること、さらに、B7−2はCTLA−4を免疫シナプスに動員することができないことが実証されている(Collins et al.,2002,Immunity 17:201−210、Jansson et al.,2005,J Immunol 175:1575−1585)。T細胞の下方制御における内因性CTLA4の役割(Alegre et al.,2001,Nat Rev Immunol 1:220−8)、および免疫応答の制御性T細胞(Treg)媒介抑制におけるその役割(Sakaguchi et al.,2009,International Immunology 21[10]:1105−1111)のために、内因性CTLA4を優先的に結合するB7−1に対する増加した親和性は、天然阻害剤を阻害し、ひいてはT細胞活性化を促進し得る。この点において、治療目的のために、B7−2は、阻害により重要なリガンドとなり得、したがって、CTLA4最適化のための最適な変異体は、B7−1と比べたB7−2への親和性における選択的増強となり得る。B7−1と比べてB7−2への親和性を選択的に改善する置換は、例えば、A29H、A29K、T51N、L61E、およびY103Qを含む。実験目的で、この選択性の仮説の試験は、例えばK93V、L61Q、およびL104Hを含む、反対の選択性、すなわちB7−2と比べたB7−1への改善された結合を提供する変異体から恩恵が得られる可能性があ
る。全体的に、結果は、NEQ組み合わせ変異体T51N/L61E/K93Qが選択的に関して最適な変異体であり、B7−2に対しては10.8倍の親和性を提供するが、B7−1に対してはわずかに大きい(1.6倍)結合しか提供しないことを示している。この親和性および選択性のプロファイルは、B7−2に対しては6.5〜7倍、B7−1に対しては2.3倍の親和性しか提供しない(表2〜5)ベラタセプトよりも優れている。
【0169】
実施例5.新規CTLA4−Ig免疫アドヘシンの生体内活性
【0170】
操作したCTLA4−Ig変異体の活性を試験するために、マウスにおける生体内実験を行った。破傷風に対するヒト免疫応答を阻害するCTLA4−Igタンパク質の能力を、ヒト末梢血白血球(PBL)を移植した重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて検討した。SCIDマウスは免疫障害を有し、ヒトPBMCno移植を受け付けるため、この試験の動物モデルとしてこれらのマウスを選択した。生体内試験用のCTLA4−Igタンパク質は、CHO細胞(Biotechnology Research Institute、National Research Council Canada)において発現させ、上述のように精製した。
【0171】
ヒト末梢血単核球(PBMC)は、無作為ドナーから収集したロイコパックから得られた(Hemacare、Van Nuys、CA)。Ficoll密度勾配遠心分離(Ficoll−Paque(商標)Plus、GE Healthcare)によりPBMCを精製し、RPMI 1640(Mediatech)中に再懸濁させ、3×107細胞の用量で腹腔内(i.p.)に注入した。PBMC注入の1日前、マウスに100ulの抗シアロGM(Wako、Richmond、VA)を腹腔内に注入し、マウスNK細胞を枯渇した。翌日、マウスに、0.5mL量の3x107 PBMCを腹腔内に注入した。全体で約70匹のマウスに注入した。細胞注入の日を試験0日目と定義した。全ての動物に同じ日にPBMCを注入した。
【0172】
PBMC注入後、マウスを無作為に群に割り当て、体重を測定した。PBMC注入後7日目に、ヒトIgGレベルを決定するために(hIgG ELISA、ZeptoMetrix、Buffalo、NY)、後眼窩洞/神経叢(OSP)穿刺を介して血液を全てのマウスから採取した。血液採取後の同じ日に(7日目)、マウスに1mg/kgの被験物質または陰性対照としてのPBSを腹腔内に注入した。引き続き、試験を通して3日または4日毎にマウスに注入した。被験物質は、最も最近の体重測定値を使用して、mg/kgベースで注入した。9日目に、マウスに15μgの破傷風トキソイド(List Biological Labs、Campbell、CA、カタログ番号191B)またはPBSを腹腔内に注入した。21日目(抗原ワクチン接種後12日目)、ヒトIgGおよび抗破傷風IgGを決定するために、血液を全てのマウスから採取した。
【0173】
PBMC移植後7日目および21日目に、後眼窩洞/神経叢(OSP)を用いて(局所的プロパラカイン麻酔薬および吸入イソフルランを使用して)血液試料(25〜50ul)を採取した。血液試料を血清分離管に移し、30分〜1時間静置して血液を凝固させ、次いで遠心分離機で遠心分離した(3500rpmで30分)。得られた血清を、試験番号、動物番号、日付、採取時点をラベルしたポリプロピレン管に移した。血清試料を約20℃で保存した。抗破傷風抗体(抗TT IgG)の血清濃度を、標準的抗破傷風ELISAキット(IBL−America)を使用して測定した。
【0174】
図16の結果は、PBS+破傷風のみに対する親和性が増強されたNEQ変異体CTLA4−Ig免疫アドヘシンの活性を実証している。さらに、データは、NEQ変異体が、親CTLA4−Igアバタセプトよりも強力な阻害活性を有していたことを示している。これらのデータは、免疫関連障害の治療のための本明細書に記載のCTLA4−Ig変異体の使用を裏付けている。
【0175】
引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に援用される。本発明の特定の実施形態が、例示の目的のため、上で説明されたが、詳細の多くの変形が、特許請求の範囲で記載される、本発明から逸脱することなく行われてもよいことを、当業者は理解するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンであって、前記CTLA4変異体は、T51N、A29H、M53Y、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する、免疫アドヘシン。
【請求項2】
前記変異体は、A29H/K93Q、A29H/M53Y、A29H/T51N、T51N/K93Q、T51N/M53Y、A29H/L61E/K93Q、A29H/M53Y/K93Q、A29H/M53Y/L61E、A29H/T51N/L61E、M53Y/L61E/K93Q、T51N/L61E/K93Q、T51N/M53Y/L61E、A29H/M53Y/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/M53Y/K93Q、A29H/T51N/M53Y/L61E、T51N/M53Y/L61E/K93Q、およびA29H/T51N/M53Y/L61E/K93Qからなる群から選択される置換の組み合わせを含む、請求項1に記載の免疫アドヘシン。
【請求項3】
前記変異体は、T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Qからなる群から選択される置換の組み合わせを含む、請求項2に記載の免疫アドヘシン。
【請求項4】
前記変異体は、T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N、T51N/M53Y、およびT51N/M53Y/L61Eからなる群から選択される置換の組み合わせを含む、請求項2に記載の免疫アドヘシン。
【請求項5】
前記変異体CTLA4タンパク質は、配列番号26または配列番号27に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫アドヘシン。
【請求項6】
前記免疫アドヘシンは、配列番号28、配列番号29、配列番号32、または配列番号33に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫アドヘシン。
【請求項7】
免疫関連障害に罹患した患者を治療する方法であって、前記治療は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、または配列番号33に対応するアミノ酸配列を含む免疫アドヘシンを前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記免疫関連障害は、クローン病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、および移植片拒絶反応からなる群から選択される、請求項7に記載の治療の方法。
【請求項9】
配列番号2と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンであって、前記変異体は、天然CTLA4において少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記修飾は、51および61からなる群から選択されるCTLA4位置における置換であり、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する、免疫アドヘシン。
【請求項10】
請求項1に記載の免疫アドヘシンをコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項12】
免疫アドヘシンを調製する方法であって、前記免疫アドヘシンが産生される条件下で請求項11に記載の宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項1】
配列番号2と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンであって、前記CTLA4変異体は、T51N、A29H、M53Y、L61E、およびK93Qからなる群から選択されるアミノ酸修飾を含み、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する、免疫アドヘシン。
【請求項2】
前記変異体は、A29H/K93Q、A29H/M53Y、A29H/T51N、T51N/K93Q、T51N/M53Y、A29H/L61E/K93Q、A29H/M53Y/K93Q、A29H/M53Y/L61E、A29H/T51N/L61E、M53Y/L61E/K93Q、T51N/L61E/K93Q、T51N/M53Y/L61E、A29H/M53Y/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/M53Y/K93Q、A29H/T51N/M53Y/L61E、T51N/M53Y/L61E/K93Q、およびA29H/T51N/M53Y/L61E/K93Qからなる群から選択される置換の組み合わせを含む、請求項1に記載の免疫アドヘシン。
【請求項3】
前記変異体は、T51N/L61E/K93QおよびA29H/T51N/L61E/K93Qからなる群から選択される置換の組み合わせを含む、請求項2に記載の免疫アドヘシン。
【請求項4】
前記変異体は、T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N/L61E/K93Q、A29H/T51N、T51N/M53Y、およびT51N/M53Y/L61Eからなる群から選択される置換の組み合わせを含む、請求項2に記載の免疫アドヘシン。
【請求項5】
前記変異体CTLA4タンパク質は、配列番号26または配列番号27に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫アドヘシン。
【請求項6】
前記免疫アドヘシンは、配列番号28、配列番号29、配列番号32、または配列番号33に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫アドヘシン。
【請求項7】
免疫関連障害に罹患した患者を治療する方法であって、前記治療は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、または配列番号33に対応するアミノ酸配列を含む免疫アドヘシンを前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記免疫関連障害は、クローン病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、および移植片拒絶反応からなる群から選択される、請求項7に記載の治療の方法。
【請求項9】
配列番号2と比較して変異体CTLA4を含む第1のドメインと、IgG Fc領域を含む第2のドメインとを含む免疫アドヘシンであって、前記変異体は、天然CTLA4において少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記修飾は、51および61からなる群から選択されるCTLA4位置における置換であり、前記変異体は、B7−1、B7−2、またはB7−1およびB7−2の両方に対する増強された結合を提供する、免疫アドヘシン。
【請求項10】
請求項1に記載の免疫アドヘシンをコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項12】
免疫アドヘシンを調製する方法であって、前記免疫アドヘシンが産生される条件下で請求項11に記載の宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−520176(P2013−520176A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554096(P2012−554096)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/025747
【国際公開番号】WO2011/103584
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(510089100)ゼンコア インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/025747
【国際公開番号】WO2011/103584
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(510089100)ゼンコア インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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