説明

新規KB−3346−5物質およびその製造方法

【課題】 MRSAに対するβ−ラクタム抗生物質の活性増強作用を有する物質を得、MRSAやβ−ラクタム抗生物質耐性を含む多剤耐性菌を起因とする感染症の治療薬を得る。
【解決手段】 ストレプトミセス属に属し、KB-3346-5 物質を生産する能力を有する微生物(FERM BP-10834)を培地に培養し、培養物中にKB-3346-5 物質を蓄積せしめ、該培養物から KB-3346-5物質を採取する。得られた物質は抗菌剤として利用されているβ−ラクタム抗生物質と併用することにより、その効果を増強する作用を有することから、MRSAやβ−ラクタム抗生物質を含む多剤耐性菌を起因とする感染症の治療薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤として利用されているβ−ラクタム抗生物質と併用することによりその効果を増強する新規KB-3346-5 物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、院内感染の主な原因菌として社会的問題となっている。この病原菌は、β−ラクタム抗生物質など種々の薬剤に対する耐性を有しており、一般にMRSA感染症の治療には、現時点ではほとんど耐性化が報告されていないグリコペプチド系のバンコマイシンやアミノグリコシド系のアルベカシンといった抗生物質が使用されている。またこの他に、β−ラクタム抗生物質同士、もしくはβ−ラクタム抗生物質と他の作用点の異なる抗生物質の併用療法が行われている(砂川慶介、戸塚恭一編:抗菌薬投与の科学、pp.264-273、医薬ジャーナル社、1998年)。
【0003】
バンコマイシンやアルベカシンについてもすでにこれらの薬剤に対する耐性菌が出現している。また、これらの薬剤については、第8脳神経障害による聴力障害などの副作用を有することが知られており、問題となっている。現在までに、このような状況に対処すべく、β−ラクタム抗生物質の効力を回復させる作用を有する物質が報告されている。例えば、β−ラクタム抗生物質を含む抗菌剤と組み合わせて使用することで相乗的効果を示す茶エキスまたはその活性フラクションがこれに相当する。
【特許文献1】特開平9-509677号公報
【0004】
新規KB-3346-5 物質は、β−ラクタム抗生物質のうちカルバペネム系に属するイミペネムの抗菌活性を増強する作用を有するとともに、ペナム系であるクロキサシリンやセフェム系であるセファゾリンの抗菌活性を増強する作用を有しているため、β−ラクタム抗生物質を含む抗菌剤との併用療法へも応用できることが期待される。新規KB-3346-5 物質は、茶エキスまたはその活性フラクションの有する活性成分であるポリフェノール化合物とは、分子式および化学構造が明確に区別される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
β−ラクタム抗生物質の活性を増強する薬剤は、β−ラクタム抗生物質の投与量を減量させ、投与期間を短縮させることにより耐性菌出現の頻度を低減させることが期待される。また同時に、作用の異なる2つの薬剤を併用することにより、β−ラクタム抗生物質に対する耐性を克服することも期待される。
【0006】
かかる状況において、MRSAに対するβ−ラクタム抗生物質の活性増強作用を有する物質を提供することは、MRSA感染症やβ−ラクタム抗生物質耐性を含む多剤耐性菌を起因とする感染症の新しい治療薬を提供するものであり有用なことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、微生物の生産する代謝産物を対象にカルバペネム系β−ラクタム抗生物質であるイミペネムの活性増強物質を探索した結果、新たに土壌から分離した放線菌KB3346-5株の培養液中にイミペネム活性増強作用を有する物質が産生されていることを見出した。
【0008】
次いで該培養物を精製、単離した結果、イミペネム活性増強作用を有するKB3346-5-A1 物質、KB3346-5-A2 物質、KB3346-5-A3 物質、KB3346-5-A4 物質、KB3346-5-A5 物質、KB3346-5-A6 物質、KB3346-5-A7 物質、KB3346-5-A8 物質、KB3346-5-A9 物質、KB3346-5-A10物質、KB3346-5-A11物質、KB3346-5-B1 物質、KB3346-5-B2 物質、KB3346-5-B3 物質、KB3346-5-B4 物質、KB3346-5-C1 物質およびKB3346-5-C2 物質(以下、これらを総称してKB-3346-5 物質と呼ぶ)の17種の化合物を得た。KB-3346-5 物質のような化学構造を有する物質は従来全く知られていなかった。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、下記一般式[A]
【0010】
【化7】

(式中、R1およびR3は水素または塩素、R2およびR4は水素またはメチル基である)で表されるKB-3346-5-A 物質群である。
本発明はまた、下記一般式[B]
【0011】
【化8】

(式中、R1およびR3は水素または塩素、R2は水素またはメチル基である)で表されるKB-3346-5-B 物質群である。
本発明は更に、下記一般式[C]
【0012】
【化9】

(式中、R1およびR2は水素または塩素、R3は水素またはメチル基である)で表されるKB-3346-5-C 物質群である。
【0013】
本発明はまた、ストレプトミセスに属し、請求項1、請求項2または請求項3記載の新規KB-3346-5 物質を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中にKB-3346-5 物質を蓄積せしめ、該培養物からKB-3346-5 物質を採取する新規KB-3346-5 物質の製造法である。本発明は更に、微生物がストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KB-3346-5 (FERM BP-10834) 株である。本発明は更に、請求項1、請求項2または請求項3に記載のKB-3346-5 物質とβ−ラクタム抗生物質とを組み合わせてなる抗菌剤である。
【0014】
本発明の前記一般式[A]、[B]、[C]で表される新規KB-3346-5 物質を生産するために使用される菌株としては、一例として、本発明者等によって沖縄県本島の土壌より新たに分離されたストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KB-3346-5 (FERM BP-10834)が挙げられる。本菌株の培養性状は以下の通りである。
【0015】
1.形態的性質
栄養菌糸の分断は観察されない。気菌糸はイースト・麦芽エキス寒天やオートミール寒天等で豊富に着生する。顕微鏡下の観察では、気菌糸上に20ケ以上の胞子の連鎖が認められ、その形態は螺旋状で、胞子の大きさは約 0.5-0.6 x 0.7-0.8μm の短桿形である。胞子の表面は平滑である。厚膜胞子、収束菌糸、胞子のうおよび遊走子は見出されない。
【0016】
2.各種培地上での性状
KB-3346-5株は、一般に使用されている合成および天然培地で普通もしくは旺盛な生育を示し、基生菌糸はベージュ色あるいはオリーブ色から茶色系を示した。培地により茶色系統の可溶性色素の生産がみられた。各種培地上で28℃、14日間培養したときの生育及び色の特徴を下記表1に示した。なお色の表示は、配色カード129a(財団法人日本色彩研究所)による色の分類に従った。
【0017】
【表1】

【0018】
3.生理学的性質
KB-3346-5株の生理学的性質を以下に示す。生育温度範囲は14日間培養後、その他は28℃、2 週間培養後の結果を記述する。
(1)メラニン色素の生成
(イ) チロシン寒天 陰性
(ロ) ペプトン・イースト・鉄寒天 陰性
(2)ゼラチンの液化(グルコース・ペプトン・ゼラチン培地) 陽性
(3)スターチの加水分解 陽性
(4)脱脂乳の凝固 陰性
(5)脱脂乳のペプトン化 陰性
【0019】
(6)生育温度範囲 15-42℃
(7)炭素源の利用性(プリドハム・ゴトリーブ寒天培地)
利用する:D-フラクトース、ラムノース、D-マンニトール
やや利用する:D-グルコース、L-アラビノース、D-キシロース、ラフィノース
利用しない:シュークロース、イノシトール
【0020】
4.化学分類学的性状
細胞壁のジアミノピメリン酸はLL型である。菌体主要メナキノンはMK-9(H6) とMK-9(H8) 、主要脂肪酸はiso-C16:0 、anteiso-C15:0 、iso-C15:0 である。GC含量は74 mol %である。
【0021】
5.結論
以上、形態的には気中菌糸に胞子鎖が形成されること、化学分類的には細胞壁がI型(
LL−ジアミノピメリン酸)であること、および、主要キノンがメナキノン9の3飽和型MK-9(H6) およびメナキノン9の4飽和型MK-9(H8) であることから、本菌株は放線菌の中でストレプトミセス属に分類された。したがって、本菌株をストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KB-3346-5 と命名した。
【0022】
なお、本菌株はストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KB-3346-5 として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)に所在する独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、平成19年 (07) 6 月 6日に寄託されている。受託番号はFERM BP-10834 である。
【0023】
次に、本発明のKB-3346-5 物質の理化学的性状について説明する。
1.KB3346-5-A1 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C28H22O8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値487.1393, 実測値487.1407
(3) 分子量:486 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 487 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示すとおりであり、λmax (e) : 279 nm (26924), 304 nm (17885), 380 nm (6853) の吸収極大を示す。
【0024】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図2に示すとおりであり、νmax 3361, 2929, 2852, 1676, 1608, 1462, 1331, 1255, 1159, 1089, 1020, 984, 935 cm -1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0025】
d H : 1.83 (3H), 1.87 (3H), 1.99 (3H), 3.61 (3H), 6.30 (1H), 6.41 (1H), 6.41 (1H), 6.74 (1H), 6.95 (1H), 7.46 (1H), 12.96 (1H)
d C : 20.5, 29.8, 30.1, 39.8, 55.8, 97.7, 101.7, 106.3, 109.7, 110.4, 112.1, 121.0, 125.8, 126.5, 137.0, 137.3, 137.6, 141.0, 155.4, 156.0, 158.0, 158.4, 161.5,165.9, 165.9, 182.2, 186.1, 186.6
【0026】
以上のように、KB3346-5-A1 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A1 物質は、下記の式[I]で表される化学構造であることが決定された。
【0027】
【化10】

【0028】
2.KB3346-5-A2 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C28H21ClO8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値521.1003, 実測値521.1028
(3) 分子量:520 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 521 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図5に示すとおりであり、λmax (e) : 280 nm (25584), 304 nm (17316), 378 nm (8840) の吸収極大を示す。
【0029】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図6に示すとおりであり、νmax 3359, 2927, 2856, 1674, 1604, 1458, 1406, 1323, 1257, 1161, 1076, 1022, 935 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0030】
d H : 1.84 (3H), 1.86 (3H), 1.94 (3H), 3.50 (3H), 6.31 (1H), 6.75 (1H), 6.77 (1H), 7.00 (1H), 7.56 (1H), 12.88 (1H)
d C : 20.1, 29.9, 30.0, 39.9, 60.5, 101.7, 106.3, 110.5, 112.7, 113.0, 114.1,125.4, 125.6, 127.7, 136.3, 136.9, 137.2, 140.2, 153.9, 154.5, 155.7, 155.9, 161.8,165.8, 165.9, 182.4, 186.1, 186.4
【0031】
以上のように、KB3346-5-A2 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A2 物質は、下記の式[II]で表される化学構造であることが決定された。
【0032】
【化11】

【0033】
3.KB3346-5-A3 物質
(1)性状:黄色粉末
(2)分子式:C29H24O8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値501.1549, 実測値501.1540
(3)分子量:500 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 501 を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図9に示すとおりであり、λmax (e) : 276 nm (21000), 306 nm (12800), 368 nm (5100) の吸収極大を示す。
【0034】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図10に示すとおりであり、νmax 3354, 3205, 2929, 2850, 1670, 1618, 1525, 1464, 1392, 1313, 1159, 1092, 1026, 957 cm -1 等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0035】
d H : 1.79 (3H), 1.85 (3H), 2.02 (3H), 3.64 (3H), 3.94 (3H), 6.28 (1H), 6.39 (1H), 6.40 (1H), 6.56 (1H), 7.00 (1H), 7.52 (1H), 12.90 (1H)
d C : 20.4, 29.6, 30.1, 39.2, 55.7, 55.8, 97.1, 101.5, 105.3, 109.4, 109.5, 110.2, 120.4, 124.7, 125.9, 135.6, 135.8, 137.1, 140.2, 154.8, 155.3, 156.4, 156.8, 162.6, 163.6, 165.0, 182.5, 185.1, 185.8
【0036】
以上のように、KB3346-5-A3 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A3 物質は下記の式[III ]で表される化学構造であることが決定された。
【0037】
【化12】

【0038】
4.KB3346-5-A4 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C29H23ClO8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値535.1160, 実測値535.1147
(3) 分子量:534 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 535 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図13に示すとおりであり、λmax (e) : 275 nm (25098), 304 nm (17302), 362 nm (7423) の吸収極大を示す。
【0039】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図14に示すとおりであり、νmax 3379, 3184, 2931, 2852, 1687, 1628, 1464, 1331, 1290, 1188, 1161, 1095, 993 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルホキシド中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0040】
d H : 1.67 (3H), 1.75 (3H), 1.95 (3H), 3.46 (3H), 3.92 (3H), 6.19 (1H), 6.26 (1H), 6.31 (1H), 6.59 (1H), 7.12 (1H), 9.41 (1H), 12.95 (1H)
d C : 20.3, 28.2, 30.2, 38.9, 55.1, 57.2, 96.7, 100.8, 105.6, 108.2, 108.9, 118.3, 118.6, 120.0, 127.1, 132.4, 134.5, 136.5, 137.1, 154.3, 156.2, 157.3, 157.7, 157.8, 164.5, 165.3, 180.5, 183.5, 185.9
【0041】
以上のように、KB3346-5-A4 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A4 物質は、下記の式[IV]で表される化学構造であることが決定された。
【0042】
【化13】

【0043】
5.KB3346-5-A5 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C29H23ClO8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値535.1160, 実測値535.1168
(3) 分子量:534 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 535 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図17に示すとおりであり、λmax (e) : 280 nm (29210), 304 nm (19705), 408 nm (11641)の吸収極大を示す。
【0044】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図18に示すとおりであり、νmax 3400, 2931, 2854, 1674, 1626, 1593, 1456, 1392, 1329, 1259, 1196, 1161, 1101, 980 cm -1 等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0045】
d H : 1.83 (3H), 1.85 (3H), 2.01 (3H), 3.50 (3H), 3.95 (3H), 6.30 (1H), 6.73 (1H), 6.85 (1H), 6.98 (1H), 7.56 (1H), 12.89 (1H)
d C : 20.4, 29.9, 30.0, 39.9, 56.5, 60.5, 101.7, 106.3, 110.0, 110.4, 113.2, 114.0, 125.3, 125.4, 128.6, 136.3, 136.8, 137.2, 140.1, 154.6, 155.8, 155.9, 155.9,162.1, 165.8, 166.1, 182.4, 186.0, 186.4
【0046】
以上のように、KB3346-5-A5 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A5 物質は、下記の式[V]で表される化学構造であることが決定された。
【0047】
【化14】

【0048】
6.KB3346-5-A6 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C29H23ClO8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値535.1160, 実測値535.1173
(3) 分子量:534 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 535 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図21に示すとおりであり、λmax (e) : 276 nm (25525), 305 nm (14845), 392 nm (6568) の吸収極大を示す。
【0049】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図22に示すとおりであり、νmax 3379, 2931, 2850, 1676, 1630, 1577, 1462, 1404, 1308, 1244, 1159, 1076, 955 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0050】
d H : 1.85 (3H), 1.86 (3H), 1.93 (3H), 3.49 (3H), 4.04 (3H), 6.30 (1H), 6.74 (1H), 6.77 (1H), 7.09 (1H), 7.61 (1H), 12.88 (1H)
d C : 20.1, 30.0, 30.0, 39.9, 56.5, 60.5, 101.8, 106.4, 110.4, 110.9, 112.7, 114.1, 124.5, 126.5, 127.5, 136.4, 136.9, 137.0, 140.0, 154.0, 154.5, 155.8, 155.9,163.5, 165.9, 166.2, 182.5, 185.9, 186.3
【0051】
以上のように、KB3346-5-A6 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A6 物質は、下記の式[VI]で表される化学構造であることが決定された。
【0052】
【化15】

【0053】
7.KB3346-5-A7 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C29H22Cl2O8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値569.0770, 実測値569.0757
(3) 分子量:568 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 569 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図25に示すとおりであり、λmax (e) : 276 nm (25446), 304 nm (17778), 396 nm (10110)の吸収極大を示す。
【0054】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図26に示すとおりであり、νmax 3388, 2929, 2854, 1685, 1631, 1576, 1460, 1406, 1327, 1286, 1230, 1163, 1078, 999, 947 cm -1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0055】
d H : 1.84 (3H), 1.86 (3H), 1.93 (3H), 3.51 (3H), 4.08 (3H), 6.30 (1H), 6.74 (1H), 6.78 (1H), 7.22 (1H), 12.98 (1H)
d C : 20.1, 29.8, 29.9, 40.1, 57.6, 60.5, 101.9, 106.4, 109.7, 112.7, 114.1, 120.2, 121.1, 127.0, 127.4, 134.1, 135.6, 136.5, 137.8, 154.2, 154.5, 155.4, 158.6,159.4, 166.3, 166.6, 181.6, 184.9, 187.0
【0056】
以上のように、KB3346-5-A7 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A7 物質は下記の式[VII ]で表される化学構造であることが決定された。
【0057】
【化16】

【0058】
8.KB3346-5-A8 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C30H25ClO8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値549.1316, 実測値549.1302
(3) 分子量:548 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 549 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図29に示すとおりであり、λmax (e) : 276 nm (27510), 302 nm (19344), 373 nm (8110) の吸収極大を示す。
【0059】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図30に示すとおりであり、νmax 3402, 2927, 2850, 1685, 1630, 1458, 1331, 1281, 1198, 1163, 1093, 1057, 999, 951 cm -1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0060】
d H : 1.76 (3H), 1.85 (3H), 2.08 (3H), 3.62 (3H), 3.83 (3H), 3.95 (3H), 6.27 (1H), 6.39 (1H), 6.46 (1H), 6.54 (1H), 6.93 (1H), 13.02 (1H)
d C : 20.7, 28.5, 30.8, 39.4, 55.2, 55.7, 56.8, 96.3, 101.3, 105.4, 106.9, 109.2, 119.2, 120.3, 120.4, 127.1, 133.0, 134.6, 137.1, 137.4, 154.3, 156.4, 158.1, 158.4, 160.2, 164.3, 165.0, 181.4, 183.8, 186.5
【0061】
以上のように、KB3346-5-A8 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A8 物質は下記の式[VIII]で表される化学構造であることが決定された。
【0062】
【化17】

【0063】
9.KB3346-5-A9 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C30H26O8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値515.1706, 実測値515.1718
(3) 分子量:514 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 515 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図33に示すとおりであり、λmax (e) : 277 nm (24364), 303 nm (15266), 374 nm (5962) の吸収極大を示す。
【0064】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図34に示すとおりであり、νmax 3357, 3082, 2931, 2843, 1678, 1630, 1583, 1462, 1317, 1236, 1196, 1157, 1093, 1030, 955 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0065】
d H : 1.77 (3H), 1.83 (3H), 2.06 (3H), 3.65 (3H), 3.80 (3H), 3.94 (3H), 6.25 (1H), 6.39 (1H), 6.44 (1H), 6.55 (1H), 6.99 (1H), 7.52 (1H), 12.86 (1H)
d C : 20.6, 29.6, 30.0, 39.2, 55.2, 55.7, 55.8, 96.4, 101.6, 105.5, 106.9, 109.5, 110.0, 120.9, 124.6, 125.8, 135.5, 135.8, 137.0, 140.1, 154.7, 155.4, 156.7, 159.9, 162.6, 163.9, 165.0, 182.6, 185.0, 185.7
【0066】
以上のように、KB3346-5-A9 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A9 物質は、下記の式〔IX〕で表される化学構造であることが決定された。
【0067】
【化18】

【0068】
10.KB3346-5-A10物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C30H24Cl2O8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値583.0927, 実測値583.0920
(3) 分子量:582 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 583 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図37に示すとおりであり、λmax (e) : 274 nm (27529), 303 nm (18740), 394 nm (7450) の吸収極大を示す。
【0069】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図38に示すとおりであり、νmax 3438, 2925, 2854, 1685, 1630, 1583, 1462, 1394, 1331, 1288, 1234, 1201, 1169, 1103, 1053, 1003, 958 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0070】
d H : 1.82 (3H), 1.85 (3H), 1.98 (3H), 3.55 (3H), 3.93 (3H), 3.97 (3H), 6.27 (1H), 6.55 (1H), 6.67 (1H), 6.95 (1H), 12.89 (1H)
d C : 20.2, 29.3, 30.1, 39.6, 56.3, 57.0, 60.5, 101.7, 105.2, 109.4, 109.6, 113.9, 119.1, 121.5, 126.0, 126.6, 133.0, 134.1, 134.9, 137.3, 153.5, 154.4, 155.4, 158.5, 158.8, 163.6, 165.4, 181.4, 184.0, 186.0
【0071】
以上のように、KB3346-5-A10物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A10物質は、下記の式〔X〕で表される化学構造であることが決定された。
【0072】
【化19】

【0073】
11.KB3346-5-A11物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C30H25ClO8 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値549.1316, 実測値549.1325
(3) 分子量:548 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 549 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図41に示すとおりであり、λmax (e) : 278 nm (33866), 354 nm (20495), 376 nm (8165) の吸収極大を示す。
【0074】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図42に示すとおりであり、νmax 3411, 2929, 2854, 1678, 1630, 1587, 1460, 1394, 1311, 1246, 1198, 1163, 1103, 1034, 958 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0075】
d H : 1.80 (3H), 1.82 (3H), 2.00 (3H), 3.53 (3H), 3.92 (3H), 3.95 (3H), 6.24 (1H), 6.54 (1H), 6.66 (1H), 7.00 (1H), 7.59 (1H), 12.80 (1H)
d C : 20.3, 29.8, 30.0, 39.3, 55.9, 56.2, 60.5, 101.5, 105.4, 109.5, 110.1, 110.5, 113.8, 124.2, 125.0, 127.1, 134.9, 135.0, 135.8, 139.6, 153.4, 154.6, 155.2, 155.7, 162.8, 163.9, 165.0, 182.3, 184.9, 185.4
【0076】
以上のように、KB3346-5-A11物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-A11物質は、下記の式〔XI〕で表される化学構造であることが決定された。
【0077】
【化20】

【0078】
12.KB3346-5-B1 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C27H22O7 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値459.1444, 実測値459.1446
(3) 分子量:458 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 459 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図45に示すとおりであり、λmax (e) : 247 nm (21618), 287 nm (15389), 353 nm (11861), 417 nm (15343)の吸収極大を示す。
【0079】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図46に示すとおりであり、νmax 3400, 2970, 2925, 2856, 1604, 1441, 1373, 1333, 1275, 1174, 1155, 1034, 980 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0080】
d H : 1.70 (3H), 1.71 (3H), 1.88 (3H), 6.20 (1H), 6.23 (1H), 6.26 (1H), 6.65 (1H), 6.72 (1H), 7.05 (1H), 7.36 (1H)
d C : 20.7, 34.5, 34.7, 39.7, 100.8, 102.1, 107.1, 107.6, 108.6, 108.8, 110.1, 116.1, 118.2, 122.5, 124.5, 138.3, 140.8, 142.9, 146.5, 155.4, 155.8, 157.5, 160.1, 166.6, 166.7, 166.9, 191.6
【0081】
以上のように、KB3346-5-B1 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-B1 物質は下記の式〔XII 〕で表される化学構造であることが決定された。
【0082】
【化21】

【0083】
13.KB3346-5-B2 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C28H24O7 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値473.1601, 実測値473.1586
(3) 分子量:472 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 473 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図49に示すとおりであり、λmax (e) : 246 nm (28745), 287 nm (19777), 354 nm (15906), 416 nm (20674)の吸収極大を示す。
【0084】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図50に示すとおりであり、νmax 3361, 2972, 2927, 1604, 1464, 1439, 1373, 1335, 1277, 1180, 1155, 1103, 1024, 937 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm) は下記に示すとおりである。
【0085】
d H : 1.49 (3H), 1.57 (3H), 1.91 (3H), 3.49 (3H), 6.33 (1H), 6.50 (1H), 6.51 (1H), 6.68 (1H), 6.88 (1H), 7.18 (1H), 7.34 (1H)
d C : 20.9, 34.5, 34.7, 39.5, 55.9, 97.6, 102.2, 107.3, 107.6, 108.4, 109.4, 110.1, 116.0, 118.0, 122.6, 125.6, 137.9, 141.2, 142.8, 146.3, 155.6, 158.4, 158.9,160.4, 166.6, 166.7, 166.9, 191.2
【0086】
以上のように、KB3346-5-B2 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-B2 物質は下記の式〔XIII〕で表される化学構造であることが決定された。
【0087】
【化22】

【0088】
14.KB3346-5-B3 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C28H23ClO7 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値507.1211, 実測値507.1194
(3) 分子量:506 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 507 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図53に示すとおりであり、λmax (e) : 247 nm (22821), 287 nm (15838), 354 nm (13055), 414 nm (17508)の吸収極大を示す。
【0089】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図54に示すとおりであり、νmax 3400, 2970, 2927, 2856, 1604, 1462, 1442, 1373, 1325, 1277, 1169, 1076, 1016, 850 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0090】
d H : 1.75 (3H), 1.75 (3H), 1.92 (3H), 3.48 (3H), 6.31 (1H), 6.76 (1H), 6.79 (1H), 6.86 (1H), 7.26 (1H), 7.55 (1H), 12.80 (1H), 14.58 (1H)
d C : 20.2, 34.3, 34.5, 39.5, 60.2, 102.0, 107.0, 107.5, 108.3, 110.4, 112.3,113.4, 116.1, 117.3, 121.9, 131.2, 136.3, 139.3, 142.3, 146.4, 153.4, 154.2, 155.6,159.4, 166.0, 166.1, 166.6, 191.2
【0091】
以上のように、KB3346-5-B3 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-B3 物質は下記の式〔XIV 〕で表される化学構造であることが決定された。
【0092】
【化23】

15.KB3346-5-B4 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C28H23ClO7 HR-FAB-MS (m/z) [M+H] + 計算値507.1211, 実測値507.1188
(3) 分子量:506 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 507 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図57に示すとおりであり、λmax (e) : 249 nm (26211), 288 nm (17204), 352 nm (12448), 416nm (17912) の吸収極大を示す。
【0093】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図58に示すとおりであり、λmax 3400, 2968, 2927, 2852, 1603, 1466, 1441, 1369, 1335, 1281, 1153, 1090, 1018, 982 cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(7) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社 300 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0094】
d H : 1.79 (3H), 1.80 (3H), 1.91 (3H), 3.58 (3H), 6.32 (1H), 6.40 (2H), 6.81 (1H), 6.94 (1H), 7.92 (1H), 12.74 (1H), 14.51 (1H)
d C : 20.5, 34.5, 34.9, 39.8, 55.7, 97.2, 102.1, 107.2, 107.6, 108.2, 109.0, 111.7, 113.3, 118.6, 121.5, 124.4, 137.2, 138.1, 139.3, 147.8, 155.0, 155.5, 158.0,158.3, 166.2, 166.5, 166.6, 191.2
【0095】
以上のように、KB3346-5-B4 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-B4 物質は、下記の式〔XV〕で表される化学構造であることが決定された。
【0096】
【化24】

16.KB3346-5-C1 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C32H29ClO9 HR-FAB-MS (m/z) [M+Na] + 計算値615.1397, 実測値615.1376
(3) 分子量:592 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 593 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図61に示すとおりであり、λmax (e) : 248 nm (19095), 410 nm (18561)の吸収極大を示す。
【0097】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図62に示すとおりであり、νmax 3186, 2931, 1716, 1685, 1599, 1562, 1462, 1327, 1271, 1161, 1016, 997 cm -1 等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 比旋光度:[α]D 24 + 86.4°(c 0.1 、メタノール)
(7) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(8) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0098】
d H : 1.13 (3H), 1.53 (3H), 1.92 (3H), 2.01 (3H), 2.83 (1H), 3.54 (1H), 3.64 (3H), 4.03 (3H), 6.24 (1H), 6.37 (1H), 6.39 (1H), 6.53 (1H), 7.09 (1H), 12.23 (1H) d C : 20.7, 21.4, 27.4, 29.9, 43.1, 49.8, 54.9, 55.9, 57.3, 97.4, 102.3, 106.3, 108.0, 108.2, 109.4, 120.8, 120.8, 123.7, 126.7, 135.4, 137.0, 139.3, 153.6, 158.1, 158.4, 158.6, 166.3, 166.4, 169.6, 189.1, 196.5, 205.4
【0099】
以上のように、KB3346-5-C1 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-C1 物質は下記の式〔XVI 〕で表される化学構造であることが決定された。
【0100】
【化25】

【0101】
17.KB3346-5-C2 物質
(1) 性状:黄色粉末
(2) 分子式:C33H31ClO9 HR-FAB-MS (m/z) [M+Na] + 計算値629.1554, 実測値629.1549
(3) 分子量:606 FAB-MS (m/z)で[M+H] + 607 を観測
(4) 紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図65に示すとおりであり、λmax (e) : 249 nm (19513), 410 nm (19271)の吸収極大を示す。
【0102】
(5) 赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図66に示すとおりであり、νmax 3431, 2935, 2848, 1714, 1674, 1599, 1464, 1387, 1329, 1261, 1200, 1161, 1103, 1024 cm -1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6) 比旋光度:[α]D 22 + 32.6 °(c 0.1、メタノール)
(7) 溶剤に対する溶解性:メタノール、アセトン及びクロロホルムに可溶。水に不溶
(8) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重アセトン中で、バリアン社300 MHz 核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm) 及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである。
【0103】
d H : 1.01 (3H), 1.59 (3H), 1.89 (3H), 1.96 (3H), 2.89 (1H), 3.52 (1H), 3.63 (3H), 3.94 (6H), 6.26 (1H), 6.46 (1H), 6.61 (1H), 6.98 (1H), 7.73 (1H), 12.52 (1H),14.74 (1H)
d C : 20.3, 21.0, 26.5, 29.6, 43.3, 52.4, 53.2, 55.8, 56.3, 60.5, 102.1, 105.4, 107.6, 108.6, 108.6, 110.1, 113.5, 123.8, 124.6, 130.2, 134.9, 137.3, 139.3, 152.9, 153.1, 154.7, 161.9, 162.6, 165.4, 168.8, 188.5, 197.8, 205.4
【0104】
以上のように、KB3346-5-C2 物質の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、KB3346-5-C2 物質は下記の式〔XVII〕で表される化学構造であることが決定された。
【0105】
【化26】

【0106】
次に、本発明のKB-3346-5 物質の生物学的性状について詳細に述べる。
1.ペーパーディスク法によるイミペネム(IPM) 活性増強作用の評価方法
試験菌として、臨床分離されたメチシリン耐性Staphylococcus aureus (MRSA)K24株を用いた。S.aureus K24株は、Mueller-Hinton broth(2.1% w/v、Difco 社)にて37℃、20時間培養後、同培地で0.5 McFarland (約108 CFU/mL)相当に懸濁し、MHA 培地(Mueller-Hinton broth 2.1% w/v 、Agar 1.5% )および同組成の培地にイミペネム(萬有製薬株式会社チエナム筋注用力価0.5 )を試験菌の生育に影響を与えない濃度、すなわち最終濃度10μg/mLとなるように添加した培地に塗沫した。塗沫は米国臨床検査標準化委員会(National Committee for Laboratory Standard、NCCLS )法に従い、滅菌綿棒(川本産業)を用いて行った。
【0107】
試験菌に対する各培地上での抗菌活性は、ペーパーディスク法(直径6 mm、薄手:Advantec社)にて、37℃で20時間培養後の阻止円径の直径を測定した。測定した阻止円径を単位mmで表記し、下記の表2に示した。その結果、すべてのKB-3346-5 物質は0.3 μg/ディスク条件下において、イミペネム非存在下では阻止円が観察されなかったのに対して、イミペネム存在下ではいずれも10 mm から21 mm の直径の阻止円が観察され、イミペネム活性増強作用が確認された。
【0108】
【表2】

【0109】
2.微量液体希釈法によるイミペネム活性増強作用の評価方法
KB3346-5 物質に関して、微量液体希釈法に従いイミペネムに対する活性増強を評価した。評価は、日本化学療法学会標準法(Chemotherapy 38 巻、103-105 頁、1990年)を一部改変して行った。96 well plate (Corning 社、米国)の各wellに、Mueller-Hinton broth(2.1% w/v)を85μL 添加した後、あらかじめ滅菌水で段階希釈しておいたイミペネムを最終濃度 4.8×10-4から256 μg/mLとなるように各wellに5 μL 添加した。
【0110】
さらに、これら各wellにKB-3346-5 物質メタノール溶液をそれ自身では生育に影響を与えない最終濃度0.5 μg/mLとなるように5 μL を添加した。よく混合した後、MRSA K24株を0.5 McFarland (約108 CFU/mL)相当に懸濁し、これを同培地で60倍に希釈した接種菌液を各wellに5 μL 接種した。37℃、20時間培養後、菌の発育が肉眼的に認められないwellのうち、最小のイミペネムの濃度をもって最小発育阻止濃度(MIC)とした。
【0111】
イミペネム単独時のMIC およびイミペネムとKB-3346-5 物質併用時のMIC は下記の表3に示した。表3は本発明によるKB-3346-5 物質を微量液体希釈法によりイミペネム活性増強作用を評価した結果を示したものである。その結果、イミペネム単独時ではMIC が32μg/mLであったが、KB-3346-5 物質の併用によりMIC は最大で0.06μg/mLまで低下し、100-500 倍の活性増強が確認された。
【0112】
【表3】

【0113】
3.各種試験菌に対する抗菌作用
KB3346-5-A4 およびKB3346-5-B2 について、6 種の試験菌Bacillus subtilis PCI 219、Micrococcus luteus PCI 1001 、Escherichia coli NIHJ 、Xanthomonas campestris pv.oryzae KB88 、Mucor racemosus IFO 4581およびCandida albicans KF1に対する抗菌活性を、ペーパーディスク法(直径6 mm、薄手)によって測定した。培養温度は、X.campestris pv.oryzaeM. racemosusおよびC.albicansについては、27℃とし、他の試験菌は37℃とした。培養時間は24時間とした。各試験菌に対する阻止円径(mm)は、下記の表4に示す通りである。
【0114】
【表4】

【発明を実施するための最良の形態】
【0115】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
寒天斜面培地(スターチ1.0%(関東化学)、エヌ・ゼット・アミン0.3%(和光純薬)、酵母エキス0.1%(オリエンタル酵母)、肉エキス0.1%(極東製薬工業)、炭酸カルシウム0.3%(関東化学)、寒天1.2%(清水食品)pH 7.0に調製)で培養したKB-3346-5 株を、種培地(スターチ 2.4% (関東化学)、グルコース0.1%(和光純薬)、ペプトン0.3%(極東製薬工業)、肉エキス0.3%(極東製薬工業)、酵母エキス0.5%(オリエンタル酵母)、CaCO3 0.4% (関東化学)pH 7.0に調製)10 mL を分注した大試験管7 本に一白金耳ずつ接種し、27℃で3 日間シェイカー(300 rpm )で培養した後、さらに同種培地100 mLを分注した500 mL容三角フラスコ6本に10% ずつ植菌し、27℃で3日間ロータリーシェーカー(210 rpm )で培養した。
【0116】
その後、生産培地(グルコース0.5%(和光純薬)、コーンスティープパウダー0.5%(マルコー)、オートミール1.0%(日本食品製造)、ファーマメディア1.0%(イワキ)、K2HPO4 0.5% (関東化学)、 MgSO4・7H2O 0.5% (和光純薬)、金属塩溶液0.1%( FeSO4・7H2O 0.1% (関東化学)、 MnCl2・4H2O 0.1% (関東化学)、 ZnSO4・7H2O 0.1% (関東化学)、 CuSO4・5H2O 0.1%(関東化学)、 CoCl2・6H2O 0.1% (和光純薬))、pH 7.0に調製)100 mLを入れた500 mL容三角フラスコ50本に10% ずつ植菌し、28℃で8日間ロータリーシェーカーで培養した。
【0117】
培養終了後、この培養液(5 L)にアセトン(5 L)を加え、30分撹拌後菌体を濾別してアセトン抽出液を得た。アセトン抽出液を減圧下でアセトンを留去して得られた水残査より、酢酸エチル(10 L)で活性成分を抽出し、酢酸エチル層を濃縮乾固して活性粗物質(6.73 g)を得た。この粗物質をシリカゲルカラム(シリカゲル60(メッシュ60-230)、メルク社、220 g )にて粗精製を行った。
【0118】
クロロホルムでシリカゲルカラムを洗浄したのち、クロロホルム−メタノール(100:0 、100:1 、50:1、10:1、1:1 、0:100 )の各混合溶媒を展開溶媒とするクロマトグラフィーを行い、溶出液を各溶出条件ごとに分画した。活性画分(100:1 )を濃縮乾固することで、褐色油状物質4370 mg を得、活性画分(10:1)を濃縮乾固することで、褐色油状物質830 mgを得た。
【0119】
続いて、活性画分(100:1 )1000 mg についてシリカゲルカラム(シリカゲル60(メッシュ230-400 )、30 g)にて精製を行った。クロロホルム−メタノール(100:0 、100:1 、50:1、0:100 )の各混合溶媒を展開溶媒とするクロマトグラフィーを行い、溶出液を各条件について10 mL ずつ20本に分画した。活性画分1(100:0 フラクション番号1から100:2 フラクション番号16)を濃縮乾固することで、褐色油状物質900.6 mgを得、活性画分2(100:2フラクション番号17から100:2 フラクション番号20)を濃縮乾固することで、褐色油状物質69.2 mg を得た。
【0120】
活性画分1のうち137.0 mgを少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm、センシュー科学)により精製を行った。60% アセトニトリル水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 210 nm の吸収をモニターした。保持時間43min 、49 min、51 min、55 minに活性を示すピークを観察し、これらのピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-A8 物質とKB3346-5-A9 物質の混合物、KB3346-5-A10物質、KB3346-5-A11物質、KB3346-5-C2 物質をそれぞれ収量 60.8 mg、17.3 mg 、27.8 mg 、2.0 mgで単離した。
【0121】
さらに、KB3346-5-A8 物質とKB3346-5-A9 物質の混合物を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Develosil 、20φx 250 mm、ノムラ科学)により最終精製を行った。70% アセトニトリル水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 210 nm の吸収をモニターした。保持時間23 min、24 minに活性を示すピークを観察し、これらのピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-A8 物質とKB3346-5-A9 物質をそれぞれ収量27.4 mg 、21.8 mg で単離した。
【0122】
活性画分2を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm)により精製を行った。55% アセトニトリル水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 210 nm の吸収をモニターした。保持時間25 min、36 min、38 minに活性を示すピークを観察し、これらのピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-A5 物質、KB3346-5-A6 物質、KB3346-5-A7 物質をそれぞれ収量26.4 mg 、11.5 mg 、14.3 mg で単離した。
【0123】
また、最初に行ったシリカゲルクロマトグラフィーの活性画分(10:1)についてもシリカゲルカラム(シリカゲル 60 (メッシュ230-400 )、25 g)にて精製を行った。クロロホルム−メタノール(50:1、10:1、0:100 )の各混合溶媒を展開溶媒とするクロマトグラフィーを行い、溶出液を各条件について10 mL ずつ20本に分画した。活性画分3(50:1フラクション番号13から10:1フラクション番号4)を濃縮乾固することで、褐色油状物質170.8 mgを得て、活性画分4(10:1フラクション番号7 から10:1フラクション番号11)を濃縮乾固することで、褐色油状物質251.3 mgを得た。
【0124】
活性画分3を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm)により精製を行った。75% メタノール水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 220 nm の吸収をモニターした。保持時間17 min、19 min、22 min、27 min、36 minに活性を示すピークを観察し、これらのピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-A2 物質、KB3346-5-B3 物質、KB3346-5-C1 物質の混合物、KB3346-5-B4 物質、KB3346-5-A3 物質とKB3346-5-A4 物質の混合物をそれぞれ収量13.9 mg 、10.0 mg 、20.2 mg 、30.5 mg 、61.2 mg で得た。
【0125】
さらに、KB3346-5-C1 物質の混合物を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm)により精製を行った。55% アセトニトリル水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 210 nm の吸収をモニターした。保持時間18 minに活性を示すピークを観察し、このピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-C1 物質を収量14.2 mg で単離した。
【0126】
また、KB3346-5-A3 物質とKB3346-5-A4 物質の混合物を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm)により精製を行った。55% アセトニトリル水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 210 nm の吸収をモニターした。保持時間21 min、24 minに活性を示すピークを観察し、これらのピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-A3 物質とKB3346-5-A4 物質をそれぞれ収量21.5 mg 、32.8 mg で単離した。
【0127】
活性画分4を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm)により精製を行った。50% アセトニトリル水溶液を移動相とし、8 mL/minの流速において、UV 210 nm の吸収をモニターした。保持時間12 min、19 minに活性を示すピークを観察し、これらのピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-B1 物質とKB3346-5-A1 物質の混合物およびKB3346-5-B2 物質をそれぞれ収量 29.9 mg、89.6 mg で得た。
【0128】
さらに、KB3346-5-B1 物質とKB3346-5-A1 物質の混合物を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:Pegasil ODS 、20φx 250 mm)により精製を行った。 65%メタノール水溶液を移動相とし、7 mL/minの流速において、UV 220 nm の吸収をモニターした。保持時間36 minと44 minに活性を示すピークを観察し、このピークを分取した。分取液を減圧下濃縮乾固することにより、KB3346-5-B1 物質とKB3346-5-A1 物質をそれぞれ収量10.0 mg と14.2 mg で単離した。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のとおり、新規KB-3346-5 物質を生産する能力を有するストレプトミセス属に属するKB-3346-5 株を代表とする微生物を培地に培養して、その培養液中から採取したKB-3346-5 物質は、抗菌剤として利用されているβ−ラクタム抗生物質と併用することによりその効果を増強する作用を有することから、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症やβ−ラクタム抗生物質耐性を含む多剤耐性菌を起因とする感染症の治療薬として有用であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明によるKB3346-5-A1 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図2】本発明によるKB3346-5-A1 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図3】本発明によるKB3346-5-A1 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図4】本発明によるKB3346-5-A1 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図5】本発明によるKB3346-5-A2 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図6】本発明によるKB3346-5-A2 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図7】本発明によるKB3346-5-A2 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図8】本発明によるKB3346-5-A2 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図9】本発明によるKB3346-5-A3 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図10】本発明によるKB3346-5-A3 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図11】本発明によるKB3346-5-A3 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図12】本発明によるKB3346-5-A3 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図13】本発明によるKB3346-5-A4 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図14】本発明によるKB3346-5-A4 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図15】本発明によるKB3346-5-A4 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重ジメチルスルホキシド中)を示したものである。
【図16】本発明によるKB3346-5-A4 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重ジメチルスルホキシド中)を示したものである。
【図17】本発明によるKB3346-5-A5 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図18】本発明によるKB3346-5-A5 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図19】本発明によるKB3346-5-A5 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図20】本発明によるKB3346-5-A5 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図21】本発明によるKB3346-5-A6 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図22】本発明によるKB3346-5-A6 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図23】本発明によるKB3346-5-A6 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図24】本発明によるKB3346-5-A6 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図25】本発明によるKB3346-5-A7 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図26】本発明によるKB3346-5-A7 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図27】本発明によるKB3346-5-A7 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図28】本発明によるKB3346-5-A7 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図29】本発明によるKB3346-5-A8 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図30】本発明によるKB3346-5-A8 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図31】本発明によるKB3346-5-A8 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図32】本発明によるKB3346-5-A8 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図33】本発明によるKB3346-5-A9 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図34】本発明によるKB3346-5-A9 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図35】本発明によるKB3346-5-A9 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図36】本発明によるKB3346-5-A9 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図37】本発明によるKB3346-5-A10物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図38】本発明によるKB3346-5-A10物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図39】本発明によるKB3346-5-A10物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図40】本発明によるKB3346-5-A10物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図41】本発明によるKB3346-5-A11物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図42】本発明によるKB3346-5-A11物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図43】本発明によるKB3346-5-A11物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図44】本発明によるKB3346-5-A11物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図45】本発明によるKB3346-5-B1 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図46】本発明によるKB3346-5-B1 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図47】本発明によるKB3346-5-B1 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中)を示したものである。
【図48】本発明によるKB3346-5-B1 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中)を示したものである。
【図49】本発明によるKB3346-5-B2 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図50】本発明によるKB3346-5-B2 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図51】本発明によるKB3346-5-B2 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中)を示したものである。
【図52】本発明によるKB3346-5-B2 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中)を示したものである。
【図53】本発明によるKB3346-5-B3 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図54】本発明によるKB3346-5-B3 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図55】本発明によるKB3346-5-B3 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図56】本発明によるKB3346-5-B3 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図57】本発明によるKB3346-5-B4 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図58】本発明によるKB3346-5-B4 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図59】本発明によるKB3346-5-B4 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図60】本発明によるKB3346-5-B4 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図61】本発明によるKB3346-5-C1 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図62】本発明によるKB3346-5-C1 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図63】本発明によるKB3346-5-C1 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図64】本発明によるKB3346-5-C1 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重アセトン中)を示したものである。
【図65】本発明によるKB3346-5-C2 物質の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示したものである。
【図66】本発明によるKB3346-5-C2 物質の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示したものである。
【図67】本発明によるKB3346-5-C2 物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。
【図68】本発明によるKB3346-5-C2 物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中)を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[A]
【化1】

(式中、R1およびR3は水素または塩素、R2およびR4は水素またはメチル基である)で表される化合物であることを特徴とするKB-3346-5-A 物質群。
【請求項2】
下記一般式[B]
【化2】

(式中、R1およびR3は水素または塩素、R2は水素またはメチル基である)で表される化合物であることを特徴とするKB-3346-5-B 物質群。
【請求項3】
下記一般式[C]
【化3】

(式中、R1およびR2は水素または塩素、R3は水素またはメチル基である)で表される化合物であることを特徴とするKB-3346-5-C 物質群。
【請求項4】
放線菌に属する下記一般式[A]
【化4】

(式中、R1およびR3は水素または塩素、R2およびR4は水素またはメチル基である)で表されるKB-3346-5-A 物質群、下記一般式[B]
【化5】

(式中、R1およびR3は水素または塩素、R2は水素またはメチル基である)で表されるKB-3346-5-B 物質群、および下記一般式[C]
【化6】

(式中、R1およびR2は水素または塩素、R3は水素またはメチル基である)で表されるKB-3346-5-C 物質群(以下これらを総称してKB-3346-5 物質と呼ぶ) を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養物中にKB-3346-5-物質を蓄積せしめ、該培養物からKB-3346-5 物質を採取することを特徴とするKB-3346-5 物質の製造法。
【請求項5】
放線菌に属し、KB-3346-5 物質を生産する能力を有する微生物がストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KB-3346-5 (FERM BP-10834) である請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KB-3346-5 (FERM BP-10834) 株。
【請求項7】
請求項1に記載のKB-3346-5-A 物質群、請求項2に記載のKB-3346-5-B 物質群、請求項3に記載のKB-3346-5-C 物質群のいずれかの物質群とβ−ラクタム抗生物質とを組み合わせることを特徴とする抗菌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【公開番号】特開2009−46404(P2009−46404A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211712(P2007−211712)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】