説明

新規NAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤

【課題】新規NAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤の提供。
【解決手段】下記一般式(I)に示される構造式で示される化合物を有効成分とするNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤による。


(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。Xは、R、若しくはグルコン酸から選択される。Rは、水素原子または直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基から選択される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規NAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤に関する。詳しくは、スダチ(Citrus sudachi Hort)由来成分から抽出される化合物またはその誘導体を有効成分とするNAD+依存性脱アセチル化酵素活性化剤に関する。ここにおいて、本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、スダチ由来化合物の他、前記化合物と実質的に同等の構造を有する化合物であれば、他の天然物由来であってもよく、さらには合成により得たものであっても良い。
【背景技術】
【0002】
NAD依存性脱アセチル化酵素群の総称をサーチュイン(Sirtuin)という。サーチュインは細菌から真核生物まで広く分布し、細胞内ではミトコンドリア、核、細胞質でみられ、細胞内代謝状態のセンサーから、老化や癌化、DNA損傷修復に至るまで多くの生命機能に関与すると考えられている。サーチュインのうち、最初に発見されたものは酵母のSir2である。ヒトのサーチュインは7種類(SIRT1〜SIRT7)知られており、酵母のSir2に高い相同性を示すSIRT1は、p53のリジン382を脱アセチル化することによってその機能を制御することが示されている。Sir2は、老化、長寿の重要な制御因子として注目されている(非特許文献1)。
【0003】
スダチは、“ゆず”の近縁種で、徳島県が全国の生産量の95%を占める香酸かんきつ類である。スダチは生食の用途以外にも、加工食品の原料として消費されているが、その残渣である果皮、果肉絞り粕、種などは、これまでに有効な利用法が見つかっていないのが現状である。このような天然素材は、一般に腸管吸収に優れ、副作用はなく、人体に対する安定性が高いという特徴を有する。スダチ由来の化合物について報告がある(非特許文献2)。かかる天然素材を有効に利用した組成物、並びに当該組成物を含有する医薬組成物について、本発明者らによる開示がある(特許文献1)。ここでは同スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕粉末が、物実験において血糖上昇抑制作用や血中脂質改善作用および生存率の上昇作用を有することが報告されている。しかしながら、これらの作用が、いかなる化合物によるものかについては全く開示されておらず、そのメカニズムについても全く開示されていない。
【非特許文献1】日本老年医学開雑誌; 44, 194-197 (2007)
【非特許文献2】J. Nat. Prod; 69, 1177-1179 (2006)
【特許文献1】特開2007−771139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規NAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題解決のために、スダチ由来成分の作用について研究を重ね、さらにスダチ由来化合物について鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物についてNAD依存性脱アセチル化酵素活性化作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.スダチ(Citrus sudachi Hort)から抽出される化合物および/またはその誘導体を有効成分とするNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
2.化合物が、下記一般式(I)に示される構造式からなる前項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化1】

(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。
Xは、R若しくはグルカル酸から選択される。
Rは、水素原子または直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基から選択される。)
3.化合物が、下記一般式(II)に示される構造式からなる前項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化2】

(式中、R、R、R、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
4.化合物が、下記一般式(III)に示される構造式からなる前項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化3】

(式中、Rが、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
5.化合物が、下記一般式(IV)に示される構造式からなる前項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化4】

(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびアシル基からなる群から選択される。)
6.化合物が、下記一般式(V)に示される構造式からなる前項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化5】

(式中、Yは、グルコース(Glc)若しくはラムノース(Rha)-グルコース(Glc)、RおよびR10が、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
7.NAD依存性脱アセチル化酵素が、SIRT1および/またはSir2である前項1〜6のいずれか1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
8.前項1〜6のいずれか1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を含む医薬用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、老化、長寿の重要な制御因子として注目されているSITR1/Sir2を活性化する。本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、医薬用途のほか、健康飲食品やサプリメントにも利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、スダチから抽出される化合物および/またはその誘導体を有効成分とする。ここにおいて、本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、スダチ由来化合物の他、前記化合物と実質的に同等の構造を有する化合物であれば、他の天然物由来であってもよく、さらには合成により得たものであっても良い。
【0009】
そのような化合物の一つとして、カフェ酸誘導体が挙げられる。カフェ酸誘導体は、下記一般式(I)で表される構造式からなる。
【化1】

(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。
Xは、OR、若しくはグルカル酸から選択される。
Rは、水素原子、または直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基から選択される。)
【0010】
本発明の好ましい化合物としては、例えば以下の一般式(II)で表される構造式からなる化合物が挙げられる。
【化2】

(式中、R、R、R、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
【0011】
特に好ましい化合物として、一般式(II)において、R、RおよびRが水素原子であり、RおよびRがメチル基で表される化合物が挙げられる。
【0012】
本発明の、他の好ましい化合物としては、一般式(I)において、Rが水素原子であり、Rがメチル基であり、Xは水酸基若しくはメトキシ基で表される化合物が挙げられる。
【0013】
また、化合物が、下記の一般式(III)で表される構造式からなる化合物が挙げられる。
【化3】

(式中、Rが、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
特に好ましい化合物として、Rがメチル基で表される化合物が挙げられる。
【0014】
また、化合物が、下記の一般式(IV)で表される構造式からなる化合物が挙げられる。

【化4】

(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
特に好ましい化合物として、Rがメチル基であり、Rがアセチル基で表される化合物が挙げられる。
【0015】
また、化合物が、下記の一般式(V)で表される構造式からなる化合物が挙げられる。
【化5】

(式中、Yは、グルコース(Glc)若しくはラムノース(Rha)-グルコース(Glc)、RおよびR10が、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
【0016】
特に好ましい化合物として、Yがグルコース(Glc)であり、RおよびR10が水素原子で表される化合物が挙げられる。他の好ましい化合物として、Yがラムノース(Rha)-グルコース(Glc)であり、Rが水素原子であり、R10がメチル基で表される化合物が挙げられる。
【0017】
一般式(I)〜(V)において、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、各々シクロアルキル基、シクロアルケニル基およびシクロアルキニル基であっても良い。ここで用いられるシクロアルキルは、飽和環式炭素鎖を意味し、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルは、それぞれ、少なくとも1つの二重または三重結合を含む環式炭素鎖を意味する。シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基およびアリール基は単環、多環または縮合環式であっても良い。
【0018】
本発明において一般式(I)〜(V)のいずれかで表される化合物は、さらに、薬学的に許容される塩であってもよい。また、上記化合物またはその塩において、異性体(例えば光学異性体、幾何異性体および互換異性体)などが存在する場合は、本発明はそれらの異性体を包含し、また溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶を包含するものである。
【0019】
本発明において、薬学的に許容される塩とは、薬理学的および製剤学的に許容される一般的な塩が挙げられる。そのような塩として、具体的には以下が例示される。
塩基性付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩;ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;たとえばN,N−ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩;リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0020】
酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。
【0021】
本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素は、特にSIRT1および/またはSir2であることが好ましい。Sir2やこれに高い相同性を有するSIRT1は、老化、長寿の重要な制御因子として注目されており、これらの酵素を活性化させることで、アンティエイジング作用や延命効果が期待される。したがって、本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、医薬用途に用いることができ、また健康飲食品やサプリメントにも用いることができる。
【0022】
一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物をスダチから抽出する場合は、次のようにして得ることができる。上記有効成分である化合物は、スダチの果皮搾汁後の果肉および/または種などの残渣画分から得ることができる。
【0023】
スダチの残渣画分は次のようにして得ることができるが、以下の方法に限定されるものではない。スダチの果実などは、従来から食用されており、果実は、農産工場工程において、搾汁等の工程を経て出荷される。農産工場工程において、残渣である果皮および果肉絞り粕(種を含む)は、通常廃棄されていたが、本発明においては、このような残渣である果皮および果肉絞り粕を有効利用することができる。果皮および/または果肉絞り粕は、必要に応じて、一旦冷凍保管することができる。このような果皮および/または果肉絞り粕は凍結乾燥されたものを使用することができる。好ましい実施態様においては、-40〜-25℃の範囲で釜入れし、温度勾配をつけながら前記釜入れから24〜26時間後、40〜60℃の範囲で釜だしして前記凍結乾燥を行う。なお、必要に応じて、凍結乾燥前に、果皮および/または果肉絞り粕をカットしたり、また、原料をカットするために解凍し、再び急激に凍らせると品質が安定しないおそれがあるという観点から、果皮および/または果肉絞り粕を予備凍結しても良い。予備凍結の条件としては、+15℃〜+5℃で釜入れして、-25℃〜-40℃まで凍らせることができる。予備凍結の時間は、特に限定されないが、15〜17時間が好ましい。また、釜入れの温度を+15℃〜+5℃としたのは、有効成分を極力残すという観点からであり、予備凍結の温度を-25℃〜-40℃までとしたのは、有効成分を極力残すという観点からである。また、粉末化方法は、特に限定されるものではなく、粉砕などの公知の方法に従って実施できる。
【0024】
スダチの残渣画分を、例えば図1のフローチャートに従って分画することができる。より具体的には、非特許文献2に記載の方法に準じて抽出し、HPLC等により精製することができる。
【0025】
また、一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物がスダチでない天然物に含まれる場合は、上記方法に準じて各化合物を抽出・精製することができる。さらには、合成により各化合物を生成しても良い。
【0026】
本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を有効成分とする医薬、健康飲食品およびサプリメントも本発明に含まれる。
【0027】
本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を有効成分とする医薬として用いる場合には、投与量は特に限定されず、あらゆる投与方法において適宜の投与量を選択することができる。本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、そのまま投与してもよいが、好ましくは、一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物の1種または2種以上を含む、経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することが好ましい。経口用あるいは非経口用の医薬組成物は、当業者に利用可能な製剤用添加物、即ち薬理学的および製剤学的に許容しうる担体を用いて製造することができる。
【0028】
経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、およびシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、および貼付剤等を挙げることができる。上記の医薬組成物の製造に用いられる薬理学的および製剤学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤、崩壊剤若しくは崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤若しくは溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、および粘着剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を有効成分とする健康飲食品として用いる場合には、一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物の1種または2種以上を、水に溶かしたり、食品に混入することで、食用とすることができる。
【0030】
本発明の健康飲食品は、食事の代用、間食として食用することもできる。例えば、上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物の1種または2種以上と、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、およびパン粉からなる群から選択される少なくとも1種とを調合して、通常の料理に利用することもできる。また、これらを洋菓子、和菓子、菓子、うどん、そば、パスタ、中華そば、パン等に加工して、さらに食べやすくしても良い。これらの料理方法は常法に従う。
【0031】
また、健康飲食品の状態は、固体状(粉末、顆粒状)、ゼリー状、液体、懸濁状のいずれでもよい。また、健康食品、または健康飲料には、甘味料、酸味料、ビタミン剤、ドリンク剤などに含まれる各種成分等が含まれていても良い。また、健康飲料の場合には、さらに水、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳、酒、果実飲料、および野菜飲料からなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
【0032】
さらに、本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を有効成分とするサプリメントとして用いる場合には、一般式(I)〜(V)のいずれかで表される化合物の1種または2種以上を錠剤、カプセル、液状、パウダー状、ソフトカプセル等の剤型にしたものに含めることができる。
【0033】
サプリメントは、特に、忙しくて通常の食事をとれない者や、ハイキング、サイクリング、ランニングしている者、競争者等のパッケージ入りのインスタント高エネルギースナックを運動中に必要とする者にとって、有用な栄養補給となる。
【0034】
上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物の1種または2種以上の他に、本発明のサプリメントに配合される配合成分は、特に限定されるものではない。このような配合成分として、例えば、小麦澱粉、米澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、α化澱粉、部分α化澱粉、乳糖、麦芽糖、還元乳糖、還元麦芽糖、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、白糖、ブドウ糖、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、トラガントガム、プルラン、寒天、ゼラチン、大豆食物繊維、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリビニルピロリドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、植物硬化油、植物油脂末、カルナウバロウ、カカオ脂末、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム等の市販品を挙げることができる。
【0035】
本発明のサプリメントは、例えば、錠剤は、一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物の1種または2種以上および必要に応じて前記配合成分を混合したものを常法に従って圧縮成形するか、または、上述の一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物の1種または2種以上および必要に応じて前記配合成分を適当な方法で顆粒状とした後、常法に従って圧縮成形して製造できる。
【0036】
また、本発明のサプリメントには、市販の糖菓被覆材料を用いてもよい。本発明において、糖菓被覆材料は、ココアバターベースであってもよいし、あるいは硬化した植物油からなる配合被覆(compound coating)であってもよい。配合被覆に用いられる硬化した植物油の例としては、綿実油、ヤシ油、ダイズ油、パーム油、ラッカセイ油が挙げられる。これらの硬化した植物油は、砂糖と混合され、被覆材料の主要成分をなす。配合被覆は、ピーナツ風味、フルーツ風味、チョコレート風味、バニラ風味、ココナッツ風味、または他の市販されている香味料で風味を付けられていてもよい。
【0037】
本発明によるサプリメントに、幾つかの食用タンパク質源から得られるタンパク質を単独でまたは組み合わせて用いることによって、栄養強化することもできる。タンパク質源の例としては、乳漿粉、イナゴマメ粉、ダイズレシチン、ピーナッツ粉、小麦タンパク質(小麦麦芽等)およびカゼイン塩(カゼイン酸カルシウム、カゼイン酸カリウムおよびカゼイン酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0038】
本発明のサプリメントに好適な炭水化物源の例としては、トウモロコシ、大麦、玄米などを麦芽処理した穀類シロップ;モルトデキストラン;フルクトース;高フルクトースコーンシロップ;ナツメヤシペースト;スクロース;赤砂糖およびそれらの混合物が挙げられる。複合多糖源の例としては、オート麦、米、大麦およびトウモロコシなどの穀類由来のものが挙げられる。
【0039】
また、本発明のサプリメントは、更に脂肪を含んでも良い。脂肪は、単位重量あたり最もエネルギーを多く提供する源であり、タンパク質または炭水化物の約2倍のエネルギーを提供する。糖菓被覆材料に加えて、本発明で用いられる脂肪源の例としては、チョコレート、ココアおよびココナッツ等の香味料、および少なくとも1種の部分的に水素化した植物油(ダイズ油、綿実油、コーン油やパーム油など)が挙げられる。
【実施例】
【0040】
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0041】
(実施例1)スダチからの化合物の抽出
一旦冷凍保管されたスダチの果皮および果肉絞り粕を、凍結乾燥に用いた。凍結乾燥を-35℃で、24時間行った後、+45℃で釜出しして、粉砕することによりスダチ由来の粉末を得た。スダチ乾燥果皮からの分離方法を図1に、スダチ種子からの分離方法を図2に示した。なお、図中の太ゴシック体の番号は、表1、表2および図3の化合物名と一致させた。
【0042】
上記により分画した結果、35種類の化合物を抽出することができた(表1、表2)。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
(実験例1)スダチからの抽出化合物のサーチュイン(SIRT1/Sir2)活性の測定
レスベラトロール(SIGMA社R5010)を陽性コントロールとし、上記得られた35種類の化合物について、サーチュイン(SIRT1/Sir2)活性を測定した。サーチュイン(SIRT1/Sir2)活性は、フナコシ製SIRT1/Sir2活性測定キットを用いて測定した。
【0046】
その結果、表1および表2に示す各化合物のうち、10、14、19、20、26、32および33番目の化合物について、SIRT1/Sir2活性が認められ、特に14および32番目の化合物について、陽性コントロールのレスベラトロールと同等の活性を有することが確認された(図3)。なお、陽性コントロールに用いたレスベラトロールは、抗酸化作用を有し、Sir2タンパク質を活性化させることで、酵母の寿命が1.7倍の増加したことが、既に報告されている(Nature; 425, 191-196 (2003))。
【0047】
さらに、表1の14番目の化合物3-O-feruloyl mucic acid 1,4-lactone methyl esterについて、各濃度でのSIRT1/Sir2活性を確認し、各濃度のレスベラトロールとの活性を比較した。その結果、14番目の化合物は、レスベラトロールと同等の活性を有することが確認された(図4)。
【0048】
表1および表2に示す10、14、19、20、26、32および33番目の化合物の構造式は、以下のとおりである。
【0049】
10 1-O-methylichangesin
【化6】

【0050】
14 3-O-feruloyl mucic acid 1,4-lactone methyl ester
【化7】

【0051】
19 nomilinic acid
【化8】

【0052】
20 purunin
【化9】

【0053】
26 poncirin
【化10】

【0054】
32 methyl ferulate
【化11】

【0055】
33 ferulic acid
【化12】

【産業上の利用可能性】
【0056】
以上詳述したように、本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、老化、長寿の重要な制御因子として注目されているSITR1/Sir2を活性化する。一般式(I)〜(V)のいずれかで表される構造式からなる化合物は、スダチから抽出することも可能であり、スダチでない他の天然物に含まれる場合は、他の天然物からも各化合物を抽出・精製することができる。さらには、合成により各化合物を生成しても良い。
【0057】
特に、スダチから抽出する場合は、従来廃棄されていたスダチ乾燥果皮・果肉絞り粕を有効活用することができるので、有意である。本発明のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤は、医薬用途のほか、健康飲食品やサプリメントにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】スダチ乾燥果皮からの化合物の作製方法を示す図である。(実施例1)
【図2】スダチ種子からの化合物の作製方法を示す図である。(実施例1)
【図3】各化合物についてのSIRT1/Sir2活性測定結果を示す図である。(実験例1)
【図4】3-O-feruloyl mucic acid 1,4-lactone methyl esterについてのSIRT1/Sir2活性測定結果を示す図である。(実験例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スダチ(Citrus sudachi Hort)から抽出される化合物および/またはその誘導体を有効成分とするNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【請求項2】
化合物が、下記一般式(I)に示される構造式からなる請求項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化1】

(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。
Xは、R若しくはグルカル酸から選択される。
Rは、水素原子または直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基から選択される。)
【請求項3】
化合物が、下記一般式(II)に示される構造式からなる請求項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化2】

(式中、R、R、R、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
【請求項4】
化合物が、下記一般式(III)に示される構造式からなる請求項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化3】

(式中、Rが、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
【請求項5】
化合物が、下記一般式(IV)に示される構造式からなる請求項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化4】

(式中、RおよびRが、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびアシル基からなる群から選択される。)
【請求項6】
化合物が、下記一般式(V)に示される構造式からなる請求項1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【化5】

(式中、Yは、グルコース(Glc)若しくはラムノース(Rha)-グルコース(Glc)、RおよびR10が、各々同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基からなる群から選択される。)
【請求項7】
NAD依存性脱アセチル化酵素が、SIRT1および/またはSir2である請求項1〜6のいずれか1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1に記載のNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤を含む医薬用組成物。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−126799(P2009−126799A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301398(P2007−301398)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(000119472)一丸ファルコス株式会社 (78)
【出願人】(505312372)ケイティーティー貿易株式会社 (2)
【Fターム(参考)】