説明

新規P2X7エピトープ

本発明は、プリン作動性(P2X)受容体、より具体的にはP2X7受容体、抗体の生成、ならびに疾患状態、特に癌の検出および治療のための、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体および免疫原の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリン作動性(P2X)受容体、抗体の生成、ならびに疾患または状態、特に癌の検出および治療のための抗体および免疫原の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プリン作動性(P2X)受容体は、ATP依存性カチオン選択性チャネルである。各々の受容体は、3個のタンパク質サブユニットまたは単量体からできている。これまで、P2X単量体をコードする7個の別々の遺伝子が同定されている:P2X1、P2X2、P2X3、P2X4、P2X5、P2X6、P2X7。
【0003】
P2X7受容体は、これらの受容体の発現が、プログラム細胞死を受ける可能性を有する細胞、例えば胸腺細胞、樹状細胞、リンパ球、マクロファージおよび単球に限定されると理解されているため、特に関心がもたれる。赤血球上などの正常なホメオスタシスにおいてP2X7受容体が幾分発現する。
【0004】
興味深いことに、Pro210(図1の配列番号1による)のシス異性体を有する1または複数の単量体を含み、ATP結合機能を欠いているP2X7受容体が、プログラム細胞死を受けることができないと理解されている細胞、例えば前癌細胞および腫瘍細胞上で見つかっている。
【0005】
シス型のPro210を含むペプチドを用いた免疫化から生じた抗体は、ATP結合機能を欠いているP2X7受容体に結合する。しかしながら、それらの抗体は、ATPに結合することができるP2X7受容体に結合しない。したがって、これらの抗体は、癌腫および造血系癌の多くの形態を選択的に検出し、これらの状態のいくつかを治療するために有用である。
【0006】
Pro210を含むP2X7受容体の領域は、受容体の細胞外ドメインの一部を形成する。このドメイン上の他のエピトープに対して生じた抗体は、Val71〜Val87(図1の配列番号1による)およびLys137〜Cys152(図1の配列番号1による)を含む領域に結合する抗体を含み、ATP結合機能を欠いている受容体に選択的に結合することができないことが分かっている。したがって、Pro210を含む領域に指向された抗体以外に、他の抗体は、これまでに、ATP結合受容体とATP非結合受容体を区別することができることが見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,306,393号
【特許文献2】米国特許第6,329,503号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1995年)
【非特許文献2】Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、Kibbe,A.H.編集、Washington DC、American Pharmaceutical Association(2000年)
【非特許文献3】Sliwkowsky,MXら、Semin.Oncol.26.suppl.12)60〜70頁(1999年)
【非特許文献4】FinglおよびWoodbury、General Principles In:The Pharmaceutical Basis of Therapeutics 1〜46頁(1975年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
癌を検出するための試薬、これに関連して、ATP結合性P2X7受容体とATP非結合性P2X7受容体を区別することができる新規な抗体が必要である。また、抗腫瘍応答を提供する抗体および免疫原を含む新規な癌治療薬が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある種の実施形態では、
- 配列番号2の配列からなるペプチド;
- 配列番号2の配列内の配列からなるペプチドであって、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させる免疫原として有用であるペプチド;
- 配列番号3の配列からなるペプチドであって、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させる免疫原として有用であるペプチド;または
- 配列番号3の配列内の配列からなるペプチドであって、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させる免疫原として有用であるペプチド
が提供される。
【0011】
他の実施形態では、
- 上述したペプチドに結合することができる;または
- 配列番号2の配列を有するペプチドの1または複数の残基を含むエピトープに結合することができる
抗体またはその断片が提供される。
【0012】
他の実施形態では、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片、または上述したペプチドへの上述した抗体またはその断片の結合によって形成される免疫複合体が提供される。
【0013】
ある種の実施形態では、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むかどうかを決定するための方法であって、
- 上述した免疫複合体を形成する条件で、細胞、組織または細胞外体液を抗体またはその断片と接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成したかどうかを検出する工程
を含み、免疫複合体の検出は、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むことを決定する方法が提供される。
【0014】
他の実施形態では、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に対する抗体を含有するかどうかを決定するための方法であって、
- 細胞、組織または細胞外体液においてペプチドと抗体の免疫複合体を形成する条件で、細胞、組織または細胞外体液を上述したペプチドと接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成したかどうかを検出する工程
を含み、免疫複合体の検出は、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に対する抗体を含むことを決定する方法が提供される。
【0015】
なおさらなる実施形態では、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片、またはそれに対する抗体を含有するかどうかを決定するためのキットまたは組成物であって、
- 上述したペプチド;および/または
- 上述した抗体または断片;および/または
- ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片;および場合により
- 前記ペプチド、抗体もしくはその断片、またはATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片に結合するさらなる抗体;
- 上述した方法においてキットを使用するための取扱説明書
を含むキットまたは組成物が提供される。
【0016】
他の実施形態では、上述した抗体もしくはその断片、または上述したペプチド、および医薬として許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0017】
関連した実施形態では、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片の発現によって特徴付けられる疾患を治療するための方法であって、前記治療を必要とする個体に、上述した抗体もしくはその断片、または上述したペプチドを提供する工程を含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明については、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、他に特に定義がされていない限り、当業者によって通常理解される意味を有する。
【0019】
本発明者らは、ATP非結合性P2X7受容体(「非機能的受容体」としても知られている)において排他的に発現されるエピトープを同定した。エピトープおよびこのエピトープを含むペプチドは、癌腫を含む様々な疾患および状態の存在または不存在または素因を指示する抗体および免疫複合体を生じさせるのに有用であることが見出された。
【0020】
このようにして、ある種の実施形態では、配列番号2:KYYKENNVEKRTLIKVFからなるペプチドが提供される。
【0021】
ペプチドは、配列番号2の配列(図2)内の配列からなっていてもよく、その場合、このペプチドは、ATP非結合P2X7(「非機能的」)受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合P2X7(「機能的」)受容体に結合することができない抗体を生成させるための免疫原として用いることができる。P2X7に関して、「ATP非結合」および「非機能的」なる用語は、本明細書および特許請求の範囲において交換可能に用いられてもよい。同様に、用語「ATP結合」および「機能的」は、本明細書および特許請求の範囲において交換可能に用いられてもよい。
【0022】
一般に、ATP非結合受容体は、少なくとも1つのP2X7単量体から形成される三量体またはより高次の多量体を意味し、この三量体および高次多量体は少なくとも実質的にATP結合活性を欠いている。ある種の実施形態では、これらの三量体および高次多量体は、カルシウムカチオンが細胞質に進入するために、細胞膜に細孔を形成することが実質的にできない。
【0023】
ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させるための免疫原として用いることができるペプチドをスクリーニングする方法が本明細書に開示されている。一例としては、ロゼット(rosette)アッセイにおける赤血球の使用が挙げられる。このアッセイでは、機能的受容体に結合する抗体は、ロゼットが観察される陽性対照として用いられる。試験抗体は、ロゼットを形成しない場合、機能的受容体に結合しないことが決定される。本明細書に開示されている細胞株を含む非機能的受容体を発現する細胞株に結合することが観察された場合、非機能的受容体に結合することが決定される。
【0024】
これらの実施形態では、ペプチドは、長さが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17残基であってもよい。
【0025】
他の実施形態では、ペプチドは、配列番号3の配列(図3)からなり、このペプチドは、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させるための免疫原として有用である。
【0026】
ペプチドは、配列番号3の配列内の配列からなっていてもよく、このペプチドは、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させるための免疫原として有用である。これらのペプチドの例には、表1に記載の配列を有するペプチドが含まれる(配列番号1に従って番号を付す)。
【0027】
【表1】

【0028】
Table 1(表1)に示されるペプチドは、長さが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17残基であってもよい。
【0029】
他の実施形態では、上述したペプチドに結合することができる抗体またはその断片が提供される。
【0030】
抗体は、上述したペプチドを用いた免疫化によって産生されてもよい。適切な免疫化の例は、以下の実施例1に記載されている。
【0031】
また、抗体は、ATP非結合性P2X7受容体、例えば配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する受容体、またはアミノ酸配列の配列番号3〜9(図3〜9に示される)を含むその断片を用いて免疫化によって産生されてもよい。
【0032】
一実施形態では、免疫化に用いられるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片は、シス異性体のPro210を有する。
【0033】
抗体は、配列番号2の配列を有するペプチドの1または複数の残基を含むエピトープに結合してもよい。ある種の実施形態では、抗体は、K297またはY298またはY299またはK300またはE301またはN302またはN303またはV304またはE305またはK306またはR307またはT308またはL309またはI310またはK311またはV312またはF313に結合する。
【0034】
エピトープは、配列番号2の配列を有するペプチドの一連の残基を含んでもよい。ある種の実施形態では、抗体は、K297およびY298、またはY298およびY299、またはY299およびK300、またはK300およびE301、またはE301およびN302、またはN302およびN303、またはN303およびV304、またはV304およびE305、またはE305およびK306、またはK306およびR307、またはR307おおびT308、またはT308およびL309、またはL309および1310、または1310およびK311、またはK311およびV312、またはV312およびF313を含む配列に結合する。
【0035】
また、上記の残基の1または複数に結合する抗体は、配列番号3によって特定される領域の外側に位置する、P2X7受容体の細胞外ドメインの1または複数の残基に結合してもよい。例えば、配列番号3によって特定される領域の外側に位置する1または複数の残基は、ATP結合性P2X7受容体のATP結合部位を特定するATP結合性P2X7受容体のアミノ酸残基の配列に位置していてもよい。
【0036】
一実施形態では、配列番号3の配列の外側に位置する1または複数の残基は、配列番号10〜12の配列(それぞれ図10〜12)に位置していてもよい。
【0037】
抗体は、任意のアイソタイプの全抗体であってもよい。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗血清から得られた抗体であってもよい。抗体は、ハイブリドーマによってまたは組換え発現によって産生されてもよい。
【0038】
抗体は、キメラであってもよく、すなわち、ヒト可変ドメインおよび非ヒト定常ドメインを含む抗体であってもよい。あるいは、抗体はヒト化されてもよく、すなわち、ヒト抗体のフレームワークに非ヒトCDRを接合することによって形成された抗体であってもよい。なおさらに、抗体は、完全にヒトであってもよい。
【0039】
本発明の抗体は、例えば標的癌における抗体の有効性を増大させるために、エフェクター機能に関して修飾されてもよい。例えば、システイン残基(単数または複数)をFc領域に導入することができ、それによって、この領域における鎖間のジスルフィド結合形成を可能にする。このようにして生じたホモ二量体抗体は、内在化能力を改善し、および/または補体が介在した細胞死滅および抗体が依存した細胞傷害性(ADCC)を増加させることができた。また、抗腫瘍活性が増大したホモ二量体抗体は、ヘテロ二機能的架橋剤を用いて調製することができる。あるいは、二重Fc領域を有する抗体を遺伝子操作することができ、補体溶解およびADCC能力が増大することができた。
【0040】
抗体が抗体断片である場合、抗体断片は、dAb、Fab、Fd、Fv、F(ab')2、scFvおよびCDRからなる群から選択される。
【0041】
抗体または断片は、ビーズ、表面または組織培養容器などの固相上に提供することもできる。
【0042】
抗体またはその断片は、抗原への抗体またはその断片の結合を検出するための標識を含むこともできる。
【0043】
抗体および断片は、医用画像診断における使用のために標識されてもよい。このような方法は、67Cu、90Y、124I、125I、131I、186Re、188Re、211At、212Biを含む放射性同位体などの標識または造影剤の化学的結合、許容される担体に含まれる標識された抗体または断片の対象への投与、およびin vivoにおける標的部位での標識された抗体または断片の撮像を伴う。放射線標識された抗体またはその断片は、本明細書に記載される癌のin vivo撮像に特に有用であり得る。
【0044】
抗体は、当業者に知られた方法によって精製することができる。精製方法には、特に、選択的沈殿、液体クロマトグラフィー、HPLC、電気泳動、クロマト分画、および様々なアフィニティー技術が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている抗体はまた、抗体の多量体形態を含んでもよい。例えば、本発明の抗体は、単量体の免疫グロブリン分子の抗体の二量体、三量体、または高次多量体の形態をとってもよい。
【0046】
抗体の架橋は、当該技術分野において知られている様々な方法を介して行うことができる。例えば、抗体の架橋は、抗体の自然な凝集、化学的もしくは組換えの連結技術、または当該技術分野において知られている他の方法を介して達成されてもよい。例えば、精製された抗体の調製物は、抗体のホモ二量体、および他の高次の抗体の多量体を含むタンパク質凝集体を自然に形成することができる。特定の実施形態では、対象とする抗体に結合させるための二次抗体の使用による抗体の架橋を用いて、ホモ二量体を形成することができる。架橋剤となる抗体は、対象とする抗体と比較して、異種の動物由来であり得る。例えば、ヤギ抗マウス抗体(Fab特異的)は、ホモ二量体を形成するためのマウスモノクローナル抗体に添加されてもよい。この二価架橋剤の抗体は、ホモ二量体を形成する、対象とする2つの抗体のFabまたはFc領域を認識する。
【0047】
あるいは、抗体ホモ二量体は、当該技術分野において知られている化学的連結技術を介して形成されてもよい。化学的架橋剤は、ホモまたはヘテロ二機能的であり得て、ホモ二量体を形成する2つの抗体を用いて共有結合する。いくつかの実施形態では、化学的架橋剤は、抗体の抗原結合領域と相互作用しないことが望ましく、それは、化学的架橋剤が抗体の機能に影響を及ぼす場合があるからである。当業者に認識されるように、抗体は、Fab領域で架橋することができる。
【0048】
一実施形態では、ATP非結合性(すなわち、非機能的)P2X7受容体、その単量体または断片への上述した抗体またはその断片の結合によって形成される免疫複合体が提供される。一実施形態では、上述したペプチドへの抗体またはその断片の結合によって形成される免疫複合体が提供される。
【0049】
一般に、他に抗原-抗体複合体として知られている免疫複合体は、抗体を生成させる抗原上のエピトープへの抗体結合部位を介した抗体の結合によって形成される産物である。この複合体は、1を超える抗体からなっていてもよく、またはそうでなくてもよい。
【0050】
免疫複合体は、このin vitroまたはin vivo検出が前癌状態および新生組織形成を含む疾患または状態の存在、またはそれらへのかかりやすさを示すために特に重要である。これらの検出方法は、以下により詳細に説明される。
【0051】
免疫複合体に含まれるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片は、シス異性体のPro210を有していてもよい。
【0052】
免疫複合体に含まれるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片は、配列番号4〜9のいずれか1つのアミノ酸配列またはその断片を有していてもよい。
【0053】
免疫複合体に含まれるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片は、約15〜80kDaの範囲の分子量を有していてもよい。
【0054】
免疫複合体に含まれるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片は、膜貫通ドメインを欠損していてもよい。
【0055】
免疫複合体は、細胞表面の膜上、細胞質、核または細胞外体液に位置されるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に結合することによって形成されてもよい。細胞外体液は、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、精液、唾液、痰、腹水、排泄物、子宮および膣分泌物、胆汁、羊水、脳脊髄液ならびに器官および組織フラッシング液(flushing)であってもよい。
【0056】
免疫複合体に含まれる抗体または抗体断片は、固相、例えばビーズまたはプレートに結合されてもよく、その結果、免疫複合体は、形成した場合に固相に結合される。あるいは、免疫複合体に含まれるATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片は、固相に結合されてもよい。
【0057】
抗体は、免疫複合体の形成を検出するために標識されてもよい。
【0058】
免疫複合体は、免疫複合体の捕捉のための捕捉抗体などの抗体またはその断片をさらに含んでもよい。さらなる抗体またはその断片は抗P2X7受容体抗体に結合してもよい。また、さらなる抗体またはその断片は受容体またはその断片に結合してもよい。
【0059】
さらなる抗体またはその断片は、上述した相などの固相に結合されてもよい。
【0060】
さらなる抗体は、免疫複合体の形成を検出するために標識されてもよい。標識の例には、フルオロフォア、色素、アイソトープが挙げられる。
【0061】
ある種の実施形態では、細胞、組織または細胞外体液が、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むかどうかを決定するための方法であって、
- 上述された免疫複合体を形成するための条件で、細胞、組織または細胞外体液を抗体またはその断片と接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成されたかどうかを検出する工程
を含み、免疫複合体の検出は、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むことを決定する方法が提供される。
【0062】
他の実施形態では、細胞、組織または細胞外体液がP2X7受容体、その単量体または断片を含むかどうかを決定するための手段の製造における、上述された抗体またはその断片の使用が提供される。
【0063】
他の実施形態では、細胞、組織または細胞外体液が、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むかどうかを決定するための方法であって、
- 細胞、組織または細胞外体液においてペプチドと抗体の免疫複合体を形成するための条件で、細胞、組織または細胞外体液を上述されたペプチドと接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成されたかどうかを決定する工程
を含み、免疫複合体の検出は、細胞、組織または細胞外体液が、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に対する抗体を含むことを決定する方法が提供される。
【0064】
他の実施形態では、細胞、組織または細胞外体液が、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に対する抗体を含むかどうかを決定するための手段の製造における上述されたペプチドの使用が提供される。
【0065】
宿主細胞、組織または細胞外体液中の所定のタンパク質の存在、または所定のタンパク質の発現レベルは、いくつものアッセイによって検出することができる。例としては、免疫アッセイ、クロマトグラフィーおよび質量分析が挙げられる。
【0066】
免疫アッセイ、すなわち、免疫系の要素と関わるアッセイが特に好ましい。これらのアッセイは、一般に下記の1つに分類されてもよい:
(i)精製された抗原を用いて、宿主血清中の抗体を検出するアッセイ。例えば、精製された抗原は、吸着によって、または間接的に別の分子を介して固相に結合され、宿主血清が適用され、次に、宿主抗体の存在または不存在を検出するための別の抗体が適用される;
(ii)精製された抗原を用いて、TおよびBリンパ球などの免疫細胞を検出するアッセイ。例えば、末梢白血球は、宿主から精製され、精製された抗原とともに培養される。次に、免疫性を示す1または複数の因子の存在または不存在を検出する。他の例には、精製された抗原への曝露後の細胞増殖(リンパ球の増殖または形質転換アッセイ)を測定するアッセイ;ならびに、精製された抗原への曝露後の細胞死(アポトーシスを含む)を測定するアッセイが挙げられる;
(iii)抗原に特異的な精製された抗体を用いて宿主における抗原を検出するアッセイ。例えば、精製された抗体は、固相に結合され、次に、宿主組織が検出されるべき抗原に特異的な別の抗体によって適用される。ELISA、RIAを含むこのアプローチの多くの例がある。
(iv)精製された抗イディオタイプ抗体を用いて宿主抗体を検出するアッセイ。例えば、抗イディオタイプ抗体は、固相に吸着され、宿主血清が添加され、抗Fc抗体を添加して、抗体イディオタイプ抗体によって結合した任意の宿主抗体に結合させる。
【0067】
免疫アッセイは、in vitroまたはin vivoで適用することができる。
【0068】
一実施形態では、疾患は、典型的には、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、または白血病である。検出されてもよい癌腫には、限定されないが、前立腺癌、乳癌、皮膚癌、肺癌、頚癌、子宮癌、胃癌、食道癌、膀胱癌、および結腸癌が含まれる。
【0069】
任意の体液を用いてこれらの疾患のいずれかを検出することができるが、いくつかの体液は、ある種の疾患を検出するための体液よりも適切である場合があり、例えば尿は、前立腺癌の検出により適切であり、血液は、リンパ腫などの血液癌の検出により適切であってもよい。
【0070】
別の実施形態では、個体が癌であるかどうかを検出するための方法であって、
- 細胞、組織または細胞外体液におけるペプチドと抗体の免疫複合体を形成するための条件で、細胞、組織または細胞外体液を上述したペプチドと接触させる工程;または
- 上述した免疫複合体を形成させるための条件で、細胞、組織または細胞外体液を抗体またはその断片と接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成されたかどうかを検出する工程
を含み、免疫複合体の検出は、個体が癌であることを決定する方法が提供される。
【0071】
さらなる実施形態では、個体が癌であるかどうかを決定するための、上述した抗プリン作動性(P2X)受容体抗体もしくはその断片、または上述したペプチドの使用が提供される。
【0072】
ある種の実施形態では、癌は、前立腺癌、浸潤性乳癌、メラノーマ、腸腺癌、漿液性卵巣癌、頚部偏平上皮細胞癌、子宮内膜癌、小細胞肺癌、肝細胞癌、膀胱移行上皮癌、消化管間質腫瘍、子宮内膜間質腫瘍、下垂体癌、中皮腫、ホジキンリンパ腫および甲状腺乳頭からなる群から選択される。
【0073】
なおさらなる実施形態では、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片、またはそれに対する抗体を含むかどうかを決定するためのキットまたは組成物であって、
- 上述したペプチド;および/または
- 上述した抗体もしくはその断片;および/または
- ATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片;および、場合により
- ペプチド、抗体もしくはその断片またはATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片に結合するためのさらなる抗体;
- 上述した方法においてキットを使用するための取扱説明書
を含むキットまたは組成物が提供される。
【0074】
本発明のアッセイを実行するために必要な試薬を含むキットが提供される。キットは、1または複数の容器、例えば:(a)上述した本発明の成分の1つを含む第1の容器;および(b)洗浄試薬、抗体またはペプチドの存在を検出することができる試薬の1または複数を含む1または複数の他の容器をそれぞれが受け入れる1または複数のコンパートメントを含むことができる。
【0075】
この容器は、1つのコンパートメントから別のコンパートメントに試薬を効率的に移すことができるようになっており、その結果、試料と試薬は二次汚染せず、各容器の試薬または溶液は、1つのコンパートメントから別のコンパートメントに定量的なやり方で添加することができる。
【0076】
このキットは、典型的には、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい容器を含み、容器としては、例えばボトル、バイアル、シリンジ、および試験管を挙げることができる。ラベルは、典型的には、キットに添付され、キットの内容物を使用するための取扱説明書または他の情報を与える電子的またはコンピュータに読み込み可能な形態(例えば、ディスク、光ディスク、またはテープ)であってもよい任意の書面または記録された材料を含む。ラベルは、製剤が、選択の障害の診断または治療に有用であることを示す。
【0077】
当業者は、本発明の開示されている抗体およびペプチドが、当該技術分野において周知である確立されたキットフォーマットの1つに容易に取り込まれ得ることを容易に認識する。
【0078】
他の実施形態では、上述した抗体もしくはその断片、または上述したペプチドを、医薬として許容される担体、希釈剤または賦形剤とともに含む医薬組成物が提供される。
【0079】
本明細書中の教示に記載されている抗体またはペプチドを含む医薬組成物の調製において、当業者に明らかとなるように、様々なビヒクルおよび賦形剤ならびに投与経路を用いてもよい。代表的な製剤技術は、特に、参照により全体として本明細書に援用される、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1995年)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、Kibbe,A.H.編集、Washington DC、American Pharmaceutical Association(2000年)に教示されている。
【0080】
医薬組成物は、一般に、医薬として許容される担体、および薬理学的に有効な量の抗体もしくはペプチド、または抗体の混合物もしくはペプチドの混合物、またはその適切な塩を含むことになる。
【0081】
医薬組成物は、粉末、顆粒、液体、懸濁液、エアロゾル、固体、丸剤、錠剤、カプセル、ゲル、局所クリーム、坐剤、経皮パッチ、及び当該技術分野において知られている他の製剤として製剤化されてもよい。
【0082】
本明細書に記載されている目的のために、抗体およびペプチドの医薬として許容される塩は、有機および無機の酸および/または塩基を含む、任意の従来認識されている医薬として許容される塩を含むことが意図される。塩の例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、ならびに一級、二級、および三級アミン、低級炭化水素、例えばメチル、エチル、およびプロピルのエステルが挙げられる。他の塩には、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0083】
本明細書中で使用するとき、「医薬として許容される担体」には、医薬組成物の製剤の分野における当業者に知られている任意の標準的な医薬として許容される担体が含まれる。したがって、抗体またはペプチドは、それ自体で、医薬として許容される塩として、またはコンジュゲートとして存在し、医薬として許容される希釈剤;例えば、食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水性エタノール、またはグルコース、マンニトール、デキストラン、プロピレングリコール、オイル(例えば、植物油、動物油、合成油など)、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ゼラチン、ポリソルベート80の溶液に含まれる製剤として、または適切な賦形剤に含まれる固体製剤として調製されてもよい。
【0084】
医薬組成物は、多くの場合、1もしくは複数の緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソールなど)、静菌剤、キレート試薬、例えばEDTAもしくはグルタチオン、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、レシピエントの血液と比較して、製剤をより等張、低張もしくは弱高張にする溶質、懸濁剤、増粘剤および/または防腐剤をさらに含む。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として製剤化されてもよい。
【0085】
当業者に知られている任意の適切な担体は、本発明の組成物に使用されてもよいが、このタイプの担体は、典型的には、投与様式に依存して変更する。抗体およびペプチド組成物は、例えば、経口、鼻、粘膜、静脈、腹腔、皮内、皮下および筋内投与を含む、任意の適切な投与方法用に製剤化されてもよい。
【0086】
非経口投与については、組成物は、無菌の発熱物質不含の水、オイル、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコールまたはエタノールなどの無菌液であり得る医薬的担体とともに、生理学的に許容される希釈剤に含まれる物質の溶液または懸濁液の注射可能な投薬量として投与することができる。さらに、補助剤、例えば、湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物などが組成物に存在し得る。
【0087】
医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物、または合成源の成分であり、例えばピーナッツ油、大豆油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、およびミリスチン酸イソプロピルの非水性溶液である。抗体およびペプチドは、有効成分の持続放出を可能にするような方法で製剤化され得るデポー注射またはインプラント製剤の形態で投与することができる。例示的な組成物は、5mg/mlの抗体を含み、50mM L-ヒスチジン、150mM NaClからなり、HClでpHを6.0に調整した水性緩衝液に製剤化される。
【0088】
典型的には、組成物は、液体溶液もしくは懸濁液のいずれかの注射物質;注射前に、一例であって、限定されないが、無菌の発熱物質不含の水、食塩水、緩衝化された溶液、デキストロース溶液などを含む適切なビヒクルとともに再構成に適した固体または粉末形態として調製される。また、調製物は、乳化され、あるいはリポソームまたはポリラクチド、ポリグリコリド、もしくは共重合体などの微粒子にカプセル化され得る。
【0089】
本明細書に記載されている医薬組成物は、密封したアンプルまたはバイアルなどの単回投与量または複数回投与量の容器に存在してもよい。このような容器は、典型的には、使用まで製剤の無菌性および安定性を保つような方法で密閉される。一般に、製剤は、上記で指示されるように、油性または水性ビヒクルに懸濁液、溶液または乳液として保存されてもよい。
【0090】
あるいは、医薬組成物は、使用直前に、無菌の液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存されてもよい。
【0091】
関連した実施形態では、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片の発現によって特徴付けられる疾患を治療するための方法であって、その治療を必要とする個体に、上述した抗体もしくは断片、または上述したペプチドを提供する工程を含む方法が提供される。
【0092】
抗体または抗体断片を用いて癌細胞を免疫標的化する方法は、当該技術分野において周知である。米国特許第6,306,393号は、B細胞の悪性腫瘍の免疫療法における抗CD22抗体の使用について記載し、米国特許第6,329,503号は、蛇行した膜貫通抗体を発現する細胞の免疫標的化について記載する。本明細書に記載されている抗体(場合により細胞毒性剤にコンジュゲートされている、ヒト化もしくはヒトモノクローナル抗体またはその断片もしくは他の修飾体を含む)は患者に導入されて、抗体は癌細胞に結合し、細胞および腫瘍の崩壊を媒介し、ならびに/または細胞もしくは腫瘍の増殖を阻害することができる。
【0093】
本開示に限定することを意図しないで、このような抗体が治療効果を発揮することができる機構には、補体が媒介した細胞溶解、腫瘍抗原の生理学的機能を調節し、結合またはシグナル伝達経路を阻害し、腫瘍細胞の分化を調節し、腫瘍の血管新生因子プロファイルを変更し、免疫刺激性または腫瘍抑制サイトカインおよび増殖因子の分泌を調節し、細胞接着を調整し、ならびに/またはアポトーシスを誘導する抗体依存性細胞傷害(ADCC)1を含んでもよい。
【0094】
また、抗体は、放射性リガンドまたは細胞質毒素などの毒物または治療薬にコンジュゲートすることができ、また、腫瘍細胞に直接的に毒物または治療薬を治療的に送達するために用いられてもよい。
【0095】
本明細書における「治療」とは、疾患、障害または望ましくない状態に対する治療的もしくは予防的処置、または抑制手段を意味する。治療は、疾患の重傷度を減らし、疾患の進行を止め、または疾患を排除するための、疾患症状の開始前および/または疾患の臨床症状、または他の症状後の、適切な形態の対象抗体の投与を包含する。
【0096】
疾患の予防は、好ましくは疾患に対する感受性が増加した対象において、障害または疾患の症状の開始を長引かせるかまたは遅延させることを含む。
【0097】
治療調製物は、非修飾抗体、または抗体の機能的に依存する毒素もしくは細胞傷害性分子などの治療化合物とコンジュゲートされた抗体を用いることができる。一般に、非修飾抗体を用いる場合、それらの抗体は、典型的には機能的Fc領域を有する。本明細書において「機能的Fc領域」とは、Fc受容体、特にFcγR(例えば、FcγR1、RIIA、RIIB、RIIIA、RIIIB)への結合などのFcの生物学的機能をもたらすための最小配列を意味する。
【0098】
理論にとらわれずに、Fc領域は、Fc受容体に免疫エフェクター細胞を結合すること、ならびに細胞を媒介した細胞毒性、エンドサイトーシス、ファゴサイトーシス、炎症性サイトカインの放出、補体介在細胞毒性、および抗原提示を調節することによって抗腫瘍モノクローナル抗体の効果に影響を及ぼす場合があると考えられている。この点において、ポリクローナル抗体、またはモノクローナルの混合物が好適であり、それは、それらが異なるエピトープに結合し、したがって、単一のモノクローナル抗体を用いた場合と比較して、細胞表面上のFcがより高密度であるためである。当然に、枯渇している標的細胞におけるそれらの効果を増大させるために、または非修飾抗体が治療的に効果的でない場合、毒素または細胞毒性薬にコンジュゲートされた抗体を用いてもよい。
【0099】
抗体組成物は、従来の治療の有効性を増加させるかまたは抗体によって標的化されない異常細胞を標的にするために単独でまたは他の治療薬とともに用いてもよい。抗体治療法と、化学療法、放射線または外科的治療計画を組み合わせることは、化学療法的治療を受け入れなかった患者において実施されてもよく、抗体治療を用いた処置は、1または複数の化学療法を受け入れた患者に対して指示されてもよい。さらに、抗体治療はまた、特に化学療法剤の毒性をあまり寛容しない患者において併用化学療法の減少した投薬量の使用を可能にする。さらに、化学療法薬に耐性である腫瘍を有する癌患者への抗体による治療は、組み合わせたこれらの薬物への感受性および応答性を誘導する場合がある。
【0100】
一局面では、抗体は、一例ではあって、限定されないが、補助的にブスルファン、チオグアニン、イダルビシン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびヒドロキシウレアを含む治療用細胞毒性薬ともに用いられる。抗体治療に対する補助剤として有用な他の薬物は、疾患状態に見出される異常な細胞分子に特異的に指向される化合物である。これらの薬物は疾患特異的である。例えば、BCR-ABL活性から生じる慢性骨髄性白血病を治療するために、有用なある化合物類は、ablキナーゼ活性の阻害であり、例えばイマチニブ、bcr-ablキナーゼの阻害剤、およびbcrに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、オブリメルセン)が挙げられる。他の薬物には、特に、インターフェロン-アルファ、ヒト化抗CD52、デアセチラーゼ阻害剤FR901228(デプシペプチド)などが含まれる。
【0101】
治療効果を達成するために必要とされる組成物の量は、特定の目的のための従来の手法に従って経験的に決定される。一般に、治療目的のためにエクスビボまたはin vivoにおける組成物の投与について、組成物は薬理学的に有効な投薬量で与えられる。「薬理学的に有効な量」または「薬理学的に有効な投薬量」とは、特に障害または疾患状態を治療または再治療するために、障害または疾患の1または複数の症状または兆候を減らすかまたは排除することを含む、所望の結果をもたらすことができる所望の薬理学的効果または量を生じさせるのに十分な量である。
【0102】
例として、前立腺癌を被っている患者への抗体の投与は、基礎疾患が根絶するかまたは改善される場合だけでなく、患者が疾患と関連した症状の重傷度または期間の減少を報告する場合も治療的恩恵を与える。また、治療的恩恵には、改善が実現されたかどうかに関係なく、基礎疾患または障害の進行を長引かせるかまたは遅延させることを含む。
【0103】
宿主に投与される量は、何が投与されているのか、投与の目的、例えば予防または治療、宿主の状態、投与方式、投与回数、投与間の間隔などに依存して変更する。これらは、当業者によって経験的に決定することができ、治療応答の及ぶ範囲に調整されてもよい。適切な投薬量の決定に考慮すべき因子は、限定されないが、対象のサイズおよび体重、対象の年齢および性別、症状の重症度、疾患の段階、薬物の送達方法、薬物の半減期、ならびに薬物の有効性が挙げられる。考慮されるべき疾患の段階は、疾患が急性または慢性であり、再発期または軽減期、および疾患が進行性であるのかどうかを含む。治療的に有効な量のための投薬量および投与時間の決定は、十分に当業者の範囲内である。
【0104】
本開示のいずれかの組成物について、治療的に有効な投薬量は、当該技術分野において周知である方法によって容易に決定される。例えば、初期の有効な投薬量は、細胞培養または他のin vitroのアッセイから推定することができる。例えば、Sliwkowsky,MXら、Semin.Oncol.26.suppl.12)60〜70頁(1999年)は、細胞毒性に依存した抗体のin vitro測定を記載する。次に、投薬は動物モデルに処方され、細胞培養アッセイによって測定されるIC50を含む血中濃度または組織濃度を生じさせることができる。
【0105】
さらに、毒性および治療有効性は、一般に、細胞培養アッセイおよび/または実験動物によって、典型的にはLD50(試験群の50%に対する致死投薬量)およびED50(試験群の50%における治療的有効性)を決定することによって測定される。毒性と治療的有効性の投薬量比は治療指標である。個別にまたは組み合わせて、高い治療指標を示す組成物が好ましい。有効量の決定は、十分に当業者の範囲内であり、特に、本明細書において提供される詳細な開示が与えられる。また、助言は、標準的な参考文献、例えば、FinglおよびWoodbury、General Principles In:The Pharmaceutical Basis of Therapeutics 1〜46頁(1975年)、およびそこに引用されている参考文献に見出される。
【0106】
初期の寛容投薬量を達成するために、抗体がヒトおよびヒト以外の霊長類において免疫原性であり得る可能性について考慮される。免疫応答は、生物学的に有意であってもよく、例えばキメラ抗体またはヒト化抗体の場合に、ヒト免疫グロブリン配列から部分的または主に構成されるとしても、抗体の治療的有効性を損なう場合がある。
【0107】
ある種の実施形態では、初期に高い投薬量の抗体が投与され、その結果、治療用抗体へのある程度の免疫学的寛容が達成される。
【0108】
寛容投薬量は、関係する前駆細胞に特異的な抗体の繰り返し投与に対する抗体応答の誘導を妨げるかまたは減らすには十分である。
【0109】
寛容投薬量のための好ましい範囲は、10mg/kg体重〜50mg/kg体重(両端を含む)である。寛容投薬量に対するより好ましい範囲は20〜40mg/kg(両端を含む)である。寛容投薬量に対するさらにより好ましい範囲は、20〜25mg/kg(両端を含む)である。
【0110】
これらの治療計画では、治療的に有効な抗体の投薬量は、好ましくは0.1〜10mg/kg体重(両端を含む)の範囲で投与される。より好ましい第2の治療的に有効な量は、0.2〜5mg/kg体重(両端を含む)の範囲内である。なおより好ましい治療的に有効な投薬量は、0.5〜2mg/kg(両端を含む)の範囲内である。代替の実施形態では、その後の治療的投薬(単数または複数)は、寛容投薬として同じであるかまたは異なった製剤に含まれてもよく、および/または寛容投薬として同一であるかまたは異なった経路によって投与されてもよい。
【0111】
本発明の目的のために、投与方法は、試験される状態、対象抗体の形態、および医薬組成物に依存して選ばれる。
【0112】
抗体組成物の投与は、様々な方法において行うことができ、限定されないが、連続的、皮下、静脈内、経口、局所、経皮、腹腔内、筋内、および膀胱内が挙げられる。例えば、微粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセル製剤は、経口、筋内、または皮下投与に有用である。さらに、リポソームおよびナノ粒子は、静脈内投与に適している。医薬組成物の投与は単一経路を介してもよく、または同時にいくつかの経路によってもよい。例えば、腹腔内投与は静脈内注射を伴うことができる。好ましくは、治療的投薬は、静脈内、腹腔内、筋内、または皮下に投与される。
【0113】
組成物は、1回または複数回投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、特に、治療されるべき適応症、および処方医師の判断に依存して、1日1回、1日に数回もしくは複数回、または1日にさらに複数回投与されてもよい。
【0114】
また、組成物の投与は、当業者に周知である、持続放出または長期送達法を介して達成されてもよい。「持続放出」または「長期放出」とは、本明細書中で使用するとき、送達システムが、1日を超えて、好ましくは1週間を超えて、最も好ましくは少なくとも約30日〜60日間、またはより長期間、薬学的治療量の対照化合物を投与することを意味する。長期間放出システムは、抗体を含む移植可能な固体またはゲル、例えば上述された生分解性ポリマー;蠕動ポンプおよびフルオロカーボン高圧ガスなどのポンプ;浸透性ポンプおよびミニ浸透性ポンプなどを含んでもよい。
【0115】
本発明の方法は、単一のモノクローナル抗体、およびこれらの抗体によって認識される特定抗原を認識する任意の抗体、ならびに異なるmAbの組合せの投与を意図する。2またはそれを超えるモノクローナル抗体は、単一の抗体と比較して改善された効果を提供してもよい。あるいは、抗体と、異なる抗原に結合する抗体の組合せは、単一の抗体と比較して改善された効果を提供してもよい。このようなmAbカクテルは、異なるエフェクター機構を発揮するか、または細胞傷害性mAbと免疫エフェクター機能的に依存するmAbとを直接的に組み合わせたmAbを含むため、ある種の利点を有する場合がある。組み合わせたこのようなmAbは、相乗的治療効果を示す場合がある。
【0116】
本明細書に開示され、定義された発明は、テキストおよび図面に言及され、またはそれらから明らかな2またはそれを超える個々の特徴のあらゆる選択的な組合せに拡張する。これらの異なる組合せのすべては、本発明の様々な選択的な局面を構成する。
【0117】
以下のプロトコールは、本発明を説明することを目的として、非限定的な例として提供される。
【実施例】
【0118】
(実施例1)
抗非機能的P2X7抗体は、ヒトP2X7タンパク質のアミノ酸297〜313を示すKYYKENNVEKRTLIKVF(配列番号2)、すなわちLys-Tyr-Tyr-Lys-Glu-Asn-Asn-Val-Glu-Lys-Arg-Thr-Leu-Ile-Lys-Val-Pheに対するものであった。このペプチドは、固相化学(Mimotopes Pty Ltd、Melbourne、Australia)によって合成され、質量分析によれば高純度(>95%)であることが分かった。C末端のCys(C)残基をこの配列に結合させ、架橋剤MCS(6-マレイミド-カプロン酸 H-ヒドロキシスクシンイミドエステル)をこの配列に結合させて、Mimotopesによって提供される、個別にジフテリアトキソイド、ウシ血清アルブミンおよびオボアルブミンを含む担体タンパク質にこのペプチドをコンジュゲートさせた。
【0119】
(実施例2)
10〜12週齢の雌性ニュージランド白ウサギを以下のスケジュールに従って免疫した。
【0120】
第1日目に、各ウサギに、ジフテリアトキソイドにコンジュゲートされた200μgのP2X7エピトープを投与した(全抗原重量は約500μgのコンジュゲートされたエピトープである)。このコンジュゲートされたペプチドは、安定な溶液としてMimotopes Pty Ltdによって供給された。
【0121】
エピトープコンジュゲートを滅菌PBSで希釈して、500μg/0.8ml PBSの濃度にした。これに、0.1mlのDEAE/デキストラン/QUILA(商標)溶液(2.5g QUILA(商標)+25mg DEAE/デキストラン/mL PBS)および1.2mLのMontanide 15A50Vを添加した。この溶液は、ガラス製ルアーロック(luerloc)シリンジおよび狭径のルアーロックカップリングを用いて乳化された。
【0122】
動物に、各々、複数の皮下および筋内部位に2mlのエピトープアジュバント乳液を注射した。
【0123】
最初の注射から6週間および9週間後に上記を繰り返した。第10週で、DTをコンジュゲートされたP2X7エピトープの50μgを含む1mlの滅菌PBSをウサギに静脈内に注射した。4日後、ウサギから採血し、抗体を含む血清をその後の分析用および免疫アッセイにおける使用のために保存した。
【0124】
(実施例3)
0.2mLのエピトープアジュバント乳液中の20μgのP2X7エピトープ(約50μgのDTコンジュゲート)でマウスを注射したことを除いて、実施例2の手法を用いた。
【0125】
静脈注射してから4日後、マウス血液の抗体力価を測定し、最大力価のマウスをハイブリドーマ融合用の脾臓ドナーとして選択した。
【0126】
(実施例4)
上記で選択したマウスを脾臓細胞ドナーとして用い、これらの細胞をマウスSP20骨髄腫細胞と融合させて、KohlerおよびMilsteinによって記載されたオリジナルプロトコールを改変させた96ウェルプレート用フォーマットに従って、ハイブリドーマ細胞株を樹立した。
【0127】
細胞株は、特定のP2X7エピトープに特異的な抗体の安定性および産生用に選択された。
【0128】
(実施例5)
標的エピトープに対する適切な高親和性を有するモノクローナル抗体をIHC研究のために選択した。抗体の結合特性は、Biacore装置上で標的エピトープの相互作用を測定することによって試験した。結合の全550共鳴単位は、速度が遅いことを示す60秒のローディング時間で達成された。ローディングの停止に伴い、続く10分以上結合が測定できないほどに減少したので、非常に遅い速度であることが確認できた。
【0129】
(実施例6)
非機能的受容体を発現している、固定され、および透過性にされたC11STH細胞へのモノクローナル抗体の結合をフローサイトメーター(Becton-Dickenson)上でAlexa-488標識を用いて行った。陰性の対照が1.9であったのと比較して、平均値は90.8であった。また、固定されていない生存細胞の表面上の受容体へのモノクローナル抗体の結合を評価した。陰性の対照が0.34であったのと比較して、平均値は5.8であった。
【0130】
(実施例7)
固定された細胞に関して、標準的な蛍光抗体染色および共焦点顕微鏡を以下のように用いた。48ウェルプレート内の、ポリ-L-リジンで被覆したガラス製カバースリップ上に固定された細胞を、pH7.5のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の20%の正常なウマ血清とともに20分間インキュベートし、PBSで5分間洗浄し、次に一次抗体とともに30分間インキュベートし、PBSで5分間洗浄し、最後に、蛍光標識した二次抗体(Jackson Immunologics)を用いて30分間標識した。次に、細胞をPBSで2回洗浄(2×5分間)し、その後、50%グリセロールのPBS中にあるスライド上でカバースリップを積層した。1.0にセットしたピンホールを有するLeica TCS NT UVレーザー共焦点顕微鏡システムを用いて細胞を視覚化した。マウスのアイソタイプ対照抗体は、陰性の対照として、規定通り使用し、染色は示さなかった。P2X7でトランスフェクトされたHEK293細胞のウェスタンブロットは、トランスフェクトされていない細胞およびエピトープで前処理されたホモジネートの試料中には存在しない、約75kDaの単一バンドを示した。細胞のタンパク質抽出物(30μg)および分子量マーカーは、ドデシル硫酸ナトリウムのポリアクリルアミノドゲル(8〜16%)(Novex)上で分画された。タンパク質は、イモビロン-Pメンブレン(Millipore)上で電気ブロットされた。ウェスタンブロットは、ECL-ケミルミネッセンスシステム(Amersham)を用いて発色させた。
【0131】
(実施例8)
全体で25の異なる症例の乳癌、25症例の皮膚癌、および25症例の前立腺癌を免疫組織化学法によって調べた。赤血球細胞に存在する機能的受容体と非機能的受容体抗体との間の交差反応性はなかった(データ示さず)。
【0132】
前立腺癌、in situの腺管癌に代表される乳癌、およびメラノーマを含む癌組織の例をすべて、非機能的P2X7について染色した。隣接する腫瘍を含まない正常組織における上皮は受容体を欠き、すべての癌症例は受容体について染色した。
【0133】
これらの組織および他の組織由来の癌細胞株は、他、同様に受容体を発現することが見出された。試験され、陽性であることが分かった例には、ADDP、PC3、LNCap、MCF7、MDA-MB-235、MDA-MB-431、NCIH460、NCIH69、NCIH596、DU145、ACHN、786-O、Hep3B2、C11STHおよびBT474が挙げられる。類似した発現パターンは、それぞれ卵巣ADDPおよび肺NCIH69の腫瘍の異種移植片に見られた。非機能的P2X7受容体は、癌の最も進行した段階にある、相応するわずかな残りの細胞質受容体を含む原形質膜上に見出された。対照的に、低悪性度の腫瘍は、受容体の大部分が細胞内に残存している多数の細胞を示した。疾患進行の経過全体で、原形質膜への非機能的アポトーシス受容体の進行的な輸送は、癌細胞株が、大部分が細胞内にあるというよりはむしろ、細胞膜上に非機能的P2X7受容体を提示することを示している。
【0134】
正常な上皮組織は非機能的受容体を欠き、一方で癌組織はすべてが標識される。浸潤性ならびにin situの小葉および腺管癌の両方を含む異なる乳癌を試験した。すべてのタイプは、非機能的受容体を発現した。これらおよび他の正常な非癌性組織、例えば、腸、膀胱、卵巣、子宮、頚部、胃および肺における上皮細胞は非機能的受容体を欠いていることが見出された。
【0135】
また、前立腺の腫瘍を取り囲む形態学的に正常な組織の領域は、腫瘍細胞が、結合した管周辺の正常な上皮に影響を及ぼし、それによってこれらの細胞に発達している腫瘍の存在を警戒させる領域効果と一致した受容体を発現した。それに応じて、これらの細胞は受容体を配置し始め、初期には全体的に細胞内に局在させるが、最終的には原形質膜上に配置する。
【0136】
乳癌、皮膚癌および前立腺癌の試料に加えて、上皮細胞癌の他の例は、そのすべてが非機能的P2X7を発現し、腸の腺癌、侵襲性卵巣癌、頚部扁平上皮細胞癌、子宮の子宮内膜癌腫、小細胞肺癌、肝細胞癌腫、膀胱の移行上皮癌腫および腺癌を有するバレット粘膜を含む。
【0137】
また、非上皮細胞源のヒト癌を調べた。すべては、非機能的P2X7受容体を発現することが見出された。間葉系癌の例には、胃腸間質腫瘍および子宮内膜間質腫瘍が挙げられる。同様に、ユーイング肉腫などのこの細胞型由来の他の腫瘍は受容体を発現し、乏突起膠腫および星状細胞腫などの脳腫瘍も発現し、下垂体癌腫も発現する。また、中皮腫、胸膜細胞由来の癌は非機能的受容体を発現し、マントル細胞リンパ腫などの血液細胞由来の固形癌も発現する。ホジキンリンパ腫および甲状腺乳頭が例である。
【0138】
ヒトの癌と、イヌおよびネコの前立腺、乳房および皮膚などの他の哺乳動物の癌と、マウスのメラノーマとの交差性は、ヒト受容体に対するのと同じ抗体を用いて観察された。これらの観察は、癌細胞標的が普遍的であるという結論に重要性を付加する。
【0139】
(実施例9)
受容体発現が癌の潜在的な形態と攻撃的な形態の相違に潜在性を与える腫瘍悪性度とともに変化することが指示される。確かに、非常にゆっくりと成長している低悪性度の前立腺癌は、ほぼ全体的に細胞内にある受容体発現のパターンを示し、侵襲性前立腺癌の症例は、より多くの原形質膜および筋上皮細胞ラベリング、ならびに有意に増加した受容体密度を示す。
【0140】
低悪性度および臨床的に重要でない前立腺癌は、正常な上皮の周辺領域の出現によって、臨床的に重要な前立腺癌から識別され得る。臨床的に重要な癌には、前立腺基質内に広がり、転移する可能性がある癌が含まれる。経直腸的超音波(TRUS)によってガイドされた針生検を伴う腫瘍の直接的サンプリングは、臨床的に有意な腫瘍を検出してもよく、したがって診断を容易にさせる。現存の腫瘍が、低悪性度(例えばグリソン3+3)である領域であって、他の領域(例えばグリソン3+4)がない症例では、非機能的P2X7受容体についての染色は、前立腺においてサンプリングされた正常な形態学の領域が受容体発現および筋上皮染色の強度レベルを示すことを表し、転移している組織の存在を指示する。針が届かない先端葉に限定される腫瘍などの腫瘍がまったくない症例でさえ、腫瘍から周辺上皮に広まる領域効果が病理学者に腫瘍の存在およびあり得る悪性度を警戒させるため、腫瘍の存在および状態が容易に検出される。
【0141】
(実施例10)
異形組織は診断が困難であり、異形成のバレット粘膜などの状態はモニターされる必要があり、組織が腺癌に形質転換する傾向がある。良性を維持する異形組織と、再度の差し迫った形質転換の極度の危険性がある組織の相違は、非機能的P2X7受容体発現の劇的なアップレギュレーションを示す関連した筋上皮染色の存在に集中する。類似の結果が、大腸炎などの他の異形な腸状態について観察された。異形のバレットの組織試料では、良性状態を指示する染色はなく、強い筋上皮染色を有する試料は、関連した腺癌を有する対象を特定した。
【0142】
また、頚部上皮内癌(CIN)の悪性度1〜3を含む悪性形質転換の初期症例は、受容体発現レベルの上昇を示し、卵巣漿液性境界などの症例は良性(非染色)であるとして分類され、形質転換体(濃い上皮染色)に移行する症例である。
【0143】
上記の結果は、配列KYYKENNVEKRTLIKVFの1または複数のアミノ酸を含むエピトープが上皮癌組織および細胞の幅広い選択に対して発現を有することを示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 図2に示される配列からなるペプチド;
- 図2に示される配列内の配列からなるペプチドであって、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させる免疫原として有用であるペプチド;
- 図3に示される配列からなるペプチドであって、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させる免疫原として有用であるペプチド;または
- 図3に示される配列内の配列からなるペプチドであって、ATP非結合性P2X7受容体に選択的に結合することができるが、ATP結合性P2X7受容体に結合することができない抗体を生成させる免疫原として有用であるペプチド。
【請求項2】
- 上述したペプチドに結合することができる;または
- 図2に示される配列を有するペプチドの1または複数の残基を含むエピトープに結合することができる
抗体またはその断片。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドへの抗体またはその断片の結合によって形成される免疫複合体。
【請求項4】
ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片への請求項2に記載の抗体の結合によって形成される免疫複合体。
【請求項5】
細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むかどうかを決定するための方法であって、
- 請求項4に記載の免疫複合体を形成する条件で、細胞、組織または細胞外体液を抗体またはその断片と接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成したかどうかを検出する工程
を含み、免疫複合体の検出は、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片を含むことを決定する、方法。
【請求項6】
細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に対する抗体を含有するかどうかを決定するための方法であって、
- 請求項3に記載の免疫複合体を形成する条件で、細胞、組織または細胞外体液をペプチドと接触させる工程;および
- 免疫複合体が形成したかどうかを検出する工程
を含み、免疫複合体の検出は、細胞、組織または細胞外体液がATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片に対する抗体を含むことを決定する、方法。
【請求項7】
細胞、組織または細胞外体液が、ATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片、またはそれらに対する抗体を含有するかどうかを決定するためのキットまたは組成物であって、
- 請求項1に記載のペプチド;および/または
- 請求項2に記載の抗体または断片;および/または
- ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片;および場合により
- 前記ペプチド、抗体もしくはその断片、またはATP非結合性P2X7受容体、その単量体もしくは断片に結合するさらなる抗体;場合により
- 請求項6または7に記載の方法においてキットを使用するための取扱説明書
を含む、キットまたは組成物。
【請求項8】
請求項2に記載の抗体もしくはその断片、または請求項1に記載のペプチド、および医薬として許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
ATP非結合性P2X7受容体、その単量体または断片の発現によって特徴付けられる疾患を治療するための方法であって、前記治療を必要とする個体に、請求項2に記載の抗体もしくはその断片、または請求項1に記載のペプチドを提供する工程を含む、方法。

【公表番号】特表2010−539103(P2010−539103A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524309(P2010−524309)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001364
【国際公開番号】WO2009/033233
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510069984)バイオセプター・インターナショナル・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】