説明

新規UV硬化性樹脂組成物

【課題】遅延硬化剤を使用することなく十分な可使時間を確保でき、かつ透明性および物性に優れたUV硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】紫外線(UV)で硬化されるUV硬化性樹脂組成物であって、多官能エポキシ樹脂を30〜95質量部、炭素数7〜20の長鎖炭化水素骨格を有する単官能エポキシ化合物を5〜70質量部含有することを特徴とする、UV硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延硬化性を有する新規なUV硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いた接着剤および封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明接着剤として、熱エネルギーによらず紫外線(UV)で硬化するUV硬化性樹脂組成物が広く用いられている。このようなUV硬化性樹脂組成物は、光ピックアップ部品やカメラモジュール部品等の光学部品の接着剤や、PDP(Plasma Display Panel),LCD(Liquid Crystal Display)等に用いられるディスプレイ封止材として好ましく用いられうる。
【0003】
ところが、UV硬化性を有する一般的なエポキシ樹脂組成物では、光(UV)を照射してから硬化するまでの時間、すなわち可使時間が短いという問題があった。このような可使時間の短い硬化性樹脂組成物を電子部品等の接着を行う場合、電子部品等の被着体と硬化性樹脂組成物とをあわせてから光を照射する必要があるが、強い光によって電子部品等が劣化してしまう場合がある。
【0004】
これに対し、硬化性樹脂組成物の可使時間を延長する方法としては、ポリエーテル系やポリオール系の硬化遅延剤を用いる方法が報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これは、添加された硬化遅延剤が光照射時に開始剤から発生される酸をトラップし、カチオン重合反応の開始を遅らせる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−298888号公報
【特許文献2】特開2010−21183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に記載されているような一般的な硬化遅延剤をUV硬化性樹脂組成物に配合すると、白濁して組成物全体の透明性が低下して、光学用途にもちいることができなくなるものもある。また、電子部品等のアライメント調整などの必要性から可使時間を長くするために硬化制御剤の使用量を増やすと、樹脂硬化物の物性に悪影響を及ぼし、好ましくないという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、従来、反応性制御剤を遅延硬化剤として使用することなく、十分な可使時間を確保できるUV硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、前記樹脂組成物を用いた接着剤および封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の手段により前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0010】
紫外線(UV)で硬化されるUV硬化性樹脂組成物であって、多官能エポキシ樹脂を30〜95質量部、炭素数7〜20の長鎖炭化水素骨格を有する単官能エポキシ化合物を5〜70質量部含有する、UV硬化性樹脂組成物。
【0011】
上述したUV硬化性樹脂組成物において、さらに多官能オキセタン樹脂を含有し、前記多官能エポキシ樹脂と多官能オキセタン樹脂とを合計で30〜95質量部含有し、前記単官能エポキシ化合物を5〜70質量部含有する、UV硬化性樹脂組成物。
【0012】
多官能オキセタン樹脂の配合量が1〜30質量部である、前記UV硬化性樹脂組成物。
【0013】
多官能エポキシ樹脂が2官能エポキシ樹脂である、前記UV硬化性樹脂組成物。
【0014】
上述したUV硬化性樹脂組成物からなる、光学部品用接着剤。
【0015】
上述したUV硬化性樹脂組成物からなる、有機EL素子用封止材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遅延硬化剤を含有しなくとも十分な可使時間を有するUV硬化性樹脂組成物を提供することができる。本発明に係るUV硬化性樹脂組成物は作業性に優れ、またその樹脂硬化物は、使用環境温度変化によらず優れた接着性を維持することができ、透明性等の物性に優れている。また、本発明に係るUV硬化性樹脂組成物を用いる接着剤および封止材は塗布性に優れ、UVを照射させて半硬化させてから、接着又は封止を行うことができるため、例えば、貼り合わせ工程を含む場合等に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のUV硬化性樹脂組成物は、紫外線(UV)で硬化されるUV硬化性樹脂組成物であり、多官能エポキシ樹脂を30〜95質量部、炭素数7〜20の長鎖炭化水素骨格を有する単官能エポキシ化合物を5〜70質量部含有することを特徴とする。
【0018】
このような構成を有することにより、遅延硬化剤を添加することなく、遅延硬化性を有するUV硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
以下、本発明に係るUV硬化性樹脂組成物の実施形態について詳しく説明する。
【0020】
(多官能エポキシ樹脂)
本実施形態において使用できる多官能エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定はされず、固形状のものであっても液状のものであってもよい。具体的には、例えば、ポリブタジエンエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ、グリシジルアミン型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物などのアルコール型エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、異節環状型エポキシ化合物、多官能性エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン化エポキシ化合物、ゴム変成エポキシ化合物、ウレタン変成エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル化合物、エポキシ基含有ポリウレタン化合物、エポキシ基含有アクリル化合物等が挙げられる。なかでも、光カチオン重合性がより高く、少ない光量でもより効率的に光硬化が進行することから、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
なお、硬化収縮応力が小さく、硬化物の被着体に対する密着力が高いという観点からは、上述したエポキシ樹脂の中でも、2官能エポキシ樹脂を用いることが好ましい。さらに、透湿性・吸湿性・温度依存性が低く、また熱応力が小さいために冷熱サイクルテストなどの信頼性試験に有効であるという観点からは、ポリブタジエンエポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
【0022】
これらのエポキシ系化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物中の多官能エポキシ樹脂の配合量は、多官能エポキシ樹脂と後述する単官能エポキシ化合物との合計量100質量部に対して、通常、30〜95質量部であり、好ましくは35〜90質量部である。多官能エポキシ樹脂の配合量が30〜95質量%の間であれば、適度な遅延硬化性を有するUV硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
(単官能エポキシ化合物)
本実施形態において使用できる単官能エポキシ化合物は、炭素数7〜20の長鎖炭化水素骨格を有する単官能エポキシ化合物(以下、単に長鎖単官能エポキシ化合物ともいう)であれば特に限定はされない。
【0025】
このような長鎖単官能エポキシ化合物を用いることによって、従来のような遅延硬化剤を用いることなく、遅延硬化性を有するUV硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
本実施形態において使用できる単官能エポキシ化合物は、鎖中・もしくは鎖末端に1つのエポキシ基を有する炭素数7〜20の炭化水素骨格の化合物であれば得に限定されない。具体的には、例えば、三菱化学社の「YED111AN」、「YED111N」、「YED188」、新日本理化社の「リカレジン L−200」、ナガセケムテックス社の「EX−121」「EX−192」等を用いることができる。
【0027】
なかでも、粘度と遅延硬化性の調整しやすさの面から、炭素数11〜15の炭化水素骨格を有する単官能エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物中における、長鎖単官能エポキシ化合物の配合量は、上述したような多官能エポキシ樹脂と単官能エポキシ化合物との合計量100質量部に対して、通常、5〜70質量部であり、好ましくは10〜65質量部である。
【0029】
長鎖単官能エポキシ化合物の配合量が5〜70質量部の範囲であれば、十分な遅延硬化性が得られ、かつ一定の時間が経過した後に樹脂組成物が硬化する。
【0030】
(多官能オキセタン樹脂)
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物は、さらに多官能オキセタン樹脂を含有していてもよい。多官能オキセタン樹脂は、UV硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進する働きを有するため、遅延硬化性を有しつつ、適度な硬化反応性を確保したい場合等に、UV硬化性樹脂組成物の硬化性を調整できると考えられる。
【0031】
本実施形態において使用できる多官能オキセタン樹脂は、1分子中に2個以上のオキセタン基(環)を有するものであれば特に限定なく用いることができる。
【0032】
多官能オキセタン樹脂は市販のものを使用することもでき、例えば、東亜合成社のオキセタンシリーズ「OXT121」、「OXT221」等が挙げられる。その他には、オキセタン変性シリコーン等を使用することもできる。
【0033】
なかでも、粘度調整のしやすさ・揮発しにくさのバランス取りのしやすいものを用いることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物が多官能オキセタン樹脂を含有する場合、UV硬化性樹脂組成物中のその配合量は、上述したような多官能エポキシ樹脂と単官能エポキシ化合物と多官能オキセタン樹脂との合計量100質量部に対して、上述した多官能エポキシ樹脂と多官能オキセタン樹脂とが、合計で30〜95質量部となるように配合するのが好ましい。
【0035】
さらに好ましくは、上述したような多官能エポキシ樹脂と単官能エポキシ化合物と多官能オキセタン樹脂との合計量100質量部に対して、多官能オキセタン樹脂を1〜30質量部、より好ましくは3〜10質量部となるように配合する。
【0036】
このような範囲で多官能オキセタン樹脂を配合することにより、UV硬化性樹脂組成物の硬化反応速度を適度に調整することが可能となる。
【0037】
(その他の成分・製造方法など)
さらに、本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有していてもよい。本実施形態において使用可能な光重合開始剤としては、光照射によってUV硬化性樹脂組成物のエポキシ基(及び、場合によっては、オキセタン基)を開環自重合させるための開始剤であれば特に限定はされず、例えばイオン性光酸発生型であってもよく、非イオン性光酸発生剤であってもよい。
【0038】
具体例としては、イオン性光酸発生型については、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類、鉄―アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール-アルミニウム錯体などの有機金属錯体類が挙げられる。これらは市販のものを使用することもでき、例えば、旭電化工業社製の商品名「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」等の「アデカオプトマー」シリーズ、サンアプロ製の商品名「CPI−210S」、ゼネラルエレクトロニクス社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」等が挙げられる。これらのイオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
また、非イオン性光酸発生型としては、上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドホスホナート等が挙げられる。これらの非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、通常、0.1〜10質量部である。
【0041】
光重合開始剤の含有量が0.1質量部以上であれば、重合が十分に行われ、遅延時間が極端に長くなることもない。上記開始剤の含有量が10質量部以下であれば、硬化反応が速くなりすぎて、作業性(遅延硬化性など)が失われたり、深部硬化性が悪化したりする(不均一な硬化物となる)こともない。
【0042】
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、通常用いられる各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤の具体例としては、例えば、シランカップリング剤;酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどの無機質充填剤;過酸化物やアゾ化合物などの重合促進剤;消泡剤;陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性の各種界面活性剤;チクソトロピー剤;カップリング剤;アンチモン類やブロム化合物などの難燃材;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤等が挙げられる。
【0043】
なお、本実施形態のUV硬化性樹脂組成物は、上述した必須成分および必要に応じて添加される任意成分が、使用時点で均一に混合されておればよく、流通時や貯蔵時などに全量が混合されている必要はない。即ち、流通時や貯蔵時などの状況によっては、2種以上に分割しておき、使用直前に配合して用いてもよい。UV硬化性樹脂組成物は、必要成分を全て混合した直後において、液状状態であることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係るUV硬化性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、上述したような配合成分を混合する方法が挙げられる。
【0045】
(接着剤および有機EL素子封止材)
このようなUV硬化性樹脂組成物は、LED方式の紫外線硬化装置等で紫外光を照射して露光して硬化させることにより、熱線による熱歪の悪影響を抑制して硬化される。さらに、本発明に係るUV硬化性樹脂組成物は遅延硬化性を有するので、UV照射後、一定の期間、低粘度状態を維持し、その後速やかに粘度上昇して硬化する。従って、UV照射した後に、電子部品等の被着体と合わせることが可能なので、UVによって電子部品等が劣化することもない。また、金属、ガラス、プラスチックなど、様々の種類の基材に対して優れた接着性を発揮する。
【0046】
さらに、本発明に係るUV硬化性樹脂組成物は従来のような遅延硬化剤を含有していないため、透明性や物性にも優れている。そのため、小型化、高精密化、透明性が要求される各種光学部品の接着剤や有機EL素子用封止材として好ましく用いられる。
【0047】
よって、上述したようなUV硬化性樹脂組成物からなる光学部品用接着剤並びに有機EL素子用封止材もまた本発明に包含される。
【0048】
接着剤として用いる場合には、例えば、本発明のUV硬化性樹脂組成物を二つの被着体の各接着面の両方または何れか一方に塗布して貼り合せる。このようにして、二つの被着体の各接着面に接着剤層を介在させ、前記接着剤層に紫外光を照射して露光することにより、UV硬化性樹脂組成物を光硬化させる。あるいは、本発明のUV硬化性樹脂組成物を二つの被着体のうち、有機EL素子を有していない方の接着面に対して塗布してUV照射した後、被着体の貼り合せを行って位置調整(アライメント)を行って暫く保持(すぐ動かすと粘度があがっておらず、ずれるため)してから加熱させて硬化させる。
【0049】
また、有機EL素子用封止材として用いる場合には、温度・湿度が変化する環境においても密着力・透明性を維持できる。特にトップエミッション型の有機ELディスプレイ等では、発光面の樹脂の透明性が重要となるため、上述のUV硬化性樹脂組成物を用いることが非常に好ましい。
【0050】
さらに、EL素子などはUVでダメージを受けるので、基板の貼り合せ工程において、EL素子がついていない側の基板に樹脂を塗布し、UV照射をしてから素子側基板と貼り合せ・アライメント(この時は低粘度のため調整可)することにより、UV・熱によるダメージをさけることが可能となる。この点、本発明に係る樹脂組成物は、アライメントのために必要十分な遅延時間を提供することができる。
【0051】
また、接着させてからのUV照射では、カラーフィルター越しでの照射となるため、暗部が形成されてしまい、未硬化部分が発生するが、こういった問題も本発明に係るUV硬化性樹脂では起こらない。
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
[樹脂組成物の調製]
プライミクス社製のホモディスパーを使用し、下記表1に示す配合組成(質量部)で各成分を均一に混合し(2500rpm、10分)、実施例1〜3および比較例1〜4に示すUV硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1で用いた各成分の詳細は下記の通りである。
(多官能エポキシ樹脂)
・2官能ポリブタジエンエポキシ樹脂(「R−45EPT」、ナガセケムテックス株式会社製)
・ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂(「YD−8125」、新日鐵化学製)
・ビスフェノールF型2官能エポキシ樹脂(「YDF−8170」、新日鐵化学製)
(長鎖単官能エポキシ化合物)
・炭素数11〜15の単官能エポキシ樹脂混合物(リカレジンL−200、新日本理化社製)
(多官能オキセタン樹脂)
・2官能オキセタン樹脂(「OXT221」、東亜合成化学工業(株)社製)
(光重合開始剤)
・光カチオン重合開始剤(「SP−170」、旭電化工業社製)
・光カチオン重合開始剤(「RP−2074」、ローディア製)
(遅延硬化剤)
・18−クラウン−6−エーテル(東京化成工業(株)社製)
(その他)
・2官能エポキシ変性シリコーン(「Albiflex348」、ナノレジン製)
・2官能脂環式エポキシ変性シリコーン(「X−22−169AS」、信越シリコーン製)
[粘度の測定]
上記実施例および比較例で得た各UV硬化性樹脂組成物について、ティー・エイ・インスツルメント社製のレオメータ(AR2000ex)を用いて、25℃、25mmプレート、ギャップ50μm、回転数25rpmの測定条件で、粘度を測定した。
【0054】
[透過率の測定]
1mmガラス上に、シリコンシートで形成したダム(内寸:50×30×0.5mm)を載せ、上記実施例および比較例で得た各UV硬化性樹脂組成物をダム内に充填し、さらにもう一枚の1mmガラスで挟み込んだ状態を作り、UVおよび加熱により硬化物とした(UV:500mJ/cm、加熱:80℃・30分)。その後、本テストピースを日立ハイテク社製の透過率測定器(日立分光光度計「U−4100」)を用いて780nm、550nm、及び400nmの波長で測定し、補正した。単位は%である。
【0055】
なお、透過率については、初期(樹脂硬化物を調製した直後)及び高温高湿条件後(処理条件:温度85℃、湿度85%、24hr)のそれぞれで測定した。
【0056】
[増粘時間の評価]
記実施例および比較例で得た各UV硬化性樹脂組成物にUV光源(高圧水銀灯)にて50mW/cm、10秒照射後、レオメータにて粘度上昇をモニタリングした。ここでは光源照射前の粘度(初期粘度)と比較して15倍になるまでにかかる時間を増粘時間と規定した。評価方法としては、増粘時間が1分を超えた樹脂組成物について、遅延硬化性があると評価した。
【0057】
以上の試験結果を表1にまとめた。
【0058】
【表1】

表1の結果からも明らかなように、多官能エポキシ樹脂及び長鎖単官能エポキシ樹脂を所定の配合で含む実施例1〜3のUV硬化性樹脂組成物は、遅延硬化剤を含まずとも有益な遅延硬化性を示した。さらに、透明性にもきわめて優れており、高温高湿の条件下においても透明性が損なわれないことも示された。また、多官能オキセタン樹脂を含めたり、多官能エポキシ樹脂及び長鎖単官能エポキシ樹脂の配合量を調節することによって、可使時間を調整し得ることも明らかとなった(実施例2及び3)。
【0059】
これに対し、長鎖単官能エポキシ化合物の含有量が少ない比較例1では、増粘時間が1分となり、十分な遅延硬化性が得られなかった。また、長鎖単官能エポキシ化合物の含有量が多い比較例2においては、長時間を経ても基準まで増粘しなかった。
【0060】
一方、多官能エポキシ樹脂しか含まない比較例3では、遅延硬化性は一切得られなかった。そして、遅延硬化剤を含有させた比較例4では、遅延硬化剤の影響で透明性が低下した。特に、高温高湿条件に置いた後の透明性の低下が顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線(UV)で硬化されるUV硬化性樹脂組成物であって、
多官能エポキシ樹脂を30〜95質量部、炭素数7〜20の長鎖炭化水素骨格を有する単官能エポキシ化合物を5〜70質量部含有する、UV硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに多官能オキセタン樹脂を含有し、前記多官能エポキシ樹脂と多官能オキセタン樹脂とを合計で30〜95質量部含有し、前記単官能エポキシ化合物を5〜70質量部含有する、請求項1に記載のUV硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記多官能オキセタン樹脂の配合量が1〜30質量部である、請求項2に記載のUV硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記多官能エポキシ樹脂が2官能エポキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のUV硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のUV硬化性樹脂組成物からなる、光学部品用接着剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のUV硬化性樹脂組成物からなる、有機EL素子用封止材。


【公開番号】特開2013−91676(P2013−91676A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232719(P2011−232719)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】