説明

方位表示装置及び方法

【課題】アクセス時に周辺地図と現在位置に加え、明確な目的地がなくても、周辺のランドマーク情報と大まかな方位を把握可能にする。
【解決手段】端末に、地図Mとともに、最新の位置情報及び方位情報に基づく最新の現在位置及び方位をアイコンXで表示し、現在位置を中心とした最近傍の欄Aと、その外側の欄B,Cを同心円状(すなわち円盤状及びドーナツ状)に配置した情報表示欄と、を表示させる。最近傍の欄Aには、検索したランドマーク情報に含まれる名称(例えば「品川駅」など)を、その位置情報に対応する位置又は角度位置に配置することにより表示させる。それより外側の欄を、内輪部である欄Bと、外輪部である欄Cと、に区分し、内輪部である欄Bには、前記隣接する各市区町村名(「中央区」など)を、外輪部である欄Cには、前記隣接する各都道府県名(「千葉県」など)を、それぞれの前記各基準点の方向に対応する角度位置に表示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図を表示する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理及び通信技術の発達に伴い、携帯電話端末に代表される移動情報端末から、携帯電話網やインターネット経由で、サーバにアクセスして地図を閲覧するサービスが普及している。この種の技術では、携帯電話端末のGPS機能や近隣基地局の位置情報や電波通信状態を利用して自分の現在位置を取得し、周辺地図上に表示することが一般的であるが、さらに、使い勝手を改善するための工夫も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1の開示内容によれば、ユーザの端末から送る位置情報をもとに、サーバが近隣のランドマークの候補を端末へ送り、ユーザが認知している近くのランドマークを選択し回答すると、そのランドマーク方向の入った地図をサーバから送り、ユーザはそのランドマークの方向を基準に、携帯端末の向きを正しい方位に合わせることで、解かりやすい地図表示を得る。
【0004】
また、特許文献2の開示内容によれば、サーバが、ユーザの端末から現在位置と目的地の情報を受信し、それに基づき現在地から目的地までの距離、方位、歩数を算出し、端末に表示させる。
【0005】
また、特許文献3の開示内容によれば、カーナビゲーション画面の俯瞰表示において、地図表示の視認を妨げない範囲で同心円状の細い補助線を地図上に常時表示することにより、自車位置からの距離把握を支援する。
【特許文献1】特開2003−232651号公報
【特許文献2】特開2004−23511号公報
【特許文献3】特開2006−330745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような従来技術においては、現在位置が分かっても、目的地などの追加的な要素がないと、地図上で自分が向いている方向が把握できないと言う問題があった。
【0007】
すなわち、特許文献1の技術では、ユーザが現在位置の近くのランドマークを「あれが○○ビル」のように判断でき、かつ、ランドマークを候補から選択する操作や、返信された地図上のランドマーク方位に端末を向けることも必須となるため、ランドマークの見分けが難しい不案内地域に不向きで、操作が煩雑で結果を得るまでに時間がかかる、といった限界が多かった。
【0008】
特許文献2の技術でも、目的地が必須であるため、どこか具体的な目的地が明確に決まっていないと利用できず、周囲の地理を把握するなどの現状把握に利用できないという問題点があった。
【0009】
特許文献3の技術では、現時点で表示されている地図の範囲内で、かつ、自車位置からの距離に限って、その把握を支援できるが、現時点の表示範囲外も含め、どちらに何があるといった、方位や現状の把握に役立つものではなかった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、アクセス時に周辺地図と現在位置に加え、明確な目的地がなくても、周辺のランドマーク情報と大まかな方位を把握可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様は、演算制御部と、記憶装置と、通信ネットワークとの通信手段と、を備えたコンピュータで実現し、移動情報端末に対し前記通信ネットワーク経由でのアクセスに応じて地図と方位を表示する方位表示装置において、各地域の地図データを前記記憶装置で記憶している地図記憶手段と、各地域のランドマークについて、少なくとも名称と位置情報を含むランドマーク情報を前記記憶装置で記憶しているランドマーク記憶手段と、各行政区画ごとに、少なくとも名称及び所定の基準点の位置情報と、を表す情報を前記記憶装置で記憶している行政界記憶手段と、前記移動情報端末から、その端末の位置を表す位置情報を受信する位置情報受信手段と、前記移動情報端末からの所定の情報に基づいて方位を推定する方位推定手段と、前記位置情報受信手段が受信した前記位置情報の場所を含む前記地図データを前記地図記憶手段から検索する地図検索手段と、前記位置情報受信手段が受信した前記位置情報の位置から所定距離内に係る前記ランドマーク情報を前記ランドマーク記憶手段から検索する周辺情報検索手段と、前記所定距離以遠について、最寄かつ所定単位の各行政区画を前記行政界記憶手段から検索する中・遠距離情報検索手段と、前記移動情報端末に、前記地図検索手段が検索した前記地図データを用いる地図とともに、前記移動情報端末の最新の前記位置情報及び方位情報に基づく最新の現在位置及び方位と、前記現在位置を中心とした最近傍の欄とその外側の欄を同心円状に配置した情報表示欄と、を表示させる情報表示手段と、を前記演算制御部で実現するとともに、前記情報表示手段は、前記最近傍の欄には、前記周辺情報検索手段が検索した前記ランドマーク情報に含まれる名称を表示させ、前記外側の欄には、前記中・遠距離情報検索手段が検索した前記所定距離以遠の前記行政区画の名称を、その位置情報に対応する角度位置に配置することにより表示させることを特徴とする。
【0012】
また、上記装置に限らず、同様な方法及びコンピュータ・プログラムも、それぞれ本発明の態様である。さらに、上記のように構成される本発明の作用及び効果、並びに本発明の他の各態様における構成、作用及び効果については、実施形態などを通じて後述するとおりである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地図上にユーザの現在地と向いている方向を示すとともに、周辺のランドマーク情報及び中距離、遠距離の行政区画の情報を中心点からの距離に対応した同心円状のインターフェースで地図に重ねて表示することにより、明確な目的地がない場合であっても、地図サービスにアクセスした際に地図だけでなく、周辺のランドマーク情報と大まかな方位と当該方位に対応する行政界に関する情報を把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下「本実施形態」と呼ぶ)について、図に沿って説明する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項については適宜省略する。
【0015】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1の構成図に示すように、携帯電話端末装置に代表される移動情報端末(以下、単に「端末」とも表す)Tに対し、サーバシステムとして、携帯電話網に代表される通信ネットワークN経由でのアクセスに応じて地図と方位を表示する方位表示装置(以下「地図サーバ」と呼ぶ)Sに関するものであるが、地図サーバSに対応する地図表示方法及びコンピュータ・プログラムとしても把握可能である。
【0016】
まず、地図サーバSは、図1に示すように、CPUなどの演算制御部5と、外部記憶装置(HDDなど)や主メモリ等の記憶装置6と、通信ネットワークNとの通信手段7(LANアダプタなど)と、を備えたコンピュータで実現される。なお、地図サーバSで用いるコンピュータは、入出力装置などを含むハードウェアや基本ソフトウェアについては、一般的なものでよいので、図示や詳説は省略する。
【0017】
そして、地図サーバSは、図1に示す各要素20〜60を備える。なお、データベース(以下「DB」と表す)26,35,45,55は、記憶装置6上に各情報を記憶する記憶手段であるが、実際の形式としては、データベースに限らず各種ファイルや配列等の変数、システム設定値など、任意の形式で実現する。
【0018】
このうち、ランドマークDB35は、各地域のランドマーク(著名な建物や自然物、名勝、旧跡など)について、少なくとも名称と位置情報を含むランドマーク情報を記憶装置6で記憶しているランドマーク記憶手段である。図2(1)は、その格納データの一例を示すもので、ランドマークごとに、ID、名称、住所、電話番号、緯度、経度などの情報項目を相互に対応付けている。
【0019】
また、行政界DB45は、各行政区画ごとに、少なくとも名称及び所定の基準点の位置情報と、を表す情報を記憶装置6で記憶している行政界記憶手段であり、本実施形態では、日本の各市区町村名及び各都道府県名ごとにそれぞれ対応して、図2(2)の格納データ例に示すように、ID、名称の他、所定の基準点の位置情報として、行政界の範囲すなわち境界を表す行政界ポリゴンから予め求めた重心地点もしくは都道府県庁や市区町村役場など代表的な位置の位置情報(緯度、経度)を予め記憶している。また、続く「緯度経度1」「緯度経度2」…は、前記行政界ポリゴンの各頂点座標であるが、必須ではない。
【0020】
なお、行政界DB45に記憶している各行政区画としては、本来の狭義の行政区画には限らず、東北地方、関東地方といった上位概念や、「六本木エリア」「港南エリア」のようなその他の概念を加えてもよい。
【0021】
また、地図DB55は、各地域の地図データを記憶装置6で記憶している地図記憶手段であり、図2(3)に示す例では、例えば、地域と縮尺の組合せの地図ごとに、IDと、左上隅すなわち北西角の座標(緯度経度1)と、右下隅すなわち南東角の座標(緯度経度2)と、画像ファイル名と、を対応付けている。
【0022】
また、移動履歴DB26は、位置情報受信手段である位置情報受信部20が端末Tから受信した位置情報の履歴を移動履歴として、端末Tの識別情報と関連付けて記憶装置6で記憶する移動履歴記憶手段であり、図示はしないが、例えば、所定の移動距離又は時間間隔ごとに、位置情報すなわち位置座標を記録したものであり、行動ターゲティング広告などに併用してもよい。
【0023】
また、地図サーバSは、端末からの位置情報受信手段である位置情報受信部20と、端末からの方位情報受信手段である方位情報受信部25と、端末からの方位情報が得られない場合に端末からの所定の情報(特に移動履歴)から方位を推定する方位推定手段である方位推定部27と、地図など表示すべき情報を端末へ送信する送信部28と、を有する。
【0024】
また、地図サーバSは、周辺のランドマークを検索する周辺情報検索手段である周辺情報検索部30と、所定距離以遠の行政区画等を検索する中・遠距離情報検索手段である中・遠距離情報検索部40と、表示すべき地図データを検索する地図検索手段である地図検索部50と、を有する。
【0025】
また、地図サーバSは、同心円状(すなわち円盤状及びドーナツ状)の情報表示欄を情報提供画面として生成する情報提供画面生成部58と、端末の位置と方位を表すアイコンを生成するアイコン生成部60と、を有する。なお、情報提供画面生成部58と、アイコン生成部60と、送信部28は、端末Tに、地図と、最新の現在位置及び方位と、同心円状の情報表示欄に周辺情報としてランドマークと行政区画を表示させる情報表示手段を構成しているので、「情報提供手段」(58,60,28)のように総称することとする。
【0026】
以上の各要素20,25,27,28,30,40,50,58,60は、記憶装置6に予め記憶(インストール)した図示しない所定のコンピュータ・プログラムで演算制御部5を制御することにより実現するもので、以下に説明するような各機能や処理ステップを実現・実行する処理手段である。
【0027】
また、(携帯電話)端末Tは、内蔵のGPS装置や、通信圏内に存在する携帯電話や無線LANといったアンテナ基地局や親機から得る位置情報などを用いて、端末Tの現在位置の位置情報(緯度、経度など)を取得する位置情報取得部12と、同様に、方位センサー(電子コンパス等)などを用いて、端末Tの向いている方位を表す方位情報を取得する方位情報取得部15と、液晶や有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの画面に地図などの情報を表示する地図画面表示部17と、を有する。
【0028】
〔2.作用〕
以下、本装置の作用について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
〔2−1.位置情報と方位情報の取得〕
まず、本装置では、位置情報受信部20が、端末Tから、その端末Tの位置を表す位置情報を受信し(位置情報受信処理ステップ。ステップS1)、また、方位情報受信部25が、端末Tから、その端末Tの向いている方位を表す方位情報を受信する(方位情報受信処理ステップ。ステップS1)。
【0029】
方位情報は、有れば、つまり端末Tから送信されてきた場合に取得し(ステップS1)、無い場合は(ステップS2)、ユーザの移動履歴に基づいて移動方向を推定する(ステップS2,S3)。すなわち、方位推定部27が、方位情報受信部25が端末Tから方位情報を受信した場合は、その受信した方位情報に基づいて、その端末の向いている方位を推定することにより、端末の備える電子コンパスなどの方位センサーによる高精度な方位測位結果を活用可能となる。
【0030】
一方、端末Tから方位情報が受信できない場合は、方位推定部27が、移動履歴DB26に記憶しているその端末Tの移動履歴から端末Tの移動方向を計算し、その移動方向に基いて、その端末Tの向いている方位を推定する(方位推定処理ステップ)。なお、方位センサーを搭載していない機種の端末について、移動履歴が存在しない場合、移動方向の推定に必要な移動履歴を取得するために、所定距離(例えば、数歩)移動する様、サーバ側からユーザへの指示を端末に送信し表示させる構成も考えられる。
【0031】
そして、位置情報は所定距離移動するたびに移動履歴DB26に追記してゆき、前回記録した位置情報から所定距離移動した場合に(ステップS3)、移動軌跡から方位を計算で推定する(ステップS4)。例えば、経度が不変で緯度(北緯)が増加した場合は、端末Tは北へ向かっており、ユーザが体の正面で操作する場合も、端末Tの頭頂部すなわちモニタ上方は北へ向くものと推定する。
【0032】
このように、ユーザの移動履歴から端末の向いている方位を推定することにより、ユーザは通常、進行方向を向いて端末を操作することから、電子コンパスなどの方位センサーに代表される方位の取得機能を持たない端末や、何らかの事情でそのような機能が利用できない状況においても、本発明を活用することが可能となる。
【0033】
〔2−2.周辺情報の検索〕
続いて、周辺情報検索部30が、位置情報受信部20が受信した位置情報の位置から所定距離(例えば半径100m)内に係る前記ランドマーク情報をランドマークDB35から周辺情報として検索する(ステップS5。周辺情報検索処理ステップ)。
【0034】
ランドマークの検索において、現在位置から所定距離内のランドマークが、表示しようとする仕様上などの数より多い場合は、各ランドマークごとに予めランドマークDB35に記録しておく評価などの属性や重要度などの基準を一又は二以上組み合わせ、適切なものに絞り込む。
【0035】
このような絞り込みの具体的な基準は自由であるが、例えば、図2(1)に示す「評価」は、ユーザによるアンケートや人気投票などに基く情報項目の例で、「重要度」は、所定のインターネット検索サイトにおいてキーワード検索で用いられる数や、インターネット上に存在するウェブサイト上で多く用いられている順を、適宜な換算アルゴリズムで数値化したものである。
【0036】
さらに、中・遠距離情報検索部40が、前記所定距離以遠について、中・遠距離情報として、最寄かつ所定単位の各行政区画を行政界DB45から検索する(ステップS6。中・遠距離情報検索処理ステップ)。この検索では、例えば、行政界DB45に、各行政区画ごとの行政界ポリゴンが含まれていれば(図2(2))、隣接している市区町村や都道府県を幾何学計算により検索してよいが、そのようなポリゴンが含まれていない場合でも、面積上の重心点や都道府県庁など所定の基準点の位置情報を元に、距離の近い順に所定数を抽出するなどの検索を行う。
【0037】
〔2−3.地図の検索と表示〕
そして、情報提供手段(58,60,28)が、端末Tに、地図検索部50が検索した地図データを用いる地図とともに、端末Tの最新の位置情報及び方位情報に基づく最新の現在位置及び方位と、前記現在位置を中心とした最近傍の欄とその外側の欄を同心円状に配置した情報表示欄と、を表示させる(情報表示処理ステップ)。
【0038】
情報表示欄は、半透明に地図を透過する態様で表示し続けても良いし、前記地図の中心寄り部分を覆い隠すように一時的に表示し、この一時的表示を所定操作により終了し通常の地図表示に戻るようにしてもよい。
【0039】
具体的には、地図画像にオーバーレイ(重畳)表示するために、情報提供画面生成部58が、現在の方位に合わせて情報提供画面すなわち同心円状の情報表示欄を生成し(ステップS7)、アイコン生成部60は、現在位置と方位を地図上や情報提供画面上で示す人形や鏃(やじり)型などのアイコンのグラフィック画像を生成する(ステップS8)。
【0040】
さらに、地図検索部50が、位置情報受信部20が受信した最新の位置情報の場所を含む前記地図データを地図DB55から検索し(地図検索処理ステップ。ステップS9)、送信部28が瑞末Tへ、検索した地図データを最下層、その上層(手前。見える側)に情報提供画面、最上層にアイコン、というグラフィック表示レイヤー構造で送信し、図4のような表示を行わせる(ステップS10)。
【0041】
〔2−4.表示例の説明〕
ここで、図4に示す表示例について説明する。図4の例では、地図M上に、情報表示欄Dと、その中心に現在位置及び方位を表すアイコンXをしている。すなわち、情報提供手段(特に情報提供画面生成部58)は、最近傍の欄Aには、周辺情報検索部30が検索したランドマーク情報に含まれる名称(例えば「品川駅」など)を、その位置情報に対応する位置又は角度位置に配置することにより表示させ、それより外側の欄には、中・遠距離情報検索部40が検索した前記所定距離以遠の行政区画の名称を、その位置情報に対応する角度位置に配置することにより表示させている。
【0042】
〔2−5.都道府県と市区町村の表示〕
より詳細には、図4に例示したような表示例については、中・遠距離情報検索部40は、端末Tの最新の現在位置の属する市区町村と隣接する各市区町村名及び各基準点の位置情報と、前記現在位置の属する都道府県と隣接する各都道府県名及び各基準点の位置情報と、を行政界DB45から検索している。
【0043】
また、情報表示手段は、前記外側の欄を、内輪部である欄Bと、外輪部である欄Cと、に区分し、内輪部である欄Bには、前記隣接する各市区町村名(図4の例では「中央区」「千代田区」「新宿区」「渋谷区」「品川区」)を、外輪部である欄Cには、前記隣接する各都道府県名(図4の例では「千葉県」「埼玉県」「山梨県」「神奈川県」)を、それぞれの前記各基準点の方向に対応する角度位置に表示している。
【0044】
以上、全体として、例えば図4の表示例では検索結果として、欄Aには、端末Tの最新の現在位置を中心として半径100m以内に存在するランドマークが表示され、また、欄Bには隣接する市区町村名、欄Cには隣接する都道府県名の検索結果が、各位置情報の方位に対応する角度位置、すなわち形状ポリゴンの重心方向もしくは県庁や役場の方向に表示されている。
【0045】
なお、図4の例では、ランドマークや行政区画の方位に応じて文字を傾け、ランドマークについても、行政区画名に準じて位置情報の方位に対応する角度位置に表示しているが、これらは必須ではなく、図5に例示するように、ランドマークは、所定距離に対応する同心円状(すなわち円盤状)の欄A内において、地図上の実際の位置と対応する位置にマーク(図5では黒い矩形)などを用いて表示してもよいし、各行政区画名の文字も傾斜は必須ではない。
【0046】
このように、同心円状(すなわちドーナツ状)をなす外側の欄のうち、内輪部に市区町村名、外輪部に都道府県名を、その方位に応じた角度位置に表示することにより、各行政区画の近さと大きさに応じて自然な表示が実現でき、ユーザの円滑な情報把握を効果的に支援可能となる。
【0047】
〔3.効果〕
以上のように、本実施形態によれば、地図上にユーザの現在地と向いている方向を示すとともに、周辺のランドマーク情報及び中距離、遠距離の行政区画の情報を中心点からの距離に対応した同心円状のインターフェースで地図に重ねて表示することにより、明確な目的地がない場合であっても、地図サービスにアクセスした際に地図だけでなく、周辺のランドマーク情報と大まかな方位に関する情報を把握することが可能となる。
【0048】
〔4.第2実施形態〕
また、図4の表示例では、欄Bに区名、欄Cに都道府県名を表示したが、表示する行政区画の具体性レベルは、地図の表示縮尺に応じて変更することが望ましい(第2実施形態)。
【0049】
この場合、行政界DB(行政界記憶手段)は、各行政区画を、大域から詳細に至る複数の多段階層として記憶しており、中・遠距離情報検索部(中・遠距離情報検索手段)及び情報表示手段は、行政界DBからの検索、及び、同心円状(すなわちドーナツ状)をなす情報表示欄の内輪部である欄B及び外輪部である欄Cへの表示の対象として、前記多段階層のうち相互に隣接する上下二層の組を選択し、かつ、地図の表示縮尺の大小に応じて異なる二層の組に切り替える。
【0050】
例えば、小さな縮尺倍率による詳細表示中は、欄Bに町名や丁目など、欄Cに市や区などを表示したり、逆に、大きな縮尺倍率による大域表示中は、図6に例示するように、欄Bに都道府県、欄Cに東北地方や関東地方などを表示することも考えられる。
【0051】
このように、地図の表示縮尺ごとに、同心円状(すなわちドーナツ状)に表示する行政区画の具体性レベルの組合せを変えることにより、飛躍したレベルの行政区画の表示が回避でき、ユーザの意識する範囲に適合した表示が実現され、ユーザの円滑な情報把握を効果的に支援可能となる。
【0052】
〔5.第3実施形態〕
また、上記各実施形態では、所定距離以遠に関する外側の欄に行政区画の情報を表示する例を示したが、所定の動作モードや設定、端末からの指示などに基き、外側の欄に、図7に例示するように、所定距離以遠のランドマークを表示する例も考えられる(第3実施形態)。
【0053】
この場合、全体構成は最初に示した第一の実施形態と略同様でよいが、中・遠距離情報検索部40は、前記所定距離以遠についても、ランドマーク情報をランドマークDB35から検索し、情報表示手段は、外側の欄である欄B,Cに、中・遠距離情報検索部40が検索した各ランドマーク情報に含まれる名称を、それぞれの位置情報の方向に対応する角度位置に配置することにより表示させる。
【0054】
このように、所定距離以遠についても、ランドマークを外側の欄に表示することにより、行政区画と東西南北の関係を正確に把握していなくても、「有名な○○のある方」といった身近で実用的な基準で大まかな方位を把握容易になる。
【0055】
より具体的には、中・遠距離情報検索手段40は、前記所定距離以遠のうち、第二の所定距離までについてと、第二の所定距離以遠かつ第三の所定距離までについて、それぞれ、ランドマーク情報をランドマークDB(ランドマーク記憶手段)から検索する。
【0056】
そして、情報表示手段は、前記外側の欄を、内輪部である欄Bと外輪部である欄Cに区分したうち、内輪部である欄Bには前記所定距離以遠かつ前記第二の所定距離までについて検索された前記各ランドマーク情報の一部又は全部を表示し、外輪部である欄Cには第二の所定距離以遠かつ第三の所定距離までについて検索された前記各ランドマーク情報の一部又は全部を、それぞれの前記位置情報に対応する角度位置に表示する。
【0057】
なお、図7の表示例において、具体的には、例えば、欄Aには、半径100m以内のランドマーク検索結果を表示する。すなわち、現在位置を中心点として、半径100m以内に存在するランドマークをランドマークDBから抽出し、地図上の対応する位置に配置する。
【0058】
欄Bには、半径500m以内のランドマーク検索結果から、欄Aに表示した結果を除外し、ランドマークの属性や重要度に基づいて絞り込んだ主要ランドマークを抽出して表示する。同様に、欄Cには、半径1km以内のランドマーク検索結果から、欄Aと欄Bに表示した結果を除外したうえ、ランドマークの属性や重要度に基づいて絞り込んだ主要ランドマークを抽出し表示する。
【0059】
この場合、地図の表示縮尺において、実際の地図表示範囲が中心から約100mまでの場合、欄B、欄Cに表示するランドマークについては、地図の表示範囲中には存在しないので、現在位置である中心点の緯度経度と該当するランドマークの緯度経度から方向を確定し、同心円状(すなわちドーナツ状)の領域において該当する角度位置に配置する。
【0060】
このように、所定距離以遠のランドマークについて、同心円状(すなわちドーナツ状)をなす外側の欄のうち、内輪部には相対的に近いもの、外輪部に相対的に遠いものを、各方位に応じた角度位置に表示することにより、各ランドマークまでの距離が反映された自然な表示が実現でき、ユーザの円滑な情報把握を効果的に支援可能となる。
【0061】
〔6.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、図1の構成、図2のデータ例、図3の処理手順、図4以降の画面例などは例示に過ぎず、各要素の有無、その順序や具体的内容などは適宜変更可能である。
【0062】
例えば、移動履歴記憶手段は、端末Tの移動のたびに移動履歴を更新する構成には限定されない。すなわち、端末Tの移動履歴は、端末T側で保持し、地図サーバへのアクセス時にサーバにまとめて送信して方位の推定に利用する構成としてもよい。また、図4以降の各画面表示例では、進行方向を画面上方とするいわゆるヘッディングアップの表示設定の場合を示したが、北を画面上方とするいわゆるノースアップによる表示設定の場合は、中心のアイコンXが端末Tの最新の方位に応じて向きを変え、それを中心として地図表示や情報表示欄の表示内容が、表示画面に対して相対的に回転することとなる。
【0063】
また、「隣接する」行政区画を検索したり表示することは、現在いる行政区画を検索したり表示することを排除する趣旨ではないので、図4の表示内容に、現在いる「港区」を加える態様や、図6の表示内容に、現在いる「栃木県」を加える態様も、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるデータを例示する図。
【図3】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における地図表示の一例を示す図。
【図5】本発明の実施形態における地図表示の一例を示す図。
【図6】本発明の第2実施形態における地図表示の一例を示す図。
【図7】本発明の第3実施形態における地図表示の一例を示す図。
【符号の説明】
【0065】
N インターネット
S 地図サーバ
T 携帯電話端末
5 演算制御部
6 記憶装置
7 通信手段
12 位置情報取得部
15 方位情報取得部
17 地図画面表示部
20 位置情報受信部
25 方位情報受信部
26 移動履歴DB
27 方位推定部
28 送信部
30 周辺情報検索部
35 ランドマークDB
40 中・遠距離情報検索部
45 行政界DB
50 地図検索部
55 地図DB
58 情報提供画面生成部
60 アイコン生成部
M 地図
X アイコン
D 情報表示欄
A,B,C 欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算制御部と、記憶装置と、通信ネットワークとの通信手段と、を備えたコンピュータで実現し、移動情報端末に対し前記通信ネットワーク経由でのアクセスに応じて地図と方位を表示する方位表示装置において、
各地域の地図データを前記記憶装置で記憶している地図記憶手段と、
各地域のランドマークについて、少なくとも名称と位置情報を含むランドマーク情報を前記記憶装置で記憶しているランドマーク記憶手段と、
各行政区画ごとに、少なくとも名称及び所定の基準点の位置情報と、を表す情報を前記記憶装置で記憶している行政界記憶手段と、
前記移動情報端末から、その端末の位置を表す位置情報を受信する位置情報受信手段と、
前記移動情報端末からの所定の情報に基づいて方位を推定する方位推定手段と、
前記位置情報受信手段が受信した前記位置情報の場所を含む前記地図データを前記地図記憶手段から検索する地図検索手段と、
前記位置情報受信手段が受信した前記位置情報の位置から所定距離内に係る前記ランドマーク情報を前記ランドマーク記憶手段から検索する周辺情報検索手段と、
前記所定距離以遠について、最寄かつ所定単位の各行政区画を前記行政界記憶手段から検索する中・遠距離情報検索手段と、
前記移動情報端末に、前記地図検索手段が検索した前記地図データを用いる地図とともに、前記移動情報端末の最新の前記位置情報及び方位情報に基づく最新の現在位置及び方位と、前記現在位置を中心とした最近傍の欄とその外側の欄を同心円状に配置した情報表示欄と、を表示させる情報表示手段と、
を前記演算制御部で実現するとともに、
前記情報表示手段は、
前記最近傍の欄には、前記周辺情報検索手段が検索した前記ランドマーク情報に含まれる名称を表示させ、
前記外側の欄には、前記中・遠距離情報検索手段が検索した前記所定距離以遠の前記行政区画の名称を、その位置情報に対応する角度位置に配置することにより表示させる
ことを特徴とする方位表示装置。
【請求項2】
前記位置情報受信手段が受信した前記位置情報の履歴を移動履歴として前記記憶装置で記憶する移動履歴記憶手段を、前記演算制御部で実現し、
前記方位推定手段は、前記移動履歴記憶手段に記憶しているその移動履歴から端末の移動方向を計算し、その移動方向に基いて、その端末の向いている方位を推定すること
を特徴とする請求項1記載の方位表示装置。
【請求項3】
前記移動情報端末から方位を表す方位情報を受信する方位情報受信手段を、前記演算制御部で実現し、
前記方位推定手段は、前記方位情報受信手段が受信した前記方位情報に基づいて、その端末の向いている方位を推定すること
を特徴とする請求項1記載の方位表示装置。
【請求項4】
前記行政界記憶手段は、各市区町村名及び各都道府県名ごとにそれぞれ対応して、所定の基準点の位置情報を予め記憶し、
前記中・遠距離情報検索手段は、前記現在位置の属する市区町村と隣接する各市区町村名及び各基準点の位置情報と、前記現在位置の属する都道府県と隣接する各都道府県名及び各基準点の位置情報と、を前記行政界記憶手段から検索し、
前記情報表示手段は、前記外側の欄を、内輪部と外輪部に区分し、内輪部には前記隣接する各市区町村名を、外輪部には前記隣接する各都道府県名を、それぞれの前記各基準点の方向に対応する角度位置に表示する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方位表示装置。
【請求項5】
前記中・遠距離情報検索手段は、前記所定距離以遠について、前記ランドマーク情報を前記ランドマーク記憶手段から検索し、
前記情報表示手段は、前記外側の欄に、前記中・遠距離情報検索手段が検索した前記ランドマーク情報に含まれる名称を、それぞれの位置情報の方向に対応する角度位置に配置することにより表示させる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方位表示装置。
【請求項6】
前記中・遠距離情報検索手段は、前記所定距離以遠のうち、第二の所定距離までについてと、第二の所定距離以遠かつ第三の所定距離までについて、それぞれ、前記ランドマーク情報を前記ランドマーク記憶手段から検索し、
前記情報表示手段は、前記外側の欄を、内輪部と外輪部に区分し、内輪部には前記所定距離以遠かつ前記第二の所定距離までについて検索された前記各ランドマーク情報の一部又は全部を、外輪部には第二の所定距離以遠かつ第三の所定距離までについて検索された前記各ランドマーク情報の一部又は全部を、それぞれの前記位置情報に対応する角度位置に表示する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方位表示装置。
【請求項7】
前記行政界記憶手段は、前記各行政区画を、大域から詳細に至る複数の多段階層として記憶し、
前記中・遠距離情報検索手段及び前記情報表示手段は、前記行政界記憶手段からの検索、及び、同心円状をなす前記情報表示欄の内輪部及び外輪部への表示の対象として、前記多段階層のうち相互に隣接する上下二層の組を選択し、かつ、地図の表示縮尺の大小に応じて異なる二層の組に切り替えること
を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方位表示装置。
【請求項8】
演算制御部と、記憶装置と、通信ネットワークとの通信手段と、を備えたコンピュータで実行し、移動情報端末に対し前記通信ネットワーク経由でのアクセスに応じて地図と方位を表示する方位表示方法において、
各地域の地図データを前記記憶装置で記憶している地図記憶手段と、
各地域のランドマークについて、少なくとも名称と位置情報を含むランドマーク情報を前記記憶装置で記憶しているランドマーク記憶手段と、
各行政区画ごとに、少なくとも名称及び所定の基準点の位置情報と、を表す情報を前記記憶装置で記憶している行政界記憶手段と、
を用いて、
前記移動情報端末から、その端末の位置を表す位置情報を受信する位置情報受信処理ステップと、
前記移動情報端末からの所定の情報に基づいて方位を推定する方位推定処理ステップと、
前記位置情報受信処理ステップで受信した前記位置情報の場所を含む前記地図データを前記地図記憶手段から検索する地図検索処理ステップと、
前記位置情報受信処理ステップで受信した前記位置情報の位置から所定距離内に係る前記ランドマーク情報を前記ランドマーク記憶手段から検索する周辺情報検索処理ステップと、
前記所定距離以遠について、最寄かつ所定単位の各行政区画を前記行政界記憶手段から検索する中・遠距離情報検索処理ステップと、
前記移動情報端末に、前記地図検索処理ステップで検索した前記地図データを用いる地図とともに、前記移動情報端末の最新の前記位置情報及び方位情報に基づく最新の現在位置及び方位と、前記現在位置を中心とした最近傍の欄とその外側の欄を同心円状に配置した情報表示欄と、を表示させる表示させる情報表示処理ステップと、
を前記演算制御部で実行するとともに、
前記情報表示処理ステップにおいて、
前記最近傍の欄には、前記周辺情報検索処理ステップで検索した前記ランドマーク情報に含まれる名称を表示させ、
前記外側の欄には、前記中・遠距離情報検索処理ステップで検索した前記所定距離以遠の前記行政区画の名称を、その位置情報に対応する角度位置に配置することにより表示させる
ことを特徴とする方位表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−133913(P2010−133913A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335957(P2008−335957)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】