説明

方向探知機の装置および方法

【課題】サイズが小さくて、しかも反射やマルチパスの作用を受けたり悪影響を及ぼされたりしない指向性アンテナによる方向探知システムを提供する。
【解決手段】この発明は、信号を全方向に送信する遠隔対象物への方向の決定を行う。この発明は、ユーザの位置にある携帯式の指向性および全方向性アンテナと、両アンテナに接続され両アンテナによって遠隔対象物から受信された信号の電界強度を決定する携帯回路と、を備えてなる。観測電界を掃引中、両アンテナにおける受信信号の比較が行われ、ユーザの位置に対する遠隔対象物の推定方向が、掃引されたデータから選択される。装置には、さらに、指向性アンテナが向けられている方向の各々に対応するコンパス方位を生成するデジタルコンパスを備えてもよい。回路は、コンパス方位ごとに電界強度データを保存し、この電界強度データを複数のコンパス方位にわたって所定のプロトコルに従って平均する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物の方向を検知し報告する装置および方法の分野に関し、特に、自動車の位置を特定する方法および回路に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者市場を対象とした方向探知機用の低価格な実施形態として、信号強度と指向性アンテナとを使用することはよく知られている。アンテナの指向性が優れているほど、遠隔の対象物、すなわち例を挙げると駐車された自動車などを探知する精度は高まる。しかしながら、消費者デバイスについては、小型化が非常に重視されており、アンテナ要素が小さくなればなるほど、指向性の確保が困難になってきている。さらに、受信信号の波長に比べてアンテナ要素のサイズが小さくなっていくと、マルチパスおよび反射が原因の局地的なナル(local null)が生じ、指向性アンテナの方向探知性能が影響を受け乱れ始める。したがって、サイズが小さく、それでいて反射およびマルチパスによって作用されることも悪影響を及ぼされることもない指向性アンテナが、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の1つの目的は、受信信号の波長の割に小さく、受信信号が反射およびマルチパスによって悪影響を受けることのない指向性アンテナを使用する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これら上記した目的およびその他の目的を達成するために、この発明は、指向性アンテナ要素と全方向性またはほぼ全方向性の要素とを組み合わせた複合アンテナ要素として具現化されることもある。当然のことながら、要素の完全な全方向性は、実現できるとしても極めてまれである。したがって、この明細書および請求項の全体を通して使用する用語「全方向性」は、組み合わせられる相手の指向性アンテナ要素との比較において用いられている相対的な語として理解されなければならない。したがって、この発明は、指向性アンテナ要素と全方向性要素とを組み合わせた複合アンテナ要素として具現化されることもあるという記述は、この発明が、指向性アンテナ要素と、その指向性アンテナ要素の指向性に比べると相対的に無指向性である要素とを組み合わせた複合アンテナ要素として具現化されるという状況を含むと理解することができる。全方向性要素の相対的な無指向性の程度は、高い信頼性で方向を決定するこの発明の効能によって理解することができる。以下に記述する実施形態の一つでは、2番目の要素が、単純に1番目の要素とは異なる利得パターンを有し、実際のところ様々な面で1番目の要素よりも指向性が高くなることもあり得る。これらのアンテナ要素を組み合わせることと、各々のアンテナ要素が受信する信号の強度とにより、反射およびマルチパスの所産である局地的なナル(ヌル)によって悪影響を及ぼされない実施形態がもたらされる。
【0005】
指向性アンテナの実施形態を使用する方法では、方向探知デバイスが、所在すなわち相対方向の分からない遠隔対象物と無線周波通信を開始する。無線通信は、ユニット間で続けられ、方向探知デバイスの相対的方向を変えながら相対的信号強度をユーザへ報告することによって、指向性アンテナを備えたユニットが受信信号強度を継続的に測定できるようになっている。
【0006】
好適な実施形態では、方向探知デバイス内に指向性アンテナおよび全方向性アンテナを設け、遠隔対象物すなわち自動車の中にまたは上に全方向性アンテナを設けるが、これらの要素は、同一の基本的実施形態の変形例として入れ換えることもできる。アンテナが入れ替えられた場合には、受信信号強度インジケータ(received signal strength indicator)(RSSI)データまたは方向情報は、遠隔対象物から方向探知デバイスへと送信される。
【0007】
指向性アンテナ単独では、遠隔対象物すなわち送信機の方向を決定するのに、受信信号強度にしか頼ることができない。この方法で使用される好適なアルゴリズムは、指向性アンテナによって受信された信号強度が最大となる場合の、遠隔対象物の方向を報告する。方向および最大信号の表示は、視覚的合図、聴覚的合図、バイブレータなどの触覚的合図で、または方向探知デバイスのユーザディスプレイ上における方向表示の形で提供されてもよい。この実施形態では、方向探知デバイスが遠隔対象物に向けられたときに、視覚的および聴覚的フィードバックを組み合わせて併用する。
【0008】
方向探知デバイスが遠隔対象物の方向を正しく報告するためには、そのデバイスは、それが正しい方向に向けられている状態についてもまた正しくない方向に向けられている状態についても受信信号強度をサンプリングすることが可能でなければならない。その結果、そのデバイスで動作しているアルゴリズムに対して、対象物に向けられたときの受信信号強度と対象物から離れた方に向けられたときの別の信号強度とを比較する能力が与えられ、それにより受信信号強度が極大となったときを報告する。
【0009】
反射のない環境では、指向性アンテナによって受信された信号強度が極大となったときに目標物の方向を単に示すのみで、遠隔対象物を探知する信頼性のある当てにできる方法となる。しかし、自動車の駐車場の中など、実環境でより典型的な反射があってマルチパスのある環境においては、無線周波は多くの異なる方向に進み、多くの異なる経路を辿って遠隔対象物と探知デバイスとの間を行ったり来たりする。これらの異なる経路により、受信信号強度および指向性アンテナのみに基づいた方向決定アルゴリズムを悉く混乱させる定在波、局地的なピークおよびナルが生じる。
【0010】
或る方向探知デバイスへの一つの直接経路と、同方向探知デバイスへの一つの反射経路とを有する無線周波信号を送信している遠隔対象物という単純な事例について考察する。まず、直接経路が方向探知デバイスに到着し、その後で多少時間的に遅れて反射信号が到着する。その二つの受信信号間の遅延に応じて、第2の信号は、最初の信号と同相で受信されることもあり、最初の信号と逆相で受信されることもあり、またはその間のどこかで受信されることもある。第1および第2の受信信号の間の位相関係は、その特定の位置については不変であるが、方向探知デバイスが空間を移動するのにつれてその位相関係が変化することは容易に論証される。例えば、方向探知デバイスが反射経路は短くなるが直接経路の長さは同じままとなる位置へ移動した場合、二つの信号間の位相差は減少することになる。この論法を拡張し、同相の信号は加算される一方で逆相の信号は打ち消し合うことを考慮すれば、方向探知デバイスが空間を動き回るのにつれて、局地的ナルと局地的ピークを通って移動するので、無線周波搬送波の受信信号強度が増加しまたは減少し得ることが明らかである。
【0011】
現実の世界では、任意の所与の2点間の伝送を反射しまたは遮る多数の物体が伝送経路に存在するため、マルチパス伝送が発生する可能性があり、また実際に発生する。そのうえ、トランシーバのアンテナの向きは、空間中の角度方向およびそのトランシーバがユーザによって保持され得る空間点に従って可変である。このことが、さらに、送信される電磁波の空間における偏波方向に影響を及ぼす場合があり、これにより受信側ユニットまたは電磁波の伝搬に影響が生じることもあり得る。
【0012】
局地的ナルとは、両受信信号が逆位相である位置のことであると考えることができ、局地的ピークは、両受信信号が同位相である位置である。指向性アンテナのサイズが搬送波周波数の波長に対して小さくなるにつれて、それは、局地的なピークおよびナルの大きさに対しても小さなものとなってくる。アンテナ要素が、ピークからナルに掛けての無線周波エネルギを受信するのに十分なほど大きければ、ピークおよびナルに起因する信号強度のばらつきが見られることはなくなる。しかし、アンテナがナルの空間の範囲内に物理的に収まりかつ隣接するいずれのピークにもずれ込むことがないくらいに小型化されていくと、受信信号強度は、局地的なナルによって有意に影響を受けるようになる。このシナリオにおける基本的な問題は、方向探知デバイスがその瞬間に遠隔対象物から離れる方へ向けられているためではなく、むしろナルの中へと移動したことが原因となって、受信信号強度が低下することがあるということである。その他に何も情報がなければ、受信信号強度に依拠するアルゴリズムは、方向探知デバイスが遠隔対象物の方に向けられているのかどうか、あるいは局地的なピークまたはナルにいるのかについて、正確に検知することはできない。
【0013】
この発明は、全方向性要素を取り入れて、方向探知デバイスが現在局地的なピークまたはナルにいるのかどうかを決定するものである。方向探知デバイスが、遠隔対象物の方に向けられている状態のまま、局地的なナルの中へと移動する事例について考察する。ナルに入って行くにつれて、指向性アンテナの受信信号強度が減少していくことになる。それと同時に、全方向性アンテナの受信信号強度も、同程度の分量だけ減少することになる。その理由は、双方のアンテナが同一のナヌルを物理的に検知するからである。全方向性アンテナ要素と指向性アンテナ要素によって個々に受信される信号強度の差は、一定のままである。
【0014】
この発明の目的は、方向を決定するために、指向性アンテナおよび全方向性アンテナの受信信号強度を絶えず比較することである。指向性アンテナによって受信された信号が全方向性アンテナによって受信された信号よりも強い場合、方向探知デバイスは、局地的なピークまたはナルに対する相対位置に関係なく、遠隔対象物の方に向けられていると考えられる。同様に、指向性アンテナによって受信された信号が全方向性アンテナによって受信された信号よりも弱い場合、方向探知デバイスは、局地的なピークまたはナルに対する相対位置に関係なく、遠隔対象物から離れた方に向けられていると考えられる。全方向性アンテナは、目標物から直接放射された電波および全ての反射電波を測定することになる。方向探知デバイスが所与のいかなる位置にある場合でも、この全方向性信号は、この方向探知機が向けられるであろう方向の如何に関係なく、必然的に一定である。指向性アンテナが向けられる方向の直接放射信号および反射信号は、無線環境に応じて大きく異なるが、傾向としては、目標物の方向で最大となる。
【0015】
この発明は、さらに、第2のアンテナが必ずしも全方向性ではなく、単に、第1の指向性アンテナとは異なる放射パターンを持ったアンテナである実施形態をも含む。例えば、水平方向に楕円であるパターンを有する第2のアンテナについて考えてみる。そのような場合も、この明細書におけるアルゴリズム、手法、および説明が依然として当てはまる。このため、分かっていれば、第2のアンテナの利得パターンをアルゴリズムに含めることができ、それに対する適切な補償を方向の決定において行うことができる。したがって、第2のアンテナは、どのような利得パターンを有していてもよく、全方向性アンテナは、ここに詳解する実施形態においてほんの一例として記載されているに過ぎない、と理解しなければならない。
【0016】
2つのアンテナによって受信された信号強度から方向性を決定する特有の計算およびアルゴリズムが、個々のアンテナ要素の性能特性に基づいてその詳細は変わり得るものの、この発明の実施形態である。
【0017】
この発明の一実施形態は、方向探知兼対象物位置特定用システムに言及するとき、2つの特定のデバイスを引き出す。遠隔対象物は、典型的にはトランシーバであって、自動車、ペットまたは子供など、探知または位置特定することが常々必要とされている物体に通常取り付けられている。この遠隔対象物は、典型的には単一のアンテナを有し、ソフトウェア処理およびユーザ表示の量は最小限になっている。方向探知デバイスは、典型的には、遠隔対象物が取り付けられている物体、ペットまたは人の位置を特定するべくユーザによって使用される。方向探知デバイスは、典型的には、2アンテナ構成と、方向処理用ソフトウェアと、遠隔対象物の方向を示すフィードバックをユーザへ提供するユーザ表示とを有するという点で、より複雑である。この2部分からなるシステムを実現するべく使用されている技術を、その技術に対するユーザの要求に基づいて別の組合せを作り出すように結合しまたは再編成することができるということも、この発明のここに詳解する実施形態の一部である。例えば、2個で対にすれば、一つの方向探知デバイスがもう一つの方向探知デバイスを探知するようにも構成することが可能である。これには、いずれのデバイスもいつでも相手を探知することができるように、そのシステムで使用される双方のデバイスが各々アンテナ対と方向探知用ソフトウェアとを有することが必要となるであろう。加えて、位置を探知してもらっている方向探知デバイスは、位置探索プロセスが進行中であるという表示を自分のユーザに対して提供してもよいし、あるいはユーザの位置をセキュリティ保護する必要がある場合には、方向探知をキャンセルまたは阻止するというオプションをユーザに対して提供することも、しようと思えば可能である。
【0018】
別の実施形態では、この方法は、本来の経路および反射経路の特性と、方向探知デバイスの方向と、平均化とを用い、本来の経路の方向を決定しあらゆる反射経路を除外する。遠隔対象物に向けられている高指向性のアンテナを使用しているとき、受信信号強度は、最大となる。方向探知デバイスの方向が僅かに左から右に変化すると、受信信号強度は緩やかな速さで減衰する。それに対して、方向探知デバイスが反射信号に向けられているときは、方向探知デバイスが角度に関して例えば僅かに左から右へと変化するにつれて、受信信号強度は非常に急速に減衰する傾向がある。この減衰速さの違いを用いると、直接受信された信号に基づく真の方向と、反射に基づく偽の方向とを識別することができる。
【0019】
好適な実施形態では、方向探知デバイスの向きすなわち相対的方位は、デジタルコンパスなど、地球磁場に対する向きを決定する照合サブシステムによって決定される。デジタルコンパスは、ソフトウェアによる調整後、方向探知デバイスが向けられている方向を表す方位を出力する。MEMSジャイロスコープを直ちにデジタルコンパスの代わりに用いることができ、あるいはデジタルコンパスの定義の範囲に含めることができる。好適な実施形態では、各方位についての信号強度の測定値を読み取り、それを全方位にわたって平均する。各々の方位について、その方位の測定信号強度に、その左側二つの方位から読み取った測定値とその右側二つの読み取り測定値とを加えて合計して、平均値が計算される。方位の刻み、平均に含める方位の数、および時間的な平均の採用については、各々の実施形態に向けて最適化することができ、こうした平均に対する調整は、この発明の教示に合致した従来の設計原理に従って行うことができる。この平均化手法の結果、遠隔対象物の方に向いている方位を中心にした信号強度のピークが形成される。
【0020】
方向探知デバイスが遠隔対象物の方に向けられているという報告を正確に行うためには、そのデバイスは、対象物の方に向いている方向と、対象物から離れた方に向いている方向とについての受信信号強度をサンプリングすることが可能でなくてはならない。その結果、デバイスにおいて動作しているアルゴリズムに対して、対象物に向けられているときの受信信号強度とそれ以外の信号強度とを比較して、受信信号強度が極大となる場合を報告する能力が与えられる。方向探知デバイスが遠隔対象物の方に向けられおよび遠隔対象物から離れる方に向けられるその間に受信信号強度を収集するプロセスは、「掃引」と称される。この掃引は、各々の方向探知プロセスの最初に行われ、ユーザが方向探知デバイスを行ったり来たり振り動かして多数の角度において受信信号強度をサンプリングすること、言い換えれば電界を掃引することで、実行される。
【0021】
受信信号強度を角度にわたって平均することに加え、ここの好適な実施形態におけるデジタルコンパスは、このデジタルコンパスがない場合に比べて、信号強度のより完全な走査を可能にする。この好適な実施形態におけるようなデジタルコンパスがなければ、掃引の間に掃引用ソフトウェアが方位を認識することはなく、そのため掃引が有効なものとなるのに十分な角度に及んだかどうか分からないまま、ただ単に、或る期間にわたって受信した範囲の信号強度を保存することしかできない。しかしながら、デジタルコンパスと、掃引の間のコンパス方位の情報とがあれば、対応する方位によってラベル付けされたビンに受信信号強度を保存することができ、掃引が所定の角度範囲あるいは当業界で周知の他の統計的尺度を満たしたときにのみ、方向の決定が実施されるようにすることができる。
【0022】
さらに、方向探知デバイスは、単純に一定期間掃引モードに留まるのではなく、遠隔対象物の方向を正確に検知するために様々な方向角にわたって十分な信号強度情報を収集するまで、掃引モードを保つことができる。この発明のここに詳解する実施形態を用いると、掃引モードがまだアクティブであることを示す表示をユーザに与え、方向性が報告される前により多数の角度にわたって掃引し続けるようユーザに促すことができる。
【0023】
この好適な実施形態をさらに拡張して、方向探知デバイスを遠隔対象物に直接向けるために動かすべき左右方向についてユーザに示す。方向探知デバイスは、最強の信号強度を感知することによって遠隔対象物の方向を決定したら、遠隔対象物の当該方位を保存することができる。その後、方向探知デバイスが左右に動かされるにつれて、デバイス内のソフトウェアが、保存されている方位と現在の方位とを比較し、方向探知デバイスを遠隔対象物に直接向けるにはどの方向へ動かす必要があるかについて、ユーザにフィードバックを提供する。
【0024】
この発明のここに詳解する実施形態は、駐車区域内の自動車の位置を突きとめることに関して説明されるが、当然のことながら、この発明の教示は、その対象物を探している人の比較的近い範囲にある対象物であれば、いかなる対象物の位置を突きとめるのにも使うことができるのであり、正にそのように理解されたい。
【0025】
例えば、方向探知デバイスは、子供に取り付けられた遠隔対象物の位置を突きとめるのに使用することもでき、そうすれば、その子供がデバイスの範囲内にいる限り、両親は方向探知デバイスを用いて子供の位置を突きとめることができる。
【0026】
遠隔対象物は、リモコン、キーホルダ、ペットの首輪、およびガレージドア開閉機その他の物品に設置することもでき、そうすれば、紛失した場合またははぐれた可能性のある場合に、方向探知デバイスを用いてこれらの対象物を探知することもできる。
【0027】
遠隔対象物は、さらに、野外活動に参加しているときに、見つけやすい位置としての役目を果たし得るキャンピングカー、キャンプサイト、ボート、ATVまたはその他の位置に備え付けることもできる。
【0028】
上述したように、二つの方向探知デバイスを配置構成して、互いに相手の位置を突きとめられるようにすることもできる。これにより、キャンプする人、ハイキングする人、バイクに乗る人、およびその他何らかの二人組またはグループが離ればなれになった場合に、互いの位置を突きとめることが可能になると考えられる。グループの規模は、ソフトウェアと、デバイスがどのように対になっているかによってのみ制限される。
【0029】
方向探知デバイスは、さらに、ユーザがしばしば訪れる地域内にある関心地点または施設の位置を突きとめるように配置構成することもできる。このような他の公共的な施設の位置を突きとめることは、方向探知デバイス上の第2のボタンによって作動されるようにしてもよい。例えば、ユーザが自分の車両を広い立体駐車場に駐車している場合に、方向探知デバイスの第2のボタンを作動させて、最寄りの階段またはエレベータの位置を突きとめることもできる。このことは、その立体駐車場の管理者が、階段およびエレベータの各々に公開アクセスキーを備えた遠隔対象物を設置することによって達成される。これらの遠隔対象物は、公開アクセスモードに入ったいかなる方向探知デバイスとも通信することになる。
【0030】
この発明の装置および方法は、文法的な流暢さのために作用的説明でもって記述してきたし、また記述していくが、当然のことながら、各請求項は、米国特許法第112条でことさらに規定されていない限り、いかなる形でも「手段」または「ステップ」の限定解釈により必然的に限定して解釈されるべきでないこと、各請求項により規定される定義の意味および均等の全範囲が司法上の均等論の下に与えられるべきであること、そして各請求項が米国特許法第112条の下で明言的に規定されている場合は、米国特許法第112条の下で全法定均等物が与えられるべきであることを、正にその旨篤と理解されたい。ここで次に説明する図面に移ることにより、この発明はよりよく視覚化されることができ、そこでは、同じ要素は同じ番号で参照されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の好適な実施形態による方向探知機および遠隔対象物における回路構成のブロック図である。
【図2】ここに詳解する実施形態における指向性アンテナ要素および全方向性アンテナ要素の放射パターンの極グラフである。
【図3】ここに詳解する実施形態において本質的に水平方向に楕円形となる1つを含む、2つの一様でない指向性のアンテナ要素の放射パターンの極グラフである。
【図4】指向性アンテナが、所望の方向におけるピークの代わりに所望の方向におけるナルを用いる、2つの一様でない指向性のアンテナ要素の放射パターンの極グラフである。
【図5】方向探知デバイスが遠隔対象物の方に向いた方向を保ったまま左右に動かされるときに指向性アンテナおよび全方向性アンテナによって受信される受信信号強度の、方向探知デバイスの左右位置の関数としてのグラフである。
【図6】デジタルコンパスが採用された場合の、この発明の好適な実施形態による方向探知機および遠隔対象物における回路構成のブロック図である。
【図7】生データおよび平均化されたデータの双方についての典型的な受信信号強度の、角度の関数としてのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、各請求項に定義されるこの発明の具体的な詳解例として提示する好適な実施形態についての以下の詳細な説明に移ることにより、この発明およびその様々な実施形態をよりよく理解することができよう。各請求項により定義される発明は、以下に記述する具体的に詳解された実施態様よりも範囲が広くあり得ると、ここでは正にそのように理解されたい。
【0033】
この発明の具体的に詳解する実施形態は、駐車された自動車内に位置するデバイスなどの遠隔対象物200と、方向探知デバイス100と、対象物200およびデバイス100の間の無線周波リンク301とを備えてなる。ここに具体的に詳解する実施形態は、一部の事例では、駐車された自動車を探知することを対象にして述べられるが、当然のことならが、この発明は、自動車にも固定物にも限定されるものではない。この明細書において、対象物とは、いかなる生物または無生物をも含めた広い意味に理解されるべきである。故に、この発明は、ペット、子供、キー、自転車、オートバイ、自動車、および位置が探され得るいかなるものに対しても、等しく有効に適用することができる。駐車された自動車を探知するための応用は、厳密な方向の決定が必要でなく、視覚による同定が容易にできるくらいまで自動車に近づくようユーザを導くのに足りる方向性が分かりさえすればよいので、好適である。このような応用では、数十度以内の精度で正確な方向であれば、たいていの場合十分に正確であるので、表示角度にかなりの誤差があっても、それは有用性を何ら損ねることなく許容される。図1のブロック図に示すように、具体的に詳解する実施形態のデバイス100は、指向性アンテナ101と全方向性アンテナ102とを備えて構成されている。アンテナ101および102は、コントローラ兼プロセッサ106によって制御されるRFスイッチ103に接続されている。コントローラ兼プロセッサ106は、この発明の具体的に詳解する実施形態によって教示される機能を実現するように従来の設計原理に従って工夫されたマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、デジタル論理回路構成またはアナログ制御回路構成、および無線周波制御および処理回路を備えて構成されてもよい。コントローラ兼プロセッサ106は、さらに、1つまたは多数のユーザ入力デバイスを含んでいてもよく、それらは、ボタンや類似の入力方法で具現化してもよい。これらのボタンは、方向報告シーケンスの開始または終了、探索されている遠隔対象物の選択、または当該デバイスの位置を突きとめようとしている別の方向探知デバイスの受け入れまたは取り消しのために、使用することもできる。
【0034】
方向探知デバイスが別の方向探知デバイスの位置を突きとめようとしている実施形態では、遠隔対象物200は、方向探知デバイス100のもう1つの具体例で置き換えられ、無線周波リンク301で通信することになるであろう。
【0035】
図2は、指向性アンテナ101については正方形のデータ点によって示され、全方向性アンテナ102と201については菱形のデータ点によって示される相対的利得パターンをdBで示す極グラフである。全方向性アンテナ102の利得を、基準の0dBとして取ってある。図2に示すように、全方向性の利得に比べて、指向性アンテナ101のバックローブは少なくとも10dB減少しており、フロントローブは少なくとも5dB増加している。極グラフは、各々が11.25°である32個の等角度のセグメントに分けられており、それにより、前方±45°のセクタに達するまで、指向性アンテナの利得が全方向性アンテナの利得に等しくならないことが分かる。このアンテナパターンは単なる例として示すものに過ぎず、性能および利得のパターンは、選択される個々のアンテナ設計に応じて変わるものであって、提示された例に限定されるものではない旨、理解されなければならない。
【0036】
これに代わって、この発明では、方向の決定のために、いかなる非一様なすなわち非全方向性のアンテナパターンでも用いることができることに注目すべきである。そのうえ、全方向性アンテナは、この発明の要件を満たすのに必ずしも真に全方向性である必要はない。根本的な要件は、2つのアンテナ間の相対的な受信信号強度が、遠隔対象物の方向で一意的に定まらなければならない、ということである。両アンテナ間の違いは、その組合せが一意的である限り、その差が極小のところであっても、極大のところであっても、あるいは一方のアンテナが他方のアンテナよりも強いまたは弱い信号を受信していても、問題でない。
【0037】
図3は、この発明を具現化するのに使用可能な2つの非一様な指向性アンテナ要素の例を示す。この例では、アンテナ2が遠隔対象物の方向にピークを有し、アンテナ1のパターンは、一様な全方向性にはなっていない。遠隔対象物の方向は、アンテナ2によって受信された信号強度が、アンテナ1によって受信された信号強度を、最大差で上回るところの方向である。方向探知デバイスにおいて動作しているソフトウェアのタスクは、アンテナ2によって受信された信号強度がアンテナ1によって受信された信号強度を最も大きく上回る場合の方向を同定することである。
【0038】
このように相対的な信号強度の差が一意的であるため、アンテナ実装の際は、さらに多くの可能性がもたらされる。例えば、指向性アンテナは、所望の方向に必ずしもローブを有する必要はなく、代わりに、ナルを有することもできる。ナルの場合、所望の方向で指向性アンテナの信号が全方向性の信号よりもはるかに弱いことになるが、依然として方向探知が可能である。故に、デバイス内のソフトウェア次第で、ピークあるいはナルのいずれかを探す適切なアルゴリズムが適用され、方向が決定される。
【0039】
図4は、この発明を具現化するのに使用可能な2つの非一様な指向性アンテナ要素の別の例を示す。この例では、アンテナ1が遠隔対象物の方向にナルを有し、アンテナ2のパターンが遠隔対象物の方へ僅かに偏っている。遠隔対象物の方向は、アンテナ2によって受信された信号強度が、アンテナ1によって受信された信号強度を最大差で上回るところの方向である。方向探知デバイスにおいて動作しているソフトウェアのタスクは、アンテナ2によって受信された信号強度がアンテナ1によって受信された信号強度を最も大きく上回る場合の方向、またはアンテナ1によって受信された信号強度がアンテナ2によって受信された信号強度に対して最小となる場合の方向、を同定することである。
【0040】
図1を参照すると、スイッチ103が、入ってくる信号を検知するための無線トランシーバ104に連結されている。加えて、指令信号がコントローラ106によって生成され、トランシーバ104を介し全方向性アンテナ102またはアンテナ101を通して送信されることで、遠隔対象物200へ指令が送られるとよい。例えば、対象物200へウェイクアップ信号が送られ、それにより、以下に述べるように、対象物200からの信号伝送を始動することになる。
【0041】
トランシーバ104は、送信機、受信機、およびシンセサイザを包含している。送信機には、ベースバンドデータを取り込んでシンセサイザにより生成されたRF搬送波周波数までアップコンバートする変調器と、送信信号を増幅する増幅器とが含まれている。コントローラ106は、適切な受信者に向けた適切なプロトコルで情報を送信するのに必要な信号を、変調器へ提供する。送信増幅器は、送信する距離が短い場合には電力消費量を低減させるように、電力制御を含むとよい。受信機は、RF信号を受信するのに必要なフィルタリングおよび増幅と、受信したRF信号からベースバンド信号を抽出する復調器とを含む。コントローラは、復調器と協働して、このユニットにのみ向けられたデータを、送信されたプロトコルに従って抽出する。その他の受信データは、全て無視される。
【0042】
この発明の具体的に詳解する実施形態の特徴のうちの1つは、雑音のあるRF環境の中で、または多数のユーザが同一または同様のデバイスを使用している場所において、適切にかつ信頼性高く方向を報告することである。この発明は、方向探知デバイスと遠隔対象物とに共通していて、これらデバイス間で送信される情報を特定のユーザに固有のものとして印付けるのに役立つ付加的情報と一緒に、ジグビープロトコルを用いる。ジグビープロトコル(Zigbee protocol)は、雑音のある、マルチユーザの環境において機能する方法を備えている。加えて、双方のデバイス上で動作するソフトウェアには、付加的レベルのセキュリティが含まれていて、受信する信号強度が、対になっているもう一方のデバイスから受信した信号のものであって、他のユーザのデバイスまたは他の雑音源からのものではないことを保証している。一般に入手可能ないかなるプロトコルまたは方法でも、雑音のある、マルチユーザの環境における動作を強化することができ、信号強度が確実に所期の送信機からのものであるようにすることができる。
【0043】
コントローラ106に連結された受信信号強度インジケータ(received signal strength indicator)(RSSI)105は、スイッチ103によって多重化されてアンテナ101および102から得られトランシーバ104によって検知された受信無線信号強度(エネルギ積分であって、品質ではない)を測定する、受信信号強度インジケータ回路である。RSSI105は、IF段として実現されてもよいし、またはゼロ−IFシステムでは、ベースバンド増幅器の前のベースバンド信号チェインで実現されてもよい。RSSI出力は、DCアナログレベルとして提供されてもよいし、または内蔵アナログデジタル変換器(analog to digital converter)(ADC)によってサンプリングされてもよく、結果として生じるコードは、直接的にまたは周辺もしくは内部プロセッサバスを介して利用することができる。
【0044】
RSSI回路105は、当該の受信者に向けられた伝送のためのRSSIデータを提供するのみである。このことは、所望の送信機が送信している期間にRSSIデータを調べるのみで、または復調された出力のIFエネルギーを調べることによって、または他の任意のマルチユーザRSSI決定方法によって、達成される。現在または今後一般に利用可能な任意の方法を用いて、RSSIデータが意図した送信機からのもののみであることを保証することができる。この実施形態の中で説明していないいかなる方法を使用しても、やはりこの発明の意図の範囲内にあると考えられる。
【0045】
ユーザインジケータ107は、コントローラ106に連結されていて、ユーザに対してディスプレイまたはフィードバック信号を提供するものであるが、フィードバック信号の中でも特に、遠隔対象物200の方向の表示をユーザに提供する。このフィードバックは、LEDなどといった視覚的合図、スピーカから出る音もしくは声などといった聴覚的合図、または振動もしくはタッピングなどといった触覚的合図の形をとることもできる。ユーザインジケータ107は、バッテリ低下の警告など、システムの全般的な状態を示してもよい。デバイス100にある回路は、全て電源108によって電力供給されている。この電源は、典型的には、バッテリであるが、太陽電池、充電式バッテリなどといった供給源の組合せも含めて、現在既知のまたは今後考案されるいかなるタイプの電源をも含めることができる。
【0046】
遠隔対象物200は、図1に示すように、無線周波トランシーバ202に連結された全方向性アンテナ201を含む。デバイス100と同様に、対象物200内の回路も、方向探知デバイスがごく近傍にあるときに送信電力を下げるために、受信信号強度インジケータ(RSSI)203を含んでいてもよい。RSSI203からの受信信号強度表示も、遠隔対象物200によって、または方向探知デバイス100によって、方向探知アルゴリズムの一部として使用することもできる。デバイス100の場合と同じく、コントローラ兼プロセッサ204が、コントローラ兼プロセッサ106と同様に、トランシーバ202およびRSSI203に連結されている。コントローラ204に連結されたユーザインジケータ205のオプションも意図されている。デバイス100における電源108の場合と同様に、電源206が、全ての回路に電力を供給する。電源206は、さらに、例えば自動車に設置されてる場合であればシガレットライタアダプタからなど、自分が設置されている対象物から電力を得てもよい。
【0047】
図1のシステムならびに必要なアンテナ101およびアンテナ102の全体的な動作を、図5の理想化した信号強度のグラフに詳しく図解する。図5は、三角形のデータ点によって示された指向性アンテナ101の任意の単位での受信信号強度と、菱形のデータ点によって示された全方向性アンテナ102の任意の単位での受信信号強度とを比較するグラフである。図5における信号強度は、方向探知デバイス100が遠隔対象物200の方に向けられた状態のものであり、方向探知デバイス100がその方向を変えずに局地的なピークおよびナルを通って横に動くときの、任意の単位での距離の関数として、示されている。グラフで図解されているように、複数の極大値が検知され得るが、指向性アンテナの信号強度と全方向性アンテナの信号強度とは、グラフ全体にわたって同じデルタ(差分)を保っている。図5により、局地的なピークおよびナルを通って動くことによって見られる絶対的信号強度の変動に関係なく、指向性の電界強度が全方向性の電界強度よりも常に大きいことが分かる。
【0048】
図6は、デジタルコンパス109がデバイス100に含まれる場合のシステムのブロック図である。デジタルコンパス109は、コントローラ106に連結されていて、磁気方位すなわち真のコンパス方位に対応する信号を生成する。図6の実施形態では、全方向性アンテナ102およびスイッチ103が省かれている。しかしながら、当然のことながら、コンパス109が冗長要素として、同じく図1の実施形態に含まれてもよい。コンパス109により、コントローラ106は、指向性アンテナ101によって受信された電界強度に関するデータを収集し、そのデータをコンパス方位に従ってビン(データ区分)に入れることが可能になる。ひとたび複数ビンに仕分け収集したら、取り込んだデータは、適切な方向探知用フィードバックを提示するように平均化することまたはよりインテリジェントに用いることができる。
【0049】
図7は、図6の実施形態の動作を詳しく図解しているグラフである。この実施形態の場合、別個の4つのLEDによる方向表示を備えた方向探知デバイスを考察する。この特定の実施形態では、方向探知デバイスが遠隔対象物の方に向けられたときには、4つのLEDが全て点灯し、方向探知デバイスが実質的に遠隔対象物から離れた方に向けられたときには、どのLEDも点灯しない。1つ、2つ、さらに3つのLEDが点灯して、向きが遠隔対象物の方向へ近づいていることを示す。例示の実施形態では、0度を中心にして±180°までの10度幅のビンに、点灯したLEDの数を入れる。各々の幅すなわちビンが、「方位」と定義される。説明の目的上、北すなわち0°が真のターゲット方向であるとするが、これは、適宜、いかなるコンパス方位にすることもできる。図7は、携帯による掃引についてグラフ化しており、曲線400には、点灯するLEDの数が何ら平均化を行わずに掃引角度の関数として示されている。グラフ400のデータから選択された方位とその方位の両側2つずつの方位とを合わせて平均して得た平均値データを、曲線402で示す。殆どのユーザインターフェース要素がユーザに提示する前に結果を量子化するものであるから、この例では、点灯するLEDの量子化された数をグラフ404のデータで示す。グラフ400のデータが、遠隔対象物に直接向いているとき以外の方位においても最高の方向性を示すのに対し、グラフ404のデータは、遠隔対象物に直接向いているときにのみ最高の方向性を示すことに留意されたい。したがって、単独の方位を見た場合は、指向性アンテナ101による受信電界強度がはっきりしないこともあるが、複数の方位の平均は、はっきりと真のターゲット方向を示す。方位の刻みすなわち幅の間隔、信頼性の高い方向決定のための平均に必要とされる方位の数、および時間平均の採用については、この発明の精神および範囲から逸脱することなく、各々の実施形態または応用例について最適化することができる。実際のところ、データ掃引のために複数の平均化アルゴリズムを順次動作させることができ、次いで、自動化された決定論理を用いて、任意の所与のデータ掃引においてまたは複数の掃引の中で、いずれが最も信頼できると思われるかに関して、複数の平均アルゴリズムから選択を行うことができる。
【0050】
図6に示される方向探知デバイスにおいて動作しているソフトウェアが遠隔対象物の方位を決定すると、ユーザに提示されるフィードバックによって、所望の方位が現在の方位に対してどこにあるかを、より明確に示すことができることになる。例えば、遠隔対象物が、方向探知デバイスに対して270°の方位にあり、方向探知デバイスが315°の方位に向けられている場合、ソフトウェアは、方向探知デバイスを左へ45°回転する必要があると計算することができる。方向探知デバイスのユーザ表示機能の精巧さに応じて、ユーザに対し「左へ」とか「左へ45°」とか報告することができる。あるいはまた、方向探知デバイスが現在向いているところから45°左に遠隔対象物が位置することをユーザに対して示す、何らかのタイプの矢印または他の方向指示デバイスを、方向探知デバイスが表示することも可能と考えられる。1つの例として、アナログ時計を模したパターンにLEDを円形に配置して、円上の各々のLEDが、アナログ時計での半時間に対応している。そのような配置にすれば、円を構成する24個のLEDが存在することになる。遠隔対象物が現在の方位の45°左に位置していた上記の例の場合であれば、アナログ時計上の10:30に対応するLEDが点灯して、遠隔対象物の方向を図式に提示することになる。
【0051】
多くの変更や修正が、この発明の精神および範囲から逸脱することなしに、当業者によってなし得るだろう。したがって、ここに具体的に詳解した実施形態は、単に1つまたはいくつかの例示の目的で記載されたものに過ぎず、下記の発明およびその種々の実施形態により定義される発明を限定するものと受け取ってはいけないと理解されなければならない。種々の実施形態は、無線信号を受信し、無線信号をデジタル化して処理するための、当業界で周知のアナログまたはデジタル回路構成、ソフトウェアまたはファームウェアで制御される回路において実現することができ、下記の請求項に記載される種々の機能を果たすことができる。
【0052】
よって、ここに具体的に詳解した実施形態は、単に例示の目的で記載されたものであり、以下の請求項により定義される発明を限定するものと受け取ってはいけないと理解されなければならない。例えば、或る請求項の複数要素が或る特定の組合せで下記に記載されているという事実に拘わらず、この発明は、より少ない要素、より多い要素、または異なる要素での他の組合せを、たとえそのような組合せが当初請求されていなくても、上記に開示されているものは含むということを、篤と理解されたい。2つの要素が組み合わされて一つの請求された組合せとなっているという教示は、さらに、その2つの要素が互いに結合されないで、単独で用いられたり、別の組合せに組み合わされてもよいような請求項としての組合せ物をも許容していると理解されたい。この発明の開示されたいかなる要素の削除も、この発明の範囲内にあることを、明らかに意図している。
【0053】
この発明およびその各種実施形態を記述するためにこの明細書で使用された語は、その一般的に定義された意味においてだけでなく、この明細書における特別の定義により、その一般的に定義されている意味の範囲を超えた構造、材料または行為を含むと理解すべきである。したがって、或る要素がこの明細書の文脈の中で2つ以上の意味を包含すると理解できる場合には、請求項におけるその要素の使用は、この明細書およびその語自体により裏付けられる全ての可能な意味について包括的であると理解しなければならない。
【0054】
したがって、後記の請求項の語または要素の定義は、この明細書において、文言どおりに記載された要素の組合せのみでなく、実質的に同一の要領で実質的に同一の作用をして実質的に同一の結果を得る全ての均等な構造、材料または行為を包含するものとして、定義されている。したがって、この意味で、後記の請求項におけるどの1つの要素を2つ以上の要素で等価的に置き換えてもよいこと、または請求項における2つ以上の要素を単一の要素で置き換えてもよいことを、筆者は意図している。複数の要素が或る特定の組合せで働くように上記に記載され、またそのように当初請求されているかも知れないが、請求される組合せからの1つまたは複数の要素は、場合によっては、その組合せから外すことができ、また、請求された組合せは部分的組合せにまたは部分的組合せの変形に向けられてもよいことを、篤と理解されたい。
【0055】
当業者から見て、請求された主題からの非実質的な変更は、現在知られているものでも今後案出されるものでも、均等的に請求項の範囲内にあると意識的に意図している。したがって、当業者にとって現在知られておりまたは今後知られる自明な置き換えは、定義された要素の範囲内にあるものと定義する。
【0056】
したがって、各請求項は、上記に具体的に図解および記述されたもの、概念的に均等なもの、自明に置換可能であるもの、およびこの発明の必須の思想を本質的に取り込んでいるものをも包含していると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物とユーザとの間の方向の決定を提供する装置であって、
第1利得パターンを有する第1アンテナと、
前記第1アンテナの前記第1利得パターンとは異なる第2利得パターンを有する第2アンテナであって、前記第1および第2アンテナが前記ユーザまたは対象物のいずれかと関連づけられた第1位置の所またはその近くに位置する第2アンテナと、
前記ユーザまたは対象物の他方と関連づけられた第2位置に位置し、位置信号を送信する第3アンテナと、
前記第1および第2アンテナで受信された前記位置信号の電界強度を決定し、前記第1および第2アンテナにおける受信位置信号の比較により前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するように、前記第1アンテナおよび第2アンテナに接続されている回路と、
を備えてなる装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記第3アンテナは、全方向性信号を送信するのに使用される
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記第3アンテナは、所定の利得パターンに従って指向性信号を送信するのに使用される
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
前記第1アンテナは指向性利得パターンを有し、前記第2アンテナは全方向性利得パターンを有する
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
前記第1アンテナは第1指向性利得パターンを有し、前記第2アンテナはそれとは異なる第2指向性利得パターンを有する
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、
前記回路は、前記第1アンテナによって受信された信号強度を前記第2アンテナによって受信された信号強度で除算した信号強度比を生成することによって前記推定相対方向を決定する
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、
前記第3アンテナは前記対象物と関連づけられ、前記第1および第2アンテナは前記ユーザと関連づけられている
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、
前記第3アンテナは前記ユーザと関連づけられ、前記第1および第2アンテナは前記対象物と関連づけられており、受信信号強度インジケータ(RSSI)データおよび/または方向情報が前記対象物から前記ユーザへと送信される
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、
前記回路は、前記第1アンテナによって受信された信号強度が前記ユーザと前記対象物との間の他の方向と比較して極大となる場合の、前記ユーザと前記対象物との間の前記推定相対方向を決定する
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定する前記回路は、前記第1および第2アンテナによって受信された前記第3アンテナからの電界強度の比を前記第1および第2アンテナの向いている方向の関数として決定することによって、前記推定相対方向を決定する
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定する前記回路は、前記第1および第2アンテナによって受信された前記第3アンテナからの電界強度の差を前記第1および第2アンテナの向いている方向の関数として決定することによって、前記推定相対方向を決定する
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置において、
前記第1および第2アンテナは、第1方向探知デバイスの内部に含まれており、前記装置はさらに、前記第1方向探知デバイスと通信している第2方向探知デバイスを備えてなり、それにより前記第2方向探知デバイスが前記第1方向探知デバイスの推定相対方向を決定するように配置され構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、さらに、
前記第2方向探知デバイスが前記第1方向探知デバイスの前記推定相対位置を決定する過程にあることを示すための回路を、前記第1方向探知デバイスの中に備えてなる
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12に記載の装置であって、さらに、
前記第2方向探知デバイスによって前記第1方向探知デバイスの前記推定相対位置が成功裏に決定されるのを阻止する回路を、前記第1方向探知デバイスの中に備えてなる
ことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定する前記回路は、直接受信された信号と間接的に受信されたかまたは反射された信号とを区別するために、前記第1アンテナの方向を角度的に変化させていって、受信電界強度のロールオフレイトを決定することにより、前記推定相対方向を決定する
ことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
方向に対応する地理的方位を考慮するために、前記回路に接続されたコンパスを備えてなる
ことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、
前記回路は、所定範囲の隣接した複数の方位にわたって信号強度を平均し、その平均を対応する各方位に割り当てる
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置において、
前記推定相対方向は、複数の方位での所定の掃引が得られて初めて決定される
ことを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1に記載の装置において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定する前記回路は、前記推定相対方向の方へ前記第1アンテナを向けさせるように、掃引の最も好適な角度方向を決定する
ことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置において、
前記回路は、前記対象物の方に向けられているときの前記第1および第2アンテナにおける受信信号と、前記対象物から離れる方に向けられているときの前記第1および第2アンテナにおける受信信号とを比較する
ことを特徴とする装置。
【請求項21】
信号を全方向に送信する遠隔対象物への方向の決定を行う装置であって、
ユーザの位置にある携帯指向性アンテナと、
前記指向性アンテナが向けられる方向の各々に対応するコンパス方位を生成する携帯デジタルコンパスと、
前記指向性アンテナに接続されている携帯回路であって、前記指向性アンテナによって前記遠隔対象物から受信された信号の電界強度を決定し、前記指向性アンテナが観測電界を掃引するときに、コンパス方位ごとに電界強度データを保存し前記電界強度データを所定のプロトコルに従って複数のコンパス方位にわたって平均することによって前記ユーザの位置に対する前記遠隔対象物の推定方向を決定する携帯回路と、
を備えてなる装置。
【請求項22】
対象物とユーザとの間の方向の決定を提供する方法であって、
前記ユーザまたは対象物の他方と関連づけられた第2位置に位置する第3アンテナから位置信号を送信するステップと、
前記位置信号を第1利得パターンを有する第1アンテナで受信するステップと、
前記位置信号を前記第1アンテナの前記第1利得パターンとは異なる第2利得パターンを有する第2アンテナで受信するステップであって、前記第1および第2アンテナが前記ユーザまたは対象物のいずれかと関連づけられた第1位置の所またはその近くに位置するステップと、
前記受信された位置信号の電界強度を決定するステップと、
前記第1アンテナおよび第2アンテナにおける前記受信された位置信号の比較により前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップと、
を含んでなる方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
第3アンテナから位置信号を送信するステップは、全方向性信号を送信することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、
第3アンテナから位置信号を送信するステップは、所定の利得パターンに従って指向性信号を送信することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法において、
前記位置信号を第1アンテナで受信するステップは、前記位置信号を指向性利得パターンに従って受信することを含んでおり、前記位置信号を第2アンテナで受信するステップは、前記位置信号を全方向性利得パターンに従って受信することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法において、
前記位置信号を第1アンテナで受信するステップは、前記位置信号を第1指向性利得パターンに従って受信することを含んでおり、前記位置信号を第2アンテナで受信するステップは、前記位置信号を別の第2指向性利得パターンに従って受信することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップは、前記第1アンテナによって受信された信号強度を前記第2アンテナによって受信された信号強度で除算した信号強度比を生成することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項22に記載の方法において、
前記第3アンテナは前記ユーザと関連づけられており、前記第1および第2アンテナは前記対象物と関連づけられていて、さらに、
受信信号強度インジケータ(RSSI)データおよび/または方向性情報を前記対象物から前記ユーザへ送信するステップを含んでなる
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップは、前記第1アンテナによって受信された前記信号強度が前記ユーザと前記対象物との間の他の方向と比較して極大となる場合の、前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項22に記載の方法において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップは、前記第1および第2アンテナによって受信された前記第3アンテナからの電界強度の比を前記第1および第2アンテナの向いている方向の関数として決定することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項22に記載の方法において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップは、前記第1および第2アンテナによって受信された前記第3アンテナからの電界強度の差を前記第1および第2アンテナの向いている方向の関数として決定することにより前記推定相対方向を決定することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項22に記載の方法において、
前記第1および第2アンテナは第1方向探知デバイスの内部に含まれていて、さらに、
第2方向探知デバイスを前記第1方向探知デバイスと通信させて、前記第2方向探知デバイスが前記第1方向探知デバイスの前記推定相対方向を決定するステップを含んでなる
ことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、さらに、
前記第2方向探知デバイスが前記第1方向探知デバイスの前記推定相対位置を決定する過程にあることを、前記第1方向探知デバイスにおいて示すステップを含んでなる
ことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、さらに、
前記第2方向探知デバイスによって前記第1方向探知デバイスの前記推定相対位置を成功裏に決定することを阻止するステップを含んでなる
ことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項22に記載の方法において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップは、直接受信された信号と間接的に受信されたかまたは反射された信号とを区別するために、前記第1アンテナの方向を角度的に変化させていって、受信電界強度のロールオフレイトを決定することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項22に記載の方法であって、さらに、
方向に対応する地理的方位を生成するステップを含んでなる
ことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、
方向に対応する地理的方位を生成するステップが、所定の範囲にある複数の隣接する方位にわたって信号強度を平均し、その平均を対応する各方位に割り当てることを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法において、
方向に対応する地理的方位を生成するステップが、複数の方位の所定の掃引が得られて初めて前記推定相対方向を決定することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項22に記載の方法であって、さらに、
前記推定相対方向の方へ前記第1アンテナを向けさせるように、掃引の最も好適な角度方向を決定するステップを含んでなる
ことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項22に記載の方法において、
前記ユーザと前記対象物との間の推定相対方向を決定するステップは、前記対象物の方に向けられているときの前記第1および第2アンテナにおける前記受信信号と、前記対象物から離れる方に向けられているときの前記第1および第2アンテナにおける前記受信信号とを比較することを含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項41】
位置信号を全方向に送信する遠隔対象物への方向の決定を提供する方法であって、
ユーザの位置で携帯指向性アンテナでもって位置信号を受信するステップと、
前記指向性アンテナが向けられる方向の各々に対応するコンパス方位を生成するステップと、
前記指向性アンテナによって前記遠隔対象物から受信された前記位置信号の電界強度を決定するステップと、
前記指向性アンテナが観測電界を掃引するときに、コンパス方位ごとに電界強度データを保存し前記電界強度データを所定のプロトコルに従って複数のコンパス方位にわたって平均することによって前記ユーザの位置に対する前記遠隔対象物の推定方向を決定するステップと、
を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521674(P2010−521674A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553743(P2009−553743)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/056665
【国際公開番号】WO2008/112765
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(509256964)コンパス オート トラッカー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】