説明

方法、分散物および使用

インクジェット印刷用インクでの使用に適した封入顔料分散物の調製方法であって、以下の段階を、I)続いてII)の順番で含む方法:
I)顔料と、液体媒体と、以下の成分a)〜c)のエチレン不飽和モノマーの共重合に由来する反復単位を含む分散剤:
a)少なくとも50部の(メタ)アクリル酸ベンジルを含む1以上の疎水性エチレン不飽和モノマー75〜97部;
b)1以上のイオン性基(1以上)を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー3〜25部;
c)親水性非イオン性基を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー0〜2部;
ここにおいて、部は重量に基づき、a)〜c)の部の合計は100になる
とを含む分散物を提供する段階;
II)該分散剤を顔料および液体媒体の存在下で架橋する段階。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入顔料分散物の調製方法、該方法により得ることができる封入顔料分散物、およびインクジェット印刷用インクを調製するための該方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクは、用いる着色剤のタイプに応じて2つのタイプの一方であることが多い。染料に基づくインクは、液体媒体に溶解している染料を含むことが多い。顔料インクは、液体媒体に分散している顔料を含む。顔料インクは、染料に基づくインクより良好な耐オゾン堅牢度および耐光堅牢度を有する傾向がある。しかしながら、顔料が粒状分散物の形にあるので、インクの貯蔵中および/またはインクの使用(例えば印刷)中に顔料粒子が集塊(agglomerate)または凝集(flocculate)する傾向がある。インクが基材上に印刷される前のそのような集塊または凝集は、とりわけ、印刷機のノズルが非常に小さく、あらゆる大きすぎる粒状物質による閉塞の影響を受けやすい、インクジェット印刷用のインクにおいて非常に望ましくない。したがって、インクジェット分野では、顔料分散物のコロイド安定性を向上させる試みに多大な尽力がなされてきた。液体媒体が大量の水混和性有機溶媒および比較的より少量の水を含む場合、良好なコロイド安定性を有する顔料インクを提供することがとりわけ難しい。
【0003】
特に普通紙上に印刷したときに高い光学濃度(OD)を示す顔料インクを提供することも望ましい。
顔料分散物は、分散剤によりコロイド的に安定化させることが多い。
【0004】
分散剤安定化顔料インクに関するわれわれ独自の研究において、われわれは、良好なコロイド安定性と普通紙上での高いODを同時に示すインクを調製することがとりわけ難しいことを見いだした。例えば、われわれは、高いコロイド安定性を有する当分野で公知の分散剤安定化顔料インクが、普通紙上に印刷したときに低いODをもたらすこと、そしてその逆も同様であることを見いだした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商業的に、上記問題の1以上を少なくとも部分的に解決するインクを調製するために用いることができる顔料分散物が、今もなお引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に従って、インクジェット印刷用インクでの使用に適した封入顔料分散物の調製方法であって、以下の段階を、I)続いてII)の順番で含む方法を提供する:
I)顔料と、液体媒体と、以下の成分a)〜c)のエチレン不飽和モノマーの共重合に由来する反復単位を含む分散剤:
a)少なくとも50部の(メタ)アクリル酸ベンジルを含む1以上の疎水性エチレン不飽和モノマー75〜97部;
b)1以上のイオン性基(1以上)を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー3〜25部;
c)親水性非イオン性基を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー0〜2部;
ここにおいて、部は重量に基づき、a)〜c)の部の合計は100になる
とを含む分散物を提供する段階;
II)該分散剤を顔料および液体媒体の存在下で架橋する段階。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本記載では、特記しない限り、“ある(a)”および“ある(an)”という単語は、1以上を意味する。したがって、例えば、“ある”顔料は、1より多くの顔料が存在する可能性を包含し、同様に“ある”分散剤は、1より多くの分散剤が存在する可能性を包含する。
段階I)
一態様において、段階I)の分散物は、上記組成を有する分散剤の存在下で液体媒体中に顔料を分散させることを含む方法により提供することができる。分散は、例えば、ビーズミル粉砕、ビーズ振とう、超音波処理、均質化および/またはミクロ流動化などの任意の適した方法により、実施することができる。液体媒体中に顔料を分散させるための好ましい方法は、ビーズミル粉砕を含む。典型的には、ビーズミル粉砕は、微粉砕ビーズ、分散剤、液体媒体および比較的高い割合の顔料(しばしば、液体媒体の重量に対し約15〜45重量%)を含む組成物を用いて実施する。微粉砕後、微粉砕ビーズを、典型的には濾過により取り出す。微粉砕された分散物(ミルベース)は、上記組成物中に包含される分散剤と同一または異なっていることができるさらなる分散剤を含有していてもよい追加的な液体媒体で希釈することができる。
【0008】
他の態様において、段階I)の分散剤は、商業的供給源から得ることができる。
顔料
顔料は、水性液体媒体に溶解しない無機もしくは有機顔料材料またはその混合物を含むことができ、そのような顔料材料またはその混合物であることが好ましい。
【0009】
好ましい有機顔料としては、例えば、Colour Index International、第3版(1971)およびこれに続くその改訂版およびその補遺において、“Pigments”という見出しの章に記載されている顔料のクラスのいずれかが挙げられる。有機顔料の例としては、アゾ(ジスアゾおよび縮合アゾを含む)、チオインジゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン、アントラキノン、イソジベンゾアントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドン、ならびにフタロシアニン系、特に銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化誘導体、ならびに酸性、塩基性および媒染染料のレーキに由来するものが挙げられる。好ましい有機顔料は、フタロシアニン、特に銅フタロシアニン顔料、アゾ顔料、インダントロン、アンタントロンおよびキナクリドン顔料である。
【0010】
好ましい無機顔料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄および二酸化ケイ素が挙げられる。
カーボンブラック顔料の場合、これらは、カーボンブラックの表面の一部が酸化基(例えば、カルボン酸および/またはヒドロキシ基)を有するように調製することができる。しかしながら、そのような基の量は、カーボンブラックを分散剤の補助なしで水に分散させることができるように、あまり多くないことが好ましい。
【0011】
顔料は、シアン、マゼンタ、黄色または黒色顔料であることが好ましい。
顔料は、単一の化学種または2以上の化学種を含む混合物(例えば、2以上の異なる顔料を含む混合物)であることができる。すなわち、2以上の異なる顔料を本発明の方法に用いることができる。2以上の顔料を用いる場合、それらは同じ色または色調のものである必要はない。
【0012】
顔料は、分散剤の補助なしでは水性液体媒体に分散することができない、すなわち、分散剤の存在が分散を促進するのに必要であることが好ましい。顔料は、例えばその表面にイオン性基を共有結合させることにより化学的に表面処理されていないことが好ましい(特に−COHまたは−SOHで)。
液体媒体
液体媒体は水性である、すなわち、水であるか水を含むことが好ましい。水性液体媒体は、1以上の水混和性有機溶媒を含有していてもよい。
【0013】
液体媒体が水と1以上の水混和性有機溶媒との混合物を含む場合、水と存在するすべての水混和性有機溶媒との重量比は、好ましくは1:1〜100:1、より好ましくは2:1〜50:1、特に3:1〜20:1である。
【0014】
好ましい液体媒体は、以下:
(a)50〜100部、より好ましくは75〜100部の水;および
(b)合計0〜50部、より好ましくは0〜25部の1以上の水混和性有機溶媒;
ここにおいて、部は重量に基づき、(a)と(b)の部の合計=100である
を含む。
【0015】
一態様において、液体媒体中の唯一の液体は水である。
液体媒体は、水および水混和性有機溶媒に加えて、他の成分、例えば、殺生物剤、界面活性剤、他の分散剤(1以上)などを含有することができる。
【0016】
水混和性有機溶媒を用いると、水性液体媒体中の分散剤の溶解度を上昇させることができる。
液体媒体は、25℃で測定して好ましくは100mPa.s未満、より好ましくは50mPa.s未満の粘度を有する。
分散剤
分散剤は、好ましくはグラフト、櫛形または星形構造、より好ましくは線状構造を有する。
【0017】
分散剤はコポリマーである。好ましいコポリマーはブロックコポリマー(例えば、そのモノマー単位が、AAAA−BBBBのようなブロック状でコポリマーの全体にわたって分布している)であり、より好ましくは、コポリマー分散剤はランダムコポリマー(例えば、そのモノマー単位がコポリマーの全体にわたって無作為/統計的に分布している)である。
【0018】
本発明で用いる分散剤は合成的に調製することができ、または商業的供給源から得ることができる。
上記のように2以上の分散剤を用いてもよい。上記種類の分散剤1以上および異なる種類の他の分散剤1以上を利用することが可能である。存在するすべての分散剤が、本明細書中に記載するものであることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の観点に従った方法で用いる分散剤は、任意の適した方法により作製することができる。好ましい方法はラジカル重合である。適したラジカル重合法としては、懸濁重合、乳化重合、分散重合および好ましくは溶液重合が挙げられる。分散剤を、水性または有機液体キャリヤーの存在下で成分a)、b)およびc)のエチレン不飽和モノマーの溶液重合により調製することが好ましい。
成分a)1以上の疎水性エチレン不飽和モノマー
疎水性という用語は、成分b)およびc)の親水性モノマーより疎水性であることを意味する。疎水性モノマーは、イオン性であるか非イオン性であるかに関わらず、親水性基を有さないことが好ましい。例えば、それらはあらゆる酸性基またはポリエチレンオキシ基を有さないことが好ましい。
【0020】
疎水性エチレン不飽和モノマーは、好ましくは少なくとも1、より好ましくは1〜6、特に2〜6のLogP計算値を有する。
Mannhold,R.およびDross,K.による総説(Quant.Struct−Act.Relat.15,403−409,1996)には、化合物および特に薬剤のLogP値を計算するための14の方法が記載されている。この総説から、われわれは、“フラグメント法”および特にACD labsソフトウェアにより実施するフラグメント法を選んでいる。モノマーのLogP計算値は、市販のコンピューター・ソフトウェアを用いて、例えば、LogP DBソフトウェアのバージョン7.04または該ソフトウェアのその後のバージョン(Advanced Chemistry Development Inc(ACD labs)から入手可能)を用いて、計算することができる。あらゆるイオン性またはイオン化しうる基を、それらの中性の(イオン化していない)形で計算する。logP値が大きいほど、より疎水性が高いモノマーに相当する。われわれは、そのようなモノマーの包含が、顔料表面上への分散剤の吸着に役立ち、普通紙上に印刷したときに良好な光学濃度を有する封入顔料分散物の提供に役立つことを見いだした。
【0021】
好ましい疎水性エチレン不飽和モノマーは、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、アルファメチルスチレン)、芳香族(メタ)アクリレート(特に(メタ)アクリル酸ベンジル)、C1−30−ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、ブタジエン、ポリ(C3−4)アルキレンオキシド基を含有する(メタ)アクリレート、アルキルシロキサンまたはフッ素化アルキル基を含有する(メタ)アクリレート、およびビニルナフタレンである。
【0022】
分散剤は、好ましくは75〜97、より好ましくは77〜97、特に80〜93、もっとも特に82〜91重量部の成分a)の共重合に由来する反復単位を含む。
われわれは、少なくとも50部の(メタ)アクリル酸ベンジルモノマー反復単位を含む分散剤が、良好な安定性および普通紙上に印刷したときに良好なODを有する封入顔料分散物をもたらすことを見いだした。
【0023】
成分a)は、重量に基づき好ましくは少なくとも60部、より好ましくは少なくとも70部、特に少なくとも80部の(メタ)アクリル酸ベンジルを含む。疎水性モノマーの全体的な好ましい量を得るのに必要な残余分は、(メタ)アクリル酸ベンジル以外の上記疎水性モノマーの任意の1以上により提供することができる。これらの優先傾向により、普通紙上に印刷したときにさらに良好な光学濃度を示す最終的な封入顔料分散物がもたらされる。
【0024】
好ましくは、(メタ)アクリル酸ベンジルはメタクリル酸ベンジル(アクリル酸ベンジルではなく)である。
好ましい態様において、成分a)は、(メタ)アクリル酸ベンジルのみ、より好ましくはメタクリル酸ベンジルのみを含む。
成分b)1以上のイオン性基を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー
成分b)において、存在する各親水性エチレン不飽和モノマーは、1以上のイオン性基を有する。
【0025】
成分b)のモノマーは、中和されていない(例えば遊離酸)形で計算して、好ましくは1未満、より好ましくは0.99〜−2、特に0.99〜0、もっとも特に0.99〜0.5のLogP計算値を有する。
【0026】
成分b)のモノマー中に存在するイオン性基は、好ましくはカチオン性であるか、より好ましくはアニオン性であることができる。
成分b)のモノマーは、好ましくはそれぞれ1以上のアニオン性基、より好ましくはそれぞれ1以上の酸性アニオン性基を有する。
【0027】
好ましい酸性アニオン性基としては、スルホン酸、ホスホン酸および特にカルボン酸が挙げられる。酸性スルフェート、ホスフェートおよびポリホスフェートも、酸性アニオン性基として用いることができる。
【0028】
したがって、成分b)は、1以上のカルボン酸基を有する1以上のモノマーであるか、該モノマーを含むことが好ましい。
1以上のカルボン酸基を有する成分b)に好ましい親水性エチレン不飽和モノマーとしては、ベータカルボキシルエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、より好ましくは、アクリル酸および特にメタクリル酸が挙げられる。これらのエチレン不飽和モノマーは、重合したときに分散剤中の唯一のイオン性基をもたらすことが好ましい。
【0029】
好ましい態様において、成分b)はメタクリル酸であるかメタクリル酸を含む。
分散剤は、好ましくは3〜25、より好ましくは3〜23、特に7〜20、もっとも特に9〜18重量部の成分b)の共重合に由来する反復単位を含む。これは、成分b)がメタクリル酸を含むか、より好ましくはメタクリル酸であるときに、特に当てはまる。
成分c)1以上の親水性非イオン性基を有する2部以下の1以上の親水性エチレン不飽和モノマー
成分c)において、存在する各親水性エチレン不飽和モノマーは、1以上の親水性非イオン性基を有する。
【0030】
本発明の目的に関し、イオン性および非イオン性親水性基の両方を有するモノマーは、成分c)に属すると考える。したがって、成分b)のエチレン不飽和モノマーはすべて、親水性非イオン性基を有さない。
【0031】
成分c)のモノマーは、好ましくは1未満、より好ましくは0.99〜−2のLogP計算値を有する。
われわれは、1以上の親水性非イオン性基を有する親水性エチレン不飽和モノマーに由来する比較的少量の反復単位を含有する分散剤は、最終的な顔料インクが普通紙上に印刷したときに高いODを得る能力を、大きく低下させる傾向があることを見いだした。分散剤中にこれらの反復単位が存在すると、臨界凝結濃度(critical coagulation concentration)の上昇も起こる。われわれの研究において、われわれは、分散剤中のこれらの反復単位の量を、すべてのモノマー反復単位100部あたり2重量部以下に限定することにより、普通紙上での高いODをより良好に得ることができることを見いだした。
【0032】
好ましくは、成分c)は、1部未満、より好ましくは0.5部未満、特に0.1部未満、もっとも特に0部(すなわち存在しない)である。このように、分散剤は、1以上の親水性非イオン性基を有する親水性モノマーに由来する反復単位を含有しない。
【0033】
親水性非イオン性基の例としては、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシ官能性セルロースおよびポリビニルアルコールが挙げられる。親水性非イオン性基を有するもっとも一般的なエチレン不飽和モノマーは、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートである。
【0034】
成分c)に由来する反復単位が分散剤中に存在する態様(例えば、2重量部の成分c)において、一態様では、成分c)の量を、成分a)の好ましい量から差し引く。このように、成分a)〜c)の全量は、なお合計100になる。したがって、例えば2重量部の成分c)が存在する場合、先に述べた成分a)の好ましい量は73〜95(75−2〜97−2)、より好ましくは75〜95(77−2〜97−2)、特に78〜91(80−2〜93−2)、もっとも特に80〜89(82−2〜91−2)重量部の成分a)になる。他の態様では、同様に成分a)〜c)の量の合計が100重量部になるように、成分c)の量を成分b)の好ましい量から差し引くことが可能である。
好ましい分散剤
上記を考慮して、好ましい分散剤は、以下のエチレン不飽和モノマーa)〜c):
(a)少なくとも50部のメタクリル酸ベンジルを含む1以上の疎水性(hydrophibic)エチレン不飽和モノマー75〜97部;
(b)メタクリル酸3〜25部;および
(c)1以上の親水性非イオン性基を有する親水性エチレン不飽和モノマーなし;
ここにおいて、部は重量に基づき、a)〜c)の部の合計は100になる
の共重合に由来する反復単位を含む。
【0035】
成分a)中の唯一の疎水性エチレン不飽和モノマーがメタクリル酸ベンジルであることが好ましい。
より好ましくは、分散剤は、以下のエチレン不飽和モノマーa)〜c):
(a)少なくとも50部のメタクリル酸ベンジルを含む1以上の疎水性エチレン不飽和モノマー80〜93部;
(b)メタクリル酸7〜20部;
(c)親水性非イオン性基を有する親水性エチレン不飽和モノマーなし;
ここにおいて、部は重量に基づき、a)〜c)の部の合計は100になる
の共重合に由来する反復単位を含む。
分散剤中のイオン性基(1以上)
分散剤は、分散剤1gあたり好ましくは少なくとも0.35ミリモル、より好ましくは少なくとも0.9ミリモル、さらにより好ましくは少なくとも1.15ミリモル、特に少なくとも1.3ミリモルのイオン性基を有する。
【0036】
分散剤は、優先傾向が高くなっていく順番で、分散剤1gあたり2.65ミリモル以下、2.3ミリモル以下、2.15ミリモル以下、2.0ミリモル以下および1.75ミリモル以下のイオン性基を有することが好ましい。
【0037】
好ましい分散剤は、例えば、分散剤1グラムあたり合計で0.9〜2.65ミリモル、特に1.0〜2.3ミリモル、もっとも好ましくは1.0〜2.0ミリモルのイオン性基を有する。われわれは、そのような分散剤が本発明においてとりわけ良好に機能し、これを用いると、とりわけ良好な光学濃度を普通紙上で示し、良好なコロイド安定性を有する顔料インクを、提供することができることを見いだした。
【0038】
イオン性基の量は、任意の適した方法により確定することができ、好ましい方法は、滴定法、例えば酸/塩基滴定である。
分散剤中に存在するイオン性基はすべて、アニオン性(特に酸性)であることが好ましい。分散剤中に存在するすべてのイオン性基が、それぞれ独立して、−COH、−SOHおよび−PO基およびそれらの塩から選択されることが、特に好ましい。分散剤中に存在するすべてのイオン性基が−COH基またはその塩であることが、もっとも好ましい。われわれは、すべてのイオン性基が−COH基またはその塩である場合、該分散剤を用いて、普通紙上でとりわけ良好な光学濃度を有するインクを調製することができることを見いだした。したがって、イオン性基のミリモルの上記量が、分散剤中のカルボン酸基のミリモルの好ましい量に直接相当することが好ましい。
自己架橋性分散剤
分散剤は、段階II)において分散剤が自己架橋するのを可能にする1以上の基を含有していてもよい。
【0039】
一態様において、分散剤は、開始剤(特にラジカル開始剤)を用いて後で架橋させる未反応エチレン不飽和基(特にビニル基)を有することにより、自己架橋することができる。
【0040】
他の一態様において、分散剤は、1以上のイオン性基(1以上)(成分bで記載したもの)および該イオン性基(1以上)と架橋する1以上の基を有することにより、自己架橋することができる。例えば、分散剤は、カルボン酸イオン性基とエポキシ架橋性基との組合わせを有することができる。
【0041】
自己架橋反応は、分散剤を加熱することにより実施することが好ましい。
分散剤の吸着
分散剤は顔料上に吸着していることが好ましい。
【0042】
分散剤が顔料表面に化学的に結合していることも可能であるが、これは好ましくない。
好ましくは、分散剤は、顔料および液体媒体の存在下でエチレン不飽和モノマーを重合することにより調製しない。
臨界凝結濃度
段階I)の分散物は、優先傾向が高くなっていく順番で、2.0M以下、1.8M以下、1.6M以下、1.4M以下、1.2M以下、1.0M以下および0.8M以下の塩化ナトリウム臨界凝結濃度(CCC)を有することが好ましい。
【0043】
段階I)の分散物は、好ましくは少なくとも0.1M、より好ましくは少なくとも0.25M、特に少なくとも0.35MのCCCを有する。
好ましい態様において、CCCは0.1〜2.0M、より好ましくは0.10〜1.8M、さらにより好ましくは0.20〜1.6M、特に0.30〜0.8Mである。
【0044】
CCCは、i)〜v)の順番で以下の段階により測定することが好ましい:
i)段階I)で述べた分散物中の顔料の濃度を、水の添加または除去により10重量%に調整する段階;
ii)段階i)で調製した調整済み分散物2滴と、0.5Mのモル濃度を有する水中の塩化ナトリウム溶液1.5gとを混合することにより、試験試料を調製する段階;
iii)段階ii)で調製した試験試料を25℃の温度で24時間保管する段階;
iv)試料底部に顕著な沈殿が存在するかどうかを調べるために、試験試料を視覚的に評価する段階;
v)段階iv)で述べた視覚的評価で試料底部に顕著な沈殿が示される塩化ナトリウム溶液の最低モル濃度が確定されるまで、より高いまたはより低いモル濃度の塩化ナトリウム溶液を用いて段階i)〜iv)を繰り返す段階。ここにおいて、このモル濃度がCCCである。
【0045】
顕著な沈殿という用語により、われわれは、試験試料中に最初に存在していた顔料の大部分またはすべてが沈殿していることを意味し、ほんの微量の沈殿は無視する。重量法または光透過率法を用いることにより沈殿の程度をより正確に測定することが可能であるが、大抵の目的に関し視覚的評価は十分に正確で信頼性がある。
【0046】
段階v)において、われわれは、必要とされる正確さに応じて例えば0.05Mまたは0.1Mの程度までのより高いまたはより低いモル濃度の塩化ナトリウム溶液を使用することが、一般に適するであろうことを見いだした。
【0047】
実験的に、CCCを迅速に確定するためには、それぞれ異なる濃度の塩化ナトリウムを有する数多くの試料を単に調製することが好都合であることが多い。
われわれは、上記CCC値を有する分散物は、普通紙上により高い光学濃度のプリントをもたらす傾向があることを見いだした。
好ましい分散物の特徴
段階I)で述べた分散物中の顔料粒子は、好ましくは1ミクロン以下、より好ましくは10〜1000nm、特に50〜500nm、もっとも特に50〜300nmの平均粒子サイズを有する。平均粒子サイズは、光散乱技術により測定することが好ましい。平均粒子サイズは、Z平均または体積平均サイズであることが好ましい。
【0048】
段階I)の分散物のpHは、好ましくは5〜12、より好ましくは7〜11である。
段階II)分散剤の架橋
段階II)では、分散剤を自己架橋させるか、架橋剤を用いて架橋するか、またはそれら2つを組み合わせることができる。いずれの場合でも、架橋反応は、共有結合により分散剤の分子を連結することが好ましい。
【0049】
架橋反応では、PCT特許公報WO2005/061087号の6頁、表1に記載されている基の対のいずれかを利用することができる。該表において、第2列の“化合物中の反応性基”を架橋剤中の反応性基として解釈することができる。
【0050】
好ましい架橋剤としては、イソシアネート、アジリジン、n−メチロール、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリンおよび特にエポキシ基を有するものが挙げられる。これらの反応性基は、成分b)が1以上のカルボン酸基を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマーを含む分散剤で、とりわけ有用である。好ましい架橋剤はエポキシ基を有し、他の架橋性基を有さない。
【0051】
好ましい態様では、段階II)の架橋をエポキシ架橋剤により生じさせ、成分b)は、1以上のカルボン酸基を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマーであるか、該モノマーを含む。
【0052】
段階II)の架橋は、分散物を好ましくは40〜100℃の温度に加熱することにより実施することが好ましい。架橋反応を加速または促進するために、場合によっては触媒を加えることが有用である。
【0053】
段階II)の分散物のpHは、好ましくは5〜13、特に7〜12である。
架橋反応がエポキシ基を包含する場合、反応をホウ酸塩および/またはホウ酸の存在下で実施することが好ましい。
【0054】
架橋段階は、以下の成分を特定の割合で含む組成物:
(a)30〜99.7部、好ましくは50〜97部の液体媒体;
(b)0.1〜50部、好ましくは1〜30部の顔料;
(c)0.1〜30部、好ましくは1〜30部の分散剤;および
(d)0.001〜30部、好ましくは0.01〜10部の架橋剤;
ここにおいて、部は重量に基づく
を混合することを含む方法により、実施することが好ましい。
最終的な分散物の性質
本発明の方法から得られる最終的な封入顔料分散物は、2.0M以下のCCCを有することが好ましい。得られる封入顔料分散物のCCCは、好ましくは0.1〜2.0M、より好ましくは0.10〜1.8M、特に0.20〜1.6M、もっとも好ましくは0.30〜1.0Mである。
乾燥または濃縮
本発明の第1の観点に従った方法は、生成物から液体媒体の一部またはすべてを除去する段階を追加的に含むことができる。液体媒体は、蒸発および濾過などの方法により除去することができる。このようにして、顔料分散物を濃縮するか乾燥固体の形に転化することができる。液体媒体が水と水混和性有機溶媒との混合物を含む場合、水混和性有機溶媒を選択的に除去することが望ましい可能性がある。これは、例えば蒸溜または膜処理により実施することができる。
分散物の精製
本発明の第1の観点に従った方法はさらに、封入顔料分散物を精製する段階を含むことが好ましい。精製プロセスは、段階II)の後に実施することが好ましい。精製は、精密濾過、脱イオン樹脂(deionizer resin)、遠心分離とこれに続くデカンテーションおよび洗浄などの任意の適した方法によることができる。好ましい方法は、膜濾過、特に限外濾過である。好ましい限外濾過膜は、約0.1ミクロンの細孔サイズを有する。段階II)の後の分散物を、分散物の体積に基づき5〜50体積の純水で洗浄することが好ましい。限外濾過法で用いる水は、脱イオンされているか、蒸留されているか、逆浸透により精製されていることが好ましい。分散物が十分に精製された時点を評価する好ましい方法は、限外濾過工程からの透過流の導電率を測定することと、透過流が100μS/cm未満、より好ましくは50μS/cm未満の導電率を有するようになるまでさらなる体積の純水を加え続けることである。限外濾過は、分散物中に10〜15重量%の顔料を有する分散物で実施することが好ましい。われわれは、場合によっては、精製により、普通紙上に印刷したときにさらに改善されたODを有する最終的な分散物およびインクをもたらすことができることを見いだした。
添加剤
本発明の方法はさらに、粘度調整剤、pH緩衝剤、金属キレート化剤、界面活性剤、腐食抑制剤、殺生物剤、染料、水混和性有機溶媒(1以上)および/またはコゲーション低減剤(kogation reducing additive)から選択される1以上の添加剤の添加を含むことが好ましい。これらは、段階II)の後に加えることが好ましい。
該方法の生成物
本発明の第2の観点に従って、本発明の第1の観点に従った方法により得た、または得ることができる封入顔料分散物を提供する。
インクおよびインクジェット印刷用インク
本発明の第2の観点に従った封入顔料分散物および本発明の第1の観点に従った方法を用いて、インク、特にインクジェット印刷用インクを調製することができる。
【0055】
インクは、25℃の温度で測定して、好ましくは50mPa.s未満、より好ましくは30mPa.s未満、特に15mPa.s未満の粘度を有する。
インクは、25℃の温度で測定して、好ましくは20〜65ダイン/cm、より好ましくは30〜60ダイン/cmの表面張力を有する。
【0056】
インクのpHは、好ましくは4〜11、より好ましくは7〜10である。
インクがインクジェット印刷用インクとして用いられることになっている場合、該インクは、好ましくは100万部あたり500部未満、より好ましくは100万部あたり100部未満のハロゲン化物イオン濃度を有する。インクが100万部あたり100部未満、より好ましくは50部未満の二価および三価の金属を有することが、特に好ましい。上記で用いた100万部あたりの部は、インクの全重量に対する重量部をさす。得られるインク中のこれら低濃度のイオンは、上記精製段階により達成することができる。
【0057】
インクの作製方法は、直径1ミクロンを超える粒子サイズを有する粒子を例えば濾過または遠心分離により除去するための段階を包含することが好ましい。インクは、直径1ミクロンを超えるサイズを有する粒子を、重量に基づき好ましくは10%未満、より好ましくは2%未満、特に1%未満有する。
【0058】
インク中の顔料の量は、重量に基づき好ましくは0.1〜15%、より好ましくは1〜10%、特に3〜10%である。
インク中の有機溶媒
インクは、水と有機溶媒を好ましくは99:1〜1:99、より好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜70:30の重量比で含有する。
【0059】
好ましい有機溶媒は、水混和性有機溶媒およびそのような溶媒の混合物である。好ましい水混和性有機溶媒としては、C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトン−アルコール、好ましくは、アセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびに、オリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくは、グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドおよびスルホランが挙げられる。液体媒体は、水と2以上、特に2〜8種の水混和性有機溶媒を含むことが好ましい。
【0060】
インクに特に好ましい水混和性有機溶媒は、環状アミド、特に、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドンおよびN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ならびに、ジオールのモノ−C1−4−アルキルおよびジ−C1−4−アルキルエーテル、より好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0061】
水と1以上の有機溶媒の混合物を含む他の適したインク媒体の例は、米国特許公報第4963189号、米国特許公報第4703113号、米国特許公報第4626284号および欧州出願公開EP425150A号に記載されている。
【0062】
インクジェット印刷用インクは、インクジェット印刷機用カートリッジのチャンバーに容易に加えることができる。
用途
本発明の方法により、インクジェット印刷用インクでの使用に特に適している封入顔料分散物が調製される。これに加えて、該封入顔料分散物は、インク、ペイント、毛髪染料、化粧料、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックに用いることができる。
【0063】
本発明の第3の観点に従って、インクジェット印刷用インクを調製するための、本発明の第1の観点に従った方法の使用を提供する。好ましくは、この使用は、普通紙上に印刷したときにより高い光学濃度をもたらすインクジェット印刷用インクを提供する技術的目的のためである。
【0064】
本発明の方法により調製される封入顔料分散物を含有するインクジェット印刷用インクは、いくつかの態様において、例えば、耐湿潤堅牢度または光学濃度を改善するか色のブリードを低減するための固着剤を含む紙で、用いることができる。他の態様において、本発明の方法により調製される封入顔料分散物を含有するインクジェット印刷用インクは、固着剤と一緒に用いることができる。例えば、インクジェット印刷機用カートリッジは、1つのチャンバーに上記インクを含み、他のチャンバーに固着剤を含む液体を含んでいてもよい。このようにして、インクジェット印刷機は、インクおよび固着剤を基材に施用することができる。
【0065】
固着剤は当分野で周知であり、金属塩、酸およびカチオン性材料などのものを包含する。
本発明をさらに以下の実施例により例示する。実施例において、部および百分率はすべて、特記しない限り重量に基づく。
【実施例】
【0066】
実施例
以下に記載する実験を必要なように率に応じて増減することができるように、量は部で表してある。実際の実験は、すべての部がグラムである状態で実施した。
1.分散剤の調製
1.1 分散剤(1)の調製
モノマー供給組成物を、メタクリル酸ベンジル(871部)、メタクリル酸(129部)およびイソプロパノール(375部)を混合することにより調製した。
【0067】
開始剤供給組成物を、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)およびイソプロパノール(187.5部)を混合することにより調製した。
イソプロパノール(187.5部)を反応器内で80℃に加熱し、継続的に攪拌し、窒素ガス雰囲気でパージした。モノマー供給組成物および開始剤供給組成物を徐々に反応器に供給する一方、内容物を攪拌し、温度を80℃で維持し、窒素雰囲気を維持した。モノマー供給物および開始剤供給物をともに2時間かけて反応器に供給した。反応器の内容物を80℃でさらに4時間維持した後、25℃に冷却した。その後、得られた分散剤を、減圧下での回転蒸発により反応器の内容物から単離した。これを分散剤(1)とした。分散剤(1)は、47999の数平均分子量、89332の重量平均分子量、およびGPCにより測定して1.86の多分散性を有するアクリルコポリマーであった。分散剤(1)は、酸基1.5ミリモル/分散剤1gに相当する酸価を有していた。分散剤(1)は、メタクリル酸ベンジルおよびメタクリル酸に由来する反復単位を、それぞれ重量に基づき87.1:12.9の割合で含有していた。
1.2 分散剤(2)の調製
分散剤(2)は、用いたモノマーがメタクリル酸ベンジル(827部)およびメタクリル酸メチル(173部)であった点を除き、分散剤(1)とまったく同じ方法で調製した。これを分散剤(2)とした。分散剤(2)は、50823の数平均分子量、92274の重量平均分子量、およびGPCにより測定して1.82の多分散性を有するアクリルコポリマーであった。分散剤(2)は、酸基2.0ミリモル/分散剤1gに相当する酸価を有していた。分散剤(2)は、メタクリル酸ベンジルおよびメタクリル酸に由来する反復単位を、それぞれ重量に基づき82.7:17.3の割合で含有していた。メタクリル酸の割合がより高いことから明らかなように、分散剤(2)は分散剤(1)よりいくぶん親水性が高い。
1.3 分散剤(3)の調製
分散剤(3)は、用いたモノマーがメタクリル酸ベンジル(785部)およびメタクリル酸メチル(215部)であった点を除き、分散剤(1)とまったく同じ方法で調製した。これを分散剤(3)とした。分散剤(3)は、47535の数平均分子量、82400の重量平均分子量、およびGPCにより測定して1.73の多分散性を有するアクリルコポリマーであった。分散剤(3)は、酸基2.5ミリモル/分散剤1gに相当する酸価を有していた。分散剤(3)は、メタクリル酸ベンジルおよびメタクリル酸に由来する反復単位を、それぞれ重量に基づき78.5:21.5の割合で含有していた。メタクリル酸の割合がより高いことから明らかなように、分散剤(3)は分散剤(1)および分散剤(2)よりいくぶん親水性が高い。
1.4 比較分散剤(1)の調製
比較分散剤(1)は、用いたモノマーがメタクリル酸2−エチルヘキシル(350部)、メタクリル酸メチル(413部)およびメタクリル酸(237部)であった点を除き、分散剤(1)とまったく同様に調製した。これを比較分散剤(1)とした。比較分散剤(1)は、11865の数平均分子量、29225の重量平均分子量、およびGPCにより測定して2.5の多分散性を有するアクリルコポリマーであった。比較分散剤(1)は、酸基2.75ミリモル/分散剤1gに相当する酸価を有していた。比較分散剤(1)は、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸に由来する反復単位を、それぞれ重量に基づき35:41.3:23.7の割合で含有していた。以上からわかるように、比較分散剤(1)は(メタ)アクリル酸ベンジル反復単位を有さない。
1.5 比較分散剤(2)の調製
比較分散剤(2)は、用いたモノマーがメタクリル酸ベンジル(350部)、メタクリル酸メチル(413部)およびメタクリル酸(237部)であった点を除き、分散剤(1)とまったく同様に調製した。これを比較分散剤(2)とした。比較分散剤(2)は、52105の数平均分子量、85450の重量平均分子量、およびGPCにより測定して1.64の多分散性を有するアクリルコポリマーであった。比較分散剤(2)は、酸基2.75ミリモル/分散剤1gに相当する酸価を有していた。比較分散剤(2)は、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸に由来する反復単位を、それぞれ重量に基づき35:41.3:23.7の割合で含有していた。以上からわかるように、比較分散剤(2)は、ポリマー100部あたり50部未満の(メタ)アクリル酸ベンジル反復単位を含み、したがって、本発明の範囲外である。
2.分散剤溶液の調製
2.1 分散剤溶液(1)
分散剤(1)(200部)を水に溶解して(1000部)にし、水酸化カリウム水溶液で中和して、約9のpHを有する水溶液を得た。これにより、約20重量%の分散剤(1)を含有する分散剤溶液(1)が得られた。
2.2 分散剤溶液(2)
分散剤溶液(2)は、分散剤(1)の代わりに分散剤(2)を用いた点を除き、分散剤溶液(1)とまったく同じ方法で調製した。これにより、約20重量%の分散剤(2)を含有する分散剤溶液(2)が得られた。
2.3 分散剤溶液(3)
分散剤溶液(3)は、分散剤(1)の代わりに分散剤(3)を用いた点を除き、分散剤溶液(1)とまったく同じ方法で調製した。これにより、約20重量%の分散剤(3)を含有する分散剤溶液(3)が得られた。
2.4 比較分散剤溶液(1)
比較分散剤溶液(1)は、分散剤(1)の代わりに比較分散剤(1)を用いた点を除き、分散剤溶液(1)とまったく同じ方法で作製した。これにより、約20重量%の比較分散剤(1)を含有する比較分散剤溶液(1)が得られた。
2.5 比較分散剤溶液(2)
比較分散剤溶液(2)は、分散剤(1)の代わりに比較分散剤(2)を用いた点を除き、分散剤溶液(1)とまったく同じ方法で作製した。これにより、約20重量%の比較分散剤(2)を含有する比較分散剤溶液(2)が得られた。
3.ミルベースの調製
3.1 黒色ミルベース(1)
顔料粉末(DegussaからのNIPexTM 170IQカーボンブラック顔料90部)、分散剤溶液(1)(225部)を一緒に混合して、予備混合物を形成した。混合および微粉砕に適した粘度が得られるように、場合によっては必要に応じて水を予備混合物に加えた。
【0068】
予備混合物を、SilversonTMミキサーを用いて30分間にわたり一緒に十分に混合した。混合後、混合物を1mmのビーズが入っている垂直型ビーズミルに移した。その後、混合物を4時間にわたり微粉砕した。
【0069】
その後、微粉砕した混合物から微粉砕ビーズを濾過により取り出した。微粉砕した混合物を、純水を加えることにより10重量%の顔料になるように調整した。これにより黒色ミルベース(1)が得られた。得られたミルベース中の顔料粒子は、144nmのMv平均粒子サイズを有していた。Mv平均粒子サイズは、Honeywell−Microtracから得たNanotrac 150を用いて、すべての分散物について確定した。
3.2 マゼンタミルベース(1)
マゼンタミルベース(1)は、マゼンタ顔料(Dainichi Seikaから得たC.I.Pigment 122であるTRM11を85部)および分散剤溶液(1)(215部)を黒色ミルベース(1)で記載した対応する成分の代わりに用いた点を除き、黒色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計8時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、151nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.3 黄色ミルベース(1)
黄色ミルベース(1)は、黄色顔料(Cibaから得たアリールアミド顔料であるIrgaliteTM Yellow GSを100部)および分散剤溶液(1)(250部)をミルベース(1)で記載した対応する成分の代わりに用いた点を除き、黒色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計9時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、131nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.4 シアンミルベース(1)
顔料粉末(Dainichi Seikaから得た強度50%のC.I.Pigment Blue 15:3ペーストであるTRB2ペーストを150部)、分散剤溶液(1)(187.5部)を一緒に混合して、予備混合物を形成した。混合および微粉砕に適した粘度が得られるように、場合によっては必要に応じて水を予備混合物に加えた。
【0070】
予備混合物を、SilversonTMミキサーを用いて90分間にわたり一緒に十分に混合した。混合後、混合物を0.5mmのビーズが入っている水平型ビーズミルに移した。その後、混合物を5時間にわたり微粉砕した。
【0071】
その後、微粉砕した混合物から微粉砕ビーズを濾過により取り出した。これによりシアンミルベース(1)が得られた。得られたミルベース中の顔料粒子は、171nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.5 黒色ミルベース(2)
黒色ミルベース(2)は、分散剤溶液(1)の代わりに分散剤溶液(2)を用いた点を除き、黒色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計3時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、144nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.6 マゼンタミルベース(2)
マゼンタミルベース(2)は、分散剤溶液(1)の代わりに分散剤溶液(2)を用いた点を除き、マゼンタミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計7時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、126nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.7 黄色ミルベース(2)
黄色ミルベース(2)は、分散剤溶液(1)の代わりに分散剤溶液(2)を用いた点を除き、黄色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。得られたミルベース中の顔料粒子は、136nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.8 シアンミルベース(2)
シアンミルベース(2)は、分散剤溶液(1)の代わりに分散剤溶液(2)を用いた点を除き、シアンミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計4時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、158nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.9 黒色ミルベース(3)
黒色ミルベース(3)は、分散剤溶液(1)の代わりに分散剤溶液(3)を用いた点を除き、黒色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計8時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、124nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.10 比較黒色ミルベース(1)
比較黒色ミルベース(1)は、NIPexTM 170IQカーボンブラック顔料(225部)および比較分散剤溶液(1)(450部)を黒色ミルベース(1)の対応する成分の代わりに用いた点を除き、黒色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計6時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、154nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.11 比較マゼンタミルベース(1)
比較マゼンタミルベース(1)は、TRM11マゼンタ顔料(838部)および比較分散剤溶液(1)(1255部)をマゼンタミルベース(1)の対応する成分の代わりに用いた点を除き、マゼンタミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計12時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、154nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.12 比較黄色ミルベース(1)
比較黄色ミルベース(1)は、IrgaliteTM Yellow GS顔料(900部)および比較分散剤溶液(1)(1350部)を黄色ミルベース(1)の対応する成分の代わりに用いた点を除き、黄色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計23時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、148nmのMv平均粒子サイズを有していた。
3.13 比較シアンミルベース(1)
比較シアンミルベース(1)は、TRB2ペースト(強度35%で750部)および比較分散剤溶液(1)(強度35%に調整後451部)をシアンミルベース(1)の対応する成分の代わりに用いた点を除き、シアンミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計3.5時間継続した。
3.14 比較黄色ミルベース(2)
比較黄色ミルベース(2)は、TRY−13黄色顔料(Dainichi Seikaから得たC.I.Pigment Yellow74)(100部)および比較分散剤溶液(2)(250部)を黄色ミルベース(1)の対応する成分の代わりに用いた点を除き、黄色ミルベース(1)とまったく同じ方法で調製した。この場合、微粉砕を合計17時間継続した。得られたミルベース中の顔料粒子は、145nmのMv平均粒子サイズを有していた。
4. 封入顔料分散物を調製するための分散剤の架橋
4.1 ミルベースの架橋
上記項目3.1〜3.14で調製したすべてのミルベースを、水を加えることにより約10重量%の固形分になるように調整した。
【0072】
その後、各ミルベース中の分散剤を、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(Aldrichから得た平均分子量526のもの、これ以降PEGDGEと略する)またはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(Nagase ChemteXから得たDenacol EX−321、エポキシあたりの重量=140、これ以降EX−321と略する)のいずれかの架橋剤を用いて架橋した。これにより分散剤中のカルボン酸基が架橋し、その結果、顔料が封入された。架橋反応はホウ酸(Aldrichから得た)の存在により制御した。各場合で、表1に明記した成分の量を含有する混合物を調製した。架橋反応は、上記混合物を約65℃の温度に5時間加熱することにより生じさせた。これにより、表1の第1列に示したような参照名を有するさまざまな封入顔料分散物を調製した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1において、“最終Mv”という表題の列には、架橋段階II)の直後に調製した封入顔料のMv平均粒子サイズを挙げる。
5. 限外濾過
上記4.1で調製した封入顔料分散物を、0.1ミクロンの細孔サイズを有する膜を用いて限外濾過によりそれぞれ精製した。封入顔料分散物を、封入顔料分散物1体積あたり約10〜40洗浄体積(wash volume)の純粋な脱イオン水を用いて、ダイアフィルターで濾過した(diafiltered)。その後、限外濾過膜を用いて封入分散物を濃縮して、約10〜13重量%の固形分に戻した。
6. 臨界凝結濃度の測定
上記項目5の後に精製した封入顔料分散物の塩化ナトリウム臨界凝結濃度(CCC)を、NaClの濃度を段階的に0.1Mずつ用いて、先に記載した方法により測定した。
【0076】
結果はCCC値において顕著な差を示した。われわれは、これを分散剤の組成の差に主として起因すると考える。
【0077】
【表3】

【0078】
分散剤(1)、(2)および(3)を含有する封入顔料分散物は、比較分散剤(1)を含有するものより遙かに小さなCCC値を有することを、容易に理解することができる。
7. インクおよび比較インクの調製
上記5で精製した後、各封入および比較封入顔料分散物を用いて、以下の組成の一方を有するインクまたは比較インクを調製した。
インクビヒクル(1)
封入顔料分散物 X部
2−ピロリドン 3.00部
グリセロール 15.00部
1,2ヘキサンジオール 4.00部
エチレングリコール 5.00部
SurfynolTM 465 0.50部
純水 100部にするのに十分な量
SurfynolTM 465は、Airproductsから入手可能な界面活性剤である。
インクビヒクル(2)
封入顔料分散物 X部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5.00部
エチレングリコール 15.00部
SurfynolTM 465 0.70部
純水 100部にするのに十分な量
X部の封入顔料分散物
黒色のインクの場合、有効顔料(pigment active) に対し(または他のあらゆる固体成分の重量を除く顔料固体ベースで)6部の黒色顔料を用いた(約60部の封入顔料分散物)。マゼンタの色のインクの場合、有効顔料ベースで5.5部のマゼンタ顔料を用いた。黄色のインクの場合、有効顔料ベースで5部の黄色顔料を用いた。シアンの色のインクの場合、有効顔料ベースで4部のシアン顔料を用いた。
【0079】
上記インク組成を用い、例えば、封入黒色分散物(1)を用いて黒色インク(1)を調製し、比較封入黄色分散物(2)を用いて比較黄色インク(2)を調製した。参照名の正確な対応の概要を表3に完全に挙げる。
【0080】
【表4】

【0081】
8. プリントの作製
上記項目7に記載した各インクおよび比較インクを、普通(未処理)紙、すなわちXerox 4200紙上に印刷した。印刷は、色のブロックを100%印刷するSEC D88インクジェット印刷機により実施した。
9. 光学濃度の測定
各プリントについて、反射率光学濃度(reflectance optical density)(ROD)を、D65光源を観測視野2°でフィルターを取り付けずに用いて照明したGretag Macbeth key wizard V2.5 Spectrolino光濃度計を用いて測定した。測定は、プリントに沿って少なくとも2点で行い、その後平均化した。
10. 光学濃度測定の結果
ROD測定の結果を以下の表4にまとめる。
【0082】
【表5】

【0083】
表4から、本発明の第1の観点に従った方法により調製した封入顔料分散物を用いると、普通紙上に印刷したときに特に良好なRODをもたらすインクジェット印刷用インクを調製することができることを、容易に理解することができる。
11. さらなるインク
表IおよびIIに記載したさらなるインクを調製することができる。ここにおいて、第1列に挙げた限外濾過した封入顔料分散物(EPD)を、第2列に挙げた量で用いることができる。
【0084】
第3列以降に示した数字は、関連するインク成分の部数をさす。部はすべて、重量に基づく。インクは、サーマル、圧電式またはMemjetインクジェット印刷により紙に施用することができる。
【0085】
以下の略語を表IおよびIIに用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
Surf=AirproductsからのSurfynolTM 465
PHO=NaHPOおよび
TBT=第三ブタノール
TDG=チオジグリコール
GLY=グリセロール
nBDPG=ジプロピレングリコールのモノ−n−ブチルエーテル
nBDEG=ジエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテル
nBTEG=トリエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテル
EPD−封入顔料分散物
EBD1−封入黒色分散物(1)
EBD2−封入黒色分散物(2)
EMD1−封入マゼンタ分散物(1)
EMD2−封入マゼンタ分散物(2)
EYD1−封入黄色分散物(1)
EYD2−封入黄色分散物(2)
【0086】
【表6】

【0087】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷用インクでの使用に適した封入顔料分散物の調製方法であって、以下の段階を、I)続いてII)の順番で含む方法:
I)顔料と、液体媒体と、以下の成分a)〜c)のエチレン不飽和モノマーの共重合に由来する反復単位を含む分散剤:
a)少なくとも50部の(メタ)アクリル酸ベンジルを含む1以上の疎水性エチレン不飽和モノマー75〜97部;
b)1以上のイオン性基(1以上)を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー3〜25部;
c)親水性非イオン性基を有する1以上の親水性エチレン不飽和モノマー0〜2部;
ここにおいて、部は重量に基づき、a)〜c)の部の合計は100になる
とを含む分散物を提供する段階;
II)該分散剤を顔料および液体媒体の存在下で架橋する段階。
【請求項2】
成分a)が少なくとも60部の(メタ)アクリル酸ベンジルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分a)が少なくとも70部の(メタ)アクリル酸ベンジルを含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
成分a)が(メタ)アクリル酸ベンジルのみを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成分a)がメタクリル酸ベンジルのみを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成分b)が、1以上のカルボン酸基を有する1以上のモノマーであるか、該モノマーを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
成分b)がメタクリル酸を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
成分b)がメタクリル酸である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
成分c)が存在しない(すなわち、成分c)がゼロ部である)、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分散剤が、以下の成分a)〜c)のエチレン不飽和モノマー:
(a)少なくとも50部のメタクリル酸ベンジルを含む1以上の疎水性モノマー80〜93部;
(b)メタクリル酸7〜20部;
(c)親水性非イオン性基を有する親水性エチレン不飽和モノマーなし;
ここにおいて、部は重量に基づき、a)〜c)の部の合計は100になる
の共重合に由来する反復単位を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
段階II)の架橋をエポキシ架橋剤により生じさせ、成分b)が、1以上のカルボン酸基を有する1以上のモノマーであるか、該モノマーを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
液体媒体が水であるか水を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
段階I)でもたらされる分散物が2.0M以下の塩化ナトリウム臨界凝結濃度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
得られる封入顔料分散物が2.0M以下の塩化ナトリウム臨界凝結濃度を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
得られる封入顔料分散物が、0.2M〜1.6Mの塩化ナトリウム臨界凝結濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、封入顔料分散物を精製する段階を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
さらに、粘度調整剤、pH緩衝剤、金属キレート化剤、界面活性剤、腐食抑制剤、殺生物剤、染料、水混和性有機溶媒(1以上)および/またはコゲーション低減剤から選択される1以上の添加剤の添加を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法により得た、または得ることができる、封入顔料分散物。
【請求項19】
請求項18に記載の封入顔料分散物を含むか、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法により調製されている、インクジェット印刷用インク。
【請求項20】
チャンバーおよびインクジェット印刷用インクを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該インクジェット印刷用インクが、チャンバー内に存在し、請求項19に記載のものである、前記カートリッジ。
【請求項21】
インクジェット印刷用インクを調製するための、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項22】
普通紙上に印刷したときにより高い光学濃度をもたらすインクジェット印刷用インクを提供する技術的目的のための、請求項21に記載の使用。

【公表番号】特表2012−504675(P2012−504675A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529631(P2011−529631)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051285
【国際公開番号】WO2010/038071
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】