説明

方法

【課題】糖尿病、肥満症、高脂血症(hyperlipidaemia)、高コレステロール血症(hypercholesterolaemia)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、癌、炎症(inflammation)もしくは他の症状の治療に有用な化合物及びそれを特定する方法を提供すること。
【解決手段】次の式(I)式(I):Z−X−Z、但し、a)ZはCOHまたはその誘導体を表し、b)ZはF、H、−COHまたはその誘導体を表し、c)Xはフッ素化アルキレンを表す)で表される分子またはそれらの溶媒和化合物、例えば、過フッ素化脂肪酸またはその誘導体であり、糖尿病、肥満症、高コレステロール血症(hypercholesterolaemia)、高脂血症(hyperlipidaemia)、癌、炎症または他の症状の治療に有用である。治療にあたっては、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を調整することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の医学的使用方法と、更に、有用な化合物、特に、糖尿病、肥満症、高脂血症(hyperlipidaemia)、高コレステロール血症(hypercholesterolaemia)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、癌、炎症(inflammation)もしくは他の症状の治療に有用な化合物を特定する方法とに関する。治療にあたっては、脂質もしくはエイコサノイドの状態を調整することが望ましい。
【背景技術】
【0002】
過フッ化オクタン酸(perfluorooctanoic acid)(PFOA)及び他の過フッ化脂肪酸、または、フッ化アルキル分子(fluoroalkyl molecules)は、産業目的で主に界面活性剤として用いられる合成分子である。これらの化合物については、実験動物及び細胞に対する影響が研究されており、例えば、人間について業務上暴露による影響をもたらす旨の研究がなされている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照)。特許文献1では、フッ素含有の酸を用いて癌の症状を治療することが提案されているが、実験データについては示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々は、予期せぬことに、そのような化合物が有用な効果をもたらし得ることを見い出した。我々は、そのような化合物が、糖尿病、肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、癌、炎症もしくは他の症状の治療に有用であることを見い出した。治療にあたっては、脂質もしくはエイコサノイドの状態を調整することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、体重を調節(好ましくは低減)するか、もしくは体重の増加を調節(好ましくは防止もしくは低減)する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ(triglycerides)及び/もしくは血漿のコレステロールを調節(好ましくは低減)する必要がある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、ここで定められる式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。
【0007】
式(I)の化合物は、
−X−Z
であり、但し、
は−COHもしくはその誘導体を表し、
はF、H、−COHもしくはその誘導体を表し、
Xはフッ化アルキレンを表し、
またはそれらの溶媒和化合物(solvate)である。
以下、かかる化合物を「本発明の化合物」と称することにする。
【0008】
本発明の更なる態様は、抗腫瘍剤もしくは抗炎症剤を必要とし、並びに/または、脂質もしくはエイコサノイドの状態を調節する必要がある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本明細書で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。式(I)の化合物は、抗腫瘍剤、もしくは抗炎症剤として有効であるか、または、脂質もしくはエイコサノイドの状態(すなわち、全身(systemically)、または、特定の部位(locus)もしくは組織(tissue)でみたときの脂質もしくはエイコサノイドの型(type)及び濃度)を調節するのに有効であると考えられる。
【0009】
被験体は、過剰な炎症(excessive inflammation)を患うか、もしくはそうなるリスクがある被験体であってもよく、このような被験体としては、例えば、関節炎を患うか、もしくはそうなるリスクがある被験体、または、腫瘍を患うか、もしくはそうなるリスクがある被験体が挙げられる。本発明の化合物は、腫瘍の発現、成長もしくは転移を低減し得る。
【0010】
本発明の化合物は、過剰な炎症を患うか、またはそうなるリスクがある被験体の症状または疾患を治療するのに有用である。被験体は、アレルギー性または自己免疫性の疾患を患っていてもよい。例えば、被験体は、乾癬、炎症性腸疾患、喘息またはリウマチを患っていてもよい。
【0011】
本発明の更なる態様は、体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中(stroke)、閉塞型睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnoea)、関節炎(例えば変形性関節症(osteoarthritis))及び/もしくは生殖力低下(reduced fertility)を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本明細書で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。
【0012】
本発明の更なる態様は、PPAR(例えばPPARα、δもしくはγ)の活性(activity)を調節する必要がある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本明細書で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。化合物は、PPARアゴニスト(agonist)またはPPARアンタゴニスト(antagonist)であってもよい。化合物は、一つのPPARに対するアゴニストであると同時に、異なるPPARに対するアンタゴニストであってもよい。好ましくは、被験体は、PPARαもしくはPPARγの活性を増大させる必要がある被験体であり、化合物は、PPARαもしくはPPARγアゴニストである。これとは選択的に、被験体は、PPARαもしくはPPARγの活性を減少させる必要がある被験体であり、化合物は、PPARαもしくはPPARγアンタゴニストであってもよい。更に選択的に、被験体は、PPARδの活性を増大させる必要がある被験体であり、化合物は、PPARδアゴニストであってもよい。更に選択的に、被験体は、PPARδの活性を減少させる必要がある被験体であり、化合物は、PPARδアンタゴニストであってもよい。PPARδは、PPARαまたはPPARγに対する拮抗作用(opposing effect)を有していてもよい(例えば、国際公開WO01/07066号公報を参照)。
【0013】
本発明の更なる態様は、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を調節する必要、例えば、脂質代謝もしくは脂質結合物質(脂質代謝酵素、及び、脂質輸送ポリペプチドなどの脂質結合ポリペプチドを含む)の活性、例えば、シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)(例えばシクロオキシゲナーゼI、シクロオキシゲナーゼII)もしくはホスホリパーゼA(phospholipase A)(例えばホスホリパーゼA2)もしくはリポキシゲナーゼ(lipoxygenase)の活性を調節する必要がある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本明細書で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。好ましくは、被験体は、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性、例えば、シクロオキシゲナーゼ(例えばシクロオキシゲナーゼI、シクロオキシゲナーゼII)、ホスホリパーゼAもしくはリポキシゲナーゼの活性を減少させる必要がある被験体であり、化合物は、このような活性に対する阻害物質(インヒビター)である。例えば、炎症、過敏症、喘息または幾つかの血管疾患には、リポキシゲナーゼの不適切な活性が関与しているであろうから、リポキシゲナーゼの活性を減少させることは、そのような症状に有効となるであろう。
【0014】
これとは選択的に、被験体は、そのような活性を増大させる必要がある被験体であり、化合物は、そのような活性に対する活性物質(activator)であってもよい。
【0015】
被験体及び化合物の更に好ましい例については次の通りである。
式(I)の化合物は、互変異性(tautomerism)を示し得る。その化合物の互変異性構造体及び混合体は、何れも本発明の範囲に含まれる。
【0016】
また、式(I)の化合物は、1つ乃至複数の不斉炭素原子を含み、これにより、光学異性及び/またはジアステレオ異性(diastereoisomerism)を示してもよい。ジアステレオ異性体は、通常の手法、例えばクロマトグラフィーや分別晶出法などを用いて分離することができる。通常の手法、例えば分別晶出法やHPLCなどを用いてその化合物のラセミ混合物もしくは他の混合物を分離することにより、様々な立体異性体を単離できる。これとは選択的に、ラセミ化もしくは光学異性化(epimerisation)を生じないような条件下で適切な光学活性出発材料を反応させることにより、所望の光学異性体を調製してもよい。または、例えばホモキラル酸を用いて誘導体化を施した後、通常の手段(例えばHPLC、または、シリカを用いたクロマトグラフィーなど)によりジアステレオ性エステルを分離することにより、所望の光学異性体を調製してもよい。立体異性体は、何れも本発明の範囲に含まれる。
【0017】
本明細書で示すように、−COH基の誘導体とは、−C(O)OHと同じ酸化状態にある中心炭素原子(すなわちXに接続される炭素原子)を含む基、及び/または、カルボン酸から一般に誘導されるような基を含む。従って、−COH基の誘導体とは、次のような基を含む。
(i)エステル。例えば、式ROH(但しRはアリールまたはアルキルを表す)で表されるアルコールにより得られるもの。
(ii)チオエステル。例えば、式RSH(但しRは先に定められた通りである)で表されるチオールにより得られるもの。
(iii)塩。例えば、アンモニア、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンもしくはピリジンなどの窒素含有塩基か、または、アルカリ土類金属(alkali or alkaline earth metal)の塩(Na、K、Cs、MgもしくはCaの塩)により得られるもの。
好ましくは、−COH基の誘導体には、調剤上受容可能なものが含まれる。
【0018】
本明細書で用いられるように、用語「フッ素」には、(適切には)例えば、塩素もしくは臭素などの他のハロゲン、または、複数のハロゲンへの言及が含まれると考えられる。しかし、ハロゲンはフッ素であることが極めて好ましい。
【0019】
式(I)の化合物は、少なくとも2つのフッ素原子、好ましくは少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つもしくは8つのフッ素原子を含むことが好ましい。
【0020】
本明細書において、用語「アリール」とは、C6−10のアリール基、例えば、フェニル基もしくはナフチルなどを含む。アリール基は、1つ乃至複数の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、−OH、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシなどが挙げられる。置換される場合、アリール基は、1つ乃至3つの置換基で置換されることが好ましい。
【0021】
本明細書において、用語「アルキル」とは、1〜16のアルキル基、好ましくは1乃至10つ(例えば1乃至6つ)の炭素原子を意味する。
【0022】
本明細書において、用語「アルコキシ」とは、1〜16のアルコキシ基、好ましくは1乃至10つ(例えば1乃至6つ)の炭素原子を意味する。
【0023】
ここで定められたアルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状でもよく、または、炭素原子が充分な数(すなわち最小値は3)だけあれば、分岐鎖状および/もしくは環状および/もしくは複素環状であってもよい。更に、このようなアルキル基及びアルコキシ基は、炭素原子が充分な数(すなわち最小値は4)だけあれば、部分的に環状または非環状となっていてもよい。また、このようなアルキル基及びアルコキシ基は、飽和となっていてもよく、または、炭素原子が充分な数(すなわち最小値は2)だけあれば、不飽和、および/もしくは、1乃至複数の酸素および/もしくは硫黄原子が挿入されていてもよい。また、アルキル基及びアルコキシ基は、1乃至複数のハロゲン原子、特にフッ素原子によって置換されていてもよい。
【0024】
本明細書において、用語「ハロ」とは、フッ化、塩化、臭化及びヨウ化を含む。
本明細書において、用語「アルキルアミン」、「ジアルキルアミン」、「トリアルキルアミン」とは、それぞれ、本明細書で定められた1つ、2つ、3つのアルキル基をもつアミンを意味する。
【0025】
本明細書において、用語「アルキレン」とは、1〜20のアルキレン基、好ましくは2乃至17つ(例えば6乃至12つ)の炭素原子を意味する。アルキレン基は、直鎖状でもよく、または、炭素原子が充分な数(すなわち、適切には最小値が2もしくは3)だけあれば、分岐鎖状および/もしくは環状および/もしくは複素環状であってもよい。更に、このようなアルキレン基は、炭素原子が充分な数(すなわち最小値は4)だけあれば、部分的に環状または非環状となっていてもよい。また、このようなアルキレン鎖は、飽和となっていてもよく、または、炭素原子が充分な数(すなわち最小値は2)だけあれば、不飽和、および/もしくは、1乃至複数の酸素および/もしくは硫黄原子が挿入されていてもよい。
【0026】
好ましい式(I)の化合物は、次のものを含む。
アルキレン基Xは、少なくとも50%フッ化され、
アルキレン基Xは、2乃至17つの炭素原子を含み、
は、−COH、または、アンモニウム、または、−COHもしくは−COの(C1−10アルキル)アンモニウム塩もしくはジ−(C1−10アルキル)アンモニウム塩もしくはトリ−(C1−10アルキル)アンモニウム塩を表し、
は、F、H、−COHまたは−COを表し、
は、C1−6アルキルを表す。
【0027】
より好ましい式(I)の化合物は、次のものを含む。
アルキレン基Xは、少なくとも75%フッ化され、
アルキレン基Xは、直鎖状であり、飽和となっており、かつ、4乃至14つの炭素原子を含み、
は、−COH、または、アンモニウム、または、−COHもしくは−COの(C1−6アルキル)アンモニウム塩もしくはジ−(C1−6アルキル)アンモニウム塩もしくはトリ−(C1−6アルキル)アンモニウム塩を表し、
は、F、H、−COHまたは−COを表し、
は、F、−COHまたは−COを表し、
は、直鎖状で、不置換の、かつ、飽和のC1−4アルキルを表す。
【0028】
より一層好ましい式(I)の化合物は、次のものを含む。
アルキレン基Xは、少なくとも75%フッ化され、
アルキレン基Xは、直鎖状であり、飽和となっており、かつ、6乃至12つの炭素原子を含み、
は、−COH、または、−COHもしくは−COのアンモニウム塩を表し、
は、直鎖状で、不置換の、かつ、飽和のC1−2アルキルを表す。
【0029】
特に好ましい式(I)の化合物は、次の通りであるか、または、次のグループの要素を含む。
ペルフルオロヘプタン酸(perfluoroheptanoic acid)、ペルフルオロオクタン酸(perfluorooctanoic acid)、ペルフルオロノナン酸(perfluorononanoic acid)、ペルフルオロデカン酸(perfluorodecanoic acid)、ペルフルオロウンデカン酸(perfluoroundecanoic acid)、ペルフルオロドデカン酸(perfluorododecanoic acid)、ペルフルオロテトラデカン酸(perfluorotetradecanoic acid)、ペルフルオロヘキサデカン酸(perfluorohexadecanoic acid)、ペルフルオロオクタデカン酸(perfluorooctadecanoic acid)、ペルフルオロコハク酸(perfluorosuccinic acid)、ペルフルオログルタル酸(perfluoroglutaric acid)、ペルフルオロアジピン酸(perfluoroadipic acid)、ペルフルオロスベリン酸(perfluorosuberic acid)、ペルフルオロアゼライン酸(perfluoroazelaic acid)、ペルフルオロセバシン酸(perfluorosebacic acid)、ペルフルオロ−1,10−デカンジカルボン酸(perfluoro-1,10-decanedicarboxylic acid)、ペルフルオロヘプタン酸メチル(methyl perfluoroheptanoate)、ペルフルオロオクタン酸メチル(methyl perfluorooctanoate)、ペルフルオロノナン酸メチル(methyl perfluorononanoate)、ペルフルオロデカン酸メチル(methyl perfluorodecanoate)、ペルフルオロウンデカン酸メチル(methyl perfluoroundecanoate)、ペルフルオロドデカン酸メチル(methyl perfluorododecanoate)、ペルフルオロトリデカン酸メチル(methyl perfluorotridecanoate)、ペルフルオロテトラデカン酸メチル(methyl perfluorotetradecanoate)、ペルフルオロペンタデカン酸メチル(methyl perfluoropentadecanoate)、ペルフルオロヘキサデカン酸メチル(methyl perfluorohexadecanoate)、ペルフルオロオクタデカン酸メチル(methyl perfluorooctadecanoate)、ペルフルオロコハク酸ジメチル(dimethyl perfluorosuccinate)、ペルフルオログルタル酸ジメチル(dimethyl perfluoroglutarate)、ペルフルオロアジピン酸ジメチル(dimethyl perfluoroadipate)、ペルフルオロスベリン酸ジメチル(dimethyl perfluorosuberate)、ペルフルオロアゼライン酸ジメチル(dimethyl perfluoroazelate)、ペルフルオロセバシン酸ジメチル(dimethyl perfluorosebacate)、ペルフルオロ−1,10−デカンジカルボン酸ジメチルエステル(perfluoro-1,10-decanedicarboxylic acid, dimethyl ester)、及び、ペルフルオロドデカン酸ジメチル(dimethyl perfluorododecanedioate)。
【0030】
これらの化合物は、適切な供給者、例えば3M、デュポン、ミテニまたはダイニオンから購入できる。
【0031】
有用となり得るようなフルオロアルキル・カルボニル化合物の例としては、α−分岐・フルオロアルキルカルボニル・フッ化物及びその誘導体が挙げられる。これらは、米国特許第6,013,795号明細書もしくは米国特許6,015838号明細書(両方ともリファランスとして本明細書に組み込まれる)、及び、それら米国特許明細書で示された引用文献、例えば米国特許2,567,011号明細書(リファランスとして本明細書に組み込まれる)に記載されている。更に、これらを調製する方法も記載されている。これらの化合物は、本発明の更なる化合物を合成する際にも有用であろう。
【0032】
化合物は、米国特許6,028,109号明細書で論じられ、PPARアゴニストであると指摘された化合物ではないことが好ましい。このように、化合物は、米国特許6,028,109号明細書の式(I)で表された化合物(図8を参照)ではないことが好ましい。
【0033】
特に好ましい式(I)の化合物としては、例えば、過フッ化オクタン酸(PFOA)などの過フッ化脂肪酸のようなフッ化脂肪酸、その誘導体、または、調剤上受容可能な、その塩もしくはエステル(例えば過フッ化オクタン酸アンモニウム(APFO))が挙げられる。APFOの化学式は、CF(CFCOONH(オクタン酸,ペンタデカフルオロ−,アンモニウム塩;C-8, FC-143;CAS Registry No 3825-26-1)である。これは、デュポン(DuPont Chemical Solutions Enterprise, DuPont-Strassel, D-61343 Bad Homburg Germany)から購入することができる。APFOの主な不純物(contaminant)としては、ペルフルオロヘプタン酸アンモニウム(CAS 6130-43-4)と、ペルフルオロヘキサン酸アンモニウム(CAS 68259-11-0)と、ペルフルオロペンタン酸アンモニウム(CAS 21615-47-4)と、ペルフルオロイソオクタン酸アンモニウム、ペルフルオロイソヘプタン酸アンモニウム、ペルフルオロイソヘキサン酸アンモニウム及びペルフルオロイソペンタン酸アンモニウムとして一般的に知られている分岐鎖状の類似物(homologs)とが挙げられる。AFPO調剤を用いた例1において観測された効果は、APFO自体の投与によるものとみなされるとしても、1つ乃至複数の不純物、例えば、上記で列挙されたあり得る不純物のうちの1つ乃至複数が、観測された当該効果に寄与している可能性も考えられよう。
【0034】
化合物は、PFOS(ペルフルオロ・オクチル・スルホネート(perfluorooctylsulphonate))、または、ペルフルオロデカン酸、または、それらの誘導体もしくは塩もしくはエステルではないことが好ましい。これらの化合物は、毒性、または、環境上好ましくない影響をもたらし得る。
【0035】
式(I)で表される(または、後述するように本発明に係るスクリーング方法により特定されるか、もしくは特定できる)化合物は、代謝的に安定である。例えば、化合物は、ペルフルオロオクタン酸と類似している代謝率を有することが好ましい。化合物は、代謝的に安定であるような脂質複製物(lipid mimetic)とみなすこともできる。
【0036】
本発明の更なる態様は、本明細書で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、体重を調節(好ましくは低減)するか、もしくは体重の増加を調節(好ましくは防止もしくは低減)する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ及び/もしくは血漿のコレステロールを調節(好ましくは低減)する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法を提供する。被験体は、(例えば、上記に列挙されたパラメータの低減に関する場合、)体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症及び/もしくはアテローム性動脈硬化症を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体であってもよい。リスクは、遺伝的要因、年齢、または、食生活などの環境的要因から生じ得る。
【0037】
被験体は、肥満に関係する他の症状、例えば、冠状動脈性心臓病、脳卒中(stroke)、閉塞型睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnoea)、関節炎(例えば変形性関節症(osteoarthritis))及び/もしくは生殖力低下(reduced fertility)を呈していてもよい。
【0038】
従って、本発明の更なる態様は、本明細書で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、閉塞型睡眠時無呼吸症、関節炎(例えば変形性関節症)及び/もしくは生殖力低下を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法を提供する。
【0039】
本発明の更なる態様は、式(I)の化合物の使用方法であって、抗腫瘍剤もしくは抗炎症剤を必要とするか、または、脂質もしくはエイコサノイドの状態を調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法を提供する。被験体の好ましい例については、先に述べた通りである。
【0040】
当業者によく知られているように、肥満は、体脂肪が過剰に蓄積された状態として記述され得る。肥満は、被験体の体格指数(body mass index)(BMI)を測定し、及び/または、腕の皮下脂肪量を、挟み試験(pinch test)により測定することによって判定され得る。BMIは、体重(キログラムでみた)を、メートルでみた身長の平方で割ったものとして定められる。BMI値25〜30は体重超過とみなされ、30よりも大きいと、肥満とみなされる。好ましくは、治療により、BMIが約29〜31未満に低下するか、または、体重超過による健康リスクがもはや重大でなくなる点に達することとなる。
【0041】
本発明の治療方法は、関連する他の症状に対する治療と組み合わせて用いてもよいであろう。例えば、肥満に関する場合、被験体は、カロリー制限食に従い、及び/または、運動プログラムに従ってもよい。
【0042】
薬剤は、複数(例えば2つ)の、式(I)で表される化合物(例えば、過フッ化脂肪酸もしくはその誘導体など)を含有してもよい。薬剤は、プロドラック、例えば、被験体に薬剤を投与した後、所望の生物活性(biological activity)を持つ分子に変換される分子などを含有してもよい。
【0043】
式(I)の化合物は、糖尿病の被験体を治療する際に特に有用であり得る。例えば、化合物は、II型糖尿病を治療する際に有用であり得る。I型の糖尿病の場合、化合物は、インシュリンについての増感剤(sensitiser)として有用であり得、よって、インシュリンの投与量が低減され、これにより、費用が低減されるとともに、インシュリン投与による副作用も低減され得る。今までの抗−糖尿病剤例えば、チアゾリジンジオン(thiazolidinedione)系の薬剤は、体重増加を促進するという、好ましくない作用をもたらし得る。式(I)の化合物、例えば、過フッ化アルキルカルボン酸化合物及びその誘導体など(例えばPFOA、APFOもしくはそれらの誘導体)は、抗−糖尿病剤として有用であるとともに、体重増加を防止するという好ましい作用を有すると考えられる。
【0044】
本発明の化合物は、多数の異常、例えば、糖尿病、肥満及び高脂血症などを同時に治療する際に有用であり得る。従って、これらの症状(これらの症状は、多くの場合、同時に起こる)をもつ被験体を、一つの化合物もしくは薬剤(preparation)で治療することが可能となり得る。このことは、例えば、被験体の薬剤服用順守(patient compliance)と、薬剤間相互作用の回避と、処方(formulation)及びマーケティングの容易化とについて有益となり得る。
【0045】
被験体は哺乳類であることが好ましい。被験体は、もっとも好ましくは人間であり、次に好ましくは、家畜化された動物、例えば、ペットとして、もしくは農業分野で飼育されている動物、例えば、馬、牛、猫もしくは犬である。
【0046】
好ましくは、化合物は、化合物投与前の血漿インシュリンレベル、または、化合物を投与されていない対照哺乳動物からみて、哺乳動物への投与後に、血漿インシュリンレベルが調節(好ましくは低下)される化合物である。特に好ましくは、血漿インシュリンレベルは、例1に示されるようにオスFischer344ラットについて化合物を投与した後に、(好ましくは対照動物からみて)調節(好ましくは低下)される。低下は、哺乳動物(好ましくはラット)に化合物を、最初に投与した後、何れの時についても充分に認められる(found)が、このような低下は、最初に化合物を投与した後、少なくとも7日間について認められる(すなわち、見える(appear)か、もしくは存在する)ことが好ましい。インシュリンレベルの低下については、少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75もしくは80%の低下が達成されることが好ましい。
【0047】
比較測定については、実質的に同じ給餌段階で、すなわち実質的に同じ時刻か、または、餌の摂取後、実質的に同じ経過時間で行うことが好ましいであろう。
【0048】
哺乳動物がラットである場合、血漿インシュリンレベルは、化合物について餌のレベルを30〜3000もしくは5000ppmとして、好ましくは50〜500ppmとして、更に好ましくは約300ppmとして投与した後に、調節(好ましくは低下)されることが好ましい。試験は、例1に記載された方法及び条件を用いて行うことが好ましい。インシュリンレベルの変化は、哺乳動物の不都合な臨床症状または挙動/活性の変化の何れも伴わないことが好ましい。このように、動物は、標準的な臨床化学分析、血圧及び/または目まいに基づいて観察され得る。従って、インシュリンレベルは、動物に副作用を生じさせないような量の化合物を投与した後、調節(好ましくは低下)されることが好ましい。
【0049】
当業者に知られているように、試験は、化合物、または、或る投与量の化合物について複数の動物に行うことができる。
【0050】
選択的または追加的に、哺乳動物に化合物を投与した後、化合物投与前のレベル、または、化合物を投与されていない対照哺乳動物からみて、血漿のコレステロール、グルコース及び/もしくはトリグリセリドのレベルが哺乳動物において調節(好ましくは低下)され、並びに/または、レプチンのレベルが哺乳動物において調節されることが好ましい。インシュリンレベルの調節(例えば低下)について先に示された好ましい例は、血漿のコレステロール、グルコース及びトリグリセリドのレベルの調節(例えば低下)、並びに、レプチンのレベルの調節についても同様に適用される。選択的または追加的に、哺乳動物に化合物を投与した後、化合物投与前のレベル、または、化合物を投与されていない対照哺乳動物からみて、エイコサノイドの状態(すなわち型(type)もしくは濃度)が、哺乳動物(または、特定の部位(locus)もしくは組織(tissue))において調節(好ましくは低減)されてもよい。
【0051】
選択的または追加的に、哺乳動物に化合物を投与した後、化合物投与前のレベル(体重の場合)、または、化合物を投与されていない対照哺乳動物(体重もしくは体重増加の場合)からみて、体重もしくは体重増加が哺乳動物において調節(好ましくは低減)されることが好ましい。インシュリンレベルの調節(例えば低下)について先に示された好ましい例は、体重もしくは体重増加の調節(例えば低下)についても同様に適用される。
【0052】
哺乳動物に化合物を投与した後、食物消費量(単位体重あたり消費された食物の重量として表される)が、化合物投与前のレベル、または、化合物を投与されていない対照哺乳動物からみて、増大されてもよい。この増大は、化合物を投与し始めた後、すぐに見られなくてもよい。例えば、初期減少が見られた後、増大してもよい。
【0053】
理論に縛られることは望まないとしても、本発明の化合物、例えば、過フッ化脂肪酸(APFOもしくはPFOAなど)は、ペルオキシソーム拡散活性レセプター(peroxisome proliferator activated receptor)(PPAR)、例えばPPARα、PPARδもしくはPPARγ(Kliewerら (1994) PNAS, 91, 7355-7359; Gelmanら (1999) Cell Mol Life Sci 55, 932-943; Kerstenら (2000) Nature 405, 421-424 及び Issemann & Green (1990) Nature 347, 645-650 で論じられている)に結合し得、PPARアゴニストもしくはアンタゴニストであり得るとみなされる。好ましくは、化合物は、ペルオキシソーム拡散活性レセプター(PPAR)、例えばPPARα、PPARδもしくはPPARγに結合する。更に好ましくは、化合物は、PPARα、PPARδもしくはPPARγについてのモジュレータ(modulator)、例えば、PPARα、PPARδもしくはPPARγについてのアゴニストもしくはアンタゴニストである。とりわけ好ましくは、化合物は、PPARαもしくはPPARγアゴニストであるか、またはPPARδアンタゴニストである。化合物がモジュレータに結合し、及び/もしくはモジュレータであるか否か、例えば、PPARのアゴニストもしくはアンタゴニストであるか否かを判定するために、如何なる適切な方法も利用され得る。
【0054】
理論に縛られることは望まないとしても、本発明の化合物、例えば、過フッ化脂肪酸(APFOもしくはPFOAなど)は、脂質代謝もしくは脂質結合物質、例えば、シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)(例えばCOXI、COXII)、ホスホリパーゼA(phospholipase A)(例えばホスホリパーゼA2)もしくはリポキシゲナーゼ(lipoxygenase)に結合し得、そのような物質の活性(活性化度(degree of activation)を含む)に対するモジュレータ(modulator)、例えば阻害物質(インヒビター)もしくは活性物質(activator)であり得る。好ましくは、化合物は、脂質代謝酵素、例えば、シクロオキシゲナーゼ(例えばCOXIもしくはCOXIIなど)に結合する。更に好ましくは、化合物は、脂質代謝酵素、例えば、シクロオキシゲナーゼ(例えばCOXIもしくはCOXIIなど)の活性についてのモジュレータである。化合物がモジュレータに結合し、及び/もしくはモジュレータであるか否か、例えば、脂質結合もしくは脂質代謝物質についての活性物質(activator)もしくは阻害物質(インヒビター)であるか否かを判定するために、如何なる適切な方法も利用され得る。
【0055】
本発明の更なる態様は、本明細書で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、PPAR(例えばPPARα、PPARδ(βとしても知られている)もしくはPPARγ)の活性を調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法を提供する。好ましくは、被験体は、PPAR(好ましくは、PPARα及び/もしくはPPARγ)の活性を増大させる必要がある被験体であり、本明細書で定められた式(I)の化合物は、PPAR(例えば、PPARαもしくはγ)のアゴニストである。これとは選択的に、被験体は、PPAR(好ましくはPPARδ)の活性を減少させる必要がある被験体であり、化合物は、PPAR(例えばPPARδ)のアンタゴニストであってもよい。
【0056】
本発明の更なる態様は、本明細書で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、脂質代謝物質の活性、例えば、シクロオキシゲナーゼ(例えばシクロオキシゲナーゼI、シクロオキシゲナーゼII)の活性、もしくは、ホスホリパーゼA(例えばホスホリパーゼA2)の活性もしくはリポキシゲナーゼの活性などを調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法を提供する。
【0057】
本発明の更なる態様は、薬らしい化合物(drug-like compound)、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法を提供する。このスクリーング方法は、(1)本明細書で定められた式(I)の化合物(例えば過フッ化脂肪酸)またはその誘導体に、哺乳動物を曝すステップと、(2)前記哺乳動物について、血漿のインシュリン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド(triglyceride)及び/もしくはレプチンのレベルを測定し、並びに/または、体重を測定し、並びに/または、脂質もしくはエイコサノイドの状態(すなわち、少なくとも一つの脂質もしくはエイコサノイドの型及びレベル)もしくは作用(例えば、脂質もしくはエイコサノイドについて反応度(degree of responsiveness)により評価される)を測定するステップとを含む。
【0058】
好ましくは、スクリーング方法は、哺乳動物を化合物に曝したときに、哺乳動物について血漿のインシュリン、グルコース、コレステロール及び/もしくはトリグリセリドのレベルが変化、好ましくは低下し、並びに/または、レプチンのレベルが調節され、並びに/または、体重もしくは体重増加が変化、好ましくは低下するような化合物を選択するステップを含む。本発明に係るこの態様の好ましい例は、インシュリン、コレステロール、グルコース、トリグリセリドもしくはレプチンのレベルについての、または、体重についての効果に関し先に示された好ましい例を含む。例えば、哺乳動物は、ラットもしくはマウスなどの齧歯動物か、または、犬などの他の実験動物であることが好ましい。
【0059】
本発明の更なる態様は、薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法を提供する。このスクリーング方法は、(1)本明細書で定められた式(I)の化合物(例えば過フッ化脂肪酸)またはその誘導体に、哺乳動物を曝すステップと、(2)前記哺乳動物について、血漿のインシュリン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド及び/もしくはレプチンのレベルを測定し、並びに/または、体重を測定し、並びに/または、脂質もしくはエイコサノイドの状態(すなわち、少なくとも一つの脂質もしくはエイコサノイドの型及びレベル)もしくは作用(例えば、脂質もしくはエイコサノイドについて反応度により評価される)を測定するステップとを含む。
【0060】
本発明の更なる態様は、薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法を提供する。このスクリーング方法は、(1)本明細書で定められた式(I)の化合物またはその関連化合物(related compound)を、PPARポリペプチドにさらすステップと、(2)PPARポリペプチドに対する化合物の結合度(binding)を測定するか、または、PPARポリペプチドの活性の変化を測定するステップとを含む。PPARポリペプチドに対する化合物の結合度、または、PPARポリペプチドの活性に関する作用(effect)を測定し得る適切な方法については、例えば、米国特許第6,028,109号明細書に記載されている。スクリーング方法は、PPARポリペプチドに結合し、並びに/または、核酸結合活性(nucleic acid binding activity)及び/もしくは転写因子活性(transcription factor activity)などのPPARポリペプチド活性を変化させるような化合物を選択するステップを含んでもよい。選択された化合物は、PPARαもしくはPPARγの活性を増大させるもの、すなわち、PPARαもしくはPPARγアゴニストであるか、または、PPARδの活性を減少させるもの、すなわち、PPARδアンタゴニストであることが好ましい。
【0061】
本発明の更なる態様は、薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法を提供する。このスクリーング方法は、(1)シクロオキシゲナーゼ(例えばシクロオキシゲナーゼI、シクロオキシゲナーゼII)もしくはホスホリパーゼA(例えばホスホリパーゼA2)などの脂質代謝もしくは脂質結合物質に、本明細書で定められた式(I)の化合物またはその関連化合物をさらすステップと、(2)前記脂質代謝もしくは脂質結合物質に対する化合物の結合度(binding)を測定するか、または、前記脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性の変化を測定するステップとを含む。脂質代謝もしくは脂質結合物質に対する化合物の結合度、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性に関する作用(effect)を測定し得る適切な方法については、当業者に周知である。例えば米国特許第6,028,109号明細書に記載された方法と同様な方法が、先に述べたように適しているであろう。スクリーング方法は、脂質代謝もしくは脂質結合物質に結合し、並びに/または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性(例えば、適切なリン脂質(ホスホリパーゼA)からのアラキドン酸の生成や、アラキドン酸(シクロオキシゲナーゼ)からのプロスタグランジンの生成など)を変化させるような化合物を選択するステップを含んでもよい。選択された化合物は、酵素もしくは結合活性を減少させる、すなわち、酵素もしくは結合物質に対する阻害物質(インヒビター)として働くことが好ましい。
【0062】
本発明のスクリーング方法は、先に示したように所望の特性を有するAPFO、PFOAもしくは他の化合物を用いて得られる効果と、試験化合物を用いて得られる効果とを比較するステップを含んでもよい。本発明のスクリーング方法は、試験化合物が、先に示したように所望の特性を有するAPFO、PFOAもしくは他の化合物と競合(compete)し得るか否か、例えば、PPARαなどのPPARポリペプチドか、または、COXI、COXIIもしくはホスホリパーゼA2などの他の脂質代謝もしくは脂質結合物質に結合する際にAPFOもしくはPFOAと競合し得るか否かについて判定するステップを含んでもよい。
【0063】
有用なスクリーング方法(そこでは、例えば、試験化合物の効果が、先に示したように所望の特性を有するAPFO、PFOAもしくは他の化合物による効果と比較される)は、更に、脂質置換試験(lipid displacement assay)、細胞(例えば脂肪細胞)分化についての試験(cell differentiation assay)、もしくは、他の表現型試験、インシュリン増感性試験(insulin sensitisation assays)、抗炎症スクリーン(antiinflammatory screen)、もしくは、エイコサノイドの生合成に関する作用(effect)についての調査を含む。化合物は、先に述べたように注目すべき条件、例えば、肥満、糖尿病、高脂血症(hyperlipidaemia)もしくは発癌について調査する際に有用な動物モデルによって試験してもよい。このようなモデルとしては、当業者に知られているように、肥満(ob/ob)もしくは糖尿病(db/db)のマウス、APC/minマウス、BBラット、もしくは、人間腫瘍の異種移植モデル(human tumour xenograft model)が挙げられる。
【0064】
本発明の更なる態様は、薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法を提供する。このスクリーング方法は、(1)本明細書で定められた式(I)の化合物(例えば過フッ化脂肪酸)またはその誘導体に細胞を曝すステップと、(2)前記細胞について、表現型(phenotype)(例えば分化(differentiation))、及び/または、エイコサノイドの生合成を測定するステップとを含む。好ましくは、スクリーング方法は、化合物に細胞を曝したときに、細胞について分化などの表現型が変化し、並びに/または、エイコサノイドの生合成が変化、好ましくは低下するような化合物を選択するステップを含む。
【0065】
本発明のスクリーング方法は、糖尿病、肥満、高コレステロール血症(hypercholesterolaemia)および/もしくは高脂血症を治療するための薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するのに有用であり得る。
【0066】
本発明の方法は、更に、化合物が、例えば、体重もしくは体重増加、血漿のインシュリン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド及び/もしくはレプチンのレベルについて変化を生じさせるのに充分な濃度において、毒性もしくは発癌性を呈するか否かを判定するステップを含んでもよい。このような方法は、当業者に周知であろう。
【0067】
本発明のスクリーング方法のうち複数のスクリーング方法で化合物を試験するのは好ましいであろう。例えば、PPARポリペプチドに対する効果、及び、化合物が投与される動物に対する効果について化合物を試験してもよい。更に、化合物の毒性もしくは発癌性について判定してもよい。
【0068】
用語「薬らしい化合物」は、当業者に周知であり、例えば薬剤中の有効成分として医学的使用に化合物を適合させ得るような特性を有する化合物の意味を含み得る。このように、例えば、薬らしい化合物は、有機化学の手法、次に好ましくは、分子生物学もしくは生化学の手法によって合成され得る分子であり得、好ましくは、5000ドルトン分子量未満であり得るような小さい分子である。薬らしい化合物は、1つもしくは複数の特定のタンパク質について選択的に相互作用するという特徴を、追加的に有してもよく、細胞膜を透過することが生物的に利用可能か、または可能であってもよい。しかし、これらの特徴は必要不可欠でないことが好ましい。
【0069】
同様にして、用語「リード化合物」も、当業者に周知であり、化合物自体が(例えば、対象とされた標的に対して弱い効果しかないか、作用が非選択的であるか、不安定であるか、合成が困難であるか、または、生物的利用可能性に乏しいため、)薬剤としての使用に不適当であっても、より望ましい特性を備え得る他の化合物に発展させるための出発点を与えるような化合物の意味を含み得る。
【0070】
これらの「リード」化合物は、例えば、分子モデリング、及び/もしくは、構造活性関係を判定するような実験によって更に発展されたものでもよく、これにより、例えば有効性、選択性/特異性、薬物動態学的特性を改善して、より有効な化合物に発展させることができる。
【0071】
本発明の方法は、損なわれた細胞もしくは組織(tissue)を調製するか、または、構成要素の少なくとも一部を浄化(purified)することによって、体外(vitro)で、保全された細胞もしくは組織(例えば肝細胞もしくは脂肪細胞)に実行し得る。これとは選択的に、本発明の方法を、体内(vivo)で実行してもよい。本発明の方法が実行される細胞、組織もしくは生物(organisms)は、遺伝子導入されたもの(transgenic)であってもよい。特に、これら細胞、組織もしくは生物は、PPARポリペプチド、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質について遺伝子導入されたものであってもよい。
【0072】
PPAR(例えばPPARα、βもしくはγ)、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質をエンコード(encoding)するポリヌクレオチドは、PPAR変異体をエンコードするため、当業者に知られているように例えば、挿入、欠落、置換、切断(truncation)もしくは融合により変異(mutated)され得るのが好ましいであろう。PPAR、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質は、その生物学的挙動、適切には核酸結合、転写因子活性、脂質代謝もしくは脂質結合活性などが大きな影響を受け得るようには変異されないことが好ましい。
【0073】
次の参考文献は、PPARのシーケンス及び組織分布に関する:Auboeufら (1997) Diabetes 46(8), 1319-1327; Braissantら (1996) Endocrinol 137(1), 354-366; Mukherjeeら (1994) J Steroid Biochem Mol Biol 51, 157-166; Mukherjeeら (1997) J Biol Chem 272, 8071-8076 。
【0074】
次の参考文献およびGenBankアクセスナンバーは、示されたポリペプチドのシーケンス及び/もしくは組織分布に関する。
U63846 人間 COX-1 cDNA (PTSGI); HIa (1996) プロスタグランジン(Prostaglandins) 51, 81-85.
NM000963 人間 COX2 cDNA (PTSG2); HIa及びNeilson (1992) PNAS 89(16), 7384-7388; Jonesら (1993) J Biol Chem 268(12), 9049-9054; Applebyら (1994) Biochern J 302, 723-727; Kosakaら (1994) Eur J Biochem 221(3), 889-897.
AF306566 人間 ホスホリパーゼA2 (secreted form); Valentinら (2000) Biochem Biophys Res Commun 279(1), 223-228.
NM021628 人間 リポギナーゼ(lipogenase) ALOXE3.
XM005818 人間 リポキシゲナーゼ ALOXES.
XM008328 人間 リポキシゲナーゼ ALOX12.
NM001141 人間 リポキシゲナーゼ ALOX15; Brashら (1997) PNAS 94(12), 6148-6152.
NM005090 及び NM 003706 人間 ホスホリパーゼA2 (cPLA2-ガンマ) Underwoodら (1998) J Biol Chem 273(34), 21926-21932 及び Pickardら (1999) J Biol Chem 274(13), 8823-8831
M68874 人間 ホスホリパーゼA2 (cPLA2) Sharpら (1991) J Biol Chem 266(23), 14850-14853.
【0075】
好ましくは、このような化合物は、スクリーニングで用いられるPPARポリペプチドについてのアゴニストもしくはアンタゴニストであり得、スクリーニングの目的は、転写因子活性や、核酸(例えばDNA)の結合活性などの活性分析でなく、盲検分析を用いた場合でも、PPARのアゴニストもしくはアンタゴニストとして働くような化合物を特定することにある。PPARポリペプチドに結合するとされる化合物の作用については、その化合物の存在下における転写因子活性もしくは核酸結合活性について分析を行うことにより、確認するのが好ましいであろう。
【0076】
同様にして、このような化合物は、スクリーニングで用いられる脂質代謝もしくは脂質結合物質についての阻害物質(インヒビター)もしくは活性物質(activator)であり得、スクリーニングの目的は、脂質代謝活性(例えばCOXI、COXIIについてアラキドン酸からのプロスタグランジンの合成)などの活性分析でなく、結合分析を用いた場合でも、脂質代謝もしくは脂質結合物質についての阻害物質もしくは活性物質として働くような化合物を特定することにある。脂質代謝もしくは脂質結合物質に結合するとされる化合物の作用については、その化合物の存在下、適切な酵素もしくは結合活性について分析を行うことにより、確認するのが好ましいであろう。
【0077】
分析については、「高度処理能力(high throughput)」方式で実行できることが好ましい。このためには、分析をかなりオートメーション化すること、並びに、個々の分析に必要とされる1つ乃至複数の特定の試薬について、量を最小化することが必要となり得る。当業者に知られているように、システム(system)に基づいたシンチレーション近接分析(scintillation proximity assay)(SPA)は、有益であり得る。試験されるべき化合物の生成にあたっては、組み合わせ化学(combinatorial chemistry)の手法を利用し得る。
【0078】
本発明の更なる態様は、スクリーングのためのパーツ一式を提供する。このパーツ一式は、(1)本明細書で定められた式(I)のそれぞれで表される化合物またはそれらの誘導体についてのライブラリ(library)と、(2)PPARポリペプチド、もしくは、PPARポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド、及び/または、試験用哺乳動物とを含む。このパーツ一式は、血漿のインシュリン、グルコース、トリグリセリド及び/もしくはコレステロールのレベルを測定するか、または、核酸結合などのPPAR活性を測定するのに有用な試薬を含んでいてもよい。このような試薬は、当業者にとっては明らかなものであり、転写活性分析(transactivation assays)またはDNA結合分析を行うのに有用な試薬を含み得る。
【0079】
本発明の更なる態様は、スクリーングのためのパーツ一式を提供する。このパーツ一式は、(1)本明細書で定められた式(I)のそれぞれで表される化合物またはそれらの誘導体についてのライブラリと、(2)脂質代謝もしくは脂質結合物質(例えばCOXI、COXII、ホスホリパーゼA2、リポキシゲナーゼなど)か、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質をエンコードするポリヌクレオチドとを含む。このパーツ一式は、血漿のインシュリン、グルコース、トリグリセリド及び/もしくはコレステロールのレベルを測定するか、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を測定するのに有用な試薬、例えば、脂質代謝もしくは脂質結合物質の基質など(例えば、COXIIもしくはリポキシゲナーゼの場合、アラキドン酸である)、または、脂質代謝酵素の生成物(product)を測定する(例えば、エイコサノイドの生合成を評価する)のに有用な試薬を含んでいてもよい。試薬は、当業者に周知のように、放射性標識や、蛍光標識(fluorescently labelled)などの標識試薬を含み得る。リガンド(ligand)の直接的結合もしくは置換についても測定され得る。結合については、蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer)(FRET)の手法を用いて測定され得る。パーツ一式は、当業者に知られるように、脂肪細胞分化分析などの細胞分化分析に有用な試薬を含んでいてもよい。
【0080】
本発明の更なる態様は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を提供する。本発明の更なる態様は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物であって、医療用の化合物を提供する。本発明の更なる態様は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物と、調剤上受容可能な賦形剤とを含む調剤組成物を提供する。このような化合物の特性に関する好ましい例については、先に示した通りであり、本発明の第1の態様に基づく。
【0081】
更に、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物については、食品サプリメント(food supplement)または食品添加物として用いられる組成物の製造に用いるためのものとしても与えられる。本発明は、更に食品(food product)に関する。この食品は、本明細書で定められた式(I)の化合物か、または、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物と、食材(foodstuff)とを含んでおり、実験用齧歯動物(例えばラットやマウス)の飼料でないものである。食品は、実験動物の飼料でないことが好ましい。
【0082】
好ましくは、フード(この用語は食品(food product)と、食材とを含む)は、動物(例えば、先に論じた家畜であって実験用齧歯動物でないもの)、または、人間(例えば大人、乳児もしくは幼児)に投与するのに適したものである。
【0083】
本発明の更なる態様は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物の使用方法を提供する。この使用方法は、体重を調節(例えば低減)するか、もしくは体重の増加を調節(好ましくは低減もしくは防止)する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ及び/もしくは血漿のコレステロールを調節(好ましくは低減)する必要があり、並びに/または、血漿のレプチンを調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法である。被験体は、肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症及び/もしくはアテローム性動脈硬化症を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体であってもよい。
【0084】
本発明の更なる態様は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物の使用方法を提供する。この使用方法は、体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、閉塞型睡眠時無呼吸症、関節炎(例えば変形性関節症)及び/もしくは生殖力低下を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法である。
【0085】
本発明の更なる態様は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物の使用方法を提供する。この使用方法は、PPAR(例えばPPARα)の活性を調節するか、または、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用か、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質(例えばCOXI、COXII、ホスホリパーゼA、リポキシゲナーゼなど)の活性を調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する使用方法である。好ましくは、被験体は、PPAR(好ましくはPPARαまたはPPARγ)の活性を増大させる必要がある被験体であり、化合物は、PPAR(例えばPPARαまたはPPARγ)のアゴニストである。これとは選択的に、被験体は、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を低減させる必要がある被験体であり、化合物は、当該の脂質代謝もしくは脂質結合物質(1つ乃至複数)についての阻害物質(インヒビター)であってもよい。
【0086】
化合物は、任意の適切な方法、通常は、静脈内投与(intravenously)、腹腔内投与(intraperitoneally)もしくは膀胱内投与(intravesically)などの非経口により、賦形剤及びキャリア(carriers)についての標準的な無菌(sterile)及び非発熱性処方で投与され得る。化合物は、局所的にも投与され得る。本発明の化合物は、局部に限定(localized)するような方法、例えば、注射などでも投与され得る。好ましくは、化合物は、経口で投与される。化合物は、錠剤もしくはカプセル剤として、または、食品もしくは飲料に加えられるサプリメント(supplement)として投与され得る。徐放性の処方も用いられ得る。
【0087】
本発明の更なる態様は、体重を調節(好ましくは低減)するか、もしくは体重の増加を調節(例えば防止もしくは低減)する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ(triglycerides)、血漿のコレステロール及び/もしくはレプチンを調節(例えば低減)する必要がある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。本発明の更なる態様は、体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、閉塞型睡眠時無呼吸症、関節炎(例えば変形性関節症)及び/もしくは生殖力低下を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。
【0088】
被験体及び化合物に関する好ましい例については、先に示した通りである。
【0089】
本発明の更なる態様は、PPAR(例えばPPARα、δもしくはγ)の活性か、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用か、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を調節する必要がある被験体の治療方法を提供する。この治療方法は、本発明のスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む。
【0090】
好ましくは、被験体は、PPAR(好ましくはPPARαまたはγ)の活性を増大させる必要がある被験体であり、化合物は、PPAR(例えばPPARαまたはγ)のアゴニストである。被験体及び化合物に関する更に好ましい例については、先に示した通りである。これとは選択的に、被験体は、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を低減させる必要がある被験体であり、化合物は、当該の脂質代謝もしくは脂質結合物質(1つ乃至複数)についての阻害物質(インヒビター)であってもよい。
【0091】
次に、限定されない以下の図および実施例を参照し、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】飼料中にAPFOを入れて投与した雄フィッシャー344ラットについての成長特性。
【図2】飼料中にAPFOを入れて投与した雄フィッシャー344ラットの飼料消費量。
【図3】飼料中にAPFOを入れて投与した雄フィッシャー344ラットの飼料利用量。
【図4】血漿インシュリン濃度に関するAPFO処置の効果。
【図5】血漿コレステロール濃度に関するAPFOの効果。
【図6】血漿グルコース濃度に関するAPFOの効果。
【図7】血漿トリグリセリド濃度に関するAPFOの効果。
【図8】米国特許第6,028,109号明細書においてPPARアゴニストであると示された化合物。
【図9】マウスの体重に関するAPFO処置の効果。
【図10】マウスの飼料消費量に関するAPFO処置の効果。
【図11】マウスの飼料消費量(単位体重あたり消費された飼料のグラムとして表される)に関するAPFO処置の効果。
【図12】マウスの血漿インシュリン濃度に関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図13】マウスの血漿トリグリセリド濃度に関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図14】マウスの血漿グルコース濃度に関するAPFOの効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図15】マウスの血漿コレステロールに関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図16】マウスの血漿レプチンに関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図17】マウスにおける精巣上体脂肪パッドの重量に関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図18】ラットの体重に関するAPFO処置の効果。
【図19】ラットの飼料消費量に関するAPFO処置の効果。
【図20】ラットの飼料消費量(単位体重あたり消費された飼料のグラムとして表される)に関するAPFO処置の効果。
【図21】血漿インシュリン濃度に関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図22】ラットの血漿グルコース濃度に関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図23】ラットの血漿トリグリセリド濃度に関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図24】ラットの血漿コレステロールに関するAPFO処置の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図25】ラットの血漿レプチン濃度に関するAPFO処置の効果。
【図26−1】HepG2細胞(A)に対するAPFOの細胞毒性効果(cytotoxic effect)。
【図26−2】HT−29細胞(B)に対するAPFOの細胞毒性効果(cytotoxic effect)。
【図26−3】MCF7細胞(C)に対するAPFOの細胞毒性効果(cytotoxic effect)。
【図27】HT−29異種移植モデルの腫瘍体積に関する予防的APFO処置の効果。*=APFOの投与。矢印は腫瘍細胞の移植時点を示す。腫瘍の測定は1日目に開始した。
【図28】処置の1日目及び15日目の間の、腫瘍体積に関する予防的APFO投与の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図29】腫瘍重量に関する予防的APFO投与の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図30】HT−29異種移植モデルの腫瘍体積に関する治療的APFO処置の効果。*=APFOの投与。矢印は腫瘍細胞の移植時点を示す。腫瘍の測定及びAPFOの投与は1日目に開始した。
【図31】処置の1日目及び17日目の間の、腫瘍体積に関する治療的APFO投与の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図32】腫瘍重量に関する治療的APFO投与の効果。値は、平均±SDである。各対照グループ(0mg/kg)とは明らかに異なる;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
【図33】nu/nuマウスの体重に関する予防的APFO投与の効果。
【図34】nu/nuマウスの体重に関する治療的APFO投与の効果。
【図35】APFOによるマウスPPARαの活性化。
【図36】人間PPARγのリガンド結合ドメインに対するAPFOの相互作用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0093】
実施例1:インシュリン、グルコース、コレステロール及びトリグリセリドのレベル、並びに、体重に対する過フッ化脂肪酸の効果
<方法>
雄フィッシャー344ラット(当初は6週齢)に対し、1年に至るまでの期間、飼料中に過フッ化オクタン酸アンモニウム(APFO、300ppm)を入れて投与した。対照ラットに対しては、APFOを含んでいない粉末状飼料を与えた。
【0094】
体重については、当初は日ごとに測定し、その後、週ごとに測定した。飼料消費量については週ごとに測定した。臨床的観察については日ごとに行った。
【0095】
ラットの屠殺は、1日目、2日目、7日目、14日目、28日目、90日目、182日目及び365日目に行った。屠殺されたラットの血液は、心臓への穿刺(cardiac puncture)により採集し、臨床化学検査に供した。
【0096】
次のような分析の方法/キットを用いた。


【0097】
<結果>
雄フィッシャー344ラットにAPFOを投与すると、体重増加の著しい低減がもたらされる(図1)。処置を受けた動物については、体重が、同時対照動物よりも約25−30%ほど減少した。この体重変化は、如何なる臨床症状、もしくは、活性(activity)の変化も伴わなかった。
【0098】
壱ラットあたりでみた飼料消費量は、処置を行った最初の週に著しく(対照動物の消費量の約50%に)減少した。しかし、この週の後、壱ラットあたりでみた飼料消費量は、対照動物の値の80−90%に増加した(図2)。
【0099】
単位体重あたり消費された飼料の重量として表すと、飼料消費量は、APFOを投与した最初の週に、約30%ほど減少した。しかし、その後、APFOで処置された動物は、単位体重あたりでみて対照動物よりも10乃至30%ほど多くの飼料を消費した(図3)。
【0100】
血漿コレステロール、グルコース及びインシュリンの濃度は、測定した全ての時点で減少したが(図4〜図6)、血漿トリグリセリズについては、7日目及びそれ以降で減少した(図7)。
【0101】
これらのデータによれば、APFO及びその関連化合物が、肥満、糖尿病、高トリグリセリズ症(hypertriglycerideaemia)、高コレステロール血症(hypercholesterolaemia)、並びに、脂質もしくはエイコサノイドの状態を調節することが望ましいような病気(例えば関節炎、癌など)を治療するのに有用となり得ることがわかる。
【0102】
実施例2:肥満及び糖尿病の転換(reverse)に関するAPFOの効果
肥満及び糖尿病を転換させるAPFOの治療上の可能性を立証するため、肥満及び糖尿病の動物モデルにおけるAPFOの効果を研究した。
【0103】
1年に至るまでスピローグドーリーラット(Sprague Dawley rats)にAPFOを投与した実施例1で報告された研究により、化合物の抗−糖尿病性および抗−肥満性についての可能性が立証された。単位体重あたりの飼料消費量が、研究の最初の週に初期減少した後、増大するとともに、処置された動物の体重増加が全試験期間にわたって明らかに低減した。更に、血漿コレステロール及びインシュリンの濃度は、測定した全ての時点で減少したが、血漿グルコース及びトリグリセリズについては、7日目及びそれ以降で減少した。
【0104】
本実施例において、健康なラットについてのこれらの観察結果は、代謝病に関する2つのモデル、すなわち、肥満マウス(ob/ob)および糖尿病GK/Molラットについての研究によって拡張される。
【0105】
1.1 マウスモデル
C57BL/6J-ob/obマウスは、肥満及び糖尿病のモデルとして広く容認されている肥満及びレプチン欠乏の動物である。更に、研究では、それと対になる同じ齢で(age-paired)、無病気の(痩身の)動物(C57BL/6J-+/+)も用いて、これにより、「正常な」反応を観察した。
【0106】
1.1.1 実験的調製及び方法
C57BL/6J-ob/obマウスの3つのグループ(n=5)を、3つのAPFO投与レベル(5、15及び25mg/kg/日)で処置した。動物には、水に溶かしたAPFOを、経口胃管栄養法(oral gavage)によって、14日間もの間毎日投与した。また、ob/obマウスの一つのグループについては、賦形剤(水)のみで処置した。更に、「正常な」反応を観察するため、それと対になる5歳で病気無しの動物(C57BL/6J-+/+)に、25mg/kgのAPFOを投与し、同様な病気無しの対照グループには、賦形剤のみを投与した。
【0107】
最後の投与から24時間後、動物は、二酸化炭素の濃度を増大させることにより殺された。心臓への穿刺により血液を採集し、血漿を調製し、分析まで−70℃で保存した。主要な組織(tissue)については重量を量り、標本をとり、液体窒素で瞬間冷凍し、−70℃で保存した。
【0108】
血漿は、Sigma(Poole, Dorset)から購入したキットを用い、トリグリセリズ、コレステロール及びグルコースについて分析した。更に、酵素免疫分析(enzymeimmunoassay)に基づいた、商業的に入手可能なキット(Amersham Life Sciences 及び Crystalchem Inc. (Chicago) からそれぞれ入手)を用いて、血漿インシュリン及びレプチンの濃度を測定した。何れの分析についても、製造者の指示通りに行った。
【0109】
1.1.2 結果及び検討
25mg/kg/日で処置されたマウス株については、両方とも、処置期間にわたり体重を減らした。+/+マウスの場合、この体重減少は、4日目以降のみに、はっきりと認められた。更に、これらの動物についての体重減少量は、最初の体重の百分率でみて、ob/obマウスの体重減少量よりも少なかった(22%対33%)。15mg/kg/日で処置されたob/obマウスの場合、20%の体重減少が、研究期間にわたって認められた。5mg/kg/日で処置された動物は、影響を受けなかった(図9)。他の悪い臨床観察結果については、観察されなかった。
【0110】
体重減少は、APFO投与に関わる飼料消費量の明らかな減少(高い、中間及び低い投与レベルとした対照マウスの飼料消費量よりも、それぞれ、76%、53%及び17%ほど低い)を反映していた(図10)。+/+マウスの場合、飼料消費量の減少は、処置の最初の7日間については、はっきりと認められたが、その後、飼料消費量が、対照値に等しくなることなしに対照値に向かって急激に戻った。それでも、全消費量は、+/+対照のそれよりも31%ほど低くなった。+/+マウスにおいて9日目以降にみられた値の戻りはより大きく、その後の値は、対照値に、より近くなったが(図11)、体重のグラムあたり消費された飼料でみれば、効果のパターンは同様であった。
【0111】
処置を受けたob/obマウスの全てについて、血漿インシュリン濃度が顕著に減少(90%以上)し、この減少は、大まかには投与レベルに関係した(図12)。+/+マウスの場合、対照のインシュリンレベルが、ob/obマウスのそれよりも明らかに低くなった。それでも、APFO処置によって、血漿インシュリン濃度がはっきりと減少した。
【0112】
APFO処置(15または25mg/kg/日)が施されたob/obマウスでは、血漿グルコースについて、投与に関係した減少がみられた。この減少は、対照値の約20%に至るものであった。同様にして、血漿トリグリセリド濃度も、対照値の40%まで低減された(図13及び図14)。ob/obマウスに5mg/kg/日を投与した場合、グルコースが約50%ほど低減されたが、トリグリセリド濃度に対しては効果がなかった(図14)。+/+マウスでは、APFO(25mg/kg/日)によって、グルコース及びトリグリセリズが、それぞれ、対照となる血漿値の55%及び35%まで低減された。
【0113】
両方のマウス株に25mg/kg/日のAPFOを投与したとき、血漿コレステロール濃度について、約30%の低減が生じた。この低減は、ob/obマウスについて低い及び中間の投与レベルでは、はっきりとは認められなかった。
【0114】
ob/obマウスの血漿レプチン濃度は、計測レベル未満であった。これにより、当該マウス株のレプチン遺伝子内部には、初期終止コドン(early stop codon)が在ると推測される。正常なレプチン遺伝子を有する+/+マウスを、APFO(25mg/kg/日)で処置すると、血漿レプチン濃度が計測レベル以下に低減された(図16)。
【0115】
精巣上体脂肪パッド(epididymal fat pad)(白色の脂肪組織)の重量+/+マウスは、対照ob/obマウスが対照+/+マウスと比べて7倍高かった。APFO処置により、ob/obマウス及び+/+マウスについて、精巣上体脂肪パッドの重量が、投与に関係するように減少した(図17)。
【0116】
1.1.3 結論
要約すると、APFOの投与に関係し得る生理的効果が多数あった。痩身の対照マウスについては、体重が僅かに減少した。この体重損失は、10日後に最大となり、この後は、体重損失が生じなかった。このグループの飼料消費量は一定のままであった。
【0117】
高い及び中間の投与レベルのとき、ob/obマウスは、体重を減らし続けた。25mg/kgのとき、ob/obマウスは、更に食欲の減少を示した(これは体重の変化に反映した)。このグループでは、更に、グルコースレベルが明らかに減少した。これをみると、抗−肥満効果は、飼料消費量の低減に起因していると思えるかもしれない。しかし、5mg/kgのAPFOで処置された動物では、飼料消費量が17%減少するとともに、血漿グルコースレベルが50%減少しており、これをみると、ob/obマウスで観測された抗−肥満効果は食欲の減少に起因するものではなく、APFOによる代謝の変化に基づくものである旨示された。
【0118】
これらのデータをみると、APFOにより、肥満の動物については体重の減少が生じたが、痩身の動物については、大きな体重減少は生じなかった。従って、APFOは、抗肥満剤として利用し得る。更に、APFOにより、血漿グルコース及びインシュリンが減少することから、この物質はII型糖尿病の治療に利用し得ることが示される。
【0119】
1.2 ラットGK/Molのモデル
GK/Molラットは、II型糖尿病のモデルとして広く容認されている、肥満でない糖尿病動物である。「正常な」反応を測定するため、研究では、更に、糖尿病無しのウィスターラット(non-diabetic Wistar rats)も用いた。
【0120】
1.2.1 実験的調製及び方法
GK/Molラットの3つのグループ(n=5)に対して、3つの投与レベル(3、10及び30mg/kg)でAPFOを投与した。動物には、経口胃管栄養法(oral gavage)により、14日間もの間毎日APFOを投与した。10匹のGK/Molラットで構成された一つのグループについては、賦形剤(水)のみで処置した。更に、「正常な」反応を観察するため、それと対になる5歳で病気無しのウィスターラットに、30mg/kgのAPFOを投与し、同様な病気無しの対照グループには、賦形剤のみを投与した。
【0121】
最後の投与から24時間後、動物は、二酸化炭素の濃度を増大させることにより殺された。心臓への穿刺により血液を採集し、血漿を調製し、分析まで−70℃で保存した。主要な組織については重量を量り、標本をとり、液体窒素で瞬間冷凍し、−70℃で保存した。
【0122】
セクション1.1.1で述べたのと同様に、血漿を、トリグリセリズ、コレステロール、グルコース、インシュリン及びレプチンについて分析した。
【0123】
1.2.2 結果及び検討
GK/MolラットにAPFOを投与すると、投与に従って体重増加が低減された。この体重増加は、低い、中間の及び高い投与レベルで、それぞれ、対照値の90%、71%及び41%であった(図18)。処置を受けたウィスターラットについては、体重増加に対する影響はなかった。
【0124】
処置を受けたGK/Molラットでは、合計飼料消費量が僅かに低くなったが(対照値の86−98%)、この差は投与レベルに関係したものではなかった(図19)。処置を受けたウィスターラットと、それらの対照ラットとの間では、飼料消費量についての差はなかった。体重のグラムあたり食された飼料でみると、パターンは認められなかった(図20)。
【0125】
インシュリンの血漿濃度は、投与に従って明らかに減少し、ラット株の両者とも対照値の約10%に至った(図21)。
【0126】
GK/Molラットの血漿グルコース濃度は、APFOにより低減され、30mg/kg/日の投与レベルで対照値の約85%になった(図22)。血漿トリグリセリズ(図23)及びコレステロール(図24)の濃度は、処置を受けたGK/Molラットについては10乃至20%ほど低減された。ウィスターラットについては、血漿コレステロールが対照値の73%に低減された。
【0127】
グループ平均のレプチン血漿濃度(図25)については、30mg/kg/日の処置を受けたウィスターラットが、それらの対照ラットよりも僅かに(約40%ほど)低くなった。GK/Molラットのレプチン濃度については差がなかった。これは、処置に関係した効果を示すものであろう。
【0128】
1.2.3 結論
GK/Molについての研究に伴い、スピローグドーリーラット(Sprague Dawley rats)について調査しても同様なパターンが得られた(実施例1)。APFOによれば、処置を受けた動物についてグルコース、トリグリセリズ及びコレステロールのレベルが低減されるとともに、体重増加が低減された。更に、血漿インシュリンのレベルも明らかに低減された。
【0129】
結論として、APFOは、II型糖尿病のラットモデルについて抗−糖尿病効果を示しており、更に、このような症状の治療に有効な薬剤となり得ることが示された。
【0130】
2. 治療上の可能性
体外における、人間腫瘍細胞株に対するAPFOの効果、及び、体内における、人間腫瘍の異種移植モデルでの効果について試験した。
【0131】
2.1 体外における抗腫瘍活性
抗癌剤としてのAPFOの作用を判定するため、3つの人間癌細胞株を、APFOに曝し、細胞毒性レベル(cytotoxicity level)を判定した。
【0132】
2.1.1 実験的調製及び方法
10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(heat-inactivated foetal calf serum)、2mMのL‐グルタミン、ペニシリン(50IU/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)及び1%の非必須アミノ酸が添加されたDulbecco’s Modified Eagles 培地(DMEM)で、HT−29細胞(人間の大腸(colon))、MCF7細胞(人間の乳癌(breast cancer)に由来する)及びHepG2細胞(人間の肝臓癌に由来する)を培養した。トリプシン化により細胞を収穫し、5×10細胞/mlに薄め、96ウェルのプレートに備えられたウェルのそれぞれに、200μlの細胞浮遊液をプレート(plated)し、更に、5%のCOに35℃で一晩さらした。成長培地内で様々な濃度(0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100及び1000μM)のAPFOに、細胞を4時間さらした。それぞれのウェルに、5mg/lmのMTT溶液20μlを加え、更に細胞を、37℃で4時間温置した。培地を除去し、200μlのDMSOを加えてホルマザン結晶(formazan crystals)を溶解させた。プレートを570nmで読み取り、690nmの背景を減じた。結果については、APFO濃度に対する細胞生存パーセントとして図に表した。
【0133】
2.1.2 結果及び検討
APFOは、500μM超の濃度で、4時間後に細胞毒性効果(cytotoxic effect)を示した(図26)。
【0134】
2.1.3 結論
この研究により、APFOが体外において人間の広範囲の癌を殺すのに有効であることが示された。
【0135】
2.2 ヌード・マウス(nude mice)のHT‐49異種移植モデル
この研究の目的は、異種移植された動物のモデルについてAPFOの抗−腫瘍能力を調査することにある。免疫不全のnu/nuマウスに異種移植された、人間大腸癌由来の細胞株について、腫瘍の進行に対するAPFOの効果を試験した。APFOの投与の間、定期的に腫瘍のサイズを測定することによって、APFOによる予防上及び治療上の効果を判定した。
【0136】
2.2.1 実験的調製及び方法
Clare Hall (Potters Bar, UK)から、ICRFストック(HsdOla:ICRF-nu)からの胸腺欠損(athymic)のヌード(nu/nu)マウスを得た。動物は全て雌であり、約9週齢であった。隔離ケージに入れられ、層流下で扱われる動物を、1つの対照グループと、2つの処置グループとに分けた。予防上のスケジュール及び治療上のスケジュールにおいて、グループごとに5匹の雌マウスをあてた。
【0137】
セクション2.1.1で述べた条件に従い、HT−29細胞を培養した。細胞を収穫し、遠心分離によりプール(pooled)し、5mlのマチリゲル(Matrigel)(基底膜間充質(basement membrane matrix))を加えた5mlの培地に浮遊させた。100μlの細胞浮遊液を、マウスの各脇腹に注射した(脇腹ごとに1.75×10細胞)。APFOによる予防効果を判定するため、動物の半数について腫瘍細胞を移植した直後に化合物を投与した。治療上のスケジュールでは、腫瘍が成長し始めてから、APFOを注射した。
【0138】
水に溶かしたAPFOを、一ヶ月もの間、週に3回、腹膜内注射(intra-peritoneal injection)により動物に投与した。APFOの投与量は、15mg/kg体重及び25mg/kg体重であった。投与溶液の体積は10ml/kg体重であった。対照動物には、その投与溶液と等しい体積の水を与えた。
【0139】
研究の間、動物の体重を記録した。腫瘍の成長については、デジタル測径器(digital calipers)を用いて週に3回測定し、その体積については、次の式を用いて算出した。
【0140】


【0141】
但し、dは平均長(n=2)、dは平均幅(n=2)である。(腫瘍が不均整な形状であるとき、NB,n=4)。
【0142】
ホーム・オフィス・ライセンスの条件によれば、最大許容腫瘍サイズは1.44cmであった。結果については、各時点で平均腫瘍体積として図に表した。腫瘍の重量については研究の終わりに記録した。腫瘍の標本については液体窒素で急速冷凍するか、更に分析するため正規の生理食塩水で処理した。
【0143】
2.2.2 結果及び検討
HT−29に由来する腫瘍は、研究において約14日間成長した。
【0144】
予防グループ及び治療グループにおいて、対照動物の腫瘍成長が、APFO処置を受けた動物の腫瘍成長よりもはるかに速い速度で継続した(それぞれ、図27、図30)。この結果、腫瘍体積が許容サイズを超えた旨の理由か、または、腫瘍が腐敗したとみなされ、継続がプロジェクト・ライセンスの条件下で再び許容されなくなった旨の理由で対照動物が失われたので、治療の研究を完了させることはできなかった。このため、予防研究の動物が13時点で注射されたのに対し、治療研究の動物は8時点で注射されることとなった。
【0145】
予防的処置を受けた動物の腫瘍成長速度については、APFO処置を受けた動物の腫瘍成長速度が、明らかに、より遅くなった。APFO処置を受けたマウスでは遅延時間が22日となったのに対し、対照グループでは遅延時間が15日となった(図27)。25mg/kgのAPFOを投与された動物では、腫瘍成長速度が26日後、プラトー(plateau)になったが、15mg/kgの投与を受けた動物では、腫瘍体積が増大し続けた(図27)。予防グループの腫瘍体積は、腫瘍測定の開始時(1日目)と、研究の終了時(15日目)との間で、対照動物では18倍に増大し、15mg/kgの投与を受けた動物では8倍に増大し、25mg/kgの投与を受けた動物では6倍に増大した(図28)。検死すると、15mg/kg、25mg/kgのグループの腫瘍重量が、それぞれ、対照動物の腫瘍重量よりも22%、58%ほど小さくなった(図29)。
【0146】
APFOによる治療的処置を受けた動物についても、腫瘍成長速度が、明らかに、より遅くなった。処置を受けたマウスでは遅延時間が26日となったのに対し、対照腫瘍では遅延時間が15日となった(図30)。最も高い投与量のグループがプラトーに達しなかったが、予定された期間よりも短い期間で動物を処置したので、治療の研究を未完了させることはできなかった。腫瘍体積は、1日目と、17日目との間で、対照動物では15倍に増大し、15mg/kgの投与を受けた動物では14倍に増大し、25mg/kgの投与を受けた動物では7倍に増大した(図31)。腫瘍重量については、15mg/kg、25mg/kgの投与グループが、それぞれ、45%、37%ほどより小さくなった(図32)。但し、5匹の動物(4匹の対照動物と、1匹の高投与量の動物)が研究中に失われ、これにより、最終的な腫瘍重量の平均値が影響を受けた。
【0147】
研究期間の終わりに動物から腫瘍を除去し、肉眼で検査した。予防グループから得られた対照の腫瘍は固形であったが、APFO処置を受けた動物では、液体で満たされた腫瘍が得られ、これは、腫瘍の中心部で細胞死が生じたことを意味する。対照グループと、処置を受けたグループとの間の違いは、治療的処置を受けた動物では、より明らかではなくなったが、これらの動物はより短い期間に投与を受けた。腫瘍の標本についてはホルマリン処理し、更に組織病理学検査のため、液体窒素で瞬間冷凍した。
【0148】
研究の始めから終わりまで動物の体重を測定し、記録した。HT−29細胞を移植された動物の処置グループまたは治療グループの何れについても、対照動物と、処置を受けた動物との間で著しい違いはなかった(図33、図34)。
【0149】
2.2.3 結論
要約すると、腫瘍細胞と同時にAPFOを与えるか、または、腫瘍が落ち着いた(establishment)後にAPFOを与えると、APFOは、人間癌細胞株について抗−腫瘍能力を示した。更に、体重は、試験薬剤からは影響を受けないままであった。これは、処置に関連した体重減少が生じないことを意味し、化学療法薬の重要な利点となる。処置に関連した体重減少が生じなかったのは、APFOが、肥満の被験体及び痩身でない被験体(例えばnu/nuマウス)を選択的に対象とするからだという可能性もある。
【0150】
結局、APFOは、HT−29細胞、人間大腸癌細胞株に対して抗−腫瘍能力を示し、よって、人間腫瘍細胞の成長を抑制する能力があることを示した。
【0151】
3. APFOの、見込まれる抗−炎症特性
3.1 体外における研究
EIAに基づいた人間COX阻害物質(インヒビター)分析キットを、製造者(Cayman Chemical, Michigan)の指示通りに用い、シクロオキシゲナーゼ1(COX1)及びシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)を抑制するAPFO(もしくは他の試験化合物)の能力について検査した。
【0152】
3.2 体内における研究
APFO(もしくは他の試験化合物)による抗−炎症特性の可能性について、ラットモデルで試験した。動物にはAPFOまたはデキサメタゾン(dexamethasone)を投与し、その後、リポ多糖体(LPS)により動物の免疫系に障害を与え、そして血漿サイトカイニンを測定する。研究は、壱グループあたり、10匹の雄CDラット(80−120g)とした1つの対照グループ及び3つの処置グループから構成することができる。対照グループについては賦形剤(水)のみを投与し、その24時間後にLPS(100gラットあたり30μg)を投与する。処置グループ1の動物については、APFO(もしくは他の試験化合物)を30mg.kg与える。処置グループ2の動物については、APFO(もしくは他の試験化合物)を30mg.kg与え、その24時間後にLPS(100gラットあたり30μg)を投与する。処置グループ3の動物については、デキサメタゾンを与え(コーンオイル中10mg.ml)、その1時間後にLPS(100gラットあたり30μg)を投与する。壱グループあたり、5匹の動物からの血漿
を、処置の1時間ないし2時間後に取り入れた。商業的に入手可能なキットを、製造者(Endogen Inc., Massachusetts)の指示通りに用いて、血漿サイトカイン(II−6、II−1β及びTNF)を測定した。
【0153】
4. PPARイソ型とのAPFOの相互作用
APFOがPPARイソ型と相互作用することを示すため、マウスのPPARアルファcDNAを含む転写促進分析、及び、人間のPPARガンマを用いたリガンド結合分析を行った。
【0154】
4.1 マウスPPARの転写促進分析
4.1.1 実験的調製及び方法
COS−1細胞(セクション2.1.1に述べられた培地であるが、アミノ酸を含まない培地で培養されたもの)を、壱ウェルあたり3×10細胞で6つのウェル組織培養皿にプレート(plated)し、37℃で一晩定着させた。次の日、培地を吸引し、PBS(pH7.4)で細胞を洗浄し、一時的トランスフェクション混合物(transient transfection cocktail)200μlを、それぞれのウェルに加えた。トランスフェクション混合物は、マウスのPPARαを運ぶベクターDNA50ng、肝臓脂肪酸結合タンパク質のPPAR感応要素を含有するプラスミドDNA500ng、及び、トランスフェクション制御物としてのベクター匿いβ−ガラクトシダーゼ(vector harbor β-Galactosidase)500ngから構成した。DEAE−デキストラン50μg.mlを含有するPBSに、DNAを溶かした。プラスミドDNAを含有しないトランスフェクション混合物に、対照の細胞をさらした。細胞を37℃で30分間温置した後、80μMのクロロキンを含有する培地2mlを加え、そして細胞を37度で更に2.5時間温置した。
培地を吸引し、室温で2.5分間、培地中の10%DMSOにより細胞にショック処理を行った。PBSで細胞を洗浄し、その後、37℃で24時間にわたり、細胞を成長培地で回復させた。
【0155】
(水に溶かされた)APFOを培地内で0、3、10、30、100、300及び1000μMとし、一時的に核酸を入れられた細胞(transiently transfected cells)を、37℃で16時間さらした。その後、細胞を洗浄し、溶解させた。そして、製造者(Promega, Madison, USA)に指示された方法に従ってキットを用い、ルミネセンス及びスペクトフォトメトリー(spectophotometry)により、それぞれ、ルシフェラーゼ及びβ−ガラクトシダーゼの活量(activities)を測定した。ルシフェラーゼの表現形(expression)は、瞬間ルミネセンス(flash luminescence)で分解することにより標準化され、比色分析に続いて、構成要素であるβ−ガラクトシダーゼの表現レベル(415nmで測定される)が読み取られる。
【0156】
データをグラフ化し、非線形回帰曲線に適合させ、そして、グラフパッドプリズムソフトウエア(GraphPad Prism software)を用いてEC50値を算出した。
【0157】
4.1.2 結果及び検討
APFOによるマウスPPARアルファの活性が生じた。効力を生じる濃度(EC50)は102μMであった(図27)。
【0158】
4.1.3 結論
ここで示されたデータは、APFOが、μMの濃度でマウスPPARアルファの活性物質(activator)となることを示している。
【0159】
4.2 PPARガンマリガンド結合に関する研究
ヒス−タッグ(his-tagged)された人間PPARγのリガンド結合ドメインが、既に述べられたように[Palmer, CAN 及び Wolf, CR. FEBS Letts. 431, 476-480, (1998)]、大腸菌(E. Coli)内で表現された。レセプタータンパク質が、ニッケルのアフィニティー・クロマトグラフィー(affinity chromatography)により、不十分ではあるが精製された。
【0160】
4.2.1 リガンド結合に関する研究
この組み替えレセプタータンパク質は、蛍光性脂肪酸と、シス−パリナリン酸(CPA)との間の相互作用を研究するのに、既に利用されている[Palmer CAN 及び Wolf CR. FEBS Letts. 431, 476-480, (1998);Causevic M, Wolf CR 及び Palmer CAN. FEBS Letts. 463, 205-210, (1999)]。レセプターに結合すると、脂肪酸のスペクトル特性に変化が生じる。これらの変化は、レセプターに対するリガンドの結合と量的に関係しており、結合定数の算出に用いることができる。また、競合置換分析(competitive displacement assay)を用いて他の化合物の結合特性を試験することができる。この方法により、AFPOについて、PPARγからシス−パリナリン酸を置換させる能力を試験した。セクション4.1で述べたのと同様に、データを分析した。
【0161】
4.2.2 結果及び検討
人間PPARガンマのリガンド結合ドメインを利用する競合的リガンド結合分析によれば、シス−パリナリン酸の置換が生じたことが示された。EC50は355μMであった(図28)。
【0162】
3.2.4 結論
これらのデータは、APFOが人間PPARガンマのリガンド結合ドメインと相互作用することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体重を調節するか、もしくは体重の増加を調節する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ(triglycerides)、血漿のコレステロール及び/もしくはレプチンを調節する必要がある被験体の治療方法であって、次のような式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含んでおり、
式(I)の化合物は、
−X−Z
であり、但し、
は−COHもしくはその誘導体を表し、
はF、H、−COHもしくはその誘導体を表し、
Xはフッ化アルキレンを表し、
またはそれらの溶媒和化合物(solvate)であり、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
治療方法。
【請求項2】
被験体の抗腫瘍治療方法、又は、抗炎症剤を必要とし、及び/または、脂質もしくはエイコサノイドの状態を調節する必要がある被験体の治療方法であって、
請求項1で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含み、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
治療方法。
【請求項3】
体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症(hyperlipidaemia)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、冠状動脈性心臓病、脳卒中(stroke)、閉塞型睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnoea)、関節炎及び/もしくは生殖力低下(reduced fertility)を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療方法であって、
請求項1で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含み、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
治療方法。
【請求項4】
PPAR(例えばPPARα)の活性を調節する必要がある被験体の治療方法であって、
請求項1で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含み、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
治療方法。
【請求項5】
脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を調節する必要がある被験体の治療方法であって、
請求項1で定められた式(I)の化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含み、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
治療方法。
【請求項6】
請求項1で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、
PPAR(例えばPPARα)の活性を調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造し、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
使用方法。
【請求項7】
請求項4または6の何れかに記載された方法であって、
前記被験体は、PPAR活性を増大させる必要があり、
前記化合物は、PPARアゴニスト(agonist)である
方法。
【請求項8】
請求項7に記載された方法であって、
前記PPARは、PPARαまたはPPARγである
方法。
【請求項9】
請求項1で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、
体重を調節するか、もしくは体重の増加を調節する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ、血漿のコレステロール及び/もしくはレプチンを調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造し、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
使用方法。
【請求項10】
請求項1または9の何れかに記載された方法であって、
前記被験体は、体重を減少させるか、もしくは体重の増加を防止する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ、血漿のコレステロール及び/もしくはレプチンを減少させる必要がある
方法。
【請求項11】
請求項1で定められた式(I)の化合物の使用方法であって、
体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、閉塞型睡眠時無呼吸症、関節炎及び/もしくは生殖力低下を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療用薬剤を製造し、
但し、前記被験体は、人間、馬、牛、猫または犬である
使用方法。
【請求項12】
式(I)の化合物の使用方法であって、
人間、馬、牛、猫または犬について、抗腫瘍治療もしくは抗炎症治療として用いるためか、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を調節するためか、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を調節するための薬剤を製造する
使用方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかに記載された方法であって、
前記化合物は、過フッ化脂肪酸もしくはその誘導体であるか、またはそれを含む
方法。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れかに記載された方法であって、
前記化合物は、
フッ化カルボン酸もしくは過フッ化カルボン酸か、または、調剤上受容可能な、その塩、エステルもしくはハロゲン化物であるか、
またはそれを含む
方法。
【請求項15】
請求項13または14の何れかに記載された方法または化合物であって、
前記化合物は、
過フッ化オクタン酸(perfluorooctanoic acid)(PFOA)であるか、
または、調剤上受容可能な、その塩、エステルもしくはハロゲン化物、例えば、過フッ化オクタン酸アンモニウム(ammonium perfluorooctanoate)(APFO)である
方法または化合物。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れかに記載された方法であって、前記被験体は人間である方法。
【請求項17】
薬らしい化合物(drug-like compound)、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法であって、
(1)請求項1で定められた式(I)の化合物またはその誘導体に、哺乳動物を曝すステップと、
(2)前記哺乳動物について、血漿のインシュリン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド(triglyceride)及び/もしくはレプチンのレベルを測定し、並びに/または、体重を測定し、並びに/または、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を測定するステップとを含む
スクリーング方法。
【請求項18】
請求項17に記載されたスクリーング方法であって、
前記哺乳動物を化合物に曝したときに、前記哺乳動物について血漿のインシュリン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド及び/もしくはレプチンのレベルが変化もしくは低下し、並びに/または、前記哺乳動物の体重もしくは体重増加が変化もしくは低下するような化合物を選択するステップを含む
スクリーング方法。
【請求項19】
薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法であって、
(1)請求項1で定められた式(I)の化合物またはその誘導体を、PPARポリペプチドにさらすステップと、
(2)PPARポリペプチドに対する化合物の結合度(binding)を測定するか、または、PPARポリペプチドの活性の変化を測定するステップとを含む
スクリーング方法。
【請求項20】
薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法であって、
(1)シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)(例えばシクロオキシゲナーゼI、シクロオキシゲナーゼII)もしくはホスホリパーゼA(phospholipase A)(例えばホスホリパーゼA2)などの脂質代謝もしくは脂質結合物質に、請求項1で定められた式(I)の化合物またはその誘導体をさらすステップと、
(2)前記脂質代謝もしくは脂質結合物質に対する化合物の結合度(binding)を測定するか、または、前記脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性の変化を測定するステップとを含む
スクリーング方法。
【請求項21】
薬らしい化合物、または、薬らしい化合物に発展させるためのリード化合物を特定するためのスクリーング方法であって、
(1)上記式(I)の化合物(例えば過フッ化脂肪酸)またはその誘導体に細胞を曝すステップと、
(2)前記細胞について、表現型(phenotype)(例えば分化(differentiation))、及び/または、エイコサノイドの生合成を測定するステップとを含む
スクリーング方法。
【請求項22】
請求項21に記載されたスクリーング方法であって、
前記細胞を化合物に曝したときに、前記細胞の表現型(例えば分化)が変化し、及び/または、前記細胞におけるエイコサノイドの生合成が変化、好ましくは低減するような化合物を選択するステップを含む
スクリーング方法。
【請求項23】
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物。
【請求項24】
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物であって、医療用の化合物。
【請求項25】
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物の使用方法であって、
体重を調節するか、もしくは体重の増加を調節する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ、血漿のコレステロール及び/もしくはレプチンを調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する
使用方法。
【請求項26】
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物の使用方法であって、
体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、閉塞型睡眠時無呼吸症、関節炎及び/もしくは生殖力低下を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療用薬剤を製造する
使用方法。
【請求項27】
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物の使用方法であって、
PPAR(例えばPPARα)の活性を調節する必要があるか、または、抗腫瘍剤もしくは抗炎症剤を必要とするか、または、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を調節する必要があるか、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を調節する必要がある被験体の治療用薬剤を製造する
使用方法。
【請求項28】
請求項27に記載された使用方法であって、
前記被験体は、PPAR活性を増大させる必要があり、
前記化合物は、PPAR(例えばPPARα)アゴニストである
使用方法。
【請求項29】
体重を調節するか、もしくは体重の増加を調節する必要があり、並びに/または、血漿のインシュリン、血漿のグルコース、血漿のトリグリセリズ、血漿のコレステロール及び/もしくはレプチンを調節する必要がある被験体の治療方法であって、
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む
治療方法。
【請求項30】
体重超過もしくは肥満であり、並びに/または、糖尿病、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、閉塞型睡眠時無呼吸症、関節炎及び/もしくは生殖力低下を患っているか、または、そのような症状になるリスクがある被験体の治療方法であって、
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む
治療方法。
【請求項31】
PPAR(例えばPPARα)の活性を調節する必要があるか、または、抗腫瘍剤もしくは抗炎症剤を必要とするか、または、脂質もしくはエイコサノイドの状態もしくは作用を調節する必要があるか、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質の活性を調節する必要がある被験体の治療方法であって、
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物を、有効量をもって被験体に投与するステップを含む
治療方法。
【請求項32】
請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物であって、
食品サプリメント(food supplement)または食品添加物として用いられる組成物の製造に用いるための化合物。
【請求項33】
請求項1で定められた式(I)の化合物、または、請求項17乃至22の何れかに記載されたスクリーング方法により特定されるか、または特定できる化合物と、食材(foodstuff)とを含む食品であって、
実験用齧歯動物の飼料(laboratory rodent feed)ではない食品。
【請求項34】
スクリーングのためのパーツ一式であって、
(1)上記式(I)の化合物またはそれらの誘導体についてのライブラリ(library)と、
(2)PPARポリペプチド、もしくは、PPARポリペプチドをエンコード(encoding)するポリヌクレオチド、及び/または、試験用哺乳動物とを含む
パーツ一式。
【請求項35】
スクリーングのためのパーツ一式であって、
(1)上記式(I)の化合物またはそれらの誘導体についてのライブラリと、
(2)脂質代謝もしくは脂質結合物質(例えばCOXI、COXII、ホスホリパーゼA2、リポキシゲナーゼなど)か、または、脂質代謝もしくは脂質結合物質をエンコードするポリヌクレオチドとを含む
パーツ一式。
【請求項36】
明細書で開示された任意の新規な化合物、使用方法、パーツ一式、システム(system)または方法(method)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図26−3】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2009−132726(P2009−132726A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48194(P2009−48194)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【分割の表示】特願2002−565586(P2002−565586)の分割
【原出願日】平成14年2月18日(2002.2.18)
【出願人】(503297372)シーエックスアール バイオサイエンス リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】CXR Biosciences Limited
【住所又は居所原語表記】Dundee Technopole, James Lindsay Place, Dundee DD1 5JJ, United Kingdom
【Fターム(参考)】