方法

【課題】生体分子が親和的かつ特異的に結合する均一なプラズマ重合表面であって、さらに化学的もしくは物理的特性が多様な表面を提供する。
【解決手段】単量体源から少なくとも1種のプラズマ単量体を前記表面に付着させるが、前記単量体を付着させている間、前記単量体および/または前記表面を互いと相対的に動かすことで不均一プラズマ重合表面を生じさせ、そして前記プラズマ重合表面の少なくとも一部に結合体を導入することで前記結合体が不均一表面を形成するようにすることを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一(non−uniform)結合表面を製造する方法、前記方法で得ることができる表面を含んで成る製品、そして前記表面を用いて分離、選別および細胞培養を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ重合は、制御可能な化学的官能性を有する極めて薄い(例えば約200nmの)架橋した重合体膜を複雑な幾何形態の基質に付着させることを可能にする技術である。その結果として、その材料の表面の化学的性質をそのような処理を受けさせた基質のバルク特性(bulk properties)に影響を与えることなく変えることができる。通常は電場を用いてプラズマまたはイオン化した気体を励起させる。それらはイオン、電子、中性物(ラジカル、準安定物、基底および励起状態の種)と電磁放射線を含んで成る高い反応性を示す化学的環境である。圧力を低くすることによって電子の温度とイオンおよび中性物の温度が実質的に異なる形態を達成することができる。そのようなプラズマは「冷」または「非平衡」プラズマと呼ばれる。そのような環境下ではいろいろな揮発性有機化合物(例えば揮発性アルコール含有化合物、揮発性酸含有化合物、揮発性アミン含有化合物または揮発性炭化水素)が混ぜ物無しまたは他の気体、例えばArなどと一緒に重合を起こすことが分かっており(非特許文献1)、それによって、そのプラズマと接触している表面および放電の下流に位置する表面の両方が被覆される。そのような有機化合物はしばしば「単量体」と呼ばれる。その付着物はしばしば「プラズマ重合体」と呼ばれる。
【0003】
そのような様式の重合の利点には潜在的に下記が含まれる:ピンホールの無い極めて薄い膜が付着すること、プラズマ重合体は幅広い範囲の基質に付着し得ること、工程が無溶媒であること、そしてプラズマ重合体は汚染物を含有しないこと。プラズマ重合体膜を低電力、典型的には10−2W/cmの電力条件下で生じさせることができるが、その場合の膜は、元々の単量体が有する化学的性質を実質的な度合で保持している。例えば、アクリル酸のプラズマ重合膜はカルボキシル基を含有する(非特許文献2)。連続波電力を下げるか或は電力をオンとオフで脈動させることで低電力形態を達成することができる。
【0004】
官能基を有する1種以上の化合物と炭化水素を共重合させる場合、結果として生じるプラズマ共重合体(PCP)の表面官能基濃度をある度合で制御することができる(非特許文献3)。そのような単量体は適切にはエチレン系不飽和単量体である。従って、前記官能基を有する化合物は不飽和のカルボン酸、アルコールまたはアミンなどであってもよい一方、前記炭化水素は適切にはアルケンである。プラズマ重合を用いてまたエチレンオキサイド型の分子(例えばテトラエチレングリコールのモノアリルエーテル)を付着させることで「非汚染」表面を生じさせることも可能である(非特許文献4)。また、パーフルオロ化合物(即ちパーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)を付着させることで疎水性/超疎水性表面を生じさせることも可能である(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 01/31339
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.K.Yasuda、Plasma Polymerisation、Academic Press、ロンドン、1985
【非特許文献2】Haddow他、Langmuir、16巻:5654−60、2000
【非特許文献3】Beck他、Polymer 37:5537−5539、1996
【非特許文献4】Beyer他、Journal of Biomedical Materials Research 36:181−9、1997
【非特許文献5】Coulson他、Chemistry of Materials 12:2031−2038、2000
【非特許文献6】Dai他、Journal of Physical Chemistry B 101:9548−54(1997)
【非特許文献7】R.M.France、R.D.Short、R.A.Dawson、S.MacNeil、Journal of Materials Chemistry、1998、8巻、37−42頁
【非特許文献8】C.R.Jenney、J.M.Anderson、Journal of Biomedical Materials Research、2000、50巻、281−290頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのような技術は表面に特殊な化学的および物理的特性を持たせることができることから有利である。例えば、そのような表面にすると、その表面に接触する生物学的分子がそれに対して示す親和性が高くなることで、結合する分子の検定を行うことが可能になる。その表面は均一でありかつその表面と結合する生物学的分子の検定を再現可能な様式で高感度に実施することが可能になる。同様に、当該基質が示す表面湿潤性、接着性および摩擦/摩耗特性を制御可能で予測可能な様式で修飾することも可能である。
【0008】
本明細書に開示する方法を用いると、化学的および/または物理的特性が異なる局所的表面領域を限定している不均一表面を生じさせることができる。我々はそのような表面を化学的およびトポグラフィー的の両方で「パターン化した」表面であると呼ぶ。プラズマが中を通るマイクロメーター規模のオリフィス1個または2個以上をこれがそのパターン化すべき表面を横切るように移動させてプラズマをある比率でそらすことで、そのような効果を達成する。別法として、プラズマを微小毛細管の先端または中で励起させた後、それを用いて表面の上に分子の構造物および化学的性質を「書き込む」ことも可能である。鍵となるプラズマパラメーター(電力、流量、パルス負荷サイクルまたは単量体の組成)を変えるか或は書き込み中に「そらす」プラズマ部分を物理的、電気的または磁気手段で変えることで、化学的性質および分子構造物を垂直方向(Z方向)および/または横方向(X−Y面)に変えることができる。そのような表面にすると、いろいろな分子を固定することが可能になりかつ分子をマイクロン規模で濃縮することが可能になる。そのような技術を用いて同様に表面の局所的湿潤性、接着性および摩擦/摩耗性を制御することも可能であり、それはマイクロ流体工学に適用可能である。
【0009】
我々は、特許文献1に、製品にプラズマ重合による処理を受けさせることを開示する。
【0010】
特許文献1に開示する技術は、生体分子が親和的かつ特異的に結合する均一なプラズマ重合表面(plasma polymerised surfaces)を生じさせることに関しては有効であるが、化学的もしくは物理的特性が多様な表面を生じさせるに充分なほどには多目的的ではない。
【0011】
我々は、ここに、化学的および構造的微小パターンまたは勾配が典型的に三次元に広がることで特徴づけられる表面をもたらす「プラズマ書き込み」と我々が呼ぶ方法を開示し、ここでは、X−Y面は表面であると定義し、そしてZ方向はそれに対して実質的に垂直である。本方法では、既製マスクまたはステンシル[(非特許文献6)に記述されている如き]を用いる必要はなくかつ同じ工程の一部として単一表面に作り出すいろいろな構造物の数にも種類にも制限はなく、ある表面の上に化学的性質および分子構造物の両方を作り出すことで二次元もしくは三次元パターンを生じさせる。
【0012】
生物学的実体がいろいろな様式で結合し得る複雑なヘテロケミカル(heterochemical)表面を生じさせるに適した不均一プラズマ重合体表面がもたらされるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に従い、ある基質の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を準備する(prepare)方法を提供し、この方法は、
i)単量体源から少なくとも1種のプラズマ単量体を前記表面に付着させるが、前記単量体を付着させている間、前記単量体および/または前記表面を相互に関連させて動かすことで不均一プラズマ重合表面を生じさせ、そして
ii)前記プラズマ重合表面の少なくとも一部に結合体(binding entity)を導入することで前記結合体が不均一表面を形成するようにする、
ことを含んで成る。
【0014】
不均一は、化学的および/または物理的構造が均一ではない表面を指す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、プラズマ重合装置である。
【図2】図2は、アクリル酸/アリルアミンの勾配をXPSで測定した時の元素組成を11mmの距離に渡って示すグラフである。
【図3】図3は、勾配表面をXPSで分析した時のCOOR濃度をそれに沿った位置の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で用いる如き「結合体」は、プラズマ重合表面の官能基と共有結合でおよび/または非共有結合で相互作用するか或は逆にプラズマ重合表面に固定しておいた結合体と相互作用する実体(entity)のいずれかを意味する。
【0017】
結合体には、細胞、代謝産物、薬学的に活性のある薬剤、蛋白質、例えば細胞、ホルモン、抗体、酵素、受容体など、巨大分子、例えばDNA、RNA、蛋白質断片、ペプチド、ポリペプチドなど、リガンド、プロテオグリカン、炭水化物、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、毒性試薬、化学種が含まれ得る。そのような結合体が一緒になって1つ以上の結合表面を形成し得る。
【0018】
そのような結合体は、少なくとも1種の細胞が増殖または付着し得る表面をもたらし得る。例えば、そのような結合体は化学官能基、例えばカルボキシルまたはアミン官能基などを含んで成り得る(非特許文献7)。別法として、そのような結合体には、固定または吸着される生物学的実体(蛋白質、蛋白質断片、ペプチド配列など)が含まれ得る(非特許文献8を参照)。
【0019】
典型的には、そのような結合体をプラズマ重合体表面に固定する。そのような結合体をプラズマ重合体表面が有する官能基と化学的に結合させてもよい。
【0020】
本発明は、好適な態様において、ある基質の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を準備する方法を提供し、この方法は、
i)単量体源から少なくとも1種のプラズマ単量体を前記表面に付着させるが、前記単量体を付着させている間、前記単量体および/または前記表面を相互に関連させて動かすことで不均一プラズマ重合表面を生じさせ、
ii)前記プラズマ重合表面の少なくとも一部に1番目の結合体を導入することで前記結合体が不均一表面を形成するようにし、そして
iii)前記1番目の結合体と結合する2番目の結合体を前記1番目の結合体と接触させる、
ことを含んで成る。
【0021】
別の態様において、本方法の段階(i)は、
i)空間的に離れて位置する少なくとも2つの単量体源から少なくとも1種のプラズマ単量体を前記表面に付着させることで不均一プラズマ重合表面を生じさせる、
ことを含んで成る。
【0022】
空間的に離れて位置する2つの単量体源の間の拡散混合領域の中にある基質を置きそしてその領域の中のプラズマを励起させることを通して、不均一プラズマ重合表面を生じさせることができる。その付着した材料は、その混合領域の中で起こる単量体の混合と相互に関係する化学的性質/化学的組成を有するであろう。
【0023】
本明細書に開示する発明では、他の実体、例えば生物学的分子などを用いて、いろいろな化学的性質および分子構造(場合により濃度が異なりかつマイクロメートル解像度が異なる)を空間的に制限されたパターンで有する付着したプラズマ重合体に「重ね書き(overwriting)」することができる。それによって、今度は、化学的および物理的表面特性が高度に限定された複雑なヘテロケミカル表面を生じさせることができる。
【0024】
本発明は、有利に、いろいろな生物学的分子または薬剤およびいろいろな濃度の生物学的分子/薬剤の結合および/または分離を行った後にそれらの検出および分析を行うことを容易にするものであり、表面特性、例えば湿潤性、摩擦および摩耗、および接着性などを局所的に修飾するものである。本発明は、また、細胞の培養および選別も容易にするものである。
【0025】
本発明の好適な方法では、少なくとも2種類の単量体から生じさせた2種以上のプラズマ重合体、好適には複数種の単量体から生じさせた複数種のプラズマ重合体を含んで成る表面を生じさせる。
【0026】
本発明の好適なさらなる態様では、前記表面が少なくとも1種の単量体から生じた少なくとも1種のプラズマ重合体を含有するようにするが、この場合には、前記プラズマ重合体の濃度が前記表面またはこれの一部に渡って不均一であるようにする。
【0027】
本発明の好適なさらなる態様では、前記表面が2種以上の単量体から生じた2種以上のプラズマ重合体を含有するようにするが、この場合には、少なくとも一方のプラズマ重合体の濃度が前記表面またはこれの一部に渡って不均一であるようにする。
【0028】
本発明の好適なさらなる方法における前記単量体は揮発性アルコールである。
【0029】
本発明の代替方法における前記単量体は揮発性酸である。
【0030】
さらなる代替方法における前記単量体は揮発性アミンである。
【0031】
本発明のさらなる方法における前記単量体は揮発性炭化水素である。
【0032】
本発明の好適なさらなる方法における前記単量体は揮発性フルオロカーボンである。
【0033】
本発明の好適なさらなる方法における前記単量体はエチレンオキサイド型分子である。
【0034】
本発明の好適なさらなる方法における前記単量体は揮発性シロキサンである。
【0035】
本発明の好適なさらなる方法における前記単量体はN−ビニルピロリドン、アリルアルコール、アクリル酸、オクタ−1,7−ジエン、アリルアミン、パーフルオロヘキサン、テトラエチレングリコールのモノアリルエーテルまたはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)から成る群から選択した少なくとも1種である。
【0036】
本発明の好適なさらなる方法では、前記重合体を単一種の単量体から生じさせる。
【0037】
好適には、前記単量体を本質的にエチレン系不飽和有機化合物で構成させる。
【0038】
好適には、前記単量体を本質的に単一種のエチレン系不飽和有機化合物で構成させる。
【0039】
好適には、前記単量体をエチレンオキサイド型分子(例えばトリグライム)で構成させる。
【0040】
そのような化合物は、好適には、アルケン(例えば炭素原子を20個以下、より一般的には炭素原子を12個以下、例えば8個含有)、カルボン酸(特にα,β−不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸またはメタアクリル酸など)、アルコール(特に不飽和アルコール)、またはアミン(特に不飽和アミン)である。
【0041】
好適には、前記単量体を2種以上のエチレン系不飽和有機化合物の混合物で構成させる。
【0042】
好適には、そのような化合物をアルケン(例えば炭素原子を20個以下、より一般的には炭素原子を12個以下、例えば8個含有)、カルボン酸(特にα,β−不飽和カルボン酸)、アルコール(特に不飽和アルコール)、またはアミン(特に不飽和アミン)から成る群から選択する。
【0043】
「アルケン」は、C=C二重結合を1個以上含有する直鎖および分枝アルケン(直鎖が好適である)、例えばオクタジエン、例えばオクタ−1,7−ジエンなどを指す。ジエンがアルケンの好適な種類を構成する。
【0044】
前記単量体を本質的に飽和有機化合物で構成させることも可能である。前記単量体を芳香族化合物、複素環式化合物、または炭素−炭素三重結合を1個以上含有する化合物で構成させることも可能である。
【0045】
別法として、前記重合体は共重合体である。好適には、前記共重合体を少なくとも1種の有機単量体と少なくとも1種の炭化水素を含んで成る。好適には、前記炭化水素はアルケン、例えばジエン、例えばオクタ1,7−ジエンなどである。
【0046】
本方法は、また、プラズマを発生させる目的で他の化合物、例えば、決して限定するものでないが、エチルアミン、ヘプチルアミン、メタアクリル酸、プロパノール、ヘキサン、アセチレンまたはジアミノプロパンなどを用いることも包含する。
【0047】
そのような単量体は、好適には、少なくとも6.6x10−2ミリバールの蒸気圧を示す重合性単量体である。1.3x10−2ミリバール未満の蒸気圧を示す単量体は、それを加熱して蒸気圧を充分に高くすることができない限り、一般に適切ではない。
【0048】
本発明の好適な方法では、前記単量体1種または2種以上を前記表面に空間的に離れて位置する点の状態で付着させる。
【0049】
本発明の好適なさらなる方法では、前記単量体1種または2種以上を前記表面に軌道(tracks)または線(lines)の状態で付着させる。
【0050】
本発明の好適なさらなる方法では、前記点および/または線に異なる重合体化学的性質を持たせてもよい。
【0051】
本発明の好適なさらなる方法では、そのような線、軌道または点の化学的組成および/または官能性を長さ方向および高さ方向に沿って不均一にする。
【0052】
本発明の好適なさらなる方法では、そのような線または軌道をループまたは閉回路の形態にしてもよい。
【0053】
本発明の好適なさらなる方法では、非結合表面がもたらされるように、ある領域を付着したプラズマ重合体で構成させないで、その領域をエチレン−オキサイド型単量体の重合体を含ませて構成させてもよい。
【0054】
本発明の好適な方法では、前記プラズマを低電力条件下に維持するが、そのような条件にすると、元々の単量体の化学的性質を有する膜を得ることができる。低電力条件は典型的に10−2W/cmの連続波電力または脈動(pulsed)プラズマの場合には相当する(equivalent)時間平均電力を指す。
【0055】
本発明のさらなる態様に従い、本発明に従う方法で得ることができる表面を含んで成る基質を提供する。
【0056】
本発明は、さらなる態様において、プラズマ重合表面を有していて前記表面が少なくとも1番目と2番目の重合体領域を有しかつ前記1番目の領域の組成と前記2番目の領域の組成が異なる基質を提供するが、これは、少なくとも一方の領域に1番目の結合体が結合していて前記1番目の結合体に2番目の結合体が結合することを特徴とする。
【0057】
前記基質を好適にはガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンまたはポリスチレン)、ニトロセルロース、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリカーボネート、ポリ(メタアクリル酸メチル)またはナイロン、金属、セラミック、石英、複合構造体(例えばガラス上の金属膜)またはケイ素ウエーハから成る群から選択する。
【0058】
本発明は、少なくとも1つの軸(XYZ)、典型的には長さ方向に沿ったプラズマもしくは重合体濃度がいろいろであるプラズマ重合表面を包含し、そのような表面を本明細書では「プラズマ勾配表面」と呼ぶ。その上、本発明は、制御様式で付着させた複数種のプラズマ重合体を含んで成る表面も包含する。
【0059】
従って、本発明は、プラズマ勾配表面を含んで成る基質を提供し、それに結合体を導入すると、それによって、不均一結合表面または「勾配結合表面」がもたらされる。
【0060】
本発明は、組み合わせ(combinational)勾配結合表面[可能ならばいろいろな軸(XYZ)に沿った]を含んで成る基質を包含し、それに1種以上の結合体を導入すると、それによって、前記基質表面の上に官能基の多方向勾配がもたらされる。従って、本発明は、結合体を空間的にいろいろな濃度で含有する結合表面を提供するが、前記濃度は前記表面上の官能基の元々の濃度に直接関係している。
【0061】
本発明は、1つの態様において、官能基を空間的にいろいろな濃度で含んで成る結合表面を有する基質を提供する。その官能基の濃度は前記表面の同じ軸に沿っていろいろであってもよい。
【0062】
本発明は、代替態様において、蛋白質を空間的にいろいろな濃度で含んで成る結合表面を有する基質を提供する。その蛋白質/リガンドの濃度は前記表面の同じ軸に沿っていろいろであってもよく、例えば表面の1つの軸に沿って蛋白質(A)の濃度が高くなりそして同じ軸に沿って同じ方向にか或は別の軸に沿ってリガンド(B)の濃度が低くなるようにしてもよい。
【0063】
勾配は濃度、電荷、pH、疎水性、大きさ(size)などの勾配であってもよい。
【0064】
さらなる態様に従い、本発明に従う基質を含んで成る製品を提供する。
【0065】
本発明の好適な態様における前記製品は検定用製品の一部である。
【0066】
本発明の好適なさらなる態様における前記検定用製品はマイクロアレイである。
【0067】
好適な代替態様における前記検定用製品はマイクロタイター(microtitre)プレートである。
【0068】
好適な代替態様における前記製品はマイクロ流体工学素子またはこれの一部(例えば弁、スイッチ、ガイドチャネル、結合部位、ポンプ)を含んで成る。
【0069】
本発明のさらなる態様に従い、アレイプリンターと共に用いる本発明に従う検定用製品を提供する。
【0070】
本発明のさらなる態様に従い、アレイリーダー(reader)と共に用いる本発明に従う検定用製品を提供する。
【0071】
本発明のさらなる態様では、本発明に従う基質を含んで成る細胞培養装置を提供し、この装置では前記結合体が少なくとも1種の細胞が増殖し得る表面を与えている。
【0072】
本発明のさらなる態様では、ある表面を含んで成る基質を含んで成っていて前記基質の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に不均一プラズマ重合体表面を配置することで得ることができる細胞培養装置を提供する。
【0073】
本発明の好適な態様における前記培養装置は検定用製品の一部である。
【0074】
本発明の好適なさらなる態様における前記検定用製品はマイクロアレイである。
【0075】
好適な代替態様における前記検定用製品はマイクロタイタープレートである。
【0076】
本発明のさらなる態様に従い、アレイプリンターと共に用いる本発明に従う検定用製品を提供する。
【0077】
本発明のさらなる態様に従い、アレイリーダーと共に用いる本発明に従う検定用製品を提供する。
【0078】
本発明は、さらなる態様において、生物学的分子を分離する方法を提供し、この方法は、本発明に従う基質を用いて生物学的分子を示差結合研究(differential binding studies)を基に分離することを含んで成る。
【0079】
本基質を用いて生体分子の混合物を物理的または化学的特性(例えば質量、電荷、大きさ(size)、疎水性、pH)の差を基に分離することができる。その上、本基質を用いて同じ(identical)混合物を特性(電荷、大きさ、pHなど)の差を利用して分離することも可能である。
【0080】
本明細書で用いる如き「生体分子」には、これらに限定するものでないが、細胞、代謝産物、薬学的に活性のある薬剤、蛋白質、例えばホルモン、抗体、酵素、受容体など、巨大分子、例えばDNA、RNA、蛋白質、ペプチド、ポリペプチドなど、リガンド、プロテオグリカン、炭水化物、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、毒性試薬、化学種が含まれる。
【0081】
本発明は、好適な態様において、本発明に従う基質を用いて細胞を分離する方法を提供する。
【0082】
本発明を用いると、細胞が本基質の表面上をいろいろな位置に移動することを観察することができ、それによって、細胞生存度の指標を得ることができる。細胞運動性は病気状態の指標であり得、従って、細胞集団の挙動からそのような状態を診断することができる。癌細胞の運動性と癌細胞以外の細胞の運動性にインビボで差があることが観察されており、従って、本発明は癌の診断に有用であり得る。
【0083】
本発明は、さらなる態様において、本発明に従う基質を用いて前記基質と結合する生体分子の結合の差を測定することを含んで成る選別方法を提供する。この方法は効力のある治療薬を結合研究で識別しようとする時に有用であり得る。
【0084】
本発明は好適な態様において選別方法を提供し、この方法は、
i)本発明に従う基質を準備する工程と、
ii)前記基質の表面を選別して、前記表面への生体分子の結合特性を決定する工程であって、前記結合特性は、生体分子が前記表面に結合する位置で識別可能である、該工程と、
iii)前記結合特性により生体分子の識別を行う工程と、
ことを含んで成る。
【0085】
生体分子、例えば細胞などの「結合特性」を本明細書で用いる場合、これは、当該分子の結合または脱離特性、例えばある分子が前記表面と結合し/から脱離する速度、当該結合体の表面濃度の差に関係した細胞の生存度、当該結合体の表面濃度の差に関係して細胞が前記表面に結合して増殖する度合、発現蛋白質の変化、または当該結合体の表面濃度の差に関係した発現蛋白質の変化または細胞が二次的刺激に反応する能力の変化、当該結合体の表面濃度の差に関係して生物学的分子(蛋白質、リガンド、ペプチド、核酸、糖蛋白質など)が吸着(物理的または化学的)されるか否か、当該結合体の表面濃度の差に関係して吸着される生物学的分子の濃度の変化などを指す。
【0086】
従って、本発明は、多数種の結合体を迅速に調査および/または選別する方法および製品を提供する。この方法は、前記表面と結合する生体分子の示差結合研究の差を用いて結合表面組成を評価しかつ場合によりそれを選択することを含んで成り得る。このように、本発明では、いろいろな生物学的用途、例えば細胞培養、蛋白質の吸着、細胞または生体分子の分離、蛋白質と蛋白質の相互作用もしくは細胞と細胞の相互作用に関する研究を行うことを可能にする結合表面を生じさせる。
【0087】
本方法では、更に、当該基質の結合表面と生体分子、例えば細胞などの相互作用がそれの挙動、例えば生存度などに対して示す影響を測定するためのスクリーンも提供する。
【0088】
本発明は物理的に不均一(我々が「パターン化」と呼ぶ)プラズマ重合表面を生じさせることに関することは明らかであろう。本発明は、マイクロメーターの精度で「描く」ことができる2種以上の(実際、数には実際上の制限はない)パターン化した化学的性質を有する表面を生じさせることに関する。非特許文献6のステンシルアプローチを用いたのでは、そのような表面を得るのは不可能である。当該基質の形態は単にプラズマパターンの最大解像度に影響を与える。
【0089】
パターンを線、円、ループ、アレイまたは考えられる如何なる幾何形状で構成させてもよく、それらをどのように組み合わせてもよく、規模はセンチメートルから約5ミクロンに及び得る。それには、また、Z軸(高さ)に沿って位置する材料が示す化学的および物理的差が異なる三次元パターンも含まれる。このように、表面のいろいろな局所的領域にいろいろな層の「化学的性質」を含んで成るナノメーターの造作(feature)を表面上に「成長させる」ことができる。
【0090】
重合体を付着させる時、実質的に如何なる化合物(特に有機化合物)も使用可能であるが、但し、それが誘発されてプラズマを発生し得ることを条件とする。このことは、典型的に、その化合物が揮発性でなければならないこと、例えば単量体が室温で示す蒸気圧が少なくとも6.6x10−2ミリバールであることを意味するが、加熱を行うか或は担体ガスを用いてそれを行うことも可能である。従って、如何なる化学的官能基を含有するマイクロドットまたはこれのアレイ、即ちマイクロトラックも作成可能であり、単一の基質に付着させることができるいろいろな化学的性質の数には制限がない。このことは、以前に開示されたプラズマ重合体パターン化方法とは対照的であり、そのような以前の方法を用いて付着させることができるパターンは「モノトーン」のみである。その書き込んだ重合体が必ず官能基を含有しているとは限らない、即ち出発化合物が炭化水素の場合の付着表面は本質的に官能基を持たない。最初にエチレンオキサイド型単量体を用いて均一にプラズマ重合させておいた表面に書き込みを行うことを通して、非汚染表面上に官能パターンを生じさせることができる。最近開示されたプラズマ重合体パターン化方法を用いたのでは、2種以上の化学的性質を含有する表面を生じさせるのは不可能である。加うるに、重合体を基質の上に書き込む本方法を用いると、閉じたループまたは回路を表面に生じさせることも可能である、即ちある面にマスクをかぶせることでその面に表面パターン化が起こらないようにすることができる。
【0091】
化学的性質の勾配を生じさせようとする時、プラズマの組成を変えると同時に書き込み素子を表面に関し相対的に動かす。そのようにプラズマの組成を変えようとする時、単量体1種または2種以上の温度を変えるか、単量体1種または2種以上または担体ガス1種または2種以上の分圧または混合比を高くするか、或は系に導入する電力の振幅またはパルス形態または振動数を変えることでそれを達成することができる。
【0092】
前記基質およびプラズマ源をプレシジョンXYZトランスレーションステージ(precision XYZ translation stage)の両側に固定する。前記XYZステージは1個の固定フランジと1個の移動フランジを含んで成る。従って、前記基質およびプラズマ源は相互に関連して動く。
【0093】
他の態様の各々に関しては、本発明の各態様の好適な特徴に必要な変更を加える。
【0094】
ここに、本図、材料および方法を言及することで本発明を単に例として記述する。
材料および方法
プラズマ重合の方法論が特許文献1に開示されており、これは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0095】
プラズマ「書き込み」装置の図式図を図1に示す。この装置はマスクプレートで分離されている2個の真空室で構成されるが、共通の真空系を共有している。最上部の室は単量体流入口を数個有しかつプラズマを励起させる電極を有する。下方の室にプレシジョンXYZマニピュレーション(manipulation)ステージが入っており、これの上にパターン化を受けさせる基質を取り付ける。
【0096】
前記「書き込み」素子は小さい造形物を含有する「ニブ(nib)」を含有し、これを用いて化学的性質を表面に「書き込む」。そのようなニブの例には、単一の穴、複数の穴、および単一もしくは複数のスロットが含まれ、それらの寸法は2マイクロンから数センチメートルの範囲であり得るが、より典型的には5−1000マイクロンの範囲である。前記ニブは、微小毛細管(例えば)の場合、プラズマ源の一体部分であってもよい。この場合の用語「ニブ」は、毛細管の末端部に位置する開口部を指す。
【0097】
特許文献1に記述されている如き所望組成の均一な膜を付着させる場合に要求される組成と同様な組成のプラズマを発生させる(単量体1種または2種以上または単量体1種または2種以上と担体ガス1種または2種以上の組み合わせのプラズマ)。典型的には単量体を有機化合物で構成させて、それを加熱または噴霧または担体ガスの使用でか或はそれ自身が室温以下の温度で示す蒸気圧のいずれかで誘発させて気相の状態で存在させてもよい。プラズマ室内の圧力を典型的には約1x10−2ミリバール、通常は10−3ミリバール−1ミリバールの範囲内にする。プラズマ重合の有効圧力は一般に10−5ミリバールから大気圧またはそれ以上の圧力の範囲内である。
【0098】
他のプラズマ装置、例えばマイクロ波、波動rf、dc、大気、マイクロ放電、微小毛細管などを用いることも可能であり、そのようなプラズマ源の一体化を可能にする目的でこの上で行った説明を適応する手段は本分野の技術者に明らかである。
【0099】
書き込み素子をこれがXYZマニピュレーター(manipulator)上に置いたサンプルの表面を横切るように移動させる。サンプルまたはプラズマ源のいずれかまたは両方を他方と相対的に動かしてもよい。所望の造形を表面の上に書き込む目的で行うそのような移動は手動またはコンピューター制御モーター作用で制御可能である。移動速度は書き込み素子の寸法、プラズマ重合体の付着速度および付着させる膜に要求される厚みを確認することで容易に計算可能である。
【0100】
ある勾配の化学的性質を生じさせようとする時、プラズマの組成を変えると同時に書き込み素子を表面に関して相対的に動かす。そのようにプラズマの組成を変えようとする時、単量体1種または2種以上の温度を変えるか、単量体1種または2種以上または担体ガス1種または2種以上の分圧または混合比を高くするか、或は系に導入する電力の振幅またはパルス形態または振動数を変えることでそれを達成することができる。プラズマの組成を変える他の手段は本技術分野で公知である。
【0101】
サンプルとマスクプレートが極めて近い位置に来るように(接触はしないが)、前記サンプルを持ち上げる。このようなマスクプレートをステンレス鋼板で構成させて、それに、付着させるべき造形物を限定する小さい開口部を持たせる。その付着の種類は、当該プラズマが前記開口部によって導かれて前記開口部の下に位置する表面に重合体付着物が生じるような種類の付着である。しかしながら、画像を表面の上に形成させる簡単な「ステンシル」とは対照的に官能重合体材料を当該基質の上に書き込む一種の「ペン」として前記開口部を用いることを注目されたい。
【0102】
2段階の回転式ポンプで支持されているターボ分子ポンプで構成されている通常の真空装置を用いて両方の室に真空排気を受けさせる。装置全体の基本的圧力を〜10−5ミリバールにする。
【0103】
rfジェネレーター(Coaxial Power Systems、UK)を用いて上部室内のプラズマを励起させ、そして単量体1種または2種以上の流量およびプラズマの電力およびパルス形態を調整することで、所望のプラズマ組成を選択する。
プラズマ勾配の「書き込み」
異なる2種類の単量体化合物を用いて官能性勾配(functionality gradient)を付着させた。アリルアミンおよびアクリル酸をAldrich(UK)から入手して、それらに凍結−ポンプ−解凍サイクルを数回受けさせることで溶解していた気体を除去した。〜100マイクロンの穴が1個開いているマスクをマスクプレートに取り付けた後、1片のシリコンウエーハを基質として用い、これを持ち上げることで触れないように前記マスクにできるだけ近づけた(この上に記述したように)。最初に、アクリル酸単量体供給材料のみを用いてプラズマを励起させた。次に、単量体ガスの混合を変えると同時に前記マスクの下に位置するサンプルを直線的に動かした。それによって生じた最初の付着物は全体がアクリル酸プラズマ重合体で構成されていたが、後の付着物はアリルアミンとアクリル酸の混合物で構成されており、そして最後の付着部分は全体がアリルアミンで構成されていた。このように、この実験中に動かしたサンプルの範囲に渡って表面の組成がカルボン酸基が優位に占める領域からアミン基が優位に占める領域に滑らかに変化した。
【0104】
微小勾配は単に二官能勾配に限定されず、連続的に変わる表面造形がもたらされるように単量体を何種類も用いることができる。同様に、他の特性を有する勾配、即ち湿潤性の勾配(超疎水性から親水性)、架橋密度、接着性および厚みの変化の勾配も考えられる。生じさせることができる勾配には、異なる特性を有する任意の2種以上の重合体が連結している(connecting)化学的に連続した領域が含まれる(そのような特性がどのような特性であるかに関係なく)。ある重合体がn次元のパラメーター空間の中の一地点を占めているとして見ることができる、即ちパラメーター空間の寸法とは関係なく、そのような2地点の間に直接的な路が必ず存在する。
【0105】
この上に記述した例は、本技術を説明する目的で約100マイクロンの造形規模を用いた例である。実際、表面をパターン化する上限をミリメートルまたはセンチメートルの規模にしそして下限を1マイクロンにまで下げることが要求される可能性がある。
【0106】
プラズマ書き込み過程を制御する目的でプラズマ装置を変えることも可能である。DC、無線周波(radiofrequency)(パルスまたは連続波)またはマイクロ波放射線を用いてプラズマを励起させてもよいか、或はマイクロメーター規模の毛細管内またはそれの先端部でプラズマを励起させることも可能である。ある種の低揮発性単量体では担体ガスを用いてもよい。書き込み過程の精度を向上させかつ自動化しようとする場合には、簡単なコンピューター装置を用いてプラズマパラメーターおよびXYZステージ位置を管理する方法が有益であり得る。その上、この実験ではプラズマを上部室の中に入れかつサンプルを下部室に入れると記述したが、パターンを生じさせる時に必要な事項は、装置構成要素の配向と関係無くサンプルとプラズマをマスクプレートで分離することのみである。
【0107】
電場または磁場をかけることでマスク領域内のプラズマ組成を変えることも可能である。それらを更にプラズマの焦点をしぼる「レンズ」として用いることができる。それらを用いてまたプラズマに含まれるイオン成分およびラジカル成分の相対貢献度を上昇または低下させることも可能であり、極限状態では、当該基質に到達する種が減少してラジカル種の平行ビームになっているか或はイオンの低エネルギービームになっている可能性がある。
【0108】
基質材料への付着を直接行うことに加えて、前処理を用いてその表面を奇麗(clean)にしておいてもよいか、或は書き込みを行う前の基質に局所的造形を刻み込んでおいてもよい。それによって表面上に三次元の官能構造物を単一工程で生じさせること(例えば底に沿って「掘った溝」にアミン官能基を付着させることなど)ができる。
【0109】
微小勾配を用いて生体分子混合物の分離を物理的もしくは化学的特性(例えば質量、電荷、大きさ、疎水性)の差を基に実施することができる。これはゲル電気泳動およびゲル浸透クロマトグラフィーに類似している。勾配を用いて同じ混合物の分離を特性の差(電荷、大きさなど)を利用して行うことも可能である。
【0110】
その書き込む造形の化学的性質は非官能性炭化水素表面(アルカン、アルケン、芳香型化合物を用いて付着)から他の考えられる全ての化学基、例えばアミン、酸、アルコール、エーテル、エステル、イミン、アミド、ケトン、アルデヒド、無水物、ハロゲン、チオール、カルボニル、シリコーン、フルオロカーボンなどに及ぶ範囲であり得る。加うるに、導電性プラズマ重合体を付着させることも可能である。取り込ませる官能性に対する制限は、低圧(〜10−5ミリバール以上)で気相(加熱の有り無し)状態で存在するように誘発され得る出発化合物が存在しているべきであることのみである。また、反応性ガス(N、O、HO)または非反応性ガス(Ar)を用いていろいろな化学的性質を生じさせることも可能である。また、そのようなガスを用いて基質の中に造形物を刻み込むことも可能であり、それらの全部を同じ工程の一部として実施することができる。
【0111】
そのような官能性を何種類も含有する混合物を任意の組み合わせまたは配列で含有するパターンを同じ基質材料上に生じさせることができる。
【0112】
表面に含有させることができる官能性勾配の規模はセンチメートルから約10マイクロンに及ぶ。勾配は異なる2種類の化学的性質が連続的に変化する領域である。2領域の間の化学的性質が異なる限り、間隔を置いて位置する2点に必ず直線を引くことができる様式と同じ様式で如何なる2領域の間にも必ず勾配を作り出すことができる。
【0113】
如何なる基質材料にも重合体の微小パターン、微小アレイ、微小勾配および微小トラックを書き込むことができ、例えばガラス、セラミック、金属、半導体、および重合体[(これらに限定するものでないが)ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)を包含]などに書き込みを行うことができる。
〈実施例〉
プラズマ重合体表面の調製
【実施例1】
【0114】
アクリル酸およびアリルアミン単量体をAldrich(UK)から入手して、受け取ったまま用いたが、但し、使用に先立ってそれらに凍結−ポンプ−解凍サイクルを数回受けさせることで溶解していた気体を除去した。13mmのガラス製カバースリップを基質材料として用いて、XYZサンプルステージに取り付けた後、ポンプで系の基底圧力(<10−3ミリバール)にまで下げた。1cmの書き込み素子を用いて、最初に、サンプル表面全体がプラズマにさらされるように位置させた。5Wの連続波電力および1.9x10−2ミリバールの反応槽圧力を用いて4cmstp−1のアリルアミンで構成させたプラズマをプラズマ室内で励起させた。その書き込み素子をこれが表面を横切るように1mm/分の速度で13分かけて移動させた。それと同時にニードルバルブをゆっくり調整することでアリルアミンの流量を低くし、その代わりに、アクリル酸の蒸気を12分後の単量体流れがアクリル酸のみで構成されるように〜2x10−2ミリバールの圧力下4cmstp−1の流量で流し込んだ。全単量体流量を常に4cmstp−1に維持した。[この2種類の単量体の流量(cmstp−1)の比率がそれらのモル比に相当する(挙動が理想的であると仮定して)]。
【0115】
化学的性質がサンプル表面に沿って次第に変化することを分析する目的で、X線光電子分光測定を用い、前記カバースリップを横切るように500マイクロンの間隔でそれを分析した。各地点の元素組成を図4に酸素/炭素比および窒素/炭素比として示す。
【0116】
図2は、電力を5Wに一定にしそして書き込み素子に対してサンプルが動く速度を1.0mm/分にした時の100%アリルアミンの組成から100%アクリル酸の組成に至る前記書き込み素子の動きに付随して変化する酸素及び窒素の化学の勾配が存在することを示している。
アミン基勾配へのビオチンの結合
【実施例2】
【0117】
この上に記述した方法を用いて勾配を生じさせたが、ここでは、アリルアミンおよび1,7−オクタジエンを単量体として用いる。勾配を分析することでアミン基の表面濃度が勾配の長さ方向に渡って低くなることが分かる。N−ヒドロキシスクシニミドビオチン(NHS−ビオチン)(Sigma、Dorset)をジメチルスルホキサイドに25mMになるまで溶解させた後、蒸留水を用いて更に希釈して1mMにする。前記勾配物を1mlの前記NHS−ビオチン溶液と一緒にして室温の暗所で24時間インキュベートする。次に、その表面を蒸留水で徹底的に洗浄することでいくらか存在する未反応NHS−ビオチンを除去する。
【0118】
アビジン−フルオレセインイソチオシアネート(アビジン−FITC)を燐酸塩緩衝食塩水(PBS)に1ml当たり225マイクログラムの濃度で入れることで生じさせた溶液と前記勾配物を30分間インキュベート(37℃で)することを通して、前記表面に渡るビオチンの密度を測定する。アビジンは前記表面と結合しているビオチンと非常に強力に結合し、そして次に、蛍光顕微鏡を用いて勾配の画像を撮った。
【0119】
細胞の表面はビオチンと接合する。アビジン溶液を用いて2個のビオチン分子を連結させかつ細胞と表面を連結させる。
酸基勾配上で細胞を培養
【実施例3】
【0120】
この上に記述した方法を用いて勾配を生じさせたが、ここでは、アクリル酸および1,7−オクタジエンを単量体として用いた。勾配を分析する(図3に示す)ことで酸官能基の濃度が勾配の長さ方向に沿って低くなることが分かる。個別に行った2つの実験で、前記勾配表面上でヒト線維芽細胞およびメラニン細胞を標準的培養条件(血清を使用)下で培養した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質を被覆する方法であって、
i)単量体源から少なくとも1種のプラズマ単量体を前記基質の表面に付着させ、かつ前記単量体を付着させている間、前記単量体および/または前記表面を相互に関連させて動かすことで不均一プラズマ重合表面を生じさせる工程であって、前記単量体は、炭素原子を20個以下の数で含有するアルケン、カルボン酸、アルコールおよびアミンから成る群から選択されるエチレン系不飽和有機化合物を含む、工程と、
ii)プラズマ重合付着の少なくとも一部を、カルボキシル、又はアミン官能基を含む結合体で被覆する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
基質が不均一な化学的および/または物理的な構造の表面を有する、請求項1に記載の方法により得ることのできる基質。
【請求項3】
細胞の培養における請求項2に記載の基質の使用。
【請求項4】
細胞の分離における請求項2に記載の基質の使用。
【請求項5】
生物学的分子を選別する方法であって、
i)請求項2に記載の基質を準備する工程と、
ii)前記基質表面を選別して、前記基質表面への細胞の結合特性を決定する工程であって、前記結合特性は、細胞が前記表面に結合する位置で識別可能である、該工程と、
iii)前記結合特性により細胞の識別を行う工程であって、前記生物学的分子が細胞、代謝産物、薬学的に活性のある薬剤、ホルモン、抗体、酵素、受容体を包含する蛋白質、DNA、RNA、蛋白質、ペプチド、ポリペプチドを包含する巨大分子、リガンド、プロテオグリカン、炭水化物、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、毒性試薬および化学種から成る群から選択される、該工程と、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214815(P2012−214815A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−155710(P2012−155710)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2006−516372(P2006−516372)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】