説明

方法

本発明は、四重極型質量分析計(QMS)コンポーネントを製造する方法と、モノリシック四重極型質量分析計又はモノリシック四重型質量分析計のコンポーネントと、双曲線電場を生成する能力をもつ四重極型質量フィルタ(QMF)又は四重極イオントラップ(QIT)と、モジュラ式四重極型質量分析計(QMS)アセンブリとに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四重極型質量分析計(QMS)コンポーネントを製造する方法と、モノリシック四重極型質量分析計又はモノリシック四重型質量分析計のコンポーネントと、双曲線電場を作る能力をもつ四重極型質量フィルタ(QMF)又は四重極イオントラップ型(QIT)と、モジュラ式四重極型質量分析計(QMS)組立体とに関する。
【0002】
質量分析計は、一般に、試料がイオン源によってイオン化される真空チャンバに試料を導入することに頼る。イオンは、検出器に到達する前に、イオンの電荷と質量との比に応じて分離される。従来型の四重極型質量分析計(QMS)では、コンパスの各点にある4個の円形状電極がこれらの円形状電極の密閉空間の中に電場を作る。これらの電極は、典型的に、直径1cm及び長さ15cmまでのステンレス鋼製であり、そして、精密製造を必要とする。国際公開第96/31901−A号には、金属被覆グラスファイバの形をした電極が開示されている。
【0003】
質量分析計における最近の開発は、優れた性能を維持したまま携帯型にすることができる完全一体型デバイスを構築することに主な焦点を絞って急速に進歩している。これを実現するため、質量アナライザのような質量分析計コンポーネントの小型化が追求されている。アナライザのサイズの縮小は、いくつかの利点を約束する。
1. 個々のコンポーネント及び完成デバイスのための大量生産の可能性を提供する既存の実施技術による製造コスト削減。
2. イオンの平均自由行程の長さの短縮を原因とするより高圧での動作。
3. より小型化されたデバイス及びより高圧動作を原因とするよりロバスト性が低く、かつ、より安価な真空システムの使用。
4. 不可欠な電場を生成するため必要とされるより低い電極電圧を実現するため低電力バッテリで動作する可能性に伴う電力消費削減。
5. 質量分析システム全体を携帯型にする可能性。
【0004】
質量分析計の小型化は、主として、金属蒸着を用いる半導体マイクロエンジニアリングに基づくマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)によって現在実行されている。双曲線のような複雑な電極幾何学的形状は、MEMSを使用してマイクロスケールで加工できないので、円筒状及び平面状のようなより簡単な幾何学的形状が双曲線場への近似を与えるため使用される。
【0005】
MEMSを使用して構築された最初の小型アナライザのうちの1つは、円筒状電極付きの四重極型質量フィルタ(QMF)である[Taylor S et al. Silicon based Quadrupole Mass Spectrometry using Microelectromechanical Systems. J. Vac. Sci. Technol. B 2001, 19, 557−562]。他の小型質量アナライザは、タイムオブフライト質量フィルタ[Wapelhorst E et al: Complex MEMS: a Fully Integraed TOF Micro Mass Spectrometer. Sensors and Actuators A 2007, 138, 22−27]と、アレイを容易に形成する円筒状マイクロイオントラップ[Blain M G et al: Towards and Hand−Held Mass Spectrometer: Design Considerations, Simulation and Fabrication of Micrometer−Scaled Cylindrical Ion Traps. Int. J. Mass Spectrom. 2004, 236, 91−104、 Pau S et al: M. Microfabricated Quadrupole Ion Trap for Mass Spectrometer Applications. Phys. Rev. Lett. 2006, 96, 120801、及び、Van Amerom F H W et al: Microfabrication of Cylindrical Ion Trap Mass Spectrometer Arrays for Handheld Chemical Analyzers. Chem. Eng. Comm. 2008, 195, 98−114]と、平面状電極付きの直線的イオントラップ[Song Y et al: Novel Linear Ion Trap Mass Analyzer Composed of Four Planar Electrode. J. Am. Soc. Mass Spectrom. 2006, 17,631−639 Anal. Chem. 2007, 79, 2927−2932]と、ハローイオントラップ[Austin D E et al: Halo Ion Trap Mass Spectrometer. Anal. Chem. 2007, 79, 2927−2932]と、を含む。イオン源小型化は、カーボンナノチューブ電子衝撃イオン源の具現化と共にさらに進歩している[Bower C A et al: On−Chip Electron Impact Ion Source using Carbon Nanotube Field Emitters. Appl. Phys. Lette. 2007, 90, 124102]。
【0006】
本発明は、四重極型質量分析計(QMS)のコンポーネントを製造するための硬化性材料の選択的硬化の利用に基づいている。詳細には、本発明は、モジュール性が与えられることがあり、そして、これまでのところ達成できない電場プロファイルの達成を(使用中に)もたらす非常に正確なプロファイルが利用されるQMSのモノリシック(例えば、単一の)コンポーネントのための方法に関する。
【0007】
第1の態様から見ると、本発明は、四重極型質量分析計(QMS)コンポーネントを製造する方法であって、
硬化性材料の土台を準備するステップ(a)と、
QMSコンポーネントのxy層の特性を示す選択的に硬化された材料のxy層を生じさせるため、硬化性材料の土台の中の複数のxy層の1つずつをz方向に順次に入射放射線で選択的に露光するステップ(b)と、
を含む方法を提供する。
【0008】
小さい段階的なz方向の増加を利用することにより、体積画素に関係した小さい形状サイズ(厚さzを有する画素寸法xy)が高精度でQMSコンポーネントを製造するため達成可能である。本発明の方法は、よって、良好な公差及び滑らかな平面をもつ小型QMSコンポーネントを簡単に、急速に、そして、低コストで製造することを可能にする。これらの利点は、詳細には、即時医療診断と、水質及び環境分析と、石油、天然ガス及び爆発物の検出とのような現場用途における質量分析計の有用性を増進する。
【0009】
入射放射線は、QMSコンポーネントのxy層の特性を示す画像によって特徴付けられることがある。
【0010】
好ましくは、ステップ(b)は、z方向での複数のxy層の順次露光に応じた入射放射線を順次に再特徴付けする(例えば、デジタル的に再特徴付けを行う)ことを含む。
【0011】
層毎に特定のマスクを(著しいコストで)必要とする従来型のリソグラフィック技術とは異なり、本発明の方法の本実施形態は、一連の層毎に「マスク」を効率的に作り替え、それによって、制御された層毎の幾何学的形状を構築するために動的マスキング方式を利用する。
【0012】
再特徴付けは、画像搬送信号(例えば、デジタル画像搬送信号)に応答して行われることがある。画像搬送信号は、モデリング技術(例えば、CADデータ又はスキャンファイルからのコンピュータ生成モデル)によって生成されることがある。再特徴付けは、コンピュータ制御されてもよい。
【0013】
ステップ(b)は、入射放射線を出力するため、放射線源と、デジタル画像搬送信号に応答して放射線源からの放射線を調節するデジタル調節デバイスとによって実行されることがある。デジタル調節デバイスは、好ましくは、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)である。このようなデバイスは、映像用途のためTexas Instrumentsから入手可能である。
【0014】
ステップ(b)のxy層は、典型的に、厚さ15ミクロンを有する。この目的のため、ステップ(b)は、硬化性材料の土台をz方向へ順次にステップ送りするため、ステッピングモータを使用して段階的に進むことがある。
【0015】
放射線源は、白色光でもよく、レーザ放射線でもよく、又は、LED放射線でもよい。
【0016】
硬化性材料は、典型的に、硬化性樹脂である。硬化性材料は、感光性樹脂でもよい。硬化性材料は、アクリル樹脂でも、エポキシ樹脂でも、又は、ワックスベース樹脂でもよい。一例は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。
【0017】
QMSコンポーネントは、(電極として動作可能である)細長いロッドと、締め付けピンと、四重極型質量フィルタ(QMF)と、イオン源(例えば、スパークギャップ・イオン源、プラズマベース・イオン源、放射性同位体イオン源、又は、電子衝撃イオン源)と、イオンコレクタと、イオン検出器と、QMFプレフィルタと、プレフィルタ処理後の質量アナライザと、(円筒状又は四重極イオントラップのような)イオントラップと、質量アナライザのアレイ(例えば、トラップアレイ)と、イオン源レンズと、ハウジングと、上記のうちのいずれかのコンポーネントとのうちの1つ以上でもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、QMSコンポーネントは、四重極イオントラップ型質量分析計(QITMS)である。QMSコンポーネントは、線形四重極イオントラップ又は3次元四重極イオントラップでもよい。
【0019】
好ましい実施形態では、QMSコンポーネントは、四重極型質量フィルタ(QMF)である。QMSコンポーネントは、ハウジング部と、ハウジング部の中で平行であり、かつ、相互に離間する4個の細長い電極部とにより構成されたQMFでもよい。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、それ自体が1つ以上のQMF部により構成されたQMFを製造するため使用される。モノリシック単一QMF又はQMFのアレイを備える高信頼性かつ完全一体型QMSは、多数の異なる技術分野における実地有用性において著しく進展する。
【0021】
QMSコンポーネントは、レンズ部とレンズ間の絶縁体部とにより構成されたイオン源レンズでもよい。
【0022】
QMSコンポーネントは、電極部により構成され、使用中にイオンが電極部のギャップ内部に作られるスパークギャップ・イオン源でもよい。
【0023】
QMSコンポーネントは、プリフィルタ電極部を備えるQMFプリフィルタでもよい。
【0024】
QMSコンポーネントは、ポストフィルタ電極部を備えるQMFポストフィルタでもよい。
【0025】
QMSコンポーネントは、モノリシックQMF、QMFプリフィルタ及びQMFポストフィルタでもよい。細長い電極部、プレフィルタ電極部及びポストフィルタ電極部は、1つ以上の共通の細長いロッドで画定されることがある。共通の細長いロッドは、QMF、QMFプレフィルタ及びQMFポストフィルタの1つずつの電極部のための導電領域を画定するため被覆されることがある。
【0026】
QMSコンポーネントは、イオントラップ電極部を備える線形イオントラップでもよい。
【0027】
QMSコンポーネントは、イオントラップ電極部を備える円筒イオントラップでもよい。
【0028】
QMSコンポーネントは、イオントラップ電極部を備える双曲線イオントラップでもよい。
【0029】
QMSコンポーネントは、トラップアレイ電極部を備えるトラップアレイでもよい。
【0030】
QMSコンポーネントは、モノリシック線形イオントラップ及びトラップアレイでもよい。イオントラップ電極部及びトラップアレイ電極部は、1つ以上の共通の細長いロッドによって画定されることがある。
【0031】
好ましくは、QMSコンポーネントは、細長いロッドを(電極として動作可能である)、細長いロッド又は締め付けピンのためのハウジングである。
【0032】
好ましい実施形態では、QMSコンポーネントは、細長いロッドである。細長いロッドは、円形又は非円形の外形を有することがある。好ましい実施形態では、細長いロッドは、非円形形状(例えば、正方形、双曲線又は複雑な形状)を有している。好ましくは、細長いロッドの形状は、少なくとも部分的に実質的に双曲線である。
【0033】
細長いロッドは、多面的でもよい。細長いロッドは、一致しなくてもよい複数の(例えば、対の)実質的に放射状のフランジを有することがある。細長いロッドは、実質的にアンビル型でもよい。
【0034】
典型的に、細長いロッドの長さは、50mm以上である。
【0035】
好ましい実施形態では、QMSコンポーネントは、複数の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である細長いスロットを含み、それらの間にイオン格納容積部を画定するハウジングである。
【0036】
好ましくは、各細長いロッドの第1の部分が自由に内側を向き、各細長いロッドの第2の部分がハウジングの中の細長いスロットの外周の一部分に掛かるため適合するように、細長いスロットの中に、複数の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である。
【0037】
細長いスロットの外周の幾何学的形状は、複雑でもよい。細長いスロットの外周は、多数の凹部を含むことがある。
【0038】
好ましくは、コンポーネントは、4個の細長いロッドが相互に離間した配置(好ましくは、実質的に正方形配置)で軸方向に平行に取り付け可能である細長いスロットを含み、それらの間にイオン格納容積部を画定するハウジングである。
【0039】
好ましくは、使用中にイオン格納容積部の中に双曲線(好ましくは、実質的に理想的な双曲線)電場を生成するように、細長いスロットの中に、4つの細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である。
【0040】
好ましくは、各細長いロッドの第1の部分が自由に内側を向き、各細長いロッドの第1の部分の形状が実質的に双曲線であるように、細長いスロットの中に、4個の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である。特に好ましくは、各細長いロッドの第2の部分は、ハウジングの中の細長いスロットの四分円状の外周に掛かるため適合する。第2の部分を細長いスロットの四分円状の外周に掛けることにより、使用中にこれまで達成不可能であった実質的に理想的な双曲線電場プロファイルを提示するハウジングの中での4個の細長いロッドの精密な相互位置及び姿勢を達成することが可能である。
【0041】
細長いロッドの第2の部分の形状は、ハウジング内の細長い受承スロットの四分円状の外周の形状に実質的に一致することがある。細長いロッドの第2の部分は、オス型部である(又はオス型部を含む)ことがあり、細長いスロットの四分円状の外周は、オス型部と一致可能なメス型部である(又はメス型部を含む)ことがある。
【0042】
好ましい実施形態では、この方法は、さらに、
前述されているようなステップ(a)及び(b)によって準備されたハウジングの細長いスロットの中に、前述されているようなステップ(a)及び(b)によって連続的に準備された複数(例えば、4個)の細長いロッドを入れるステップ(c)を含む。
【0043】
本発明の方法を利用することにより、正確な形状を備える細長いロッドと、軸方向での細長いロッドの正確な位置合わせのためのスロットを備えるハウジングとを製造することができ、内接半径2mm未満を正確に製造することが可能である。好ましくは、内接半径は1mm未満(例えば、約0.9mm)である。
【0044】
ハウジングは、前述されているようなQMSコンポーネントを受承するため窪みが付けられている。
【0045】
好ましくは、ハウジングは、イオン源(例えば、スパークギャップ・イオン源、又は、電子イオン源)を受承するため適合している。イオン源は、前述されているようなステップ(a)及び(b)によって準備されることがある。
【0046】
好ましくは、ハウジングは、イオン検出器(例えば、ファラデーカップ)を受承するため窪みが付けられている。イオン検出器は、前述されているようなステップ(a)及び(b)によって準備されることがある。
【0047】
ハウジングは真空フランジの上に製造されてもよい。
【0048】
好ましくは、コンポーネントは、細長いロッドをハウジング内で締め付けるため、ハウジング内の放射状ボアを通り、細長いロッド内の放射状ボアの中へ挿入可能である締め付けピンである。締め付けピンは、細長いロッドの電気接続性を助けるために導電性でもよい。
【0049】
好ましくは、ステップ(c)は、さらに、
細長いロッドをハウジング内で締め付けるために、前述されているようなステップ(a)及び(b)によって準備された締め付けピンをハウジング内の放射状ボアを通して細長いロッド内の放射状ボアの中へ挿入するステップ(c1)を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、この方法は、さらに、
細長いロッドを導電性にするため、導電性材料のコーティングを各細長いロッドの表面に堆積させるステップ(d)を含む。
【0051】
好ましくは、ステップ(d)は、(例えば、マスキングによって)細長いロッドの第1の部分の表面で選択的に実行される。
【0052】
好ましくは、ステップ(d)はステップ(c)の後に実行される。これは、コーティングが各細長いロッドの第1の部分の表面に選択的に堆積されるように、ハウジングがマスクとして作用することを可能にする。
【0053】
導電性材料は金属ベースでもよい。例えば、導電性材料は元素状態の金属でもよい。金属は、金又は銀でもよい。
【0054】
金属堆積は、真空中での金属(例えば、金属線)の熱蒸着、または、金属スパッタリングで実行されてもよい。金属コーティングの厚さは、0.1から3ミクロンの範囲であってよい。
【0055】
さらなる態様から見ると、本発明は、前述されているような方法によって得ることのできる、又は、得られる、モノリシック四重極型質量分析計、又は、モノリシック四重極型質量分析計のコンポーネントを提供する。
【0056】
モノリシックQMS又はQMSコンポーネントは、前述されている通りでもよい。
【0057】
さらなる特許可能な態様では、本発明は、小さい内接半径によって特徴付けられる、これまで達成不可能な実質的に理想的な双曲線電場の形状のQMFによる達成に基づいている。
【0058】
さらなる態様から見ると、本発明は、双曲線(好ましくは、実質的に理想的な双曲線)電場を生成する能力をもつ四重極型質量フィルタ(QMF)又は四重極イオントラップ(QIT)であって、
細長いスロットを含むハウジングと、
細長いスロットの中に相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付けられた4個の細長いロッドと、
を含み、各細長いロッドの第1の部分の形状が実質的に双曲線であり、そして、自由に内側を向き、4個の細長いロッドの内接半径(r)が1mm未満である、四重極型質量フィルタ(QMF)又は四重極イオントラップ(QIT)を提供する。
【0059】
双曲線電場の達成は、より高い製造公差を許容しながら、QMFがより高い透過率、より高い分解能、及びより低歪みの(より理想的な)ピーク形状を示すことを可能にする。
【0060】
好ましくは、QMF又はQITは、実質的に理想的な双曲線電場を生成する能力をもつ。
【0061】
好ましくは、QMF又はQITは、使用中に、電位変化によって記述される電場を生成する。
【数1】

【0062】
好ましくは、QMF又はQITは、使用中に、実質的に図8に記述されるような電場を生成する。
【0063】
好ましくは、内接半径(r)は、400ミクロンから0.9mm、好ましくは、0.1から0.9mmの範囲に入る。
【0064】
本発明のQMFによって達成可能なピーク高さの50%における平均分解能R(m/Δm)は、典型的に20以上であり、好ましくは、30以上であり、より好ましくは、40以上であり、特に好ましくは、50以上である。
【0065】
ハウジングは、前述されている通りでもよい。細長いスロットは、前述されている通りでもよい。4個の細長いロッドのそれぞれは、前述されている通りでもよい。
【0066】
本発明のQMF又はQITは、前述されているような方法によって、電極放電加工によって、リソグラフィによって、又は、射出成形によって得られるか、又は、得ることができることがある。
【0067】
好ましくは、本発明のQMF又はQITは、前述されているような方法によって得られるか、又は、得ることができる。
【0068】
好ましくは、本発明のQMF又はQITは、前述されているような方式によって得られるか、又は、得ることができる。
【0069】
さらなる特許可能な態様によれば、本発明は、本来備わっている汎用性によって安価に組み立てることができ、その上、そのままで使用できる可能性を与えるモジュラ式四重極型質量分析計アセンブリを提供することにより、従来型の質量分析計の欠点を解決しようとする。
【0070】
さらなる態様から見ると、本発明は、
細長いスロットを含むハウジングである第1のモジュールと、
各細長いロッドの第1の部分の形状が実質的に双曲線であり、そして、各細長いロッドの第1の部分が自由に内側を向き、各細長いロッドの第2の部分がハウジングの中の細長いスロットの四分円状の外周に掛かるように、相互に離間した配置で細長いスロットの中に軸方向に平行に取り付け可能である4個の細長いロッドである第2のモジュールと、
を含むモジュラ式四重極型質量分析計(QMS)アセンブリを提供する。
【0071】
モジュラ式QMSアセンブリの汎用性は、個々のモジュールが(場合によっては、既にユーザに利用可能であるかもしれない他のコンポーネントと組み合わせて)本発明を実施する意図を持つエンドユーザに供給されるような汎用性である。
【0072】
好ましくは、第2のモジュールが第1のモジュールの中に取り付けられているとき、第1のモジュール及び第2のモジュールは、共通の電気フランジに接続されている。
【0073】
好ましくは、第1のモジュールは、真空フランジに取り付けられている。
【0074】
好ましくは、ハウジングは、第1の凹部を含み、モジュラ式QMSアセンブリは、第1の凹部に受承できるイオン源である第3のモジュールをさらに含む。
【0075】
好ましくは、第3のモジュールが第1の凹部に受承されているとき、第1のモジュール及び第3のモジュールは、共通の電気フランジに接続されている。イオン源は、好ましくは、スパークイオン源である。
【0076】
好ましくは、ハウジングは、第2の凹部を含み、モジュラ式QMSアセンブリは、第2の凹部に受承できるイオン検出器である第4のモジュールをさらに含む。
【0077】
好ましくは、第4のモジュールが第2の凹部に受承されているとき、第1のモジュール及び第4のモジュールは、共通の電気フランジに接続されている。第4のモジュールは、ファラデーカップでもよい。
【0078】
好ましくは、モジュラ式QMSアセンブリの各モジュールは、前述されているような方法によって製造される。
【0079】
典型的に、モジュールは、押し嵌め(例えば、xy押し嵌め又はz押し嵌め)によって組立可能である。この押し嵌めは、適切なオス/メス結合によって実現されることがある。
【0080】
本発明は、今度は添付図面を参照して非限定的な意味で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の方法の実施形態によって製造される双曲線QMFをテストするため使用される電子衝撃イオン源(EIIS)のzx/zy平面内の等電位線を示す図である。
【図2】電極設計(a、上部)とハウジング内の電極スロットの設計(b、下部)とを示す双曲線QMFのCAD設計図である。
【図3】CPOとLiverpool QMS−2プログラムとの結合によって生成された双曲線QMF内部で振動するHeイオンのためのシミュレーションされた質量ピークを示す図である。
【図4】金によって被覆された及び被覆されていないQMFの細長いロッド(a、上部)と、表面粗さを示すロッドの顕微鏡画像(b、下部)とを示す図である。
【図5】電極の配置を示す、本発明の方法によって準備されたQMFプロトタイプの断面図である。
【図6】双曲線QMFから得られたイオンの実験的な質量ピーク(a、上部)と、He/Neガス混合物の実験的な質量スペクトル(b、下部)とを示す図である。
【図7】本発明の方法を実行するシステムの概略図である。
【図8】本発明の双曲線QMFの実施形態によって提示される双曲線電場を示すである。
【図9】本発明のモジュラ式QMSアセンブリの組立図(a)及び分解図(b)である。
【図10】図9のモジュラ式QMSアセンブリの実施形態のモジュール1及びモジュール2を分離して示す図である。
【図11】本発明のQMFの4個の電極の相互配置及び電気接続性の概略図である。
【図12】本発明の3次元四重極イオントラップを示す図である。
【図13】本発明の線形四重極イオントラップを示す図である。
【0082】
実施例1
以下の実施例は、本発明によるQMFを製造する前に使用された方法と、QMFをテストした後の性能結果とについて説明する。
【0083】
モデリング
静電気の解析的及び数値的モデリングは、現実のシステムに現れる可能性がある結果を生成するので、イオン源及び質量分析計を設計するときに有用でありかつ不可欠である。数値モデルは、個々の質量ピーク、又は、完全な質量スペクトルを生成するため使用され、そして、双曲線状電極、円筒状電極、又は、正方形状電極を備えるQMFと共に、どのようなイオン源でもサポートできる。モデルは、[www.electronoptics.comで入手可能である]CPO3DプログラムをLiverpool QMS−2プログラム[Gibson J R et al: Detailed Simulation of Mass Spectra for Quadrupole Mass Spectrometer Systems. J. Vac. Sci. Technol. A 2000, 18, 237−243]と結合することによって機能する。
CPOは、静電レンズをモデリングするための有限要素法(FEM)及び有限差分法(FDM)よりも正確であることが判明している境界要素法(BEM)に基づく商用静電気シミュレーションパッケージである[Cubric D et al: Comparison of FDM, FEM and BEM for Electrostatic Charged Particle Optics. Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. A 1999, 427, 357−362]。CPOは、さらに、自由空間内の小型イオントラップをモデリングするためのSIMIO(FDM)よりも正確であることが明らかにされている[Brkic B et al: High−Fidelity Simulations of Ion Trajectories in Miniature Ion Traps using the Boundary−Element Method. Phys. Rev. A 2006, 73, 012326]。
これは主として、BEMが電位を計算するためのグリッド点を画定するために電極の表面だけを使用し、一方、FEM及びFDMは、電極によって閉じ込められた空間も使用するからである。このように、BEMは、シミュレーションの精度を調節するため使用される電極セグメントの数が少ない場合でも、より高速な計算と、より高精度とを可能にする。別の利点は、セグメントの数は、様々な電極領域に対し定義できるので、最も重要な領域に対してより多数のセグメントを設け、そして、高精度が必要とされない領域に対してより少数のセグメントを設けることが可能である。
【0084】
QMS−2は、リヴァプール大学によって開発されたQMF用の2次元シミュレーションパッケージであり、当初はFDMに基づいていた。最近、QMS−2は、電場及び電位を計算するためBEMを使用した。QMS−2は、双曲線状電極、円筒状電極、又は、正方形状電極を備えるQMFをサポートし、正確な性能予測を与える[Gibson J R etal: Prediction of Quadrupole Mass Filter Performance for Hyperbolic and Circular Cross Section Electrodes. Rapid Commun. Mass Spectrom. 2000, 14, 1669−1673、及び、Gibson J R et al: Asymmetrical Features of Mass Spectral Peak Produced by Quadrupole Mass Filters. Rapid Commun. Mass Spectrom. 2003, 17, 1051−1055]。
QMS−2の目的は、安定度ゾーン1、2及び3のための特定の質量範囲内で、所定のイオン質量に対する個々の質量ピーク及び質量スペクトル全体を生成することである。これは、QMF寸法及び駆動パラメータ(電圧及び周波数)を、初期イオン振動パラメータ(位置、エネルギー、及び、速度成分)と共に定義することによって実現される。QMS−2における初期イオンパラメータは、所望のイオンに対し一定の初期エネルギーを設定すること、及び、イオンがQMFに入る方向に角拡散を設定することのいずれによっても定義することができる。よりカスタマイズされたアプローチは、入射イオンパラメータを取得するためCPO及びSIMIONのようなプログラムを使用して、所定のイオン源内のイオンの動きをモデリングすることによって使用することができる。これは、現実のシステム、特に、イオン源レンズに印加された電圧に直接的に依存するイオンエネルギーに関してより良い対応関係を与える。
【0085】
本実施例に関して、CPOは、電子衝撃イオン源(EIIS)のためのイオン軌道をシミュレーションするため使用され、QMS−2は、本発明によって構築された双曲線QMFのため使用された。図1は、本実施例で使用されたEIISの場合の等電位線を示す。四重極電位は、負のDC電圧が印加されたイオン抽出レンズの領域の範囲内で調べることができる。イオンケージ及び入口レンズは、抽出レンズの電圧より絶対値が著しく小さい正のDC電圧に維持される。出口レンズは接地される。双曲線QMFは、イオンが質量フィルタに入り、空間電荷(SC)がイオン源の内部のイオンの間で有効にされたときにフリンジング場効果を組み入れるため、EIISのCPOシミュレーションにさらに追加された。
【0086】
設計
双曲線QMFを製造する前に、、構築されるべき各コンポーネントの寸法を決めるため、Pro/ENGINEERによって詳細なCAD設計が準備された。CAD図面は、機械の中へ直接的にロードされ、この機械は、その後、この図面に従って所望の3次元形状を加工した。
図2a及び図2bは、電極、電極ハウジング及びピンを含む双曲線QMFの設計図面を示す。ハウジングにあるスロットの形状は、良好な位置合わせ及び分離を確立するために、細長いロッドに緊密に嵌合するように注意深く選択された。これは、電極の小さい変位が計器の性能を大幅に低下させる可能性があるQMFの場合に特に重要である[Taylor S et al: Prediction of the Effects of Imperfect Construction of a QMS Filter. J. Mass Spectrom. 2008, 43, 609−616]。
ピンは、小さな穴を通して電極への電気的接続を可能にし、そして、電極をハウジング内部で固定する。
【0087】
製造技術
双曲線QMFの製造は、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)を使用して実行された。本実施例では、商用のEnvision社のPerfactoryシステムがピン、電極及びハウジングを製造するため使用され、図7に概略的に示される。システム1は、透明床部付きの硬化性樹脂容器4と、DMDチップ5と、集束レンズ6と、光源7と、z方向にビルド3を形成するためビルドプラットフォーム2を動かすためのステッピングモータとを含む。DMDチップ5は、レンズ取り付け部、付属電子部品及び冷却ユニット付きのDMD外枠の一部分である。
【0088】
本発明の方法のためのコンピュータ生成モデルの前処理は、大量生産のために巧く適合している一般的なRPモデルと同一である。個々のビルド層に対応する2つのカラービットマップ画像が生成される。これらのビットマップ画像は、その後、DMD5上の個々のミラーを作動させるため使用され、重合が起こる硬化性樹脂容器4に向かって光を反射させる。
【0089】
感光性樹脂は、モノマーを分離してそれらが結合するのを阻止する光抑制剤を含有する。所定波長の放射に露光すると、これらの抑制剤が破壊され、重合が起こることができる。このプロセスを繰り返すことを可能にするため、未硬化のポリマーの新規な層が、透明床部の最も下側に存在しなければならない。これは、前に硬化された層が、1ビルド層に対応する量だけ上昇することを必要とする。これを実現するため、ステッピングモータは、距離Δzずつ平行移動し、前に硬化された層の下に液体ポリマーが浸透することを可能にする。さらなる露光は、現在の層を前に硬化された層に優先的に粘着させる。適切な平行移動が再び行われ、このプロセスは、幾何学的形状の高さ全体に必要なビルド層の数に対応する回数に亘って繰り返される。
【0090】
ピン及び電極は、熱蒸着器を有しているEdwards社のE306A コーティングシステムを使って、金によって被覆された。
【0091】
このシステムの分解能は、分解能制限パラメータが各ビルド層に関する座標軸において異なるために、異方性がある。このようにして実現された幾何学的形状は、多数のボクセル(体積画素)により構成されていると考えることができる。これらの離散的な「構築ブロック」は、xy分解能に対応する(樹脂床部で観察されるような集束後に)DMD 5に搭載された各ミラーによって強制され、そして、ステッピングモータの最小可能平行移動によってz方向に強制されたそれぞれの寸法を有している。
【0092】
実験的セットアップ
本発明の方法によって準備された双曲線QMFの性能をテストするため使用された設備は、
1. ガスの試料を添加したときの圧力を監視するため、及び、良好なベースレベルが達成されることをチェックするために使用される、Leybold Ionivac社製の真空ゲージと、
2. 大気圧(750トール)から約1×10−1トールまで真空システム内の圧力を低下させるために使用されるEdwards社製の2段式ロータリーポンプと、
3. 1×10−1トールから約5×10−6トールまで圧力を低下させるために使用されるEdwards社製のターボ分子ポンプと、
4. フィラメントが点灯しており、燃え尽きていないこと、及び、フィラメントが電子をケージに放出していることをチェックするために、フィラメントの中を通る電流を監視するため使用される電流計と、
5. ケージ上の電流を監視するため使用されるマイクロ電流計と、
6. イオン源電圧を制御し、RF+DC駆動電圧を質量フィルタに供給し、ファラデーキャップ検出器の中の電流を測定し、プロットされるべき信号をコンピュータへ送信するため使用される電子制御ユニット(ECU)と、を含んでいた。このECUは、特注設計されたものであり、ユーザはすべての設定値を完全に制御できるので、質量フィルタを実験的に機能させるために適している。
【0093】
結果及び検討
本実施例において本発明によって製造された双曲線QMFは、既存の真空フランジと、既存の電子衝撃イオン源(EIIS)及び検出器を備える金属ハウジングとに収まるように設計された。QMFは、r=2mmであった(ここで、rは、QMFの対向する電極間の距離の半分である)。ロッドの長さは、50mmであった。従来型のエンジニアリングによって構築された商用のEIISが、QMFをテストするため使用された。このEIISは、円筒状ケージと、イオンの集束及び抽出のために使用される3枚の板状レンズとにより構成された。ケージは、直径6mm及び長さ10mmであった。3枚のレンズのすべては、厚さ0.3mmおよび間隔0.8mmであった。入口レンズは、ケージに接続され、出口レンズは、QMFから0.5mm分離されていた。各レンズは、r=1.5mmであった(ここで、rは、出口アパーチャの半径である)。
EIISの出口アパーチャのサイズ(r=0.75r)は、良好なイオン透過及び分解能を得るためのQMFのサイズに対して最適ではなかった。既存のEIISを使用する目的は、テスト時間を節約し、QMFがピーク高さの50%のとき、20を上回る平均分解能R(m/Δm)をもつ質量分析計として動作することを証明することであった。より長い長さをもつQMFロッドは、分解能を著しく改良することになるが、既存の金属ハウジングに収めるために長さ50mmが選ばれた。
【0094】
テストのため、QMFは、DC走査電圧2.96V、周波数3.686MHzの17.66Vの大きさのRFを使って駆動された。イオン源ケージ及び入口レンズは、3Vに維持され、抽出レンズは−40Vに維持され、出口レンズは0Vに維持された。イオン化のための放射電流は0.6mAであり、そして、動作圧力は9.9×10−5トールであった。テスト前に、指定された駆動パラメータを用いて所定のQMF及びEIISの最高達成可能分解能を推定するために、Heイオンの質量ピークを取得するシミュレーションが実行された。最初に、イオン源内部のイオン運動が、エネルギー0.01eVでケージ内部の振動を開始するHeイオンを用いてCPOにおいてモデル化された。円筒状イオンビームが定義され、ケージからのイオンのうちの40%がレンズを通過し、平均して3.17eVでQMFに入ることに成功した。イオンがQMFに到達したときのイオン源及びフリンジング場の内部のイオン間の空間電荷の効果がさらに組み込まれる。
CPOは、多数のイオン(最大で1象限当たりに4000個)をサポートしないので、ユーティリティプログラムが、良好なピークを取得するために、QMFに入る多数のイオンを生成するため使用された。プログラムは、座標、速度成分、及び、レンズを通過したイオンからのエネルギーのようなパラメータと、イオン40000個のために比例的に生成されたパラメータとを使用した。なぜならば、イオンのうちの40%がイオン源レンズを通過し、ケージ内にイオン100000個が存在することが仮定されるからである。したがって、イオン40000個が、QMS−2プログラム内において双曲線QMFに注入された。
【0095】
最適な分解能を用いて質量ピークを取得するため、QMS−2における分解能セッティングηは、99.99%に定義された(ここで、ηは、DC電圧Uと、AC電圧Vの大きさの比として表現される)。Vの値は、一定に保たれ、安定度ダイアグラムのピークに対応し、一方、Uの値は、分解能値を変更するために変化した。図3は、ゾーン1安定度領域で動作するQMFのためのQMS−2から取得されたHeピークを示す。ピーク高さの50%における分解能は、所定のセットアップに対し理論的に最大達成可能である質量4の場合に70である。質量フィルタの分解能を数値的に取得することは、製造前の予想ができるようにするために非常に役立ちうる。モデリングは、所定の用途のための要件を満たすためのイオン源及び質量フィルタの設計の調整を可能にする。
【0096】
図4aは、製造後の非被覆及び被覆されたQMFロッドを示す。金コーティングの厚さは、約1μmであり、一端からもう一端までの導電性電極の抵抗は、約40Ωであった。金コーティングを改良することにより、抵抗をさらに減少させてより正確な駆動電圧を得ることができる。図4bは、プラスチックロッドの拡大部分の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。ロッドの表面粗さは、1.5ミクロンであった。金コーティングは、表面粗さに大きく寄与しない。このことは、電極が十分に滑らかでない場合に、パッチ電位がイオン移動に歪みを引き起こすイオン移動加熱を増加させる可能性がある小型質量アナライザに関して特に重要である[Turchette Q A et al: Heating of Trapped Ions From the Quantum Ground State, Phys. Rev. A 2000, 61,063418]。
【0097】
図5は、r=2mmをもつQMFのアセンブリの断面図を示す。図8に示された理想的な双曲線電場分布は、図11の概略説明図に従ってQMFを配置することによってセットアップされることがある。ハウジングのプラスチック材料は、優れた絶縁体である。電極の位置合わせの精度が高くなるように、ハウジング内部のスロットの中の溝は高精度で製造された。電極コーティングの厚さは、QMFを駆動するために十分に厚くなるように作られているが、この厚さは、導電性のため、及び、電極の入口側でのバーンマークを削減するためにさらに改良されることが必要である(図5を参照のこと)。図6aは、QMFから取得されたHeイオン実験的な質量ピークを示しており、これらのイオンのために達成された最大分解能であるピーク高さの50%で分解能25を用いて取得された実験的な質量ピークを示す。
【0098】
図6bは、He/Neガスの50:50混合物に対する実験的な質量スペクトルを示す。ピーク高さの50%において、Heイオンに対する分解能は13であり、20Neイオンに対する分解能は30である。これらのスペクトルピークに対して測定された最大分解能は存在しないが、実験を行うたびに容易に繰り返すことができる分解能である。電極コーティングをより厚くすることにより、解像度は、この特別な設計のためさらに改良することができる。従って、当初の結果から、動作原理が証明されたこと、及び、QMFは質量分析計として機能することを結論付けることができる。
【0099】
結論
双曲線QMFが製造され、質量分析計として機能することが示された。この技術は、理想的な双曲線場を提供する質量アナライザ、又は、複雑な幾何学的形状をもつ他の機器を実施するため特に適することがわかった。
【0100】
実施例2
図9は、本発明のモジュラ式QMSアセンブリ(アセンブリのコンポーネントは実施例1に概説された手順によって準備されることがある)の実施形態の(a)組立図及び(b)分解図を示す。アセンブリは、4つのモジュール1、2、3及び4を含む。モジュール1はイオン源である。モジュール2はレンズアレイである。モジュール3は、4つの金被覆電極である。モジュール4は、細長いハウジングである。
【0101】
モジュール1(イオン源)は、xy方向での押し嵌めによってモジュール4(細長いハウジング)の中の凹部5に受承される。モジュール1は、天井部付きのサブハウジング1cの中に離間して搭載されている2つの被覆プレート1a、1bを含む(図10aを参照のこと)。
【0102】
モジュール2(レンズアレイ)は、xy方向での押し嵌めによってモジュール4(細長いハウジング)の中の凹部5に受承される。モジュール2は、400ミクロンのアパーチャを備える4つの同一のレンズ2aを含み、これらのレンズは、アパーチャの位置合わせを確実にするための位置決めピンによって取り付けられている(図10bを参照のこと)。
【0103】
モジュール3(4つの金被覆電極)は、z方向での押し嵌めによってモジュール4(細長いハウジング)の端部に受承される。
【0104】
モジュール4(細長いハウジング)は、モジュール1、2及び3それぞれのための設置点である、凹部5、メス穴、及び、溝を備えている。
【0105】
実施例3
図12は、本発明の方法の実施形態により取得されることがある本発明の3次元四重極イオントラップ1を示す。3次元四重極イオントラップ1は、エンドキャップ電極2a、2bと、リング電極2cの四重極を含む。双曲線電極は、原点(x,y)=(0,0)の双曲線の式:x−y=1又はy−x=1によって表現される。
【0106】
図13は、本発明の方法の実施形態により取得されることがある本発明の線形四重極イオントラップ1を示す。線形四重極イオントラップ1は、前方電極2、中心電極3及び後方電極2cの四重極を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性材料の土台を準備するステップ(a)と、
四重極型質量分析計(QMS)コンポーネントのxy層の特性を示す選択的に硬化された材料のxy層を生じさせるため、前記硬化性材料の土台の中の複数のxy層の1つずつをz方向に順次に入射放射線で選択的に露光するステップ(b)と、
を含む、四重極型質量分析計(QMS)コンポーネントを製造する方法。
【請求項2】
ステップ(b)は、z方向での前記複数のxy層の順次露光に応じた前記入射放射線を順次に再特徴付けするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)は、放射線源と、前記入射放射線を出力するためにデジタル画像搬送信号に応答して前記放射線源からの放射線を調節するデジタル調節デバイスとによって実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記QMSコンポーネントは、細長いロッドと、締め付けピンと、四重極型質量フィルタ(QMF)と、イオン源と、イオンコレクタと、イオン検出器と、QMFプレフィルタと、プレフィルタ処理後の質量アナライザと、イオントラップと、質量アナライザのアレイと、イオン源レンズと、ハウジングと、これらのうちのいずれかのコンポーネントと、のうちの1つ以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記QMSコンポーネントは、ハウジング部と、前記ハウジング部の中で平行に、かつ、相互に離間して配置される4個の細長い電極部とにより構成されているQMFである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記QMSコンポーネントは、四重極イオントラップである、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記QMSコンポーネントは、細長いロッドである、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記細長いロッドの形状が、少なくとも部分的に実質的に双曲線である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記QMSコンポーネントは、複数の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である細長いスロットを含み、細長いスロットの間にイオン格納容積部を画定するハウジングである、請求項1から4のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
各細長いロッドの第1の部分が自由に内側を向き、各細長いロッドの第2の部分が前記ハウジングの中の前記細長いスロットの外周の一部分に掛かるために適合するように、前記細長いスロットの中に、前記複数の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記QMSコンポーネントは、4個の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である細長いスロットを含み、前記4本の細長いロッドの間にイオン格納容積部を画定するハウジングである、請求項1から4のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項12】
使用中に前記イオン格納容積部の中に双曲線電場を形成するように、前記細長いスロットの中に、4つの細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各細長いロッドの第1の部分が自由に内側を向き、各細長いロッドの第1の部分の形状が実質的に双曲線であり、各細長いロッドの第2の部分が前記ハウジングの中の前記細長いスロットの四分円状の外周に掛かるために適合するように、前記細長いスロットの中に、4個の細長いロッドが相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付け可能である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上のQMF部で構成されているQMS自体を製造するため使用される、請求項1から3のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載されたステップ(a)及び(b)によって準備されたハウジングの細長いスロットの中に、請求項1〜14のいずれかに記載されたステップ(a)及び(b)によって連続的に準備された複数の細長いロッドを付けるステップ(c)をさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)は、
前記細長いロッドを前記ハウジング内で締め付けるために、請求項1〜15のいずれかに記載されたステップ(a)及び(b)によって準備された締め付けピンを前記ハウジング内の放射状ボアを通して前記細長いロッド内の放射状ボアの中へ挿入するステップ(c1)をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細長いロッドを導電性にするため、導電性材料のコーティングを各細長いロッドの表面に堆積させるステップ(d)をさらに含む、請求項1〜16いずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法によって取得できるか、または、取得されるモノリシック四重極型質量分析計又はモノリシック四重極型質量分析計のコンポーネント。
【請求項19】
細長いスロットを含むハウジングと、
前記細長いスロットの中に相互に離間した配置で軸方向に平行に取り付けられ、各細長いロッドの第1の部分の形状が実質的に双曲線であり、そして、自由に内側を向き、内接半径(r)が1mm未満である4個の細長いロッドと、
を含む、双曲線場を生成する能力をもつ四重極型質量フィルタ(QMF)又は四重極イオントラップ(QIT)。
【請求項20】
細長いスロットを含むハウジングである第1のモジュールと、
各細長いロッドの第1の部分の形状が実質的に双曲線であり、そして、各細長いロッドの第1の部分が自由に内側を向き、各細長いロッドの第2の部分が前記ハウジングの中の前記細長いスロットの四分円状の外周に掛かるように、相互に離間した配置で前記細長いスロットの中に軸方向に平行に取り付け可能である4個の細長いロッドである第2のモジュールと、
を含むモジュラ式四重極型質量分析計(QMS)アセンブリ。
【請求項21】
前記第2のモジュールが第1のモジュールの中に取り付けられるとき、前記第1のモジュール及び前記第2のモジュールは、共通の電気フランジに接続されている、請求項20に記載のモジュラ式QMSアセンブリ。
【請求項22】
前記ハウジングは第1の凹部を含み、
前記モジュラ式QMSアセンブリは、前記第1の凹部に受承できるイオン源である第3のモジュールをさらに含む、請求項20又は21に記載のモジュラ式QMSアセンブリ。
【請求項23】
前記ハウジングは第2の凹部を含み、
前記モジュラ式QMSアセンブリは、前記第2の凹部に受承できるイオン検出器である第4のモジュールをさらに含む、請求項20から22のうちのいずれかに記載のモジュラ式QMSアセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2a)】
image rotate

【図2b)】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a)】
image rotate

【図4b)】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9a)】
image rotate

【図9b)】
image rotate

【図10a)】
image rotate

【図10b)】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2012−502420(P2012−502420A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525626(P2011−525626)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051119
【国際公開番号】WO2010/026426
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(508346000)ザ ユニバーシティ オブ リバプール (5)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF LIVERPOOL
【Fターム(参考)】