説明

方角を指し示すカード

金融取引カードに、そのカードの位置座標を求める位置判別手段を付加する。求めた位置座標を、メモリ内に格納されている所定位置のそれと比較することで、そのカードの位置から見た当該所定の位置の方角を示すデータを生成する。カードには更にディスプレイを設け、そのディスプレイに方角を表示させる。こうしたカードは、とりわけ、そのカードの位置から見たカーバの方角を指し示すのに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他地点の方角を指し示すことが可能なカードに関する。
【背景技術】
【0002】
イスラム教では、毎日定時に礼拝し念真を捧げることが信仰上日常生活の一部となっている。この勤行で守らねばならないのは、メッカにあるカーバ(Kaaba)の方角を向いて礼拝することである。ただ、めいめいの居場所から見たカーバの方角即ちキブラ(Qibla)を知る手がかりがなく、向くべき方角がわからないことがある。
【0003】
方角を指し示す装置としてはコンパスが知られているが、幾つか難問がありこの用途には向いていない。だいいち、コンパスで示される方角(コンパスヘディング)は北である。それに基づき他の方角の見当を付けることもできるが、地球上の特定地点がどちらの方角かまではわからない。しかも、その結果を勤行に役立てるには、カーバに対する自分の位置関係が前もってある程度わかっていなければならない。従って、自分の居場所から見てカーバが本当はどちらの方角かを確認するのにコンパスは必ずしも適していない。
【0004】
方角にとどまらず地球上の特定地点までの距離をユーザが知りたがることも多い。
【0005】
また、現在多々運用されている測位システムの一つにGPS(汎地球測位システム)がある。GPSは、地球上におけるユーザの位置を特定するのに利用可能な三辺測量型既知システムの一つである。GPSでは、ユーザが移動している間に計測を複数回行い方角情報を得ることができる。その結果に基づき、地上ではユーザ現在地から目的地までの経路をプロットすることができ、海上ではウェイポイント又は目的地までの距離及びその方角をプロットすることができる。ただ、一般的なGPSは、その機能構成が複雑であるため、日常生活での利用には向いていない。例えば、こうしたシステムの例に漏れず、意中の目的地についての情報をキー入力する操作や諸機能の選択操作、例えば地上における最速又は最短経路指定や海上におけるウェイポイント指定の操作を行う必要がある。そのため、一般的な機能構成でGPS受信機を提供するには様々なキー又はボタンが必要であり、ある程度の装置サイズ、ある程度複雑なセットアップ手順が必要となることから、GPSを日常的に頻々と利用するのは難しい。
【0006】
実際、GPSで提供される機能の豊富さは、ユーザの許で使用されるGPS受信機/GPSプロセッサのサイズを規定する要因となっている。キーやボタンが小さすぎるとユーザが快適に操作できないし、使用するGPSデータ表示用ディスプレイが小さすぎると詳細な情報、例えばユーザと目的地の間に横たわる土地の画像を表示することができないからである。
【0007】
これまで多々提案されているキブラ指示装置でも、最近のものではGPSが利用されている。その一例はGPS受信機内蔵型礼拝マットであるが、GPS受信機と一体であるため持ち運ぶのがかなり面倒である。他の例は、携帯電話等の装置に備わるディスプレイにGPSの出力を表示させるもの、例えば特許文献1〜3に記載のものである。もともと、そうした既存装置には大きめの画面が備わっているので、その画面を多種多様な機能に係る表示に利用することができる。反面、携帯電話等の多機能的装置はその性質からいって小型でなくてはならないため、小型化が更に進行しているとはいえ、GPS受信機を一緒に持ち運ぶのではその至便性が損なわれかねない。
【0008】
世界中の様々な場所で庶民に広く携帯されている品は他にも数多くある。例えば、多くの庶民は、その重要性で財布、腕時計等と比肩する物品たる金融取引カードを、1枚又は複数枚携帯しているものである。
【0009】
金融取引カードは金融取引に使用される器具であり、クレジットカード、ローヤルティカード等を初めとする様々な種類がある。大抵は、プラスチック素材を用い標準的な形状及びサイズとなるよう形成されている。その特徴は、小型且つ薄型であるためユーザが負担感なしに携帯できる点にある。
【0010】
そうした金融取引カードには、従来から、関連する諸データを保持する磁気ストリップが設けられている。最近のカードでは、磁気ストリップの働きをマイクロチップ及びメモリで支援するチップ式個人識別番号認証技術が使用されている。カード自体のサイズは標準的な金融取引カードと同じである。マイクロチップや磁気ストリップは、そのカードを使用するのに必要な金融取引情報を保存する手段を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第WO06/007179号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO02/065151号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0103002号明細書
【特許文献4】米国特許第5199178号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここに、発明者の知見によれば、地球上の特定地点がどちらの方角かを指し示すことを目的とする装置は、優れたディスプレイを備える高機能な日用品とはそもそも異質なものである。求められているのは、寧ろ、特定地点の方角を指し示すことができる簡略な指示装置である。とはいえ、それだけでは携帯所要物品が増えることとなる。そのため、そうした指示装置を日用品に組み込むことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係るカードは、金融取引カードのそれと同じ幅及び長さを有するカードであって、データ保存手段と、そのカードの位置を示す位置データを生成する位置判別手段と、位置判別手段で生成された位置データをデータ保存手段内に格納されている所定位置のそれと比較することでそのカードから見た当該所定位置の方角を示す方角データを生成する比較手段と、その方角を指し示す出力手段と、を備える。
【0014】
本実施形態が具体的に役立つのは例えば金融取引カードに適用した場合である。極力控えめなデザインであることが求められる金融取引カードでは、これまで、動画表示が可能なディスプレイが設けられるようなことはなかった。その点、本実施形態では、所定位置の方角なら簡略なディスプレイで指し示すことができる、そのサイズ及び形状に由来する金融取引カードの利便性を損なうこともない、という知見に基づき、既に多くの庶民が携帯しているこの小型物品の使途を拡げる策を採っている。また、カード位置から見てどちらの方角にあるかを知りたい位置を固定することで、高機能なユーザインタフェースを不要にし、標準的なサイズの金融取引カードで実施できるようにしている。更に、所定位置例えばカーバの方角を正確に求めてユーザに知らせることができる。それに相応しい位置判別手段はGPSを基礎とするものであるが、多辺測量(例えば三辺測量)を利用する既知の他種測位システムも利用することができる。即ち、本発明の実施に当たっては、金融取引カード等のカードで利用可能なサイズに小型化できる限り、どういった測位システムを利用してもよい。
【0015】
本カードには、方角を指し示す出力手段に電力を供給する給電手段を設けることができる。この給電手段は、カード上でデータを生成している諸手段を自動的に起動させるタイマ、或いはユーザからの指示に応じカード上の出力手段を起動させる起動手段を備える構成にするとよい。方角データを生成する比較手段も、この給電手段を用い同じ要領で作動させることができる。給電手段を充電可能な構成にしてもよい。位置判別手段を作動させる手段をカード内に設けてもよい。
【0016】
とりわけ望ましいのは、給電手段の動作で位置判別手段、比較手段及び出力手段を作動させる構成にすることである。特に、カード上の諸手段を自動起動させるタイマを用いることで、給電時期を日中の特定時期、例えばユーザがメッカに向かって礼拝しなければならない時刻に限定し、消費電力を節減することができる。ユーザからの指示で諸手段を起動させる部材をカードに設けることでも、同様に消費電力を節減することができる。
【0017】
金融取引カードのような小型物品ではこうした消費電力節減が切に重要であるので、方角データの生成に関わる諸手段への給電が所定時間経過後自動的に停止するよう構成することで、消費電力を更に節減するのが望ましい。
【0018】
方角を指し示す出力手段に対しては、そのカード上に実装されている電源から電力を供給すること、例えば蓄電池、太陽電池等の装置から供給することができる。
【0019】
その出力手段としてはディスプレイを使用し、適切な方向を向くポインタ等の形態で可変マーカを表示させるのが便利である。
【0020】
カード上にコンパスを設け、コンパスヘディングを示すコンパスデータを得るようにしてもよい。そのコンパスデータは、方角指示用のディスプレイ上に出力させることも、それとは別のディスプレイ上に出力させることも可能である。
【0021】
所定位置の位置データを、カードに備わるインタフェースを介しデータ保存手段内にアップロード可能な構成にしてもよい。
【0022】
本発明の他の実施形態に係る複合装置は、第1電源を有する金融取引カードと、第1電源充電用のエネルギ転送手段及びエネルギ転送が可能な形態でカードを装着しうる躯体を有する充電装置と、を備える。
【0023】
本発明の更に他の実施形態に係る金融取引カードは、処理手段と、その処理手段に機能的に接続されており電気エネルギが蓄積される蓄電手段と、電気エネルギを受け取り蓄電手段内に蓄積させる手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るカードの機能的構成要素を示す模式的ブロック図である。
【図2】そのカードの平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るカードの機能的構成要素を示す模式的ブロック図である。
【図4】そのカードに備わる印刷回路基板(PCB)の平面図である。
【図5】そのPCBのなりたちを示す斜視図である。
【図6】そのカードを構成する諸層を示す模式図である。
【図7】そのカードの表側を示す平面図である。
【図8】そのカードの裏側を示す平面図である。
【図9】そのカードが差し込まれるシースを示す平面図及び側面図である。
【図10】そのカードに備わるボタンを押したときの動作の移り変わりを示す模式的ブロック図である。
【図11】本発明の都市リスト表示実施形態を構成する機能的構成要素を示す模式的ブロック図である。
【図12】本発明の地図タッチパネル実施形態を構成する機能的構成要素を示す模式的ブロック図である。
【図13】本発明のATM(自動現金預払機)実施形態を構成する機能的構成要素を示す模式的ブロック図である。
【図14】本発明の地図フィードバック実施形態を構成する機能的構成要素を示す模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、別紙図面を参照し本発明について例示説明する。
【0026】
図1に、本発明の一実施形態に係る金融取引カードの主たる機能的構成要素を示す。このカードには、プロセッサ手段たるマイクロチップ10が内蔵されており、そのチップ10には更にデータ保存手段たるメモリMが内蔵されている。チップ10は、データ交換を介し後述の如く金融手続きその他の用途に係る通信を行えるよう、付随する内蔵インタフェース電極12を介し外部装置と接続することができる。その仕組みは、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)にはご理解頂けるように、昨今の金融取引カードで多々採用されているチップ式個人識別番号認証技術に類するものである。その典型例は金融取引認証に関するEMV(登録商標;以下注記省略)規格であるが、他の種類の金融取引カード向けチップ式個人識別番号認証規格も様々な国、例えば仏国や英国で適用されている。
【0027】
マイクロチップ10は、カード内に埋め込まれた不図示の印刷回路型データ伝送路を介し液晶ディスプレイ14及び内蔵GPSチップ16にも機能的に接続されている。使用するディスプレイや測位システムは他種のものでもかまわない。ディスプレイ14及びGPSチップ16は、不図示の印刷回路型給電路を介し給電用の内蔵電源18に接続されている。本実施形態では電源18たるマイクロセルが太陽電池パネル20に接続されているので、電源18をパネル20の出力で充電することができる。その太陽電池パネル20からカード内の装置に直に給電することもできる。
【0028】
本実施形態におけるGPSチップはウェハレベルCSP(Chip Scale Packaging)型のパッケージを有するNXP b.v.製チップGNS7560(商品名)である。これは、比較的低消費電力且つ比較的高感度なGPSチップであり、内蔵ダイポールアンテナ22に接続されている。アンテナ22はカード内にPCB配線で形成されている。GNS7560は高感度であるので、受動アンテナであるダイポールとの併用に適している。
【0029】
マイクロチップ10は電源18から給電を受ける。ディスプレイ14及びGPSチップ16への給電はそのマイクロチップ10によって制御される。模式的にスイッチ24で表されている通り、ディスプレイ14及びGPSチップ16に対する給電は必要時のみに行われる。
【0030】
図2に、本実施形態に係る金融取引カード26の外観を示す。この図でも、差し障りがない限り同様の参照符号を諸部材に付してある。カード26は、相応のプラスチック素材で形成された表層及び裏層、並びにプラスチック素材で形成された諸部材配置スペース確保用の中間層からなる積層体であり、そのサイズ及び形状はISO/IEC 7810:2003 ID−1規格に準拠している。こうしたカード26は、マイクロチップ10を介した金融手続き向け通信に関する任意の金融取引規格に適合するよう、作成することができる。本実施形態では上掲の通りEMV規格に準拠しているが、他の金融取引カード規格に適合した構成にすることも無論可能である。
【0031】
金融取引カードであるにとどまらず、本実施形態では、タイマを実行するようマイクロチップ10がプログラムされている。このタイマは、ディスプレイ14及びGPSチップ16に対し所定時刻に自動給電させるためのものである。イスラム教徒向け礼拝支援手段でもあるため、本実施形態のカードにおけるタイマは、日々の礼拝時刻にディスプレイ14及びGPSチップ16へと給電させるプログラムとなっている。こうしたプログラムの入力は、カード頒布前、カード頒布後或いはその双方で行うことができる。例えば、銀行がこの種のカードを頒布する場合、発行元銀行で稼働させているATM上に、挿入されたカード内にそのためのプログラムをインタフェース電極12経由で転送する、というオプションを表示させることができる。同様に、カーバその他の注目地点についての所定位置データをインタフェース電極12経由でアップロードする、というオプションを銀行ATMで表示させることもできる。
【0032】
なお、空間が制約されているため電池容量には制限がある。この点に対処するため、十分な時間に亘り光源に曝すとその電池が充電されるよう、このカードでは太陽電池パネル20を積層体表層の窓内に配置してある。
【0033】
一旦給電を受け起動すると、GPSチップは、使用する衛星の位置を特定し、そのカードが地球上で占める位置を示す一組の位置座標を求め、得られたデータをマイクロチップ10に転送する。マイクロチップ10はカーバの位置座標をメモリMから事前に読み込んでおり、GPSチップから読み込んだカード位置座標データを対応するメモリMから読み込んだカーバ位置座標データと比較することで、カード位置から見たカーバの方角を示す方角データを生成する。マイクロチップ10は、その方角データを変換することで、カーバを指し示すポインタ28の画像が表示されるよう、液晶ディスプレイ14を構成する素子群を励起させるデータを生成する。ディスプレイ14を構成する液晶素子群は、マイクロチップ10からの出力データに従い励起され、そのデータに係る方向の矢印を表示する。マイクロチップ10は、所定時刻にターンオンし所定時間(例えば5分間)はその状態を保つようプログラムされているので、ユーザはその間に正しい方角を向くことができる。
【0034】
或いは、カード表面にバブルスイッチを埋め込んでおき、ユーザが好きなときにそのスイッチをマニュアル操作しカーバの方角を指示させる構成にしてもよい。こうしたマニュアル操作方式は、上述のマイクロチップ利用自動起動で実現される自動タイミング方式に代えて使用することも、それと併せて使用することもできる。ユーザのマニュアル操作でマイクロチップ10が起動された場合、そのマイクロチップ10は、スイッチ24に対する制御でディスプレイ14及びGPSチップ16への給電を開始させる。消費電力を節減するため、マイクロチップ10は、上述の通り、所定時間に限りオンし続けるよう、またディスプレイ14及びGPSチップ16への給電を所定時間だけ続けるようにプログラムされている。
【0035】
また、本実施形態では、カード位置から見たカーバの方角を示す方角データがGPSを利用し生成されている。従って、カードの向きを正しくしないと、GPS出力に基づく方角表示が不正確になってしまう。本実施形態では、ポインタ28で示される方角が常に北を基準とした方角になるよう、即ち図2に示すカードの例えば上辺が北を向いているものとみなしてGPS出力を解釈するよう、マイクロチップがプログラムされているので、ユーザは、自分の体を北に向けて読み取らないと、カーバの方角を正しく読み取ることができない。
【0036】
無論、どちらが北かは太陽及び日時から割合容易にわかることである。しかし、それには太陽が見えていなければならない。従って、カード26に小型コンパスを搭載した方がよい。それに適するコンパスはフラックスゲートコンパス、例えば特許文献4(この参照を以て本願に繰り入れることとする)に記載のタイプである。フラックスゲートコンパスへの給電も電源18で行うことができる。フラックスゲートコンパスの起動もマイクロチップ10で制御することができる。出力されるコンパスデータをマイクロチップからそれ専用のディスプレイに送るようにしてもよいし、液晶ディスプレイ14上に二種類の指示子(カーバの方角を示す指示子及びコンパスヘディングを示す指示子)を並べて表示させるようにしてもよい。
【0037】
こうした構成であれば、その使用時に、ユーザが自分の体を北に向けることができる。ユーザは、その上で、自分の位置から見たカーバの真正且つ正確な方角を確認することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態に係るカード30、具体的には金融取引カードについて図3〜図9を参照して説明する。本実施形態は、差し障りがない限り、上述した実施形態におけるそれと同様の構成要素で構成することができる。
【0039】
図3〜図5にPCB32を示す。このPCB32は、前述したものと同じサイズを有する金融取引カード30の内層であり、その基板はプラスチック素材、例えばポリイミドで形成されている。ポリイミドは剛性、弾性及び誘電率のバランスがよい素材として知られ、金融取引カード形成素材として広く用いられている。PCB32上には様々な部材が搭載され、PCB表面に導電素材で形成された従来型の給電路及びデータ伝送路を介し次の通り相互接続されている。まず、PCB32上にはディスプレイ34が搭載され、ディスプレイコネクタ36を介しPCB32上の導体に導電接続されている。ディスプレイ34は、電圧を印加すると可逆的な酸化還元反応を引き起こすエレクトロクロミックダイ、即ち電圧印加に応じてその状態ひいては色が変化しまた印加電圧の極性反転に応じその状態が反転するダイを備えている。本実施形態でこれを採用しているのは、その消費電力が小さく、しかも簡略なディスプレイ駆動装置で駆動できるためである。ディスプレイ34として液晶ディスプレイや発光ダイオードディスプレイを用いることも可能である。
【0040】
次に、PCB32上にはGPSチップ38、例えばu−blox AG製UBX−G5010(商品名)が搭載されている。そのチップ38の信号入力ポートに接続されているアンテナ40は、平坦なPCB表面上でL字状に直交配置された2個のダイポール素子を有する短縮ダイポールである。それらの素子は、いずれも、インピーダンス整合回路経由でチップ38の信号入力ポートに接続されている。これに代えほかの種類のアンテナを使用し、GPS衛星からの信号を受信することもできる。また、チップ38にはクロック41が接続されている。本実施形態では、京セラ株式会社製KT2016A等の温度補償水晶発振器をベースとするものを使用している。
【0041】
また、PCB32上にはプロセッサ42、例えばAtmel Corporation製ATXMEGA256−A3(商品名)も搭載され、データ伝送路を介しGPSチップ38及びコンパス44に接続されている。コンパス44、例えば旭化成株式会社製AK8793(商品名)又はそれに類する高感度三軸ホール効果センサも、PCB32上に搭載されている。前述の通り、実施形態によってはコンパス44を省略することもできる。図示しないが、プロセッサ42には、所定の注目地点例えばカーバの位置座標やGPSチップ38を用い導出したカード30の位置座標を格納するためのメモリも接続されている。PCB32上にはボタン46、例えばNicomatic Corporation製P−Switch(商標)又はそれに類するバブルスイッチも搭載され、プロセッサ42に接続されている。カード30のユーザは、このボタン46を押してプロセッサ42をターンオンさせることができる。ボタン46は、押すことができる限り、カード30の外面に対し突出していても、窪んでいても、或いは同一面をなしていてもかまわない。いずれの構成であっても、ユーザは、ボタン46の上方から力を加えカード30を押すことで、或いはその上下から力を加えてボタン46を挟み込むことで、そのボタン46を操作することができる。
【0042】
そして、PCB32上には電池48、例えばGeneral Electronics Battery Co. Ltd.製リチウムイオンポリマ蓄電池が1個又は複数個搭載されている。この電池48は、ディスプレイ34、GPSチップ38、プロセッサ42、コンパス44及びボタン46を含め、カード30内にある全ての通電所要部材に電力を供給している。その電池48には、PCB32上に形成された複数の電極からなるコネクタ50が接続されている。このコネクタ50はPCB32からカード30の裏面につながり、そこに露出している端子へとつながっているので、電池48をコネクタ50経由でカード30外の電源に接続し充電することができる。即ち、電池48をその場で充電することができる。前述の諸実施形態と同じく、電池48に対する給電は、その電池48と物理的に接続され、太陽光を電力に変換し、或いは誘導接続(非接触接続)により結合される別の電源等、様々な手段で行うことができる。
【0043】
図6に、本実施形態のカード30を構成する諸層を模式的に示す。まず、図中でPCB32の上側にある層は裏側接着層52であり、PVC製のコア54をPCB32に固定するのに使用されている。コア54は、PCB32上に搭載されている部材間の谷間のうち一部に収まりスペーサとして機能する層であり、PCB32の表側からのPCB搭載部材突出幅とほぼ等しい厚みを有している。部材間谷間のうちコア54が収まっていない部分は、コア54の厚みと同じ深さのエポキシ56で満たされている。即ち、PCB搭載部材、コア54及びエポキシ56それぞれの表面の連なりでほぼ平坦な面が形成されている。そのコア54の表側に付着している表側接着層58は、表側にあるキャッピング層60を裏側にある諸層に固定するのに使用されている。キャッピング層60は、カード30に幾ばくかのスティフネスをもたらす構造材であると共に、PCB32上に搭載されている諸部材を保護している。表側印刷層62はキャッピング層60に比べ薄いPVC層であり、その表側にはカード番号、ロゴ等が印刷されている。その裏面が接着性であるので、表側印刷層62をキャッピング層60に接着することができる。表側印刷層62は表側カバー層64によって保護されており、その表側カバー層64が透明であるため、カード30のユーザは表側印刷層62を見ることができる。表側印刷層62及びキャッピング層60のどちらにも、ディスプレイ34の直上に位置するように孔が形成されているので、カード30のユーザはディスプレイ34を見ることができる。
【0044】
逆に、PCB32の裏面に固定されているのは、表側印刷層62と同様の構成を有する裏側印刷層66である。裏側印刷層66の表側は接着性の面、裏側は情報が印刷された面である。表側が接着性であるのでPCB32の裏側に接着することができる。カード30内で最も裏寄りに位置しているのは、裏側印刷層66を保護する裏側カバー層68である。この裏側カバー層68が透明であるため、カード30のユーザは、裏側印刷層66の裏面に印刷されている情報を見ることができる。
【0045】
図7にカード30の表側を示す。こちらから見えるのは、表側印刷層62に記されている一般的な金融取引カード情報、例えばカード番号、有効期間等のほか、ディスプレイ34やボタン位置インジケータ70である。インジケータ70は図示の通り表側印刷層62上に印刷されたドットであり、これを目印として加圧することでボタン46を操作することができる。
【0046】
図8にカード30の裏側を示す。こちらから見えるのは、裏側印刷層66上に印刷されている情報(図示せず)や、その層66上に形成されている従来型の磁気ストリップ72である。コネクタ50が露わになるよう裏側印刷層66及び裏側カバー層68に孔が形成されているので、カード30外の電源にコネクタ50を導電接続することができる。
【0047】
図9にシース74の構成を示す。シース74の躯体75には、1個又は複数個の第2電池(蓄電池)76、例えば3.7Vリチウムポリマイオン電池や、主電源から給電を受ける充電回路78が収まっている。シース74上には、更に、カード30を受け入れ滑り嵌めにより保持する一対のスロット80が、ある相互間隔にて形成されている。図示しないが、シース74には一対の電極が備わっており、スロット80間にカード30が差し込まれるとその電極がコネクタ50の電極に接続される。そうしてカード30がシース74に接続されているときには、第2電池76からカード30内の装置に直に給電することや、カード30内電池48に給電してその電池48を充電することができる。更に、充電回路78を用い、第2電池76、カード30内電池48又はその双方に給電してそれを充電することができる。
【0048】
第2電池76によるカード30内電池48の充電は、例えば、誘導給電を初めとする非接触給電でも行うことができる。シース74内に設けた第1の誘導コイルで給電用の交流電磁界を発生させ、カード30内に設けた第2誘導コイルでその交流電磁界を受信して電流に変換し、それを用いカード30内電池48を充電する構成にすればよい。
【0049】
シース74上には、主電源84を随時接続することが可能な母線ジャック82も設けられている。シース74の長さや幅はカード30のそれと同程度である。シース74及びそれに差し込まれたカード30からなる複合装置は、そのため、単体のカード30に比べ僅かに大きな厚みと、おおよそ単体のカード30のそれに等しい長さ及び幅とを有するものとなる。
【0050】
また、その動作モードとしては、ユーザがボタン46を押すとプロセッサ42が起動し、カード30の位置を示す情報を送れとのリクエストがプロセッサ42からGPSチップ38に送信される第1動作モードがある。このモードでは、GPSチップ38がアンテナ40を介しGPS衛星から信号を受信し、カード30の位置を示す位置データ(緯度及び経度)をその信号に基づき導出する。プロセッサ42は、その位置データを受け取りメモリ内に格納する。そのメモリにはメッカ在のカーバに関する位置データも格納されている。プロセッサ42は、それら二組の位置データに基づく計算で、カード30の位置からカーバの位置に至る経路及びその経路に沿った方角を導出する。
【0051】
例えば、地表に沿った大円の一部をその経路として導出することで、地表沿いにカード30の位置からカーバの位置に至る最短の方角を導出するとよい。この場合、方角として求まるのは、カード30の位置を始点とする大円経路の初期方向である。或いは、カード位置からカーバに至る最短の等角線を経路として導出し、それに基づきカード位置からカーバを見た方角を導出してもよい。等角線はどの子午線とも同じ角度で交差する地表沿い経路であるので、求まる方角はその等角線に沿った方向となる。どちらのタイプの経路で計算するかを、ユーザがボタン46の操作で選択するようにしてもよい。逆に、常にどちらか一方のタイプの経路で計算を行うようカード30にプログラムしておけば、そのカード30はより簡便に使えるカードとなる。
【0052】
ユーザがボタン46を押したときにはコンパス44も起動する。コンパス44から得られるのはその時点でのカード30の向きを示すコンパスデータであり、このコンパスデータもプロセッサ42に供給されることになる。プロセッサ42は、その時点でのカード30の向きに対し導出済方角がなしている角度をそのコンパスデータに基づき求める。その角度はディスプレイ34によってユーザ向けに表示される。最新のカード30の向きをコンパス44にて0.5秒毎に計測するようにすれば、カード30が仮に回されたとしても、プロセッサ42にてその向きを正しく求めることができる。また、ディスプレイ34は、複数個の等サイズセグメントに区切られた丸いリングを有している。図4に示す構成ではセグメント数が8であるので方角情報出力の分解能が45°となるが、無論、セグメント数を増やせば分解能は高まる。ディスプレイ34は、更に、カード30に対し固定された方向ポインタを有している。プロセッサ42はそれらのセグメント及びポインタを個別に作動させる。例えば、ディスプレイ34として液晶ディスプレイ又はエレクトロクロミックディスプレイを使用し、そのセグメントをそれぞれプロセッサ42に個別接続した構成では、電流供給によってセグメントを個別に作動させることができる。
【0053】
使用中のカード30は、ほぼ水平な姿勢で持たれているか、おおよそ水平な面例えばテーブルトップにおかれているか、そのいずれかである。ディスプレイ34は、複数個あるセグメントのうち、導出済方角に相応する1個を点灯させることで、ユーザに対しおおよそのカーバ方向を通知する。その際作動するセグメントは、方角の導出に使用した経路の始点をリングの中央としたときその経路が通るであろうセグメントである。ユーザは、ポインタで指し示されている方向と、作動中のセグメントが指し示している方向とがほぼ一致するよう、カード30の向きを変えるだけでよい。カード30の向きが変わると点灯するセグメントもそれにつれ別のセグメントへと変わっていくので、おおよそ望ましい方向が途切れなく表示され続けることとなる。カード30上のポインタがこうしてユーザの手で回され、導出済方角に対し所定の角度範囲内に収まるに至ったら、ポインタを光らせる等の手段で、今やポインタがほぼカーバ方向を指していることをユーザに通知する。ポインタの作動分解能は、例えば導出済方角に対し各側に5°とするが、無論、これとは違う分解能にすることもできる。
【0054】
ユーザがもう一度ボタン46を押すと、電力節減のためカード30の動作が停止する。ユーザが給電停止操作を行わずに所定時間例えば1分が経過した場合、カード30は自動的にその動作を停止する。
【0055】
また、利用できる電源の容量に制限があるため、GPSチップ38での消費電力をできるだけ抑えるのが望ましい。そのため、電力節減モードたる第2動作モード(又は他の実施形態)では、GPSチップ38で導出されたカード位置データをメモリ内に格納し、カード動作停止中もそのメモリに保持させる。ユーザがボタン46を押してカード動作を再開させたときに、そのメモリ内にカード位置データが保存されている場合、GPSチップ38を起動させず、保存されているカード位置データを用いて第1動作モードでのそれと同様の処理を実行する。カード動作中にユーザがボタン46を操作し、GPSチップ38を用い新たなカード位置座標を求めよとの意向を示した場合、それまで保持されていたカード位置座標に代わり新たなカード位置座標がメモリ内に格納され、次いでそれら新たなカード位置座標を使用し第1動作モードでのそれと同様の処理が実行される。
【0056】
このように、ユーザからの求めに応じ必要時だけGPSチップ38を使用するようにすることで、GPSチップ38への通電量を減らし、ひいては電池48の次回充電までの期間を引き延ばすことができる。特に、そのカード30のユーザがメッカから遠く離れたところに住んでいるのであれば、日常的な移動ではカーバの方角が大きく変わらないので、GPSで得られる位置座標を定期的に更新する必要がない。従って、GPSチップ38を使用するのは、ユーザが長めの距離を移動したときだけとなる。反面、メッカ又はその付近に住んでいるユーザは、より頻繁にGPSチップ38を使用し正確なカード位置座標を求めさせる必要があろう。
【0057】
更に、GPSチップ38でカード30の位置座標を求めることができない場合、例えばアンテナ40で所定時間以内に信号を受信できたGPS衛星の個数が十分な個数に達していない場合がある。プロセッサは、そうした場合、GPS衛星からの信号を受信できなくなった場所にカード30があると想定し、メモリ内の保存済位置座標を使用するようプログラムされている。プロセッサは、ディスプレイ34上に相応のメッセージ又はアイコンを表示させることで、GPSデータを更新できない旨をユーザに通知する。GPSチップ38でカード位置座標を求めることができない場合に、そのカード30の動作を自動停止させるようにしてもよい。
【0058】
また、コンパス44の校正モードをユーザによるボタン46の操作で開始させうる構成にしてもよい。カード30内のコンパス44を校正モードで動作させることで、そのカード30に備わる磁性体、例えば磁気ストリップ72からの影響を補償することができる。そのコンパス校正モードでは、ユーザは、まずカード30の表側を上に向けてボタン46を押し、次いで水平面内でカード30を180°回してからボタン46を再び押し、そしてカード30の表側を下に向けてボタン46をもう一度押す必要がある。コンパス44は、ボタンが押されるたびに計測を実行する。カード30のディスプレイ34には、ユーザ向けに、校正モードが成功裏に実行されたか否かが表示される。カード30における校正が長らく行われていない状態で、GPSチップ38によるカード位置座標導出が行われた場合に、校正モードを自動的に起動する構成にしてもよい。
【0059】
更に、図10に示すように、カード30に備わる様々な機能を、単一ボタンの操作時間乃至回数で選択指定可能な構成にすることもできる。この例では、カード動作停止中にユーザがボタン46を長押しするとカード30の動作が再開される。カード動作中に同じくボタン46が長押しされると諸関連データが保存された後にカード動作が停止される。カード動作中の短押し1回で第2動作モード(電力節減モード)が選択され、短押し連続2回でGPSチップ38が新たなカード位置座標を算出し、短押し連続3回でコンパス校正モードが選択される。ディスプレイ34を構成してるセグメント乃至ポインタを所定の配置乃至手順で作動させることで、ユーザに対し現在の動作モードを通知する構成にしてもよい。
【0060】
アンテナ40は、例えば、互いに直交するよう2本の略直線状素子を配した構成にする。図示した例では、アンテナ40を構成する2本の略直線状素子を、カード30の別々の辺に対しほぼ平行になるよう、その辺に沿いカード30の隅部付近に配置してある。
【0061】
GPSチップ38に備わる機能をGPSチップ38に代わりプロセッサ42でも実行可能な構成にしてもよい。そうすることで、GPSチップ38への給電量を必要最小限に抑えることができる。即ち、電池48からGPSチップ38への給電量を抑え、電池48の次回充電までの期間を延ばすことができる。
【0062】
カード30上に備わるユーザ入力手段は、単一のボタン46のみとしてもよい。ボタン46以外のユーザ入力手段を設けるようにしてもよい。
【0063】
GPSチップ38に、様々な種類の起動モードを設けることもできる。いずれの起動モードを使用するかは、GPS衛星からGPSチップ38へと新しいアルマナックデータ又はエフェメリスデータをダウンロードする必要があるか否か、或いはGPSチップ38で経時軌跡を保持できているか否かに応じ定めることができる。アルマナックデータ、エフェメリスデータ又はその双方が既に得られているなら、GPSチップ38でそれらを再ダウンロードする必要はない。従って、そうしたデータが既に得られているときには、GPSチップ38からの出力をより早期に得ることができる。
【0064】
カード30に加速度センサを搭載させてもよい。加速度センサを使用することで、水平面に対しカード30がなす角度を求めることができ、コンパス44ではその角度に基づきカード30の向きを求めることができる。また、GPSチップ38で求まったカード30の位置座標に対応する地表上の位置で、水平面に対し地球磁界がどのような角度をなしているかを、その位置座標に基づきプロセッサ42が求める構成にしてもよい。加速度センサを使用する構成であれば、その際、地球磁界に対しカード30がなす角度をプロセッサ42で求めることができ、カード30の向きがより正確にわかることとなる。
【0065】
メモリ内に格納しておいたカーバの位置データと、コンパス44で求まる方向即ちカード30の位置から見た磁北極の方向とに基づき、プロセッサ42でキブラを求める構成にしてもよい。この場合、コンパス44で求まった磁北極方向に対するキブラが、ディスプレイ34によって表示されることとなる。
【0066】
プロセッサ42内メモリに幾つかの都市の位置データを格納しておき、それらの都市のリストをカード30上に表示させるようにしてもよい。この構成では、ユーザがカード30上のユーザ入力手段、例えばボタン46等のユーザインタフェースを操作し、その都市リスト中で自分の現在位置に最も近い都市を指定すると、指定された都市の位置座標がメモリに格納され、カーバの方角がその位置座標に基づき上述の手順で導出・表示される。GPSチップ38で位置座標を求める機能をこの都市リスト表示機能で補完する形態にすることも、それら機能のいずれでカード30の位置座標を求めるかをユーザが指定可能な形態にすることも、GPSチップ38に代わり都市リスト表示機能を利用する形態にすることもできる。GPSチップ38を使用する必要がないので、この構成では、電池48による給電量を抑え次回充電までの期間を延ばすことができる。図11はこの構成を模式的に示したものである。
【0067】
表側印刷層62、裏側印刷層66又はその双方に印刷された世界地図タッチパネルを有する構成にしてもよい。それに加え、地球上の注目地点例えばメッカが属する大域的な地域地図タッチパネルを1個又は複数個設けてもよい。この構成では、ユーザがスタイラス、ペン等の器具や自分の指で地図タッチパネル上の該当個所を押して自分の現在位置を指定すると、指定された場所の位置座標がプロセッサ42内メモリに格納され、カーバの方角がその位置座標に基づき上述の手順で導出・表示される。地図タッチパネル上のある部分をユーザが押すとカード30の動作が停止又は再開されるようにしてもよい。都市リスト表示機能と同様、この地図タッチパネル機能も、GPSチップ38の補完や代替として使用することができる。図12はこの構成を模式的に示したものである。
【0068】
ATM、POS(販売時点管理)端末その他の装置に挿入等されたときにその装置と通信して現在位置データを取得するようカード30を構成してもよい。カード30が取得する位置データ即ち通信先装置の位置を示す位置データはプロセッサ42内メモリに格納され、カーバの方角がその位置データに基づき上述の手順で導出・表示される。メモリ内に格納されたカード位置データは、この機能に対応している装置にそのカード30が挿入されるたびに更新版の位置データに書き換わる。都市リスト表示機能と同様、このATM接続機能も、GPSチップ38の補完や代替として使用することができる。図13はこの構成を模式的に示したものである。
【0069】
複数個の地図セグメントに分割されておりセグメント毎にハイライト可能な地図を、カード30上に1個又は複数個印刷した構成にしてもよい。地図セグメントを双安定電気泳動インクで印刷しておけば、指定された地図セグメントを給電なしで恒久的にハイライトさせることができる。この構成では、カード30に設けられたアップボタン、ダウンボタン等のユーザ入力手段をユーザが操作すると、方角を示す数値が上掲の諸情報と共にディスプレイ34に表示される。その動作モードのうち第1モードでは、ユーザが方角をマニュアル指定すると、その方角がカーバの正しい方角となる地図セグメントがハイライトされ、その方角が上述の要領でディスプレイ34上に表示される。第2モードでは、ユーザがユーザ入力手段を操作し自分の現在位置に係る地図セグメントを指定すると、その地図セグメントに係る位置座標がプロセッサ42内メモリに格納され、カーバの方角がその位置座標に基づき上述の手順で導出・表示される。そして、第3モードでは、カーバの方角を既に知っているユーザが、ディスプレイ34上のポインタがカーバの方角を指し示すこととなるようカードの向きを定め、次いでユーザ入力手段を操作して校正プロセスを開始させる。それによって、ディスプレイ34上のポインタで指し示されている方角がプロセッサ42内メモリに格納されるため、そのカード30を後に使用する際に、その方角がディスプレイ34を用い上述の要領でユーザ向けに表示されることとなる。校正プロセスが再実行されると、プロセッサ42内メモリに格納されている従前の方角が新たな方角に書き換わる。都市リスト表示機能と同様、これらの機能のいずれも、GPSチップ38の補完や代替として使用することができる。図14はこの構成を模式的に示したものである。
【0070】
以上、その具体的な実施形態について説明してきたが、その説明の趣旨は例示であり、本発明の技術的範囲がそれによって限定されるわけではない。いわゆる当業者には自明な通り、ある実施形態で使用されていた部材を他の等価な部材に置き換えること、ある実施形態で使用されていた部材で他の実施形態を補強すること等を含め、上述の実施形態には様々な変形乃至改良を施すことができる。別紙特許請求の範囲に記載の発明には、そうした構成も包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ保存手段と、
本カードについてその位置データを生成する位置判別手段と、
位置判別手段で生成された位置データをデータ保存手段内に格納されている所定位置のそれと比較することで本カードから見た当該所定位置の方角を示す方角データを生成する比較手段と、
その方角を指し示す出力手段と、
を備える金融取引カード。
【請求項2】
請求項1記載の金融取引カードであって、その出力手段が、液晶ディスプレイ、エレクトロクロミックパネル等のディスプレイである金融取引カード。
【請求項3】
請求項1又は2記載の金融取引カードであって、その出力手段が、可変マーカを発現させることで上記所定位置を指し示す金融取引カード。
【請求項4】
請求項1記載の金融取引カードであって、位置判別手段、比較手段及び出力手段に電力を供給する給電手段を備える金融取引カード。
【請求項5】
請求項4記載の金融取引カードであって、その給電手段として蓄電池を備える金融取引カード。
【請求項6】
請求項4又は5記載の金融取引カードであって、その給電手段への充電が可能な金融取引カード。
【請求項7】
請求項4記載の金融取引カードであって、その給電手段として太陽電池を備える金融取引カード。
【請求項8】
請求項7記載の金融取引カードであって、その太陽電池を用い蓄電池を充電する金融取引カード。
【請求項9】
請求項8記載の金融取引カードであって、外部電源から電力供給を受けうる金融取引カード。
【請求項10】
請求項1記載の金融取引カードであって、外部データを本カード内にロードしデータ保存手段内に格納することができるよう、位置判別手段に接続されたインタフェースを備える金融取引カード。
【請求項11】
請求項10記載の金融取引カードであって、位置データの生成に使用されるユーザ入力をそのインタフェース越しに受け取る金融取引カード。
【請求項12】
請求項11記載の金融取引カードであって、位置データの生成に使用される場所入力としてユーザが個別指定することができるよう、そのインタフェースで幾通りかの場所を提示する金融取引カード。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載の金融取引カードであって、データ保存手段、位置判別手段及び出力手段の動作を制御するプロセッサ手段を備える金融取引カード。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項記載の金融取引カードであって、本カードの向きを示すコンパスデータをもたらすコンパス手段を備える金融取引カード。
【請求項15】
請求項14記載の金融取引カードであって、そのコンパス手段が電子コンパスである金融取引カード。
【請求項16】
請求項14又は15記載の金融取引カードであって、そのコンパス手段が、フラックスゲートコンパスと、本カードのコンパスヘディングを指し示す手段と、を有する金融取引カード。
【請求項17】
請求項1記載の金融取引カードであって、外部装置とのデータ交換を行えるよう位置判別手段に対し機能的に接続された第2インタフェース手段を備える金融取引カード。
【請求項18】
請求項13記載の金融取引カードであって、そのプロセッサ手段が、外部装置との間で金融手続きに関する通信を行う金融取引カード。
【請求項19】
請求項13記載の金融取引カードであって、そのプロセッサ手段が比較手段を兼ねる金融取引カード。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項記載の金融取引カードであって、その位置判別手段が、使用したいデータを含む信号を受信する受信機を有する金融取引カード。
【請求項21】
請求項20記載の金融取引カードであって、その受信機が、衛星航法システムからの信号を受信する金融取引カード。
【請求項22】
請求項20又は21記載の金融取引カードであって、その受信機が、本カードに装着されたダイポール等のアンテナを有する金融取引カード。
【請求項23】
請求項22記載の金融取引カードであって、そのアンテナが、互いにほぼ直交するよう且つそれぞれその一辺が本カードの隅部近傍に位置することとなるよう設けられた2個のコプレーナ素子を有する金融取引カード。
【請求項24】
請求項20又は21記載の金融取引カードであって、その位置判別手段がGPS受信機を有する金融取引カード。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか一項記載の金融取引カードであって、その位置判別手段で求まった本カードの位置データがデータ保存手段内に格納される金融取引カード。
【請求項26】
請求項25記載の金融取引カードであって、その比較手段が、位置判別手段が稼働していないときに、データ保存手段内に保存されている本カードの位置データを使用する金融取引カード。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか一項記載の金融取引カードであって、本カードの向きを求める向き判別手段を備える金融取引カード。
【請求項28】
請求項27記載の金融取引カードであって、その比較手段が、向き判別手段で求まった向きを基準にして方角データを生成する金融取引カード。
【請求項29】
請求項27又は28記載の金融取引カードであって、その向き判別手段が、水平面に対し本カードがなす角度を求める傾斜角判別手段と、水平面に対し地球磁界がなす角度を本カードの位置座標から求める手段と、を有し、それらに基づき本カードの向きを求める金融取引カード。
【請求項30】
請求項29記載の金融取引カードであって、その傾斜角判別手段として加速度センサを有する金融取引カード。
【請求項31】
請求項1乃至30のいずれか一項記載の金融取引カードであって、ユーザからの指示で本カードを起動し方角を指し示させる起動手段を備える金融取引カード。
【請求項32】
請求項31記載の金融取引カードであって、その起動手段に対する操作で本カードが起動したときに位置判別手段が位置を求める金融取引カード。
【請求項33】
請求項31又は32記載の金融取引カードであって、その起動手段として、押下可能なスイッチを備える金融取引カード。
【請求項34】
第1電源を有する金融取引カードと、第1電源充電用のエネルギ転送手段及びエネルギ転送が可能な形態でカードを装着しうる躯体を有する充電装置と、を備える複合装置。
【請求項35】
請求項34記載の複合装置であって、その充電装置が第2電源を有する複合装置。
【請求項36】
請求項35記載の複合装置であって、その充電装置を主電源に接続し第2電源を充電することが可能な複合装置。
【請求項37】
請求項34乃至36のいずれか一項記載の複合装置であって、エネルギ転送が可能な形態でカードを装着可能なスロットが躯体に形成された複合装置。
【請求項38】
請求項34乃至37のいずれか一項記載の複合装置であって、エネルギ転送が可能な形態でカードが装着されているとき接触するようカード及び躯体双方が電極を有する複合装置。
【請求項39】
処理手段と、その処理手段に機能的に接続されており電気エネルギの蓄積に使用されている蓄電手段と、電気エネルギを受け取り蓄電手段内に蓄積させる手段と、を備える金融取引カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−500395(P2012−500395A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523447(P2011−523447)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002021
【国際公開番号】WO2010/020774
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(511045501)
【Fターム(参考)】