説明

施工情報確認システム

【課題】 建築物等の竣工図書に記載されている詳細情報を、後日、現場で容易に確認することが可能な施工情報確認システムを提供する。
【解決手段】 施工情報確認システム10は、施工対象に関する詳細情報を記憶するための情報記録媒体20と、情報記録媒体20から詳細情報を読み取るための携行可能な情報読取手段30と、読み取った情報を表示するための携行可能な表示手段40と、を備える。施工対象の任意の箇所であって、情報読取手段30により詳細情報を読取可能な位置に、情報記録媒体20を取り付ける。情報記録媒体20は、区画された複数の情報記憶領域を有しており、各情報記憶領域には、詳細情報を種別毎に分類して、それぞれ記憶する。情報記録媒体20に記録する詳細情報は、2次元コード化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の竣工図書に記載されている詳細情報を、後日、現場で確認するための施工情報確認システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の仕上げに関する情報等は竣工図書として客先に提供されて客先で保管されるため、現場で簡単に利用することはできない。この竣工図書は、施工図、機器完成図、製作図、届け出書類、鍵リスト、備品リスト、外観写真等からなるが、施工詳細図、施工状況図、施工写真は含まれていないのが一般的である。また、竣工図として、構造図、意匠図、機械設備図、電気設備図等が各々作成されており、情報が一元化されていないので、補修・改修時に情報不足が生じる場合がある。
【0003】
そこで、従来、施工管理を効率的に行うための技術が種々開発されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、識別情報の情報読取手段を設けた携帯端末と、工事検査機関に設置される端末と、ネットワークを介して携帯端末及び端末との間で情報を送受信可能なサーバとを備えている。また、サーバには、識別情報と対応した検査対象の検査データ収集を指示するためのデータが記憶されている。そして、携帯端末を用いて識別情報を読み取ると、当該識別情報に対応する検査指示データを読み出して、携帯端末の表示画面に表示する。また、携帯端末から、検査指示データに基づいて収集した検査対象の画像データを含む検査報告データが送信されると、サーバは、当該検査報告データを識別情報に対応させて記憶する。工事検査を行う際には、端末からの要求に応じて、サーバに記憶された検査報告データを送信するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−183813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築物や土木施工物は、将来発生する修繕工事や改修工事に備えて、施工対象の部位や場所毎に建物躯体・仕上げ、設備配管、電線等の収容状況に関する情報を当該現場に保存しておき、後日、容易に利用できることが必要である。
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載された技術は、検査指示データや画像データを含む検査データを一元管理しているが、これらのデータは、工事現場とは離れた場所に存在するサーバに記憶されている。このため、工事現場に携帯端末を持ち込んでデータの送受信を行おうとした場合に、携帯端末とサーバとの間で通信を行うことができなければ、データの送受信を行うことができない。特に、無線通信によりネットワークを確立し、携帯端末とサーバとの間でデータの送受信を行う場合には、地下やビルの狭間、山奥等のように電波が届かない工事現場では、サーバに記憶されたデータを取り出すことができない。
【0007】
また、携帯端末とサーバとの間でデータの送受信ができたとしても、サーバに蓄積されているデータが竣工図書の場合には、その内容は形式的・概略的なものであり、建築物の部分毎の施工状況(実寸法、施工仕様)が反映されていない。このため、施工段階での有用な情報である、施工詳細図、施工状況図、施工写真等を提供できないのが現状である。
【0008】
さらに、竣工図は、構造図、意匠図、機械設備図、電気設備図のように個々に作成されており、施工場所毎の一元情報を把握することは難しい。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、建築物の竣工図書等に記載されている詳細情報を、後日、現場で容易に確認することが可能な施工情報確認システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の施工情報確認システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の施工情報確認システムは、施工対象に関する詳細情報を記憶するための情報記録媒体と、情報記録媒体から詳細情報を読み取るための携行可能な情報読取手段と、読み取った情報を表示するための携行可能な表示手段と、を備えている。そして、施工対象の任意の箇所であって、情報読取手段により詳細情報を読取可能な位置に、情報記録媒体を取り付けたことを特徴とするものである。
【0011】
このような構成からなる施工情報確認システムでは、構造図、意匠図、機械設備図、電気設備図等に記載すべき詳細情報を情報記録媒体に記録して施工対象に取り付ける。そして、携帯電話やPDA等の携帯端末を、情報読取手段及び表示手段として機能させる。すなわち、携帯端末の画像読取機能により、情報記録媒体から施工対象に関する詳細情報を読み取り、携帯端末の画像表示機能により、読み取った詳細情報を表示する。
【0012】
また、本発明の施工情報確認システムにおいて、情報記録媒体は、区画された複数の情報記憶領域を有しており、各情報記憶領域には、詳細情報を種別毎に分類して記憶するような構成とすることが可能である。このような構成からなる施工情報確認システムでは、構造図、意匠図、機械設備図、電気設備図等のように、詳細情報を種別毎に分類して、複数に区画された情報記録媒体の情報記憶領域にそれぞれ記憶する。
【0013】
また、本発明の施工情報確認システムにおいて、情報記録媒体に記録する詳細情報は、2次元コード化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の施工情報確認システムによれば、施工段階での有用な情報である施工詳細図、施工状況図、施工写真等の施工対象に関する詳細情報を、情報記録媒体に直接記憶し、後日、詳細情報が必要となった場合に、現場において詳細情報を読み取って表示することができる。したがって、修繕工事や改修工事を行う際に、施工対象に関する詳細情報を容易に確認することが可能となる。また、詳細情報が現場に保存されているので、地下やビルの狭間、山奥等のように電波が届かない現場であっても、サーバ等と通信を行ってデータを取得する必要がない。
【0015】
また、区画された複数の情報記憶領域に、詳細情報を種別毎に分類してそれぞれ記憶する構成とした場合には、所望する詳細情報の取得が容易となる。
【0016】
また、情報記録媒体に記録する詳細情報を2次元コード化することにより、情報記憶媒体を取り付ける領域面積が小さい場合であっても、記憶可能な情報量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る施工情報確認システムの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る施工情報確認システムで用いる情報記録媒体の模式図。
【図3】実施例1に係る施工情報確認システムの使用例を示す模式図。
【図4】実施例2に係る施工情報確認システムの使用例を示す模式図。
【図5】実施例3に係る施工情報確認システムの使用例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る施工情報確認システムの実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る施工情報確認システムの構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る施工情報確認システムで用いる情報記録媒体の模式図である。
建築物や土木施工物は、将来発生する修繕工事や改修工事に備えて、施工対象の部位や場所毎に建物躯体・仕上げ、設備配管、電線等の収容状況に関する情報を当該現場に保存しておき、後日、容易に利用できることが必要である。
【0019】
本発明の実施形態に係る施工情報確認システム10は、図1に示すように、情報記録媒体20と、情報読取手段30と、表示手段40と、を備えている。本実施形態では、情報記録媒体20を施工対象の任意の位置に取り付けておく。そして、後日、現場において、情報読取手段30を用いて情報記録媒体20に記録された施工情報を読み取って、表示手段40を用いて表示することにより、施工対象に関する詳細情報を容易に確認することができる。
【0020】
<情報記録媒体>
情報記録媒体20は、施工対象に関する詳細情報を記憶するための媒体であり、図2に示すように、2次元コードを印刷した紙、プラスチック板、金属板等からなる。情報記録媒体20を紙媒体とする場合には、汚損や破損を防止するため、透明なプラスチックフィルムで被覆することが好ましい。また、施工対象に直接、詳細情報を印刷したり、焼き付けたりしてもよい。なお、少ない面積に多くの詳細情報を記憶できるという点で、詳細情報が2次元コード化されていることが好ましいが、記憶する詳細情報に応じて、バーコード等のような情報を担持する識別子を用いてもよい。また、2次元コードには、QRコード等の種々の規格があるが、本実施形態ではどのような規格の2次元コードを用いてもかまわない。情報読取手段30では、使用される2次元コードに応じて情報読取方法が設定される。
【0021】
また、本実施形態の情報記録媒体20は、図2に示すように、区画された複数の情報記憶領域21a,21b,21cを有しており、各情報記憶領域21a,21b,21cには、詳細情報を種別毎に分類して記憶するような構成となっている。詳細情報の種別とは、例えば、建築仕上げ情報、機械設備情報、電気設備情報等のことである。なお、情報記憶領域21a,21b,21cの区画数、詳細情報の分類方法等は、施工対象及び記録すべき詳細情報に応じて適宜変更して実施することができる。
この情報記録媒体20は、施工対象の任意の箇所であって、情報読取手段30により詳細情報を読取可能な位置に取り付けられる。
【0022】
<情報読取手段>
情報読取手段30は、情報記録媒体20から詳細情報を読み取るための携行可能な装置であり、例えば、撮像機能を備えた携帯電話やPDA、あるいはハンドスキャナ及び携帯型パーソナルコンピュータを用いることができる。なお、撮像機能とは、対物レンズ、撮像素子、情報処理装置、及び情報処理装置に情報処理を行わせるためのプログラム等から構成される機能で、一般的に普及している携帯電話やPDAに搭載されている機能である。
【0023】
<表示手段>
表示手段40は、情報読取手段30により読み取った情報を表示するための携行可能な装置であり、表示機能を備えた携帯電話やPDA、あるいは携帯型パーソナルコンピュータを用いることができる。なお、表示機能とは、2次元コード等で表示されている情報を、人間が識別可能な情報として表示するための機能で、携帯電話やPDA、あるいは携帯型パーソナルコンピュータに搭載された液晶表示装置、情報処理装置、及び情報処理装置に情報処理を行わせるためのプログラム等から構成される。文字情報等のように表示する情報量が少ない場合には、携帯電話やPDAを用いてもよいが、映像情報等のように、表示する情報量が多い場合には、携帯電話やPDAと比較してより多くの情報を表示することが可能な携帯型パーソナルコンピュータに搭載された液晶表示装置を用いることが好ましい。
【0024】
<施工情報確認システムの使用例>
次に、具体的な実施例を用いて、本発明に係る施工情報確認システムの使用例を説明する。図3は、実施例1に係る施工情報確認システムの使用例を示す模式図、図4は、実施例2に係る施工情報確認システムの使用例を示す模式図、図5は、実施例3に係る施工情報確認システムの使用例を示す模式図である。
【実施例1】
【0025】
実施例1では、埋設配管やマンホール等のように、地下に埋設された施工対象に関する詳細情報を確認する際に、施工情報確認システムを使用する。例えば、大学等の敷地内インフラ工事では、埋設表示杭を用いてケーブル埋設管等の埋設物の用途や分岐位置を表示する場合が一般的である。このような埋設表示杭では、ケーブル埋設配管等の埋設物に関する埋設深度、管材、サイズ、埋設状況等の詳細な情報を表示することができない。
【0026】
そこで、実施例1では、図3に示すように、埋設表示杭の表面に2次元コードを記録した情報記録媒体を取り付け、携帯電話やハンドスキャナ等の情報読取手段を用いて、情報記録媒体に記憶された詳細情報を読み取り、携帯電話や携帯型パーソナルコンピュータの液晶表示画面に、作業者が認識可能な状態で詳細情報を表示する。実施例1において、情報記録媒体に記憶される詳細情報は、ケーブル埋設配管に関する埋設深度、管材、サイズ、埋設状況等である。
【0027】
このように、掘り起こさなければ正確な埋設場所を確認することが困難な地下埋設物に対して、本発明の施工情報確認システムを使用することにより、地下埋設物の種類や位置等を容易に確認することができるので、安全かつ効率的に修繕工事や改修工事の立案及び実施を行うことができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2では、外部から目視できない隠蔽箇所に敷設された施工対象に関する詳細情報を確認する際に、施工情報確認システムを使用する。例えば、ホールの天井内には、電気設備や電気配線等が敷設されており、これらの施工対象に関する情報は、天井内に設置された情報表示板等に表示されているのが一般的である。このような隠蔽箇所に設置された情報表示板では、梯子等の足場を用いて、天井に設けられた点検口内へ顔を入れ、懐中電灯で情報表示板を照らしながら、情報を読み取らなければならない。
【0029】
そこで、実施例2では、図4に示すように、ホールの天井に設けられた点検口の表面に2次元コードを記録した情報記録媒体を取り付け、携帯電話やハンドスキャナ等の情報読取手段を用いて、情報記録媒体に記憶された詳細情報を読み取り、携帯電話や携帯型パーソナルコンピュータの液晶表示画面に、作業者が認識可能な状態で詳細情報を表示する。実施例2において、情報記録媒体に記憶される詳細情報は、電気設備や電気配線の配置、規格等である。
【0030】
このように、作業者が容易に到達することができず、あるいは解体や破壊を行わなければ確認できなかった隠蔽された箇所に施工された機器に対して、本発明の施工情報確認システムを使用することにより、機器の種類や位置等を容易に確認することができるので、安全かつ効率的に修繕工事や改修工事の立案及び実施を行うことができる。
【実施例3】
【0031】
実施例3では、通常、画像が添付されていない竣工図等に関する詳細情報を確認する際に、施工情報確認システムを使用する。例えば、竣工図は、施工図、機器完成図、製作図、届け出書類、鍵リスト、備品リスト、外観写真等からなるが、施工詳細図、施工状況図、施工写真は含まれていないのが一般的である。
【0032】
そこで、実施例3では、図5に示すように、竣工図に情報記録媒体を取り付け、あるいは印刷し、携帯電話やハンドスキャナ等の情報読取手段を用いて、2次元コードを記録した情報記録媒体に記憶された詳細情報を読み取り、携帯電話や携帯型パーソナルコンピュータの液晶表示画面に、作業者が認識可能な状態で詳細情報を表示する。実施例3において、情報記録媒体に記憶される詳細情報は、施工対象の立体映像等である。
【0033】
このように、竣工図とは別書類として管理されており、確認が困難であった現場の映像等に対して、本発明の施工情報確認システムを使用することにより、映像に基づいて現場の状況を容易に確認することができるので、付加価値のある竣工図とすることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 施工情報確認システム
20 情報記録媒体
21a,21b,21c 情報記憶領域
30 情報読取手段
40 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象に関する詳細情報を記憶するための情報記録媒体と、
前記情報記録媒体から詳細情報を読み取るための携行可能な情報読取手段と、
前記読み取った情報を表示するための携行可能な表示手段と、
を備え、
施工対象の任意の箇所であって、前記情報読取手段により詳細情報を読取可能な位置に、前記情報記録媒体を取り付けたことを特徴とする施工情報確認システム。
【請求項2】
前記情報記録媒体は、区画された複数の情報記憶領域を有しており、各情報記憶領域には、前記詳細情報を種別毎に分類して、それぞれ記憶することを特徴とする請求項1に記載の施工情報確認システム。
【請求項3】
前記情報記録媒体に記録する詳細情報は、2次元コード化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の施工情報確認システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−160531(P2010−160531A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−479(P2009−479)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)