説明

施工管理システムおよび施工管理方法

【課題】施工現場における施工状態の確認作業や、施工現場で行われた部材の属性データの修正をCAD装置により生成された部材の属性データに反映させる作業を容易かつ正確に行えるようにし、施工管理の効率性、信頼性を高める。
【解決手段】CAD装置は部材の属性データをエンコードして2次元コードを生成する。施工現場で施工状態を確認する際に、作業者は、2次元コードを部材に貼付し、携帯端末装置で2次元コードを読み取る。携帯端末装置は、読み取られた2次元コードをデコードして属性データを復元し、作業者による操作に従い当該属性データを修正し、さらに部材を写真撮影し、これにより得られた画像データと属性データをメール送信する。CAD装置は、メール送信された属性データに基づき、施工現場における属性データの修正を、CAD装置により生成された属性データに反映し、また当該属性データに画像データを付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAD(Computer Aided Design)装置および携帯端末装置等を用いて建築設備等の施工を管理する施工管理システムおよび施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築設備、例えば建物の空気調和設備の設計および施工を行う場合には、まず、設計者が、CADソフトウェアのインストールされたパーソナルコンピュータ等(これを「CAD装置」という。)により空気調和設備の設計を行う。続いて、施工作業者が、設計書等を携えて現場に赴き、空気調和設備を構成する配管等の部材を設計に従って設備に組み付ける施工作業を行う。そして、施工作業後、あるいは施工作業途中の適切な段階で、施工管理者または施工作業者が、実際の施工状態の確認および記録のために、設備に組み付けられた部材を、日時および当該部材の属性データ等を書き記した黒板あるいはホワイトボードと共に、カメラにより撮影する。このように撮影された写真は、施工記録の一部としてファイルされ、施工履歴として保管される。
【0003】
また、下記の特許文献1には、施工状態を検査し易くし、また、工事記録として分かり良い工事記録写真を撮影することを目指した写真撮影指示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−194738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の方法による設備の設計および施工において、次のような問題がある。すなわち、従来の方法では、実際の施工状態の確認および記録のために、施工管理者または施工作業者が、設備に組み付けられた部材を、日時および当該部材の属性データが書き記された黒板あるいはホワイトボードと共にカメラで撮影する。施工管理者または施工作業者は、この撮影の前に現場で、設計書等を確認しながら、日時および部材の属性データを、インクペン等を用いてホワイトボード等に書き込む。このように、現場で日時や属性データをホワイトボード等に書き込み、また、現場にホワイトボード等を持ち運ぶことは施工管理者または施工作業者にとって手間がかかるという問題がある。また、施工管理者または施工作業者が、誤った属性データをホワイトボード等に書き込んでしまうおそれがあり、このような事態が生じた場合には、事後的に誤りを発見することは容易でなく、また、誤りを発見できた場合には、誤りを修正する作業が生じ、施工管理が煩雑となるという問題がある。
【0006】
また、現場で設備に部材を組み付ける際、設備の実際上の施工状態等により、部材が設計書通りに組み付けられない場合がある。この場合には、施工作業者が、設計の修正を適宜行いながら部材を組み付けることがある。このような事態が生じた場合、現場で部材の属性が変更されることとなるため、部材の実際上の属性と部材の設計上の属性データとの間に相違が生じることとなる。それゆえ、後に、CAD装置に記憶された設計上の属性データを、実際上の部材の属性と一致するように変更する必要がある。この属性データの変更作業は、例えば設計者または施工管理者がCAD装置を操作して手入力により行うのであるが、誤りが生じやすく、またこの作業自体をし忘れてしまう場合があり、この結果、施工管理が煩雑化するという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の写真撮影指示装置では、上述したような施工管理の煩雑化を改善することは困難である。
【0008】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、施工現場において施工状態の確認または記録を行う際に、部材の属性データを容易にかつ正確に確認または記録することができ、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる施工管理システムおよび施工管理方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の課題は、CAD装置に記憶された部材の設計上の属性データを、施工後の部材の実際上の属性に一致するように容易にかつ正確に変更することができ、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる施工管理システムおよび施工管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の施工管理システムは、施工対象の設計を行い、設計に際して前記施工対象を構成する部材の属性データを生成するCAD装置と、無線通信を行う通信回路、文字または画像を表示する表示器、データを入力する入力キーおよび写真撮影を行うカメラを有する携帯端末装置とを備えた施工管理システムであって、前記CAD装置は、前記属性データを生成する属性データ生成手段と、前記属性データ生成手段により生成された属性データを記憶する属性データ記憶手段と、前記属性データ生成手段により生成された属性データをエンコードすることにより2次元コードを生成するエンコード手段と、前記携帯端末装置から送信された施工状態データを受け取り、当該受け取った施工状態データに含まれる属性データに基づいて前記属性データ記憶手段に記憶された属性データを必要に応じて変更すると共に、前記施工状態データに含まれる画像データを前記属性データ記憶手段に記憶された属性データに付加する画像付加手段とを備え、前記携帯端末装置は、前記エンコード手段により生成された2次元コードを前記カメラにより読み取るコード読取手段と、前記コード読取手段により読み取られた2次元コードをデコードすることにより属性データを復元するデコード手段と、前記デコード手段により復元された属性データを前記表示器に表示する属性データ表示手段と、前記デコード手段により復元された属性データを前記入力キーの操作に従って変更または削除し、あるいは前記デコード手段により復元された属性データに新たな属性データを前記入力キーの操作に従って追加する属性データ変更手段と、前記施工対象を前記カメラで撮影することにより前記施工対象の前記画像データを生成する撮影手段と、前記デコード手段により復元された属性データまたは前記属性データ変更手段により変更、削除もしくは追加が加えられた属性データと、前記撮影手段により生成された画像データとを含む前記施工状態データを前記通信回路により外部に送信するデータ送信手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の施工管理システムにおいて、まず、事業所等にて、利用者は、施工対象を構成する部材の属性データを生成し、さらに当該属性データの2次元コードを生成すべくCAD装置を操作する。これに応じ、CAD装置は、部材の属性データを生成し、これを属性データ記憶手段に記憶し、さらに、当該属性データをエンコードし、2次元コードを生成する。利用者は、この2次元コードをラベル用紙に印刷する。なお、本発明の施工管理システムを利用する者を「利用者」と呼ぶが、この利用者には、主にCAD装置を操作して部材の属性データの作成を含む施工対象の設計作業を行う設計者、主に施工現場において施工対象の施工作業を行う施工作業者、および主に施工対象の設計および施工を含む作業を全体的に管理する施工管理者等が含まれる。
【0012】
現場において、利用者は、2次元コードが印刷されたラベルを部材に貼る。そして、利用者は、施工状態の確認を行う際に、携帯端末装置により当該2次元コードを撮影すべく携帯端末装置を操作する。これに応じ、携帯端末装置は、カメラにより当該2次元コードを撮影し、当該撮影した2次元コードをデコードして属性データを復元し、当該属性データを表示器に表示する。
【0013】
現場において、利用者は、携帯端末装置の表示器に表示された部材の属性データ(設計上の属性データ)と、部材の実際上の属性とを比較し、施工状態を確認する。施工時に部材の組付状態が設計と異なり、部材の実際上の属性が設計上の属性データと異なった場合には、利用者は、携帯端末装置の入力キーを操作し、表示器に表示された設計上の属性データを、実際上の属性と一致するようにその場で変更し、削除し、追加することができる。このような操作が行われた場合には、携帯端末装置は、復元された属性データを変更し、削除し、あるいは復元された属性データに新たな属性データを追加する。
【0014】
また、現場において、利用者は、施工状態を記録するために、実際に施工された部材を撮影すべく携帯端末装置を操作する。これに応じ、携帯端末装置は、カメラにより当該部材を撮影し、当該撮影した部材の画像データを生成する。
【0015】
さらに、現場において、利用者は、必要に応じて変更、削除、追加を行った属性データと、撮影した画像データとを、事業者に設けられたパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等に送信すべく携帯端末装置を操作する。これに応じ、携帯端末装置は属性データと画像データとを含む施工状態データを通信回路により送信する。
【0016】
そして、事業所等において、利用者は、携帯端末装置から送信された施工状態データをCAD装置に入力する。これに応じ、CAD装置は、施工状態データに含まれる実際上の属性データ(施工現場で変更、削除、追加が行われた属性データ)と当該CAD装置の属性データ記憶手段に記憶された設計上の属性データとが一致するように、当該設計上の属性データを変更する。さらに、CAD装置は、施工状態データに含まれる画像データを、CAD装置の属性データ記憶手段に記憶された属性データに付加する。
【0017】
このように本発明の第1の施工管理システムでは、施工現場において施工状態を確認および記録する作業を、携帯端末装置の操作だけでほぼ完了することができる。すなわち、利用者は、施工現場において施工状態の確認および記録をするために、(1)携帯端末装置による2次元コードの読取、(2)携帯端末装置の表示器に表示された属性データの必要に応じた変更、削除または追加、(3)施工された部材の写真撮影、および(4)携帯端末装置からの属性データおよび画像データの送信を行えばよい。これにより、本発明の第1の施工管理システムによれば、当該確認・記録作業を容易にかつ正確に行うことができ、作業の過程で誤った属性データが記録されることを防止することができる。また、現場にホワイトボード等を持ち運ぶ手間や、ホワイトボード等に属性データ等を手書きする手間をなくすことができる。したがって、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。
【0018】
また、本発明の第1の施工管理システムによれば、携帯端末装置から送信された施工状態データを用いることにより、CAD装置に記憶された部材の設計上の属性データを、施工後の部材の実際上の属性データに一致するように容易にかつ正確に変更することができる。したがって、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。
【0019】
さらに、CAD装置に記憶された部材の属性データに当該部材の画像データを付加することで、施工管理の効率性をより一層高めることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第2の施工管理システムは、上述した本発明の第1の施工管理システムにおいて、前記携帯端末装置は、前記属性データとして選択可能な複数の選択肢にそれぞれ対応する複数の選択肢データを記憶した選択肢記憶手段を備え、前記属性データ変更手段は、前記選択肢記憶手段に記憶された複数の選択肢データの中から任意の選択肢データを前記入力キーの操作に従って選択することで、前記デコード手段により復元された属性データの変更または前記デコード手段により復元された属性データへの新たな属性データの追加を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の施工管理システムによれば、利用者は、携帯端末装置の表示部に表示された部材の属性データを、携帯端末装置を操作して選択肢を選択するだけで変更または追加することができるので、属性データの変更・追加を容易に行うことができ、また、属性データの記録に誤りが生じることを防止することができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の第3の施工管理システムは、上述した本発明の第1または第2の施工管理システムにおいて、前記携帯端末装置から送信された施工状態データを受信し、当該受信した施工状態データを蓄積するデータ蓄積手段と、前記データ蓄積手段により蓄積された複数の施工状態データを用いて前記施工対象に係る施工記録書を生成する施工記録書生成手段とを備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明の第3の施工管理システムによれば、携帯端末装置から送信され、蓄積された施工状態データに基づいて施工記録書を容易に生成することができる。また、携帯端末装置から送信された施工状態データには、実際の施工状態に即した部材の属性データと画像データとが含まれているので、実際の施工状態に合致した正確な情報が記載された施工記録書を生成することができる。したがって、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の施工管理方法は、施工対象の設計を行うCAD装置と、無線通信を行う通信回路、文字または画像を表示する表示器、データを入力する入力キーおよび写真撮影を行うカメラを有する携帯端末装置とを用いて施工対象の施工を管理する施工管理方法であって、前記施工対象の設計を行うに際して前記施工対象を構成する部材の属性データをCAD装置により生成し、当該生成した属性データを前記CAD装置に設けられた属性データ記憶手段に記憶する属性データ生成工程と、前記属性データ生成工程において生成された属性データを前記CAD装置によりエンコードすることにより2次元コードを生成するエンコード工程と、前記エンコード工程において生成された2次元コードを前記携帯端末装置のカメラにより読み取るコード読取工程と、前記コード読取工程において読み取られた2次元コードを前記携帯端末装置でデコードすることにより属性データを復元するデコード工程と、前記デコード工程において復元された属性データを前記携帯端末装置の表示器に表示する属性データ表示工程と、前記デコード工程において復元された属性データを前記入力キーの操作に従って前記携帯端末装置により変更または削除し、あるいは前記デコード工程において復元された属性データに新たな属性データを前記入力キーの操作に従って前記携帯端末装置により追加する属性データ変更工程と、前記施工対象を前記携帯端末装置のカメラで撮影することにより前記施工対象の画像データを生成する撮影工程と、前記デコード工程において復元された属性データあるいは前記属性データ変更工程において変更、削除または追加が加えられた属性データと、前記撮影工程において生成された画像データとを含む施工状態データを前記通信回路により前記携帯端末装置から外部に送信するデータ送信工程と、前記データ送信工程において送信された施工状態データを前記CAD装置により受け取り、当該受け取った施工状態データに含まれる属性データに基づいて前記CAD装置の属性データ記憶手段に記憶された属性データを前記CAD装置により必要に応じて変更すると共に、前記施工状態データに含まれる画像データを前記属性データ記憶手段に記憶された属性データに前記CAD装置により付加する画像付加工程とを備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明の施工管理方法によれば、上述した本発明の施工管理システムと同様に、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、施工現場において施工状態の確認または記録を行う際に、部材の属性データを容易にかつ正確に確認または記録することができ、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。また、CAD装置に記憶された部材の設計上の属性データを、施工後の部材の実際上の属性に一致するように容易にかつ正確に変更することができ、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態による施工管理システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による施工管理システムによる施工管理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態による施工管理システムにおいて、CAD装置による2次元コードの生成等を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態による施工管理システムにおいて、携帯端末装置による属性データの変更、写真撮影、メール送信等を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態による施工管理システムにおいて、携帯端末装置による属性データの変更等を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態による施工管理システムにおいて、携帯端末装置に記憶されたアイテムデータを示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態による施工管理システムにおいて、CAD装置による属性データの反映、画像データの付加等を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態による施工管理システムにおいて、記録書生成装置により生成される施工記録書を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態による施工管理システムを示している。図1において、施工管理システム1は、建築設備等の施工を管理するシステムである。施工管理システム1は、パーソナルコンピュータ(PC)2と、携帯端末装置3とを備えている。
【0029】
パーソナルコンピュータ2は例えば事業所等に置かれている。パーソナルコンピュータ2は、一般的なパーソナルコンピュータと同様に、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターネットに接続することができる通信インターフェイス、USB(Universal Serial Bus)ポート等のデータ入出力ポート、ディスクドライブ、モニタ、キーボード、マウス等を備えている。上記メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等である。なお、パーソナルコンピュータ2に代えて、サーバコンピュータ等の他の種類のコンピュータを用いてもよい。
【0030】
パーソナルコンピュータ2の上記メモリには、CADプログラム、メールプログラムおよび記録書生成プログラムを含む種々のコンピュータプログラム(ソフトウェア)が記憶されている。パーソナルコンピュータ2は、そのCPUがCADプログラムを上記メモリから読み出して実行することにより、CAD装置4として機能する。また、パーソナルコンピュータ2は、そのCPUがメールプログラムを上記メモリから読み出して実行することにより、メールボックス5としても機能する。さらに、パーソナルコンピュータ2は、そのCPUが記録書生成プログラムを上記メモリから読み出して実行することにより、記録書生成装置6としても機能する。
【0031】
CAD装置4は、一般的なCADとしての機能の他、後述するように、設備を構成する各部材(例えば配管等)の属性データを2次元コード(2次元バーコード)にエンコードする機能や、施工現場において変更された部材の属性データ(実際上の属性データ)を設計上の属性データに自動的に反映させる機能、および施工現場において写真撮影された部材等の画像データを設計上の属性データに付加する機能等を有している。CAD装置4は、CAD部7、エンコード部8、およびデータインポート部9を備えている。
【0032】
CAD部7は、一般的なCAD(例えば3次元CAD)としての機能を実現する部分である。すなわち、CAD部7は、利用者によるパーソナルコンピュータ2のキーボード、マウス等の操作に従い、設備を構成する各部材の部材オブジェクトデータを生成し、この部材オブジェクトデータをパーソナルコンピュータ2のメモリに記憶する。部材オブジェクトデータは、概ね、設備を構成する部材ごとに生成され、各部材オブジェクトデータには、部材の属性データが含まれている。属性データには、部材の名称・寸法・形状等、部材固有の情報の他、設備が設けられる建物等の名称(現場名)、部材の機能・役割(項目)、部材を組み付ける場所(階数、工区、部屋名)、部材が属する系統(系統名)、部材に関わる目的・用途・作用(種別)等が含まれている。なお、CAD部7は属性データ生成手段および属性データ記憶手段の具体例である。
【0033】
エンコード部8は、各部材の属性データを2次元コードに変換する機能を実現する部分である。すなわち、エンコード部8は、CAD部7により生成された部材オブジェクトデータに含まれる属性データをエンコードすることにより、2次元コードを生成する。2次元コードは、例えばQRコード(登録商標)である。なお、エンコード部8はエンコード手段の具体例である。
【0034】
データインポート部9は、施工現場において変更された部材の属性データ(実際上の属性データ)を設計上の属性データに自動的に反映させると共に、施工現場において写真撮影された部材等の画像データを設計上の属性データに付加する機能を実現する部分である。すなわち、データインポート部9は、後述するように、携帯端末装置3から送信され、メールボックス5に一旦記憶された施工状態データを利用者がメールボックス5からCAD装置4にインポートしたときに、この施工状態データに含まれる属性データ(実際上の属性データ)に基づいて、CAD部7により生成されてパーソナルコンピュータ2のメモリに記憶された属性データ(設計上の属性データ)を必要に応じて変更すると共に、施工状態データに含まれる画像データを当該設計上の属性データに付加する。なお、データインポート部9は画像付加手段の具体例である。
【0035】
メールボックス5は、外部から送信され、パーソナルコンピュータ2の上記通信インターフェイスを介して受信された電子メールを記憶・蓄積する機能を有する。具体的には、携帯端末装置3から送信された施工状態データを記憶・蓄積する。なお、メールボックス5はデータ蓄積手段の具体例である。
【0036】
記録書生成装置6は、メールボックス5に蓄積された施工状態データを用いて、設備の施工に係る施工記録書を自動的に生成する機能を有する。
【0037】
一方、携帯端末装置3は、例えば設備の施工現場において利用者により携帯される。携帯端末装置3は、例えば多機能携帯電話機、スマートフォン、モバイルコンピュータ等である。携帯端末装置3は、携帯可能な小型かつ軽量な装置であり、CPU、メモリ、移動体通信網と接続する通信回路、アンテナ、データ入出力ポート、液晶ディスプレイ等の表示器、入力キー、カメラ、マイク、およびスピーカ等を備えている。
【0038】
携帯端末装置3は、携帯電話機としての一般的な通話・データ通信機能の他、2次元コードを読み取り、これをデコードして属性データを復元し、当該復元した属性データを上記表示器に表示する機能や、利用者による入力キーの操作に従い、属性データの変更等を行う機能、施工現場において部材を写真撮影して画像データを生成する機能、属性データおよび画像データを外部にメール送信する機能等を有している。携帯端末装置3は、コード読取部11、デコード部12、属性データ表示部13、属性データ変更部14、撮影部15、およびデータ送信部16を備えている。これらの構成要素は、携帯端末装置3のメモリに記憶された施工管理プログラムを携帯端末装置3のCPUが読み出して実行することにより実現される。また、携帯端末装置3のメモリには、上記プログラムの他に、後述するユーザデータ、アイテムデータ等が記憶されている。なお、携帯端末装置3のメモリは選択肢記憶手段の具体例である。
【0039】
コード読取部11は、CAD装置4のエンコード部8により生成された2次元コードを携帯端末装置3のカメラにより読み取る。なお、コード読取部11はコード読取手段の具体例である。
【0040】
デコード部12は、コード読取部11により読み取られた2次元コードをデコードすることにより属性データを復元する。なお、デコード部12はデコード手段の具体例である。
【0041】
属性データ表示部13は、デコード部12により復元された属性データを携帯端末装置3の表示器に表示する。なお、属性データ表示部13は属性データ表示手段の具体例である。
【0042】
属性データ変更部14は、デコード部12により復元された属性データを、利用者による携帯端末装置3の入力キーの操作に従って変更または削除し、あるいはデコード部12により復元された属性データに新たな属性データを、利用者による携帯端末装置3の入力キーの操作に従って追加する。なお、属性データ変更部14は属性データ変更手段の具体例である。
【0043】
撮影部15は、施工現場において設備に組み付けられた部材等をカメラで写真撮影することにより画像データを生成する。なお、撮影部15は撮影手段の具体例である。
【0044】
データ送信部16は、デコード部12により復元された属性データまたは属性データ変更部14により変更、削除または追加が加えられた属性データと、撮影部15により生成された画像データとを含む施工状態データを、携帯端末装置3の通信回路を介して外部に送信する。なお、データ送信部16はデータ送信手段の具体例である。
【0045】
図2は、このような構成を有する施工管理システム1による施工管理の流れを示している。図2に示すように、施工管理システム1による施工管理の流れは、データ生成段階、現場確認修正段階、データ反映段階および記録書生成段階に分けることができる。データ生成段階とは、事業所等において、CAD装置4により部材オブジェクトデータを生成し、部材オブジェクトデータに含まれる属性データから2次元コードを生成する段階(ステップS1〜S3)である。現場確認修正段階とは、施工現場において、携帯端末装置3により、2次元コードから属性データを復元し、実際の施工状態と照らし合わせて属性データの確認・変更等を行い、設備に組み付けられた部材等を写真撮影し、変更等を行った属性データと写真撮影により得られた画像データとを施工状態データとしてメール送信する段階(ステップS4〜S10)である。データ反映段階とは、事業所等において、携帯端末装置3から送信された施工状態データに基づいて、設計上の属性データを変更し、当該設計上の属性データに画像データを付加する段階(ステップS11〜S12)である。記録書生成段階とは、事業所等において、記録書生成装置6により、施工状態データを用いて施工記録書を生成する段階(ステップS13〜S14)である。
【0046】
図3はデータ生成段階におけるCAD装置4の動作を示している。これより、図2および図3を参照しながら、データ生成段階におけるCAD装置4の動作等について説明する。
【0047】
データ生成段階において、まず、利用者は、パーソナルコンピュータ2のキーボード、マウス等を操作し、CAD装置4により部材オブジェクトデータを作成する。利用者による操作に従って、CAD装置4のCAD部7は、部材オブジェクトデータを生成し、パーソナルコンピュータ2のメモリに記憶する(ステップS1)。
【0048】
部材オブジェクトの生成処理において、CAD部7は、部材オブジェクトの画像をパーソナルコンピュータ2のモニタの画面21に表示する。また、利用者が部材オブジェクトをマウス等により指定した場合には、CAD部7は、指定された部材オブジェクトの画像の表示態様を変えることにより、当該指定された部材オブジェクトを他の部材オブジェクトから識別できるようにする。さらに、CAD部7は、指定された部材オブジェクトの属性データ等を記載した部材オブジェクトウィンドウ22を表示する。例えば、図3には、画面21中に、利用者により指定された部材オブジェクト23Aの画像が、他の部材オブジェクト23B、23Cの画像とは異なる表示態様で表示されると共に、当該指定された部材オブジェクト23Aの属性データ等が記載された部材オブジェクトウィンドウ22が表示された状態が示されている。また、上述したように、CAD部7は概ね部材ごとに部材オブジェクトデータを生成し、記憶する。また、各部材オブジェクトデータには部材の属性データが含まれている。図3には、画面21中の部材オブジェクト23A、23B、23Cの部材オブジェクトデータ24A、24B、24Cと、それらにそれぞれ含まれる属性データ25A、25B、25Cが示されている。
【0049】
次に、利用者は、パーソナルコンピュータ2のキーボード、マウス等を操作し、各部材の属性データに対応する2次元コードを作成する。利用者による操作に従って、CAD装置4のエンコード部8は、各部材オブジェクトデータに含まれる属性データをエンコードし、属性データに対応する2次元コードを生成し、パーソナルコンピュータ2のメモリに記憶する(ステップS2)。図3には、部材オブジェクトデータ24A、24B、24Cに含まれる属性データ25A、25B、25Cにそれぞれ対応する2次元コード26A、26B、26Cが示されている。なお、2次元コードの生成は、利用者により、個々の部材オブジェクトデータが指定され、2次元コードを生成する旨の指示が入力されたとき行われる構成としてもよいし、部材オブジェクトデータの生成の際に自動的に行われる構成としてもよい。
【0050】
次に、利用者は、パーソナルコンピュータ2のキーボードまたはマウス、およびパーソナルコンピュータ2のデータ入出力ポートを介して接続されたプリンタ等を操作し、各部材の属性データに対応する2次元コードをラベル用紙に印刷する(ステップS3)。
【0051】
図4および図5は現場確認修正段階における携帯端末装置3の動作を示し、図6は携帯端末装置3のメモリに記憶されたアイテムデータを示している。これより、図2、図4ないし図6を参照しながら、現場確認修正段階における携帯端末装置3の動作等について説明する。
【0052】
現場確認修正段階において、まず、利用者は、携帯端末装置3、および2次元コードが印刷されたラベルを携えて施工現場に赴き、設備に部材を組み付ける等の施工作業を行う。施工作業が終了したとき、あるいは施工作業途中の適切な段階で、利用者は、部材の組付状態等の施工状態を確認する作業を行う。
【0053】
この確認作業において、利用者は、まず、部材に、当該部材の属性データに対応する2次元コードが印刷されたラベルを貼付する。
【0054】
続いて、利用者は、携帯端末装置3を操作し、携帯端末装置3のメモリに記憶された上記施工管理プログラムを起動させる。これに応じ、携帯端末装置3のCPUは、施工管理プログラムを起動し、ログイン画面31を携帯端末装置3の表示器に表示する。そして、利用者が携帯端末装置3の入力キーを操作して所定のユーザ名およびパスワードを入力したとき、携帯端末装置3のCPUは、携帯端末装置3のメモリに記憶されたユーザデータを読み出し、ユーザデータに含まれるユーザ名およびパスワードと、利用者により入力されたユーザ名およびパスワードとを照合し、これらが一致したときに限り、利用者に対し、ログインを許可する(ステップS4)。ログインを許可した場合、携帯端末装置3のCPUは、表示器の表示をログイン画面31から選択画面32に切り換える。
【0055】
次に、利用者は、携帯端末装置3の入力キーを操作し、あるいは携帯端末装置3がタッチパネルを備えている場合にはタッチパネルに触れ、選択画面32中の2次元コード読取ボタン33をオンにし、部材に貼付したラベルに印刷された2次元コードを携帯端末装置3のカメラで撮影する。このとき、携帯端末装置3の表示器には2次元コード34が表示される。このような利用者の操作に応じ、携帯端末装置3のコード読取部11が2次元コードを読み取り(ステップS5)、携帯端末装置3のデコード部12が当該読み取った2次元コードをデコードする。これにより、当該2次元コードに対応する属性データが復元され、携帯端末装置3のメモリに記憶される(ステップS6)。続いて、携帯端末装置3の属性データ表示部13が、デコード部12により復元された属性データを記載した属性データ表示画面35を生成し、この属性データ表示画面35を携帯端末装置3の表示器に表示する(ステップS7)。
【0056】
ここで、属性データ表示画面35には、図5(1)に示すように、デコード部12により復元された属性データ、すなわち、2次元コードを貼付した部材の設計上の属性データが所定のレイアウトに従って配置される。すなわち、属性データ表示画面35中の左側の列には、属性データの種類を示す文字(現場名、項目、階数、工区、…)が配置される。属性データ表示画面35中の中間部の列には、属性データの内容を示す文字(○○ビル、ハウジング継手、10F、W1、…)が配置される。属性データの内容を示す文字は、テキスト入力フォーム51中に記載される。これにより、属性データの内容は、利用者の操作に従って変更し、削除し、あるいは追加することができる。属性データ表示画面35中の右側の列にはリスト表示ボタン52が配置される。
【0057】
利用者は、属性データ表示画面35に表示された属性データと、実際に施工された部材の属性とを照らし合わせ、両者が一致するか否かを確認する。属性データ表示画面35に表示された属性データと実際の部材の属性とが異なる場合には、利用者は、属性データの変更、削除または追加を行う。
【0058】
属性データの変更を行うとき、利用者は、携帯端末装置3の入力キーを操作し、あるいは携帯端末装置3がタッチパネルを備えている場合にはタッチパネルに触れ、変更すべき属性データに対応するリスト表示ボタン52をオンにする。これに応じ、携帯端末装置3の属性データ変更部14は、当該属性データとして選択可能な選択肢を配列したリストを表示器に表示する。例えば、図5(2)に示すように、変更すべき属性データが部材の属する系統の「系統名」である場合、属性データ変更部14は、「冷水」、「温水」、「冷温水」、「冷却水」といった選択肢を配置したリスト53を表示器に表示する。
【0059】
ここで、携帯端末装置3のメモリには、図6に示すようなアイテムデータが記憶されている。アイテムデータとは、属性データとして選択可能な選択肢を属性データの種類ごとに定義したデータである。属性データ変更部14はアイテムデータを用いてリストを生成し、表示する。
【0060】
このようなリストが表示された後、利用者は、携帯端末装置3の入力キーを操作し、あるいはタッチパネルに触れ、リスト中の所望の選択肢を選択する。これに応じ、属性データ変更部14は、当該属性データの内容を選択された選択肢が指し示す内容に変更する(ステップS8)。この結果、表示器に表示された当該属性データの内容が、選択された選択肢が指し示す内容に変更され、携帯端末装置3のメモリに記憶されている当該属性データの内容も、選択された選択肢が指し示す内容に変更される。
【0061】
また、利用者は、携帯端末装置3の入力キーを操作し、あるいはタッチパネルに触れることで、変更すべき属性データの内容(当該内容を示す文字列)を直接入力することもできる。また、利用者は、携帯端末装置3の入力キーを操作し、あるいはタッチパネルに触れることで、削除すべき属性データを削除することもできる。
【0062】
さらに、利用者は、携帯端末装置3の入力キーを操作し、あるいはタッチパネルに触れることで、属性データを追加することもできる。例えば、図5(1)に示すように、利用者は、属性データ表示画面35中の「その他1」または「その他2」に対応するリスト表示ボタン52をオンにすることで、リストを表示し、リスト中に配列された選択肢を選択することで、新たな属性データを追加することができる。また、利用者は、属性データ表示画面35中の「その他1」または「その他2」に対応するテキスト入力フォーム51中に、追加すべき内容(当該内容を示す文字列)を直接入力することによっても、新たな属性データを追加することができる。
【0063】
図5(3)は、変更後の属性データ表示画面35の一例を示している。図5(1)に示す変更前の属性データ表示画面35と、図5(3)に示す変更後の属性データ表示画面35とを比較するとわかるように、系統名に係る属性データが冷却水から冷温水に変更され、種別に係る属性データには、「サイズ変更50A」といった内容が付加されている。さらに、新たな属性データとして、保温厚注意といった内容が追加されている。
【0064】
属性データの変更、削除または追加が終了した後、利用者は、次に、携帯端末装置3を操作し、当該属性データの変更、削除または追加を行った部材を、携帯端末装置3のカメラで写真撮影する。例えば、利用者は、図5(1)に示す写真撮影ボタン54をオンにすることで、写真撮影を行うことができる。利用者による操作に従い、携帯端末装置3の撮影部15は、カメラにより写真撮影された当該部材の画像データを生成し、これを携帯端末装置3のメモリに記憶する(ステップS9)。写真撮影の際、携帯端末装置3の表示器には、図4に示すように当該部材を含む画像36が映し出される。
【0065】
次に、利用者は、携帯端末装置3を操作し、当該部材の属性データおよび画像データをメール送信する。例えば、利用者は、図5(1)に示すメール送信ボタン56をオンにした後、図4中のメール送信確認画面37のYESボタン38をオンにすることで、属性データおよび画像データをメール送信することができる。利用者の操作に従い、携帯端末装置3のデータ送信部16は、属性データ変更部14により変更、削除または追加が加えられた属性データと、撮影部15により生成された画像データとを含む施工状態データを、携帯端末装置3の通信回路を介して外部に送信する(ステップS10)。なお、属性データの変更、削除、追加が一切行われなかった場合には、データ送信部16は、デコード部12により復元された属性データと画像データとを含む施工状態データを送信する。施工状態データの送信は、施工状態データを添付した電子メールをメール送信することにより行われる。
【0066】
一方、利用者は、部材の写真撮影を行った後、施工現場において、撮影した部材の画像を確認することもできる。すなわち、利用者は、携帯端末装置3を操作することにより、図4中のサムネイル表示画面39を表示して、撮影した部材のサムネイル画像を見ることができ、また、画像確認画面40を表示して、サムネイル表示画面39に表示された個々のサムネイル画像にそれぞれ対応する画像を見ることができる。さらに、利用者は、撮影した部材の画像に、確認者の氏名、確認日等の情報41を付加することもできる。さらに、このように確認者の氏名、確認日等の情報41を付加した画像データを、対応する属性データと共に施工状態データに含めてメール送信することもできる。また、利用者は、メール送信に係る設定や、メール送信する際の画像データのサイズ等を、携帯端末装置3を操作して適宜設定、変更することができる。
【0067】
携帯端末装置3からメール送信された施工状態データは、移動体通信網およびインターネットを介してパーソナルコンピュータ2に受信され、パーソナルコンピュータ2のメールボックス5に記憶され、蓄積される。
【0068】
図7はデータ反映段階におけるCAD装置4の動作を示している。これより、図2および図7を参照しながら、データ反映段階におけるCAD装置4の動作等について説明する。
【0069】
データ反映段階において、利用者は、施工現場で変更、削除または追加された属性データ(実際上の属性データ)に、データ生成段階においてCAD装置4により生成され、パーソナルコンピュータ2のメモリに記憶されている属性データ(設計上の属性データ)を一致させると共に、施工現場で写真撮影したことにより得られた部材の画像データを設計上の属性データに付加する作業を行う。具体的には、利用者は、パーソナルコンピュータ2のキーボード、マウス等を操作し、パーソナルコンピュータ2のメールボックス5に蓄積された施工状態データのうち、当該作業に必要な施工状態データを選択し、当該選択した施工状態データをCAD装置4にインポートする(ステップS11)。
【0070】
このような利用者の操作に従い、CAD装置4のデータインポート部9は、利用者により選択された施工状態データをメールボックス5から読み出し、当該施工状態データに含まれる属性データ(実際上の属性データ)と一致するように、パーソナルコンピュータ2のメモリに記憶された上記設計上の属性データを変更する。さらに、データインポート部9は、当該施工状態データに含まれる画像データを当該設計上の属性データに付加する。例えば当該画像データと当該設計上の属性データと間にリンクを形成し、当該画像データをパーソナルコンピュータ2のメモリ中の所定の領域に記憶する(ステップS12)。
【0071】
施工状態データがCAD装置4にインポートされた後は、図7に示すように、CAD装置4のCAD部7により表示される画面21において、部材オブジェクトウィンドウ22中の属性データ61の内容が、施工現場において変更、削除または追加された内容となり、さらに、部材オブジェクトウィンドウ22中に、施工現場において写真撮影することにより得た部材の画像62が表示されるようになる。
【0072】
図8は施工記録書の一例を示している。これより、図2および図8を参照しながら、記録書生成段階における記録書生成装置6の動作等について説明する。
【0073】
記録書生成段階において、利用者は、パーソナルコンピュータ2のキーボード、マウス等を操作し、パーソナルコンピュータ2のメールボックス5に蓄積された施工状態データのうち、施工記録書(帳票)の生成に必要な施工状態データを選択し、当該選択した施工状態データを記録書生成装置6に入力する(ステップS13)。
【0074】
このような利用者の操作に従い、記録書生成装置6は、利用者により選択された施工状態データをメールボックス5から読み出し、当該読み出した施工状態データを用いて、例えば図8に示すような施工記録書71を生成する(ステップS14)。施工記録書71には、施工現場での変更、削除または追加が反映された属性データ72と、施工現場で写真撮影することにより得た部材の画像73が、所定のレイアウトに従って配置される。記録書生成装置6により生成された施工記録書71は、パーソナルコンピュータ2のメモリに記憶され、プリンタを用いて必要に応じて記録用紙等に印刷することができる。
【0075】
以上説明した通り、本発明の実施形態による施工管理システム1によれば、利用者は、施工現場において、2次元コードを介して部材の設計上の属性データを取得し、この属性データに基づいて、施工状態の確認作業、および施工状態に応じた属性データの修正作業を容易にかつ正確に行うことができる。
【0076】
また、利用者は、施工現場において、携帯端末装置3を用いて属性データの変更、削除または追加を容易にかつ正確に行うことができる。特に、利用者は、属性データの選択可能な選択肢を選択するだけで属性データの変更または追加を行うことができ、これにより、属性データの変更および追加をより一層容易にかつより一層正確に行うことができる。
【0077】
また、利用者は、施工現場において、施工状態に応じて変更、削除、追加した属性データおよび部材の画像データをメール送信することができる。そして、メール送信された属性データをCAD装置4にインポートするだけで、当該属性データの変更、削除、追加をCAD装置4により生成された設計上の属性データに反映することができる。また、メール送信された画像データをCAD装置4にインポートするだけで、当該画像データをCAD装置4により生成された設計上の属性データに付加することができる。したがって、施工現場における施工状態の記録を容易にかつ正確に行うことができる。
【0078】
また、利用者は、実際の施工現場の施工状態、すなわち施工現場における属性データの変更、削除、追加が忠実に反映され、施工現場において施工された部材の画像が掲載された施工記録書を容易に作成することができる。
【0079】
このように、本発明の実施形態による施工管理システム1によれば、施工管理の効率性および信頼性を高めることができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、施工状態データを電子メールに添付する形で携帯端末装置3からパーソナルコンピュータ2へ送信する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、携帯端末装置3が施工状態データをサーバコンピュータにアップロードし、パーソナルコンピュータ2が当該施工状態データをサーバコンピュータからダウンロードする構成としてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、1台のパーソナルコンピュータ2をCAD装置4と記録書生成装置6として機能させる場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。CAD装置4として機能させるパーソナルコンピュータと、記録書作成装置として機能させるパーソナルコンピュータとのそれぞれを設ける構成としてもよい。この場合には、施工状態データを携帯端末装置3から双方のパーソナルコンピュータにそれぞれ送信する構成や、施工状態データを携帯端末装置3から中継のサーバコンピュータに一旦送信し、そして、当該施工状態データをサーバコンピュータから双方のパーソナルコンピュータにそれぞれ送信する構成を採用することができる。
【0082】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う施工管理システムおよび施工管理方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 施工管理システム
2 パーソナルコンピュータ
3 携帯端末装置
4 CAD装置
5 メールボックス(データ蓄積手段)
6 記録書作成装置(施工記録書生成手段)
7 CAD部(属性データ生成手段、属性データ記憶手段)
8 エンコード部(エンコード手段)
9 データインポート部(画像付加手段)
11 コード読取部(コード読取手段)
12 デコード部(デコード手段)
13 属性データ表示部(属性データ表示手段)
14 属性データ変更部(属性データ変更手段、選択肢記憶手段)
15 撮影部(撮影手段)
16 データ送信部(データ送信手段)
25A、25B、25C、61 属性データ
26A、26B、26C、34 2次元コード
53 リスト
71 施工記録書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象の設計を行い、設計に際して前記施工対象を構成する部材の属性データを生成するCAD装置と、無線通信を行う通信回路、文字または画像を表示する表示器、データを入力する入力キーおよび写真撮影を行うカメラを有する携帯端末装置とを備えた施工管理システムであって、
前記CAD装置は、
前記属性データを生成する属性データ生成手段と、
前記属性データ生成手段により生成された属性データを記憶する属性データ記憶手段と、
前記属性データ生成手段により生成された属性データをエンコードすることにより2次元コードを生成するエンコード手段と、
前記携帯端末装置から送信された施工状態データを受け取り、当該受け取った施工状態データに含まれる属性データに基づいて前記属性データ記憶手段に記憶された属性データを必要に応じて変更すると共に、前記施工状態データに含まれる画像データを前記属性データ記憶手段に記憶された属性データに付加する画像付加手段とを備え、
前記携帯端末装置は、
前記エンコード手段により生成された前記2次元コードを前記カメラにより読み取るコード読取手段と、
前記コード読取手段により読み取られた2次元コードをデコードすることにより属性データを復元するデコード手段と、
前記デコード手段により復元された属性データを前記表示器に表示する属性データ表示手段と、
前記デコード手段により復元された属性データを前記入力キーの操作に従って変更または削除し、あるいは前記デコード手段により復元された属性データに新たな属性データを前記入力キーの操作に従って追加する属性データ変更手段と、
前記施工対象を前記カメラで撮影することにより前記施工対象の前記画像データを生成する撮影手段と、
前記デコード手段により復元された属性データまたは前記属性データ変更手段により変更、削除もしくは追加が加えられた属性データと、前記撮影手段により生成された画像データとを含む前記施工状態データを前記通信回路により外部に送信するデータ送信手段とを備えていることを特徴とする施工管理システム。
【請求項2】
前記携帯端末装置は、前記属性データとして選択可能な複数の選択肢にそれぞれ対応する複数の選択肢データを記憶した選択肢記憶手段を備え、
前記属性データ変更手段は、前記選択肢記憶手段に記憶された複数の選択肢データの中から任意の選択肢データを前記入力キーの操作に従って選択することで、前記デコード手段により復元された属性データの変更または前記デコード手段により復元された属性データへの新たな属性データの追加を行うことを特徴とする請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
前記携帯端末装置から送信された施工状態データを受信し、当該受信した施工状態データを蓄積するデータ蓄積手段と、
前記データ蓄積手段により蓄積された複数の施工状態データを用いて前記施工対象に係る施工記録書を生成する施工記録書生成手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
施工対象の設計を行うCAD装置と、無線通信を行う通信回路、文字または画像を表示する表示器、データを入力する入力キーおよび写真撮影を行うカメラを有する携帯端末装置とを用いて施工対象の施工を管理する施工管理方法であって、
前記施工対象の設計を行うに際して前記施工対象を構成する部材の属性データをCAD装置により生成し、当該生成した属性データを前記CAD装置に設けられた属性データ記憶手段に記憶する属性データ生成工程と、
前記属性データ生成工程において生成された属性データを前記CAD装置によりエンコードすることにより2次元コードを生成するエンコード工程と、
前記エンコード工程において生成された2次元コードを前記携帯端末装置のカメラにより読み取るコード読取工程と、
前記コード読取工程において読み取られた2次元コードを前記携帯端末装置でデコードすることにより属性データを復元するデコード工程と、
前記デコード工程において復元された属性データを前記携帯端末装置の表示器に表示する属性データ表示工程と、
前記デコード工程において復元された属性データを前記入力キーの操作に従って前記携帯端末装置により変更または削除し、あるいは前記デコード工程において復元された属性データに新たな属性データを前記入力キーの操作に従って前記携帯端末装置により追加する属性データ変更工程と、
前記施工対象を前記携帯端末装置のカメラで撮影することにより前記施工対象の画像データを生成する撮影工程と、
前記デコード工程において復元された属性データあるいは前記属性データ変更工程において変更、削除または追加が加えられた属性データと、前記撮影工程において生成された画像データとを含む施工状態データを前記通信回路により前記携帯端末装置から外部に送信するデータ送信工程と、
前記データ送信工程において送信された施工状態データを前記CAD装置により受け取り、当該受け取った施工状態データに含まれる属性データに基づいて前記CAD装置の属性データ記憶手段に記憶された属性データを前記CAD装置により必要に応じて変更すると共に、前記施工状態データに含まれる画像データを前記属性データ記憶手段に記憶された属性データに前記CAD装置により付加する画像付加工程とを備えていることを特徴とする施工管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−226525(P2012−226525A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93010(P2011−93010)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】