説明

施工補助具、鉄骨下地材の穿孔方法及び壁パネルの施工方法

【課題】本発明は、鉄骨下地材に対する穿孔作業を良好にする施工補助具を提供する。
【解決手段】施工補助具30は、鉄骨下地材7Aに吸着される磁気固定台(着磁部)31と、着磁部を保持する保持部32と、着磁部31及び/又は保持部32に固定されたゴムチューブ(弾性体)34と、を有し、弾性体34は、電動ドリルドライバ(回転式工具)Dの本体部36に着脱可能であると共に、回転式工具Dの本体部36を鉄骨下地材7Aに向けて付勢する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式工具(例えば、電動ドリルや電動ドリルドライバなど)に装着された回転軸部(例えば、ドリルビット、六角ナットビット又はドライバビットに装着されたドリルねじなど)により鉄骨下地材に孔を開けるために利用される施工補助具、この施工補助具を利用して鉄骨下地材に孔を開ける穿孔方法、この施工補助具を利用して壁パネルを取付金物を介して下地金物に固定させるための壁パネルの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特公昭63−32562号公報がある。この公報に記載された施工補助具は、被切削物としてのアングル材に電動ドリルで穴を開けるためのものであり、電動ドリルを保持するためのブラケットを備えている。このブラケットの一端は、電動ドリルの本体に対しねじによって着脱自在に装着され、ブラケットの他端は、L字状に形成されて、アングル材の裏面に引っ掛けるように押し当てられる。このような施工補助具にあっては、ブラケットの先端とドリル刃との間でアングル材を挟み込むようにした状態で、電動ドリルをONにし、レバーを引きながらドリル刃でアングル材に孔を開けることができる。このような施工補助具にあっては、レバー操作によって、ドリル刃を自由に進退させることができるので、狭い場所、高い場所、低い場所などでアングル材に穿孔作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−32562号公報
【特許文献2】実開平5−44407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の施工補助具では、作業者は、一方の手で電動ドリルのハンドルを握り、他方の手で施工補助具のレバーを握りながら穿孔作業を行わなければならず、電動ドリルを支えるような力と、アングル材にドリル刃を垂直に強く押し当てながらレバーを引く力とを、バランスさせながら作業する必要があるので、このことが、穿孔時の作業性を悪くしている。また、建築物の高所で作業を行う場合、脚立上で無理な作業姿勢によって穿孔作業が行われると脚立のバランスを崩し易く、特に、腕を上げて頭上で作業するような場合には脚立のバランスを崩し易く、脚立が不安定になり易く、このことが作業性を悪くする。更には、建築物のスラブ下ぎりぎりの所で作業する場合も作業性が悪い。
【0005】
本発明は、鉄骨下地材(下地金物)に対する穿孔作業を良好にする施工補助具を提供することを目的とする。本発明は、穿孔作業を良好にする施工補助具を利用した鉄骨下地材の穿孔方法を提供することを目的とする。本発明は、穿孔作業を良好にする施工補助具を利用した壁パネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉄骨下地材に回転式工具により孔を開ける際に用いられる施工補助具であって、
鉄骨下地材に吸着される着磁部と、
着磁部を保持する保持部と、
着磁部及び/又は保持部に固定された弾性体と、を有し、
弾性体は、回転式工具の本体部に着脱可能であると共に、回転式工具の本体部を鉄骨下地材に向けて付勢することを特徴とする。
【0007】
この施工補助具の着磁部を鉄骨下地材に吸着させると、鉄骨下地材に保持部が保持された状態になる。そして、弾性体によって、回転式工具の本体部を施工補助具に装着させる。このとき、回転式工具の本体部が鉄骨下地材に向けて付勢される結果として、回転式工具(例えば、電動ドリルや電動ドリルドライバなど)に装着された回転軸部(例えば、ドリルビット、六角ナットビット又はドライバビットに装着されたドリルねじなど)の先端を、弾性体の付勢力によって鉄骨下地材に押し当てられた状態に維持させることができる。従って、作業者は、回転式工具を支えるだけの力で、硬い鉄骨下地材に簡単に孔を開けることができる。このような施工補助具では、穿孔時に回転式工具の本体部を押すような力を弾性体に負担させているので、作業負担が少なくなり、穿孔作業が良好になるといった優れた効果が発揮される。
【0008】
また、着磁部を複数有し、保持部には、回転式工具の回転軸部の通過を可能にする孔部が設けられていると好適である。
このように着磁部を複数にすることで、一個の着磁部が大型化することなく、着磁力のアップを図ることができ、施工補助具の小型化に寄与し、狭い場所での施工が良好になる。さらに、着磁部が1個のみの施工補助具の場合、弾性体の付勢力を、鉄骨下地材に対して垂直方向に作用させ難いので、着磁部を回転させようとする力(ピーリング力)が働いて、着磁部が、鉄骨下地材から外れやすい。また、回転式工具の軸付勢力が、鉄骨下地材に対して垂直でなくなるため、回転式工具が自立安定し難い。着磁部を複数にすることで、これらを解消することができる。
【0009】
また、保持部の両端部には、一対の着磁部が固定され、孔部が設けられている保持部の中間部は、着磁部の間で凹状に陥没していると好適である。
このような構成を採用すると、保持部の孔部を鉄骨下地材に近づけることができるので、回転式工具に取り付けられている部材(例えばビット)を長くする必要がなく、回転式工具のビットが軸ブレを起こし難くなり、鉄骨下地材に孔を精度良く開けることができる。
【0010】
また、弾性体を複数有し、弾性体はゴム体であると好適である。
大きな弾性力をもった1個の弾性体よって、施工補助具に回転式工具を装着させる場合にあっては、大きな力で弾性体を引っ張らなければならず、作業者に大きな負担を強いることになる。これに対し、弾性体が複数個になっていると、それぞれの弾性体を引く力を弱くできるので、回転式工具の本体部に弾性体を装着し易くなり、これによって、作業性が良好になる。
【0011】
また、着磁部は、磁力のON/OFF切替えが可能であると好適である。
ON/OFF切替えは永久磁石の磁力を遮断するものでも良いし、電磁石でも良く、ワンタッチで、施工補助具を鉄骨下地材に着けたり外したりすることができる。
【0012】
また、保持部が非磁性体で形成されていると好適である。
このような構成を採用すると、着磁部の磁力が保持部に逃げてしまうことを防止でき、着磁部の吸着力の低減防止を図ることができる。
【0013】
また、保持部と着磁部との間に、非磁性体が介装されていると好適である。
このような構成を採用すると、着磁部の磁力が保持部に逃げることを防止でき、着磁部の吸着力の低減防止を図ることができる。
【0014】
また、保持部の幅は、鉄骨下地材の幅と略同じであると好適である。
このような構成を採用すると、保持部が鉄骨下地材からはみ出すことがなく、鉄骨下地材以外の部材に保持部が当たることが無いので、狭い場所での施工が良好になる。
【0015】
本発明は、請求項1記載の施工補助具により、鉄骨下地材に孔を開ける穿孔方法であって、
鉄骨下地材に施工補助具の着磁部を吸着させる工程と、
回転式工具の本体部に施工補助具の弾性体を装着して、回転式工具の本体部を鉄骨下地材に向けて付勢し、回転式工具の回転軸部を鉄骨下地材に押し当てる工程と、
回転軸部を回転させて鉄骨下地材に孔を開ける工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この鉄骨下地材の穿孔方法において、施工補助具の着磁部を鉄骨下地材に吸着させると、鉄骨下地材に保持部が保持された状態になる。そして、弾性体によって、回転式工具の本体部を施工補助具に装着させる。このとき、回転式工具の本体部が鉄骨下地材に向けて付勢される結果として、回転式工具(例えば、電動ドリルや電動ドリルドライバなど)に装着された回転軸部(例えば、ドリルビット、六角ナットビット又はドライバビットに装着されたドリルねじなど)の先端を、弾性体の付勢力によって鉄骨下地材に押し当てられた状態に維持させることができる。従って、作業者は、回転式工具を支えるだけの力で、鉄骨下地材に孔を開けることができる。このような施工補助具では、穿孔時に回転式工具の本体部を押すような力を弾性体に負担させているので、作業負担が少なくなり、穿孔作業が良好になるといった優れた効果が発揮される。
【0017】
本発明は、請求項1記載の施工補助具により、取付金物を介して下地金物に壁パネルを固定させるための壁パネルの施工方法において、
下地金物に施工補助具の着磁部を吸着させる工程と、
回転式工具に装着されたドリルねじを、取付金物に押し当てる工程、または、取付金物に設けられた挿通孔に挿入させて、ドリルねじの先端を下地金物に押し当てる工程と、
回転式工具の本体部に施工補助具の弾性体を装着して、回転式工具の本体部を下地金物に向けて付勢する工程と、
ドリルねじを回転させて下地金物及び壁パネルにドリルねじをねじ込み、取付金物と下地金物と壁パネルとをドリルねじで連結させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉄骨下地材(下地金物)に対する穿孔作業を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ALCパネルが下地金物に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】ALCパネルの上部及び下部における取付け構造を示す断面図である。
【図3】ALCパネルに稲妻プレートを組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図4】ALCパネルに稲妻プレートを組み付けた後の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る施工補助具を示す斜視図である。
【図6】施工補助具に電動工具が装着された状態を示す断面図である。
【図7】下地金物に施工補助具が装着された状態を示す斜視図である。
【図8】施工補助具に電動工具が装着された状態を示す斜視図である。
【図9】施工補助具の変形例を示す斜視図である。
【図10】施工補助具の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る施工補助具、鉄骨下地材の穿孔方法及び壁パネルの施工方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1及び図2に示すように、壁パネルに相当する軽量気泡コンクリート(Autoclaved Light-weight Concrete)パネル(以下、「ALCパネル」という)1は、鉄筋コンクリート(Reinforced-Concrete)造の構造躯体3の所定位置に順次建て込まれ、専用の稲妻プレート19A,19B及び六角頭ドリルねじ25を介して上下に配置された下地金物7A,7Bに取り付けられている。なお、この下地金物7A,7Bは、「鉄骨下地材」の一例として以下説明し、稲妻プレート19A,19Bは、「取付金物」の一例として以下説明する。
【0022】
下地金物7A,7Bは、構造躯体3に形成された開口の床側の下部及び天井側の上部に沿って配置されており、構造躯体3に埋め込まれた鋼材に溶接されるなどして固定されている。下地金物7A,7Bは略L字形鋼材からなり、構造躯体3に当接する水平辺7aと、水平辺7aから立設された垂直辺7bとを有する。
【0023】
まず、下側の下地金物7AへのALCパネル1の取付け構造について説明する。図2に示されるように、下地金物7Aの水平辺7a上には、ロッキングスペーサ11を介してALCパネル1が載置されており、垂直辺7bはALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面23に当接している。
【0024】
ALCパネル1には、リング状の頭部13aを有するボルト13が固定されており、ボルト13の軸部13bがALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面23から突き出している。そして、ボルト13の軸部13bに組み付けられる稲妻プレート19Aは、軸部13bが通されてALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面P2に当接している。なお、ボルト13は、ALCパネル1に形成された穴6内に頭部13a側が挿入され、差込み穴8内に頭部13aを交差するように挿入された鋼棒15によって抜けないように固定されている(図3参照)。
【0025】
稲妻プレート19Aは、略矩形で平板状の鋼材のプレス加工により成形され、中央部分に段差19aが形成されるような加工が施されている。段差19aを挟んで一方側がALCパネル1にボルト止めされるパネル取付部19bであり、他方側がALCパネル1とで下地金物7Aを挟持する挟持部19cである。
【0026】
パネル取付部19bには、ボルト13の軸部13bが挿通する長孔19dが形成されている。パネル取付部19bから突き出た軸部13bにはナット21が螺合し、ナット21の締め付けによって、稲妻プレート19AがALCパネル1側に押圧されて固定される。挟持部19cには、ドリルねじ25が貫通する挿通孔19eが形成されている。さらに、挟持部19cの端部には、作業性を高めるために角が落とされた隅切り部19fが形成されている。
【0027】
図4に示されるように、ドリルねじ25は、下地金物7A及びALCパネル1に穿孔を形成するためのドリル部25aと、下地金物7Aにタップ加工を施すための雄ねじが形成されたねじ部25bと、ねじ部25bの基端側で挟持部19cに当接する六角頭部25cとからなる。
【0028】
なお、このドリルねじ25は、「回転軸部」の一例であり、電動ドリルドライバDに取り付けられている六角ナットビット35の先端に装着されて利用される。また、下地金物7Bに取り付けられる稲妻プレート19Bは、前述した稲妻プレート19Aと同一の構成であるので、同一の符号を付してその説明は、省略する。
【0029】
次に、施工補助具30について説明する。
【0030】
図5及び図6に示すように、この施工補助具30は、被切削物としての下地金物7A及びALCパネル1にドリルねじ25をねじ込むために利用される電動ドリルドライバ(回転式工具)Dを補助するためのものである。この施工補助具30は、下地金物(鉄骨下地材)7Aに吸着される着磁部31を備え、この着磁部31は、磁力のONとOFFとの切り替えが可能な永久磁石型磁気固定台であり、ボックス型をなしている。なお、ON/OFF切替えは永久磁石の磁力を遮断するものでも良いし、電磁石でも良い。
【0031】
このような構成の着磁部31を利用することで、ワンタッチで、施工補助具30を下地金物7Aに着けたり外したりすることができる。また、着磁部31を2個採用することで、一個の着磁部が大型化することなく、着磁力のアップを図ることができ、施工補助具30の小型化に寄与し、狭い場所での施工が良好になる。
【0032】
磁気固定台31は、保持部32の両端部にそれぞれ固定されており、この保持部32は、アルミなどの非磁性体からなる板材をプレス成形することで中間部32aが凹状に陥没している。台形状に陥没した中間部32aより外側には、磁気固定台31を当接させるための平坦部32bが設けられている。そして、保持部32の中間部32aの中央には、ドリルねじ25及び角ナットビット35の先端の通過を可能にする円形の孔部32cが形成されている。
【0033】
このような構成を採用すると、保持部32の孔部32cを下地金物7Aに近づけることができるので、電動ドリルドライバDの六角ナットビット35やドリルねじ25を長くする必要がなく、電動ドリルドライバDの六角ナットビット35やドリルねじ25が軸ブレを起こし難くなり、下地金物7Aに孔を精度良く開けることができる。かつ、六角ナットビット35やドリルねじ25を保持部32の孔部32cに挿通する/抜き取るストロークが短くなるので、作業性が向上する。そして、保持部32の幅は、下地金物7Aの垂直辺7bの幅と略同じであると、保持部32が下地金物7Aからはみ出すことがなく、下地金物7A以外の部材に保持部32が当たることが無いので、狭い場所での施工が良好になる。
【0034】
また、保持部32を非磁性体で形成することにより、着磁部31の磁力が保持部32に逃げることを防止でき、着磁部31の吸着力の低減防止を図ることができる。なお、保持部32と着磁部31との間にゴムなどの非磁性体を介装させてもよい。
【0035】
平坦部32bに磁気固定台31を当接させた状態で、アイボルト33のねじ部33aを磁気固定台31の雌ネジ部に螺合させることによって、保持部32に磁気固定台31が固定されている。施工補助具30の一端側に配置されたアイボルト33のリング部33bには、ゴムチューブ(弾性体)34の一端が紐39で縛られて固定され、施工補助具30の他端側に配置されたアイボルト33のリング部33bには、ゴムチューブ(弾性体)34の他端が紐39で縛られて固定されている。この施工補助具30では、3本のゴムチューブ34が利用されている。
【0036】
紐39を利用して、ゴムチューブ34をアイボルト33のリング部33bに固定させているので、ゴムチューブ34が切れた場合でも新たなゴムチューブ34に現場で容易に交換することができ、作業現場でのメンテナンス性を良好にしている。
【0037】
3本のゴムチューブ34は、電動ドリルドライバDの本体部36の後端に引っ掛けるように引き伸ばされ、20〜30kgfの力を本体部36に与えている。ゴムチューブ34が複数本(3本)利用される理由として、1本のゴムチューブで20〜30kgfの力を本体部36に与えようとすると、20〜30kgfの力でゴムチューブを引っ張らなければならず、作業者に大きな負担を強いることになる。これに対し、ゴムチューブ34が3本になっていると、それぞれのゴムチューブ34を引く力を7〜10kgf程度に弱くできるので、電動ドリルドライバDの本体部36にゴムチューブ34を装着し易くなり、これによって、作業性が良好になる。
【0038】
各ゴムチューブ34は、電動ドリルドライバDの本体部36に対して着脱可能であると共に、電動ドリルドライバDの本体部36を下地金物7Aに向けて付勢することができる。穴開け作業中において、電動ドリルドライバDの本体部36が反力を受けることで回転しようとするが、3本のゴムチューブ34は、電動ドリルドライバDの本体部36の後端に引っ掛けた状態にしているので、電動ドリルドライバDの本体部36の回転ねじり抵抗を生み出し、作業者が電動ドリルドライバDの本体部36を軽く支えておくだけで、ゴムチューブ34が本体部36から外れることがない。
【0039】
前述した施工補助具30を利用すると、作業者は、電動ドリルドライバDを支えるだけの力であっても、硬い下地金物(鉄骨下地材)7Aに簡単に孔を開けることができる。さらには、穿孔時に電動ドリルドライバDの本体部36を押すような力をゴムチューブ(弾性体)34に負担させているので、作業負担が少なくなり、穿孔作業が良好になるといった優れた効果が発揮される。
【0040】
さらに、着磁部31が1個のみの施工補助具の場合、ゴムチューブ(弾性体)の付勢力を、下地金物7Aに対して垂直方向に作用させ難いので、着磁部31を回転させようとする力(ピーリング力)が働いて、着磁部31が、下地金物7Aから外れやすい。また、電動ドリルドライバDに装着されたドリルねじ25への付勢力が、下地金物7Aに対して垂直でなくなるため、電動ドリルドライバDが自立安定し難い。これに対し、本発明のように、着磁部31を複数(例えば2個)並設させることで、これらを解消することができる。
【0041】
このような施工補助具30による下地金物(鉄骨下地材)7Aの穿孔方法について説明する。
【0042】
図7に示すように、施工補助具30における保持部32の孔部32cの中心に稲妻プレート19Aの挿通孔19eが位置するように、磁気固定台31の間に稲妻プレート19Aを配置させ、磁気固定台31のスイッチ38をONにする。これにより、磁気固定台31が下地金物7Aの垂直辺7bに磁気吸着される。
【0043】
そして、ドリルねじ25を、電動ドリルドライバDの六角ナットビット35の先端に装着した状態で、ドリルねじ25を保持部32の孔部32cに挿通させた後、稲妻プレート19Aの挿通孔19eにドリルねじ25の先端を差し込むようにして、ドリルねじ25の先端を下地金物7Aに押し当てる。その後、3本のゴムチューブ34を一本ずつ引っ張りながら、電動ドリルドライバDの本体部36の後端に各ゴムチューブ34を引っ掛ける(図8参照)。この状態では、ゴムチューブ34により動ドリルドライバDの本体部36が下地金物7Aに向けて付勢され、ドリルねじ25の先端が下地金物7Aに強く押し当てられる。
【0044】
そして、作業者が電動ドリルドライバDの本体部36を握って、この状態を維持しながら、電動ドリルドライバDのスイッチをONにする。すると、ドリルねじ25のドリル部25aで下地金物7A及びALCパネル1に孔を開けながら、ドリルねじ25のねじ部25bで下地金物7A及びALCパネル1にねじ切りが行われる。このようなドリルねじ25によるねじ込みにより、稲妻プレート19Aと下地金物7AとALCパネル1とがドリルねじ25で連結され、ALCパネル1が稲妻プレート19Aを介して下地金物7Aにしっかり固定される。
【0045】
ねじ締め作業完了後、電動ドリルドライバDのスイッチをOFFにし、磁気固定台31のスイッチ38をOFFにして、磁気固定台31を下地金物7Aから取り外す。
【0046】
本発明に係る施工補助具の他の変形例として、図9に示すように、施工補助具40のアイボルト33のリング部33bには、各ゴムチューブ(弾性体)41の一端が紐39で縛られて固定され、ゴムチューブ41の他端にはリング部42が固定されている。このリング部42は、電動ドリルドライバDの本体部36に設けられたフック部43に引っ掛けられる。このようにすることで、ゴムチューブ41が電動ドリルドライバDから外れ難くなる。
【0047】
本発明に係る施工補助具のさらに他の変形例として、図10に示すように、施工補助具50のアイボルト33のリング部33bには、各ゴムチューブ(弾性体)51の一端に固定された金属製のフック部52が引っ掛けられ、ゴムチューブ51の他端は、電動ドリルドライバDの本体部36に設けられた掛け止め部52に固定されている。このようにすることで、ゴムチューブ51が電動ドリルドライバDから外れ難くなる。
【0048】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0049】
例えば、「回転式工具」として、例えば、電動ドリル、電動ドリルドライバ、手動ドリル等があり、「回転軸部」として、例えば、ドリルビット、六角ナットビット又はドライバビットに装着されたドリルねじ等がある。また、「非磁性体」として、アルミ、銅、マンガン、真鍮、ステンレス、鉛、木、竹、ゴム、プラスチックなどがある。「弾性体」は、ゴムチューブ、ゴムバンド、バネなどであり、本数は、限定されない。また、ゴムチューブ(弾性体)34は、磁気固定台(着磁部)31に固定されても保持部32に固定されても、その両方に固定されてもよい。
【0050】
また、稲妻プレート(取付金物)19A,19Bに挿通孔19eが無い場合もある。この場合には、ドリルねじ25の先端が稲妻プレート19A,19Bに押し当てられ、稲妻プレート19A,19Bもドリルねじ25によって穿孔される。
【符号の説明】
【0051】
1…ALCパネル(壁パネル)、7A,7B…下地金物(鉄骨下地材)、19A,19B…稲妻プレート(取付金物)、19e…挿通孔、25…ドリルねじ(回転軸部)、30,40,50…施工補助具、31…磁気固定台(着磁部)、32…保持部、32c…孔部、34…ゴムチューブ(弾性体)、36…本体部、D…電動ドリルドライバ(回転式工具)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨下地材に回転式工具により孔を開ける際に用いられる施工補助具であって、
前記鉄骨下地材に吸着される着磁部と、
前記着磁部を保持する保持部と、
前記着磁部及び/又は前記保持部に固定された弾性体と、を有し、
前記弾性体は、前記回転式工具の本体部に着脱可能であると共に、前記回転式工具の前記本体部を前記鉄骨下地材に向けて付勢することを特徴とする施工補助具。
【請求項2】
前記着磁部を複数有し、前記保持部には、前記回転式工具の回転軸部の通過を可能にする孔部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の施工補助具。
【請求項3】
前記保持部の両端部には、一対の前記着磁部が固定され、前記孔部が設けられている前記保持部の中間部は、前記着磁部の間で凹状に陥没していることを特徴とする請求項2記載の施工補助具。
【請求項4】
前記弾性体を複数有し、前記弾性体はゴム体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の施工補助具。
【請求項5】
前記着磁部は、磁力のON/OFF切替えが可能であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の施工補助具。
【請求項6】
前記保持部が非磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の施工補助具。
【請求項7】
前記保持部と前記着磁部との間に、非磁性体が介装されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の施工補助具。
【請求項8】
前記保持部の幅は、前記鉄骨下地材の幅と略同じであることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の施工補助具。
【請求項9】
請求項1記載の施工補助具により、鉄骨下地材に孔を開ける穿孔方法であって、
前記鉄骨下地材に前記施工補助具の前記着磁部を吸着させる工程と、
前記回転式工具の前記本体部に前記施工補助具の前記弾性体を装着して、前記回転式工具の前記本体部を前記鉄骨下地材に向けて付勢し、前記回転式工具の回転軸部を前記鉄骨下地材に押し当てる工程と、
前記回転軸部を回転させて前記鉄骨下地材に前記孔を開ける工程と、を備えたことを特徴とする鉄骨下地材の穿孔方法。
【請求項10】
請求項1記載の施工補助具により、取付金物を介して下地金物に壁パネルを固定させるための壁パネルの施工方法において、
前記下地金物に前記施工補助具の前記着磁部を吸着させる工程と、
前記回転式工具に装着されたドリルねじを、前記取付金物に押し当てる工程、または、前記取付金物に設けられた挿通孔に挿入させて、前記ドリルねじの先端を前記下地金物に押し当てる工程と、
前記回転式工具の前記本体部に前記施工補助具の前記弾性体を装着して、前記回転式工具の前記本体部を前記下地金物に向けて付勢する工程と、
前記ドリルねじを回転させて前記下地金物及び前記壁パネルに前記ドリルねじをねじ込み、前記取付金物と前記下地金物と前記壁パネルとを前記ドリルねじで連結させる工程と、を備えたことを特徴とする壁パネルの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−6992(P2011−6992A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153877(P2009−153877)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】