説明

施肥装置付き苗植機

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は、肥料を繰り出す施肥装置を機体後部の苗植装置に対して機体前方側に配置した施肥装置付き苗植機に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、肥料を繰り出す施肥装置を機体後部の苗植装置に対して機体前方側に配置した施肥装置付き苗植機においては、圃場への苗植付箇所が苗植装置の伝動ケースの前端部より機体後方で、圃場への施肥箇所が苗植装置の伝動ケースの前端部より機体前方に配置した構成としていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記構成の従来のものは、施肥箇所が苗植付箇所から機体前方に離れて配置されているため、そのぶん作業走行開始時において近傍に施肥されていない苗植付区間が長く発生する問題がある。
そこで、施肥箇所をその後方の苗植付箇所に近づけて配置するために、施肥装置から繰り出される肥料を施肥箇所に移送するホースを苗植装置の伝動ケースの下方を通して、施肥箇所が伝動ケースの前端部より機体後方に配置されるように設けると、肥料を移送するホースは、伝動ケースの下方において側面視水平状になり、そこでの肥料詰まりが生じやすくなる問題がある。
そこで、この発明は、肥料を繰り出す施肥装置を機体後部の苗植装置に対して機体前方側に配置した施肥装置付き苗植機にあって、作業走行開始時において近傍に施肥されていない苗植付区間をできるだけ短くしつつ、肥料を移送するホースに水平状になる部分ができるだけ生じないようにして肥料詰まりを生じにくくすることを課題とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明は、上記課題を解決するために、下部側に配置された伝動ケース9内の動力により駆動されて該伝動ケース9の後部で圃場に苗を植付けるよう作動する苗植杆10を左右に複数設けた苗植装置2を機体後部に装着し、肥料を繰り出す施肥装置35を前記苗植装置2に対して機体前方側に配置した施肥装置付き苗植機において、前記伝動ケース9内に入力された動力を、左右に複数設けた苗植杆10のそれぞれに対して左右方向に伝動する伝動ケース部12,13を前後方向視で門型状に形成し、該門型状の上辺部に位置する伝動ケース部12の下方を、施肥装置35から繰り出される肥料を施肥箇所に移送するホース37が前後に通過するよう設けて、施肥箇所を伝動ケース9の前端部より機体後方に配置したことを特徴とする施肥装置付き苗植機としたものである。
〔発明の作用及び効果〕
この発明の施肥装置付き苗植機は、上記構成としたものであるから、肥料を繰り出す施肥装置35を機体後部の苗植装置2に対して機体前方側に配置した施肥装置付き苗植機にあって、施肥箇所を伝動ケース9の前端部より機体後方に配置するので、施肥箇所が苗植付箇所に機体前後方向においてできだけ近づけて配置できて、作業走行開始時において苗植付箇所近傍に施肥されていない区間が生じるのをできるだけ短でき、しかも、門型状の上辺部に位置する伝動ケース部12の下方を、肥料を施肥箇所に移送するホース37が前後に通過するよう設けるので、伝動ケース部12の下方においてホース37はできるだけ後下り傾斜状態で配置でき、よって、そのぶん肥料詰まりが生じにくくなる。
〔実施例〕
つぎに、この発明の実施例を説明する。
第1図のように、走行車体1の後部に苗植装置2がリンク3で連結されて乗用の苗植機が構成されている。走行車体1は、中央部のエンジン4で駆動されるそれぞれ一対の前輪5と後輪6を備え、その前輪5がステアリングホイル7で操舵されるように出来ている。
苗植装置2は、前倒れに傾いた苗載台8と、その下部の前方から下を通って後方に伸びる伝動ケース9と、苗載台8の下部の後方に設けられて苗載台8上の苗を取出して地面に移植する苗植杆10と、伝動ケース9の下方に釣り下がるように設けられて泥面を滑走するフロート11で構成されている。
伝動ケース9は、苗載台8の下部の前方に位置する横長の第1ケース12と、この第1ケース12の両横から斜前下に伸びる一対の第2ケース13と、それぞれの第2ケース13の下端から苗載台8の下を通って後に伸びる一対の第3ケース14で構成されている。
第3図のように、一対の伝動軸15が第2ケース13と第3ケース14に横に支架され、前から見て右の伝動軸15に固定され傘歯車16に入力軸17の傘歯車18が噛み合っている。中央部がリードカム19となったカム軸20が伝動軸15に平行に第1ケース12内に設けられ、両側に歯数が若干異なった3枚の歯車21が固定されている。それぞれの伝動軸15に2段の変速歯車22が軸方向にのみ移動し得るようにスプラインで取付けられている。なお、歯車21と変速歯車22は、歯数がごくわずかに異なる転位歯車で構成され、変速歯車22の移動で、その2段のうちの右のものが歯車21の右端のものと中央のものとに選択的に噛み合い、左のものが歯車21の中央のものと左端のものとに選択的に噛み合って、合計で4段の変速ができるようになっている。この実施例では、エンジン4の回転が走行車体1の歯車箱から第1軸38および第2軸39を介して入力軸17に伝わったのち、右の伝動軸15から上記の変速歯車22および歯車21を経てカム軸20に伝わる。そして、上記の変速で、リードカム19の回転数を変えるが、左の伝動軸15に対しては、左の歯車21および変速歯車22で逆の増減速を行って右の伝動軸15に回転数を揃えるようにしている。なお、入力軸17の位置或は歯車群は種々に組み合すことが出来、リードカム19を伝動ケース9外に設けることも出来る。
移動棒23が第1ケース12に左右に移動するように設けられ、これに固定された杆24の端が前記のリードカム19に係合し、カム軸19が回転すると、移動棒23が左右に往復するように出来ている。
両端のクランク25を外に突出させてクランク軸26が第1ケース12に支持され、これに固定された歯車27が前記の歯車21の1つに噛み合い、クランク25を常に回転させるようになっている。
一対の軸28がそれぞれの第3ケース14の後端部に支架され、これらに固定されたスプロケット29と伝動軸15に固定されたスプロケット30とにチエン31が巻き掛けられている。それぞれの軸28の両端に回転ケース32の中央が固定され、この回転ケース32の両端に前記の苗植杆10が取付けられている。なお、回転ケース32の内は、ロータリ植付機構として周知のため、構造を省略するが、この回転ケース32が軸28で回されると、それぞれの苗植杆10が同じような姿勢で旋回し、苗載台8上の苗を取出して泥面に押し込むように出来ている。
第1図のように、苗載台8の下端部には、取出口を有する苗受板33が第3ケース14に固定されるようにして設けられ、苗載台8は、一対のアーム34で移動棒23に接続されてこの苗受板33上で左右に移動する。苗載台8の底面の一部は、ベルト40で構成され、苗載台8が上記の移動で横端に達すると、レバー(図示しない)がクランク25に当って回動し、このベルト40を旋回させるように出来ている。
施肥装置35が走行車体1の後部の支柱36上に設けられ、これから綴り出された肥料は、ホース37でフロート11の作溝器38に導かれるように出来ている。図の苗植機は、4条植で、4本のホース37が用いられている。そして、これらのホース37の外の2本は、それぞれの第3ケース14の外側に配置され、内の2本は、第3図のように、第1ケース12と第2ケース13が形成する門形の空間部内に配置されている。
なお、苗植杆10が掻き取る苗の量を調節するため、苗受板33を苗載台8に沿わせて上下させるが、この苗受板33を移動させるレバーを上記の空間部を通して上に延長させることも出来る。また、苗の植付深さを調節するため、フロート11の後端部を伝動ケース9に対して上下に移動させるが、この移動用のレバーも、前記のレバーと同様に上記の空間部に設けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明を施した苗植機の一部を切除した側面図、第2図はその一部の拡大した平面図、第3図はその展開した伝動機構図である。
なお、図中の符号は、つぎの通りである。
1……走行車体、8……苗載台
9……伝動ケース、10……苗植杆
12……第1ケース、13……第2ケース
14……第3ケース、35……施肥装置
37……ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】下部側に配置された伝動ケース9内の動力により駆動されて該伝動ケース9の後部で圃場に苗を植付けるよう作動する苗植杆10を左右に複数設けた苗植装置2を機体後部に装着し、肥料を繰り出す施肥装置35を前記苗植装置2に対して機体前方側に配置した施肥装置付き苗植機において、前記伝動ケース9内に入力された動力を、左右に複数設けた苗植杆10のそれぞれに対して左右方向に伝動する伝動ケース部12,13を前後方向視で門型状に形成し、該門型状の上辺部に位置する伝動ケース部12の下方を、施肥装置35から繰り出される肥料を施肥箇所に移送するホース37が前後に通過するよう設けて、施肥箇所を伝動ケース9の前端部より機体後方に配置したことを特徴とする施肥装置付き苗植機。

【第2図】
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【第1図】
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【第3図】
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【特許番号】特許第3106482号(P3106482)
【登録日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【発行日】平成12年11月6日(2000.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−180329
【出願日】平成2年7月6日(1990.7.6)
【公開番号】特開平4−66010
【公開日】平成4年3月2日(1992.3.2)
【審査請求日】平成9年7月4日(1997.7.4)
【出願人】(999999999)井関農機株式会社
【参考文献】
【文献】実開 昭63−174623(JP,U)
【文献】実開 昭59−179521(JP,U)
【文献】実開 昭58−16011(JP,U)
【文献】実開 昭60−57921(JP,U)