説明

施肥装置

【課題】ホッパ内の肥料の排出及び清掃の効率化が可能な施肥装置を提供する。
【解決手段】ホッパ内の肥料を所定量ずつ圃場に放出する施肥装置100において、前記ホッパを左右に配置し、該左右のホッパ133・143をそれぞれ左右上下方向に回動可能に枢支し、所定の大きさ以下の肥料のみを通過させる選別網230・230を前記左右のホッパ内に設け、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動した際、前記左右のホッパ内のそれぞれの選別網230・230が左右のホッパ内で離間し隙間が形成されるように、前記左右の選別網を回動可能に枢支し、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動することによって左右のホッパ内の肥料を排出可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥装置のホッパ内の肥料の排出及び清掃の効率化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用田植機等の作業機械に具備され、圃場に施肥する施肥装置において、前記施肥装置のホッパ内に目の粗い網体を水平に嵌着する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。このように構成すると、湿気を吸収して固まった肥料塊が繰出機構に流下するのを阻止するとともに、ブリッジ現象によって肥料の流下が妨げられるのも防止することができる。
【0003】
しかしながら、前記ホッパ内には前記網体が嵌着されており、また、前記ホッパは繰出機構の上部に上向きに開口部を設けて取り付けられているので、施肥作業終了後、作業者が施肥装置のホッパ内に残った肥料の排出及び清掃を行うことは困難である。
【0004】
そこで、前記施肥装置を作業姿勢とメンテナンス姿勢とに切り換え可能に構成する技術が公知となっている(例えば、特許文献2参照)。このように構成すると、メンテナンス姿勢に切り換えることによって、ホッパ内に収容された肥料を容易に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3585447号公報
【特許文献2】特開2006−101783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記施肥装置のホッパ内に前記網体が嵌着された構造の場合、その網体により排出が阻害されて肥料が少し残り、すべての肥料を排出するには網体を取り外す必要があり、排出作業に手間がかかっていた。そこで、本発明は、ホッパ内の肥料の排出及び清掃の効率化を図ることが可能な施肥装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ホッパ内の肥料を所定量ずつ圃場に放出する施肥装置において、前記ホッパを左右に配置し、該左右のホッパをそれぞれ左右上下方向に回動可能に枢支し、所定の大きさ以下の肥料のみを通過させる選別網を前記左右のホッパ内に設け、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動した際、前記左右のホッパ内のそれぞれの選別網が左右のホッパ内で離間し隙間が形成されるように、前記左右の選別網を回動可能に枢支し、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動することによって左右のホッパ内の肥料を排出可能に構成したものである。
【0009】
請求項2においては、前記左右のホッパ内の選別網をそれぞれ左右のホッパに対して着脱可能に構成したものである。
【0010】
請求項3においては、前記左右のホッパ内に前記左右の選別網の回動範囲を設定する規制部材を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
本発明によれば、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動した際に形成される選別網とホッパとの隙間から、ホッパ内の選別網を通過した肥料をスムースに排出することができるので、左右ホッパ内の肥料の排出及び清掃の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】施肥装置を具備する乗用田植機を示す側面図。
【図2】施肥装置を示す背面図。
【図3】同じく背面斜視図。
【図4】同じく側面断面図。
【図5】同じく平面一部断面図。
【図6】選別網の回動態様を示す背面一部断面図。
【図7】施肥装置の選別網の回動態様を示す背面一部断面図。
【図8】施肥装置の選別網の回動態様を示す背面一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、施肥装置の実施の一形態である施肥装置100を具備する四条用の乗用田植機1(以下、単に「田植機1」と記す)について説明する。なお、以下では説明上、図中の矢印Aの方向を「前方」と定義し、この前方に向かって左右及び後方を決定する。
【0015】
図1に示すように、田植機1は、主に走行装置10、昇降装置30、植付装置40、施肥装置100等を備えている。
【0016】
田植機1の走行装置10は、主に車体フレーム11、前輪12・12、後輪13・13、エンジン14、ボンネット15、車体カバー16、ダッシュボード17、操向ハンドル18、運転席19、支柱フレーム20等を備えている。
【0017】
田植機1の骨格を成す車体フレーム11は、車体フレーム11両側の前部を前輪12・12、後部を後輪13・13によって支持されている。車体フレーム11の前部には、エンジン14が搭載されており、エンジン14を覆うようにボンネット15が配設されている。
【0018】
ボンネット15の両側及びその後方には、車体フレーム11の上面を覆うように車体カバー16が配置されている。車体カバー16は、前低後高の略階段状に形成され、車体カバー16の前部を、作業者が田植機1に乗り込む際のステップとしている。
【0019】
ボンネット15の後部には、田植機1を操作するレバーやスイッチ等の操作装置を備えるダッシュボード17が配置されている。また、田植機1を操向するための操向ハンドル18は、ボンネット15の上方に突出するよう配設されている。操向ハンドル18の後方、車体フレーム11の前後略中央上部には、作業者が着座するための運転席19が配置されている。
【0020】
車体フレーム11の後部両側には左右一対の支柱フレーム20が立設され、該支柱フレーム20の上部に図示しない横梁フレームが横設されている。該支柱フレーム20と横梁フレーム上に後述する施肥フレーム110が固設されている。
【0021】
そして、走行装置10の後方には、昇降装置30が配置されており、田植機1は昇降装置30によって、後述する植付装置40を昇降自在に連結している。
【0022】
植付装置40は、圃場に苗を植え付けるものであり、主に苗載台41、植付部42(ロータリケース44、植付爪45)、フロート43等を備えている。
【0023】
苗載台41は、車体フレーム11の後方に、前高後低に傾斜するように配設され、その苗載台41後方下部に植付部42が配置されている。植付部42は、エンジン14からの駆動力で回転するロータリケース44、ロータリケース44に取付けられ苗を圃場に植付ける植付爪45等を備えている。
【0024】
フロート43は、植付装置40を支えて圃場を整地するものであって、苗載台41の下方に配置されている。
【0025】
このようにして、田植機1は、前進走行とともに苗載台41を横送り機構により左右に往復運動(摺動)させ、この往復運動に同期させてロータリケース44と植付爪45を駆動して、各条に一株分の苗を掻き取りながら、連続的に植付け作業を行う。
【0026】
以下では、施肥装置100について説明する。なお、本実施形態において、施肥装置100は、田植機1に対応した四条用であるものとして説明するが、当該条数を限定するものではない。
【0027】
施肥装置100は、植付装置40による苗の植え付けに合わせて、圃場に肥料を供給するものである。施肥装置100は、運転席19の後方かつ植付装置40の前方に配置される。図1から図5までに示すように、施肥装置100は、主として施肥フレーム110、第一動力伝達機構120、第一上部施肥機130、第二上部施肥機140、下部施肥機150、第一回動機構160、第二回動機構170、連結機構180、解除機構190等を具備する。
【0028】
図2から図4までに示すように、施肥フレーム110は、施肥装置100の主たる構造体となるものである。施肥フレーム110は、主として支持板111・111、上フレーム112・112、下フレーム113・113、連結フレーム114・114、補助支持板115・115・・・等を具備する。
【0029】
支持板111・111は、左右一対に立設される板状の部材である。支持板111は、互いに所定の間隔をおいて配置される。
【0030】
上フレーム112・112は、矩形断面を有する中空棒状の部材である(図4参照)。上フレーム112・112は、その長手方向が左右方向に略一致するように配置される。上フレーム112・112は、支持板111・111の上側前後部にそれぞれ固設され、支持板111・111を互いに連結する。
【0031】
下フレーム113・113は、円形断面を有する中空棒状の部材である(図4参照)。下フレーム113・113は、その長手方向が左右方向に略一致するように配置される。下フレーム113・113は、支持板111・111の下側前後部にそれぞれ固設され、支持板111・111を互いに連結する。
【0032】
連結フレーム114・114は、板状の部材を背面視略U字状に折曲成形された部材である。連結フレーム114・114は、左右一対に配置され、前後の下フレーム113・113を互いに連結する。これによって、施肥フレーム110の剛性を高めている。
【0033】
補助支持板115・115・・・は、板状の部材である。補助支持板115・115・・・は、支持板111・111の間に、互いに所定間隔をおいて支持板111・111と平行に配置される。
【0034】
図4及び図5に示すように、第一動力伝達機構120は、エンジン14から伝達された動力を、変速して伝達するものである。第一動力伝達機構120は、ブラケット121を介して施肥フレーム110の前部に設けられる。第一動力伝達機構120は、主として第一伝動軸122、変速装置123、第二伝動軸124、クラッチ125等を具備する。
【0035】
第一伝動軸122は、その一端を図示せぬトランスミッションに連動連結されるものである。
【0036】
変速装置123は、伝達される動力を変速するものである。変速装置123は、動力を変速するための歯車や軸等の部材から構成される。変速装置123には、その下方から第一伝動軸122の他端が連動連結される。
【0037】
第二伝動軸124は、変速装置123において変速された動力を伝達するものである。第二伝動軸124の一端(前端)は、変速装置123に連動連結される。第二伝動軸124の他端(後端)は、変速装置123の後方に向かって突出される。
【0038】
クラッチ125は、第二伝動軸124による動力の伝達を断接するものである。クラッチ125は、第二伝動軸124の中途部に設けられ、第二伝動軸124を前後に分離することにより、第二伝動軸124による動力の伝達を遮断することができる。
【0039】
このように構成された第一動力伝達機構120において、エンジン14から第一伝動軸122へと伝達された動力は、変速装置123によって変速され、第二伝動軸124へと伝達される。
【0040】
図2から図5までに示すように、第一上部施肥機130は、主として第二動力伝達機構131、第一入力軸132、第一ホッパ133・133、蓋134、第一把持部135、第一繰り出し部136・136等を具備する。
【0041】
図5に示すように、第二動力伝達機構131は、第一動力伝達機構120から第一入力軸132に動力を伝達するものである。第二動力伝達機構131は、動力伝達方向を変更するための歯車や軸等の部材から構成される。第二動力伝達機構131は、第一動力伝達機構120の後方に配置される。第二動力伝達機構131には、第二伝動軸124の他端(後端)が連動連結される。
【0042】
図2、図4及び図5に示すように、第一入力軸132は、第二動力伝達機構131と連動連結されて動力を伝達するものである。第一入力軸132は、第二動力伝達機構131に挿通され、第二動力伝達機構131から左右に延設される。
【0043】
第一ホッパ133・133は、第二動力伝達機構131の左右にそれぞれ並設され、肥料を収容する容器である。第一ホッパ133・133の上部及び下部は開口される。第一ホッパ133・133の下部は、漏斗状に形成される。第一ホッパ133・133は、互いに固設される。第一ホッパ133・133が互いに対向する側の側面には、それぞれ切り欠き部133a・133aが形成され、当該切り欠き部133a・133aにより、互いの内部空間が連通される。本実施例では第一ホッパ133・133は一体的に形成されている。第一ホッパ133・133のうち右方の第一ホッパ133の右側面には、その内部と外部とを連通する連通孔133bが形成される(図3参照)。通常、連通孔133bは、当該連通孔133bを閉塞することが可能な栓体等により閉塞される。また、図2及び図4に示すように、第一ホッパ133・133の内部には、それぞれ選別網230・230が具備される。なお、選別網230についての詳細な説明は後述する。
【0044】
蓋134は、第一ホッパ133・133の上部を覆い、開口された第一ホッパ133・133の上部を閉塞するものである。
【0045】
図5に示すように、第一把持部135は、棒状の部材を平面視略U字状に折曲成形された部材である。第一把持部135は、第二動力伝達機構131の左方に配設される第一ホッパ133に固設される。より詳細には、第一把持部135の一端は、第一ホッパ133の下部前側面に固設される。第一把持部135の他端は、ブラケット135aを介して第一ホッパ133の下部左側面に固設される。
【0046】
図2及び図4に示すように、第一繰り出し部136・136は、第一ホッパ133・133の下部にそれぞれ配設され、第一ホッパ133・133に収容された肥料を所定量ずつ繰り出すものである。第一繰り出し部136は、主として上収容部136a、繰り出し機構136b、下収容部136c等を具備する。
【0047】
上収容部136aは、第一ホッパ133から落下した肥料を受け入れる容器である。上収容部136aの上部及び下部は開口される。開口された上収容部136aの上部は、開口された第一ホッパ133の下部と接続される。
【0048】
繰り出し機構136bは、上収容部136aに収容された肥料を所定量ずつ繰り出すものである。繰り出し機構136bは、第一入力軸132に固設される駆動ベベルギヤ136d、駆動ベベルギヤと噛合する従動ベベルギヤ136e、及び従動ベベルギヤに固設される繰り出し軸136fを介して伝達される動力により駆動される。
【0049】
下収容部136cは、繰り出し機構136bを介して供給される肥料を受け入れる容器である。下収容部136cは、繰り出し機構136bの下方に配置される。下収容部136cの上部及び下部は開口される。下収容部136cは、漏斗状に形成される。
【0050】
このように構成された第一上部施肥機130において、第一動力伝達機構120から第二動力伝達機構131へと伝達された動力は、第二動力伝達機構131において変速され、第一入力軸132へと伝達される。第一入力軸132へと伝達された動力は、駆動ベベルギヤ136d及び従動ベベルギヤ136eを介して繰り出し軸136fへと伝達される。繰り出し軸136fに伝達された動力により、繰り出し機構136bが駆動され、第一ホッパ133内に収容された肥料は、上収容部136a及び繰り出し機構136bを介して下収容部136cへと供給される。
【0051】
図2から図5までに示すように、第二上部施肥機140は、主として第二入力軸142、第二ホッパ143、蓋144、第二把持部145、第二繰り出し部146等を具備する。第二上部施肥機140は、第一上部施肥機130の左方に並設される。
【0052】
図2及び図5に示すように、第二入力軸142は、第二動力伝達機構131からの動力を伝達するものである。第二入力軸142は、第一入力軸132と同一軸線上に配置される。第二入力軸142は、連結機構180を介して、第一入力軸132と連動連結される。また、連結機構180による第一入力軸132と第二入力軸142との連結は、解除機構190により解除することができる。
【0053】
第二ホッパ143・143は、第一ホッパ133・133の左方に並設され、肥料を収容する容器である。第二ホッパ143・143の構成は、前述した第一ホッパ133・133の構成と略同一であるため、その説明については省略する。第二ホッパ143・143のうち左方の第二ホッパ143の左側面には、その内部と外部とを連通する連通孔143bが形成される(図3参照)。通常、連通孔143bは、当該連通孔143bを閉塞することが可能な栓体等により閉塞される。また、図2に示すように、第二ホッパ143・143の内部には、それぞれ選別網240・240が具備される。
【0054】
蓋144は、第二ホッパ143・143の上部を覆い、開口された第二ホッパ143・143の上部を閉塞するものである。
【0055】
図5に示すように、第二把持部145は、棒状の部材を平面視略U字状に折曲成形された部材である。第二把持部145は、2つの第二ホッパ143・143のうち右方の第二ホッパに固設される。より詳細には、第二把持部145の一端は、第二ホッパ143の下部前側面に固設される。第二把持部145の他端は、ブラケット145aを介して第二ホッパ143の下部右側面に固設される。
【0056】
図2に示すように、第二繰り出し部146・146は、第二ホッパ143・143の下部にそれぞれ配設され、第二ホッパ143・143に収容された肥料を所定量ずつ繰り出すものである。第二繰り出し部146・146は、第二入力軸142により伝達される動力により駆動される。第二繰り出し部146は、主として上収容部146a、繰り出し機構、下収容部等を具備する。第二繰り出し部146の構成は、前述した第一繰り出し部136の構成と略同一であるため、その説明については省略する。
【0057】
図1から図4までに示すように、下部施肥機150は、主として施肥搬送部151・151・・・、施肥部152・152・・・、送風部153等を具備する。
【0058】
図4に示すように、施肥搬送部151・151・・・は、第一繰り出し部136及び第二繰り出し部146より繰り出される肥料を案内するものである。施肥搬送部151は、主として接続管151a、搬送ホース151b等を具備する。
【0059】
接続管151aは、長手方向が前後方向となるように配置された略筒状の部材である。接続管151aの中途部には、第一繰り出し部136(又は第二繰り出し部146)の下部が接続される。
【0060】
搬送ホース151bは、軟質合成樹脂等により形成された屈曲可能な部材である。搬送ホース151bの一端は、接続管151aの後端に接続される。搬送ホース151bの他端は、植付部42近傍まで延設される(図1参照)。
【0061】
図1に示すように、施肥部152・152・・・は、圃場面に作溝して、その部分に肥料を落下させるものである。施肥部152は、植付部近傍において、搬送ホース151bの他端に接続される。
【0062】
図2から図4までに示すように、送風部153は、施肥搬送部151内に風を供給し、肥料の搬送を補助するものである。送風部153は、主として送風機153a、送風管153b等を具備する。
【0063】
送風機153aは、空気に圧力を加えて吐出するものであり、施肥フレーム110の左端部に配設される。送風機153aは、ファンやブロワ等により構成される。
【0064】
送風管153bは、長手方向が左右方向となるように配置された略筒状の部材である。送風管153bの一端は、送風機153aの吐出口に接続される。送風管153bの他端は、閉塞される。送風管153bは、その中途部において、接続管151aの前端とそれぞれ接続される。
【0065】
このように構成された下部施肥機150において、第一上部施肥機130及び第二上部施肥機140から接続管151aへと供給された肥料は、送風部153から供給される風により、搬送ホース151bを介して施肥部152へと搬送される。施肥部152は、圃場に溝を作りながら、肥料を圃場に放出する。
【0066】
図2及び図3に示すように、第一回動機構160は、第一上部施肥機130を施肥フレーム110に対して上方回動可能に支持するものである。第一回動機構160は、主として第一枢支ブラケット161・161、第一回動支持軸162等を具備する。
【0067】
第一枢支ブラケット161は、第一上部施肥機130の右側面に固設される、板状の部材である。第一枢支ブラケット161の下端は、施肥フレーム110の右側方まで下方に延設される。
【0068】
第一回動支持軸162は、軸線方向を前後方向として、施肥フレーム110の右側面(支持板111)に支持される。第一回動支持軸162は、第一枢支ブラケット161の下端部を回動可能に支持する。
【0069】
第二回動機構170は、第二上部施肥機140を施肥フレーム110に対して上方回動可能に支持するものである。第二回動機構170は、第一回動機構160と略同一構成であるので説明を省略する。
【0070】
このように構成された第一回動機構160により、第一上部施肥機130は、第一回動支持軸162を中心として上方に回動可能に構成される。
【0071】
次に、図6において、第一ホッパ133・133の内部にそれぞれ具備される選別網230・230の構成について詳しく説明する。なお、第二ホッパ143・143の内部にそれぞれ具備される選別網240・240は、選別網230・230と略同一構成であるので、その説明は省略する。
【0072】
選別網230・230は、第一ホッパ133・133に収容される肥料のうち所定の大きさの肥料のみを第一繰り出し部136・136へと通過させる網目状の部材である。選別網230・230は、第一ホッパ133・133内の上下中途部で水平方向に配置されて、湿気を吸収して固まった肥料塊が第一繰り出し部136・136に流下するのを阻止するとともに、ブリッジ現象によって肥料の流下が妨げられるのを阻止することもできる。
【0073】
選別網230・230は、第二回動支持軸231・231をそれぞれ具備する。第二回動支持軸231・231は、第一ホッパ133・133内部において第一回動機構160の第一回動支持軸162と平行に前後方向に配置されて第一ホッパ133・133に支持される。第二回動支持軸231・231は第一回動支持軸162に対して左右反対側の選別網230・230の端部に設けられる。本実施の形態においては、選別網230・230のそれぞれ左側辺が第二回動支持軸231・231を介して第一ホッパ133・133内部に上方回動可能に枢支するものである。但し、メンテナンス等を考慮して選別網230・230は第一ホッパ133・133に対して着脱可能に構成されている。また、選別網230・230の第二回動支持軸231・231とそれぞれ反対側(選別網230・230のそれぞれ右側)は、第一ホッパ133・133内面に当接しているが、載置部等を設けて載置する構成であってもよい。こうして、通常時(第一上部施肥機130が上方へ回動していない時)には、選別網230・230は略水平に配置されるように構成される。
【0074】
内部に残った肥料を排出するために、第一上部施肥機130を上方へ回動した際には、選別網230・230は、自重により第二回動支持軸231・231から下側鉛直方向に懸吊される。その結果、選別網230・230(のそれぞれ右側端部)と第一ホッパ133・133(のそれぞれ内側)とが離間し隙間が形成される。そして選別網230・230の下方に残存する肥料は、第一ホッパ133・133の内側の傾斜に従い、第一上部施肥機130の上方への回動により肥料が残存する選別網230・230の下方よりも下側に位置することになった前記隙間から排出される。
【0075】
前述のとおり第一ホッパ133・133が互いに対向する側の側面には、それぞれ切り欠き部133a・133aが形成され、互いの内部空間が連通される。従って、第一上部施肥機130が上方へ回動した姿勢において上側の第一ホッパ133から排出される肥料は、切り欠き部133a・133aを介して下側の第一ホッパ133の内部へと落下する。そして落下した肥料は、その下側の第一ホッパ133の肥料とともに連通孔133bから下側の第一ホッパ133の外部へと排出される。
【0076】
以上のように構成することにより、第一上部施肥機130を上方へ回動した際、選別網230・230は自由に回動し、選別網230・230(のそれぞれ右側端部)と第一ホッパ133・133(のそれぞれ内側)とが離間し隙間が形成されるので、第一ホッパ133・133内の肥料、特に選別網230・230の下方に残存する肥料をスムースに排出することができる。よって、施肥装置100内の肥料の排出及び清掃の効率化を図ることができる。また、選別網230・230は、第二回動支持軸231・231により枢支されているため、第一上部施肥機130の回動時に選別網230・230が外れたり、取り付け位置がずれたりすることがない。
【0077】
また、選別網230・230を前述と異なる構成とすることができる。即ち、図7に示すように、選別網230・230は少なくとも二以上に分割され、第二回動支持軸231・231はその分割された選別網230・230のうち第一回動支持軸162に最も近い側の選別網230・230を回動可能に枢支する構成とすることができる。以下、詳しく説明する。
【0078】
選別網230・230はそれぞれ略同一の大きさにて二分割されている。ここで、第一ホッパ133・133の通常時(第一上部施肥機130が上方へ回動していない時)において、分割された選別網230・230のそれぞれ左側を選別網230a・230aと、それぞれ右側を選別網230b・230bとする。なお、選別網230・230は二分割に限定するものではなく本発明の目的を達成できるならば三分割等であってもよい。
【0079】
第一回動支持軸162に対して遠い側の選別網230a・230aは、それぞれ第一ホッパ133・133の内側に通常時において選別網230a・230aが略水平となるように固着される。そして、選別網230b・230bの左側端部(第一回動支持軸162と反対側の辺)には第二回動支持軸231・231が具備される。
【0080】
選別網230b・230bは、左側端部が第二回動支持軸231・231により上方回動可能に枢支される。選別網230b・230bの右側端部は、第一ホッパ133・133内に当接され、通常時において選別網230b・230bは、略水平に配置される。従って、通常時において選別網230a・230aと選別網230b・230bとは、互いに略水平となるように第一ホッパ133・133内に構成される。
【0081】
内部に残った肥料を排出するために、第一上部施肥機130を上方へ回動すると、選別網230b・230bは、自重により第二回動支持軸231・231を中心回動して下側鉛直方向に懸吊される。その結果、選別網230b・230b(の右側端部)と第一ホッパ133・133(のそれぞれ内側)とが離間し隙間が形成される。そして選別網230・230の下方に残存する肥料は、第一ホッパ133・133の内側の傾斜に従い、第一上部施肥機130の上方への回動により肥料が残存する選別網230・230の下方よりも下方に位置することになった前記隙間から排出される。
【0082】
以上のように構成することにより、第一上部施肥機130を上方へ回動した際、選別網230b・230bは自由に回動し、選別網230b・230bと第一ホッパ133・133とが離間し隙間が形成されるので、第一ホッパ133・133内の肥料、特に選別網230・230の下方に残存する肥料をスムースに排出することができる。また、第一ホッパ133・133内の肥料を排出するために回動させることが必要な選別網230b・230bのみを回動可能に構成することにより、選別網の回動が肥料の排出を阻害することを防止することができる。よって、施肥装置100内の肥料の排出及び清掃の効率化を図ることができる。そしてさらに、第一上部施肥機130を上方へ回動した際に上側となる第一ホッパ133から肥料が、切り欠き部133aを介して落下すると、図6に示す構成では、肥料は下側の選別網230に当たる可能性があるが、左右分割することにより、選別網230bの下端の回動量は小さくなり、上から落下する肥料が下側の選別網230bに当接することが少なくなり、粉砕等を防止することが可能となる。
【0083】
また、選別網230は分割せずに、上方へ回動した際に上側となる第一ホッパ133から落下する肥料が下側の第一ホッパ133内の選別網230に当たらないように、下側の第一ホッパ133内の選別網230の回動を規制する構成とすることもできる。即ち、図8に示すように、上方へ回動した際に下側となる外側の第一ホッパ133内の選別網230の回動軌跡途中に所定の角度において下方への回動を規制する規制部材233を第一ホッパ133に具備する構成としている。以下、詳しく説明する。
【0084】
上方へ回動した際に下側となる外側の第一ホッパ133内において、選別網230が前記同様に第一ホッパ133内の上下中途部に水平に配置され、第二回動支持軸231が第一回動支持軸162に対して左右反対側の選別網230の端部に設けられる。そして、前記規制部材233は、ピン等の突起部材で構成され、第一ホッパ133の前面または後面から内部方向に突設されている。規制部材233の配置位置は、選別網230の回動軌跡途中であって、第一ホッパ133を上方へ回動した状態において、選別網230が鉛直方向を向いた角度よりも小さな角度となる位置である。但し、規制部材233の配置位置は前記位置に限定するものではなく、第二回動支持軸231を選別網230に固設して、該第二回動支持軸231近傍に規制部材233を配置して回動角度を規制する構造とすることもできる。
【0085】
こうして、前述のように選別網230の回動角度を所定の角度に規制することができるようにしている。すなわち、第一上部施肥機130を上方へ回動した際には、選別網230・230は、自重力により第二回動支持軸231・231を中心に下側鉛直方向に懸吊されようとするが、下側の選別網230は規制部材233により回動が中途で規制される。即ち、規制部材233を備えることにより、選別網230の右側端部と第一ホッパ133内面との隙間の距離を予め設定することができる。
【0086】
以上のように構成することにより、第一上部施肥機130を上方へ回動した際、選別網230と第一ホッパ133との隙間の距離を予め設定することができるので、選別網230が必要以上に回動することがなく、上側のホッパ内から落下する肥料の排出を阻害することを防止できる。よって、施肥装置100内の肥料の排出及び清掃の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 乗用田植機
100 施肥装置
110 施肥フレーム
120 第一動力伝達機構
130 第一上部施肥機
132 第一入力軸
133 第一ホッパ
135 第一把持部
136 第一繰り出し部
150 下部施肥機
151 施肥搬送部
152 施肥部
160 第一回動機構
180 連結機構
230 選別網
231 第二回動支持軸
233 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパ内の肥料を所定量ずつ圃場に放出する施肥装置において、前記ホッパを左右に配置し、該左右のホッパをそれぞれ左右上下方向に回動可能に枢支し、所定の大きさ以下の肥料のみを通過させる選別網を前記左右のホッパ内に設け、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動した際、前記左右のホッパ内のそれぞれの選別網が左右のホッパ内で離間し隙間が形成されるように、前記左右の選別網を回動可能に枢支し、前記左右のホッパをそれぞれ左右上方に回動することによって左右のホッパ内の肥料を排出可能に構成したことを特徴とする施肥装置。
【請求項2】
前記左右のホッパ内の選別網をそれぞれ左右のホッパに対して着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の施肥装置。
【請求項3】
前記左右のホッパ内に前記左右の選別網の回動範囲を設定する規制部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の施肥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99349(P2013−99349A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10001(P2013−10001)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2009−35715(P2009−35715)の分割
【原出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】