説明

施術器具

【課題】患者が気分を損なわずに、リラックスして施術を受けることができる施術器具を提供する。
【解決手段】カッサ処理を行うための金属製の板状体50と、板状体50の平面に垂直に固定された筒状体10とを有し、筒状体10の一部を把持してカッサ処理を行う施術器具であって、筒状体10が、板状体50に一端を固定された金属製筒部20と、金属製筒部20の他端に結合された非金属性の延長筒部40とを有し、金属製筒部20が、香を保持する香保持手段を内部に具備し、カッサ処理の際に香が焚かれ、香の燃焼熱で板状体50が温められる。患者は、板状体50が肌に触れても冷たさを感じずに、リラックスした状態でカッサ処理を受けることができ、また、香が香る中で気分良く施術を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中国伝統医術などで用いられる施術器具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
中国の民間療法として数千年も使われている医術療法に“カッサ” (GUASA)と呼ばれている治療法がある。この治療法では、平らで滑々した板状の施術器具を用いて皮膚を擦り、経絡やツボを刺激する。この施術により、老廃物が溜まっている箇所では、老廃物が皮膚近くに引き出されて皮下出血のような反応物が皮膚表面に現れる。施術後、血行循環やリンパの流れが良くなり、老廃物が体外に排出されて、反応物は、1週間前後できれいに消える。
このカッサ用の器具として、昔は銅貨、銅のスプーンの取手部分、磁器製のレンゲなどが使われていたが、最近では水牛の角等で作られた板が使われている。
近年、日本では、このカッサ処理を、ダイエットや美容、美顔などの1メニューに組み入れて実施するケースが増えている。
【0003】
また、鍼も中国で発明されたと言われている。古代中国では、皮膚に刺入する鍼だけでなく、肌を按じて血気を補ったり、皮膚を抑えて邪熱を除去したりする術具も鍼に含めている。当時使われていた様々な形の鍼は、九つの範疇に分類されて「古代九鍼」と呼ばれている。この内、鍼頭が大きい“ざん鍼”は、皮膚の表面にある遊走性の邪熱を除くためのものであり、また、鍼尖が粟粒状に少し尖っている“てい鍼”は、皮膚に刺入することなく手足末端近くの経脈を按じて血気を補い、邪気を除くために用いられている。また、鍼尖が卵のように丸い“円鍼”は、肌肉を損傷することなく、浅い部分の肉の邪気を除き、滞っている血気を流通させるために用いられている。
【0004】
本発明者は、先に、中国の民間療法の施術に適した器具を開発し、下記特許文献1に開示しているが、この特許文献1の中で、カッサ用の器具に“ざん鍼”“てい鍼”及び“円鍼”の機能を付加した器具を“トリートメント具”として示している。
このトリートメント具は、金属体で成形されており、温灸体を収容する筒状部の一端に着脱することができる。施術者は、温灸体を収容していない状態の筒状部にトリートメント具を結合し、筒状部を掴み、トリートメント具の周縁を患者の体に当ててカッサ等の処理を行う。
この処理の後、筒状部からトリートメント具を取り外し、新たに把手を結合した筒状部に、着火した温灸体を装着する。そして、把手を持って、反応物が現れた患者の皮膚上で筒状部を動かし、患部のウォームケアを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−259876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の施術器具は、トリートメント具が金属で形成されており、カッサ処理を行うときに、冷たい金属体が患者の肌に触れるため、患者に緊張が走り、リラックスした状態で施術を受けることができない、と言う問題点がある。こうした緊張状態は、施術の効果を低減させる。
また、通常、カッサ処理は、患者の肌にアロマオイルを塗った上から行われるが、アロマオイルの冷たさが患者の体を緊張させてしまう場合がある。
また、施術者は、容器のアロマオイルを手に垂らして患者に塗った後、タオルで手を拭いてから施術器具を掴むのであるが、ベトベトしている油を短時間に拭うことは難しく、施術器具が汚れやすい。また、手を拭いて汚れたタオルや、アロマオイル容器の置き場所に出来たアロマオイルの染み等は、清潔を旨とする施術室に好ましいものではない。
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、患者が気分を損なわずに、リラックスして施術を受けることができ、また、アロマオイルによる汚れが生じにくい施術器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の施術器具は、ざん鍼、てい鍼、円鍼の役割を加えたカッサ処理用の金属製の板状体と、前記板状体の平面に垂直に立設された筒状体とを有し、前記筒状体の一部を把持してカッサ処理を行う施術器具であって、前記筒状体の内部に、香を保持する香保持手段と、前記香を燃焼する燃焼室とを有し、カッサ処理の際に前記香が焚かれ、前記香の燃焼熱で前記板状体が温められることを特徴とする。
香の燃焼熱で金属製の板状体が温められるため、患者は、冷たさを感じずに、リラックスした状態でカッサ処理を受けることができ、また、香が香る中で気分良く施術を受けることができる。
【0008】
また、本発明の施術器具では、前記筒状体を、前記板状体に一端を固定した金属製筒部と、前記金属製筒部の他端に結合した非金属性の延長筒部とで構成し、前記金属製筒部に燃焼室を形成し、前記金属製筒部の内部に香保持手段を設けるようにしても良い。
金属製筒部内で燃える香の燃焼熱で金属製の板状体が温められる。
【0009】
また、本発明の施術器具では、前記延長筒部の終端側に膨出部を設けても良い。
こうすることで、施術者が延長筒部を掴んでカッサ処理を行う際に、膨出部により、手と延長筒部との摩擦抵抗が増加し、患者の肌に触れる板状体に対して安定した力が加え易くなる。
【0010】
また、本発明の施術器具では、前記延長筒部に、アロマオイルの噴霧容器を収容するための収容室を設け、この収容室に収容された容器中のアロマオイルが前記香の燃焼熱で温められるようにしても良い。
患者の肌にアロマオイルを吹付けながらカッサ処理を行う場合に、アロマオイルが温められているため、患者は、冷たさを感じず処理を受けることができる。また、施術者は、アロマオイルに手を触れなくて済むため、施術器具やタオル等の汚れが回避できる。
【0011】
また、本発明の施術器具は、前記筒状体を、前記燃焼室を形成する金属製筒部と、前記金属製筒部の前記板状体から遠い側の端部に結合した延長筒部とで構成し、前記香保持手段を前記延長筒部に設け、前記香保持手段で保持された香の前記板状体側の先端を燃焼することが好ましい。
こうした構成により、香の燃焼箇所が板状体に対向するため、燃焼熱を効率的に板状体に伝えることができる。
【0012】
また、本発明の施術器具では、前記延長筒部の後端にノック部を設け、前記香保持手段で保持された香の前記燃焼室に突出する長さを、前記ノック部のノックによって可変するようにしても良い。
香が燃焼中であっても、簡単な操作で、燃焼室の香の長さを調整することができる。
【0013】
また、本発明の施術器具では、前記板状体の表面にアロマオイルの容器を設置し、前記容器中のアロマオイルを前記香の燃焼熱で温めるようにしても良い。
香の燃焼箇所が板状体に向かい合うため、金属性の板状体が効率的に温められ、それに伴い、この板状体に設けられた容器内のアロマオイルも効率的に温められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の施術器具を用いると、患者に触れる器具部分が温かく、また、良い香りの中で施術が行われるため、患者は、緊張せずに、リラックスした気分でカッサ処理を受けることができる。
また、温められた器具は、患者の細胞の代謝を促進して老廃物の体外排出効果を高め、また、皮下脂肪を燃焼し易くして、痩身効果を向上させる。
また、延長筒部にアロマオイルの噴霧容器を収容し、あるいは、板状体の表面にアロマオイルの容器を設けた施術器具では、アロマオイルが温められるだけでなく、アロマオイルによる施術器具やタオル等の汚れが回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る施術器具を示す斜視図
【図2】図1の施術器具の側面図
【図3】図1の施術器具の金属製筒部と延長筒部とを分離した状態を示す側面図
【図4】図3の金属製筒部の構成部品を示す分解側面図
【図5】図3の金属製筒部における香の装着動作を示す図
【図6】図3の延長筒部の収容室を示す側面図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る施術器具を示す斜視図
【図8】図7の施術器具の板状体及びアロマオイル容器を示す図
【図9】図7の施術器具の延長筒部を示す断面図
【図10】図9の延長筒部の動作を説明する図
【図11】図9の延長筒部の香保持動作を説明する図
【図12】図7の施術器具の板状体と香との位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る施術器具は、図1の斜視図及び図2の側面図に示すように、カッサ処理を行うための金属製の板状体50と、板状体50の平面に垂直に固定された筒状体10とを備えている。筒状体10は、金属製筒状部20と、合成樹脂で成形された延長筒状部40とから成り、それらが結合されている。延長筒状部40には、後述するように、アロマオイルの噴霧容器60が収容されている。
図3には、分離した状態の金属製筒状部20及び延長筒状部40を示している。
【0017】
図1に示すように、板状体50は、曲線状の周縁を持つ滑々した金属板であり、曲率半径の大きい周縁部分51の曲線は、カッサ板及び“ざん鍼”の機能を持つように設定され、曲率半径の最も小さい周縁部分52の曲線は、“てい鍼”及び“円鍼”の機能を持つように設定されている。
図4の分解側面図に示すように、板状体50には、円孔53と、円孔53の周囲に立設された、外周に雄螺子が切られた短筒部54とが一体成形されている。
短筒部54の外周の雄螺子に、金属製筒状部20の内周に切られた雌螺子21が螺合されて、板状体50と金属製筒状部20とが結合される。
金属製筒状部20は、香の燃焼室を構成するとともに、香を保持する香保持具30を内蔵している。金属製筒状部20の筒面には、香の燃焼を維持するために、内側が金網で覆われた空気孔22が設けられている。香の香りは、この空気孔22から外部に漂う。
また、金属製筒状部20の内周には、前記雌螺子21の他に、香保持具30を固定するための雌螺子24が設けられ、また、延長筒状部40との接続端側に延長筒状部40と結合するための凹溝23が設けられている。
【0018】
香保持具30は、金属製筒状部20の雌螺子24の箇所に結合されるリング32と、リング32の孔に固定される円筒部31と、香を挟持する挟持片33と、挟持片33が螺子34で固定される棒状体35と、棒状体35に螺子39で固定されるキャップ状部37と、キャップ状部37を板状体50の円孔53から押し出す方向に付勢するバネ36とを備えている。
リング32は、外周に雄螺子が切られており、この雄螺子が金属製筒状部20の雌螺子24に螺合される。
円筒部31は、リング32の孔に緊密に嵌め込まれてリング32に固定される。
挟持片33は、バネ性を持つ4つの片から成り、円筒部31内に移動可能に挿入される。この挟持片33は、棒状体35を介してキャップ状部37に結合されており、キャップ状部37が押されたときに、円筒部31内を図の右方向に移動し、バネ36の反発力でキャップ状部37が戻されるときに、図の左方向に移動する。
【0019】
図5(a)は、香保持具30を装着した金属製筒状部20と、板状体50とを組み付けた状態を示している。バネ36は、リング32とキャップ状部37の鍔38との間に組み込まれ、両者の間隔を拡げるように作用している。そのため、キャップ状部37は、板状体50の短筒部54を通って、板状体50の平面から先端が僅かに突出するように付勢される。それ以上の突出は、キャップ状部37の鍔38が、板状体50の短筒部54の端面に当接して阻止される。また、バネ36は、金属製筒状部20の雌螺子24とリング32の雄端子との螺合の緩みを止める作用も果たしている。
図5(a)の状態では、挟持片33の大部分が円筒部31の内部に引き込まれているため、挟持片33の先端は“すぼまった”状態にある。
【0020】
板状体50の平面から突出しているキャップ状部37を、バネ36に抗して押込むと、図5(b)に示すように、挟持片33の大部分が円筒部31から突き出る。このとき、円筒部31の内周の制約から解放された挟持片33は、“すぼまった”先端を広げる。
この状態で、図5(c)に示すように、棒状あるいは円錐状の香70の一端を挟持片33の中に挿入し、キャップ状部37に加えていた力を除くと、図5(d)に示すように、バネ36が図5(a)の位置までキャップ状部37を移動し、それに伴い、円筒部31の内部に引き込まれた挟持片33が、すぼまろうとして香70を挟持する。
また、挟持片33に挟持された香やその燃えカスを挟持片33から取り除くときは、キャップ状部37をバネ36に抗して押し込み、図5(b)の状態にすれば、挟持片33に挟持されていたものを、手を触れずに外すことができる。
【0021】
合成樹脂で成形された延長筒状部40は、図3、図6に示すように、金属製筒状部20に結合される側の円筒端面に、半球状の突起42が形成された複数の係合片41を有している。延長筒状部40の本体と一体成形された係合片41は、円筒の半径方向に弾性を有しており、延長筒状部40を金属製筒状部20に結合するとき、多少撓んだ状態で金属製筒状部20に挿入され、半球状の突起42が金属製筒状部20の凹溝23に嵌った状態で撓みが解消し、金属製筒状部20に対して延長筒状部40を位置決めする。
また、逆に、結合した金属製筒状部20を一方の手で、また、延長筒状部40を他方の手で掴み、多少力を入れて引き離せば、金属製筒状部20から延長筒状部40を外すことができる。
【0022】
延長筒状部40の他端側には、太さを増した膨出部45が形成されている。
また、図6に示すように、延長筒状部40の内部には、アロマオイルを入れた噴霧容器60の収容室43が設けられている。この収容室43は、延長筒状部40の膨出部45側の端面に開口を持ち、金属製筒状部20の内部空間と連通するように底が抜けている。また、収容室43の内部には、アロマオイル噴霧容器60を位置決めする段差46や、アロマオイル噴霧容器60を弾性的に挟持する複数の半球状の突起44が設けられている。
この噴霧容器60は、市販のものであり、ノズル部62を押すと、容器内に収容されたアロマオイルが霧状になって噴射口61から噴射される。
【0023】
この施術器具は、次のように使用する。
図3に示すように、板状体50に固定した金属製筒状部20と、延長筒状部40とを分離する。
次に、金属製筒状部20に対して、図5に示すように、キャップ状部37を押し込み、挟持片33を広げた状態で香70の一端を挟持片33の中に挿入し、キャップ状部37の押し込みを解除して、挟持片33で香70を保持させる(図5(d))。
また、延長筒状部40の収容室43には、アロマオイル噴霧容器60を収納する。
【0024】
次に、金属製筒状部20に装着した香70に着火し、金属製筒状部20と延長筒状部40とを結合する。
香70は、金属製筒状部20の空気孔22を介して流入する空気から必要な酸素を確保して燃焼を続け、その香りが空気孔22から外界に拡散する。香70の燃焼熱は、金属製筒状部20や香保持具30を通じて板状体50に伝導し、また、金属製筒状部20及び延長筒状部40の空間を占める空気の対流を通じてアロマオイル噴霧容器60を温める。しかし、熱伝導率が低い合成樹脂で作られた延長筒状部40は、熱くならないため、手で持つことができる。
施術者は、板状体50やアロマオイル噴霧容器60のアロマオイルが香70の燃焼熱で温まるのを待つ。
【0025】
板状体50やアロマオイルが温まり、施術の準備が整うと、延長筒状部40を掴み、アロマオイル噴霧容器60のノズル部62に指を掛けて、患者の施術箇所にアロマオイルをスプレーする。
次に、延長筒状部40を掴み、板状体50の周縁部分51を患者の肌に当ててカッサ処理を行い、また、周縁部分52で患者の患部を押して、滞っている血気を流通させる。
こうしたアロマオイルのスプレーとカッサ処理を適宜繰り返す。
患者への施術が終了すると、金属製筒状部20と延長筒状部40とを分離し、金属製筒状部20に対して、図5(b)に示すように、キャップ状部37を押し込み、挟持片33を広げて、保持されている香70の燃え残りを取り外す。
【0026】
このように、この施術器具では、患者の肌に触れる板状体やアロマオイルが香の燃焼熱で温められているため、患者に冷たさを感じさせない。そのため、患者は、緊張したり、体を硬直させたりすること無く、リラックスした気分で施術を受けることができる。
また、香の香りは、患者の気分を癒し、心安らかな状態にさせてくれる。
また、温められた板状体やアロマオイルに接触して温度が上昇した患者の細胞は、代謝が促進され、老廃物の体外排出効果が向上する。また、皮下脂肪が燃焼し易くなり、ダイエット効果や小顔効果なども向上する。
【0027】
また、施術者は、アロマオイルに手を触れずにアロマオイルを患者の肌に塗ることができる。そのため、タオルで手を拭く時間が短縮でき、また、施術器具やタオルの汚れが回避できる。また、アロマオイル容器を別の場所に置く必要がないため、容器の置き場所が汚れることも無く、また、施術中にアロマオイル容器を探したりすることもない。
また、延長筒状部40の終端側に設けた膨出部45は、施術者の手への摩擦抵抗を増やす。そのため、患者の肌に触れる板状体50に対して安定した力が加え易くなる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る施術器具は、香の燃焼熱が効率的に板状体に伝わるように工夫している。
第1の実施形態に係る施術器具は、香の板状体側の部分を香保持具30で保持しているため、香の先端の燃焼箇所が、板状体50から距離を置くことになり、また、香保持具30が、燃焼箇所から板状体50への熱の伝導を妨げている。
こうした点を改善するため、第2の実施形態に係る施術器具では、香の燃焼箇所が板状体50の側を向くように構成している。
【0029】
この施術器具は、図7(a)に示すように、アロマオイルの容器63が設けられた板状体50と、香の燃焼室を構成する金属製筒部71と、香保持手段を構成する延長筒部80とを備えている。
ここでは、図7(b)の分解図に示すように、金属製筒部71の雄ねじ部72を板状体50の短筒部54に螺合し、延長筒部80の雄ねじ部81を金属製筒部71の雌ねじ部73に螺合して、これらを結合しているが、図3に示すようなプッシュ−プル型の係合手段23、41、42を用いて結合することも勿論可能である。
燃焼室を構成する金属製筒部71は、中空の円筒体であり、筒面には、香の燃焼を維持するために、内側が金網で覆われた空気孔22が設けられている。
【0030】
図8(a)は、アロマオイルの容器63が設けられた板状体50の平面図を示し、図8(b)は、その側面図を示している。この容器63は、板状体50に立設された短筒部54を囲むように設けられており、容器63に収容されたアロマオイルを取り出すための液体吐出装置(ディスペンサーポンプ)100が装着されている。図8(c)は、容器63の口部64から液体吐出装置100を取り外した状態を示している。この容器63にアロマオイルを収容するときは、図8(c)のように、液体吐出装置100を容器63から取り外し、口部64からアロマオイルを注入した後、口部64に液体吐出装置100を装着する。
液体吐出装置100は、シャンプーや化粧水の容器などに広く使われている。この装置は、容器63の口部64に螺合されるキャップ103と、キャップ103に固定されたシリンダ104と、押圧操作されるポンプヘッド101と、ポンプヘッド101が押されたときに液体が吐出する吐出口102と、シリンダ104内に容器63の液体を供給する管105とを備えている。
【0031】
ポンプヘッド101を押すと、ポンプヘッド101に接続した軸部がシリンダ104内を降下し、そのため、シリンダ104内の圧力が上昇して、シリンダ104内に溜まっていた液体が吐出口102から吐出される。ポンプヘッド101に加えた力を抜くと、ポンプヘッド101は、バネの力で元の位置に戻り、このとき、シリンダ104内が負圧になり、管105を通して容器63の液体がシリンダ104内に浸入する。
このように、ポンプヘッド101を繰り返し押すことにより、所要量のアロマオイルを吐出口102から取り出すことができる。
【0032】
図9は、香保持手段を構成する延長筒部80の断面を示している。香保持手段は、延長筒部80の外筒82と、外筒82内を許された範囲内で移動する可動管83と、可動管83の先端で香を掴んだり放したりするチャック部84と、可動管83の後端の香挿入口85に被せられたキャップ86と、チャック部84の開きを規制するリング88と、可動管83を外筒82の後端側(図の上側)に付勢するスプリング87と、香を挟持する弾性チップ89とで構成されている。また、外筒82の内周には、リング88の移動範囲を規定する溝821が設けられている。
【0033】
この香保持手段は、次のように動作する。
図9の状態から、スプリング87の付勢力に抗してキャップ86を押し下げると、図10(a)に示すように、可動管83及びチャック部84が下降し、チャック部84とともにリング88が溝821内を下降する。このとき、チャック部84の開きは、リング88によって制限されており、矢印Aで示す「狭い開き」になっている。
図10(a)の状態からさらにキャップ86を押し下げると、図10(b)に示すように、リング88の下降が溝821の下端によって制限されるため、チャック部84がリング88を突き抜ける。そのため、チャック部84の開きは、矢印Bで示す「広い開き」になる。
【0034】
図10(b)の状態からキャップ86に加えていた力を抜くと、図10(c)に示すように、スプリング87の付勢力で可動管83及びチャック部84が上昇する。このとき、チャック部84は、矢印Bで示す「広い開き」を保ったまま上昇し、チャック部84に押されてリング88が溝821内を上昇する。
図10(c)の状態からさらにチャック部84が上昇すると、図10(d)に示すように、リング88の上昇が溝821の上端によって制限されるため、チャック部84がリング88内に引き込まれ、チャック部84の開きは、矢印Aで示す「狭い開き」になる。
【0035】
図11は、延長筒部80で香70を保持するときの手順を示している。
図11(a)に示すように、可動管83からキャップ86を外し、挿入口85から可動管83内に香70を挿入する。香70は、図11(b)に示すように、「狭い開き」のチャック部84に当接する位置まで進入する。可動管83にキャップ86を嵌め、このキャップ86をノックすると、図11(c)に示すように、チャック部84が「広い開き」になり(図10(b)の状態)、香70の先端は、チャック部84を通過して、弾性チップ89に挟持される。
キャップ86に加えていた力を抜くと、チャック部84が「広い開き」の状態(図10(c))で上昇した後、「狭い開き」の状態(図10(d))に移行し、図11(d)に示すように、香70の中間位置を掴む。
【0036】
キャップ86を再びノックすると、チャック部84は、香70を掴んだ「狭い開き」の状態(図10(a))で下降し、そのため、図11(e)に示すように、弾性チップ89による香70の挟持位置が移動する。その後、チャック部84は、図11(f)に示すように、「広い開き」の状態に移行して香70を放し、「広い開き」の状態で上昇した後、「狭い開き」の状態に移行して香70のさらに上の部分を掴む。
このように、キャップ86のノックを繰り返すことで、図11(g)に示すように、香70が延長筒部80から繰り出される。延長筒部80の先端から延びる香70の長さは、ノックの回数で調節することができる。図11(g)の状態の香70は、チャック部84で掴まれているため、延長筒部80に安定して保持される。
なお、延長筒部80後端の挿入口85から香70を挿入する代わりに、延長筒部80の前端から香70を差し込んでチャック部84に掴ませることも可能である。この場合、キャップ86を押してチャック部84を「広い開き」の状態に保ち、延長筒部80の前端から香70を差し込んだ後、キャップ86の押圧を解除してチャック部84に香70を掴ませる。
【0037】
この施術器具は、次のように使用する。
板状体50に設けた容器63にアロマオイルを収容して液体吐出装置100を装着し、板状体50と金属製筒部71とを結合する。
次に、延長筒部80で保持された香70の先端に着火して、この延長筒部80を金属製筒部71に結合し、キャップ86をノックして香70の先端位置を調整する。
図12は、こうして結合された施術器具の板状体50と香70との位置関係を示している。
施術者は、板状体50や容器63中のアロマオイルが香70の燃焼熱で温まると、容器63の液体吐出装置100のポンプヘッド101を押して患者の施術箇所にアロマオイルを垂らす。次に、延長筒状部80を掴み、板状体50の周縁部分51を患者の肌に当ててカッサ処理を行い、また、周縁部分52で患者の患部を押して、滞っている血気を流通させる。
また、香70の燃焼が進み、香70の先端位置と板状体50との距離が離れ過ぎたときは、キャップ86をノックして香70の先端位置を調整する。
【0038】
このように、この施術器具では、香の燃焼箇所と板状体50とが向かい合い、その間に熱の伝達を遮るものが存在しないため、香の燃焼熱を板状体50や、板状体50上に設けたアロマオイル容器63に、効率的に伝えることができる。
また、香の燃焼位置と板状体50との間隔を簡単に調整することができ、この調整により、板状体50への熱伝達を制御することができる。
なお、ここで示した形状や素材、結合機構、施術方法などは一例であって、本発明は、それらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の施術器具は、中国民間療法や、美容分野、ヘルス分野、アンチエイジング分野など心身に美しさ、健やかさ、若さをもたらすことを目的として行われる施術に幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 筒状体
20 金属製筒状部
21 雌螺子
22 空気孔
23 凹溝
24 雌螺子
30 香保持具
31 円筒部
32 リング
33 挟持片
34 螺子
35 棒状体
36 バネ
37 キャップ状部
38 鍔
39 螺子
40 延長筒状部
41 係合片
42 突起
43 収容室
44 突起
45 膨出部
46 段差
50 板状体
51 曲率半径の大きい周縁部分
52 曲率半径が最小の周縁部分
53 円孔
54 短筒部
60 アロマオイル噴霧容器
61 噴射口
62 ノズル部
63 アロマオイル容器
64 口部
70 香
71 金属製筒部
72 雄ねじ部
73 雌ねじ部
80 延長筒部
81 雄ねじ部
82 外筒
83 可動管
84 チャック部
85 挿入口
86 キャップ
87 スプリング
88 リング
89 弾性チップ
100 液体吐出装置
101 ポンプヘッド
102 吐出口
103 キャップ
104 シリンダ
105 管
821 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッサ処理を行うための金属製の板状体と、前記板状体の平面に垂直に立設された筒状体とを有し、前記筒状体の一部を把持してカッサ処理を行う施術器具であって、
前記筒状体の内部に、香を保持する香保持手段と、前記香を燃焼する燃焼室とを有し、カッサ処理の際に前記香が焚かれ、前記香の燃焼熱で前記板状体が温められることを特徴とする施術器具。
【請求項2】
請求項1に記載の施術器具であって、前記筒状体が、前記板状体に一端を固定された金属製筒部と、前記金属製筒部の他端に結合された非金属性の延長筒部とを有し、前記金属製筒部が前記燃焼室を形成し、前記金属製筒部の内部に前記香保持手段が設けられていることを特徴とする施術器具。
【請求項3】
請求項2に記載の施術器具であって、前記延長筒部が、終端側に膨出部を有することを特徴とする施術器具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の施術器具であって、前記延長筒部が、アロマオイルの噴霧容器を収容するための収容室を備え、前記収容室に収容された前記容器中のアロマオイルが前記香の燃焼熱で温められることを特徴とする施術器具。
【請求項5】
請求項1に記載の施術器具であって、前記筒状体が、前記燃焼室を形成する金属製筒部と、前記金属製筒部の前記板状体から遠い側の端部に結合された延長筒部とを有し、前記香保持手段が前記延長筒部に設けられ、前記香保持手段で保持された香の前記板状体側の先端が燃焼されることを特徴とする施術器具。
【請求項6】
請求項5に記載の施術器具であって、前記延長筒部の後端には、ノック部が設けられており、前記香保持手段で保持された香の前記燃焼室に突出する長さが、前記ノック部のノックによって可変されることを特徴とする施術器具。
【請求項7】
請求項5または6に記載の施術器具であって、前記板状体の表面にアロマオイルの容器が設置され、前記容器中のアロマオイルが前記香の燃焼熱で温められることを特徴とする施術器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−45705(P2011−45705A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167052(P2010−167052)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(505204594)
【Fターム(参考)】