説明

旅行時間予測システムおよび旅行時間予測プログラムならびにナビゲーションシステム

【課題】ルートを構成する各道路リンク上での気象条件を考慮した旅行時間の予測を、効率的かつ精度よく行うことが可能である旅行時間予測システムを提供する。
【解決手段】気象予報を取得して記録する気象情報取得部130と、リアルタイムの交通情報を取得して気象情報と合わせて現況交通情報141として記録し、気象条件を含む属性毎に旅行時間を算出して統計交通情報142として記録する交通情報取得部140と、統計交通情報142に基づいて、晴天時に対する降雨時等の旅行時間の増加率に基づいて、降雨量毎等の増加係数を算出して増加係数情報151として保持する増加係数算出部150と、統計交通情報142から晴天時の旅行時間を取得し、晴天ではない場合は気象情報131に基づいて増加係数情報151から該当する増加係数を取得し、晴天時の旅行時間に増加係数を乗算して予測値とする旅行時間算出部120とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムにおける旅行時間もしくは到着時刻の予測技術に関し、特に、目的地までのルート上の気象条件を考慮して旅行時間もしくは到着時刻を予測する旅行時間予測システムおよび旅行時間予測プログラムならびにナビゲーションシステムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨天時においては、一般的に車両は安全などのため速度を落として走行する。また、雨天時においては、雨に濡れることを嫌って、例えば、電車から車に移動手段を変更する人が多くなることにより走行車両の数が増える場合がある一方、雨天時にはそもそも外出を控える人がいるために走行車両の数が減る場合もある。すなわち、雨天時において道路が混雑するのか否か、目的地へ到着する時間が長くなるのか短くなるのかは、判断が難しい場合がある。
【0003】
このような状況は降雪時においても同様であるが、例えば、北海道や東北・北陸などの雪国地域においては、降雪は1年のうち3〜4ヶ月程を占めるため珍しい現象ではなく、地域によっても判断状況が異なる場合がある。
【0004】
例えば、車で目的地に移動する人にとって、雨や雪が降っている、もしくは降ると予想される場合に、通常(雨や雪が降っていない場合)に比べてどのくらいの移動時間がかかるのかを事前に把握することができれば、出発時間を調整したり、事前に連絡したりなどの対応をとることも可能となる。
【0005】
これに対して、近年、カーナビゲーションシステムを始めとするナビゲーションシステムでは、通信機能によって交通情報に加えて気象情報についても取得し、ルート周辺の気象情報を提示するとともに、これらの情報を考慮して、渋滞等を予測して目的地へのルートを探索したり、到着時刻の予測を行ったりする技術が提案されている。
【0006】
例えば、特開2006−337182号公報(特許文献1)には、交通情報提供装置において、交通情報センタから取得した現況の交通情報、気象情報センタから取得した気象予報情報および過去の交通統計情報を蓄積した交通情報DBから得られる交通統計情報に基づき、車両位置および走行日時を起点として、指定されたエリアに含まれる各リンクへの予想到着時刻および気象情報を予測することによって、そのリンクの気象考慮交通予測情報を生成し、生成した気象考慮交通予測情報をカーナビ装置に送信し、カーナビ装置において、その気象考慮交通予測情報を受信し、その受信した気象考慮交通予測情報に基づき誘導経路を探索する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−337182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたような従来のカーナビゲーションシステムでは、ルートを構成する各道路リンクについて、例えば、時間帯毎での旅行時間等の予測値を、晴天や雨、雪などの気象条件毎に統計処理によって算出したものを交通統計情報としてテーブルに保持することで、気象条件を考慮した旅行時間もしくは到着時刻の予測を行うことができる。
【0009】
ここで、雨や雪の場合は、降雨量や降雪量によっても旅行時間や速度は異なってくるものと考えられ(例えば、大雨の日は小雨の日よりも旅行時間が長くなる等)、雪の場合はさらに積雪量によっても異なってくるものと考えられる。また、例えば、曜日や祝祭日、いわゆる五十日やイベントなど、日に依存する属性によっても交通量は変動する。
【0010】
例えば特許文献1には、交通統計情報を、これらの属性毎に分けて算出した統計情報として保持してもよいことが記載されている。しかしながら、例えば、上記のような日に依存する属性を考慮し、さらに気象条件についても降雨量や降雪量、積雪量による変動を考慮する場合、旅行時間の予測値を保持する際の分類条件が多数になり、交通統計情報が膨大な量となってしまう。これは、旅行時間や到着時刻の予測を行う際の処理速度に悪影響を及ぼすとともに、特にカーナビゲーションシステムにおける車載器などの端末側で予測処理を行う場合には、保持することができるデータ量との関係で大きな問題となる。
【0011】
また、交通統計情報においては、各属性の全ての組み合わせについて統計処理による旅行時間等の予測値が得られるとは限らない。例えば、ある時間帯である降雨量や降雪量の気象条件となっているときに対象の道路リンク上を走行した車両が過去に1台も無い場合などでは、当該組み合わせでの交通情報が存在しない。この場合、当該気象条件については精度よく旅行時間の予測値を得ることは難しい。
【0012】
そこで本発明の目的は、ナビゲーションシステムにおいて、目的地までのルートを構成する各道路リンク上での降雨量や降雪量、積雪量といった気象条件を考慮した旅行時間もしくは到着時刻の予測を、効率的かつ精度よく行うことが可能である旅行時間予測システムおよび旅行時間予測プログラムならびにナビゲーションシステムを提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態による旅行時間予測システムは、ナビゲーションシステムにおいて、出発地から目的地までのルートを構成する各道路リンクにおける通過時点での気象条件を考慮して、前記出発地から前記目的地までの旅行時間を予測する旅行時間予測システムであって、以下の特徴を有するものである。
【0015】
すなわち、旅行時間予測システムは、外部の気象情報提供システムから前記ルートの周辺地域の気象予報を取得し、前記各道路リンクにおける気象情報に変換して記録する気象情報取得部と、リアルタイムの交通情報を収集する外部の交通情報提供システムから、前記各道路リンクを含む道路区間についてのリアルタイムの前記交通情報を取得して、前記各道路リンクにおける前記気象情報と合わせて現況交通情報として記録し、また、蓄積された前記現況交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、気象条件を含む属性毎に前記旅行時間の統計値を算出して統計交通情報として記録する交通情報取得部と、前記統計交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、晴天時の前記旅行時間の統計値に対する、降雨時、降雪時および積雪時のそれぞれの前記旅行時間の増加率を算出し、降雨量、降雪量および積雪量と前記増加率との関係を直線近似したものに基づいて、降雨量、降雪量および積雪量毎の増加係数に係る情報を算出して、増加係数情報として保持する増加係数算出部とを有する。
【0016】
さらに、前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記統計交通情報から晴天時の前記旅行時間の統計値を取得し、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天である場合は、晴天時の前記旅行時間の統計値を前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とし、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天ではない場合は、前記道路リンクにおける前記気象情報に基づいて前記増加係数情報から前記道路リンクにおける前記気象情報に該当する前記増加係数を取得し、晴天時の前記旅行時間の統計値に前記増加係数を乗算して、前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とする旅行時間算出部とを有することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明は、コンピュータを上記のような旅行時間予測システムとして機能させるプログラムおよび上記のような旅行時間予測システムを有するナビゲーションシステムにも適用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
本発明の代表的な実施の形態によれば、目的地までのルートを構成する各道路リンク上のそれぞれの到着時刻における、降雨量や降雪量、積雪量の情報に基づいて、これらによる遅れ(進み)を考慮した旅行時間もしくは到着時刻を精度よく予測することができる。また、気象条件を考慮することによる交通統計情報の肥大化を抑制し、端末側でも気象条件を考慮した旅行時間もしくは到着時刻の予測処理を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における本発明の一実施の形態である旅行時間予測システムを有するナビゲーションシステムの構成例の概要を示した図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の一実施の形態における、気象条件毎に旅行時間の平均値が晴天時の旅行時間の平均値からどの程度増加しているかの例を示した図である。
【図3】本発明の一実施の形態における旅行時間予測処理の流れの例について示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態における旅行時間を予測する際の具体的な例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
本発明の一実施の形態である旅行時間予測システムは、ナビゲーションシステムにおけるセンター側にて蓄積した交通情報の統計から、道路リンク毎に、降雨量、降雪量、積雪量による旅行時間の晴天時からの増加(減少)率との関係を求めてこれを直線近似し、気象条件によって当該近似直線から得られる増加係数に基づいて、気象条件を考慮した旅行時間もしくは到着時刻を算出することを可能とするシステムである。
【0023】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である旅行時間予測システムを有するナビゲーションシステムの構成例の概要を示した図である。図1の例では、ナビゲーションシステム1は、センター型の構成を有し、ナビゲーション機能を提供するサーバに相当する旅行時間予測システム100にインターネット等のネットワーク40を介して複数のナビゲーション端末10が接続可能な構成を有する。また、旅行時間予測システム100は、ネットワーク40等を介して、外部の気象情報提供システム20および交通情報提供システム30から気象情報および交通情報を取得することが可能な構成となっている。
【0024】
本実施の形態では、ナビゲーションシステム1をカーナビゲーションシステムとし、ナビゲーション端末10として車載器を例に挙げて説明するが、ナビゲーションシステム1はカーナビゲーションシステムに限らず、例えば歩行者等が利用するものなどナビゲーション機能を有するものであれば適用可能である。また、ナビゲーション端末10についても、携帯電話などの携帯端末や、PC(Personal Computer)上で稼働するWebブラウザなど、旅行時間予測システム100にアクセスしてナビゲーション機能を利用することができるあらゆる情報機器(ハードウェア、ソフトウェア)が含まれる。
【0025】
旅行時間予測システム100は、例えば、コンピュータシステムによるサーバ機器等によって構成され、ナビゲーション端末10からの要求に応じて出発地から目的地までの旅行時間もしくは目的地への到着時刻や出発地からの推奨出発時刻など(以下では単に「旅行時間」と記載する場合がある)を予測して応答するシステムである。なお、ナビゲーション機能として出発地から目的地までの推奨ルートを探索する機能を有していてもよいし、探索されたルート(道路リンク)の情報を入力として旅行時間の予測値もしくは旅行時間を予測するための情報を応答するものであってもよい。
【0026】
本実施の形態のナビゲーションシステム1では、センター型の構成により、旅行時間予測システム100においてルートの探索や旅行時間の予測を行ってナビゲーション端末10に応答するものとしているが、ナビゲーション端末10側で、旅行時間予測システム100から情報を取得してルート探索や旅行時間の算出を行う構成とすることも可能である。
【0027】
旅行時間予測システム100は、例えば、ソフトウェアプログラムによって実装された、ルート探索部110、旅行時間算出部120、気象情報取得部130、交通情報取得部140、および増加係数算出部150の各部と、気象情報131、変換テーブル132、現況交通情報141、および統計交通情報142の各データベースもしくはテーブルを有する。
【0028】
ルート探索部110は、一般的なナビゲーションシステムが有するルート探索の機能を有し、ナビゲーション端末10を介したユーザからの出発地および目的地の指示に応じて、図示しない道路リンクデータに基づいて、例えば最短ルートなどの推奨ルートを探索し、必要に応じて図示しない地図データ上にルートをマッピングして応答する処理を行う。
【0029】
旅行時間算出部120は、例えば、ルート探索部110によって探索されたルートもしくはユーザによって指定されたルート(もしくはルートを構成する道路リンク)について、これを通過するために必要となる旅行時間の予測値を算出する処理を行う。算出に際しては、後述する現況交通情報141から取得可能なリアルタイムの交通情報を基本とし、必要に応じて統計交通情報142の情報に気象情報131や増加係数情報151の情報を利用することで、雨や雪、積雪などの気象条件による遅れ(進み)を考慮した旅行時間の予測値を算出する。旅行時間の予測処理の詳細については後述する。
【0030】
気象情報取得部130は、外部の気象情報提供システム20からネットワーク40等を介して気象情報を取得して気象情報131に記録する処理を行う。本実施の形態では、気象情報として少なくとも降雨量、降雪量および積雪量の現況および予報の情報を取得するものとする。
【0031】
降雨量については、例えば、気象庁が、降水短時間予報において1km格子毎に目先1〜6時間先まで30分間隔で降雨量の情報を提供し、また、降水ナウキャストにおいて目先1時間先まで10分間隔で提供しており、オンラインで取得することが可能である。また、降雪量および積雪量については、例えば、社団法人雪センターが、約20km四方の格子毎に、6時間先毎に24時間先まで降雪量の予報を4段階(なし、2cm以下、3〜5cm、6cm以上)で提供しており、オンラインで取得することが可能である。積雪情報については、現況の値は取得可能であるが、将来的には予報についても取得可能になるものと考えられる。
【0032】
気象情報取得部130は、上記のような気象情報を気象情報提供システム20からネットワーク40等を介してオンラインで取得して気象情報131に記録するが、取得した気象情報は、格子毎の地域単位の情報となっている。そこで、これを該当する地域に存在する道路リンク毎の情報に変換した上で気象情報131に記録する。このとき、例えば、取得した気象情報における地図メッシュ番号と道路リンク番号とを対応付けたものを予め変換テーブル132に保持しておき、これを利用して変換するようにしてもよい。
【0033】
交通情報取得部140は、外部の交通情報提供システム30からネットワーク40等を介してリアルタイムの交通情報を取得して現況交通情報141に記録して蓄積するとともに、過去分も含めた交通情報から統計情報を算出して統計交通情報142に記録する処理を行う。
【0034】
リアルタイムの交通情報としては、例えば、渋滞情報などの交通情報を提供するVICS(道路交通情報通信システム、登録商標)が知られているが、本実施の形態では、いわゆるプローブ情報も合わせて利用するものとする。プローブ技術では、車両そのものをセンサーと考えて、例えば、車載器が有するGPS(Global Positioning System)機能によって測位された位置情報や速度情報など車両が検知することができる様々な情報をプローブ情報として交通情報提供システム30(センター)に送信することができる。交通情報提供システム30は、各車両から集められたプローブ情報に基づいて、例えば、区間における旅行時間や平均速度等を算出して、リアルタイムの交通情報として提供する。
【0035】
プローブ情報による交通情報では、実際の走行車両から情報を得るため、リアルタイムで現実に即した精度の高い情報(現況交通情報)を取得することができる。一方、走行車両が存在しない区間については情報を取得することができず、リアルタイムの交通情報を取得することができない。そこで、当該条件における過去の平均的な情報を利用して交通情報(統計交通情報)とする。例えば、過去の所定の期間の現況交通情報から、道路リンク毎に、時間帯や曜日、祝祭日などに分類して旅行時間の平均値を算出し、統計交通情報142に記録しておくことで、現況交通情報が得られない場合に同一条件の統計交通情報を利用することができる。
【0036】
なお、リアルタイムの交通情報を交通情報提供システム30から取得して現況交通情報141に記録する際に、例えば、気象情報取得部130が取得した現況の気象情報と合わせて記録することで、統計交通情報を算出する際に、さらに気象条件毎に分類して旅行時間の平均値を算出して統計交通情報142に記録することが可能である。
【0037】
増加係数算出部150は、道路リンクおよび時間帯や曜日等毎に、統計交通情報142に記録された、気象条件毎に異なる旅行時間の平均値に基づいて、降雨量や降雪量、積雪量に応じて晴天時(雨、雪ではなく積雪がない状況)の旅行時間の平均値からどれだけ旅行時間が増加(減少)するかを算出し、増加係数として増加係数情報151に記録する処理を行う。
【0038】
<増加係数>
以下では、増加係数算出部150によって算出される増加係数について説明する。増加係数は、各道路リンクについて、降雨量や降雪量、積雪量に応じて晴天時の旅行時間の平均値からどれだけ旅行時間が増加(減少)するかを示す係数である。
【0039】
例えば、雨天時においては、一般的に晴天時と比較して旅行時間が増加する場合が多いと考えられるが、降雨量によって増加する度合いは異なるものと考えられる。そこで、各道路リンクについて、例えば、統計交通情報142(もしくは現況交通情報141を集計したもの)に記録された降雨量毎の旅行時間の平均値の、晴天時の旅行時間の平均値からの増加率を算出する。
【0040】
図2は、気象条件毎に旅行時間の平均値が晴天時の旅行時間の平均値からどの程度増加しているかの例を示した図である。例えば図2(a)は、ある道路リンクについて、降雨量(cm/h)毎の旅行時間の平均値の晴天時からの増加率を棒グラフによって示した例である。グラフ上でデータ(棒)が存在しない箇所は、当該条件における過去の交通情報の記録がないことを示している。
【0041】
ここで、実際に蓄積した膨大な量の交通情報のデータから増加率を求めると、降雨量の増加とともに増加率は概ね比例する形で大きくなるという傾向が得られる。そこで、例えば増加係数算出部150等によって、増加率の値を例えば任意の手法により一次直線で近似したものを、増加係数線として定義し、この情報を増加係数情報151に保持しておく。この増加係数線に基づいて、各降雨量での増加係数を得られるようにする。なお、増加係数線として定義せず、降雨量の所定の区切り毎に増加係数線から得られる増加係数の値(もしくは実際の増加率をそのまま増加係数としたもの)をテーブル等として増加係数情報151に保持するようにしてもよい。
【0042】
実際に蓄積した膨大な量の交通情報のデータから求められた増加係数線は、同一の道路リンクについて、曜日や祝祭日、五十日などの、日によって交通量が変動する属性にほとんど影響されない状態で得られている。すなわち、通常の日の晴天時の旅行時間の平均値をA、降雨量Xでの旅行時間の平均値をaとし、例えば祝祭日や、五十日などにおける晴天時の旅行時間の平均値をB、降雨量Xでの旅行時間の平均値をbとすると、A、a、B、bの値自体はそれぞれ異なるが、通常の日の増加率(a/A)と祝祭日や五十日等での増加率(b/B)には有意な差が現れない(概ね同じとなる)という傾向が得られる。
【0043】
従って、各道路リンクについて、曜日や祝祭日、五十日等により分類した晴天時の旅行時間の平均値と、各降雨量についての増加係数の値さえあれば、
降雨時の旅行時間=晴天時の旅行時間の平均値×増加係数 …(1)
の式により、曜日や祝祭日、五十日等による影響も含めて、降雨量毎の旅行時間を予測することができ、旅行時間を予測する際に必要とするデータの量を大幅に削減することができる。また、増加係数線の形式で利用すれば、さらにデータ量を削減することも可能である。また、過去の交通情報の記録がない条件であっても増加係数を求めることができ、精度が高い旅行時間の予測値を得ることができる。
【0044】
図2(b)は、(a)と同様に、ある道路リンクについて、降雪量(cm/h)毎の旅行時間の平均値の晴天時からの増加率を棒グラフによって示した例である。降雪時についても、降雨時と同様に、増加率は降雪量に概ね比例するという傾向が得られる。そこで、降雪時についても同様に増加係数線を求めて、この情報を増加係数情報151に保持しておき、これに基づいて各降雪量での増加係数が得られるようにする。これにより、降雨時と同様に、
降雪時の旅行時間=晴天時の旅行時間の平均値×増加係数 …(2)
の式により、曜日や祝祭日、五十日等による影響も含めて、降雪量毎の旅行時間を予測することができ、旅行時間を予測する際に必要とするデータの量を大幅に削減することができる。
【0045】
図2(c)は、(a)(b)と同様に、ある道路リンクについて、積雪量(cm/h)毎の旅行時間の平均値の晴天時からの増加率を棒グラフによって示した例である。積雪時については、ある積雪量までは、降雨時や降雪時と同様に、増加率は積雪量に概ね比例するという傾向が得られる。一方、ある積雪量以上では、増加率は積雪量に依存せず概ね一定となる傾向が得られる。
【0046】
そこで、積雪時については、ある積雪量(以下では「境界積雪量」と記載する場合がある)までは降雨時や降雪時と同様に増加率の値を任意の手法により一次直線で近似したものを増加係数線(1)として定義し、また、境界積雪量以上は傾きゼロの一次直線(一定値)で近似したものを増加係数線(2)として定義して、これらの情報を増加係数情報151に保持しておく。これらの増加係数線(1)、(2)に基づいて、各積雪量での増加係数を得られるようにする。これにより、降雨時や降雪時と同様に、
積雪時の旅行時間=晴天時の旅行時間の平均値×増加係数 …(3)
の式により、曜日や祝祭日、五十日等による影響も含めて、積雪量毎の旅行時間を予測することができ、旅行時間を予測する際に必要とするデータの量を大幅に削減することができる。
【0047】
なお、上記の増加係数線は、いずれも時間帯(例えば、朝、日中、夕方等)によって異なるものになる傾向を有する。従って、時間帯毎に増加係数線を算出して、増加係数情報151に情報を保持しておくのが望ましい。
【0048】
<旅行時間予測処理>
以下では、旅行時間予測システム100(特に旅行時間算出部120)における旅行時間の予測処理の内容について説明する。図3は、旅行時間予測処理の流れの例について示したフローチャートである。
【0049】
旅行時間予測処理を開始すると、まずユーザは、ナビゲーション端末10から、出発地および目的地の情報と、出発日時もしくは到着日時の情報を指定する(S01)。出発地および目的地の情報は、いずれもユーザが入力もしくは選択する等により指定してもよいし、出発地の情報についてはナビゲーション端末10のGPS機能により取得した現在位置の情報を使用してもよい。なお、出発日時を指定した場合は、目的地までの旅行時間および/または到着時刻を予測し、到着日時を指定した場合は、目的地までの旅行時間および/または推奨出発時刻を予測することになる。
【0050】
次に、旅行時間予測システム100のルート探索部110は、指定された出発地および目的地の情報に基づいて、出発地から目的地に至るルートを探索する(S02)。なお、本実施の形態では、センター側の旅行時間予測システム100のルート探索部110が探索を行うものとしているが、ナビゲーション端末10が探索を行うものであってもよい。
【0051】
その後、ルートを構成する道路リンク毎に旅行時間を予測するループ処理を行う。ループ処理を開始すると、まず、対象の道路リンクを車両が通過する予想時刻を算出する(S03)。ステップS01において出発日時が指定されている場合は、出発地の道路リンクから対象の道路リンクに至るまでの各道路リンクの旅行時間の積算時間と出発日時に基づいて算出することができる。また、到着日時が指定されている場合は、目的地から対象の道路リンクに遡った各道路リンクの旅行時間の積算時間と到着日時に基づいて算出することができる。
【0052】
次に、対象の道路リンクを通過する予想時刻が、現在時刻から所定の時間の経過前であるか否かを判定する(S04)。現在時刻から所定の時間の経過前である場合には、現在のリアルタイムの交通情報を利用することで交通状況の実情に即した予測を行うことができる。従って、現況交通情報141に、同一条件(道路リンク、時間帯、曜日や祝祭日等、および気象条件(降雨量、降雪量、積雪量))のリアルタイム(現在)の交通情報があるか否かを判定する(S05)。同一条件のリアルタイムの交通情報がある場合は、現況交通情報141から当該交通情報における旅行時間の平均値を取得して旅行時間の予測値とし(S06)、ステップS13に進む。
【0053】
ステップS04において、対象の道路リンクを通過する予想時刻が、現在時刻から所定の時間を経過している場合、もしくはステップS05において、同一条件のリアルタイムの交通情報がない場合は、統計交通情報142の情報を使用して旅行時間を予測する。まず、気象情報131から対象の道路リンク周辺の気象予報を取得して、予報が雨もしくは雪であるか否かを判定する(S07)。予報が雨もしくは雪ではない場合、すなわち、降雨量、降雪量、および積雪量の予報がいずれもゼロである場合は、統計交通情報142から、晴天時における同一条件(道路リンク、時間帯、曜日や祝祭日等)の旅行時間の平均値を取得して旅行時間の予測値とし(S08)、ステップS13に進む。
【0054】
なお、晴天時における同一条件の旅行時間の平均値の情報が統計交通情報142に存在しない場合は、例えば、対象の道路リンクの距離と一般的な走行速度などから予め算出して設定しておいた、対象の道路リンクについての旅行時間のデフォルト値を用いるものとする。
【0055】
ステップS07において対象の道路リンク周辺の気象予報が雨もしくは雪である場合は、統計交通情報142に、同一条件(道路リンク、時間帯、曜日や祝祭日等、および気象条件(降雨量、降雪量、積雪量))の旅行時間の平均値の情報があるか否かを判定する(S09)。同一条件の旅行時間の平均値の情報がある場合は、統計交通情報142から当該旅行時間の平均値を取得して旅行時間の予測値とし(S10)、ステップS13に進む。
【0056】
ステップS09において同一条件の旅行時間の平均値の情報がない場合は、増加係数情報151から、対象の道路リンクについての、気象条件に該当する増加係数を取得する(S11)。さらに、統計交通情報142から、晴天時における同一条件(道路リンク、時間帯、曜日や祝祭日等)の旅行時間の平均値を取得し、この値に増加係数を乗算して旅行時間の予測値とし(S12)、ステップS13に進む。なお、晴天時における同一条件の旅行時間の平均値の情報が統計交通情報142に存在しない場合は、上述したステップS08の場合と同様に、対象の道路リンクについて予め設定しておいた旅行時間のデフォルト値を用いるものとする。
【0057】
ステップ13では、ステップS06もしくはS08もしくはS10もしくはS12にて求めた対象の道路リンクについての旅行時間の予測値を、これまでの旅行時間の予測値に積算し(S13)、次の道路リンクの処理に移る。ループ処理においてルート上の全ての道路リンクについての処理が終了した場合は、これまでに積算した旅行時間の予測値の合計を、出発地から目的地までの旅行時間の予測値としてルート探索部110等に出力して(S14)、処理を終了する。
【0058】
なお、図3の例では、センター側の旅行時間予測システム100におけるルート探索部110や旅行時間算出部120が、ルート探索や旅行時間の予測処理を行うものとしているが、ナビゲーション端末10がルート探索や旅行時間の予測処理を行う構成をとる場合は、例えば、統計交通情報142において、各道路リンクについて、所定の日数分についての、曜日や祝祭日、五十日等により分類した晴天時の旅行時間の平均値のみを有したものを別途ナビゲーション端末10にも保持させておく。
【0059】
このとき、ナビゲーション端末10からの要求に応じて、旅行時間予測システム100が気象条件に対応する増加係数の情報のみを増加係数情報151から取得して応答する。もしくは、一定地域の各道路リンクについて、気象条件毎の増加係数の情報を予めナビゲーション端末10に格納しておいてもよい。ナビゲーション端末10では、ステップS09の判断を行わずに、一律でステップS11、S12の処理によって、増加係数に基づいて旅行時間の予測値を算出することができる。これにより、ナビゲーション端末10にて保持する統計交通情報等の情報の増大を抑制しつつ、ナビゲーション端末10側でも気象条件(降雨量、降雪量、積雪量)による遅れを考慮して精度よく旅行時間の予測を行うことが可能となる。
【0060】
<旅行時間予測の例>
以下では、上述した旅行時間予測処理によって実際に旅行時間を予測する際の具体的な例について説明する。図4は、旅行時間を予測する際の具体的な例を示した図である。図4の例では、ルート探索部110によって探索されたルートが、リンク1〜8の8つの道路リンクによって構成されている状況を示している。また、リンク1のエリアが雨、リンク2のエリアが晴、リンク3、4のエリアが雨、リンク5〜8のエリアが降雪であり、リンク7、8からは積雪情報が得られるものとしている。
【0061】
下段の表は、上記のような条件における道路リンク毎の旅行時間の計算例について示したものである。例えば、リンク1では、通過予想時刻が現在時刻から所定時間経過するより前であるものとし、気象情報131から得られる通過時の気象条件は雨(降雨量は例えば2単位)、かつ、リアルタイムの交通情報が現況交通情報141から取得できる場合を示している。このときは、図3におけるステップS06において、リアルタイムの交通情報における旅行時間である330(秒)を取得して、旅行時間の予測値とする。
【0062】
また、リンク2では、出発日時からリンク1の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、通過予想時刻が現在時刻から所定時間経過するより前であるものとする。また、気象情報131から得られる通過時の気象条件は晴、かつ、リアルタイムの交通情報が現況交通情報141から取得できない場合を示している。このときは、図3におけるステップS08において、統計交通情報142から晴天時における同一条件(リンク2、同一時間帯など)の旅行時間の平均値である300(秒)を取得して、旅行時間の予測値とする。
【0063】
また、リンク3では、出発日時からリンク1、2の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、通過予想時刻が現在時刻から所定時間経過した後であるものとする。また、気象情報131から得られる通過時の気象条件は雨(降雨量は例えば4単位)、かつ、同一条件の旅行時間の平均値が統計交通情報142から取得できる場合を示している。このときは、図3におけるステップS10において、統計交通情報142から同一条件(リンク3、同一時間帯、降雨量4単位など)における旅行時間の平均値である580(秒)を取得して、旅行時間の予測値とする。
【0064】
また、リンク4では、出発日時からリンク1〜3の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、気象情報131から得られる通過時の気象条件は雨(降雨量は例えば8単位)、かつ、同一条件の旅行時間の平均値が統計交通情報142から取得できない場合を示している。このときは、図3におけるステップS11、S12において、増加係数情報151から同一条件(リンク4、降雨量8単位)における増加係数である1.2を取得し、さらに、統計交通情報142から晴天時における同一条件(リンク4、同一時間帯など)における旅行時間の平均値である470(秒)を取得して、これらを乗算して旅行時間の予測値とする。
【0065】
同様に、リンク5では、出発日時からリンク1〜4の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、気象情報131から得られる通過時の気象条件は雪(降雪量は例えば2単位)、かつ、同一条件の旅行時間の平均値が統計交通情報142から取得できる場合を示している。このときは、図3におけるステップS10において、統計交通情報142から同一条件(リンク5、同一時間帯、降雪量2単位など)における旅行時間の平均値である920(秒)を取得して、旅行時間の予測値とする。
【0066】
また、リンク6では、出発日時からリンク1〜5の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、気象情報131から得られる通過時の気象条件は雪(降雪量は例えば4単位)、かつ、同一条件の旅行時間の平均値が統計交通情報142から取得できず、さらに晴天時の旅行時間の平均値も取得できない場合を示している。このときは、図3におけるステップS11、S12において、増加係数情報151から同一条件(リンク6、降雪量4単位)における増加係数である1.4を取得し、さらに、リンク6における旅行時間のデフォルト値である430(秒)を取得して、これらを乗算して旅行時間の予測値とする。
【0067】
同様に、リンク7では、出発日時からリンク1〜6の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、気象情報131から得られる通過時の気象条件は積雪(積雪量は例えば2単位)、かつ、同一条件の旅行時間の平均値が統計交通情報142から取得できない場合を示している。このときは、図3におけるステップS11、S12において、増加係数情報151から同一条件(リンク7、積雪量2単位)における増加係数である1.6を取得し、さらに、統計交通情報142から晴天時における同一条件(リンク7、同一時間帯など)における旅行時間の平均値である530(秒)を取得して、これらを乗算して旅行時間の予測値とする。
【0068】
また、リンク8では、出発日時からリンク1〜7の旅行時間の予測値だけ経過した時刻が通過予想時刻であり、気象情報131から得られる通過時の気象条件は積雪(積雪量は例えば8単位)、かつ、同一条件の旅行時間の平均値が統計交通情報142から取得できる場合を示している。このときは、図3におけるステップS10において、統計交通情報142から同一条件(リンク8、同一時間帯、積雪量8単位など)における旅行時間の平均値である840(秒)を取得して、旅行時間の予測値とする。
【0069】
上記の計算により、出発地から目的地までの全体(リンク1〜8)での旅行時間は、リンク1〜8のそれぞれの旅行時間の予測値の合計である4,984(秒)と予測される。一方、例えば各道路リンクにおける旅行時間のデフォルト値を利用して算出した場合、すなわち、気象条件を考慮せずに算出した場合は、デフォルト値の合計である4,080(秒)となる。すなわち、気象条件を考慮することによって904秒(約22%)遅く到着することをユーザに提示することができる。
【0070】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である旅行時間予測システムによれば、気象条件(降雨量、降雪量、積雪量)による旅行時間の変動を適切にモデル化し、晴天時からの増加率を増加係数という形で保持することから、統計交通情報に保持する気象条件毎の旅行時間の平均値が取得できない場合も含め、気象条件毎の旅行時間の予測値を精度よく算出することが可能となる。また、気象条件によって変動する旅行時間の情報を、増加係数(もしくは増加係数線)という形でデータ量を圧縮して保持するため、気象条件を考慮することによる統計交通情報の肥大化を抑制し、ナビゲーション端末側でも気象条件を考慮した旅行時間もしくは到着時刻の予測処理を容易に行うことが可能となる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、目的地までのルート上の気象条件を考慮して旅行時間もしくは到着時刻を予測する旅行時間予測システムおよび旅行時間予測プログラムならびにナビゲーションシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…ナビゲーションシステム、
10…ナビゲーション端末、20…気象情報提供システム、30…交通情報提供システム、40…ネットワーク、
100…旅行時間予測システム、110…ルート探索部、120…旅行時間算出部、130…気象情報取得部、131…気象情報、132…変換テーブル、140…交通情報取得部、141…現況交通情報、142…統計交通情報、150…増加係数算出部、151…増加係数情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーションシステムにおいて、出発地から目的地までのルートを構成する各道路リンクにおける通過時点での気象条件を考慮して、前記出発地から前記目的地までの旅行時間を予測する旅行時間予測システムであって、
外部の気象情報提供システムから前記ルートの周辺地域の気象予報を取得し、前記各道路リンクにおける気象情報に変換して記録する気象情報取得部と、
リアルタイムの交通情報を収集する外部の交通情報提供システムから、前記各道路リンクを含む道路区間についてのリアルタイムの前記交通情報を取得して、前記各道路リンクにおける前記気象情報と合わせて現況交通情報として記録し、また、蓄積された前記現況交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、気象条件を含む属性毎に前記旅行時間の統計値を算出して統計交通情報として記録する交通情報取得部と、
前記統計交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、晴天時の前記旅行時間の統計値に対する、降雨時、降雪時および積雪時のそれぞれの前記旅行時間の増加率を算出し、降雨量、降雪量および積雪量と前記増加率との関係を直線近似したものに基づいて、降雨量、降雪量および積雪量毎の増加係数に係る情報を算出して、増加係数情報として保持する増加係数算出部と、
前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記統計交通情報から晴天時の前記旅行時間の統計値を取得し、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天である場合は、晴天時の前記旅行時間の統計値を前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とし、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天ではない場合は、前記道路リンクにおける前記気象情報に基づいて前記増加係数情報から前記道路リンクにおける前記気象情報に該当する前記増加係数を取得し、晴天時の前記旅行時間の統計値に前記増加係数を乗算して、前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とする旅行時間算出部とを有することを特徴とする旅行時間予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の旅行時間予測システムにおいて、
前記旅行時間算出部は、前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天ではない場合に、前記統計交通情報に、前記道路リンクについての前記気象条件を含む前記各属性の条件が同一のものがある場合は、同一の条件の前記統計交通情報から前記旅行時間の統計値を取得して、前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とすることを特徴とする旅行時間予測システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の旅行時間予測システムにおいて、
前記旅行時間算出部は、前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記現況交通情報に記録されたリアルタイムの前記交通情報に、前記道路リンクについての前記気象条件を含む前記各属性の条件が同一であり利用可能な前記交通情報がある場合には、前記交通情報から前記旅行時間の情報を取得して、前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とすることを特徴とする旅行時間予測システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の旅行時間予測システムにおいて、
前記旅行時間算出部は、前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天ではない場合に、前記道路リンクにおける前記気象情報に基づいて前記増加係数情報から前記道路リンクにおける前記気象情報に該当する前記増加係数を取得して出力することを特徴とする旅行時間予測システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の旅行時間予測システムにおいて、
前記増加係数算出部は、積雪量と前記増加率との関係を直線近似する際に、積雪量が所定の値より大きい領域については、増加係数が一定値となるように直線近似することを特徴とする旅行時間予測システム。
【請求項6】
ナビゲーションシステムにおいて、出発地から目的地までのルートを構成する各道路リンクにおける通過時点での気象条件を考慮して、前記出発地から前記目的地までの旅行時間を予測する旅行時間予測システムとしてコンピュータを機能させる旅行時間予測プログラムであって、
外部の気象情報提供システムから前記ルートの周辺地域の気象予報を取得し、前記各道路リンクにおける気象情報に変換して記録する気象情報取得処理と、
リアルタイムの交通情報を収集する外部の交通情報提供システムから、前記各道路リンクを含む道路区間についてのリアルタイムの前記交通情報を取得して、前記各道路リンクにおける前記気象情報と合わせて現況交通情報として記録し、また、蓄積された前記現況交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、気象条件を含む属性毎に前記旅行時間の統計値を算出して統計交通情報として記録する交通情報取得処理と、
前記統計交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、晴天時の前記旅行時間の統計値に対する、降雨時、降雪時および積雪時のそれぞれの前記旅行時間の増加率を算出し、降雨量、降雪量および積雪量と前記増加率との関係を直線近似したものに基づいて、降雨量、降雪量および積雪量毎の増加係数に係る情報を算出して、増加係数情報として保持する増加係数算出処理と、
前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記統計交通情報から晴天時の前記旅行時間の統計値を取得し、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天である場合は、晴天時の前記旅行時間の統計値を前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とし、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天ではない場合は、前記道路リンクにおける前記気象情報に基づいて前記増加係数情報から前記道路リンクにおける前記気象情報に該当する前記増加係数を取得し、晴天時の前記旅行時間の統計値に前記増加係数を乗算して、前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とする旅行時間算出処理とを実行することを特徴とする旅行時間予測プログラム。
【請求項7】
ナビゲーションサーバとナビゲーション端末からなり、出発地から目的地までのルートを構成する各道路リンクにおける通過時点での気象条件を考慮して、前記出発地から前記目的地までの旅行時間を予測するナビゲーションシステムであって、
前記ナビゲーションサーバは、
前記ナビゲーション端末からの要求に基づいて、前記出発地から前記目的地までの前記ルートを探索するルート探索部と、
外部の気象情報提供システムから前記ルートの周辺地域の気象予報を取得し、前記各道路リンクにおける気象情報に変換して記録する気象情報取得部と、
リアルタイムの交通情報を収集する外部の交通情報提供システムから、前記各道路リンクを含む道路区間についてのリアルタイムの前記交通情報を取得して、前記各道路リンクにおける前記気象情報と合わせて現況交通情報として記録し、また、蓄積された前記現況交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、気象条件を含む属性毎に前記旅行時間の統計値を算出して統計交通情報として記録する交通情報取得部と、
前記統計交通情報に基づいて、前記各道路リンクについて、晴天時の前記旅行時間の統計値に対する、降雨時、降雪時および積雪時のそれぞれの前記旅行時間の増加率を算出し、降雨量、降雪量および積雪量と前記増加率との関係を直線近似したものに基づいて、降雨量、降雪量および積雪量毎の増加係数に係る情報を算出して、増加係数情報として保持する増加係数算出部と、
前記ルートを構成する前記各道路リンクについて、前記統計交通情報から晴天時の前記旅行時間の統計値を取得し、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天である場合は、晴天時の前記旅行時間の統計値を前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とし、前記道路リンクにおける前記気象情報が晴天ではない場合は、前記道路リンクにおける前記気象情報に基づいて前記増加係数情報から前記道路リンクにおける前記気象情報に該当する前記増加係数を取得し、晴天時の前記旅行時間の統計値に前記増加係数を乗算して、前記道路リンクにおける前記旅行時間の予測値とする旅行時間算出部とを有することを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−185814(P2011−185814A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52752(P2010−52752)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】