説明

旋回式微細気泡発生装置

【課題】水等の液体に空気等の気体を導入・溶解させて浄化等するための旋回式微細気泡発生装置であって、小規模な水環境への適用可能なように小型化・簡易化を図る。
【解決手段】回転対称に形成された中空部を有する略球形の器体と、前記器体の回転対称軸上の一方側の外壁を回転対称軸に沿って前記中空部内に略円錐台形に突出させて開設した気体導入口と、回転対称軸上の他方側の外壁に開設した気液噴出口と、前記気液噴出口の近傍において回転対称軸に対し垂直方向に開設した加圧液導入口と、を備え、前記器体内に流入した液体の旋回流により前記気体導入口から自吸した気体を微細気泡化し、前記気液噴出口から微細気泡を含む旋回気液混合液を導出するように成したことを特徴とする旋回式微細気泡発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気、ガス等の気体を水、その他の液体等に効率的に溶解して、たとえば水質を浄化して水環境を蘇生するための微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細気泡発生装置としては様々な方式のものが知られているが、比較的簡易かつ小規模な装置で大量の微細気泡を安定的に生成可能な方式として気液せん断方式がある。この気液せん断方式は、気液二相の流体中に高速渦流を発生させ、液流の遠心分離作用により渦流中心部に負圧の気体からなる旋回空洞部(以下、「負圧空洞部」と記す。)を形成し、液体の高速渦流と負圧空洞部との旋回速度差によって気体をせん断して微細化するものである。
【0003】
かかる気液せん断方式の微細気泡発生装置の従来技術としては、特許文献1(特許第3397154号公報)、特許文献2(特開2006−116365号公報)に記載された発明の如く、円筒形開放容器内の内部に加圧液体を導入して高速渦流を発生させ、該高速渦流により生じた負圧空洞部の負圧により外部から気体を自吸して微細気泡化する技術が基本となる。
【特許文献1】特許第3397154号公報
【特許文献2】特開2006−116365号公報
【0004】
また、本願発明の発明者は、特許文献3(特許第4621796号)に記載された発明を提案している。すなわち、両端を閉鎖した円筒形容器の一端側の壁体に気液噴出口を設け、他端側の壁体を、気体自吸口を有し、かつ円筒形容器の軸線方向に沿って前後移動可能とすることで、生成される微細気泡の拡散形状を制御可能としたことを特徴とする、新たな気液せん断方式の微細気泡発生装置(以下、「旋回式微細気泡発生装置」と記す。)である。
【特許文献3】特許第4621796号
【0005】
一方、旋回式微細気泡発生装置には、特許文献4(特許第3682286号公報)に記載された発明の如く、容器内に液体と気体を別個に導入するのではなく、あらかじめ液体と気体を混合した気液混合液の状態で導入する発明も提案されている。該発明は、容器の形状を球形、半球形、あるいはそれらを複数組み合わせた様々な形状とし、個々の容器においては、単一の導入口から導入した気液混合液により容器内に高速渦流を発生させるとともに、容器を浸漬した液体中に開放された一つ又は二つの気液噴出口から液体を取り込みつつ微細気泡を噴出させることを特徴としている。
【特許文献4】特許第3682286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、微細気泡発生装置は、前述の通り気体を微細気泡化することにより液体に効率的に溶解させることを目的とするものであり、湖沼や池、河川、海洋等の大規模な水環境にも、水槽や水道等の比較的限定された小規模な水環境にも適用される。前者に適用する場合は、微細気泡発生装置及びその附帯設備は比較的大型かつ複雑なものであってよいが、後者へ適用する場合は可能な限り小型かつ簡易な構造が求められる。
【0007】
特許文献4に記載の発明の如く、微細気泡発生装置に気液混合液を導入する方式は、大量の気体を導入でき、気液の混合比率もあらかじめ所定値に制御できるため、大規模な水環境への適用を想定した場合には利点を有する。しかし、この方式は、気液の混合比率を制御するための別途の装置を必要とするため、附帯設備も含めた装置全体の小型化は困難であり、たとえば家庭用の浄水器やシャワーヘッド等への組み込みなど、小規模な水環境への適用は難しいという問題がある。
【0008】
また、この方式では、混合状態の気体と液体を分離させた上で微細気泡を発生させるために、気液混合液を特に高速で旋回させなくてはならないため、気液混合液を高い圧力で容器内に圧送する必要がある。そのため、外部ポンプは必須となり、これも小型化の障害となる。
【0009】
これに対し、特許文献1乃至3に記載の発明においては、気液をあらかじめ混合する必要はなく、容器に導入する液体が十分な効率で渦流を生じさえすれば、負圧空洞部の負圧により気体は自吸される。液体と気体は混合せず、自吸された気体が形成する負圧空洞部の尖端の微細気泡発生点において気体がせん断されて微細気泡が発生するのである。そのため、装置自体を小型化できるだけでなく、たとえば水道の水圧で高速渦流を発生させることができればポンプすら不要であり、前述の家庭用品等への組み込みも容易となる。
【0010】
このように、小規模な水環境への適用を考慮した場合は、気液混合液を導入する方式よりも、気体と液体を別々に導入する方式の方が、装置全体としての小型化・簡易化が容易であり、より好適であるといえる。
【0011】
ところで、旋回式微細気泡発生装置では、前述の通り、容器内に導入された気体が液体の高速渦流により負圧空洞部を形成し、気体と液体の境界、特に負圧空洞部の尖端に生ずる微細気泡発生点において、気体と液体の旋回速度差により気体が連続的にせん断されることにより微細気泡を発生させる。
【0012】
ここで、液体渦流の旋回速度が速いほど負圧空洞部の負圧は大きくなり、単位時間当たりの気体の自吸量は大きくなる。従って、大量の微細気泡を効率的に発生させるために、容器の内部は、導入する液体に高い圧力を掛けずとも渦流の旋回速度を高められる構造とすることが望ましい。
【0013】
また、気体と液体の旋回速度差がせん断効果を生じるため、負圧空洞部においては気体導入口側から尖端の微細気泡発生点側に向けて旋回速度が急激に増加するほどせん断効果が高まり、発生する気泡をより微細化することができる。すなわち、負圧空洞部の断面積は、気体が容器に導入された直後にはある程度大きく、その後、尖端の微細気泡発生点に向けて急激に小さくなるようにすることが望ましい。
【0014】
特許文献1乃至3に示される微細気泡発生装置は、容器の内部が基本的に円筒形の空間であり、その内部は当然微細気泡発生装置を浸漬した液体で満たされている。そのため、加圧液導入口を気体導入口側あるいは気液噴出口側のいずれに設置したとしても、液体自体の慣性により加圧液導入口付近とその反対側との間で液体の旋回速度に差を生じるため、大きな圧力で液体を圧送するならばともかく、比較的小さな圧力の場合は、結果的に渦流の旋回速度を十分に高めることが困難である。
【0015】
なお、特許文献1及び2には、容器の内部を略円錐形とした微細気泡発生装置の図も示されているが、この場合も、略円錐形の基部と頂部では旋回する液体量の差から旋回速度にも差を生じるため、比較的小さな圧力で渦流の旋回速度を十分に高めることができないという問題があった。
【0016】
以上の点から、旋回式微細気泡発生装置、特に小規模な水環境への適用を前提として気体と液体を別々に導入する方式を採用した微細気泡発生装置では、液体を圧送する圧力が小さくても液体の渦流の速度を高め、十分に微細化した気泡を大量に発生させるために、容器の内部形状のさらなる改善が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明に係る旋回式微細気泡発生装置は、以下の構成を有している。
【0018】
すなわち、本発明の請求項1に記載の旋回式微細気泡発生装置は、回転対称に形成された中空部を有する略球形の器体と、前記器体の回転対称軸上の一方側の外壁を回転対称軸に沿って前記中空部内に略円錐台形に突出させて開設した気体導入口と、回転対称軸上の他方側の外壁に開設した気液噴出口と、前記気液噴出口の近傍において回転対称軸に対し垂直方向に開設した加圧液導入口と、を備え、前記器体内に流入した液体の旋回流により前記気体導入口から自吸した気体を微細気泡化し、前記気液噴出口から微細気泡を含む旋回気液混合液を導出するように成したことを特徴とする。
【0019】
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)器体を略球形とし、液体を満たした内部の中空部も略球形としたため、中空部内の
液体を高速旋回させる際、液体と壁体との摩擦を最小限とすることができ、液体圧送の圧力が小さくても効率的に渦流の旋回速度を高めることができる。なお、加圧液導入口を回転対称軸に対して垂直方向に開設したため、中空部内に発生させる液体の渦流の旋回軸を器体の回転対称軸に一致させることができる。これにより、中空部内の液体の渦流が円滑化する。
(2)加圧液導入口から圧入された液体は、ただちに中空部内壁の曲面に沿って旋回運動を始めるが、加圧液導入口を器体の回転対称軸上の一方に設けた気液噴出口の近傍に設けたため、液体は中空部内壁沿いに旋回しながら反対側の気体導入口方向に向かい(往路)、気体導入口付近で反転した後、回転対称軸に沿って戻り(復路)、最終的に気液噴出口から器体外へ放出される。
(3)加圧液導入口付近では液体の旋回半径が小さく、中空部内にすでに存在する液体との摩擦も小さいため、中空部を円筒形とした場合に比べて、比較的小さな圧力で液体を導入しても効率的に渦流を発生させることができる。
(4)液体は旋回しながら気体導入口側へ進行するが、中空部の中心付近では当然液体の旋回半径が大きくなるため渦流の進行速度は一旦低下する。一方、遠心力は増大するため、回転対称軸上では負圧が生じ、この負圧により気体導入口から気体が中空部内へと自吸されて負圧空洞部が形成される。
(5)渦流がさらに気体導入口方向に進行すると、再び液体の旋回半径が小さくなるため、液体の旋回速度は当然に速くなり、気体導入口付近で形成された直後の負圧空洞部の負圧も高まるから、さらに効率的に気体が中空部内に自吸される。
(6)渦流の反転後の復路の過程では、液体は回転対称軸沿いに往路の内側を進む。このとき、外周側は往路の旋回流が占めているため旋回半径は拡大せず、旋回速度を維持したまま中空部中心を通過する。そして、気液噴出口に近づくにつれて旋回半径がさらに縮小するとともに、旋回速度がさらに増大する。そのため、負圧空洞部は周囲の渦流から圧迫され円錐状に先細りとなる。
(7)気体導入口から負圧空洞部内に自吸された気体は液体よりも比重が小さいため、その旋回速度は接触する液体の旋回速度よりも小さくなる。そのため、双方の旋回速度差により気液の接触面でせん断効果が発生し、負圧空洞部が円錐形に先細りとなった尖端部分に生じる微細気泡発生点において気体が微細気泡となるのである。なお、微細気泡発生点は中空部内の気液噴出口の近傍に生じさせることが望ましい。
(8)本発明では、気体導入口を中空部内に略円錐台形に突出させて開設しているため、気体導入口側の中空部内壁まで達した渦流が反転する際には該略円錐台形の側面に沿って誘導される。そのため、液体が回転対称軸に沿って還流し易くなり、全体として中空部内の液体の流れが円滑化する。
(9)中空部内壁に直接気体導入口を開口させた場合は、前述の液体の渦流の反転の際に生ずる乱流により負圧空洞部の形状が不安定となり、ひいては微細気泡発生点における微細気泡の発生も不安定となる。本発明では、気体導入口が略円錐台形の頂部に開口しているため、自吸された気体は中空部の内壁よりも中心に近い位置で中空部内に放出される。そのため、負圧空洞部への乱流の影響を防ぐことができ、微細気泡発生の効率を高めることができる。
【0020】
以上の通り、器体及び中空部を略球形とすることにより、従来の円筒形とした場合に比べて、比較的小さな圧力で液体を導入してもより高速の液体渦流を生じさせることができる。その結果、負圧空洞部の負圧も大きくなるため、単位時間当たりの気体の自吸量を増やすことができ、効率的により大量の微細気泡を発生させることができる。また、気体導入口を中空部内に突出する略円錐台形の頂部に設けることで、中空部内の液体の流れが円滑化し、負圧空洞部の形状を安定化できるため、微細気泡の発生効率を高めることができるのである。
【0021】
なお、器体は完全な球形とするほかに、回転対称軸方向の全長を回転外周の最大直径よりも短くして、全体として回転対称軸方向に圧縮された球形としてもよい。この場合、内部の中空部の回転対称軸方向の全長も短くなり、気体導入口と気液噴出口の距離も短くなるが、略円錐台形側面の回転対称軸に対する角度並びに円錐台頂部の断面積を適宜変化させることで負圧空洞部の円錐形の高さを制御して、微細気泡発生点を気液噴出口の近傍に生じさせることができる。
【0022】
次に、本発明の請求項2に係る旋回式微細気泡発生装置は、請求項1に記載の旋回式微細気泡発生装置であって、前記気体導入口が、前記略円錐台形の側面が前記器体内壁面と一体的な湾曲面を成すことを特徴とする。
【0023】
この構成により、気体導入口付近での液体の渦流の反転をさらに円滑化できる。中空部内における液体は略球形の中空部内壁に沿って円滑に旋回するが、反転の際には略円錐台形に突出した気体導入口の基部で乱流を生じ、中空部内の液体の旋回を乱すおそれがある。気体導入口の略円錐台形の側面を中空部内壁面と一体的な湾曲面とすることで、乱流の発生自体をより効果的に防ぐことができる。
【0024】
次に、本発明の請求項3に係る旋回式微細気泡発生装置は、請求項1又は2のいずれかに記載の旋回式微細気泡発生装置であって、前記気体導入口が、前記略円錐台形の前記器体外壁を貫通し、かつ前記器体の回転対称軸方向に沿って前後移動可能な気体導入管を備えることを特徴とする。
【0025】
気体導入口がかかる気体導入管を備えることにより、中空部内へ気体を導入する位置を任意に変更することが可能となる。他の実施条件を固定したまま、気体導入口の位置のみを回転対称軸に沿って前後させた場合、気体導入口を中空部の中心に近付けるほど微細気泡の発生量が減少し、逆の場合は微細気泡の発生量が増加する。気体導入口の位置を中空部の中心に近付けた場合、負圧空洞部の全長は短くなり、単位時間当たりに微細気泡発生点に到達する気体量が増加する。液体の旋回速度が一定ならば微細気泡発生点におけるせん断効果の効率も一定であるため、気体量が多くなり過ぎると余分な気体は微細気泡化せず大きな気泡のまま気液噴出口から放出され、結果的に発生する微細気泡の量が減少することになる。逆に、気体導入口が中空部内壁に近ければ負圧空洞部の全長が長くなり、微細気泡発生点に到達した気体は余さず微細気泡化されるため、微細気泡の発生量が増加するのである。
【0026】
これにより、特許文献4に記載の発明のように、あらかじめ気体と液体の混合比率を調整した気液混合液を導入する方式をとらずとも、本発明では、単純かつ機械的に気体導入管の中空部内への突出量を変更することで、容易に微細気泡の発生量を制御することが可能となる。そのため、あらかじめ気液混合液を作ってその混合比率を調整するための附帯設備は不要であり、小型かつ簡易な構造の装置本体のみで微細気泡の発生量を制御することができるという利点を有する。
【0027】
さらに、気体導入管は器体に設けた気体導入口とは独立した部品であるため、適宜取り外して清掃することができる。器体本体は液体導入口、気液噴出口、気体導入口の合計3つの開口部を有するが、装置の運転中、液体導入口及び気液噴出口は通過する液体又は気液混合液は加圧されているため、液体導入口に至る液体流路にフィルター等を設けておけば大きな異物の進入は防げるし、気液噴出口の内径よりも小さな異物は液圧によって自然に器体外へ排出される。一方、気体導入口に至る気体流路においては、大気圧の気体が装置の動作によって自吸される構造である。そのため、大きな異物はフィルターで除去可能であるとしても、吸気効率を低下させないためには、小さな異物まで除去できるフィルターを設けることは適切でない。その結果、気体の自吸圧は液体の導入圧に比べてはるかに小さいため、気体中の小さな異物が気体導入口に残留しやすく、目詰まりを起こす可能性がある。しかし、気体導入口が独立した部品としての気体導入管として構成していれば、必要に応じて目詰まりを起こした気体導入管のみを器体から取り外し、管内の清掃あるいは気体導入管自体を交換することで容易に対処することができるという利点がある。
【0028】
次に、本発明の請求項4に係る旋回式微細気泡発生装置は、回転対称に形成された中空部を有する略半球形の器体と、前記器体の略半球底面側の外壁を回転対称軸に沿って前記中空部内に略円錐台形に突出させて開設した気体導入口と、回転対称軸上の略半球頂部側の外壁に開設した気液噴出口と、前記気液噴出口の近傍において回転対称軸に対し垂直方向に開設した加圧液導入口と、を備え、前記器体内に自吸した液体の旋回流により前記気体導入口から流入した気体を微細気泡化し、前記気液噴出口から微細気泡を含む旋回気液混合液を導出するように成したことを特徴とする。
【0029】
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)器体を略半球形とし、液体を満たした内部の中空部も略半球形としたため、略球体とした場合と同じく、液体と壁体との摩擦を最小限とすることができ、液体圧送の圧力が小さくても効率的に渦流の旋回速度を高めることができる。
(2)しかも、略球体の場合に比べて中空部内の液体の総量が小さくなり、旋回させる液体の慣性も小さくなるため、液体の導入圧が同じでも渦流の旋回速度をより高めることができ、単位時間当たりに自吸する気体量を増加させることができる。
(3)中空部を略半球形としたため、気体導入口の位置が中空部内で相対する気液噴出口に近くなるため、形成される負圧空洞部の全長も短くなる。この結果、負圧空洞部の断面は気体導入口付近から負圧空洞部尖端に向けて急激に小さくなる。これにより、負圧空洞部尖端に生じる微細気泡発生点での液体渦流の旋回速度も急激に増加し、気体のせん断効率が向上するため、より小さな微細気泡を発生させることができる。なお、微細気泡発生点は中空部内の気液噴出口の近傍に生じさせることが望ましい。
(4)請求項1に記載の発明と同様に、気体導入口を中空部内に略円錐台形に突出させて開設しているため、気体導入口側の中空部内壁まで達した液体の流れが反転する際、該略円錐台形の側面により誘導され、回転対称軸に沿って還流し易くなり、全体として中空部内の液体の流れが円滑化する。
(5)一方、請求項1に記載の発明とは異なり、中空部は略半球形であって気体導入口付近では最大の半径を有するため、液体が反転する際には中空部が略球形の場合ほど旋回速度は増加しないが、反転後はただちに中空部の外径が縮小するため、負圧空洞部の尖端に向けて液体の旋回速度が増加する効果は同じである。
(6)そのため、結果的に回転対称軸に沿った短い距離で負圧空洞部の断面が急激に小さくなり、その尖端の微細気泡発生点における気体のせん断効率が高められる。
【0030】
なお、器体は半球形とするほかに、回転対称軸方向の全長をさらに短くして、全体として凸レンズ形状としてもよい。この場合、内部の中空部の回転対称軸方向の全長も短くなり、気体導入口と気液噴出口の距離も短くなるが、略円錐台形側面の回転対称軸に対する角度並びに円錐台頂部の断面積を適宜変化させることで負圧空洞部の円錐形の高さを制御して、微細気泡発生点を気液噴出口の近傍に生じさせることができる。
【0031】
次に、本発明の請求項5に係る旋回式微細気泡発生装置は、請求項4に記載の旋回式微細気泡発生装置であって、前記気体導入口が、前記略円錐台形の側面が前記器体内壁面と一体的な湾曲面を成すことを特徴とする。
【0032】
請求項4に係る旋回式微細気泡発生装置では、前述の通り気体導入口周辺において中空部の断面積は最大であるので液体の旋回流の反転の最に乱流が生じる可能性は請求項3に係る旋回式微細気泡発生装置よりも小さいが、気体導入口の略円錐台形の側面を中空部内壁面と一体的な湾曲面とすることで、この乱流の発生をさらに効果的に防ぐことができる。
【0033】
次に、本発明の請求項6に係る旋回式微細気泡発生装置は、請求項4又は5のいずれかに記載の旋回式微細気泡発生装置であって、前記気体導入口が、前記略円錐台形の前記器体外壁を貫通し、かつ前記器体の回転対称軸方向に沿って前後移動可能な気体導入管を備えることを特徴とする。
【0034】
請求項3に係る旋回式微細気泡発生装置と同様に、気体導入管を回転対称軸に沿って動かすことにより、中空部内へ気体を導入する位置を任意に変更することが可能となる。これにより、あらかじめ気体と液体の混合比率を調整した気液混合液を導入する方式をとらずとも、本発明では、単純かつ機械的に気体導入管の中空部内への突出量を変更することで、容易に微細気泡の発生量を制御することが可能となる。そのため、あらかじめ気液混合液を作ってその混合比率を調整するための附帯設備は不要であり、小型かつ簡易な構造の装置本体のみで微細気泡の発生量を制御することができるという利点を有する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、小型かつ簡易な構造で効率的に微細気泡を発生できる旋回式微細気泡発生装置を実現できる。本旋回式微細気泡発生装置では、外部ポンプにより器体内に液体を圧送することにより、気体は自動的に自吸されて微細気泡化される。特に、器体を極めて小型にした場合は、たとえば水道の水圧程度の圧力でも動作することができるため、浄水器やシャワーヘッド等の家庭用機器にも容易に組み込み可能である。そのため、本発明は、旋回式微細気泡発生装置において、特に小規模な水環境での適用範囲を拡大できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面1乃至5を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の側面図である。内部が中空の略球形の器体10は、その外壁の回転対称軸上に正対する位置に気液噴出口12と気体導入管13を有するとともに、前記気液噴出口12の近傍においては回転対称軸に対し垂直方向に向けて加圧液導入管14が接続されている。また、図2は、前記略球形の器体10を前記気液噴出口12側から観た正面図である。
【0037】
図3は、図1の旋回式微細気泡発生装置を回転対称軸Xの位置で切断した断面図である。器体10の内部は中空となっており、中空部の内壁は気体導入口16付近を除いては滑らかな球内側面を成している。一方、気体導入口16は回転対称軸Xに沿って中空部内に突出した略円錐台形を成し、略円錐台形の側面は球内側面と一体的に滑らかな湾曲面16を成している。また、器体10の外部から気体導入口11を貫通する形で気体導入管13を備えている。加圧液導入管14は気液噴出口12の中空部内壁の開口部近傍において、回転対称軸Xに対し垂直方向に向けて接続され、中空部内壁に加圧液導入口15を形成している。
【0038】
旋回式微細気泡発生装置の動作前には、中空部には装置自体を浸漬した液体が満たされており、装置を動作すると、加圧液導入管14から圧送された液体Lが加圧液導入口15を通じて新たに中空部内に導入される。
【0039】
導入された液体Lは、ただちに中空部の内壁に沿って旋回しつつ、気体導入口11の方向(図3では左方向)に進み、渦流Rを生じる。渦流Rは加圧液導入口15付近では小さな半径で旋回するが、中空部の中心付近では最大の半径で旋回し、気体導入口11付近では再び小さな半径で旋回する。
【0040】
湾曲面16まで到達した渦流Rは湾曲面16に沿って反転し、回転対称軸X沿いに往路の渦流Rの内側に復路の渦流R’を形成しつつ右方向へ進行する。渦流R’の旋回は渦流Rと同じ方向であるが、その半径は小さいため旋回速度は渦流Rよりも大きい。そのため、中空部内の液体Lには回転対称軸X上に沿って負圧が発生し、該負圧により気体導入管13から気体Aが中空部内に吸い込まれ、回転対称軸Xに沿って負圧空洞部Vが生じる。
【0041】
負圧空洞部Vを形成する気体Aは、渦流R’との摩擦によって回転を与えられ、旋回しつつ右方向に進むが、気液噴出口12に近づくにつれ渦流R’の旋回半径がさらに小さくなり、旋回速度も速くなるため、これに絞り込まれる形となって負圧空洞部Vは先細りの円錐形状となる。負圧空洞部Vの外側面では、気体Aと渦流R’の旋回する液体Lとの比重の違いから、気体Aの旋回速度は液体Lの旋回速度よりも小さくなるため、この旋回速度差により気体Aに対してせん断効果が発生し、負圧空洞部Vの尖端において気体Aが連続的にせん断されて微細気泡化する微細気泡発生点Pが生じる。
【0042】
その後、渦流R’は微細気泡MBを含む気液混合液状態となって気液噴出口12から器体外に放出され、微細気泡MBが外部の液体中に拡散されるのである。
【0043】
図4は、本発明の第二の実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の側面図である。内部が中空の略半球形の器体20は、その外壁の回転対称軸X上に正対する位置に気液噴出口22と気体導入管23を有するとともに、前記気液噴出口22の近傍においては回転対称軸Xに対し垂直方向に向けて加圧液導入管24が接続されている。
【0044】
図5は、図4の旋回式微細気泡発生装置を回転対称軸Xの位置で切断した断面図である。器体20の内部は中空となっており、中空部の内壁は気液噴出口22を頂点とする滑らかな半球内側面を成すが、気体導入口21側は半球の底面を塞ぐ円形の壁体27となっている。一方、気体導入口21は回転対称軸Xに沿って壁体27から中空部内に突出した略円錐台形を成し、中空部の内壁から壁体27を経て該略円錐台形の側面にかけて滑らかな湾曲面26を形成している。また、器体20の外部から壁体27と気体導入口21を貫通する形で気体導入管23を備えている。また、加圧液導入管24は気液噴出口22の中空部内壁の開口部近傍において、回転対称軸Xに対し垂直方向に向けて接続され、中空部内壁に加圧液導入口25を形成している。
【0045】
本実施形態においても、装置が動作して加圧液導入管24から圧送された液体Lが加圧液導入口25を通じて新たに中空部内に導入され、生じた渦流Rが図の左方向に旋回しつつ進行する過程は第一実施形態と同様である。
【0046】
本実施形態では、中空部が最大半径となったところで渦流Rが壁体27に到達し、湾曲面26に沿って反転して渦流R’となり、回転対称軸X沿いに渦流Rの内側を気液噴出口22に向かって進行する。渦流Rは反転する前に、第一実施形態のように旋回半径が小さくならないため、気体導入口21付近での乱流の発生が抑制される。
【0047】
また、本実施形態では、中空部が略半球形で回転対称軸X方向の長さが短いため、反転後の渦流R’は第一実施形態よりも短い距離で旋回半径が小さくなる。その結果、発生する負圧空洞部Vの全長も短くなり、その断面積は第一実施形態よりも急激に絞り込まれることになる。そのため、負圧空洞部Vの周囲における渦流R’の旋回速度も第一実施形態よりも急激に大きくなり、微細気泡発生点Pでは気体Aに対するせん断効果は十分に高くなる。
【0048】
以上、二つの実施形態を比較すると、第一実施形態に比べて第二実施形態の方が中空部の容積が小さいため、当然ながら中空部内で旋回する液体Aの量、すなわち慣性重量も小さい。そのため、中空部内へ液体Lを圧送する圧力が同じであれば、第二実施形態の方がより高速の渦流を生じ、回転対称軸X上に生じる負圧空洞部Vの負圧も大きくなる。
【0049】
このことは、本願発明の発明者が実施した実験結果からも明らかである。図6は、器体の最大直径を等しくした第一実施形態(略球形)と第二実施形態(略半球形)の試作機を用いて水中での動作実験を行い、動作中に中空部内に生じる負圧を計測した数値を表にしたものである。なお、試作機に水を圧送するポンプの出力は等しくした。
【0050】
その結果、装置を通過する水の流量は第一実施形態では毎秒15g強であるのに対し、第二実施形態では毎秒23g強と大きく、より小型である第二実施形態の方が単位時間当たりの流量が大きいことが示された。
【0051】
また、中空部内に生じる負圧は、第一実施形態では3回の試行の結果、平均0.458mAqであったのに対し、第二実施形態では7回の試行の結果、平均1.04mAqと二倍強の数値となった。
【0052】
実験の結果、第二実施形態は同じ圧力で液体を圧送しても、第一実施形態よりも速く液体Lを通過させて、中空部内においてより大きな負圧を発生させることが確認された。そのため、単位時間当たりに自吸される空気Aの量も第二実施形態の方が多くなるものと考えられるが、このことは気液噴出口から噴出する微細気泡の発生量が、目視でも第二実施形態の方が多いことからも確認できた。
【0053】
以上から、本発明に係る旋回式微細気泡発生装置においては、器体内の中空部の形態を略球形よりも略半球形とする方が効率性及び装置の小型化の両面においてより好適である。
【0054】
なお、器体の形状を変えた場合に微細気泡発生点Pを気液噴出口12の中空部側の近傍の適切な位置に生じさせることは、前述した通り、気体導入口11を形成する円錐台形側面の回転対称軸Xに対する角度並びに円錐台頂部の断面積を適宜変化させることで負圧空洞部Vの円錐形の高さを制御することにより実現できる。図7は、円錐台形の形状と生成される負圧空洞部Vの形状の関係を例示した部分拡大図であるが、負圧空洞部Vの円錐形は概ね円錐台形の頂部を底面とし、円錐台形の側面の延長面に沿って負圧空洞部Vの側面も形成されることが発明者の実験で確認された。
【0055】
以上、本発明に係る旋回式微細気泡発生装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の技術的思想の範囲内において改良又は変更が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、気体を微細気泡化して液体中に効率的に溶解させるための微細気泡発生装置に適用され、例えば水中の酸素量を賦加して水質を改善する水質改善装置に適している。本発明は、特に、効率性の高い微細気泡発生装置を小型化し簡易な構造で実現可能であるので、家庭用の浄水器やシャワーヘッド等に内蔵する小型の水質改善装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第一実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の正面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の側面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態及び第二実施形態に係る旋回式微細気泡発生装置の試作品を用いて行った試験結果数値の表である。
【図7】円錐台形の形状による負圧空洞部の形状の変化を例示する部分拡大図である。
【符号の説明】
【0058】
X 回転対称軸
A 気体
L 液体
MB 微細気泡
R 渦流(往路)
R’ 渦流(復路)
V 負圧空洞部
10 器体(第一実施形態)
11 気体導入口(第一実施形態)
12 気液噴出口(第一実施形態)
13 気体導入管(第一実施形態)
14 加圧液導入管(第一実施形態)
15 加圧液導入口(第一実施形態)
16 湾曲面(第一実施形態)
20 器体(第二実施形態)
21 気体導入口(第二実施形態)
22 気液噴出口(第二実施形態)
23 気体導入管(第二実施形態)
24 加圧液導入管(第二実施形態)
25 加圧液導入口(第二実施形態)
26 湾曲面(第二実施形態)
27 壁体(第二実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転対称に形成された中空部を有する略球形の器体と、前記器体の回転対称軸上の一方側の外壁を回転対称軸に沿って前記中空部内に略円錐台形に突出させて開設した気体導入口と、回転対称軸上の他方側の外壁に開設した気液噴出口と、前記気液噴出口の近傍において回転対称軸に対し垂直方向に開設した加圧液導入口と、を備え、前記器体内に流入した液体の旋回流により前記気体導入口から自吸した気体を微細気泡化し、前記気液噴出口から微細気泡を含む旋回気液混合液を導出するように成したことを特徴とする旋回式微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記気体導入口は、前記略円錐台形の側面が前記器体内壁面と一体的な湾曲面を成すことを特徴とする請求項1に記載の旋回式微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記気体導入口は、前記略円錐台形の前記器体外壁を貫通し、かつ前記器体の回転対称軸方向に沿って前後移動可能な気体導入管を備えることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の旋回式微細気泡発生装置。
【請求項4】
回転対称に形成された中空部を有する略半球形の器体と、前記器体の略半球底面側の外壁を回転対称軸に沿って前記中空部内に略円錐台形に突出させて開設した気体導入口と、回転対称軸上の略半球頂部側の外壁に開設した気液噴出口と、前記気液噴出口の近傍において回転対称軸に対し垂直方向に開設した加圧液導入口と、を備え、前記器体内に流入した液体の旋回流により前記気体導入口から自吸した気体を微細気泡化し、前記気液噴出口から微細気泡を含む旋回気液混合液を導出するように成したことを特徴とする旋回式微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記気体導入口は、前記略円錐台形の側面が前記器体内壁面と一体的な湾曲面を成すことを特徴とする請求項4に記載の旋回式微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記気体導入口は、前記略円錐台形の前記器体外壁を貫通し、かつ前記器体の回転対称軸方向に沿って前後移動可能な気体導入管を備えることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の旋回式微細気泡発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−239953(P2012−239953A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110220(P2011−110220)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【特許番号】特許第4903292号(P4903292)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(508260016)
【Fターム(参考)】